(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】バリアフィルム、並びに、これを用いた波長変換シート、バックライト及び液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20240910BHJP
G02F 1/13357 20060101ALI20240910BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
G02B5/20
G02F1/13357
G02F1/1335
(21)【出願番号】P 2022543357
(86)(22)【出願日】2021-08-03
(86)【国際出願番号】 JP2021028689
(87)【国際公開番号】W WO2022039015
(87)【国際公開日】2022-02-24
【審査請求日】2024-04-19
(31)【優先権主張番号】P 2020138751
(32)【優先日】2020-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 達司
(72)【発明者】
【氏名】原田 龍太郎
(72)【発明者】
【氏名】坂本 武士
(72)【発明者】
【氏名】田村 修一
(72)【発明者】
【氏名】春木 暁人
(72)【発明者】
【氏名】山西 祥多
(72)【発明者】
【氏名】安井 涼馬
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-181900(JP,A)
【文献】特開2019-171661(JP,A)
【文献】特開2017-094557(JP,A)
【文献】特開2016-213369(JP,A)
【文献】特開2007-073219(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1421973(KR,B1)
【文献】特開2020-019141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
G02F 1/13357
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性基材上に、無機酸化物層A、有機被覆層B、無機酸化物層C、及び有機被覆層Dをこの順に有してなり、
前記光透過性基材、前記無機酸化物層A、前記有機被覆層B、前記無機酸化物層C、及び前記有機被覆層Dの屈折率を、それぞれ、n
0、n
A、n
B、n
C、及びn
Dと定義し、
前記光透過性基材、前記無機酸化物層A、前記有機被覆層B、前記無機酸化物層C、及び前記有機被覆層Dの厚みを、それぞれ、t
0、t
A、t
B、t
C、及びt
Dと定義した際に、
n
A及びn
Cがn
B及びn
Dよりも大きく、かつ、
前記無機酸化物層Aと前記有機被覆層Bとの界面の反射率が、前記光透過性基材と前記無機酸化物層Aとの界面の反射率よりも大きく、さらに、
下記式1で示されるd
1が、x±0.10の範囲を示す(但し、xは2~13の整数)、
波長変換シート用のバリアフィルム。
(式1)
d
1=n
B×t
B/112.5nm+n
D×t
D/112.5nm
【請求項2】
前記式1で示されるd
1が、x±0.10の範囲を示す(但し、xは3~13の奇数の整数)、請求項1に記載のバリアフィルム。
【請求項3】
前記式1で示されるd
1が、x~x+0.10の範囲を示す(但し、xは3~13の奇数の整数)、請求項1に記載のバリアフィルム。
【請求項4】
前記有機被覆層Dの前記無機酸化物層Cとは反対側にプライマー層Eを有し、
前記プライマー層Eの屈折率をn
Eと定義し、前記プライマー層Eの厚みをt
Eと定義した際に、
下記式2で示されるd
2が、y±0.10の範囲を示す(但し、yは4~27の整数)、
請求項1に記載のバリアフィルム。
(式2)
d
2=n
B×t
B/112.5nm+n
D×t
D/112.5nm+n
E×t
E/112.5nm
【請求項5】
前記式2で示されるd
2が、y±0.10の範囲を示す(但し、yは5~27の奇数の整数)、請求項4に記載のバリアフィルム。
【請求項6】
前記式2で示されるd
2が、y~y+0.10の範囲を示す(但し、yは5~27の奇数の整数)、請求項4に記載のバリアフィルム
【請求項7】
n
E/n
Dが0.95以上1.05以下である、請求項4~6の何れかに記載のバリアフィルム。
【請求項8】
t
Eが70nm以上1000nm以下である、請求項4~7の何れかに記載のバリアフィルム。
【請求項9】
t
A及びt
Cが、それぞれ6nm以上25nm以下である、請求項1~8の何れかに記載のバリアフィルム。
【請求項10】
t
B及びt
Dが、それぞれ70nm以上480nm以下である、請求項1~9の何れかに記載のバリアフィルム。
【請求項11】
t
0が5μm以上である、請求項1~10の何れかに記載のバリアフィルム。
【請求項12】
前記無機酸化物層A及び前記無機酸化物層Cが酸化アルミニウムを含む、請求項1~11の何れかに記載のバリアフィルム。
【請求項13】
前記有機被覆層B及び前記有機被覆層Dがポリビニルアルコールを含む、請求項1~12の何れかに記載のバリアフィルム。
【請求項14】
量子ドットを含む量子ドット含有層と、前記量子ドット含有層の両側に積層されてなるバリアフィルムを有する波長変換シートであって、前記バリアフィルムとして、請求項1~13の何れかに記載のバリアフィルムの光透過性基材とは反対側の面が前記量子ドット含有層側を向くように積層してなる、波長変換シート。
【請求項15】
前記バリアフィルムが請求項1~3の何れかに記載のバリアフィルムであり、前記バリアフィルムの前記量子ドット含有層と接する層が前記有機被覆層Dであり、前記量子ドット含有層の屈折率をn
Zと定義した際に、下記(i-1)を満たす、請求項14に記載の波長変換シート。
(i-1)n
D>n
Zであり、かつ、前記式1で示されるd
1が、x±0.10の範囲を示す(但し、xは3~13の奇数の整数)。
【請求項16】
前記バリアフィルムが請求項4~8の何れかに記載のバリアフィルムであり、前記バリアフィルムの前記量子ドット含有層と接する層が前記プライマー層Eであり、前記量子ドット含有層の屈折率をn
Zと定義した際に、下記(ii-1)を満たす、請求項14に記載の波長変換シート。
(ii-1)n
E>n
Zであり、かつ、前記式2で示されるd
2が、y±0.10の範囲を示す(但し、yは5~27の奇数の整数)。
【請求項17】
一次光を放出する少なくとも1つの光源と、前記光源に隣接して配置され、導光又は拡散のための光学板と、前記光学板の光出射側に配置された波長変換シートとを備えたバックライトにおいて、前記波長変換シートが請求項14~16の何れかに記載の波長変換シートであるバックライト。
【請求項18】
バックライト及び液晶パネルを備えた液晶表示装置であって、前記バックライトが請求項17に記載のバックライトである液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バリアフィルム、並びに、これを用いた波長変換シート、バックライト及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯用パーソナルコンピューター等のパーソナルコンピューターの発達に伴って、液晶表示装置の需要が増加している。また、最近においては家庭用の液晶テレビの普及率も高まっており、さらには、スマートフォン、タブレット端末も広く普及しつつある。このため、液晶表示装置の市場はさらに拡大する状況にある。
このような液晶表示装置は、一般的に、カラーフィルタ、液晶セル及びバックライトを有する構成からなる。また、液晶表示装置は、一般的に、液晶セル内の液晶層のシャッター機能により光の強弱をコントロールし、カラーフィルタにより各画素の色をR、G、Bの三原色に分けて表示することにより、画像を表示するものである。
【0003】
液晶表示装置のバックライトの光源としては、従前は、冷陰極管が用いられてきた。しかし、低消費電力及び少スペースの観点から、バックライトの光源は、冷陰極管からLEDに切り替えられている。
通常のバックライトの光源として使用されるLEDは、青色LEDと、YAG系黄色蛍光体とを組み合わせてなる白色LEDとよばれるものを用いている。かかる白色LEDは、発光波長のスペクトル分布がブロードであり、疑似白色とよばれている。
【0004】
一方、近年では、量子ドットの技術を用いたバックライトの開発も進められている。量子ドットとは、半導体のナノメートルサイズの微粒子をいう。
量子ドットを用いたバックライトの基本構成は、一次光を生じる光源(青色光を放出する青色LED等)と、量子ドットとを組み合わせたものである。
【0005】
量子ドットは、例えば、CdSeであるコアとZnSであるシェルにより構成される半導体微粒子と、シェルの周辺を覆うリガンドにより構成されるナノサイズの化合物半導体微粒子である。量子ドットは、その粒子径が化合物半導体の励起子のボーア半径よりも小さいため、量子閉じ込め効果が現れる。そのため、量子ドットの発光効率は、従来用いられている希土類イオンを賦活剤とする蛍光体よりも高く、90%以上の高発光効率を実現することができる。
また、量子ドットの発光波長は、このように量子化された化合物半導体微粒子のバンドギャップエネルギーにより決まるため、量子ドットの粒径を変化させることで、任意の発光スペクトルを得ることができる。これらの量子ドットと青色LED等とを組み合わせたバックライトは、高発光効率で高い色純度を実現することが可能とされている(例えば、特許文献1~2参照)。
【0006】
量子ドットは上記の優れた特徴を備える一方で、水分、酸素等影響により劣化しやすいという問題がある。このため、量子ドット含有層の両側の面はバリアフィルムにより保護することが好ましい。
特許文献3及び4には、基材、無機酸化物層及び有機被覆層を有するバリアフィルムによって量子ドット含有層を保護してなる波長変換シートが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2012/132239号
【文献】特開2015-18131号公報
【文献】特開2019-126924号公報
【文献】特開2020-19141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献3及び4の波長変換シートを用いた液晶表示装置は、継続して使用している間に、初期とは異なった色味の画像が視認されるケースが散見された。すなわち、特許文献3及び4の波長変換シートを用いた液晶表示装置は、初期の時点と任意の時点とを比較した際に、色味が大きく異なるケースが散見された。量子ドットは、色純度を高めることを特徴とするものである。このため、量子ドットを用いた液晶表示装置の色味が安定しないことは、液晶表示装置の特徴が損なわれ、品質上極めて重要な問題であった。
【0009】
本開示は、上記問題に鑑み、波長変換シートに適用した際に、色味の変化を抑制し得るバリアフィルムを提供することを目的とする。また、本開示は、前記バリアフィルムを用いた波長変換シート、バックライト及び液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、バリアフィルムを適用した波長変換シートが高湿環境下に晒された際に、バリアフィルムの有機被覆層が膨潤し、バリアフィルムの分光透過スペクトルの波形が変化することによって、色味が変化していることを見出した。
そして、本発明者らはさらに鋭意研究した結果、バックライトの一次光の中心波長を考慮して、バリアフィルムを構成する有機被覆層の屈折率及び厚みを特定の関係とすることにより、バリアフィルムを適用した波長変換シート等の色味の変化を抑制できることを見出した。
【0011】
本開示は、以下の[1]~[18]を提供する。
[1]光透過性基材上に、無機酸化物層A、有機被覆層B、無機酸化物層C、及び有機被覆層Dをこの順に有してなり、
前記光透過性基材、前記無機酸化物層A、前記有機被覆層B、前記無機酸化物層C、及び前記有機被覆層Dの屈折率を、それぞれ、n0、nA、nB、nC、及びnDと定義し、
前記光透過性基材、前記無機酸化物層A、前記有機被覆層B、前記無機酸化物層C、及び前記有機被覆層Dの厚みを、それぞれ、t0、tA、tB、tC、及びtDと定義した際に、
nA及びnCがnB及びnDよりも大きく、かつ、
前記無機酸化物層Aと前記有機被覆層Bとの界面の反射率が、前記光透過性基材と前記無機酸化物層Aとの界面の反射率よりも大きく、さらに、
下記式1で示されるd1が、x±0.10の範囲を示す(但し、xは2~13の整数)、
波長変換シート用のバリアフィルム。
(式1)
d1=nB×tB/112.5nm+nD×tD/112.5nm
[2]前記式1で示されるd1が、x±0.10の範囲を示す(但し、xは3~13の奇数の整数)、[1]に記載のバリアフィルム。
[3]前記式1で示されるd1が、x~x+0.10の範囲を示す(但し、xは3~13の奇数の整数)、[1]に記載のバリアフィルム。
【0012】
[4]前記有機被覆層Dの前記無機酸化物層Cとは反対側にプライマー層Eを有し、
前記プライマー層Eの屈折率をnEと定義し、前記プライマー層Eの厚みをtEと定義した際に、
下記式2で示されるd2が、y±0.10の範囲を示す(但し、yは4~27の整数)、
[1]に記載のバリアフィルム。
(式2)
d2=nB×tB/112.5nm+nD×tD/112.5nm+nE×tE/112.5nm
[5]前記式2で示されるd2が、y±0.10の範囲を示す(但し、yは5~27の奇数の整数)、[4]に記載のバリアフィルム。
[6]前記式2で示されるd2が、y~y+0.10の範囲を示す(但し、yは5~27の奇数の整数)、[4]に記載のバリアフィルム
[7]nE/nDが0.95以上1.05以下である、[4]~[6]の何れかに記載のバリアフィルム。
[8]tEが70nm以上1000nm以下である、[4]~[7]の何れかに記載のバリアフィルム。
【0013】
[9]tA及びtCが、それぞれ6nm以上25nm以下である、[1]~[8]の何れかに記載のバリアフィルム。
[10]tB及びtDが、それぞれ70nm以上480nm以下である、[1]~[9]の何れかに記載のバリアフィルム。
[11]t0が5μm以上である、[1]~[10]の何れかに記載のバリアフィルム。
[12]前記無機酸化物層A及び前記無機酸化物層Cが酸化アルミニウムを含む[1]~[11]の何れかに記載のバリアフィルム。
[13]前記有機被覆層B及び前記有機被覆層Dがポリビニルアルコールを含む、[1]~[12]の何れかに記載のバリアフィルム。
【0014】
[14]量子ドットを含む量子ドット含有層と、前記量子ドット含有層の両側に積層されてなるバリアフィルムを有する波長変換シートであって、前記バリアフィルムとして、[1]~[13]の何れかに記載のバリアフィルムの光透過性基材とは反対側の面が前記量子ドット含有層側を向くように積層してなる、波長変換シート。
[15]前記バリアフィルムが[1]~[3]の何れかに記載のバリアフィルムであり、前記バリアフィルムの前記量子ドット含有層と接する層が前記有機被覆層Dであり、前記量子ドット含有層の屈折率をnZと定義した際に、下記(i-1)を満たす、[14]に記載の波長変換シート。
(i-1)nD>nZであり、かつ、前記式1で示されるd1が、x±0.10の範囲を示す(但し、xは3~13の奇数の整数)。
[16]前記バリアフィルムが[4]~[8]の何れかに記載のバリアフィルムであり、前記バリアフィルムの前記量子ドット含有層と接する層が前記プライマー層Eであり、前記量子ドット含有層の屈折率をnZと定義した際に、下記(ii-1)を満たす、[14]に記載の波長変換シート。
(ii-1)nE>nZであり、かつ、前記式2で示されるd2が、y±0.10の範囲を示す(但し、yは5~27の奇数の整数)。
【0015】
[17]一次光を放出する少なくとも1つの光源と、前記光源に隣接して配置され、導光又は拡散のための光学板と、前記光学板の光出射側に配置された波長変換シートとを備えたバックライトにおいて、前記波長変換シートが[14]~[16]の何れかに記載の波長変換シートであるバックライト。
[18]バックライト及び液晶パネルを備えた液晶表示装置であって、前記バックライトが[17]に記載のバックライトである液晶表示装置。
【発明の効果】
【0016】
本開示のバリアフィルム、並びに、これを用いた波長変換シート、バックライト及び液晶表示装置は、色味の変化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本開示のバリアフィルムの一実施形態を示す断面図である。
【
図2】本開示のバリアフィルムの他の実施形態を示す断面図である。
【
図3】本開示の波長変換シートの一実施形態を示す断面図である。
【
図4】本開示の波長変換シートの他の実施形態を示す断面図である。
【
図5】本開示のバックライトの一実施形態を示す断面図である。
【
図6】本開示のバックライトの他の実施形態を示す断面図である。
【
図7】実施例1のバリアフィルムの分光透過率を示す図である。
【
図8】比較例1のバリアフィルムの分光透過率を示す図である。
【
図9】実施例1のバリアフィルムからプライマー層を除いたバリアフィルムの分光透過率を示す図である。
【
図10】比較例1のバリアフィルムからプライマー層を除いたバリアフィルムの分光透過率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施形態を説明する。
なお、本明細書において、「AA~BB」との表記は、AA以上BB以下であることを意味する。
また、本明細書において、各層の屈折率は、波長632.8nmにおける屈折率を意味するものとする。各層の屈折率は、例えば、反射光度計により測定した反射スペクトルと、フレネル係数を用いた多層薄膜の光学モデルから算出した反射スペクトルとのフィッティングにより算出することができる。
【0019】
[バリアフィルム]
本開示のバリアフィルムは、
光透過性基材上に、無機酸化物層A、有機被覆層B、無機酸化物層C、及び有機被覆層Dをこの順に有してなり、
前記光透過性基材、前記無機酸化物層A、前記有機被覆層B、前記無機酸化物層C、及び前記有機被覆層Dの屈折率を、それぞれ、n0、nA、nB、nC、及びnDと定義し、
前記光透過性基材、前記無機酸化物層A、前記有機被覆層B、前記無機酸化物層C、及び前記有機被覆層Dの厚みを、それぞれ、t0、tA、tB、tC、及びtDと定義した際に、
nA及びnCがnB及びnDよりも大きく、かつ、
前記無機酸化物層Aと前記有機被覆層Bとの界面の反射率が、前記光透過性基材と前記無機酸化物層Aとの界面の反射率よりも大きく、さらに、
下記式1で示されるd1が、x±0.10の範囲を示し(但し、xは2~13の整数)、
波長変換シートに用いられるものである。
(式1)
d1=nB×tB/112.5nm+nD×tD/112.5nm
【0020】
図1及び
図2は、本開示のバリアフィルム(100)の実施形態を示す断面図である。
図1及び
図2のバリアフィルム(100)は、光透過性基材(10)上に、無機酸化物層A(21)、有機被覆層B(31)、無機酸化物層C(22)、及び有機被覆層D(32)をこの順に有している。また、
図2のバリアフィルム(100)は、有機被覆層D(32)の無機酸化物層C(22)とは反対側にプライマー層E(40)を有している。
【0021】
<光透過性基材>
光透過性基材としては、波長変換シートに適用した際に波長変換シートの機能を害することのない樹脂フィルムであれば、特に制限されない。
光透過性基材としては、ポリエステル、トリアセチルセルロース(TAC)、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、アクリル、ポリカーボネート、ポリウレタン及び非晶質オレフィン(Cyclo-Olefin-Polymer:COP)等から選ばれる1種以上の樹脂から形成されてなる樹脂フィルムが挙げられる。
これらの樹脂フィルムの中でも、機械的強度、寸法安定性及び耐熱性の観点からは、延伸加工、特に二軸延伸加工されたポリエステルフィルムが好ましい。ポリエステルフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等が挙げられる。
【0022】
光透過性基材は、樹脂フィルムの単層であっても良く、複数の樹脂フィルムを有するものであってもよい。複数の樹脂フィルムを有する場合、各樹脂フィルムは直接接着したものであっても良いし、接着層を介して接着したものであってもよい。
【0023】
光透過性基材の屈折率n0は、「無機酸化物層Aと有機被覆層Bとの界面の反射率が、光透過性基材と無機酸化物層Aとの界面の反射率よりも大きい」という条件を満たす限り特に限定されないが、1.55以上1.70以下であることが好ましく、1.57以上1.65以下であることがより好ましく、1.60以上1.65以下であることがさらに好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムの屈折率は1.636である。
上記の反射率の大小関係を満たしやすくするため、nAとnBとの差の絶対値が、n0とnAとの差の絶対値よりも大きくなるように、光透過性基材を選定することが好ましい。
なお、nAとnBとの差の絶対値をΔnAB、n0とnAとの差の絶対値をΔn0Aと定義した場合、ΔnAB-Δn0Aは、0.05以上であることが好ましく、0.07以上であることがより好ましい。また、ΔnAB-Δn0Aの上限は特に限定されないが、0.20以下であることが好ましく、0.15以下であることが好ましく、0.12以下であることがさらに好ましい。
【0024】
本明細書において、任意の2つの層の界面の反射率Rは、一方の層の屈折率をn1、他方の層の屈折率をn2と定義した際に、下記の式iで表されるものである。
R(%)=100×(n1-n2)2/(n1+n2)2 (式i)
【0025】
光透過性基材が複数の樹脂フィルムを有する場合、無機酸化物層Aと接する側の樹脂フィルムの屈折率を光透過性基材の屈折率として、光透過性基材と無機酸化物層Aとの界面の反射率を算出すればよい。
【0026】
光透過性基材の厚みt0は、5μm以上であることが好ましく、8μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがさらに好ましい。光透過性基材の厚みを5μm以上とすることにより、バリアフィルムの強度を良好にしやすくできる。また、光透過性基材の厚みを5μm以上とすることにより、光透過性基材の光路長が可視光線の波長よりも十分に大きくなるため、光透過性基材がバリアフィルムの分光透過スペクトルの波形に及ぼす影響を無視しやすくできる。
また、光透過性基材の厚みt0は、薄膜化及び端部からの水蒸気及び酸素の侵入を抑制しやすくする観点から、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることがより好ましく、25μm以下であることがより好ましい。
【0027】
本明細書において、光透過性基材の厚みt0等のバリアフィルムを構成する各層の厚み、並びに、量子ドット含有層の厚みは、例えば、走査型透過電子顕微鏡(STEM)を用いて撮影した断面の画像から20箇所の厚みを測定し、20箇所の値の平均値から算出できる。
【0028】
本明細書において、各層の厚み、分光透過率、全光線透過率、色味(Yxy表色系のx値及びy値)等の各種のパラメータを測定する際は、特に断りのない限り、温度23℃±5℃、相対湿度40%以上65%以下の雰囲気で測定するものとする。さらに、各種のパラメータを測定する前に、サンプルを前記雰囲気に30分以上晒すものとする。
【0029】
なお、本明細書で示す構成要件において、数値の上限の選択肢及び下限の選択肢がそれぞれ複数示されている場合には、上限の選択肢から選ばれる一つと、下限の選択肢から選ばれる一つとを組み合わせ、数値範囲の実施形態とすることができる。例えば、上記の光透過性基材の厚みt0の場合、5μm以上200μm以下、5μm以上25μm以下、8μm以上50μm以下、10μm以上50μm以下、10μm以上25μm以下などの数値範囲の実施形態が挙げられる。
【0030】
2枚の樹脂フィルムで光透過性基材を構成する場合、無機酸化物層Aに近い側の第1の樹脂フィルムの厚みは、5μm以上50μm以下であることが好ましく、8μm以上25μm以下であることがより好ましく、10μm以上20μm以下であることがさらに好ましい。第1の樹脂フィルムが前記厚みであると、無機酸化物層の製造効率を良好にしやすくできるとともに、ハンドリング性を良好にしやすくできる。
また、無機酸化物層Aに遠い側の第2の樹脂フィルムの厚みは、5μm以上150μm以下であることが好ましく、8μm以上100μm以下であることがより好ましく、10μm以上50μm以下がさらに好ましい。第2の樹脂フィルムが前記厚みであると、バリアフィルムのハンドリング性及び剛性のバランスを良好にしやすくできる。
2枚の樹脂フィルムで光透過性基材を構成する場合、2枚の樹脂フィルムを接着層を介して貼り合わせてから、無機酸化物層A等を形成してもよいし、第1の樹脂フィルム上に無機酸化物層A等を形成した後、第1の樹脂フィルムの無機酸化物層A等とは反対側の面に接着層を介して第2の樹脂フィルムを貼り合わせてもよい。接着層の厚みは3μm以上100μm以下であることが好ましく、3μm以上50μm以下であることがより好ましく、4μm以上8μm以下が更に好ましい。接着層は、厚みが薄すぎると塗工不良が発生する場合があり、厚みが厚すぎると硬化不足となる場合がある。
【0031】
光透過性基材は、JIS K7361-1:1997の全光線透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、87%以上であることがさらに好ましい。
【0032】
光透過性基材の無機酸化物層Aが設けられる側の表面には、密着性等を向上させるために、予め所望の表面処理が施されていても良い。表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理などが挙げられる。
【0033】
<無機酸化物層>
本開示のバリアフィルムは、無機酸化物層として、無機酸化物層A及び無機酸化物層Cを有する。このように、2層の無機酸化物層を有することにより、バリアフィルムの酸素及び水蒸気に対するバリア性を良好にして、量子ドットの劣化を抑制しやすくできる。また、1層の無機酸化物層でバリア性を良好にしようとすると、無機酸化物層の厚みが厚くなり、無機酸化物層にクラックが生じやすくなるため、バリア性を長期に渡って良好にすることが難しくなる。しかし、2層の無機酸化物層とすることにより、それぞれの無機酸化物層の厚みが厚くなることを抑制し、クラックを生じにくくし、バリア性を長期に渡って良好にしやすくできる。
なお、無機酸化物層の厚みを薄くしてもクラックやピンホールが生じる場合はある。しかし、2層の無機酸化物層のそれぞれにクラックやピンホールが生じたとしても、クラックやピンホールの位置が面方向で一致しない限り、積層体として所定のバリア性を付与することができる。すなわち、2層の無機酸化物層とすることにより、無機酸化物層にクラックやピンホールが生じた場合であっても所定のバリア性を付与しやすい点で好ましい。
【0034】
本開示のバリアフィルムは、無機酸化物層A、有機被覆層B、無機酸化物層C、及び有機被覆層Dの屈折率を、それぞれ、nA、nB、nC、及びnDと定義した際に、nA及びnCがnB及びnDよりも大きいことを要する。
屈折率の大きい無機酸化物層は、バリア性が良好な傾向がある。このため、無機酸化物層A及び無機酸化物層Cとして、nA及びnCがnB及びnDよりも大きいものを用いることにより、バリアフィルムのバリア性を良好にして、量子ドットの劣化を抑制しやすくできる。また、無機酸化物層A及び無機酸化物層Cとして、nA及びnCがnB及びnDよりも大きいものを用いることにより、無機酸化物層の厚みを薄くしても所定のバリア性を付与しやすくなるため、バリアフィルムの分光透過スペクトルの波形にほとんど影響を及ぼさないレベルまで無機酸化物層を薄膜化しやすくできる。
【0035】
無機酸化物層A及び無機酸化物層Cは、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、及び酸化インジウムスズ(ITO)から選ばれる1種又はこれらの混合物からなる層を例示することができる。
【0036】
無機酸化物層A及び無機酸化物層Cは、十分なバリア性、透明性及び生産性などの観点から、酸化アルミニウムを含む層であることが好ましい。また、無機酸化物層A及び無機酸化物層Cにおける酸化アルミニウムの含有割合は、質量基準で80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。
【0037】
無機酸化物層Aの屈折率nA及び無機酸化物層Cの屈折率nCは、それぞれ、下限が1.65以上であることが好ましく、1.70以上であることがより好ましく、1.73以上であることがさらに好ましい。また、nA及びnCは、上限が1.90以下であることが好ましく、1.86以下であることが好ましく、1.82以下であることがより好ましく、1.80以下であることがさらに好ましい。
nA及びnCを上記範囲とすることにより、無機酸化物層A及び無機酸化物層Cのバリア性及び透明性を良好にしやすく、かつ、「無機酸化物層Aと有機被覆層Bとの界面の反射率が、光透過性基材と無機酸化物層Aとの界面の反射率よりも大きい」という条件を満たしやすくできる。
【0038】
屈折率nAと、屈折率nCとは、略同一とすることが好ましい。具体的には、nA/nCは、0.98以上1.02以下であることが好ましく、0.99以上1.01以下であることがより好ましく、1.00であることがさらに好ましい。
【0039】
無機酸化物層Aの厚みtA、及び、無機酸化物層Cの厚みtCは、それぞれ、下限が6nm以上であることが好ましく、7nm以上であることがより好ましい。tA及びtCを6nm以上とすることにより、バリア性を良好にしやすくできる。
また、tA及びtCは、それぞれ、上限が25nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがより好ましく、15nm以下であることがより好ましく、12nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることがより好ましい。tA及びtCを25nm以下とすることにより、無機酸化物層A及び無機酸化物層Cに傷及びクラックが発生することを抑制しやすくできる。また、tA及びtCを薄くするほど、無機酸化物層A及び無機酸化物層Cがバリアフィルムの分光透過スペクトルの波形に及ぼす影響を無視できるレベルまで軽減しやすくできる(分光透過スペクトルの波形の観点からは、無機酸化物層A及び無機酸化物層Cの厚みは、好ましくは12nm以下であり、より好ましくは10nm以下である。)。
【0040】
tAとtCとは、異なる値であってもよいが、略同一であることが好ましい。tAとtCとが略同一とは、tA/tCが、0.95以上1.05以下であることを意味し、好ましくは0.97以上1.03以下であり、より好ましくは0.99以上1.01以下である。
【0041】
無機酸化物層は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、及びイオンプレーティング法等の物理気相成長法、あるいは、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、及び光化学気相成長法等の化学気相成長法等により形成することができる。これらの中でも、蒸着速度が速く生産性が良好な真空蒸着法が好ましい。
【0042】
<有機被覆層>
本開示のバリアフィルムは、有機被覆層として、有機被覆層B及び有機被覆層Dを有する。無機酸化物層と併用して有機被覆層を有することにより、バリアフィルムのバリア性を良好にして、量子ドットの劣化を抑制しやすくできる。また、有機被覆層は無機酸化物層に比べて可撓性が良好であるため、有機被覆層B及び有機被覆層Dにより、無機酸化物層A及び無機酸化物層Cに傷及びクラックが発生することを抑制しやすくできる。
【0043】
有機被覆層B及び有機被覆層Dは、水溶性高分子及び金属アルコキシド系化合物から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。また、有機被覆層B及び有機被覆層Dは、水溶性高分子及び金属アルコキシド系化合物のうち、水溶性高分子から選ばれる1種以上を含むことがより好ましく、水溶性高分子から選ばれる1種以上と、金属アルコキシド系化合物から選ばれる1種以上とを含むことがさらに好ましい。
【0044】
水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、及びエチレン-ビニルアルコール共重合体等が挙げられる。これらの中でもバリア性の観点から、ポリビニルアルコール及びエチレン-ビニルアルコール共重合体が好ましく、ポリビニルアルコールがより好ましい。すなわち、有機被覆層B及び有機被覆層Dは、ポリビニルアルコール及びエチレン-ビニルアルコール共重合体から選ばれる1種以上を含むことが好ましく、ポリビニルアルコールを含むことがより好ましい。
【0045】
有機被覆層B及び有機被覆層Dが、水溶性高分子及び金属アルコキシド系化合物を含有する場合、金属アルコキシド系化合物の合計量100質量部に対する水溶性高分子の含有量は、5質量部以上500質量部以下であることが好ましく、7質量部以上100質量部以下であることがより好ましく、8質量部以上50質量部以下であることがさらに好ましい。
【0046】
金属アルコキシド系化合物としては、金属アルコキシド、金属アルコキシド加水分解物及び金属アルコキシド重合物が挙げられる。
金属アルコキシドは、M(OR)nの一般式で表される化合物である。式中、Mは、Si、Ti、Al及びZr等の金属を示し、Rは、メチル基及びエチル基等のアルキル基を示す。金属アルコキシドの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン及びイソプロポキシアルミニウム等が挙げられる。
【0047】
有機被覆層は、例えば、有機被覆層を構成する成分を含む塗布液を、無機酸化物層上に塗布、乾燥することにより形成することができる。前記塗布液中には、シランカップリング剤、硬化剤及び分散剤等の添加剤を含有してもよい。
【0048】
有機被覆層Bの屈折率nB及び有機被覆層Dの屈折率nDは、それぞれ、下限が1.45以上であることが好ましく、1.50以上であることがより好ましく、1.52以上であることがさらに好ましい。また、nB及びnDの上限は、それぞれ、1.64以下であることが好ましく、1.60以下であることがより好ましく、1.57以下であることがさらに好ましい。
【0049】
屈折率nBと、屈折率nDとは、略同一とすることが好ましい。具体的には、nB/nDは、0.98以上1.02以下であることが好ましく、0.99以上1.01以下であることがより好ましく、1.00であることがさらに好ましい。
【0050】
有機被覆層Bの厚みtB、及び、有機被覆層Dの厚みtDは、それぞれ、下限が70nm以上であることが好ましく、85nm以上であることがより好ましく、100nm以上であることがさらに好ましい。tB及びtDを70nm以上とすることにより、バリア性を良好にしやすくできる。
また、tB及びtDは、それぞれ、上限が480nm以下であることが好ましく、400nm以下であることがより好ましく、300nm以下であることがより好ましく、230nm以下であることがより好ましく、195nm以下であることがより好ましい。tB及びtDを480nm以下とすることにより、バリアフィルムを薄膜化することができるとともに、有機被覆層B及び有機被覆層Dの過度な膨潤を抑制し、式1及び式2を満たす際の効果をより発揮しやすくできる。また、tB及びtDが厚すぎると、有機被覆層を塗布し、乾燥する際に生じる応力が大きくなり、前記応力によって無機酸化物層にクラックが生じ、バリア性が低下ことがある。このため、tB及びtDを480nm以下とすることにより、初期のバリア性を良好にしやすくできる。
tB及びtDの範囲の実施形態としては、例えば、70nm以上480nm以下、70nm以上400nm以下、70nm以上300nm以下、70nm以上230nm以下、70nm以上195nm以下、85nm以上480nm以下、85nm以上400nm以下、85nm以上300nm以下、85nm以上230nm以下、85nm以上195nm以下、100nm以上480nm以下、100nm以上400nm以下、100nm以上300nm以下、100nm以上230nm以下、100nm以上195nm以下が挙げられる。
【0051】
tBとtDとは、異なる値であってもよいが、略同一であることが好ましい。tBとtDとが略同一とは、tB/tDが、0.95以上1.05以下であることを意味し、好ましくは0.97以上1.03以下であり、より好ましくは0.99以上1.01以下である。
【0052】
<屈折率及び式1>
本開示のバリアフィルムは、nA及びnCがnB及びnDよりも大きく、かつ、
前記無機酸化物層Aと前記有機被覆層Bとの界面の反射率が、前記光透過性基材と前記無機酸化物層Aとの界面の反射率よりも大きく、さらに、
下記式1で示されるd1が、x±0.10の範囲を示すことを要する(但し、xは2~13の整数)。
(式1)
d1=nB×tB/112.5nm+nD×tD/112.5nm
【0053】
上記式1で示されるd1は、x±0.07の範囲を示すことが好ましく(但し、xは2~13の整数)、x±0.05の範囲を示すことがより好ましく(但し、xは2~13の整数)、x±0.03の範囲を示すことがさらに好ましく(但し、xは2~13の整数)、x±0.01の範囲を示すことがよりさらに好ましい(但し、xは2~13の整数)。
また、上記式1で示されるd1に関して、「x」は、3~12の整数であることが好ましく、9~11の整数であることがより好ましい。
【0054】
まず、本発明者らが、屈折率及び式1のd
1を所定の範囲にするに至った背景を説明する。
図3に示すように、バリアフィルム(100a、100b)は、量子ドット含有層(50)の両側に配置され、波長変換シート(200)の構成部材として用いられる。そして、波長変換シートを含むバックライトにおいて、バックライトの一次光源から射出する光(一般的に、波長450nmを中心とする青色光)は、波長変換シート(200)の下側のバリアフィルム(100b)の光透過性基材(10)に入射する。
図3の波長変換シート(200)の下側のバリアフィルム(100b)の光透過性基材(10)に一次光源の光が入射した場合、光の大部分は、光透過性基材(10)、無機酸化物層A(21)、有機被覆層B(31)、無機酸化物層C(22)、及び有機被覆層D(32)を透過して、量子ドット含有層(50)に到達する。
そして、量子ドット含有層(50)に到達した一次光源の光のうち量子ドットに衝突した光は、一次光源とは別の波長の光に変換され(以下、量子ドットに衝突して変換された光のことをL2と称する。)、上側のバリアフィルム(100a)の有機被覆層D(32)に入射する。L2は、例えば、緑色光及び赤色光が挙げられる。一方、量子ドット含有層(50)に到達した一次光源の光のうち量子ドットに衝突しなかった光は、一次光源の波長の光のまま上側のバリアフィルム(100a)の有機被覆層D(32)に入射する。以下、量子ドットに衝突せず変換されなかった光のことをL1と称する。L1は、例えば、青色光が挙げられる。
そして、上側のバリアフィルム(100a)に入射した光(L1及びL2)の大部分は、有機被覆層D(32)、無機酸化物層C(22)、有機被覆層B(31)、無機酸化物層A(21)、及び光透過性基材(10)を透過して、波長変換シート(200)よりも視認者側に配置される部材(例えば、プリズムシート等の輝度向上シート)に向かう。
バリアフィルムを含む波長変換シートを適用した液晶表示装置の色味は、L1とL2とのバランスにより成立している。よって、波長変換シートを適用した液晶表示装置の色味が経時的に変化する理由は、L1とL2とのバランスが変化するためであると考えられる。
【0055】
本発明者らは、L1とL2とのバランスが変化する原因について鋭意研究した。まず、L2の光量は、量子ドットの劣化に伴い、徐々に低下すると考えられる。しかし、バリアフィルム等の存在により量子ドットの劣化は抑制されているため、量子ドットの劣化のみでは色味の変化を説明することができない。また、一次光源が劣化した場合、L1だけではなくL2も相対的に減少するため、一次光源の劣化を原因とすることも考えにくい。
本発明者らは、さらに鋭意研究した結果、上側のバリアフィルム100aのL1の透過率の変化(≒上側のバリアフィルムから出射するL1の光量の変化)と、量子ドットの劣化によるL2の光量の変化の相乗作用により、バリアフィルムを含む波長変換シートを適用した液晶表示装置の色味が変化していることを見出した。
そして、本発明者らは、上側のバリアフィルム100aのL1の透過率(≒上側のバリアフィルム100aから出射するL1の光量)が経時的に変化する主たる原因が、湿度による有機被覆層B及び有機被覆層Dの膨潤であることを見出した。
【0056】
次に、屈折率及び式1のd1を所定の範囲にする技術的意義を説明する。
まず、L1は、上側のバリアフィルム100aを透過するまでに6つの界面を通過する。6つの界面は、量子ドット含有層と有機被覆層Dとの界面(界面1)、有機被覆層Dと無機酸化物層Cとの界面(界面2)、無機酸化物層Cと有機被覆層Bとの界面(界面3)、有機被覆層Bと無機酸化物層Aとの界面(界面4)、無機酸化物層Aと光透過性基材との界面(界面5)、光透過性基材と空気との界面(界面6)である。
量子ドット含有層の屈折率nZは、通常は有機被覆層Dの屈折率nDよりも小さい。したがって、界面1の反射は、通常は固定端反射である。L1の透過率(%)は、概ね、「100(%)-反射率(%)」である。そして、L1の反射率は、界面1の反射と、他の界面の反射との干渉を考慮する必要がある。具体的には、界面1の反射が他の界面の反射との干渉によって減少する場合には、L1の透過率は高くなり、逆に、界面1の反射が他の界面の反射との干渉によって増加する場合には、L1の透過率は低くなる。
【0057】
界面1の反射(通常は固定端反射)と、界面2~6の反射との干渉を検討するにあたり、界面2~6の反射の性質を検討する必要がある。
本開示では、nA及びnCがnB及びnDよりも大きいことを必須要件としている。よって、界面2の反射は固定端反射、界面3の反射は自由端反射、界面4の反射は固定端反射である。nA及びnCがnB及びnDよりも大きい場合、無機酸化物層の厚みが薄くてもバリア性が良好になるため、通常、無機酸化物層の厚みを薄く設計する。このため、界面2の固定端反射における光学距離と、界面3の自由端反射における光学距離とは略同一とみなすことができる。さらに、通常、nA≒nCかつnB≒nDであるため、界面2及び界面3の反射率は略同一である。よって、界面2の固定端反射と、界面3の自由端反射とは互いに打ち消し合い、界面1の固定端反射に影響を与えないとみなすことができる。
また、通常の設計では、光透過性基材の屈折率n0より、無機酸化物層Aの屈折率nAの方が高くなる。よって、界面5の反射は自由端反射である。上述したように、nA及びnCがnB及びnDよりも大きい場合、通常、無機酸化物層の厚みを薄く設計するため、界面4の固定端反射における光学距離と、界面5の自由端反射における光学距離とは略同一とみなすことができる。さらに、本開示では、無機酸化物層Aと有機被覆層Bとの界面(界面4)の反射率が、光透過性基材と無機酸化物層Aとの界面(界面5)の反射率よりも大きいことを必須要件としている。よって、界面1の固定端反射に影響を与える反射としては、界面5は考慮せず、界面4を考慮すればよいといえる。
最後に、界面6の反射を検討する。通常、光透過性基材の厚みは光の波長よりも十分に厚く設計される。よって、界面6の反射は、いわゆる薄膜干渉として無視できる反射である。
以上のことから、界面1の反射(通常は固定端反射)に対して、干渉する反射として考慮すべき主たる反射は、界面4の固定端反射ということになる。
【0058】
界面1及び界面4の反射が何れも固定端反射であることを前提とすれば、波長λの光に関しては、下記式x-1の関係を満たす際に、界面4の反射が界面1の反射を弱め、反射率が減少する。そして、反射率が減少することは、透過率が増加することを意味する。よって、界面1及び界面4の反射が何れも固定端反射であることを前提とすれば、量子ドット含有層から出射する波長λの光は、下記式x-1の関係を満たす際に、透過率が最も高くなる。なお、無機酸化物層A及び無機酸化物層Cの厚みは、干渉に影響しない程度に薄いといえるため、下記式x-1では、無機酸化物層の厚みを考慮していない。
2×nB×tB+2×nD×tD=λ/2 (式x-1)
【0059】
式x-1は、下記式x-2に変形できる。
nB×tB+nD×tD=λ/4 (式x-2)
式x-2より、界面1及び界面4の反射が何れも固定端反射であることを前提とした場合には、「nB×tB+nD×tD」=「λ/4」を満たす際に、波長λの透過率が最も高くなるといえる。また、分光透過率には周期性があるため、界面1及び界面4の反射が何れも固定端反射であることを前提とした場合には、「nB×tB+nD×tD」が「λ/4」の奇数倍の時にも、波長λの透過率が最も高くなるといえる。そして、「nB×tB+nD×tD」が「λ/4」の何倍となるかは、式x-2の左辺を右辺で割ることにより算出できる。
量子ドットを用いたバックライトの一次光の中心波長は概ね450nmである。λを450nmとすると、式x-2の「λ/4」は「112.5nm」である。
すなわち、本開示の式1は、「nB×tB+nD×tD」が、「112.5nm(λ/4)」の何倍であるかを表した式である。
そして、界面1及び界面4の反射が何れも固定端反射であることを前提とした場合には、式1のd1が2x+1の場合(xは0以上の整数)、波長450nmの光の透過率が最も高くなり、式1のd1が2xの場合(xは1以上の整数)、波長450nmの光の透過率が最も低くなる。言い換えると、界面1及び界面4の反射が何れも固定端反射であることを前提とした場合には、式1のd1が奇数の場合、波長450nmの光の透過率がピークを示し、式1のd1が偶数の場合、波長450nmの光の透過率がボトムを示す。波長450nmの光は、上述したL1とみなすことができる。
【0060】
界面1の反射は通常は固定端反射であるが、界面1の反射が自由端反射である場合は以下のように考えればよい。
この場合、自由端反射である界面1の反射に干渉する反射として考慮すべき主たる反射は、界面4の固定端反射であることには変わりがない。そして、この場合、式1のd1が2x+1の場合(xは0以上の整数)、波長450nmの透過率が最も低くなり、式1のd1が2xの場合(xは1以上の整数)、波長450nmの透過率が最も高くなる。
【0061】
本開示のバリアフィルムは、式1のd1の値が、x±0.10であることを要する(但し、xは2~13の整数)。すなわち、本開示のバリアフィルムは、d1の値が2~13の整数の近傍であることを示している。言い換えると、d1の値が2~13の整数の近傍である本開示のバリアフィルムは、バリアフィルムを透過した光の分光透過スペクトルの波形が、450nm近傍にピーク又はボトムを有するものであることを示している。
このように、バリアフィルムの分光透過スペクトルの波形が450nm近傍にピーク又はボトムを有することにより、高湿環境下に晒された際の色味の変化の抑制を抑制することができる。かかる効果を生じる理由は以下のように考えられる。
まず、バリアフィルムが高湿環境下に晒されると、バリアフィルムの有機被覆層が膨潤する。そして、有機被覆層が膨潤すると、有機被覆層の厚みが増すため、バリアフィルムの分光透過率の波形がシフト(主として長波長側にシフト)する。そして、バリアフィルムの分光透過率は、ピーク又はボトム近傍では変化が小さいものの、ピーク又はボトムを外れた領域では変化が大きくなる傾向がある。よって、バリアフィルムの波長450nmの透過率をピーク近傍又はボトム近傍とすることにより有機被覆層が膨潤して分光透過スペクトルの波形がシフトした際の、450nmの透過率の変化を抑制することができると考えられる。量子ドットを用いたバックライトの一次光の中心波長は概ね450nmであるから、バリアフィルムの450nmの透過率の変化を抑制することは、量子ドット含有層(50)に到達した一次光源の光のうち量子ドットに衝突しなかった光(L1)の透過率の変化を抑制し、量子ドットを用いたバックライトの色味の変化を抑制できることになると考えられる。
なお、L2(緑及び赤)の波長領域は、L1(青)に比べて分光透過スペクトルの波形の周期が長くなるため、有機被覆層の膨潤による影響は受けにくい。
【0062】
上述したように、本開示のバリアフィルムは、式1のd1の値が2~13の整数の近傍を示すことによって、高湿環境下による色味の変化を抑制することができる。
d1の値が整数であっても、0又は1の場合は、有機被覆層B及びDの厚みが薄いことを意味する。この場合、バリア性が十分でなくなるため、量子ドット自体の劣化により色味が変化してしまう。
また、d1の値が14近傍を超える場合は、有機被覆層B及びDの厚みが厚いことを意味する。この場合、有機被覆層の膨潤が過度になり、有機被覆層の厚みが大きく変化するため、色味の変化を抑制できない。また、d1の値が14近傍を超える場合、分光透過率の波形の周期が短くなり、色味の変化を抑制しにくくなる。
【0063】
<好適な実施形態1A>
本開示のバリアフィルムは、式1で示されるd1が、x±0.10の範囲を示すことが好ましく(但し、xは3~13の奇数の整数)、x±0.07の範囲を示すことがより好ましく(但し、xは3~13の奇数の整数)、x±0.05の範囲を示すことがより好ましく(但し、xは3~13の奇数の整数)、x±0.03の範囲を示すことがより好ましく(但し、xは3~13の奇数の整数)、x±0.01の範囲を示すことがより好ましい(但し、xは3~13の奇数の整数)。
【0064】
量子ドット含有層の屈折率nZは、通常は有機被覆層Dの屈折率nDよりも小さいため、界面1の反射は、通常は固定端反射である。そして、界面1の反射が固定端反射の場合、式1で示されるd1が奇数倍の時に、バリアフィルムの分光透過スペクトルの波形が450nm近傍にピークを有することになる。
よって、界面1の反射が固定端反射であることを前提とすれば、好適な実施形態1Aのように、式1で示されるd1を奇数近傍の値とすることにより、量子ドット含有層(50)に到達した一次光源の光のうち量子ドットに衝突しなかった光(L1)の透過率を高くできる点で好ましい。
また、好適な実施形態1Aにおいて、式1で示されるd1における「x」は、3~11の奇数の整数であることが好ましく、9~11の奇数の整数であることがより好ましい。
【0065】
<好適な実施形態1B>
また、本開示のバリアフィルムは、式1で示されるd1が、x~x+0.10の範囲を示すことが好ましく(但し、xは3~13の奇数の整数)、x~x+0.07の範囲を示すことがより好ましく(但し、xは3~13の奇数の整数)、x~x+0.05の範囲を示すことがより好ましく(但し、xは3~13の奇数の整数)、x~x+0.03の範囲を示すことがより好ましく(但し、xは3~13の奇数の整数)、x~x+0.01の範囲を示すことがより好ましい(但し、xは3~13の奇数の整数)。
い。
【0066】
好適な実施形態1Bは、式1で示されるd1が奇数近傍の値であるため、バリアフィルムの分光透過スペクトルの波形が450nm近傍にピークを有するといえる。また、好適な実施形態1Bでは、式1で示されるd1が、奇数丁度よりプラス側の値を示している。よって。好適な実施形態1Bを満たすバリアフィルムは、有機被覆層が膨潤してバリアフィルムの分光透過率の波形が長波長側にシフトした際に、波長450nmの透過率は低下することになる。すなわち、好適な実施形態1Bでは、有機被覆層が膨潤すると、L1の透過率が減少する。
一方、量子ドットで変換される光(L2)は、量子ドットの劣化により徐々に光量が低下する。
よって、好適な実施形態1Bでは、量子ドットの劣化によってL2の光量が低下し、かつ、L1の透過率も減少するため、L1及びL2のバランスが崩れにくくなり、色味の変化をより抑制できる点で好ましい。
また、好適な実施形態1Bにおいて、式1で示されるd1における「x」は、3~11の奇数の整数であることが好ましく、9~11の奇数の整数であることがより好ましい。
【0067】
<プライマー層>
本開示のバリアフィルムは、前記有機被覆層Dの前記無機酸化物層Cとは反対側にプライマー層Eを有していてもよい。プライマー層を有することにより、バリアフィルムと量子ドット含有層との密着性を良好にし得る点で好ましい。
プライマー層は、有機被覆層Dの無機酸化物層Cとは反対側であって、有機被覆層Dと接する位置に配置することが好ましい。また、プライマー層は、バリアフィルムの最外層に配置することが好ましい。
【0068】
《式2》
本開示のバリアフィルムは、前記有機被覆層Dの前記無機酸化物層Cとは反対側にプライマー層Eを有し、前記プライマー層Eの屈折率をnEと定義し、前記プライマー層Eの厚みをtEと定義した際に、下記式2で示されるd2が、y±0.10の範囲を示すことが好ましい(但し、yは4~27の整数)。
(式2)
d2=nB×tB/112.5nm+nD×tD/112.5nm+nE×tE/112.5nm
【0069】
上記式2で示されるd2は、y±0.07の範囲を示すことが好ましく(但し、yは4~27の整数)、y±0.05の範囲を示すことがより好ましく(但し、yは4~27の整数)、y±0.03の範囲を示すことがさらに好ましく(但し、yは4~27の整数)、y±0.01の範囲を示すことがよりさらに好ましい(但し、yは4~27の整数)。
また、上記式2で示されるd2に関して、「y」は、5~20の整数であることが好ましく、9~15の整数であることがより好ましく、11~13の整数であることがさらに好ましい。
【0070】
式2の技術思想は、式1の技術思想と概ね同様である。
有機被覆層Dの無機酸化物層Cとは反対側にプライマー層Eを有する場合、L1は、上側のバリアフィルム100aを透過するまでに7つの界面を通過する。7つの界面は、量子ドット含有層とプライマー層Eとの界面(界面1-1)、プライマー層Eと有機被覆層Dとの界面(界面1-2)、有機被覆層Dと無機酸化物層Cとの界面(界面2)、無機酸化物層Cと有機被覆層Bとの界面(界面3)、有機被覆層Bと無機酸化物層Aとの界面(界面4)、無機酸化物層Aと光透過性基材との界面(界面5)、光透過性基材と空気との界面(界面6)である。
量子ドット含有層の屈折率nZは、通常はプライマー層Eの屈折率nEよりも小さい。したがって、界面1-1の反射は、通常は固定端反射である。
界面1-1の反射(通常は固定端反射)と、界面1-2、2~6の反射との干渉を検討するにあたり、界面1-2、2~6の反射の性質を検討する必要がある。
界面1-2の反射は、固定端反射の場合と自由端反射の場合とが考えられる。ここで、通常、界面1-2の反射率を低くするために、プライマー層Eの屈折率nEと、有機被覆層Dの屈折率nDとは、屈折率差を小さく設計される。よって、反射率の小さい界面1-2の反射は無視することができる。
界面2の反射と、界面3の反射とは、プライマー層Eを有さない場合と同様に、互いに打ち消し合い、界面1-1の固定端反射に影響を与えないとみなすことができる。
界面4の反射と、界面5の反射との関係も、プライマー層Eを有さない場合と同様である。界面6の反射は、いわゆる薄膜干渉として無視できる反射である。
よって、界面1-1の反射(通常は固定端反射)の反射に干渉する反射として考慮すべき主たる反射は、界面4の固定端反射ということになる。そして、界面4の固定端反射の光学距離としては、プライマー層の光学距離(nE×tE)を考慮する必要がある。
【0071】
界面1-1及び界面4の反射が何れも固定端反射であることを前提とすれば、波長λの光に関しては、下記式y-1の関係を満たす際に、界面4の反射が界面1-1の反射を弱め、反射率が減少する。そして、反射率が減少することは、透過率が増加することを意味する。よって、界面1-1及び界面4の反射が何れも固定端反射であることを前提とすれば、量子ドット含有層から出射する波長λの光は、下記式y-1の関係を満たす際に、透過率が最も高くなる。なお、無機酸化物層A及び無機酸化物層Cの厚みは、干渉に影響しない程度に薄いといえるため、下記式y-1では、無機酸化物層の厚みを考慮していない。
2×nB×tB+2×nD×tD+2×nE×tE=λ/2 (式y-1)
【0072】
式y-1は、下記式y-2に変形できる。
nB×tB+nD×tD+nE×tE=λ/4 (式y-2)
式y-2より、界面1-1及び界面4の反射が何れも固定端反射であることを前提とした場合には、「nB×tB+nD×tD+nE×tE」=「λ/4」を満たす際に、波長λの透過率が最も高くなるといえる。また、分光透過率には周期性があるため、界面1-1及び界面4の反射が何れも固定端反射であることを前提とした場合には、「nB×tB+nD×tD+nE×tE」が「λ/4」の奇数倍の時にも、波長λの透過率が最も高くなるといえる。そして、「nB×tB+nD×tD+nE×tE」が「λ/4」の何倍となるかは、式y-2の左辺を右辺で割ることにより算出できる。
量子ドットを用いたバックライトの一次光の中心波長は概ね450nmである。λを450nmとすると、式y-2の「λ/4」は「112.5nm」である。
すなわち、式2は、「nB×tB+nD×tD+nE×tE」が、「112.5nm(λ/4)」の何倍であるかを表した式である。
そして、界面1-1及び界面4の反射が何れも固定端反射であることを前提とした場合には、式2のd2が2y+1の場合(yは0以上の整数)、波長450nmの光の透過率が最も高くなり、式2のd2が2yの場合(yは1以上の整数)、波長450nmの光の透過率が最も低くなる。波長450nmの光は、上述したL1とみなすことができる。
【0073】
界面1-1の反射は通常は固定端反射であるが、界面1-1の反射が自由端反射である場合は以下のように考えればよい。
この場合、自由端反射である界面1-1の反射に干渉する反射として考慮すべき主たる反射は、界面4の固定端反射であることには変わりがない。そして、この場合、式2のd2が2y+1の場合(yは0以上の整数)、波長450nmの透過率が最も低くなり、式2のd2が2yの場合(yは1以上の整数)、波長450nmの透過率が最も高くなる。
【0074】
以上のように、式2の技術思想は、式1の技術思想と概ね同様である。よって、式2のd2の値が4~27の整数の近傍を示すことによって、高湿環境下による色味の変化を抑制しやすくすることができる。なお、式1のd1よりも、式2のd2の値が大きい理由は、プライマー層Eの光学厚みが効いているためである。
d2の値が整数であっても、0~3の場合は、有機被覆層B、有機被覆層D及びプライマー層Eの厚みが薄くなり、バリア性及び量子ドット含有層との密着性が低下する場合があるため好ましくない。
また、d2の値が27近傍を超える場合は、有機被覆層の膨潤が過度になる場合がある点、バリアフィルムが厚膜化する場合がある点において好ましくない。また、d2の値が27近傍を超える場合、分光透過率の波形の周期が短くなり、色味の変化を抑制しにくくなる。
【0075】
<好適な実施形態2A>
本開示のバリアフィルムは、式2で示されるd2が、y±0.10の範囲を示すことが好ましく(但し、yは5~27の奇数の整数)、y±0.07の範囲を示すことがより好ましく(但し、yは5~27の奇数の整数)、y±0.05の範囲を示すことがより好ましく(但し、yは5~27の奇数の整数)、y±0.03の範囲を示すことがより好ましく(但し、yは5~27の奇数の整数)、y±0.01の範囲を示すことがより好ましい(但し、yは5~27の奇数の整数)。
【0076】
量子ドット含有層の屈折率nZは、通常はプライマー層Eの屈折率nEよりも小さいため、界面1-1の反射は、通常は固定端反射である。そして、界面1-1の反射が固定端反射の場合、式2で示されるd2が奇数倍の時に、バリアフィルムの分光透過スペクトルの波形が450nm近傍にピークを有することになる。
よって、界面1-1の反射が固定端反射であることを前提とすれば、好適な実施形態2Aのように、式2で示されるd2を奇数近傍の値とすることにより、量子ドット含有層(50)に到達した一次光源の光のうち量子ドットに衝突しなかった光(L1)の透過率を高くできる点で好ましい。
また、好適な実施形態2Aにおいて、式2で示されるd2における「y」は、5~19の奇数の整数であることが好ましく、9~15の奇数の整数であることがより好ましく、11~13の奇数の整数であることがさらに好ましい。
【0077】
<好適な実施形態2B>
また、本開示のバリアフィルムは、式2で示されるd2が、y~y+0.10の範囲を示すことが好ましく(但し、yは5~27の奇数の整数)、y~y+0.07の範囲を示すことがより好ましく(但し、yは5~27の奇数の整数)、y~y+0.05の範囲を示すことがより好ましく(但し、yは5~27の奇数の整数)、y~y+0.03の範囲を示すことがより好ましく(但し、yは5~27の奇数の整数)、y~y+0.01の範囲を示すことがより好ましい(但し、yは5~27の奇数の整数)。
【0078】
好適な実施形態2Bは、式2で示されるd2が奇数近傍の値であるため、バリアフィルムの分光透過スペクトルの波形が450nm近傍にピークを有するといえる。また、好適な実施形態2Bでは、式2で示されるd2が、奇数丁度よりプラス側の値を示している。よって。好適な実施形態2Bを満たすバリアフィルムは、有機被覆層が膨潤してバリアフィルムの分光透過率の波形が長波長側にシフトした際に、波長450nmの透過率は低下することになる。すなわち、好適な実施形態2Bでは、有機被覆層が膨潤すると、L1の透過率が減少する。
一方、量子ドットで変換される光(L2)は、量子ドットの劣化により徐々に光量が低下する。
よって、好適な実施形態2Bでは、量子ドットの劣化によってL2の光量が低下し、かつ、L1の透過率も減少するため、L1及びL2のバランスが崩れにくくなり、色味の変化をより抑制できる点で好ましい。
また、好適な実施形態2Bにおいて、式2で示されるd2における「y」は、5~19の奇数の整数であることが好ましく、9~15の奇数の整数であることがより好ましく、11~13の奇数の整数であることがさらに好ましい。
【0079】
プライマー層Eの屈折率nEと、有機被覆層Dの屈折率nDとの比であるnE/nDは、0.95以上1.05以下であることが好ましく、0.97以上1.03以下であることがより好ましく、0.98以上1.02以下であることがさらに好ましい。
【0080】
プライマー層Eの屈折率nEは、下限が1.47以上であることが好ましく、1.52以上であることがより好ましく、1.55以上であることがさらに好ましい。また、nEの上限は、1.66以下であることが好ましく、1.62以下であることがより好ましく、1.60以下であることがさらに好ましい。
【0081】
プライマー層Eの厚みtEは、70nm以上1000nmであることが好ましく、100nm以上500nm以下であることがより好ましく、120nm以上300nm以下であることがさらに好ましい。
【0082】
《組成》
プライマー層Eは、ポリウレタン系樹脂組成物等の樹脂成分を含むことが好ましい。ポリウレタン系樹脂は、量子ドット含有層との密着性を良好にしやすく、かつ、量子ドット含有層を電離放射線硬化あるいは熱硬化させる際に生じる応力を緩和し、前記応力が無機酸化物層及び有機被覆層に伝わりにくくする役割を果たす。さらに、ポリウレタン系樹脂は、プライマー層Eの伸長度を向上することにより、無機酸化物層等のバリアフィルムを構成する層にクラックが生じることを抑制しやすくできる。
【0083】
ポリウレタン系樹脂組成物としては、多官能イソシアネートとヒドロキシル基含有化合物との反応によって得られる、一液ないし二液型ポリウレタン系樹脂組成物が挙げられる。多官能イソシアネート及びヒドロキシル基含有化合物はそれぞれ、1種のみ用いられていても良いし、複数種が用いられていても良い。
具体的に、多官能イソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネ-ト、あるいは、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。
また、ヒドロキシル基含有化合物としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリアクリレートポリオールなどが挙げられる。本開示においては、量子ドット含有層との密着性、及び、耐久性の観点から、ポリエステルポリウレタンポリオールが特に好ましい。ポリエステルポリウレタンポリオールは、例えば特開2001-288408号公報、特開2003-26996号公報に記載の方法により製造することができる。
【0084】
ポリウレタン系樹脂組成物の含有量は、プライマー層Eの全量基準で、40質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
【0085】
プライマー層Eは、シランカップリング剤を更に含有していても良い。シランカップリング剤を含むことにより、プライマー層Eと有機被覆層Dとの密着性を向上しやすくできる。シランカップリング剤は、その分子の一端にある官能基、通常、クロロ、アルコキシ、又は、アセトキシ基等が加水分解してシラノ-ル基(Si-OH)を形成する。これにより、プライマー層Eの樹脂組成物が共有結合等で修飾され、強固な結合を形成する。また、シランカップリング剤の他端にあるビニル、メタクリロキシ、アミノ系、エポキシ系、あるいは、メルカプト等の有機官能基により、プライマー層Eと有機被覆層D、及び、プライマー層Eと量子ドット含有層、との密着性を良好にしやすくできる。
【0086】
シランカップリング剤としては、例えば、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル-トリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビス(β-ヒドロキシエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、及びγ-アミノプロピルシリコ-ン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
【0087】
シランカップリング剤の含有量は、プライマー層Eの全量基準で、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。シランカップリング剤の含有量が上記範囲であると、プライマー層Eと有機被覆層D、及び、プライマー層Eと量子ドット含有層、との密着性をさらに向上しやすくできる。
なお、プライマー層Eの伸長性を良好とするとともに、プライマー層Eのクラック発生を抑制するために、シランカップリング剤の含有量は、プライマー層Eの全量基準で、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。
【0088】
プライマー層Eは、充填剤を更に含んでいても良い。充填剤は、プライマー層を形成するための塗布液の粘度等を調整し、コーティング適性等を高める役割を有する。充填材としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナホワイト、シリカ、タルク、ガラスフリット、樹脂粉末などを使用することができる。
【0089】
プライマー層は、更に、必要に応じて、安定剤、架橋剤、滑剤、紫外線吸収剤、その他等の添加剤を含んでいても良い。
【0090】
<物性>
《水蒸気透過度》
バリアフィルムは、JIS K7129-2:2019による水蒸気透過度の値が、0.20g/m2・day以下であることが好ましく、0.15g/m2・day以下であることがより好ましい。なお、水蒸気透過度を測定する際の温度及び湿度の条件は、40℃、相対湿度90%とする。また、水蒸気透過度の測定前に、測定用のサンプルを温度23℃±5℃、相対湿度40%以上65%以下の雰囲気に30分以上晒すものとする。
水蒸気透過度は、例えば、MOCON社製の水蒸気透過度測定装置(商品名:PERMATRAN)にて測定できる。
【0091】
《酸素透過度》
バリアフィルムは、JIS K7126-2:2006による酸素透過度の値が、0.5cc/m2・day・atm以下であることが好ましい。なお、酸素透過度を測定する際の温度及び湿度の条件は、23℃、相対湿度90%とする。また、酸素透過度の測定前に、測定用のサンプルを温度23℃±5℃、相対湿度40%以上65%以下の雰囲気に30分以上晒すものとする。
酸素透過度は、例えば、MOCON社製の酸素透過度測定装置(商品名:OX-TRAN)にて測定できる(モコン法)。
【0092】
《b*値》
バリアフィルムは、L*a*b*表色系のb*値が1.0以下であることが好ましく、-1.5以上0.8以下であることがより好ましい。なお、b*値は透過のb*値である。また、b*値を測定する際の光入射面は光透過性基材とは反対側の面とする。
L*a*b*表色系は、1976年に国際照明委員会(CIE)により規格化されたL*a*b*表色系に基づくものであり、JIS Z8781-4:2013において採用されている。
【0093】
《全光線透過率》
バリアフィルムは、JIS K7361-1:1997の全光線透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、87%以上であることがさらに好ましい。なお、全光線透過率を測定する際の光入射面は光透過性基材とは反対側の面とする。
【0094】
<積層構成>
本開示のバリアフィルムの積層構成としては、例えば、下記(1)及び(2)が挙げられる。下記(1)及び(2)において、「/」は層の界面を意味する。
(1)光透過性基材/無機酸化物層A/有機被覆層B/無機酸化物層C/有機被覆層D
(2)光透過性基材/無機酸化物層A/有機被覆層B/無機酸化物層C/有機被覆層D/プライマー層E
【0095】
本開示の効果を阻害しない範囲で、バリアフィルムは、上記以外の層を有していてもよい。
なお、バリアフィルムの積層構成として、下記(3)の構成も考えられる。しかし、下記(3)の積層構成は、上記(1)及び(2)に比べて界面の数が多いため光学特性の点で不利であり、また、総厚も増加してしまう。このため、上記(1)及び(2)の積層構成が好ましい。
(3)第一の光透過性基材/無機酸化物層A/有機被覆層B/無機酸化物層C/有機被覆層D/第二の光透過性基材/プライマー層
【0096】
無機酸化物層A、有機被覆層B、無機酸化物層C及び有機被覆層Dの合計厚みは、150nm以上1500nm以下であることが好ましく、200nm以上800nm以下であることがより好ましく、300nm以上650nm以下であることがさらに好ましい。前記合計厚みを150nm以上とすることにより、バリア性を良好にしやすくできる。また、前記合計厚みを1500nm以下とすることにより、分光透過率の波形の周期が短くなりすぎることを抑制し、式1を満たすことによる効果を発揮しやすくできる。
【0097】
無機酸化物層A、有機被覆層B、無機酸化物層C、有機被覆層D及びプライマー層Eの合計厚みは、250nm以上1700nm以下であることが好ましく、300nm以1000nm以下であることがより好ましく、400nm以上700nm以下であることがさらに好ましい。前記合計厚みを250nm以上とすることにより、バリア性を良好にしやすくできる。また、前記合計厚みを1700nm以下とすることにより、分光透過率の波形の周期が短くなりすぎることを抑制し、式2を満たすことによる効果を発揮しやすくできる。
【0098】
<製造方法>
バリアフィルムは、例えば、光透過性基材上に、無機酸化物層A、有機被覆層B、無機酸化物層C、及び有機被覆層Dをこの順に形成することにより、製造することができる。バリアフィルムがプライマー層Eを有する場合、有機被覆層D上にプライマー層Eを形成すればよい。
無機酸化物層A及び無機酸化物層Cは、上述したように、真空蒸着法等の物理気相成長法、あるいは、プラズマ化学気相成長法等の化学気相成長法等により形成することができる。
有機被覆層B、有機被覆層D及びプライマー層Eは、各層を構成する組成物を溶解ないしは分散させた塗布液を塗布、乾燥し、必要に応じて硬化することにより形成することができる。
【0099】
<用途>
本開示の波長変換シート用のバリアフィルムは、例えば、面光源の波長変換シート用のバリアフィルムに用いることができる。面光源としては、液晶表示装置のバックライト光源、検査機器のバックライト光源等が挙げられる。すなわち、本開示の波長変換シート用のバリアフィルムは、「液晶表示装置のバックライト光源の波長変換シート用のバリアフィルム」、「検査機器のバックライト光源の波長変換シート用のバリアフィルム」等に用いることができる。
さらに、本開示の波長変換シート用のバリアフィルムは、「園芸の波長変換シート用のバリアフィルム」にも用いることができる。園芸の波長変換シートとしては、例えば、紫外線を植物の成長に適した波長に変換する機能を備えたシートが挙げられる。植物の成長に適した波長としては、光合成に適した波長が挙げられる。園芸の波長変換シートは、例えば、ビニールハウス及びガラス室の園芸施設の天井等に設置することができる。
【0100】
[波長変換シート]
本開示の波長変換シートは、量子ドットを含む量子ドット含有層と、前記量子ドット含有層の両側に積層されてなるバリアフィルムを有する波長変換シートであって、前記バリアフィルムとして、上述した本開示のバリアフィルムの光透過性基材とは反対側の面が前記量子ドット含有層側を向くように積層してなるものである。
【0101】
図3及び
図4は、本開示の波長変換シート(200)の実施形態を示す断面図である。
図3及び
図4の波長変換シート(200)は、量子ドットを含む量子ドット含有層(50)と、量子ドット含有層の両側に積層されてなるバリアフィルム(100a、100b)とを有している。また、
図3及び
図4の波長変換シート(200)は、バリアフィルム(100a、100b)の光透過性基材(10)とは反対側の面が、量子ドット含有層(50)側を向くように積層されている。
【0102】
波長変換シートは、
図3及び
図4のように、量子ドット含有層を中心として、上下対称の構成を有することが好ましい。言い換えると、量子ドット含有層の両側に積層されてなるバリアフィルムは、同一構成のバリアフィルムを用いることが好ましい。前述した構成を有することにより、歪みが均等に分散され、波長変換シートの平面性を良好にしやすくできるとともに、波長変換シートの各界面の密着性を良好にしやすくできる。
【0103】
<量子ドット含有層>
量子ドット含有層は、量子ドット及びバインダー樹脂を含む。
【0104】
量子ドット(Quantum dot)は、半導体のナノメートルサイズの微粒子で、電子や励起子がナノメートルサイズの小さな結晶内に閉じ込められる量子閉じ込め効果(量子サイズ効果)により、特異的な光学的、電気的性質を示し、半導体ナノ粒子とか、半導体ナノ結晶とも呼ばれるものである。
量子ドットは、半導体のナノメートルサイズの微粒子であり、量子閉じ込め効果(量子サイズ効果)を生じる材料であれば特に限定されない。量子ドットとしては、自らの粒径によって発光色が規制される半導体微粒子及びドーパントを有する半導体微粒子が挙げられる。
【0105】
量子ドットは、その粒径により発光色を異にするものであり、例えば、CdSeからなるコアのみから構成される量子ドットの場合、粒径が2.3nm、3.0nm、3.8nm、4.6nmの時の蛍光スペクトルのピーク波長は、528nm、570nm、592nm、637nmである。つまり、ピーク波長637nmの二次光を放出する量子ドットの粒径は4.6nmであり、ピーク波長528nmの二次光を放出する量子ドットの粒径は2.3nmである。
量子ドットは、赤に相当する波長の二次光を放出する量子ドット、及び緑に相当する波長の二次光を放出する量子ドットから選ばれる1種以上を含むことが好ましく、赤に相当する波長の二次光を放出する量子ドット、及び、緑に相当する波長の二次光を放出する量子ドットを含むことがより好ましい。
量子ドットは、赤に相当する波長の二次光を放出する量子ドット、及び緑に相当する波長の二次光を放出する量子ドット以外の量子ドットを含有してもよい。
【0106】
量子ドットの含有量は、量子ドット含有層の厚み、バックライトにおける光のリサイクル率、目的とする色味等に応じて適宜調整する。量子ドット含有層の厚みが後述する範囲であれば、量子ドット含有層のバインダー樹脂100質量部に対して、量子ドットの含有量は、0.01質量部以上1.0質量部以下程度である。
【0107】
量子ドットのコアとなる材料として具体的には、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe及びHgTeのようなII-VI族半導体化合物、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaAs、GaP、GaN、GaSb、InN、InAs、InP、InSb、TiN、TiP、TiAs及びTiSbのようなIII-V族半導体化合物、Si、Ge及びPbのようなIV族半導体、等の半導体化合物又は半導体を含有する半導体結晶を例示できる。また、InGaPのような3元素以上を含んだ半導体化合物を含む半導体結晶を用いることもできる。
さらに、ドーパントを有する半導体微粒子からなる量子ドットとしては、上記半導体化合物に、Eu3+、Tb3+、Ag+、Cu+のような希土類金属のカチオン又は遷移金属のカチオンをドープしてなる半導体結晶を用いることもできる。
量子ドットのコアとなる材料としては、作製の容易性、可視域での発光を得られる粒径の制御性、蛍光量子収率の観点から、CdS、CdSe、CdTe、InP、InGaP等の半導体結晶が好適である。
【0108】
量子ドットは、1種の半導体化合物からなるものであっても、2種以上の半導体化合物からなるものであってもよく、例えば、半導体化合物からなるコアと、前記コアと異なる半導体化合物からなるシェルとを有するコアシェル型構造を有していてもよい。
コアシェル型の量子ドットを用いる場合にシェルを構成する半導体としては、励起子がコアに閉じ込められるように、コアを形成する半導体化合物よりもバンドギャップの高い材料を用いることで、量子ドットの発光効率を高めることができる。
このようなバンドギャップの大小関係を有するコアシェル構造(コア/シェル)としては、例えば、CdSe/ZnS、CdSe/ZnSe、CdSe/CdS、CdTe/CdS、InP/ZnS、Gap/ZnS、Si/ZnS、InN/GaN、InP/CdSSe、InP/ZnSeTe、InGaP/ZnSe、InGaP/ZnS、Si/AlP、InP/ZnSTe、InGaP/ZnSTe、InGaP/ZnSSe等が挙げられる。
【0109】
量子ドットのサイズは、所望の波長の光が得られるように、量子ドットを構成する材料によって適宜制御すればよい。量子ドットは粒径が小さくなるに従い、エネルギーバンドギャップが大きくなる。すなわち、結晶サイズが小さくなるにつれて、量子ドットの発光は青色側へ、つまり、高エネルギー側へとシフトする。そのため、量子ドットのサイズを変化させることにより、紫外領域、可視領域、赤外領域のスペクトルの波長全域にわたって、その発光波長を調節することができる。
一般的には、量子ドットの粒径(直径)は0.5nm以上20nm以下の範囲であることが好ましく、特に1nm以上10nm以下の範囲であることが好ましい。なお、量子ドットのサイズ分布が狭いほど、より鮮明な発光色を得ることができる。
量子ドットの形状は特に限定されず、例えば、球状、棒状、円盤状、その他の形状であってもよい。量子ドットの粒径は、粒子ドットが球状でない場合、同体積を有する真球状の値とすることができる。
量子ドットは、樹脂で被覆されているものであってもよい。
【0110】
量子ドット含有層のバインダー樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂組成物の硬化物、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物が挙げられる。これらの中でも、耐久性の観点から、熱硬化性樹脂組成物の硬化物、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物が好ましく、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物がより好ましい。
【0111】
熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも熱硬化性樹脂を含む組成物であり、加熱により、硬化する樹脂組成物である。熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂の他に、後述するチオール化合物を含むことが好ましく、多官能チオール化合物を含むことがより好ましい。
熱硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂組成物には、これら硬化性樹脂に、必要に応じて硬化剤が添加される。
【0112】
電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性官能基を有する化合物(以下、「電離放射線硬化性化合物」ともいう)を含む組成物である。電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性化合物の他に、後述するチオール化合物を含むことが好ましく、多官能チオール化合物を含むことがより好ましい。
【0113】
電離放射線硬化性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合基、及びエポキシ基、オキセタニル基等が挙げられ、その中でもエチレン性不飽和結合基が好ましい。また、エチレン性不飽和結合基の中でも(メタ)アクリレート基が好ましい。以下、(メタ)アクリロイル基を有する電離放射線硬化性化合物を(メタ)アクリレート系化合物と称する。すなわち、バインダー樹脂は、(メタ)アクリレート系化合物を含む組成物の硬化物を含むことが好ましい。
なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」は、メタクリレート及びアクリレートを指すものである。また、本明細書において、「電離放射線」は、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線又は電子線が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も使用可能である。
【0114】
電離放射線硬化性化合物は、上記官能基を1つのみ有する単官能の電離放射線硬化性化合物であってもよく、上記官能基を2つ以上有する多官能の電離放射線硬化性化合物であってもよく、これらの混合物であってもよい。これらの中でも、多官能の電離放射線硬化性化合物が好ましく、2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有してなる多官能の(メタ)アクリレート系化合物がより好ましい。すなわち、バインダー樹脂は、多官能の電離放射線硬化性化合物の硬化物を含むことが好ましく、多官能(メタ)アクリレート系化合物の硬化物を含むことがより好ましい。さらには、バインダー樹脂は、多官能の電離放射線硬化性化合物及びチオール化合物を含む組成物の硬化物を含むことが好ましく、多官能(メタ)アクリレート系化合物及びチオール化合物を含む組成物の硬化物を含むことがより好ましい。
【0115】
多官能(メタ)アクリレート系化合物は、アルキレンオキシ基を有するものであってもよい。
アルキレンオキシ基としては、例えば、炭素数が2~4のアルキレンオキシ基が好ましく、炭素数が2又は3のアルキレンオキシ基がより好ましく、炭素数が2のアルキレンオキシ基がさらに好ましい。
【0116】
アルキレンオキシ基を有する多官能(メタ)アクリレート系化合物は、複数個のアルキレンオキシ基を含むポリアルキレンオキシ基を有する多官能(メタ)アクリレート系化合物であってもよい。
多官能(メタ)アクリレート系化合物がアルキレンオキシ基を有する場合、一分子中のアルキレンオキシ基の数は、2個以上30個以下であることが好ましく、2個以上20個以下であることがより好ましく、3個以上10個以下であることがさらに好ましく、3個以上5個以下であることがよりさらに好ましい。
【0117】
多官能(メタ)アクリレート系化合物がアルキレンオキシ基を有する場合、ビスフェノール構造を有することが好ましい。これにより、硬化物の耐熱性が向上する傾向にある。ビスフェノール構造としては、例えば、ビスフェノールA構造及びビスフェノールF構造が挙げられ、中でも、ビスフェノールA構造が好ましい。
アルキレンオキシ基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物としては、中でも、エトキシ化ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート及びプロポキシ化エトキシ化ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレートが好ましく、エトキシ化ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0118】
また、電離放射線硬化性化合物は、モノマーであってもよく、オリゴマーであってもよく、低分子量のポリマーであってもよく、これらの混合物であってもよい。
【0119】
上述したように、熱硬化性樹脂組成物及び電離放射線硬化性樹脂組成物は、好ましくはチオール化合物を含む。
チオール化合物は、R-SHで表される単位(Rは有機基)を一つ以上有する化合物である。本明細書において、R-SHで表される単位を一つ有する化合物を単官能チオール化合物、R-SHで表される単位を二つ以上有する化合物を多官能チオール化合物と称する。
【0120】
チオール化合物は、単官能チオール化合物でもよいが、量子ドット含有層の強度を良好にする観点から、多官能チオール化合物が好ましい。また、多官能チオール化合物の中でも、3官能チオール化合物又は4官能チオール化合物がより好ましい。
【0121】
チオール化合物は、ラジカル重合開始剤の存在下で、ラジカル重合性官能基を有する化合物と、下記式のチオール-エン反応を起こす。チオール-エン反応は重合収縮を抑制できるため、量子ドット含有層の硬化時に生じる応力を緩和し、その結果、波長変換シートの層間密着性をより向上しやすい点で好ましい。また、チオール-エン反応により得られた硬化物は、耐熱性を良好にしやすい点で好ましい。さらに、チオール化合物の屈折率(約1.53)は、多官能(メタ)アクリレート系化合物の屈折率(約1.45)よりも高いため、量子ドット含有層の屈折率の調整の自由度を高めることができる。
なお、下記の反応は単官能チオール化合物と、一つのラジカル重合性官能基を有する化合物との反応例である。多官能チオール化合物と、二以上のラジカル重合性官能基を有する化合物との反応物はデンドリマー構造を形成しやすいと考えられる。そして、デンドリマー構造を形成した場合、量子ドット含有層の柔軟性が増し、量子ドット含有層自体が優れた応力緩和性を発揮しやすくなると考えられる。ラジカル重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合含有基が挙げられる。
【0122】
【0123】
単官能チオール化合物の具体例としては、ヘキサンチオール、1-ヘプタンチオール、1-オクタンチオール、1-ノナンチオール、1-デカンチオール、3-メルカプトプロピオン酸、メルカプトプロピオン酸メチル、メルカプトプロピオン酸メトキシブチル、メルカプトプロピオン酸オクチル、メルカプトプロピオン酸トリデシル、2-エチルヘキシル-3-メルカプトプロピオネート、n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート等が挙げられる。
【0124】
多官能チオール化合物の具体例としては、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、1,2-プロピレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(3-メルカプトブチレート)、1,4-ブタンジオールビス(3-メルカプトプロピオネート)、1,4-ブタンジオールビス(3-メルカプトブチレート)、1,8-オクタンジオールビス(3-メルカプトプロピオネート)、1,8-オクタンジオールビス(3-メルカプトブチレート)、ヘキサンジオールビスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトイソブチレート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトイソブチレート)、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトイソブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトイソブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(2-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトイソブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(2-メルカプトイソブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ジペンタエリスリトールヘキサキスチオグリコレート等が挙げられる。
【0125】
電離放射線硬化性樹脂組成物(又は熱硬化性樹脂樹脂組成物)中において、電離放射線硬化性化合物(又は熱硬化性樹脂)と、チオール化合物との質量比は、80:20~35:65であることが好ましく、70:30~40:60であることがより好ましい。
【0126】
電離放射線硬化性化合物が紫外線硬化性化合物である場合には、電離放射線硬化性組成物は、光重合開始剤や光重合促進剤等の添加剤を含むことが好ましい。
【0127】
量子ドット含有層中には、内部拡散粒子を含んでいてもよい。
内部拡散粒子は、有機粒子及び無機粒子の何れも用いることができる。有機粒子としては、ポリメチルメタクリレート、アクリル-スチレン共重合体、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ベンゾグアナミン-メラミン-ホルムアルデヒド縮合物、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂及びポリエステル等からなる粒子が挙げられる。無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア及びチタニア等からなる微粒子が挙げられる。
内部拡散粒子の形状は、球形、円盤状、ラグビーボール状、不定形等の形状が挙げられる。また、内部拡散粒子は、中空粒子、多孔質粒子及び中実粒子の何れであってもよい。
【0128】
内部拡散粒子の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、1質量部以上40質量部以下であることが好ましく、3質量部以上30質量部以下であることがより好ましい。
【0129】
内部拡散粒子の平均粒子径は、1μm以上7μm以下であることが好ましく、1μm以上3μm以下であることがより好ましい。
【0130】
量子ドット含有層の厚みは、10μm以上200μm以下であることが好ましく、20μm以上150μm以下であることがより好ましく、30μm以上130μm以下であることがさらに好ましい。
【0131】
量子ドット含有層の屈折率nZは、1.40以上1.55以下であることが好ましく、1.43以上1.52以下であることがより好ましく、1.46以上1.50以下であることがさらに好ましい。
量子ドット含有層の屈折率nZは、概ねバインダー樹脂の屈折率に支配される。量子ドット含有層は、量子ドットの含有量は少なく、また、内部拡散剤が入っていたとしても、内部拡散剤は粒子径が光の波長よりも大きく、層の屈折率には影響しないためである。
【0132】
<量子ドット含有層と接する層が有機被覆層Dの場合>
バリアフィルムの量子ドット含有層と接する層が有機被覆層Dである場合、例えば、下記の(i-1)~(i-4)の実施形態が挙げられる。なお、nZは量子ドット含有層の屈折率を意味する。
【0133】
(i-1)nD>nZであり、かつ、前記式1で示されるd1が、x±0.10の範囲を示す(但し、xは3~13の奇数の整数)。
(i-2)nD>nZであり、かつ、前記式1で示されるd1が、x±0.10の範囲を示す(但し、xは2~12の偶数の整数)。
(i-3)nD<nZであり、かつ、前記式1で示されるd1が、x±0.10の範囲を示す(但し、xは3~13の奇数の整数)。
(i-4)nD<nZであり、かつ、前記式1で示されるd1が、x±0.10の範囲を示す(但し、xは2~12の偶数の整数)。
【0134】
(i-1)~(i-4)の実施形態の中では、バリアフィルムの分光透過スペクトルの波形が450nm近傍にピークを有するようにする観点から、(i-1)及び(i-4)が好ましい。また、屈折率の大小関係を満たしやすくする観点からは、(i-1)がより好ましい。
なお、(i-1)~(i-4)において、「x±0.10」は、x±0.07であることがより好ましく、x±0.05であることがより好ましく、x±0.03であることがより好ましく、x±0.01であることがより好ましい。
また、(i-1)及び(i-3)において、式1で示されるd1における「x」は、3~11の奇数の整数であることが好ましく、9~11の奇数の整数であることがより好ましい。
また、(i-2)及び(i-4)において、式1で示されるd1における「x」は、4~12の偶数の整数であることが好ましく、10~12の偶数の整数であることがより好ましい。
【0135】
また、(i-1)~(i-4)の実施形態は、下記の(i-1A)~(i-4A)の実施形態であることが好ましい。
(i-1A)nD>nZであり、かつ、前記式1で示されるd1が、x~x+0.10の範囲を示す(但し、xは3~13の奇数の整数)。
(i-2A)nD>nZであり、かつ、前記式1で示されるd1が、x-0.10~xの範囲を示す(但し、xは2~12の偶数の整数)。
(i-3A)nD<nZであり、かつ、前記式1で示されるd1が、x-0.10~xの範囲を示す(但し、xは3~13の奇数の整数)。
(i-4A)nD<nZであり、かつ、前記式1で示されるd1が、x~x+0.10の範囲を示す(但し、xは2~12の偶数の整数)。
【0136】
(i-1A)~(i-4A)の実施形態は、量子ドットの劣化によってL2の光量が低下し、かつ、L1の透過率も減少するため、L1及びL2のバランスが崩れにくくなり、色味の変化をより抑制できる点で好ましい。
(i-1A)~(i-4A)の実施形態の中でも、バリアフィルムの分光透過スペクトルの波形が450nm近傍にピークを有するようにする観点から、(i-1A)及び(i-4A)が好ましく、屈折率の大小関係を満たしやすくする観点からは、(i-1A)がより好ましい。
【0137】
また、(i-1A)及び(i-4A)において、「x~x+0.10」は、x~x+0.07であることがより好ましく、x~x+0.05であることがより好ましく、x~x+0.03であることがより好ましく、x~x+0.01であることがより好ましい。
また、(i-2A)及び(i-3A)において、「x-0.10~x」は、x-0.07~xであることがより好ましく、x-0.05~xであることがより好ましく、x-0.03~xであることがより好ましく、x-0.01~xであることがより好ましい。
また、(i-1A)及び(i-3A)において、式1で示されるd1における「x」は、3~11の奇数の整数であることが好ましく、9~11の奇数の整数であることがより好ましい。
また、(i-2A)及び(i-4A)において、式1で示されるd1における「x」は、4~12の偶数の整数であることが好ましく、10~12の偶数の整数であることがより好ましい。
【0138】
<量子ドット含有層と接する層がプライマー層Eの場合>
バリアフィルムの量子ドット含有層と接する層がプライマー層Eである場合、例えば、下記の(ii-1)~(ii-4)の実施形態が挙げられる。なお、nZは量子ドット含有層の屈折率を意味する。
【0139】
(ii-1)nE>nZであり、かつ、前記式2で示されるd2が、y±0.10の範囲を示す(但し、yは5~27の奇数の整数)。
(ii-2)nE>nZであり、かつ、前記式2で示されるd2が、y±0.10の範囲を示す(但し、yは4~26の偶数の整数)。
(ii-3)nE<nZであり、かつ、前記式2で示されるd2が、y±0.10の範囲を示す(但し、yは5~27の奇数の整数)。
(ii-4)nE<nZであり、かつ、前記式2で示されるd2が、y±0.10の範囲を示す(但し、yは4~26の偶数の整数)。
【0140】
(ii-1)~(ii-4)の実施形態の中では、バリアフィルムの分光透過スペクトルの波形が450nm近傍にピークを有するようにする観点から、(ii-1)及び(ii-4)が好ましい。また、屈折率の大小関係を満たしやすくする観点からは、(ii-1)がより好ましい。
なお、(ii-1)~(ii-4)において、「y±0.10」は、y±0.07であることがより好ましく、y±0.05であることがより好ましく、y±0.03であることがより好ましく、y±0.01であることがより好ましい。
また、(ii-1)及び(ii-3)において、式2で示されるd2における「y」は、5~19の奇数の整数であることが好ましく、9~15の奇数の整数であることがより好ましく、11~13の奇数の整数であることがさらに好ましい。
また、(ii-2)及び(ii-4)において、式2で示されるd2における「y」は、6~20の偶数の整数であることが好ましく、10~16の偶数の整数であることがより好ましく、12~14の偶数の整数であることがさらに好ましい。
【0141】
また、(ii-1)~(ii-4)の実施形態は、下記の(ii-1A)~(ii-4A)の実施形態であることが好ましい。
(ii-1A)nE>nZであり、かつ、前記式2で示されるd2が、y~y+0.10の範囲を示す(但し、yは5~27の奇数の整数)。
(ii-2A)nE>nZであり、かつ、前記式2で示されるd2が、y-0.10~yの範囲を示す(但し、yは4~26の偶数の整数)。
(ii-3A)nE<nZであり、かつ、前記式2で示されるd2が、y-0.10~yの範囲を示す(但し、yは5~27の奇数の整数)。
(ii-4A)nE<nZであり、かつ、前記式2で示されるd2が、y~y+0.10の範囲を示す。(但し、yは4~26の偶数の整数)
【0142】
(ii-1A)~(ii-4A)の実施形態は、量子ドットの劣化によってL2の光量が低下し、かつ、L1の透過率も減少するため、L1及びL2のバランスが崩れにくくなり、色味の変化をより抑制できる点で好ましい。
(ii-1A)~(ii-4A)の実施形態の中でも、バリアフィルムの分光透過スペクトルの波形が450nm近傍にピークを有するようにする観点から、(ii-1A)及び(ii-4A)が好ましく、屈折率の大小関係を満たしやすくする観点からは、(ii-1A)がより好ましい。
【0143】
また、(ii-1A)及び(ii-4A)において、「y~y+0.10」は、y~y+0.07であることがより好ましく、y~y+0.05であることがより好ましく、y~y+0.03であることがより好ましく、y~y+0.01であることがより好ましい。
また、(ii-2A)及び(ii-3A)において、「y-0.10~y」は、y-0.07~yであることがより好ましく、y-0.05~yであることがより好ましく、y-0.03~yであることがより好ましく、y-0.01~yであることがより好ましい。
また、(ii-1A)及び(ii-3A)において、式2で示されるd2における「y」は、5~19の奇数の整数であることが好ましく、9~15の奇数の整数であることがより好ましく、11~13の奇数の整数であることがさらに好ましい。
また、(ii-2A)及び(ii-4A)において、式2で示されるd2における「y」は、6~20の偶数の整数であることが好ましく、10~16の偶数の整数であることがより好ましく、12~14の偶数の整数であることがさらに好ましい。
【0144】
[バックライト]
本開示のバックライトは、一次光を放出する少なくとも1つの光源と、前記光源に隣接して配置され、導光又は拡散のための光学板と、前記光学板の光出射側に配置された波長変換シートとを備えたバックライトにおいて、前記波長変換シートが上述した本開示の波長変換シートであるものである。
【0145】
本開示のバックライト300としては、一例として、
図5に示すようなエッジライト型のバックライト301、あるいは、
図6に示すような直下型のバックライト302が挙げられる。
【0146】
図5のエッジライト型のバックライト301に用いられる光学板220は、光源210で放出された一次光を導光するための光学部材であり、いわゆる導光板221である。導光板221は、例えば、少なくとも一つの面を光入射面とし、これと略直交する一方の面を光出射面とするように成形された略平板状の形状からなる。
【0147】
導光板は、主としてポリメチルメタクリレート等の高透明な樹脂から選ばれるマトリックス樹脂からなる。導光板は、必要に応じてマトリックス樹脂と屈折率の異なる樹脂粒子が添加されていてもよい。導光板の各面は、一様な平面ではなく複雑な表面形状をしているものであってもよく、ドットパターン等が設けられていてもよい。
【0148】
図6の直下型のバックライト302に用いられる光学板220は、光源210のパターンを見えにくくするための光拡散性を有する光学部材(光拡散板222)である。光拡散板222としては、例えば、厚み1mm以上3mm以下程度の乳白色の樹脂板が挙げられる。
【0149】
エッジライト型及び直下型のバックライトには、上述した光源、光学板及びバリアフィルムの他に、目的に応じて、反射板、光拡散フィルム、プリズムシート、輝度上昇フィルム(BEF)及び反射型偏光フィルム(DBEF)等から選ばれる一種以上の部材を備えていてもよい。
反射板は、光学板の光出射面側と反対側に配置される。光拡散フィルム、プリズムシート、輝度上昇フィルム及び反射型偏光フィルムは、光学板の光出射面側に配置される。反射板、光拡散フィルム、プリズムシート、輝度上昇フィルム及び反射型偏光フィルム等から選ばれる一種以上の部材を備える構成とすることで、正面輝度、視野角等のバランスに優れたバックライトとすることができる。
【0150】
エッジライト型及び直下型のバックライトにおいて、光源210は、一次光を放出する発光体であり、青に相当する波長の一次光を放出する発光体を用いることが好ましい。青に相当する波長の一次光は、ピーク波長が380nm以上480nm以下の範囲であることが好ましい。ピーク波長の範囲は、450nm±7nmであることがより好ましく、450nm±5nmであることがより好ましく、450nm±3nmであることがより好ましく、450nm±1nmであることがより好ましい。
光源210としては、バックライトを設置する装置が単純化及び小型化できるという観点から、LED光源であることが好ましく、青色単色のLED光源であることがより好ましい。光源210は、少なくとも1つであり、十分な一次光を放出するという観点から、複数個であることが好ましい。
【0151】
波長変換シートを含むバックライトは、国際照明委員会(CIE)のYxy表色系に関して、下記の高温高湿試験前後のx値の差(Δx)及びy値の差(Δy)が、何れも0.020以下であることが好ましく、何れも0.010以下であることがより好ましい。Δx及びΔyを0.020以下とすることにより、色味の変化を抑制することができる。
高温高湿試験:60℃、相対湿度90%の雰囲気に1000時間晒す試験
なお、高温高湿試験後のx値及びy値は、高温高湿試験の環境から測定用サンプルを取り出した後、速やかに、温度23℃±5℃、相対湿度40%以上65%以下の雰囲気で測定するものとする。
【0152】
[液晶表示装置]
本開示の液晶表示装置は、バックライト及び液晶パネルを備えた液晶表示装置であって、前記バックライトが上述した本開示のバックライトであるものである。
【0153】
液晶パネルは、特に限定されず、液晶表示装置の液晶パネルとして汎用のものを用いることができる。例えば、液晶層の上下をガラス板で挟んだ一般的な構造を有する液晶パネル、具体的には、TN、STN、VA、IPS及びOCB等の表示方式のものを用いることができる。
【0154】
液晶表示装置は、さらに、偏光板及びカラーフィルタ等を備える。偏光板及びカラーフィルタは汎用のものを用いることができる。
【0155】
液晶表示装置の表示画像は、バックライトから照射された白色光がカラーフィルタを透過することでカラー表示される。液晶表示装置は、量子ドットによるバックライトのスペクトルと適合するカラーフィルタを用いることで、明るさと効率に優れ、非常に鮮明な色を生成するディスプレイを実現することができる。
【実施例】
【0156】
次に、本開示を実施例により更に詳細に説明するが、本開示はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、「部」及び「%」は特に断りのない限り質量基準とする。
【0157】
1.測定及び評価
実施例及び比較例のバリアフィルム又は波長変換シートに関して、下記の測定及び評価を行った。結果を表1又は2に示す。
【0158】
1-1.水蒸気透過度
実施例及び比較例のバリアフィルムに関して、JIS K7129-2:2019による水蒸気透過度の値を測定した。測定装置は、MOCON社製の商品名「PERMATRAN」を用いた。水蒸気透過度を測定する際の温度及び湿度の条件は、40℃、相対湿度90%とした。また、水蒸気透過度の測定前に、測定用のサンプルを温度23℃±5℃、相対湿度40%以上65%以下の雰囲気に30分以上晒した。このようにして測定された水蒸気透過度は、初期段階の水蒸気透過度を意味する。水蒸気透過度が0.20g/m2・day以下であるものが合格レベルである。
【0159】
1-2.全光線透過率
実施例及び比較例のバリアフィルムに関して、全光線透過率を測定した。光入射面は、光透過性基材とは反対側の面とした。測定装置は、ヘイズメーター(HM-150、村上色彩技術研究所製)を用いた。全光線透過率が85%以上のものが合格レベルである。
なお、全光線透過率は、温度23℃±5℃、相対湿度40%以上65%以下の雰囲気で測定した。また、測定前にサンプルを前記雰囲気に30分以上晒した。このようにして測定された全光線透過率は、初期段階の全光線透過率を意味する。
【0160】
1-3.b*値
実施例及び比較例のバリアフィルムに関して、L*a*b*表色系のb*値(透過のb*値)を測定した。光入射面は、光透過性基材とは反対側の面とした。測定装置は日本分光社製の分光光度計(商品名:V670)を用いた。b*値が1.0以下のものが合格レベルである。
なお、b*値は、温度23℃±5℃、相対湿度40%以上65%以下の雰囲気で測定した。また、測定前にサンプルを前記雰囲気に30分以上晒した。このようにして測定されたb*値は、初期段階のb*値を意味する。
【0161】
1-4.分光透過率
実施例1及び比較例1のバリアフィルムに関して、光透過性基材とは反対側の面を光入射面として、波長380nm以上780nm以下の分光透過率を測定した(測定波長間隔;1nm)。測定装置は日本分光社製の分光光度計(商品名:V670)を用い、付属ユニット等として下記のものを用いた。
・付属ユニット;積分球ユニット(日本分光株式会社製、品番:ISN-723)
・光源;重水素ランプ(190nm~350nm)、ハロゲンランプ(330nm~2700nm)
・測定スポット径:2mm~20mm
実施例1のバリアフィルムの分光透過率を
図7、比較例1のバリアフィルムの分光透過率を
図8に示す。また、参考例として、実施例1のバリアフィルムからプライマー層を除いたバリアフィルムの分光透過率を
図9、比較例1のバリアフィルムからプライマー層を除いたバリアフィルムの分光透過率を
図10に示す。なお、
図7~
図10は、横軸が波長(単位は「nm」)、縦軸が透過率(「%」)である。
なお、分光透過率は、温度23℃±5℃、相対湿度40%以上65%以下の雰囲気で測定した。また、測定前にサンプルを前記雰囲気に30分以上晒した。このようにして測定された分光透過率は、初期段階の分光透過率を意味する。
【0162】
1-5.Δx、Δy
<測定用の直下型バックライトの準備>
直下型バックライトを備える市販の液晶テレビ(VIZIO社製、PQ65-F1)を分解し、直下型バックライトを取り出した。前記直下型バックライトには、光源として発光中心波長が450nm、半値全幅が20nmの直下型の青色LEDが搭載されている。また、前記光源の光出射側には、光拡散板、量子ドット含有層を含む波長変換シート、プリズムシート及び反射偏光板(輝度向上フィルム、スリーエム社製、DBEF(登録商標))が、この順に配置されている。また、光源の光出射側と反対側には、反射シートが備えられている。
前記直下型バックライト中の波長変換シートを、実施例及び比較例の波長変換シートに変更し、「初期段階のx値及びy値測定用の直下型バックライト」を得た。なお、実施例及び比較例の波長変換シートは、直下型バックライトに組み込む前に、温度23℃±5℃、相対湿度40%以上65%以下の雰囲気に30分以上晒した。
また、前記直下型バックライト中の波長変換シートを、高温高湿試験(60℃、相対湿度90%の雰囲気に1000時間晒す試験)を実施した実施例及び比較例の波長変換シートに変更し、「高温高湿試験後のx値及びy値測定用の直下型バックライト」を得た。高温高湿試験を実施した実施例及び比較例の波長変換シートを直下型バックライトに組み込む作業は、温度23℃±5℃、相対湿度40%以上65%以下の雰囲気において速やかに行った。
そして、前記の測定用の直下型バックライトに関して、以下の測定環境下で測定を実施した。
<初期段階のx値及びy値>
初期段階のx値及びy値測定用の直下型バックライトを点灯し、暗室環境下において、500mm離れた正面方向から、国際照明委員会(CIE)のYxy表色系のx値及びy値を測定した。測定雰囲気は、温度23℃±5℃、相対湿度40%以上65%以下とした。また、測定前にサンプルを前記雰囲気に30分以上晒した。測定装置はトプコンテクノハウス社製の分光放射計(商品名:SR-3AR)を用いた。
<高温高湿試験後のx値及びy値>
高温高湿試験後のx値及びy値測定用の直下型バックライトを点灯し、暗室環境下において、500mm離れた正面方向から、国際照明委員会(CIE)のYxy表色系のx値及びy値を測定した。測定雰囲気は温度23℃±5℃、相対湿度40%以上65%以下とした。測定装置はトプコンテクノハウス社製の分光放射計(商品名:SR-3AR)を用いた。
<Δx、Δy>
初期段階のx値と高温高湿試験後のx値との差(Δx)、及び、初期段階のy値と高温高湿試験後のy値との差(Δy)を算出した。Δx及びΔyが何れも0.020以下であるものが合格レベルである。
【0163】
2.量子ドット分散液の作製
酸素濃度が300ppm以下となるように窒素パージしたグローブボックス内において、量子ドット及びアミノ変性シリコーンを下記に示す組成比で混合し、90℃で湯煎しながら、マグネチックスターラーにて4時間攪拌した。その後、孔径0.2μmのポリプロピレン性フィルタでろ過して、CdSe/ZnSコアシェル型量子ドット分散液を得た。
・量子ドット 0.9質量部
(発光ピーク:540nm、製造番号:748056、シグマアルドリッチ社製)
・量子ドット 0.9質量部
(発光ピーク:630nm、製造番号:790206、シグマアルドリッチ社製)
・アミノ変性シリコーン 99質量部
(Genesee社製、品番:GP-344、粘度:670mPa・s)
【0164】
3.バリアフィルムの作製、及び波長変換シートの作製
[実施例1]
二軸延伸PETフィルム(屈折率n0:1.636、厚みt0:12μm)の一方の面上に、真空蒸着法により酸化アルミニウムを蒸着し、無機酸化物層A(屈折率nA:1.77、厚みtA:8nm)を形成した。
次いで、無機酸化物層A上に、下記の有機被覆層形成用塗布液をグラビア印刷により塗布し、180℃で60秒間加熱処理し、有機被覆層B(屈折率nB:1.55、厚みtB:251nm)を形成した。
次いで、有機被覆層B上に、真空蒸着法により酸化アルミニウムを蒸着し、無機酸化物層C(屈折率nC:1.77、厚みtC:8nm)を形成した。
次いで、無機酸化物層C上に、下記の有機被覆層形成用塗布液をグラビア印刷により塗布し、180℃で60秒間加熱処理し、有機被覆層D(屈折率nD:1.55、厚みtD:251nm)を形成した。
次いで、有機被覆層D上に、下記のプライマー層形成用塗布液をグラビア印刷により塗布し、80℃で60秒間加熱処理し、プライマー層E(屈折率nE:1.575、厚みtE:143nm)を形成し、実施例1のバリアフィルムを得た。なお、同一構成のバリアフィルムを2つ作製した。
【0165】
<有機被覆層形成用塗布液の調製>
水、イソプロピルアルコ―ル及び0.5N塩酸を混合した溶液(pH2.2)に、テトラエトキシシランを10℃になるように冷却しながら混合させて、溶液Aを調整した。別途、ケン化価99%以上のポリビニルアルコール、イソプロピルアルコールを混合した溶液Bを調整した。溶液Aと溶液Bとを混合し、有機被覆層形成用塗布液(固形分:5質量%)を調整した。有機被覆層形成用塗布液中において、テトラエトキシシランとポリビニルアルコールとの質量比は29:4である。
【0166】
<プライマー層形成用塗布液>
・ポリエステルポリウレタンポリオール 50質量部
(水酸基価:62mgKOH/g、固形分20質量%)
・シランカップリング剤 1質量部
(3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン)
・シリカフィラー 1質量部
(平均粒径5μm)
・硬化剤 1質量部
(1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、固形分35%)
・溶剤 50質量部
(メチルエチルケトン)
【0167】
上記で作製した2つのバリアフィルムのうちの一方のバリアフィルムのプライマー層側の面に、下記処方の量子ドット含有層塗布液を塗布、乾燥し、電離放射線未照射の量子ドット含有層を形成してなる積層体Aを得た。
次いで、積層体Aの電離放射線未照射の量子ドット含有層側の面と、他方のバリアフィルムのプライマー層側の面とが対向するように積層した後、紫外線を照射して、量子ドット含有層の電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化を進行させ、実施例1の波長変換シートを得た。量子ドット含有層の厚みは100μm、屈折率は1.48である。
【0168】
<量子ドット含有層塗布液>
・多官能アクリレート系化合物 58.11質量部
(エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート;新中村化学工業社の商品名「ABE-300」)
・多官能チオール化合物 38.74質量部
(ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート);SC有機化学社の商品名「PEMP」)
・光重合開始剤 0.5質量部
(IGM Resins B.V.社の商品名「Omnirad TPO H」)
・上記「2」で作製した量子ドット分散液 1.61質量部
・酢酸 0.79質量部
・酸化チタン 0.25質量部
(Chemours社の商品名「タイピュア R-706」;粒子径0.36μm)
【0169】
[実施例2~13]
有機被覆層B、有機被覆層D及びプライマー層Eの厚みを表1の値に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~13のバリアフィルム及び波長変換シートを得た。
【0170】
[実施例14]
有機被覆層B及び有機被覆層Dの厚みを表1の値に変更し、有機被覆層D上にプライマー層Eを形成しなかった以外は、実施例1と同様にして、実施例14のバリアフィルム及び波長変換シートを得た。
【0171】
[比較例1~3]
有機被覆層B、有機被覆層D及びプライマー層Eの厚みを表2の値に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1~3のバリアフィルム及び波長変換シートを得た。
【0172】
[比較例4]
有機被覆層B上にプライマー層Eを形成し、無機酸化物層C及び有機被覆層Dを形成しなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例4のバリアフィルム及び波長変換シートを得た。
【0173】
[比較例5]
無機酸化物層A及び無機酸化物層Cを酸化ケイ素の蒸着膜(屈折率:1.457)に変更し、有機被覆層B、有機被覆層D及びプライマー層Eの厚みを表2の値に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例5のバリアフィルム及び波長変換シートを得た。
【0174】
【0175】
【0176】
表1の結果から、実施例のバリアフィルムは、波長変換シートに適用した際に、色味の変化を抑制し得ることが確認できる。特に、式1で示されるd
1及び式2で示されるd
2が奇数の整数の近傍である実施例1~10、13~14は、d
1及びd
2が偶数の整数の近傍である実施例11~12のものに比べて、色味の変化をより抑制し得ることが確認できる。
一方、表2の結果から、比較例のバリアフィルムは、波長変換シートに適用した際に、色味の変化を抑制できないことが確認できる。比較例1のバリアフィルムは、式1で示されるd
1及び式2で示されるd
2が、整数の近傍から遠い値を示すため、色味の変化を抑制できないものであった。比較例2のバリアフィルムは、d
1及びd
2が奇数の整数の近傍であるが、d
1及びd
2の値が2未満である(≒有機被覆層B及びD等の厚みが薄すぎる)ため、バリア性が劣り、色味の変化を抑制できないものであった。比較例3のバリアフィルムは、d
1及びd
2が偶数の整数の近傍であるが、d
1及びd
2の値が13を超える(≒有機被覆層B及びD等の厚みが厚すぎる)ため、高湿環境下で有機被覆層B及びDが過度に膨潤し、色味の変化を抑制できないものであった。比較例4のバリアフィルムは、無機酸化物層が1層のみであるため、バリア性が劣り、色味の変化を抑制できないものであった。比較例5のバリアフィルムは、無機酸化物層が厚み30nmシリカの層である。シリカはアルミナと同等のバリア特性を得るためには、厚みを厚くする必要があるが、比較例5のバリアフィルムはシリカの層の厚みが30nmと厚いため、バリア性は十分である。しかし、厚みの厚いシリカのために初期段階のb*値が高いものであった。また、比較例5のバリアフィルムは、有機被覆層及びプライマー層の組成及び厚みが実施例3と同一であるが、無機酸化物層が厚みの厚いシリカの層であるため、バリアフィルムの分光透過スペクトルの波形にシリカの無機酸化物層が影響を及ぼし、実施例3に比べて色味の変化を抑制できないものであった。
また、
図7と
図8との比較から、式2で示されるd
2を奇数の整数の近傍とすることにより、バリアフィルムの分光透過率が450nm近傍でピークを示すようにし得ることが確認できる。また、
図9と
図10との比較から、式1で示されるd
1を奇数の整数の近傍とすることにより、バリアフィルムの分光透過率が450nm近傍でピークを示すようにし得ることが確認できる。
【符号の説明】
【0177】
10:光透過性基材
21:無機酸化物層A
22:無機酸化物層C
31:有機被覆層B
32:有機被覆層D
40:プライマー層
50:量子ドット含有層
100:バリアフィルム
100a:バリアフィルム
100b:バリアフィルム
200:波長変換シート
210:光源
220:光学板
221:導光板
222:拡散板
230:反射板
240:プリズムシート
300:バックライト
301:エッジライト型バックライト
302:直下型バックライト