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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
   B23D 47/00 20060101AFI20240910BHJP
   B23D 45/16 20060101ALI20240910BHJP
   B25F 5/02 20060101ALI20240910BHJP
   B27G 3/00 20060101ALI20240910BHJP
   B27B 9/00 20060101ALI20240910BHJP
   B27B 9/02 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
B23D47/00 A
B23D45/16
B25F5/02
B27G3/00 C
B27B9/00 E
B27B9/02
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022536318
(86)(22)【出願日】2021-07-09
(86)【国際出願番号】 JP2021025911
(87)【国際公開番号】W WO2022014479
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2023-01-16
(31)【優先権主張番号】P 2020121228
(32)【優先日】2020-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020121229
(32)【優先日】2020-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】田上 寛之
(72)【発明者】
【氏名】一橋 直人
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-507689(JP,A)
【文献】特開2011-068073(JP,A)
【文献】特開2019-217580(JP,A)
【文献】特開2008-221455(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0199794(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0223669(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D45/00-59/04
B25F 5/02
B27G 3/00
B27B 9/00
B27B 9/02
B23Q11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状に形成されたベースと、
前記ベースの板厚方向一方側において前記ベースに支持され、円板状の丸鋸刃を駆動するためのモータを収容するハウジングと、
前記丸鋸刃の駆動によって生じる加工片を収集可能な集塵室を含む集塵構造と、
を備え、
前記集塵構造は、前記集塵室の入口となる入口部と、前記入口部と接続されて前記加工片の通路となる流入部と、前記集塵室内の空気を前記丸鋸刃が駆動する空間へ送る出口部と、が設けられ、
前記丸鋸刃は前記モータによって駆動される出力軸に取り付けられ、
前記入口部及び前記出口部が、前記出力軸の軸方向に並んで配置され、
前記ベースの板厚方向において、前記入口部の少なくとも一部と前記出口部の少なくとも一部が同じ位置に配置されている作業機。
【請求項2】
前記ベースには、前記丸鋸刃の一部を前記ベースの板厚方向他方側へ突出させるための貫通孔が形成されており、
前記ハウジングには、前記丸鋸刃の前記貫通孔からの突出量を調整可能な調整機構が連結され、
少なくとも前記丸鋸刃の突出量が最大の時に、前記入口部の少なくとも一部と前記出口部の少なくとも一部とが前記ベースの板厚方向において同じ位置に配置されている請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
記集塵構造は、前記ハウジングに設けられて前記丸鋸刃を覆うカバー部材を含み、
前記カバー部材が、前記丸鋸刃を前記ベースの板厚方向一方側から覆う請求項1又は請求項2に記載の作業機。
【請求項4】
前記集塵構造は、前記ハウジングに対して着脱可能に構成された集塵ケースを含み、
前記集塵ケースに、前記入口部と前記出口部が設けられる請求項1に記載の作業機。
【請求項5】
前記集塵構造は、前記ハウジングに対して着脱可能に構成された集塵ケースを含み、
前記集塵ケースに、前記入口部と前記出口部が設けられ、
前記カバー部材には、前記加工片を前記集塵室に送る第1開口部と、前記集塵室内の空気を前記カバー部材の内側に送る第2開口部と、が設けられ、
前記流入部は前記入口部と前記第1開口部とを接続し、
前記集塵ケースは、前記出口部と前記第2開口部とを接続する流出部と、前記流入部と、を有する請求項3に記載の作業機。
【請求項6】
板状に形成されたベースと、
前記ベースの板厚方向一方側において前記ベースに支持され、先端工具を駆動するためのモータを収容するハウジングと、
前記ハウジングに設けられて前記先端工具を前記ベースの板厚方向一方側から覆うカバー部材と、
前記ハウジングに対して着脱可能に構成され、前記先端工具の駆動によって生じる加工片を収集可能な集塵室を含む集塵ケースと、
を備え、
前記カバー部材には、前記加工片を前記集塵室に送る第1開口部と、前記集塵室内の空気を前記カバー部材の内側に送る第2開口部と、が設けられ、
記集塵ケースは、前記集塵室の入口となる入口部と、前記入口部と前記第1開口部とを接続して前記加工片の通路となる流入部と、前記集塵室内の空気を前記先端工具が駆動する空間へ送る出口部と、前記出口部と前記第2開口部とを接続する流出部と、をし、
前記ベースの板厚方向において、前記入口部の少なくとも一部と前記出口部の少なくとも一部が同じ位置に配置されている作業機。
【請求項7】
前記先端工具は円形の丸鋸刃であり、
前記第1開口部は、前記第2開口部よりも前記丸鋸刃の回転方向の上流側に配置されている請求項6に記載の作業機。
【請求項8】
前記入口部の面積が、前記出口部の面積の80%~120%である請求項3~請求項7の何れか1項に記載の作業機。
【請求項9】
前記集塵ケースには、前記流入部と前記流出部とを区画する区画壁が設けられる、請求項5~請求項7の何れか1項に記載の作業機。
【請求項10】
前記集塵ケースには、前記流入部と前記流出部とを、前記区画壁とは異なる方向に区画するガイド部が設けられている請求項9に記載の作業機。
【請求項11】
前記入口部から前記集塵室に排出される切粉または空気が、前記ガイド部によって前記出口部から遠ざける方向にガイドされる請求項10に記載の作業機。
【請求項12】
左右方向を板厚方向とする鋸刃によって前方向に加工作業を行う作業機であって、
加工作業によって生じた粉塵を収集する集塵構造を有し、
前記集塵構造は、
粉塵を貯留する集塵室と、
粉塵を前記集塵室へ送る流入部と、前記集塵室の空気を前記集塵構造の外部へ排出する流出部と、を備えた移送部と、
前記集塵室の下部に接続されながら上方向へ延びて前記集塵室と前記移送部とを区画する第1区画部と、
前記第1区画部の上端より上方に位置して前記集塵室と前記移送部を連通させる連通部と、を有する作業機であって、
前記連通部には、前記流入部と接続される入口部と、前記流出部と接続される出口部が設けられるとともに、前記入口部と前記出口部の左右方向における一端の位置が異なるように構成されている作業機。
【請求項13】
前記入口部と前記出口部の少なくとも一部が、左右方向で異なる位置にある、または上下方向で同様の位置にあるように構成されている請求項12に記載の作業機。
【請求項14】
前記移送部には、前記流入部と前記流出部を前後方向に区画する第2区画部と、前記流入部と前記流出部を左右方向に区画する第3区画部が設けられる請求項12または13に記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の携帯用丸鋸(作業機)は、ダストボックス(集塵ボックス)を有しており、作業中に生じた切粉をダストボックス内に収集するようになっている。具体的には、ダストボックスは、開口部を有しており、丸鋸の回転によって巻き上げられた切粉が、開口部を介してダストボックス内に流入される。これにより、切断加工時に、切粉をダストボックス内に収集することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-68073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記携帯用丸鋸では、以下に示す点において改善の余地がある。すなわち、上記携帯用丸鋸では、加工材への切断時に丸鋸の回転力によって空気流が発生し、切粉が空気と共に、ダストボックス内に流入される。
【0005】
ここで、上記携帯用丸鋸においては、切断加工時に空気がダストボックス内に流入され続けることで、ダストボックス内の圧力が上昇して、ダストボックスの集塵効率が低下する可能性がある。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、作業時に生じる粉塵等の加工片を好適に集塵可能な作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、板状に形成されたベースと、前記ベースの板厚方向一方側において前記ベースに支持され、円板状の丸鋸刃を駆動するためのモータを収容するハウジングと、前記丸鋸刃の駆動によって生じる加工片を収集可能な集塵室を含む集塵構造と、を備え、前記集塵構造は、前記集塵室の入口となる入口部と、前記入口部と接続されて前記加工片の通路となる流入部と、前記集塵室内の空気を前記丸鋸刃が駆動する空間へ送る出口部と、が設けられ、前記丸鋸刃は前記モータによって駆動される出力軸に取り付けられ、前記入口部及び前記出口部が、前記出力軸の軸方向に並んで配置され、前記ベースの板厚方向において、前記入口部の少なくとも一部と前記出口部の少なくとも一部が同じ位置に配置されている作業機である。
【0008】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記ベースには、前記丸鋸刃の一部を前記ベースの板厚方向他方側へ突出させるための貫通孔が形成されており、前記ハウジングには、前記丸鋸刃の前記貫通孔からの突出量を調整可能な調整機構が連結され、少なくとも前記丸鋸刃の突出量が最大の時に、前記入口部の少なくとも一部と前記出口部の少なくとも一部とが前記ベースの板厚方向において同じ位置に配置されている作業機である。
【0009】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記集塵構造は、前記ハウジングに設けられて前記丸鋸刃を覆うカバー部材を含み、前記カバー部材が、前記丸鋸刃を前記ベースの板厚方向一方側から覆う作業機である。
【0010】
発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記集塵構造は、前記ハウジングに対して着脱可能に構成された集塵ケースを含み、前記集塵ケースに、前記入口部と前記出口部が設けられる作業機である。本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記カバー部材には、前記加工片を前記集塵室に送る第1開口部と、前記集塵室内の空気を前記カバー部材の内側に送る第2開口部と、が設けられ、前記流入部は前記入口部と前記第1開口部とを接続し、前記集塵ケースは、前記出口部と前記第2開口部とを接続する流出部と、前記流入部と、を有する作業機である。本発明の1又はそれ以上の実施形態は、板状に形成されたベースと、前記ベースの板厚方向一方側において前記ベースに支持され、先端工具を駆動するためのモータを収容するハウジングと、前記ハウジングに設けられて前記先端工具を前記ベースの板厚方向一方側から覆うカバー部材と、前記ハウジングに対して着脱可能に構成され、前記先端工具の駆動によって生じる加工片を収集可能な集塵室を含む集塵ケースと、を備え、前記カバー部材には、前記加工片を前記集塵室に送る第1開口部と、前記集塵室内の空気を前記カバー部材の内側に送る第2開口部と、が設けられ、前記集塵ケースは、前記集塵室の入口となる入口部と、前記入口部と前記第1開口部とを接続して前記加工片の通路となる流入部と、前記集塵室内の空気を前記先端工具が駆動する空間へ送る出口部と、前記出口部と前記第2開口部とを接続する流出部と、を有し、前記ベースの板厚方向において、前記入口部の少なくとも一部と前記出口部の少なくとも一部が同じ位置に配置されている作業機である。
【0011】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記先端工具は円形の丸鋸刃であり、前記第1開口部は、前記第2開口部よりも前記丸鋸刃の回転方向の上流側に配置されている作業機である。
【0013】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記入口部の面積が、前記出口部の面積の80%~120%である作業機である。
【0014】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記集塵ケースには、前記流入部と前記流出部とを区画する区画壁が設けられている作業機である。
【0015】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記集塵ケースには、前記流入部と前記流出部とを、前記区画壁とは異なる方向に区画するガイド部が設けられている作業機である。
【0016】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記入口部から前記集塵室に排出される切粉または空気を、前記ガイド部によって前記出口部から遠ざける方向にガイドする作業機である
【0017】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、左右方向を板厚方向とする鋸刃によって前方向に加工作業を行う作業機であって、加工作業によって生じた粉塵を収集する集塵構造を有し、前記集塵構造は、粉塵を貯留する集塵室と、粉塵を前記貯留部へ送る流入部及び前記集塵室の空気を前記集塵構造の外部へ排出する流出部をそれぞれ含む移送部と、前記集塵室の下部に接続されながら上方向へ延びて前記集塵室と前記移送部とを区画する第1区画部と、前記第1区画部の上端より上方に位置して前記集塵室と前記移送部を連通させる連通部と、を有し、前記連通部には、前記流入部と接続される入口部と、前記流出部と接続される出口部が設けられるとともに、前記入口部と前記出口部の左右方向における一端の位置が異なるように構成されている作業機である。本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記入口部と前記出口部の少なくとも一部が、左右方向で異なる位置にある、または上下方向で同様の位置にあるように構成されている作業機である。本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記移送部には、前記流入部と前記流出部を前後方向に区画する第2区画部と、前記流入部と前記流出部を左右方向に区画する第3区画部が設けられる作業機である。
【0018】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、板状に形成されたベースと、前記ベースの板厚方向一方側において前記ベースに支持され、先端工具を駆動するためのモータを収容すると共に、前記先端工具を覆うカバー部材を含んで構成されたハウジングと、前記カバー部材に形成され、前記先端工具の駆動時に生じる加工片が通過可能に構成された第1開口部及び第2開口部と、前記カバー部材に設けられ、前記加工片を収集するための集塵器と、を備え、前記集塵器は、前記第1開口部に接続され、前記第1開口部と共に前記カバー部材の内部と前記集塵器の外部とを連通する第1集塵路を構成し、前記第1開口部を通過した加工片を外部へ排出させる第1排出路と、前記第2開口部及び前記第1排出路に接続され、前記第2開口部と共に前記カバー部材の内部と前記第1排出路とを連通する第2集塵路を構成し、前記第2開口部を通過した加工片を前記第1排出路へ排出させる第2排出路と、を含んで構成され、前記第2集塵路の最小流路面積が、前記第1集塵路の最小流路面積以下に設定されている作業機である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の1又はそれ以上の実施形態によれば、作業時に生じる粉塵等の加工片を好適に集塵することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施の形態に係る丸鋸を示す右斜め前方から見た斜視図である。
図2図1に示される丸鋸の右側から見た側面図である。
図3図1に示される丸鋸の左側から見た側面図である。
図4図1に示される丸鋸の工具本体を示す右斜め前方から見た斜視図である。
図5図3に示される工具本体の内部を示す上側から見た断面図(図3の5-5線断面図)である。
図6図5に示される調整機構を示す左斜め後方から見た一部破断した斜視図である。
図7図2に示される丸鋸の初期状態における集塵ケースの内部を示す右側から見た断面図である。
図8図7に示される集塵ケースの前部を拡大して示す断面図である。
図9図7に示される丸鋸の最小突出状態における集塵ケースの内部を示す右側から見た断面図である。
図10図1に示される集塵ケースを、ケース本体における右側のケース部材を取り外した状態で示す右斜め後方から見た斜視図である。
図11図1に示される集塵ケースの前部における内部を示す一部破断した斜視図である。
図12図7に示される集塵ケースの前後方向中間部を示す後側から見た断面図(図7の12-12線断面図)である。
図13図8に示される集塵ケースの前部を示す前側から見た断面図(図8の13-13線断面図)である。
図14】本発明における集塵構造の流入部と流出部と貯留部とを表す図である。
図15図2に示される集塵ケースの代わりに集塵アダプタを工具本体に装着した状態を示す右側から見た側面図である。
図16図15に示される丸鋸の初期状態における集塵アダプタの内部を示す右側から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を用いて、本実施形態に係る作業機としての丸鋸10について説明する。なお、図面において適宜示される矢印UP、矢印FR、及び矢印RHは、それぞれ丸鋸10の上側、前側、及び右側を示している。そして、以下の説明において、上下、前後、左右の方向を用いて説明するときには、特に断りのない限り、丸鋸10の上下方向、前後方向、左右方向を示すものとする。
【0022】
丸鋸10は、加工材を切断する工具として構成されている。図1図4に示されるように、丸鋸10は、加工材に対して切断加工を施す工具本体20を有している。また、図2及び図15に示されるように、丸鋸10は、切断加工時に生じる加工片としての切粉を集めるための集塵器としての集塵ケース60又は集塵アダプタ70を有している。集塵ケース60及び集塵アダプタ70は、工具本体20に着脱可能に構成されており、切粉に対する集塵形態に応じて、集塵ケース60又は集塵アダプタ70が、作業者によって択一的に工具本体20に装着されるようになっている。具体的には、図示しない動力源によって駆動する集塵装置(集塵機、クリーナー)を用いずに切粉を集塵する場合には、集塵ケース60が工具本体20に装着され、集塵装置を用いて切粉を集塵する場合には、集塵アダプタ70が工具本体20に装着されるようになっている。以下、先に、工具本体20の構成について説明し、次いで、集塵ケース60及び集塵アダプタ70の構成について説明する。
【0023】
(工具本体20について) 図1図7に示されるように、工具本体20は、ベース22と、ハウジング24と、ハウジング24内に収容された駆動機構46及び制御部54と、バッテリーパック56と、を含んで構成されている。また、工具本体20は、ハウジング24をベース22に連結するための調整機構33を有している。
【0024】
(ベース22について) ベース22は、上下方向を板厚方向とし且つ前後方向を長手方向とする略矩形プレート状に形成されている。ベース22の下面は、摺動面22Aとして構成されており、丸鋸10の切断加工時には、ベース22を加工材の上側に載置して、摺動面22Aを加工材の上面に沿って摺動させるようになっている。
【0025】
ベース22には、先端工具としての丸鋸刃12を配置するための貫通孔としての工具挿通部22Bが貫通形成されている。工具挿通部22Bは、前後方向を長手方向とする略長孔状に形成されている。ここで、丸鋸刃12は、左右方向を板厚方向とする略円板状に形成されており、丸鋸刃12の中心部が、後述する駆動機構46の出力軸50に一体回転可能に固定されている。そして、丸鋸刃12が工具挿通部22B内に配置されており、丸鋸刃12の上部がベース22から上側(ベース22の板厚方向一方側)へ突出し、丸鋸刃12の下端側部分がベース22から下側(ベース22の板厚方向他方側)へ突出している。そして、加工材への切断加工時には、丸鋸刃12が、右側から見て、出力軸50の軸回り一方側(図7の矢印A方向側)に回転するようになっている。
【0026】
また、ベース22の前端部には、後述する調整機構33の固定軸36を固定するための固定壁22C(図1及び図4参照)が形成されており、固定壁22Cは、前後方向を板厚方向としてベース22から上側へ突出している。固定壁22Cには、固定溝22D(図1及び図4参照)が、貫通形成されており、固定溝22Dは、前側から見て左斜め上方へ凸となる略円弧状に湾曲している。
【0027】
(ハウジング24について) ハウジング24は、工具本体20の外郭を構成すると共に、ベース22の上側に配置されている。ハウジング24は、後述する駆動機構46を収容する本体ハウジング25と、ハウジング24の上部を構成するハンドルハウジング26と、インナカバー27と、を含んで構成されている。
【0028】
本体ハウジング25は、複数のハウジング部材により構成されると共に、全体として右側へ開放された略有底円筒状に形成されている。本体ハウジング25の右端部には、径方向外側へ張り出されたソーカバー部25A(図4図6参照)が形成されている。ソーカバー部25Aは、右側から見て上側へ凸となる略半円状に形成されている。ソーカバー部25Aは、後述するインナカバー27と共に、丸鋸刃12の上部を覆う部材として構成されており、ソーカバー部25A及びインナカバー27が、本発明のカバー部材に対応している。そして、ソーカバー部25A及びインナカバー27が、前端部及び後端部の部位において、後述する調整機構33によってベース22に連結されている。
【0029】
本体ハウジング25の左端部には、前側及び後側の角部において、複数の吸気口25Bが貫通形成されている。複数の吸気口25Bは、本体ハウジング25の底壁(左端部)から前後の側壁に亘って形成されており、上下方向に所定の間隔を空けて並んで配置されている。
【0030】
ハンドルハウジング26は、左側から見て、中空の略D字形に形成されており、本体ハウジング25を上側及び後側から覆うように配置されて、本体ハウジング25に連結されている。ハンドルハウジング26の上端部は、作業者が把持するハンドル部26Aとして構成されており、ハンドル部26Aは、側面視で後側へ向かうに従い下側へ傾斜している。
【0031】
ハンドル部26Aの前端側部分には、トリガ30が設けられている。トリガ30は、ハンドル部26Aから下側へ突出されると共に、上側へ引き操作可能に構成されている。また、ハンドル部26Aには、トリガ30の上側において、トリガ30の引き操作をロックするためのロックボタン31が設けられている。さらに、ハンドル部26Aの内部には、図示しないスイッチ機構が設けられている。スイッチ機構は、トリガ30によって操作される、図示しないスイッチを有している。当該スイッチは、後述する制御部54に電気的に接続されており、トリガ30の操作状態に応じた出力信号を制御部54に出力する構成になっている。
【0032】
また、ハンドルハウジング26の後側下端部は、後述するバッテリーパック56を装着するためのバッテリー装着部26Bとして構成されている。バッテリー装着部26Bには、図示しないコネクタが設けられており、コネクタは、後述する制御部54に電気的に接続されている。
【0033】
インナカバー27は、本体ハウジング25のソーカバー部25Aの右側に隣接配置されて、丸鋸刃12を上側及び右側から覆う部材として構成されている。具体的には、インナカバー27は、左右方向を板厚方向とし且つ上側へ凸となる略半円板状のカバー側壁27Aと、カバー側壁27Aの前端部から左側へ延出されたカバー前壁27Bと、カバー側壁27Aの後端部から左側へ延出されたカバー後壁27Cと、カバー側壁27Aの上側外周部から左側へ延出されたカバー上壁27Dと、を含んで構成されている。カバー上壁27Dは、丸鋸刃12の外周部に対応して、右側から見て上側へ凸となる円弧状に湾曲されると共に、カバー上壁27Dの前端部が、側面視で前後方向に沿って延在されている。インナカバー27の前端部左側には、後述する切粉排出部27Eの左壁を構成するカバー左壁27Pが設けられている。
【0034】
そして、インナカバー27が、本体ハウジング25のソーカバー部25Aの右側に隣接配置され、カバー前壁27Bが、ソーカバー部25Aの前端部に締結固定され、カバー後壁27Cが、ソーカバー部25Aの後端部に締結固定されている。これにより、インナカバー27及びソーカバー部25Aの内部には、下側へ開放された工具収容空間28(図5及び図7参照)が形成されており、工具収容空間28内に丸鋸刃12の上部が収容されている。
【0035】
インナカバー27の前端部には、上下方向を軸方向とする略矩形筒状の切粉排出部27Eが形成されている。切粉排出部27Eは、側面視で丸鋸刃12の中心部よりも前側に配置されている。より詳しくは、丸鋸刃12の前端部が、切粉排出部27Eの下側に配置されている。切粉排出部27Eの前壁は、カバー前壁27Bによって構成され、切粉排出部27Eの右壁が、カバー側壁27Aによって構成され、切粉排出部27Eの左壁が、カバー左壁27Pによって構成されている。切粉排出部27Eの後壁は、仕切部としての仕切壁27Fとして構成されている。仕切壁27Fの下部には、下側へ開放された、仕切スリット27G(図13参照)が形成されており、丸鋸刃12の前端側の外周部分が、仕切スリット27G内に配置されている。このように切粉排出部27Eは、カバー前壁27Bと、カバー側壁27Aと、カバー左壁27Pと、仕切壁27Fによって筒状に形成されている。また、切粉排出部27Eの上端部は、円弧状を成すカバー上壁27Dから上側に突出するような形状となっている。また、切粉排出部27Eの上側開口部が、第1開口部としての切粉排出口27Hとして構成されている。これにより、加工材への切断加工時において、丸鋸刃12により巻き上げられた切粉が、切粉排出部27E内に導入され、切粉排出口27Hから上側へ排出される構成になっている。このように、切粉排出部27Eの下端は巻き上げられた切粉の入口となる。また、切粉排出部27Eでは、仕切壁27F及びカバー前壁27Bが、側面視で、下側へ向かうに従い互いに離間する方向へ傾斜しており、切粉排出口27Hの部位における開口面積が最小となるように設定されている。
【0036】
カバー上壁27Dには、切粉排出口27Hの後側で且つ丸鋸刃12の中心部よりも前側において、第2開口部としてのカバー開口部27Jが貫通形成されている。すなわち、カバー開口部27Jは、切粉排出口27Hに対して丸鋸刃12の回転方向下流側に配置されている。カバー開口部27Jは、複数(本実施の形態では、4箇所)の孔としての開口孔部27J1によって構成されている。開口孔部27J1は、左右方向を長手方向とする長孔状に形成されると共に、前後方向(丸鋸刃12の回転方向)に並んでいる。切粉排出口27H及びカバー開口部27Jを構成する開口孔部27J1のそれぞれの開口面積は、切断加工時に生じる切粉を通過可能な面積に設定されている。また、カバー開口部27Jの開口面積(複数の開口孔部27J1の総面積)が、切粉排出口27Hの開口面積よりも小さく設定されている。
【0037】
また、前述した仕切壁27Fは、切粉排出口27Hとカバー開口部27Jとの間に配置されて、工具収容空間28の上部が、切粉排出口27H及びカバー開口部27Jの下側において、仕切壁27Fによって前後に仕切られている。
【0038】
カバー上壁27Dには、カバー開口部27Jの後側において、第1リブ27K(図4参照)が形成されている、第1リブ27Kは、左右方向を板厚方向として、前後方向に延在されている。さらに、カバー上壁27Dには、第1リブ27Kの後側において、第2リブ27L(図4参照)が形成されている。第2リブ27Lは、第1リブ27Kと同様に、左右方向を板厚方向として、前後方向に延在されている。
【0039】
カバー前壁27Bの上端部には、後述する集塵ケース60又は集塵アダプタ70を取付けるためのカバー突起27M(広義には、取付部として把握される要素であり、図4及び図7参照)が形成されている。カバー突起27Mは、カバー前壁27Bから前側へ突出すると共に、左右方向に延在されている。一方、カバー後壁27Cには、後述する集塵ケース60又は集塵アダプタ70を取付けるための取付溝部27N(広義には、取付部として把握される要素であり、図7参照)が形成されている。取付溝部27Nは、後側へ開放されると共に、左右方向に延在されている。インナカバー27は、本発明における集塵構造の一部である。
【0040】
(調整機構33について) 図4図6に示されるように、調整機構33は、ハウジング24をベース22に連結するための機構として構成されると共に、丸鋸刃12のベース22から下側への突出量を調整する突出量調整機構と、ベース22から下側へ突出する丸鋸刃12のベース22に対する角度を調整する傾斜調整機構を有する。調整機構33は、連結プレート34と、リンク40と、固定レバー43と、を含んで構成されている。
【0041】
連結プレート34は、ソーカバー部25A及びインナカバー27とベース22の固定壁22Cとの間において、前後方向を板厚方向として配置されている。連結プレート34の下端部が、前後方向を軸方向とする前側連結軸35に回転可能に支持されており、前側連結軸35は、ベース22に固定されている。この前側連結軸35は、固定壁22Cの右側で且つ固定溝22Dの中心となる位置に配置されて、前側から見て、固定溝22Dが前側連結軸35の周方向に沿って延在されている。また、連結プレート34には、固定軸36が設けられている。固定軸36は、前後方向を軸方向として連結プレート34から前側へ突出し、ベース22の固定溝22D内に相対移動可能に挿入されると共に、固定溝22Dの下端部に配置されている。そして、固定軸36の前端部に、固定アーム37が螺合されて、固定アーム37によって、固定軸36が固定壁22Cに固定されている。
【0042】
連結プレート34の上端部には、後側へ屈曲された左右一対の支持片34Aが形成されており、支持片34Aは、左右方向を板厚方向として配置されている。一対の支持片34Aの間には、左右方向を軸方向とする支持軸38が架け渡されている。そして、ソーカバー部25A及びインナカバー27の前端部が、支持軸38に回転可能に支持されている。これにより、ハウジング24の前端部が、支持軸38、連結プレート34、固定軸36によってベース22に連結されている。また、ハウジング24(の前端部)が、前側連結軸35の軸回りに回転可能に構成されると共に、支持軸38の軸回りに回転可能に構成されている。ハウジング24が前側連結軸35の軸回りに回転すると、丸鋸刃12をベース22に対して傾斜させることができる。
【0043】
リンク40は、ソーカバー部25Aの後部の左側に配置されている。リンク40は、上下方向に延在されたリンク本体部40Aと、リンク本体部40Aの下端部から後側へ延出されたリンク連結部40Bと、を含んで構成されている。リンク連結部40Bは、平面視で、略L字形状に形成されている。すなわち、リンク連結部40Bの後端部が、右側に屈曲されて、ソーカバー部25A及びインナカバー27の後側に配置されている。リンク連結部40Bの先端部は、前後方向を軸方向とする後側連結軸41(図6参照)に回転可能に支持されており、後側連結軸41は、ベース22に固定されると共に、前側連結軸35と同軸上に配置されている。
【0044】
リンク本体部40Aは、側面視で、略後側へ凸となる円弧状に湾曲されている。具体的には、リンク本体部40Aは、側面視で、支持軸38を中心とする略円弧状に湾曲されている。リンク本体部40Aには、リンク溝40Cが形成されており、リンク溝40Cは、リンク本体部40Aの長手方向に沿って延在されると共に、左右方向に貫通している。リンク溝40C内には、左右方向を軸方向とするリンク軸42が相対移動可能に挿入されており、リンク軸42の右端部が、ソーカバー部25Aに固定されている。これにより、リンク軸42がリンク溝40C内を相対移動することで、ハウジング24が支持軸38の軸回りを回転するように構成されている。すなわち、丸鋸10の姿勢が変更されて、丸鋸刃12のベース22に対する下側への突出量を調整可能に構成されている。
【0045】
具体的には、図7に示される丸鋸10の初期状態では、リンク軸42がリンク溝40Cの下端部に配置されて、丸鋸刃12のベース22に対する下側への突出量が最大となっている。一方、リンク軸42をリンク溝40Cの上端部に配置させることで、丸鋸刃12のベース22に対する下側への突出量が最小となるように構成されている(図9に示される状態であり、以下この状態を最小突出状態という)。また、リンク軸42の左端部は、リンク本体部40Aよりも左側へ突出しており、リンク軸42の左端部の外周部には、雄ネジが形成されている。
【0046】
固定レバー43は、左右方向を板厚方向とし且つ前後方向に延在された略長尺板状に形成されている。固定レバー43の前端部には、ナット44が設けられており、ナット44は、リンク軸42の左端部に螺合されている。また、ナット44とリンク本体部40Aとの間には、図示しない座金が設けられている。そして、固定レバー43を回転させて、座金をリンク本体部40Aに締め付けることで、ソーカバー部25A(ハウジング24)が、リンク軸42を介してリンク40に固定されている。すなわち、ハウジング24の後端部が、リンク40及び後側連結軸41を介してベース22に連結されている。リンク40、リンク本体部40A、後側連結軸41、連結プレート34、支持軸38、固定レバー43、ナット44は、突出量調整機構の一部である。また、前述した固定アーム37による固定軸36の固定状態を解除することで、ハウジング24が、前側連結軸35及び後側連結軸41の軸回りに回転でき、丸鋸刃12のベース22に対する角度を変更可能である構成になっている。具体的には、図示は省略するが、ハウジング24をベース22に対して右側へ傾倒できる構成になっている。連結プレート34、前側連結軸35、固定軸36、固定アーム37、後側連結軸41、固定壁22C、固定溝22Dは、傾斜機構の一部である。
【0047】
(駆動機構46について) 図5に示されるように、駆動機構46は、モータ47と、出力軸50と、を含んで構成されている。モータ47は、本体ハウジング25内に収容されて、後述する制御部54に電気的に接続されている。モータ47は、左右方向を軸方向とする回転軸47Aを有している。そして、回転軸47Aの左端部が、本体ハウジング25に固定された第1モータ軸受48によって回転可能に支持されており、回転軸47Aの右側部分が本体ハウジング25に固定された第2モータ軸受49によって回転可能に支持されている。回転軸47Aの右端部は、第2モータ軸受49から右側へ突出しており、回転軸47Aの右端部には、ピニオンギヤ47Bが形成されている。
【0048】
出力軸50は、左右方向を軸方向として、本体ハウジング25の内部に配置されている。具体的には、出力軸50は、モータ47の回転軸47Aの右端部の下側で且つ回転軸47Aに対して若干後側に配置されて、本体ハウジング25に回転可能に支持されている。出力軸50の左端部には、図示しない出力ギヤが一体回転可能に設けられている。
【0049】
さらに、回転軸47Aと出力軸50との間には、図示しない伝達ギヤ(減速機構)が設けられている。伝達ギヤは、2段ギヤとして構成されて、回転軸47Aのピニオンギヤ47B及び出力軸50の出力ギヤに噛合されている。また、出力軸50の右端部は、工具取付部として構成されて、工具取付部は、工具収容空間28内に配置されている。工具取付部は、右側へ開放された略円筒状に形成されており、工具取付部の内周部には、雄ネジが形成されている。そして、丸鋸刃12の中心部が、工具取付部に外挿され、ボルトBLによって、丸鋸刃12が出力軸50の右端部に固定されている。これにより、モータ47の駆動時には、出力軸50及び丸鋸刃12が、出力軸50の軸回りに回転するように構成されている。
【0050】
なお、丸鋸刃12の下部は、保護カバー52によって覆われている(図1図4参照)。保護カバー52は、右側から見て下側へ凸となる略半円状に形成されると共に、上側へ開放された凹状に形成されている。また、保護カバー52は、出力軸50の軸回りに回動可能に出力軸50に連結されている(図5参照)。さらに、保護カバー52は、図示しない付勢バネによって出力軸50の軸回りに付勢されて、図1図4に示される位置に保持されている。そして、丸鋸10による切断加工時には、加工材によって保護カバー52が付勢バネの付勢力に抗して出力軸50の軸回り他方側へ回動して、丸鋸刃12の刃部が露出される構成になっている。
【0051】
(制御部54について) 図3に示されるように、制御部54は、ハンドルハウジング26におけるバッテリー装着部26Bの前端部内に収容されている。制御部54には、トリガ30のスイッチ機構及びモータ47が電気的に接続されている。これにより、トリガ30が引き操作されることで、モータ47が駆動して、丸鋸刃12が出力軸50の軸回りに回転するようになっている。
【0052】
(バッテリーパック56について) バッテリーパック56は、略直方体に形成されている。そして、バッテリーパック56が、丸鋸10のバッテリー装着部26Bに後側から装着されている。さらに、バッテリーパック56は、図示しないコネクタを有しており、バッテリーパック56の装着状態では、当該コネクタが、バッテリー装着部26Bのコネクタに接続されて、バッテリーパック56から制御部54へ電力が供給される構成になっている。
【0053】
(集塵ケース60について) 図1図3、及び図6図13に示されるように、集塵ケース60は、工具本体20のインナカバー27に着脱可能に取付けられて、インナカバー27の上側に隣接して配置されている。そして、インナカバー27の切粉排出部27Eから排出された切粉を、集塵ケース60内に溜めるように構成されている。集塵ケース60は、ケース本体62と、着脱レバー64と、蓋部材66と、を含んで構成されている。集塵ケース60は、本発明における集塵構造の一部である。
【0054】
(ケース本体62について) ケース本体62は、前後方向に延在され且つ後側へ開放された中空の箱状に形成されると共に、側面視で、インナカバー27のカバー上壁27Dに対応して、上側へ凸となる略円弧状に湾曲している。具体的には、ケース本体62は、ケース底壁62Aと、ケース側壁としてのケース右壁62B及びケース左壁62Cと、ケース上壁62Dと、ケース前壁62Eと、を含んで構成されている。ケース本体62は、左右方向に2分割されたケース部材によって構成されており、これらケース部材が互いに組付けられている。ケース左壁62Cの後部は、ハンドル部26Aを把持した作業者の手が当たりにくくなるように右側へ窪んだ形状を成している。
【0055】
図7図10に示されるように、ケース本体62の前端部の内周面は、側面視で前斜め上方へ凸となる略円弧状に湾曲しており、ケース本体62の前端部における下端部が、インナカバー27のカバー前壁27Bの上側に隣接配置されている。また、ケース本体62の前端部における下端部には、後側へ開放された取付溝部62F(図7及び図8参照)が形成されている。そして、インナカバー27のカバー突起27Mが取付溝部62F内に配置されて、カバー突起27Mと取付溝部62Fが上下方向に係合している。これにより、ケース本体62の前端部の上側への移動が制限されている。また、ケース底壁62Aの前部は、インナカバー27のカバー上壁27Dに対応して、上側へ凸となる略円弧状に湾曲されており、ケース底壁62Aには、インナカバー27の第1リブ27K及び第2リブ27Lに対応する位置において、下側へ開放された係合溝62Gが形成されている。係合溝62Gは、前後方向に延在されており、第1リブ27K及び第2リブ27Lが、係合溝62G内に挿入されて、ケース本体62とインナカバー27とが左右方向に係合している(図12参照)。また、ケース底壁62Aの右端部は、インナカバー27の上側外周部を右側から覆うように、下側へ屈曲されており、ケース右壁62Bの下端部が左側へ屈曲されて、ケース底壁62Aの右端部に接続されている(図12参照)。
【0056】
図11及び図12にも示されるように、ケース本体62の内部には、前端側部分において、ケース区画壁62Hが形成されている。ケース区画壁62Hは、略前後方向(詳細には、上後方から下前方へ向かう方向)を板厚方向とする矩形板状に形成されており、ケース本体62の内部が、ケース区画壁62Hによって前後に区画されている。そして、ケース本体62の後部(ケース区画壁62Hよりも後側部分)が、集塵室62Jとして構成されて、ケース本体62の前部(ケース区画壁62Hよりも前側部分)が集塵通路部62Kとして構成されている。なお、ケース区画壁62Hは、側面視で、丸鋸刃12の中心部よりも前側に配置されている。また、ケース区画壁62Hの上端部には、集塵室出入口部62Lが貫通形成されており、集塵室出入口部62Lは、ケース上壁62Dの下側に隣接して配置されると共に、ケース右壁62Bからケース左壁62Cに亘って左右方向に延在している。すなわち、集塵室出入口部62Lによって集塵室62J及び集塵通路部62Kが連通されている。ケース区画壁62Hは、本発明における第1区画部の一例である。ケース区画壁62Hは、本発明における移送部と貯留部とを区画する仕切り部として機能する。
【0057】
ケース底壁62Aの前部(ケース区画壁62Hよりも前側部分)には、ケース開口部62Mが貫通形成されており、ケース開口部62Mは、インナカバー27の切粉排出口27H及びカバー開口部27Jの上側に配置されている。すなわち、集塵通路部62Kが、ケース開口部62Mによって下側へ開放されている。
【0058】
集塵通路部62Kには、集塵通路部62Kの内部を分割するための分割壁62Nが形成されている。分割壁62Nは、側面視で、集塵室出入口部62Lの下側縁部から前側へ延出されており、分割壁62Nの前部が、前側へ向かうに従い下側へ傾斜されると共に、前斜め上方へ凸となるように略円弧状に湾曲している。分割壁62Nの前端部は、インナカバー27の仕切壁27Fの上側に隣接して配置されると共に、ケース開口部62Mの前後方向中間部に配置されている(図7及び図8参照)。これにより、ケース開口部62Mが、ケース開口部62Mの前部を構成するケース入口部62M1と、ケース開口部62Mの後部を構成するケース出口部62M2と、に区画されている。すなわち、分割壁62Nは流入路62R(流入部)と排気路62T(流出部)とを前後方向に区画する。そして、ケース入口部62M1が、インナカバー27の切粉排出口27Hの上側に配置され、ケース出口部62M2が、インナカバー27のカバー開口部27Jの上側に配置されている。分割壁62Nは、本発明において移送部の空間を区画する第2区画部の一例である。
【0059】
さらに、集塵通路部62Kには、分割壁62Nとケース上壁62Dとの間において、ガイド部としてのガイド壁62P(図10図12)が形成されており、ガイド壁62Pは、左右方向を板厚方向とし且つ略前後方向に延在されている。ガイド壁62Pの後端部は、集塵室出入口部62Lの左右方向中間部に配置されており、ガイド壁62Pによって、集塵室出入口部62Lが、集塵室出入口部62Lの右側部を構成する入口部としての集塵室入口部62L1と、集塵室出入口部62Lの左側部を構成する出口部としての集塵室出口部62L2と、に区画されている。すなわち、ガイド壁62Pは後述する流入路62R(流入部)と排気路62T(流出部)とを左右方向に区画する。また、ガイド壁62Pによって、入口部(集塵室入口部62L1)の左右方向における一端の位置と、出口部(集塵室出口部62L2)の左右方向における一端の位置とが異なるように構成されている。また、集塵室入口部62L1と集塵室出口部62L2とは、左右方向における他端の位置も異なるように構成されている。ガイド壁62Pは、本発明において移送部の空間を区画する第3区画部の一例である。
【0060】
これにより、集塵室入口部62L1及び集塵室出口部62L2が、左右方向に並んで配置されている。このため、ハウジング24がベース22に対して右側へ傾倒していない状態では、丸鋸10の初期状態及び最小突出状態の何れの状態においても、集塵室入口部62L1及び集塵室出口部62L2が、上下方向において、オーバーラップする(重なる)位置に配置されている。換言すれば、集塵室入口部62L1と集塵室出口部62L2の少なくとも一部が、上下方向で同様の位置にある。また、ハウジング24がベース22に対して右側へ傾倒している状態でも、丸鋸10の初期状態及び最小突出状態の何れの状態においても、集塵室入口部62L1の一部と集塵室出口部62L2の一部とが、上下方向において、オーバーラップする(重なる)位置に配置されている。また、集塵室入口部62L1の開口面積が、集塵室出口部62L2の開口面積の80%~120%に設定されている(本実施の形態では、集塵室入口部62L1の開口面積と集塵室出口部62L2の開口面積とが略同じ面積に設定されている)。
【0061】
また、ガイド壁62Pは、前側へ向かうに従い左側へ傾斜しており、ガイド壁62Pの前端部が、ケース本体62のケース左壁62Cに接続されている。これにより、集塵通路部62Kには、一端部をケース入口部62M1とし且つ他端部を集塵室入口部62L1とする流入路62Rが形成されており、集塵室62Jとインナカバー27の切粉排出部27Eとが流入路62Rによって連通されている。すなわち流入路62Rは、ケース入口部62M1と、その後方に位置する集塵室入口部62L1とを接続する通路である。そして、流入路62Rの流路面積が、ガイド壁62Pによって、集塵室入口部62L1側流路下流側)へ向かうに従い小さくなるように設定されている。すなわち、流入路62Rの下流側の流路面積が、流入路62Rの上流側の流路面積よりも小さく設定されている。
【0062】
また、分割壁62Nには、ガイド壁62P及びケース左壁62Cによって囲まれた部分において、排気孔部62Sが貫通形成されている。これにより、集塵通路部62Kには、一端部をケース出口部62M2とし且つ他端部を集塵室出口部62L2とする排気路62Tが形成されており、集塵室62J及びインナカバー27のカバー開口部27Jが、排気路62Tによって連通されている。すなわち排気路62Tは、ケース出口部62M2と、その後方に位置する集塵室出口部62L2とを接続する通路である。
【0063】
(着脱レバー64について) 図7及び図10に示されるように、着脱レバー64は、側面視で、後斜め下方側へ開放された略V字形ブロック状に形成されている。具体的には、着脱レバー64は、上下方向に延在された係合アーム64Aと、係合アーム64Aの上端部から後斜め下方側へ延出された取手レバー部64Bと、を含んで構成されている。係合アーム64Aの上端部には、左右方向を軸方向とするレバー軸64Cが形成されており、レバー軸64Cは、着脱レバー64から左右方向外側へそれぞれ突出している。そして、レバー軸64Cが、ケース本体62の後端下端部において、ケース本体62に回転可能に連結されている。また、着脱レバー64は、図示しないバネによって、右側から見て反時計方向に付勢されている。
【0064】
係合アーム64Aの下端部には、前側へ突出されたフック部64Dが形成されている。そして、フック部64Dが、インナカバー27の取付溝部27N内に挿入されて、フック部64Dと取付溝部27Nとが上下方向に係合している。これにより、集塵ケース60の後端部の上側への移動が制限されている。そして、作業者が、取手レバー部64Bを把持し、着脱レバー64を右側から見て時計回りに回転させて、フック部64Dと取付溝部27Nとの係合状態を解除することで、集塵ケース60をインナカバー27から取外すようになっている。
【0065】
(蓋部材66について) 蓋部材66は、蓋部材66の前部を構成する蓋本体部66Aと、蓋部材66の後部を構成する蓋筒部66Bと、を含んで構成されている。蓋本体部66Aは、前側へ開放された略矩形箱状に形成されている。そして、蓋本体部66Aが、ケース本体62の後端部を閉塞するように、ケース本体62の後端部に連結されている。具体的には、蓋本体部66Aの上端部が、左右方向を軸方向として、ケース本体62の後端部の上端部に回転可能に連結されている。
【0066】
蓋筒部66Bは前後方向を軸方向とする略円筒状に形成されて、蓋本体部66Aから後側へ突出している。また、蓋筒部66Bの内部と蓋本体部66Aの内部とが連通しており、蓋筒部66Bの後端部には、有底円筒状のキャップ68が取付けられている。
【0067】
(集塵アダプタ70について) 図15及び図16に示されるように、動力によって駆動する集塵装置(図示省略)を用いて切断加工時の切粉を吸引するときには、集塵ケース60の代わりに集塵アダプタ70を工具本体20のインナカバー27に装着するようになっている。集塵アダプタ70のインナカバー27への装着時には、集塵ケース60と同様に、集塵アダプタ70が、インナカバー27の上側に隣接して配置される。そして、集塵アダプタ70を用いた集塵形態では、インナカバー27の切粉排出口27H及びカバー開口部27Jから排出される切粉を、集塵アダプタ70を介して、集塵装置(集塵アダプタ70の外部)へ排出するようになっている。集塵アダプタ70は、アダプタ本体72と、アダプタ接続部74と、を含んで構成されている。また、集塵ケース60と同様に、着脱レバー64がアダプタ本体72に設けられている。
【0068】
(アダプタ本体72について) アダプタ本体72は、集塵ケース60のケース本体62と同様に、前後方向に延在された中空の箱状に形成されると共に、側面視で、インナカバー27のカバー上壁27Dに対応して、上側へ凸となる略円弧状に湾曲されている。具体的には、アダプタ本体72は、アダプタ底壁72Aと、アダプタ右壁72Bと、アダプタ左壁72Cと、アダプタ上壁72Dと、アダプタ前壁72Eと、アダプタ後壁72Fと、を含んで構成されている。アダプタ本体72は、左右方向に2分割されたアダプタ部材によって構成されており、これらアダプタ部材が互いに組付けられている。また、アダプタ右壁72Bの下端部が、インナカバー27のカバー側壁27Aの上端外周部を右側から覆うように、アダプタ底壁72Aよりも下側へ突出している。
【0069】
アダプタ前壁72Eの下端部には、後側へ開放された取付溝部72Gが形成されている。そして、インナカバー27のカバー突起27Mが取付溝部72G内に配置されて、カバー突起27Mと取付溝部72Gとが上下方向に係合している。これにより、アダプタ本体72の前端部の上側への移動が制限されている。アダプタ本体72の後端部には、着脱レバー64が左右方向を軸方向として回転可能に設けられており、着脱レバー64のフック部64Dが、インナカバー27の取付溝部27Nに係合している。これにより、アダプタ本体72の後端部の上側への移動が制限されている。
【0070】
また、アダプタ底壁72Aは、インナカバー27のカバー上壁27Dに対応して、上側へ凸となる略円弧状に湾曲されており、アダプタ底壁72Aには、インナカバー27の第1リブ27K及び第2リブ27Lに対応する位置において、下側へ開放された係合溝72Hが形成されている。そして、図示は省略するが、第1リブ27K及び第2リブ27Lが、係合溝72H内に挿入されて、アダプタ本体72とインナカバー27とが左右方向に係合している。
【0071】
アダプタ本体72の前端部には、上下方向を軸方向とする筒状の連結筒部72Jが形成されている。連結筒部72Jの上端部は、略円筒状に形成されて、アダプタ上壁72Dよりも上側に突出している。連結筒部72Jの上端部における内周面には、径方向内側へ突出した上下一対のレール部72Lが形成されており、レール部72Lは、連結筒部72Jの周方向全体に亘って延在されている。
【0072】
連結筒部72Jの下部は、略矩形筒状に形成されている。詳しくは、連結筒部72Jの下部の周壁が、アダプタ右壁72B、アダプタ左壁72C、アダプタ前壁72Eの一部によって構成されている。連結筒部72Jは、上下方向に貫通しており、連結筒部72Jの下端開口部が、メイン吸引口72Kとして構成されている。そして、インナカバー27の切粉排出部27Eの上端部が、メイン吸引口72K内に挿入されている。
【0073】
また、連結筒部72Jの下部の後壁には、前後方向に貫通された連通孔72Mが形成されており、連通孔72Mは、左右方向を長手方向とする略矩形状に形成されている。さらに、アダプタ底壁72Aには、連結筒部72Jの後側において、サブ吸引口72Nが貫通形成されており、サブ吸引口72Nは、インナカバー27のカバー開口部27Jの上側に配置されている。
【0074】
アダプタ本体72の内部には、連通孔72Mの上側縁部と、サブ吸引口72Nの後側縁部と、を接続する第1接続壁72Pが形成されており、第1接続壁72Pは、連通孔72Mから後側へ延出されると共に、第1接続壁72Pの後端部が、後斜め下方側へ屈曲されている。また、アダプタ本体72の内部には、連通孔72Mの下側縁部と、サブ吸引口72Nの前側縁部と、を接続する第2接続壁72Rが形成されており、第2接続壁72Rは、連通孔72Mから後斜め下方側へ延出されている。第1接続壁72P及び第2接続壁72Rは、アダプタ右壁72B及びアダプタ左壁72Cに接続されている。これにより、アダプタ本体72には、一端部をサブ吸引口72Nとし且つ他端部を連通孔72Mとする第2排出路としてのサブ吸引路70Aが形成されている。
【0075】
アダプタ接続部74は、上下方向を軸方向とする略円筒状に形成されており、アダプタ接続部74の上部が、上側へ向かうに従い後側へ傾斜している。そして、集塵装置のホースが、アダプタ接続部74の上端部に接続されている。アダプタ接続部74の下端部は、アダプタ本体72の連結筒部72Jの上端部内に回転可能に挿入されている。アダプタ接続部74における下端部の外周部には、アダプタ接続部74の径方向外側へ開放された上下一対のレール溝74Aが形成されており、レール溝74Aは、アダプタ接続部74の周方向全体に亘って延在されている。そして、アダプタ本体72のレール部72Lが、レール溝74A内に回転可能に挿入されている。これにより、アダプタ接続部74の下端部が、上下方向を軸方向としてアダプタ本体72に回転可能に連結されている。すなわち、アダプタ接続部74の内部と、連結筒部72Jの下端部の内部と、が連通されて、当該連通された部分が、第1排出路としてのメイン吸引路70Bとして構成されている。
【0076】
そして、インナカバー27の切粉排出部27E及びメイン吸引路70Bによって、インナカバー27の内部(すなわち、インナカバー27の内側であって、工具収容空間28)と集塵アダプタ70の外部(すなわち、集塵装置)とを連通する第1集塵路76が形成されている。第1集塵路76は、略上下方向に延在されており、工具収容空間28内の切粉が、第1集塵路76を介して集塵装置側へ送られる構成になっている。
【0077】
また、集塵アダプタ70のサブ吸引路70A及びインナカバー27のカバー開口部27Jによって、工具収容空間28とメイン吸引路70Bとを連通する第2集塵路78が形成されている。これにより、第2集塵路78が、第1集塵路76に対して丸鋸刃12の回転方向下流側に配置されて、第1集塵路76に接続されている。そして、第1集塵路76内に挿入されなかった切粉が、第2集塵路78を介してメイン吸引路70Bに排出されて、メイン吸引路70Bの切粉と共に集塵装置側へ送られる構成になっている。
【0078】
また、第1集塵路76では、切粉排出部27Eの切粉排出口27Hの部位における流路面積が最小となるように設定され、第2集塵路78では、連通孔72Mの部位における流路面積が最小となるように設定されている。さらに、第2集塵路78における最小流路面積が、第1集塵路76における最小流路面積以下となるように設定されている。
【0079】
また、集塵アダプタ70には、第2接続壁72Rの下端部と連結筒部72Jにおける後壁の下端部とを連結するカバー部72Sが形成されている。カバー部72Sは、インナカバー27のカバー開口部27Jにおける最も前側(丸鋸刃12の回転方向上流側)に配置された開口孔部27J1の上側に配置されて、当該開口孔部27J1を上側から閉塞している。これにより、集塵アダプタ70をインナカバー27に装着したときのカバー開口部27Jの開口面積が、集塵ケース60をインナカバー27に装着したときのカバー開口部27Jの開口面積よりも小さくなるように構成されている。
【0080】
(作用効果) 次に、集塵ケース60及び集塵アダプタ70を工具本体20に装着したときの切粉の集塵について説明しつつ、本実施の形態の作用及び効果について説明する。
【0081】
上記のように構成された丸鋸10の使用時には、ベース22を加工材上に載置すると共に、トリガ30を引き操作する。これにより、モータ47が駆動すると共に、モータ47の駆動力が丸鋸刃12に伝達されて、丸鋸刃12が出力軸50と共に回転する。そして、丸鋸10を前方側へ移動させることで、加工材に対して切断加工が施される。
【0082】
(集塵ケース60を用いた集塵について) 加工材に対する切断加工時には、丸鋸刃12の回転力によって、切断加工時に生じる切粉が、丸鋸刃12の上側へ巻き上げられる。また、丸鋸刃12の回転力や切粉の移動によって、工具収容空間28から集塵ケース60内へ流れる空気流が生じる。これにより、図7及び図10に示されるように、切粉が空気と共に、集塵ケース60内に流入される。集塵ケース60内部を流れる空気をAR1として図示する。空気AR1は、矢印のように集塵ケース60内部を流れる。具体的には、切粉が、空気AR1と共に、インナカバー27の切粉排出部27Eから集塵ケース60の流入路62R内に流入される。そして、流入路62R内に流入された切粉及び空気AR1が、集塵室入口部62L1から集塵室62J内に排出されて、切粉が集塵室62Jに溜められる。より具体的には、集塵室入口部62L1から集塵室62Jに入った切粉はケース底壁62Aの上側に堆積するようにして溜められる。また、集塵室62J内に送られた空気AR1は、集塵室出口部62L2から排気路62Tへ排気される。そして、排気路62Tへ排気された空気AR1が、インナカバー27のカバー開口部27Jを介して工具収容空間28内に排気される。
【0083】
本発明にかかる集塵の様子を、図14を用いてより詳細に説明する。図14には、本発明の集塵構造を構成するインナカバー27と集塵ケース60を記載するとともに、鋸刃12を記載する。また、図14は本発明の集塵構造(インナカバー27と集塵ケース60)をガイド壁62Pよりも右側かつケース区画壁62H右端よりも左側を通る前後上下に延びる平面で切った断面図を右側から見た状態を示す。図14には、加工によって生じた切粉(加工片)と空気が流れて集塵室62Jに移動する際に通過する通路を流入部S1として記載し、集塵室62Jから集塵構造の外部(工具収容空間28)に空気が流れる際の通路を流出部S2として記載する。また、流入部S1及び流出部S2に対して空間的に分かれていることを分かりやすくするために集塵室62Jを集塵空間S3として記載する。流入部S1は切粉排出部27Eの下端開口から集塵室出入口部62L(集塵室入口部62L1)に至る空間であり、切粉排出部27Eと切粉排出口27Hとケース入口部62M1と流入路62Rと集塵室入口部62L1を含む。切粉排出部27Eの下端開口が本発明における流入入口部(流入部始端)であり、集塵室入口部62L1が本発明における流入出口部(流入部終端)である。流出部S2は集塵室出入口部62L(集塵室出口部62L2)からカバー開口部27Jに至る空間であり、集塵室出口部62L2と排気路62Tとケース出口部62M2とカバー開口部27Jを含む。集塵室出口部62L2が本発明における流出入口部(流出部始端)であり、カバー開口部27Jが本発明における流出出口部(流出部終端)である。流入部S1と流出部S2は、本発明における移送部の一部であり、集塵室62J(集塵空間S3)は、本発明における貯留部の一例である。流入部S1と流出部S2は、切粉または空気が移動して通過する空間(通路)である。図14に示すように、流入部S1と流出部S2は、分割壁62Nとガイド壁62Pによって区画されている。流入部S1と流出部S2は、ガイド壁62Pによって左右に区画されている。ガイド壁62Pによって区画されている領域を分かりやすく示すため、図14におけるガイド壁62Pの領域を点のパターンで塗りつぶしている。また、流入部S1と流出部S2は、分割壁62Nによって前後及び上下に区画されている。流入部S1は鎖線で示す。流出部S2は点線で示す。集塵空間S3は1点鎖線で示す。
【0084】
丸鋸10は前方へ向かって切断作業を行う作業機であり、切粉は先端工具の作業方向端部(前端)周辺にて発生する。作業箇所に対する視認性の悪化や本体の大型化に起因する作業性の悪化を抑制するためにも、切粉を集塵(貯留)する部分は、少なくともその大部分を切粉発生箇所よりも後方の領域に設けることが好ましい。また、重力作用を利用して切粉を集塵するために、集塵室は少なくとも下側に底部を有するような容器形状にする必要がある。従って、本発明における集塵構造については、集塵構造(集塵ケース60)の下部(ケース底壁62A)に接続されて上方へ向かって延びるケース区画壁62Hを設けることで、集塵室62J(集塵空間S3)と移送部(流入部S1、流出部S2)を仕切るとともに、集塵室62Jを容器状に形成している。また、ケース区画壁62Hは上方へ延びる一方、ケース上壁62Dには接続されないように構成されており、これによって連通部としての集塵室出入口部62Lが形成される。従って、工具挿通部22Bの下部で発生した切粉は、切断の勢いと鋸刃12の回転によって生じる空気の流れによって上方へ移動して切粉排出部27Eを通り、流入路62Rを通ってケース区画壁62Hの上端の上下位置P1(高さ)を超えて上方に移動し、そこから後方に移動してケース区画壁62Hの上端の前後位置P2を超える。切粉は前後位置P2より後方に位置した時点で、重力作用によって集塵室62Jに保持される。逆に言えば、前後位置P2より前方に位置する状態で、切粉の勢いや移動の補助となる空気の流れが無くなった場合、切粉は流入路62Rの内部を下方に移動して工具収容空間28に排出されてしまい、集塵されない。したがって、好適な集塵を実現する場合には、前後位置P2よりも後方に切粉を移動させることが重要である。集塵室62J(S3)内部に流入した空気は流出部S2によって集塵室62J(S3)の外部へ移出される。
【0085】
このように、集塵ケース60を装着した丸鋸10においては、工具収容空間28内の切粉を集塵ケース60の集塵室62J側へ送るための切粉排出口27Hと、集塵室62Jから排気された空気AR1を工具収容空間28内に送るためのカバー開口部27Jと、がインナカバー27に形成されている。また、集塵ケース60には、切粉排出口27Hから排出された切粉を集塵室62Jへ送るための集塵室入口部62L1と、集塵室62J内の空気AR1をカバー開口部27Jへ送るための集塵室出口部62L2と、が形成されている。これにより、工具収容空間28内の切粉を、切粉排出口27H及び集塵室入口部62L1を介して集塵室62J内に送って、集塵室62J内に溜めることができる。また、切粉と共に集塵室62J内に送られた空気AR1を、集塵室出口部62L2及びカバー開口部27Jを介して、工具収容空間28側へ送ることができる。すなわち、切断加工時に切粉と共に集塵ケース60内に送られる空気AR1を、工具収容空間28に戻すことができる。これにより、集塵室62Jの圧力が高くなることを抑制できる。また、集塵構造の前方部分に流入部S1と流出部S2を集約したので、集塵室62J(S3)の内部空間を確保することが容易となる。仮に鋸刃12の中心(出力軸50の軸心)よりも後方にカバー開口部27Jを設ける場合、集塵室62Jの下部に空気の通路を設ける必要性が高まり、これによって集塵室62Jの内部空間が小さくなったり、または集塵ケース60が上方へ大型化したりする恐れがあるが、本実施の形態によればこのような事態を抑制することができる。
【0086】
しかも、集塵室入口部62L1及び集塵室出口部62L2が、ケース区画壁62Hの上端の上下位置P1(高さ)よりも上方に位置している。このため、本実施の形態のように集塵室入口部62L1及び集塵室出口部62L2より下方に集塵空間を形成した場合において、集塵空間(集塵室62J)の容積を大きく確保することが可能となり、集塵室入口部62L1から集塵室62J内に排出される切粉が集塵室62Jから集塵室出口部62L2へ逆流することを抑制できる。以上により、本実施の形態の丸鋸10によれば、好適に切粉を集塵室62J内に集塵することができる。さらに、集塵ケース60の下部から上方へ延在するケース区画壁62Hは、前方に傾斜するように構成されている。換言すれば、ケース区画壁62Hの上端は下端よりも前方に位置している。これにより、集塵室62J内の空間をより大きく確保することができる。なお、丸鋸刃12の突出量が最小となった場合でも、ケース区画壁62Hは水平(ベース22の摺動面22Aと平行)になることがないようになっており、粉塵の漏れを抑制できる。
【0087】
また、上述のように、集塵ケース60を工具本体20に装着した場合には、切断加工時に集塵室62J内に送られる空気AR1が、インナカバー27の内部の工具収容空間28に戻される。このため、例えば、集塵室62J内に送られる空気AR1をケース右壁62Bやケース上壁62Dからケース本体62の外部へ排気する構成と比べて、排気される空気AR1によって作業者の作業が阻害されることを抑制できる。具体的には、ケース右壁62Bやケース上壁62Dから空気を排出する場合、周囲に堆積した粉塵等を飛散させる恐れがあるが、本実施の形態ではこういったことを抑制することができる。これにより、当該排気形態と比べて、切断加工時における作業性を向上することができる。
【0088】
また、図14等に示すように、集塵室入口部62L1及び集塵室出口部62L2は、上下方向においてオーバーラップするように構成されている。すなわち、集塵室入口部62L1及び集塵室出口部62L2は、少なくとも一部が上下方向において同様の位置にあるように構成されている。なお、丸鋸刃12の突出量が最小となった場合でもこの位置関係は維持される。こうすることで、集塵室62Jの外部との連通口となる集塵室出入口部62Lの下端位置を上方に位置させやすくなり、集塵室62Jの内部空間を大きく確保することができる。さらに、集塵室入口部62L1及び集塵室出口部62L2は、少なくとも一部が左右方向において異なる位置にあるように構成されている。換言すれば、集塵室入口部62L1と集塵室出口部62L2の左右方向一端の位置が、相互に異なるように構成されている。こうすることで、図10に示すように、集塵室62J内の空気の流れが左右方向の一方側から他方側へ流れるように構成することが容易となる。従って、集塵室入口部62L1から流入し、重力作用によって後方かつ下方へ移動する切粉の流れと、集塵室62J内から前方かつ上方に集塵室出口部62L2へ移動する空気の流れとが干渉することを抑制することができ、円滑な空気AR1の流れを実現することができる。特に、集塵室入口部62L1と集塵室出口部62L2は流入と流出のバランスのために面積や形状と略同様としているため、一方の左右方向一端位置を他方と異ならせることで中心位置を左右方向で異ならせる(ずらす)ことができ、左右方向に移動する空気の流れを容易に形成することができる。本実施の形態においては、集塵室入口部62L1と集塵室出口部62L2は左右方向に並んで配置、つまり左右方向に完全にずれた位置で隣り合うように配置されており、これによって好適な空気AR1の流れとコンパクトな集塵ケース60を実現しているが、集塵室入口部62L1と集塵室出口部62L2は左右方向で完全にずれていなくてもよく、また隣り合わずに左右方向で一定の距離だけ離間するように構成してもよい。
【0089】
さらに、集塵室入口部62L1及び集塵室出口部62L2は、左右方向に並んで配置されているため、ハウジング24をベース22に対して右側へ傾倒させていない状態では、丸鋸10の初期状態及び最小突出状態の何れの状態でも、集塵室入口部62L1及び集塵室出口部62L2を、上下方向において同じ位置に配置することができる。これにより、集塵室入口部62L1から集塵室62J内に排出される切粉が集塵室62Jから集塵室出口部62L2へ逆流することを効果的に抑制できる。また、集塵室入口部62L1及び集塵室出口部62L2を、左右方向に並べて配置することで、上下に並べた場合と比較して上下方向における集塵ケース60の体格の大型化を抑制できる。また、集塵室入口部62L1及び集塵室出口部62L2を左右方向に並べて配置することで、左右方向で離間した位置にそれぞれを配置した場合と比較して左右方向における集塵ケース60の体格の大型化を抑制できる。
【0090】
このように、本実施の形態においては、集塵室入口部62L1及び集塵室出口部62L2の少なくとも一部を上下方向で同様の位置にすることと、集塵室入口部62L1及び集塵室出口部62L2の少なくとも一部を左右方向で異ならせることで、集塵室62Jの容量確保と空気AR1の円滑な流れの両方を実現しているが、いずれか一方だけでも集塵性能を向上させることが可能である。これらの特徴は、集塵室入口部62L1と集塵室出口部62L2の、左右方向における一端(左端または右端)の位置を異ならせることで実現することができる。インナカバー27は鋸刃12の外周の一部を覆うものであるところ、左右方向への幅は大きくないため、切粉排出口27Hとカバー開口部27Jとは左右方向ではなく前後方向に隣接、または離間して設けられることとなる。前方に位置する切粉排出口27Hとカバー開口部27Jと容器状となる集塵室62Jとを空間的に接続するため、切粉排出口27H及びカバー開口部27Jから集塵室62Jへ向かう通路は上方かつ後方に延びるように構成する必要がある。ここで、前後方向の位置が異なる切粉排出口27H及びカバー開口部27Jのそれぞれから上方かつ後方に向かう通路を設ける場合、通常であれば、切粉排出口27Hの後方に位置するカバー開口部27Jから集塵室62Jに至る通路は、切粉排出口27Hから集塵室62Jに至る通路の内側(後方側かつ下方側)に形成され、集塵室入口部62L1及び集塵室出口部62L2は左右方向の位置を同様にしながら上下に並んで配置されることとなる。しかし、本実施の形態においては、ガイド壁62Pによって、集塵室入口部62L1と集塵室出口部62L2の左右方向一端位置を異ならせている。これによって、集塵室62Jの容量が確保された構成や、空気AR1の円滑な流れを実現した構成を採ることが容易となる。
【0091】
また、インナカバー27では、切粉排出口27Hが、カバー開口部27Jに対して丸鋸刃12の回転方向上流側に配置されている。すなわち、切粉排出口27Hに対して丸鋸刃12の回転方向下流側において、空気AR1がカバー開口部27Jから工具収容空間28内に排気される。このため、切粉排出口27Hから集塵ケース60内への切粉の排出が、工具収容空間28内に排気される空気AR1によって阻害されることを抑制できる。これにより、集塵ケース60の空気AR1を排気するためのカバー開口部27Jをインナカバー27に設けても、切粉を切粉排出口27Hから集塵ケース60側へ効率よく排出することができる。
【0092】
また、インナカバー27の工具収容空間28の上端部には、仕切壁27Fが設けられており、仕切壁27Fが切粉排出口27Hとカバー開口部27Jとの間に配置されている。これにより、カバー開口部27Jから工具収容空間28内に排気される空気AR1が、切粉排出部27E側へ流出されることを抑制できる。このため、この点においても、切粉排出口27Hから集塵ケース60内への切粉の排出が、工具収容空間28内に排気される空気AR1によって阻害されることを抑制できる。また、カバー開口部27Jは、複数の開口孔部27J1によって構成されている。このため、インナカバー27の丸鋸刃12に対するカバー性を確保しつつ、集塵ケース60の空気AR1を排気するためのカバー開口部27Jをインナカバー27に設けることができる。また、集塵室入口部62L1の開口面積が、集塵室出口部62L2の開口面積の80%~120%に設定されている。これにより、集塵室入口部62L1の開口面積と集塵室出口部62L2の開口面積とを略同じ面積に設定することができる。換言すると、集塵室入口部62L1の開口面積と集塵室出口部62L2の開口面積との比率が過度に大きくなることを抑制できる。したがって、切粉を流入路62Rから集塵室62J内に効率よく排出させることができ、空気AR1を集塵室62Jから排気路62Tへ効率よく排気させることができる。
【0093】
また、集塵ケース60には、流入路62Rが設けられており、流入路62Rによって切粉排出口27H及び集塵室入口部62L1が連通されている。さらに、集塵ケース60には、排気路62Tが設けられており、排気路62Tによってカバー開口部27J及び集塵室出口部62L2が連通されている。そして、集塵室62Jが流入路62R及び排気路62Tの後側(丸鋸刃12の回転方向下流側)に配置されている。このため、切粉排出口27Hから集塵ケース60に排出される切粉及び空気AR1を、集塵室62J内に良好に送ることができる。また、集塵室入口部62L1から集塵室62J内に排出される切粉が、排気路62Tへ逆流することを効果的に抑制しつつ、空気AR1を排気路62Tから工具収容空間28内へ排気させることができる。
【0094】
また、流入路62Rには、ガイド壁62Pが設けられており、ガイド壁62Pは、平面視で、後側(集塵室62J側)へ向かうに従い右側へ傾斜している。このため、集塵室62Jに送られる切粉及び空気AR1が、ガイド壁62Pによってガイドされて、集塵室入口部62L1から右斜め後方へ排出される。すなわち、切粉及び空気AR1が、集塵室出口部62L2に対して遠ざかるように集塵室入口部62L1から排出される。このため、集塵室入口部62L1から排出される切粉及び空気AR1の集塵室出口部62L2への逆流を効果的に抑制することができる。
【0095】
また、ガイド壁62Pは、上述のように、平面視で、後側へ向かうに従い右側へ傾斜しているため、流入路62Rの流路面積が、集塵室入口部62L1側へ向かうに従い小さくなっている。このため、集塵室入口部62L1から集塵室62Jへ排出される空気流の流速を速くすることができる。したがって、集塵室入口部62L1から排出される切粉及び空気AR1の集塵室出口部62L2への逆流を一層効果的に抑制することができる。
【0096】
また、集塵室入口部62L1及び集塵室出口部62L2は、集塵室62Jを構成するケース上壁62Dの下側に隣接配置されている。すなわち、集塵室62Jの上端部に、集塵室入口部62L1及び集塵室出口部62L2が配置されている。これにより、集塵室62J内に溜められる切粉によって、集塵室入口部62L1及び集塵室出口部62L2が塞がれることを抑制できる。
【0097】
(集塵アダプタ70を用いた集塵について) 集塵アダプタ70を用いた集塵では、集塵アダプタ70におけるアダプタ接続部74の上端部に集塵装置のホースが接続される。そして、集塵装置が作動することで、工具収容空間28内の切粉及び空気が、集塵アダプタ70を介して集塵装置に吸引される。
【0098】
具体的には、図16に示されるように、丸鋸刃12によって巻き上げられた切粉及び空気AR2が、工具収容空間28からインナカバー27の切粉排出部27Eへ挿入され、切粉排出部27Eから集塵アダプタ70のメイン吸引路70B内に排出される。そして、メイン吸引路70B内に排出された切粉及び空気AR2が、アダプタ接続部74の上端部から集塵装置へ排出される。また、工具収容空間28内において、切粉排出部27Eに挿入されなかった切粉が、空気AR3と共に、インナカバー27のカバー開口部27Jから集塵アダプタ70のサブ吸引路70A内に排出される。サブ吸引路70A内に排出された切粉及び空気AR3は、サブ吸引路70Aの連通孔72Mからメイン吸引路70Bへ排出されて、メイン吸引路70B内の切粉及び空気AR2と合流する。これにより、メイン吸引路70B内に排出された切粉及び空気AR3が、アダプタ接続部74の上端部から集塵装置へ排出される。
【0099】
このように、丸鋸10において集塵アダプタ70を装着した場合では、インナカバー27の切粉排出口27Hと接続されたメイン吸引路70Bが集塵アダプタ70に設けられている。メイン吸引路70Bは、切粉排出口27Hと共に第1集塵路76を構成しており、第1集塵路76は、工具収容空間28と集塵アダプタ70の外部とを連通している。また、集塵アダプタ70には、インナカバー27のカバー開口部27J及びメイン吸引路70Bと接続されたサブ吸引路70Aが設けられている。サブ吸引路70Aは、カバー開口部27Jと共に第2集塵路78を構成しており、第2集塵路78は、工具収容空間28とメイン吸引路70Bとを連通している。これにより、切断加工時において、工具収容空間28内の切粉を、メイン吸引路70B及びサブ吸引路70A内に吸引して、集塵アダプタ70の外部へ排出することができる。すなわち、インナカバー27の切粉排出部27Eに挿入されなかった切粉を、カバー開口部27Jからサブ吸引路70Aに吸引して、集塵アダプタ70の外部へ排出することができる。
【0100】
ここで、第2集塵路78の最小流路面積が、第1集塵路76の最小流路面積以下に設定されている。具体的には、サブ吸引路70Aの連通孔72Mの面積が、インナカバー27の切粉排出口27Hの面積以下に設定されている。これにより、丸鋸刃12の前端部から巻き上げられた切粉が主に挿入される第1集塵路76の吸引力の低下を抑制しつつ、切粉を第1集塵路76から集塵アダプタ70の外部へ排出することができる。また、メイン吸引路70B内に挿入されず丸鋸刃12の回転方向下流側に流れる切粉を、第2集塵路78よって吸引し、第1集塵路76のメイン吸引路70Bに排出することができる。したがって、切粉に対する集塵効率を高くしつつ、好適な集塵構造にすることができる。
【0101】
また、インナカバー27の工具収容空間28の上端部には、仕切壁27Fが設けられており、仕切壁27Fが切粉排出口27Hとカバー開口部27Jとの間に配置されている。このため、丸鋸刃12によって巻き上げられた切粉を、仕切壁27Fによって切粉排出口27H側へガイドすることができる。したがって、丸鋸刃12によって巻き上げられた切粉を、主として、集塵効率の高い第1集塵路76へ導くことができる。
【0102】
また、インナカバー27のカバー開口部27Jは、複数の開口孔部27J1によって構成されており、開口孔部27J1が前後方向に並んで配置されている。これにより、カバー開口部27Jの開口面積が、切粉排出口27Hの開口面積よりも大きくなることを抑制しつつ、カバー開口部27Jを前後方向において比較的広範囲に配置することができる。したがって、切粉排出口27Hに挿入されなかった切粉を、切粉排出口27Hに対して丸鋸刃12の回転方向下流側において、丸鋸刃12の回転方向の比較的広範囲に亘って吸引することができる。
【0103】
また、丸鋸10では、集塵ケース60及び集塵アダプタ70が、インナカバー27に着脱可能に構成されており、切粉に対する集塵形態に応じて、集塵ケース60及び集塵アダプタ70の一方が、インナカバー27に装着されるようになっている。そして、集塵ケース60のインナカバー27への装着時には、上述のように、切粉がインナカバー27の切粉排出部27Eから集塵ケース60側へ排出され、集塵ケース60からの空気AR1がインナカバー27のカバー開口部27Jから工具収容空間28内に排気される。一方、集塵アダプタ70のインナカバー27への装着時には、上述のように、切粉がインナカバー27の切粉排出部27E及びカバー開口部27Jから集塵アダプタ70側へ排出される。すなわち、カバー開口部27Jが、装着される集塵ケース60及び集塵アダプタ70に応じて、切粉を工具収容空間28の外部へ排出させるための排出部又は空気を工具収容空間28内へ排気させるための排気部として機能する。これにより、異なる集塵器(集塵ケース60及び集塵アダプタ70)をインナカバー27に取付けることができると共に、異なる態様の集塵方法に対応することができる。したがって、好適な集塵構造を有することができる。
【0104】
また、集塵アダプタ70には、カバー部72Sが設けられており、カバー部72Sは、インナカバー27のカバー開口部27Jの一部を閉塞している。このため、集塵アダプタ70をインナカバー27に装着したときのカバー開口部27Jの開口面積を、集塵ケース60をインナカバー27に装着したときと比べて、小さくすることができる。これにより、異なる形態の集塵器が装着されるインナカバー27において、異なる態様の集塵方法に対応して、カバー開口部27Jの開口面積を変更することができる。すなわち、排出部として機能させるときのカバー開口部27Jの開口面積を、排気部として機能させるときのカバー開口部27Jの開口面積よりも小さく設定することができる。これにより、集塵アダプタ70においてメイン吸引路70Bの吸引力の低下を抑制して、切粉を集塵することができる。
【0105】
しかも、カバー部72Sが、カバー開口部27Jにおける最も前側に配置された開口孔部27J1を閉塞している。このため、インナカバー27の切粉排出部27Eへ挿入されなかった切粉を、カバー開口部27Jから集塵アダプタ70のサブ吸引路70A内に良好に吸引することができる。すなわち、インナカバー27では、仕切壁27Fが切粉排出口27Hとカバー開口部27Jとの間に配置されているため、切粉排出部27Eに挿入されなかった切粉は、仕切壁27Fの下側を超えて丸鋸刃12の回転方向下流側へ流れる。このため、仕切壁27Fの下側を超えて下流側へ流れる切粉は、カバー開口部27Jの最も前側に配置された開口孔部27J1に入り難くなる。これにより、後側の開口孔部27J1をカバー部72Sによって閉塞する構成と比べて、切粉排出部27Eへ挿入しきれなかった切粉をカバー開口部27Jからサブ吸引路70A内に良好に送ることができる。
【0106】
なお、本実施の形態では、丸鋸10の初期状態及び最小突出状態の何れの状態でも、集塵ケース60の集塵室入口部62L1及び集塵室出口部62L2の全体が、上下方向において、オーバーラップする位置に配置されているが、集塵室入口部62L1の一部及び集塵室出口部62L2の一部が、上下方向においてオーバーラップする位置に配置されていればよい。
【0107】
また、本実施の形態では、集塵ケース60の集塵室入口部62L1及び集塵室出口部62L2が、左右方向に並んで配置されている。すなわち、集塵室入口部62L1及び集塵室出口部62L2の前後位置が一致している。これに代えて、集塵室入口部62L1及び集塵室出口部62L2の前後位置をずらしてもよい。
【0108】
また、本実施の形態では、丸鋸10の初期状態及び最小突出状態の何れの状態でも、集塵ケース60の集塵室入口部62L1及び集塵室出口部62L2の全体が、上下方向において、オーバーラップする位置に配置されているが、少なくとも初期状態において、集塵室入口部62L1及び集塵室出口部62L2を、上下方向においてオーバーラップする位置に配置させてもよい。
【0109】
また、本実施の形態では、集塵室入口部62L1及び集塵室出口部62L2が、ケース区画壁62Hの上端部に形成されているが、集塵室入口部62L1及び集塵室出口部62L2の上下位置は、少なくとも一部が上下方向で相互にオーバーラップしていれば任意に変更可能である。例えば、集塵室入口部62L1及び集塵室出口部62L2をケース区画壁62Hの上下方向中間部に配置してもよい。
【0110】
また、本実施の形態では、インナカバー27におけるカバー開口部27Jの複数の開口孔部27J1が、左右方向を長手方向とする長孔状に形成されて、前後方向に並んで配置されている。これに代えて、開口孔部27J1を、前後方向を長手方向とする長孔状に形成されて、左右方向に並べてもよい。
【符号の説明】
【0111】
10…丸鋸(作業機)、12…丸鋸刃(先端工具)、22…ベース、22B…工具挿通部(貫通孔)、25A…ソーカバー部(カバー部材)、27…インナカバー(カバー部材)、27H…切粉排出口(第1開口部)、27J…カバー開口部(第2開口部)、27J1…開口孔部(孔)、33…調整機構、47…モータ、60…集塵ケース、62A…ケース底壁、62B…ケース右壁(ケース側壁)、62C…ケース左壁(ケース側壁)、62D…ケース上壁、62L1…集塵室入口部(入口部)、62L2…集塵室出口部(出口部)、62P…ガイド壁(ガイド部)、62R…流入路、62T…排気路
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