(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
B65G 35/06 20060101AFI20240910BHJP
B65G 35/08 20060101ALI20240910BHJP
B62D 65/18 20060101ALN20240910BHJP
【FI】
B65G35/06 B
B65G35/08 Z
B62D65/18 C
(21)【出願番号】P 2022049131
(22)【出願日】2022-03-24
【審査請求日】2024-02-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】小川 教喜
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】実開平2-120426(JP,U)
【文献】特開昭63-112310(JP,A)
【文献】国際公開第2006/016502(WO,A1)
【文献】特開平2-286510(JP,A)
【文献】特開平10-194283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 35/06
B65G 35/08
B62D 65/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨物を搭載する移動体であって、起立状態において前記貨物を支持する起伏可能な治具を上面に有する移動体と、
搬送路に沿って前記移動体を搬送する搬送部と、
搬送される前記移動体の前記治具の起立と倒伏との少なくとも一方を行う治具操作部と、を備え、
前記治具は、強磁性を有する磁性体を有し、
前記治具操作部は、
前記磁性体に対し着脱可能な電磁石と、
前記電磁石を移動させる押引部と、を有し、
前記治具操作部は、前記電磁石を前記磁性体に接着させた状態において前記電磁石を移動させて、前記治具の起立と倒伏との少なくとも一方を行う搬送装置。
【請求項2】
前記治具は、倒伏状態において、少なくとも一部が前記移動体の内部に格納される請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記治具操作部は、搬送される前記移動体の周囲に配置される請求項1または2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記搬送路の下方に位置する返送路に沿って、前記搬送部による移動体の搬送方向と反対方向に前記移動体を搬送する返送部と、
前記移動体を前記搬送路から前記返送路に受け渡す下降部と、
前記移動体を前記返送路から前記搬送路に受け渡す上昇部と、をさらに備えた請求項1から3の何れか1項に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記治具操作部を、前記搬送路の始端側と終端側とにそれぞれ備え、
前記搬送路の始端側の前記治具操作部が前記治具を起立させ、前記搬送路の終端側の前記治具操作部が前記治具を倒伏させる請求項1から4の何れか1項に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記治具が、
アームと、
前記アームの一端側を前記移動体の上面に回動可能に拘束するシャフトと、
前記アームの前記シャフトと反対の側の他端側に位置し、前記治具が前記起立状態にある場合に前記貨物と当接して該貨物を支持する当接部と、
前記アームと回動可能に連結し、前記磁性体を有する連結部と、
を有する請求項1から5の何れか1項に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記移動体が、複数の治具と、少なくとも一つの治具レールと、を有し、
少なくとも一つの治具が、前記治具レールに沿って前記移動体上を移動する可動治具である請求項1から6の何れか1項に記載の搬送装置。
【請求項8】
少なくとも一つの前記治具操作部の前記電磁石が、前記可動治具の前記治具レールに沿った移動に併せて移動する請求項7に記載の搬送装置。
【請求項9】
前記移動体が、前記治具レールの延伸方向に沿って複数形成された凸部を有する凹凸部を有し、
前記可動治具が、前記起立状態において前記凹凸部と係合し、倒伏状態において前記凹凸部との係合が解除される突出部を有し、
前記可動治具の前記突出部と前記凹凸部とが係合する状態において、前記可動治具の前記移動体上の位置が固定され、前記可動治具の前記突出部と前記凹凸部との係合が解除された状態において、前記可動治具が前記治具レール上を可動である請求項7または8に記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は搬送装置、特に、貨物を移動体上に積載した状態にて当該移動体を搬送することにより貨物を搬送する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被搬送物を支持する昇降自在の支持部を有する可動体を一定経路に沿って搬送する搬送装置について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された可動体の支持部を昇降させるためには、作業者等が支持部を直接操作する等、手動にて支持部の昇降を行う必要があり、可動体の搬送に必要な作業が増加する。支持部を昇降させる機構を別途設ける場合、搬送装置全体の構成が複雑化する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る搬送装置は、貨物を搭載する移動体であって、起立状態において前記貨物を支持する起伏可能な治具を上面に有する移動体と、搬送路に沿って前記移動体を搬送する搬送部と、搬送される前記移動体の前記治具の起立と倒伏との少なくとも一方を行う治具操作部と、を備え、前記治具は、強磁性を有する磁性体を有し、前記治具操作部は、前記磁性体に対し着脱可能な電磁石と、前記電磁石を移動させる押引部と、を有し、前記治具操作部は、前記電磁石を前記磁性体に接着させた状態において前記電磁石を移動させて、前記治具の起立と倒伏との少なくとも一方を行う。
【発明の効果】
【0006】
搬送装置全体の複雑化を低減しつつ治具の起伏を自動化できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の実施形態1に係る治具操作部による治具の操作を説明するための、パレットおよび治具操作部の拡大側面図である。
【
図2】本開示の実施形態1に係る搬送装置の概略斜視図、概略平面図、および概略側面図である。
【
図3】本開示の実施形態1に係るパレットの概略斜視図、および概略側面図である。
【
図4】本開示の実施形態1に係る治具の概略側面図である。
【
図5】本開示の実施形態2に係る搬送装置の概略斜視図、概略平面図、および概略側面図である。
【
図6】本開示の実施形態2に係るパレットの概略斜視図である。
【
図7】本開示の実施形態2に係るパレットの拡大平面図である。
【
図8】本開示の実施形態2に係る治具操作部による治具の操作を説明するための、パレットおよび治具操作部の拡大側面図、およびパレットの拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔実施形態1〕
<搬送装置:概要>
本実施形態においては、貨物を積載した移動体を一定経路に沿って搬送することにより貨物を搬送する搬送装置について説明する。特に、本実施形態に係る搬送装置は、移動体上に自動車等の車体を貨物として積載し、当該車体を搬送する搬送装置である。本実施形態に係る搬送装置について、
図2を参照して説明する。
【0009】
図2は、本実施形態に係る搬送装置2の概略斜視
図202、概略平面
図204、および概略側面
図206をそれぞれ示す図である。
図2においては、搬送装置2によって搬送される車体Xについても併せて図示する。なお、概略平面
図204、および概略側面
図206については、後述する下降部10および上昇部12のそれぞれの近傍を拡大して示し、また、概略斜視
図202に全体を示す搬送装置2の一部を省略して示す。
【0010】
搬送装置2は、貨物を搭載する移動体としてのパレット4と、搬送部6と、返送部8と、下降部10と、上昇部12と、治具操作部14とを備える。搬送装置2は、搬送部6、返送部8、下降部10、および上昇部12により一定経路に沿ってパレット4を搬送する。また、搬送装置2は、後述する方法により、車体Xを積載したパレット4を搬送部6によって搬送することにより、車体Xを搬送する。
【0011】
<搬送装置:パレット>
パレット4について、
図3を参照しさらに詳細に説明する。
図3は、パレット4の概略斜視
図302、後述する起立状態のパレット4Uの概略側面
図304、および倒伏状態のパレット4Dの概略側面
図306をそれぞれ示す図である。
【0012】
パレット4は、枠体16と、踏板18と、治具20とを有する。パレット4は、例えば、複数の踏板18を枠体16の開口に嵌合して有する。例えば、パレット4は、後述する方法により車体Xを保持しつつ、踏板18上に作業者等が移乗して、搬送される車体Xに対する部品の組付け等の作業が可能となるように構成されていてもよい。
【0013】
なお、本実施形態においては、枠体16の長手方向をパレット4の前後方向DAとし、パレット4の上面において前後方向DAと直交する方向を左右方向DBとする。また、パレット4は前後方向DAに搬送されるものとする。
【0014】
治具20は、例えば、枠体16に複数形成されており、踏板18に形成された開口からパレット4の上面側に突出するように配置される。治具20は、後に詳述するが、当接部22と、先端に当接部22を有する起伏可能なアームである治具アーム24を有する。
【0015】
概略側面
図304に示すように、治具アーム24が起立状態の場合、治具20は起立状態の治具20Uとなり、パレット4は起立状態のパレット4Uとなる。パレット4Uは、当接部22上に車体Xを配置して、当接部22と車体Xとを当接させることにより、車体Xを支持可能である。概略側面
図306に示すように、治具アーム24が倒伏状態の場合、治具20は倒伏状態の治具20Dとなり、パレット4は倒伏状態のパレット4Dとなる。パレット4Dの高さはパレット4Uよりも低減する。治具20の詳細、および治具20を起伏させる具体的な方法については後述する。
【0016】
なお、本実施形態において、搬送装置2は、パレット4を移動体として搬送し、パレット4上の車体Xを搬送するが、これに限られない。例えば、搬送装置2は、移動体として、レール上を回転駆動する車輪を有する台車を搬送することにより、当該台車上の車体Xを搬送してもよい。
【0017】
<搬送装置:搬送部、返送部>
図2の参照に戻ると、搬送部6は、搬送方向DTに延伸する搬送路6Wに沿って、搬送方向DTに起立状態のパレット4Uを搬送する。搬送装置2は、起立状態のパレット4Uに車体Xを積載し、当該パレット4Uを搬送部6により搬送方向DTに搬送することにより、車体Xを搬送方向DTに搬送する。搬送部6は、例えば、複数の搬送ユニット6Uを搬送方向DTに配列して備える。搬送部6は、ある搬送ユニット6Uから搬送方向DTに隣接する搬送ユニット6Uへのパレット4Uの受け渡しを繰り返すことにより、パレット4Uを搬送方向DTに輸送する。
【0018】
搬送路6Wの始端に位置するパレット4U上には、図示しない投入装置により搬送された車体Xが積載される。また、搬送路6Wの終端に位置するパレット4U上からは、図示しない取り出し装置により車体Xが取り出される。後述する方法により、搬送路6Wの始端には、車体Xが積載されていないパレット4Uが搬送される。搬送装置2は、例えば、車体Xを積載された搬送路6Wの始端に位置するパレット4Uを搬送部6により順次搬送してもよい。当該方法により、搬送装置2は、同時に複数の車体Xを搬送部6により搬送してもよい。上述の通り、搬送部6により搬送されるパレット4U上には作業者が移乗してもよく、当該作業者は搬送される車体Xに対する部品の組付け等の作業を行ってもよい。
【0019】
返送部8は、搬送方向DTと反対方向である返送方向DRに延伸する返送路8Wに沿って、返送方向DRに倒伏状態のパレット4Dを搬送する。返送路8Wは、搬送路6Wの下方に位置し、平面視において少なくとも一部が搬送路6Wと重なる。搬送装置2は、倒伏状態のパレット4Dを返送部8により返送方向DRに搬送することにより、パレット4Dを返送路8Wの上流側に搬送する。返送部8は、例えば、複数の返送ユニット8Uを返送方向DRに配列して備える。返送部8は、ある返送ユニット8Uから返送方向DRに隣接する返送ユニット8Uへのパレット4Dの受け渡しを繰り返すことにより、パレット4Dを返送方向DRに輸送する。
【0020】
搬送部6の各搬送ユニット6Uは、例えば、搬送路6Wに沿って延伸するレールと、当該レール上のパレット4Uを搬送方向DTに向かって搬送する動力部と、を有してもよい。また、返送部8の各返送ユニット8Uは、例えば、返送路8Wに沿って延伸するレールと、当該レール上のパレット4Dを返送方向DRに向かって搬送する動力部と、を有してもよい。なお、本実施形態において、搬送部6および返送部8が移動体を搬送する方法は上述した方法に限られない。例えば、搬送部6および返送部8は、車輪を有する台車のレール上における移動を制御することにより、当該台車の搬送を行ってもよい。
【0021】
<搬送装置:下降部、上昇部>
下降部10は、搬送路6Wの終端まで搬送されたパレット4を下降させ、パレット4を搬送路6Wの終端から返送路8Wの始端に受け渡す。上昇部12は、返送路8Wの終端まで搬送されたパレット4を上昇させ、パレット4を返送路8Wの終端から搬送路6Wの始端に受け渡す。これにより、搬送装置2は、搬送部6と、返送部8と、下降部10と、上昇部12とにより、パレット4を循環させる。
【0022】
上記構成により、搬送装置2は、搬送路6Wに沿って搬送したパレット4を、当該搬送路6Wの下方に位置する返送路8Wに沿って、搬送路6Wの上流側に搬送することにより、パレット4を循環させる。このため、搬送装置2は、同一平面上においてパレット4を循環させる場合と比較して、平面視における搬送装置2の寸法を低減できる。
【0023】
下降部10および上昇部12は、例えば、パレット4を積載可能なステージと、当該ステージを昇降可能な油圧ジャッキとを備えていてもよい。この場合、下降部10および上昇部12は、例えば、ステージと搬送部6または返送部8との間のパレット4の受け渡しのためにパレット4を搬送する動力部を有していてもよい。
【0024】
<搬送装置:治具操作部>
治具操作部14は、治具20の起立と倒伏との少なくとも一方を行う。特に本実施形態に係る搬送装置2は、下降部10と上昇部12とのそれぞれの近傍、換言すれば、搬送路6Wの始端側と終端側とに、複数の治具操作部14をそれぞれ備える。各治具操作部14は、下降部10または上昇部12に位置するパレット4の各治具20の起伏を可能な位置に配置される。特に、各治具操作部14は、搬送されるパレット4の周囲に配置され、換言すれば、パレット4上に配置されない。
【0025】
例えば、上昇部12の近傍、換言すれば、搬送路6Wの始端側に配置された治具操作部14は、上昇部12に位置するパレット4Dの治具20Dを起立させる。また、例えば、下降部10の近傍、換言すれば、搬送路6Wの終端側に配置された治具操作部14は、下降部10に位置するパレット4Uの治具20Uを倒伏させる。
【0026】
これにより、返送路8Wの終端まで搬送されたパレット4Dは、治具操作部14により治具アーム24が起立されることにより、パレット4Uとなる。また、搬送路6Wの終端まで搬送されたパレット4Uは、治具操作部14により治具アーム24が倒伏されることにより、パレット4Dとなる。これにより、搬送部6は常に起立状態のパレット4Uを搬送し、返送部8は常に倒伏状態のパレット4Dを搬送する。
【0027】
上記構成により、搬送装置2は、搬送路6Wの始端において治具20Dを起立させて、パレット4に貨物を積載可能な状態とし、搬送路6Wの終端、換言すれば貨物の搬送が完了したのち、治具20Uを倒伏させてパレット4の高さを低減できる。これにより、搬送装置2は、治具20Uによって車体Xを支持しつつ、搬送部6によってパレット4Uを搬送し、治具20Uが倒伏され高さが低減したパレット4Dを返送部8によって搬送できる。
【0028】
したがって、搬送装置2は、より確実にパレット4U上に車体Xを積載しつつ、搬送路6Wと返送路8Wとの上下距離を短縮し、搬送部6と返送部8との合計の高さを低減できる。搬送部6と返送部8との合計の高さを低減することにより、搬送装置2は、搬送部6によって搬送されるパレット4Uの踏板18の高さを低減し、当該パレット4Uに対する作業者等の昇降の負担を低減する。
【0029】
治具操作部14の詳細および治具操作部14による治具20の起立および倒伏の具体的な方法については後述する。
【0030】
<治具の構造>
治具20について、
図4を参照しより詳細に説明する。
図4は、パレット4が有する治具20の1つの側面を拡大した側面図である。特に、
図4に示す拡大側面図は、パレット4の前後方向DAから治具20の1つの側面をみた拡大側面図である。
図4の拡大側面
図402は、治具20Dの1つについての拡大側面図であり、
図4の拡大側面
図404は、治具20Uの1つについての拡大側面図である。
【0031】
治具20は、上述した通り、当接部22と治具アーム24とを有する。また、治具20は、さらに、シャフト26と、連結部28と、治具固定部30と、を有する。
【0032】
治具固定部30は、枠体16に固定され、パレット4の上面側に突出する。治具固定部30にはシャフト26が固定される。シャフト26は、治具アーム24の当接部22とは反対の側の端部において、治具アーム24を回動可能に拘束する。このため、治具アーム24は、シャフト26および治具固定部30を介して、パレット4の上面に固定されている。例えば、シャフト26は、パレット4の前後方向DAに延伸し、シャフト26周りに治具アーム24を回動可能に拘束する。
【0033】
連結部28は、例えば、治具アーム24の当接部22とシャフト26との間において、治具アーム24に回動可能に連結し、磁性体32を有する。特に、連結部28は、例えば、治具アーム24とは反対の側の端部に磁性体32を有する。磁性体32は強磁性を有し、磁性体32と磁石等の磁場を生じている物体との間には引力が生じる。なお、連結部28は磁性体32を端部に有するが、これに限られず、連結部28の全体が強磁性を有する磁性体からなっていてもよい。
【0034】
また、治具固定部30は、左右方向DBに延伸する開口部であるスリット34を有する。スリット34は連結部28を拘束する。特に、スリット34は、連結部28の磁性体32の側の端部を、スリット34の延伸方向に沿って移動可能に拘束する。例えば、スリット34は磁性体32を拘束する。このため、磁性体32はスリット34に沿って、換言すれば、左右方向DBに沿って移動可能に、治具固定部30に拘束される。
【0035】
また、スリット34は、連結部28を回動可能に拘束する。このため、連結部28は、スリット34に沿って移動しつつ、治具アーム24およびスリット34に対して回動することが可能である。したがって、連結部28がスリット34に沿って移動しつつ治具アーム24およびスリット34に対して回動し、治具アーム24がシャフト26周りに回動することにより、治具20は起伏する。
【0036】
ここで、磁性体32は、スリット34によって、スリット34の治具操作部54と反対の側の端部である第1端部E1から、スリット34の治具操作部54側の端部である第2端部E2までの間を移動可能に拘束される。スリット34は、磁性体32のスリット34の長手方向の位置を制限することにより、治具アーム24がシャフト26周りに回動する角度を制限する。
【0037】
例えば、磁性体32が第1端部E1に位置する場合、治具アーム24はシャフト26に対し治具操作部54と反対の側に延伸する倒伏位置に位置し、治具20は倒伏状態となる。また、磁性体32が、第2端部E2に位置する場合、治具アーム24は当接部22の上面が略水平となる方向に延伸する起立位置に位置し、治具20は起立状態となる。このため、スリット34は、治具アーム24の位置を倒伏位置から起立位置まで制限する。
【0038】
なお、治具20は、倒伏状態において、少なくとも一部がパレット4の内部に格納されてもよい。例えば、倒伏状態の治具20は、当接部22と治具アーム24とのそれぞれの一部が、パレット4の上面よりもパレット4の内部側に位置してもよい。これにより、治具20は、倒伏状態において、さらにパレット4の高さ方向における寸法を低減する。
【0039】
<治具操作部の構造>
治具操作部14の詳細および治具操作部14による治具20の起立および倒伏の具体的な方法について、
図1を参照して説明する。
図1は、パレット4および治具操作部14の拡大側面図である。特に、
図1においては、治具操作部14による治具20の操作が可能な位置にパレット4がある状態において、
図4に示す治具20の近傍を、パレット4の前後方向DAにみた拡大側面図である。
【0040】
なお、
図1においては、治具操作部14および当該治具操作部14によって起伏される治具20を除く他の部材の図示を省略している場合がある。また、
図1の拡大側面
図102は、倒伏状態の治具20Dおよび後述する伸長状態の治具操作部14を示し、
図1の拡大側面
図104は、起立状態の治具20Uおよび収縮状態の治具操作部14を示す。
【0041】
治具操作部14は、電磁石36と、電源38と、押引部40と、治具操作部アーム42と、治具操作部固定部44と、を有する。
【0042】
電磁石36は、電源38からの電圧印加によって磁場を生じさせる。電源38は、電磁石36への電圧印加の有無を切り替えることにより、電磁石36からの磁場の発生の有無を切り替える。電源38は、後述する押引部40を介して電磁石36に電圧印加を行ってもよく、動力部48が伸縮部46を移動させる動力を発生させるための電力を供給してもよい。治具操作部14による治具20Dの操作が可能な位置にパレット4Dがある場合、後述の通り、電磁石36は、電源38および後述する押引部40により、治具20の磁性体32に対し着脱可能に構成される。
【0043】
押引部40は、伸縮部46と、動力部48と、を有する。伸縮部46は、後述する動力部48から突出し、左右方向DBに沿って延伸し、治具20側の端部に電磁石36が固定されている。動力部48は、伸縮部46を左右方向DBに沿って移動させることにより、動力部48からの伸縮部46の突出距離を制御する。これにより、押引部40は、左右方向DBに沿って電磁石36を移動させる。
【0044】
治具操作部アーム42は、動力部48を固定し、治具操作部固定部44は治具操作部アーム42を固定する。これにより、動力部48の位置が固定され、左右方向DBにおける伸縮部46の動力部48からの突出距離および電磁石36の位置のみが、動力部48により変化する。
【0045】
<治具操作部による治具の起伏>
図1の拡大側面
図102に示すように、治具操作部14による治具20Dの操作が可能な位置にパレット4Dがあるとする。換言すれば、治具操作部14による操作が可能な治具20が倒伏状態の治具20Dであるとする。この状態において、動力部48の制御を通じて伸縮部46を治具20に向かって伸長させることにより、押引部40は電磁石36を治具20Dに向かって押し出し、第1端部E1に位置する磁性体32に接触させる。電磁石36が磁性体32に接するまで、伸縮部46が動力部48から伸長した状態において、治具操作部14は伸長状態となる。
【0046】
磁性体32と電磁石36とが接触している状態において、電源38が電磁石36への電圧印加を行うことにより、電磁石36は磁場を生じさせ、磁性体32を吸着する。これにより、治具操作部14は電磁石36を磁性体32に接着させる。電磁石36を磁性体32に接着させた状態において、動力部48の制御を通じて伸縮部46を収縮させることにより、押引部40は、電磁石36、および電磁石36が吸着する磁性体32を、治具20から治具操作部14への方向に移動させる。これにより、治具20の磁性体32は治具操作部14に引張される。
【0047】
磁性体32が治具操作部14により引張されることにより、第1端部E1に位置する磁性体32は第2端部E2に向かってスリット34上を移動する。これに伴い、連結部28が治具アーム24を引張することにより、治具アーム24がシャフト26周りに起立位置に向かって回動する。なお、電磁石36は、治具アーム24が起立位置に向かって回動する間、電磁石36と磁性体32との接触が解除されない程度の吸着力にて、磁性体32を吸着する。
【0048】
磁性体32が第2端部E2までスリット34上を移動することにより、治具アーム24は起立位置まで移動し、治具20は起立状態の治具20Uとなる。磁性体32が第2端部E2に移動するまで押引部40が電磁石36を移動させた状態において、
図1の拡大側面
図104に示すように、治具操作部14は収縮状態となる。以上により、治具操作部14は倒伏状態の治具20Dを起立させる。
【0049】
次に、治具操作部14による治具20の操作が可能な位置にパレット4があり、治具20が起立状態であるとする。この状態において、動力部48により伸縮部46を治具20に向かって伸長させることにより、押引部40は、電磁石36、および電磁石36と接する磁性体32を、治具操作部14から治具20への方向に押し出す。
【0050】
押引部40が電磁石36を移動させ、電磁石36を磁性体32に押し付けることにより、治具操作部14は電磁石36を磁性体32に接着させる。ここで、本明細書における「接着」とは、二部材が不分離に接する状態のみならず、一方が他方に単に押し付けられている状態を指してもよい。例えば、押引部40が電磁石36を押し出す際、電源38は電磁石36への電圧印加を行っていなくともよく、換言すれば、電磁石36は磁性体32を吸着しなくともよい。
【0051】
さらに、電磁石36を磁性体32に接着させた状態において、押引部40が磁性体32を治具20の側に移動させることにより、治具操作部14は、磁性体32を電磁石36により押し出す。これにより、第2端部E2に位置する磁性体32は第1端部E1に向かってスリット34上を移動する。これに伴い、連結部28が治具アーム24を押し出すことにより、治具アーム24がシャフト26周りに倒伏位置に向かって回動する。
【0052】
磁性体32が第1端部E1までスリット34上を移動することにより、治具アーム24は倒伏位置まで移動し、治具20は倒伏状態の治具20Dとなる。磁性体32が第1端部E1に移動するまで押引部40が電磁石36を押し出した状態において、治具操作部14は伸長状態となる。以上により、治具操作部14は起立状態の治具20Uを倒伏させる。
【0053】
<実施形態1のまとめ>
本実施形態に係る搬送装置2は、電磁石36を磁性体32に接着させた状態において、電磁石36を移動させることにより、治具20の起立と倒伏とを実現する治具操作部14を備える。このため、搬送装置2は、例えば、治具20の一部と治具操作部14の一部とを係合させる等の複雑な操作を要さず、治具操作部14による治具20の押引のみにより、治具20の起立または倒伏を実現する。したがって、搬送装置2は、搬送装置2全体の複雑化を低減しつつ、治具20の起伏を自動化できる。
【0054】
本実施形態に係る治具操作部14は、搬送されるパレット4の周囲に配置され、換言すれば、パレット4上に配置されない。このため、搬送装置2は、パレット4上の部材に動力を与えることなく、パレット4の周囲に位置する治具操作部14を介して治具20を操作することにより、治具20の起伏を実現する。したがって、搬送装置2は、パレット4上に治具20を起伏させるための動力部等を搭載する必要がない。例えば、搬送装置2は、パレット4のコストを低減する他に、作業者等が移乗するパレット4の上面の構造を簡素化し、パレット4上での作業者による作業をより快適とすることができる。
【0055】
本実施形態に係るパレット4の治具20は、当接部22を有しシャフト26周りに回動する治具アーム24と、磁性体32を有し治具アーム24と回動可能に連結する連結部28と、を有する。上記構成により、治具20は、治具操作部14が電磁石36を移動させることに伴う連結部28の動きを、治具アーム24のシャフト26周りの回動に変換する。換言すれば、搬送装置2は、治具操作部14が電磁石36を移動させるための力を、治具20を起伏させるための力に変換するために、別途動力部等を要しない。したがって、上記構成により、搬送装置2は、治具操作部14による電磁石36を移動させるための力を、効率よく治具20を起伏させるための力に変換できる。
【0056】
〔実施形態2〕
本開示の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0057】
<可動治具を有するパレット>
本実施形態に係る搬送装置50について、
図5を参照し説明する。
図5は、本実施形態に係る搬送装置50の概略斜視
図502、概略平面
図504、および概略側面
図506をそれぞれ示す図である。
図5においても、
図2と同じく、搬送装置2によって搬送される車体Xについても併せて図示する。また、概略平面
図504、および概略側面
図506については、概略平面
図204、および概略側面
図206と同じく、下降部10および上昇部12のそれぞれの近傍を拡大して示し、また、概略斜視
図502に全体を示す搬送装置50の一部を省略して示す。ここで、本実施形態に係る搬送装置50は、車体Xのみならず、概略平面
図504および概略側面
図506に示す、車体Xと形状および前後方向における長さである車長が異なる車体Yを併せて搬送する。
【0058】
本実施形態に係る搬送装置50は、前実施形態に係る搬送装置2と比較して、パレット4に代えてパレット52を備え、治具操作部14に代えて治具操作部54を備える点を除き、同一の構成を備える。搬送装置50は、搬送装置2と同じく、搬送部6、返送部8、下降部10、および上昇部12により一定経路に沿ってパレット52を搬送する。また、搬送装置50は、上述の方法により、車体Xを積載したパレット52を搬送部6によって搬送することにより、車体Xを搬送する。なお、後述するが、搬送装置50は、同一のパレット52を用いて車体Xと車体Yとの双方を搬送することが可能である。
【0059】
本実施形態に係るパレット52について、
図6を参照してより詳細に説明する。
図6は、パレット52の概略斜視図である。
図6においては、後述する起立状態のパレット52Uを示す。本実施形態に係るパレット52は、前実施形態に係るパレット4と比較して、少なくとも一部の治具20に代えて可動治具56を有する。さらに、パレット52は、パレット52上に形成されたレールとしての治具レール58と、係止部60と、を有する。以上を除き、本実施形態に係るパレット52は、前実施形態に係るパレット4と比較して、同一の構成を備える。
【0060】
可動治具56は、後述する方法により、パレット52上を移動可能な治具である。可動治具56は、治具20と同じく、治具アーム24が起立した状態において当接部22上に車体Xを支持可能であり、治具アーム24が倒伏した状態においてパレット52の高さを低減する。係止部60は、後述する方法により、可動治具56のパレット52上の位置を固定する。
【0061】
可動治具56、治具レール58、および係止部60について、
図7を参照しより詳細に説明する。
図7は、パレット52の上面のうち、
図6に示す領域Aについて拡大して示す拡大平面
図702と、当該領域Aと平面視において重なるパレット52の下面を拡大して示す拡大平面
図704と、を示す図である。換言すれば、拡大平面
図702と拡大平面
図704とは、可動治具56の近傍について、パレット52の上面と下面とをそれぞれ拡大して示す平面図である。
【0062】
パレット52は、例えば、一つの可動治具56に対し2本の治具レール58を有する。各治具レール58は、可動治具56の近傍の踏板18上に、パレット52の前後方向DAに沿って形成される。可動治具56は、例えば、2本の治具レール58上に形成され、当該治具レール58に沿って移動可能に構成される。特に、後述する理由から、可動治具56は、倒伏状態において治具レール58上を自由に移動可能である。
【0063】
係止部60は、起立状態の可動治具56Uを枠体16に対して固定するための部材である。係止部60は、開口62と、凹凸部64とを有する。開口62は、踏板18に形成された、長手方向を前後方向DAに有する開口である。凹凸部64は、開口62内に複数の凸部66を前後方向DAに沿って一定間隔をあけて複数配列して有する板状部材である。換言すれば、凹凸部64は治具レール58に沿った凹凸を開口62内に有する。
【0064】
可動治具56は、治具20と比較して、さらに突出部68を有する。突出部68は、例えば、治具アーム24のシャフト26に対し当接部22とは反対の側に形成される。可動治具56が起立状態である場合に、突出部68は、後述する方法により係止部60の凹凸部64と係合する。
【0065】
<可動の治具操作部の構造>
治具操作部54の詳細および治具操作部54による可動治具56の起立および倒伏の具体的な方法について、
図8を参照して説明する。
図8は、パレット52および治具操作部54の拡大側面図、およびパレット52の下面について拡大した拡大平面図である。
【0066】
図8に示す拡大側面
図802および拡大側面
図804は、それぞれ、
図1に示す拡大側面
図102および拡大側面
図104と対応する側面における、パレット52および治具操作部54の拡大側面図である。また、
図8に示す拡大平面
図806は、拡大側面
図804に示すパレット52Uの下面のうち、突出部68の近傍について拡大した図である。
【0067】
なお、
図8においては、
図1と同じく、治具操作部54および当該治具操作部54によって起伏される可動治具56を除く他の部材の図示を省略している場合がある。また、
図8の拡大側面
図802は、倒伏状態の可動治具56Dおよび後述する伸長状態の治具操作部54を示し、
図8の拡大側面
図804は、起立状態の可動治具56Uおよび収縮状態の治具操作部54を示す。
【0068】
本実施形態に係る治具操作部54は、前実施形態に係る治具操作部14と比較して、台車70と治具操作部レール72とをさらに有する点を除き、同一の構成を備える。
【0069】
本実施形態において、治具操作部アーム42は台車70に形成される。治具操作部レール72は、治具操作部固定部44上に形成される。治具操作部レール72の長手方向は、パレット52の前後方向DAに沿って形成される。換言すれば、治具操作部レール72は治具レール58の延伸方向に沿って配置される。台車70は、治具操作部レール72上を当該治具操作部レール72の長手方向に沿って移動する。例えば、台車70は、不図示の動力部によって駆動されることにより、治具操作部レール72上を移動してもよい。
【0070】
台車70が治具操作部レール72上を移動することにより、台車70に形成された治具操作部アーム42、治具操作部アーム42に形成された押引部40、および押引部40の伸縮部46の先端に形成された電磁石36が共に移動する。これにより、治具操作部54は、押引部40により電磁石36を左右方向DBに沿って移動させつつ、台車70の治具操作部レール72上の移動により電磁石36を治具操作部レール72に沿って移動させる。
【0071】
なお、本実施形態において、搬送装置50は、治具20に対応する位置においても、治具操作部54を備えていてもよい。一方、これに限られず、搬送装置50は、治具20に対応する位置においては、前実施形態に係る治具操作部14を備えていてもよい。
【0072】
<治具操作部による可動治具の起伏および移動>
図8の拡大側面
図802に示すように、治具操作部54による可動治具56Dの操作が可能な位置にパレット52Dがあるとする。換言すれば、治具操作部54による操作が可能な可動治具56が倒伏状態の可動治具56Dであるとする。この状態において、動力部48の制御を通じて伸縮部46を可動治具56Dに向かって伸長させ、電磁石36に磁性体32を吸着させることにより、治具操作部54は電磁石36を磁性体32に接着させる。
【0073】
倒伏状態の可動治具56Dにおいて、突出部68はシャフト26からおおよそ治具操作部54の方向に延伸するため、係止部60の凹凸部64との係合が解除されている。ここで、伸長状態の治具操作部54の電磁石36が、倒伏状態の可動治具56Dの磁性体32を吸着している状態において、台車70が不図示の動力部により治具操作部レール72上を移動したとする。この場合、電磁石36が磁性体32を引張することにより、可動治具56Dは、治具操作部54の電磁石36、押引部40、および治具操作部アーム42の治具操作部レール72に沿った移動と共に、治具レール58上を移動する。換言すれば、電磁石36は倒伏状態の可動治具56Dをパレット52の前後方向DAに沿って移動させる。
【0074】
さらに、伸長状態の治具操作部54の電磁石36が、倒伏状態の可動治具56Dの磁性体32を吸着している状態において、治具操作部54が動力部48の制御を通じて伸縮部46を収縮させたとする。この場合、第1端部E1に位置する磁性体32は第2端部E2に向かってスリット34上を移動する。
図8の拡大側面
図804に示すように、磁性体32が第2端部E2まで移動することにより、治具アーム24は起立位置まで移動し、可動治具56は起立状態の可動治具56Uとなる。
【0075】
ここで、治具アーム24がシャフト26周りに回動することにより、突出部68も共にシャフト26周りに回動する。治具アーム24が起立位置まで移動することにより、突出部68はシャフト26から下方に延伸し、開口62内に挿入される。
【0076】
ここで、治具アーム24が起立位置にある場合、
図8の拡大平面
図806に示すように、突出部68は凹凸部64の凸部66のうち、前後方向DAにおいて互いに隣接する2つの凸部66の間に挿入される。換言すれば、突出部68は、前後方向DAにおいて、当該2つの凸部66の間に拘束される。突出部68が挿入される2つの凸部66の位置は、可動治具56のパレット52上の位置によって異なる。
【0077】
これにより、起立状態の可動治具56Uにおいて、突出部68は凹凸部64と係合する。したがって、起立状態の可動治具56Uの突出部68と凹凸部64とが係合する状態において、治具レール58に沿った可動治具56Uの移動が制限されるため、可動治具56Uのパレット52U上の位置が固定される。
【0078】
次に、治具操作部54による可動治具56の操作が可能な位置にパレット52があり、可動治具56が起立状態であるとする。この状態において、動力部48により伸縮部46を可動治具56に向かって伸長させることにより、治具アーム24がシャフト26周りに倒伏位置に向かって回動する。磁性体32が第1端部E1に移動するまで押引部40が電磁石36を押し出すことにより、治具操作部54は起立状態の可動治具56Uを倒伏させる。
【0079】
治具アーム24が倒伏位置まで移動することにより、突出部68はシャフト26からおおよそ治具操作部54の方向に延伸する位置までシャフト周り26に回動し、突出部68と凹凸部64との係合が解除される。したがって、治具操作部54が可動治具56Uを倒伏させることにより、可動治具56は再び治具レール58上を移動可能となる。
【0080】
なお、治具20に対応する位置に形成された治具操作部54は、上述した方法と同一の方法によって、治具20の起伏が可能である。ただし、治具20はパレット52上の位置を固定されているため、治具操作部54は前後方向DAにおいてパレット52に対する位置を固定されていてもよい。
【0081】
<実施形態2のまとめ>
本実施形態に係る搬送装置50は、前実施形態に係る搬送装置2と同じく、治具操作部54を備える。本実施形態においても、治具操作部54は、電磁石36を磁性体32に接着させた状態において、電磁石36を移動させることにより、治具20および可動治具56の起立と倒伏とを行う。したがって、前実施形態にて説明した理由と同一の理由から、搬送装置50は、搬送装置50全体の複雑化を低減しつつ、治具20および可動治具56の起伏を自動化できる。
【0082】
さらに、本実施形態に係る可動治具56は、倒伏状態において、パレット52上の位置を治具レール58に沿って移動可能である。このため、パレット52は、搭載する貨物によって、治具20と可動治具56との位置関係がより適切となるように、可動治具56のパレット52上の位置を変更することができる。したがって、搬送装置50は、治具20および可動治具56によって支持すべき位置が互いに異なる複数種の貨物を、同一のパレット52によって搬送することが可能である。
【0083】
本実施形態において、搬送装置50は、車体Xおよび車体Yの車長に応じて当該車体Xおよび車体Yを搭載するパレット52上の可動治具56の位置を適切に変更することが可能である。したがって、搬送装置50は、車体Xおよび車体Yの車長に応じて複数種のパレットを備える必要がなく、効率よく車体Xおよび車体Yを搬送でき、また、搬送装置50のコストを低減できる。なお、本実施形態に係る搬送装置50は、車体Xおよび車体Yに限らず、他に形状または車長の異なる車体を搬送してもよく、換言すれば、3種類以上の車体を同一のパレット52によって搬送してもよい。
【0084】
本実施形態に係る治具操作部54は、治具操作部レール72を有する。また、治具操作部54の電磁石36は、可動治具56の治具レール58に沿った移動に併せて、治具操作部レール72に沿って移動する。上記構成により、搬送装置50は、可動治具56のパレット52上の位置によらず、同一の治具操作部54によって可動治具56を起伏させることができる。したがって、搬送装置50は、可動治具56のパレット52上の位置ごとに異なる治具操作部54を有する必要がなく、搬送装置50の複雑化を低減する。
【0085】
なお、本実施形態においては、電磁石36と、電磁石36を支持する押引部40および治具操作部アーム42とが、台車70と共に治具操作部レール72に沿って移動する構成について説明したが、これに限られない。換言すれば、搬送装置50は、治具操作部54の電磁石36を、種々の方法によって可動治具56と共に移動させてもよい。
【0086】
例えば、治具操作部54は、ねじ軸の延伸方向が治具レール58と略平行であるボールねじを有していてもよい。この場合、治具操作部アーム42は、ボールねじのねじ軸と嵌合するナット上に形成されていてもよい。この場合、治具操作部54は、ボールねじのねじ軸の回動を制御することにより、ねじ軸上のナットの位置を制御し、ひいては、電磁石36、押引部40、および治具操作部アーム42の治具レール58に沿った移動を制御してもよい。
【0087】
本実施形態において、凹凸部64と起立状態の可動治具56Uの突出部68とが係合するため、起立状態の可動治具56Uのパレット52上の位置が固定される。これにより、パレット52は、治具20および可動治具56に貨物を支持させた状態において可動治具56がパレット52上を移動することを低減し、より安定して貨物を支持できる。
【0088】
また、本実施形態において、凹凸部64と倒伏状態の可動治具56Dの突出部68との係合が解除されているため、倒伏状態の可動治具56Dはパレット52上を移動できる。これにより、パレット52は、治具20および可動治具56に貨物を支持させていない状態において、可動治具56のパレット52上の位置を容易に変更することができる。
【0089】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0090】
2、50 搬送装置
4、52 パレット(移動体)
6 搬送部
6W 搬送路
14、54 治具操作部
20 治具
22 当接部
24 治具アーム(アーム)
26 シャフト
28 連結部
32 磁性体
36 電磁石
40 押引部
56 可動治具
58 治具レール
64 凹凸部
66 凸部
68 突出部