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特許7552738データ収集装置、車載装置、データ収集方法、データ送信方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】データ収集装置、車載装置、データ収集方法、データ送信方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
G08G1/00 J
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022577936
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(86)【国際出願番号】 JP2021003155
(87)【国際公開番号】W WO2022162856
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】尾形 一気
(72)【発明者】
【氏名】小林 航生
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 慶
(72)【発明者】
【氏名】知久 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 陽子
(72)【発明者】
【氏名】辻 佑機
(72)【発明者】
【氏名】横山 菜摘
【審査官】増子 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-039687(JP,A)
【文献】特開2020-080462(JP,A)
【文献】特開2019-075599(JP,A)
【文献】特開2020-166584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面を撮影可能な車両から、前記車両に搭載されたセンサーで取得したセンサーデータを受信するデータ受信部と、
前記センサーデータに基づいて、前記路面の撮影環境の良好度を評価し、該路面の撮影環境の良好度に基づいて、前記路面を撮影した画像の前記車両からの送信を制御する制御部と、
を備え、
前記データ受信部は、
前記センサーデータとして、前記路面を撮影した画像から作成したダイジェスト画像を受信し、
前記制御部は、前記ダイジェスト画像中の、当該車両の前方を走る先行車の像の大きさに基づいて、前記車両と前記先行車との距離を推定し、当該距離を用いて前記路面の撮影環境の良好度を評価するデータ収集装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記路面の撮影環境の良好度が所定の閾値以上である場合、前記車両に対し、前記路面を撮影した画像の送信を要求する請求項1のデータ収集装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記路面の撮影環境の良好度が所定の閾値未満である場合、前記車両に対し、前記路面を撮影した画像の送信の抑止を指示する請求項1のデータ収集装置。
【請求項4】
前記データ受信部は、前記センサーデータとして、当該車両の加速度情報、車速情報、時刻情報、及び、前記路面を撮影する装置である撮影装置の周囲の明るさ情報のうちの少なくとも1つを受信し、
前記制御部は、当該車両の加速度情報、車速情報、時刻情報、及び、前記撮影装置の周囲の明るさ情報のうちの受信した少なくとも1つに基づいて、前記路面の撮影環境の良好度を評価する請求項1のデータ収集装置。
【請求項5】
路面の画像を撮影可能なカメラと接続され、
所定のデータ収集装置に対して、前記路面の撮影環境の良好度を評価するためのセンサーデータを送信する第1の送信部と、
前記所定のデータ収集装置からの応答に基づき、前記路面を撮影した画像を送信する第2の送信部と、を備え
前記第1の送信部は、前記センサーデータとして、前記路面を撮影した画像から作成したダイジェスト画像を送信する車載装置。
【請求項6】
さらに、
前記センサーデータに基づいて、前記路面の撮影環境の良好度を評価し、該路面の撮影環境の良好度に基づいて、前記所定のデータ収集装置に対して、前記センサーデータを送信するか否かを制御する、請求項5の車載装置。
【請求項7】
路面を撮影可能な車両から、前記車両に搭載されたセンサーで取得したセンサーデータを受信し、
前記センサーデータに基づいて、前記路面の撮影環境の良好度を評価し、該路面の撮影環境の良好度に基づいて、前記路面を撮影した画像の前記車両からの送信を制御し、
受信する前記センサーデータは、前記路面を撮影した画像から作成したダイジェスト画像であり、
前記路面の撮影環境の良好度は、前記ダイジェスト画像中の、当該車両の前方を走る先行車の像の大きさに基づいて、前記車両と前記先行車との距離を推定し、当該距離を用いて評価されるデータ収集方法。
【請求項8】
路面の画像を撮影可能なカメラと接続された車載装置が、
所定のデータ収集装置に対し、前記路面の撮影環境の良好度を評価するためのセンサーデータを送信し、
前記所定のデータ収集装置からの応答に基づき、前記路面を撮影した画像を送信し、
送信される前記センサーデータは、前記路面を撮影した画像から作成したダイジェスト画像であるデータ送信方法。
【請求項9】
データ収集方法として機能するコンピュータに、
路面を撮影可能な車両から、前記車両に搭載されたセンサーで取得したセンサーデータを受信する処理と、
前記センサーデータに基づいて、前記路面の撮影環境の良好度を評価し、該路面の撮影環境の良好度に基づいて、前記路面を撮影した画像の前記車両からの送信を制御する処理と、
を実行させるプログラムであって、
受信する前記センサーデータは、前記路面を撮影した画像から作成したダイジェスト画像であり、
前記路面の撮影環境の良好度は、前記ダイジェスト画像中の、当該車両の前方を走る先行車の像の大きさに基づいて、前記車両と前記先行車との距離を推定し、当該距離を用いて評価されるプログラム。
【請求項10】
路面の画像を撮影可能なカメラと接続された車載装置に、
所定のデータ収集装置に対して、前記路面の撮影環境の良好度を評価するためのセンサーデータを送信する処理と、
前記所定のデータ収集装置からの応答に基づき、前記路面を撮影した画像を送信する処理と、
を実行させるプログラムであって、
送信される前記センサーデータは、前記路面を撮影した画像から作成したダイジェスト画像であるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ収集装置、車載装置、データ収集方法、データ送信方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、専用の路面性状測定車を用いる方法のほか、一般の車両を用いて道路の路面の状態を測定し、点検を行う方法が提案されている。例えば、特許文献1には、安価な設備投資で導入可能だという舗装情報収集点検システムの一例が開示されている。同文献によると、舗装情報記録装置(スマートフォン)及びビデオカメラは、それぞれ平坦性データ、路面画像及びこれらと紐づけられた緯度経度情報を記録装置に記録する。そして、この記録装置15に記録された平坦性データ、前記路面画像、及びこれらと紐づけられた緯度経度情報は、記録装置15である外部メディア15aを介して、又は機器を接続したケーブルやネットワークを介して、舗装情報収集点検サービスシステム30に読み込ませる、と記載されている(段落0031参照)。
【0003】
特許文献2には、テレビカメラにより撮影した画像を処理し路面の濡れや凍結などを検出することができるという路面状態検出方法が開示されている。さらに、この路面状態検出方法では、撮影した時間的に前後する画像同士を差分した差分画像における輝度加算値を求め、該輝度加算値が予め設定した輝度値より小さい場合に、上記の撮影した画像による路面状態検出を行う、と記載されている。また上記の変形として、撮影した画像と移動体の無い状態の背景画像とを差分した差分画像における輝度加算値を用いる方法も記載されている。換言すると、前記輝度加算値が予め設定した輝度値以上である場合、移動体(車両)が撮影されている可能性が高いとして、路面状態判定処理の対象から外す処理を行っている(段落0028-0029参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-196680号公報
【文献】特開2003-279661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以下の分析は、本発明者によって与えられたものである。特許文献1の方法では、記録装置15に記載された画像の読み込みに、外部メディアを用いることとしているが、この方法に代えて、車載装置や舗装情報記録装置(スマートフォン)から直接データ収集装置に画像を送信する方法も考えられる。
【0006】
しかしながら、これらの車両で撮影された画像は必ずしも撮影に適した環境で撮影されたものではない。例えば、特許文献2に記載されているように、画像の大半に他の車両が写っている場合、路面の状態の確認は困難となる。また、降雨、降雪により水溜まりや積雪がある場合も路面の状態の確認は困難となる。このため、上記直接データ収集装置に画像を送信する方法を採った場合、路面等の確認に適さない画像が大量にデータ収集装置に送られてしまうという問題点がある。
【0007】
本発明は、前記車両からの、上記路面の状態の確認に適さない画像の送信の抑止に貢献できるデータ収集装置、車載装置、データ収集方法、データ送信方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の視点によれば、路面を撮影可能な車両から、前記車両に搭載されたセンサーで取得したセンサーデータを受信するデータ受信部と、前記センサーデータに基づいて、前記路面の撮影環境の良好度を評価し、該路面の撮影環境の良好度に基づいて、前記路面を撮影した画像の前記車両からの送信を制御する制御部と、を備えるデータ収集装置が提供される。
【0009】
第2の視点によれば、路面の画像を撮影可能なカメラと接続され、所定のデータ収集装置に対して、前記路面の撮影環境の良好度を評価するためのセンサーデータを送信する第1の送信部と、前記所定のデータ収集装置からの応答に基づき、前記路面を撮影した画像を送信する第2の送信部と、を備える車載装置が提供される。
【0010】
第3の視点によれば、路面を撮影可能な車両から、前記車両に搭載されたセンサーで取得したセンサーデータを受信し、前記センサーデータに基づいて、前記路面の撮影環境の良好度を評価し、該路面の撮影環境の良好度に基づいて、前記路面を撮影した画像の前記車両からの送信を制御する、データ収集方法が提供される。本方法は、上記車両から画像を受信するデータ収集装置という、特定の機械に結びつけられている。
【0011】
第4の視点によれば、路面の画像を撮影可能なカメラと接続された車載装置が、所定のデータ収集装置に対し、前記路面の撮影環境の良好度を評価するためのセンサーデータを送信し、前記所定のデータ収集装置からの応答に基づき、前記路面を撮影した画像を送信するデータ送信方法が提供される。本方法は、上記路面の画像を撮影可能な車両の車載装置という、特定の機械に結びつけられている。
【0012】
第5の視点によれば、上記したデータ収集装置及び車載装置の各機能を実現するためのコンピュータプログラム(以下、「プログラム」)が提供される。このプログラムは、コンピュータ装置に入力装置又は外部から通信インターフェースを介して入力され、記憶装置に記憶されて、プロセッサを所定のステップないし処理に従って駆動させる。また、このプログラムは、必要に応じ中間状態を含めその処理結果を段階毎に表示装置を介して表示することができ、あるいは通信インターフェースを介して、外部と通信することができる。そのためのコンピュータ装置は、一例として、典型的には互いにバスによって接続可能なプロセッサ、記憶装置、入力装置、通信インターフェース、及び必要に応じ表示装置を備える。また、このプログラムは、コンピュータが読み取り可能な(非トランジトリーな)記憶媒体に記録することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車両からの、上記路面の状態の確認に適さない画像の送信を抑止させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態の構成を示す図である。
図2】本発明の一実施形態の動作を説明するための図である。
図3】本発明の第1の実施形態の構成を示す図である。
図4】本発明の第1の実施形態の動作を表したシーケンス図である。
図5】本発明の第2の実施形態の構成を示す図である。
図6】本発明の第2の実施形態のデータ収集装置の動作を説明するための図である。
図7】本発明の第2の実施形態の動作を表したシーケンス図である。
図8】本発明の測定車両に搭載されるコンピュータの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
はじめに本発明の一実施形態の概要について図面を参照して説明する。なお、この概要に付記した図面参照符号は、理解を助けるための一例として各要素に便宜上付記したものであり、本発明を図示の態様に限定することを意図するものではない。また、以降の説明で参照する図面等のブロック間の接続線は、双方向及び単方向の双方を含む。一方向矢印については、主たる信号(データ)の流れを模式的に示すものであり、双方向性を排除するものではない。プログラムはコンピュータ装置を介して実行され、コンピュータ装置は、例えば、プロセッサ、記憶装置、入力装置、通信インターフェース、及び必要に応じ表示装置を備える。また、このコンピュータ装置は、通信インターフェースを介して装置内又は外部の機器(コンピュータを含む)と、有線、無線を問わず、通信可能に構成される。また、図中の各ブロックの入出力の接続点には、ポート乃至インターフェースがあるが図示を省略する。
【0016】
本発明は、その一実施形態において、図1に示すように、路面を撮影可能な車両20と、データ収集装置10とを含む構成にて実現することができる。より具体的には、データ収集装置10は、データ受信部11と、制御部12とを備える。データ受信部11は、前記車両20から、前記車両20に搭載されたセンサーで取得したセンサーデータを受信する。制御部12は、前記センサーデータに基づいて、前記路面の撮影環境の良好度を評価し、該路面の撮影環境の良好度に基づいて、前記路面を撮影した画像の前記車両20からの送信を制御する。
【0017】
図2に示すように、車両20は、前記路面の撮影環境の良好度を評価するためのセンサーデータを記録し、データ収集装置10に送信する。なお、このセンサーデータでは、前記路面の撮影と同時又は撮影タイミングに近い時点に記録したデータであることが好ましい。
【0018】
データ収集装置10は、前記センサーデータを受信すると、当該センサーデータに基づいて、前記路面の撮影環境の良好度を評価する。そして、データ収集装置10は、該路面の撮影環境の良好度に基づいて、前記路面を撮影した画像の前記車両20からの送信を制御する。前記車両20からの送信の制御の形態としては、データ収集装置10から車両20に対し、画像の送信の抑止を指示する方法や車両20に対し路面の撮影の抑止を指示する方法等が考えられる。
【0019】
以上、説明したように、本実施形態によれば、車両20からの路面の状態の確認に適さない画像の送信を抑止させることが可能となる。その理由は、車両20に対し、画像の送信に先立ち、センサーデータを送信させ、その内容に基づいて、画像の送信を制御する構成を採用したことにある。
【0020】
[第1の実施形態]
続いて、本発明の第1の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図3は、本発明の第1の実施形態の構成を示す図である。図3を参照すると、データ収集装置100と、このデータ収集装置100に対し、センサーデータ及び画像を送信可能な車両200と、を含む構成が示されている。なお、車両200からデータ収集装置100へのセンサーデータ及び画像の送信は、車両200に搭載された端末にて、移動体通信事業者の提供する無線通信網に接続して行う形態が考えられる。また、車両200からデータ収集装置100へのセンサーデータ及び画像の送信の別の形態としては、道路の近傍に配置された路側機を介した形態が考えられる。
【0021】
車両200は、第1送信部201と、第2送信部202と、センサー203と、カメラ204とを備えている。なお、図3中の破線は、車載装置の機能ブロックを示している。
【0022】
第1送信部201は、データ収集装置100に対して、センサー203で取得したセンサーデータを送信する。
【0023】
第2送信部202は、データ収集装置100からの応答に基づき、データ収集装置100に対し、前記路面を撮影した画像を送信する。
【0024】
センサー203は、車両200に搭載された各種のセンサーのうち、路面の撮影環境の良好度を評価するためのセンサーデータが得られるセンサーが選択される。このようなセンサーとしては、加速度、車速、時刻、及び、前記撮影装置の周囲の明るさ等が得られるセンサーが挙げられる。撮影装置(カメラ204)の周囲の明るさとしては、車両のオートライト機能に用いられる受光センサーのほか、カメラ204の画像を用いることもできる。
【0025】
カメラ204は、路面の画像を撮影可能なカメラである。カメラ204は、路面撮影専用カメラであってもよいし、ドライブレコーダーや自動運転用のカメラであっても良い。
【0026】
データ収集装置100は、データ受信部101と、制御部102とを備える。データ受信部101は、前記車両200から、前記車両200に搭載されたセンサー203で取得したセンサーデータを受信する。データ受信部101は、センサーデータを受信すると、制御部102に、センサーデータを渡す。
【0027】
制御部102は、データ受信部101から渡されたセンサーデータに基づいて、前記路面の撮影環境の良好度を評価する。前記路面の撮影環境の良好度は、センサーデータに応じ、以下のような評価項目を設定し、それぞれに採点を行って計算することができる。
【0028】
車両200の加速度の値が大きい場合、車両が安定した状態で走行していないことが推測される。このような場合、路面の撮影環境の良好度は低下する。
【0029】
車両200の車速が過度に高い場合、車体の振動が大きくなり、カメラ画像にもブレが生じることが推測される。このような場合、路面の撮影環境の良好度は低下する。また、車両200の車速が過度に低い場合、連続するカメラ画像に写る路面に重複が生じることになる。このような場合も、路面の撮影環境の良好度を下げてもよい。
【0030】
時刻により少なくとも日中、夜間、朝夕を判別することができる。夜間、朝夕については、路面の撮影環境の良好度を低下させることができる。もちろん、日の入り、日の出の時刻は、緯度経度や季節によって変わるので、これらを考慮して補正を行ってもよい。
【0031】
また、上記時刻に代えて、撮影装置(カメラ204)の周囲の明るさを直接センシングした値を用いて、路面の撮影環境の良好度を評価することもできる。この場合、単に、暗い場合に評価を下げるほか、撮影装置(カメラ204)の周囲が明るすぎる場合も、路面の撮影環境の良好度を下げることができる。撮影装置(カメラ204)の周囲が明るすぎる場合、画像のコントラストが低下し、極端には、撮影画像に白飛び領域(blown out highlights)や陰による黒つぶれ領域(blocked up shadows)が生じるからである。結果として、路面の撮影環境の良好度は、日中の曇天時に高い値を示すことになる。さらに、直射日光と強い影により、路面と思しき領域に大きな明暗差が見られる場合も、良好度の評価を下げてもよい。そのような状況で撮影された場合、直射日光により生じた影の領域とポットホールやひび割れの区別が困難となり、路面の状態の確認に適さない画像となることが多いからである。
【0032】
[路面の撮影環境の良好度の計算方法1]
例えば、路面の撮影環境の良好度は、以下のような数式により計算することができる。評価項目を例えば100点満点とし、良好度の低下を減点方式で採点した場合、値が大きい程、路面の撮影環境の良好度が高いことになる。
路面の撮影環境の良好度
=加速度による評価値+車速による評価値+明るさによる評価値
【0033】
[路面の撮影環境の良好度の計算方法2]
また例えば、路面の撮影環境の良好度は、以下のような数式によっても計算することができる。例えば、100点を満点として各評価項目に配点を与え、係数が1以下の値を取る場合、値が100に近い程、路面の撮影環境の良好度が高いことになる。
路面の撮影環境の良好度
=加速度による評価係数×配点+車速による評価係数×配点+明るさによる評価係数×配点
【0034】
路面の撮影環境の良好度の計算方法は、上記の例に限られず、種々の変形を加えることができる。例えば、加速度、車速、時刻(撮影装置の周囲の明るさ)の3項目を用いるものとして説明したが、これらの評価項目のすべてを用いなくてもよい。また、前記例示した評価項目以外の項目を評価項目して追加してもよい。後記第2の実施形態のように、前車との距離をセンシングして評価項目に加えることもできる。
【0035】
また、路面の撮影環境の良好度の計算・評価の一部の計算を車両側で行っても良い。この場合において、例えば、カメラ204で撮影した画像中の影の領域の濃さ、数や大きさを評価項目に加えても良い。画像中のこれらの影の領域は、画像中の黒つぶれ領域の数となって表れ、路面の状態の確認に適さない画像となることが多いからである。また、前車との距離を評価項目に加え、車両側で判定させることもできる。前記判定の結果、路面の撮影環境の良好度の評価が低いものについては、データ収集装置100に送信するセンサーデータから除外してもよい。このようにすることで、データ収集装置100におけるセンサーデータを減らすことが可能となる。
【0036】
制御部102は、上記のようにして評価した路面の撮影環境の良好度に基づいて、前記路面を撮影した画像の前記車両からの送信を制御する。本実施形態では、制御部102は、上記のようにして評価した路面の撮影環境の良好度が所定の閾値以上であるか否かにより、車両200に対し、前記路面を撮影した画像の送信を要求するか否かを決定する。例えば、路面の撮影環境の良好度が所定の閾値以上である場合、制御部102は、車両200に対し、前記路面を撮影した画像の送信を要求する。これにより、車両200の第2送信部202は、データ収集装置100に対し、前記路面を撮影した画像を送信する。一方、路面の撮影環境の良好度が所定の閾値未満である場合、制御部102は、車両200に対し、前記路面を撮影した画像の送信を要求しない。これにより、車両200のからデータ収集装置100への画像の送信が抑止される。
【0037】
なお、車両200から受信した画像の分析は、データ収集装置100が行っても良いし、別の路面画像分析装置に画像の分析を行わせてもよい。
【0038】
続いて、本実施形態の動作について図面を参照して詳細に説明する。図4は、本発明の第1の実施形態の動作を表したシーケンス図である。図4を参照すると、まず、車両200が、前述の評価項目に対応するセンサー203により計測を実施する(ステップS001)。なお、センサー203が車両200において常時動作している場合には、ステップS001は省略することができる。
【0039】
次に、車両200は、データ収集装置100に対し、計測したセンサーデータを送信する(ステップS002)。なお、複数評価項目のセンサーデータを送信する場合、個別に順番に送信してもよいし、所定のフォーマットを用いてまとめて送信してもよい。
【0040】
センサーデータを受信したデータ収集装置100は、撮影環境の良好度を計算する(ステップS003)。
【0041】
次に、データ収集装置100は、前記計算した撮影環境の良好度と、所定の閾値とを比較する(ステップS004)。前記比較の結果、計算した撮影環境の良好度が前記所定の閾値以上であった場合(ステップS004のYes)、データ収集装置100は、車両200に対し、路面を撮影した画像の送信を要求する(ステップS005)。
【0042】
前記路面を撮影した画像の送信の要求を受けた車両200は、データ収集装置100に対し、路面を撮影した画像を送信する(ステップS006)。なお、ステップS004で、計算した撮影環境の良好度が前記所定の閾値未満であった場合(ステップS004のNo)、路面を撮影した画像の要求は行われない。
【0043】
以上、説明したように、本実施形態によれば、車両200から路面の状態の確認に適さない画像の送信を抑止させることが可能となる。その理由は、車両200から受信したセンサーデータに基づき、車両200のカメラ204の撮影環境の良好度を評価し、その結果に基づいて、画像の送信を抑止させる構成を採用したことにある。
【0044】
[第2の実施形態]
続いて、センサーデータとしてカメラ204の画像を用いるようにした第2の実施形態について説明する。図5は、本発明の第2の実施形態の構成を示す図である。図3に示した第1の実施形態との構成上の相違点は、車両200aの第1送信部201aが、カメラ204aから画像を取得可能となっている点である。その他の構成は第1の実施形態とほぼ同様であるので、以下、その相違点を中心に説明する。
【0045】
第1送信部201aは、カメラ204aで撮影された画像を用いて、ダイジェスト画像を作成し、データ収集装置100aに送信する。ダイジェスト画像は、例えば、カメラ204aで撮影された画像から一部を切り抜いた画像や、カメラ204aで撮影された画像の画素数を落とした画像等を用いることができる。
【0046】
制御部102aは、データ受信部101を介して車両200aから受信したダイジェスト画像に基づいて、前記路面の撮影環境の良好度を評価する。本実施形態では、センサーデータとして、ダイジェスト画像を受信するため、ダイジェスト画像を用いた路面の撮影環境の良好度を評価することができる。
【0047】
図6は、ダイジェスト画像を用いた路面の撮影環境の良好度の評価方法の一例を説明するための図である。図6の左側の(a)GOODは、路面の撮影環境の良好度が高いと評価されるダイジェスト画像の例を示している。図6の右側の(b)NGは、路面の撮影環境の良好度が低いと評価されるダイジェスト画像の例を示している。図6の右側の(b)NGが、評価が低いとされる理由は、画像中、先行車(前車)の像が大きく映っており、画像中央に存在する路面のひび割れが隠れてしまっていることによる。一方、図6の左側の(a)GOODの場合、先行車(前車)と自車の間に十分な車間距離が保たれており、画像中央に存在する路面のひび割れがきちんと撮影されていることによる。この場合、路面の撮影環境の良好度が高いと判定される。
【0048】
本実施形態の制御部102aは、前記ダイジェスト画像中の前記先行車の像の大きさに基づいて、前記自車と先行車(前車)との距離を推定し、その距離を用いて、路面の撮影環境の良好度を評価する。例えば、前記ダイジェスト画像中の前記先行車の像の大きさが所定値以上となっている場合、自車と先行車(前車)との距離が短くなっている。この場合、制御部102aは、路面の撮影環境の良好度が低いと判定し、車両200に対し、前記路面を撮影した画像の送信を要求しない。反対に、前記ダイジェスト画像中の前記先行車の像の大きさが所定値未満となっている場合、自車と先行車(前車)との距離は十分保たれている。この場合、制御部102aは、路面の撮影環境の良好度が高いと判定し、車両200に対し、前記路面を撮影した画像の送信を要求する。
【0049】
続いて、本実施形態の動作について図面を参照して詳細に説明する。図7は、本発明の第2の実施形態の動作を表したシーケンス図である。図4に示した第1の実施形態の動作との相違点は、ステップS101~S103で、上述のダイジェスト画像に基づいた路面の撮影環境の良好度の評価が行われる点である。
【0050】
図7を参照すると、まず、車両200aが、カメラ204aの画像を取得し、ダイジェスト画像を作成する(ステップS101)。なお、ダイジェスト画像に加えて、第1の実施形態と同様に、センサー203からセンサーデータを取得してもよい。
【0051】
次に、車両200aは、データ収集装置100aに対し、前記作成したダイジェスト画像を送信する(ステップS102)。第1の実施形態と同様に、センサー203からセンサーデータを取得している場合、車両200aがデータ収集装置100aにセンサーデータを送信してもよい。
【0052】
データ収集装置100aは、ダイジェスト画像を受信すると、ダイジェスト画像を用いて、撮影環境の良好度を計算する(ステップS103)。本実施形態では、データ収集装置100aは、前記ダイジェスト画像中の前記先行車の像の大きさに基づいて、路面の撮影環境の良好度を評価する。
【0053】
例えば、図6の(a)GOODのようなダイジェスト画像が得られている場合(ステップS004のYes)、データ収集装置100aは、車両200aに対し、路面を撮影した画像の送信を要求する(ステップS005)。
【0054】
一方、図6の(b)NGのようなダイジェスト画像が得られている場合(ステップS004のNo)、データ収集装置100aは、車両200aに対し、路面を撮影した画像を要求しない。
【0055】
以上、説明したように、本実施形態によっても、車両200aから路面の状態の確認に適さない画像の送信を抑止させることが可能となる。その理由は、車両200aから受信したダイジェスト画像に基づき、車両200aのカメラ204aの撮影環境の良好度を評価し、その結果に基づいて、画像の送信を抑止させる構成を採用したことにある。
【0056】
なお、上記した実施形態では、車両200aがカメラ204aの撮影画像のダイジェスト画像を作成するものとして説明したが、カメラ204aの撮影画像の解像度が元々低い場合等には、ダイジェスト画像の作成を省略することもできる。この場合、データ収集装置100aは、カメラ204aの撮影画像をそのまま用いて、撮影環境の良好度を評価することになる。また、この場合において、データ収集装置100aが、車両200aに対し、より解像度の高い画像や送信した画像の前後の画像の送信を要求してもよい。
【0057】
また、データ収集装置100aが、車両200aから受信したダイジェスト画像に基づき、車両200aのカメラ204aの撮影環境の良好度を評価するものとして説明したが、ダイジェスト画像以外の情報を用いて同様の制御を行うことも可能である。例えば、車両200aが、自車と先行車(前車)との距離を測る距離センサーを備えている場合、その測距データを用いて、撮影環境の良好度を評価する構成も採用可能である。このような測距センサーとしては、LiDAR(Light Detection and Ranging)等の光学式のセンサーのほか、電波や超音波を用いた測距センサーを用いることができる。
【0058】
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の基本的技術的思想を逸脱しない範囲で、更なる変形・置換・調整を加えることができる。例えば、各図面に示したシステムの構成、各要素の構成、データの表現形態は、本発明の理解を助けるための一例であり、これらの図面に示した構成に限定されるものではない。
【0059】
例えば、上記した実施形態では、データ収集装置100、100aが、撮影環境の良好度を評価するものとして説明したが、車両200、200a側にも同等の機能を持たせても良い。このようにすることで、車両200、200a側において、明らかに撮影環境の悪い状態であることが把握できている場合、センサーデータやダイジェスト画像の送信を少なくとも一部抑止させることが可能となる。
【0060】
また、上記第2の実施形態では、車両200aが、ダイジェスト画像を作成し、データ収集装置100aに送信するものとして説明したが、カメラ204aの画像の解像度が低い場合には、データ収集装置100aにカメラ204aの画像をそのまま送信してもよい。また、この場合、データ収集装置100aが車両200aに対し、カメラ204aで撮影する画像の解像度を引き上げるように指示してもよい。このようにすることで、第2の実施形態と同様の効果を達成することができる。
【0061】
また、上記した第1~第2の実施形態に示した手順は、データ収集装置や車両の車載装置として機能するコンピュータ(図8の9000)に、これらの装置としての機能を実現させるプログラムにより実現可能である。このようなコンピュータは、図8のCPU(Central Processing Unit)9010、通信インターフェース9020、メモリ9030、補助記憶装置9040を備える構成に例示される。すなわち、図8のCPU9010にて、撮影環境の良好度の計算プログラムや画像の送信制御プログラムを実行し、その補助記憶装置9040等に保持された各計算パラメーターの更新処理を実施させればよい。
【0062】
即ち、上記した第1~第2の実施形態に示した各装置の各部(処理手段、機能)は、これらの装置に搭載されたプロセッサに、そのハードウェアを用いて、上記した各処理を実行させるコンピュータプログラムにより実現することができる。
【0063】
最後に、本発明の好ましい形態を要約する。
[第1の形態]
(上記第1の視点によるデータ収集装置参照)
[第2の形態]
上記したデータ収集装置の前記制御部は、前記路面の撮影環境の良好度が所定の閾値以上である場合、前記車両に対し、前記路面を撮影した画像の送信を要求する構成を採ることができる。
[第3の形態]
上記したデータ収集装置の前記制御部は、前記路面の撮影環境の良好度が所定の閾値未満である場合、前記車両に対し、前記路面を撮影した画像の送信の抑止を指示する構成を採ることができる。
[第4の形態]
上記したデータ収集装置の前記データ受信部は、
前記センサーデータとして、当該車両の前方を走る先行車との距離に関する情報を受信し、
前記制御部は、
前記車両と前記先行車との距離に関する情報を用いて、前記路面の撮影環境の良好度を評価する構成を採ることができる。
[第5の形態]
上記したデータ収集装置の前記データ受信部は、
前記センサーデータとして、前記路面を撮影した画像から作成したダイジェスト画像を受信し、
前記制御部は、前記ダイジェスト画像中の前記先行車の像の大きさに基づいて、前記車両と前記先行車との距離を推定する構成を採ることができる。
[第6の形態]
上記したデータ収集装置の前記データ受信部は、
前記センサーデータとして、前記路面を撮影した画像の少なくとも一部を受信し、
前記制御部は、前記画像中の路面に、水溜まり又は影が写っているか否かにより、前記路面の撮影環境の良好度を評価する構成を採ることができる。
[第7の形態]
上記したデータ収集装置の前記データ受信部は、前記センサーデータとして、当該車両の加速度情報、車速情報、時刻情報、及び、前記撮影装置の周囲の明るさ情報のうちの少なくとも1つを受信し、
前記制御部は、当該車両の加速度情報、車速情報、時刻情報、及び、前記撮影装置の周囲の明るさ情報のうちの少なくとも1つに基づいて、前記撮影装置による路面の撮影環境の良好度を評価する構成を採ることができる。
[第8の形態]
(上記第2の視点による車載装置参照)
[第9の形態]
(上記第3の視点によるデータ収集方法参照)
[第10の形態]
(上記第4の視点によるデータ送信方法参照)
[第11の形態]
(上記第5の視点によるプログラム参照)
なお、上記第8~第11の形態は、第1の形態と同様に、第2~第7の形態に展開することが可能である。
【0064】
なお、上記の特許文献の各開示は、本書に引用をもって繰り込み記載されているものとし、必要に応じて本発明の基礎ないし一部として用いることが出来るものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の開示の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態ないし実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ、ないし選択(部分的削除を含む)が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。特に、本書に記載した数値範囲については、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし小範囲が、別段の記載のない場合でも具体的に記載されているものと解釈されるべきである。さらに、上記引用した文献の各開示事項は、必要に応じ、本発明の趣旨に則り、本発明の開示の一部として、その一部又は全部を、本書の記載事項と組み合わせて用いることも、本願の開示事項に含まれるものと、みなされる。
【符号の説明】
【0065】
10、100、100a データ収集装置
20、200、200a 車両
11、101 データ受信部
12、102、102a 制御部
201、201a 第1送信部
202 第2送信部
203 センサー
204、204a カメラ
9000 コンピュータ
9010 CPU
9020 通信インターフェース
9030 メモリ
9040 補助記憶装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8