(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】液滴吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240910BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
B41J2/01 307
B41J2/18
B41J2/01 401
(21)【出願番号】P 2022529185
(86)(22)【出願日】2020-06-02
(86)【国際出願番号】 JP2020021810
(87)【国際公開番号】W WO2021245799
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2023-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉持 裕介
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-103485(JP,A)
【文献】特開2020-075446(JP,A)
【文献】特開2000-190535(JP,A)
【文献】特開平04-348948(JP,A)
【文献】特開2009-298014(JP,A)
【文献】国際公開第2018/081871(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が流れる液体流路部と、
重力方向
および水平方向に並んで配置され、前記液体流路部から液滴を吐出する複数の吐出部と、
前記液体流路部における前記液体の流れ方向において、各吐出部が、位置が低くなるほど下流側に位置するように、前記流れ方向を調整する調整部と、
を備え
、
前記調整部は、
前記液体流路部で前記液体を前記流れ方向に流すための圧力を制御し、
前記複数の吐出部における水頭の差に基づく第1圧力差を、前記液体流路部内の前記液体の前記流れ方向における圧力損失に基づく第2圧力差で吸収するように、前記液体流路部における圧力の変化量を調整し、
前記第1圧力差は、前記重力方向の成分および前記水平方向の成分に基づく圧力として算出される、
液滴吐出装置。
【請求項2】
前記調整部は、
前記液体流路部における、前記流れ方向の上流側端部で前記液体にかかる圧力と、前記流れ方向の下流側端部で前記液体にかかる圧力との変化量を調整する、
請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
前記調整部は、全ての吐出部におけるメニスカスが吐出面から出ないように、前記液体流路部における圧力を調整する、
請求項2に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
前記液体流路部は、前記流れ方向の上流側端部に位置し、前記液体が供給される供給口と、前記流れ方向の下流側端部に位置し、前記液体が回収される回収口とを有し、
前記調整部は、前記供給口から前記回収口に向かう前記液体の流量を、前記複数の吐出部における水頭の差に応じて変更する、
請求項2または請求項3に記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
前記調整部は、前記供給口から前記回収口に向けて前記液体が流れるように、前記液体流路部における圧力を調整する、
請求項4に記載の液滴吐出装置。
【請求項6】
前記第2圧力差は、予め設定された値に基づく、
請求項
1~請求項5の何れか1項に記載の液滴吐出装置。
【請求項7】
前記複数の吐出部は、記録媒体に前記液滴を吐出して画像を記録する、
請求項1~
6の何れか1項に記載の液滴吐出装置。
【請求項8】
前記液体流路部は、前記重力方向に延びており、
前記複数の吐出部の吐出面は、水平方向を向く、
請求項1~
7の何れか1項に記載の液滴吐出装置。
【請求項9】
前記複数の吐出部は、重力方向および水平方向の少なくとも一方に液滴を吐出可能に構成され、
前記調整部は、前記水平方向に前記液滴を前記
吐出部に吐出させる場合、各吐出部が、位置が低くなるほど下流側に位置するように、前記流れ方向を調整する、
請求項1~
8の何れか1項に記載の液滴吐出装置。
【請求項10】
前記複数の吐出部は、前記重力方向に前記液滴を吐出する第1の吐出部と、前記水平方向に前記液滴を吐出する第2の吐出部とを有する、
請求項
9に記載の液滴吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、重力方向に沿って高低差が生じるように複数のノズル(吐出部)が配置された液滴吐出ヘッド(記録ヘッド)を有する画像形成装置(液滴吐出装置)が知られている。例えば、特許文献1に記載の画像形成装置では、液体を噴射させるための圧力を発生させる圧力発生部に印加するパルス信号のパルス数およびパルス幅の何れか一方を、複数のノズル間の高低差に応じて調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、複数のノズル間に高低差があると、液体の液面(メニスカス)の位置が、各ノズルにおいて変動するので、液滴吐出装置における液滴の吐出性能がノズル間でばらつくおそれがある。メニスカスの位置が決まる要因は、メニスカスの高低差に起因するメニスカス圧の差と、液滴吐出装置の駆動により生じる残響振動との2点であるが、駆動周波数の領域によっては支配的要因となるものが異なる。そのため、特許文献1に記載の構成のように、所定の周波数を基準に上記のパルス信号を調整すると、駆動周波数の領域によっては、ノズルにおける吐出性能のばらつきが残ってしまうおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、液滴の吐出性能が吐出部間でばらつくことを抑制することが可能な液滴吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る液滴吐出装置は、
液体が流れる液体流路部と、
重力方向および水平方向に並んで配置され、前記液体流路部から液滴を吐出する複数の吐出部と、
前記液体流路部における前記液体の流れ方向において、各吐出部が、位置が低くなるほど下流側に位置するように、前記流れ方向を調整する調整部と、
を備え、
前記調整部は、
前記液体流路部で前記液体を前記流れ方向に流すための圧力を制御し、
前記複数の吐出部における水頭の差に基づく第1圧力差を、前記液体流路部内の前記液体の前記流れ方向における圧力損失に基づく第2圧力差で吸収するように、前記液体流路部における圧力の変化量を調整し、
前記第1圧力差は、前記重力方向の成分および前記水平方向の成分に基づく圧力として算出される。
【0007】
本発明によれば、液滴の吐出性能が吐出部間でばらつくことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の概略構成を示す図である。
【
図3】画像形成装置の主要な機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置1の概略構成を示す図である。
図2は、画像形成装置1を搬送方向から見た図である。
【0010】
図1および
図2に示すように、画像形成装置1は、インクジェット方式の画像形成装置であり、例えば箱形状の記録媒体Pに画像を形成可能に構成されている。画像形成装置1は、ベルト搬送部2、第1の液滴吐出部3および第2の液滴吐出部4等を備えている。画像形成装置1は、本発明の「液滴吐出装置」に対応する。
【0011】
ベルト搬送部2には、所定の間隔をおいて平行に配置された図示しない駆動ローラーおよび従動ローラーに亘って所定幅の無端状の搬送ベルト21が張架されている。駆動ローラーおよび従動ローラーに架け渡された搬送ベルト21の上面は、記録媒体Pを載置する載置面とされている。
【0012】
ベルト搬送部2では、駆動ローラーの回転駆動によって搬送ベルト21を回転移動させる。かかる動作により、搬送ベルト21の上面に載置されている記録媒体Pは、図中の矢印Aの搬送方向(右から左に向かう方向)に向けて搬送される。
【0013】
第1の液滴吐出部3は、記録媒体Pの上面(重力方向)に液滴を吐出することで、当該上面に所望の画像を記録するものであり、第1のメインタンク31と、第1の供給部32と、第1の記録ヘッド33と、第1の回収部34とを有する。
【0014】
第2の液滴吐出部4は、記録媒体Pの側面(記録媒体Pの幅方向)に液滴を吐出することで、当該側面に画像を記録するものであり、第2のメインタンク41と、第2の供給部42と、第2の記録ヘッド43と、第2の回収部44とを有する。
【0015】
なお、以下の説明では、第1の液滴吐出部3および第2の液滴吐出部4の各構成要素を第1の液滴吐出部3および第2の液滴吐出部4で区別しない場合は、単に、液滴吐出部3,4、メインタンク31,41、供給部32,42、記録ヘッド33,43、回収部34,44とする。
【0016】
メインタンク31,41は、記録ヘッド33,43に供給される液体(インク)を貯留するタンクである。
【0017】
供給部32,42は、メインタンク31,41から液体を吸い出して、記録ヘッド33,43に液体を供給する。供給部32,42とメインタンク31,41とを接続する流路には、送液ポンプ32A,42Aが設けられている。
【0018】
記録ヘッド33,43は、複数のインクジェットヘッドを有しており、内部に供給部32,42から供給された液体が流れる液体流路部331,431を有する。
【0019】
第1の記録ヘッド33は、搬送ベルト21上の記録媒体Pの上面に対向する位置に配置されている。第1の記録ヘッド33における第1の液体流路部331は、例えば、搬送ベルト21の幅方向に延びており、供給口331Aおよび回収口331Bが当該幅方向の両端の何れかに設けられている。
【0020】
供給口331Aは、第1の供給部32と第1の液体流路部331とを連通させる開口である。回収口331Bは、第1の回収部34と第1の液体流路部331とを連通させる開口である。第1の液体流路部331は、供給口331Aから供給された液体を回収口331Bまで、幅方向に流すように構成されている。
【0021】
第1の記録ヘッド33は、第1の液体流路部331の下面に設けられた複数のノズル(第1の吐出部)を有し、液滴の吐出面332Aが下方向(重力方向)を向くように配置されている。第1の記録ヘッド33は、複数のノズルから液滴(インク)を吐出することにより、記録媒体Pの上面に画像を記録する。
【0022】
第2の記録ヘッド43は、搬送ベルト21上の記録媒体Pの側面に対向する位置に配置されている。第2の記録ヘッド43における第2の液体流路部431は、重力方向に延びており、上端部に設けられる供給口431Aと、下端部に設けられる回収口431Bとが設けられている。
【0023】
供給口431Aは、第2の供給部42と第2の液体流路部431とを連通させる開口である。回収口331Bは第2の回収部44と第2の液体流路部431とを連通させる開口である。第2の液体流路部431は、供給口431Aから供給された液体を回収口431Bまで、重力方向に沿う流れ方向(上から下に向かう方向)に流すように構成されている。
【0024】
第2の記録ヘッド43は、第2の液体流路部431の側面(
図2における右側面)に設けられた複数のノズル432(吐出部および第2の吐出部)を有し、液滴の吐出面432Aが、記録媒体Pの幅方向(水平方向)を向くように配置されている。第2の記録ヘッド43は、複数のノズル432から液滴(インク)を吐出することにより、記録媒体Pの側面に画像を記録する。
【0025】
回収部34,44は、記録ヘッド33,43から液体を回収して、メインタンク31,41に戻す。液滴吐出部3,4は、回収部34,44によって液体を記録ヘッド33,43から回収することにより、液体が、メインタンク、供給部、記録ヘッド、回収部間を循環するようになっている。
【0026】
図3は、画像形成装置1の主要な機能構成を示すブロック図である。
図3に示すように、画像形成装置1は、制御部100、吐出駆動部110、搬送駆動部120、入出力インターフェース130および調整部140を備える。
【0027】
制御部100は、CPU101(Central Processing Unit)、RAM102(Random Access Memory)、ROM103(Read Only Memory)および記憶部104を有する。
【0028】
CPU101は、ROM103に記憶された各種制御用のプログラムや設定データを読み出してRAM102に記憶させ、当該プログラムを実行して各種の演算処理を行う。また、CPU101は、画像形成装置1の全体動作を統括的に制御する。
【0029】
RAM102は、CPU101に作業用のメモリー空間を提供し、一時データを記憶する。なお、RAM102は、不揮発性メモリーを含んでいても良い。
【0030】
ROM103は、CPU101により実行される各種制御用のプログラムや設定データ等を格納する。なお、ROM103に代えて、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)やフラッシュメモリー等の書き換え可能な不揮発性メモリーが用いられても良い。
【0031】
記憶部104には、入出力インターフェース130を介して外部装置6から入力されたプリントジョブ(画像記録命令)および当該プリントジョブに係る画像データが記憶される。記憶部104としては、例えばHDD(Hard Disk Drive)が用いられ、また、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等が併用されても良い。
【0032】
吐出駆動部110は、制御部100の制御に基づいて液滴吐出部3,4に対して適切なタイミングで画像データに応じた駆動信号を図示しない圧力発生部に供給することにより、記録ヘッド33,43のノズルから画像データの画素値に応じた量の液体(インク)を吐出させる。
【0033】
搬送駆動部120は、制御部100の制御に基づいて駆動信号を供給することにより、搬送ベルト21を所定の速度およびタイミングで搬送駆動させる。
【0034】
入出力インターフェース130は、外部装置6と制御部100との間におけるデータの送受信を媒介する。入出力インターフェース130は、例えば各種シリアルインターフェース、各種パラレルインターフェースの何れか、または、これらの組み合わせで構成される。
【0035】
外部装置6は、例えばパーソナルコンピューターであり、入出力インターフェース130を介して画像記録命令(プリントジョブ)および画像データ等を制御部100に供給する。
【0036】
調整部140は、図示しない真空ポンプ、電磁弁、圧力計およびバッファタンク等を有しており、制御部100の制御に基づいて、液滴吐出部3,4で液体が循環するように圧力を制御する。調整部140は、供給部32,42および回収部34,44内の液体の水頭の値および圧力を制御することで、液体流路部331,431において液体の流れ方向に液体を流すための圧力を制御する。調整部140は、液体流路部331,431の供給口331A,431Aおよび回収口331B,431Bにおいて、液体にかかる圧力をそれぞれ制御する。これにより、液体流路部331,431内の液体が流れて、液滴吐出部3,4において液体が循環する。
【0037】
ところで、第2の記録ヘッド43のように、複数のノズルが重力方向において高低差が生じるように並んでいる構成であると、高低差に応じて各ノズルのメニスカスを形成するための圧力(以下、メニスカス圧)が変動する。
【0038】
通常においては、
図4Aに示すように、ノズル432の吐出面432Aに対してメニスカスWがやや凹むように液体流路部431における圧力が比較的小さな負圧になるように制御されている。例えば、
図2に示すように、第1の記録ヘッド33のように、液滴の吐出面が幅方向に平行な構成であると、供給部32の水面および回収部34の水面と、吐出面332Aとの水頭がH1で一定となるので、メニスカス圧が幅方向で一定となる。そのため、
図4Aに示すような各ノズルが略一定のメニスカスWに、容易に設定可能である。
【0039】
それに対し、第2の記録ヘッド43のように、複数のノズル432が重力方向において高低差が生じるように並んでいる構成であると、各ノズル432の吐出位置における水頭がそれぞれ異なる。すなわち、ノズル432の位置が低くなるほど、水頭が大きくなり、ひいてはメニスカス圧が高くなる。
【0040】
例えば、
図2に示すように、最も高い位置のノズル432に対応する水頭であるH2に対して、最も低い位置のノズル432に対応する水頭であるH3は、液体流路部431における高低差の分長くなる。そのため、
図4Bに示すように、ノズル432の位置が低くなるとメニスカス圧に起因して、液体流路部における圧力が正圧となり、ノズル432の吐出面432Aに対してメニスカスWが突出する。
【0041】
このように、ノズルの高低差によってメニスカス圧が変動するので、第2の記録ヘッド43における吐出性能がノズル432の位置によってばらついてしまう。
【0042】
一方、第2の液体流路部431においては、流れ方向の下流側に向かうほど、圧力損失が生じるので、流れ方向の下流側の圧力は、流れ方向の上流側よりも低くなる。
【0043】
そこで、本実施の形態では、調整部140は、重力に沿う流れ方向に液体が流れるように第2の液体流路部431内の圧力を制御する。つまり、調整部140は、第2の液体流路部431における液体の流れ方向において、ノズル432が、位置が低くなるほど下流側に位置するように、当該流れ方向を調整する。
【0044】
具体的には、調整部140は、第2の液体流路部431における供給口431A(流れ方向の上流側端部)で液体にかかる圧力と、回収口431B(流れ方向の下流側端部)で液体にかかる圧力との変化量を調整する。
【0045】
詳細には、調整部140は、全てのノズル432におけるメニスカスWが吐出面432Aから出ないように、第2の液体流路部431の供給口431Aから回収口431Bに向かう液体の流量を、複数のノズル432における水頭の差に応じて変更する。言い換えると、調整部140は、液体の流量を、所定条件よりも多くするように、第2の液体流路部431における圧力を調整する。
【0046】
所定条件は、例えば、第1の記録ヘッド33のように、流れ方向において高低差が生じないように並んで配置された複数のノズルを有する記録ヘッドに設定可能な流量の条件であり、適宜設定可能である。
【0047】
より詳細には、調整部140は、複数のノズル432間における水頭の差に基づく第1圧力差を、第2の液体流路部431内の液体の流れ方向の圧力損失に基づく第2圧力差で吸収するように、第2の液体流路部431における圧力の変化量を調整する。
【0048】
第1圧力差は、例えば、重力方向および水平方向(搬送方向)の両端のノズル間距離と、液体密度と、重力加速度とに基づく圧力として算出可能である。
【0049】
また、ノズル432は、
図5に示すように、重力方向だけでなく、搬送方向にも並んでいる。そのため、例えば、
図5における左端の上端部に位置するノズル432が、供給口431Aに最も近い流れ方向の最上流位置だとすると、搬送方向の右側に向かうにつれても圧力損失が生じる。つまり、最も下に位置するノズル432において、左端のノズル432と、右端のノズル432とで、圧力損失が異なるため、第1圧力差は、重力方向成分に加えて、搬送方向成分を考慮した値としている。
【0050】
例えば、調整部140は、水平方向成分におけるノズル間の水頭の差に基づく圧力差と圧力損失に基づく圧力差との差分の二乗と、重力方向成分におけるノズル間の水頭の差に基づく圧力差に基づく圧力と圧力損失に基づく圧力差との差分の二乗との和、つまり、以下の式(1)に基づくaの平方根が最小値になるように第2圧力差を調整する。
【0051】
a={(ρ×ΔNdx×g)-ΔPdx}2+{(ρ×ΔNdy×g)-ΔPdy}2・・・(1)
【0052】
式(1)におけるρは、液体密度(kg/m3)であり、gは重力加速度(m/s2)である。ΔNdxは、x方向における両端のノズル間距離(m)である。x方向は、例えば搬送方向である。ΔNdyは、y方向における両端のノズル間距離(m)である。y方向は、例えば、重力方向である。ΔPdxは、x方向における両端のノズル間の圧力損失(N/m2)である。ΔPdyは、y方向における両端のノズル間の圧力損失(N/m2)である。
【0053】
ΔN
dxおよびΔN
dyは、第2の記録ヘッド43に用いられる第2の液体流路部431の寸法に基づく値である。ΔP
dxおよびΔP
dyは、例えば、予め設定された値であり、負圧によって、
図5に示す4隅のノズル432がメニスカスブレイクを発生する圧力値を実験等により実測した値に基づいて設定される。
【0054】
例えば、第1の記録ヘッド33における第1の液体流路部331の供給口331Aと回収口331Bとの圧力差が、-5kPa(所定条件)であるとする。この場合、第2の記録ヘッド43において第2圧力差を、所定条件と同等としてしまうと、複数のノズル432の高低差に基づくメニスカス圧の差(第1圧力差)に起因して、低い位置のノズルほどメニスカス圧が高くなり、ひいては吐出性能がばらついてしまう。
【0055】
それに対し、本実施の形態では、第2の記録ヘッド43における第2の液体流路部431の供給口431Aと回収口431Bとの第2圧力差を、上記の式(1)に基づいて所定条件よりも絶対値を大きくする。例えば、上記の式(1)によって第2圧力差が-15kPaと算出された場合、調整部140は、回収部44側の真空ポンプを制御して、-10kPa分、負圧の量を大きくする。
【0056】
なお、供給部42側の真空ポンプも制御して、第2圧力差を調整しても良い。ただし、所定のノズル432における負圧の量を大きくし過ぎると、
図4AにおけるメニスカスWの吐出面432Aに対する凹み量が大きくなってノズル432における吐出に影響する。そのため、当該凹み量を考慮して、圧力を調整することが好ましい。
【0057】
このようにすることで、複数のノズルの高低差に起因して液滴の吐出性能がノズル間でばらつくことを抑制することができる。
【0058】
ところで、メニスカスの位置が決まる要因は、メニスカスの高低差に起因するメニスカス圧の差と、液滴吐出部の駆動により生じる残響振動との2点である。
【0059】
例えば、液滴吐出部における駆動周波数の遅い領域では、メニスカスの高低差に起因するメニスカス圧の差が支配的要因となる。また、液滴吐出部における駆動周波数の速い領域では、液滴吐出部の駆動により生じる残響振動が支配的要因となる。
【0060】
ここで、例えば、液滴吐出部における圧力発生部の駆動のためのパルス信号を調整する構成であると、上記のようにメニスカスの位置が決まるための支配的要因が駆動周波数によって異なるので、駆動周波数毎にパルス信号を調整する必要が生じる。
【0061】
それに対し、本実施の形態では、ノズルの高低差に起因するメニスカス圧の差(第1圧力差)を、液体流路部の流れによる圧力差(第2圧力差)で吸収することで、メニスカスの位置のバラツキを抑制するので、駆動周波数毎にパルス信号を調整する必要がない。その結果、容易な方法により、メニスカスの位置のばらつきを低減し、ひいては複数のノズル間における高低差に起因して吐出性能がノズル間でばらつくことを抑制することができる。
【0062】
また、全てのノズル432におけるメニスカスが吐出面432Aから出ないように液体流路部431における圧力を制御するので、複数のノズルの全てにおいて、着弾ずれ等の吐出不良が発生することを抑制することができる。
【0063】
なお、上記実施の形態では、第1の液滴吐出部3および第2の液滴吐出部4を有する構成であったが、本発明はこれに限定されず、第2の液滴吐出部と同様の液滴吐出部のみを有する構成であっても良い。
【0064】
また、1種類の液滴吐出部の位置を図示しない移動機構等によって移動させることで、重力方向および水平方向の何れか一方に液滴を吐出可能な構成であっても良い。この構成では、調整部は、例えば、水平方向に液滴を液滴吐出部に吐出させる場合、液滴吐出部を第2の液滴吐出部に対応する位置に移動させて、液体流路部の流れ方向を調整する。
【0065】
また、上記実施の形態では、上記の式(1)に基づいて第2の液体流路部431における圧力を調整していたが、本発明はこれに限定されず、式(1)以外の方法で圧力を調整しても良い。
【0066】
また、上記実施の形態では、画像形成装置1を液滴吐出装置として例示したが、本発明はこれに限定されず、第2の液滴吐出部そのものを液滴吐出装置としても良い。
【0067】
また、上記実施の形態では、調整部を制御部が制御していたが、本発明はこれに限定されず、調整部がCPU、RAM、ROM等を備え、自身で液体流路部の圧力を調整しても良い。
【0068】
また、上記実施の形態では、調整部が記録ヘッド内(液体流路部内)の圧力を調整することで、液体の流れ方向を調整していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、記録ヘッド以外の部分の液体の循環流路の圧力や、圧力以外のパラメーター等を調整することで、液体の流れ方向を調整しても良い。
【0069】
その他、上記実施の形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。例えば、上記実施の形態で説明した各部の形状、サイズ、個数および材料はあくまで一例であり、適宜変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 画像形成装置
2 ベルト搬送部
3 第1の液滴吐出部
4 第2の液滴吐出部
21 搬送ベルト
31 第1のメインタンク
32 第1の供給部
33 第1の記録ヘッド
34 第1の回収部
41 第2のメインタンク
42 第2の供給部
43 第2の記録ヘッド
44 第2の回収部
100 制御部
110 吐出駆動部
120 搬送駆動部
130 入出力インターフェース
140 調整部
331 第1の液体流路部
331A 供給口
331B 回収口
431 第2の液体流路部
431A 供給口
431B 回収口
432 ノズル
432A 吐出面