(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】被着体の接着方法
(51)【国際特許分類】
B32B 37/12 20060101AFI20240910BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240910BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20240910BHJP
C09J 7/22 20180101ALI20240910BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20240910BHJP
C09J 171/08 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
B32B37/12
B32B27/00 D
C09J7/35
C09J7/22
C09J163/00
C09J171/08
(21)【出願番号】P 2023016345
(22)【出願日】2023-02-06
【審査請求日】2024-02-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】大橋 賢
(72)【発明者】
【氏名】奥野 真奈美
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-197308(JP,A)
【文献】特開2005-154727(JP,A)
【文献】国際公開第2019/188641(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの被着体を接着層を介して接着する方法であって、
2つの被着体の少なくとも1つがプラスチック基材であり、
(1)一方の被着体上に、熱硬化性樹脂組成物からなる接着層を形成する工程、
(2)他方の被着体を接着層に貼合する工程、および
(3)工程(2)で得られた積層体を2つのプレート間で
80℃以上150℃未満の温度で加熱および
0.1MPa以上の圧力で加圧し、接着層を熱硬化する工程
を含み、
熱硬化性樹脂組成物が、(A)
ガラス転移温度が70℃以上であるエポキシ樹脂、(B)ガラス転移温度が
70℃以上である
フェノキシ樹脂、(C)ガラス転移温度が
30℃
以下である
フェノキシ樹脂、および(D)
イミダゾール化合物である硬化剤を含
み、
(B)ガラス転移温度が70℃以上であるフェノキシ樹脂と(C)ガラス転移温度が30℃以下であるフェノキシ樹脂との質量比が1:5~1:0.3であり、
(A)ガラス転移温度が70℃以上であるエポキシ樹脂の含有量が、熱硬化性樹脂組成物の不揮発分100質量%に対して20~60質量%であり、
(B)ガラス転移温度が70℃以上であるフェノキシ樹脂の含有量が、熱硬化性樹脂組成物の不揮発分100質量%に対して5~40質量%であり、
(C)ガラス転移温度が30℃以下であるフェノキシ樹脂の含有量が、熱硬化性樹脂組成物の不揮発分100質量%に対して20~50質量%であり、
(D)イミダゾール化合物である硬化剤の含有量が、熱硬化性樹脂組成物の不揮発分100質量%に対して1~35質量%である、
方法。
【請求項2】
プラスチック基材が、ポリカーボネート基材、ポリエチレンテレフタレート基材、ポリアミド基材またはポリメチルメタクリレート基材である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程(1)が、一方の被着体上に熱硬化性樹脂組成物ワニスを直接塗工することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
工程(1)が、熱硬化性樹脂組成物からなる接着層を有する樹脂シートを一方の被着体上に積層することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
2つの被着体の少なくとも1つが工程(2)で得られた積層体である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
熱硬化性樹脂組成物が、さらに(E)硬化調整剤を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
熱硬化樹脂組成物中の(E)硬化調整剤の含有量が、熱硬化樹脂組成物の不揮発分100質量%に対して0.05~10質量%である、請求項
6記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの被着体を接着層を介して接着する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、車両などの産業機械向けカバーや窓材、半導体製造装置などの産業装置向けカバーや窓材、太陽電池受光面側用透明パネルでは、軽量化、燃費などの経済性の観点から、近年、透明樹脂が多く用いられているが、特に耐衝撃性、耐候性、耐熱性に優れるポリカーボネート樹脂が用いられている。しかし、ポリカーボネート樹脂は接着し易い被着体ではない為、各種接着剤やプライマー、表面処理を併用する手法が提案されているが、ポリカーボネート樹脂自体の耐溶剤性が良好ではない為、溶解性の良い溶剤を用いるとポリカーボネート樹脂表面が白色化してしまい、外観不良となる。
【0003】
特許文献1では、湿気硬化型ホットメルト接着剤、熱可塑性シラン変性樹脂接着剤、熱可塑性ポリエステル樹脂接着剤等を用いて、ポリカーボネート樹脂と単板とからなる積層体を作製している。しかし、これらの接着力はエポキシ樹脂系接着剤と比較して非常に弱く、剥離試験では容易に剥離してしまう。特許文献2では、ポリカーボネート樹脂用のプライマー組成物が開示されている。然しながら、プライマー処理が必要になると共に、プライマー組成物に塩化ゴムが含まれることから環境への負荷が大きいという課題があった。特許文献3では、キーシートに用いられるポリカーボネート樹脂用接着剤としてエピスルフィド化合物およびエポキシ化合物を含有する硬化性樹脂組成物が開示されている。然しながら、液状接着剤として使用することを想定しており、膜厚制御が難しいという課題を有していた。併せて、実施例に記載の通り、ポリカーボネート樹脂等の透明樹脂は、SUS板で補強したとしても加熱により反りが発生する為、気泡の発生や密着強度の低下が生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3994404号公報
【文献】特開2013-10854号公報
【文献】特開2018-123201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に着目してなされたものであり、目的はプライマー処理無しでポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂などからなるプラスチック基材と各種基材とを熱硬化性樹脂組成物からなる接着層を介して高い接着性で気泡やボイドが発生すること無く低温で接着することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の工程(1)~(3)を含む2つの被着体の接着方法において、以下の(A)~(D)成分を含む熱硬化性樹脂組成物からなる接着層を用いることによって、プライマー処理無しで2つの被着体を高い接着性で気泡やボイドが発生すること無く低温で接着することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の特徴を有する。
[1]2つの被着体を接着層を介して接着する方法であって、
2つの被着体の少なくとも1つがプラスチック基材であり、
(1)一方の被着体上に、熱硬化性樹脂組成物からなる接着層を形成する工程、
(2)他方の被着体を接着層に貼合する工程、および
(3)工程(2)で得られた積層体を2つのプレート間で加熱および加圧し、接着層を熱硬化する工程
を含み、
熱硬化性樹脂組成物が、(A)熱硬化性樹脂、(B)ガラス転移温度が50℃以上である熱可塑性樹脂、(C)ガラス転移温度が50℃未満である熱可塑性樹脂、および(D)硬化剤を含む、
方法。
[2]プラスチック基材が、ポリカーボネート基材、ポリエチレンテレフタレート基材、ポリアミド基材またはポリメチルメタクリレート基材である、[1]記載の方法。
[3]工程(1)が、一方の被着体上に熱硬化性樹脂組成物ワニスを直接塗工することを含む、[1]または[2]記載の方法。
[4]工程(1)が、熱硬化性樹脂組成物からなる接着層を有する樹脂シートを一方の被着体上に積層することを含む、[1]または[2]記載の方法。
[5]2つの被着体の少なくとも1つが工程(2)で得られた積層体である、[1]~[4]のいずれか1記載の方法。
[6]工程(3)が、0.1MPa以上の加圧条件下で行われる、[1]~[5]のいずれか1記載の方法。
[7]工程(3)が、70℃以上150℃未満の加熱条件下で行われる、[1]~[6]のいずれか1記載の方法。
[8](A)熱硬化性樹脂が、ガラス転移温度が50℃以上である熱硬化性樹脂を含む、[1]~[7]のいずれか1記載の方法。
[9](A)熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である、[1]~[8]のいずれか1記載の方法。
[10](B)ガラス転移温度が50℃以上である熱可塑性樹脂が、ガラス転移温度が50℃以上であるフェノキシ樹脂およびポリエステル樹脂から選ばれる、[1]~[9]のいずれか1記載の方法。
[11](C)ガラス転移温度が50℃未満である熱可塑性樹脂が、ガラス転移温度が50℃未満であるフェノキシ樹脂およびポリエステル樹脂から選ばれる、[1]~[10]のいずれか1記載の方法。
[12](D)硬化剤が、イオン液体、酸無水物化合物、イミダゾール化合物および3級アミン系化合物から選ばれる1種以上である、[1]~[11]のいずれか1記載の方法。
[13]熱硬化性樹脂組成物中の(A)熱硬化性樹脂の含有量が、熱硬化性樹脂組成物の不揮発分100質量%に対して10~70質量%である、[1]~[12]のいずれか1記載の方法。
[14]熱硬化性樹脂組成物中の(B)ガラス転移温度が50℃以上である熱可塑性樹脂の含有量が、熱硬化性樹脂組成物の不揮発分100質量%に対して3~50質量%である、[1]~[13]のいずれか1記載の方法。
[15]熱硬化性樹脂組成物中の(C)ガラス転移温度が50℃未満である熱可塑性樹脂の含有量が、熱硬化性樹脂組成物の不揮発分100質量%に対して10~60質量%である、[1]~[14]のいずれか1記載の方法。
[16]熱硬化性樹脂組成物中の(B)ガラス転移温度が50℃以上である熱可塑性樹脂と(C)ガラス転移温度が50℃未満である熱可塑性樹脂との質量比が、1:20~1:0.2である、[1]~[15]のいずれか1記載の方法。
[17]熱硬化性樹脂組成物中の(D)硬化剤の含有量が、樹脂組成物の不揮発分100質量%に対して0.1~40質量%である、[1]~[16]のいずれか1記載の方法。
[18]熱硬化性樹脂組成物が、さらに(E)硬化調整剤を含む、[1]~[17]のいずれか1記載の方法。
[19]熱硬化樹脂組成物中の(E)硬化調整剤の含有量が、熱硬化樹脂組成物の不揮発分100質量%に対して0.05~10質量%である、[18]記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、プライマー処理無しで一方がプラスチック基材である2つの被着体を高い接着性で気泡やボイドが発生すること無く低温で接着することができる方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して説明する。
本願発明の2つの被着体を接着層を介して接着する方法は、
2つの被着体の少なくとも1つがプラスチック基材であり、
(1)一方の被着体上に、熱硬化性樹脂組成物からなる接着層を形成する工程、
(2)他方の被着体を接着層に貼合する工程、および
(3)工程(2)で得られた積層体を2つのプレート間で加熱および加圧し、接着層を熱硬化する工程を含み、
熱硬化性樹脂組成物が、(A)熱硬化性樹脂、(B)ガラス転移温度が50℃以上である熱可塑性樹脂、(C)ガラス転移温度が50℃未満である熱可塑性樹脂、および(D)硬化剤を含む。
【0010】
本発明の方法は、2つの被着体、すなわち、プラスチック基材同士、またはプラスチック基材とプラスチック基材以外の基材とを接着する。プラスチック基材としては、特に限定されないが、例えば、ポリカーボネート基材、ポリエチレンテレフタレート基材、ポリアミド基材、ポリイミド基材、ポリメチルメタクリレート基材、シクロオレフィン基材などが挙げられる。プラスチック基材以外の基材としては、特に限定されないが、例えば、金属基材、ガラス基材、セラミック基材、木材基材などが挙げられる。プラスチック基材同士を接着する場合、2つのプラスチック基材は同じであっても異なっていてもよい。本発明の方法は、難接着性であるポリカーボネート基材の接着に特に好適に用いられる。
【0011】
本発明の方法において、2つの被着体の少なくとも1つは工程(2)で得られた積層体であってもよい。すなわち、本発明の方法は、プラスチック基材と工程(2)で得られた積層体との接着、プラスチック基材以外の基材と工程(2)で得られた積層体のプラスチック基材との接着、工程(2)で得られた積層体のプラスチック基材と工程(2)で得られた積層体との接着などの、3つ以上の被着体を同時に接着する態様を含む。
【0012】
[工程(1)]
工程(1)は、一方の被着体上に、熱硬化性樹脂組成物からなる接着層を形成する工程である。すなわち、接着層は、プラスチック基材またはプラスチック基材以外の基材のいずれの上に形成してもよい。また、接着層を形成する方法は、特に限定されないが、例えば、(a)一方の被着体上に熱硬化性樹脂組成物ワニスを直接塗工する方法、(b)熱硬化性樹脂組成物からなる接着層を有する樹脂シートを一方の被着体上に積層する方法などが挙げられる。
【0013】
方法(a)は、例えば、有機溶剤を配合してワニス状にした熱硬化性樹脂組成物を一方の被着体上に塗工し、得られた塗膜を加熱あるいは熱風吹きつけ等で乾燥して被着体上に樹脂組成物層(接着層)を形成することを含む。
【0014】
方法(b)は、例えば、有機溶剤を配合してワニス状にした熱硬化性樹脂組成物を支持体上に塗工し、得られた塗膜を加熱あるいは熱風吹きつけ等で乾燥して支持体上に樹脂組成物層(接着層)を形成して樹脂シートを作製し、得られた樹脂シートを、樹脂組成物層(接着層)が一方の被着体と接するようにその上に積層し、次いで支持体を剥離して被着体上に樹脂組成物層(接着層)を形成することを含む。積層の方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。積層は、例えば、ロールラミネータ―、真空ラミネーターなどを用いて行うことができる。
【0015】
樹脂シートに使用する支持体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、シクロオレフィンポリマー、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミドなどのプラスチックフィルムが挙げられる。プラスチックフィルムとしては、特にPETが好ましい。また支持体はアルミ箔、ステンレス箔、銅箔等の金属箔であってもよい。支持体には、シリコーン樹脂系離型剤、アルキッド樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤等による離型処理、マット処理、コロナ処理等が施されていてもよい。本発明において支持体が離型層を有する場合、該離型層も支持体の一部とみなす。支持体の厚さは、特に限定されないが、取扱い性等の観点から、好ましくは20~200μmであり、より好ましくは20~125μmである。
【0016】
樹脂シートの防湿性を向上させるために、バリア層を有するプラスチックフィルムを支持体として用いてもよい。このバリア層としては、例えば、窒化ケイ素等の窒化物、酸化アルミニウム等の酸化物、ステンレス箔、アルミ箔の金属箔等が挙げられる。プラスチックフィルムとしては、上述のプラスチックフィルムが挙げられる。バリア層を有するプラスチックフィルムは市販品を使用してもよい。また、金属箔とプラスチックフィルムを複合ラミネートしたフィルムであってもよい。例えば、アルミ箔付きポリエチレンテレフタレートフィルムの市販品としては、東海東洋アルミ販売社製「PETツキAL1N30」、福田金属社製「PETツキAL3025」、パナック社製「アルペット」等が挙げられる。
【0017】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(以下、「MEK」とも略称する)、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等を挙げることができる。有機溶剤はいずれか1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
乾燥条件は特に制限はないが、通常50~100℃程度で3~15分程度が好適である。
【0019】
乾燥後の樹脂組成物層(接着層)の厚さは、通常3μm~200μm、好ましくは5μm~100μm、さらに好ましくは5μm~50μmの範囲である。
【0020】
樹脂組成物層(接着層)は、保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層(接着層)表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。保護フィルムは、支持体と同様のプラスチックフィルムを用いるのが好ましい。また、保護フィルムもマット処理、コロナ処理の他、離型処理が施してあってもよい。保護フィルムの厚さは特に制限されないが、通常1~150μm、好ましくは10~100μmの範囲である。
【0021】
熱硬化性樹脂組成物が透明性を有する場合、樹脂シートの樹脂組成物層(接着層)のD65光の全光線透過率は、樹脂組成物層(接着層)の厚さによらず、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。全光線透過率は、例えばJIS K7361-1「プラスチック-透明材料の全光線透過率の試験方法 第1部:シングルビーム法」に従って測定することができる。
【0022】
熱硬化性樹脂組成物から形成される樹脂組成物層(接着層)を硬化して得られる厚さ20μmの硬化物層の、D65光の全光線透過率の平均値は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。
【0023】
[工程(2)]
工程(2)は、他方の被着体を接着層に貼合する工程である。貼合の方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。貼合は、例えば、ロールラミネータ―、真空ラミネーターなどを用いて行うことができる。貼合条件は、被着体の種類や用いる熱硬化性樹脂組成物の組成などに応じて適宜設定することができ、例えば、20~170℃、好ましくは40~150℃の温度、0.01~1MPa、好ましくは0.01~0.5MPaの加圧下、10~300秒、好ましくは20~240秒の時間である。
【0024】
[工程(3)]
工程(3)は、工程(2)で得られた積層体を2つのプレート間で加熱および加圧し、接着層を熱硬化する工程である。熱硬化は、例えば、プレス、真空ラミネーターなどを用いて行うことができる。プレートとしては、特に限定されないが、例えば、金属プレート、セラミックプレート、ゴム板などが挙げられる。硬化した接着層を被着体に十分に満足できる接着強度で接着させる観点およびプラスチック基材の耐熱性の観点から、温度は、70℃以上150℃未満が好ましく、80℃以上150℃未満がより好ましく、圧力は、0.05MPa以上が好ましく、0.1MPa以上がより好ましい。
【0025】
[熱硬化性樹脂組成物]
本発明の方法において用いられる熱硬化性樹脂組成物は、(A)熱硬化性樹脂、(B)ガラス転移温度が50℃以上である熱可塑性樹脂、(C)ガラス転移温度が50℃未満である熱可塑性樹脂、および(D)硬化剤を含む。
【0026】
本発明における熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC)により、JIS K 7121(2012年)に準拠して測定することができる。具体的には、測定装置としてX-DSC7000(SII社製)を用い、この装置に、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂の試料を封入したDSC測定用パンをセットし、窒素雰囲気下で昇温速度5℃/分で270℃まで昇温する。そして、低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線のこう配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度を「ガラス転移温度」とする。
【0027】
<(A)熱硬化性樹脂>
本発明における熱硬化性樹脂組成物に用いられる熱硬化性樹脂は、本発明の効果が発揮されれば特に限定されるものではなく、例えば、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド-トリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ビニルベンジル樹脂等が挙げられ、なかでも低温硬化性等の観点からエポキシ樹脂が好ましい。これらの熱硬化性樹脂は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、ガラス転移温度が低い熱硬化性樹脂を使用すると反りが抑制される傾向となるが、硬化物のリフロー耐性が低下するので、ガラス転移温度が50℃以上の熱硬化性樹脂を使用することが好ましい。熱硬化性樹脂のガラス転移温度は、55℃以上がより好ましく、60℃以上がさらに好ましく、70℃以上が特に好ましい。上記熱硬化性樹脂のガラス転移温度の上限は、本発明の効果が発揮されれば特に限定されないが、加工性および取扱性の観点から、好ましくは400℃以下であり、より好ましくは350℃以下であり、さらに好ましくは300℃以下である。
【0028】
熱硬化性樹脂全体に対する、ガラス転移温度が50℃以上の熱硬化性樹脂の含有量は、本発明における熱硬化性樹脂組成物に用いられる熱硬化性樹脂100重量%に対して、60重量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上が特に好ましい。
【0029】
エポキシ樹脂は、本発明の効果が発揮されれば特に限定されるものではなく、平均して1分子当り2個以上のエポキシ基を有し、かつ、透過率の高いものを使用することができる。例えば、水素添加エポキシ樹脂(水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂等)、フッ素含有エポキシ樹脂、鎖状脂肪族型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、炭化水素鎖を主骨格に含むエポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂(例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル-p-アミノフェノール、ジグリシジルトルイジン、ジグリシジルアニリン等)、脂環式エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノール型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のジグリシジルエーテル化物、およびアルコール類のジグリシジルエーテル化物、並びにこれらのエポキシ樹脂のアルキル置換体等が挙げられる。
【0030】
エポキシ樹脂は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。エポキシ樹脂のエポキシ当量は、反応性等の観点から、好ましくは50~5,000であり、より好ましくは50~3,000であり、さらに好ましくは80~2,000であり、特に好ましくは100~1,500である。なお、「エポキシ当量」とは、1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂のグラム数(g/eq)であり、JIS K 7236に規定された方法に従って測定される。エポキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは5,000以下である。
【0031】
本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレン換算)で測定される。GPC法による重量平均分子量は、具体的には、測定装置として島津製作所社製LC-9A/RID-6Aを、カラムとして昭和電工社製Shodex K-800P/K-804L/K-804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0032】
エポキシ樹脂は、液状または固形のいずれでもよく、液状エポキシ樹脂と固形エポキシ樹脂とを併用してもよい。ここで、「液状」および「固形」とは、常温(25℃)および常圧(1atm)でのエポキシ樹脂の状態である。塗工性、加工性、接着性の観点から、使用するエポキシ樹脂全体の10質量%以上が液状エポキシ樹脂であることが好ましい。本発明の1つの実施態様において、ワニス粘度の観点から、液状エポキシ樹脂と固形エポキシ樹脂とを併用することが好ましい。液状エポキシ樹脂と固形エポキシ樹脂との質量比(液状エポキシ樹脂:固形エポキシ樹脂)は、1:2~1:0が好ましく、1:1.5~1:0がより好ましい。
【0033】
「水素添加エポキシ樹脂」とは、芳香環含有エポキシ樹脂を水素添加して得られるエポキシ樹脂を意味する。水素添加エポキシ樹脂の水添化率は、好ましくは50%以上であり、より好ましくは70%以上である。「鎖状脂肪族型エポキシ樹脂」とは、直鎖状または分岐状のアルキル鎖、またはアルキルエーテル鎖を持つエポキシ樹脂を意味し、「環状脂肪族型エポキシ樹脂」とは、分子内に環状脂肪族骨格、例えばシクロアルカン骨格を持つエポキシ樹脂を意味する。「アルキルフェノール型エポキシ樹脂」とは、置換基として1以上のアルキル基および1以上のヒドロキシ基を有するベンゼン環骨格を持ち、前記ヒドロキシ基がグリシジルエーテル基に変換されているエポキシ樹脂を意味する。
【0034】
水素添加エポキシ樹脂としては、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましい。なお、本発明の効果が発揮される限りにおいては、上記好適なエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂が熱硬化性樹脂中に含まれていてもよい。
【0035】
水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、例えば、液状水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(例えば、「YX8000」(三菱ケミカル社製、エポキシ当量:約205)、「デナコールEX-252」(ナガセケムテックス社製、エポキシ当量:約213))、固形水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(例えば、「YX8040」(三菱ケミカル社製、エポキシ当量:約1000))等が挙げられる。
【0036】
フッ素含有エポキシ樹脂は、例えば、WO2011/089947に記載のフッ素含有エポキシ樹脂を用いることができる。
【0037】
鎖状脂肪族型エポキシ樹脂としては、例えば、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-512」、「デナコールEX-521」、ナガセケムテックス社製)、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-411」、ナガセケムテックス社製)、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-421」、ナガセケムテックス社製)、グリセロールポリグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-313」、「デナコールEX-314」、ナガセケムテックス社製)、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-321」、ナガセケムテックス社製)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-211」、ナガセケムテックス社製)、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-212」、ナガセケムテックス社製)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-810」、「デナコールEX-811」、ナガセケムテックス社製)、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-850」、「デナコールEX-851」、ナガセケムテックス社製)、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-821」、「デナコールEX-830」、「デナコールEX-832」、「デナコールEX-841」、「デナコールEX-861」、ナガセケムテックス社製)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-911」、ナガセケムテックス社製)、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-941」、「デナコールEX-920」、「デナコールEX-931」、ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
【0038】
環状脂肪族型エポキシ樹脂としては、例えば、ダイセル化学工業社製「EHPE-3150」等が挙げられる。
【0039】
アルキルフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、DIC社製「HP-820」;新日鉄住金化学工業社製「YDC-1312」;ナガセケムテックス社製「EX-146」等が挙げられる。
【0040】
「ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂」とは、ノボラック構造および2価のビフェニル構造が結合した主鎖を持つエポキシ樹脂を意味する。「フルオレン型エポキシ樹脂」とは、フルオレン骨格を持つエポキシ樹脂を意味する。「フッ素含有芳香族型エポキシ樹脂」とは、芳香環を有するフッ素含有エポキシ樹脂を意味する。例えば、WO2011/089947に記載のフッ素含有芳香族型エポキシ樹脂を用いることができる。
【0041】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、例えば、三菱ケミカル社製「828EL」、「1001」および「1004AF」;DIC社製「840」および「850-S」;新日鉄住金化学工業社製「YD-128」等が挙げられる。また、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂および液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合物としては、例えば、新日鐵化学工業社製「ZX-1059」(エポキシ当量:約165)が挙げられる。
【0042】
ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、例えば、三菱ケミカル社製「807」;DIC社製「830」;新日鉄住金化学工業社製「YDF-170」等が挙げられる。
【0043】
炭化水素鎖を主骨格に含むエポキシ樹脂の市販品としては、例えば、ADEKA社製「EP-4000S」、「EP-4010S」(変性ビスフェノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製「YL7175-500」「YL7175-1000」、「YL7410」、「YX7105」(変性ビスフェノール型エポキシ樹脂);DIC社製「EXA-4850」、「EXA-4850-150」、「EXA-4816」、「EXA-4822」(変性ビスフェノール型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製「EG-280」;ナガセケムテックス社製「EX-830」(変性ビスフェノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製「YX7400」(ポリブチレングリコールジグリシジルエーテル)等が挙げられる。
【0044】
フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、DIC社製「N-730A」、「N-740」、「N-770」および「N-775」;三菱ケミカル社製「152」および「154」等が挙げられる。
【0045】
ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂としては、例えば、日本化薬社製「NC-3000」、「NC-3000L」および「NC-3100」等が挙げられる。
【0046】
フルオレン型エポキシ樹としては、例えば、大阪ガスケミカル社製「OGSOL PG-100」、「CG-500EG-200」および「EG-280」等が挙げられる。
【0047】
本発明における熱硬化性樹脂組成物中の熱硬化性樹脂の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の靭性付与の観点から、熱硬化性樹脂組成物の不揮発分100質量%に対して、好ましくは10~70質量%であり、より好ましくは15~65質量%であり、さらに好ましくは20~60質量%である。
【0048】
<(B)ガラス転移温度が50℃以上である熱可塑性樹脂>
本発明における熱硬化性樹脂組成物に用いられるガラス転移温度が50℃以上である熱可塑性樹脂は、本発明の効果が発揮されれば特に限定されるものではなく、例えば、ガラス転移温度が50℃以上である、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル系ポリマー等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。ガラス転移温度が50℃以上である熱可塑性樹脂を用いることにより、シート状の形態への成膜が可能となる。
【0049】
上記熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、熱硬化性樹脂組成物に適度な剛性を持たせる等の観点から、好ましくは55℃以上であり、より好ましくは60℃以上であり、さらに好ましくは70℃以上である。上記熱可塑性樹脂のガラス転移温度の上限は、本発明の効果が発揮されれば特に限定されないが、加工性および取扱性の観点から、好ましくは500℃以下であり、より好ましくは400℃以下であり、さらに好ましくは300℃以下である。
【0050】
熱硬化性樹脂組成物から形成される樹脂組成物層(接着層)への可撓性の付与、樹脂シートを調製する際の樹脂組成物ワニスの塗工性(はじき防止)等の観点から、ガラス転移温度が50℃以上である熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、15,000以上が好ましく、20,000以上がより好ましい。しかし、この重量平均分子量が大きすぎると、ガラス転移温度が50℃以上である熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂(特に、エポキシ樹脂)との相溶性が低下する等の傾向がある。そのため、この重量平均分子量は、1,000,000以下が好ましく、800,000以下がより好ましい。
【0051】
ガラス転移温度が50℃以上である熱可塑性樹脂としては、熱硬化性樹脂(特にエポキシ樹脂)との相溶性が良好である等の観点から、ガラス転移温度が50℃以上であるフェノキシ樹脂が好ましい。
【0052】
ガラス転移温度が50℃以上であるフェノキシ樹脂も、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂と同様に、エポキシ基を有し得る。ガラス転移温度が50℃以上であるフェノキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは10,000~500,000であり、より好ましくは20,000~300,000である。
【0053】
好適なガラス転移温度が50℃以上であるフェノキシ樹脂としては、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、およびノルボルネン骨格から選択される1種以上の骨格を有するものが挙げられる。ガラス転移温度が50℃以上であるフェノキシ樹脂は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
ガラス転移温度が50℃以上であるフェノキシ樹脂の市販品としては、例えば、「YX7200B35」(三菱ケミカル社製:ビフェニル骨格含有フェノキシ樹脂)、「1256」(三菱ケミカル社製:ビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、「YX6954BH35」(三菱ケミカル社製:ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)、「FX-293」(日鉄ケミカル&マテリアル社製:ビスフェノールA骨格含有樹脂)、「FX-310」(日鉄ケミカル&マテリアル社製:ビスフェノールA骨格含有樹脂)等が挙げられる。
【0055】
ガラス転移温度が50℃以上である熱可塑性樹脂としては、熱硬化性樹脂(特にエポキシ樹脂)との相溶性が良好である等の観点から、ガラス転移温度が50℃以上であるポリエステル樹脂もまた好ましい。
【0056】
ガラス転移温度が50℃以上であるポリエステル樹脂としては、例えば「UE-9200」、「UE-3600」、「UE-9800」、「UE-9900」、「UE-9820」、「UE-3550」、「UE-3380」(いずれもユニチカ社製:飽和共重合ポリエステル樹脂)等が挙げられる。
【0057】
本発明における熱硬化性樹脂組成物中のガラス転移温度が50℃以上である熱可塑性樹脂の含有量は、熱硬化性樹脂組成物のシート状の形態への成膜および硬化物のクラック抑制の観点から、熱硬化性樹脂組成物の不揮発分100質量%に対して、好ましくは3~50質量%であり、より好ましくは4~45質量%であり、さらに好ましくは5~40質量%である。
【0058】
<(C)ガラス転移温度が50℃未満である熱可塑性樹脂>
本発明における熱硬化性樹脂組成物に用いられるガラス転移温度が50℃未満である熱可塑性樹脂は、本発明の効果が発揮されれば特に限定されるものではなく、例えば、ガラス転移温度が50℃未満である、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル系ポリマー等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。ガラス転移温度が50℃未満である熱可塑性樹脂は、上記ガラス転移温度が50℃以上である熱可塑性樹脂と併用することにより、基材の接着や絶縁層形成、特に異種材料基材間の接着や絶縁層形成の際、反りを抑制することができる。
【0059】
上記熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、反り抑制の観点から、好ましくは45℃以下であり、より好ましくは40℃以下であり、さらに好ましくは30℃以下である。上記熱可塑性樹脂のガラス転移温度の下限は、本発明の効果が発揮されれば特に限定されないが、熱硬化性樹脂組成物の耐熱性の観点から、好ましくは-50℃以上であり、より好ましくは-40℃以上であり、さらに好ましくは-30℃以上である。
【0060】
熱硬化性樹脂組成物から形成される樹脂組成物層(接着層)への可撓性の付与、樹脂シートを調製する際の樹脂組成物ワニスの塗工性(はじき防止)等の点から、ガラス転移温度が50℃未満である熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、15,000以上が好ましく、20,000以上がより好ましい。しかし、この重量平均分子量が大きすぎると、ガラス転移温度が50℃未満である熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂(特に、エポキシ樹脂)との相溶性が低下する等の傾向がある。そのため、この重量平均分子量は、1,000,000以下が好ましく、800,000以下がより好ましい。
【0061】
ガラス転移温度が50℃未満である熱可塑性樹脂としては、熱硬化性樹脂(特にエポキシ樹脂)との相溶性が良好である等の観点から、ガラス転移温度が50℃未満であるフェノキシ樹脂が好ましい。
【0062】
ガラス転移温度が50℃未満であるフェノキシ樹脂も、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂と同様に、エポキシ基を有し得る。ガラス転移温度が50℃未満であるフェノキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは10,000~500,000であり、より好ましくは20,000~300,000である。
【0063】
好適なガラス転移温度が50℃未満であるフェノキシ樹脂としては、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、およびノルボルネン骨格から選択される1種以上の骨格を有するものが挙げられる。ガラス転移温度が50℃未満であるフェノキシ樹脂は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
ガラス転移温度が50℃未満であるフェノキシ樹脂の市販品としては、例えば、「YX7180BH40」(三菱ケミカル社製)等が挙げられる。
【0065】
ガラス転移温度が50℃未満である熱可塑性樹脂としては、熱硬化性樹脂(特にエポキシ樹脂)との相溶性が良好である等の観点から、ガラス転移温度が50℃未満であるポリエステル樹脂もまた好ましい。
【0066】
ガラス転移温度が50℃未満であるポリエステル樹脂としては、例えば「UE-3510」、「UE-3400」、「UE-3220」、「UE-3500」、「UE-9100」(いずれもユニチカ社製:飽和共重合ポリエステル樹脂)等が挙げられる。
【0067】
本発明における熱硬化性樹脂組成物中のガラス転移温度が50℃未満である熱可塑性樹脂の含有量は、反り抑制、および成膜した際の膜のタックの抑制と硬化物の耐熱性の観点から、熱硬化性樹脂組成物の不揮発分100質量%に対して、好ましくは10~60質量%であり、より好ましくは15~55質量%であり、さらに好ましくは20~50質量%である。
【0068】
本発明における熱硬化性樹脂組成物中の(B)ガラス転移温度が50℃以上である熱可塑性樹脂と(C)ガラス転移温度が50℃未満である熱可塑性樹脂との質量比は、反り抑制およびシート状の形態への成膜の観点から、好ましくは1:20~1:0.2であり、より好ましくは1:10~1:0.2であり、さらに好ましくは1:7~1:0.25であり、さらにより好ましくは1:5~1:0.3である。
【0069】
<(D)硬化剤および(E)硬化調整剤>
本発明における熱硬化性樹脂組成物は、硬化剤を含有する。硬化剤は、熱硬化性樹脂を硬化する機能を有するものであれば特に限定されない。反りや熱ひずみの発生量を抑制する観点から、硬化剤として、140℃以下(好ましくは120℃以下)の温度下で、熱硬化性樹脂を硬化し得るもの(低温硬化可能なもの)が好ましい。硬化剤は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0070】
硬化剤としては、熱硬化性樹脂として好ましいエポキシ樹脂の硬化剤につき、例示する。例えば、イオン液体、酸無水物化合物、イミダゾール化合物、3級アミン系化合物、アミンアダクト化合物、有機酸ジヒドラジド化合物、有機ホスフィン化合物、ジシアンジアミド化合物、1級・2級アミン系化合物等が挙げられる。
【0071】
硬化剤は、好ましくはイオン液体、酸無水物化合物、イミダゾール化合物、3級アミン系化合物およびアミンアダクト化合物から選ばれる1種以上であり、より好ましくはイオン液体、酸無水物化合物、イミダゾール化合物および3級アミン系化合物から選ばれる1種以上である。
【0072】
特に、本発明における硬化剤としては、140℃以下(好ましくは120℃以下)の温度下で熱硬化性樹脂(特にエポキシ樹脂)を硬化し得るイオン液体、すなわち、140℃以下(好ましくは120℃以下)の温度領域で融解しうる塩であって、熱硬化性樹脂(特に、エポキシ樹脂)の硬化作用を有する塩が好ましい。イオン液体は、熱硬化性樹脂(特にエポキシ樹脂)に均一に溶解している状態で使用されるのが望ましい。
【0073】
本発明における熱硬化性樹脂組成物は、硬化剤に加え、硬化時間を調整する、適切な温度以降で硬化するように制御する等の目的で(E)硬化調整剤を含有してもよい。硬化調整剤は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。硬化調整剤としては、熱硬化性樹脂として好ましいエポキシ樹脂の硬化調整剤につき、例示する。例えば、ジメチルウレア化合物、サリチル酸等が挙げられる。
【0074】
本発明における硬化剤としてのイオン液体を構成するカチオンとしては、イミダゾリウムイオン、ピペリジニウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピラゾニウムイオン、グアニジニウムイオン、ピリジニウムイオン等のアンモニウム系カチオン;テトラアルキルホスホニウムカチオン(例えば、テトラブチルホスホニウムイオン、トリブチルヘキシルホスホニウムイオン等)等のホスホニウム系カチオン;トリエチルスルホニウムイオン等のスルホニウム系カチオン等が挙げられる。
【0075】
本発明における硬化剤としてのイオン液体を構成するアニオンとしては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物系アニオン;メタンスルホン酸イオン等のアルキル硫酸系アニオン;トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ヘキサフルオロホスホン酸イオン、トリフルオロトリス(ペンタフルオロエチル)ホスホン酸イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、トリフルオロ酢酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン等の含フッ素化合物系アニオン;フェノールイオン、2-メトキシフェノールイオン、2,6-ジ-tert-ブチルフェノールイオン等のフェノール系アニオン;アスパラギン酸イオン、グルタミン酸イオン等の酸性アミノ酸イオン;グリシンイオン、アラニンイオン、フェニルアラニンイオン等の中性アミノ酸イオン;N-ベンゾイルアラニンイオン、N-アセチルフェニルアラニンイオン、N-アセチルグリシンイオン等の下記一般式(1)で示されるN-アシルアミノ酸イオン;ギ酸イオン、酢酸イオン、デカン酸イオン、2-ピロリドン-5-カルボン酸イオン、α-リポ酸イオン、乳酸イオン、酒石酸イオン、馬尿酸イオン、N-メチル馬尿酸イオン、安息香酸イオン等のカルボン酸系アニオンが挙げられる。
【0076】
【0077】
(但し、Rは炭素数1~5の直鎖または分岐鎖のアルキル基、或いは置換または無置換のフェニル基であり、Xはアミノ酸の側鎖を表す。)
【0078】
該式(1)におけるアミノ酸としては、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、アラニン、フェニルアラニン等が挙げられ、中でも、グリシンが好ましい。
【0079】
上述の中でも、カチオンはアンモニウム系カチオン、ホスホニウム系カチオンが好ましく、イミダゾリウムイオン、ホスホニウムイオンがより好ましい。イミダゾリウムイオンは、より詳細には、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムイオン、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムイオン、1-プロピル-3-メチルイミダゾリウムイオン等である。
【0080】
また、アニオンはフェノール系アニオン、一般式(1)で示されるN-アシルアミノ酸イオンまたはカルボン酸系アニオンが好ましく、N-アシルアミノ酸イオンまたはカルボン酸系アニオンがより好ましい。
【0081】
フェノール系アニオンの具体例としては、2,6-ジ-tert-ブチルフェノールイオンが挙げられる。また、カルボン酸系アニオンの具体例としては、酢酸イオン、デカン酸イオン、2-ピロリドン-5-カルボン酸イオン、ギ酸イオン、α-リポ酸イオン、乳酸イオン、酒石酸イオン、馬尿酸イオン、N-メチル馬尿酸イオン等が挙げられ、中でも、酢酸イオン、2-ピロリドン-5-カルボン酸イオン、ギ酸イオン、乳酸イオン、酒石酸イオン、馬尿酸イオン、N-メチル馬尿酸イオンが好ましく、酢酸イオン、デカン酸イオン、N-メチル馬尿酸イオン、ギ酸イオンが殊更好ましい。また、一般式(1)で示されるN-アシルアミノ酸イオンの具体例としては、N-ベンゾイルアラニンイオン、N-アセチルフェニルアラニンイオン、アスパラギン酸イオン、グリシンイオン、N-アセチルグリシンイオン等が挙げられ、中でも、N-ベンゾイルアラニンイオン、N-アセチルフェニルアラニンイオン、N-アセチルグリシンイオンが好ましく、N-アセチルグリシンイオンが殊更好ましい。
【0082】
具体的なイオン液体としては、例えば、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムラクテート、テトラブチルホスホニウム-2-ピロリドン-5-カルボキシレート、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムデカノエート、テトラブチルホスホニウムトリフルオロアセテート、テトラブチルホスホニウムα-リポエート、ギ酸テトラブチルホスホニウム塩、テトラブチルホスホニウムラクテート、酒石酸ビス(テトラブチルホスホニウム)塩、馬尿酸テトラブチルホスホニウム塩、N-メチル馬尿酸テトラブチルホスホニウム塩、ベンゾイル-DL-アラニンテトラブチルホスホニウム塩、N-アセチルフェニルアラニンテトラブチルホスホニウム塩、2,6-ジ-tert-ブチルフェノールテトラブチルホスホニウム塩、L-アスパラギン酸モノテトラブチルホスホニウム塩、グリシンテトラブチルホスホニウム塩、N-アセチルグリシンテトラブチルホスホニウム塩、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムラクテート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート、ギ酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩、馬尿酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩、N-メチル馬尿酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩、酒石酸ビス(1-エチル-3-メチルイミダゾリウム)塩、N-アセチルグリシン1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩が好ましく、テトラブチルホスホニウムデカノエート、N-アセチルグリシンテトラブチルホスホニウム塩、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート、ギ酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩、馬尿酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩、N-メチル馬尿酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩が殊更好ましい。
【0083】
上記イオン液体の合成法としては、アルキルイミダゾリウム、アルキルピリジニウム、アルキルアンモニウムおよびアルキルスルホニウムイオン等のカチオン部位と、ハロゲンを含むアニオン部位から構成される前駆体に、NaBF4、NaPF6、CF3SO3NaやLiN(SO2CF3)2等を反応させるアニオン交換法、アミン系物質と酸エステルとを反応させてアルキル基を導入しつつ、有機酸残基が対アニオンになるような酸エステル法、およびアミン類を有機酸で中和して塩を得る中和法等があるが、これらに限定されない。アニオンとカチオンと溶媒による中和法では、アニオンとカチオンとを等量使用し、得られた反応液中の溶媒を留去して、そのまま用いることも可能であるし、さらに有機溶媒(メタノール、トルエン、酢酸エチル、アセトン等)を差し液濃縮しても構わない。
【0084】
本発明における硬化剤としての酸無水物化合物としては、例えば、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物等が挙げられる。酸無水物化合物の具体例としては、リカシッドTH、TH-1A、HH、MH、MH-700、MH-700G(いずれも新日本理化社製)等が挙げられる。
【0085】
本発明における硬化剤としてのイミダゾール化合物としては、例えば、1H-イミダゾール、2-メチル-イミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチル-イミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-(2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’))-エチル-s-トリアジン、2-フェニル-4,5-ビス(ヒドロキシメチル)-イミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-イミダゾール、2-ドデシル-イミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチル-イミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-(2’-メチルイミダゾリル-(1’)-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-(2’-メチルイミダゾリル-(1’))-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。イミダゾール化合物の具体例としては、キュアゾール2MZ、2P4MZ、2E4MZ、2E4MZ-CN、C11Z、C11Z-CN、C11Z-CNS、C11Z-A、2PHZ、1B2MZ、1B2PZ、2PZ、C17Z、1.2DMZ、2P4MHZ-PW、2MZ-A、2MA-OK(いずれも四国化成工業社製)等が挙げられる。
【0086】
本発明における硬化剤としての3級アミン系化合物の具体例としては、DBN(1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン)、DBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン)、DBUの2-エチルヘキサン酸塩、DBUのフェノール塩、DBUのp-トルエンスルホン酸塩、U-CAT SA 102(サンアプロ社製:DBUのオクチル酸塩)、DBUのギ酸塩等のDBU-有機酸塩、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(TAP)などが挙げられる。
【0087】
本発明における硬化調整剤としてのジメチルウレア化合物の具体例としては、DCMU(3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチルウレア)、U-CAT3512T(サンアプロ社製)等の芳香族ジメチルウレア、U-CAT3503N(サンアプロ社製)等の脂肪族ジメチルウレア等が挙げられる。中でも硬化性の点から、芳香族ジメチルウレアが好ましく用いられる。
【0088】
本発明における硬化剤としてのアミンアダクト化合物としては、例えば、エポキシ樹脂への3級アミンの付加反応を途中で止めることによって得られるエポキシアダクト化合物等が挙げられる。アミンアダクト系化合物の具体例としては、アミキュアPN-23、アミキュアMY-24、アミキュアPN-D、アミキュアMY-D、アミキュアPN-H、アミキュアMY-H、アミキュアPN-31、アミキュアPN-40、アミキュアPN-40J(いずれも味の素ファインテクノ社製)等が挙げられる。
【0089】
本発明における硬化剤としての有機酸ジヒドラジド化合物の具体例としては、アミキュアVDH-J、アミキュアUDH、アミキュアLDH(いずれも味の素ファインテクノ社製)等が挙げられる。
【0090】
本発明における硬化剤としての有機ホスフィン化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン等が挙げられる。有機ホスフィン化合物の具体例としては、TPP、TPP-MK、TPP-K、TTBuPK、TPP-SCN、TPP-S(いずれも北興化学工業社製)等が挙げられる。
【0091】
本発明における硬化剤としてのジシアンジアミド化合物としては、例えば、ジシアンジアミドが挙げられる。ジシアンジアミド化合物の具体例としては、ジシアンジアミド微粉砕品であるDICY7、DICY15(いずれも三菱ケミカル社製)等が挙げられる。
【0092】
本発明における硬化剤としての1級・2級アミン系化合物としては、例えば、脂肪族アミンであるジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、ジプロピレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサン等、脂環式アミンであるN-アミノエチルピベラジン、1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン等、芳香族アミンである、ジアミノジフェニルメタン、m-フェニレンジアミン、m-キシレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン等が挙げられる。1級・2級アミン系化合物の具体例としては、カヤハードA-A(日本化薬社製:4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジフェニルメタン)等が挙げられる。
【0093】
本発明における熱硬化性樹脂組成物中の硬化剤の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の不揮発分100質量%に対して0.1~40質量%が好ましく、0.5~38質量部がより好ましく、1~35質量部がさらに好ましい。この含有量が0.1質量%よりも少ないと、十分な硬化性が得られないおそれがあり、この含有量が40質量%より多いと、熱硬化性樹脂組成物の保存安定性が損なわれることがある。なお、硬化剤としてイオン液体を使用する場合、イオン液体の量は、熱硬化性樹脂組成物の不揮発分100質量%に対して0.1~20質量%が好ましく、0.5~18質量%がより好ましく、1~15質量%がさらに好ましい。
【0094】
本発明における熱硬化性樹脂組成物が硬化調整剤を含む場合には、その含有量は、熱硬化性樹脂組成物の不揮発分100質量%に対して0.05~10質量%が好ましく、0.1~8質量%がより好ましく、0.5~5質量%がさらに好ましい。この含有量が0.05質量%未満であると、硬化が遅くなり熱硬化時間が長くなる傾向にあり、10質量%を超えると熱硬化性樹脂組成物の保存安定性が低下する傾向となる。
【0095】
本発明における熱硬化性樹脂組成物は、硬化剤と硬化調整剤とを組み合わせて使用するのが好ましい。硬化剤および硬化調整剤の組み合わせとして、イオン液体、酸無水物化合物、イミダゾール化合物、3級アミン系化合物およびアミンアダクト化合物から選ばれる少なくとも1種とジメチルウレア化合物およびサリチル酸から選ばれる少なくとも1種との組み合わせが好ましい。
【0096】
<(F)無機充填材>
本発明における熱硬化性樹脂組成物には、本発明の効果が発揮される範囲で、無機充填材をさらに含有させることができる。そのような無機充填材としては、例えば、未焼成ハイドロタルサイト、半焼成ハイドロタルサイト、焼成ハイドロタルサイト、タルク、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、クレー、マイカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、ケイ酸塩等が挙げられる。無機充填材は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、無機充填材の一次粒子の粒経は、5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましい。例えば、一次粒子の粒経が0.001~3μmのもの、より好ましくは0.005~2μmのものを用いることができる。
【0097】
無機充填材の粒子形態は特に限定されず、略球状、直方体状、板状、繊維のような直線形状、分岐形状のものを用いることができる。無機充填材は、タルク、シリカ、ゼオライト、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、ケイ酸塩、マイカ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が好ましく、タルク、シリカがより好ましく、タルクが特に好ましい。シリカとしては、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカ(水分散型、有機溶剤分散型、気相シリカ等)が好ましく、沈殿、沈降しにくく、樹脂との複合化がしやすいという観点から、有機溶剤分散型コロイダルシリカ(オルガノシリカゾル)が特に好ましい。
【0098】
無機充填材は、表面処理剤で表面処理したものを用いることができる。表面処理に使用する表面処理剤としては、例えば、高級脂肪酸、アルキルシラン類、シランカップリング剤等を使用することができ、なかでも、高級脂肪酸、アルキルシラン類が好適である。表面処理剤は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0099】
高級脂肪酸としては、例えば、ステアリン酸、モンタン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸などの炭素数18以上の高級脂肪酸が挙げられ、中でも、ステアリン酸が好ましい。これらは、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0100】
アルキルシラン類としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、n-オクタデシルジメチル(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アンモニウムクロライド等が挙げられる。これらは、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0101】
シランカップリング剤としては、例えば、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシランおよび2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ系シランカップリング剤;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランおよび11-メルカプトウンデシルトリメトキシシランなどのメルカプト系シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランおよびN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルジメトキシメチルシランなどのアミノ系シランカップリング剤;3-ウレイドプロピルトリエトキシシランなどのウレイド系シランカップリング剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランおよびビニルメチルジエトキシシランなどのビニル系シランカップリング剤;p-スチリルトリメトキシシランなどのスチリル系シランカップリング剤;3-アクリルオキシプロピルトリメトキシシランおよび3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリレート系シランカップリング剤;3-イソシアネートプロピルトリメトキシシランなどのイソシアネート系シランカップリング剤;ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのスルフィド系シランカップリング剤;フェニルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン、トリアジンシラン等を挙げることができる。これらは、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0102】
無機充填材の表面処理は、例えば、無機充填材を混合機で常温にて攪拌分散させながら、表面処理剤を添加噴霧して5~60分間攪拌することによって行なうことができる。混合機としては、公知の混合機を使用することができ、例えば、Vブレンダー、リボンブレンダー、バブルコーンブレンダー等のブレンダー、ヘンシェルミキサーおよびコンクリートミキサー等のミキサー、ボールミル、カッターミル等が挙げられる。また、ボールミルなどで無機充填材を粉砕する際に、前記の高級脂肪酸、アルキルシラン類またはシランカップリング剤を添加し、表面処理を行うこともできる。表面処理剤の使用量は、無機充填材の種類または表面処理剤の種類等によっても異なるが、表面処理されていない無機充填材100質量部に対して1~10質量部が好ましい。本発明においては、表面処理された無機充填材も、本発明における「無機充填材」に包含される。
【0103】
無機充填材は、市販品を使用することができる。タルクの例として、日本タルク社製「FG-15」(平均粒径1.4μm)、「D-1000」(平均粒径1.0μm)、「D-600」(平均粒径0.6μm)等が挙げられる。市販されている球状溶融シリカの例として、アドマテックス社製の真球シリカ「アドマファインシリーズ」(「SO-C2;平均粒径0.5μm」、「SC2500-SQ;平均粒子径0.5μm、シランカップリング処理」など)等が挙げられる。フュームドシリカの例として、日本アエロジル社製の「アエロジルシリーズ」(「A-200:一次粒子径5~40nm」など)等が挙げられる。有機溶剤分散型コロイダルシリカの例として、日産化学工業社製「MEK-EC-2130Y」(アモルファスシリカ粒径10~15nm、不揮発分30質量%、MEK溶剤)、日産化学工業社製「PGM-AC-2140Y」(シリカ粒径10~15nm、不揮発分40質量%、PGM(プロピレングリコールモノメチルエーテル)溶剤)、日産化学工業社製「MIBK-ST」(シリカ粒径10~15nm、不揮発分30質量%、MIBK(メチルイソブチルケトン)溶剤)、扶桑化学工業社製コロイド状シリカゾル「PL-2L-MEK」(シリカ粒径15~20nm、不揮発分20質量%、MEK(メチルエチルケトン)溶剤)等が挙げられる。
【0104】
本発明における熱硬化性樹脂組成物に無機充填材を配合する場合、反りは抑制される傾向となるが、高充填化すると樹脂組成物層(接着層)の硬化前の靭性が低下したり、接着基材への密着性や埋込性が低下する場合がある。また、無機充填材の添加により熱硬化性樹脂組成物の透明性が低下する。従って、透明性に優れた熱硬化性樹脂組成物を得たい場合には、無機充填材を配合しないか、または無機充填材の配合量を所望の透明性が得られる範囲にとどめるのが好ましい。本発明における熱硬化性樹脂組成物中の無機充填材の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の透明性の観点から、熱硬化性樹脂組成物の不揮発分100質量%に対して、0~30質量%が好ましく、0~20質量%がより好ましく、0~10質量%がさらに好ましい。
【0105】
<カップリング剤>
本発明における熱硬化性樹脂組成物はカップリング剤を含有していてもよい。カップリング剤としては、シランカップリング剤、アルミネートカップリング剤、チタネートカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、例えば、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシランおよび2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ系シランカップリング剤;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランおよび11-メルカプトウンデシルトリメトキシシランなどのメルカプト系シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランおよびN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルジメトキシメチルシランなどのアミノ系シランカップリング剤;3-ウレイドプロピルトリエトキシシランなどのウレイド系シランカップリング剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランおよびビニルメチルジエトキシシランなどのビニル系シランカップリング剤;p-スチリルトリメトキシシランなどのスチリル系シランカップリング剤;3-アクリルオキシプロピルトリメトキシシランおよび3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリレート系シランカップリング剤;3-イソシアネートプロピルトリメトキシシランなどのイソシアネート系シランカップリング剤;ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのスルフィド系シランカップリング剤;フェニルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン、トリアジンシラン等を挙げることができる。これらの中でも、ビニル系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤が好ましく、エポキシ系シランカップリング剤が特に好ましい。アルミネートカップリング剤としては、例えば、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(例えば、味の素ファインテクノ社製「プレンアクトAL-M」)が挙げられる。チタネート系カップリング剤の具体例としては、プレンアクトTTS、プレンアクト46B、プレンアクト55、プレンアクト41B、プレンアクト38S、プレンアクト138S、プレンアクト238S、プレンアクト338X、プレンアクト44、プレンアクト9SA(いずれも味の素ファインテクノ社製)等が挙げられる。カップリング剤は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0106】
本発明における熱硬化性樹脂組成物中のカップリング剤の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の不揮発分100質量%に対して0~15質量%が好ましく、0.5~10質量%がより好ましい。
【0107】
<その他の添加剤>
本発明における熱硬化性樹脂組成物は、本発明の効果が発揮される範囲であれば、上述の成分とは異なるその他の添加剤をさらに含有していてもよい。このような添加剤としては、例えば、ゴム粒子、シリコーンパウダー、ナイロンパウダー、フッ素樹脂パウダー等の有機充填材;オルベン、ベントン等の増粘剤;シリコーン系、フッ素系、高分子系の消泡剤またはレベリング剤;トリアゾール化合物、チアゾール化合物、トリアジン化合物、ポルフィリン化合物等の密着性付与剤;リン系化合物、金属水酸化物等の難燃剤;等を挙げることができる。
【0108】
[熱硬化性樹脂組成物の製造方法]
本発明における熱硬化性樹脂組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、上記配合成分を、必要により溶媒等を添加し、混練ローラーや回転ミキサーなどを用いて混合する方法などが挙げられる。
【0109】
[用途]
本発明の方法は、各種機械向けカバーや窓材などの透明パネル、太陽電池受光面側用透明パネル、携帯情報端末、家電製品用リモコン等に用いられるキーシートなどの接着に用いることができる。
【実施例】
【0110】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、上記・下記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、成分の量における「部」および「%」は、特に断りがない限り、それぞれ「質量部」および「質量%」を意味する。
【0111】
<成分>
実施例および比較例で用いた成分を以下に示す。
(A)熱硬化性樹脂:
・液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂および液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合物(新日鐵化学工業社製「ZX-1059」、エポキシ当量:約165、Tg:155℃)
(B)ガラス転移温度が50℃以上である熱可塑性樹脂:
・フェノキシ樹脂溶液(三菱ケミカル社製「YX7200B35」、溶媒:MEK、不揮発分:35%、Tg:156℃)
(C)ガラス転移温度が50℃未満である熱可塑性樹脂:
・フェノキシ樹脂溶液(三菱ケミカル社製「YX7180BH40」、溶媒:MEKとシクロヘキサノンとの混合溶媒、不揮発分:40%、Tg:15℃)
(D)硬化剤:
・四国化成工業社製「2E4MZ」
(E)硬化調整剤:
・サンアプロ社製「U-CAT3512T」
・和光社製「サリチル酸」
【0112】
<製造例1>
下記表1に示す配合比のワニスを以下の手順で作製し、得られたワニスを用いて熱硬化型接着シートを作製した。なお、下記表1に記載の各成分の使用量(部)は、ワニス中の各成分の不揮発分の量を示す。具体的には、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂および液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合物(新日鐵化学工業社製「ZX-1059」)とフェノキシ樹脂溶液(三菱ケミカル社製「YX7200B35」)、フェノキシ樹脂溶液(三菱ケミカル社製「YX7180BH40」)とを配合し、高速回転ミキサーで均一に分散した混合物を得た。さらに、硬化調整剤(サンアプロ社製「U-CAT3512T」および和光社製「サリチル酸」)、硬化剤(四国化成工業社製「2E4MZ」)を配合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂組成物のワニスを得た。
【0113】
得られたワニスを、支持体(シリコーン系離型剤で処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ38μm、以下「離型PETフィルム」と略す)の離型面上に、乾燥後の樹脂組成物層(接着層)の厚さが20μmとなるようにダイコーターにて均一に塗工し、80℃で10分間乾燥した後、得られた樹脂組成物層(接着層)の表面に、保護フィルムとして離型PETフィルムを離型面が樹脂組成物層(接着層)と接するように載せ、熱硬化型接着シートを得た。
【0114】
<製造例2>
熱可塑性樹脂を除いた配合としたこと以外は、製造例1と同様の手法で熱硬化型接着シートを得た。
【0115】
<実施例1>
製造例1で調製した熱硬化型接着シート(50μm)を50mm×20mmに裁断し、保護フィルムを剥離し、露出した樹脂組成物層(接着層)をポリカーボネート板(タキロンシーアイ社製「PC1600」、100mm×25mm×2mm、表2中「PC」と表記する)上に、真空ラミネーター(ニッコーマテリアルズ社製「V-160」)を用いて貼合した。(貼合条件:温度80℃、加圧0.1MPa、時間30秒)
【0116】
得られた積層体の支持体を剥離し、露出した樹脂組成物層(接着層)に、ポリエチレンテレフタレート板(東レ社製「ルミラー」1100mm×25mm×188μm、表2中「PET」と表記する)を、真空ラミネーターで貼合し、三層から構成される構造物を作製した。(貼合条件:温度80℃、加圧0.1MPa、時間30秒)
【0117】
その後、構造物を上下のプレート温度を80℃に設定した真空ラミネーターに再度入れ、0.1MPaの加圧下で40分間加熱することで樹脂組成物層(接着層)を熱硬化し、硬化物を調製した。
【0118】
<実施例2>
硬化温度を80℃から100℃に変更したこと以外は、実施例1と同じ条件で硬化物を調製した。
【0119】
<実施例3>
加圧条件を0.1MPaから0.3MPaに変更したこと以外は、実施例1と同じ条件で硬化物を調製した。
【0120】
<実施例4>
ポリエチレンテレフタレート板をポリカーボネート板(タキロンシーアイ社製「PC1600」、100μm)に変更し、熱硬化時の圧力条件を0.3MPaに変更したこと以外は、実施例1と同じ条件で硬化物を調製した。
【0121】
<実施例5>
ポリカーボネート板をポリメチルメタクリレート板(スタンダードピース社製、100mm×25mm×2mm、表2中「PMMA」と表記する)に変更し、熱硬化時の圧力条件を0.3MPaに変更したこと以外は、実施例1と同じ条件で硬化物を調製した。
【0122】
<比較例1>
硬化条件を、オーブンにて100℃40分に変更し、基材の反りを抑制する為、構造物をSUS板で挟んだ状態に変更したこと以外は、実施例1と同じ条件で硬化物を調製した。
【0123】
<比較例2>
硬化条件を80℃40分に変更したこと以外は、比較例1と同じ条件で硬化物を調製した。
【0124】
<比較例3>
製造例1で調製した熱硬化型接着シートを製造例2で調製した熱硬化型接着シートに変更したこと以外は、実施例1と同じ条件で硬化物を調製した。
【0125】
<硬化後の外観評価>
得られた硬化物を加圧プレートもしくはオーブンから取り出して放冷したのち、外観を観察し、下記の基準で評価した。結果を下記表2に記載する。
〇(良):接着層に雪花状の気泡やボイドの発生無
×(不良):接着層に雪花状の気泡やボイドの発生有
【0126】
<接着性の評価方法>
実施例及び比較例で調製した硬化物について、ポリエチレンテレフタレート板もしくはポリカーボネート板の長さ方向に沿って、引張速度50mm/分で90度方向に剥離した時の剥離強度を測定した。2回測定した剥離強度の平均値を算出し、以下の基準で評価した。結果を下記表2に記載する。
◎(良):材料破壊
〇(可):剥離強度の平均値が300gf/cm以上
×(不良):剥離強度の平均値が300gf/cm未満
【0127】
【0128】
【0129】
表2の結果から、本発明の方法を適用することにより、硬化後の樹脂組成物層(接着層)に気泡やボイドの発生がなく良好な外観を保った状態で、2つの被着体を高い接着性で従来よりも低温で接着することができることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明の方法は、プライマー処理無しで一方がプラスチック基材である2つの被着体を高い接着性で気泡やボイドが発生すること無く低温で接着することができる方法を提供することができ、各種機械向けカバーや窓材などの透明パネル、太陽電池受光面側用透明パネル、携帯情報端末、家電製品用リモコン等に用いられるキーシートなどの接着に有用である。