(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】化粧材用グラビアインキ
(51)【国際特許分類】
C09D 11/102 20140101AFI20240910BHJP
B41M 1/10 20060101ALI20240910BHJP
B41M 1/30 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
C09D11/102
B41M1/10
B41M1/30 D
(21)【出願番号】P 2023092035
(22)【出願日】2023-06-05
【審査請求日】2024-04-01
(31)【優先権主張番号】P 2022091956
(32)【優先日】2022-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡 智彦
(72)【発明者】
【氏名】植木 克行
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-255909(JP,A)
【文献】特開2001-115076(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材上に印刷層を含む化粧材の、前記印刷層を形成するための化粧材用グラビアインキであって、
前記グラビアインキは、ウレタン樹脂を含む樹脂成分及び無機顔料を含有し、
前記ウレタン樹脂成分が、アミン価を有し、
前記ウレタン樹脂のウレタン結合濃度とウレア結合濃度との合計が、0.5~3mmol/gであり、
前記樹脂成分の破断伸度が、100~400%であり、かつ、
前記樹脂成分の破断強度が5MPa以上である、化粧材用グラビアインキ。
【請求項2】
無機顔料が、白色顔料である請求項1記載の化粧材用グラビアインキ。
【請求項3】
ウレタン樹脂の重量平均分子量が、5000~100000である、請求項1または2に記載の化粧材用グラビアインキ。
【請求項4】
樹脂成分が、更に硝化綿樹脂を含み、ウレタン樹脂と前記硝化綿樹脂との質量比が60/40~90/10である、請求項1または2に記載の化粧材用グラビアインキ。
【請求項5】
樹脂成分が、更にイソシアネート系硬化剤を含み、ウレタン樹脂と、イソシアネート系硬化剤との質量比が、100/0~30/70
(ただし、100/0である場合を除く)である、請求項1または2に記載の化粧材用グラビアインキ。
【請求項6】
樹脂成分が、酸価を有する、請求項1または2に記載の化粧材用グラビアインキ。
【請求項7】
さらに、分散剤および/またはシランカップリング剤を含有する、請求項1または2に記載の化粧材用グラビアインキ。
【請求項8】
紙基材上に、請求項1または2に記載の化粧材用グラビアインキを印刷してなる印刷層を有する化粧材用印刷物。
【請求項9】
化粧材製造方法であって、
請求項1または2に記載の化粧材用グラビアインキを、紙基材上にグラビア印刷する工程を含む、化粧材製造方法。
【請求項10】
紙基材上に印刷層を含む化粧材であって、
前記印刷層は、ウレタン樹脂を含む樹脂成分及び無機顔料を含有し、
前記ウレタン樹脂成分が、アミン価を有し、
前記ウレタン樹脂のウレタン結合濃度とウレア結合濃度との合計が、0.5~3mmol/gであり、
前記樹脂成分の破断伸度が、100~400%であり、かつ、
前記樹脂成分の破断強度が、5MPa以上である、化粧材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙基材を含む化粧材用グラビアインキに関するものである。より具体的には、紙基材への密着性が良好な化粧材用グラビアインキに関するものである。
【背景技術】
【0002】
家具やキャビネットなどに用いられる化粧材には、木質系材料、無機系材料、合成樹脂系材料、鋼板などの金属系材料などに、印刷インキで木目調などの絵柄を形成した化粧シートを貼り合わせたものが用いられている。
このような化粧シートには、使用状態における耐候性、耐光性、耐熱性、耐水性、耐溶剤性、表面硬度、耐摩耗性、耐擦傷性など、種々の特性が要求される。こうした要求を満たすため、該基材の表面に表面保護層を施すことが行われている(特許文献1)。
従来、紙基材を含む化粧材用グラビアインキとしては、硝化綿樹脂をバインダーとし可塑剤を含む硝化綿-可塑剤系インキや、硝化綿樹脂及びアルキッド樹脂をバインダーとする硝化綿-アルキッド系インキを使用していた。これらのうち、硝化綿-可塑剤系印刷インキは、印刷物の柔軟性が不足しており、加えて樹脂を含浸した紙間強化紙に対する密着性が不良であった。一方、硝化綿-アルキッド系インキは、印刷物の柔軟性は改善されるものの、樹脂を含浸した紙間強化紙への密着性や、トップコート層にウレタン樹脂やアミノアルキッド樹脂を使用した場合の密着性が劣っていた。これらの課題に対し、ウレタン樹脂及び硝化綿樹脂をバインダー樹脂としたインキが開発されているが、インキ中に芳香族有機溶剤を含むものであり環境負荷の面で課題が残っていた(特許文献2)。
【0003】
一方、地球環境保全の観点から、有機溶剤を用いたインキの印刷時に大気へ放出される有機溶剤(VOC)が問題となっている。大量生産される化粧材用のグラビア印刷においては、特に影響が大きく、VOC排出量削減が課題のひとつである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-178329号公報
【文献】特開2001-115076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、紙基材に印刷した際の密着性及び隠蔽性が良好で、VOCを低減でき、より環境負荷の少ない化粧材用グラビアインキを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を鑑みて、鋭意検討を行った結果、以下に記載の化粧材用グラビアインキを用いることで当該課題を解決できることを見出し、本発明を成すに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、紙基材上に印刷層を含む化粧材の、前記印刷層を形成するための化粧材用グラビアインキであって、
前記グラビアインキは、ウレタン樹脂を含む樹脂成分及び無機顔料を含有し、
前記ウレタン樹脂成分が、アミン価を有し、
前記ウレタン樹脂のウレタン結合濃度とウレア結合濃度との合計が、0.5~3mmol/gであり、
前記樹脂成分の破断伸度が、100~400%であり、かつ、
前記樹脂成分の破断強度が5MPa以上である、化粧材用グラビアインキに関する。
【0008】
また、本発明は、無機顔料が、白色顔料である上記化粧材用グラビアインキに関する。
【0009】
また、本発明は、ウレタン樹脂の重量平均分子量が、5000~100000である、上記化粧材用グラビアインキに関する。
【0010】
また、本発明は、樹脂成分が、更に硝化綿樹脂を含み、ウレタン樹脂と前記硝化綿樹脂との質量比が60/40~90/10である、上記化粧材用グラビアインキに関する。
【0011】
また、本発明は、樹脂成分が、更にイソシアネート系硬化剤を含み、ウレタン樹脂と、イソシアネート系硬化剤との質量比が、100/0~30/70である、上記化粧材用グラビアインキに関する。
【0012】
また、本発明は、樹脂成分が、酸価を有する、上記化粧材用グラビアインキに関する。
【0013】
また、本発明は、さらに、分散剤および/またはシランカップリング剤を含有する、上記化粧材用グラビアインキに関する。
【0014】
また、本発明は、紙基材上に、上記化粧材用グラビアインキを印刷してなる印刷層を
有する化粧材用印刷物に関する。
【0015】
また、本発明は、化粧材製造方法であって、
上記化粧材用グラビアインキを、紙基材上にグラビア印刷する工程
を含む、化粧材製造方法に関する。
【0016】
また、本発明は、紙基材上に印刷層を含む化粧材であって、
前記印刷層は、ウレタン樹脂を含む樹脂成分及び無機顔料を含有し、
前記ウレタン樹脂成分が、アミン価を有し、
前記ウレタン樹脂のウレタン結合濃度とウレア結合濃度との合計が、0.5~3mmol/gであり、
前記樹脂成分の破断伸度が、100~400%であり、かつ、
前記樹脂成分の破断強度が、5MPa以上である、化粧材に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、紙基材に印刷した際の密着性及び隠蔽性が良好で、VOCを低減でき、より環境負荷の少ない化粧材用グラビアインキを提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の代表的な形態は、グラビアインキ(以下、単に「インキ」ともいう。)であって、紙基材上に印刷され、印刷層を形成して、化粧材用印刷物となる。当該化粧材用印刷物は、そのままでも化粧紙や化粧材として使うほか、化粧シートとして、ほかの基材と貼り合わせて化粧材とすることもできる。
本発明の化粧材用グラビアインキは、樹脂成分及び顔料を含み、当該樹脂成分は、ウレタン結合濃度0.5~3mmol/gであるウレタン樹脂を含む。また、当該樹脂成分は特定の破断伸度及び破断強度を有する。なお、本発明において、特に断らない限り、ウレタン樹脂は、ウレタンウレア樹脂である場合を含む。
樹脂成分の破断強度が弱いと、インキの凝集力の弱さに起因して印刷層の凝集破壊が起こりやすく、密着性が低下する。樹脂成分の破断伸度が小さいと、基材密着性評価時のようにセロファンテープをはがす際に印刷層にかかる応力が分散されにくく、印刷層の破壊、破断が起こりやすくなるため密着性が低下する。また、破断伸度が大きいほど高分子量になる傾向があり、印刷時に使用する希釈溶剤量が多くなるため、VOC排出量削減の観点から破断伸度は400%以下である。即ち、樹脂成分の破断伸度が100~400%であり、かつ、前記樹脂成分の破断強度が、5MPa以上である場合、インキの凝集力と、紙基材とインキとの密着性のバランスが取れてインキの基材密着性が良好となり、更にVOC排出量削減の観点では環境負荷も低減できる。
【0019】
<破断伸度、破断強度>
本発明において、樹脂成分の破断伸度とは、膜厚0.15mm、幅5mm、長さ30mmの寸法を有する樹脂成分の乾燥塗膜について引張り試験機にて引張り、塗膜が破断した時の伸び率のことをいい、JIS K7127に準拠し、インテスコ社製の引張り試験機にて、引張り速度50mm/分、室温25℃において測定した値をいう。引張前の長さを基準として破断伸度が100~400%のとき、インキの基材密着性が良好になる。破断伸度として好ましくは150~380%であり、200~375%であることがより好ましい。
また、破断強度とは、上記条件にて、樹脂成分の乾燥塗膜を引張り、塗膜が破断した時の応力のことをいう。破断強度が5~100MPaのとき、破断伸度とのバランスでインキの基材密着性が良好になる。破断伸度として好ましくは7~70MPaであり、7~50MPaであることがより好ましい。
なお、上記破断伸度、破断強度とするためには、例えば、アミン価を有するウレタン樹脂を用いることが効果的であった。また、併用樹脂として硝化綿樹脂を選択して下記ウレタン樹脂と質量比(ウレタン樹脂/硝化綿樹脂)60/40~100/0で用いる方法、ウレタン結合濃度を0.5~3mmol/gあるいは、後述のウレタン結合濃度に調整する方法などの手段を取り得る。中でも、硬化剤を用いて破断伸度、破断強度を調整することが好ましい。硬化剤の使用量としては、後述の含有比率とすることが好ましい。また、ウレタン樹脂の重量平均分子量を5000~100000あるいは、後述の重量平均分子量に調整する方法などの手段を取り得る。中でも、ウレタン結合濃度の条件とウレタン樹脂と併用樹脂との質量比の調整を組み合わせることが破断伸度、破断強度を調整する上で好ましく、更に、硬化剤使用量の調整を組み合わせることがより好ましい。ただし、手段としてはこれらに限定されない。
【0020】
<樹脂成分>
樹脂成分は、いわゆる結着樹脂であり、樹脂と、必要に応じて用いる樹脂の硬化剤とを含めたものをいう。樹脂としては、ウレタン樹脂、硝化綿樹脂、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル―酢酸ビニル共重合樹脂などの他、公知の樹脂から適宜選択して、1種類、または2種類以上を混合して用いることができるが、基材への密着性の観点から、少なくともウレタン樹脂を含む。ウレタン樹脂とウレタン樹脂以外の樹脂の質量比率は60/40~100/0であることが好ましく、70/30~100/0であることがより好ましく、80/20~100/0であることが更に好ましい。
また、樹脂成分が酸価を有すると、顔料分散性が良化し、インキ印刷時に使用する希釈溶剤の量を減らせるため、VOC排出量削減の観点から好ましく、更に、希釈溶剤の量が減ることで、インキ印刷時の塗布量が増え、印刷物の隠蔽性も向上する。
樹脂成分の酸価は、0.01~10mgKOH/gであると好ましく、0.1~8mgKOH/gであるとより好ましく、0.5~5mgKOH/gであると更に好ましく、0.5~3mgKOH/gであると特に好ましい。
【0021】
<ウレタン樹脂>
ウレタン樹脂は、ウレタン結合を有する樹脂であればよい。好ましくは、ポリオール、及びポリイソシアネートを反応させてなるウレタン樹脂であり、更に好ましくはポリオール、ポリヒドロキシ酸及びポリイソシアネートを反応させてなる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーに、さらに、ポリアミンを反応させて鎖延長した樹脂である。例えばこの場合、ポリオール、ポリヒドロキシ酸及びポリイソシアネートの反応(以下ウレタン化工程という)において、ポリイソシアネートと、ポリオール及びヒドロキシ酸と、の官能基モル比(NCO/OH)は、好ましくは1.0~3.0であり、より好ましくは1.1~2.8である。また、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基とポリアミンのアミノ基との官能基モル比(アミノ基/NCO)は、好ましくは0.7~1.3である。
【0022】
本発明において、ウレタン樹脂のウレタン結合濃度は、0.5~3mmol/gであることが好ましく、1~2mmol/gであるとより好ましい。
上記ウレタン樹脂がウレタンウレア樹脂を含む場合、ウレタン結合とウレア結合の合計濃度が0.5~3mmol/gであることが好ましく、1~2mmol/gであるとより好ましい。ウレタン結合濃度及びウレア結合濃度を該当範囲に設定することで、インキの基材密着性が良好となる。
【0023】
上記ウレタン結合濃度とは、ウレタン化工程において、(NCOモル数/OHモル数)>1の場合は下記式(1)で表される値であり、(NCOモル数/OHモル数)≦1の場合は下記式(2)で表される値である。
式(1):ウレタン結合濃度(mmol/g)=総水酸基モル数(mmol)/固形分総質量(g)
式(2):ウレタン結合濃度(mmol/g)=総イソシアネート基モル数(mmol)/固形分総質量(g)
式(1)及び(2)において、総水酸基モル数は、ウレタン化工程に用いられるポリオール及びヒドロキシ酸等が有する水酸基の総モル数を表し、固形分総質量は、ウレタン樹脂の不揮発成分の総質量を表し、総イソシアネート基モル数は、ポリイソシアネートが有するイソシアネート基の総モル数を表す。
【0024】
ウレア結合濃度は、(NCOモル数/OHモル数)>1の条件でウレタン化反応を行ったものに適用される値である。
ウレア結合濃度は、ウレア化工程において、(アミノ基モル数/NCOモル数)>1の場合は下記式(3)で表される値であり(アミノ基モル数/NCOモル数)≦1の場合は下記式(4)で表される値である。
式(3): ウレア結合濃度(mmol/g)=[総イソシアネート基モル数(mmol)-総水酸基モル数(mmol)]/固形分総質量(g)
式(4): ウレア結合濃度(mmol/g)=総アミノ基モル数(mmol)/固形分総質量(g)
式(3)及び(4)において、総イソシアネート基モル数は、ウレタン化工程に用いられるポリイソシアネートが有するイソシアネート基の総モル数を表し、総水酸基モル数は、ウレタン化工程に用いられるポリオール及びポリヒドロキシ酸等が有する水酸基の総モル数を表し、総アミノ基モル数は、ウレア化工程に用いられるポリアミンが有する1級及び/又は2級のアミノ基の総モル数を表し、固形分総質量は、ウレタン樹脂の不揮発成分の総質量を表す。
【0025】
隠蔽性、基材密着性及びVOC排出量削減の観点から、ウレタン樹脂の酸価は、0.01~10mgKOH/gであることが好ましく、0.1~8mgKOH/gであることがなお好ましく、0.5~5mgKOH/gであると更に好ましく、0.5~3mgKOH/gであると特に好ましい。当該酸価を得るためには上記においてウレタン樹脂原料にポリヒドロキシ酸を用いれば当該酸はウレタン合成反応であってもほとんどが未反応でありウレタン樹脂はポリヒドロキシ酸由来の酸価を有する。
【0026】
<アミン価>
樹脂成分が、アミン価を有するウレタン樹脂を含む場合、アミノ基の存在により密着性が向上することが見いだされた。特に、硬化剤、好ましくはイソシアネート硬化剤を用いた際に顕著であった。結果的に、隠蔽性向上のために顔料濃度を高めた状況でも隠蔽性と密着性を両立することができた。ウレタン樹脂のアミン価は、0.01~30mgKOH/gであると好ましく、0.1~20mgKOH/gであるとより好ましく、0.5~15mgKOH/gであると更に好ましく、0.5~10mgKOH/gであると特に好ましい。0.01mgKOH/g以上あることで、樹脂の凝集力が期待でき、30mgKOH/g以下であることで、インキ印刷時の可使用時間が良好になる。
アミン価を有するウレタン樹脂は、ポリアミンなどのアミノ基を有する化合物を原料に用いることで合成できる。具体的な合成方法については、後述する。
【0027】
上記ウレタン樹脂の重量平均分子量は5000~100000であることが好ましく、10000~60000だとより好ましい。重量平均分子量が5000以上だと、硬化後のインキ被膜の耐溶剤性が良好となり、重量平均分子用が100000以下だと、インキ印刷時に用いる希釈用有機溶剤の量が少なくなり、乾燥時に排出するVOCが少なく好ましい。また、重量平均分子量が小さいと破断伸度が小さくなり、分子量が大きいと破断伸度が大きくなる傾向となり、破断伸度を調整することができる。
【0028】
上記ポリオールは、数平均分子量が500~10000が好ましく、ポリエーテルポリオールおよび/またはポリエステルポリオール由来の構造単位を含むものが好ましく、その含有量の合計は、ウレタン樹脂固形分100質量%中、5~80質量%であることが好ましく、より好ましくは10~60質量%であり、更に好ましくは10~50質量%である。
数平均分子量は、末端を水酸基として水酸基価から計算するものであり、式(5)により求められる。
式(5)ポリオールの数平均分子量=1000×56.1× 水酸基の価数/水酸基価
【0029】
ポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ひまし油ポリオール、水素添加ひまし油ポリオール、ダイマージオール、水添ダイマージオールなどが挙げられる。好ましくはポリエーテルポリオールおよび/またはポリエステルポリオールであり、特に好ましくはポリエステルポリオールである。
【0030】
ポリエステルポリオールとしては、炭素数5~11の脂肪族二塩基酸を含む二塩基酸とジオールとからなるポリエステル由来の構成単位を含有することが好ましく、前記脂肪族二塩基酸の炭素数は6~10であるとより好ましく、基材に対する密着性が良好となる。
【0031】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリトリメチレングリコールおよびこれらから選ばれる共重合体であるポリエーテルポリオールなどが挙げられる。
【0032】
上記ポリイソシアネートとしては、ウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知の芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。なおこれらは3量体となってイソシアヌレート環構造となっていても良い。
芳香族ジイソシアネートとしては、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートとしては、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環族ジイソシアネートとしては、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加された4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、ダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等が挙げられる。
中でも好ましくはトリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体から選ばれる少なくとも一種である。これらのポリイソシアネートは単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0033】
また、ウレタン樹脂中にカルボキシル基を導入したいときは、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール酢酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロールペンタン酸、ジヒドロキシプロピオン酸等のジメチロールアルカン酸、ジヒドロキシコハク酸、ジヒドロキシ安息香酸等のポリヒドロキシ酸を用いることができる。特に、反応性や溶解性から、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール酪酸を用いることが好ましい。
【0034】
(ポリアミン)
本発明において、ウレタン樹脂はポリアミンで鎖延長されてポリアミン由来のウレア結合を有している場合も好ましい。当該ポリアミンとしてはエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミン、さらにダイマー酸のカルボキシル基をアミノ基に転化したダイマージアミン等のジアミンが挙げられ、エチレンジアミンヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミンなどが好適である。ウレタン樹脂がポリアミン由来の構成単位を含む場合、樹脂の凝集力が上がるため、インキの基材密着性が良好となる。
【0035】
上記ウレタン樹脂原料のうち、ポリオールの合計質量(以下ソフトセグメントともいう)とポリイソシアネートとポリアミンの合計質量(以下ハードセグメントともいう)の質量比率は、ソフトセグメント/ハードセグメント=50/50~95/5であることが好ましく、60/40~90/10であるとより好ましく、70/30~85/15であると更に好ましい。本発明においてソフトセグメントは、ウレタン樹脂の構造において柔らかくかつ弾性のある部分となる。一方ハードセグメントとは、ウレタン樹脂の構造において硬くて強靱な部分となり、ソフトセグメント/ハードセグメント質量比が上記範囲内にあることで、インキの基材密着性が良好となる。
【0036】
<硝化綿樹脂>
本発明においては、ウレタン樹脂とともに硝化綿樹脂を用いることも可能である。硝化綿樹脂を用いることで、硬化後のインキ被膜の耐熱性が良好となる。
ウレタン樹脂と硝化綿樹脂との質量比は60/40~100/0であることが好ましいく、70/30~100/0であることがより好ましく、80/20~90/10であることが更に好ましい。ウレタン樹脂の比率が60質量%以上であると基材への密着性がより良好となる。
【0037】
<顔料>
本発明に使用される顔料としては、グラビアインキに使用される着色剤であれば、特に、限定はないが、無機顔料を用いた場合が好適である。無機顔料としては、酸化チタン、水酸化鉄、酸化鉄、硫化亜鉛、シリカなどがあげられる。また、本発明に使用される顔料として、白色顔料が好ましい。顔料と樹脂成分の質量比(不揮発分)は60/40~95/5であることがより好ましく、75/25~93/7であることが更に好ましい。
【0038】
<白色顔料>
本発明に使用される白色顔料としては、体質顔料を含んでも良く、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカなどが挙げられる。中でも、着色力、隠ぺい力、耐薬品性、耐候性の点から酸化チタンが好ましい。また、印刷性能の観点から酸化チタンはシリカおよび/またはアルミナ処理を施されているものがより好ましい。
【0039】
これらの顔料は1種類、または2種類以上併用して用いることができる。上記顔料はインキ総質量中に0.05~60質量%含有することが好ましく、3~50質量%で含有することがより好ましい。
【0040】
<有機溶剤>
本発明のグラビアインキは、有機溶剤を用いることができる。
本発明に用いられる有機溶剤としては、以下に限定されるものではないが、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、グリコールエーテル系有機溶剤、グリコールモノアルキルエーテル系有機溶剤などが挙げられ、これらは1種または2種以上の組み合わせで用いられる。
エステル系有機溶剤としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチルなどが挙げられる。
ケトン系有機溶剤としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。
アルコール系有機溶剤としては、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-ブタノール、t-ブタノール、2-メチル-2-プロパノール等が挙げられる。
グリコール有機溶剤としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールその他のアルキレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールその他のジアルキレングリコール、トリプロピレングリコール、トリエチレングリコールその他のトリアルキレングリコールなどが挙げられる。
グリコールモノアルキルエーテル有機溶剤としてはプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、その他のプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、その他のジプロピレンモノアルキルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、その他のトリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、その他のジエチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。
【0041】
<イソシアネート系硬化剤>
本発明の化粧材用グラビアインキは、樹脂成分としてイソシアネート系硬化剤を含むことが好ましい。ウレタン樹脂と、イソシアネート系硬化剤との質量比(不揮発分)が、100/0~30/70であることが好ましく、90/10~35/65であることがなお好ましく、80/20~45/55であると更に好ましい。この範囲にあることで基材密着性、隠蔽性が良好となり、更に硬化剤配合後の可使用時間が良好となる。
【0042】
上記イソシアネート系硬化剤としては、上記ポリイソシアネートを用いることが好適であるが、中でも、イソシアヌレート系ポリイソシアネート、アダクト系ポリイソシアネート、ビューレット系ポリイソシアネート、アロファネート系ポリイソシアネートなどが好適に挙げられる。本発明においては基材密着性や耐候性、耐湿熱性の観点からイソシアヌレート系ポリイソシアネートおよび/またはアダクト系ポリイソシアネートを用いることがより好ましい。イソシアヌレート系ポリイソシアネートとはジイソシアネートが3量体となって環化した構造を有するポリイソシアネートをいう。アダクト系ポリイソシアネートとはエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどの水酸基を有する化合物の水酸基にジイソシアネートが付加した構造を有するポリイソシアネートをいう。
ポリイソシアネートは、インキ中及び/または基材の反応基と作用し、基材層との密着性や耐候性、耐湿熱性が向上する。
中でも、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート系ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンのアダクト化合物からなるアダクト系ポリイソシアネートから選ばれる少なくとも1種を用いると好適である。
上記イソシアネート系硬化剤としては、上記ポリイソシアネートと同様の化合物も好適に用いられる。例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂肪族ジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、p‐キシリレンジイソシアネート、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
【0043】
<添加剤>
本発明のグラビアインキには、さらに添加剤を用いることができる。添加剤としては、分散剤、シランカップリング剤、ブロッキング防止剤、増粘剤、レオロジー調整剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、表面張力調整剤、pH調整剤、ワックス等を使用することができる。特に、分散剤および/またはシランカップリング剤の併用は好ましい。
【0044】
<分散剤>
顔料の分散性向上のため、分散剤を使用することができる。分散剤としては、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、両イオン性などの界面活性剤や高分子量化合物など、公知のものを適宜使用することができる。分散剤は、インキの保存安定性の観点からインキの総質量100質量%に対して0.01~10質量%でインキ中に含まれることが好ましい。さらに、0.05~5質量%の範囲で含まれることがより好ましい。0.1~3質量%の範囲で含まれることがさらに好ましい。
【0045】
<シランカップリング剤>
本発明においては、シランカップリング剤を用いることができる。シランカップリング剤を用いることで、樹脂と顔料との結合力が高まるだけでなく、樹脂と基材との結合も強化され、基材密着性が向上する。シランカップリング剤としては、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリル基、アクリル基、アミノ基、イソシアヌレート基など各種官能基を持つ、公知のものを適宜使用することができる。中でも、メタクリル基、アクリル基、アミノ基、イソシアヌレート基を有するシランカップリング剤を用いることが好ましく、アミノ基を有するシランカップリング剤を用いることがより好ましい。シランカップリング剤の含有量は化粧材用グラビアインキ全質量中、10質量%以下であることがなお好ましく、5質量%以下であると更に好ましい。この範囲にあることで基材密着性だけでなく、保存安定性及び硬化剤配合時の可使用時間が良好となる。
【0046】
<グラビアインキの製造方法>
本発明のグラビアインキの製造は、バインダー樹脂、白色顔料および溶剤を所定量混合したのち、さらにビーズミル等で分散(顔料分散)をする工程を経る。得られた分散体に、必要に応じて消泡剤、溶剤等を配合することによりグラビアインキを製造することができる。上記顔料分散に使用する分散機としては、一般に使用される、例えば、ローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いることができる。サンドミル、ガンマミルその他のビーズミルで分散することが好ましい。
【0047】
<化粧材用印刷物>
本発明の化粧材用グラビアインキは、紙基材上に、グラビア印刷して印刷層を形成して化粧材用印刷物(以下単に印刷物ともいう)となる。本発明のグラビアインキを印刷した後、充分な乾燥をし、有機溶剤などの揮発成分を乾燥させることで目的の印刷物を得ることが出来る。
当該印刷物の構成としては、以下の構成を例示することができるが、これらに限定されない。
(1)紙基材/印刷層
(2)紙基材/印刷層/トップコート層
(3)紙基材/印刷層/プライマー層/トップコート層
(4)紙基材/シーラー層/印刷層/トップコート層
【0048】
<グラビア印刷>(グラビア版)
化粧材用グラビアインキは、グラビア印刷において、グラビア版は金属製の円筒状のものであり、彫刻または腐蝕・レーザーにて凹部を各色で作成される。彫刻とレーザーは使用に制限は無く、柄に合わせて任意に設定が可能である。線数としては75線~250線のものが適宜使用され、線数の大きいものほど目の細かい印刷が可能である。印刷層の厚みとしては、0.1μm~100μmが好ましい。
【0049】
本発明のグラビアインキの粘度は、本発明の効果を奏する観点から10~1000mPa・sであることが好ましく、30~800mPa・sであることがなお好ましく、50~600mPa・sであることが更に好ましい。この範囲にあることで保存安定性が良好となる。グラビア印刷時においては、粘度は10~300mPa・sであることが好ましく、20~280mPa・sであることがなお好ましく、30~250mPa・sであることが更に好ましい。この範囲にあることで印刷適性が良好となる。当該粘度は、JISZ8803:2011に記載の方法により得られた値を表し、B型粘度計での25℃における測定値であることが好ましい。
【0050】
<印刷機>
グラビア印刷機において一つの印刷ユニットには上記グラビア版およびドクターブレードを備えている。印刷ユニットは多数あり、有機溶剤系印刷インキおよび絵柄インキに対応する印刷ユニットを設定でき、各ユニットはオーブン乾燥ユニットを有する。印刷は輪転により行われ、巻取印刷方式である。版の種類やドクターブレードの種類は適宜選択され、仕様に応じたものが選定できる。
【0051】
<化粧材>
上記の方法により得られた印刷物は、接着剤等を介して用途に応じてパーティクルボード、MDF(中密度繊維板)等の木質基材等に貼合され、化粧材となる。当該化粧材構成としては、以下の構成を例示することができるが、これらに限定されない。
(1)パーティクルボード/印刷物
(2)MDF/印刷物
(3)樹脂板/印刷物
(4)木材/印刷物
【0052】
<紙基材>
紙基材としては、例えば、薄葉紙、紙間強化紙、クラフト紙、上質紙、リンター紙、バライタ紙、硫酸紙、和紙等を用いることができる。紙間強度が高く耐傷性、耐摩耗性等の耐性が良好になるため、紙間強化紙が好ましい。紙基材の坪量は、20g/m2~150g/m2であることが好ましい。25g/m2~100g/m2であることが好ましい。30g/m2~80g/m2であることが更に好ましい。また、紙基材の厚みは、20~200μmとすることが好ましい。25~100μmとすることがより好ましい。30~60μmとすることが更に好ましい。
【実施例】
【0053】
以下に本発明のより具体的な実施形態を実施例および比較例にて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、特段の断りの無い限り実施例および比較例中、「部」および「%」はそれぞれ「質量部」および「質量%」を表す。
【0054】
<重量平均分子量>
重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定によるポリスチレン換算の値。乾燥させた水性ウレタン樹脂(A)をテトラヒドロフランに溶解させ、0.5%の溶液を調製し、Shodex製GPC-104(カラム番号LF-404、分子量測定範囲約300~約200万)により重量平均分子量を測定した。
【0055】
<アミン価>
アミン価は、試料1g中に含有するアミノ基を中和するのに必要とする塩酸の当量と同量の水酸化カリウムのmg数であり、JIS K 0070に準拠して測定した。即ち、試料を0.5~2g精秤した(試料固形分:Sg)。精秤した試料にメタノール/メチルエチルケトン=60/40(質量比)の混合溶液50mLを加え溶解させた。得られた溶液に指示薬としてブロモフェノールブルーを加え、得られた溶液を0.2mol/Lエタノール性塩酸溶液(力価:f)で滴定を行なった。溶液の色が緑から黄に変化した点を終点とし、この時の滴定量(AmL)を用い、下記式によりアミン価を求めた。
【0056】
<酸価>
酸価は、試料1g中に含有する遊離脂肪酸、樹脂酸等を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数であり、JIS K 0070に記載された方法で測定した。
【0057】
[合成例1](ウレタン樹脂PU001の合成)
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、アジピン酸とネオペンチルグリコールを縮重合して得られた数平均分子量2,000のポリエステルポリオール(以下NPG/AdAとも略す)16部および数平均分子量1,000のポリプロピレングリコール(以下PPG1000とも略す)7部およびトルエンジイソシアネート(以下TDIとも略す)5部、並びに、酢酸エチル20部を仕込み、窒素気流下に120℃で6時間反応させ、末端イソシアネートプレポリマーの溶液を得た。次いでイソホロンジアミン(以下IPDAとも略す)2.4部、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン(以下AEAとも略す)0.03部、2-アミノエタノール(以下MEAとも略す)0.15部、混合溶剤1(酢酸エチル70部およびイソプロピルアルコール(以下IPAとも略す)30部を混合したもの)へ、得られた末端イソシアネートプレポリマーの溶液を室温で徐々に添加し、次に50℃で1時間反応させた後、反応で使用したジイソシアネートでアミン価を調整し、酢酸エチルで固形分30%に調整することで、重量平均分子量19000、ウレタン結合濃度1.0、ウレア結合濃度0.8、ソフトセグメント/ハードセメント=75/25のウレタン樹脂PU001溶液を得た。
【0058】
[合成例2~12](ウレタン樹脂PU002~012の合成)
表1に示す原料化合物を用いた以外は合成例1と同様にしてウレタン樹脂PU002~PU012を得た。
表1中の略称は下記の通りである。
・MPD/AdA:3-メチル-1.5-ペンタンジオールとアジピン酸の縮合物であるポリエステルポリオール 数平均分子量5000
・NPG/AdA:ネオペンチルグリコールとアジピン酸の縮合物であるポリエステルポリオール 数平均分子量2000
・MPD/SeA:3-メチル-1.5-ペンタンジオールとセバシン酸の縮合物であるポリエステルポリオール 数平均分子量2000
・PPG1000:ポリプロピレングリコール 数平均分子量1000
・NPG:ネオペンチルグリコール
・DMBA:ジメチロールブタン酸
・1,4BD:1,4-ブタンジオール
・1,3BD:1,3-ブタンジオール
・IPDI:イソホロンジイソシアネート
・TDI:トルエンジイソシアネート
・IPDA:イソホロンジアミン
・AEA:N-(2-アミノエチル)エタノールアミン
・MEA:2-アミノエタノール
・DBA:ジブチルアミン
【0059】
[実施例1](インキS1の製造)
酸化チタン(商品名:DuPont社製 Ti-Pure R960)50部、ウレタン樹脂PU001(Mw19000)23部、混合溶剤2(酢酸エチル/イソプロピルアルコール=50/50)25部、添加剤として分散剤(BASF社製 BYK220S)2部を用い、撹拌混合したのちサンドミルで顔料分散、調整後、インキS1を得た。このインキ100部に対しイソシアネート系硬化剤(東洋インキ社製UR100Bワニス80)を5部添加し、評価インキとした。
【0060】
[実施例2~21、比較例1~6](インキS2~S21およびインキR1~R6の製造)
表2、表3に記載した原料および配合比率を使用した以外はインキS1の製造と同様の方法にてインキS2~S21およびインキR1~R6を得た。
表中の略称は以下を示す。
・硝化綿樹脂:台硝股▲分▼有限公司社製、工業用硝化綿TR 1/16 46部と酢酸エチル54部を加熱混合して得た硝化綿樹脂(固形分30%)
・アクリル樹脂:特開2021-80308号公報の合成例1に記載のアクリル樹脂AP1(固形分40%)
【0061】
[破断強度、破断伸度]
表2、表3に記載の樹脂とイソシアネート系硬化剤とを、表中に記載の配合比率で混合することで混合物(混合物の不揮発成分が「樹脂成分」に相当)を作成し、膜厚0.15mm、幅5mm、長さ30mmの寸法を有する乾燥塗膜を得た。この乾燥塗膜を用い、JIS K7127を参考にインテスコ社製の引張り試験機にて、引張り速度50mm/分、室温25℃において得られる引張り距離と荷重より応力/ひずみ曲線を得た。塗膜が破断した時の伸び率を破断伸度、この時の応力を破断強度とした。
【0062】
[実施例1](インキS1の印刷)
上記グラビアインキS1を、ザーンカップ#3で16秒(粘度200mPa・s)に調整し、グラビア版(コンベンショナル版深60μm、100線/インチ)を具備したグラビア印刷機にて、紙間強化紙「HPN-29UB」(天間製紙社製、坪量30g/m2、厚み40μm)に印刷速度40m/分、乾燥温度80℃の条件にて印刷し、化粧材用印刷物を得た。
【0063】
[実施例2~21、比較例1~6](インキS2~S21およびR1~R6の印刷)
インキS1の代わりにインキS2~S21、インキR1~R6を用いた以外はインキS1の印刷と同様の方法でグラビア印刷を行い、印刷物をそれぞれ得た。
【0064】
<性能評価>
上記実施例および比較例で得られたインキおよび印刷物を用いて以下の評価を行った。
【0065】
[密着性]
インキの基材密着性を下記の方法で評価した。ニチバン社製の12mm巾セロファンテープを、印刷物のインキ被膜に貼り付け、剥離時のインキ取られ状態を5段階で目視評価した。
5:テープのみはがれる、又はセロファンテープ貼り付け面のうち、
全面が紙の層間で剥離する
4:セロファンテープ貼り付け面のうち、半分~全面未満が紙の層間で剥離する
3:セロファンテープ貼り付け面のうち、一部~半分未満が紙の層間で剥離する
2:インキ層間で剥離する(インキ被膜の凝集破壊)
1:インキ/紙間で剥離する(インキの基材密着不良)
実用上使用可能な評価は3~5である。
【0066】
[VOC]
評価インキを酢酸エチル/イソプロピルアルコール=50/50質量部の混合溶剤でザーンカップ#3で16秒(粘度200mPa・s相当)になるように希釈した際の希釈インキ固形分により、5段階で評価した(希釈インキの固形分が高いほど、乾燥時に排出するVOCが少なく好ましい)。即ち、希釈したインキ(約1g)を150℃30分で乾燥させ、乾燥後の質量より下記式(6)にて算出した。
式(6)希釈インキ固形分(%)=(乾燥後の質量/希釈インキ質量)×100
5:50%以上
4:45%以上、50%未満
3:40%以上、45%未満
2:35%以上、40%未満
1:35%未満
実用上好ましい評価は3~5である。
【0067】
[隠蔽性]
隠蔽性を以下の方法で評価した。Macbeth社製TD931にて印刷物の透過濃度(OD値)を測定し、5段階で評価した。なお、値が大きいと隠蔽性が高いことを表し、値が小さいと隠蔽性が低いことを表す。
6:0.83以上
5:0.80以上、0.83未満
4:0.75以上、0.80未満
3:0.70以上、0.75未満
2:0.65以上、0.70未満
1:0.65未満
実用上使用可能な評価は3~6である。
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
ウレタン樹脂のウレタン結合濃度・ウレア結合濃度・アミン価に合わせて、適正な硬化剤の配合量を調整することにより、樹脂の破断伸度・破断強度が調整できた。
これに対して破断伸度が100~400%の範囲外である比較例1および2、破断強度が5MPa未満である比較例3においては、いずれかの評価項目において、基準を満たさない結果であった。比較例4は、無機顔料を含まないため、隠蔽性が基準を満たさず、比較例5および6は、アミン価を有しないウレタン樹脂を用いたため、破断強度が基準を満たさず、結果、密着性が基準を満たさなかった。
以上の結果より、本発明の化粧材用グラビアインキを用いることで、紙基材に印刷した際の密着性が良好で、より環境負荷の少ない化粧材用グラビアインキを提供することができた。