(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】電子機器及びリスト機器
(51)【国際特許分類】
G04R 60/06 20130101AFI20240910BHJP
H01Q 1/24 20060101ALI20240910BHJP
H01Q 13/08 20060101ALI20240910BHJP
G04G 21/04 20130101ALI20240910BHJP
【FI】
G04R60/06
H01Q1/24 Z
H01Q13/08
G04G21/04
(21)【出願番号】P 2022179650
(22)【出願日】2022-11-09
(62)【分割の表示】P 2020159198の分割
【原出願日】2020-09-24
【審査請求日】2023-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2020053582
(32)【優先日】2020-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 貴司
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-86415(JP,A)
【文献】特開2012-118045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04R 60/06-60/12
G04G 21/04
H01Q 1/24
H01Q 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に形成されたアンテナ素子と、
GNDと同電位の導電部と、
前記アンテナ素子と前記導電部との間に介在する誘電体部材と、
を備え、
前記アンテナ素子と、前記誘電体部材と、前記導電部と、が平面視において重なり合うように配置され
、
前記誘電体部材は複数の誘電体部材により構成されることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記アンテナ素子よりも下方に設けられ、前記GNDと同電位の前記導電部として機能する本体ケースを備えることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記誘電体部材は、周面に凹部を有する第1の誘電体部材と、前記凹部内に設けられ前記第1の誘電体部材とは誘電率が異なる第2の誘電体部材により構成されることを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記誘電体部材は、前記アンテナ素子と前記本体ケースとの間に設けられた第3の誘電体部材と、第1の面で前記第3の誘電体部材と接し前記第1の面とは異なる第2の面で前記アンテナ素子と接する第4の誘電体部材で構成され、
前記第4の誘電体部材における前記第2の面にねじ部が形成され、前記ねじ部によって前記アンテナ素子とねじ止め固定されることを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
【請求項5】
前記第3の誘電体部材の剛性は、前記第4の誘電体部材の剛性より小さいことを特徴とする請求項4に記載の電子機器。
【請求項6】
前記本体ケースは金属材料で形成されることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の電子機器を含むことを特徴とするリスト機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器及びリスト機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、腕時計等の電子機器において、正確な時刻情報や位置情報等を取得するために衛星電波を受信することのできるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の電子機器では、本体ケース(特許文献1において筐体外装)の上部にリング状のアンテナが配置され、本体ケースの底面等がグランドプレーンとして機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アンテナは、本体ケースやGND等、その周辺に配置される部材を形成する材料や形状、配置等によって特性に影響を受ける。
このため、所望の特性(周波数、利得)を有するアンテナとして機能させることが難しかった。
【0005】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、良好なアンテナを実現することのできる電子機器及びリスト機器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明に係る電子機器は、
環状に形成されたアンテナ素子と、
GNDと同電位の導電部と、
前記アンテナ素子と前記導電部との間に介在する誘電体部材と、
を備え、
前記アンテナ素子と、前記誘電体部材と、前記導電部と、が平面視において重なり合うように配置され、
前記誘電体部材は複数の誘電体部材により構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、良好なアンテナを実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態における電子機器である時計本体の要部を示す斜視図である。
【
図3】第1の実施形態の一変形例における時計本体の要部を示す斜視図である。
【
図4】
図3に示す時計本体を側方から見た斜視図である。
【
図6】第1の実施形態の一変形例の要部断面斜視図である。
【
図7】第2の実施形態における電子機器である時計本体の要部を示す断面斜視図である。
【
図8】(a)は、
図7に示すものよりも本体ケースの内径が大きい場合を示す時計本体の要部を示す断面斜視図であり、(b)は、(a)に示すものよりもさらに本体ケースの内径が大きい場合を示す時計本体の要部を示す断面斜視図である。
【
図9】本体ケースの内径を変えた場合の周波数及び利得の変化についてシミュレーションした結果の傾向を示すグラフである。
【
図10】誘電体部材の形状のバリエーションを示す要部斜視図であり、(a)は、誘電体部材がアンテナ素子とほぼ同様の環状に形成されている例を示し、(b)は、誘電体部材が分断されている例を示し、(c)は、誘電体部材の内周に凹部が形成されている例を示し、(d)は、(c)に示す凹部に別部材を装着した例を示している。
【
図11】誘電体部材によって絶縁がとられている幅を変えた場合の周波数及び利得の変化についてシミュレーションした結果の傾向を示すグラフである。
【
図12】金属材料で形成された本体ケースにアンテナ素子を固定した例を示す側断面図である。
【
図13】
図12において一点鎖線で囲んだ領域XIIIを拡大したアンテナ素子の固定構造例を示す側断面図である。
【
図14】
図12で示すアンテナ素子の固定構造の一変形例を示す側断面図である。
【
図15】
図12で示すアンテナ素子の固定構造の一変形例を示す側断面図である。
【
図16】
図12で示すアンテナ素子の固定構造の一変形例を示す側断面図である。
【
図17】
図12で示すアンテナ素子の固定構造の一変形例を示す側断面図である。
【
図18】
図12で示すアンテナ素子の固定構造の一変形例を示す側断面図である。
【
図19】
図12で示すアンテナ素子の固定構造の一変形例を示す側断面図である。
【
図20】
図12で示すアンテナ素子の固定構造の一変形例を示す側断面図である。
【
図21】
図12で示すアンテナ素子の固定構造の一変形例を示す側断面図である。
【
図22】
図12で示すアンテナ素子の固定構造の一変形例を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1の実施形態]
図1及び
図2を参照しつつ、本発明に係る電子機器及びこれを適用したリスト機器の第1の実施形態について説明する。本実施形態では電子機器が時計本体であり、リスト機器は例えばこの時計本体にバンドを取り付けて腕に装着できるように構成した時計(腕時計)である。
なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0010】
図1は、本実施形態における電子機器である時計本体の要部を示す斜視図である。また、
図2は、
図1に示す時計本体の側断面図である。
図1及び
図2に示すように、本実施形態における時計本体100は、厚み方向における上下(時計における表裏)に開口する中空の短柱形状に形成されたケース(以下、実施形態において「本体ケース1」とする。)を備えている。なお、時計本体100の形状は特に限定されない。
本実施形態において、本体ケース1は、例えばABS樹脂等の硬質樹脂で形成されている。
なお、本体ケース1を形成する材料は樹脂に限定されず、例えばセラミックその他各種の材料を適用することができる。また、各種樹脂にカーボンフィラーやガラス繊維等を混練させた各種の複合材料であってもよい。このような複合材料によって本体ケース1を形成することで、本体ケース1の強度を向上させることができる。
【0011】
本体ケース1の表面側(時計における視認側、上側)の開口には、透明なガラス等で形成され、光透過性を有する風防部材2が開口部分を覆うように設けられている。
また、本体ケース1の裏面側には、開口部分を閉塞する裏蓋3が取り付けられている。
裏蓋3は、本体ケース1と同じ材料で形成されていてもよいが、異なる材料で形成されていてもよい。例えば本体ケース1が各種の樹脂で形成されている場合に、裏蓋3は金属で形成されていてもよい。
本実施形態では、裏蓋3を金属等の導電体で形成し、この金属製の裏蓋3がGNDとして機能する場合を例として説明する。すなわち、裏蓋3が、後述するアンテナ素子4よりも下方に配置されるGNDとなる。
【0012】
本体ケース1の上部には、アンテナ(例えばパッチアンテナ)を構成するアンテナ素子4が配置されている。これにより、本体ケース1は、アンテナ素子4とGNDとしての裏蓋3との間に介在する。本実施形態におけるアンテナ素子4は、環状に形成されたベゼル部材であり、所望の周波数の電波と共振状態となるように構成される。なお、アンテナ素子4の形状は図示例に限定されない。
アンテナ素子4を形成する材料は、特に限定されないが、形成材料の導電率が低い場合(抵抗率が高い場合)には、十分なアンテナ利得が得られない可能性がある。このため、アンテナ素子4を形成する材料は、導電率が一定程度以上(すなわち、抵抗率が一定程度以下)である金属材料を用いることが好ましく、例えばSUS(ステンレス鋼)やチタン等が好適に用いられる。また電子機器としての時計本体100があまり重くなることは好ましくないため、アンテナ素子4はできるだけ軽量な材料で形成されることが好ましい。
【0013】
アンテナ素子4を本体ケース1の上部に配置する場合、本体ケース1を形成する材料によってアンテナ特性に影響が生じる。
例えば、本体ケース1が樹脂材料で形成されている場合に、金属で形成されたアンテナ素子4を本体ケース1の上部に配置し、例えば金属製の裏蓋3をGNDとした場合、アンテナ素子4と、これに対向するGNDとの間に樹脂が存在することとなる。
樹脂は、一般的に、絶縁体であり、誘電率を持つ誘電体でもある。樹脂製の本体ケース1の上部にアンテナ素子4を配置した場合には、樹脂材料の誘電率や、厚み、形状、密着度、配置等により、アンテナとしての周波数やマッチング、円偏波軸比、円偏波周波数、利得が変化する。
それでも本体ケース1が樹脂材料のみで形成されている場合には、マッチングや配置を調整することで、ある程度対応することが可能である。しかし例えば、樹脂に導電性の繊維、カーボンフィラー等が混練されている場合、その抵抗により損失が発生し、アンテナとしての利得を著しく落としてしまうという問題がある。
【0014】
すなわち、アンテナ素子4を本体ケース1の上部に配置した場合、アンテナ素子4から本体ケース1を通じてGND(例えば裏蓋3)に対向するような形で電界が発生する。本体ケース1が、樹脂にカーボンフィラー等が混練された複合材料で形成されている場合には、このとき、電界が本体ケース1を通過することで損失が生じると考えられる。
【0015】
この点本実施形態では、本体ケース1の上部であってアンテナ素子4と対向する位置に導電部5を設ける。すなわち本実施形態において導電部5は、アンテナ素子4よりも下方であって少なくとも本体ケース1の上部に設けられる構成となる。
これにより、金属のシートや薄膜である導電部5を本体ケース1とアンテナ素子4との間に配置することにより、発生した電界が損失の発生する部分を通らない状態とすることができる。このため、損失の発生を抑えてアンテナ素子4を備えるアンテナの感度を維持することができる。
なお、導電部5は、本体ケース1よりも低抵抗の材料で形成されることが好ましい。具体的には、導電部5を形成する材料は、例えば各種の金属であり、できるだけ低抵抗であることが好ましい。具体的には、アルミニウム等が好適に適用される。なお、導電部5を形成する材料はこれに限定されず、低抵抗の導電体であれば各種の材料を適用することができる。
また導電部5の厚みは特に限定されず、シート状の部材や箔等を貼着するものでもよいし、各種の蒸着手法やめっき等によって形成される薄膜であってもよい。
【0016】
本体ケース1には、時計本体100等の電子機器の用途等に応じて各種の材料が用いられることが想定され、本体ケース1の材料によってアンテナ素子4のアンテナとしての性能が左右されるのは好ましくない。
この点、少なくとも本体ケース1の上部に導電部5を設けて、本体ケース1とアンテナ素子4との間に導電部5を配置することによってこの導電部5より下の本体ケース1の影響がアンテナ素子4に及ぶことを防止することができ、本体ケース1を形成する材料の自由度が向上する。
【0017】
導電部5は、少なくともアンテナ素子4が本体ケース1と対向する本体ケース1の上部(上端面)に設けられていればよいが、本実施形態では、
図2に示すように、本体ケース1の上部から本体ケース1の内側面までを覆うように導電部5を設けている。このような構成とした場合、導電部5を介してGND(例えばGNDとして機能する裏蓋3)に落とすことができる。
これにより、樹脂製の本体ケース1の上部にアンテナ素子4を配置した場合にも導電部5を介してGNDに落とすとともに、アンテナ素子4と導電部5との間に配置された誘電体部材6によって適当な波長短縮等を生じ、アンテナ素子4をアンテナ(パッチアンテナ等)として機能させることができる。
【0018】
また、導電部5は、本体ケース1の上部(上端面)から本体ケース1の内側面及び底面である裏蓋3の内側の面までを覆う構成としてもよい。この場合にも、導電部5を介してGNDとして機能する裏蓋3に落とすことができる。
【0019】
ただ、アンテナ素子4が直接に導電部5と接触すると短絡を起こしてしまう。このため、アンテナ素子4と導電部5との間には、絶縁性を有する部材を配することが必要である。本実施形態では樹脂等で形成された誘電体部材6を導電部5とアンテナ素子4との間に介在させ、導電部5とアンテナ素子4との接触を妨げるように構成する。
誘電体部材6は、アンテナ素子4に求められる機能に応じて、その特性及び形状が設定されることが好ましい。このように、誘電体部材6によって調整を行うことにより、アンテナ特性の調整を簡易に行うことができる。
【0020】
誘電体部材6は、絶縁性を有する材料で形成されていればよく、具体的な材料は特に限定されない。例えば誘電率の高い樹脂等が適用される。
なお、時計においては、ケース内部の水密を取ることが重要となる。このため、誘電体部材6によって本体ケース1とアンテナ素子4との間において水密を取る構成としてもよい。
例えば導電部5が蒸着手法やめっき等によって形成される薄膜である場合には、導電部5の上に誘電体部材6を配置してベゼルであるアンテナ素子4によって上方から押える構成としてもよい。
また、本体ケース1の上面に設ける導電部5を外周端部まで設けずに、導電部5の配置されていない部分で誘電体部材6により本体ケース1内部の水密を取る構成としてもよい。
【0021】
なお、誘電体部材6はアンテナ素子4が導電部5と接触しないようにアンテナ素子4を安定して支えられるだけの幅があればよく、必ずしも本体ケース1の上部に配置されている導電部5の全範囲を覆っていなくてもよい。
また、誘電体部材6に特に水密を保つ機能を求めない場合には、誘電体部材6は、必ずしも本体ケース1の上面の全周に亘って設けられていなくてもよい。
【0022】
また、本体ケース1の内部には、電気回路部71を備える基板7が収容される。電気回路部71は、例えば基板7の上に実装される図示しないLC回路等の共振回路や検波IC等である。
具体的には、基板7は例えば樹脂で形成された樹脂基板であり、電気回路部71は、基板7上に回路パターンを形成することで設けられる。
アンテナ素子4は第1のコネクタ73によって基板7の電気回路部71と接続されている。第1のコネクタ73は、例えばコイルばね等で構成されてもよい。
【0023】
第1のコネクタ73は給電用のコンタクト手段であり、アンテナ素子4は第1のコネクタ73を介して例えば基板7上に搭載された電気回路部71としてのLC回路等と接続される。
また、基板7の電気回路部71にはアンテナ素子4から第2のコネクタ74が接続されている。基板7の下面側には基板7をGNDとしての裏蓋3と電気的に接続させ、GNDに落とすためのコネクタ部材75が設けられている。
なお、本実施形態のように本体ケース1内の内側面にも導電部5が設けられている場合には、必ずしもコネクタ部材75を設けなくてもGNDに落とすことはできるが、より安定させるために所定位置にコネクタ部材75を配置してもよい。
【0024】
なお、図示は省略するが、本体ケース1内には、基板7以外にも各種の部材が収容される。
本体ケース1内に収容される部材としては、例えば時計本体100の図示しない表示部を構成する表示ユニットや時計本体の各部を動作させるモジュール等が想定される。
【0025】
次に、電子機器としての時計本体の作用について説明する。
【0026】
本実施形態の時計本体100を形成する場合、まず、本体ケース1の上端面から内側面にかけて、導電性の箔やシートを配置したり、薄膜を形成することにより、導電部5を設ける。そして、本体ケース1の裏面側の開口部に、開口を覆うように、GNDとして機能する金属製の裏蓋3を取り付ける。GNDとしての裏蓋3は、導電部5と電気的に接続される。
また、本体ケース1内に電気回路部71が搭載された基板7等を収容する。基板7と裏蓋3との間にはコネクタ部材75を配置して、基板7と裏蓋3とを電気的に接続させる。
【0027】
また、金属製のベゼル等であるアンテナ素子4を、本体ケース1の上部であって導電部5よりも上に配置する。アンテナ素子4には、給電用の第1のコネクタ73とGND用の第2のコネクタ74とが接続され、アンテナ素子4は、第1のコネクタ73及び第2のコネクタ74とを介して基板7と接続される。これにより、アンテナ素子4は、GNDとしての裏蓋3と電気的に接続される。
そして、導電部5とアンテナ素子7とが接触しないようにアンテナ素子4と導電部5との間に誘電体部材6を設ける。
さらに、本体ケース1の表面側の開口部を覆うように、風防部材2を取り付ける。
【0028】
アンテナ素子4に給電されてアンテナ素子4がアンテナとして機能した際には、GND接続された導電部がない場合、アンテナ素子4から本体ケース1を通じてGND(例えば裏蓋3)に対向するような形で電界が発生する。このように、アンテナ素子4とGNDとの間に本体ケース1が介在する場合、電界が本体ケース1を通過すると本体ケース1を形成する材料によっては大きな損失を発生させてしまう。
この点、本実施形態のように、本体ケース1とアンテナ素子4との間に導電部5を設けることで、発生した電界が本体ケース1を通過するのを回避することができ、損失の発生を抑えることができる。
【0029】
以上のように、本実施形態によれば、電子機器としての時計本体100が、環状に形成されたアンテナ素子4と、導電体で形成されてGNDと同電位の導電部5と、アンテナ素子4と導電部5との間に介在する誘電体部材6と、を備え、アンテナ素子4と、誘電体部材6と、導電部5と、が平面視において重なり合うように配置される。
本実施形態における具体的な構成としては、時計本体100は、アンテナ素子4と、アンテナ素子4よりも下方に設けられた本体ケース1と、アンテナ素子4よりも下方であって本体ケース1の上部に設けられた導電部5と、導電部5とアンテナ素子4との間に介在し導電部5とアンテナ素子4との接触を妨げる誘電体部材6と、アンテナ素子4及び導電部5と電気的に接続されるGNDとして機能する裏蓋3と、を備えている。
アンテナは、本体ケースやGND等、その周辺に配置される部材を形成する材料や形状、配置等によって特性に影響を受ける。すなわち、各種の周辺部材は、金属、樹脂又はこれらの複合材料等で形成され、これらの材料の性質は導電体、絶縁体、誘電体、磁性体等様々であり、これらの材料の特性、誘電率、透磁率、損失(tanδ)、導電率、それらの異方性が、アンテナ特性に影響する。
本体ケース1等は、各種の金属や樹脂等、様々な材料で形成されることがあり、材料が異なると、その性質も異なってくる。
このため、本体ケース1の上部等にアンテナ素子4を設ける場合には、本体ケース1を構成する材料によってアンテナ特性が左右されてしまい、所望の特性を有するアンテナとして機能させるためには、本体ケース1ごとに調整する必要が生じて、アンテナを汎用的に用いることができないという問題がある。
この点、本実施形態のような構成とすれば、例えば本体ケース1が、樹脂にカーボンフィラー等が混練された複合材料で形成されている場合等、アンテナ素子4から発生した電界が本体ケース1を通過すると大きな損失が発生するような材料で形成されている場合にも、電界が本体ケース1を通らない状態とすることができる。
このため、本体ケース1の材料特性の影響を抑えて、高利得のアンテナを実現することができる。すなわち、本体ケース1を形成する材料に関わらず、損失の発生を抑えてアンテナ素子4を備えるアンテナの感度を維持することができる。これにより、本体ケース1を形成する材料等について自由度が上がり、時計本体100についてバリエーション豊かな外観や質感を楽しむことができる。
【0030】
また、本実施形態では、導電部5は、本体ケース1の上面及び内面の少なくとも一部に設けられた導電体膜である。
このように、導電部5を導電体膜で構成する場合には、例えば蒸着、めっき等の手段を用いて容易に導電部5を構成することができる。
そして本体ケース1の内側面までを覆うように導電部5を設けた場合には、導電部5を介してGND(例えばGNDとして機能する裏蓋3)に落とすことができる。
【0031】
また、本実施形態のように、誘電体部材6の特性や形状を、アンテナ素子4に求められるアンテナとしての機能に応じて設定した場合には、例えば本体ケース1の形状等を変更しなくても、誘電体部材6を調整するだけで所望のアンテナ特性等を得ることができる。
【0032】
また、誘電体部材6は、本体ケース1の内部を水密とするための封止手段を兼ねてもよい。すなわち、誘電体部材6は、樹脂等で形成される部材であることから、防水パッキンのような形状とすることで封止手段とすることができる。
この場合には、別途部材を設けることなく、アンテナ素子4と導電部5との短絡を防ぐための部材を用いて本体ケース内を水密とすることができる。
【0033】
また、このような時計本体100を腕時計等のリスト機器に適用した場合には、各種の材料によって本体ケース1を形成することができるため、デザイン等の自由度も上がり、意匠性に富んだリスト機器を実現することができる。
そして、本体ケース1をどのような材料で形成した場合にもアンテナ特性を良好に保つことができる。
【0034】
なお、本実施形態では本体ケース1の上部にアンテナ素子4を配置した構成としたが、例えば本体ケース1の上部に、少なくともアンテナ素子4の一部を覆う外装部材を設けてもよい。
図3~
図5は、外装部材を設けた電子機器としての時計本体の構成例である。
図3は、外装部材を有する時計本体の上面側から見た斜視図であり、
図4は、
図3に示す時計本体の側面側から見た斜視図であり、
図4は
図3に示す時計本体の側断面図である。
なお、
図3~
図5において、
図1及び
図2と同様である部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0035】
図3に示すように、この場合の時計本体200は、ほぼ環状に形成された外装部材8を備えている。
図3等に示す例では、外装部材8がアンテナ素子4の全体を覆う場合を例示している。
外装部材8は、ほぼ環状に形成されたアンテナ素子4を覆うように配置される環状の部材本体81と、この部材本体81の外周端縁から垂設される垂設部82とを有している。
外装部材8は、例えば樹脂等で形成されており、色や質感をアレンジすることにより、意匠性に優れた時計本体200を実現することができる。
【0036】
外装部材8は、
図3~
図5に示すように、アンテナ素子4及び誘電体部材6を外部から視認されないように被覆する。
すなわち、
図4及び
図5に示すように、外装部材8の垂設部82はアンテナ素子4、導電部5及びこれらの間に介在する誘電体部材6を覆うように配置される。このため、外側面からアンテナ素子4、導電部5及び誘電体部材6が視認されるのを避けることができ、美観に優れた外観を実現することができる。
【0037】
図4及び
図5に示す例では、外装部材8の垂設部82は、その外周面が本体ケース1の外周面とほぼ面一となるように構成されている。
具体的には、
図5に示すように、本体ケース1の上端面の外周端を径方向の中央部寄りの部分よりも一段低くした段部11を形成し、この段部11に垂設部82が収まるように構成する。
このように構成することにより外観に優れるとともに、本体ケース1と外装部材8との間に段ができないことで、汚れ等が溜まりにくい。
【0038】
なお、
図5に示すように、誘電体部材6とは別に、本体ケース1内を水密とするための防水用のOリング61等を設けてもよい。この場合には、導電部を少なくともOリング61が設けられる位置の内側までしか設けないようにする。
これにより、より一層確実な水密構造を実現することができる。
【0039】
また、
図3~
図5に示す例では、アンテナ素子41(金属製のベゼル)が筒状部411と筒状部411の下端部から外側に向かって張り出すフランジ部412とを備えている。
筒状部411の内径は本体ケースの内径とほぼ同じとなっている。筒状部411の内側には風防部材2が嵌装されている。
風防部材2の取り付け方は特に限定されないが、例えば、筒状部411に圧入することで固定される。風防部材2と筒状部411の内周面との間に封止部材を設けてもよい。
金属材料で形成されるアンテナ素子41を筒状部411に圧入固定することで風防部材2の固定を行うことで、より強固な固定を実現することができる。
【0040】
また、フランジ部412は、導電部5が配置されている本体ケース1の上部(上端面)と対向配置されている。フランジ部412の下面と導電部5との間には誘電体部材6が配置されており、アンテナ素子41のフランジ部412が導電部5と接触することを避ける構成となっている。
【0041】
また、外装部材8の部材本体81には、周方向に沿って複数個所に貫通孔83が設けられており、貫通孔83には、外装部材8の上方から本体ケース1側に向かってビス84が挿通されるようになっている。
外装部材8は、アンテナ素子41と絶縁された状態で本体ケース1にビス止め固定される。
すなわち、ビス84が金属材料で形成されている場合、これがアンテナ素子41と接触すると短絡する。
このため、例えばアンテナ素子41には貫通孔83よりも大きめの貫通孔(図示せず)を形成し、当該貫通孔の内側に絶縁体で構成されたリング部材等を装着した上でビス止めを行う。これにより、金属製のビス84でビス止めを行った場合にもアンテナ素子41がビス84に接触せず、短絡を生じることなく外装部材8から本体ケース1までを固定することができる。
【0042】
なお、外装部材8は、アンテナ素子41と絶縁された状態で、かつ導電部5と導通状態となるようにビス止め固定されてもよい。この場合には、導電部5にはビス84と接触する程度の挿通孔を設けておき、ビス84が導電部5の挿通孔に挿通されることでビス84が導電部5と接触して導通する。
このような構成とした場合には、金属製のビス84をGNDとすることも可能である。
【0043】
さらに、本実施形態では、一体として1つの誘電体部材6を設ける場合を例示したが、誘電体部材6の構成はこれに限定されない。
例えば、
図6に示す時計本体300のように、誘電体部材60が第1の誘電体部材61、第2の誘電体部材62の2つの部材に分割されていてもよい。図示例では、第1の誘電体部材61は本体ケース1の上部に接して配置され、第2の誘電体部材62は本体ケース1の上端部の内周面に接して配置されている。
【0044】
図6に示す例では、アンテナ素子42である金属性のベゼルが、本体ケース1の上部(上端面)に対向配置される本体部421と、本体部421の内周側の端縁から垂設される第1の垂設部422と、本体部421の外周側の端縁から垂設される第2の垂設部423とを備えている。
この場合に、第1の誘電体部材61は本体ケース1の上部に配置されている導電部5とアンテナ素子42(アンテナ素子42の本体部421)との間に介在して、両者が接触することを防いでいる。
また、第1の誘電体部材61は、本体ケース1の内部を水密状態に保つ封止部材としての機能を有していてもよい。
なお、第1の誘電体部材61はアンテナ素子42が導電部5と接触しないようにアンテナ素子42を安定して支えられるだけの幅があればよく、必ずしも本体ケース1の上部に配置されている導電部5の全範囲を覆っていなくてもよい。
また、第1の誘電体部材61に特に水密を保つ機能を求めない場合には、第1の誘電体部材61は、必ずしも本体ケース1の上面の全周に亘って設けられていなくてもよい。
【0045】
また、第2の誘電体部材62は本体ケース1の内側面に配置されている導電部5とアンテナ素子42(アンテナ素子42の第1の垂設部422)との間に介在して、両者が接触することを防いでいる。
また、第2の誘電体部材62はアンテナ素子42のアンテナとしての特性を調整する部材として機能してもよい。
この場合には、第2の誘電体部材62の大きさ(断面積や厚み、幅等)や形状等を変えることで、所望のアンテナ特性を実現することができる。
【0046】
また、
図6に示す例では、アンテナ素子42のうち第1の垂設部422には、所定間隔でスリット424が設けられている。
アンテナ素子42は、径方向の内部に向かって張り出す内向きフランジ425を有しており、この内向きフランジ425の上に風防部材2が配置されるようになっている。
そして、アンテナ素子42はこの状態で本体ケース1に圧入固定されるようになっており、スリット424が形成されている場合には、円滑に圧入することができる。
また、スリット424を形成することにより、アンテナ素子42(ベゼル)と本体ケース1との喰いつき部が余計なアンテナ素子として動作するのを防ぐこともできる。
【0047】
また、図示は省略するが、本体ケース1における導電部5の設けられていない箇所に、第1の位置決め部を設け、アンテナ素子4における、本体ケース1への装着状態において第1の位置決め部に対応する位置に、第1の位置決め部と嵌り合う第2の位置決め部を設けてもよい。
これにより、本体ケース1に対してアンテナ素子4を位置ずれせずに配置することができる。
【0048】
また、本実施形態では、本体ケース1を挟んでアンテナ素子4よりも下方に配置される裏蓋3が金属等の導電体で形成され、GNDとして機能する場合を例示したが、GNDは、裏蓋3に限定されない。
例えば、本体ケース内に収容される又は基板7や、図示しない表示部の文字板等が金属材料等で形成されている場合には、基板7や文字板等がGNDとして機能してもよい。
また、電子機器である時計本体が図示しないソーラーパネルを備えている場合には、ソーラーパネルがGNDとして機能してもよい。
また、本体ケース1内の電気回路部71のGND端子から直接本体ケース1の上部の導電部5に接続される構成としてもよい。
GNDの位置は特に限定されず、GNDとして機能する部材によっては、GNDがアンテナ素子4よりも下方に配置されアンテナ素子4とGNDとの間に本体ケース1が介在する、との構成とならない場合もあり、そのような場合も含まれる。
【0049】
[第2の実施形態]
次に、
図7~
図22を参照しつつ、本発明に係る電子機器及びこれを含むリスト機器の第2の実施形態について説明する。なお、上記第1の実施形態では本体ケース1が樹脂材料等で形成されている場合を例示したのに対して、本実施形態は、本体ケースが金属材料で形成されている点で第1の実施形態と異なる。以下においては、特に第1の実施形態と異なる点について説明する。
なお、
図7~
図22において、第1の実施形態と同様である部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0050】
図7は、実施形態における電子機器である時計本体の要部を示す断面斜視図である。なお、
図7では時計本体を構成する部材のうち、風防部材2等の図示を省略している。
図7に示すように、本実施形態における時計本体は、第1の実施形態と同様に、厚み方向における上下(時計における表裏)に開口する中空の短柱形状に形成された本体ケース10を備えている。時計本体(時計本体の本体ケース10)は、上から平面視した場合にほぼ環状となっている。なお、ここで環状とは平面視における円環状のほか、楕円形や矩形であって一繋がりの形状のものも広く含む。なお、時計本体(時計本体の本体ケース10)の形状は特に限定されない。
本実施形態において、本体ケース10は、例えばSUSやチタン等の金属材料で形成されている。なお、本体ケース10を形成する材料はここに例示したものに限定されない。
本実施形態では、本体ケース10を金属等の導電体で形成し、この金属製の本体ケース10がGNDと同電位の導電部として機能する場合を例として説明する。
【0051】
本体ケース10の表面側(時計における視認側、上側)の開口には、図示しない風防部材が開口部分を覆うように設けられており、本体ケース10の裏面側には、開口部分を閉塞する裏蓋3が取り付けられている。裏蓋3は、本体ケース10と同じ材料で形成されていてもよいが、異なる材料で形成されていてもよい。例えば本体ケース1が金属材料で形成されている場合に、裏蓋3は各種の樹脂で形成されていてもよい。
【0052】
なお、本実施形態のように本体ケース10が金属材料で形成されている場合には本体ケース10そのものが導電部であり、別途第1の実施形態の導電部を設ける必要がない。ただ、この場合であっても、第1の実施形態において示した導電部を別途設けてもよい。この場合には、本体ケース1を構成する金属よりも低抵抗の金属により導電部を構成する。すなわち、例えば本体ケース1がSUSやチタン等で形成されている場合には、アルミニウム等により導電部を構成する。これにより、導電部(すなわち、アルミニウム等の薄膜)を設けない場合と比較して、アンテナとしての損失を低減させる効果が期待でき、より感度のよいアンテナを実現することができる。
【0053】
本体ケース1の上部には、アンテナ(例えばパッチアンテナ)を構成するアンテナ素子43が配置されている。本実施形態におけるアンテナ素子43は、第1の実施形態と同様に、環状に形成されたベゼル部材であり、所望の周波数の電波と共振状態となるように構成される。
なお、アンテナ素子43の形状は図示例に限定されない。
また、アンテナ素子43を形成する材料等は第1の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0054】
アンテナ素子43からはGNDとしての本体ケース10に落とすためのコネクタ部材77が設けられている。
なお、本実施形態のように本体ケース10自体が導電部である場合には、必ずしもコネクタ部材77を設けなくてもGNDに落とすことはできるが、より安定させるために所定位置にコネクタ部材77を配置することが好ましい。
コネクタ部材77は、例えば0Ω抵抗(R)や、コイル(L)、コンデンサ(C)である電子部品711を介してGNDとなる基板7(回路基板)に接続される。なお、コネクタ部材77の接続先のGNDは、必ずしも回路基板でなくてもよいが、コイル(L)やコンデンサ(C)を介して接続することで特性が出やすいため、好ましい。
なお、コネクタ77の接続はオープンとしてもよい。
【0055】
本実施形態では、アンテナ素子43が上部に配置される本体ケース10は、前述のようにGNDと同電位の導電部である。
このため、金属製の本体ケース10の上部にアンテナ素子43を配置した場合には、本体ケース10を介してGNDに落とすことができる。
ただ、アンテナ素子43が直接に導電部である本体ケース10と接触すると短絡を起こしてしまう。このため、アンテナ素子43と本体ケース10との間には、絶縁性を有する部材を配することが必要である。この点本実施形態では第1の実施形態と同様に、樹脂等で形成された誘電体部材63を本体ケース10とアンテナ素子43との間に介在させ、本体ケース10とアンテナ素子43との接触を妨げるように構成する。
【0056】
本実施形態において、誘電体部材63は、環状に形成されたアンテナ素子43とほぼ同じ環状に形成されて、
図7に示すように、アンテナ素子43と重なり合っていることが好ましい。
これにより本実施形態では、環状に形成されたアンテナ素子43と、GNDと同電位の導電部として機能する本体ケース10と、アンテナ素子43と本体ケース10との間に介在する誘電体部材63と、を備える時計本体において、アンテナ素子43と、誘電体部材63と、本体ケース10と、が平面視において重なり合う構成となる。
なお、誘電体部材63はアンテナ素子43が本体ケース10と接触しないようにアンテナ素子43を安定して支えられるだけの幅があればよく、必ずしもアンテナ素子43と同じ形状で重なり合っていなくてもよい。
【0057】
誘電体部材63は、絶縁性を有する材料で形成されていればよく、具体的な材料は特に限定されない。例えば誘電率の高い樹脂等が適用される。誘電体部材63は、アンテナ素子43により構成されるアンテナに求められる機能に応じて、その材料や形状等が設定されることが好ましい。誘電体部材63を設けることにより、適当な波長短縮等を生じ、アンテナ素子43をアンテナ(パッチアンテナ等)として機能させることができる。
【0058】
また誘電体部材63は、本体ケース10とアンテナ素子43との間において防水パッキン(封止手段)として機能し、本体ケース10内部の水密を取る構成となっていることが好ましい。
この場合には、別途部材を設けることなく、アンテナ素子43と導電部である本体ケース10との短絡を防ぐための部材を用いて本体ケース10内を水密とすることができる。
なお、誘電体部材63に特に水密を保つパッキンとしての機能を求めない場合には、誘電体部材63は、必ずしも本体ケース10の上面の全周に亘って設けられていなくてもよい。
【0059】
また本体ケース10の内部には第1の実施形態と同様に、電気回路部71を備える基板7が収容される。アンテナ素子43は第1のコネクタ73によって基板7の電気回路部71と接続されている。
第1のコネクタ73は給電用のコンタクト手段であり、アンテナ素子43は第1のコネクタ73を介して例えば基板7上に搭載された電気回路部71としてのLC回路等と接続される。
基板7は、スペーサ76等を介して裏蓋3上に配置されている。
【0060】
本実施形態のように金属材料で形成された本体ケース10の上部に誘電体部材63を介してアンテナ素子43とし、アンテナを構成する場合には、各種の条件を変えることでアンテナの特性(利得や周波数)を調整することができる。
ここで、本体ケース10が金属材料で形成されている場合における、アンテナの周波数や利得といった特性の調整について、
図7~
図11を参照しつつ説明する。
なお、
図9及び
図11に示すグラフは、シミュレーションの結果を示すものであり、実測値とは異なるものである。
【0061】
図7では、本体ケース10の上面に、本体ケース10の開口部の内周縁に沿ってアンテナ素子43及び誘電体部材63が配置されている。
図7に示す例において、アンテナ素子43(アンテナ素子43aとこれに重なる誘電体部材63a)の径方向の幅寸法は、本体ケース10の上面の径方向の幅寸法のほぼ半分程度となっている。
図7に示す例では、アンテナ素子43aは、その全体が本体ケース10の上部に重なって載置されている。また、本体ケース10の上部においてアンテナ素子43aと本体ケース10とが重なり合っている部分の面積と重なり合ってない部分の面積とがほぼ等しい。
【0062】
これに対して、
図8(a)に示す例では、本体ケース10の内径が
図7に示す場合よりも大きくなっている。本体ケース10の内径が大きくなった分、アンテナ素子43(アンテナ素子43bとこれに重なる誘電体部材63b)の内周側は、アンテナ素子43cの幅の半分程度が本体ケース10の上面に接触せず、浮いた状態となっている。
図8(b)に示す例では、本体ケース10の内径が
図8(a)に示す場合よりもさらに大きくなっている。本体ケース10の内径が大きくなった分、アンテナ素子43(アンテナ素子43cとこれに重なる誘電体部材63c)は、そのほとんどが本体ケース10の上面に接触せず、浮いた状態となっている。
【0063】
図9は、このように、本体ケース10の内径を変え、本体ケース10の周方向における厚みを薄くしていった場合におけるアンテナの特性の変化傾向をシミュレーションした結果の傾向を示すものである。
図9では、グラフ左側の縦軸に周波数(GHz)をとり、右側の縦軸に利得(dBc)をとり、横軸に本体ケースの内径(mm)をとっている。
グラフ中、実線は周波数の変化の傾向を示し、破線は利得の変化の傾向を示している。
図9に示す例では、誘電率の異なる「A」「B」2種類の誘電体部材64を用いてシミュレーションを行った結果について、実線で周波数の変化の傾向を示し、破線で周波数の変化の傾向を示している。
【0064】
図9に示すように、シミュレーションでは、「A」「B」いずれの誘電率の誘電体部材64を用いた場合でも、本体ケース10の内径が大きくなるほど、周波数が高くなる傾向があり、また利得が向上する傾向がみられた。
これは、本体ケース10とアンテナ素子43及び誘電体部材64とが重なり合う面積を変化させることでアンテナ素子43を備えて実現されるアンテナの特性(周波数や利得)を調整することができることを示している。
具体的には、本体ケース10の上部における径方向の幅で見た場合に、アンテナ素子43及び誘電体部材64と重なり合っている部分の幅(面積)が重なり合ってない部分の幅(面積)よりも少なくなるにしたがって、アンテナ素子43を備えて実現されるアンテナの周波数が高くなり、利得が向上する傾向があると言える。
【0065】
本体ケース10とアンテナ素子43との距離を変化させることでアンテナ特性を変化させる観点からは、本体ケース10の内径を変化させる以外に、本体ケース10の内側面に内溝を形成する等により、本体ケース10の上部に配置されるアンテナ素子43との距離を離間させる等の調整を行うことも考えられる。内溝を形成する等により本体ケース10の内側面をアンテナ素子43から遠ざけることができれば、本体ケース10の内径を大きくした場合と同様の効果が得られると考えられる。
図示は省略するが、同様に本体ケース10とアンテナ素子43との距離を変化させる観点からは、ベゼル部材であるアンテナ素子43の内径を小さくするほど利得が高く、アンテナ素子43の内径を大きくするほど本体ケース10に近接して利得が低下する傾向がある。
またベゼル部材であるアンテナ素子43によって風防部材2を固定する場合において、風防部材2の径を大きくしていくと、その分アンテナ素子43の内径が広がることから、アンテナとしての利得が低下する。この場合、アンテナ素子43の外径を変えずにアンテナ素子43の内径を大きくすることで風防部材2の径に対応させた場合には、アンテナ素子43の径方向の幅が狭くなる。このためこの場合には、利得は下がるが周波数は高くなる傾向がみられる。
【0066】
なお、図示は省略するが、本体ケース10の外径を変化させても、アンテナの周波数、利得ともに顕著な変化は見られなかった。
また、本体ケース10の高さ(基板7から裏蓋3までの距離)を変化させた場合、周波数には顕著な変化は見られないが、アンテナの利得は、本体ケース10の高さが高くなるほど向上する(感度が向上する)傾向がみられた。
また、アンテナ素子43の外径を変化させた場合には、外形が大きくなるほどアンテナ素子43のサイズが大きくなり、周波数は低くなる傾向がみられた。なお、利得に関しては顕著な変化は見られなかった。
その他基板7にGNDを設定した場合に、このGND径を変化させてシミュレーションを行ったが、本実施形態のように本体ケース10を金属製のケースとした場合には、周波数、利得ともにほとんど変化は見られなかった。
【0067】
なお、本実施形態では、アンテナ素子43と、導電部としての本体ケース10との間に誘電体部材を設けている。そこで、誘電体部材の形状を変化させることでアンテナ素子43を備えて実現されるアンテナの特性を調整してもよい。
ここで、誘電体部材の形状を変化させることによるアンテナの周波数や利得といった特性の調整について、
図10(a)~
図10(d)及び
図11を参照しつつ説明する。
図10(a)~
図10(d)は、誘電体部材の形状のバリエーションを示す要部斜視図である。なお、
図10(a)~
図10(d)では誘電体部材を見やすく示すためにアンテナ素子43を二点鎖線で図示し、引き出し線も二点鎖線で示している。
【0068】
図10(a)は、誘電体部材64(64a)がアンテナ素子43とほぼ同形状の環状に形成されている場合を図示している。この場合は誘電体部材64aに切れ目等はなく、誘電体部材64aの径方向における幅(例えば2.0mm)全体でアンテナ素子43と接している。この場合におけるアンテナ素子43と導電部としての本体ケース10とが絶縁状態となっている幅である絶縁残存幅は「2.0mm」となる。
これに対して、
図10(b)は、誘電体部材64(64b)がアンテナ素子43とほぼ対応する環状に配置されているが複数に分割されている場合を図示している。この場合は誘電体部材64bの分割部分640では、アンテナ素子43と接していない。このためこの場合におけるアンテナ素子43と導電部としての本体ケース10とが絶縁状態となっている幅である絶縁残存幅は「0mm」となる。
また、
図10(c)は、誘電体部材64(64c)がアンテナ素子43とほぼ同形状の環状に形成されているが、部分的に凹部641が設けられている場合を図示している。凹部を設ける位置や数は適宜設定される。凹部641を設けた場合、誘電体部材64cは、凹部641において誘電体部材64aの径方向における幅(例えば2.0mm)よりも少ない幅でアンテナ素子43と接しており、アンテナ素子43と導電部としての本体ケース10とが絶縁状態となっている幅である絶縁残存幅は「1.2mm」程度である。
【0069】
図11は、このように、誘電体部材64の絶縁残存幅を変えてシミュレーションを行った場合におけるアンテナの特性の変化傾向を示すものである。
図11では、
図9で示すグラフと同様に、グラフ左側の縦軸に周波数(GHz)をとり、右側の縦軸に利得(dBc)をとり、横軸に絶縁残存幅(mm)をとっている。
また、グラフ中、実線は周波数の変化を示し、破線は利得の変化を示している。
【0070】
図11に示すように、シミュレーションでは、絶縁残存幅が大きくなるほど、周波数が低くなっていく傾向がみられた。なお、利得については絶縁残存幅による若干の変化が見られた。
【0071】
誘電体部材64の絶縁残存幅を変えた場合、周波数、利得ともに劇的な変化が生じる結果とはならなかったが、一定の変化を得られることが確認できた。
誘電体部材64の形状は時計本体の外観に現れない。特に絶縁残存幅を変える場合のように誘電体部材64の面方向の形状を変える場合には、デザインに影響を与えずに比較的容易に形状等を変更することができる。このため、アンテナを所望の周波数や利得に調整するための手法として有効であるといえる。
【0072】
なお、誘電体部材64の形状を変更する手法はこれに限定されない。
例えば、
図10(c)では、誘電体部材64の内周面に凹部641を形成する場合を例示したが、凹部は誘電体部材64の外周面に形成されてもよいし、内周面と外周面の両方に形成されてもよい。
また、凹部の形状も矩形の切り欠きや半円形状の切り欠き等、各種の形状とすることが考えられる。また凹部の形状は各種の形状の組み合わせでもよい。
【0073】
また、
図10(d)に示すように、
図10(c)に示したような凹部641内に誘電体部材64の本体部とは誘電率の異なる第2の誘電体部材642が装着されてもよい。第2の誘電体部材642を装着する手法は特に限定されない。第2の誘電体部材642はすべての凹部641内に装着されていなくてもよく、全てが同じ種類でなくてもよい。
凹部641内に別部材として第2の誘電体部材642を装着する場合、第2の誘電体部材642の数・大きさ・種類(誘電率)を適宜変えることで、アンテナが所望の周波数、利得となるように微調整することが可能である。
これにより、誘電体部材64dは、全体としては切れ目や凹凸のない状態となるが、1種類の誘電体で全体が形成されている場合とは誘電率に違いが生じ、アンテナとしての周波数や利得に影響が出ると考えられる。このため、周波数や利得の調整手法として有効である。
なお、
図10(d)では、誘電体部材64の面内方向において誘電率の異なる第2の誘電体部材642を装着する例を示したが、誘電率の異なる第2の誘電体部材の配置はこれに限定されない、例えば誘電率の異なる第2の誘電体部材は、誘電体部材64の積層方向に設けられてもよい。
【0074】
その他、図示は省略するが、例えば誘電体部材64の高さ方向の厚みを変更することも考えられ、シミュレーションを行った結果では、誘電体部材64の厚みが増すほど、周波数が高くなり、利得が向上した。
時計のデザイン・外観等の観点から採用が可能である場合には有効な調整手法の1つと考えられる。
【0075】
以上のように、アンテナ素子43を備えて実現されるアンテナの特性(周波数や利得)を調整する要素はさまざまであるが、本体ケース10の内径を調整する場合及び誘電体部材の形状等(特に誘電体部材の面方向の形状)を調整する場合が、比較的アンテナの周波数や利得に影響し、かつ時計本体の外観、デザインへの影響が少ない。このため、所望の周波数や利得に調整するための手法として有効であると言える。
【0076】
なお、第1の実施形態のように本体ケース1が樹脂で形成されている場合には、アンテナ素子(金属製のベゼル)は、例えば本体ケース1に圧入することで固定されるとしたが、本体ケース10が本実施形態のように金属製のケースである場合には、例えば
図12から
図22に示すような各種の手法で固定することができる。なお、
図12から
図22について、本実施形態における
図7等に示すものと同じ部材については同一の符号を付してその説明を省略する。なお、以下に挙げる手法は一例であり、アンテナ素子(金属製のベゼル)を固定する手法はこれに限定されない。
【0077】
図12は、金属材料で形成された本体ケースにアンテナ素子を固定した例を示す側断面図であり、
図13は、
図12において一点鎖線で囲んだ領域XIIIを拡大したアンテナ素子の固定構造例を示す側断面図である。
図12及び
図13に示すように、金属製の本体ケース10にアンテナ素子45(金属製のベゼル)を固定する場合には、誘電体部材65を介して本体ケース10の開口部に嵌め込まれる。
【0078】
図13に示す例では、アンテナ素子45が筒状に形成された筒状部450と、筒状部450の上部から外側に向かって張り出すフランジ部451と、このフランジ部451の外周端面から垂設される目隠し部452とを備えている。筒状部450の内側には風防部材2が装着されている。
また、誘電体部材65は、アンテナ素子45のフランジ部451の下面と本体ケース10の上面との間に配置される誘電体本体部651と、誘電体本体部651の内側端面から内周面に沿って下方に突出し、アンテナ素子45の筒状部450の外周面と本体ケース10の上部内周面との間に配置される筒状部652とを備えている。
【0079】
この例において、誘電体部材65は、ある程度弾力をもって変形し応力を発生してアンテナ素子45を固定することのできるものであり、各種の樹脂で形成される。
アンテナ素子45は、誘電体部材65を介して本体ケース10に圧入されるようになっており、誘電体部材65は、本体ケース10内を水密とする防水パッキン(封止部材)として機能する。
このように誘電体部材65が防水パッキン(封止部材)を兼ねる構成とすれば、水密をとるためのOリング等の防水パッキン(封止部材)を別途設ける必要がなく、部品点数を抑えることができる。
【0080】
図14は、
図12及び
図13で示すアンテナ素子の固定構造の一変形例を示す側断面図であり、誘電体部材の構成が異なるものである。
図14に示す構成では、誘電体部材66が、変形しにくい各種の硬質な樹脂で形成されており、アンテナ素子45のフランジ部451の下面と本体ケース10の上面との間に配置される誘電体本体部661と、誘電体本体部661の内側端面から内周面に沿って下方に突出し、アンテナ素子45の筒状部450の外周面と本体ケース10の上部内周面との間に配置される筒状部662とを備えている。
【0081】
筒状部662の内周面及び外周面にはねじ切りが施されたねじ部663が形成されている。
アンテナ素子45の筒状部450の外周面には筒状部662の内周面に形成されたねじ部663と噛合うねじ部453が形成されており、アンテナ素子45側のねじ部453と誘電体部材66側のねじ部663とが噛み合うようになっている。
また、本体ケース10の上部内周面には筒状部662の外周面に形成されたねじ部663と噛合うねじ部101が形成されており、本体ケース10側のねじ部101と誘電体部材66側のねじ部663とが噛み合うようになっている。
本体ケース10に誘電体部材66をねじ固定し、この誘電体部材66にアンテナ素子45をねじ固定することで、アンテナ素子45が誘電体部材66を介して本体ケース10にねじ止め固定される。
【0082】
このようにアンテナ素子45をねじ止め固定する場合、例えば、
図15や
図16に示すように、封止部材としてOリングを設けてもよい。
すなわち、
図15では、誘電体本体部661の上面とアンテナ素子45のフランジ部451の下面との間、誘電体本体部661の下面と本体ケース10の上面との間にそれぞれOリング665を設ける場合を例示している。なお、Oリング665は2つ設ける場合に限定されない。誘電体本体部661の上面側、下面側のいずれか一方のみにOリング665を設けてもよい。
また、
図16では、誘電体本体部661の外側への張出幅をアンテナ素子45のフラン
ジ部451の張出幅よりも小さくし、誘電体本体部661の外周面よりも外側に、アンテナ素子45のフランジ部451の下面と本体ケース10の上面との間に介在するOリング666を設ける場合を例示している。
図15や
図16に示すように、封止部材としてOリングを設けた場合には、より確実に本体ケース10の水密をとることができる。
【0083】
また、誘電体部材は、一体の部材である場合に限定されない。
例えば
図17に示すように、アンテナ素子45のフランジ部451の下面と本体ケース10の上面との間に配置される誘電体本体部671と、誘電体本体部671の内側端面及び本体ケース10の上部内周面とアンテナ素子45の筒状部450の外周面との間に配置され、内周面にねじ部673を有する筒状部672と、を別体として備えていてもよい。
この場合、アンテナ素子45の筒状部450の外周面に形成されたねじ部453が筒状部672の内周面に形成されたねじ部673と噛合い、ねじ止めされる。また、本体ケース10の上部に内側に張り出す張出部105を設け、筒状部672の下端部に外側に張り出すフランジ部675を設ける。そして、フランジ部675を本体ケース10の張出部105の下面に係止させることで、アンテナ素子45が誘電体部材67を介して本体ケース10にねじ止め固定される。
【0084】
また、例えば
図18に示すように、アンテナ素子45のフランジ部451の下面と本体ケース10の上面との間に配置される誘電体本体部681と、誘電体本体部681の内周側下面に配置されて、本体ケース10の上部内周面とアンテナ素子45の筒状部450の外周面との間に配置され、内周面にねじ部683を有する筒状部682と、を別体として備えていてもよい。
この場合、アンテナ素子45の筒状部450の外周面に形成されたねじ部453が筒状部682の内周面に形成されたねじ部683と噛合い、ねじ止めされる。また、本体ケース10の上部に内側に張り出す張出部105を設け、筒状部672の下端部に外側に張り出すフランジ部685を設ける。そして、フランジ部685を本体ケース10の張出部105の下面に係止させることで、アンテナ素子45が誘電体部材68を介して本体ケース10にねじ止め固定される。
【0085】
このように、誘電体部材を複数の部材に分けることで、部分ごとに異なる材料で形成することが可能となる。
特に
図18に示す例のように、誘電体本体部681と、ねじ部683を有する部材(筒状部682)とを別体とした場合には、ねじ部683を有する筒状部682については硬質な材料で形成しつつ、誘電体本体部681については弾性変形可能な材料で形成することが可能となり、筒状部682を介してねじ止め固定しつつ、誘電体本体部681に封止部材(防水パッキン)としての機能を持たせ、水密を確保することができる。
【0086】
なお、図示は省略するが、
図17及び
図18に示すような、本体ケースとアンテナ素子(ベゼル)との位置関係を固定することができる構造の場合、本体ケース、誘電体部材、アンテナ素子にそれぞれ嵌り合う位置決め部を設けてもよい。これにより、時計の裏面側(裏蓋側)から、誘電体部材の筒状部(
図17の筒状部672や
図18の筒状部682)をねじ込むようにすれば、たとえばアンテナ素子(ベゼル)に施した12時位置の刻印と本体ケースにける12時位置とを合致させることができる。この場合に、文字板等を有する時計の内部構造物であるモジュールも本体ケースと位置合わせされているため、文字板の12時位置とアンテナ素子(ベゼル)における12時位置の刻印とを一致させることができ、容易に位置合せが完了する。
【0087】
また、
図19~
図22に示すように、アンテナ素子46、誘電体部材69及び本体ケース10は、ビスによって固定されてもよい。
【0088】
すなわち、例えば
図19に示すように、アンテナ素子46に貫通孔461を設け、誘電体部材69には貫通孔461に対応する位置に孔部691を設ける。そしてアンテナ素子46の上から貫通孔461を介して孔部691内までビス91を挿入し、アンテナ素子46と誘電体部材69とをビス止め固定する。
なお、アンテナ素子46における貫通孔461の周囲に凹部を設けてビス91の頭部を凹部内に配置できるようにしてもよい。この場合には、ビス91の頭部がアンテナ素子46の表面から突出せず、美しい外観に仕上げることができる。
【0089】
また、誘電体部材69と本体ケース10とは、ビス92によって固定する。具体的には、誘電体部材69に貫通孔693を形成し、この貫通孔692の上部はビス92の頭部の径よりも大きな大径部692とする。また、本体ケース10には貫通孔692,693に対応する位置に孔部102を設ける。そして誘電体部材69の上から貫通孔692,693を介して孔部102内までビス92を挿入し、誘電体部材69と本体ケース10とをビス止め固定する。なお、誘電体部材69に形成する貫通孔692,693の深さは特に限定されないが、ビス92が浮き上がってアンテナ素子46と接触することがないように十分な深さに形成することが好ましい。なお、貫通孔692,693内にビス92の外周面との間に介在する絶縁体(誘電体)で形成された部材を配置してもよいし、ビス92を挿入した後、絶縁体(誘電体)材料からなる接着剤(封止剤)等を貫通孔692,693に入れたり、絶縁体(誘電体)で形成された部材を嵌装してもよい。これにより、ビス92がアンテナ素子46と接触するのを確実に防止することができる。
このようにビス92,93によってアンテナ素子46、誘電体部材69及び本体ケース10を固定する場合には、まず誘電体部材69と本体ケース10とをビス止め固定し、その上からアンテナ素子46を配置して誘電体部材69とアンテナ素子46とをビス止め固定する。
【0090】
また、例えば
図20に示すように、アンテナ素子46を覆う外装部材70をさらに設けてもよい。外装部材70は、例えば各種の樹脂材料や、セラミック等で形成される装飾部材である。
この場合には、外装部材70に貫通孔701を形成する。また貫通孔701の周囲に凹部702を設けてビス91の頭部を凹部702内に配置できるようにすることが好ましい。外装部材70は時計本体の最外装となるため、ビス91の頭部が突出しないようにすることで美しい外観に仕上げることができる。
また、アンテナ素子46には貫通孔701に対応する位置に貫通孔462を形成する。貫通孔462はビス91がアンテナ素子46の貫通孔462内部に接触しないように十分な径に形成する。
さらに誘電体部材69には貫通孔701及び貫通孔462に対応する位置に孔部691を形成する。
そして外装部材70の上から貫通孔701及び貫通孔462を介して孔部691内までビス91を挿入し、外装部材70、アンテナ素子46及び誘電体部材69をビス止め固定する。
なお、アンテナ素子46の貫通孔462にはビス91の外周面との間に介在する絶縁体(誘電体)で形成された部材を配置してもよいし、ビス91を挿入した後、絶縁体(誘電体)材料からなる接着剤(封止剤)等を入れてもよい。これにより、ビス91がアンテナ素子46と接触するのを確実に防止することができる。
また、誘電体部材69と本体ケース10とは、
図19において説明したのと同様にビス92によって固定する。
【0091】
また、例えば
図21に示すように、アンテナ素子46を覆う外装部材70を設ける場合に、外装部材70から本体ケース10までを一繋がりのビス93で固定してもよい。
この場合には、外装部材70に貫通孔703を形成する。また、貫通孔703の周囲に凹部704を設けてビス93の頭部を凹部704内に配置できるようにすることが好ましい。
また、アンテナ素子46には貫通孔703に対応する位置に貫通孔463を形成する。貫通孔463はビス93がアンテナ素子46の貫通孔463内部に接触しないように十分な径に形成する。
さらに誘電体部材69には貫通孔703及び貫通孔463に対応する位置に貫通孔694を形成する。
また本体ケース10には貫通孔703、貫通孔463及び貫通孔694に対応する位置に孔部103を設ける。
そして外装部材70の上から貫通孔703、貫通孔463及び貫通孔694を介して孔部103内までビス93を挿入し、外装部材70、アンテナ素子46、誘電体部材69及び本体ケース10をビス止め固定する。
なお、アンテナ素子46の貫通孔463にはビス93の外周面との間に介在する絶縁体(誘電体)で形成された部材を配置してもよいし、ビス93を挿入した後、絶縁体(誘電体)材料からなる接着剤(封止剤)等を入れてもよい。これにより、ビス93がアンテナ素子46と接触するのを確実に防止することができる。
【0092】
なお、外装部材を設けない場合には、ビス93がアンテナ素子46と直接接触しないように、ビス93の頭部やビス93におけるアンテナ素子46内に配置される部分に絶縁コーティング等を施したり、
図22に示すように、アンテナ素子46の貫通孔464内に絶縁材料で形成された絶縁ワッシャ705等を配置する。これにより、ビス93とアンテナ素子46との間で短絡が生じないように構成される。
【0093】
以上のように、本実施形態によれば、電子機器としての時計本体100が、環状に形成されたアンテナ素子43と、金属材料で形成され上部にアンテナ素子43が配置される本体ケース10と、を備え、誘電体部材63は、アンテナ素子43と本体ケース10との間に介在し、本体ケース10は、GNDと同電位の導電部として機能する。
これにより、本体ケース10自体が導電部となるため、別途導電部を設ける必要がない。
また本体ケース10を金属製のケースとした場合には、外観に高級感のある意匠性に優れた時計本体100及びこれを備えるリスト機器(腕時計等)を実現することができる。
さらに、アンテナ素子43と本体ケース10との間に誘電体部材63を介在させるため、誘電体部材63等により、アンテナ素子43を備えて構成されるアンテナの周波数や利得等の特性を、所望の特性が得られるように調整することが容易となる。
【0094】
また、誘電体部材63は、本体ケース10の内部を水密とするための封止手段を兼ねてもよい。
このように構成した場合には、別途Oリング等を設けることなく水密構造を実現することができる。
【0095】
また、本体ケース10とアンテナ素子43とが重なり合う面積を変化させることでアンテナ素子43を備えて実現されるアンテナの特性を調整してもよい。
例えば、本体ケース10の上部においてアンテナ素子43と重なり合っている部分の面積が重なり合ってない部分の面積よりも少なくなるように本体ケース10を形成する。
この場合には、外観への影響が少ない手法でアンテナの特性を調整することが可能となる。具体的にはアンテナの利得を向上させることができる。このため、時計等の電子機器の意匠性・デザイン性とアンテナの周波数や利得の調整とを両立させることができる。
【0096】
また、本体ケース10とアンテナ素子43との距離を変化させることでアンテナ素子4
3を備えて実現されるアンテナの特性を調整してもよい。
この場合にも、外観への影響が少ない手法でアンテナの特性を調整することが可能となる。このため、時計等の電子機器の意匠性・デザイン性とアンテナの周波数や利得の調整とを両立させることができる。
【0097】
また、誘電体部材63の形状を変化させることでアンテナ素子43を備えて実現されるアンテナの特性を調整してもよい。
誘電体部材63は外観に現れにくい部材であるため、この場合にも外観への影響が少ない手法でアンテナの特性を調整することが可能となる。このため、時計等の電子機器の意匠性・デザイン性とアンテナの周波数や利得の調整とを両立させることができる。
【0098】
誘電体部材64の形状を変化させる手法としては、誘電体部材64の周面に凹部641を形成してもよい。
これにより比較的簡易な手法によりアンテナの特性の微妙な調整を行うことが可能となる。
【0099】
誘電体部材64の周面に凹部641を形成する場合、凹部641内に誘電体部材64の本体部とは誘電率の異なる第2の誘電体部材642が装着されてもよい。
これにより比較的簡易な手法によりアンテナの特性の微妙な調整を行うことが可能となる。
【0100】
誘電体部材65は、弾性変形可能な材料で形成され、アンテナ素子45は、誘電体部材65を介して本体ケース10に対し圧入固定されてもよい。
このように構成した場合には、本体ケース10が金属製のケースである場合にも部品点数を増やすことなくアンテナ素子45を本体ケース10に固定することができる。
圧入固定することで、水密の確保も期待できる。
【0101】
誘電体部材66は、アンテナ素子45との接触側の面及び本体ケース10との接触側の面にねじ部663が形成されており、アンテナ素子45は、誘電体部材66を介して本体ケース10に対しねじ止め固定されてもよい。
この場合には、別途部材を設けることなく、誘電体部材66によりアンテナ素子45と本体ケース10との固定を行うことができる。
【0102】
アンテナ素子46、誘電体部材69、本体ケース10は、ビス91,92,93を介して固定されてもよい。
この場合にも比較的簡易な手法で、アンテナ素子46、誘電体部材69及び本体ケース10の固定を行うことができる。
【0103】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0104】
例えば、上記各実施形態では、電子機器が時計本体100であり、これを備えるリスト機器が腕時計である場合を例示して説明したが、電子機器はアンテナを備える機器であれば広く適用することが可能であり、時計(腕時計)に限定されない。
例えば、歩数計、高度計、気圧計等の各種機器について、本発明の電子機器を適用してもよい。さらに、スマートフォン等の各種端末装置に本発明の電子機器が適用されてもよい。
【0105】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
環状に形成されたアンテナ素子と、
GNDと同電位の導電部と、
前記アンテナ素子と前記導電部との間に介在する誘電体部材と、
を備え、
前記アンテナ素子と、前記誘電体部材と、前記導電部と、が平面視において重なり合うように配置されることを特徴とする電子機器。
<請求項2>
前記アンテナ素子よりも下方に設けられた本体ケースと、
をさらに備え、
前記導電部は、前記アンテナ素子よりも下方であって前記本体ケースの上部に設けられ、
前記誘電体部材は、前記導電部と前記アンテナ素子との間に介在し前記導電部と前記アンテナ素子との接触を妨げるものであり、
前記アンテナ素子及び前記導電部は、前記GNDと電気的に接続されることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
<請求項3>
前記本体ケースは、前記アンテナ素子と前記GNDとの間に介在することを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
<請求項4>
前記本体ケースの内部には、電気回路部が設けられ、
前記電気回路部が前記アンテナ素子と前記GNDとに電気的に接続されることで、前記アンテナ素子と前記GNDとが電気的に接続されることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の電子機器。
<請求項5>
前記導電部は、前記本体ケースの上面及び内面の少なくとも一部に設けられた導電体膜であることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の電子機器。
<請求項6>
前記導電部は、前記本体ケースよりも低抵抗の材料で形成されることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の電子機器。
<請求項7>
前記誘電体部材は、前記アンテナ素子に求められる機能に応じて特性及び形状が設定されることを特徴とする請求項2から請求項6のいずれか一項に記載の電子機器。
<請求項8>
前記本体ケースの上部に前記アンテナ素子の少なくとも一部を覆う外装部材を設け、
前記外装部材は、前記アンテナ素子と絶縁された状態で前記本体ケースにビス止め固定されることを特徴とする請求項2から請求項7のいずれか一項に記載の電子機器。
<請求項9>
前記外装部材は、前記アンテナ素子と絶縁された状態で、かつ前記導電部と導通状態となるビスにより前記本体ケースにビス止め固定されることを特徴とする請求項8に記載の電子機器。
<請求項10>
前記外装部材は、前記アンテナ素子及び前記誘電体部材を外部から視認されないように被覆することを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の電子機器。
<請求項11>
前記誘電体部材は、前記本体ケースの内部を水密とするための封止手段を兼ねることを特徴とする請求項2から請求項10のいずれか一項に記載の電子機器。
<請求項12>
前記本体ケースには、前記導電部の設けられていない箇所に、第1の位置決め部が設けられ、前記アンテナ素子には、前記本体ケースへの装着状態において前記第1の位置決め部に対応する位置に、前記第1の位置決め部と嵌り合う第2の位置決め部が設けられていることを特徴とする請求項2から請求項11のいずれか一項に記載の電子機器。
<請求項13>
前記GNDは、前記アンテナ素子よりも下方に配置されることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の電子機器。
<請求項14>
金属材料で形成され上部に前記アンテナ素子が配置される本体ケースを備え、
前記誘電体部材は、前記アンテナ素子と前記本体ケースとの間に介在し、
前記本体ケースは、前記GNDと同電位の前記導電部として機能することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
<請求項15>
前記誘電体部材は、前記本体ケースの内部を水密とするための封止手段を兼ねることを特徴とする請求項14に記載の電子機器。
<請求項16>
前記本体ケースと前記アンテナ素子とが重なり合う面積を変化させることで前記アンテナ素子を備えて実現されるアンテナの特性を調整することを特徴とする請求項14又は請求項15に記載の電子機器。
<請求項17>
前記本体ケースの上部において前記アンテナ素子と重なり合っている部分の面積が重なり合ってない部分の面積よりも少なくなるように前記本体ケースを形成することを特徴とする請求項16に記載の電子機器。
<請求項18>
前記本体ケースと前記アンテナ素子との距離を変化させることで前記アンテナ素子を備えて実現されるアンテナの特性を調整することを特徴とする請求項14から請求項17のいずれか一項に記載の電子機器。
<請求項19>
前記誘電体部材の形状を変化させることで前記アンテナ素子を備えて実現されるアンテナの特性を調整することを特徴とする請求項14から請求項18のいずれか一項に記載の電子機器。
<請求項20>
前記誘電体部材は、周面に凹部が形成されていることを特徴とする請求項19に記載の電子機器。
<請求項21>
前記凹部内に前記誘電体部材の本体部とは誘電率の異なる第2の誘電体部材が装着されることを特徴とする請求項20に記載の電子機器。
<請求項22>
前記誘電体部材は、弾性変形可能な材料で形成され、前記アンテナ素子は、前記誘電体部材を介して前記本体ケースに対し圧入固定されることを特徴とする請求項14から請求項21のいずれか一項に記載の電子機器。
<請求項23>
前記誘電体部材は、前記アンテナ素子との接触側の面及び前記本体ケースとの接触側の面にねじ部が形成されており、前記アンテナ素子は、前記誘電体部材を介して前記本体ケースに対しねじ止め固定されることを特徴とする請求項14から請求項21のいずれか一項に記載の電子機器。
<請求項24>
前記アンテナ素子、前記誘電体部材、前記本体ケースは、絶縁性を有するビスを介して固定されることを特徴とする請求項14から請求項21のいずれか一項に記載の電子機器。
<請求項25>
請求項1から請求項24のいずれか一項に記載の電子機器を含むことを特徴とするリスト機器。
【符号の説明】
【0106】
1 本体ケース
2 風防部材
3 裏蓋
4 アンテナ素子
5 導電部
6 誘電体部材
7 基板
71 電気回路部
100 時計本体