(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】推定装置及び推定方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20240910BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20240910BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20240910BHJP
G16Y 20/20 20200101ALI20240910BHJP
G16Y 40/20 20200101ALI20240910BHJP
G01M 17/007 20060101ALN20240910BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G06N20/00 130
G08G1/00 A
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/20
G01M17/007 Z
(21)【出願番号】P 2023017621
(22)【出願日】2023-02-08
【審査請求日】2023-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】水師 由佳
(72)【発明者】
【氏名】下沢 智啓
(72)【発明者】
【氏名】松下 真矢
(72)【発明者】
【氏名】下中 淳史
(72)【発明者】
【氏名】後閑 雅登
【審査官】西畑 智道
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-051637(JP,A)
【文献】特開2005-291081(JP,A)
【文献】特開2014-202643(JP,A)
【文献】特開2015-214294(JP,A)
【文献】特開2022-181267(JP,A)
【文献】特開2010-271749(JP,A)
【文献】特開2014-232497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
G06N 20/00
G16Y 10/40
G16Y 20/20
G16Y 40/20
G01M 17/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行中に測定された前記車両の速度の時系列データを学習用時系列データとして取得する時系列データ取得部と、
前記学習用時系列データにおける所定の速度毎の加速度の発生頻度分布を示す学習用加速度頻度データと、前記学習用時系列データが測定される際に前記車両によって消費される消費エネルギーを示す学習用消費エネルギーデータとを取得する学習用データ取得部と、
前記学習用加速度頻度データと前記学習用消費エネルギーデータを教師データとして機械学習することにより、前記時系列データにおける所定の速度毎の加速度の発生頻度分布を示す加速度頻度データを含む入力データが入力されたことに応じて消費エネルギーデータを出力する機械学習モデルを作成するモデル作成部と、
前記モデル作成部が作成した前記機械学習モデルを記憶している記憶部と、
前記車両が走行中に測定された前記車両の速度の時系列データにおける所定の速度毎の加速度の発生頻度分布を示す加速度頻度データを取得する頻度データ取得部と、
前記頻度データ取得部が取得した前記加速度頻度データを含む入力データを前記機械学習モデルに入力することにより、前記加速度頻度データを取得した前記車両の消費エネルギーを推定する推定部と、
を備える、推定装置。
【請求項2】
前記記憶部は、前記学習用加速度頻度データと、前記消費エネルギーである燃料消費率を示す学習用燃費データと、を教師データとして機械学習した前記機械学習モデルを記憶しており、
前記推定部は、前記頻度データ取得部が取得した前記加速度頻度データを含む入力データを前記機械学習モデルに入力することにより、前記加速度頻度データを取得した前記車両の燃料消費率を推定する、
請求項1に記載の推定装置。
【請求項3】
前記記憶部は、前記学習用加速度頻度データと、前記消費エネルギーである電気消費率を示す学習用電費データと、を教師データとして機械学習した前記機械学習モデルを記憶しており、
前記推定部は、前記頻度データ取得部が取得した前記加速度頻度データを含む入力データを前記機械学習モデルに入力することにより、前記加速度頻度データを取得した前記車両の電気消費率を推定する、
請求項1に記載の推定装置。
【請求項4】
前記頻度データ取得部は、所定範囲の速度において所定の前記加速度毎の発生頻度を示す前記加速度頻度データを取得する、
請求項1に記載の推定装置。
【請求項5】
プロセッサが実行する、
車両が走行中に測定された前記車両の速度の時系列データを学習用時系列データとして取得するステップと、
前記学習用時系列データにおける所定の速度毎の加速度の発生頻度分布を示す学習用加速度頻度データと、前記学習用時系列データが測定される際に前記車両によって消費される消費エネルギーを示す学習用消費エネルギーデータとを取得するステップと、
前記学習用加速度頻度データと前記学習用消費エネルギーデータを教師データとして機械学習することにより、前記時系列データにおける所定の速度毎の加速度の発生頻度分布を示す加速度頻度データを含む入力データが入力されたことに応じて消費エネルギーデータを出力する機械学習モデルを作成するステップと、
作成した前記機械学習モデルを、記憶部に記憶させるステップと、
前記車両が走行中に測定された前記車両の速度の時系列データにおける所定の速度毎の加速度の発生頻度分布を示す加速度頻度データを取得するステップと、
前記加速度頻度データを含む入力データを前記機械学習モデルに入力することにより、前記加速度頻度データを取得した前記車両の消費エネルギーを推定するステップと、
を有する、推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推定装置及び推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、車速の時系列データと当該時系列データに対応する車速頻度及び加速度頻度とを学習データとして用いて機械学習した機械学習モデルに、速度及び加速度の頻度データを入力して、対応する時系列データを生成するデータ生成装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
データ生成装置が生成した時系列データから、例えば実走行試験やシミュレーションソフトを用いて、車両が消費する消費エネルギー(例えば、燃費)を求めることが想定される。しかし、実走行試験では気象状況や交通状況等を考慮して複数回実験を行う必要があり、またシミュレーションソフトでは計算時間が長くなってしまう。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、頻度データから車両の消費エネルギーを短時間に推定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様においては、車両が走行中に測定された前記車両の速度の時系列データにおける所定の速度毎の加速度の発生頻度分布を示す加速度頻度データを取得する頻度データ取得部と、前記車両の速度の学習用時系列データに対応する学習用加速度頻度データと、前記学習用時系列データが測定される際に前記車両によって消費される消費エネルギーを示す学習用消費エネルギーデータと、を教師データとして機械学習した機械学習モデルを記憶している記憶部と、前記頻度データ取得部が取得した前記加速度頻度データを含む入力データを前記機械学習モデルに入力することにより、前記加速度頻度データを取得した前記車両の消費エネルギーを推定する推定部と、を備える、推定装置を提供する。
【0007】
また、前記記憶部は、前記学習用加速度頻度データと、前記消費エネルギーである燃料消費率を示す学習用燃費データと、を教師データとして機械学習した前記機械学習モデルを記憶しており、前記推定部は、前記頻度データ取得部が取得した前記加速度頻度データを含む入力データを前記機械学習モデルに入力することにより、前記加速度頻度データを取得した前記車両の燃料消費率を推定することとしてもよい。
【0008】
また、前記記憶部は、前記学習用加速度頻度データと、前記消費エネルギーである電気消費率を示す学習用電費データと、を教師データとして機械学習した前記機械学習モデルを記憶しており、前記推定部は、前記頻度データ取得部が取得した前記加速度頻度データを含む入力データを前記機械学習モデルに入力することにより、前記加速度頻度データを取得した前記車両の電気消費率を推定することとしてもよい。
【0009】
また、前記車両が走行中に測定された前記車両の速度の時系列データを学習用時系列データとして取得する時系列データ取得部と、前記学習用時系列データにおける前記所定の速度毎の加速度の発生頻度分布を示す学習用加速度頻度データと、前記時系列データから前記車両の消費エネルギーを示す学習用消費エネルギーデータとを取得する学習用データ取得部と、を更に備えることとしてもよい。
【0010】
また、前記学習用加速度頻度データと前記学習用消費エネルギーデータを教師データとして機械学習することにより、前記加速度頻度データを含む入力データが入力されたことに応じて消費エネルギーデータを出力する前記機械学習モデルを作成するモデル作成部を更に備えることとしてもよい。
【0011】
また、前記頻度データ取得部は、所定範囲の速度において所定の前記加速度毎の発生頻度を示す前記加速度頻度データを取得することとしてもよい。
【0012】
本発明の第2の態様においては、プロセッサが実行する、車両が走行中に測定された前記車両の速度の時系列データにおける所定の速度毎の加速度の発生頻度分布を示す加速度頻度データを取得するステップと、前記車両の速度の学習用時系列データに対応する学習用加速度頻度データと、前記学習用時系列データが測定される際に前記車両によって消費される消費エネルギーを示す学習用消費エネルギーデータと、を教師データとして機械学習した機械学習モデルを、記憶部に記憶させるステップと、前記加速度頻度データを含む入力データを前記機械学習モデルに入力することにより、前記加速度頻度データを取得した前記車両の消費エネルギーを推定するステップと、を有する、推定方法を提供する。
【0013】
本発明の第3の態様においては、車両の所定の速度範囲毎の加速度の発生頻度を示す頻度データを入力データとし、前記車両の消費エネルギーを出力データとする機械学習モデルを記憶する記憶部と、前記車両の頻度データを取得する取得部と、前記取得部が取得した前記頻度データと、前記機械学習モデルを用いて、前記車両の消費エネルギーを推定する推定部と、前記推定された消費エネルギーを出力する出力部と、を備える、推定装置を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、頻度データから車両の消費エネルギーを短時間に推定できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】消費エネルギーの推定システムSの概要を説明するための図である。
【
図2】消費エネルギーの推定システムSの概要を説明するための図である。
【
図4】車両の速度の時系列データを説明するための図である。
【
図5】所定の速度毎の加速度の発生頻度を説明するための図である。
【
図6】モデル作成部233が機械学習モデルMを作成する処理の概要を示す図である。
【
図7】推定部235が機械学習モデルMを用いて燃費を推定する過程を示す図である。
【
図8】推定装置2が車両の加速度頻度データから消費エネルギーを推定する際の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<消費エネルギーの推定システムSの概要>
図1及び
図2は、消費エネルギーの推定システムSの概要を説明するための図である。
【0017】
推定システムSは、車両において測定された測定データの頻度データに基づいて、車両の消費エネルギーを推定するためのシステムである。推定システムSは、データ収集装置1、推定装置2及び表示装置3を備えている。推定装置2は、機械学習モデルを用いて、頻度データに基づいて車両の消費エネルギーを推定する装置である。当該機械学習モデルは、例えば線形回帰モデルを含んで構成されている。推定装置2は、推定した車両の消費エネルギーを出力する。例えば、推定装置2は、推定した車両の消費エネルギーを含む車両データを表示装置3に表示させるため、表示装置3に出力してもよい。また、推定装置2は、ネットワークを介して推定した車両の消費エネルギーを含む車両データを表示装置3に出力してもよい。
【0018】
データ収集装置1は、ネットワークNを介して多数の車両において測定されたパラメータのデータを取得する装置であり、例えばコンピュータである。推定装置2は、データ収集装置1を介して車両から取得した学習用の時系列データに対応する頻度データ及び燃費データを教師データとして機械学習した機械学習モデルを作成するコンピュータである。推定装置2は、作成した機械学習モデルを用いて、前記車両から得られた頻度データに基づいて消費エネルギー(例えば、燃費)を推定する。表示装置3は、例えばディスプレイであり、推定装置2が推定した消費エネルギーを含む車両データに関する表示を行う。
【0019】
図1は、推定装置2が機械学習をして機械学習モデルを作成する間の推定システムSの動作を示す図である。データ収集装置1は、予め登録された学習用の車両T1から所定のパラメータ(例えば速度)の測定データを取得する(
図1における(1))。データ収集装置1は、取得した測定データの時系列データを推定装置2に送信する(
図1における(2))。
【0020】
推定装置2は、データ収集装置1から受信した時系列データから学習用データ(具体的には、学習用頻度データ及び学習用消費エネルギーデータ)を生成し、学習用頻度データ及び学習用消費エネルギーデータを教師データとして、頻度データが入力されると消費エネルギーデータを出力する機械学習モデルを作成する(
図1における(3))。
【0021】
続いて、
図2を参照して、推定装置2が機械学習モデルを作成した後の動作を説明する。推定対象の車両T2は、車両T2が取得した頻度データ(具体的には、加速度頻度データ)をデータ収集装置1に送信する(
図2における(4))。時系列データである測定データではなく、頻度データが送信されるのは、通信量を減らすためである。
【0022】
データ収集装置1は、車両T2から受信した頻度データを推定装置2に送信する(
図2における(5))。推定装置2は、受信した頻度データを機械学習モデルに入力し、機械学習モデルから出力される消費エネルギーデータを取得することにより、車両T2の消費エネルギーを推定する(
図2における(6))。推定装置2は、推定した消費エネルギーを表示装置3に出力する(
図2における(7))。
【0023】
以上の流れにより、推定装置2を利用する車両T2の管理者等のユーザが、車両T2から取得した頻度データに基づいて、車両T2の消費エネルギーを短時間に推定することができる。
【0024】
<推定装置2の詳細構成>
図3は、推定装置2の構成を示す図である。
推定装置2は、通信部21と、記憶部22と、制御部23を有する。制御部23は、時系列データ取得部231と、学習用データ取得部232と、モデル作成部233と、頻度データ取得部234と、推定部235と、出力部236を有する。
【0025】
通信部21は、ネットワークNを介してデータ収集装置1又はその他の外部装置との間でデータを送受信するための通信インターフェースを含む。通信部21は、外部装置から受信したデータを制御部23に通知し、制御部23から入力されたデータを外部装置へと送信する。
【0026】
記憶部22は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びハードディスク等の記憶媒体を含む。記憶部22は、制御部23が実行するプログラムを記憶する。また、記憶部22は、データ収集装置1から受信した時系列データ等を一時的に記憶する。また、記憶部22は、後述する機械学習モデルを記憶してもよい。
【0027】
制御部23は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。制御部23は、記憶部22に記憶されたプログラムを実行することにより、時系列データ取得部231、学習用データ取得部232、モデル作成部233、頻度データ取得部234、推定部235及び出力部236として機能する。
【0028】
時系列データ取得部231は、車両が走行中に測定された車両の速度の時系列データを学習用時系列データとして取得する。具体的には、時系列データ取得部231は、
図1に示す複数の学習用車両T1の車速の時系列データを取得する。時系列データは、時間によって変化するパラメータの値を示すデータであり、例えば1秒ごとの車両の速度の値から構成されている。車速の時系列データは、車速の時間変化データともいえる。時系列データ取得部231は、取得した時系列データを、学習用データ取得部232及びモデル作成部233に入力する。時系列データ取得部231は、例えば
図4に示すような時系列データを取得する。
【0029】
図4は、車両の速度の時系列データを説明するための図である。時系列データは、車両が所定時間に亘って走行する際の速度変化を示すデータとなっている。所定時間の間に、車両は走行を開始したり停止したりしている。
【0030】
学習用データ取得部232は、機械学習を行うための学習用データを取得する。学習用データ取得部232は、時系列データ取得部231が取得した時系列データに対応する学習用データを取得する。学習用データ取得部232は、学習用データとして、時系列データにおける所定の速度毎の加速度の発生頻度分布を示す学習用加速度頻度データを取得する。学習用データ取得部232は、時系列データを1回微分することにより加速度を求める。
【0031】
加速度頻度データは、例えば、単位時間内に所定の加速度が発生した時間又は割合を示すデータである。なお、車両が加速している間は加速度が正の値となり、減速している間は加速度が負の値となる。
【0032】
図5は、所定の速度毎の加速度の発生頻度を説明するための図である。加速度の発生頻度分布は、所定の車速の範囲ごとに、発生した加速度の分布を示す。例えば、本実施の形態において、所定の車速の範囲が、10(km/h)の範囲であり、車速の全体の範囲が0~160(km/h)であるとする。加速度の発生頻度分布は、車速の範囲ごとに、0.5(m/s
2)の加速度の幅ごとの頻度が示されたデータであり、加速度の範囲は、-5.0~+5.0(m/s
2)であるとする。すなわち、各車速の範囲に対して、20の加速度範囲における加速度の発生頻度が示される。加速度の発生頻度分布は、車速及び加速度を320クラスに分けた際の各クラスでの発生頻度を示す。1~20のクラスは、車速がv
0(0km/h)~v
1(10km/h)である際の加速度の発生頻度を特定するためのクラスである。例えば、クラス1は、車速がv
0~v
1(km/h)であり、かつ加速度がa
0(-5.0m/s
2)~a
1(-4.5m/s
2)であることを意味する。同様に、21~40のクラスは、車速がv
1(10km/h)~v
2(20km/h)である際の加速度の発生頻度を特定するためのクラスであり、301~320のクラスは、車速がv
15(150km/h)~v
16(160km/h)である際の加速度の発生頻度を特定するためのクラスである。なお、上述した、加速度の発生頻度分布における、車速の範囲および加速度の範囲は、例示であって、異なる値を採用することも可能である。
【0033】
学習用データ取得部232は、例えば1800秒の時系列データの1秒毎のクラス(1~320のいずれかのクラス)を特定して、特定したクラス毎の数を足し合わせることで、発生頻度分布を示す学習用加速度頻度データを求める。
【0034】
また、学習用データ取得部232は、学習用データとして、時系列データから車両の消費エネルギーを示す学習用消費エネルギーデータを取得する。学習用データ取得部232は、学習用消費エネルギーデータとして、時系列データに対応する燃費データを取得する。例えば、学習用データ取得部232は、所定のシミュレーションソフトを用いることで、時系列データから燃費データを取得できる。
【0035】
モデル作成部233は、加速度頻度データが入力されることに応じて燃費エネルギーデータを出力する機械学習モデルを作成する。具体的には、モデル作成部233は、学習用加速度頻度データと学習用消費エネルギーデータを教師データとして機械学習することにより、機械学習モデルを作成する。機械学習モデルは、加速度頻度データを含む入力データが入力されたことに応じて、消費エネルギーデータを出力する。
【0036】
図6は、モデル作成部233が機械学習モデルMを作成する処理の概要を示す図である。機械学習モデルMは、ここでは線形回帰モデルにより構成されているものとする。
【0037】
図6に示すように、機械学習モデルM-1は、一例としての線形回帰モデルにより構成されている。線形回帰モデルは、推定したい値を目的変数、推定のために用いる値を説明変数とし、説明変数に可変の重みが設けられた回帰式を作成する。燃費エネルギーデータが目的変数、加速度頻度データが説明変数に対応する。
【0038】
モデル作成部233は、学習用頻度データが入力される機械学習モデルM-1で構成されている。モデル作成部233は、機械学習モデルM-1から出力される推定燃費データと、入力した学習用頻度データに対応する学習用燃費データとを比較する。
【0039】
モデル作成部233は、機械学習モデルM-1に学習用頻度データを入力した際に出力される推定燃費データと、学習用燃費データとの差分に基づいて、機械学習モデルM-1の重みを更新する。
【0040】
モデル作成部233は、例えば推定燃費データと学習用燃費データとの差が閾値以上である場合に、重みを更新する。モデル作成部233は、推定燃費データと学習用燃費データとの差が閾値未満になるまで、学習用頻度データを機械学習モデルM-1に入力したことにより推定される燃費データと学習用燃費データとの比較と重みの更新とを繰り返す。モデル作成部233は、多数の学習用頻度データ及び学習用燃費データのペアを用いて上記の処理を実行することにより、
図7に示す機械学習モデルM-2(機械学習モデルM-1と実質的に同一のモデル)を作成する。
【0041】
モデル作成部233は、作成した機械学習モデルを記憶部22に記憶させる。ただし、上記に限定されず、モデル作成部233は、モデル作成部233が有するメモリに機械学習モデルを記憶させてもよい。また、モデル作成部233は、作成した機械学習モデルの重みを記憶部22に記憶させてもよい。
【0042】
頻度データ取得部234は、モデル作成部233が作成した機械学習モデルを用いて車両の消費エネルギーを推定するために用いられる加速度頻度データを取得する。頻度データ取得部234は、消費エネルギーを推定する対象の車両(
図2に示す車両T2)の加速度頻度データを、通信部21を介してデータ収集装置1から取得する。頻度データ取得部234は、車両T2が走行中に測定された車両T2の速度の時系列データにおける所定の速度毎の加速度の発生頻度分布を示す加速度頻度データを取得する。なお、頻度データ取得部234は、データ収集装置1を介さずに、車両T2から加速度頻度データを取得してもよい。
【0043】
頻度データ取得部234は、所定範囲の速度において所定の加速度毎の発生頻度を示す加速度頻度データを取得する。具体的には、頻度データ取得部234は、
図5で説明した加速度頻度データ(所定範囲の速度毎の加速度を320クラスで特定した加速度頻度データ)を取得する。頻度データ取得部234は、取得した加速度頻度データを推定部235に入力する。
【0044】
推定部235は、頻度データ取得部234が取得した加速度頻度データから車両T2の消費エネルギーを推定する。推定部235は、頻度データ取得部234が取得した加速度頻度データを含む入力データを機械学習モデルに入力することにより、加速度頻度データを取得した車両T2の消費エネルギー(具体的には、平均消費エネルギー)を推定する。これにより、推定部235は、車両T2から時系列データを取得しなくても、加速度頻度データを取得することで、車両T2の消費エネルギーを高速に推定できる。
【0045】
推定部235は、消費エネルギーとして、車両T2の燃料消費率(単に、燃費とも呼ぶ)を推定する。すなわち、推定部235は、頻度データ取得部234が取得した加速度頻度データを含む入力データを機械学習モデルに入力することにより、加速度頻度データを取得した車両T2の燃料消費率(具体的には、平均燃料消費率)を推定する。これにより、推定部235は、シミュレーションソフト等を用いなくても、車両T2の燃料消費率を高速に推定できる。
【0046】
図7は、推定部235が機械学習モデルMを用いて燃費を推定する過程を示す図である。モデル作成部233が機械学習モデルM-1を更新して機械学習モデルM-2として完成した後には、
図7に示すように、推定部235が、車両T2から取得された頻度データ(加速度頻度データ)を機械学習モデルM-2に入力することにより、機械学習モデルM-2が、入力された頻度データに対応する燃費データを出力する。
【0047】
出力部236は、推定部が推定した車両T2の消費エネルギーを出力する。例えば、出力部236は、消費エネルギーの表示装置3(
図2)に表示させるため、消費エネルギーを含む車両T2のデータを表示装置3に出力する。表示装置3が推定した消費エネルギーを表示することで、車両T2の管理者等のユーザが、車両T2の消費エネルギーを容易に把握できる。
【0048】
上記では、推定装置2は、車両T2の消費エネルギーとして、車両T2の燃費を推定することとしたが、これに限定されない。例えば、推定装置2は、車両T2の電気消費率(電費とも呼ぶ)を推定してもよい。この場合、推定装置2は、学習用加速度頻度データと電気消費率を示す学習用電費データとを教師データとして機械学習した機械学習モデルに、車両T2の加速度頻度データを含む入力データを入力することにより、車両T2の電気消費率を推定する。
【0049】
<推定装置2における処理の流れ>
図8は、推定装置2が車両の加速度頻度データから消費エネルギーを推定する際の処理の流れを示すフローチャートである。
【0050】
図8に示すフローチャートは、推定装置2のモデル作成部233が機械学習モデルを作成したところから開始される(ステップS102)。モデル作成部233は、学習用車両(
図1に示す複数の車両T1)の時系列データから取得された学習用データを機械学習することで、機械学習モデルを作成する。モデル作成部233は、作成した機械学習モデルを記憶部22に記憶させる。
【0051】
その後、頻度データ取得部234は、消費エネルギーを推定する車両(
図2に示す車両T2)から、所定の速度毎の加速度の発生頻度分布を示す加速度頻度データを取得する(ステップS104)。
【0052】
推定部235は、頻度データ取得部234が取得した加速度頻度データを、モデル作成部233が作成した機械学習モデルに入力する(ステップS106)。機械学習モデルは、入力された加速度頻度データに応じた消費エネルギーを示すデータを出力する。
【0053】
推定部235は、機械学習モデルが出力した消費エネルギーを示すデータを取得することで、加速度頻度データを取得した車両T2の消費エネルギー(一例として、車両T2の燃費)を推定する(ステップS108)。
【0054】
<本実施形態における効果>
上述した実施形態の推定装置2は、車両T2から取得した加速度頻度データを含む入力データを、学習用加速度頻度データと学習用消費エネルギーデータとを教師データとして機械学習した機械学習モデルに入力することにより、加速度頻度データを取得した車両T2の消費エネルギーを推定する。
これにより、車両T2から時系列データではなく加速度頻度データを取得した場合でも、シミュレーションソフト等を用いずに、車両T2の消費エネルギーを短時間に推定することができる。
【0055】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0056】
2 推定装置
22 記憶部
231 時系列データ取得部
232 学習用データ取得部
233 モデル作成部
234 頻度データ取得部
235 推定部