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特許7552615感放射線性樹脂組成物、レジストパターン形成方法、重合体及び化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】感放射線性樹脂組成物、レジストパターン形成方法、重合体及び化合物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/039 20060101AFI20240910BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20240910BHJP
   C08F 20/28 20060101ALI20240910BHJP
   C08F 28/04 20060101ALI20240910BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
G03F7/039 601
G03F7/038 601
C08F20/28
C08F28/04
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021562576
(86)(22)【出願日】2020-11-20
(86)【国際出願番号】 JP2020043492
(87)【国際公開番号】W WO2021111912
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2023-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2019219973
(32)【優先日】2019-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(72)【発明者】
【氏名】根本 龍一
(72)【発明者】
【氏名】錦織 克聡
(72)【発明者】
【氏名】中島 浩光
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-172120(JP,A)
【文献】特開2012-252244(JP,A)
【文献】特開2000-191732(JP,A)
【文献】国際公開第2019/026549(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/039
G03F 7/038
C08F 20/28
C08F 28/04
G03F 7/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構造単位を有する重合体と、
感放射線性酸発生体と
を含有する感放射線性樹脂組成物。
【化1】
上記式(1)中、Aは、酸素原子又は硫黄原子である。m+nは2又は3であり、mは1又は2であり、nは1又は2である。Xは炭素数1~20の2価の有機基である。Rは、酸解離性基又は極性基である。
【請求項2】
上記式(1)のRにおける酸解離性基が、下記式(1-1)又は(1-2)で表される基である請求項1に記載の感放射線性樹脂組成物。
【化2】
上記式(1-1)中、R1Aは、炭素数1~20の1価の炭化水素基である。R1B及びR1Cは、それぞれ独立して、炭素数1~20の1価の有機基であるか、又はR1B及びR1Cが互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される環員数3~20の環構造の一部を表す。*は、上記式(1)のRに隣接している酸素原子と結合する部位を示す。
上記式(1-2)中、Yは-O-又は-S-である。R1D及びR1Eは、それぞれ独立して、炭素数1~20の1価の炭化水素基であるか、又はR1D及びR1Eが互いに合わせられこれらが結合する原子鎖と共に構成される環員数4~20の環構造の一部を表す。*は、上記式(1)のRに隣接している酸素原子と結合する部位を示す。
【請求項3】
上記式(1)のRにおける極性基が、下記(2-1)、(2-2)又は(2-3)で表される基である請求項1又は請求項2に記載の感放射線性樹脂組成物。
(2-1)炭素数2~20の置換又は非置換の炭化水素基を構成する炭素-炭素結合間に、-O-、-CO-、-SO-又は-NH-を有する1価の有機基(但し下記(2-3)に含まれるものを除く)。
(2-2)炭素数1~20の置換又は非置換の炭化水素基を構成する1以上の水素原子がハロゲン原子、-OH、-COOH、-CN又は-NHで置換された構造を有する1価の有機基(但し下記(2-3)に含まれるものを除く)。
(2-3)炭素数2~20の置換又は非置換の炭化水素基を構成する炭素-炭素結合間に、-O-、-CO-、-SO-又は-NH-を有し、上記炭化水素基を構成する1以上の水素原子がハロゲン原子、-OH、-COOH、-CN又は-NHで置換された構造を有する1価の有機基。
【請求項4】
上記式(1)のXが、炭素数1~20の2価の炭化水素基、-X-O-、-X-NH-又は-X-O-X-であり、
上記X、X、X及びXが、それぞれ独立して、炭素数1~20の2価の炭化水素基である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項5】
上記式(1)のX、X、X、X及びXにおける炭素数1~20の2価の炭化水素基が、それぞれ独立して、炭素数1~4の2価の鎖状炭化水素基、炭素数6~10の2価の脂環式炭化水素基又は炭素数6~10の2価の芳香族炭化水素基である請求項4に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項6】
基板に直接又は間接に感放射線性樹脂組成物を塗工する工程と、
上記塗工工程により形成されたレジスト膜を露光する工程と、
上記露光されたレジスト膜を現像する工程と
を備え、
上記感放射線性樹脂組成物が、
下記式(1)で表される構造単位を有する重合体と、
感放射線性酸発生体と
を含有するレジストパターン形成方法。
【化3】
上記式(1)中、Aは、酸素原子又は硫黄原子である。m+nは2又は3であり、mは1又は2であり、nは1又は2である。Xは炭素数1~20の2価の有機基である。Rは、酸解離性基又は極性基である。
【請求項7】
上記式(1)のRにおける酸解離性基が、下記式(1-1)又は(1-2)で表される基である請求項6に記載のレジストパターン形成方法。
【化4】
上記式(1-1)中、R1Aは、炭素数1~20の1価の炭化水素基である。R1B及びR1Cは、それぞれ独立して、炭素数1~20の1価の有機基であるか、又はR1B及びR1Cが互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される環員数3~20の環構造の一部を表す。*は、上記式(1)のRに隣接している酸素原子と結合する部位を示す。
上記式(1-2)中、Yは-O-又は-S-である。R1D及びR1Eは、それぞれ独立して、炭素数1~20の1価の炭化水素基であるか、又はR1D及びR1Eが互いに合わせられこれらが結合する原子鎖と共に構成される環員数4~20の環構造の一部を表す。*は、上記式(1)のRに隣接している酸素原子と結合する部位を示す。
【請求項8】
下記式(1)で表される構造単位を有する重合体。
【化5】
上記式(1)中、Aは、酸素原子又は硫黄原子である。m+nは2又は3であり、mは1又は2であり、nは1又は2である。Xは炭素数1~20の2価の有機基である。Rは、酸解離性基又は極性基である。
【請求項9】
上記式(1)のRにおける酸解離性基が、下記式(1-1)又は(1-2)で表される基である請求項8に記載の重合体。
【化6】
上記式(1-1)中、R1Aは、炭素数1~20の1価の炭化水素基である。R1B及びR1Cは、それぞれ独立して、炭素数1~20の1価の有機基であるか、又はR1B及びR1Cが互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される環員数3~20の環構造の一部を表す。*は、上記式(1)のRに隣接している酸素原子と結合する部位を示す。
上記式(1-2)中、Yは-O-又は-S-である。R1D及びR1Eは、それぞれ独立して、炭素数1~20の1価の炭化水素基であるか、又はR1D及びR1Eが互いに合わせられこれらが結合する原子鎖と共に構成される環員数4~20の環構造の一部を表す。*は、上記式(1)のRに隣接している酸素原子と結合する部位を示す。
【請求項10】
下記式(i)で表される化合物。
【化7】
上記式(i)中、Aは、酸素原子又は硫黄原子である。m+nは2又は3であり、mは1又は2であり、nは1又は2である。Xは炭素数1~20の2価の有機基である。Rは、酸解離性基又は極性基である。
【請求項11】
上記式(i)のRにおける酸解離性基が、下記式(1-1)又は(1-2)で表される基である請求項10に記載の化合物。
【化8】
上記式(1-1)中、R1Aは、炭素数1~20の1価の炭化水素基である。R1B及びR1Cは、それぞれ独立して、炭素数1~20の1価の有機基であるか、又はR1B及びR1Cが互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される環員数3~20の環構造の一部を表す。*は、上記式(1)のRに隣接している酸素原子と結合する部位を示す。
上記式(1-2)中、Yは-O-又は-S-である。R1D及びR1Eは、それぞれ独立して、炭素数1~20の1価の炭化水素基であるか、又はR1D及びR1Eが互いに合わせられこれらが結合する原子鎖と共に構成される環員数4~20の環構造の一部を表す。*は、上記式(1)のRに隣接している酸素原子と結合する部位を示す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感放射線性樹脂組成物、レジストパターン形成方法、重合体及び化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィーによる微細加工に用いられる感放射線性樹脂組成物は、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)、KrFエキシマレーザー光(波長248nm)等の遠紫外線、極端紫外線(EUV)等の電磁波、電子線等の荷電粒子線などの放射線の照射により露光部に酸を発生させ、この酸を触媒とする化学反応により露光部と未露光部との現像液に対する溶解速度に差を生じさせ、基板上にレジストパターンを形成する。
【0003】
かかる感放射線性組成物には、露光光に対する感度が良好であることに加え、線幅の均一性を示すLWR(Line Width Roughness)性能及び長周期で線幅のばらつきを示すCDU(Critical Dimention Uniformity)性能が要求される。これらの要求に対しては、感放射線性樹脂組成物に用いられる重合体、酸発生剤、その他の成分の種類や分子構造等が検討されている(特開2009-14815号公報及び特開2013-200560号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-14815号公報
【文献】特開2013-200560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、レジストパターンの微細化が線幅40nm以下のレベルまで進展している現状にあっては、上記性能の要求レベルはさらに高まり、上記従来の感放射線性樹脂組成物では、これらの要求を満足させることはできていない。
【0006】
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、露光光に対する感度が良好であり、LWR性能及びCDU性能に優れる感放射線性樹脂組成物、レジストパターン形成方法、重合体及びこれらに用いることができる化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた発明は、下記式(1)で表される構造単位(以下、「構造単位(T)」ともいう)を有する重合体(以下、[A]重合体ともいう)と、感放射線性酸発生体(以下、[B]酸発生体ともいう)とを含有する感放射線性樹脂組成物である。
【0008】
【化1】
上記式(1)中、Aは、酸素原子又は硫黄原子である。m+nは2又は3であり、mは1又は2であり、nは1又は2である。Xは炭素数1~20の2価の有機基である。Rは、酸解離性基又は極性基である。
【0009】
上記課題を解決するためになされた別の発明は、基板に直接又は間接に感放射線性樹脂組成物を塗工する工程と、上記塗工工程により形成されたレジスト膜を露光する工程と、記露光されたレジスト膜を現像する工程とを備え、上記感放射線性樹脂組成物が、[A]重合体と、[B]酸発生体とを含有するレジストパターン形成方法である。
【0010】
上記課題を解決するためになされた別の発明は、構造単位(T)を有する[A]重合体である。
【0011】
上記課題を解決するためになされた別の発明は、下記式(i)で表される化合物(以下、「化合物(i)」ともいう)である。
【化2】
上記式(i)中、Aは、酸素原子又は硫黄原子である。m+nは2又は3であり、mは1又は2であり、nは1又は2である。Xは炭素数1~20の2価の有機基である。Rは、酸解離性基又は極性基である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の感放射線性樹脂組成物、レジストパターン形成方法、重合体及び化合物によれば、露光光に対する感度が良好であり、LWR性能及びCDU性能に優れるレジストパターンを形成することができる。従って、これらは今後さらに微細化が進行すると予想される半導体デバイス製造用に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<感放射線性樹脂組成物>
当該感放射線性樹脂組成物は、[A]重合体と、[B]酸発生体とを含有する。当該感放射線性樹脂組成物は、好適成分として、[C]酸拡散制御体、[D]溶媒、及び[A]重合体(第1重合体ともいう)よりもフッ素原子の合計質量含有割合が大きい第2重合体(以下、「[E]重合体」ともいう)を含有していてもよく、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の任意成分を含有していてもよい。
【0014】
当該感放射線性樹脂組成物は、[A]重合体と、[B]酸発生体とを含有することで、露光光に対する感度が良好であり、LWR性能及びCDU性能に優れるレジストパターンを形成することができる。当該感放射線性樹脂組成物が上記構成を備えることで、上記効果を奏する理由については必ずしも明確ではないが、例えば以下のように推察することができる。すなわち、当該感放射線性樹脂組成物に含まれる[A]重合体中の構造単位(T)に起因して感度が向上し、加えてLWR性能及びCDU性能が向上すると考えられる。以下、当該感放射線性樹脂組成物の各成分について説明する。
【0015】
<[A]重合体>
[A]重合体は、構造単位(T)を有する重合体である。[A]重合体は、構造単位(T)以外に、酸解離性基を含む構造単位(以下、「構造単位(I)」ともいう)、ラクトン構造、環状カーボネート構造、スルトン構造又はこれらの組み合わせを含む構造単位(以下、「構造単位(II)」ともいう)、アルコール性水酸基を含む構造単位(以下、「構造単位(III)」ともいう)、フェノール性水酸基を含む構造単位(以下、「構造単位(IV)」ともいう)等を好ましい任意成分として有する。[A]重合体は、上記構造単位(I)~(IV)以外のその他の構造単位を有していてもよい。なお、上記構造単位(I)~(IV)は、構造単位(T)以外の構造単位である。[A]重合体は、各構造単位を1種又は2種以上有していてもよい。以下、各構造単位について説明する。
【0016】
[構造単位(T)]
構造単位(T)は、下記式(1)で表される構造単位である。[A]重合体が構造単位(T)を有することで、露光光に対する感度が良好であり、LWR性能及びCDU性能に優れるレジストパターンを形成することができる。また、構造単位(T)が酸解離性基を有する場合には、露光により発生した酸の作用により露光部において酸解離性基が解離し、露光部と未露光部とで現像液に対する溶解性に差異が生じることにより、レジストパターンを形成することができる。「酸解離性基」とは、カルボキシ基の水素原子を置換する基であって、酸の作用により解離する基をいう。「環構造」には、脂環構造及び芳香環構造が含まれる。
【0017】
【化3】
【0018】
上記式(1)中、Aは、酸素原子又は硫黄原子である。m+nは2又は3であり、mは1又は2であり、nは1又は2である。Xは炭素数1~20の2価の有機基である。Rは、酸解離性基又は極性基である。
【0019】
上記Aとしては、酸素原子が好ましい。上記mとしては、1が好ましく、nとしては、1が好ましい(すなわち、m+nとしては、2が好ましい)。
【0020】
上記Xとしては、例えば炭素数1~20の2価の炭化水素基、-X-O-、-X-NH-又は-X-O-X-が好ましい。上記X、X、X及びXは、それぞれ独立して、炭素数1~20の2価の炭化水素基である。これらの炭化水素基は、ハロゲン原子などの置換基を有していてもよい。すなわち、上記X、X、X、X及びXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子などの置換基で置換された炭素数1~20の2価の炭化水素基であってもよい。
【0021】
上記X、X、X、X及びXで表される炭素数1~20の2価の炭化水素基としては、それぞれ独立して、炭素数1~4の2価の鎖状炭化水素基、炭素数6~10の2価の脂環式炭化水素基又は炭素数6~10の2価の芳香族炭化水素基が好ましい。
【0022】
炭素数1~4の2価の鎖状炭化水素基としては、例えばメタンジイル基、エタンジイル基、n-プロパンジイル基、i-プロパンジイル基等のアルカンジイル基;エテンジイル基、プロペンジイル基等のアルケンジイル基;エチンジイル基、プロピンジイル基等のアルキンジイル基等が挙げられる。炭素数6~10の2価の脂環式炭化水素基としては、例えばシクロヘキサンジイル基等の単環のシクロアルカンジイル基;シクロヘキセンジイル基等の単環のシクロアルケンジイル基;ノルボルナンジイル基、アダマンタンジイル基、トリシクロデカンジイル基等の多環のシクロアルカンジイル基;ノルボルネンジイル基、トリシクロデセンジイル基等の多環のシクロアルケンジイル基等が挙げられる。炭素数6~10の2価の芳香族炭化水素基としては、例えばベンゼンジイル基、トルエンジイル基、ナフタレンジイル基等のアレーンジイル基;ベンゼンジイルメタンジイル基等のアレーンジイルアルカンジイル基等が挙げられる。
【0023】
上記Xとしては、これらの中でも炭素数1~20の2価の炭化水素基が好ましく、炭素数1~4の鎖状炭化水素基、炭素数6~10の脂環式炭化水素基、炭素数6~10の芳香族炭化水素基がより好ましく、メタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、ノルボルナンジイル基、アダマンタンジイル基、ベンゼンジイル基が特に好ましい。上記X、X、X及びXの2価の炭化水素基としては、これらの中でも炭素数1~20の2価の炭化水素基が好ましく、炭素数1~4の鎖状炭化水素基がより好ましい。
【0024】
上記Rにおける酸解離性基としては、好ましくは下記式(1-1)又は(1-2)で表される基が挙げられる。
【0025】
【化4】
上記式(1-1)中、R1Aは、炭素数1~20の1価の炭化水素基である。R1B及びR1Cは、それぞれ独立して、炭素数1~20の1価の有機基であるか、又はR1B及びR1Cが互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される環員数3~20の環構造の一部を表す。*は、上記式(1)のRに隣接している酸素原子と結合する部位を示す。
上記式(1-2)中、Yは-O-又は-S-である。R1D及びR1Eは、それぞれ独立して、炭素数1~20の1価の炭化水素基であるか、又はR1D及びR1Eが互いに合わせられこれらが結合する原子鎖と共に構成される環員数4~20の環構造の一部を表す。*は、上記式(1)のRに隣接している酸素原子と結合する部位を示す。
【0026】
上記式(1-1)のR1Aで表される炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、例えば炭素数1~20の1価の鎖状炭化水素基、炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基、炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0027】
炭素数1~20の1価の鎖状炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基等のアルキル基;エテニル基、プロペニル基等のアルケニル基、エチニル基、プロピニル基等のアルキニル基等が挙げられる。炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等の脂環式飽和炭化水素基;シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、ノルボルネニル基等の脂環式不飽和炭化水素基等が挙げられる。炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基としては、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、アントリルメチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
【0028】
上記式(1-1)の、R1B及びR1Cで表される炭素数1~20の1価の有機基としては、上述の1価の炭化水素基;ハロゲン原子、-OH(ヒドロキシ基)、-CO(カルボキシ基)、-CN(シアノ基)、-NH(アミノ基)等の置換基を有する1価の炭化水素基;オキサシクロアルカン構造、オキサシクロアルケン構造、ラクトン構造、環状カーボネート構造、スルトン構造等を有する1価の環状極性基を有する1価の基等が挙げられる。
【0029】
上記式(1-1)のR1B及びR1Cが互いに合わせられ構成される環員数3~20の環構造としては、例えばシクロプロパン構造、シクロブタン構造、シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、ノルボルナン構造、アダマンタン構造等の飽和脂環構造;シクロプロペン構造、シクロブテン構造、シクロペンテン構造、シクロヘキセン構造、ノルボルネン構造等の不飽和脂環構造;環状エーテル構造、ラクトン構造、環状カーボネート構造、スルトン構造等の複素環構造等が挙げられる。
【0030】
上記式(1-2)のYは-O-又は-S-であり、-O-がより好ましい。
上記式(1-2)のR1D及びR1Eで表される炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、上記式(1-1)のR1Aで表される炭素数1~20の1価の炭化水素基と同じ基が挙げられる。
【0031】
上記式(1-2)のR1D及びR1Eが互いに合わせられ構成される環員数4~20の環構造としては、例えば環員数4~20の脂肪族複素環構造が挙げられる。環員数4~20の脂肪族複素環構造としては、例えばオキサシクロブタン構造、オキサシクロペンタン構造、オキサシクロヘキサン構造等のオキサシクロアルカン構造;オキサシクロブテン構造、オキサシクロペンテン構造、オキサシクロヘキセン構造等のオキサシクロアルケン構造;ラクトン構造等が挙げられる。
【0032】
上記Rにおける極性基としては、下記(2-1)、(2-2)又は(2-3)で表される基が好ましいものとして挙げられる。なお、上記Rにおける極性基は、上記Rにおける酸解離性基以外の基である。
(2-1)炭素数2~20の置換又は非置換の炭化水素基を構成する炭素-炭素結合間に、-O-、-CO-、-SO-又は-NH-を有する1価の有機基(但し下記(2-3)に含まれるものを除く)。
(2-2)炭素数1~20の置換又は非置換の炭化水素基を構成する1以上の水素原子がハロゲン原子、-OH、-COOH、-CN又は-NHで置換された構造を有する1価の有機基(但し下記(2-3)に含まれるものを除く)。
(2-3)炭素数2~20の置換又は非置換の炭化水素基を構成する炭素-炭素結合間に、-O-、-CO-、-SO-又は-NH-を有し、上記炭化水素基を構成する1以上の水素原子がハロゲン原子、-OH、-COOH、-CN又は-NHで置換された構造を有する1価の有機基。
【0033】
上記(2-1)及び(2-3)で表される極性基としては、例えば、ラクトン構造を有する基、環状カーボネート構造を有する基、スルトン構造を有する基、環状ケトン構造を有する基、環状エーテル構造を有する基等が好ましいものとして挙げられる。このように、上記(2-1)及び(2-3)で表される極性基として例示される上記1価の有機基は、上記炭化水素基を構成する複数の炭素-炭素結合間に、上記のように例示される複数の基から選択される複数の基を有してもよい。また上記(2-2)で表される極性基としては、フェノール性水酸基を有する基、アルコール性水酸基を有する基等が好ましいものとして挙げられる。なお、上記(2-2)で表される極性基として例示される上記1価の有機基は、上記炭化水素を構成する1以上の水素原子が上記のように例示される複数の基から選択される複数の基で置換された構造を有してもよい。
【0034】
[化合物(M)]
構造単位(T)を与える単量体としては、例えば下記式(i)で表される化合物(M)(以下、「化合物(M)」ともいう。)等が挙げられる。
【0035】
【化5】
上記式(i)中、Aは、酸素原子又は硫黄原子である。m+nは2又は3であり、mは1又は2であり、nは1又は2である。Xは炭素数1~20の2価の有機基である。Rは、酸解離性基又は極性基である。
【0036】
上記Rにおける酸解離性基としては、好ましくは上記式(1-1)又は(1-2)で表される基が挙げられる。
【0037】
上記式(i)中、A、X及びRは、上記式(1)におけるA、X及びRと等しい。
【0038】
化合物(M)は、重合時の下記のような環化反応により生成し、これにより構造単位(T)が形成される。
【0039】
【化6】
【0040】
化合物(M)の具体例のうち、Rが酸解離性基である化合物の具体例としては、上記式(1-1)で表される基を有する化合物として下記式(1-1-1)~(1-1-25)に記載の化合物等を挙げることができる。また、上記式(1-2)で表される基を有する化合物として下記式(1-2-1)~(1-2-2)で表される化合物等を挙げることができる。
【0041】
【化7】
【0042】
化合物(M)のうちRが極性基である化合物の具体例としては、上記(2-1)で表される基を有する化合物として下記式(2-1-1)~(2-1-20)に記載の化合物を挙げることができる。また、上記(2-2)で表される基を有する化合物として下記式(2-2-1)~(2-2-8)で表される化合物等を挙げることができる。また、上記(2-3)で表される基を有する化合物として下記式(2-3-1)~(2-3-3)で表される化合物等を挙げることができる。
【0043】
【化8】
【0044】
【化9】
【0045】
構造単位(T)としては、例えば上述した化合物を単量体とする構造単位等が挙げられる。
【0046】
構造単位(T)の含有割合の下限としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、5モル%が好ましく、10モル%がより好ましく、20モル%がさらに好ましく、30モル%が特に好ましい。上記含有割合の上限としては、80モル%が好ましく、70モル%がより好ましく、60モル%がさらに好ましく、50モル%が特に好ましい。構造単位(T)の含有割合を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物の露光光に対する感度をより高めることができ、また、LWR性能及びCDU性能をより向上させることができる。
【0047】
[構造単位(I)]
構造単位(I)は、構造単位(T)以外の構造単位であって酸解離性基を含む構造単位である。この「酸解離性基」とは、カルボキシ基又はフェノール性水酸基の水素原子を置換する基であって、酸の作用により解離する基をいう。[A]重合体が構造単位(I)中に酸解離性基を有することで、露光により発生した酸の作用により露光部において酸解離性基が解離し、露光部と未露光部とで現像液に対する溶解性に差異が生じることにより、レジストパターンを形成することができる。
【0048】
構造単位(I)としては、例えば下記式(2-1A)、式(2-1B)、式(2-2A)、式(2-2B)で表される構造単位(以下、「構造単位(I-1A)、(I-1B)、(I-2A)、(I-2B)」ともいう)等が挙げられる。なお、構造単位(I-1A)~(I-2B)において、カルボキシ基又はフェノール性水酸基に由来するオキシ酸素原子に結合する-CR又は-CR(OR)が酸解離性基である。
【0049】
【化10】
【0050】
上記式(2-1A)及び式(2-1B)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、炭素数1~20の1価の炭化水素基である。R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~20の1価の炭化水素基であるか、又はR及びRが互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される環員数3~20の脂環構造の一部である。
【0051】
上記式(2-2A)及び式(2-2B)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、水素原子又は炭素数1~20の1価の炭化水素基である。R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~20の1価の炭化水素基であるか、又はR及びRが互いに合わせられRが結合する炭素原子及びこの炭素原子に隣接する酸素原子と共に構成される環員数4~20の脂肪族複素環構造の一部である。
【0052】
、R、R、R、R及びRで表される炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、上記式(1-1)のR1Aで表される炭素数1~20の1価の炭化水素基と同じ基等が挙げられる。
【0053】
及びRが互いに合わせられ構成される環員数3~20の脂環構造としては、例えば上記式(1-1)のR1B及びR1Cが互いに合わせられ構成される環員数3~20の脂環構造と同じ脂環構造等が挙げられる。
【0054】
及びRが互いに合わせられ構成される環員数4~20の脂肪族複素環構造としては、例えば上記式(1-2)のR1E及びR1Fが互いに合わせられ構成される環員数4~20の脂肪族複素環構造等が挙げられる。
【0055】
としては、構造単位(I)を与える単量体の共重合性の観点から、水素原子又はメチル基が好ましい。Rとしては、水素原子、アルキル基又はアリール基が好ましい。R及びRとしては、アルキル基又は脂環式飽和炭化水素基が好ましい。構造単位(I)としては、上記構造単位(I-1A)が好ましい。
【0056】
構造単位(I)としては、例えば後述する実施例に記載された式(m-1)~式(m-4)、式(m-21)で表される化合物を単量体とする構造単位等が挙げられる。この他、構造単位(I)としては、例えば特開2018-013744号公報にて構造単位(I)として例示された構造単位のうち、上記式(2-1A)、式(2-1B)、式(2-2A)及び式(2-2B)に相当する構造単位等が挙げられる。
【0057】
構造単位(I)の含有割合の下限としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、5モル%が好ましく、10モル%がより好ましく、20モル%がさらに好ましく、30モル%が特に好ましい。上記含有割合の上限としては、80モル%が好ましく、70モル%がより好ましく、60モル%がさらに好ましい。この含有割合は、露光光がArFエキシマレーザー光である場合に特に好ましい。露光光がEUVである場合、上記含有割合の下限としては、上記全構造単位に対して、10モル%が好ましく、20モル%がより好ましい。上記含有割合の上限としては、70モル%が好ましく、60モル%がさらに好ましい。構造単位(I)の含有割合を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物の露光光に対する感度をより高めることができ、また、LWR性能及びCDU性能をより向上させることができる。
【0058】
[構造単位(II)]
構造単位(II)は、構造単位(T)及び構造単位(I)以外の構造単位であって、ラクトン構造、環状カーボネート構造、スルトン構造又はこれらの組み合わせを含む構造単位である。[A]重合体が構造単位(II)を有することで、[A]重合体の現像液への溶解性をより適度に調整し易くなり、その結果、当該感放射線性樹脂組成物のLWR性能及びCDU性能をより向上させることができる。
【0059】
構造単位(II)としては、例えば後述する実施例に記載された式(m-5)~式(m-11)、式(m-13)、式(m-22)、式(m-23)で表される化合物を単量体とする構造単位等が挙げられる。この他、構造単位(II)としては、例えば特開2018-013744号公報にて構造単位(III)として例示された構造単位等が挙げられる。
【0060】
構造単位(II)の含有割合の下限としては、[A]重合体における全構造単位に対して、5モル%が好ましく、10モル%がより好ましく、20モル%がさらに好ましく、30モル%が特に好ましい。上記含有割合の上限としては、80モル%が好ましく、70モル%がより好ましく、60モル%がさらに好ましく、50モル%が特に好ましい。構造単位(II)の含有割合を上記範囲とすることで、[A]重合体の現像液への溶解性をさらに適度に調整し易くなり、その結果、LWR性能及びCDU性能をさらに向上させることができる。
【0061】
[構造単位(III)]
構造単位(III)は、構造単位(T)、構造単位(I)及び構造単位(II)以外の構造単位であって、アルコール性水酸基を含む構造単位である。[A]重合体が構造単位(III)を有することで、[A]重合体の現像液への溶解性をより適度に調整し易くなり、その結果、当該感放射線性樹脂組成物のLWR性能及びCDU性能をより向上させることができる。
【0062】
構造単位(III)としては、例えば後述する実施例に記載された式(m-12)、式(m-17)で表される化合物を単量体とする構造単位等が挙げられる。この他、構造単位(III)としては、例えば特開2018-028574号公報にて構造単位(IV)として例示された構造単位等が挙げられる。
【0063】
構造単位(III)の含有割合の下限としては、[A]重合体における全構造単位に対して、1モル%が好ましく、5モル%がより好ましい。上記含有割合の上限としては、40モル%が好ましく、30モル%がより好ましく、20モル%がさらに好ましい。この含有割合は、露光光がArFエキシマレーザー光である場合に特に好ましい。露光光がEUVである場合、上記含有割合の下限としては、上記全構造単位に対して、1モル%が好ましく、5モル%がより好ましい。上記含有割合の上限としては、60モル%が好ましく、50モル%がより好ましく、40モル%がさらに好ましい。構造単位(III)の含有割合を上記範囲とすることで、[A]重合体の現像液への溶解性をさらに適度に調整し易くなり、その結果、当該感放射線性樹脂組成物のLWR性能及びCDU性能をさらに向上させることができる。
【0064】
[構造単位(IV)]
構造単位(IV)は、構造単位(T)、構造単位(I)、構造単位(II)及び構造単位(III)以外の構造単位であって、フェノール性水酸基を含む構造単位である。「フェノール性水酸基」とは、ベンゼン環に直結するヒドロキシ基に限らず、芳香環に直結するヒドロキシ基全般を指す。放射線としてArFエキシマレーザー光、KrFエキシマレーザー光、EUV、電子線等を用いる場合には、[A]重合体が構造単位(IV)を有することで、露光光に対する感度をより高めることができ、また、当該感放射線性樹脂組成物のLWR性能及びCDU性能をより向上させることができる。構造単位(IV)としては、例えば下記式(P)で表される構造単位等が挙げられる。
【0065】
【化11】
【0066】
上記式(P)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、単結合、-O-、-COO-又は-CONH-である。Arは、環員数6~20のアレーンから(p+q+1)個の芳香環上の水素原子を除いた基である。pは、0~10の整数である。pが1の場合、Rは、炭素数1~20の1価の有機基又はハロゲン原子である。pが2以上の場合、複数のRは、互いに同一又は異なり、炭素数1~20の1価の有機基若しくはハロゲン原子であるか、又は複数のRのうちの2つ以上が互いに合わせられこれらが結合する炭素鎖と共に構成される環員数4~20の環構造の一部である。qは、1~11の整数である。但し、p+qは11以下である。
【0067】
としては、構造単位(IV)を与える単量体の共重合性の観点から水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。Rとしては、単結合又は-COO-が好ましく、単結合がより好ましい。Arを与える環員数6~20のアレーンとしては、例えばベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、ピレン等が挙げられる。これらの中でベンゼン又はナフタレンが好ましく、ベンゼンがより好ましい。
【0068】
で表される炭素数1~20の1価の有機基としては、例えば炭素数1~20の1価の炭化水素基、この炭化水素基の炭素-炭素間又は結合手側の末端に2価のヘテロ原子含有基を含む基、上記炭化水素基及び上記2価のヘテロ原子含有基を含む基が有する水素原子の一部又は全部を1価のヘテロ原子含有基で置換した基等が挙げられる。Rとしては、炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましい。複数のRのうちの2つ以上が互いに合わせられ構成される環員数4~20の環構造としては、例えばシクロヘキサン構造等の脂環構造などが挙げられる。pとしては、0~2が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。qとしては、1~3が好ましく、1又は2がより好ましい。
【0069】
構造単位(IV)としては、例えば後述する実施例に記載された式(m-18)、式(m-19)で表される化合物を単量体とする構造単位等が挙げられる。この他、構造単位(IV)としては、例えば特開2018-013744号公報に構造単位(II)として例示された構造単位等が挙げられる。
【0070】
構造単位(IV)の含有割合の下限としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、5モル%が好ましく、10モル%がさらに好ましく、20モル%が特に好ましい。上記含有割合の上限としては、80モル%が好ましく、70モル%がさらに好ましく、60モル%が特に好ましい。構造単位(IV)の含有割合を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物のLWR性能及びCDU性能をより向上させることができる。
【0071】
[その他の構造単位]
その他の構造単位としては、例えば非酸解離性の炭化水素基を含む構造単位等が挙げられる。非酸解離性の炭化水素基としては、例えば-COO-のオキシ基に結合する1価の鎖状炭化水素基、1価の脂環式炭化水素基等が挙げられる。例えば1価の脂環式炭化水素基を含む構造単位としては、後述する実施例に記載された式(m-20)で表される化合物を単量体とする構造単位等が挙げられる。[A]重合体がその他の構造単位を有する場合、その他の構造単位の含有割合の上限としては、30モル%が好ましく、20モル%がより好ましい。上記含有割合の下限としては、例えば1モル%である。
【0072】
[A]重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)の下限としては、2000が好ましく、3000がより好ましく、4000がさらに好ましく、5000が特に好ましい。上記Mwの上限としては、30000が好ましく、20000がより好ましく、15000がさらに好ましく、10000が特に好ましい。[A]重合体のMwを上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物の塗工性を向上させることができ、その結果、LWR性能及びCDU性能をより向上させることができる。
【0073】
[A]重合体のGPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)に対するMwの比(Mw/Mn)の上限としては、3.00が好ましく、2.50がより好ましく、2.00がさらに好ましく、1.85が特に好ましい。上記比の下限としては、通常1.00であり、1.10が好ましい。
【0074】
なお、本明細書における重合体のMw及びMnは、以下の条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される値である。
GPCカラム:東ソー(株)の「G2000HXL」2本、「G3000HXL」1本及び「G4000HXL」1本
溶出溶媒 :テトラヒドロフラン
流量 :1.0mL/分
試料濃度 :1.0質量%
試料注入量 :100μL
カラム温度 :40℃
検出器 :示差屈折計
標準物質 :単分散ポリスチレン
【0075】
当該感放射線性樹脂組成物の[D]溶媒以外の全成分における[A]重合体の含有割合の下限としては、50質量%が好ましく、70質量%がより好ましく、80質量%がさらに好ましい。[A]重合体は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0076】
[[A]重合体の合成方法]
[A]重合体は、例えば各構造単位を与える単量体を、公知の方法で重合することにより合成することができる。
【0077】
<[B]酸発生体>
[B]酸発生体は、放射線の照射により酸を発生する成分である。放射線としては、例えば可視光線、紫外線、遠紫外線、EUV、X線、γ線等の電磁波;電子線、α線等の荷電粒子線などが挙げられる。[B]酸発生体から発生する酸の作用により、感放射線性樹脂組成物における[A]錯体の現像液への溶解性等の変化をより促進することができ、その結果、解像度及びLWRをより向上させることができる。当該感放射線性樹脂組成物における[B]酸発生体の含有形態としては、低分子化合物の形態(以下、「[B]酸発生剤」ともいう)でも、[A]重合体等の重合体の一部として組み込まれた形態でも、これらの両方の形態でもよい。
【0078】
[B]酸発生剤としては、例えばオニウム塩化合物、N-スルホニルオキシイミド化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物等が挙げられる。
【0079】
オニウム塩化合物としては、例えばスルホニウム塩、テトラヒドロチオフェニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられる。
【0080】
スルホニウム塩としては、例えばトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ-n-オクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル-1,1,2,2-テトラフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホネート、4-シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート、4-メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム1,1,2,2-テトラフルオロ-6-(1-アダマンタンカルボニロキシ)-ヘキサン-1-スルホネート(後述する実施例の式(B-4)で表される化合物)、トリフェニルスルホニウム2-(1-アダマンチル)-1,1-ジフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2-(アダマンタン-1-イルカルボニルオキシ)-1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロパン-1-スルホネート(後述する実施例の式(B-3)で表される化合物)、トリフェニルスルホニウムマレエート等が挙げられる。この他、後述する実施例の式(B-1)、(B-5)で表される化合物等が挙げられる。
【0081】
テトラヒドロチオフェニウム塩としては、例えば1-(4-n-ブトキシナフタレン-1-イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1-(4-n-ブトキシナフタレン-1-イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート、1-(4-n-ブトキシナフタレン-1-イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ-n-オクタンスルホネート、1-(4-n-ブトキシナフタレン-1-イル)テトラヒドロチオフェニウム2-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル-1,1,2,2-テトラフルオロエタンスルホネート(後述する実施例の式(B-2)で表される化合物)、1-(4-n-ブトキシナフタレン-1-イル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート、1-(6-n-ブトキシナフタレン-2-イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート、1-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート等が挙げられる。
【0082】
ヨードニウム塩としては、例えばジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ-n-オクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウム2-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル-1,1,2,2-テトラフルオロエタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムカンファースルホネート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート等が挙げられる。
【0083】
N-スルホニルオキシイミド化合物としては、例えばN-トリフルオロメチルスルホニルオキシフタルイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)-1,8-ナフタルイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(ノナフルオロ-n-ブチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(パーフルオロ-n-オクチルスルホニルオキシ)-1,8-ナフタルイミド、N-(パーフルオロ-n-オクチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(2-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(2-(3-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル)-1,1-ジフルオロエチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(カンファースルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド等が挙げられる。
【0084】
[B]酸発生剤としては、これらの中で、スルホニウム塩又はテトラヒドロチオフェニウム塩が好ましく、上記した式(B-1)~式(B-5)で表される化合物がより好ましい。この他、[B]酸発生剤としては、例えば特開2018-013744号公報に[B]酸発生体として例示されたもの等が挙げられる。
【0085】
[B]酸発生体が[B]酸発生剤である場合、[B]酸発生剤の含有量の下限としては、[A]重合体100質量部に対して、0.1質量部が好ましく、1質量部がより好ましく、2質量部がさらに好ましく、5質量部が特に好ましい。上記含有量の上限としては、100質量部が好ましく、60質量部がより好ましく、40質量部がさらに好ましく、30質量部が特に好ましい。[B]酸発生剤の含有量を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物の露光光に対する感度をより向上させることができ、また、LWR性能及びCDU性能をより向上させることができる。当該感照射線性樹脂化合物は、1種又は2種以上の[B]酸発生体を含有することができる。
【0086】
また、[B]酸発生体としては、酸発生体の構造が[A]重合体の一部として組み込まれた重合体も挙げられる。
【0087】
<[C]酸拡散制御体>
当該感放射線性樹脂組成物は、任意成分として[C]酸拡散制御体を含有する。[C]酸拡散制御体は、露光により[B]酸発生剤等から生じる酸のレジスト膜中における拡散現象を制御し、非露光領域における好ましくない化学反応を制御する効果を奏する。当該感放射線性樹脂組成物における[C]酸拡散制御体の含有形態としては、低分子化合物(以下、適宜「[C]酸拡散制御剤」ともいう)の形態でも、[A]重合体等の重合体の一部として組み込まれた形態でも、これらの両方の形態でもよい。
【0088】
[C]酸拡散制御剤としては、例えば露光により感光し弱酸を発生する光崩壊性塩基等が挙げられる。光崩壊性塩基としては、例えば露光により分解する感放射線性オニウムカチオンと弱酸のアニオンとを含む化合物等が挙げられる。光崩壊性塩基は、露光部において、感放射線性オニウムカチオンが分解して生じるプロトンと、弱酸のアニオンとから弱酸が発生するので、酸拡散制御性が低下する。光崩壊性塩基としては、例えば後述する実施例に記載された式(C-1)~式(C-4)で表される化合物等が挙げられる。この他、[C]酸拡散制御剤としては含窒素化合物が挙げられる。この含窒素化合物としては、具体的には、後述する実施例に記載された式(C-5)で表される化合物等が挙げられる。これら光崩壊性塩基及び含窒素化合物以外の[C]酸拡散制御剤の具体例としては、例えば特開2018-013744号公報にて[D]酸拡散制御剤として例示されたもの等が挙げられる。
【0089】
当該感放射線性樹脂組成物が[C]酸拡散制御剤を含有する場合、[C]酸拡散制御剤の含有量の下限としては、[A]重合体成分100質量部に対して、0.1質量部が好ましく、0.5質量部がより好ましく、1質量部がさらに好ましい。上記含有量の上限としては、20質量部が好ましく、10質量部がより好ましく、5質量部がさらに好ましい。
【0090】
[C]酸拡散制御剤の含有割合の下限としては、[B]酸発生剤100モル%に対して、1モル%が好ましく、5モル%がより好ましく、10モル%がさらに好ましい。上記含有割合の上限としては、250モル%が好ましく、150モル%がより好ましく、100モル%がさらに好ましい。
【0091】
[C]酸拡散制御剤の含有量及び含有割合を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物の露光光に対する感度、LWR性能及びCDU性能をより向上させることができる。当該感放射性樹脂組成物は1種又は2種以上の[C]酸拡散制御体を含有することができる。
【0092】
<[D]溶媒>
当該感放射線性樹脂組成物は、通常[D]溶媒を含有する。[D]溶媒は、少なくとも[A]重合体、[B]酸発生体及び所望により含有される任意成分を溶解又は分散可能な溶媒であれば特に限定されない。
【0093】
[D]溶媒としては、例えばアルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0094】
アルコール系溶媒としては、例えば4-メチル-2-ペンタノール等の炭素数1~18の脂肪族モノアルコール系溶媒、シクロヘキサノール等の炭素数3~18の脂環式モノアルコール系溶媒、1,2-プロピレングリコール等の炭素数2~18の多価アルコール系溶媒、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル等の炭素数3~19の多価アルコール部分エーテル系溶媒等が挙げられる。
【0095】
エーテル系溶媒としては、例えばジエチルエーテル等のジアルキルエーテル系溶媒、テトラヒドロフラン等の環状エーテル系溶媒、ジフェニルエーテル等の芳香環含有エーテル系溶媒等が挙げられる。
【0096】
ケトン系溶媒としては、例えばアセトン等の鎖状ケトン系溶媒、シクロヘキサノン等の環状ケトン系溶媒、2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン等が挙げられる。
【0097】
アミド系溶媒としては、例えばN,N’-ジメチルイミダゾリジノン等の環状アミド系溶媒、N-メチルホルムアミド等の鎖状アミド系溶媒等が挙げられる。
【0098】
エステル系溶媒としては、例えば乳酸エチル等のモノカルボン酸エステル系溶媒、酢酸プロピレングリコール等の多価アルコールカルボキシレート系溶媒、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒、シュウ酸ジエチル等の多価カルボン酸ジエステル系溶媒、γ-ブチロラクトン等のラクトン系溶媒、ジメチルカーボネート等のカーボネート系溶媒などが挙げられる。
【0099】
炭化水素系溶媒としては、例えばn-ペンタン等の炭素数5~12の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン等の炭素数6~16の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0100】
これらの中で、ケトン系溶媒又はエステル系溶媒が好ましく、環状ケトン系溶媒、モノカルボン酸エステル系溶媒、多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒又はラクトン系溶媒がより好ましく、シクロヘキサノン、乳酸エチル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル又はγ-ブチロラクトンがさらに好ましい。当該感放射線性樹脂組成物は、1種又は2種以上の[D]溶媒を含有することができる。
【0101】
当該感放射線性樹脂組成物における[D]溶媒の含有割合の下限としては、50質量%が好ましく、60質量%がより好ましく、70質量%がさらに好ましい。上記含有割合の上限としては、99.9質量部が好ましく、99.5質量部が好ましく、99質量部がさらに好ましい。
【0102】
[D]溶媒の含有量の下限としては、[A]重合体100質量部に対して、100質量部が好ましく、500質量部がより好ましく、1000質量部がさらに好ましい。上記含有量の上限としては、20000質量部が好ましく、15000質量部がより好ましく、10000質量部がさらに好ましい。
【0103】
<[E]重合体>
[E]重合体は、[A]重合体よりもフッ素原子の合計質量含有割合が大きい重合体である。ベース重合体となる重合体より疎水性が高い重合体は、レジスト膜表層に偏在化する傾向があり、[E]重合体は[A]重合体よりもフッ素原子の合計質量含有割合が大きいため、この疎水性に起因する特性により、レジスト膜表層に偏在化する傾向がある。また、この疎水性に起因する特性により、レジスト膜と液浸媒体との後退接触角が大きくなる。よって、当該感放射線性樹脂組成物は、[E]重合体を含有することで液浸露光法に好適で、欠陥の発生が抑制されたレジストパターンを形成することができる。
【0104】
[E]重合体中のフッ素原子の含有割合の下限としては、1質量%が好ましく、2質量%がより好ましく、3質量%がさらに好ましい。上記質量含有割合の上限としては、60質量%が好ましく、50質量%がより好ましく、40質量%がさらに好ましい。フッ素原子の合計質量含有割合を上記範囲とすることで、[E]重合体のレジスト膜における偏在化をより適度に調整することができる。なお、重合体中のフッ素原子の合計質量含有割合は、13C-NMRスペクトル測定により重合体の構造を求め、その構造から算出することができる。
【0105】
[E]重合体がフッ素原子を含む重合体の場合、[E]重合体におけるフッ素原子の含有形態は特に限定されず、主鎖、側鎖及び末端のいずれに結合するものでもよいが、構造単位(T)以外の構造単位であってフッ素原子を有する構造単位(以下、「構造単位(F)」ともいう)を有することが好ましい。
【0106】
[構造単位(F)]
構造単位(F)としては例えば下記式(f-1)で表される構造単位等が挙げられる。
【0107】
【化12】
【0108】
上記式(f-1)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Gは、単結合、酸素原子、硫黄原子、-COO-、-SONH-、-CONH-又は-OCONH-である。Rは、フッ素原子を含む炭素数1~18の1価の有機基である。
【0109】
上記Rとしては、構造単位(F)を与える単量体の共重合性の観点から、水素原子又はメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。上記Gとしては-COO-、-SONH-、-CONH-又は-OCONH-が好ましく、-COO-がより好ましい。
【0110】
構造単位(F)としては、例えば後述する実施例に記載された式(m-14)~式(m-16)で表される化合物を単量体とする構造単位等が挙げられる。
【0111】
構造単位(F)の含有割合の下限としては、[E]重合体を構成する全構造単位に対して、10モル%が好ましく、20モル%がより好ましく、30モル%がさらに好ましい。上記含有割合の上限としては、100モル%が好ましく、90モル%がより好ましく、85モル%がさらに好ましい。構造単位(F)の含有割合を上記範囲とすることで、[E]重合体のフッ素原子の質量含有割合をさらに適度に調整することができる。
【0112】
[E]重合体は、酸解離性基を含む構造単位及び/又はアルコール性水酸基を含む構造単位を有することが好ましい。酸解離性基を含む構造単位としては、例えば上記[A]重合体の構造単位(I)として例示した構造単位等が挙げられる。アルコール性水酸基を含む構造単位としては、例えば上記[A]重合体の構造単位(III)として例示した構造単位等が挙げられる。
【0113】
酸解離性基を含む構造単位の含有割合の下限としては、[E]重合体を構成する全構造単位に対して、5モル%が好ましく、10モル%がより好ましい。上記含有割合の上限としては、60モル%が好ましく、50モル%がより好ましく、40モル%がさらに好ましい。
【0114】
アルコール性水酸基を含む構造単位の含有割合の下限としては、[E]重合体を構成する全構造単位に対して、10モル%が好ましく、15モル%がより好ましく、20モル%がさらに好ましい。上記含有割合の上限としては、60モル%が好ましく、50モル%がより好ましく、40モル%がさらに好ましい。
【0115】
[その他の構造単位]
[E]重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で他の構造単位を有していてもよい。上記他の構造単位の含有割合としては、目的に応じて適宜決定することができる。
【0116】
[E]重合体のGPCによるMwの下限としては、1000が好ましく、3000がより好ましく、4000がさらに好ましく、5000が特に好ましい。上記Mwの上限としては、50000が好ましく、20000がより好ましく、10000がさらに好ましく、8000が特に好ましい。
【0117】
[E]重合体のGPCによるMnに対するMwの比(Mw/Mn)の比の上限としては、5.00が好ましく、3.00がより好ましく、2.50がさらに好ましく、2.00が特に好ましい。上記比の下限としては、通常1.00であり、1.20が好ましい。
【0118】
[E]重合体の含有量の下限としては、[A]重合体100質量部に対して、0.1質量部が好ましく、1質量部がより好ましく、2質量部がさらに好ましい。上記含有量の上限としては、20質量部が好ましく、10質量部がより好ましく、7.5質量部がさらに好ましい。当該感放射線性樹脂組成物は[E]重合体を1種又は2種以上含有していてもよい。
【0119】
[E]重合体は、例えば各構造単位を与える単量体を、公知の方法で重合することにより合成することができる。
【0120】
<その他の任意成分>
その他の任意成分としては、例えば界面活性剤等が挙げられる。当該感放射線性樹脂組成物は、その他の任意成分をそれぞれ1種又は2種以上含有していてもよい。
【0121】
<感放射線性樹脂組成物の調製方法>
当該感放射線性樹脂組成物は、例えば[A]重合体、[B]酸発生体及び必要に応じて、[C]酸拡散制御体、[D]溶媒、[E]重合体等の任意成分を所定の割合で混合し、好ましくは得られた混合物を孔径0.2μm以下のメンブランフィルターでろ過することにより調製することができる。
【0122】
当該感放射線性樹脂組成物は、アルカリ現像液を用いるポジ型パターン形成用にも、有機溶媒含有現像液を用いるネガ型パターン形成用にも用いることができる。当該感放射線性樹脂組成物は、ArFエキシマレーザー光を露光するArF露光用にも、極端紫外線(EUV)を露光するEUV露光用にも、電子線を露光する電子線露光用にも好適に用いることができる。
【0123】
<レジストパターン形成方法>
当該レジストパターン形成方法は、基板に直接又は間接に当該感放射線性樹脂組成物を塗工する工程(以下、「塗工工程」ともいう)と、上記塗工工程により形成されたレジスト膜を露光する工程(以下、「露光工程」ともいう)と、上記露光されたレジスト膜を現像する工程(以下、「現像工程」ともいう)とを備える。
【0124】
当該レジストパターン形成方法によれば、上述の当該感放射線性樹脂組成物を用いているので、露光光に対する感度が良好であり、LWR及びCDUが小さいレジストパターンを形成することができる。以下、各工程について説明する。
【0125】
[塗工工程]
本工程では、基板に直接又は間接に当該感放射線性樹脂組成物を塗工する。これによりレジスト膜が形成される。基板としては、例えばシリコンウエハ、二酸化シリコン、アルミニウムで被覆されたウェハ等の従来公知のもの等が挙げられる。また、例えば特公平6-12452号公報や特開昭59-93448号公報等に開示されている有機系又は無機系の反射防止膜を基板上に形成してもよい。塗工方法としては、例えば回転塗工(スピンコーティング)、流延塗工、ロール塗工等が挙げられる。塗工した後に、必要に応じて、塗膜中の溶媒を揮発させるため、プレベーク(PB)を行ってもよい。PBの温度の下限としては、60℃が好ましく、80℃がより好ましい。上記温度の上限としては、150℃が好ましく、140℃がより好ましい。PBの時間の下限としては、5秒が好ましく、10秒がより好ましい。上記時間の上限としては、600秒が好ましく、300秒がより好ましい。形成されるレジスト膜の平均厚みの下限としては、10nmが好ましく、20nmがより好ましい。上記平均厚みの上限としては、1000nmが好ましく、500nmがより好ましい。
【0126】
[露光工程]
本工程では、上記塗工工程により形成されたレジスト膜を露光する。この露光は、フォトマスクを介して(場合によっては、水等の液浸媒体を介して)露光光を照射することにより行う。露光光としては、目的とするパターンの線幅等に応じて、例えば可視光線、紫外線、遠紫外線、EUV(波長13.5nm)、X線、γ線等の電磁波、電子線、α線等の荷電粒子線などが挙げられる。これらの中でも、遠紫外線、EUV又は電子線が好ましく、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)、KrFエキシマレーザー光(波長248nm)、EUV又は電子線がより好ましく、ArFエキシマレーザー光又はEUVがさらに好ましい。なお、露光量等の露光条件は、当該感放射線性樹脂組成物の配合組成、添加剤の種類、露光光の種類等に応じて適宜選定することができる。
【0127】
上記露光の後、ポストエクスポージャーベーク(PEB)を行い、レジスト膜の露光された部分において、露光で発生した酸に起因する[A]重合体が有する酸解離性基の解離を促進させることが好ましい。このPEBによって、露光部と未露光部とで現像液に対する溶解性の差異を増大させることができる。PEBの温度の下限としては、50℃が好ましく、80℃がより好ましい。上記温度の上限としては、180℃が好ましく、130℃がより好ましい。PEBの時間の下限としては、5秒が好ましく、10秒がより好ましく、30秒がさらに好ましい。上記時間の上限としては、600秒が好ましく、300秒がより好ましく、100秒がさらに好ましい。
【0128】
[現像工程]
本工程では、上記露光されたレジスト膜を現像する。これにより、所定のレジストパターンを形成することができる。現像後は、水又はアルコール等のリンス液で洗浄し、乾燥することが一般的である。現像工程における現像方法は、アルカリ現像液を用いるアルカリ現像であっても、有機溶媒含有現像液を用いる有機溶媒現像であってもよい。
【0129】
アルカリ現像の場合、現像に用いるアルカリ現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ-[4.3.0]-5-ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ水溶液等が挙げられる。これらの中で、TMAH水溶液が好ましく、2.38質量%TMAH水溶液がより好ましい。
【0130】
有機溶媒現像の場合、有機溶媒含有現像液としては、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒等の有機溶媒、上記有機溶媒を含有する溶媒等が挙げられる。上記有機溶媒としては、例えば上述の[D]溶媒として例示した溶媒の1種又は2種以上等が挙げられる。これらの中でも、エステル系溶媒又はケトン系溶媒が好ましい。エステル系溶媒としては、酢酸エステル系溶媒が好ましく、酢酸n-ブチルがより好ましい。ケトン系溶媒としては、鎖状ケトンが好ましく、2-ヘプタノンがより好ましい。現像液中の有機溶媒の含有割合の下限としては、80質量%が好ましく、90質量%がより好ましく、95質量%がさらに好ましく、99質量%が特に好ましい。現像液中の有機溶媒以外の成分としては、例えば水、シリコーンオイル等が挙げられる。
【0131】
現像方法としては、例えば現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出し続ける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
【0132】
当該レジストパターン形成方法により形成されるパターンとしては、例えばラインアンドスペースパターン、ホールパターン等が挙げられる。
【0133】
<重合体>
当該重合体は、上記式(1)で表される構造単位(T)を有する[A]重合体である。当該重合体は、上述した当該感放射線性樹脂組成物の成分として好適に用いることができる。当該重合体は、上述の[A]重合体として説明している。
【0134】
<化合物>
当該化合物は、上記式(i)で表される化合物(M)である。当該化合物は、上述の化合物(M)として説明している。
【実施例
【0135】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。各種物性値の測定方法を以下に示す。
【0136】
[重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)]
重合体のMw及びMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、東ソー(株)のGPCカラム(「G2000HXL」2本、「G3000HXL」1本、及び「G4000HXL」1本)を使用し、以下の条件により測定した。また、分散度(Mw/Mn)は、Mw及びMnの測定結果より算出した。
溶出溶媒 :テトラヒドロフラン
流量 :1.0mL/分
試料濃度 :1.0質量%
試料注入量:100μL
カラム温度:40℃
検出器 :示差屈折計
標準物質 :単分散ポリスチレン
【0137】
13C-NMR分析]
重合体の13C-NMR分析は、核磁気共鳴装置(日本電子(株)の「JNM-Delta400」)を用いて行った。
【0138】
<[M]化合物(単量体)の合成>
[合成例1](化合物(M-1)の合成)
反応容器に2-(ブロモメチル)アクリル酸エチル20.0mmol、アリルアルコール30.0mmol、トリエチルアミン40.0mmol及び酢酸エチル50gを加えて60℃で3時間撹拌した。その後、反応溶液を30℃以下に冷却し、水を加えて希釈させたのち、酢酸エチルを加えて抽出し、有機層を分離した。得られた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液、次いで水で洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去した。カラムクロマトグラフィーで精製することで、アルコキシ誘導体を良好な収率で得た。
【0139】
上記アルコキシ誘導体にメタノール:水(1:1(質量比))の混合液を加えて1M溶液とした後、水酸化ナトリウム18.5mmolを加え、50℃で4時間反応させた。その後、反応溶液を30℃以下に冷却し、1M塩酸を加えて系内を酸性とした。酢酸エチルを加えて抽出し、有機層を分離した。得られた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液、次いで水で洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去し、カルボン酸誘導体を良好な収率で得た。
【0140】
上記カルボン酸誘導体に1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩30.0mmol、4-ジメチルアミノピリジン3.0mmol、1-メチルシクロペンチル-2-ヒドロキアセテート30.0mmol及びジクロロメタン50gを加えて50℃で24時間撹拌した。その後、反応溶液を30℃以下に冷却し、水を加えて希釈させたのち、ジクロロメタンを加えて抽出し、有機層を分離した。得られた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液、次いで水で洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去した。カラムクロマトグラフィーで精製することで、下記式(M-1)で表される化合物(以下、「化合物(M-1)」又は「単量体(M-1)」と記載する場合がある。)を良好な収率で得た。以下に、化合物(M-1)の合成スキームを示す。
【0141】
【化13】
【0142】
[合成例2~40](単量体(M-2)~単量体(M-40)の合成)
原料及び前駆体を適宜変更したこと以外は合成例1と同様にして、下記式(M-2)~式(M-40)で表される化合物を合成した。以下、式(M-2)~式(M-40)で表される化合物をそれぞれ「化合物(M-2)」~「化合物(M-40)」又は「単量体(M-2)」~「単量体(M-40)」と記載する場合がある。
【0143】
【化14】
【0144】
【化15】
【0145】
<[A]重合体及び[E]重合体の合成>
各重合体の合成で用いた単量体のうち、上記単量体(M-1)~単量体(M-40)以外の単量体を以下に示す。なお、以下の合成例においては特に断りのない限り、質量部は使用した単量体の合計質量を100質量部とした場合の値を意味し、モル%は使用した単量体の合計モル数を100モル%とした場合の値を意味する。
【0146】
【化16】
【0147】
[合成例41](重合体(A-1)の合成)
単量体(M-2)及び単量体(m-5)を、モル比率が50/50(モル%)となるよう2-ブタノン(200質量部)に溶解し、開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)(使用した単量体の合計100モル%に対して4モル%)を添加して単量体溶液を調製した。空の反応容器に2-ブタノン(100質量部)を入れ、30分窒素パージした後、反応容器内を80℃とし、撹拌しながら上記単量体溶液を3時間かけて滴下した。滴下開始を重合反応の開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合反応終了後、重合溶液を水冷して30℃以下に冷却した。冷却した重合溶液をメタノール(2,000質量部)中に投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別した白色粉末をメタノールで2回洗浄した後、ろ別し、50℃で15時間乾燥して白色粉末状の重合体(A-1)を得た(収率:85%)。重合体(A-1)のMwは8,100であり、Mw/Mnは1.55であった。また、13C-NMR分析の結果、(M-2)及び(m-5)に由来する各構造単位の含有割合は、それぞれ51.2モル%及び48.8モル%であった。
【0148】
[合成例42~88](重合体(A-2)~重合体(A-48)の合成)
下記表1、表2及び表3に示す種類及び配合割合の単量体を用いたこと以外は合成例41と同様にして、重合体(A-2)~重合体(A-48)を合成した。得られた重合体の各構造単位の含有割合(モル%)及び物性値(Mw及びMw/Mn)を下記表1~表3に併せて示す。なお、下記表1~表3における「-」は、該当する単量体を使用しなかったことを示す。
【0149】
【表1】
【0150】
【表2】
【0151】
【表3】
【0152】
[合成例89](重合体(A-49)の合成)
単量体(M-2)、単量体(m-2)及び単量体(m-18)を、モル比率が10/40/50(モル%)となるよう1-メトキシ-2-プロパノール(200質量部)に溶解し、開始剤としてAIBN(4モル%)を添加して単量体溶液を調製した。反応容器に1-メトキシ-2-プロパノール(100質量部)を入れ、30分窒素パージした後、反応容器内を80℃とし、撹拌しながら上記単量体溶液を3時間かけて滴下した。滴下開始を重合反応の開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合反応終了後、重合溶液を水冷して30℃以下に冷却した。冷却した重合溶液をヘキサン(2,000質量部)中に投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別した白色粉末をヘキサンで2回洗浄した後、ろ別し、1-メトキシ-2-プロパノール(300質量部)に溶解した。次いで、メタノール(500質量部)、トリエチルアミン(50質量部)及び超純水(10質量部)を加え、撹拌しながら70℃で6時間加水分解反応を実施した。反応終了後、残溶媒を留去した。得られた固体をアセトン(100質量部)に溶解し、水(500質量部)の中に滴下して樹脂を凝固させた。得られた固体をろ別し、50℃で13時間乾燥させて白色粉末状の重合体(A-49)を得た(収率:80%)。重合体(A-49)のMwは7,800であり、Mw/Mnは1.58であった。また、13C-NMR分析の結果、(M-2)、(m-2)及び(m-18)に由来する各構造単位の含有割合は、それぞれ9.9モル%、38.8モル%及び51.3モル%であった。
【0153】
[合成例90~96](重合体(A-50)~重合体(A-56)の合成)
下記表4及び表5に示す種類及び配合割合の単量体を用いたこと以外は合成例89と同様にして、重合体(A-50)~重合体(A-56)を合成した。得られた重合体の各構造単位の含有割合(モル%)及び物性値(Mw及びMw/Mn)を下記表4及び表5に併せて示す。
【0154】
【表4】
【0155】
【表5】
【0156】
[合成例97](重合体(E-1)の合成)
単量体(m-1)及び単量体(m-16)を、モル比率が20/80(モル%)となるよう2-ブタノン(200質量部)に溶解し、開始剤としてAIBN(5モル%)を添加して単量体溶液を調製した。反応容器に2-ブタノン(100質量部)を入れ、30分窒素パージした後、反応容器内を80℃とし、撹拌しながら上記単量体溶液を3時間かけて滴下した。滴下開始を重合反応の開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合反応終了後、重合溶液を水冷して30℃以下に冷却した。溶媒をアセトニトリル(400質量部)に置換した後、ヘキサン(100質量部)を加えて撹拌しアセトニトリル層を回収する作業を3回繰り返した。溶媒をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに置換することで、重合体(E-1)の溶液を得た(収率:78%)。重合体(E-1)のMwは6,000であり、Mw/Mnは1.62であった。また、13C-NMR分析の結果、(m-1)及び(m-16)に由来する各構造単位の含有割合は、それぞれ19.9モル%及び80.1モル%であった。
【0157】
[合成例98~100](重合体(E-2)~重合体(E-4)の合成)
下記表6に示す種類及び配合割合の単量体を用いたこと以外は合成例97と同様にして、重合体(E-2)~重合体(E-4)を合成した。得られた重合体の各構造単位の含有割合(モル%)及び物性値(Mw及びMw/Mn)を下記表6に併せて示す。
【0158】
【表6】
【0159】
<感放射線性樹脂組成物の調製>
各感放射線性樹脂組成物の調製に用いた[A]重合体及び[E]重合体以外の成分を以下に示す。
【0160】
[[B]酸発生剤]
B-1~B-5:下記式(B-1)~式(B-5)で表される化合物
【0161】
【化17】
【0162】
[[C]酸拡散抑制剤]
C-1~C-5:下記式(C-1)~式(C-5)で表される化合物
【0163】
【化18】
【0164】
[[D]溶媒]
D-1:酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル
D-2:シクロヘキサノン
D-3:γ-ブチロラクトン
D-4:乳酸エチル
【0165】
[ArF露光用ポジ型感放射線性樹脂組成物の調製]
[実施例1]
[A]重合体としての(A-1)100質量部、[B]酸発生剤としての(B-4)14.0質量部、[C]酸拡散制御剤としての(C-1)2.3質量部、[E]重合体としての(E-1)5.0質量部(固形分)、並びに[D]溶媒としての(D-1)/(D-2)/(D-3)の混合溶媒3,230質量部を混合し、孔径0.2μmのメンブランフィルターで濾過することにより、感放射線性樹脂組成物(J-1)を調製した。
【0166】
[実施例2~47、及び比較例1~11]
下記表7及び表8に示す種類及び含有量の各成分を用いたこと以外は実施例1と同様にして、感放射線性樹脂組成物(J-2)~(J-47)及び(CJ-1)~(CJ-11)を調製した。
【0167】
【表7】
【0168】
【表8】
【0169】
<ArF露光用ポジ型感放射線性樹脂組成物を用いたレジストパターンの形成>
12インチのシリコンウエハ上に、スピンコーター(東京エレクトロン(株)の「CLEAN TRACK ACT12」)を使用して、下層反射防止膜形成用組成物(ブルワーサイエンス社の「ARC66」)を塗布した後、205℃で60秒間加熱することにより平均厚さ105nmの下層反射防止膜を形成した。この下層反射防止膜上に上記スピンコーターを使用して上記調製したArF露光用ポジ型感放射線性樹脂組成物を塗布し、90℃で60秒間PB(プレベーク)を行った。その後、23℃で30秒間冷却することにより、平均厚さ90nmのレジスト膜を形成した。次に、このレジスト膜に対し、ArFエキシマレーザー液浸露光装置(ASML社の「TWINSCAN XT-1900i」)を用い、NA=1.35、Annular(σ=0.8/0.6)の光学条件にて、40nmスペース、105nmピッチのマスクパターンを介して露光した。露光後、90℃で60秒間PEB(ポストエクスポージャーベーク)を行った。その後、アルカリ現像液として2.38質量%のTMAH水溶液を用いて上記レジスト膜をアルカリ現像し、現像後に水で洗浄し、さらに乾燥させることでポジ型のレジストパターン(40nmラインアンドスペースパターン)を形成した。また、マスクパターンを代えたこと以外は上述の操作と同様にして、ポジ型のレジストパターン(40nmホール、105nmピッチ)を形成した。
【0170】
<評価>
上記ArF露光用感放射線性樹脂組成物を用いて形成したレジストパターンについて、感度、CDU性能及びLWR性能を下記方法に従って評価した。その結果を下記表9に示す。なお、レジストパターンの測長には、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ(株)の「CG-5000」)を用いた。
【0171】
[感度]
上記ArF露光用感放射線性樹脂組成物を用いたレジストパターンの形成において、40nmラインアンドスペースパターンを形成する露光量を最適露光量とし、この最適露光量を感度(mJ/cm)とした。感度は、25mJ/cm以下の場合は「良好」と、25mJ/cmを超える場合は「不良」と評価した。
【0172】
[CDU性能]
40nmホール、105nmピッチのレジストパターンを、上記走査型電子顕微鏡を用い、パターン上部から任意のポイントで計1800個測長した。寸法のバラつき(3σ)を求め、これをCDU性能(nm)とした。CDUは、その値が小さいほど、長周期でのホール径のばらつきが小さく良好であることを示す。CDU性能は、4.0nm以下の場合は「良好」と、4.0nmを超える場合は「不良」と評価した。
【0173】
[LWR性能]
上記感度の評価で求めた最適露光量を照射して40nmラインアンドスペースパターンを形成するようにマスクサイズを調整して、レジストパターンを形成した。形成したレジストパターンを、上記走査型電子顕微鏡を用い、パターン上部から観察した。線幅のばらつきを計500点測定し、その測定値の分布から3シグマ値を求め、この3シグマ値をLWR(nm)とした。LWRは、その値が小さいほど、ラインのラフネスが小さく良好であることを示す。LWR性能は、3.5nm以下の場合は「良好」と、3.5nmを超える場合は「不良」と評価した。
【0174】
【表9】
【0175】
表9の結果から明らかなように、実施例の感放射線性樹脂組成物は、ArF露光に用いた場合、感度、CDU性能及びLWR性能が良好であったのに対し、比較例では、各特性が実施例に比べて劣っていた。従って、実施例の感放射線性樹脂組成物をArF露光に用いた場合、高い感度でCDU性能及びLWR性能が良好なレジストパターンを形成することができる。
【0176】
[極端紫外線(EUV)露光用感放射線性樹脂組成物の調製]
[実施例48]
[A]重合体としての(A-48)100質量部、[B]酸発生剤としての(B-4)14.0質量部、[C]酸拡散制御剤としての(C-1)2.3質量部、[E]重合体としての(E-4)5.0質量部、並びに[D]溶媒としての(D-1)/(D-4)の混合溶媒6,110質量部を混合し、孔径0.2μmのメンブランフィルターで濾過することにより、感放射線性樹脂組成物(J-48)を調製した。
【0177】
[実施例49~60及び比較例12~14]
下記表10に示す種類及び含有量の各成分を用いたこと以外は実施例48と同様にして、感放射線性樹脂組成物(J-49)~(J-60)及び(CJ-12)~(CJ-14)を調製した。
【0178】
【表10】
【0179】
<EUV露光用感放射線性樹脂組成物を用いたレジストパターンの形成>
12インチのシリコンウエハ上に、スピンコーター(東京エレクトロン(株)の「CLEAN TRACK ACT12」)を使用して、下層反射防止膜形成用組成物(ブルワーサイエンス社の「ARC66」)を塗布した後、205℃で60秒間加熱することにより平均厚さ105nmの下層反射防止膜を形成した。この下層反射防止膜上に上記スピンコーターを使用して上記調製したEUV露光用感放射線性樹脂組成物を塗布し、130℃で60秒間PBを行った。その後、23℃で30秒間冷却することにより、平均厚さ55nmのレジスト膜を形成した。次に、このレジスト膜に対し、EUV露光装置(ASML社の「NXE3300」)を用い、NA=0.33、照明条件:Conventional s=0.89、マスク:imecDEFECT32FFR02にて露光した。露光後、120℃で60秒間PEBを行った。その後、アルカリ現像液として2.38質量%のTMAH水溶液を用いて上記レジスト膜をアルカリ現像し、現像後に水で洗浄し、さらに乾燥させることでポジ型のレジストパターン(32nmラインアンドスペースパターン)を形成した。
【0180】
<評価>
上記EUV露光用感放射線性樹脂組成物を用いて形成したレジストパターンについて、感度及びLWR性能を下記方法に従って評価した。その結果を下記表11に示す。なお、レジストパターンの測長には、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ(株)の「CG-5000」)を用いた。
【0181】
[感度]
上記EUV露光用感放射線性樹脂組成物を用いたレジストパターンの形成において、32nmラインアンドスペースパターンを形成する露光量を最適露光量とし、この最適露光量を感度(mJ/cm)とした。感度は、30mJ/cm以下の場合は「良好」と、30mJ/cmを超える場合は「不良」と評価した。
【0182】
[LWR性能]
上記感度の評価で求めた最適露光量を照射して32nmラインアンドスペースのパターンを形成するようにマスクサイズを調整して、レジストパターンを形成した。形成したレジストパターンを、上記走査型電子顕微鏡を用い、パターン上部から観察した。線幅のばらつきを計500点測定し、その測定値の分布から3シグマ値を求め、この3シグマ値をLWR(nm)とした。LWRは、その値が小さいほど、ラインのがたつきが小さく良好であることを示す。LWR性能は、3.5nm以下の場合は「良好」と、3.5nmを超える場合は「不良」と評価した。
【0183】
【表11】
【0184】
表11の結果から明らかなように、実施例の感放射線性樹脂組成物は、EUV露光に用いた場合、感度及びLWR性能が良好であったのに対し、比較例では、各特性が実施例に比べて劣っていた。
【0185】
[ArF露光用ネガ型感放射線性樹脂組成物の調製、この組成物を用いたレジストパターンの形成及び評価]
[実施例61]
[A]重合体としての(A-1)100質量部、[B]酸発生剤としての(B-4)14.0質量部、[C]酸拡散制御剤としての(C-1)2.3質量部、[E]重合体としての(E-3)2.0質量部(固形分)、並びに[D]溶媒としての(D-1)/(D-2)/(D-3)の混合溶媒3,230質量部を混合し、孔径0.2μmのメンブランフィルターで濾過することにより、感放射線性樹脂組成物(J-61)を調製した。
【0186】
12インチのシリコンウエハ上に、スピンコーター(東京エレクトロン(株)の「CLEAN TRACK ACT12」)を使用して、下層反射防止膜形成用組成物(ブルワーサイエンス社の「ARC66」)を塗布した後、205℃で60秒間加熱することにより平均厚さ105nmの下層反射防止膜を形成した。この下層反射防止膜上に上記スピンコーターを使用して上記調製したArF露光用ネガ型感放射線性樹脂組成物(J-61)を塗布し、90℃で60秒間PB(プレベーク)を行った。その後、23℃で30秒間冷却することにより、平均厚さ90nmのレジスト膜を形成した。次に、このレジスト膜に対し、ArFエキシマレーザー液浸露光装置(ASML社の「TWINSCAN XT-1900i」)を用い、NA=1.35、Annular(σ=0.8/0.6)の光学条件にて、40nmスペース、105nmピッチのマスクパターンを介して露光した。露光後、90℃で60秒間PEB(ポストエクスポージャーベーク)を行った。その後、有機溶媒現像液として酢酸n-ブチルを用いて上記レジスト膜を有機溶媒現像し、乾燥させることでネガ型のレジストパターン(40nmラインアンドスペースパターン)を形成した。
【0187】
上記ArF露光用ネガ型感放射線性樹脂組成物を用いたレジストパターンについて、上記ArF露光用ポジ型感放射線性樹脂組成物を用いたレジストパターンの評価と同様にして評価した。その結果、実施例61の感放射線性樹脂組成物は、ArF露光にてネガ型のレジストパターンを形成した場合においても、感度、CDU性能及びLWR性能が良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0188】
本発明の感放射線性樹脂組成物及びレジストパターン形成方法によれば、露光光に対する感度が良好であり、LWR性能及びCDU性能に優れるレジストパターンを形成することができる。本発明の重合体は、当該感放射線性樹脂組成物の重合体成分として好適に用いることができる。本発明の化合物は、当該重合体の単量体として好適に用いることができる。したがって、これらは、今後さらに微細化が進行すると予想される半導体デバイスの加工プロセス等に好適に用いることができる。