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7552708インクジェットヘッドおよびその製造方法、ならびに画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】インクジェットヘッドおよびその製造方法、ならびに画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20240910BHJP
   B41J 2/16 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
B41J2/14 607
B41J2/16 517
B41J2/16 503
B41J2/14 305
B41J2/14 613
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022553328
(86)(22)【出願日】2020-09-30
(86)【国際出願番号】 JP2020037226
(87)【国際公開番号】W WO2022070334
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江口 秀幸
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-124882(JP,A)
【文献】特開2007-245589(JP,A)
【文献】特開2019-214167(JP,A)
【文献】特開2006-218716(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0182375(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1孔が形成された、単結晶シリコンを含む一の流路部材と、
前記第1孔と連通し前記第1孔と共にインク流路を成す第2孔が形成された、他の流路部材と、
前記一の流路部材と前記他の流路部材との間に配置され、前記一の流路部材と前記他の流路部材とを接合する接着剤層と、
前記一の流路部材と前記接着剤層との間に配置された、シリコン酸化物を含まない第1保護膜と、
前記第1保護膜と前記一の流路部材との間に配置された、シリコン酸化物を含む化合物を含む第2保護膜と、
を有し、
前記第2保護膜は、前記一の流路部材の、前記他の流路部材に対向する側の面、及び、前記インク流路に対向する側の面を覆い、
前記第1保護膜は、前記第2保護膜の、前記他の流路部材に対向する側の面を覆い、前記インク流路に対向する側の面を覆わない、
インクジェットヘッド。
【請求項2】
前記第1保護膜は、クロム、酸化クロム、タンタル、タンタル酸化物、チタン、酸化チタン、窒化シリコン、およびシリコンカーバイドからなる群から選択される材料を含む、請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項3】
前記シリコン酸化物を含む化合物は、SiO2、SiOC、SiON、TaSiO、ZrSiO、およびTiSiOからなる群から選択される材料を含む、請求項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項4】
前記他の流路部材は、単結晶シリコンを含む流路部材である、請求項1~のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項5】
前記他の流路部材と前記接着剤層との間に配置された、シリコン酸化物を含まない第3保護膜と、前記第3保護膜と前記他の流路部材との間に配置された、シリコン酸化物を含む化合物を含む第4保護膜と、を有し、
前記第4保護膜は、前記他の流路部材の、前記一の流路部材に対向する側の面、及び、前記インク流路に対向する側の面を覆い、
前記第3保護膜は、前記第4保護膜の、前記一の流路部材に対向する側の面を覆い、前記インク流路に対向する側の面を覆わない、
請求項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項6】
第1孔が形成された、単結晶シリコンにより形成された一の流路部材に、シリコン酸化物を含まない第1保護膜と、シリコン酸化物を含む化合物を含む第2保護膜とを形成する工程と、
前記一の流路部材と第2孔が形成された他の流路部材とを、前記第1保護膜が前記他の流路部材と対向するように、接着剤により接着して、前記第1孔と前記第2孔とが連通して成るインク流路を形成する工程と、
を有し、
前記第1保護膜および前記第2保護膜を形成する工程は、
前記第2保護膜が、前記一の流路部材の、前記他の流路部材に対向する側の面、及び、前記インク流路に対向する側の面を覆い、かつ、
前記第1保護膜が、前記第2保護膜の、前記他の流路部材に対向する側の面を覆い、前記インク流路に対向する側の面を覆わないように、
前記第1保護膜および前記第2保護膜を形成する、
インクジェットヘッドの製造方法。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載のインクジェットヘッドを有する、画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドおよびその製造方法、ならびに画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタなどに用いられるインクジェットヘッドとして、微細加工により細孔や溝などを形成した複数の流路部材を、上記細孔や溝などによりインク流路が形成されるように位置合わせして接着させてなるインクジェットヘッドが知られている。
【0003】
引用文献1では、複数の流路部材を接着させてなるインクジェットヘッドにおいて、流路部材の、他の流路部材との接着面に、不働態膜を形成する遷移金属と、Siを含む酸化物と、を含む表面処理膜を形成している。引用文献1によれば、上記表面処理膜は、上記遷移金属によってインクによる腐食を抑制することができ、かつ、上記Siを含む酸化物によって表面処理膜と接着剤との接着性を向上させることができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-198460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のように、インクによる腐食を抑制するために流路部材に形成する表面処理膜として、Siを含む酸化物を含む表面処理膜が公知である。しかし、本発明者らの知見によると、引用文献1に記載の表面処理膜を形成してもなお、接着した流路部材のはがれが生じやすかったりすることがあった。
【0006】
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、接着した流路部材のはがれが生じにくいインクジェットヘッドおよびその製造方法、ならびに当該インクジェットヘッドを備える画像形成装置を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、本発明に係るインクジェットヘッドの一態様によって解決される。
本発明に係るインクジェットヘッドの一態様は、
第1孔が形成された、単結晶シリコンを含む一の流路部材と、
前記第1孔と連通し前記第1孔と共にインク流路を成す第2孔が形成された、他の流路部材と、
前記一の流路部材と前記他の流路部材との間に配置され、前記一の流路部材と前記他の流路部材とを接合する接着剤層と、
前記一の流路部材と前記接着剤層との間に配置された、シリコン酸化物を含まない第1保護膜と、
前記第1保護膜と前記一の流路部材との間に配置された、シリコン酸化物を含む化合物を含む第2保護膜と、
を有し、
前記第2保護膜は、前記一の流路部材の、前記他の流路部材に対向する側の面、及び、前記インク流路に対向する側の面を覆い、
前記第1保護膜は、前記第2保護膜の、前記他の流路部材に対向する側の面を覆い、前記インク流路に対向する側の面を覆わない、
インクジェットヘッドである。
【0008】
また、上記課題は、本発明に係るインクジェットヘッドの製造方法の一態様により解決される。
本発明に係るインクジェットヘッドの製造方法の一態様は、
第1孔が形成された、単結晶シリコンにより形成された一の流路部材に、シリコン酸化物を含まない第1保護膜と、シリコン酸化物を含む化合物を含む第2保護膜とを形成する工程と、
前記一の流路部材と第2孔が形成された他の流路部材とを、前記第1保護膜が前記他の流路部材と対向するように、接着剤により接着して、前記第1孔と前記第2孔とが連通して成るインク流路を形成する工程と、
を有し、
前記第1保護膜および前記第2保護膜を形成する工程は、
前記第2保護膜が、前記一の流路部材の、前記他の流路部材に対向する側の面、及び、前記インク流路に対向する側の面を覆い、かつ、
前記第1保護膜が、前記第2保護膜の、前記他の流路部材に対向する側の面を覆い、前記インク流路に対向する側の面を覆わないように、
前記第1保護膜および前記第2保護膜を形成する、
インクジェットヘッドの製造方法である。
【0009】
また、上記課題は、上記インクジェットヘッドを有する画像形成装置によって解決される。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、接着した流路部材のはがれが生じにくいインクジェットヘッドおよびその製造方法、ならびに当該インクジェットヘッドを備える画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、インクジェット法による画像形成装置の構成を示す模式図である。
図2図2は、図1に示す画像形成装置に用いられる、本発明の第1の実施形態におけるインクジェットヘッドの概要を示す分解斜視図である。
図3図3は、本発明の第1の実施形態におけるインクジェットヘッドが有するヘッドチップの概要を示す、図2における線A-Aに沿った断面図である。
図4図4は、本発明の第1の実施形態におけるインクジェットヘッドが有するヘッドチップの概要を示す、図2における線B-Bに沿った断面図である。
図5図5は、本発明の第1の実施形態におけるインクジェットヘッドにおいて、単結晶シリコンを含む一の流路部材と他の流路部材とが接着剤層により接合している様子を示す、模式部分断面図である。
図6図6A図6Cは、本発明の第1の実施形態におけるインクジェットヘッドを製造する工程を示す第1の工程図である。
図7図7A図7Cは、本発明の第1の実施形態におけるインクジェットヘッドを製造する工程を示す第2の工程図である。
図8図8は、本発明の第1の実施形態におけるインクジェットヘッドを製造する工程を示す第3の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。また、本発明は、以下の形態に限定されるものではない。
【0013】
[第1の実施形態]
(画像形成装置およびインクジェットヘッド)
本発明の第1の実施形態における画像形成装置は、後述の本実施形態に係るインクジェットヘッドを有する以外は公知のインクジェット法による画像形成装置と同様に構成することができる。
【0014】
画像形成装置100は、図1に示すように、インクジェットヘッド1と、インク供給装置120と、搬送装置130と、メインタンク140とを有している。
【0015】
インクジェットヘッド1は、インク滴を被印刷物である用紙などの記録媒体150に吐出するための複数のノズルを有する。たとえば、インクジェットヘッド1には、色の異なる複数種のインクがそれぞれ特定のノズルに供給されるように構成される。インクジェットヘッド1は、例えば、画像を形成すべき記録媒体150の搬送方向Xを横切る方向に走査自在に配置されている。インクジェットヘッド1の構成については後述する。
【0016】
搬送装置130は、インクジェットヘッド1に対して記録媒体150を搬送するための装置である。搬送装置130は、例えば、ベルトコンベア131と、回転自在な送りローラー132とを備える。ベルトコンベア131は、回転自在なプーリー133a、133bと、これらのプーリー133a、133bに張設されている無端状のベルト134と、から構成される。送りローラー132は、記録媒体150の搬送方向Xにおける上流側のプーリー133aに対向する位置に、ベルト134と記録媒体150を挟持してベルト134上に記録媒体150を送り出すように配置されている。
【0017】
インク供給装置120は、インクジェットヘッド1と一体的に配置されている。インク供給装置120は、インクの種類ごとに配置されている。たとえば、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)およびK(ブラック)の4色のインクを用いるときは、インク供給装置120は、インクジェットヘッド1に四つ配置される。
【0018】
各インク供給装置120は、メインタンク140に接続された管161および弁164を介して、メインタンク140内のインクを供給される。また、各インク供給装置120は、管162を介してインクジェットヘッド1の後述する共通インク室2と連通し、各色のインクを所望の共通インク室2のインク供給口2aへ供給可能に接続されている。
【0019】
インクジェットヘッド1は、上記の管161から分岐するバイパス管163によってメインタンク140にも接続されている。管161とバイパス管163との分岐点には、これら管161およびバイパス管163の一方または両方にインクの流路を切換、設定可能な弁164が配置されている。管161、管162、およびバイパス管163は、例えばいずれも可撓性を有するチューブである。弁164は、例えば三方弁である。
【0020】
メインタンク140は、インクジェットヘッド1に供給されるべきインクを収容するためのタンクである。メインタンク140は、インクジェットヘッド1とは分離して配置されている。メインタンク140は、例えば、不図示の撹拌装置を有している。メインタンク140は、画像形成装置100の画像形成性能や大きさなどに応じて適宜に決めることが可能である。
【0021】
図2は、上述した画像形成装置100に用いられるインクジェットヘッド1の概要を示す分解斜視図である。図2に示すように、インクジェットヘッド1は、共通インク室2と、保持部3と、ヘッドチップ4と、フレキシブル配線基板5と、を有している。
【0022】
共通インク室2は、中空の略直方体状に形成されており、保持部3と対向する一面が開口している。共通インク室2の上記開口と対向する一面には、インク供給装置120のインクを供給するためのインク供給口2aと、インクをインク供給装置120に排出するためのインク排出口2bが設けられている。共通インク室2は、内部にフィルタを備え、上記フィルタによりインク供給口2aから供給されたインクから異物を取り除くと共に、インク内に含有する気泡を細かく破砕する。
【0023】
保持部3は、略中央に開口部3aを有する略平板状に形成されており、共通インク室2の上記開口を覆うように配置されている。これにより、保持部3の一方の面には、開口部3aを覆うようにして共通インク室2が接続される。また、保持部3の他方の面には、開口部3aを覆うようにしてヘッドチップ4が接続される。保持部3は、開口部3aを介して、共通インク室2とヘッドチップ4とを連通させる。
【0024】
保持部3の外周部には、挿通孔3bが設けられている。挿通孔3bには、フレキシブル配線基板5が挿通される。フレキシブル配線基板5は、その一方の端部が、後述するヘッドチップ4の配線基板50に接続される。また、フレキシブル配線基板5は、その他方の端部が、保持部3に設けた挿通孔3bを保持部3の他方の面から挿通して、共通インク室2側に引き出される。
【0025】
図3は、上述したインクジェットヘッド1が有するヘッドチップ4の概要を示す、図2における線A-Aに沿った断面図であり、図4は、上述したインクジェットヘッド1が有するヘッドチップ4の概要を示す、図2における線B-Bに沿った断面図である。
【0026】
ヘッドチップ4は、ノズルプレート10と、中間プレート20と、圧力室形成プレート30と、駆動プレート40と、配線基板50とを有している。また、ヘッドチップ4は、インクの吐出面側から、ノズルプレート10、中間プレート20、圧力室形成プレート30、駆動プレート40、配線基板50の順に積層されている。
【0027】
ノズルプレート10には、複数のノズル孔11が形成されている。ノズル孔11は、ノズルプレート10の一面から他面にかけて貫通している。このノズル孔11は、吐出口となる先端側が小径となるように絞り込まれた断面形状を有し、共通インク室2から供給されたインクを吐出口から外部に吐出する。また、ノズル孔11は、ノズルプレート10に複数設けられ、マトリックス状に配置されている。このノズル孔11は、ノズルプレート10に積層される中間プレート20を介して圧力室形成プレート30に形成された圧力室31と連通する。
【0028】
中間プレート20は、ノズルプレート10と、圧力室形成プレート30との間に配置される。中間プレート20には、ノズル孔11と後述する圧力室形成プレート30に設けた圧力室31とを連通する第1連通孔21が設けられている。この第1連通孔21は、ノズルプレート10のノズル孔11と対応する位置に設けられ、中間プレート20の一面から他面にかけて貫通している。
【0029】
圧力室形成プレート30は、複数の圧力室31と、振動板32とを有している。圧力室31は、ノズルプレート10のノズル孔11および中間プレート20の第1連通孔21と対応する位置に設けられている。また、圧力室31は、圧力室形成プレート30の一面から他面にかけて貫通している。圧力室31は、その体積変動によって、ノズル孔11から吐出されるインクに吐出圧力を付与する。また、圧力室31は、ノズルプレート10のノズル孔11及び中間プレート20の第1連通孔21と対応する位置に設けられている。
【0030】
振動板32は、圧力室31における中間プレート20とは反対側の開口を覆うように配置されている。この振動板32には、圧力室31と連通する第2連通孔33が設けられている。振動板32における圧力室31側の一面と反対側の一面には、駆動プレート40が配置されている。
【0031】
駆動プレート40は、空間部41と、第2連通孔33と連通する第3連通孔42とを有している。空間部41は、振動板32を間に挟んで圧力室31と対向する位置に配置されている。空間部41には、アクチュエータ60が収容されている。
【0032】
アクチュエータ60は、圧電素子61と、第1電極62と、第2電極63とを有している。第1電極62は、振動板32の一面に積層されている。なお、第1電極62と振動板32との間には、絶縁層が配置されていてもよい。圧電素子61は、第1電極62に積層されて、振動板32および第1電極62を間に挟んで圧力室31と対向する位置に、圧力室31毎(チャネル毎)に配置される。
【0033】
圧電素子61は、電圧が印加されることによって変形する材料で構成されており、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの強誘電体材料で構成されている。また、圧電素子61における第1電極62とは反対側の面には、第2電極63が積層されている。第2電極63は、バンプ64を介して後述する配線基板50に設けられた配線層51と接続される。
【0034】
配線基板50は、配線層51と、配線層51が一面に形成されたシリコン層52とを有している。配線層51は、第2電極63に設けたバンプ64と、半田51aを介して接続される。また、配線層51の外縁部は、フレキシブル配線基板5に接続される。さらに、配線層51における駆動プレート40と反対側の一面には、シリコン層52が配置される。シリコン層52は、保持部3に接合される。
【0035】
また、配線基板50には、配線層51およびシリコン層52を貫通する第4連通孔53が設けられている。この第4連通孔53は、駆動プレート40の第3連通孔42と、保持部3の開口部3aを介して共通インク室2と連通する。
【0036】
本実施形態では、互いに連通された配線基板50の第4連通孔53、駆動プレート40の第3連通孔42、および振動板32の第2連通孔33により、共通インク室2内のインクを圧力室31に供給する流路となるインレットが構成される。インレットは、共通インク室2から圧力室31に流入されるインクの流路抵抗(流量)を絞る役割を担う。また、互いに連通された中間プレート20の第1連通孔21およびノズルプレート10のノズル孔11により、圧力室31内のインクを記録媒体150に向けて吐出するためのアウトレットが構成される。
【0037】
かかる構成を備えたインクジェットヘッド1では、共通インク室2に収容されたインクは、インレット(すなわち第4連通孔53、第3連通孔42および第2連通孔33)を通過して、圧力室31に流れ込む。そして、第1電極62と第2電極63との間に電圧が印加されることで、圧電素子61が作動して変形(振動)すると共に圧電素子61の変形に伴い、振動板32が変形(振動)する。この振動板32が変形(振動)することで、圧力室31内にインクを吐出するための圧力が発生する。かかる圧力の発生により、圧力室31内のインクは、アウトレット(すなわち第1連通孔21およびノズル孔11)に押し出され、ノズル孔11の先端(ノズル開口)から記録媒体150に向けて吐出される。
【0038】
このように、本実施形態では、いずれも微細加工により細孔や溝などを形成した複数の流路部材(ノズルプレート10、中間プレート20、圧力室形成プレート30、駆動プレート40および配線基板50)が位置合わせして接着されて、インクジェットヘッド1が形成されている。そして、上記位置合わせにより、インク流路(第4連通孔53、第3連通孔42、第2連通孔33、圧力室31、第1連通孔21およびノズル孔11)が形成される。
【0039】
これらの流路部材の材料は特に限定されず、シリコン(Si)、ニッケル(Ni)、ステンレス鋼などの公知の材料を用いることができる。ただし、本実施形態において、少なくとも一つの流路部材は、単結晶シリコンウエハを加工してなる。言い換えると、これらの流路部材は、少なくとも一つの単結晶シリコンを含む流路部材を有する。
【0040】
また、本実施形態において、上記単結晶シリコンを含む流路部材のうち少なくとも一つの流路部材は、接着剤層によって他の流路部材と接合されている。なお、上記他の流路部材は、単結晶シリコン以外の材料を含む流路部材であってもよいし、単結晶シリコンを含む複数の流路部材のうち、上記一の流路部材とは異なる別の流路部材であってもよい。
【0041】
図5は、単結晶シリコンを含む一の流路部材と他の流路部材とが接着剤層により接合している様子を示す模式部分断面図である。なお、図5には、単結晶シリコンを含む一の流路部材としてのノズルプレート10と、他の流路部材としての中間プレート20と、が接着剤層70により接合している様子を示すが、本実施形態はこれに限定されることはなく、他の流路部材同士の接合であってもよい。また、図3および図4では、ノズルプレート10に形成されるノズル孔11および中間プレート20に形成される第1連通孔21はいずれも、傾斜した(インクの流通方向に沿って径が変化する)貫通孔であるが、説明の用意のため、図5では上記貫通孔の傾斜は省略している。
【0042】
本実施形態において、ノズルプレート10および中間プレート20はいずれも、シリコンウエハを加工してなる、単結晶シリコンを含む流路部材である。そして、ノズルプレート10の表面には保護膜15が形成されており、中間プレート20の表面には保護膜25が形成されている。
【0043】
保護膜15および保護膜25は、これらの流路部材(ノズルプレート10および中間プレート20)のインクに対する耐性を高めるための保護膜である。
【0044】
これらの保護膜(本実施形態では保護膜15および保護膜25)は、流路部材(本実施形態ではノズルプレート10および中間プレート20)のうち、インクの流路と接する表面に形成されていればよいが、他の流路部材と対向する面にも形成されていることが好ましい。他の流路部材と対向する面にこれらの保護膜が形成されていると、シリコン酸化物を含まない保護膜18とこれらの保護膜との接合により、シリコン酸化物を含まない保護膜18をより強固に接合させることができる。
【0045】
これらの保護膜(本実施形態では保護膜15および保護膜25)の材料は特に限定されず、不働態を形成するタンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、ハフニウム(Hf)およびニオブ(Nb)などの酸化物、これらにシリコンを含有させた金属シリケート、これらにクロム(Cr)、ニッケル(Ni)およびアルミニウム(Al)などを含有させた金属間化合物、ならびにポリイミド、ポリアミドおよびパリレンなどの有機材料を用いることができる。
【0046】
これらのうち、インク流路(図5では第1連通孔21およびノズル孔11)のインクへの濡れ性を高め、かつインク流路にインクを導入する際の泡抜け性を高める観点からは、上記保護膜は、シリコン酸化物を含む化合物を含むことが好ましい。上記シリコン酸化物を含む化合物の例には、SiO、SiOC、SiON、TaSiO、ZrSiO、およびTiSiOなどが含まれる。
【0047】
これらの保護膜(本実施形態では保護膜15および保護膜25)の膜厚は、特に限定されないものの、20nm以上1000nm以下であることが好ましく、30nm以上500nm以下であることがより好ましい。特に、上記膜厚が30nm以上であると、成膜時の欠陥が抑制されやすく、流路部材のインク耐性が十分に高まりやすい。また、特に、上記膜厚が500nm以下であると、製造時に薄膜の応力による剥離やクラック等を防止しやすい。
【0048】
なお、図5では、一の部材および他の部材(ノズルプレート10および中間プレート20)の両方に上記保護膜が形成されているが、これらのうち一方の流路部材のみに上記保護膜が形成されていてもよいし、いずれの流路部材にも上記保護膜が形成されていなくてもよい。いずれか一方の流路部材のみに上記保護膜が形成されているとき、上記一の部材および他の部材のいずれに上記保護膜が形成されていてもよいが、少なくとも単結晶シリコンを含む一の部材には上記保護膜が形成されていることが好ましい。
【0049】
接着剤層70を構成する接着剤の種類は特に限定されず、エポキシ系などの公知の接着剤を用いることができる。エポキシ系の接着剤は、硬化剤によって密な架橋構造を形成するため、接着剤層の内部にインクが浸透しにくい。そのため、上記浸透したインクにより接着剤層がすることによる流路部材の剥がれが生じにくい。
【0050】
接着剤層70の層厚は、特に限定されないものの、0.3μm以上10μm以下であることが好ましく、0.5μm以上7μm以下であることがより好ましい。特に、上記膜厚が5μm以上であると、流路部材同士をより強固に接着することができる。また、特に、上記層厚が0.5μm以上であると、製造時に流路部材の表面(または保護膜の表面)に残存した異物を上記接着剤層が吸収できるため、流路部材と接着剤層との接合強度をより高めることができる。さらには、上記層厚が7μm以下であると、製造時に上記接着剤層の材料があふれることによる異物の発生を抑制することができるうえ、接着剤領域以外の不要な領域への流れ出しを防ぐことができる。なお、接着剤層70、膜厚を制御するためのスペーサボールを含んでもよい。
【0051】
そして、本実施形態において、ノズルプレート10と接着剤層70との間には、シリコン酸化物を含まない保護膜18が配置されている。具体的には、シリコン酸化物を含まない保護膜18は、ノズルプレート10の保護膜15および接着剤層70の両方に接しており、これらと接合することで、ノズルプレート10と接着剤層70とを接合している。
【0052】
また、本実施形態において、中間プレート20と接着剤層70との間には、シリコン酸化物を含まない保護膜28が配置されている。具体的には、シリコン酸化物を含まない保護膜28は、中間プレート20の保護膜25および接着剤層70の両方に接しており、これらと接合することで、中間プレート20と接着剤層70とを接合している。
【0053】
図5に示すように、流路部材同士の接合部には、これらの流路部材の接合時の位置ずれや、形成時の微細な誤差に由来する段差部75が生じやすい。そして、この段差部75は、インクを滞留させやすい。また、流路部材同士の接合界面には微小な隙間が生じやすく、この微小な隙間に入り込んだインクの滞留も生じやすい。そのため、流路部材同士の接合部は、インクによる腐食の影響が生じやすい部位であるといえる。
【0054】
特に、水系のインクでは、顔料を分散させるためにインクがアルカリ性となっているが、単結晶シリコンやシリコン酸化物はアルカリにより腐食されやすい。そして、単結晶シリコン製の流路部材やシリコン酸化物を含む保護膜などがインクにより腐食すると、腐食によって生じた隙間にインクが入り込んで滞留することにより、上記流路部材や保護膜の腐食がさらに進行していく。上記接合部で生じる腐食は、接着した流路部材のはがれの原因となり得る。また、上記腐食によって生じた隙間からインクが保護膜15または保護膜25の内部に浸透すると、これらの保護膜が膨潤して、これらの保護膜と接着剤層との接合強度が弱まる。上記膨潤も、接着した流路部材のはがれの原因となり得る。
【0055】
そのため、本実施形態では、上記インクの滞留が生じやすい接合部に、シリコン酸化物を含まない保護膜18およびシリコン酸化物を含まない保護膜28を配置する。これらの保護膜18および保護膜28は、単結晶シリコンやシリコン酸化物を比較して、アルカリによって腐食されにくく、そのため上記腐食からのインクの浸透による膨潤も生じにくい。腐食されにくい保護膜18および保護膜28を介して流路部材(本実施形態ではノズルプレート10および中間プレート20)と接着剤層70とを接合させることにより、腐食による接合のはがれを生じにくくすることができる。
【0056】
上記保護膜18および保護膜28の材料の例には、クロム(Cr)、酸化クロム(Cr:CrO、Crなど)、タンタル(Ta)、タンタル酸化物(Ta:TaおよびTaOなど)、チタン(Ti)、酸化チタン(TiO)、窒化シリコン(Si:Siなど)、およびシリコンカーバイド(SiC)などが含まれる。これらのうち、耐食性をより高める観点からはクロム、酸化クロムおよび窒化シリコンが好ましく、濡れ性をより高める観点からは、TiOが好ましい。
【0057】
上記保護膜18および保護膜28の膜厚は、特に限定されないものの、20nm以上1000nm以下であることが好ましく、30nm以上500nm以下であることがより好ましい。特に、上記膜厚が30nm以上であると、腐食による接合のはがれをより十分に抑制することができるうえ、成膜時の欠陥を抑制しやすい。また、特に、上記膜厚が30nm以上であると、製造時に流路部材の表面(または保護膜の表面)に残存した異物を、上記シリコン酸化物を含まない保護膜18が吸収できるため、流路部材と接着剤層との接合強度をより高めることができる。また、特に、上記膜厚が500nm以下であると、製造時に薄膜の応力による剥離やクラック等を防止しやすい。
【0058】
上記保護膜18および保護膜28は、流路部材(本実施形態ではノズルプレート10および中間プレート20)のうち、他の流路部材と対向する面に形成されていればよいが、インク流路と接する表面にも形成されていてもよい。インク流路と接する表面に上記保護膜18および保護膜28が形成されていると、インク流路のインクへの濡れ性を高めることができる。
【0059】
上記保護膜18および保護膜28は、スパッタリング法などの物理気相成長(PVD)、および原子層堆積法(ALD)などの化学気相成長(CVD)などを含む、各種蒸着法により形成することができる。これらのうち、複雑な形状のカバレージが良好な原子層堆積法(ALD)などの化学気相成長(CVD)が好ましい。
【0060】
(インクジェットヘッドの作製)
図6図8は、本実施形態に関するインクジェットヘッドを作製する方法の一例を示す説明図である。なお、図6図8では、理解の容易のため、一部の部材の縮尺を変更している。
【0061】
まず、図6Aに示すように、シリコンウエハを微細加工して、一の流路部材(本実施形態では、ノズルプレート10)の形状に加工してなる、第1のチップ部材610を用意する。第1のチップ部材610は、エッチング処理などにより微細な連通孔611を多数形成されている。連通孔611は、インクジェットヘッドの完成時にはノズル孔11となる連通孔であり、ノズル孔11と同じ形状に加工されている。
【0062】
次に、図6Bに示すように、第1のチップ部材610に、保護膜615を形成する(シリコン酸化物を含む化合物を含む保護膜を形成する工程)。保護膜615は、インクジェットヘッドの完成時には保護膜15となる膜部材であり、保護膜15について説明した材料(シリコン酸化物を含む化合物)により、保護膜15の厚みとなるように形成される。保護膜615の形成方法は特に限定されず、スパッタリング法などの物理気相成長(PVD)、および原子層堆積法(ALD)などの化学気相成長(CVD)などを含む、各種蒸着法により形成することができる。保護膜615は、第1のチップ部材610のうち、ノズル孔11となる連通孔611に接する表面に形成すればよいが、他の流路部材と対向することになる面(保護膜618が形成される面)にも形成することが好ましい。
【0063】
次に、図6Cに示すように、第1のチップ部材610に、保護膜618を形成する(一の流路部材にシリコン酸化物を含まない保護膜を形成する工程)。保護膜618は、インクジェットヘッドの完成時にはシリコン酸化物を含まない保護膜18となる膜部材であり、シリコン酸化物を含まない保護膜18について説明した材料により、シリコン酸化物を含まない保護膜18の厚みとなるように形成される。保護膜618の形成方法は特に限定されず、スパッタリング法などの物理気相成長(PVD)、および原子層堆積法(ALD)などの化学気相成長(CVD)などを含む、各種蒸着法により形成することができる。保護膜618は、第1のチップ部材610のうち、他の流路部材(中間プレート20)と対向することになる面に形成すればよいが、ノズル孔11となる連通孔611に接する表面にも形成してもよい。なお、中間プレート20は必ずしも必要ではなく、ノズルプレート10と圧力室形成プレート30を直接接合してもよい。
【0064】
次に、図7Aに示すように、シリコンウエハを微細加工して、他の流路部材(本実施形態では、中間プレート20)の形状に加工してなる、第2のチップ部材620を用意する。第2のチップ部材620は、エッチング処理などにより微細な連通孔621を多数形成されている。連通孔621は、インクジェットヘッドの完成時には第1連通孔21となる連通孔であり、第1連通孔21と同じ形状に加工されている。
【0065】
次に、図7Bに示すように、第2のチップ部材620に、保護膜625を形成する(シリコン酸化物を含む化合物を含む保護膜を形成する工程)。保護膜625は、インクジェットヘッドの完成時には保護膜25となる膜部材であり、保護膜25について説明した材料(シリコン酸化物を含む化合物)により、保護膜25の厚みとなるように形成される。保護膜625の形成方法は特に限定されず、スパッタリング法などの物理気相成長(PVD)、および原子層堆積法(ALD)などの化学気相成長(CVD)などを含む、各種蒸着法により形成することができる。保護膜625は、第2のチップ部材620のうち、第1連通孔21となる連通孔621に接する表面に形成すればよいが、他の流路部材と対向することになる面(保護膜628が形成される面)にも形成することが好ましい。
【0066】
次に、図7Cに示すように、第2のチップ部材620に、保護膜628を形成する(他の流路部材にシリコン酸化物を含まない保護膜を形成する工程)。保護膜628は、インクジェットヘッドの完成時にはシリコン酸化物を含まない保護膜28となる膜部材であり、シリコン酸化物を含まない保護膜28について説明した材料により、シリコン酸化物を含まない保護膜28の厚みとなるように形成される。保護膜628の形成方法は特に限定されず、スパッタリング法などの物理気相成長(PVD)、および原子層堆積法(ALD)などの化学気相成長(CVD)などを含む、各種蒸着法により形成することができる。保護膜628は、第2のチップ部材620のうち、一の流路部材(ノズルプレート10)と対向することになる面に形成すればよいが、第1連通孔21となる連通孔621に接する表面にも形成してもよい。
【0067】
次に、第1のチップ部材610と第2のチップ部材620とを接合する(インク流路を形成する工程)。具体的には、図8に示すように、第1のチップ部材の保護膜628を形成した面に、接着剤670を付与する。接着剤670は、バーコーター、フレキソ印刷、スクリーン印刷などの塗布方式により付与することができる。そして、第2のチップ部材620の保護膜628を形成した面(図8に記載の第2のチップ部材620は、図7に記載の第2のチップ部材620を上下反転したものである。)を、連通孔611と連通孔621とを位置合わせしたうえで、接着剤670に接触させて加圧する。このとき、必要に応じて加熱して接着剤670を硬化させてもよい。このようにして、接着剤670が硬化してなる接着剤層70により、第1のチップ部材610(ノズルプレート10)と第2のチップ部材620(中間プレート20)とが接合した、接合体を得ることができる(図5参照)。
【0068】
さらに、圧力室形成プレート30、駆動プレート40および配線基板50を、インク流路が連通するように位置合わせして貼り合わせていくことで、インクジェットヘッド1を得ることができる。
【0069】
上記実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものにすぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0070】
たとえば、上記実施形態は、一の流路部材と他の流路部材とがいずれも単結晶シリコンを含むものとして説明したが、いずれか一方のみが単結晶シリコンを含むものであってもよい。つまり、一の流路部材が単結晶シリコンを含むものであり、他の流路部材はその他の材料からなるものであってもよい。このとき、シリコン酸化物を含まない保護膜は、単結晶シリコンを含む流路部材と接着剤層との間に配置されればよいが、単結晶シリコンを含む流路部材と接着剤層との間に配置されてもよい。
【0071】
また、上記実施形態は、一の流路部材がノズルプレートであり他の流路部材が中間プレートであるものとして説明したが、これら以外の流路部材が単結晶シリコンを含むときは、当該流路部材と他の流路部材との接合部に、シリコン酸化物を含まない保護膜を配置してもよい。このとき、ノズルプレートおよび中間プレートが、単結晶シリコン以外の材料から形成されてもよいことは言うまでもない。
【0072】
また、シリコン酸化物を含まない保護膜は、単結晶シリコンを含む一の流路部材と接着剤層との間に配置されればよいが、一の流路部材の、接着剤層と接しない表面にシリコン酸化物を含まない保護膜が形成されていてもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、単結晶シリコンを含む一の流路部材に接着剤を付与して、他の流路部材と接合させていたが、他の流路部材に接着剤を付与して、単結晶シリコンを含む一の流路部材と接合させてもよい。
【0074】
また、上記実施形態は、インクジェットヘッドが水系インクを吐出するものとして説明したが、溶剤系インク、活性線硬化型インク、およびホットメルトインクなどの、他の種類のインクを吐出するために、上記インクジェットヘッドを使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明のインクジェットヘッドによれば、接着した流路部材のはがれが生じにくい。そのため、本発明のインクジェットヘッドによれば、インクジェットヘッドの耐久性のさらなる向上を図ることができ、インクジェットヘッドのさらなる普及への貢献が期待される。
【符号の説明】
【0076】
1 インクジェットヘッド
2 共通インク室
2a インク供給口
2b インク排出口
3 保持部
3a 開口部
4 ヘッドチップ
5 フレキシブル配線基板
10 ノズルプレート
11 ノズル孔
15 保護膜
18 シリコン酸化物を含まない保護膜
20 中間プレート
21 第1連通孔
25 保護膜
28 シリコン酸化物を含まない保護膜
30 圧力室形成プレート
31 圧力室
32 振動板
33 第2連通孔
40 駆動プレート
41 空間部
42 第3連通孔
50 配線基板
51 配線層
51a 半田
52 シリコン層
53 第4連通孔
60 アクチュエータ
61 圧電素子
62 第1電極
63 第2電極
70 接着剤層
75 段差部
100 画像形成装置
120 インク供給装置
130 搬送装置
131 ベルトコンベア
132 送りローラー
133a、133b プーリー
134 ベルト
140 メインタンク
161、162 管
163 バイパス管
164 弁
610 第1のチップ部材
611 連通孔
615 保護膜
618 保護膜
620 第2のチップ部材
625 保護膜
628 保護膜
670 接着剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8