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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】管理システム
(51)【国際特許分類】
   E04H 1/12 20060101AFI20240910BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20240910BHJP
【FI】
E04H1/12 A
G06Q50/10
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022193490
(22)【出願日】2022-12-02
(62)【分割の表示】P 2017207334の分割
【原出願日】2017-10-26
(65)【公開番号】P2023021225
(43)【公開日】2023-02-10
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】得地 賢吾
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-086582(JP,A)
【文献】特開2017-076262(JP,A)
【文献】特開2004-178385(JP,A)
【文献】特開2004-164626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/00-1/14
G06Q 50/08-50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも天井と、床面と、施錠または解錠が制御される扉とから構成される時間貸し空間が複数設置され、
前記扉の施錠または解錠を制御する制御手段と、
前記時間貸し空間を利用する利用者の予約を管理する予約管理手段と、
前記利用者の会員情報を管理する会員管理手段と、
を備え、
前記会員管理手段には、自然人の会員登録と法人の会員登録とが可能であり、
会員が自然人の場合には会員と利用者が一致し、
会員が法人の場合には会員別に個々の利用者が登録され、
前記制御手段は、前記予約管理手段によって管理された前記時間貸し空間の予約時間中に、当該時間貸し空間を利用している前記利用者が前記扉を解錠する操作を行った場合、当該解錠の操作を有効化して当該利用者が当該時間貸し空間の外に出ることを許容する、
ことを特徴とする管理システム。
【請求項2】
前記時間貸し空間は、複数人で利用可能な空間である、
ことを特徴とする請求項に記載の管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
扉は、構造や動作の違いによって様々な種類に分類される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-86582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オフィス外でも各種の情報にアクセスできる環境が整う一方で、ビジネス上の会話や情報は秘匿性が高いため、静かでセキュアな環境が求められる。
【0005】
本発明は、時間貸し空間の予約と利用を管理するシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、少なくとも天井と、床面と、施錠または解錠が制御される扉とから構成される時間貸し空間が複数設置され、前記扉の施錠または解錠を制御する制御手段と、前記時間貸し空間を利用する利用者の予約を管理する予約管理手段と、前記利用者の会員情報を管理する会員管理手段と、を備え、前記会員管理手段には、自然人の会員登録と法人の会員登録とが可能であり、会員が自然人の場合には会員と利用者が一致し、会員が法人の場合には会員別に個々の利用者が登録され、前記制御手段は、前記予約管理手段によって管理された前記時間貸し空間の予約時間中に、当該時間貸し空間を利用している前記利用者が前記扉を解錠する操作を行った場合、当該解錠の操作を有効化して当該利用者が当該時間貸し空間の外に出ることを許容する、ことを特徴とする管理システムである。
請求項2に記載の発明は前記時間貸し空間は、複数人で利用可能な空間である、ことを特徴とする請求項に記載の管理システムである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、時間貸し空間の予約と利用を管理するシステムを提供できる。
請求項2記載の発明によれば複数人による利用が可能な時間貸し空間の予約と利用を管理できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】管理システムの全体構成の例を概略的に示す図である。
図2】ユーザに対して貸し出される時間貸し空間の外観構成例を説明する図である。
図3】ユーザ端末のハードウェア構成の例を説明する図である。
図4】管理システムを構成するサーバのハードウェア構成の例を説明する図である。
図5】管理システムを構成する時間貸し空間の構成例を説明する図である。
図6】制御装置のソフトウェア構成の例を説明する図である。
図7】例1に係る制御部の制御動作例を説明する図である。
図8】外開きの扉を内側から外側に開く場合の制御の例を説明する図である。(A)は扉が移動する範囲の外側にBさんがいる状態を示し、(B)は制御の内容を示す。
図9】外開きの扉を内側から外側に開く場合の他の制御の例を説明する図である。(A)は扉が移動する範囲の内側にBさんがいる状態を示し、(B)は制御の内容を示す。
図10】内開きの扉を外側から内側に開く場合の制御の例を説明する図である。(A)は扉が移動する範囲の内側にAさんがいる状態を示し、(B)は制御の内容を示す。
図11】内開きの扉を内側から内側に開く場合の制御の例を説明する図である。(A)は操作者であるAさんとは反対側の予め定めた範囲の内側にBさんがいる状態を示し、(B)は制御の内容を示す。
図12】引き戸の扉を開く場合の制御の例を説明する図である。(A)は扉が移動する範囲の内側にBさんがいる状態を示し、(B)は制御の内容を示す。
図13】例2に係る制御部の制御動作例を説明する図である。
図14】例3に係る制御部の制御動作例を説明する図である。
図15】例4に係る制御部の制御動作例を説明する図である。
図16】例5に係る制御部の制御動作例を説明する図である。
図17】例5に対応する制御の内容を説明する図である。
図18】例6に係る制御部の制御動作例を説明する図である。
図19】時間貸し空間に外開きの扉が取り付けられている場合における扉が移動する範囲を照明光で示す例を示す図である。
図20】時間貸し空間に内開きの扉が取り付けられている場合における扉が移動する範囲の外縁に沿って複数の光源部が埋め込まれている例を示す図である。
図21】扉が開き戸である場合に開き始めの速度を遅くするための機構の例を示す図である。
図22】開き戸である扉を開く際に使用する速度制御の例を説明する図である。
図23】管理システムの他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
<実施の形態1>
<管理システムの全体構成>
通信速度の向上や通信端末の小型化に伴い、オフィス外でも各種の情報にアクセスできる環境が整っている。一方で、ビジネス上の会話や情報は秘匿性が高いため、静かでセキュアな環境が求められている。
本実施の形態では、これらの要望を満たす空間を提供するための管理システムについて説明する。もっとも、以下に説明する空間は、ビジネス用途に限るものでなく、個人での利用も可能である。
【0010】
図1は、管理システム1の全体構成の例を概略的に示す図である。
図1に示すように、管理システム1は、クラウドネットワーク2に接続された各種の端末で構成される。
図1には、管理システム1を構成する端末の例として、複数台の時間貸し空間3と、時間貸し空間3を利用する個々のユーザが携帯する複数台のユーザ端末4と、個々の時間貸し空間3の予約を管理する予約管理サーバ5と、個々の時間貸し空間3の利用の状況を管理する空間管理サーバ6と、利用者に対する請求を管理する請求管理サーバ7と、時間貸し空間3を利用できる会員の情報を管理する会員管理サーバ8とが示されている。
なお、本実施の形態における時間貸し空間3は、保守等で使用される時間を除き、24時間365日の利用が可能である。
【0011】
図1の場合、目的別(機能別)に1台のサーバが用意されているが、目的別に複数台のサーバを用意してもよい。また、1台のサーバで複数の目的(機能)を分担してもよい。
時間貸し空間3の時間貸しサービスを提供する事業者は、単独でも複数でもよい。例えば予約の管理、入退室や室内の利用状況などの管理、ユーザに対する利用料金の請求に関する管理、利用者として登録されている会員の管理のそれぞれを異なる事業者が分担してもよい。なお、1つの目的(機能)についての管理を複数の事業者が協働で提供してもよい。
また、1つの目的(機能)に対して複数のサーバを用意してもよい。単独の事業者が1つの目的(機能)に対して複数のサーバを用意する場合や複数の目的(機能)に対応する複数のサーバを用意する場合には、イントラネットを介して接続すればよい。
また、時間貸し空間3も単独の事業者が提供する場合だけでなく、複数の事業者によって提供されてもよい。
すなわち、管理システム1は、複数の事業者が提供するサービスの集合体として実現されてもよい。
【0012】
本実施の形態においては、施錠や解錠に電子鍵を使用する。電子鍵は、ユーザ端末4や不図示の近距離無線通信に対応したIC(Integrated Circuit)カードに格納する。ユーザ端末4を電子鍵として使用する場合には、予約の確定後に、予約管理サーバ5からユーザ端末4に電子鍵が提供される。ICカードを電子鍵として使用する場合には、予約の確定後に、電子鍵を記録したICカードが予約管理サーバ5から配布される。
電子鍵の場合には、施錠や解錠を有効に行える時間を自由に定めることができる。また、1つの時間貸し空間3の利用に必要な電子鍵を同じ時間帯に対して複数発行することもできる。
なお、物理的な鍵を予約された時間別に複数用意し、時間貸し空間3を施錠し又は解錠できるようにしてもよい。また、利用者の認証を鍵の代わりに使用してもよいし、電子鍵や物理的な鍵を補足する手段として使用してもよい。
【0013】
予約管理サーバ5は、例えば利用可能な時間貸し空間3を登録した登録リスト51と、個々の時間貸し空間3の利用を希望する予約者の割り当てを管理する予約リスト52を管理する。
本実施の形態の場合、予約管理サーバ5は、保守等に確保された時間を除き、24時間365日、時間貸し空間3の予約を受け付ける。また、必要に応じて、ユーザ端末4に対する電子鍵の発行や認証の処理を実行する。なお、認証の処理は空間管理サーバ6の側で行ってもよい。
【0014】
空間管理サーバ6は、例えば個々の時間貸し空間3への入退出の情報を管理する情報61と、個々の時間貸し空間3の利用状況の情報62を管理する。また、空間管理サーバ6は、時間貸し空間3に配置されている認証ユニット32A(図2参照)と通信し、利用者の入室を許可するか否かを管理する機能も有している。認証に際し、空間管理サーバ6は、予約管理サーバ5と通信する。
この他、空間管理サーバ6は、時間貸し空間3内に配置されている各種の機器31からの情報の収集や各種の機器31の制御を実行する機能を有している。
図1の例では、空間管理サーバ6はクラウドネットワーク2に接続されているが、機能の一部又は全部が、時間貸し空間3に収容されていてもよい。
【0015】
請求管理サーバ7は、予約情報と、利用者の情報と、入退出の情報等に基づいて会員別(自然人の場合もあれば法人の場合もある)に請求書を発行する機能を有している。請求管理サーバ7は、予約管理サーバ5から予約情報を取得し、空間管理サーバ6から入退出の情報を取得し、会員管理サーバ8から会員情報を取得する。
会員管理サーバ8は、登録されている会員の情報と利用者の情報とを管理する。会員が自然人の場合には、会員と利用者は一致する。一方、会員が法人の場合には、会員別に個々の利用者が登録され、管理される。
【0016】
図2は、ユーザに対して貸し出される時間貸し空間3の外観構成例を説明する図である。
本実施の形態における時間貸し空間3は、例えば駅の構内、空港、オフィスビル、飲食店やデーパート等の商業施設、銀行、図書館、美術館、博物館、公共機関や施設、連絡通路、公園等、室内外を問わずに配置される。
本実施の形態では、時間貸し空間3として防音性に優れた小部屋を想定する。この意味で、時間貸し空間3は、閉鎖型の空間の一例である。本実施の形態において、閉鎖型とは、密閉の意味ではなく、実用的な防音性能を備える意味で使用する。従って、通気口や小窓等の開口や隙間が、時間貸し空間3を構成する躯体30の一部分に設けられていてもよい。
【0017】
本実施の形態における躯体30は、天井30Aと、床面30Bと、開閉可能な扉32が取り付けられている壁面30Cと、壁面30Cの両側に位置する2つの壁面30D及び30Eと、扉32の対面側に位置する壁面30Fとで構成される。
本実施の形態の場合、扉32として、1枚の扉部材が弧を描くように開閉する片開きの開き戸を想定する。もっとも、扉32は、1つの開口部を2枚の扉部材で仕切る両開きの開き戸でもよい。
また、扉32は、引き戸でもよい。引き戸は、1枚の扉をスライドする片引きタイプでも、2枚以上の扉を行き違わせて開閉する引き違いタイプでも、2枚の扉を左右にスライドする引き分けタイプでもよい。
また、扉32は、蝶番で連結された2枚1組の扉部材を折り畳むように開く折れ戸でもよい。折れ戸にも、片方にのみ開くタイプと、両方向に開くタイプがある。
また、特殊なタイプとして、収納時に扉32が壁の中に引き込まれる引き込み戸や間仕切り戸であってもよい。
なお、扉32は内開きでも外開きでも構わない。
【0018】
本実施の形態の場合、壁面30D及び30Eの一部は、例えば透光性の部材(例えばガラス、アクリル樹脂)で構成される。
もっとも、壁面30D及び30Eの少なくとも一部には、目隠し(外部から室内の観察を難しくする又は視認性を低下させる)の機能を実現する構造、材質、加工などが採用されていてもよい。
例えば壁面30D及び30Eの材質自体が半透明の部材でもよいし、光が散乱するように部材の表面に細かい傷がつけられた部材でもよいし、同等の機能を備えるフィルム状の部材が貼り付けられていてもよい。なお、フィルム状の部材は、透過と白濁を電気的に切り替え可能な液晶フィルムや透過率を電気的に制御可能な偏光フィルムでもよい。
また、目隠しのための構造や部材が別に用意されていてもよい。もっとも、壁面30D及び30Eも、他の面と同じく光を通さない部材で構成されてもよい。もっとも、3面以上が透明又は半透明の部材で構成されていてもよい。
【0019】
時間貸し空間3の利用人数は、時間貸し空間の容積によっておおよそ決まる。本実施の形態では、基本的に1人が使用する個室型を想定しているが、多人数を収容可能な大部屋でもよい。大部屋は単独の部屋として構成されていてもよいが、時間貸し空間3の壁面30D及び30Eの一方又は両方を取り除いて連結して構成されていてもよい。
なお、個室型とは1人しか利用できない意味ではなく、少人数、例えば2~3人の利用が可能な意味で使用する。
個々の時間貸し空間3を構成する躯体30の形状や構造、提供される設備や性能は任意である。
本実施の形態の場合、躯体30の内部には、机33と椅子34が1つずつ配されている。また、机33の上には、機器31の一例である印刷装置31D、コンピュータ本体31E、表示デバイス31F、入力デバイス31Gが配されている。なお、コンピュータ本体31Eに記憶されているデータや履歴の情報は、システム側の制御によって、利用の終了後に全て消去される。利用者の情報を保護するためである。
【0020】
この他、機器31として、空調装置31A、人感センサ31B、室内の照明に使用される照明器具31C、機器31を含む電子機器の動作を制御する制御装置31H、認証ユニット32Aが配置される。
なお、機器31として例示した具体的な電子機器は一例である。例えば机33の上に配されている印刷装置31D、コンピュータ本体31E、表示デバイス31F、入力デバイス31Gは設置されていなくてもよい。そのような場合は、利用者のコンピュータやスマートフォンが用いられる。
【0021】
ここでの時間貸し空間3の全体(躯体30を含む)又は制御装置31Hは、特許請求の範囲における装置の一例である。制御装置31Hは、特許請求の範囲における制御手段の一例でもある。
また、ユーザ端末4、予約管理サーバ5、空間管理サーバ6、請求管理サーバ7、会員管理サーバ8も、特許請求の範囲における装置の一例である。
また、管理システム1は、特許請求の範囲における管理システムの一例である。
【0022】
<端末の構成>
図3図5を使用して、管理システム1を構成する端末の構成例を説明する。
図3は、ユーザ端末4のハードウェア構成の例を説明する図である。
本実施の形態では、ユーザ端末4として、例えばスマートフォンを使用する。
ユーザ端末4は、ファームウェアやアプリケーションプログラムの実行を通じて各種の機能を提供するCPU(Central Processing Unit)41と、ファームウェアやBIOS(Basic Input Output System)を格納する記憶領域であるROM(Read Only Memory)42と、プログラムの実行領域であるRAM(Random Access Memory)43を有している。
また、ユーザ端末4は、ダウンロードしたアプリケーションプログラムや電子鍵等を記憶する揮発性の記憶装置44と、外部との通信に使用される通信インタフェース(通信IF)45と、タッチパネル等の入力デバイス46と、情報の表示に使用される表示デバイス47と、撮像カメラ48とを有している。記憶装置44には、例えば半導体メモリが用いられる。
ここで、CPU41と各種のデバイスはバス49を通じて接続されている。
【0023】
図4は、管理システム1を構成するサーバのハードウェア構成の例を説明する図である。
図4では、予約管理サーバ5の構成を代表的に表している。もっとも、他のサーバ、すなわち、空間管理サーバ6、請求管理サーバ7、会員管理サーバ8の構成も図4に示す構成と同様である。
予約管理サーバ5は、オペレーションシステムやアプリケーションプログラムの実行を通じて各種の管理機能を提供するCPU51Aと、オペレーションシステムやBIOSを格納する記憶領域であるROM52Aと、プログラムの実行領域であるRAM53を有している。
また、予約管理サーバ5は、担当する管理機能を実現するアプリケーションプログラムや各種の管理データを記憶する揮発性のハードディスクドライブ(HDD)54と、外部との通信に使用される通信インタフェース(通信IF)55と、キーボード等の入力デバイス56と、情報の表示に使用される表示デバイス57とを有している。
ここで、CPU51Aと各種のデバイスはバス58を通じて接続されている。
なお、各サーバは、管理データを保持するデータベースの一例である。
【0024】
図5は、管理システム1を構成する時間貸し空間3の構成例を説明する図である。
時間貸し空間3は、空調装置31A、人感センサ31B、照明器具31C、印刷装置31D、コンピュータ本体31E、表示デバイス31F、入力デバイス31G、制御装置31H、認証ユニット32Aを有している。
ここで、空調装置31Aは、室内の気温や湿度の調整に使用される。なお、空調装置31Aと共に、又は、空調装置31Aとは別に換気に特化した機構を設けてもよい。
人感センサ31Bは、室内の人の検知に用いられるセンサであり、様々なタイプが存在する。例えば人の動きを検知可能な焦電型赤外線人感センサ、人の数と位置を検知可能な画像型人感センサやサーモパイル型人感センサがある。目的に応じて、これらのセンサのうちのいずれか、または、複数を組み合わせて使用する。
【0025】
印刷装置31D、コンピュータ本体31E、表示デバイス31F、入力デバイス31Gは、利用者の操作用に予め室内に用意されている情報機器の一例である。これらはLAN(Local Area Network)31W(例えばLANケーブルや無線LAN)を通じて接続されている。なお、利用者がコンピュータを持ち込む場合には、持ち込まれたコンピュータがLAN31Wに接続される。無線LANには、例えばWiFi(商標)やブルートゥース(登録商標)が用いられる。
制御装置31Hは、LAN31Wに接続された機器から情報を収集すると共に、個々の機器の動作を制御する制御用のコンピュータである。なお、制御装置31Hは、管理システム1によっては、空間管理サーバ6としての機能を提供することもある。
認証ユニット32Aは、例えば扉32に取り付けられている。認証ユニット32Aは、扉32の施錠や解錠に必要となる情報の取得や受け渡しに使用される。例えば認証の処理は、予約管理サーバ5で実行され、認証の結果だけが認証ユニット32Aに通知される。認証ユニット32Aは、認証が成功した場合、扉32を解錠する。解錠の後、扉32の開閉が可能になり、時間貸し空間3(図2参照)への入室が可能になる。
【0026】
この他、時間貸し空間3には、外部との通信用の通信インタフェース(通信IF)31Iが用意されている。通信IF31Iは、クラウドネットワーク2(図1参照)に接続されており、各種のサーバとの通信に使用される。
時間貸し空間3には、扉32の開閉を機械的に制御する扉開閉機構31Jが用意されている。扉開閉機構31Jには、例えば扉32を駆動して開閉する機構や利用者による扉32の開閉操作に介在して開閉に要する負荷の大きさを調整する機構が含まれる。
時間貸し空間3には、開閉ロック機構31Kが用意されている。開閉ロック機構31Kは、利用者による扉32の開閉を制限する機構である。開閉ロック機構31Kが作動している間、少なくとも扉32を閉じる操作が制限される。
【0027】
時間貸し空間3には、室内や室外における利用者の動きの監視に用いる監視カメラ31Lが用意される。もっとも、監視カメラ31Lは必須ではない。
時間貸し空間3には、表示デバイス31Mが用意される。本実施の形態における表示デバイス31Mは、例えば扉32が設けられている壁面30Cの外側に配置され、入室しようとする利用者の操作用や情報の提供用に使用される。また、表示デバイス31Mは、時間貸し空間3を利用している利用者の操作用や情報の提供用に使用される。
時間貸し空間3には、スピーカ31Nが用意される。スピーカ31Nは、室内の利用者に対する情報の報知や室外にいる人への情報の報知に使用される。スピーカ31Nは報知手段の一例である。
時間貸し空間3には、集音マイク31Oが用意される。集音マイク31Oは、室内の音の取得に使用される。
【0028】
時間貸し空間3には、温度センサ31Pが用意される。温度センサ31Pは、室内の気温の測定に使用される。
時間貸し空間3には、湿度センサ31Qが用意される。湿度センサ31Qは、室内の湿度の測定に使用される。
時間貸し空間3には、マグネットセンサ31Rが用意される。マグネットセンサ31Rは、扉32に取り付けられており、磁力の検知を通じて扉32の開閉を検知する。
時間貸し空間3には、加速度センサ31Sが用意される。加速度センサ31Sは、モノの動きの検知に使用される。
【0029】
時間貸し空間3には、マットセンサ31Tが用意される。マットセンサ31Tは、モノの重さを検知して人の滞在時間や混雑状況の可視化に使用される。
時間貸し空間3には、空気環境モニタ31Uが用意される。空気環境モニタ31Uは、室内の空気に含まれる成分を検知するセンサであり、例えばPM2.5やPM10の濃度、二酸化炭素の濃度、温度、湿度、揮発性有機化合物の濃度などを測定する。なお、測定対象はこれらの全てである必要はないし、他の成分も測定対象であってもよい。空気環境モニタ31Uによって温度や湿度を測定可能な場合、温度センサ31Pと湿度センサ31Qを別に設ける必要はない。
【0030】
時間貸し空間3には、光源部31Vが用意される。光源部31Vは、扉32(図2参照)が移動する範囲やその外縁などを光の照射や点灯によって示す。例えば扉32が移動する範囲を照明光で示す場合、1つ又は複数のスポットライトを使用する。また例えば扉32が移動する範囲の外縁を示す場合には、外縁に沿うように床面30Bに埋め込まれた複数のLED(Light Emitting Device)を使用する。なお、この種の光源部31Vは時間貸し空間3と一体である必要はなく、時間貸し空間3が設置される場所側に配置されていてもよい。
【0031】
<制御機能>
ここでは、図6を使用して、管理システム1を構成する端末のいずれかにより、又は、複数の端末の協働により実現される制御機能について説明する。
ここでは、制御装置31Hが単独で制御機能を提供する場合について説明する。
図6は、制御装置31Hのソフトウェア構成の例を説明する図である。
制御装置31Hはプログラムの実行を通じて該当する機能を実現する。
制御装置31Hは、扉32(図2参照)が開かれることや扉32の周囲に他者が存在することを報知する制御部101と、扉32を開く操作の発生を予測する開操作予測部102とを有している。制御部101には、扉32が開く際に影響が及ぶ範囲を示す機能や扉32が開かれる際の速度を制御する機能も設けられている。ここでの制御部101は、特許請求の範囲における制御手段の一例である。
【0032】
開操作予測部102は、例えば監視カメラ31Lから出力される撮像データを解析して、扉32を開く操作の発生を予測する。なお、人感センサ31Bが検知する範囲に人がいる場合には扉32を開く操作が行われると予測してもよい。人感センサ31Bが検知する範囲は、扉32の内側と外側で異なっていてもよい。人感センサ31Bや監視カメラ31Lは、扉32の内側と外側の両方に配置されることが望ましい。
図6において、スピーカ31Nや表示デバイス31Mは、扉32の内側にいる人や外側にいる人への報知に使用される。スピーカ31Nと表示デバイス31Mは報知手段の一例である。
また、扉開閉機構31Jは、扉32が開かれる際の速度の調整に使用される。
また、光源部31Vは、扉32が移動する範囲やその外縁を示す場合に用いられる。
これらの各部を用いる具体的な制御例については後述する。
【0033】
<制御例>
以下では、制御部101(図6参照)の制御を通じて実現される制御の例を説明する。
【0034】
<例1>
ここでは、図7図11を使用して、制御部101による制御の例1を説明する。
図7は、例1に係る制御部101の制御動作例を説明する図である。
制御部101は、扉32(図2参照)が施錠されているか否かを判定している(ステップ11)。この判定は、利用者が室内にいる場合にも、室内にいない場合にも実行される。例えば予約された時間中であっても、飲食やお手洗いのために時間貸し空間3の外に出る場合があるからである。
ステップ11で否定結果が得られている間、制御部101は、この判定を繰り返す。
ステップ11で肯定結果が得られた場合、制御部101は、解錠する操作があったか否かを判定する(ステップ12)。
【0035】
ステップ12の判定は、利用者が室内にいる場合にも、利用者が室内にいない場合にも実行される。また、解錠する操作は、時間貸し空間3の外側から行われてもよいし、内側から行われてもよい。
ここでの解錠する操作は、特許請求の範囲における「出入り口を開の状態にする操作」の一例である。なお、解錠する操作には、例えば鍵を取り出す仕草やユーザ端末4を認証ユニット32Aにかざす操作のように解錠する操作の実行が予測される行動を含めてもよい。この操作の予測には、開操作予測部102が用いられる。
ステップ12で否定結果が得られている間、制御部101は、ステップ11に戻る。
【0036】
ステップ12で肯定結果が得られた場合、制御部101は、扉32が移動する線上に他者がいるか否かを判定する(ステップ13)。ここでの判定は、扉32の表面の各部位について実行される。換言すると、面としての扉32が移動する可能性がある3次元の空間に人体の一部又は持ち物等が含まれるか否かが判定される。
なお、判定の対象は、扉32の表面の一部分(例えば人の身長の範囲)が移動する範囲に限定してもよい。簡易的には、床面に限定してもよい。なお、他者の位置の特定には、人感センサ31Bや監視カメラ31L等を使用する。
【0037】
ステップ13で肯定結果が得られた場合、制御部101は、扉32が開かれることを表示デバイス31M(図6参照)やスピーカ31Nを使用して反対側の人に報知する(ステップ14)。続いて、制御部101は、解錠の操作者に対して反対側に他者がいることを表示デバイス31Mやスピーカ31Nを使用して報知する(ステップ15)。
図7の例では、操作者とは異なる人への報知後に、操作者に対して報知を行っているが、順番が入れ替わってもよいし、同時でもよい。この報知の段階では、扉32の施錠は維持されたままである。
報知の終了後、制御部101の制御により解錠の操作が有効化される(ステップ16)。この後、扉32は実際に開けることが可能になる。このように、報知を待って解錠の操作が有効になるので、報知から扉32が開くまでの時間を確保できる。なお、扉32は、室内側からも室外側からも開けることができる。
【0038】
ステップ13で否定結果が得られた場合、制御部101は、操作側とは反対側の予め定めた範囲内に人がいるか否かを判定する(ステップ17)。この判定では、例えば内開きの扉32が内側から解錠の操作された場合に、扉32の反対側の予め定めた範囲(例えば扉32に手が届く範囲)に人がいるかが確認される。例えば扉32が開く方向とは反対側の面に別の人が寄りかかっていると、扉32が勢いよく開く可能性があるためである。ここでの他者の位置の特定にも、人感センサ31Bや監視カメラ31L等を使用する。
ステップ17で肯定結果が得られた場合、制御部101は、ステップ14に移行し、前述の報知を行う。一方、ステップ17で否定結果が得られた場合、制御部101は、ステップ16に直接移行する。気を付けるべき他者がおらず、安全に扉32を開くことができるためである。この場合、待ち時間なく解錠できる。
【0039】
・具体例1
図8は、外開きの扉32を内側から外側に開く場合の制御の例を説明する図である。(A)は扉32が移動する範囲111の外側にBさんがいる状態を示し、(B)は制御の内容を示す。
図8の場合、Bさんは扉32が移動する範囲111だけでなく、予め定めた範囲112の外にも位置している。すなわち、Aさんが扉32を開いても、扉32がBさんに当たることはない。この場合、制御部101は、ステップ13及び17の両方で否定結果を得てステップ16に移行し、解錠の操作を有効化する。すなわち、操作の後すぐに解錠の操作が有効になる。このため、Aさんはすぐに扉32を開けることができる。
【0040】
・具体例2
図9は、外開きの扉32を内側から外側に開く場合の他の制御の例を説明する図である。(A)は扉32が移動する範囲111の内側にBさんがいる状態を示し、(B)は制御の内容を示す。
図9の場合、Bさんは扉32が移動する範囲111の内側に位置している。すなわち、Aさんが扉32を開くと、扉32がBさんに当たる可能性がある。この場合、制御部101は、ステップ13で肯定結果を得てステップ14及び15を実行する。例えば解錠する操作を行う室内側のAさんに対しては「扉の外に人がいますよ」と報知して他者への注意を喚起する。一方、解錠する操作の反対側である室外側のBさんに対しては「扉が開けられますよ」と報知して扉32からの退避を喚起する。
なお、この報知は、解錠の操作が有効化される前に実行される。このため、AさんとBさんには、扉32が開き始めるまでの間に他者に注意を払うことが可能になる。この結果、Aさんは慎重に扉32を開くことができ、Bさんも扉32の動きに対処できる。
【0041】
・具体例3
図10は、内開きの扉32を外側から内側に開く場合の制御の例を説明する図である。(A)は扉32が移動する範囲111の内側にAさんがいる状態を示し、(B)は制御の内容を示す。
図10の場合、Aさんは扉32が移動する範囲111の内側に位置している。すなわち、Bさんが扉32を開くと、扉32がAさんに当たる可能性がある。この場合、制御部101は、ステップ13で肯定結果を得てステップ14及び15を実行する。例えば解錠する操作を行う室外側のBさんには「扉の内側に人がいますよ」と報知して他者への注意を喚起する。一方、解錠する操作の反対側である室内側のAさんに対しては「扉が開けられますよ」と報知して扉32からの退避を喚起する。
この報知も、解錠の操作が有効化される前に実行される。このため、AさんとBさんには、扉32が開き始めるまでの間に他者に注意を払うことが可能になる。この結果、Bさんは慎重に扉32を開くことができ、Aさんも扉32の動きに対処できる。
【0042】
・具体例4
図11は、内開きの扉32を内側から内側に開く場合の制御の例を説明する図である。(A)は操作者であるAさんとは反対側の予め定めた範囲112の内側にBさんがいる状態を示し、(B)は制御の内容を示す。
図11の場合、Aさんは扉32が移動する範囲111の内側に位置している。ただし、範囲111内にいる人と解錠の操作を行ったAさんとは同じである。このため、ステップ13では、否定結果が得られる。
次に、制御部101は、操作が行われた側とは反対側(すなわち室外)の予め定めた範囲112に他者がいるかを判定する(ステップ17)。図11(A)の場合、Bさんは扉32の外側の範囲112に位置している。このため、制御部101は、ステップ17で肯定結果を得てステップ14及び15を実行する。例えば解錠する操作を行う室内側のAさんには「扉の外側に人がいますよ」と報知して他者への注意を喚起する。一方、解錠する操作の反対側である室外側のBさんに対しては「扉が内側に開けられますよ」と報知して扉32からの退避を喚起する。
この報知も、解錠の操作が有効化される前に実行される。このため、仮にBさんが扉32に寄りかかっていたとしても、実際に扉32が開き始めるまでに扉32にもたれかかるのを止めることができる。Bさんが扉32から離れることができれば、Aさんが予想しない速さで扉32が内側に開いてAさんにぶつかることもなく、予想外に扉32が開くことでBさんが体勢を崩すこともない。
【0043】
・具体例5
図12は、引き戸の扉32を開く場合の制御の例を説明する図である。(A)は扉32が移動する範囲111の内側にBさんがいる状態を示し、(B)は制御の内容を示す。
図12の場合、Bさんは扉32が移動する範囲111の内側に位置している。すなわち、Aさんが扉32を開くと、扉32がBさんに当たる可能性がある。この場合、制御部101は、ステップ13で肯定結果を得てステップ14及び15を実行する。例えば解錠する操作を行う室内側のAさんには「扉の外側に人がいますよ」と報知して他者への注意を喚起する。一方、解錠する操作の反対側である室外側のBさんに対しては「扉が開けられますよ」と報知して範囲111からの退避を喚起する。
この報知も、解錠の操作が有効化される前に実行される。このため、AさんとBさんには、扉32が開き始めるまでの間に他者に注意を払うことが可能になる。この結果、Aさんは慎重に扉32を開くことができ、Bさんも扉32の動きに対処できる。
【0044】
<例2>
図13を使用して、制御部101による制御の例2を説明する。
図13は、例2に係る制御部101の制御動作例を説明する図である。図13には図7との対応部分に対応する符号を付している。
この例の場合には、ステップ15とステップ16の間に、報知から予め定めた時間が経過されたか否かを判定するステップ21が設けられる点で図7と異なっている。
この例の場合、予め定めた時間が経過するまではステップ21で否定結果が得られる。すなわち、ステップ21の判定が繰り返される。このため、ステップ21で肯定結果が得られて、解錠の操作が有効になるまでの時間として、予め定めた時間を確保できる。例えば10秒の時間を確保できる。
【0045】
前述した例1の場合には、扉32(図2参照)が開かれる前に予告的な報知が行われるが、解錠の操作がすぐに有効化される設定の場合には、報知とほぼ同時に扉32が開く可能性もある。それでは、報知の効果も低減してしまう。
一方、この例の場合には、解錠の操作があっても、その操作が有効化されるまでに予め定めた時間の経過が必要になるので、報知によって他者の存在に気づいてから実際に扉32が開き始めるまでの時間として予め定めた時間を確保できる。また、確保される時間を利用して様々な準備を行うことも可能になる。
【0046】
<例3>
図14を使用して、制御部101による制御の例3を説明する。
図14は、例3に係る制御部101の制御動作例を説明する図である。図14には図13との対応部分に対応する符号を付している。
この例の場合には、ステップ21に代えて、解錠する操作から予め定めた時間が経過されたか否かを判定するステップ31を配置する。
【0047】
ステップ21(図13)とステップ31(図14)との違いは、時間を管理する起点のみである。
この制御の場合には、解錠の操作があってから報知が実行されるまでの時間が変動することがあっても、解錠の操作の時点から解錠の操作が有効化されるまでの時間の変動を無くすことができる。
【0048】
<例4>
図15を使用して、制御部101による制御の例4を説明する。
図15は、例4に係る制御部101の制御動作例を説明する図である。図15には、図7との対応部分に対応する符号を付している。
この例の場合には、ステップ15とステップ16の間に、退避が完了したか否かを判定するステップ41が設けられる点で図7と異なっている。ここでの退避の完了とは、例えば扉32が移動する範囲111の内側にいた人が範囲111の外側に移動したことの確認により、又は、操作側との反対側の予め定めた範囲112の内側にいた人が範囲112の外側に移動したことの確認により行えばよい。なお、この移動の確認には、人感センサ31Bや監視カメラ31Lを使用する。
例1~例3の場合、事前に報知があっても、実際に退避するかは報知を受けた当事者に委ねられる。このため、扉32を開くと、依然として扉32が人に当たる可能性が残るが、この例の場合には、安全が確認されるまで解錠を有効化せず、扉が開かないようにできる。
【0049】
<例5>
図16を使用して、制御部101による制御の例5を説明する。
図16は、例5に係る制御部101の制御動作例を説明する図である。図16には図13との対応部分に対応する符号を付している。
前述した例3の場合には、報知から解錠の操作が有効になるまでの時間として予め定めた時間を確保している(ステップ21)。この時間は短すぎては効果が低減するので長く設定される可能性がある。
ただし、報知を受けた人の準備が整っているのであれば、設定された時間の経過を待つ必要もない。
【0050】
そこで、この制御の例の場合には、ステップ21で否定結果が得られた場合に報知を確認する操作があったか否かを判定するステップ51を設けている。具体的には、確認ボタン(不図示)の操作があったか否かを判定するステップを設け、ステップ51で肯定結果が得られた場合には予め定めた時間が経過していなくてもステップ16に移行できるようにする。ここでの確認ボタンの操作は、特許請求の範囲における「特定の操作」の一例である。
なお、ステップ51で否定結果が得られた場合には、ステップ21に戻る。
【0051】
図17は、例5に対応する制御の内容を説明する図である。図10(B)の場合には、報知だけであったが、この制御の例の場合には、Aさんに対して「扉が開けられますよ」との報知に加え、「準備ができたら確認ボタンを押してください」との内容が報知される。一方、解錠の操作を行ったBさんに対しては「扉の内側に人がいますよ」との報知に加え、「しばらくお待ちください」との内容が報知される。
この例の制御の手法を用いれば、解錠の操作を行った人の待ち時間と扉32が開かれることの報知を受けた人の準備に要する時間の確保との両立を図ることができる。
【0052】
なお、解錠の操作の報知を受けた側の人の確認の操作が検知されるまでは解錠の操作を有効化しない設定とすることも可能である。ただし、この設定では、いつまでも解錠が可能にならない場面を想定した対策を別に設けることが好ましい。
また、解錠の操作が有効になるまでの時間を延長するボタンを用意し、解錠の操作が有効になるまでに準備が間に合わない場合には利用者の操作によって延長できるようにしてもよい。延長は、操作のたびに可能としてもよいが、延長可能な回数を制限してもよい。また、操作によって延長できる時間を数種類から選択できるようにしてもよい。準備に必要な時間は様々なためである。
【0053】
<例6>
ここでは、図18を使用して、制御部101による制御の例6を説明する。
図18は、例6に係る制御部101の制御動作例を説明する図である。図18には図7との対応部分に対応する符号を付している。
この例は、扉32(図2参照)に施錠する機能が備わっていない場合又は既に解錠されている場合に使用される。
【0054】
この例の場合、制御部101は、扉32を開く操作か否かを判定する(ステップ61)。ここでの扉32を開く操作は、特許請求の範囲における「出入り口を開の状態にする操作」の一例である。なお、扉32を開く操作には、例えば取っ手に手を延ばす又は触れる仕草のように扉32を開く操作の実行が予測される行動を含めてもよい。予測には、監視カメラ31Lの撮像データを使用する。
ステップ61で否定結果が得られている間、制御部101は、この判定を繰り返す。扉32を開く操作でなければ、入室や退室は生じないためである。この判定は、利用者が室内にいる場合にも、室内にいない場合にも実行される。また、開く操作は、扉32の内側から開く操作でも外側から開く操作でもよい。
【0055】
ステップ61で肯定結果が得られた場合、制御部101は、制御部101は、扉32が移動する線上に他者がいるか否かを判定する(ステップ13)。なお、ステップ13で肯定結果が得られた場合にはステップ14及び15の報知を行って処理を終了する。この報知により、扉32の内側にいる人も外側にいる人も、互いに他者の存在に気づくことができ、扉32が開く操作に備えることができる。
また、ステップ13で否定結果が得られた場合には、例1と同じく、ステップ17の処理を実行する。ステップ17で肯定結果が得られた場合には、やはりステップ14及び15の報知を行って処理を終了する。なお、ステップ17で否定結果が得られた場合には、扉32を自由に開くことが可能なため、制御部101は、報知を行うことなく処理を終了する。この場合、操作者は自由に出入りすることができる。
【0056】
<例7>
前述の例1~例6においては、扉32が開く前に室内側にいる人と室外側にいる人の両方に報知を行い、扉32を開く操作や開く扉32への注意を喚起している。
この例では、音声や表示による報知に加え、扉32が移動する範囲111(図8参照)の範囲やその外縁を報知する手法について説明する。
図19は、時間貸し空間3に外開きの扉32が取り付けられている場合における扉32が移動する範囲111を照明光121で示す例を示す図である。この例の場合、照明光121を照射する光源部31Vは、時間貸し空間3の上部に取り付けられている。なお、光源部31Vの取り付け位置は任意であり、時間貸し空間3が設置されている場所の壁などに配置されていてもよい。なお、扉32が内開きの場合には、光源部31Vは室内側に配置される。
【0057】
図20は、時間貸し空間3に内開きの扉32が取り付けられている場合における扉32が移動する範囲の外縁に沿って複数の光源部31Vが埋め込まれている例を示す図である。この例の場合、光源部31Vは、時間貸し空間3の床面30B(図2参照)に取り付けられている。なお、扉32が外開きの場合には、時間貸し空間3が設置されている場所の床面に、扉32が移動する範囲の外縁に沿うように光源部31Vを埋め込んでもよい。
この制御の例を用いれば、扉32が開く側の人がどの位置に移動すればよいかを視覚的に確認でき、扉32が当たることがなくなる。
【0058】
<例8>
前述の例1~7では、扉32(図2参照)が開かれることを事前に報知し、扉32の内側にいる人と外側にいる人の双方に注意を喚起させている。しかし、事前に報知があっても、扉32が急速に開かれると、扉32が移動する範囲にいる人に扉32があたってしまう可能性がある。
そこで、この例では、扉32の開き始めの速度が予め定めた速度よりも遅くなるように扉32に作用する負荷の大きさを制御する、または、扉32の駆動速度を低減する。
【0059】
図21は、扉32が開き戸である場合に開き始めの速度を遅くするための機構の例を示す図である。扉32は、回転軸131Aと回転軸131Bによって筐体側に対して回転自在に取り付けられている。図21の場合、上部側(天井側)の回転軸131Aに対して同軸に扉側ギヤ132が取り付けられている。扉側ギヤ132は、回転軸131Aに固定されている。
変速ギヤ134は、回転軸133に固定されたギヤ径が異なる3つのギヤ134A、134B、134Cで構成される。ギヤ径は、ギヤ134Aよりも134Bが大きく、ギヤ134Bよりも134Cが大きい。なお、図21では変速ギヤ134が3つのギヤ134A、134B、134Cで構成されているが、ギヤの数は任意である。また、他の変速機構を用いることも可能である。
【0060】
変速ギヤ134の位置は、扉側ギヤ132に対して相対的に移動される。例えば扉32の開き始めの期間の場合、変速ギヤ134は、扉側ギヤ132とギヤ134Aが噛み合う位置(ギヤ径1の位置)に制御される。さらに開き角が大きくなると、変速ギヤ134は、扉側ギヤ132とギヤ134Bが噛み合う位置(ギヤ径2の位置)に制御される。ある開き角度を超えると、変速ギヤ134は、扉側ギヤ132とギヤ134Cが噛み合う位置(ギヤ径3の位置)に制御される。
図21では、変速ギヤ134の移動は回転軸133の軸方向への移動を表す矢印と、回転軸133と直交する面内への移動を表す矢印とで表している。この回転軸133の移動は不図示の駆動機構によって実現される。
回転軸133の移動は制御部101が実行する。
【0061】
図22は、開き戸である扉32を開く際に使用する速度制御の例を説明する図である。ここでの開き角は、扉32が閉じている状態を0(ゼロ)とし、扉32が開く方向に値が大きくなるものとする。
まず、制御部101は、扉32の開き角θと第1の基準角θ1を比較する(ステップ71)。扉32の開き角θが第1の基準角θ1よりも小さい間(ステップ71で肯定結果の場合)、制御部101は、ギヤ径1の位置に変速ギヤ134を制御する(ステップ72)。
やがて、扉32の開き角θが第1の基準角θ1以上になると(ステップ71で否定結果)、制御部101は、開き角θと第2の基準角θ2を比較する(ステップ73)。開き角θと第2の基準角θ2より小さい間(ステップ73で肯定結果の場合)、制御部101は、ギヤ径2の位置に変速ギヤ134を制御する(ステップ74)。
やがて、扉32の開き角が第2の基準角θ2以上になると(ステップ73で否定結果)、制御部101は、ギヤ径3の位置に変速ギヤ134を制御する(ステップ75)。
【0062】
この変速ギヤ134の移動制御により、手動で扉32が開かれる場合には、開き始めの扉32に作用する負荷の大きさを大きくして、始めから扉32が速い速度で開かないようにできる。扉32がゆっくり開けば、退避のための時間を確保できる。
なお、電気制御によって扉32を開く場合には、回転軸133を回転させる速度が一定であれば、開き始めの回転速度を最も遅くできる。この制御により、退避のための時間を確保できる。
なお、引き戸の場合には角度ではなく、閉じた状態から開く方向への移動量の大きさによって扉32に作用する負荷の大きさを可変すればよい。電気制御によって引き戸を開く場合にも、開き始めの速度が遅くなるように制御すればよい。
【0063】
<他の実施形態>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上述の実施の形態に記載の範囲には限定されない。上述の実施の形態に、種々の変更又は改良を加えたものも、本発明の技術的範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
例えば管理システム1(図1参照)は前述した構成に限らない。図23は、管理システム1Aの他の構成例を示す図である。図23には、図1と対応する部分に対応する符号を付して示している。管理システム1Aは、複数の時間貸し空間3を管理する拠点サーバ141を用いる点で管理システム1(図1)と異なっている。コンピュータの構成を有する拠点サーバ141は、プログラムの実行を通じて制御部101(図6参照)の機能を実行してもよい。この意味において、拠点サーバ141は、特許請求の範囲における装置の一例である。
【0064】
前述の実施の形態においては、時間貸しされる空間として図2に示すように防音性能を備える小部屋を想定したが、利用の際に同様の状況が起こり得る空間であれば、例えば貸し会議室、学習室、各種の客室にも適用できる。
前述の実施の形態では、扉32が施錠可能な場合を前提に説明しているが、前述した制御機能は、扉32が施錠できない場合にも利用できる。
前述の実施の形態では、時間貸しされる空間を前提としているが、必ずしも時間単位で貸し出される空間でなくてもよい。
前述の実施の形態では、時間貸し空間3に付属する扉32を開く又は解錠する操作の実行主体と移動する扉32の軌道上に位置する客体とが共に自然人である場合について説明したが、いずれか一方は動物であってもよく、またロボットであってもよい。この意味で、自然人、動物、ロボットは、いずれも特許請求の範囲における存在の一例である。
【符号の説明】
【0065】
1、1A…管理システム、2…クラウドネットワーク、3…時間貸し空間、4…ユーザ端末、5…予約管理サーバ、6…空間管理サーバ、7…請求管理サーバ、8…会員管理サーバ、101…報知制御部、102…開操作予測部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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