(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】回路装置及び発振器
(51)【国際特許分類】
H03K 17/22 20060101AFI20240910BHJP
H03B 5/32 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
H03K17/22 C
H03B5/32 D
(21)【出願番号】P 2023096012
(22)【出願日】2023-06-12
(62)【分割の表示】P 2018136291の分割
【原出願日】2018-07-20
【審査請求日】2023-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100166523
【氏名又は名称】西河 宏晃
(72)【発明者】
【氏名】加納 新之助
【審査官】工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-304146(JP,A)
【文献】特開2005-49970(JP,A)
【文献】特表2009-517905(JP,A)
【文献】特開2015-35707(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0214738(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K17/00-17/70
H03K3/023-3/038
H03B5/00-5/42
G06F1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロック信号を出力する通常動作モード、及び電源電圧が供給されている状態においてクロック信号を出力しないスタンバイモードを有する回路装置であって、
前記クロック信号を生成する発振回路と、
前記クロック信号の周波数の温度特性を調整するか又は前記クロック信号の周波数を設定する特性調整データが記憶される不揮発性メモリーと、
リセット信号を生成するリセット回路と、
前記リセット信号がアクティブから非アクティブになったとき、前記不揮発性メモリーから前記特性調整データがロードされる記憶回路と、
を含み、
電源投入時に、
前記リセット回路は前記リセット信号をアクティブから非アクティブにし、
前記不揮発性メモリーから前記記憶回路に前記特性調整データがロードされ、
前記スタンバイモードにおいて、前記発振回路及び前記リセット回路はディセーブル状態に設定され、
前記スタンバイモードから前記通常動作モードに移行したとき、
前記リセット回路は前記リセット信号をアクティブから非アクティブにし、
前記不揮発性メモリーから前記記憶回路に前記特性調整データがリロードされ、
前記発振回路は、前記記憶回路にリロードされた前記特性調整データに基づいて前記クロック信号を生成することを特徴とする回路装置。
【請求項2】
請求項1に記載された回路装置において、
前記通常動作モードと前記スタンバイモードとを切り替える制御信号が入力される制御端子を含み、
前記リセット回路は、
電源投入後において、前記制御端子から入力される前記制御信号
が前記通常動作モードを示すアクティブであるとき、非アクティブの前記リセット信号を生成
し、前記制御端子から入力される前記制御信号が前記スタンバイモードを示す非アクティブであるとき、アクティブの前記リセット信号を生成することを特徴とする回路装置。
【請求項3】
請求項
1に記載された回路装置において、
前記リセット回路は、
電源電圧を電圧分割した第1電圧を生成する電圧生成回路と、
基準電圧を生成する基準電圧生成回路と、
前記第1電圧と前記基準電圧を比較し、比較結果に基づいて前記リセット信号を出力するコンパレーターと、
を含むことを特徴とする回路装置。
【請求項4】
請求項3に記載された回路装置において、
前記通常動作モードと前記スタンバイモードとを切り替える制御信号が入力される制御端子を含み、
前記制御端子から入力される前記制御信号が前記スタンバイモード
を示す非アクティブであるとき、前記電圧生成回路、前記基準電圧生成回路、及び前記コンパレーターは、ディセーブル状態に設定されることを特徴とする回路装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載された回路装置において、
前記リセット回路は、
前記電圧生成回路の出力ノードと、前記第1電圧が入力される前記コンパレーターの第1入力ノードと、を接続する第1信号線と、
前記基準電圧生成回路の出力ノードと、前記基準電圧が入力される前記コンパレーターの第2入力ノードと、を接続する第2信号線と、
前記第1信号線に一端が接続され
、低電位側電源電圧のノードに他端が接続されるキャパシターと、
を含むことを特徴とする回路装置。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれか一項に記載された回路装置において、
前記スタンバイモードから前記通常動作モードに移行したとき、前記基準電圧生成回路が前記基準電圧を出力した後に、前記電圧生成回路が前記第1電圧の電圧レベルを上昇させることを特徴とする回路装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載された回路装置において、
前記特性調整データは、
前記クロック信号の周波数の温度特性を調整する温度補償データであることを特徴とする回路装置。
【請求項8】
請求項7に記載された回路装置において、
前記温度補償データに基づいて、
前記クロック信号の周波数の温度補償を行う温度補償回路
と、
前記通常動作モードと前記スタンバイモードとを切り替える制御信号が入力される制御端子と、
を含み、
前記温度補償回路は、
前記制御端子から入力される前記制御信号が前記スタンバイモード
を示す非アクティブであるとき、ディセーブル状態に設定されることを特徴とする回路装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載された回路装置と、
前記発振回路に接続されて発振する振動子と、
を含むことを特徴とする発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路装置及び発振器等に関する。
【背景技術】
【0002】
回路装置に電源が投入された際に回路装置をリセット解除するパワーオンリセット回路が知られている。また、回路装置のリセットが解除された際に、回路装置の設定データを不揮発性メモリーからレジスターにロードすることで、回路装置を初期化する手法が知られている。また、端子等から入力されるイネーブル信号に基づいて、回路装置をスタンバイモードに設定することで、回路装置の消費電流を低減する手法が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、発振装置をスタンバイモードから復帰させる技術が開示されている。特許文献1において、発振装置は、発振器コアと、発振器コアに接続された容量性ローディングユニットと、メモリー装置と、を含む。メモリー装置は、第1のメモリーユニットと、第2のメモリーユニットと、を含み、容量性ローディングユニットに接続される。第1のメモリーユニットは、発振装置の始動期間中に、静電容量値を制御するために容量性ローディングユニットに供給される第1の値を格納する。第2のメモリーユニットは、発振装置の動作期間中に、静電容量値を制御するために容量性ローディングユニットに供給される第2の値を格納する。これにより、始動制御が柔軟であり、発振器を待機モードヘ頻繁に切り替えられるようにするための複雑さを低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スタンバイモードにおいて回路装置の動作が停止されるため消費電流を低減できる。しかし、スタンバイモードにおいてパワーオンリセット回路の動作を停止させると、瞬停などの異常が生じた場合に回路装置がリセットされないという課題がある。瞬停は、回路装置に供給される電源電圧が一時的に低下する現象である。スタンバイモードにおいて瞬停が発生した場合、レジスターに記憶された設定データが壊れるおそれがあるが、回路装置がリセットされないので不揮発性メモリーから設定データがリロードされない。このため、スタンバイモードから復帰した際に、不適切な設定データによって回路装置の動作が再開されるおそれがある。
【0006】
スタンバイモードにおいて消費電流を低減するためには、パワーオンリセット回路の動作を停止させることが望ましいが、上記の理由によってパワーオンリセット回路の動作を停止させることができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、クロック信号を出力する第1モード、及びクロック信号を出力しない第2モードを有する回路装置であって、前記クロック信号を生成する発振回路と、前記発振回路の特性調整データが記憶される不揮発性メモリーと、リセット信号を生成するリセット回路と、前記リセット信号がアクティブから非アクティブになったとき、前記不揮発性メモリーから前記特性調整データがロードされる記憶回路と、を含み、前記リセット回路は、前記第2モードから前記第1モードに移行したとき、前記リセット信号をアクティブから非アクティブにする回路装置に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】電源投入時の動作を説明するためのリセット回路の回路図。
【
図2】電源投入時のリセット回路の動作を説明する波形図。
【
図4】本実施形態におけるリセット回路の詳細な構成例。
【
図5】本実施形態におけるリセット回路の動作を説明する波形図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0010】
1.回路装置
【0011】
まず、回路装置に電源が投入された際に回路装置をリセット解除するリセット回路の動作を説明する。
図1は、リセット回路80の回路図である。
図2は、リセット回路80の動作を説明する波形図である。
【0012】
図1に示すように、リセット回路80は、電圧VDETAを生成する電圧生成回路81と、基準電圧VRAを生成する基準電圧生成回路82と、電圧VDETAと基準電圧VRAとを比較するコンパレーター83と、を含む。電圧生成回路81は、トランジスターTPA1と、抵抗RA1、RA2と、を含む。基準電圧生成回路82は、トランジスターTPA2、TPA3と、電流源IBAと、バイポーラートランジスターBPAと、抵抗RA3とを含む。トランジスターTPA1~TPA3はP型トランジスターである。
【0013】
トランジスターTPA2、TPA3及び電流源IBAは、カレントミラー回路を構成している。
図2に示すように、リセット回路80に供給される電源電圧VDDが上昇していくと、トランジスターTPA3に流れるミラー電流が徐々に増加していき、基準電圧VRAが上昇していく。基準電圧VRAは、バイポーラートランジスターBPAのベース-エミッター間電圧と、抵抗RA3の電圧降下とにより決まる電圧まで、上昇する。
【0014】
トランジスターTPA1のゲートには基準電圧VRAが入力される。トランジスターTPA1のしきい値電圧をVthpとする。電源電圧VDDがVRA+Vthpに達すると、トランジスターTPA1がオンになり、電圧VDETAが上昇し始める。電圧VDETAは、抵抗RA1、RA2により電源電圧VDDが分割された電圧である。電圧VDETAが基準電圧VRAを超えたときコンパレーター83の出力信号がローレベルからハイレベルに遷移する。この出力信号がリセット信号XPORAである。リセット信号XPORAは、リセット回路80を含む回路装置のリセット信号である。即ち、リセット信号XPORAがローレベルのとき、回路装置がリセット状態となり、リセット信号XPORAがハイレベルのとき、回路装置がリセット解除状態となる。リセット状態は、回路装置の非動作状態である。リセット解除状態は、リセット状態が解除された状態、即ち回路装置の動作状態である。
【0015】
図3で後述するように、本実施形態の回路装置では制御信号ENに基づいて通常動作モードとスタンバイモードとを切り替える。制御信号ENをイネーブル信号とも呼ぶ。スタンバイモードにおいて、発振回路10などのアナログ回路がディセーブル状態に設定されることで、スタンバイモードにおける消費電流が低減される。このような回路装置にリセット回路80を適用したとする。リセット回路80は制御信号ENにより制御されないので、スタンバイモードにおいてもリセット回路80の動作はイネーブルとなっている。このため、スタンバイモードにおいてもリセット回路80に消費電流が流れるので、その分だけスタンバイモードにおける消費電流が増加してしまう。
【0016】
一方、スタンバイモードにおいてリセット回路80をディセーブル状態に設定できるようにリセット回路80を構成したとする。しかしながら、スタンバイモードにおいて、記憶回路60に記憶された設定データが不正確なデータに書き換わる可能性がある。例えば、瞬停又はノイズ等によって設定データが不正確なデータに書き換わることが想定される。発振回路10は、記憶回路60に記憶された設定データに基づいて動作しているため、スタンバイモードから復帰した際に発振回路10が不正確な設定データに基づいて動作するおそれがある。
【0017】
図3は、本実施形態の回路装置100の構成例である。回路装置100は、不揮発性メモリー40と記憶回路60と発振回路10とリセット回路70と端子T1、T2とを含む。回路装置100は、発振回路10によりクロック信号を生成する回路装置である。回路装置100は、例えば集積回路装置である。回路装置100が集積回路装置である場合、端子T1、T2は、半導体基板に形成されるパッド、又は半導体基板が収容されるパッケージの端子である。
【0018】
不揮発性メモリー40は、不揮発性の記憶装置であり、電源が非供給でもデータを保持して記憶できる装置である。不揮発性メモリー40は、メモリーセルアレイとドライバー回路とリードライト回路などを含む。メモリーセルアレイには、複数のメモリーセル、複数のワード線、複数のビット線、複数のソース線などが配置される。ドライバー回路は、ワード線の選択等を行って、ワード線やソース線の駆動を行う。リードライト回路は、ビット線に接続され、データの読み出しや書き込みを行う。
【0019】
不揮発性メモリー40は、例えばEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)やフラッシュメモリーなどである。EEPROMは例えばフローティングゲート型のメモリーセルなどにより実現できる。フラッシュメモリーは、例えばMONOS(Metal-Oxide-Nitride-Oxide-Silicon)のメモリーセルなどにより実現できる。或いは不揮発性メモリー40は、ヒューズセルを用いたメモリーであってもよい。このタイプのメモリーでは、メモリーセルであるヒューズセルが、抵抗素子と、抵抗素子に直列接続されるセレクター素子を含む。セレクター素子は例えばPN接合のダイオードである。但しセレクター素子はMOSのトランジスターであってもよい。例えば抵抗素子の一端は、ビット線に接続され、抵抗素子の他端はダイオードのアノードに接続される。ダイオードのカソードはワード線に接続される。ヒューズ素子として機能する抵抗素子は、抵抗値が可変のプログラマブル抵抗である。例えば抵抗素子は、抵抗値が高いポリ抵抗と、ポリ抵抗の上層に形成され、抵抗値が低いシリサイドを有する。そしてシリサイドに大電流を流すことでシリサイドを溶断して、抵抗素子の抵抗値を低い抵抗値から高い抵抗値に変化させることで、メモリーセルであるヒューズセルにデータを記憶させる。
【0020】
記憶回路60は、揮発性の記憶回路であり、電源が供給されているときにデータを保持して記憶できる回路である。記憶回路60は、例えばレジスターである。或いは、記憶回路60は、SRAM(Static Random Access Memory)又はDRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性メモリーであってもよい。記憶回路60がレジスターである場合、記憶回路60は、データを記憶する複数のラッチ回路と、アドレスをデコードすることでアクセス対象のラッチ回路を選択するアドレスデコーダーと、を含む。記憶回路60が揮発性メモリーである場合、記憶回路60は、複数のワード線と、複数のビット線と、複数のメモリーセルと、を含む。また記憶回路60は、ワード線を選択するワード線選択回路と、メモリーセルからのデータの読み出しを行う読み出し回路と、メモリーセルへのデータの書き込み制御を行う書き込み回路と、を含むことができる。
【0021】
発振回路10は、発振信号を生成する回路である。例えば、振動子を発振させることで発振信号を生成する回路である。発振回路10としては、SPXO(Simple Packaged Crystal Oscillator)における発振回路、又はTCXO(Temperature Compensated Crystal Oscillator)における発振回路などである。発振回路10がTCXOにおける発振回路である場合、発振回路10はVCOである。この場合、回路装置100は温度補償回路を含み、温度補償回路がVCOの制御電圧を生成することで発振周波数の温度特性を補償する。
【0022】
リセット回路70は、パワーオンリセット回路である。即ち、リセット回路70は、回路装置100に電源が投入されたときに回路装置100をリセットする。具体的には、リセット回路70は、端子T1に入力された電源電圧VDDが所定電圧を超えたときに、リセット信号XPORBをアクティブから非アクティブに遷移させる。リセット信号XPORBがアクティブのとき、回路装置100がリセット状態に設定され、リセット信号XPORBが非アクティブのとき、回路装置100がリセット解除状態に設定される。なお、アクティブを第1論理レベルとも呼び、非アクティブを第2論理レベルとも呼ぶ。
【0023】
制御端子T2には、制御信号ENが入力される。制御信号ENは、回路装置100に電源が供給されている状態において、回路装置100の通常動作モードとスタンバイモードとを切り替える信号である。制御信号ENがアクティブのとき回路装置100は通常動作モードに設定され、制御信号ENが非アクティブのとき回路装置100はスタンバイモードに設定される。スタンバイモードは、端子T1に電源電圧VDDが供給されている状態において、回路装置100の動作が停止された状態である。具体的には、スタンバイモードにおいて発振回路10及びリセット回路70がディセーブル状態に設定される。ディセーブル状態は、回路の消費電流が低減された状態である。具体的には、ディセーブル状態は、電源ラインから回路への電流供給が遮断されることで、回路の動作が停止された状態である。なお、ディセーブル状態において回路への電流供給が完全に遮断される必要はなく、通常動作モードにおける回路の消費電流よりもディセーブル状態における回路の消費電流が低減されていればよい。
【0024】
以下、回路装置100の動作を説明する。不揮発性メモリー40には発振回路10の特性調整データが設定データとして記憶されている。例えば、回路装置100の製造時、或いは回路装置100を含む電子機器の製造時などにおいて、不揮発性メモリー40に特性調整データが書き込まれる。回路装置100に電源が投入されると、リセット回路70がリセット信号XPORBをアクティブから非アクティブに遷移させる。このとき、不揮発性メモリー40から特性調整データが読み出され、その特性調整データが記憶回路60に格納される。発振回路10は、記憶回路60に記憶された特性調整データに基づいて動作する。
【0025】
特性調整データは、発振回路10の特性を調整するためのデータである。例えば、発振回路10がTCXOにおける発振回路である場合、特性調整データは、温度補償回路における補償関数のパラメーターである。補償関数のパラメーターが設定されることで、発振回路10の発振周波数の温度特性が調整される。このパラメーターは温度補償データとして不揮発性メモリー40に記憶される。或いは、特性調整データは、発振回路10が出力するクロック信号の周波数を設定するデータであってもよい。発振回路10は、発振信号を分周する分周回路、或いは発振信号を逓倍するPLL回路等を含んでもよい。特性調整データは、分周回路の分周比、或いはPLL回路の逓倍率を設定するデータであってもよい。
【0026】
上述したように、リセット回路70は、スタンバイモードにおいてディセーブル状態に設定される。このとき、リセット回路70は、アクティブのリセット信号XPORBを出力し、回路装置100はリセット状態となる。スタンバイモードから通常動作モードに移行したとき、リセット回路70は、リセット信号XPORBをアクティブから非アクティブにする。これにより、回路装置100はリセット状態からリセット解除状態に遷移する。
【0027】
本実施形態によれば、スタンバイモードから通常動作モードに移行したとき、リセット回路70が、リセット信号XPORBをアクティブから非アクティブにする。これにより、不揮発性メモリー40から記憶回路60に特性調整データがリロードされるので、スタンバイモードから復帰した際に、正しい特性調整データに基づいて発振回路10が動作できる。即ち、スタンバイモードにおいて、瞬停などの異常によって記憶回路60の記憶内容が壊れたとしても、スタンバイモードから復帰した際に正しい特性調整データが記憶回路60にリロードされる。
【0028】
また、このようなリロード機能を設けたことで、スタンバイモードにおいてリセット回路70をディセーブル状態にすることが可能となる。これにより、スタンバイモードにおいて発振回路10及びリセット回路70の消費電流が低減され、スタンバイモードにおける消費電流を低減できる。
【0029】
なお、上記では制御端子T2から入力される制御信号ENに基づいて通常動作モードとスタンバイモードが切り替えられる場合を説明したが、本発明の適用対象はこれに限定されない。通常動作モードモードは、広義には、回路装置100がクロック信号を出力する第1モードであってもよい。またスタンバイモードは、広義には、回路装置100に電源が供給されている状態において、回路装置100がクロック信号を出力しない第2モードであってもよい。また、第1モードと第2モードを切り替える信号は、回路装置100の外部から入力される信号に限定されず、回路装置100の内部で生成された信号であってもよい。
【0030】
2.リセット回路
【0031】
図4は、リセット回路70の詳細な構成例である。リセット回路70は、第1電圧VDETBを生成する電圧生成回路71と、基準電圧VRBを生成する基準電圧生成回路72と、第1電圧VDETBと基準電圧VRBとを比較するコンパレーター73と、キャパシターCBと、第1信号線LB1と、第2信号線LB2と、を含む。
【0032】
電圧生成回路71は、トランジスターTPB1、TPB4と、抵抗RB1、RB2と、を含む。トランジスターTPB1、TPB4はP型トランジスターである。
【0033】
トランジスターTPB4のソースは電源電圧VDDのノードに接続され、トランジスターTPB4のドレインはトランジスターTPB1のソースに接続される。トランジスターTPB4のゲートには、制御信号ENの論理反転信号である信号XENが入力される。トランジスターTPB1のドレインは抵抗RB1の一端に接続される。トランジスターTPB1のゲートには基準電圧VRBが入力される。抵抗RB1の他端は抵抗RB2の一端に接続され、この抵抗RB1の他端が電圧生成回路71の出力ノードとなる。抵抗RB2の他端は、接地電圧VSSのノードに接続される。
【0034】
なお、VDDは広義には高電位側電源電圧であり、VSSは広義には低電位側電源電圧である。即ち、VDDがVSSより高い電圧であればよく、VSSは接地電圧に限定されない。
【0035】
基準電圧生成回路72は、トランジスターTPB2、TPB3、TPB5、TNBと、電流源IBBと、バイポーラートランジスターBPBと、抵抗RB3とを含む。トランジスターTPB2、TPB3、TPB5はP型トランジスターであり、トランジスターTNBは、N型トランジスターである。
【0036】
トランジスターTPB2とトランジスターTPB3はカレントミラー回路を構成している。具体的には、電流源IBBがトランジスターTPB2に電流を流し、その電流がトランジスターTPB3にミラーされる。トランジスターTPB5のソースは電源電圧VDDのノードに接続され、トランジスターTPB5のドレインはトランジスターTPB2、TPB3のゲートに接続される。トランジスターTNBのドレインは電流源IBBに接続され、トランジスターTNBのソースは接地電圧VSSのノードに接続される。トランジスターTNBのゲートには制御信号ENが入力される。バイポーラートランジスターBPBのエミッターはトランジスターTPBのドレインに接続され、エミッターに接続されるノードが基準電圧生成回路72の出力ノードとなる。バイポーラートランジスターBPBのバースはバイポーラートランジスターBPBのコレクター及び抵抗RB3の一端に接続される。抵抗RB3の他端は接地電圧VSSのノードに接続される。
【0037】
キャパシターCBの一端は、第1信号線LB1に接続され、キャパシターCBの他端は、接地電圧VSSのノードに接続される。
【0038】
なお本実施形態における接続は電気的な接続である。電気的な接続は、電気信号が伝達可能に接続されていることであり、電気信号による情報の伝達が可能となる接続である。電気的な接続は、信号線や能動素子等を介した接続であってもよい。
【0039】
第1信号線LB1は、電圧生成回路71の出力ノードとコンパレーター73の第1入力ノードとを接続する。第1入力ノードは例えば非反転入力ノードである。第2信号線LB2は、基準電圧生成回路72の出力ノードとコンパレーター73の第2入力ノードとを接続する。第2入力ノードは例えば反転入力ノードである。
【0040】
コンパレーター73は、第1入力ノードに入力される第1電圧VDETBと、第2入力ノードに入力される基準電圧VRBとを比較する。VDETB<VRBのとき、コンパレーター73は、アクティブのリセット信号XPORBを出力し、VDETB>VRBのとき、コンパレーター73は、非アクティブのリセット信号XPORBを出力する。コンパレーター73は、制御信号ENがアクティブのときイネーブル状態に設定され、制御信号ENが非アクティブのときディセーブル状態に設定される。コンパレーター73は、電源電圧VDDのノードから接地電圧VSSのノードへの電流経路を遮断するためのスイッチを含む。ディセーブル状態において、そのスイッチがオフになることで、コンパレーター73内において電源電圧VDDのノードから接地電圧VSSのノードへ流れる電流が遮断される。これにより、ディセーブル状態においてコンパレーター73の動作が停止される。
【0041】
図5は、リセット回路70の動作を説明する波形図である。電源投入時において制御信号ENはアクティブであり、電源電圧VDDと同じ信号レベルであるとする。即ち、電源電圧VDDの上昇と共に、制御信号ENの信号レベルが上昇していく。
【0042】
リセット回路70に供給される電源電圧VDDが上昇していくと、トランジスターTPB3に流れるミラー電流が徐々に増加していき、基準電圧VRBが上昇していく。基準電圧VRBは、バイポーラートランジスターBPBのベース-エミッター間電圧と、抵抗RB3の電圧降下とにより決まる電圧まで、上昇する。
【0043】
トランジスターTPB1のゲートには基準電圧VRBが入力される。トランジスターTPB1のしきい値電圧をVthpとする。電源電圧VDDがVRB+Vthpに達すると、トランジスターTPB1がオンになり、第1電圧VDETBが上昇し始める。第1電圧VDETBは、抵抗RB1、RB2により電源電圧VDDが分割された電圧である。第1電圧VDETBが基準電圧VRBを超えたときコンパレーター73の出力信号がローレベルからハイレベルに遷移する。この出力信号がリセット信号XPORBである。なお、
図5のリセット信号XPORBにおいて、ローレベルがアクティブに対応し、ハイレベルが非アクティブに対応する。
【0044】
制御信号ENがハイレベルからローレベルになると、トランジスターTPB4がオフになり、第1電圧VDETBが接地電圧VSSとなる。また、トランジスターTPB5がオンになり、トランジスターTNBがオフになる。これにより、トランジスターTPB2、TPB3がオフになるので、基準電圧VRBが接地電圧VSSとなる。なお、
図5の制御信号ENにおいて、ハイレベルがアクティブに対応し、ローレベルが非アクティブに対応する。制御信号ENがローレベルのときコンパレーター73はディセーブル状態であり、コンパレーター73はハイレベルのリセット信号XPORBを出力する。即ち、制御信号ENが非アクティブのとき、回路装置100はリセット解除状態であり、且つ
図3の発振回路10及びリセット回路70がディセーブル状態となる。この状態が、スタンバイモードにおける状態である。
【0045】
制御信号ENがローレベルからハイレベルになると、トランジスターTPB5がオフになり、トランジスターTNBがオンになる。これにより、トランジスターTPB2、TPB3により構成されるカレントミラー回路が動作するので、基準電圧VRBが上昇する。即ち、基準電圧VRBは、バイポーラートランジスターBPBのベース-エミッター間電圧と、抵抗RB3の電圧降下とにより決まる電圧となる。また、トランジスターTPB4がオンになるので、抵抗RB1、RB2に電流が流れる。このとき、第1信号線LB1にキャパシターCBが接続されているため、第1電圧VDETBの上昇は、基準電圧VRBの上昇よりも遅くなる。これにより、制御信号ENがローレベルからハイレベルになったときにはVDETB<VRBであり、その後にVDETB>VRBとなる。制御信号ENがハイレベルのときコンパレーター73はイネーブル状態なので、制御信号ENがローレベルからハイレベルになったときにはリセット信号XPORBがローレベルであり、VDETB>VRBになったときにリセット信号XPORBがハイレベルになる。
【0046】
このように、リセット回路70は、制御信号ENが非アクティブからアクティブになったときに、リセット信号XPORBをアクティブにした後、リセット信号XPORBを非アクティブにする。即ち、制御信号ENが非アクティブからアクティブになったとき、回路装置100がリセットされる。これにより、
図3の不揮発性メモリー40から記憶回路60に特性調整データがリロードされる。
【0047】
3.発振器
【0048】
図6は、回路装置100を含む発振器400の構成例である。発振器400は、振動子XTALと回路装置100とを含む。例えば、振動子XTALと回路装置100とがパッケージに収容されることで、発振器400が構成される。
【0049】
振動子XTALは例えば圧電振動子である。圧電振動子は例えば水晶振動子である。水晶振動子としては、例えばカット角がATカットやSCカットなどの厚みすべり振動する水晶振動子である。例えば振動子は、恒温槽を備えない温度補償型水晶発振器(TCXO)に内蔵されている振動子である。或いは振動子は、恒温槽を備える恒温槽型水晶発振器(OCXO)に内蔵されている振動子などであってもよい。また振動子として、SAW(Surface Acoustic Wave)共振子、シリコン基板を用いて形成されたシリコン製振動子としてのMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)振動子等を採用してもよい。
【0050】
回路装置100は、不揮発性メモリー40と、リセット回路70と、発振回路10と、レジスター160と、制御回路130と、温度補償回路150と、出力バッファー回路120と、端子TVD、TVS、TVCNT、TQ、TX1、TX2と、を含む。回路装置100は、例えば集積回路装置である。端子TVD、TVS、TVCNT、TQ、TX1、TX2は、半導体基板に形成されるパッドである。なお、
図3等で説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、その構成要素についての説明を適宜に省略する。
【0051】
制御端子TVCNTには、制御電圧VCNT又は制御信号ENが入力される。制御端子TVCNTの機能設定は、例えば不揮発性メモリー40等に書き込まれている。或いは、配線層を形成するためのマスクを制御端子TVCNTの機能に応じて選択することで、制御端子TVCNTの機能が決定される。制御端子TVCNTに制御電圧VCNTが入力される場合、制御回路130は、制御端子TVCNTと発振回路10を接続し、発振回路10に制御電圧VCNTを入力させる。制御端子TVCNTに制御信号ENが入力される場合、制御回路130は、制御信号ENを温度補償回路150及び発振回路10、出力バッファー回路120へ出力する。
【0052】
発振回路10は、端子TX1及び端子TX2を介して振動子XTALに接続される。発振回路10は、振動子XTALを発振させるための回路である。発振周波数は、温度補償電圧VCOMPによって温度補償される。即ち、温度が変化しても一定の発振周波数となるように、発振回路10が温度補償電圧VCOMPにより制御される。また制御端子TVCNTに制御電圧VCNTが入力される場合、発振回路10は、制御電圧VCNTによって設定される発振周波数で発振する。
【0053】
例えば、発振回路10はピアース型の発振回路である。この場合、発振回路10は、バイポーラートランジスターと、バイポーラートランジスターのベース-コレクター間に接続される抵抗と、を含む。バイポーラートランジスターのベースが端子TX1に接続され、コレクターが端子TX2に接続される。発振回路10は、端子TX1又は端子TX2に一端が接続される可変容量キャパシターを含む。可変容量キャパシターの他端には温度補償電圧VCOMPが入力され、可変容量キャパシターの容量値が温度補償電圧VCOMPによって制御される。これにより、発振周波数が温度補償される。
【0054】
制御端子TVCNTに制御信号ENが入力される場合、発振回路10は制御信号ENによりイネーブル状態又はディセーブル状態に設定される。例えば、ピアース型の発振回路において、バイポーラートランジスターにバイアス電流を供給するラインにスイッチが設けられる。制御信号ENが非アクティブのときにスイッチがオフになり、発振回路10の発振動作が停止される。
【0055】
出力バッファー回路120は、発振回路10からの発振信号SSCをバッファリングする回路である。即ち外部の負荷を十分に駆動できるように信号のバッファリングを行う。出力バッファー回路120により、バッファリングされた信号は、クロック信号SQとして出力端子TQをから発振器400の外部に出力される。制御端子TVCNTに制御信号ENが入力される場合、出力バッファー回路120は制御信号ENによりイネーブル状態又はディセーブル状態に設定される。例えば、出力バッファー回路120は、発振信号SSCをバッファリングして負荷を駆動する駆動トランジスターを含む。制御信号ENが非アクティブのときに、駆動トランジスターがオフになることで、出力バッファー回路120の動作が停止される。
【0056】
温度補償回路150は、温度センサーからの温度検出結果に基づいて温度補償電圧VCOMPを生成する。具体的には、温度補償回路150は、温度を引数とする近似関数の電圧を温度補償電圧VCOMPとして生成する。近似関数は、振動子XTAL及び発振回路10の温度特性を補償する関数である。温度補償回路150は、このような温度補償電圧VCOMPを生成することで、発振回路10の発振周波数を温度によらず一定となるように補償する。温度補償回路150の詳細な構成については後述する。
【0057】
制御回路130は、ロジック回路である。制御回路130は、回路装置100の各部を制御する。具体的には、リセット回路70からのリセット信号XPORBに基づいて、回路装置100をリセット状態又はリセット解除状態に設定する。またリセット信号XPORBによりリセット状態が解除されたとき、制御回路130は、不揮発性メモリー40からレジスター160に特性調整データをロードする。また、制御回路130は、レジスター160に記憶された特性調整データに基づいて、温度補償回路150及び発振回路10の動作設定を行う。レジスター160は、
図3の記憶回路60に相当する。
【0058】
温度補償回路150が発生する近似関数は多項式であり、その多項式の係数を表すパラメーターが特性調整データとして不揮発性メモリー40に記憶されている。このパラメーターがレジスター160にロードされることで、温度補償回路150が発生する近似関数が設定される。振動子XTAL及び発振回路10の温度特性は個体バラツキがあるため、近似関数にも個体差がある。このため、レジスター160に記憶されたパラメーターが適切でないと、温度補償が正しく行われない。この点、本実施形態によれば、制御信号ENによってスタンバイモードに設定されているときにレジスター160の記憶内容が壊れた場合であっても、スタンバイモードから復帰する際にレジスター160にパラメーターがリロードされる。これにより、スタンバイモードからの復帰時において、発振器400が、正しく温度補償されたクロック信号を出力できる。
【0059】
リセット回路70は、端子TVDから入力される電源電圧VDDに基づいてリセット信号XPORBを生成する。また、制御端子TVCNTに制御信号ENが入力される場合、リセット回路70は、電源電圧VDD及び制御信号ENに基づいてリセット信号XPORBを生成する。リセット回路70の動作は
図4、
図5で説明した通りである。
【0060】
図7は、温度補償回路150の詳細な構成例である。温度補償回路150は、温度センサー151と、0次成分発生回路152と、1次成分発生回路153と、3次成分発生回路154と、1次成分ゲイン調整回路155と、3次成分ゲイン調整回路156と、加算回路157と、を含む。なお、
図7には温度補償回路150が3次多項式の温度補償電圧VCOMPを発生する場合を示すが、温度補償回路150がより高次の多項式の温度補償電圧VCOMPを発生してもよい。
【0061】
温度センサー151は、温度の検出結果を温度検出電圧VTとして出力する。例えば、温度センサー151は、PN接合の順方向電圧に基づいて温度検出電圧VTを出力する回路である。PN接合の順方向電圧は温度依存性を有する。
【0062】
0次成分発生回路152は、振動子XTALの発振周波数がもつ温度特性の0次成分を近似する0次成分電圧VS0を出力する。0次成分発生回路152は、例えば抵抗分割回路など、DC電圧を出力する回路で構成される。
【0063】
1次成分発生回路153は、振動子XTALの発振周波数がもつ温度特性の1次成分を近似する1次成分電流IS1を出力する。1次成分発生回路153は、例えば正転増幅アンプ等により構成できる。1次成分ゲイン調整回路155は、レジスター160に記憶されたゲイン値A1に基づいて、1次成分電流IS1のゲイン調整を行い、1次成分電圧VS1=A1×IS1を出力する。
【0064】
3次成分発生回路154は、振動子XTALの発振周波数がもつ温度特性の3次成分を近似する3次成分電流IS3を出力する。3次成分ゲイン調整回路156は、レジスター160に記憶されたゲイン値A3に基づいて、3次成分電流IS3のゲイン調整を行い、3次成分電圧VS3=A3×IS3を出力する。
【0065】
加算回路157は、0次成分電圧VS0及び1次成分電圧VS1、3次成分電圧VS3を加算し、温度補償電圧VCOMPを出力する。加算回路157は、例えばアンプ回路によるアナログ加算回路である。VS0=A0とすると、温度補償電圧VCOMPは下式(1)を近似する電圧である。
VCOMP=A3×(T-T0)3+A1×(T-T0)+A0 ・・・(1)
【0066】
本実施形態において、ゲイン値A3、A1、A0が温度補償データとして不揮発性メモリー40に記憶されている。温度補償データは特性調整データである。電源投入によりリセットが解除されたとき、或いはスタンバイモードから通常動作モードに復帰したときに、ゲイン値A3、A1、A0が不揮発性メモリー40からレジスター160にロードされる。
【0067】
制御回路130は、温度センサー151及び0次成分発生回路152、1次成分発生回路153、3次成分発生回路154、1次成分ゲイン調整回路155、3次成分ゲイン調整回路156、加算回路157に対して、制御信号ENを出力する。制御信号ENが非アクティブのとき、これらの回路はディセーブル状態となる。ディセーブル状態において、各回路に含まれるアンプ回路等のバイアス電流が遮断されることで、各回路の動作が停止される。
【0068】
4.電子機器、移動体
【0069】
図8は、回路装置100を含む電子機器300の構成例である。この電子機器300は、回路装置100及び振動子XTALを有する発振器400と、処理部520を含む。また通信部510、操作部530、表示部540、記憶部550、アンテナANTを含むことができる。
【0070】
電子機器300としては種々の機器を想定できる。例えば、GPS内蔵時計、生体情報測定機器又は頭部装着型表示装置等のウェアラブル機器を想定できる。生体情報測定機器は脈波計、歩数計等である。或いは、スマートフォン、携帯電話機、携帯型ゲーム装置、ノートPC又はタブレットPC等の携帯情報端末を想定できる。或いは、コンテンツを配信するコンテンツ提供端末や、デジタルカメラ又はビデオカメラ等の映像機器や、或いは基地局又はルーター等のネットワーク関連機器などを想定できる。或いは、距離、時間、流速又は流量等の物理量を計測する計測機器や、車載機器や、ロボットなどを想定できる。車載機器は自動運転用の機器等である。
【0071】
通信部510は、アンテナANTを介して外部からデータを受信したり、外部にデータを送信する処理を行う。通信部510は例えば通信回路である。処理部520は、電子機器の制御処理や、通信部510を介して送受信されるデータの種々のデジタル処理などを行う。この処理部520の機能は、例えばマイクロコンピューターなどのプロセッサーにより実現できる。操作部530は、ユーザーが入力操作を行うためのものであり、操作ボタンやタッチパネルディスプレイなどにより実現できる。操作部530は例えば操作装置である。表示部540は、各種の情報を表示するものであり、液晶や有機ELなどのディスプレイにより実現できる。記憶部550は、データを記憶するものであり、その機能はRAMやROMなどの半導体メモリーやハードディスクドライブなどにより実現できる。
【0072】
図9は、回路装置100を含む移動体の例である。回路装置100は、例えば、車、飛行機、バイク、自転車、ロボット、或いは船舶等の種々の移動体に組み込むことができる。移動体は、例えばエンジンやモーター等の駆動機構、ハンドルや舵等の操舵機構、各種の電子機器を備えて、地上や空や海上を移動する機器・装置である。
図9は移動体の具体例としての自動車206を概略的に示している。自動車206には、回路装置100を含む不図示の発振器が組み込まれる。制御装置208は、この発振器により生成されたクロック信号に基づいて種々の制御処理を行う。制御装置208は、例えば車体207の姿勢に応じてサスペンションの硬軟を制御したり、個々の車輪209のブレーキを制御する。なお回路装置100又は発振器が組み込まれる機器は、このような制御装置208には限定されず、自動車206やロボット等の移動体に設けられる種々の機器に組み込むことができる。
【0073】
以上の実施形態によれば、回路装置は、クロック信号を出力する第1モード、及びクロック信号を出力しない第2モードを有する。回路装置は、クロック信号を生成する発振回路と、発振回路の特性調整データが記憶される不揮発性メモリーと、リセット信号を生成するリセット回路と、リセット信号がアクティブから非アクティブになったとき、不揮発性メモリーから特性調整データがロードされる記憶回路と、を含む。リセット回路は、第2モードから第1モードに移行したとき、リセット信号をアクティブから非アクティブにする。
【0074】
クロック信号を出力しない第2モードから、クロック信号を出力する第1モードに移行したとき、リセット回路が、リセット信号をアクティブから非アクティブにする。このようにリセット信号が非アクティブになることで、不揮発性メモリーから記憶回路に特性調整データがリロードされるので、第2モードから第1モードに復帰した際に、正しい特性調整データに基づいて発振回路が動作できる。また、このようなリロード機能を設けたことで、第2モードにおいてリセット回路をディセーブル状態にすることが可能となる。即ち、第2モードにおいて瞬停などの異常によって、記憶回路に記憶された特性調整データが壊れたとしても、第2モードから第1モードに復帰する際に特性調整データが記憶回路にリロードされる。第2モードにおいてリセット回路をディセーブル状態にできることで、スタンバイモードにおいて発振回路及びリセット回路の消費電流が低減され、スタンバイモードにおける回路装置の消費電流を低減できる。
【0075】
また本実施形態では、回路装置は、第1モードと第2モードとを切り替える制御信号が入力される制御端子を含んでもよい。リセット回路は、電源投入時にリセット信号を非アクティブからアクティブにし、電源投入後において、制御端子から入力される制御信号に基づいてリセット信号を生成してもよい。
【0076】
本実施形態によれば、電源投入時にリセット信号を非アクティブからアクティブにするリセット回路が、電源投入後において、制御信号に基づいてリセット信号を生成できる。即ち、回路装置に電源が供給された状態において、回路装置が端子制御により第2モードとなり、その後に端子制御により第1モードとなったとき、リセット信号によって回路装置をリセットできる。これにより、不揮発性メモリーから記憶回路に特性調整データをリロードできる。
【0077】
また本実施形態では、第1モードは、回路装置の通常動作モードであってもよい。第2モードは、回路装置のスタンバイモードであってもよい。
【0078】
本実施形態によれば、回路装置がスタンバイモードから通常動作モードに復帰したときに、リセット回路が、リセット信号をアクティブにした後に非アクティブにする。これにより、不揮発性メモリーから記憶回路に特性調整データがリロードされるので、スタンバイモードから通常動作モードに復帰した際に、正しい特性調整データに基づいて発振回路が動作できる。
【0079】
また本実施形態では、リセット回路は、電源投入時にリセット信号をアクティブから非アクティブにしてもよい。リセット回路は、電源投入後の第2モードにおいて、ディセーブル状態に設定されてもよい。
【0080】
本実施形態によれば、電源投入後の第2モードにおいてリセット回路がディセーブル状態に設定されることで、第2モードにおけるリセット回路の消費電流が低減される。そして、第2モードから第1モードに移行したときに、リセット回路がリセット信号をアクティブにした後に非アクティブにする。これにより、不揮発性メモリーから記憶回路に特性調整データがリロードされるので、第2モードから第1モードに復帰した際に、正しい特性調整データに基づいて発振回路が動作できる。
【0081】
また本実施形態では、リセット回路は、電源電圧を電圧分割した第1電圧を生成する電圧生成回路と、基準電圧を生成する基準電圧生成回路と、コンパレーターと、を含んでもよい。コンパレーターは、第1電圧と基準電圧を比較し、比較結果に基づいてリセット信号を出力してもよい。
【0082】
第1電圧は電源電圧を電圧分割したものなので、電源が投入されて電源電圧が上昇すると共に第1電圧が上昇する。この第1電圧と基準電圧とが比較されることで、電源投入時にアクティブから非アクティブとなるリセット信号が出力される。
【0083】
また本実施形態では、第2モードにおいて、電圧生成回路、基準電圧生成回路、及びコンパレーターは、ディセーブル状態に設定されてもよい。
【0084】
本実施形態によれば、第2モードにおいて、電圧生成回路、基準電圧生成回路、及びコンパレーターが、ディセーブル状態に設定されることで、リセット回路がディセーブル状態に設定される。
【0085】
また本実施形態では、リセット回路は、第1信号線と第2信号線とキャパシターとを含んでもよい。第1信号線は、電圧生成回路の出力ノードと、第1電圧が入力されるコンパレーターの第1入力ノードと、を接続してもよい。第2信号線は、基準電圧生成回路の出力ノードと、基準電圧が入力されるコンパレーターの第2入力ノードと、を接続してもよい。キャパシターの一端は、第1信号線に接続されてもよい。
【0086】
キャパシターの一端が第1信号線に接続されることで、第1電圧の上昇が基準電圧の上昇よりも遅くなる。これにより、リセット回路がディセーブル状態からイネーブル状態に復帰する際に、基準電圧が上昇した後に第1電圧が上昇する。これにより、リセット回路が、第2モードから第1モードに移行したときに、リセット信号をアクティブにした後に非アクティブにできる。
【0087】
また本実施形態では、第2モードから第1モードに移行したとき、基準電圧生成回路が基準電圧を出力した後に、電圧生成回路が第1電圧の電圧レベルを上昇させてもよい。
【0088】
本実施形態によれば、リセット回路がディセーブル状態からイネーブル状態に復帰する際に、基準電圧が上昇した後に第1電圧が上昇する。これにより、リセット回路が、第2モードから第1モードに移行したときに、リセット信号をアクティブにした後に非アクティブにできる。
【0089】
また本実施形態では、特性調整データは、発振回路の発振周波数の温度補償データであってもよい。
【0090】
本実施形態によれば、第2モードから第1モードに復帰したときに温度補償データが不揮発性メモリーから記憶回路にリロードされる。これにより、第2モードから第1モードに復帰した際に、正しい温度補償データに基づいて発振周波数の温度補償が行われるので、正確な発振周波数のクロック信号が出力される。
【0091】
また本実施形態では、回路装置は、温度補償データに基づいて、発振周波数の温度補償を行う温度補償回路を含んでもよい。温度補償回路は、第2モードにおいてディセーブル状態に設定されてもよい。
【0092】
本実施形態によれば、第2モードにおいて温度補償回路がディセーブル状態に設定されることで、第2モードにおける回路装置の消費電流を低減できる。
【0093】
また本実施形態では、発振回路は、第2モードにおいてディセーブル状態に設定されてもよい。
【0094】
本実施形態によれば、第2モードにおいて発振回路がディセーブル状態に設定されることで、第2モードにおける回路装置の消費電流を低減できる。
【0095】
また本実施形態では、発振器は、上記のいずれかに記載された回路装置と、発振回路に接続されて発振する振動子と、を含む。
【0096】
また本実施形態では、電子機器は、上記のいずれかに記載された回路装置を含む。
【0097】
また本実施形態では、移動体は、上記のいずれかに記載された回路装置を含む。
【0098】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本発明の範囲に含まれる。また回路装置、発振器、電子機器及び移動体等の構成及び動作等も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0099】
10…発振回路、40…不揮発性メモリー、60…記憶回路、70…リセット回路、71…電圧生成回路、72…基準電圧生成回路、73…コンパレーター、80…リセット回路、81…電圧生成回路、82…基準電圧生成回路、83…コンパレーター、100…回路装置、120…出力バッファー回路、130…制御回路、150…温度補償回路、151…温度センサー、152…0次成分発生回路、153…1次成分発生回路、154…3次成分発生回路、155…1次成分ゲイン調整回路、156…3次成分ゲイン調整回路、157…加算回路、160…レジスター、206…自動車、207…車体、208…制御装置、209…車輪、300…電子機器、400…発振器、510…通信部、520…処理部、530…操作部、540…表示部、550…記憶部、CB…キャパシター、EN…制御信号、LB1…第1信号線、LB2…第2信号線、SQ…クロック信号、T2…制御端子、TVCNT…制御端子、VDETB…第1電圧、VRB…基準電圧、XPORB…リセット信号、XTAL…振動子