(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】樹脂組成物、半導体用配線層積層体及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
H05K 1/03 20060101AFI20240910BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240910BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20240910BHJP
C08F 22/40 20060101ALI20240910BHJP
C08L 35/00 20060101ALI20240910BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20240910BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
H05K1/03 610H
B32B27/00 A
B32B27/36
C08F22/40
C08L35/00
H01L23/30 R
H05K1/03 610P
(21)【出願番号】P 2022194258
(22)【出願日】2022-12-05
(62)【分割の表示】P 2022117845の分割
【原出願日】2017-09-26
【審査請求日】2022-12-05
(31)【優先権主張番号】P 2016186761
(32)【優先日】2016-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017009734
(32)【優先日】2017-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】安部 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】蔵渕 和彦
(72)【発明者】
【氏名】峯岸 知典
(72)【発明者】
【氏名】満倉 一行
(72)【発明者】
【氏名】鳥羽 正也
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-091794(JP,A)
【文献】特開昭62-184025(JP,A)
【文献】特開2011-003884(JP,A)
【文献】特開2010-258415(JP,A)
【文献】国際公開第02/096969(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/114286(WO,A1)
【文献】特開2015-224308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/00-27/42
C08C 19/00-19/44
C08F 6/00-246/00
301/00
C08G 73/00-73/26
C08L 35/00
H05K 1/03
H01L 23/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PETフィルムと、樹脂組成物で形成された硬化性フィルムと、を備える材料であって、
前記硬化性フィルムは、5μm以下のライン幅とスペース幅を有する微細な銅配線と接する配線層間絶縁層を形成するために用いられ、
前記樹脂組成物が、硬化性樹脂とカップリング剤とを含有し、無機フィラーを含有せず、
前記硬化性樹脂が、下記式(VIII)で表される化合物を含み、
【化1】
[式中、Z
1
は、炭素数4以上の主鎖を有する鎖状のアルキレン基を含む2価の炭化水素基を表す。]
前記樹脂組成物の硬化物の、130℃、相対湿度85%の環境に200時間置かれた後の吸湿率が1質量%以下であり、
前記樹脂組成物の硬化物における塩化物イオンの濃度が5ppm以下である、材料(ただし、前記樹脂組成物が、マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物を含有する場合を除く。)。
【請求項2】
前記炭化水素基の炭素数が8以上である、請求項
1に記載の材料。
【請求項3】
前記樹脂組成物が硬化剤を更に含有し、
前記硬化剤が光ラジカル重合開始剤を含む、請求項
1又は2に記載の材料。
【請求項4】
前記樹脂組成物が(メタ)アクリロイル基を有する化合物を更に含有する、請求項1~
3のいずれか一項に記載の材料。
【請求項5】
前記樹脂組成物が熱可塑性樹脂を更に含有する、請求項1~
4のいずれか一項に記載の材料。
【請求項6】
前記樹脂組成物の硬化物の破断伸びが5~200%である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の材料。
【請求項7】
前記樹脂組成物の硬化物の40℃における貯蔵弾性率が10MPa~5GPaである、請求項1~
6のいずれか一項に記載の材料。
【請求項8】
前記樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度が120~240℃である、請求項1~
7のいずれか一項に記載の材料。
【請求項9】
前記樹脂組成物の硬化物の10GHzでの誘電率が3.0以下である、請求項1~
8のいずれか一項に記載の材料。
【請求項10】
前記樹脂組成物の硬化物の10GHzでの誘電正接が0.005以下である、請求項1~
9のいずれか一項に記載の材料。
【請求項11】
前記樹脂組成物の硬化物の5%重量減少温度が300℃以上である、請求項1~
10のいずれか一項に記載の材料。
【請求項12】
有機絶縁層、前記有機絶縁層内に設けられた5μm以下のライン幅とスペース幅を有する微細な銅配線、及び前記銅配線と前記有機絶縁層とを仕切るバリア金属膜を含む、複数の配線層と、
前記複数の配線層の間に設けられた配線層間絶縁層と、
を備え、
前記銅配線の表面の一部が前記配線層の一方又は両方の主面側に露出し、露出した前記銅配線の表面に前記配線層間絶縁層が接しており、
前記配線層間絶縁層は、請求項1~
11のいずれか一項に記載の硬化性フィルムの硬化物である、半導体用配線層積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂組成物、半導体用配線層積層体及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体パッケージの高密度化及び高性能化を目的に、異なる性能のチップを一つのパッケージに混載する実装形態が提案されている。この場合、コスト面に優れた、チップ間の高密度インターコネクト技術が重要になっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
非特許文献1及び非特許文献2には、パッケージ上に異なるパッケージをフリップチップ実装によって積層することで接続するパッケージ・オン・パッケージ(PoP:Package on Package)の態様が記載されている。このPoPは、スマートフォン、タブレット端末等に広く採用されている態様である。
【0004】
複数のチップを高密度で実装するための他の形態として、高密度配線を有する有機基板を用いたパッケージ技術、スルーモールドビア(TMV:Through Mold Via)を有するファンアウト型のパッケージ技術(FO-WLP:FanOut-WaferLevelPackage)、シリコン又はガラスインターポーザを用いたパッケージ技術、シリコン貫通電極(TSV:ThroughSilicon Via)を用いたパッケージ技術、基板に埋め込まれたチップをチップ間伝送に用いるパッケージ技術等が提案されている。
【0005】
特に半導体用配線層及びFO-WLPにおいて半導体チップ同士を搭載する場合、当該半導体チップ同士を高密度で導通させるための微細な配線層が必要となる(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2012-529770号公報
【文献】米国特許出願公開第2011/0221071号明細書
【非特許文献】
【0007】
【文献】Jinseong Kim et al.,"Application of Through Mold Via (TMV)asPoP Base Package",Electronic Components and Technology Conference(ECTC),p.1089-1092 (2008)
【文献】S.W. Yoon et al., "AdvancedLow Profile PoP SolutionwithEmbedded Wafer Level PoP (eWLB-PoP)Technology", ECTC, p.1250-1254(2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ビルドアップ基板、ウェハレベルパッケージ(WLP)、ファンアウト型のPoPのボトムパッケージ等には、複数の半導体チップを搭載するための配線層(半導体用配線層)が用いられることがある。例えば、この配線層内に5μm以下のライン幅とスペース幅とを有する微細な配線が配置される場合、当該配線は、トレンチ法を用いて形成される。トレンチ法とは、有機絶縁層の表面にレーザ等で形成したトレンチ(溝)に配線となる金属層をめっき法等によって形成する方法である。このため、有機絶縁層上に形成される配線の形状は、溝の形状に沿ったものとなる。
【0009】
トレンチ法によって配線層内に微細な配線を形成する際には、低コスト化且つ配線抵抗の上昇抑制を図るために、例えば、高い導電性を有する銅が用いられることがある。銅配線を形成した場合、銅が有機絶縁層内に拡散することがある。この場合、拡散した銅を介して銅配線同士が短絡するおそれがあり、配線層の絶縁信頼性に課題がある。
【0010】
本発明は、良好な絶縁信頼性を有する配線層間絶縁層及び半導体装置、並びに該配線層間絶縁層を好適に形成できる樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一側面は、硬化性樹脂と、硬化剤とを含有し、銅配線と接する配線層間絶縁層を形成するために用いられる、樹脂組成物である。この樹脂組成物によって形成される配線層間絶縁層が隣り合う銅配線の間に介在すると、銅配線からの銅の配線層積層体への拡散が抑制される。そのため、拡散した銅を介した銅数の配線同士の短絡が抑制され、その結果、配線層積層体の絶縁信頼性を大幅に向上できる。
【0012】
硬化性樹脂は、少なくとも2つのマレイミド基と、2価の炭化水素基とを有していてよい。炭化水素基は、炭素数4以上の主鎖を有する鎖状のアルキレン基を含んでいてよい。炭化水素基の炭素数は、8以上であってよい。硬化性樹脂は、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の有機基を有していてよい。2価の有機基は、下記式(I)で表される基であってよい。
【化1】
式中、R
1は、4価の有機基を表す。
【0013】
炭化水素基は、下記式(II)で表される基であってよい。
【化2】
式中、R
2及びR
3は、それぞれ独立にアルキレン基を表し、R
4及びR
5は、それぞれ独立にアルキル基を表す。
【0014】
硬化剤は、光ラジカル重合開始剤を含んでいてよい。樹脂組成物は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を更に含有していてよく、カップリング剤を更に含有していてよい。
【0015】
樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を更に含有していてよい。樹脂組成物の硬化物における塩化物イオンの濃度は、5ppm以下であってよい。樹脂組成物の硬化物の破断伸びは、5~200%であってよい。樹脂組成物の硬化物の40℃における貯蔵弾性率は、10MPa~5GPaであってよい。樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度は、120~240℃であってよい。樹脂組成物の硬化物の10GHzでの誘電率は、3.0以下であってよい。樹脂組成物の硬化物の10GHzでの誘電正接は、0.005以下であってよい。樹脂組成物の硬化物の5%重量減少温度は、300℃以上であってよい。
【0016】
樹脂組成物の硬化物の、130℃、相対湿度85%の環境に200時間置かれた後の吸湿率が1質量%以下であってよい。
【0017】
本発明の他の一側面は、有機絶縁層、有機絶縁層内に設けられた銅配線、及び銅配線と有機絶縁層とを仕切るバリア金属膜を含む、複数の配線層と、複数の配線層の間に設けられた配線層間絶縁層と、を備え、銅配線の表面の一部が配線層の一方又は両方の主面側に露出し、露出した銅配線の表面に配線層間絶縁層が接しており、配線層間絶縁層は、130℃、相対湿度85%の環境に200時間置かれた後の吸湿率が1質量%以下となる層である、半導体用配線層積層体である。
【0018】
配線層間絶縁層は、上記の樹脂組成物の硬化物であってよい。有機絶縁層は、感光性絶縁樹脂から形成された層であってよい。バリア金属膜は、チタン、ニッケル、パラジウム、クロム、タンタル、タングステン、及び金からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでいてよい。10GHzを印加した際の配線層間絶縁層の誘電率は、3.0以下であってよい。10GHzを印加した際の配線層間絶縁層の誘電正接は、0.005以下であってよい。配線層間絶縁層の5%重量減少温度は、300℃以上であってよい。
【0019】
本発明の他の一側面は、上記の半導体用配線層積層体と、銅配線と電気的に接続された半導体素子と、を備える半導体装置である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、良好な絶縁信頼性を有する配線層間絶縁層及び半導体装置、並びに該配線層間絶縁層を好適に形成できる樹脂組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】一実施形態に係る半導体用配線層積層体を有する半導体装置の模式断面図である。
【
図2】一実施形態に係る半導体用配線層積層体の模式断面図である。
【
図3】半導体用配線層積層体の製造方法を説明する図である。
【
図4】半導体用配線層積層体の製造方法を説明する図である。
【
図5】半導体用配線層積層体の製造方法を説明する図である。
【
図6】半導体用配線層積層体の製造方法を説明する図である。
【
図7】半導体用配線層積層体の製造方法を説明する図である。
【
図8】半導体用配線層積層体の製造方法を説明する図である。
【
図9】半導体用配線層積層体の製造方法を説明する図である。
【
図10】半導体用配線層積層体の製造方法を説明する図である。
【
図11】半導体用配線層積層体の製造方法を説明する図である。
【
図12】半導体用配線層積層体の製造方法を説明する図である。
【
図13】半導体用配線層積層体の製造方法を説明する図である。
【
図14】
図14(a)は、測定評価用試料を示す平面図であり、
図14(b)は、
図14(a)のXIVb-XIVb線に沿った断面図である。
【
図15】実施例3と比較例2との高加速度寿命試験の結果を示すグラフである。
【
図16】
図16(a)は、実施例3の高加速度寿命試験後の概観写真を示し、
図16(b)は、比較例2の高加速度寿命試験後の概観写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本実施形態について詳細に説明する。以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0023】
本明細書の記載及び請求項において「左」、「右」、「正面」、「裏面」、「上」、「下」、「上方」、「下方」、「第1」、「第2」等の用語が利用されている場合、これらは、説明を意図したものであり、必ずしも永久にこの相対位置である、という意味ではない。また、「層」及び「膜」は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。また、「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を、それぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。また、本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。
【0024】
一実施形態に係る樹脂組成物は、硬化性樹脂と、硬化剤とを含有する。硬化性樹脂は、熱又は光によって硬化する化合物である。つまり、この樹脂組成物は、光によって硬化する光硬化性(感光性)樹脂組成物、又は、熱によって硬化する熱硬化性樹脂組成物である。この樹脂組成物は、銅配線と接する配線層間絶縁層を形成するために好適に用いられる。本明細書において、銅配線は、少なくとも銅を含有する配線を意味する。銅配線は、銅のみからなる配線であってよく、銅に加えて、ニッケル、チタン、パラジウム等の他の成分を更に含有する配線であってもよい。
【0025】
硬化性樹脂は、一実施形態(以下「第1実施形態」という)において、少なくとも2つのマレイミド基と、2価の炭化水素基とを有するマレイミド化合物(以下、単に「マレイミド化合物」ともいう)である。
【0026】
マレイミド化合物は、例えば、下記式(III)で表されるマレイミド基を少なくとも2つ有する。
【化3】
【0027】
マレイミド化合物は、例えば、下記式(IV)で表される化合物(ビスマレイミド化合物)である。
【化4】
式中、Xは、2価の炭化水素基を含む2価の連結基である。
【0028】
Xで表される連結基に含まれる2価の炭化水素基は、飽和炭化水素基及び不飽和炭化水素基のいずれであってもよい。2価の炭化水素基は、鎖状及び環状のいずれであってもよく、鎖状の2価の炭化水素基は、直鎖状及び分岐状のいずれであってもよい。環状の不飽和炭化水素基は、芳香族基であってよい。2価の炭化水素基は、これらの基の2種以上を含んでいてもよい。
【0029】
2価の炭化水素基は、樹脂組成物の可とう性、並びに、樹脂組成物から作製されるフィルムの取り扱い性(タック性、割れ、粉落ち等)及び強度を高めることが可能となる観点から、好ましくは鎖状の炭化水素基を含み、より好ましくは炭素数4以上の主鎖を有する鎖状のアルキレン基を含む。
【0030】
炭素数4以上の主鎖を有する鎖状のアルキレン基は、-(CRaRb)m-で表される(mは4以上の整数を表し、Ra及びRbはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数m未満のアルキル基を表す)。当該アルキレン基の主鎖の炭素数(m)は、好ましくは4以上又は6以上であり、好ましくは20以下、15以下又は10以下である。
【0031】
2価の炭化水素基の炭素数は、マレイミド化合物の分子構造を三次元化し易く、ポリマーの自由体積を増大させて低密度化、すなわち低誘電率化できる観点から、好ましくは8以上、10以上又は15以上であり、好ましくは300以下、250以下、200以下、100以下、70以下又は50以下である。2価の炭化水素基の炭素数は、同様の観点から、好ましくは、8~300、8~250、8~200、又は8~100であってもよい。2価の炭化水素基は、好ましくは、炭素数8~300、8~250、8~200又は8~100の分岐を有していてもよいアルキレン基、より好ましくは、炭素数10~70の分岐を有していてもよいアルキレン基、更に好ましくは、炭素数15~50の分岐を有していてもよいアルキレン基である。
【0032】
2価の炭化水素基は、一実施形態において、高周波特性及び耐HAST(Highly Accelerated temperatureandhumidity Stress Test)性をより効果的に高める観点から、下記式(II)で表される基である。
【化5】
式中、R
2及びR
3は、それぞれ独立にアルキレン基を表し、R
4及びR
5は、それぞれ独立にアルキル基を表す。
【0033】
R2及びR3で表されるアルキレン基の炭素数は、柔軟性の更なる向上及び合成の容易性の観点から、好ましくは4~50、より好ましくは5~25、更に好ましくは6~10、特に好ましくは7~10である。R2及びR3で表されるアルキレン基は、好ましくは、上述した炭素数4以上の主鎖を有する鎖状のアルキレン基である。
【0034】
R4で表されるアルキル基の炭素数は、柔軟性の更なる向上及び合成の容易性の観点から、好ましくは4~50、より好ましくは5~25、更に好ましくは6~10、特に好ましくは7~10である。R5で表されるアルキレン基の炭素数は、柔軟性の更なる向上及び合成の容易性の観点から、好ましくは2~50、より好ましくは3~25、更に好ましくは4~10、特に好ましくは5~8である。
【0035】
マレイミド化合物は、高周波特性及び伸び率をより効果的に高める観点から、好ましくは、2価の炭化水素基を複数有している。この場合、複数の2価の炭化水素基は、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。マレイミド化合物は、好ましくは2~40個、より好ましくは2~20個、更に好ましくは2~10個の2価の炭化水素基を有する。
【0036】
2価の炭化水素基は、例えば、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、テトラデシレン基、ヘキサデシレン基、オクタデシレン基、ノナデシレン基、イコシレン基、ヘンイコシレン基、ドコシレン基、トリコシレン基、テトラコシレン基、ペンタコシレン基、ヘキサコシレン基、ヘプタコシレン基、オクタコシレン基、ノナコシレン基、トリアコンチレン基等のアルキレン基;ベンジレン基、フェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基;フェニレンメチレン基、フェニレンエチレン基、ベンジルプロピレン基、ナフチレンメチレン基、ナフチレンエチレン基等のアリーレンアルキレン基;フェニレンジメチレン基、フェニレンジエチレン基等のアリーレンジアルキレン基等であってもよい。
【0037】
Xで表される連結基は、上記の2価の炭化水素基のみからなっていてもよく、上記の2価の炭化水素基に加えてその他の有機基を含んでいてもよい。その他の有機基は、例えば、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の有機基である。
【0038】
少なくとも2つのイミド結合を有する2価の有機基は、例えば、下記式(I)で表される基であってよい。
【化6】
式中、R
1は、4価の有機基を表す。
【0039】
R1で表される4価の有機基は、例えば、取り扱い性の観点から、炭化水素基であってよい。当該炭化水素基の炭素数は、例えば、1~100、2~50又は4~30であってよい。
【0040】
当該炭化水素基は、置換されていてもよく、例えば、置換又は非置換のシロキサン基を含んでいてもよい。シロキサン基としては、例えば、ジメチルシロキサン、メチルフェニルシロキサン、ジフェニルシロキサン等に由来する基が挙げられる。
【0041】
置換基は、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、水酸基、アルコキシ基、メルカプト基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、ヘテロ環基、置換ヘテロ環基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、置換ヘテロアリール基、アリールオキシ基、置換アリールオキシ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、アミド基、-C(O)H、-C(O)-、-S-、-S(O)2-、-OC(O)-O-、-C(O)-NRc、-NRcC(O)-N(Rc)2、-OC(O)-N(Rc)2、アシル基、オキシアシル基、カルボキシル基、カルバメート基、スルホニル基、スルホンアミド基、スルフリル基等であってもよい。ここで、Rcは、水素原子又はアルキル基を表す。これらの置換基は、目的、用途等に合わせて、1種類又は2種類以上を選択できる。
【0042】
R1で表される4価の有機基は、例えば、1分子中に2個以上の無水物環を有する酸無水物の4価の残基、すなわち、酸無水物から酸無水物基(-CO(=O)OC(=O)-)を2個除いた4価の基であってもよい。酸無水物としては、後述するような化合物が例示できる。
【0043】
R
1で表される有機基は、高周波特性に優れる観点から、好ましくは4価の芳香族基、より好ましくは、無水ピロメリット酸から2つの酸無水物基を取り除いた残基である。少なくとも2つのイミド結合を有する2価の有機基は、好ましくは、下記式(V)で表される基である。
【化7】
【0044】
少なくとも2つのイミド結合を有する2価の有機基は、誘電特性に優れる観点から、下記式(VI)又は(VII)で表される基であってもよい。
【化8】
【化9】
【0045】
マレイミド化合物は、高周波特性に優れ、樹脂組成物がその他の樹脂(特に高分子量の熱可塑性エラストマ樹脂)を更に含有する場合にその他の樹脂との相溶性に優れる観点から、好ましくは、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の有機基を複数有する。この場合、複数の当該2価の有機基は、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。マレイミド化合物は、好ましくは2~40個、より好ましくは2~20個、更に好ましくは2~10個の当該2価の有機基を有する。
【0046】
マレイミド化合物は、より具体的には、一実施形態において、例えば、下記式(VIII)で表される化合物であってよく、下記式(IX)で表される化合物であってよい。
【化10】
【化11】
式中、Z
1、Z
2及びZ
3は、それぞれ独立に上述した2価の炭化水素基を表し、R
1は式(I)中のR1と同義であり、nは1~10の整数を表す。nが2以上である場合、複数のZ
3は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0047】
マレイミド化合物は、例えば市販品を購入して使用可能である。市販品としては、例えば、式(VIII)で表されるマレイミド化合物である、BMI-TMH,BMI-1000,BMI-1000H,BMI-1100,BMI-1100H,BMI-2000,BMI-2300,BMI-3000,BMI-3000H,BMI-4000,BMI-5100,BMI-7000,BMI-7000H(いずれも商品名、大和化成工業株式会社製)、BMI,BMI-70,BMI-80(いずれも商品名、ケイ・アイ化成株式会社製)等が挙げられる。市販品としては、例えば、式(IX)で表されるマレイミド化合物である、BMI-1500、BMI-1700、BMI-3000、BMI-5000及びBMI-9000(いずれも商品名、Designer Molecules Inc.(DMI)製)等が挙げられる。
【0048】
マレイミド化合物の分子量は、特に限定されない。マレイミド化合物の重量平均分子量Mwは、1000以上、1500以上又は3000以上であってよく、30000以下、20000以下又は15000以下であってよい。マレイミド化合物の重量平均分子量Mwは、溶剤に対する溶解性、及び、モノマ、樹脂等の他の成分との相溶性の観点から、好ましくは1000~30000、より好ましくは1500~20000である。
【0049】
マレイミド化合物の重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定することができる。GPCの測定条件は下記のとおりである。
ポンプ:L-6200型[株式会社日立ハイテクノロジーズ製]
検出器:L-3300型RI[株式会社日立ハイテクノロジーズ製]
カラムオーブン:L-655A-52[株式会社日立ハイテクノロジーズ製]
ガードカラム及びカラム:TSK Guardcolumn HHR-L+TSKgel G4000HHR+TSKgel G2000HHR[すべて東ソー株式会社製、商品名]
カラムサイズ:6.0×40mm(ガードカラム)、7.8×300mm(カラム)
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:30mg/5mL
注入量:20μL
測定温度:40℃
【0050】
マレイミド化合物の含有量は、樹脂組成物中の固形分全量を基準として、例えば、50質量%以上、65質量%以上、又は80質量%以上であってよく、99質量%以下、95質量%以下、又は90質量%以下であってよい。
【0051】
第1実施形態に係る硬化剤は、光ラジカル重合開始剤を含んでいてよい。すなわち、樹脂組成物は、一実施形態において、マレイミド化合物と、光ラジカル重合開始剤とを含有する。
【0052】
光ラジカル重合開始剤は、例えば、アルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤等であってよい。
【0053】
アルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤は、例えば、BASF社製のIrgacure651、Irgacure184、DAROCURE1173、Irgacure2959、Irgacure127、DAROCUREMBF、Irgacure907、Irgacure369、Irgacure379EG等として購入可能である。アシルフォスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤は、BASF社製のIrgacure819、LUCIRINTPO等として購入可能である。
【0054】
光ラジカル重合開始剤は、BASF社製のIrgacure784、IrgacureOXE01、IrgacureOXE02、Irgacure754等として購入可能なその他の光ラジカル重合開始剤であってもよい。
【0055】
光ラジカル重合開始剤としては、感度が高い観点から、好ましくは、Irgacure907、Irgacure369、Irgacure379EG、IrgacureOXE01、IrgacureOXE02が好ましく用いられ、溶剤に対する溶解性の観点から、Irgacure907、Irgacure379EG、IrgacureOXE02がより好ましく用いられる。これらの光ラジカル重合開始剤は、目的、用途等に合わせて、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0056】
光ラジカル重合開始剤の含有量は、硬化性樹脂100質量部に対して、十分に硬化性樹脂を硬化させられる観点から、好ましくは0.1~10質量部、未反応物が更に残存しにくい観点から、より好ましくは1~6質量部である。
【0057】
第1実施形態に係る樹脂組成物は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物(以下「(メタ)アクリロイル化合物」ともいう)を更に含有してもよい。すなわち、樹脂組成物は、一実施形態において、マレイミド化合物と、(メタ)アクリロイル化合物と、硬化剤(光ラジカル重合開始剤)とを含有する。なお、後述する(メタ)アクリロイル基を有するカップリング剤は、(メタ)アクリロイル化合物に含まれないものとする。
【0058】
(メタ)アクリロイル化合物は、例えば、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールA(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイル基を有するシルセスキオキサン誘導体等であってよい。
【0059】
(メタ)アクリロイル化合物は、耐熱性に優れる観点から、好ましくは、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールA(メタ)アクリレート、又は(メタ)アクリロイル基を有するシルセスキオキサン誘導体であり、マレイミド化合物との相溶性に優れる観点から、より好ましくは、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートである。
【0060】
(メタ)アクリロイル化合物の含有量は、マレイミド化合物と(メタ)アクリロイル化合物との合計を100質量部としたときに、好ましくは0.1~98質量部であり、良好な伸び率が得られる観点から、より好ましくは2~50質量部であり、高周波性と微細配線形成性とを両立できる観点から、更に好ましくは5~40質量部である。
【0061】
第1実施形態に係る樹脂組成物は、カップリング剤を更に含有してもよい。すなわち、樹脂組成物は、一実施形態において、マレイミド化合物と、硬化剤(光ラジカル重合開始剤)と、カップリング剤とを含有し、他の一実施形態において、マレイミド化合物と、(メタ)アクリロイル化合物と、硬化剤(光ラジカル重合開始剤)と、カップリング剤とを含有する。
【0062】
カップリング剤は、例えばシランカップリング剤であってよい。シランカップリング剤は、例えば、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アミノ基、ウレイド基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、メルカプト基等を有していてよい。
【0063】
ビニル基を有するシランカップリング剤としては、KBM-1003,KBE-1003(いずれも商品名、信越化学工業株式会社製。以下同様。)等が挙げられる。エポキシ基を有するシランカップリング剤としては、KBM-303,402,403,KBE-402,403,X-12-981S,X-12-984S等が挙げられる。スチリル基を有するシランカップリング剤としては、KBM-1403等が挙げられる。メタクリロイル基を有するシランカップリング剤としては、KBM-502,503,KBE-502,503等が挙げられる。アクリロイル基を有するシランカップリング剤としては、KBM-5103,X-12-1048,X-12-1050等が挙げられる。アミノ基を有するシランカップリング剤としては、KBM-602,603,903,573,575,KBE-903,9103P,X-12-972F等が挙げられる。ウレイド基を有するシランカップリング剤としては、KBE-585等が挙げられる。イソシアネート基を有するシランカップリング剤としては、KBE-9007,X-12-1159L等が挙げられる。イソシアヌレート基を有するシランカップリング剤としては、KBM-9659等が挙げられる。メルカプト基を有するシランカップリング剤としては、KBM-802,803,X-12-1154,X-12-1156等が挙げられる。これらは、目的、用途等に合わせて、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0064】
シランカップリング剤の含有量は、硬化性樹脂100質量部に対して、ガラス、シリカ等との密着性を向上させる観点から、好ましくは0.01~5質量部であり、未反応物が更に残存しにくい観点から、より好ましくは0.1~2質量部である。
【0065】
第1実施形態に係る樹脂組成物は、硬化性樹脂として、マレイミド化合物に加えて、熱硬化性樹脂を更に含有していてもよい。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、シリコーン樹脂、トリアジン樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。熱硬化性樹脂は、耐熱性及び電気絶縁性の観点から、好ましくは、エポキシ樹脂又はシアネート樹脂である。
【0066】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリアジン骨格含有エポキシ樹脂、フルオレン骨格含有エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、多官能フェノール類及びアントラセン等の多環芳香族類のジグリシジルエーテル化合物並びにこれらにリン化合物を導入したリン含有エポキシ樹脂などが挙げられる。エポキシ樹脂は、耐熱性及び難燃性の点から、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂又はナフタレン型エポキシ樹脂である。これらは、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0067】
シアネート樹脂としては、例えば、ノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等のビスフェノール型シアネート樹脂及びこれらが一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で、又は2種類以上を混合して使用してもよい。シアネート樹脂は、耐熱性及び難燃性の観点から、好ましくはノボラック型シアネート樹脂である。
【0068】
第1実施形態に係る樹脂組成物は、硬化剤として、光ラジカル重合開始剤に加えて、その他の硬化剤を更に含有してもよい。その他の硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチル-ジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、フェニレンジアミン、キシレンジアミン等の芳香族アミン化合物、ヘキサメチレンジアミン、2,5-ジメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族アミン化合物、メラミン、ベンゾグアナミン等のグアナミン化合物などが挙げられる。その他の硬化剤は、良好な反応性及び耐熱性が得られる観点から、好ましくは芳香族アミン化合物である。
【0069】
樹脂組成物がシアネート樹脂を含有する場合、樹脂組成物は、硬化剤として、例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、アミノトリアジンノボラック樹脂等の多官能フェノール化合物、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、無水マレイン酸共重合体等の酸無水物などを更に含有してもよい。これらは、1種単独で又は2種以上を混合して使用できる。
【0070】
第1実施形態に係る樹脂組成物は、熱可塑性エラストマを更に含有していてもよい。熱可塑性エラストマとしては、例えば、スチレン系エラストマ、オレフィン系エラストマ、ウレタン系エラストマ、ポリエステル系エラストマ、ポリアミド系エラストマ、アクリル系エラストマ、シリコーン系エラストマ、これらの誘導体等が挙げられる。熱可塑性エラストマは、ハードセグメント成分とソフトセグメント成分とから成り立っており、一般に前者が耐熱性及び強度に、後者が柔軟性及び強靭性に寄与している。熱可塑性エラストマは、耐熱性及び絶縁信頼性を更に向上させる観点から、好ましくは、スチレン系エラストマ、オレフィン系エラストマ、ポリアミド系エラストマ、又はシリコーン系エラストマである。これらは、1種を単独で又は2種以上を混合して使用できる。
【0071】
熱可塑性エラストマとしては、分子末端又は分子鎖中に反応性官能基を有するものを用いることができる。反応性官能基としては、例えば、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、イソシアナト基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。熱可塑性エラストマがこれら反応性官能基を分子末端又は分子鎖中に有することにより、硬化性樹脂への相溶性が向上し、樹脂組成物の硬化時に発生する内部応力をより効果的に低減することができ、結果として、基板の反りを顕著に低減することが可能となる。当該反応性官能基は、金属との密着性の観点から、好ましくは、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基又はアミド基であり、耐熱性及び絶縁信頼性を更に向上させる観点から、より好ましくは、エポキシ基、水酸基又はアミノ基である。
【0072】
熱可塑性エラストマの含有量は、硬化物の低収縮性、低熱膨張性を効果的に発現させる観点から、樹脂組成物中の固形分全量100質量部に対して、好ましくは0.1~50質量部、より好ましくは2~30質量部である。
【0073】
樹脂組成物は、一実施形態(以下「第2実施形態」ともいう)において、硬化性樹脂及び硬化剤に加えて、熱可塑性樹脂を更に含有する。この場合、硬化性樹脂は、好ましくは熱硬化性樹脂である。すなわち、第2実施形態に係る樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と、熱硬化性樹脂と、硬化剤とを含有する。
【0074】
熱可塑性樹脂は、加熱によって軟化する樹脂であれば特に限定はされない。熱可塑性樹は、分子末端又は分子鎖中に反応性官能基を有していてもよい。反応性官能基としては、例えば、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、イソシアナト基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、無水マレイン酸基等が挙げられる。
【0075】
熱可塑性樹脂は、その吸湿性及び誘電率を抑制できる観点から、例えばシロキサン鎖を有する樹脂を含む。シロキサンを有する熱可塑性樹脂としては、例えば、シロキサン含有アクリル樹脂、シロキサン含有ポリアミド樹脂、シロキサン含有ポリイミド、シロキサン含有ポリウレタン、シロキサン変性アクリレート、シロキサン変性エポキシ、シリコーン樹脂、又はシリコーンジアミン等が挙げられる。加熱時のアウトガスの抑制、並びに、配線層間絶縁層の耐熱性及び接着性の向上の観点から、シロキサン鎖を有する熱可塑性樹脂は、好ましくは、シロキサン鎖を有するポリイミド(シロキサン含有ポリイミド)である。
【0076】
シロキサン含有ポリイミドは、例えば、シロキサンジアミンとテトラカルボン酸二無水物との反応、又は、シロキサンジアミンとビスマレイミドとの反応によって合成することができる。
【0077】
シロキサンジアミンは、好ましくは、下記式(5)で表される構造を含む。
【化12】
式中、Q
4及びQ
9は、それぞれ独立に、炭素数1~5のアルキレン基又は置換基を有してもよいフェニレン基を示し、Q
5、Q
6、Q
7及びQ
8は、それぞれ独立に、炭素数1~5のアルキル基、フェニル基又はフェノキシ基を示し、dは1~5の整数を示す。
【0078】
式(5)中のdが1であるシロキサンジアミンとしては、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ビス(4-アミノフェニル)ジシロキサン、1,1,3,3-テトラフェノキシ-1,3-ビス(4-アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3-テトラフェニル-1,3-ビス(2-アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3-テトラフェニル-1,3-ビス(3-アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ビス(2-アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ビス(3-アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ビス(3-アミノブチル)ジシロキサン、1,3-ジメチル-1,3-ジメトキシ-1,3-ビス(4-アミノブチル)ジシロキサン等が挙げられる。
【0079】
式(5)中のdが2であるのシロキサンジアミンとしては、1,1,3,3,5,5-ヘキサメチル-1,5-ビス(4-アミノフェニル)トリシロキサン、1,1,5,5-テトラフェニル-3,3-ジメチル-1,5-ビス(3-アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,5,5-テトラフェニル-3,3-ジメトキシ-1,5-ビス(4-アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5-テトラフェニル-3,3-ジメトキシ-1,5-ビス(5-アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,5,5-テトラメチル-3,3-ジメトキシ-1,5-ビス(2-アミノエチル)トリシロキサン、1,1,5,5-テトラメチル-3,3-ジメトキシ-1,5-ビス(4-アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5-テトラメチル-3,3-ジメトキシ-1,5-ビス(5-アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5-ヘキサメチル-1,5-ビス(3-アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5-ヘキサエチル-1,5-ビス(3-アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5-ヘキサプロピル-1,5-ビス(3-アミノプロピル)トリシロキサン等が挙げられる。
【0080】
シロキサンジアミンの市販品としては、例えば、両末端にアミノ基を有する「PAM-E」(アミノ基当量:130g/mol)、「KF-8010」(アミノ基当量:430g/mol)、「X-22-161A」(アミノ基当量:800g/mol)、「X-22-161B」(アミノ基当量:1500g/mol)、「KF-8012」(アミノ基当量:2200g/mol)、「KF-8008」(アミノ基当量:5700g/mol)、「X-22-9409」(アミノ基当量:700g/mol、側鎖フェニルタイプ)、「X-22-1660B-3」(アミノ基当量:2200g/mol、側鎖フェニルタイプ)(以上、信越化学工業株式会社製)、「BY-16-853U」(アミノ基当量:460g/mol)、「BY-16-853」(アミノ基当量:650g/mol)、「BY-16-853B」(アミノ基当量:2200g/mol)(以上、東レダウコーニング株式会社製)等が挙げられる。上述したシロキサンジアミンは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。マレイミド基との反応性の観点から、「PAM-E」、「KF-8010」、「X-22-161A」、「X-22-161B」、「BY-16-853U」、及び「BY-16-853」の少なくともいずれかを用いることが好ましい。誘電特性の観点から、「PAM-E」、「KF-8010」、「X-22-161A」、「BY-16-853U」、及び「BY-16-853」の少なくともいずれかを用いることがより好ましい。ワニスの相溶性の観点から、「KF-8010」、「X-22-161A」、及び「BY-16-853」の少なくともいずれかを用いることが好ましい。
【0081】
シロキサン含有ポリイミド中のシロキサン成分の含有量は、特に限定されないが、反応性及び相溶性の観点から、ポリイミドの全質量に対して、例えば5~50質量%であり、耐熱性の観点から、好ましくは5~30質量%であり、配線層間絶縁層の吸湿率をより低減できる観点から、より好ましくは10~30質量%である。
【0082】
ポリイミドの原料として用いられるその他のジアミン成分としては、特に制限はないが、例えば、o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテメタン、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルフェニル)メタン、ビス(4-アミノ-3,5-ジイソプロピルフェニル)メタン、3,3’-ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,4’-ジアミノジフェニルジフルオロメタン、4,4’-ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,3’-ジアミノジフェニルスルフォン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルケトン、3,4’-ジアミノジフェニルケトン、4,4’-ジアミノジフェニルケトン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)プロパン、2,2’-(3,4’-ジアミノジフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-(3,4’-ジアミノジフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’-(1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン))ビスアニリン、3,4’-(1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン))ビスアニリン、4,4’-(1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン))ビスアニリン、2,2-ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルフォン、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルフォン、3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,5-ジアミノ安息香酸等の芳香族ジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、2,2-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)プロパン、下記式(4)で表される脂肪族エーテルジアミン、下記式(11)で表される脂肪族ジアミン、分子中にカルボキシル基及び/又は水酸基を有するジアミンなどが挙げられる。
【0083】
【化13】
式中、Q
1、Q
2及びQ
3は、それぞれ独立に、炭素数1~10のアルキレン基を示し、bは2~80の整数を示す。
【0084】
【0085】
式(4)で表される脂肪族エーテルジアミンとしては、例えば下記式:
【化15】
式中、nは1以上の整数を示す。
で表される脂肪族ジアミン、下記式(12)で表される脂肪族エーテルジアミン等が挙げられる。
【化16】
式中、eは0~80の整数を示す。
【0086】
式(11)で表される脂肪族ジアミンの具体例としては、1,2-ジアミノエタン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、1,2-ジアミノシクロヘキサン等が挙げられる。
【0087】
上述したジアミン成分は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0088】
ポリイミドの原料として、例えばテトラカルボン酸二無水物を用いてもよい。酸無水物としては、特に制限はなく、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ベンゼン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,6-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン-1,8,9,10-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、チオフェン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メチルフェニルシラン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェニルジメチルシリル)ベンゼン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,3,3-テトラメチルジシクロヘキサン二無水物、p-フェニレンビス(トリメリテート無水物)、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビス(エキソ-ビシクロ[2,2,1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸二無水物、ビシクロ-[2,2,2]-オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェニル)フェニル]プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェニル)フェニル]ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、1,4-ビス(2-ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、1,3-ビス(2-ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸二無水物、テトラヒドロフラン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、下記式(7)で表されるテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【化17】
式中、aは2~20の整数を示す。
【0089】
式(7)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、例えば、無水トリメリット酸モノクロライド及び対応するジオールから合成することができる。式(7)で表されるテトラカルボン酸二無水物の具体例としては、1,2-(エチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,3-(トリメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,4-(テトラメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,5-(ペンタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,6-(ヘキサメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,7-(ヘプタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,8-(オクタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,9-(ノナメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,10-(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,12-(ドデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,16-(ヘキサデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,18-(オクタデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)等が挙げられる。
【0090】
テトラカルボン酸二無水物は、樹脂組成物中の溶剤への良好な溶解性及び耐湿信頼性を付与する観点から、下記式(6)又は(8)で表されるテトラカルボン酸二無水物を含んでもよい。
【化18】
【化19】
【0091】
以上のようなテトラカルボン酸二無水物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0092】
ポリイミドの原料として、例えばビスマレイミドを用いてもよい。ビスマレイミドとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、ポリフェニルメタンマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。
【0093】
以上のようなビスマレイミドは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。ビスマレイミドは、反応性が高く、誘電特性及び布線性をより向上できる観点から、好ましくは、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンビスマレイミド、及び2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパンの少なくともいずれかである。ビスマレイミドは、溶剤への溶解性の観点から、好ましくは、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、及び2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパンの少なくともいずれかである。ビスマレイミドは、安価である観点からは、好ましくはビス(4-マレイミドフェニル)メタンである。ビスマレイミドは、布線性の観点から、好ましくは、2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、又はDesigner Molecules Inc.製の「BMI-3000」(商品名)である。
【0094】
熱可塑性樹脂の含有量は、樹脂組成物の質量(ただし、フィラーは除く)を基準として、10質量%~70質量%であってよい。
【0095】
熱硬化性樹脂は、硬化剤と加熱により反応して樹脂組成物を硬化させるものであれば特に限定はされない。熱硬化性樹脂は、分子末端又は分子鎖中に反応性官能基を有していてもよい。反応性官能基としては、例えば、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、イソシアネート基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、無水マレイン酸基等が挙げられる。
【0096】
熱硬化性樹脂は、好ましくは、スチレン系エラストマ、オレフィン系エラストマ、ウレタン系エラストマ、ポリエステル系エラストマ、ポリアミド系エラストマ、アクリル系エラストマ及びシリコーン系エラストマから選ばれる熱硬化性エラストマであることが好ましい。これらの熱硬化性エラストマは、ハードセグメント成分及びソフトセグメント成分からなっている。一般的に、前者が樹脂の耐熱性及び強度に、後者が樹脂の柔軟性及び強靭性に寄与している。熱硬化性エラストマは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。熱硬化性エラストマは、配線層間絶縁層の耐熱性及び絶縁信頼性を更に向上させる観点から、好ましくは、スチレン系エラストマ、オレフィン系エラストマ、ポリアミド系エラストマ、及びシリコーン系エラストマの少なくともいずれかであり、配線層間絶縁層の誘電特性の観点から、より好ましくは、スチレン系エラストマ及びオレフィン系エラストマの少なくともいずれかである。
【0097】
熱硬化性エラストマは、分子末端又は分子鎖中に反応性官能基を有していてもよい。反応性官能基としては、例えば、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、イソシアナト基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、無水マレイン酸基等が挙げられる。反応性官能基は、相溶性及び布線性等の観点から、好ましくは、エポキシ基、アミノ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、又は無水マレイン酸基であり、より好ましくは、エポキシ基、アミノ基、又は無水マレイン酸基である。
【0098】
熱硬化性エラストマの含有量は、樹脂組成物の質量(ただし、フィラーは除く)を基準として、例えば10質量%~70質量%であり、誘電特性及びワニスの相溶性の観点から、好ましくは20質量%~60質量%である。
【0099】
硬化剤としては、例えば、過酸化物系、イミダゾール類及びその誘導体、有機リン系化合物、第二アミン類、三級アミン類、第四級アンモニウム塩等が挙げられる。硬化剤は、反応性の観点から、好ましくは、過酸化物系、リン系、及びイミダゾール類の少なくともいずれかであり、マレイミド基の自己重合性が良好な観点から、より好ましくは過酸化物系である。
【0100】
硬化剤の含有量は、触媒及び樹脂の種類、又は樹脂組成物が適用されるアプリケーションによって異なり得る。例えば、硬化剤が過酸化物系である場合、当該硬化剤の含有量は、樹脂組成物の質量(ただし、フィラーは除く)を基準として、好ましくは0.1質量%~10質量%であり、誘電特性及びフィルム取り扱い性の観点から、より好ましくは0.5質量%~5質量%、更に好ましくは0.75質量%~3質量%である。
【0101】
第2実施形態に係る樹脂組成物は、熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂を含んでもよい。エポキシ樹脂は、好ましくは、分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基を含む。エポキシ樹脂は、硬化性及び硬化物特性の観点から、より好ましくは、フェノールのグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂である。このような樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型(又はAD型、S型、F型)のグリシジルエーテル、水添加ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、エチレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、プロピレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ナフタレン樹脂のグリシジルエーテル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂のグリシジルエーテル、ダイマー酸のグリシジルエステル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルアミン、ナフタレン樹脂のグリシジルアミン等が挙げられる。エポキシ樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0102】
第2実施形態に係る樹脂組成物は、(メタ)アクリレート化合物を含んでもよい。(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、スチレン、ジビニルベンゼン、4-ビニルトルエン、4-ビニルピリジン、N-ビニルピロリドン、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、1,3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロパン、1,2-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロパン、メチレンビスアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、トリス(β-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリアクリレート、下記式(13)で表される化合物、ウレタンアクリレート若しくはウレタンメタクリレート、尿素アクリレート、イソシアヌル酸変性ジ/トリアクリレート及びメタクリレート等が挙げられる。
【化20】
式中、R
41及びR
42は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を示し、f及びgは、それぞれ独立に1以上の整数を示す。
【0103】
第2実施形態に係る樹脂組成物は、密着助剤を更に含有してもよい。密着助剤としては、例えば、シランカップリング剤、トリアゾール系化合物、又はテトラゾール系化合物が挙げられる。
【0104】
シランカップリング剤としては、金属との密着性を向上させるため、窒素原子を有する化合物が好ましく用いられる。シランカップリング剤として、例えば、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルーブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。シランカップリング剤の含有量は、添加による効果、耐熱性及び製造コストの観点から、樹脂組成物中の固形分全量を基準として、好ましくは0.1質量部~20質量部である。
【0105】
トリアゾール系化合物として、例えば、2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3'-tert-ブチル-5'-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5'-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール]、6-(2-ベンゾトリアゾリル)-4-tert-オクチル-6'-tert-ブチル-4'-メチル-2,2'-メチレンビスフェノール、1,2,3-ベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]メチルベンゾトリアゾール、2,2’-[[(メチル-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)メチル]イミノ]ビスエタノール等が挙げられる。
【0106】
テトラゾール系化合物としては、例えば、1H-テトラゾール、5-アミノ-1H-テトラゾール、5-メチル-1H-テトラゾール、5-フェニル-1H-テトラゾール、1-メチル-5-エチル-1H-テトラゾール、1-メチル-5-メルカプト-1H-テトラゾール、1-フェニル-5-メルカプト-1H-テトラゾール、1-(2-ジメチルアミノエチル)-5-メルカプト-1H-テトラゾール、2-メトキシ-5-(5-トリフルオロメチル-1H-テトラゾール-1-イル)-ベンズアルデヒド、4,5-ジ(5-テトラゾリル)-[1,2,3]トリアゾール、1-メチル-5-ベンゾイル-1H-テトラゾール等が挙げられる。
【0107】
トリアゾール系化合物及びテトラゾール系化合物の含有量は、それぞれ、添加による効果、耐熱性及び製造コストの観点から、樹脂組成物中の固形分全量を基準として、好ましくは0.1質量部~20質量部である。
【0108】
上記シランカップリング剤、トリアゾール系化合物、及びテトラゾール系化合物は、それぞれ単独で使用してもよいし、併用してもよい。
【0109】
第2実施形態に係る樹脂組成物は、イオン捕捉剤を更に含有してもよい。イオン捕捉剤によって樹脂組成物中のイオン性不純物を吸着することにより、配線層間絶縁層における吸湿時の絶縁信頼性を更に向上できる。イオン捕捉剤としては、例えば、トリアジンチオール化合物、フェノール系還元剤、又は粉末状のビスマス系、アンチモン系、マグネシウム系、アルミニウム系、ジルコニウム系、カルシウム系、チタン系、及びスズ系、並びに、これらの混合系等の無機化合物が挙げられる。トリアジンチオール化合物及びフェノール系還元剤は、銅がイオン化して溶け出すのを防止するための銅害防止剤として知られる化合物である。
【0110】
イオン捕捉剤としては、例えば、無機イオン捕捉剤(東亜合成株式会社製、商品名:IXE-300(アンチモン系)、IXE-500(ビスマス系)、IXE-600(アンチモン、ビスマス混合系)、IXE-700(マグネシウム、アルミニウム混合系)、IXE-800(ジルコニウム系)、及びIXE-1100(カルシウム系))が挙げられる。上記イオン捕捉剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。イオン捕捉剤の含有量は、添加による効果、耐熱性及び製造コスト等の観点から、樹脂組成物中の固形分全量を基準として、好ましくは0.01質量部~10質量部である。
【0111】
以下、第1実施形態及び第2実施形態に共通する事項を説明する。樹脂組成物は、低吸湿性及び低透湿性を付与する観点から、フィラー(充填材)を更に含んでもよい。フィラーは、無機材料からなる無機フィラーでもよく、有機材料からなる有機フィラーでもよい。これらのフィラーは、好ましくは絶縁性のフィラーである。
【0112】
無機フィラーとしては、例えば、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、結晶性シリカ、非晶性シリカ、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、酸化鉄、セラミック等が挙げられる。有機フィラーとしては、例えば、カーボン、ゴム系フィラー等が挙げられる。フィラーは、種類・形状等にかかわらず特に制限なく使用することができる。
【0113】
フィラーは、所望する機能に応じて使い分けてもよい。例えば、無機フィラーは、配線層間絶縁層に熱伝導性、低熱膨張性、低吸湿性等を付与する目的で添加される。有機フィラーは、例えば、配線層間絶縁層に靭性等を付与する目的で添加される。フィラーは、無機フィラー及び有機フィラーの少なくともいずれかを含んでいればよい、フィラーは、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。フィラーは、配線層間絶縁層に求められる、熱伝導性、低吸湿特性、絶縁性等を付与できる観点から、好ましくは無機フィラーであり、樹脂ワニスに対する分散性が良好である観点と、加熱時に高い接着力を付与できる観点とから、より好ましくは、シリカフィラー及びアルミナフィラーの少なくともいずれかである。
【0114】
フィラーの平均粒子径は、例えば10μm以下であり、フィラーの最大粒子径は、例えば30μm以下である。フィラーの平均粒子径が5μm以下であり、フィラーの最大粒子径が20μm以下であることが好ましい。平均粒子径が10μm以下であり、かつ最大粒子径が30μm以下であることにより、配線層間絶縁層の破壊靭性向上の効果を良好に発揮できると共に、配線層間絶縁層の接着強度の低下及びばらつきの発生を抑えることができ、また、配線層間絶縁層の表面が粗くなり、接着強度が低下することも抑制できる。フィラーの平均粒子径の下限、及び最大粒子径の下限は、特に制限はないが、どちらも0.001μm以上であってよい。
【0115】
フィラーの平均粒子径及び最大粒子径の測定方法としては、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、20個程度のフィラーの粒径を測定する方法等が挙げられる。SEMを用いた測定方法としては、例えば、フィラーが含まれた樹脂組成物を加熱硬化(好ましくは150~180℃で1~10時間)させたサンプルを作製し、このサンプルの中心部分を切断して、その断面をSEMで観察する方法等が挙げられる。このとき、断面における粒子径30μm以下のフィラーの存在確率が、全フィラーの80%以上であることが好ましい。
【0116】
フィラーの含有量は、付与する特性、又は機能に応じて適宜決められる。フィラーの含有量は、例えば、樹脂組成物の質量を基準として、好ましくは、1質量%~70質量%、又は2質量%~60質量%、より好ましくは5質量%~50質量%である。フィラーの含有量を増加させることにより、配線層間絶縁層の高弾性率化が図られる。これにより、ダイシング性(ダイサー刃による切断性)、ワイヤボンディング性(超音波効率)、及び加熱時の接着強度を有効に向上できる。熱圧着性の低下を抑制する観点から、フィラーの含有量は、上記の上限値以下であることが好ましい。求められる特性のバランスをとるべく、最適なフィラー含有量を決定してもよい。フィラーの混合及び混練は、通常の攪拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜組み合わせて行ってよい。
【0117】
樹脂組成物は、保存安定性、エレクトロマイグレーション防止、及び金属導体回路の腐食防止の観点から、酸化防止剤を更に含有してもよい。酸化防止剤としては、特に制限はなく、例えばベンゾフェノン系、ベンゾエート系、ヒンダートアミン系、ベンゾトリアゾール系、フェノール系酸化防止剤等が挙げられる。酸化防止剤の含有量は、添加による効果及び耐熱性、コスト等の観点から、樹脂成分100質量部に対して、好ましくは0.01質量部~10質量部である。
【0118】
樹脂組成物は、硬化を更に促進させるために、触媒を更に含有してもよい。触媒としては、例えば、過酸化物、イミダゾール系化合物、有機リン系化合物、第二級アミン、第三級アミン及び第四級アンモニウム塩が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。触媒は、反応性の観点から、好ましくは、過酸化物、イミダゾール系化合物及び有機リン系化合物からなる群より選択される少なくとも1種であり、特にマレイミド基の自己重合性及びマレイミド基とアクリロイル基との反応に寄与する観点から、より好ましくは過酸化物である。
【0119】
樹脂組成物は、難燃剤を更に含有してもよい。難燃剤としては、特に限定されないが、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤等の含ハロゲン系難燃剤、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、リン酸エステル系化合物、赤リン等のリン系難燃剤、スルファミン酸グアニジン、硫酸メラミン、ポリリン酸メラミン、メラミンシアヌレート等の窒素系難燃剤、シクロホスファゼン、ポリホスファゼン等のホスファゼン系難燃剤、三酸化アンチモン等の無機系難燃剤などが挙げられる。これらの難燃剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0120】
樹脂組成物は、紫外線吸収剤を更に含有してもよい。紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が挙げられる。
【0121】
樹脂組成物は、蛍光増白剤を更に含有してもよい。蛍光増白剤としては、特に限定されないが、例えば、スチルベン誘導体が挙げられる。
【0122】
樹脂組成物は、取り扱い性の観点から、好ましくはフィルム状である。樹脂組成物は、各成分が溶剤中に溶解又は均一に分散されたワニス(液状)であってもよい。
【0123】
ワニスの調製手段、条件等は、特に限定されない。例えば、所定配合量の各主成分をミキサー等によって十分に均一に撹拌及び混合した後、ミキシングロール、押出機、ニーダー、ロール、エクストルーダー等を用いて混練し、得られた混練物を更に冷却及び粉砕する方法が挙げられる。混練方法は、特に限定されない。
【0124】
樹脂組成物がワニスである場合、溶剤は、例えば有機溶媒であってよい。有機溶媒は、特に制限されないが、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン;トルエン、キシレン、メシチレン、リモネン等の芳香族炭化水素;メトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、ブトキシエチルアセテート、酢酸エチル等のエステル;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等の含窒素などであってよい。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。有機溶媒は、溶解性の点で、好ましくは、トルエン、キシレン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、リモネン又はメシチレンであり、毒性が低い点で、より好ましくは、シクロペンタノン、リモネン又はメシチレンである。
【0125】
有機溶媒は、例えば、ワニス中の樹脂組成物の固形分量が5~90質量%となるような量で使用することが好ましく、ワニスの取り扱い性及び塗布・塗工性を良好に保つ点から、当該固形分量が10~60質量%となるような量で使用することがより好ましい。
【0126】
樹脂組成物の硬化物は、130℃、相対湿度85%の雰囲気に200時間置かれた後の吸湿率が、好ましくは1質量%以下である。
【0127】
樹脂組成物の硬化物の、130℃、相対湿度85%の環境に200時間置かれた後の吸湿率は、以下の手順で測定することができる。樹脂組成物の膜厚10μmの硬化性フィルムを、シリコンウェハ上に100℃でラミネートし、その状態で硬化性フィルムを180℃で2時間の加熱により硬化する。シリコンウエハ及び樹脂組成物の硬化膜の積層体であるサンプルを、130℃、相対湿度85%の恒温恒湿槽(エスペック社製EHS-221MD)内で200時間静置する。その後、恒温恒湿層内の温度を50℃まで低下させてからサンプルを取り出し、シリコンウェハから硬化膜を削り取る。得られた硬化物サンプルの加熱による重量減少率を、示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、商品名「TG/DTA6300」)を用いて、昇温速度10℃/分、窒素フロー(400mL/分)、温度25~150℃の条件で測定する。150℃まで加熱した時点の質量減少率(測定前の硬化物サンプル質量に対する比率)を、吸湿率(質量%)として記録する。
【0128】
樹脂組成物の硬化物における塩化物イオンの濃度は、絶縁信頼性の観点から5ppm以下であることが好ましく、銅配線の変色を抑制できる点で3ppm以下であることがより好ましい。塩化物イオンの濃度は以下の手順で測定できる。硬化物サンプル1g、及び抽出液としての超純水10gをテフロン(登録商標)製耐熱容器に入れ、130℃で5時間加熱する。その後、抽出液をろ過してから、イオンクロマトグラフィーで分析する。得られたクロマトグラムにおいて、溶出時間0~30分に検出されたピークを溶出物の総量とみなし、9.6分付近の塩化物イオンのピーク面積から、硬化物サンプル中の塩化物イオンの質量を求める。求められた塩化物イオンの質量の、硬化物サンプルの質量に対する割合を、硬化物における塩化物イオンの濃度(ppm)として算出する。
ここでのイオンクロマトグラフィーの条件は以下のとおりである。
・装置:ダイオネクス製ISC-2000
・検出器:電気伝導度検出器
・カラム:AS20(4mmφ×200mm)
・カラム温度:30℃
・流速:1.0ml/min
・注入量:25μl
・グラジェント設定:KOH濃度を、0分に5mM、5分で5mM、15分で30mM、20分で55mMに設定した。
【0129】
配線層間のクロストークを抑制できる点で、配線層間絶縁層(樹脂組成物の硬化物)の10GHzでの誘電率は、3.6以下、3.2以下、又は3.0以下であることが好ましく、更に電気信号の信頼性を向上できる点で2.8以下であることがより好ましい。当該誘電率は、1.0以上であってよい。当該誘電率は、180℃で2時間の加熱により樹脂組成物を硬化して得た厚さ300μmの硬化物を、長さ60mm、幅2mmに切断して30℃で6時間真空乾燥した試験片を用いて測定することができる。
【0130】
配線層間絶縁層(樹脂組成物の硬化物)の10GHzでの誘電正接は、0.012以下、0.008以下、又は0.005以下であることが好ましい。当該誘電正接は、0.0001以上であってよい。当該誘電正接は、10GHzにおいて得られる共振周波数と無負荷Q値から算出できる。測定温度は25℃である。誘電率及び誘電正接の測定装置としては、例えばベクトル型ネットワークアナライザ(Keysight Technologies Inc.社製、商品名:E8364B)、10GHz共振器(株式会社関東電子応用開発製、商品名:CP531)を用い、プログラムとしてCPMA-V2を用いることができる。
【0131】
樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度は、温度サイクル時のクラックを抑制する観点から120℃以上であることが好ましく、配線への応力を緩和できる点で140℃以上であることがより好ましい。樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度は、低温でのラミネートを可能にする点で240℃以下であることが好ましく、硬化収縮を抑制できる点で220℃以下であることがより好ましい。樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度は、120~240℃、120~220℃、140~240℃、又は140~220℃であってもよい。
【0132】
樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度は、180℃で2時間の加熱により樹脂組成物を硬化して得た厚さ300μmの硬化物を、長さ30mm、幅4mmに切断して作製したサンプルを用いて測定される。測定はユービーエム社製動的粘弾性測定装置を用い、チャック間距離20mm、周波数10Hz、昇温速度5℃/分で40~260℃の温度範囲で実施し、tanδが最大値を示す温度をガラス転移温度として記録する。
【0133】
樹脂組成物の硬化物の破断伸びは、配線層間絶縁層の反りを低減できる観点から、例えば5%以上である。銅配線への応力を緩和できる観点から、上記破断伸びは、10%以上であることが好ましい。配線層積層体の温度サイクル信頼性を向上できる観点から、上記破断伸びは、15%以上であることがより好ましい。上記破断伸びは、200%以下であってもよい。樹脂組成物の硬化物の破断伸びは、5~200%、10~200%、又は15~200%であってもよい。上記破断伸びは、180℃で2時間の加熱により樹脂組成物を硬化して得た厚さ300μmの硬化物を、長さ30mm、幅5mmに切断することによって作製したサンプルを用いて測定することができる。破断伸びは、小型卓上試験機(株式会社島津製作所製、商品名:EZ-S)を用いて、送り速度:5mm/minに設定して測定される。
【0134】
樹脂組成物の硬化物の5%重量減少温度は、耐熱信頼性の観点から、例えば300℃以上である。第1の配線層間絶縁層17の5%重量減少温度は、180℃で2時間の加熱により樹脂組成物を硬化して得た厚さ300μmの硬化物をサンプルとして、示差熱熱重量同時測定装置(株式会社日立ハイテクサイエンス製、商品名:TG/DTA6300)を用いて、昇温速度:10℃/min、窒素フロー:400ml/minの条件下で測定することができる。
【0135】
樹脂組成物の硬化物の40℃における貯蔵弾性率は、10MPa~5GPaであってもよい。
【0136】
図1は、一実施形態に係る半導体用配線層積層体を有する半導体パッケージの模式断面図である。本開示の半導体用配線層積層体は、異種チップを混載するインターポーザが必要なパッケージ形態に用いられることが好適である。
【0137】
図1に示されるように、半導体パッケージ100は、基板1と、基板1上に設けられた配線層積層体10と、配線層積層体10上に搭載された半導体チップ2A,2Bとを備える半導体装置である。半導体チップ2A,2Bは、対応するアンダーフィル3A,3Bによって配線層積層体10上にそれぞれ固定されており、配線層積層体10内に設けられる表面配線(図示しない)を介して互いに電気的接続されている。また、基板1は、半導体チップ2C,2Dと電極5A,5Bとを絶縁材料4で封止して形成された封止体である。基板1内の半導体チップ2C,2Dは、絶縁材料4から露出した電極を介して外部装置と接続可能になっている。電極5A,5Bは、例えば、配線層積層体10と外部装置とが互いに電気的接続するための導電路として機能する。
【0138】
半導体チップ2A~2Dのそれぞれは、例えば、グラフィック処理ユニット(GPU:Graphic Processing Unit)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)若しくはSRAM(Static Random Access Memory)等の揮発性メモリ、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、RFチップ、シリコンフォトニクスチップ、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、センサーチップなどである。半導体チップ2A~2Dは、TSVを有してもよい。半導体チップ2A~2Dのそれぞれは、例えば、半導体素子が積層されたものも用いることができる、この場合、TSVを用いて積層した半導体素子を使用できる。半導体チップ2A,2Bの厚さは、例えば、200μm以下である。半導体パッケージ100を薄型化する観点から、半導体チップ2A,2Bの厚さは、100μm以下であることが好ましい。また、取り扱い性の観点から、半導体チップ2A,2Bの厚さは、30μm以上であることがより好ましい。半導体チップ2A~2Dのそれぞれは、配線層積層体10内の配線のいずれかに電気的に接続される。
【0139】
アンダーフィル3A,3Bは、例えば、キャピラリーアンダーフィル(CUF)、モールドアンダーフィル(MUF)、ペーストアンダーフィル(NCP)、フィルムアンダーフィル(NCF)、又は感光性アンダーフィルである。アンダーフィル3A,3Bは、それぞれ液状硬化型樹脂(例えば、エポキシ樹脂)を主成分として構成される。また、絶縁材料4は、例えば、絶縁性を有する硬化性樹脂である。
【0140】
次に、
図2を用いながら本実施形態に係る配線層積層体10について詳細に説明する。配線層積層体10は、半導体素子等を搭載する配線基板である。配線層積層体10の形状は、後述する基板11の形状に応じており、ウェハ状(平面視にて略円形状)でもよいし、パネル状(平面視にて略矩形状)でもよい。
【0141】
図2に示される基板11上に設けられる配線層積層体10は、有機絶縁層21,22、有機絶縁層21,22内に埋め込まれた銅配線13,14、及び銅配線13,14と有機絶縁層21,22との間に設けられたバリア金属膜15、16をそれぞれ含む複数の配線層41,42と、配線層41,42に隣接する配線層間絶縁層17,18と、有機絶縁層21,22、及び配線層間絶縁層17,18を貫通するスルー配線19とを備える。有機絶縁層21,22と配線層間絶縁層17,18が基板11上に交互に積層されている。銅配線13,14の表面の一部が配線層41,42の一方の主面側に露出し、露出した銅配線13,14の表面に配線層間絶縁層17,18が接している。配線層間絶縁層17,18は、上述の実施形態に係る硬化性樹脂組成物の硬化物である。有機絶縁層21,22は、感光性絶縁樹脂から形成された層であることができる。銅配線は、配線層の両方の主面側に露出し、露出した銅配線の表面に配線層間絶縁層が接していてもよい。
【0142】
基板11は、配線層積層体10を支持する支持体である。基板11の平面視における形状は、例えば、円形状又は矩形状である。円形状である場合、基板11は、例えば、200mm~450mmの直径を有する。矩形状である場合、基板11の一辺は、例えば、300mm~700mmである。
【0143】
基板11は、例えば、シリコン基板、ガラス基板、又はピーラブル銅箔である。基板11は、例えば、ビルドアップ基板、ウェハレベルパッケージ用基板、コアレス基板、封止材料を熱硬化することによって作製される基板、又はチップが封止もしくは埋め込まれた基板でもよい。基板11としてシリコン基板又はガラス基板等が用いられる場合、配線層積層体10と基板11とを仮固定する図示しない仮固定層が設けられてもよい。この場合、仮固定層を除去することによって、配線層積層体10から基板11を容易に剥離できる。ピーラブル銅箔とは、支持体、剥離層、及び銅箔が順に重なった積層体である。ピーラブル銅箔においては、支持体が基板11に相当し、銅箔がスルー配線19の一部を構成することができる。
【0144】
有機絶縁層21(第1の有機絶縁層)は、基板11側に位置する第3の有機絶縁層23と、第2の有機絶縁層22側に位置する第4の有機絶縁層24とを含んでいる。第1の有機絶縁層21は、対応する銅配線13が配置された複数の溝部21a(第1の溝部)を有する。第4の有機絶縁層24は、溝部21aに対応する複数の開口部が設けられている。これらの開口部によって露出する第3の有機絶縁層23の表面が、溝部21aの内面における底面を構成している。溝部21aの側面は、第4の有機絶縁層24によって構成されている。
【0145】
第3の有機絶縁層23及び第4の有機絶縁層24の厚さは、例えば、それぞれ0.5μm~10μmである。このため、第1の有機絶縁層21の厚さは、例えば、1μm~20μmである。第1の有機絶縁層21の厚さが1μm以上であることにより、第1の有機絶縁層21が配線層積層体10の応力緩和に寄与し、配線層積層体10の温度サイクル耐性が向上し得る。第1の有機絶縁層21の厚さが20μm以下であることにより、配線層積層体10の反りを抑制し、例えば、配線層積層体10を研削した際に容易に配線等を露出できる。露光及び現像を行うことによって幅3μm以下の銅配線13を形成する観点から、第1の有機絶縁層21の厚さは、15μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。
【0146】
複数の溝部21aは、第1の有機絶縁層21において基板11と反対側の表面に設けられている。溝部21aの延在方向に直交する方向に沿った断面において、溝部21aのそれぞれは略矩形状を有している。このため、溝部21aの内面は、側面及び底面を有している。また、複数の溝部21aは、所定のライン幅L及びスペース幅Sを有している。ライン幅L及びスペース幅Sのそれぞれは、例えば、0.5μm~10μmであり、好ましくは0.5μm~5μmであり、より好ましくは2μm~5μmである。配線層積層体10の高密度伝送を実現する観点から、ライン幅Lは1μm~5μmであることが好ましい。ライン幅Lとスペース幅Sとは、互いに同一になるように設定されてもよいし、互いに異なるように設定されてもよい。ライン幅Lは、平面視にて溝部21aの延在方向に直交する方向における溝部21aの幅に相当する。スペース幅Sは、隣り合う溝部21a同士の距離に相当する。溝部21aの深さは、例えば、第4の有機絶縁層24の厚さに相当する。
【0147】
有機絶縁層22(第2の有機絶縁層)は、配線層間絶縁層17(第1の配線層間絶縁層)を挟んで第1の有機絶縁層21上に積層されている。第2の有機絶縁層22は、対応する銅配線14が配置された複数の溝部22a(第2の溝部)を有する。
【0148】
第2の有機絶縁層22の厚さは、例えば、それぞれ1μm~10μmである。第2の有機絶縁層22の厚さが1μm以上であることにより、第2の有機絶縁層22が配線層積層体10の応力緩和に寄与し、配線層積層体10の温度サイクル耐性が向上し得る。第2の有機絶縁層22の厚さが10μm以下であることにより、配線層積層体10の反りを抑制し、例えば、配線層積層体10を研削した際に容易に配線等を露出できる。第2の有機絶縁層22の一部には、溝部22aに対応する複数の開口部が設けられている。これらの開口部によって露出する第1の配線層間絶縁層17の表面が、溝部22aの内面における底面を構成している。溝部22aの各側面は、第2の有機絶縁層22によって構成されている。本実施形態では、複数の溝部22aのライン幅及びスペース幅は、溝部21aのライン幅L及びスペース幅Sと一致している。
【0149】
溝部21aが形成された第1の有機絶縁層21、及び溝部22aが掲載された第2の有機絶縁層22のそれぞれは、加熱処理によって硬化されていてもよい。加熱処理は、例えば、オーブンを用いて実施される。配線層積層体10の残留応力を低減する観点から、例えば200℃以下で加熱処理を実施することが好ましい。生産効率の観点から、加熱処理時間を3時間未満に設定することが好ましい。
【0150】
銅配線13は、上述したように対応する溝部21a内に設けられ、配線層積層体10内部における導電路として機能する。このため、銅配線13の幅は、溝部21aのライン幅Lと略一致しており、隣り合う銅配線13同士の間隔は、溝部21aのスペース幅Sと略一致している。
【0151】
銅配線14は、上述したように対応する溝部22a内に設けられ、配線層積層体10内部における導電路として機能する。このため、銅配線13の幅は、溝部22aのライン幅と略一致しており、隣り合う銅配線14同士の間隔は、溝部22aのスペース幅と略一致している。銅配線14は、銅配線13と同様の金属材料を含有している。
【0152】
バリア金属膜15(第1のバリア金属膜)は、銅配線13と第1の有機絶縁層21(すなわち、溝部21aの内面)とを仕切るように設けられる金属膜である。第1のバリア金属膜15は、銅配線13からの第1の有機絶縁層21への銅の拡散を防止するための膜であり、溝部21aの内面に沿って形成されている。このため、第1のバリア金属膜15は、有機絶縁層へ拡散しにくい金属材料(例えば、チタン、クロム、タングステン、パラジウム、ニッケル、金、タンタル又はこれらを含む合金)を含んでいる。第1のバリア金属膜15は、一種又は複数種の金属を含むことができる。溝部21aの内面との密着性の観点から、第1のバリア金属膜15は、チタン膜又はチタンを含む合金膜であることが好ましい。第1のバリア金属膜15をスパッタリングで形成する場合、第1のバリア金属膜15は、チタン膜、タンタル膜、タングステン膜、クロム膜、又はチタン、タンタル、タングステン、及びクロムの少なくとも何れかを含む合金膜であることが好ましい。
【0153】
第1のバリア金属膜15の厚さは、溝部21aの幅の半分未満且つ溝部21aの深さ未満である。銅配線13同士の導通を防ぐ観点及び銅配線13の抵抗上昇を抑制する観点から、第1のバリア金属膜15の厚さは、例えば、0.001μm~0.5μmである。銅配線13内における金属材料の拡散を防止する観点から、第1のバリア金属膜15の厚さは、0.01μm~0.5μmであることが好ましい。第1のバリア金属膜15の平坦性、及び銅配線13に流れる電流量を大きくする観点から、第1のバリア金属膜15の厚さは、0.001μm~0.3μmであることが好ましい。以上から、第1のバリア金属膜15の厚さは、0.01μm~0.3μmであることが最も好ましい。
【0154】
第2のバリア金属膜16は、銅配線14と第2の有機絶縁層22(すなわち、溝部22aの内面)とを仕切るように設けられる金属膜である。第2のバリア金属膜16は、銅配線14からの第2の有機絶縁層22への銅の拡散を防止するための膜であり、溝部22aの内面に沿って形成されている。このため、第2のバリア金属膜16は、第1のバリア金属膜15と同様に、有機絶縁層へ拡散しにくい金属材料を含んでいる。第2のバリア金属膜16の厚さは、第1のバリア金属膜15と同様に、溝部22aの幅の半分未満且つ溝部22aの深さ未満である。したがって、第2のバリア金属膜16の厚さは、例えば、0.001μm~0.5μmであり、0.01μm~0.5μm又は0.001μm~0.3μmであることが好ましく、0.01μm~0.3μmであることが最も好ましい。
【0155】
第1の配線層間絶縁層17は、銅配線13からの第1の有機絶縁層21及び第2の有機絶縁層22への銅の拡散を防止するための絶縁膜である。第1の配線層間絶縁層17は、配線層41(第1の配線層)と配線層42(第2の配線層)との間に、銅配線13と第2の有機絶縁層22とを仕切るように設けられている。第1の配線層間絶縁層17は、第1の配線層41の基板11とは反対側の主面に露出した銅配線13の表面と接している。配線層積層体10を薄くできる観点から、第1の配線層間絶縁層17の厚さは、例えば50μm以下である。銅配線13同士の導通を防ぐ観点から、第1の配線層間絶縁層17の厚さは、例えば1μm以上であり、10μm以上であることが好ましい。第1の配線層間絶縁層17の表面平滑性の観点から、第1の配線層間絶縁層17の厚さは、30μm以下であることが好ましい。第1の配線層間絶縁層17に含まれる材料、及び第1の配線層間絶縁層17の他の特性の詳細については、後述する。
【0156】
第2の配線層間絶縁層18は、銅配線14からの第2の有機絶縁層22への銅の拡散を防止するための絶縁膜である。第2の配線層間絶縁層18は、第2の配線層42の基板11とは反対側の主面に露出した銅配線14の表面と接しながら、第2の配線層42上に設けられている。第2の配線層間絶縁層18は、第1の配線層間絶縁層17と同様の材料を含んでおり、且つ、第1の配線層間絶縁層17と同様の特性を有している。
【0157】
スルー配線19は、配線層41,42、及び配線層間絶縁層17,18を貫通するビア31に埋め込まれる配線であり、外部装置への接続端子として機能する。
【0158】
次に、
図3~
図10を参照しながら本実施形態に係る配線層積層体10の製造方法を説明する。下記製造方法によって形成される配線層積層体10は、例えば、微細化及び多ピン化が必要とされる形態において特に好適である。なお、
図4(b)は、
図4(a)の要部拡大図である。同様に、
図5(b)、
図6(b)、
図7(b)、
図8(b)、
図9(b)、
図10(b)、
図11(b)、及び
図12(b)のそれぞれは、対応する図面の要部拡大図である。
【0159】
まず、第1ステップとして
図3(a)に示されるように、基板11上にスルー配線の底部19aを形成する。スルー配線の底部19aは、基板11上に形成された金属膜をパターニングすることによって形成される。第1ステップでは、例えば、塗布法、真空蒸着若しくはスパッタリング等の物理気相蒸着法(PVD法)、金属ペーストを用いた印刷法若しくはスプレー法、又は種々のめっき法によって、上記金属膜を形成する。本実施形態では、金属膜として銅箔が用いられる。
【0160】
基板11とスルー配線の底部19aとの間に仮固定層(図示しない)が設けられる場合、当該仮固定層は、例えば、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、シリコン、フッ素等の非極性成分を含有した樹脂、加熱若しくはUV(紫外線)によって体積膨張若しくは発泡する成分を含有した樹脂、加熱若しくはUVによって架橋反応が進行する成分を含有した樹脂、又は、光照射によって発熱する樹脂を含んでいる。仮固定層の形成方法としては、例えば、スピンコート、スプレーコート、又はラミネート加工が挙げられる。取り扱い性及びキャリア剥離性を高度に両立できる観点から、仮固定層は、光又は熱等の外部刺激によって剥離しやすくなることが好ましい。仮固定層が後に製造される半導体用配線層積層体10に残存しないように剥離可能である観点から、仮固定層は、加熱処理によって体積膨張する樹脂を含有することが最も好ましい。
【0161】
基板11とスルー配線の底部19aとの間に仮固定層が設けられる場合、スルー配線の底部19aはピーラブル銅箔の銅箔から形成されてもよい。この場合、基板11がピーラブル銅箔の支持体に相当し、仮固定層がピーラブル銅箔の剥離層に相当する。
【0162】
次に、第2ステップとして
図3(b)に示されるように、スルー配線の底部19aを覆うように、基板11上に第3の有機絶縁層23を形成する。第2ステップでは、例えば、感光性絶縁樹脂のフィルムを基板11に貼り付けることによって、第3の有機絶縁層23を形成することができる。必要に応じて、感光性絶縁樹脂のフィルムに露光処理、現像処理、硬化処理等を施す。
【0163】
次に、第3ステップとして
図3(c)に示されるように、第3の有機絶縁層23上に第4の有機絶縁層24を形成することによって、第1の有機絶縁層21を形成する。第3ステップでは、第2ステップと同様に、感光性絶縁樹脂を含むフィルムを第3の有機絶縁層23に貼り付けることにより、第4の有機絶縁層を形成することができる。必要に応じて、感光性絶縁樹脂のフィルムに露光処理、現像処理、硬化処理等を施す。
【0164】
次に、第4ステップとして
図4(a),(b)に示されるように、第1の有機絶縁層21に複数の溝部21aを形成する。第4ステップでは、例えば、レーザアブレーション、フォトリソグラフィー、又はインプリントによって複数の溝部21aを形成する。溝部21aの微細化及び形成コストの観点から、フォトリソグラフィーを適用することが好ましい。例えば、第4の有機絶縁層24を形成するために用いられた感光性絶縁樹脂に露光処理及び現像処理を施すことによって、複数の溝部21aを形成することができる。
【0165】
上記フォトリソグラフィーにて感光性絶縁樹脂を露光する方法としては、公知の投影露光方式、コンタクト露光方式、直描露光方式等を用いることができる。また、感光性絶縁樹脂を現像するために、例えば、炭酸ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ性水溶液を用いてもよい。
【0166】
上記第4ステップにおいては、複数の溝部21aを形成した後、第1の有機絶縁層21をさらに加熱硬化させてもよい。この場合、例えば、加熱温度を100~200℃と設定し、加熱時間を30分~3時間と設定し、第1の有機絶縁層21を加熱硬化する。
【0167】
次に、第5ステップとして
図5(a),(b)に示されるように、溝部21aの内面を覆うように第1の有機絶縁層21上に第1のバリア金属膜15を形成する。第5ステップでは、例えば、塗布法、PVD法、金属ペーストを用いた印刷法若しくはスプレー法、又は種々のめっき法によって第1のバリア金属膜15を形成する。塗布法の場合、パラジウム又はニッケルの錯体を第1の有機絶縁層21上に塗布した後に加熱することによって、第1のバリア金属膜15を形成する。金属ペーストを用いる場合、ニッケル、パラジウム等の金属粒子を含有するペーストを第1の有機絶縁層21上に塗布した後に焼結することによって、第1のバリア金属膜15を形成する。本実施形態では、PVD法の一つであるスパッタリングによって第1のバリア金属膜15を形成する。
【0168】
次に、第6ステップとして
図6(a),(b)に示されるように、溝部21aを埋めるように第1のバリア金属膜15上に銅配線形成用の銅層13Aを形成する。第6ステップでは、例えば、金属ペーストを用いた方法、又は第1のバリア金属膜15をシード層としためっき法によって銅層13Aを形成する。銅層13Aの厚さは、例えば、第1の有機絶縁層21の厚さの0.5倍~3倍であることが好ましい。銅層13Aの厚さが0.5倍以上である場合、後工程で形成される銅配線13の表面粗さの拡大を抑制できる傾向にある。また、銅層13Aの厚さが3倍以下である場合、銅層13Aの反りを抑え、第1の有機絶縁層21に対して良好に密着する傾向にある。
【0169】
次に、第7ステップとして
図7(a),(b)に示されるように、第1の有機絶縁層21が露出するように銅層13Aを薄化する。第7ステップでは、銅層13Aにおいて溝部21a外の部分と、第1のバリア金属膜15において溝部21aを覆わない部分とを、機械的又は化学的に除去する。これにより、第1の有機絶縁層21を露出させると共に銅層13Aを薄化し、溝部21a内に埋め込まれる銅配線13を形成する。この薄化処理は、第1の有機絶縁層21と銅配線13とを併せた面の平坦化処理としてもよい。この場合、CMP又はフライカット法によって銅層13A及び第1のバリア金属膜15の対象部分を除去すると共に、第1の有機絶縁層21の表面を研磨又は研削して平坦化する。
【0170】
第7ステップにおいてCMPを用いる場合、スラリとして例えば、一般的に樹脂の研磨に用いられるアルミナが配合されたスラリと、第1のバリア金属膜15の研磨に用いられる過酸化水素及びシリカが配合されたスラリと、銅層13Aの研磨に用いられる過酸化水素及び過硫酸アンモニウムが配合されたスラリとを用いる。コストを低減すると共に表面粗さの拡大を抑制する観点から、アルミナが配合されたスラリを用いて第1の有機絶縁層21、第1のバリア金属膜15、及び銅層13Aを研削することが好ましい。CMPを用いた場合、高コストになる傾向がある。また、第1の有機絶縁層21、第1のバリア金属膜15、及び銅層13A(銅配線13)を同時に平坦化する場合、研磨速度の違いによって銅配線13にディッシングが生じ、結果として第1の有機絶縁層21と銅配線13とを併せた面の平坦性が大きく損なわれる傾向がある。このため、サーフェスプレーナーを用いたフライカット法によって第1の有機絶縁層21、第1のバリア金属膜15、及び銅層13A(銅配線13)を研削することがより好ましい。
【0171】
次に、第8ステップとして
図8(a),(b)に示されるように、溝部21a内の銅配線13を覆うように、第1の配線層間絶縁層17を形成する。第8ステップでは、例えば、スピンコート、スプレーコート、バーコート、カーテンコート、印刷法、又はラミネートによって、第1の配線層間絶縁層17を形成する。
取り扱い容易性の観点から、フィルム状の樹脂組成物を用いて、第1の配線層間絶縁層17を形成することが好ましい。また、第1の配線層間絶縁層17の膜厚均一性及び大判化に対応できる観点から、ラミネートによって第1の配線層間絶縁層17を形成することが好ましい。第1の配線層間絶縁層17をラミネートによって形成する場合、第2,第3ステップと同様に、フィルム状の樹脂組成物を第1の有機絶縁層21に貼り付ける。この場合、残留応力を低減する観点から150℃以下に設定されることが好ましく、ボイド抑制の観点から60℃以上に設定されることが好ましい。
【0172】
第8ステップにおいて、第1の配線層間絶縁層17は、銅配線13上に加え、第1のバリア金属膜15において溝部21aの側面に接する部分上に形成されることが好ましい。この場合、銅配線13の一部(銅配線13において、溝部21aの内面に対向する側面及び底面)は、第1のバリア金属膜15によって覆われ、銅配線13の他部(銅配線13の上面)は、第1の配線層間絶縁層17によって覆われる。第1のバリア金属膜15及び第1の配線層間絶縁層17によって、銅配線13が隙間なく覆われる。
【0173】
次に、第9ステップとして
図9(a),(b)に示されるように、第1の配線層間絶縁層17上に、溝部22aが設けられた第2の有機絶縁層22を形成する。第9ステップでは、まず、第3ステップと同様に、感光性絶縁樹脂のフィルムを第1の配線層間絶縁層17に貼り付ける。そして、貼り付けられた感光性絶縁樹脂のフィルムに複数の溝部22aを形成させる。第9ステップでは、第4ステップにて説明された溝部21aと同様の手法にて、溝部22aを形成する。第9ステップにおいては、銅配線13を構成する銅の拡散防止の観点から、第2の有機絶縁層22に対して現像処理を施さないことが好ましい。
【0174】
次に、第10ステップとして
図10(a),(b)に示されるように、第2の有機絶縁層上に、第2のバリア金属膜16と、銅配線形成用の銅層14Aとを順番に形成する。第10ステップでは、まず第5ステップと同様の手法にて、溝部22aの内面を覆うように第2の有機絶縁層22上に第2のバリア金属膜16を形成する。そして、第6ステップと同様の手法にて、溝部22aを埋めるように第2のバリア金属膜16上に銅層14Aを形成する。
【0175】
次に、第11ステップとして
図11(a),(b)に示されるように、第2の有機絶縁層22が露出するように銅層14Aを薄化する。第11ステップでは、第7ステップと同様の手法にて、銅層14Aにおいて溝部22a外の部分と、第2のバリア金属膜16において溝部22aを覆わない部分とを、機械的又は化学的に除去する。これにより、第2の有機絶縁層22を露出させると共に銅層14Aを薄化し、溝部22a内に埋め込まれる銅配線14を形成する。
【0176】
次に、第12ステップとして
図12(a),(b)に示されるように、溝部22a内の銅配線14を覆うように、第2の配線層間絶縁層18を形成する。第12ステップでは、第8ステップと同様の手法にて、第2の有機絶縁層22上に第2の配線層間絶縁層18を形成する。第12ステップにおいて、第2の配線層間絶縁層18は、銅配線14上に加え、第2のバリア金属膜16において溝部22aの側面に接する部分上に形成されることが好ましい。この場合、銅配線14の各側面及び底面は第2のバリア金属膜16によって覆われ、銅配線14の上面は第2の配線層間絶縁層18によって覆われる。第2のバリア金属膜16及び第2の配線層間絶縁層18によって、銅配線14が隙間なく覆われる。
【0177】
次に、第13ステップとして
図13(a)に示されるように、第1の有機絶縁層21、第1の配線層間絶縁層17、第2の有機絶縁層22、及び第2の配線層間絶縁層18を貫通するビア31を形成する。ビア31の形成方法としては、例えばレーザが用いられる。レーザとしては、例えば、炭酸レーザ、UVレーザ、YAGレーザ、エキシマーレーザ等が挙げられる。ビア31の形成後、デスミア処理など公知の方法にて、ビア31内を洗浄することが好ましい。
【0178】
次に、第14ステップとして
図13(b)に示されるように、ビア31に金属材料を充填してビア内導電部19bを形成することによって、底部19a及びビア内導電部19bを有するスルー配線19を形成する。第14ステップでは、例えば、PVD法又は種々のめっき法によってビア内導電部19bを形成する。金属材料は、例えば、銅、ニッケル、スズ等が挙げられる。以上のステップを経ることによって、
図2に示される配線層積層体10を製造する。仮固定層が設けられている場合、基板11から配線層積層体10を剥離してもよい。
【0179】
以上に説明した製造方法によって形成された配線層積層体10のおいては、130℃、相対湿度85%の環境に2時間放置された後の配線層間絶縁層の吸湿率が1質量%以下であることにより、配線層間絶縁層に含まれる水分量は、極めて少なくなっている。このため、配線層間絶縁層内の水と銅との反応に起因する、銅の配線層間絶縁層内への拡散を良好に抑制できる。その結果、配線層間絶縁層の絶縁性を良好に保持し、銅配線同士の短絡を抑制できるので、配線層積層体10の絶縁信頼性を良好に向上できる。
【0180】
本実施形態に係る配線層積層体10に複数の半導体チップが搭載されることによって、歩留まりよく半導体チップが集積化された半導体装置を提供できる。
【0181】
本開示は上述した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を行ってもよい。例えば、第1の有機絶縁層21と基板1との間には、感光性絶縁樹脂を含む樹脂層、配線層間絶縁層、又はビルドアップ材等が形成されていてもよい。
【0182】
第1の配線層間絶縁層17上には、第2の有機絶縁層22及び銅配線14等の代わりに、感光性絶縁樹脂を含む樹脂層、配線層間絶縁層、ビルドアップ材、アンダーフィル等の樹脂層を形成してもよいし、銅配線又はバンプ等を形成してもよい。また、第1の配線層間絶縁層17には、銅配線13,14を接続する金属材料を埋め込むためのビアが設けられてもよい。
【0183】
第2の配線層間絶縁層18上に、感光性絶縁樹脂を含む樹脂層、配線層間絶縁層、ビルドアップ材、アンダーフィル等の樹脂層を形成してもよいし、銅配線又はバンプ等を形成してもよい。また、第2の配線層間絶縁層18には、銅配線14と半導体チップ等を接続する金属材料を埋め込むためのビアが設けられてもよい。
【実施例】
【0184】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0185】
(実施例1)
図14(a),(b)に示される測定評価用試料を以下のようにして作製した。まず、厚さ150mmのシリコンウェハ51に厚さ3μmの感光性絶縁樹脂フィルム52を貼り付けた。この感光性絶縁樹脂フィルム52は、以下のようにして形成した。まず、クレゾールノボラック樹脂(旭有機材工業株式会社製、商品名:TR-4020G、100質量部)と、1,3,4,6-テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル(30質量部)と、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(40質量部)と、トリアリールスルホニウム塩(サンアプロ株式会社製、商品名:CPI-310B、8質量部)と、メチルエチルケトン(100質量部)とを配合し、感光性絶縁樹脂を得た。次に、得られた感光性絶縁樹脂をポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、商品名:A-53)に塗布し、90℃のオーブンで10分間乾燥することによって、厚さ3μmの感光性絶縁樹脂フィルム52を得た。
【0186】
次に、シリコンウェハ51に貼り付けた感光性絶縁樹脂フィルム52を露光処理、加熱処理、現像処理及び熱硬化処理を順番に施した。次に、感光性絶縁樹脂フィルム52に、当該フィルム52と同様にして形成した厚さ3μmの感光性絶縁樹脂フィルム53を貼り付けた。次に、貼り付けた感光性絶縁樹脂フィルム53を、フォトマスクを介して露光処理した後、加熱処理、現像処理、及び熱硬化処理を順番に施した。これにより感光性絶縁樹脂フィルム53をパターニングし、互いにかみ合うように櫛歯状になっている第1の溝部53a及び第2の溝部53bと、第1の溝部53a同士を結ぶ第1の接続部53cと、第2の溝部53b同士を結ぶ第2の接続部53dとを形成した。第1の溝部53aの幅と第2の溝部53bの幅とをそれぞれ5μmに設定した。これらの幅は、後述する配線のライン幅Lに相当する。また、隣り合う第1の溝部53aと第2の溝部53bとの距離(スペース幅S)を5μmに設定し、それぞれの溝の長さを1mmに設定した。
【0187】
次に、スパッタリングによって、感光性絶縁樹脂フィルム53上に厚さ0.05μmのチタンを含むバリア金属膜54を形成した。次に、バリア金属膜54をシード層とした電解めっき法によって、第1の溝部53a、第2の溝部53b、第1の接続部53c、及び第2の接続部53dを埋めるように銅層を形成した。次に、サーフェスプレーナーを用いたフライカット法によって、銅層の一部と、バリア金属膜54において第1の溝部53a、第2の溝部53b、第1の接続部53c、及び第2の接続部53dの内面を覆わない部分を研削した。これにより、第1の溝部53aに埋められる第1の配線55aと、第2の溝部53bに埋められる第2の配線55bと、第1の接続部53cに埋められる第1の接続配線55cと、第2の接続部53dに埋められる第2の接続配線55dとを形成した。サーフェスプレーナーとして、オートマチックサーフェスプレーナー(株式会社ディスコ製、商品名「DAS8930」)を用いた。また、フライカット法による研削では、送り速度を1mm/sに設定し、スピンドル回転数を2000min-1に設定した。
【0188】
次に、第1の接続配線55cの一部と、第2の接続配線55dの一部とを少なくとも露出させるように、厚さ10μmの硬化性フィルムを貼り付け、当該硬化性フィルムを熱硬化して、配線層間絶縁層57を形成させた。少なくとも第1の配線55a及び第2の配線55bを埋めるように、硬化性フィルムを貼り付けた。硬化性フィルムとして、以下に説明する材料Aを用いた。
【0189】
<材料A>
まず、シロキサン鎖を有する熱可塑性樹脂の合成をするため、「BMI-3000」(Designer Molecules Inc.社製、商品名)を25gと、2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン(大和化成工業株式会社製、商品名:BMI-4000)を25gと、トルエン150gとをフラスコに入れ、20分間撹拌した。次いで、シリコーンジアミン(信越化学工業株式会社製、商品名:KF-8010)を16.4g上記フラスコに入れ、オイルバスを用いて130℃に加熱した。還流が始まった時間から3時間撹拌して反応させ、空冷によって室温まで冷却し、固形状のシリコーン鎖を有する熱可塑性樹脂を形成した。次に、トルエンに溶解した熱硬化性エラストマ(旭化成株式会社製、商品名:タフテックM1911)を固形分で50gと、上記シリコーン鎖を有する熱可塑性樹脂を固形分で50gと、硬化剤(日油株式会社製、商品名:パーヘキシン25B)2gとを配合した。この配合物を均一に分散するように30分間撹拌することによって、不揮発分20%に調整された配線層間絶縁層形成用の樹脂組成物のワニスを形成した。得られた樹脂組成物のワニスを、卓上コータを用いて離型処理されたPETフィルム(厚さ38μm、商品名:NR-1)上に塗工した。塗膜の厚みは、アプリケータを使用して、乾燥後に10μmとなるように調整した。次に、樹脂組成物の塗膜を130℃、10分間の加熱により乾燥して、硬化性フィルム(材料A)をPETフィルム上に形成させた。そして、PETフィルムを除去して、硬化性フィルム(材料A)を配線層間絶縁層57を形成するために用いた。実施例1の配線層間絶縁層57(材料Aの硬化物)は、吸湿率が1.0質量%以下、塩化物イオン濃度が3ppm以下、破断伸びが150%、40℃における貯蔵弾性率が60MPaであった。
【0190】
次に
図14に戻って、配線層間絶縁層57に、感光性絶縁樹脂フィルム52と同様にして形成した厚さ3μmの感光性絶縁樹脂フィルム58を貼り付けた。そして、感光性絶縁樹脂フィルムに対して、露光処理、現像処理、及び熱硬化処理を施した。これにより、
図14(a),(b)に示される測定評価用試料50を形成した。この測定評価用試料50においては、第1の配線55a同士は、第1の接続配線55cによって互いに接続されており、第1の配線55aは、バリア金属膜54及び配線層間絶縁層57によって覆われている。また、第2の配線55b同士は、第2の接続配線55dによって互いに接続されており、第2の配線55bも、バリア金属膜54及び配線層間絶縁層57によって覆われている。
【0191】
上述した測定評価用試料50の絶縁信頼性を確認するため、以下に説明する高加速度寿命試験(HAST:Highly Accelerated Stress Test)を行った。この試験では、湿度85%、130℃の条件下において第1の接続配線55cと第2の接続配線55dとに3.3Vの電圧を印加し、所定の時間にわたって静置した。これにより、時間経過に伴う第1の配線55aと、第2の配線55bとの絶縁性の変化を測定した。この試験では、第1の配線55aと第2の配線55bとの間の抵抗値が、試験開始から200時間経過時に1×106Ω以上であれば評価Aとし、試験開始から200時間経過前に1×106Ω未満となれば評価Bとした。実施例1の高加速度寿命試験の結果を、下記表1に示す。
【0192】
(実施例2)
ライン幅L及びスペース幅Sを3μmに設定したこと以外は実施例1と同様にして測定評価用試料50を形成し、上述した高加速度寿命試験を行った。実施例2の高加速度寿命試験の結果を、下記表1に示す。
【0193】
(実施例3)
ライン幅L及びスペース幅Sを2μmに設定したこと以外は実施例1と同様にして測定評価用試料50を形成し、上述した高加速度寿命試験を行った。実施例3の高加速度寿命試験の結果を、下記表1に示す。
【0194】
(実施例4)
配線層間絶縁層57を形成するための硬化性フィルムとして下記材料Bを用いたこと以外は、実施例2と同様にして測定評価用試料50を形成した。この測定評価用試料50に対して上述した高加速度寿命試験を行った。実施例4の高加速度寿命試験の結果を、下記表1に示す。
【0195】
<材料B>
まず、シロキサン鎖を有する熱可塑性樹脂の合成をするため、撹拌機、温度計及び窒素置換装置(窒素流入管)を備えた500mlフラスコ内に、ジアミンである1,4-ブタンジオール ビス(3-アミノプロピル)エーテル(東京化成工業株式会社製、商品名:B-12)を8.17g、ポリオキシプロピレンジアミン(BASFジャパン株式会社製、商品名:D-400)を21.65g、及びシリコーンジアミン(信越化学工業株式会社製、商品名:KF-8010)を8.6gと、溶媒であるNMP(N-メチル-2-ピロリドン)250gとを添加し、撹拌してジアミンを溶媒に溶解させた。次に、当該フラスコに水分受容器付の還流冷却器を取り付け、窒素ガスを吹き込みながら180℃に昇温させた後、180℃を5時間保持し、水を除去しながら反応させた。こうして得られた溶液を室温まで冷却した。次に、NMPに溶解したポリブタジエン樹脂(CRAY VALLEY製、商品名:Ricon130MA8)を固形分で50gと、上記のシロキサン鎖を有する熱可塑性樹脂を固形分で50gと、硬化剤(日油株式会社製、商品名:パーヘキシン25B)を2gと、G8009L(第一工業製薬株式会社製、商品名)を1gとを配合し、均一に分散するように30分間撹拌し、配線層間絶縁層形成用の樹脂組成物のワニスを形成した。得られた樹脂組成物のワニスを、卓上コータを用いて離型処理されたPETフィルム(厚さ38μm、商品名:NR-1)上に塗工した。樹脂組成物の塗膜の膜厚は、アプリケータを使用して、乾燥後に10μmとなるように調整した。次に、樹脂組成物の塗膜を120℃、20分間の加熱により乾燥して、硬化性フィルム(材料B)をPETフィルム上に形成させた。そして、PETフィルムを除去し、硬化性フィルム(材料B)を配線層間絶縁層57を形成するために用いた。実施例4の配線層間絶縁層57(材料Bの硬化物)は、吸湿率が1.0質量%以下、塩化物イオン濃度が3ppm以下、破断伸びが70%、40℃における貯蔵弾性率が180MPaであった。
【0196】
(実施例5)
ライン幅L及びスペース幅Sを2μmに設定したこと以外は実施例4と同様にして測定評価用試料50を形成し、上述した高加速度寿命試験を行った。実施例5の高加速度寿命試験の結果を、下記表1に示す。
【0197】
(実施例6)
配線層間絶縁層57を形成するための硬化性フィルムとして下記材料Cを用いたこと以外は、実施例2と同様にして測定評価用試料50を形成した。この測定評価用試料50に対して上述した高加速度寿命試験を行った。実施例6の高加速度寿命試験の結果を、下記表1に示す。
【0198】
<材料C>
まず、熱可塑性樹脂の合成をするため、攪拌機、温度計、及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパンを10.3g、1,4-ブタンジオール ビス(3-アミノプロピル)エーテル(東京化成工業株式会社製、商品名:B-12)を4.1g、及び、NMPを101gを添加した。次いで、1,2-(エチレン)ビス(トリメリテート無水物)を20.5gを当該フラスコ内に添加し、室温で1時間攪拌した。次に、当該フラスコに水分受容器付の還流冷却器を取り付け、窒素ガスを吹き込みながら180℃に昇温させた後、180℃を5時間保持し、水を除去しながら反応させた。こうして得られた溶液を室温まで冷却した。次に、NMPに溶解したポリブタジエン樹脂(CRAY VALLEY製、商品名:Ricon130MA8)を固形分で50g、上記の熱可塑性樹脂を固形分で50g、硬化剤(日油株式会社製、商品名:パーヘキシン25B)を2gと、NMPに溶解したエポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、商品名:NC3000H)を固形分で10gと、G8009L(第一工業製薬株式会社製、商品名)を1gと、シリカスラリー[アドマテックス製;商品名:SC2050-KNK]を固形分で70gとを配合し、均一に分散するように30分間撹拌し、配線層間絶縁層形成用の樹脂組成物のワニスを形成した。得られた樹脂組成物のワニスを、卓上コータを用いて離型処理されたPETフィルム(厚さ38μm、商品名:NR-1)上に塗工した。樹脂組成物の塗膜の膜厚は、アプリケータを使用して、乾燥後に10μmとなるように調整した。次に、樹脂組成物の塗膜を120℃、20分間の加熱により乾燥して、硬化性フィルム(材料C)をPETフィルム上に形成させた。そして、PETフィルムを除去し、硬化性フィルム(材料C)を、配線層間絶縁層57を形成するために用いた。実施例6の配線層間絶縁層57(材料Cの硬化物)は、吸湿率が1.0質量%以下、塩化物イオン濃度が5ppm以下、破断伸びが3%、40℃における貯蔵弾性率が11GPaであった。
【0199】
(比較例1)
配線層間絶縁層57を下記材料Dを用いて形成したこと以外は、実施例1と同様にして測定評価用試料50を形成した。ただし、貼り付けられた材料Dに対して、高精度平行露光機(株式会社オーク製作所製、商品名:EXM-1172-B-∞)で露光量:500mJ/cm2の露光処理を施した後、熱硬化処理を実施した。この測定評価用試料50に対して上述した高加速度寿命試験を行った。比較例1の高加速度寿命試験の結果を、下記表1に示す。
【0200】
<材料D>
材料Dは、感光性絶縁樹脂フィルム52等と同一の感光性絶縁樹脂から形成された、厚さ10μmのフィルムである。材料Dの硬化物は、吸湿率が2.0質量%、塩化物イオン濃度が8.6ppmであった。
【0201】
(比較例2)
ライン幅L及びスペース幅Sを2μmに設定したこと以外は比較例1と同様にして測定評価用試料50を形成し、上述した高加速度寿命試験を行った。比較例2の高加速度寿命試験の結果を、下記表1に示す。
【0202】
(比較例3)
配線層間絶縁層57を下記材料Eを用いて形成し、ライン幅L及びスペース幅Sを3μmに設定したこと以外は比較例1と同様にして測定評価用試料50を形成した。この測定評価用試料50に対して上述した高加速度寿命試験を行った。比較例3の高加速度寿命試験の結果を、下記表1に示す。
【0203】
<材料E>
材料Eとして、FZ-2700GA(日立化成株式会社製、商品名)を用いた。材料Eの硬化物は、吸湿率が1.3質量%、塩化物イオン濃度が6.3ppmであった。
【0204】
(比較例4)
配線層間絶縁層57を形成するための硬化性フィルムとして下記材料Fを用い、ライン幅L及びスペース幅Sを3μmに設定したこと以外は、比較例1と同様にして測定評価用試料50を形成した。この測定評価用試料50に対して上述した高加速度寿命試験を行った。比較例4の高加速度寿命試験の結果を、下記表1に示す。
【0205】
<材料F>
まず、熱可塑性樹脂の合成をするため、攪拌機、温度計及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に、5,5’-メチレン-ビス(アントラニリックアシッド)を2.16gと、脂肪族エーテルジアミン(BASFジャパン株式会社製、商品名:D-400)を15.13gと、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ビス(4-アミノフェニル)ジシロキサン(信越化学工業株式会社製、商品名:LP-7100)を1.63gと、NMPを115gとを配合した。次いで、オキシジフタル酸無水物(ODPA)16.51gを当該フラスコ内に添加した後、室温で1時間攪拌した。そして、当該フラスコ内に窒素ガスを吹き込みながら180℃に昇温させた後、180℃を5時間保持し、水を除去しながら反応させた。こうして得られた溶液を室温まで冷却した。NMPに溶解したエポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、商品名:NC3000H)を固形分で30gと、上記の熱可塑性樹脂を固形分で50gと、硬化剤として2P4MHZ(四国化成工業株式会社製、商品名)を1gとを配合し、均一に分散するように30分間撹拌し、樹脂組成物のワニスを形成した。得られた樹脂組成物のワニスを、卓上コータを用いて離型処理されたPETフィルム(厚さ38μm、商品名:NR-1)上に塗工した。樹脂組成物の塗膜は、アプリケータを使用して、乾燥後に10μmとなるように調整した。次に、樹脂組成物の塗膜を120℃、20分間の加熱により乾燥して、硬化性フィルム(材料F)をPETフィルム上に形成させた。そして、PETフィルムを除去し、配線層間絶縁層を形成するために硬化性フィルム(材料F)を用いた。比較例4の配線層間絶縁層(材料Fの硬化物)は、吸湿率が1.2質量%、塩化物イオン濃度が5ppm以下であった。
【0206】
【0207】
上記表1においては、配線層間絶縁層57の吸湿率が1.0質量%以下である場合「Y」と示され、配線層間絶縁層57の吸湿率が1.0質量%を超えている場合「N」と示される。表1より、実施例1~6の高加速度寿命試験の結果は全て評価Aであった一方で、比較例1~4の高加速度寿命試験の結果は全て評価Bであった。これらの結果より、吸湿率が1.0質量%以下である配線層間絶縁層57の有無によって、測定評価用試料50の絶縁信頼性が大きく異なることがわかった。
【0208】
図15は、実施例3と比較例2との高加速度寿命試験の結果を示すグラフである。
図13において、横軸は時間を示し、縦軸は第1の配線55aと第2の配線55bとの間の抵抗値を示す。
図15において、データ61は実施例3の試験結果であり、データ62は比較例2の試験結果である。
【0209】
図15に示されるように、実施例3では試験開始から300時間経過時であっても、第1の配線55aと第2の配線55bとの間の抵抗値が1×10
7Ω以上を示した。一方、比較例2では試験開始から20時間程度の時点で急激に抵抗値が減少し、1×10
7Ω未満になった。
【0210】
図16(a)は、上記高加速度寿命試験後の実施例3の測定評価用試料50を観察した図であり、
図16(b)は、上記高加速度寿命試験後の比較例2の測定評価用試料50を観察した図である。
図16(b)に示されるように、比較例2においては、少なくとも第1の配線55a及び第2の配線55bが何らかの要因にて腐食されていることが確認された。一方、
図16(b)に示されるように、実施例3においては、配線等に明らかな腐食は確認されなかった。
【0211】
(実施例7~13)
以下の各成分を表1に示す組成となるように、25℃で30分間以上攪拌した後、#200のナイロンメッシュ(目開き:75μm)でろ過して、樹脂組成物(ワニス)を得た。
【0212】
(A-1)成分:下記式で表されるマレイミド化合物(n=1~10の混合物、重量平均分子量:15000~20000程度)
【化21】
【0213】
(A-2)成分:下記式で表されるマレイミド化合物の混合物
【化22】
【化23】
【0214】
(B)成分:(メタ)アクリロイル基を有する化合物(新中村化学工業株式会社製、商品名:A-DCP)
(C)成分:光ラジカル重合開始剤(BASF社製、商品名:Irgacure907)
(D-1)成分:エポキシ基を有するシランカップリング剤(信越化学工業株式会社社製、商品名:X-12-984S)
(D-2)成分:エポキシ基を有するシランカップリング剤(信越化学工業株式会社社製、商品名:KBM-403)
【0215】
各実施例の樹脂組成物(ワニス)について、以下の評価を行った。結果を表2に示す。
【0216】
<誘電特性(誘電率:Dk、誘電正接:Df)評価>
誘電特性の評価は、ワニスを卓上コータで乾燥後の厚みが50μmとなるように銅箔上に塗工・乾燥させ樹脂フィルム(半硬化)を得た。次に、得られた樹脂フィルム(半硬化)に2000mJ/cm2のUVを照射した。作製した樹脂フィルム上に同様に樹脂膜を形成・積層していき、樹脂フィルムの膜厚を300μmとした。さらに、支持体である銅箔を物理的剥離もしくはエッチングによって除去して評価用の樹脂フィルムを得た。
そして、樹脂フィルムを長さ60mm、幅2mm、厚み0.3mmに切断したものを試験片として空洞共振器摂動法により誘電特性を測定した。測定器には、アジレントテクノロジー社製ベクトル型ネットワークアナライザE8364B、空洞共振器には株式会社関東電子応用開発製CP531(10GHz帯共振器)、測定プログラムにはCPMA-V2をそれぞれ使用した。条件は、周波数10GHz、測定温度25℃とした。
【0217】
<吸湿率の測定>
ウェハ(6インチ径、厚さ400μm)にスピンコータを用いてワニスを塗布し、90℃/5分乾燥させて樹脂層を形成した。2000mJ/cm2で露光して硬化させた後、180℃/1時間加熱することによって、試料を作製した。この試料を、相対湿度85%、130℃に設定された恒温恒湿槽(エスペック株式会社製、商品名:EHS-221MD)内にて、200時間静置した。そして、恒温恒湿槽内を50℃まで下げた後、試料を取り出し、シリコンウェハ上から樹脂の一部を削り取った。削り取られた樹脂の一部を示差熱熱重量同時測定装置(株式会社日立ハイテクサイエンス製、商品名:TG/DTA6300)を用いて、昇温速度:10℃/分、窒素フロー:400mL/分、温度範囲:25℃~150℃の条件下で測定した。150℃における上記の重量減少率を吸湿率として算出した。
【0218】
<伸び率の測定>
上記と同様の手法にて作製した樹脂フィルムを、長さ30mm、幅5mmに切断して得られたサンプルを、小型卓上試験機(株式会社島津製作所製、商品名:EZ-S)にて送り速度5mm/分にて測定したときの破断伸びを測定した。
【0219】
<微細配線形成性の評価>
シリコンウェハ(6インチ径、厚さ400μm)上に、スピンコートにてワニスを塗布し、90℃/5分加熱乾燥して、シリコンウェハ上に樹脂膜を形成した。その際、乾燥後の樹脂の膜厚は5μmとなるようにスピンコート条件を調整した。次に、Line/Space(L/S(μm/μm))が200/200、100/100、80/80、60/60、50/50、40/40、30/30、20/20、10/10、7/7、5/5、4/4、3/3で、ビア径が50、40、30、20、10、7、5、4、3μmとなるネガ型用パターンマスクを載せ、高精度平行露光機(オーク製作所製、商品名:EXM-1172-B-∞)を用いて1000mJ/cm2で露光した。さらに、100℃/1分の条件で追加加熱を行い、サンプルを得た。得られたサンプルをシクロペンタノンに常温で60秒、揺動しながら浸漬、次いでシクロペンタノンでリンスしてからイソプロピルアルコールに常温で5秒間浸漬した。その後、圧空を吹きかけるなどしてイソプロピルアルコールを揮発させた。
微細配線形成性は、樹脂膜のウェハ上から剥離、樹脂膜のひび割れ、パターン端部の荒れの有無、及び、樹脂を現像したパターン底部の残渣の有無を金属顕微鏡で確認した。これらの不具合が確認できなかった最小のL/S及びビア径を表2に示す。
【0220】
<b-HAST耐性>
上記の高加速度寿命試験と同様にして、パターンを形成した。次いで、無電解・電解銅メッキなどによりめっきアップし、CMPにより表面を平たん化した。なお、L/S(μm/μm)は3/3、5/5となるようにマスクサイズを調整した。
次に、得られた配線上に、スピンコートでワニスを積層し、90℃で5分間乾燥させた。スピンコートする際、配線の55cと55d部分にはポリイミドテープを貼って樹脂がコーティングされるのを防ぎ、UV硬化したのちポリイミドテープをはく離した。樹脂膜の膜厚は、5μmとなるようにスピンコート条件を調整した。UVを1000mJ/cm2照射した後、180℃/1時間加熱して樹脂膜を硬化させた。なお、基材となるウェハ(6インチ径、厚さ400μm)と配線層の間には、パターンを形成する以外は全く同様の方法で作製した樹脂層がある。
得られた配線に、湿度85%、130℃の条件下において第1の接続配線55cと第2の接続配線55dとに3.3Vの電圧を印加し、所定の時間にわたって静置した。これにより、時間経過に伴う第1の配線55aと、第2の配線55bとの絶縁性の変化を測定した。この試験では、第1の配線55aと第2の配線55bとの間の抵抗値が、300時間以上、1×106Ω以上だったものを「A」(b-HAST耐性あり)とし、そうでなかったものを「B」(b-HAST耐性なし)として評価した。
【0221】
【符号の説明】
【0222】
1…基板、2A~2D…半導体チップ、3A,3B…アンダーフィル、4…絶縁材料、10…半導体用配線層積層体、11…基板、13…銅配線、13A…銅層、14…銅配線、14A…銅層、15,16…バリア金属膜、17,18…配線層間絶縁層、21…有機絶縁層、21a…溝部、22…有機絶縁層、22a…溝部、100…半導体パッケージ、L…ライン幅、S…スペース幅。