(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】工具交換装置と工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/157 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
B23Q3/157 C
B23Q3/157 B
(21)【出願番号】P 2022533889
(86)(22)【出願日】2021-06-22
(86)【国際出願番号】 JP2021023565
(87)【国際公開番号】W WO2022004485
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2020113511
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】辻 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】宇野 邦彦
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-011262(JP,A)
【文献】特開2010-131708(JP,A)
【文献】特開2001-018136(JP,A)
【文献】特開平02-172649(JP,A)
【文献】特開昭61-086150(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0176002(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0166202(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0218087(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第19860709(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102008059089(DE,A1)
【文献】中国実用新案第205703431(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/155-3/157
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具を収納する第一マガジンと第二マガジンの間で工具を交換する工具交換装置において、
前記第一マガジンと第二マガジンの工具交換位置よりも下側に前記第二マガジンの重心を配置
し、
前記第二マガジンは、
支持円盤と、
該支持円盤の周縁部に設けてあり、工具を把持するアームと
を備え、
前記アームの一端部は前記周縁部から前記支持円盤の径方向外向きに突出し、
前記アームの他端部は前記支持円盤の中心に非対向となる位置に配置する
工具交換装置。
【請求項2】
工具を収納する第一マガジンと第二マガジンの間で工具を交換する工具交換装置において、
前記第一マガジンと第二マガジンの工具交換位置よりも下側に前記第二マガジンの重心を配置し、
前記第二マガジンは、
径方向に移動する移動機構と、
該移動機構に設けてあり、工具を把持するポットと
を備える
工具交換装置。
【請求項3】
工具を収納する第一マガジンと第二マガジンの間で工具を交換する工具交換装置において、
前記第一マガジンと第二マガジンの工具交換位置よりも下側に前記第二マガジンの重心を配置し、
前記第一マガジンは工作機械の主軸に装着する工具を収納し、
前記第二マガジンは前記第一マガジンが収納する工具を収納し、
前記第二マガジンは水平面に対して傾斜した軸周りに回転する
工具交換装置。
【請求項4】
前記アームは、
前記第二マガジンに固定する支持板と、
該支持板の両側にて回転する二つの支持桿と
を備え、
一方の前記支持桿は、
前記第二マガジンの回転中心の軸に直交する方向に延びる第一部分と、
該第一部分の一端部から前記回転中心の軸に平行な一方向に向けて延びる第一傾斜部と、
前記第一部分の他端部における前記一方向と同じ側に設けてあり、工具を把持する第一把持部と
を有し、
他方の前記支持桿は、
前記回転中心の軸に直交する方向に延びる第二部分と、
該第二部分の一端部から前記回転中心の軸に平行な他方向に向けて延びる第二傾斜部と、
前記第二部分の他端部における前記他方向と同じ側に固定してあり、工具を把持する第二把持部と
を有し、
前記回転中心の軸方向にて、前記第一把持部及び第二把持部は同じ位置にある
請求項
1に記載の工具交換装置。
【請求項5】
前記移動機構は前記第二マガジンの中心の上側に位置する
請求項
2に記載の工具交換装置。
【請求項6】
前記第二マガジンは、
支持円盤と、
該支持円盤の周縁部に設けてあり、工具を把持するアームと
を備え、
前記アームの一端部は前記周縁部から前記支持円盤の径方向外向きに突出し、
前記アームが前記工具交換位置に位置する場合、前記支持円盤の中心軸と前記アームの一端部にて把持される工具の中心とを通る線と、前記工具交換位置に位置する前記アームの長手方向に沿った線とが0度よりも大きい大きさの角度を形成し、前記アームの他端部は前記支持円盤の中心に非対向となる位置に配置
されるように、前記アームは設けられる
請求項2又は3に記載の工具交換装置。
【請求項7】
前記第二マガジンは、
径方向に移動する移動機構と、
該移動機構に設けてあり、工具を把持するポットと
を備える
請求項
1又は3に記載の工具交換装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一つに記載の工具交換装置
を備える工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は工具マガジンを有する工具交換装置と工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工具を収納する主マガジンと副マガジンを備える工作機械がある。工作機械は主マガジンと副マガジンの間で工具の受け渡しを行う。(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
主マガジンと副マガジン間で工具を受け渡す時、振動が発生することがある。該振動は工作機械の主軸とワーク保持部等に伝搬する。工作機械は加工中に振動することによって、ワークの加工精度が低下するという問題がある。
【0005】
本開示は、工具を収納する複数のマガジンを有し、振動の発生を抑制する工具交換装置と工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、工具を収納する第一マガジンと第二マガジンの間で工具を交換する工具交換装置において、前記第一マガジンと第二マガジンの工具交換位置よりも下側に前記第二マガジンの重心を配置する。
【0007】
本発明の工具交換装置は、第二マガジンが安定し、第二マガジンでの振動の発生を抑制できる。
【0008】
本発明の第一マガジンは工作機械の主軸に装着する工具を収納し、第二マガジンは第一マガジンが収納する工具を収納する。
【0009】
本発明の工具交換装置は二つのマガジンを設けることで、一つのマガジンよりも多くの工具を収納できる。
【0010】
本発明の工具交換装置の第二マガジンは水平面に対して傾斜した軸周りに回転する。
【0011】
工具交換装置は第二マガジンが水平面に対して傾斜することで、第二マガジンの重心が低くなる。
【0012】
本発明の工具交換装置の第二マガジンは、支持円盤と、該支持円盤の周縁部に設けてあり、工具を把持するアームとを備え、アームの一端部は周縁部から支持円盤の径方向外向きに突出し、アームの他端部は支持円盤の中心に非対向となる位置に配置する。
【0013】
工具交換装置のアームは支持円盤の中心を通る径方向に延びた線に対して、交差するように配置する。故に工具交換装置は第二マガジンの重心が低くなる。
【0014】
本発明の工具交換装置のアームは、第二マガジンに固定する支持板と、該支持板の両側にて回転する二つの支持桿とを備え、一方の支持桿は、第二マガジンの回転中心の軸に直交する方向に延びる第一部分と、該第一部分の一端部から回転中心の軸に平行な一方向に向けて延びる第一傾斜部と、第一部分の他端部における一方向と同じ側に設けてあり、工具を把持する第一把持部とを有し、他方の支持桿は、回転中心の軸に直交する方向に延びる第二部分と、該第二部分の一端部から回転中心の軸に平行な他方向に向けて延びる第二傾斜部と、第二部分の他端部における他方向と同じ側に固定してあり、工具を把持する第二把持部とを有し、回転中心の軸方向にて、第一把持部と第二把持部は同じ位置にある。
【0015】
回転中心の軸方向において、第一傾斜部と第二傾斜部が延びる方向が反対であり、第一把持部と第二把持部の固定位置が反対であるので、第一把持部と第二把持部の固定位置は同じ位置になる。工具交換装置は同一の支持桿を二つ準備し、反対向きに配置させる。故に両側の支持桿は同一部品であるので管理が容易である。
【0016】
本発明の工具交換装置の第二マガジンは、径方向に移動する移動機構と、該移動機構に設けてあり且つ工具を把持するポットとを備える。
【0017】
ポットは工具を把持し、移動機構は、ポットが把持した工具を第一マガジンと第二マガジン間で搬送する。ポットが径方向に移動するので、移動機構の設計が容易である。
【0018】
本発明の工具交換装置の移動機構は前記第二マガジンの中心の上側に位置する。
【0019】
移動機構は第二マガジンの中心の上側にて工具を交換するので、第二マガジンの位置を低くし易い。
【0020】
本発明の工作機械は上述の工具交換装置を備える。
【0021】
工作機械は第一マガジンと第二マガジンの工具交換位置よりも下側に第二マガジンの重心を配置する。故に工作機械は振動の発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の工具交換装置と工作機械は、第一マガジンと第二マガジンの工具交換位置よりも下側に第二マガジンの重心を配置するので、第二マガジンは安定し、第二マガジンでの振動の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】第二マガジンの支持円盤とアームの略示構成図。
【
図4】第一マガジン、第二マガジン及び工具搬送装置の略示平面図。
【
図5】
図4に示すV-V線を切断線とした略示断面図。
【
図16】アームの他端部が中心に非対向となる場合における工作機械の設置面と第二マガジンの重心との上下間距離と、設置面と工具交換位置との上下間距離との関係を示す第二マガジンの右側面図。
【
図17】アームの他端部が中心軸に対向する場合における工作機械の設置面と第二マガジンの重心との間の距離と、設置面と工具交換位置との間の距離との関係を示す第二マガジンの参考右側面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下本発明の工作機械について図面に基づいて説明する。以下の説明では、図に示す上下前後左右を使用する。
図1において、Lは水平面を示し、L1は、第二マガジン8の中心軸を示す。
【0025】
工作機械は、基台1、ワーク保持部2、XY移動機構3、立柱4、Z移動機構5、第一マガジン6、支持部7、第二マガジン8、工具搬送装置(図示略)、主軸ヘッド10等を備える。第一マガジン6、支持部7、第二マガジン8及び工具搬送装置は工具交換装置を構成する。
【0026】
基台1は平面視矩形をなし、前後方向に延びる。基台1の上部前側に、ワーク保持部2が設けてある。基台1の上部にて、ワーク保持部2の後側に左右方向(X方向)及び前後方向(Y方向)に移動可能なXY移動機構3を設ける。
【0027】
XY移動機構3の上側に立柱4が設けてある。立柱4の前面に上下方向(Z方向)に移動可能なZ移動機構5が設けてある。Z移動機構5に主軸ヘッド10を設ける。主軸ヘッド10は上下に延びる主軸を備える。主軸の下端部は工具を装着する。
【0028】
主軸ヘッド10の前側に、第一マガジン6設ける。第一マガジン6は立柱4に連結部材を介して連結する。第一マガジン6は、円盤6aとアーム6bを備える。円盤6aにモータ(図示略)を連結し、円盤6aはモータの駆動によって、その中心軸回りに回転する。円盤6aの周縁部に、複数のアーム6bを放射状に設ける。アーム6bは工具を保持する。
【0029】
円盤6aの中心軸が前後方向に延び且つ円盤6aが前傾姿勢となるように、第一マガジン6を配置する。第一マガジン6の下端位置は工具交換位置である。主軸に工具を装着する場合、工具交換位置に工具を把持したアーム6bを配置し、Z移動機構5を下方に移動する。Z移動機構5の下方移動に基づき、主軸はアーム6bが把持する工具を装着する。主軸から工具を取り外す場合、工具交換位置に空のアーム6bを配置し、Z移動機構5を上方に移動する。Z移動機構5の上方移動に基づき、アーム6bは主軸の工具を把持し、工具は主軸から抜ける。
【0030】
主軸に装着した工具は、ワーク保持部2に保持したワークを加工する。XY移動機構3はワークに対する工具(主軸)の前後左右位置を調整し、Z移動機構5は工具の上下位置を調整する。
【0031】
支持部7は基台1の左部後側に設ける。支持部7は上側に延び、その先端部に第二マガジン8は設ける。第二マガジン8は第一マガジン6の左側且つ後側に配置する。第二マガジン8は工具搬送装置を備える。工具搬送装置は、第一マガジン6のアーム6bと第二マガジン8のアーム8bとの間で、工具の受け渡しを行う。
【0032】
図2は支持円盤8aの軸方向から視認した図である。第二マガジン8は支持円盤8aとアーム8bを備える。支持円盤8aは、モータ(図示略)が連結し、モータの駆動によって、中心軸L1(
図1参照)回りに回転する。支持円盤8aの中心軸L1は回転中心の軸であり、仮想的な軸である。
【0033】
図1の如く、支持円盤8a(
図2参照)の一面が右斜め後を向き、他面が左斜め前を向き、中心軸L1が水平面Lに交差する。平面視にて、中心軸L1は左斜め前方向と右斜め後方向に延びる。中心軸L1の前側は水平面Lよりも下側に位置し、中心軸L1の後側は水平面Lよりも上側に位置する。中心軸L1と水平面Lは所定角度θを形成する。
【0034】
第一マガジン6の中心軸を通る水平面Lを設定した場合、第一マガジン6のアーム6bと、第二マガジン8のアーム8bとは、水平面Lよりも下側の位置にて最も接近する。該最も接近した位置が第一マガジン6の工具と第二マガジン8の工具を交換するマガジン工具交換位置Pとなる。以下、マガジン工具交換位置Pに配した第一マガジン6のアーム6bを交換位置アーム6cと称し、第二マガジン8のアーム8bを交換位置アーム8cと称する。工作機械は交換位置アーム6cと交換位置アーム8cの間で工具交換を行う。
【0035】
第二マガジン8の重心8gは水平面Lよりも下側、即ちマガジン工具交換位置Pよりも下側に配置する。
【0036】
第一マガジン6と第二マガジン8のマガジン工具交換位置Pよりも下側に、第二マガジン8の重心8gを配置するので、第二マガジン8は安定し、第二マガジン8での振動の発生を抑制できる。
【0037】
図3は従来の工作機械の略示参考正面図である。
図3のLaはマガジン工具交換位置Paの上下位置を示す。第二マガジン8Aの中心軸L4は水平面Lと平行である。中心軸L4と水平面Lとが平行である場合、第二マガジン8Aの重心8Gは、マガジン工具交換位置Paよりも上側に位置する。
図3の工作機械は
図1の工作機械に比べて重心位置が上にあるので、第二マガジン8Aは不安定になり易く、第二マガジン8Aでの振動を抑制し難い。
【0038】
図1の第二マガジン8の重心8gはマガジン工具交換位置Pよりも下側に配置するので第二マガジン8は安定し、工作機械は第二マガジン8での振動の発生を抑制できる。第二マガジン8は第一マガジン6の右側に設けてもよい。
以下本発明の他の例を図面に基づいて説明する。前述の例と同様な構成には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0039】
図5の切断線は支持円盤81の中心軸に直交する。第一マガジン6はカバー6dを備える。カバー6dは各アーム6bの外側を覆う。カバー6dは回転可能であり、主軸との工具交換時にアーム6bと共に回転し、工具交換を妨げない。
【0040】
図6の如く、支持部7の上端部に取付部材70を固定する。取付部材70は、前板部70a、後板部70b及び支持筒70cを備える。前板部70aと後板部70bは支持部7の上端部から右上方向に延び、且つ前後に並ぶ。支持筒70cは左右方向を軸方向とし、前板部70a及び後板部70bの上端部に連結する。
【0041】
支持筒70cの右部に減速ギア装置71を連結する。減速ギア装置71は、環状の内周部72及び外周部73を有する。内周部72は支持筒70cの周縁部に固定する。外周部73は内周部72の周囲に、軸回りに回転可能に取り付ける。即ち内周部72は外周部73を回転可能に支持する。
【0042】
第二マガジン80は、支持円盤81、モータ82及びアーム83を備える。モータ82は支持筒70cの左部に連結する。支持円盤81は両面を左右に向けて、減速ギア装置71の右側に配置する。支持円盤81の右面は若干後側に向き、左面は若干前側を向く。支持円盤81の中央部に、左右に貫通した貫通穴81b(
図5参照)を設ける。支持筒70cと内周部72は軸方向に延び、貫通穴81bに挿入する。外周部73は貫通穴81bの内周部分に連結する。モータ82の駆動によって外周部73は回転し、支持円盤81はその中心軸回りに回転する。支持円盤81の周縁部に複数のアーム83を放射状に設ける。アーム83は工具を保持する。
【0043】
第一マガジン6の把持アーム6bと、第二マガジン80の把持アーム83とは、中心81aよりも下側の位置にて最も接近する。該最も接近した位置が第一マガジン6の工具と第二マガジン80の工具を交換するマガジン工具交換位置Pとなる。以下、マガジン工具交換位置Pに配した第一マガジン6のアーム6bを交換位置アーム6cと称し、第二マガジン80の把持アーム83を交換位置アーム84と称する。交換位置アーム6cと交換位置アーム84の間で工具交換を行う。把持アーム83の一端部83fは支持円盤81の周縁部から径方向外向きに突出する。
【0044】
図5において、L2は、支持円盤81の中心軸81aと、交換位置アーム84が把持する工具50の中心とを通る線を示し、L3は、交換位置アーム84の長手方向に沿った線を示す。線L3は交換位置アーム84の中央を通る。線L2と線L3は交差し、所定角度θ1(>0)を形成する。マガジン工具交換位置Pに位置する各アーム83について所定角度θ1を形成するように配置するので、アーム83の他端部83gは支持円盤81の中心軸81aに非対向となる。
【0045】
支持円盤81の右側に工具搬送装置9を設ける。工具搬送装置9は、モータ9a、ボール螺子9b、ナット9c、軌道9d、スライダ9e、ポット9f、連結部9gを備える。モータ9a、ボール螺子9b、ナット9c、軌道9d、スライダ9e、連結部9gは移動機構を構成する。移動機構は支持円盤81の中心軸81aの上側に位置する。貫通穴81bに挿入した支持筒70cと内周部72はボール螺子9bと軌道9dを支持する。ボール螺子9bはモータ9aの回転軸に連結する。ナット9cはボール螺子9bに連結する。
【0046】
図5の如く、軌道9dはボールねじ9bの隣に配置する。軌道9dは支持円盤81の中心軸81aから外れた位置に固定する。軌道9dは交換位置アーム84の長手方向に沿って延びる。軌道9dの一端部は交換位置アーム84に臨む。スライダ9eは軌道9dに摺動可能に設ける。ポット9fはスライダ9eに取り付ける。連結部9gはスライダ9eとナット9cを連結する。モータ9aの駆動によって、ボール螺子9bが回転し、ナット9cがボール螺子9bに沿って移動し、スライダ9e、連結部9g及びポット9fが軌道9dに沿って移動する。ポット9fは、交換位置アーム84が把持する工具50を掴み、空の交換位置アーム6cに渡す、又は交換位置アーム6cが把持する工具50を掴み、空の交換位置アーム84に渡す。
図5に示す如く、第二マガジン80の重心8gは中心軸81a付近にあり、第一マガジン6の中心よりも下側に位置する。
【0047】
図5及び
図6の如く、複数のアーム83は、支持円盤81の周縁部に沿って並ぶ。アーム83は支持円盤81の径方向に延びる。以下、アーム83の構成について説明する。
【0048】
図7及び
図8の如く、アーム83は、第一支持桿831と第二支持桿832を備える。支持板83a、第一支持桿831及び第二支持桿832は前後方向に延びる。支持板83aの前端部は後側に突出した平面視円弧状をなす。第一支持桿831及び第二支持桿832は左右方向に離れ、支持板83aの左側と右側に夫々配置する。
【0049】
第一支持桿831の前後方向中途部は、上下方向を軸方向とした枢軸83dを介して、支持板83aの前後方向中途部に連結する。第二支持桿832の前後方向中途部は、上下方向を軸方向とした枢軸83eを介して、支持板83aの前後方向中途部に連結する。
【0050】
第一支持桿831の枢軸83dよりも前側を前側部分831dと称し、枢軸83dよりも後側を後側部分831eと称す。第二支持桿832の枢軸83eよりも前側を前側部分832dと称し、枢軸83eよりも後側を後側部分832eと称す。第一支持桿831の前側部分831dは左側に突出するように湾曲する。第二支持桿832の前側部分832dは右側に突出するように湾曲する。円弧状をなす支持板83aの前端部は、第一支持桿831及び第二支持桿832の前側部分831d、832dの間に配置する。
【0051】
第一支持桿831の後端部にバネ座831cを設ける。第二支持桿832の後端部にバネ座832cを設ける。二つのバネ座831c、832cは円板状をなし、左右方向に対向する。二つのバネ座831c、832cの間に押しばね83cを設ける。押しばね83cは二つのバネ座831c、832cを、二つのバネ座831c、832cが左右方向にて相互に離れるように付勢する。
【0052】
第一支持桿831の前側部分831dは後側部分831eよりも左側に位置する。前側部分831dと後側部分831eを傾斜部831aが連結する。傾斜部831aは前側部分831dの後端部から後側に向かうに従って、下側に向かって延びるように傾斜する。ローラ831bは前側部分831dの前端部下面に設ける。前側部分831dは第一部分を構成し、傾斜部831aは第一傾斜部を構成する。ローラ831bは第一把持部を構成する。上下方向は第二マガジン80の回転中心の軸方向に平行な方向である。
【0053】
第二支持桿832の前側部分832dは後側部分832eよりも右側に位置する。前側部分832dと後側部分832eは傾斜部832aが連結する。傾斜部832aは前側部分832dの後端部から後側に向かうに従って、上側に延びるように傾斜する。ローラ832bは前側部分832dの前端部上面に設けてる。前側部分832dは第二部分を構成し、傾斜部832aは第二傾斜部を構成し、ローラ832bは第二把持部を構成する。
【0054】
第一支持桿831と第二支持桿832は同一部品であり上下が反対になっているのみである。工具マガジン80の回転中心の軸方向に平行な方向において、枢軸83dと枢軸83eの位置は同じである。傾斜部831aと傾斜部832aの傾斜方向は逆であり、傾斜角の大きさは同じである。傾斜部831aと傾斜部832aの長さは同じである。故に工具マガジンの回転中心の軸方向に平行な方向において、ローラ831bとローラ832bの位置は同じである。
【0055】
図13の如く、複数のアーム83は支持円盤81の周縁部に沿って並ぶ。複数のアーム83は、第一アーム83Aと、該第一アーム83Aの隣に位置する第二アーム83Bを含む。第一アーム83Aの前側部分831dは第二アーム83Bの前側部分832dの上側に位置する。即ち隣合う第一アーム83Aと第二アーム83Bにおいて、第一アーム83Aの前側部分831d、及び第二アーム83Bの前側の部分832dの位置は、上下方向、即ち支持円盤81の軸方向にずれる。
【0056】
前述したように、線L2及び線L3は交差し、所定角度θ1を形成するので、第一アーム83Aと第二アーム83B、即ち隣合う二つのアーム83は支持円盤81の周方向にて少なくとも部分的に同じ位置にある。しかし前側部分831d、832dは中心軸81aに平行な方向に重なる、換言すれば前側部分831d、832dの位置は支持円盤81の軸方向にずれるので、周方向にて隣合う二つのアーム83は干渉しない。
【0057】
図14、
図15の如く、工具50は第一支持桿831と第二支持桿832の前側部分831d、832dの間に装着する。ローラ831b、832bは、押しばね83cの付勢力によって、工具50を保持する。
【0058】
以下、
図16と
図17を参照し、工作機械について説明する。Dは工作機械の設置面100と第二マガジン80の重心8gとの上下間距離を示し、Sは設置面100とマガジン工具交換位置Pとの上下間距離を示す。線Lbはマガジン工具交換位置Pの上下位置を示す。第二マガジン80の重心8gは第二マガジン80の中心軸81a付近に位置し、マガジン工具交換位置Pよりも下側に位置する。即ち交換位置アーム6c、84は重心8gよりも上側に位置し、距離Dは距離Sよりも短い。交換位置アーム84の中央を通る線L3は水平であり、交換位置アーム84は交換位置アーム6cに正対する。
【0059】
図17は、アーム8bの他端部が中心軸L1に対向する場合の
図16相当図である。第二マガジン8の構成は、
図1及び
図2の第二マガジン8の構成と同様である。アーム8bの一端部8baは支持円盤8aの周縁部から径方向外向きに突出する。アーム8bの他端部8bbは支持円盤8aの中心軸L1に対向する。交換位置アーム6cの位置とマガジン工具交換位置Pは
図16も
図17も同じであるため、距離Sも同じとなる。
【0060】
第二マガジン8の重心8gは第二マガジン8の中心軸L1付近に位置し、マガジン工具交換位置Pよりも下側にある。この場合、交換位置アーム8cの中央を通る線L3は斜めになり、交換位置アーム8cは交換位置アーム6cに正対しない。故に交換位置アーム8c、6c間において工具を交換する場合、工具の不完全な把持又は工具の脱落等、不具合が生じることがある。交換位置アーム8cを交換位置アーム6cに正対させるには、
図17の交換位置アーム8cの下隣のアームを交換位置アームとするように第二マガジン8を上方に移動させる必要がある。
【0061】
他端部83gが中心軸81aに非対向となるように(
図16)アーム83の向きを設定することで、他端部8bbが中心軸L1に対向する場合に比べて、交換位置アーム84は交換位置アーム6cに正対し且つ設置面100と重心8gとの間の距離を短くできる。即ち工具交換の円滑な実行を実現でき、第二マガジン80の重心8gを低くできる。
【0062】
他の工具交換装置及び工作機械は、アーム83が支持円盤81の中心を通る径方向に延びた線L2とアーム83の長手方向に延びる線L3とが交差するように配置する。このような配置にすることによって、工具交換の円滑な実行を実現でき且つ第二マガジン80の重心は低くなる。
【0063】
ポット9fは工具50を把持し、移動機構は、ポット9fが把持した工具50を第一マガジン6と第二マガジン80間で搬送する。移動機構は第二マガジン80の中心の上側にて工具を交換するので、第二マガジン80の位置を低くし易い。
【0064】
第一マガジン6の中心軸(回転中心の軸)L1を水平面に対して傾斜してもよいし、水平面に平行でもよい。実施の形態1において工具搬送装置の図示を省略しているが、実施の形態1の工具搬送装置、実施の形態2の工具搬送装置9と同様な構成を備える。
【0065】
今回開示した実施の形態は全ての点で例示であり、制限的なものではない。各実施例にて記載の技術的特徴は互いに組み合わせることができ、本発明の範囲は請求の範囲内での全ての変更及び請求の範囲と均等の範囲が含まれる。
【符号の説明】
【0066】
50 工具
6 第一マガジン
8、80 第二マガジン
8a、81 支持円盤
8b、83 アーム
L1 中心軸(回転中心の軸)
9 工具搬送装置
9a モータ(移動機構)
9b ボール螺子(移動機構)
9c ナット(移動機構)
9d 軌道(移動機構)
9e スライダ(移動機構)
9f ポット
9g 連結部(移動機構)
P、Pa マガジン工具交換位置