(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】溺水監視装置及び溺水監視方法
(51)【国際特許分類】
G08B 21/08 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
G08B21/08
(21)【出願番号】P 2022513016
(86)(22)【出願日】2020-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2020014882
(87)【国際公開番号】W WO2021199309
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松永 英行
【審査官】松原 徳久
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104700573(CN,A)
【文献】特開2015-154111(JP,A)
【文献】中国実用新案第207182622(CN,U)
【文献】特開2007-026331(JP,A)
【文献】特開2020-173751(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106971508(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106948622(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106088689(CN,A)
【文献】中国実用新案第203777618(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B19/00-21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線タグから送信された信号を受信する通信モジュールと、
前記信号の受信の成否に基づいて、前記無線タグを装着した者であるタグ装着者が溺水状態にあるか否かを監視するプロセッサと、
を具備する
溺水監視装置であって、
前記プロセッサは、前記溺水監視装置での監視結果を受信する端末装置から所定の範囲内に存在する前記無線タグを前記溺水監視装置の監視対象として登録する、
溺水監視装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記信号の受信の成否を前記信号の復号の成否によって判定し、前記信号の復号に成功したときは前記タグ装着者が溺水状態にないと判定する一方で、前記信号の復号に失敗したときは、前記無線タグの潜水時間に基づいて、前記タグ装着者が溺水状態にあるか否かを判定する、
請求項1に記載の溺水監視装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記無線タグの潜水時間に応じた表示態様を有する通知画面を生成する、
請求項1に記載の溺水監視装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記タグ装着者が溺水状態に陥った位置を示す通知画面を生成する、
請求項1に記載の溺水監視装置。
【請求項5】
溺水監視装置が有するプロセッサが、
無線タグから送信された信号の受信の成否に基づいて、前記無線タグを装着した者が溺水状態にあるか否かを監視し、
前記溺水監視装置での監視結果を受信する端末装置から所定の範囲内に存在する前記無線タグを前記溺水監視装置の監視対象として登録する、
溺水監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、溺水監視装置及び溺水監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スイミングプールや海水浴場での溺水事故が毎年のように発生している。溺水事故を防止するために現在採られている主な対策は、監視員の目視による安全確認である。しかし、遊泳者の数に対して監視員の数が少ないため、監視員の目視による安全確認では、溺水状態にある遊泳者を見逃してしまう可能性がある。
【0003】
これに対し、カメラで撮影された映像を用いて遊泳者を監視する監視システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、カメラの映像を用いた監視では、カメラの死角に存在する遊泳者の状態を把握することが困難である。一方で、死角を無くそうとすると、多数のカメラが必要となるため、監視システムの実現コストが増大してしまう。
【0006】
そこで、本開示では、監視システムの実現コストを抑えつつ正確に遊泳者の監視を行うことができる技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の溺水監視装置は、通信モジュールと、プロセッサとを有する。通信モジュールは、無線タグから送信された信号を受信する。プロセッサは、無線タグから送信された信号の受信の成否に基づいて、無線タグを装着した者が溺水状態にあるか否かを監視する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施形態1に係る溺水監視システムの構成例を示す図である。
【
図2】本開示の実施形態1に係る溺水監視装置の構成例を示す図である。
【
図3】本開示の実施形態1に係る無線タグの装着例を示す図である。
【
図4】本開示の実施形態1に係る無線タグの登録時の動作例の説明に供する図である。
【
図5】本開示の実施形態1に係るタグ管理テーブルの一例を示す図である。
【
図6】本開示の実施形態1に係るタグ管理テーブルの一例を示す図である。
【
図7】本開示の実施形態1に係る無線タグの監視時の動作例の説明に供する図である。
【
図8】本開示の実施形態1に係る溺水監視装置における処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図9】本開示の実施形態1に係る潜水時間テーブルの一例を示す図である。
【
図10】本開示の実施形態1に係る通常時通知画面の一例を示す図である。
【
図11】本開示の実施形態1に係る通常時通知画面の一例を示す図である。
【
図12】本開示の実施形態1に係る緊急時通知画面の一例を示す図である。
【
図13】本開示の実施形態1に係る緊急時通知画面の一例を示す図である。
【
図14】本開示の実施形態1に係る点灯装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示の実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態において、同一の部位または同一の処理には同一の符号を付すことにより重複する説明を省略することがある。
【0010】
また、以下に示す項目順序に従って本開示の技術を説明する。
[実施形態1]
<溺水監視システムの構成>
<溺水監視装置の構成>
<無線タグの装着>
<溺水監視システムの動作>
<無線タグの登録時の動作>
<登録動作例1>
<登録動作例2>
<無線タグの監視時の動作>
<通知画面>
<通知例1>
<通常時通知画面>
<緊急時通知画面>
<通知例2>
[実施形態2]
[開示の技術の効果]
【0011】
[実施形態1]
<溺水監視システムの構成>
図1は、本開示の実施形態1に係る溺水監視システムの構成例を示す図である。
図1において、溺水監視システム1は、溺水監視装置10と、無線受信機20-1~20-4と、無線タグ40A~40Gと、端末装置60とを有する。以下では、無線受信機20-1~20-4を「無線受信機20」と総称し、無線タグ40A~40Gを「無線タグ40」と総称することがある。無線タグ40は、電池を内蔵して自ら電波を発する無線タグであり、「アクティブタグ」または「アクティブRFIDタグ」と呼ばれることもある。無線受信機20と、溺水監視装置10と、端末装置60とは、有線または無線のネットワークを介して相互に接続され、無線受信機20と溺水監視装置10とが通信可能であり、溺水監視装置10と端末装置60とが通信可能である。
【0012】
無線受信機20は、無線タグ40から送信される信号(以下では「タグ信号」と呼ぶことがある)を受信し、受信したタグ信号を溺水監視装置10へ転送する。この際、無線受信機20は、受信したタグ信号の受信レベルを測定し、測定結果をタグ信号に対応付けて溺水監視装置10へ通知する。また、タグ信号には、無線タグ40を一意に識別可能なID(以下では「タグID」と呼ぶことがある)が含まれる。例えば、無線タグ40Aから送信されるタグ信号には「A」のタグIDが含まれ、無線タグ40Bから送信されるタグ信号には「B」のタグIDが含まれ、無線タグ40Cから送信されるタグ信号には「C」のタグIDが含まれ、無線タグ40Dから送信されるタグ信号には「D」のタグIDが含まれ、無線タグ40Eから送信されるタグ信号には「E」のタグIDが含まれ、無線タグ40Fから送信されるタグ信号には「F」のタグIDが含まれ、無線タグ40Gから送信されるタグ信号には「G」のタグIDが含まれている。また、無線タグ40は、タグ信号をCRC(Cyclic Redundancy Check)符号化し、CRC符号化後のタグ信号を送信する。
【0013】
溺水監視装置10は、無線受信機20から転送されたタグ信号の受信の成否に基づいて、無線タグ40を装着した者(以下では「タグ装着者」と呼ぶことがある)を監視し、監視結果を示す通知画面を生成し、生成した通知画面を端末装置60へ送信する。
【0014】
端末装置60は、溺水監視装置10から送信された通知画面を受信し、受信した通知画面を表示する。
【0015】
<溺水監視装置の構成>
図2は、本開示の実施形態1に係る溺水監視装置の構成例を示す図である。
図2において、溺水監視装置10は、プロセッサ101と、メモリ102と、通信モジュール103とを有する。プロセッサ101の一例として、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等が挙げられる。メモリ102の一例として、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等が挙げられる。溺水監視装置10は、通信モジュール103を介して無線受信機20及び端末装置60と通信する。
【0016】
通信モジュール103は、タグ信号と受信レベルの測定結果とを無線受信機20から受信してプロセッサ101へ出力する。また、通信モジュール103は、プロセッサ101によって生成された通知画面を端末装置60へ送信する。
【0017】
プロセッサ101は、タグ信号の受信の成否に基づいてタグ装着者を監視する。また、プロセッサ101は、監視結果を示す通知画面を生成し、生成した通知画面を通信モジュール103へ出力する。
【0018】
<無線タグの装着>
図3は、本開示の実施形態1に係る無線タグの装着例を示す図である。
図3に示すように、例えば、無前タグ40はタグ装着者の頭部や肩付近に装着される。
図3には、タグ装着者が着用するスイミングキャップCAに無線タグ40が装着される場合を一例として示す。タグ装着者の頭部や肩は、タグ装着者が通常の遊泳状態にあるときに水中に沈んだままになることがない箇所の一例である。
【0019】
<溺水監視システムの動作>
以下、溺水監視システムの動作について、無線タグの登録時の動作と、無線タグの監視時の動作とに分けて説明する。
【0020】
<無線タグの登録時の動作>
以下、無線タグの登録時の動作について、登録動作例1と登録動作例2との二つの動作例を挙げて説明する。
【0021】
<登録動作例1>
図4は、本開示の実施形態1に係る無線タグの登録時の動作例の説明に供する図である。
図4に示すように、建物内のフロアFLにはスイミングプールPOが設置されている。例えば、縦30m×横40mの矩形のフロアFLに、縦20m×横25mの矩形のスイミングプールPOが設置されている。また、フロアFLを上方から見た場合、
図4に示すように、フロアFLの四隅に無線受信機20が設置され、フロアFLの何れかの位置に溺水監視装置10が配置される。なお、溺水監視装置10は、フロアFLと異なるフロアや、フロアFLが属する建物と異なる建物の中に配置されても良い。端末装置60はスイミングプールPOの監視員によって使用される。端末装置60は、監視員の移動に伴って移動可能な可搬型の端末装置であり、端末装置60の一例として、監視員の腕に装着されるリストバンド型のスマートデバイスが挙げられる。
【0022】
溺水監視装置10のプロセッサ101は、タグ信号を復号することによって取得されるタグIDと、タグ信号の受信レベルの大きさとから、周知の技術を用いて、フロアFLにおける無線タグ40A~40Gの各々の存在位置(以下では「タグ位置」と呼ぶことがある)を検出する。
【0023】
端末装置60が有するタッチパネルに表示される「監視対象タグ登録ボタン」がタッチされる等の所定の操作が端末装置60に対して為されると、端末装置60は、登録要求を溺水監視装置10へ送信する。この登録要求に従って、プロセッサ101は、端末装置60が存在する位置から所定の範囲R内に存在する無線タグ40を溺水監視装置10の監視対象の無線タグ(以下では「監視対象タグ」と呼ぶことがある)として溺水監視装置10に登録する。例えば、メモリ102には、
図5に示すタグ管理テーブルMT1が記憶されている。
図5は、本開示の実施形態1に係るタグ管理テーブルの一例を示す図である。
図5において、タグ管理テーブルMT1では、各タグIDに対応付けて監視対象の有無が登録される。例えば、
図4において、無線タグ40A~40Fのうち、無線タグ40A~40Eの5個の無線タグが端末装置60から所定の範囲R内に存在する一方で、無線タグ40F,40Gの2個の無線タグが端末装置60から所定の範囲R内に存在しない場合、プロセッサ101は、
図5に示すように、無線タグ40A~40Eの5個の無線タグを監視対象タグとしてタグ管理テーブルMT1に登録する一方で、無線タグ40F,40Gの2個の無線タグを溺水監視装置10の監視対象外のタグ(以下では「非監視対象タグ」と呼ぶことがある)としてタグ管理テーブルMT1に登録する。
図5では、監視対象タグを「○」印で示し、非監視対象タグを「×」印で示す。このように、端末装置60から所定の範囲R内に存在する無線タグ40を監視対象タグとして登録することで、監視対象タグの登録を容易に行うことができる。
【0024】
<登録動作例2>
例えば、メモリ102には、
図6に示すタグ管理テーブルMT2が記憶されている。
図6は、本開示の実施形態1に係るタグ管理テーブルの一例を示す図である。
図6において、タグ管理テーブルMT2では、各タグIDに対応付けて、スイミングスクールの生徒のID(以下では「生徒ID」と呼ぶことがある)と、スイミングスクールの生徒の出欠と、監視対象の有無とが登録される。
【0025】
例えば、スイミングスクールの各生徒は、スイミングスクールへ出席するときに、各生徒の生徒IDが電子的に記憶された非接触式のカードを受付機に翳すことで出席登録を行う。タグ管理テーブルMT2では、出席登録が為された生徒IDに対応する出欠状態が「欠席」から「出席」へ更新される。
図6の「出欠」の欄では、出席状態を「○」印で示し、欠席状態を「×」印で示す。また、タグ管理テーブルMT2では、出席状態が「出席」にある生徒IDに対応するタグIDを有する無線タグ40が監視対象タグとして登録される。
図6では、監視対象タグを「○」印で示し、非監視対象タグを「×」印で示す。
【0026】
<無線タグの監視時の動作>
図7は、本開示の実施形態1に係る無線タグの監視時の動作例の説明に供する図である。
図7に示すように、監視対象タグである無線タグ40A~40Eの各々を装着した各タグ装着者は、スイミングプールPOを含むフロアFL内を移動する。各タグ装着者の移動に伴って無線タグ40A~40Eも移動する。
【0027】
プロセッサ101は、無線受信機20から転送されたタグ信号の受信の成否に基づいて、無線タグ40を装着したタグ装着者を以下のようにして監視する。
【0028】
図8は、本開示の実施形態1に係る溺水監視装置における処理手順の一例を示すフローチャートである。
図8において、ステップS100,S105の処理は、プロセッサ101に入力されるタグ信号毎に実行され、ステップS110,S115,S120,S125,S130,S135の処理は、監視対象タグ毎に実行される。
【0029】
ステップS100では、プロセッサ101は、タグ信号に含まれるタグIDを復号する。プロセッサ101は、タグ信号に対してCRCを行い、CRCの結果、タグ信号に誤りが検出されなかった場合は、タグ信号を復号することによりタグIDを取得する。よって、タグ信号に誤りが検出されなかった場合は、プロセッサ101は、タグIDの取得に成功する。一方で、CRCの結果、タグ信号に誤りが検出された場合は、プロセッサ101は、タグ信号を廃棄する。よって、タグ信号に誤りが検出された場合は、プロセッサ101は、タグIDの取得に失敗する。
【0030】
ここで、無線タグ40が水中に位置するときに、無線タグ40が発する電波は水中において大きく減衰する。無線タグ40が発する電波の減衰量が大きくなると、タグ信号のSN比が低下し、タグ信号の誤り率が増大する。よって、水中に位置する無線タグ40から送信されたタグ信号には誤りが検出される可能性が高いため、タグ信号の復号が失敗する可能性が高い。一方で、空気中に位置する無線タグ40から送信されたタグ信号には誤りが検出されない可能性が高いため、タグ信号の復号が成功する可能性が高い。
【0031】
そこで、ステップS105では、プロセッサ101は、タグ信号の復号に失敗したか否かを判定する。プロセッサ101は、ステップS100でのCRCの結果、タグ信号に誤りが検出されなかった場合は、タグ信号の復号に成功したと判定する。一方で、ステップS100でのCRCの結果、タグ信号に誤りが検出された場合は、プロセッサ101は、タグ信号の復号に失敗したと判定する。タグ信号の復号が失敗したときは(ステップS105:Yes)、処理はステップS115へ進み、タグ信号の復号が成功したときは(ステップS105:No)、処理はステップS110へ進む。
【0032】
ステップS110では、プロセッサ110は、タイマーをリセットする。タイマーは、監視対象タグである無線タグ40A~40Eの各々に対応して用意される。以下では、無線タグ40A用のタイマーを「タイマーTA」と呼び、無線タグ40B用のタイマーを「タイマーTB」と呼び、無線タグ40C用のタイマーを「タイマーTC」と呼び、無線タグ40D用のタイマーを「タイマーTD」と呼び、無線タグ40E用のタイマーを「タイマーTE」と呼ぶことがある。また、タイマーTA~TEを「タイマーTM」と総称することがある。ステップS110では、プロセッサ110は、監視対象タグである無線タグ40A~40Eのうち、ステップS100での復号に成功したタグ信号に含まれるタグIDを有する無線タグ40用のタイマーTMをリセットする。例えば、ステップS100において、「B」のタグIDの取得が成功する一方で、「A」,「C」,「D」,「E」の各タグIDの取得が失敗した場合、プロセッサ101は、タイマーTA~TEのうち、タイマーTBをリセットする。ステップS110の処理後、処理はステップS100に戻る。
【0033】
一方で、ステップS115では、プロセッサ101は、ステップS100での復号に失敗したタグ信号に含まれるタグIDを有する無線タグ40用のタイマーTMが起動中であるか否かを判定する。タイマーTMが起動中ないときは(ステップS115:No)、処理はステップS120へ進み、タイマーTMが起動中であるときは(ステップS115:Yes)、ステップS120の処理が行われることなく、処理はステップS125へ進む。
【0034】
ステップS120では、プロセッサ101は、ステップS100での復号に失敗したタグ信号に含まれるタグIDを有する無線タグ40用のタイマーTMを起動させる。例えば、ステップS100において、「B」のタグIDの取得が成功する一方で、「A」,「C」,「D」,「E」の各タグIDの取得が失敗した場合、プロセッサ101は、タイマーTA~TEのうち、未だ起動していないタイマーTMを起動させる。
【0035】
ステップS125では、プロセッサ101は、起動中にあるタイマーTMでの計測時間(以下では「タイマー計測時間」と呼ぶことがある)が閾値TH以上になっているか否かを判定する。タイマー計測時間は秒単位で計測される。タイマー計測時間が閾値TH以上になっているときは(ステップS125:Yes)、処理はステップS130へ進み、タイマー計測時間が閾値TH未満であるときは(ステップS125:No)、処理はステップS135へ進む。
【0036】
ここで、タグ信号の復号が失敗したときにタイマーTMが起動されてタイマーTMでの計時が開始されるため、タイマー計測時間は、無線タグ40が水中に位置する時間(以下では「潜水時間」と呼ぶことがある)に相当する。
【0037】
そこで、ステップS130では、プロセッサ101は、潜水時間が閾値TH以上であるタイマーTMに対応するタグIDを有する無線タグ40を装着しているタグ装着者が溺水状態にあると判定する。例えば、タイマーTA~TEのうち、タイマーTEでのタイマー計測時間が閾値TH以上になっているときは、プロセッサ101は、「E」のタグIDを有する無線タグ40Eを装着しているタグ装着者が溺水状態にあると判定する。ステップS130の処理後、処理はステップS100に戻る。
【0038】
一方で、ステップS135では、プロセッサ101は、潜水時間が閾値TH未満であるタイマーTMに対応するタグIDを有する無線タグ40を装着しているタグ装着者が溺水状態にない(つまり、非溺水状態にある)と判定する。例えば、タイマーTA~TEのうち、タイマーTA,TB,TC,TDの各タイマー計測時間が閾値TH未満であるときは、プロセッサ101は、「A」,「B」,「C」,「D」の各タグIDを有する各無線タグ40A,40B,40C,40Dを装着している各タグ装着者が溺水状態にないと判定する。ステップS135の処理後、処理はステップS100に戻る。
【0039】
以上のようにして、プロセッサ101は、無線受信機20から転送されたタグ信号の受信の成否に基づいて、タグ装着者が溺水状態にあるか否かを監視する。
【0040】
<監視結果の通知>
以下、タグ装着者が溺水状態にあるか否かの監視結果の通知例として、通知画面の表示によって監視結果を通知する通知例1と、点灯装置の点灯によって監視結果を通知する通知例2との二つの通知例を挙げて説明する。
【0041】
<通知例1>
プロセッサ101は、以下のようにして、タグ装着者が溺水状態にあるか否かの情報を含む監視結果を示す通知画面を生成し、生成した通知画面を通信モジュール103へ出力し、通信モジュール103は、通知画面を端末装置60へ送信する。端末装置60は、溺水監視装置10から送信された通知画面を受信し、受信した通知画面を表示する。
【0042】
図9は、本開示の実施形態1に係る潜水時間テーブルの一例を示す図である。
図9において、潜水時間テーブルDTでは、潜水時間と遊泳状態とが互いに対応付けられて予め登録されている。潜水時間テーブルDTは、予めメモリ102に記憶されている。潜水時間テーブルDTにおける潜水時間は秒単位の時間である。潜水時間テーブルDTでは、例えば、潜水時間が0秒以上10秒以下であるときの遊泳状態は「安全」と規定され、潜水時間が11秒以上60秒以下であるときの遊泳状態は「注意」と規定され、潜水時間が61秒以上であるときの遊泳状態は「危険」と規定されている。また例えば、「安全」及び「注意」の遊泳状態は「非溺水状態」に該当し、「危険」の遊泳状態は「溺水状態」に該当する。つまり、プロセッサ101は、潜水時間が0秒以上60秒以下であるときは、タグ装着者は溺水状態に陥っていないと判定し、潜水時間が61秒以上であるときは、タグ装着者が溺水状態に陥っていると判定する。よって、
図9に示す潜水時間テーブルDTが採用される場合には、ステップS125(
図8)の処理における閾値THは「61秒」に予め設定される。
【0043】
プロセッサ101は、
図8に示すフォローチャートに従って計測される潜水時間と、
図9に示す潜水時間テーブルDTとに基づいて、通知画面を生成する。以下、プロセッサ101が生成する通知画面について、溺水状態に陥ったタグ装着者が存在しないときの通知画面(以下では「通常時通知画面」と呼ぶことがある)と、溺水状態に陥ったタグ装着者が発生したときの通知画面(以下では「緊急時通知画面」と呼ぶことがある)とに分けて説明する。
【0044】
<通常時通知画面>
図10及び
図11は、本開示の実施形態1に係る通常時通知画面の一例を示す図である。監視対象タグのタグ装着者の中に溺水状態に陥ったタグ装着者が存在しないときは、プロセッサ101は、
図10に示す通知画面DS11と
図11に示す通知画面DS12とを一定時間毎に交互に生成し、端末装置60が有するタッチパネル61には、通知画面DS11と通知画面DS12とが一定時間毎に交互に表示される。
【0045】
図10に示す通知画面DS11には、監視対象タグのタグIDと潜水時間とが対応付けられて表形式で表示される。例えば、タグIDが「A」である無線タグ40Aの潜水時間が5秒であってタグ装着者の遊泳状態が「安全」(
図9)であるときは、プロセッサ101は、タグIDが「A」の列を青色で示す。また例えば、タグIDが「B」である無線タグ40Bの潜水時間が0秒であってタグ装着者の遊泳状態が「安全」(
図9)であるときは、潜水時間が0秒であるため、プロセッサ101は、タグIDが「B」の列を緑色で示す。また例えば、タグIDが「C」である無線タグ40Cの潜水時間が7秒であって遊泳状態が「安全」(
図9)であるときは、プロセッサ101は、タグIDが「C」の列を青色で示す。また例えば、タグIDが「D」である無線タグ40Dの潜水時間が15秒であって遊泳状態が「注意」(
図9)であるときは、プロセッサ101は、タグIDが「D」の列を黄色で示す。また例えば、タグIDが「E」である無線タグ40Eの潜水時間が13秒であって遊泳状態が「注意」(
図9)であるときは、プロセッサ101は、タグIDが「E」の列を黄色で示す。
【0046】
このように、プロセッサ101は、監視対象タグの潜水時間に応じた表示態様を有する通知画面を生成する。
【0047】
また、
図11に示す通知画面DS12には、通知画面DS11(
図10)と同様の色分けを用いて、スイミングプールPOを含むフロアFLにおける監視対象タグの存在位置が、無線タグ40A,40B,40C,40D,40Eにそれぞれ対応するアイコンIA,IB,IC,ID,IEによって表示される。但し、通知画面DS12に示されるタグ位置は、タグ信号の復号に成功した過去の時点のうち現時点から直近の時点での位置である。
【0048】
<緊急時通知画面>
図12及び
図13は、本開示の実施形態1に係る緊急時通知画面の一例を示す図である。監視対象タグのタグ装着者の中に溺水状態に陥ったタグ装着者が発生したときは、プロセッサ101は、
図12に示す通知画面DS21と
図13に示す通知画面DS22とを一定時間毎に交互に生成し、端末装置60が有するタッチパネル61には、通知画面DS21と通知画面DS22とが一定時間毎に交互に表示される。以下、緊急事通知画面DS21,DS22について、通常時通知画面DS11,DS12と異なる点について説明する。
【0049】
図12に示す通知画面DS21では、例えば、タグIDが「E」である無線タグ40Eの潜水時間が65秒であってタグ装着者の遊泳状態が「危険」(
図9)であるときは、無線タグ40Eのタグ装着者は溺水状態にあると判定されるため、プロセッサ101は、タグIDが「E」の列を赤色で示す。また、プロセッサ101は、溺水状態に陥ったタグ装着者が発生したため、緊急通知を通信モジュール103を介して端末装置60へ送信し、端末装置60は、この緊急通知に従って、端末装置60が有する振動子を振動させる。これにより、端末装置60を装着している監視員に対し、溺水状態に陥ったタグ装着者が発生したことを、画面表示だけでなく振動によっても伝えることができる。なお、端末装置60は、緊急通知を受信した場合に、振動とともに、または、振動に代えて、アラーム音を発生しても良い。
【0050】
また、
図13に示す通知画面DS22では、タグIDが「E」である無線タグ40Eの潜水時間が61秒に達した時点、つまり、無線タグ40Eのタグ装着者が溺水状態に陥った時点で、プロセッサ101は、アイコンIEに×印を重畳する。この×印の表示により、端末装置60を装着している監視員は、溺水状態にあるタグ装着者の存在位置を把握することができるため、溺水状態にあるタグ装着者の救助を迅速に行うことができる。このように、プロセッサ101は、タグ装着者が溺水状態に陥った位置を示す通知画面DS22を生成する。
【0051】
<通知例2>
図14は、本開示の実施形態1に係る点灯装置の一例を示す図である。
図14において、点灯装置80は、赤色灯RLと、黄色灯YLと、緑色灯GLとを有し、プロセッサ101からの制御に従って、点灯装置80の点灯色が変化する。例えば、プロセッサ101は、すべてのタグ装着者の遊泳状態が「安全」であるときは緑色灯GLを点灯させる。また例えば、プロセッサ101は、タグ装着者の中に遊泳状態が「注意」である者が存在する一方で、遊泳状態が「危険」である者が存在しないときは、黄色灯YLを点灯させる。また例えば、プロセッサ101は、タグ装着者の中に遊泳状態が「危険」である者が存在するときは、赤色灯RLを点灯させる。
【0052】
なお、通知例1,2以外にも、例えば、コンピュータ装置に接続されたディスプレイに
図10~13に示す通知画面を表示することによって監視結果を通知しても良い。
【0053】
以上、実施形態1について説明した。
【0054】
[実施形態2]
溺水監視装置10での上記説明における各処理の全部または一部は、各処理に対応するプログラムをプロセッサ101に実行させることによって実現しても良い。例えば、上記説明における各処理に対応するプログラムがメモリ102に記憶され、プログラムがプロセッサ101によってメモリ102から読み出されて実行されても良い。また、プログラムは、任意のネットワークを介して溺水監視装置10に接続されたプログラムサーバに記憶され、そのプログラムサーバから溺水監視装置10にダウンロードされて実行されたり、溺水監視装置10が読み取り可能な記録媒体に記憶され、その記録媒体から読み出されて実行されても良い。溺水監視装置10が読み取り可能な記録媒体には、例えば、メモリカード、USBメモリ、SDカード、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD、及び、Blu-ray(登録商標)ディスク等の可搬の記憶媒体が含まれる。また、プログラムは、任意の言語や任意の記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコードやバイナリコード等の形式を問わない。また、プログラムは必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールや複数のライブラリとして分散構成されるものや、OSに代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものも含む。
【0055】
以上、実施形態2について説明した。
【0056】
[開示の技術の効果]
以上のように、本開示の溺水監視装置(実施形態1の溺水監視装置10)は、通信モジュール(実施形態1の通信モジュール103)と、プロセッサ(実施形態1のプロセッサ101)とを有する。通信モジュールは、無線タグ(実施形態1の無線タグ40)から送信された信号(実施形態1のタグ信号)を受信する。プロセッサは、信号の受信の成否に基づいて、無線タグを装着した者であるタグ装着者が溺水状態にあるか否かを監視する。
【0057】
例えば、プロセッサは、信号の受信の成否を信号の復号の成否によって判定し、信号の復号に成功したときはタグ装着者が溺水状態にないと判定する一方で、信号の復号に失敗したときは、無線タグの潜水時間に基づいて、タグ装着者が溺水状態にあるか否かを判定する。
【0058】
また例えば、プロセッサは、溺水監視装置での監視結果を受信する端末装置が存在する位置から所定の範囲内に存在する無線タグを溺水監視装置の監視対象として登録する。
【0059】
また例えば、プロセッサは、無線タグの潜水時間に応じた表示態様を有する通知画面を生成する。
【0060】
また例えば、プロセッサは、タグ装着者が溺水状態に陥った位置を示す通知画面を生成する。
【0061】
以上の構成によれば、無線タグを用いて監視システムを構成することができるため、監視システムの実現コストを抑えつつ正確に遊泳者の監視を行うことができる。
【0062】
なお、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があっても良い。
【0063】
また、開示の技術は以下のような構成も採ることができる。
(1)
無線タグから送信された信号を受信する通信モジュールと、
前記信号の受信の成否に基づいて、前記無線タグを装着した者であるタグ装着者が溺水状態にあるか否かを監視するプロセッサと、
を具備する溺水監視装置。
(2)
前記プロセッサは、前記信号の受信の成否を前記信号の復号の成否によって判定し、前記信号の復号に成功したときは前記タグ装着者が溺水状態にないと判定する一方で、前記信号の復号に失敗したときは、前記無線タグの潜水時間に基づいて、前記タグ装着者が溺水状態にあるか否かを判定する、
前記(1)に記載の溺水監視装置。
(3)
前記プロセッサは、前記溺水監視装置での監視結果を受信する端末装置から所定の範囲内に存在する前記無線タグを前記溺水監視装置の監視対象として登録する、
前記(1)または(2)に記載の溺水監視装置。
(4)
前記プロセッサは、前記無線タグの潜水時間に応じた表示態様を有する通知画面を生成する、
前記(1)から(3)の何れかに記載の溺水監視装置。
(5)
前記プロセッサは、前記タグ装着者が溺水状態に陥った位置を示す通知画面を生成する、
前記(1)から(4)の何れかに記載の溺水監視装置。
(6)
無線タグから送信された信号の受信の成否に基づいて、前記無線タグを装着した者が溺水状態にあるか否かを監視し、
監視結果を示す通知画面を生成する、
溺水監視方法。
【符号の説明】
【0064】
1 溺水監視システム
10 溺水監視装置
20-1~20-4 無線受信機
40A~40G 無線タグ
60 端末装置
101 プロセッサ
102 メモリ
103 通信モジュール