IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立工機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-作業機 図1
  • 特許-作業機 図2
  • 特許-作業機 図3
  • 特許-作業機 図4
  • 特許-作業機 図5
  • 特許-作業機 図6
  • 特許-作業機 図7
  • 特許-作業機 図8
  • 特許-作業機 図9
  • 特許-作業機 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
   A47L 9/16 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
A47L9/16
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023502112
(86)(22)【出願日】2021-12-24
(86)【国際出願番号】 JP2021048088
(87)【国際公開番号】W WO2022181031
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2021029882
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】一橋 直人
(72)【発明者】
【氏名】坪和 完
【審査官】遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-195710(JP,A)
【文献】実開昭53-102268(JP,U)
【文献】国際公開第2004/014209(WO,A1)
【文献】特表2006-503607(JP,A)
【文献】実開昭51-146858(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータによって回転されるファンを収容するファン収容部と、
前記ファンの回転によって吸引される空気の流れである空気流が内部を旋回する第1サイクロン部と、
前記第1サイクロン部から流出した前記空気流が内部を旋回する第2サイクロン部と、
前記第2サイクロン部と前記ファン収容部とを接続し、内部にフィルタ部を収容するフィルタ収容部と、
を有し、
前記フィルタ収容部は、
軸線に沿った方向に開口し、前記ファン収容部へ空気が流出される流出口と、
前記第2サイクロン部から空気が流入される流入口と、
を有し、
前記フィルタ部は、
前記軸線を中心とする径方向中央に第1穴を有する筒状に形成され、前記流入口から前記流出口へ向かう空気の流路を塞ぐように配置されるとともに、内部が前記流入口と連通する第1フィルタ部材と、
前記径方向中央に第2穴を有する筒状に形成され、前記第1フィルタ部材よりも前記流路の上流側に配置されるように前記第1フィルタ部材の外周部に着脱可能に取り付けられ、かつ、前記第1フィルタ部材よりも通気性が高い第2フィルタ部材と、
を備え、
前記流入口は、前記軸線を中心とした周方向に複数並んで配置され、
前記第2フィルタ部材と前記流入口との間に空間が形成され
前記空間は、前記径方向における前記第2フィルタ部材の外周部を含み、
前記空間、前記第2フィルタ部材、前記第1フィルタ部材及び前記第1穴が、前記径方向に並んで配置されている、作業機。
【請求項2】
前記空間は、前記流入口の開口方向における前記第2フィルタ部材と前記流入口との間に形成されている第1の間隙を含む、請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記第2フィルタ部材は、前記開口方向に前記流入口と重なるように配置される、請求項2に記載の作業機。
【請求項4】
前記空間は、前記軸線を中心とした径方向において前記第2フィルタ部材の外周部に、前記流入口と連通するように形成された第2の間隙を含む、請求項1乃至3の何れか1項に記載の作業機。
【請求項5】
前記第2フィルタ部材は、前記軸線を中心とした径方向において、前記複数の流入口と重なるように設けられている、請求項1乃至4の何れか1項に記載の作業機。
【請求項6】
前記第1フィルタ部材は、不織布からなり、
前記第2フィルタ部材は、スポンジからなる、請求項1乃至5の何れか1項に記載の作業機。
【請求項7】
前記軸線は、前記流入口の開口方向と平行に伸びる、請求項1乃至6の何れか1項に記載の作業機。
【請求項8】
前記空間は、前記流入口の開口方向における前記第2フィルタ部材と前記流入口との間に形成されている第1の間隙と、前記軸線を中心とした径方向において前記第2フィルタ部材の外周部に、前記流入口と連通するように形成された第2の間隙と、を含み、
前記第1フィルタ部材は、前記軸線方向の一端が閉鎖されるとともに、前記軸線方向の他端を介して内部が前記流出口と連通し、
前記流入口は、前記開口方向に前記第2フィルタ部材と重なるとともに、前記第1フィルタ部材と重ならないように配置されている、請求項1に記載の作業機。
【請求項9】
前記第2穴に前記第1フィルタ部材が挿入されることで、前記第2フィルタ部材が前記第1フィルタ部材へ取り付けられる、請求項1に記載の作業機。
【請求項10】
モータによって回転されるファンを収容するファン収容部と、
前記ファンの回転によって吸引される空気の流れである空気流が内部を旋回する第1サイクロン部と、
前記第1サイクロン部から流出した前記空気流が内部を旋回する第2サイクロン部と、
前記第2サイクロン部と前記ファン収容部とを接続し、内部にフィルタ部を収容するフィルタ収容部と、
を有し、
前記フィルタ収容部は、
軸線に沿った方向に開口し、前記ファン収容部へ空気が流出される流出口と、
前記第2サイクロン部から空気が流入される流入口と、
を有し、
前記フィルタ部は、
前記軸線を中心とする径方向中央に第1穴を有する筒状に形成され、前記流入口から前記流出口へ向かう空気の流路を塞ぐように配置されるとともに、内部が前記流入口と連通する第1フィルタ部材と、
前記径方向中央に第2穴を有する筒状に形成され、前記第1フィルタ部材よりも前記流路の上流側に配置されるように前記第1フィルタ部材の外周部に着脱可能に取り付けられ、かつ、前記第1フィルタ部材よりも通気性が高い第2フィルタ部材と、
を備え、
前記流入口は、前記軸線を中心とした周方向に複数並んで配置され、
前記第2フィルタ部材と前記流入口との間に空間が形成され、
前記第2穴に前記第1フィルタ部材が挿入されることで、前記第2フィルタ部材が前記第1フィルタ部材へ取り付けられる、作業機。
【請求項11】
前記空間は、前記径方向における前記第2フィルタ部材の外周部を含み、
前記第1フィルタ部材は、前記軸線方向の一端が閉鎖されるとともに、前記軸線方向の他端を介して内部が前記流出口と連通し、
前記第2フィルタ部材は、前記軸線方向の一端側の面である第1吸気面と、外周面である第2吸気面と、を有し、
前記第1吸気面および前記第2吸気面は、前記空間に露出している、請求項10に記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーナなどの作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機の一例として、粉塵混じりの空気から粉塵を遠心分離して捕集するサイクロンユニットが設けられたクリーナが知られている。このようなクリーナにおいては、サイクロンユニットを通過した粉塵がモータ側へ進入することを抑制するため、サイクロンユニットを通過した空気を濾過するフィルタ部材がモータやファンの前段の位置に設けられる。
【0003】
このようにモータやファンの前段の位置にフィルタ部材を備えたクリーナが特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-178976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載されたクリーナのように、モータやファンの前段の位置のみにフィルタ部材が設けられた構造では、例えば、石膏の粉塵のように、粒径が比較的大きく、かつ、互いに張り付きやすい塵埃を吸引した場合、フィルタ部材が早期に目詰まりを起こすことがある。その結果、吸引力が早期に低下するとともにフィルタ部材のメンテナンス頻度も多くなり、クリーナの作業性が悪かった。
【0006】
本発明の目的は、作業性の向上が図られた作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態の作業機は、モータによって回転されるファンを収容するファン収容部と、前記ファンの回転によって吸引される空気の流れである空気流が内部を旋回する第1サイクロン部と、前記第1サイクロン部から流出した前記空気流が内部を旋回する第2サイクロン部と、前記第2サイクロン部と前記ファン収容部とを接続し、内部にフィルタ部を収容するフィルタ収容部と、を有し、前記フィルタ収容部は、軸線に沿った方向に開口し、前記ファン収容部へ空気が流出される流出口と、前記第2サイクロン部から空気が流入される流入口と、を有し、前記フィルタ部は、前記軸線を中心とする径方向中央に第1穴を有する筒状に形成され、前記流入口から前記流出口へ向かう空気の流路を塞ぐように配置されるとともに、内部が前記流入口と連通する第1フィルタ部材と、前記径方向中央に第2穴を有する筒状に形成され、前記第1フィルタ部材よりも前記流路の上流側に配置されるように前記第1フィルタ部材の外周部に着脱可能に取り付けられ、かつ、前記第1フィルタ部材よりも通気性が高い第2フィルタ部材と、を備え、前記流入口は、前記軸線を中心とした周方向に複数並んで配置され、前記第2フィルタ部材と前記流入口との間に空間が形成され、前記空間は、前記径方向における前記第2フィルタ部材の外周部を含み、前記空間、前記第2フィルタ部材、前記第1フィルタ部材及び前記第1穴が、前記径方向に並んで配置されている。
他の実施の形態の作業機は、モータによって回転されるファンを収容するファン収容部と、前記ファンの回転によって吸引される空気の流れである空気流が内部を旋回する第1サイクロン部と、前記第1サイクロン部から流出した前記空気流が内部を旋回する第2サイクロン部と、前記第2サイクロン部と前記ファン収容部とを接続し、内部にフィルタ部を収容するフィルタ収容部と、を有し、前記フィルタ収容部は、軸線に沿った方向に開口し、前記ファン収容部へ空気が流出される流出口と、前記第2サイクロン部から空気が流入される流入口と、を有し、前記フィルタ部は、前記軸線を中心とする径方向中央に第1穴を有する筒状に形成され、前記流入口から前記流出口へ向かう空気の流路を塞ぐように配置されるとともに、内部が前記流入口と連通する第1フィルタ部材と、前記径方向中央に第2穴を有する筒状に形成され、前記第1フィルタ部材よりも前記流路の上流側に配置されるように前記第1フィルタ部材の外周部に着脱可能に取り付けられ、かつ、前記第1フィルタ部材よりも通気性が高い第2フィルタ部材と、を備え、前記流入口は、前記軸線を中心とした周方向に複数並んで配置され、前記第2フィルタ部材と前記流入口との間に空間が形成され、前記第2穴に前記第1フィルタ部材が挿入されることで、前記第2フィルタ部材が前記第1フィルタ部材へ取り付けられる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、作業機における作業性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態の作業機の一例であるクリーナを示す外観図である。
図2図1に示すクリーナを鉛直方向に切断した断面図である。
図3図1に示すクリーナにおける空気流を示す拡大部分断面図である。
図4図1に示すA-A線に沿って切断した断面図である。
図5図1に示すB-B線に沿って切断した断面図である。
図6図1に示すC-C線に沿って切断した断面図である。
図7図1に示すクリーナにおいて本体部から第1フィルタ部材、第2フィルタ部材および集じん部を取り外した構造を示す斜視図である。
図8】本発明の第1変形例のクリーナを図1のC-C線の位置で切断した断面図である。
図9図8に示すクリーナの第2フィルタ部材を第1フィルタ部材に取り付けた状態を示す斜視図である。
図10】本発明の第2変形例のクリーナにおける空気流を示す拡大部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施の形態の作業機について図面を参照して説明する。
【0011】
本実施の形態では、作業機の一例として、クリーナ1を取り上げて説明する。クリーナ1の一例が、図1図7に示されている。なお、各図に示される同一の要素、または同等の要素には、それぞれ同一の符号を付してある。
【0012】
図1に示す本実施の形態のクリーナ1は、本体部2を備えている。そして、本体部2は、図2に示すファンモータ10を収容するハウジング6と、ハウジング6に接続されたハンドリング用の把持部4と、を備えている。ファンモータ10は、ファンが取り付けられた回転軸を有するモータであり、ハウジング6内のファン収容部30に設けられている。また、ハウジング6の保持部には、ファンモータ10に電力を供給するバッテリとして電池5が着脱自在に取り付けられている。そして、ハウジング6における電池5の保持部の近傍には、吸い込んだ空気を排気させるための複数の本体排気口20が形成されている。さらに、把持部4には、クリーナ1の電源をON/OFFするスイッチ等が配置された操作部9が設けられている。
【0013】
また、クリーナ1は、ハウジング6に取り付けられる集じん部3と、集じん部3に取り付けられ、空気とともに吸い込んだ塵埃を収容可能な塵埃収容部材7と、を備えている。さらに、集じん部3の内部には、吸い込んだ空気と塵埃を遠心力で分離する図3に示す第1サイクロン部28と、第1サイクロン部28の周囲に配置され、第1サイクロン部28で分離しきれなかった塵埃を遠心力で空気から分離する複数の第2サイクロン部29と、が設けられている。なお、図4に示すように、第2サイクロン部29は、第1サイクロン部28の外側において周方向Rに沿って複数設けられている。そして、第1サイクロン部28では、その内部において、上記ファンの回転によって吸引された空気の流れである空気流が旋回する。一方、第2サイクロン部29では、第1サイクロン部28から流出した空気流が内部において旋回する。すなわち、本実施の形態のクリーナ1は、2段サイクロン式の作業機である。
【0014】
したがって、作業者が操作部9のスイッチをON状態にすると、ファンモータ10が回転し、ファンモータ10の回転によってクリーナ1の先端付近に形成された集じん部吸気口8を介して空気と塵埃を吸い込む。そして、吸い込まれた空気と塵埃は、筒状の第1サイクロン部28で旋回して遠心力により空気と塵埃とが分離される。さらに、空気はそれぞれ筒状の複数の第2サイクロン部29に進入し、複数の第2サイクロン部29のそれぞれで旋回して第1サイクロン部28で分離しきれなかった塵埃を遠心力で空気から分離する。その後、空気は、ハウジング6内を通って複数の本体排気口20から外部に排気される。
【0015】
なお、クリーナ1では、図2に示す第1サイクロン部28の排気口である第1サイクロン排気口12と、図5に示す第2サイクロン部29の吸気口である複数の第2サイクロン吸気口15と、が連通するように空気の流路が形成される。さらに、図2に示すように、第2サイクロン部29の排気口である第2サイクロン排気口16と、ファンモータ10の吸気口となるファンモータ吸気口21と、が連通するように空気の流路が形成される。
【0016】
また、本実施の形態のクリーナ1は、ファンモータ吸気口21と、第2サイクロン部29の排気口となる第2サイクロン排気口16と、が接続されるフィルタ収容室(フィルタ収容部)22を有している。言い換えると、第2サイクロン部29とファン収容部30との間にフィルタ収容室22が設けられている。具体的には、第2サイクロン部29とファン収容部30とを接続し、内部に図3に示すフィルタ部31を収容するフィルタ収容室22を備えている。
【0017】
そして、このフィルタ収容室22内部のフィルタ部31に、第1フィルタ部材18と、第1フィルタ部材18の外周部を覆うように配置された第2フィルタ部材19と、が設けられている。具体的には、第2フィルタ部材19は、第1フィルタ部材18より空気の流路の上流側に配置されている。
【0018】
クリーナ1では、図2に示すように、ファンモータ10の回転によってクリーナ1の先端付近に形成された集じん部吸気口8を介して空気と塵埃を吸い込む。そして、吸い込まれた空気と塵埃は空気流P1となって図3および図4に示すように第1サイクロン部28に進入する。第1サイクロン部28には、軸線(中心線)Qに沿って円筒状のメッシュフィルタ13が設けられており、塵埃を含む空気流P2がメッシュフィルタ13の周囲を旋回する。この空気流P2の旋回時の遠心力により、空気と塵埃とが分離され、分離された塵埃は、第1サイクロン集じん室14に収容される。その後、メッシュフィルタ13を通過した空気流P3は,図3に示すように、第1サイクロン排気口12を介して空気流P4となって進み、図5に示すように、複数の第2サイクロン吸気口15を介して複数の第2サイクロン部29のそれぞれに進入する。
【0019】
そして、図3および図5に示すように複数の第2サイクロン部29のそれぞれで空気流P5となって旋回する。それぞれの第2サイクロン部29で空気流P5が旋回することで遠心力が発生し、この遠心力により、第1サイクロン部28で分離しきれなかった塵埃を空気から分離する。第2サイクロン部29で分離された塵埃は、図3に示す第2サイクロン集じん室17に収容される。その後、空気は空気流P6となって、第2サイクロン排気口(流入口)16を介してフィルタ収容室22内部のフィルタ部31に進入する。フィルタ収容室22内部に進入した空気は、空気流P7となって第2フィルタ部材19を通過し、さらに空気流P8となって第1フィルタ部材18を通過する。第1フィルタ部材18を通過した空気は、空気流P9となってファンモータ吸気口(流出口)21を介してハウジング6内のファン収容部30に進入する。そして、ファン収容部30に進入した空気は、空気流P10となってファンモータ10内を通った後、図2に示す複数の本体排気口20からクリーナ1の外部に排気される。
【0020】
次に、クリーナ1が備えるフィルタ収容室22について詳細に説明する。図3に示すように、フィルタ収容部であるフィルタ収容室22は、第1方向(開口方向)Xに向かって開口し、かつ、ファン収容部30へ向けて空気流が流出される流出口(ファンモータ吸気口)21と、第2サイクロン部29から空気流が流入される複数の流入口(第2サイクロン排気口)16と、を有している。第1方向Xは、図1に示すクリーナ1の前後方向である。つまり、流出口21と流入口16とは、いずれも軸線Qに沿って開口している。
【0021】
そして、フィルタ収容室22のフィルタ部31には、流入口16から流出口21へ向かう空気流の流路を塞ぐように配置される第1フィルタ部材18と、第1フィルタ部材18よりも流路の上流側に配置され、かつ、第1フィルタ部材18よりも通気性が高い第2フィルタ部材19と、を備えている。言い換えると、第2フィルタ部材19は、第1フィルタ部材18より目が粗い。さらに、別の言い方をすると、第2フィルタ部材19が備える複数の細孔の孔径は、第1フィルタ部材18が備える複数の細孔の孔径より大きい。したがって、第2フィルタ部材19は、該第2フィルタ部材19の塵埃の粒子捕集率が、第1フィルタ部材18の塵埃の粒子捕集率より低くなるように形成されている。なお、第1フィルタ部材18は、図3に示す第1方向Xに延びる軸線Qを中心とする筒状に形成されており、内部が流出口(ファンモータ吸気口)21と連通している。さらに、第1フィルタ部材18は、流入口(第2サイクロン排気口)16とも連通している。一方、第2フィルタ部材19も軸線Qを中心とする筒状に形成されている。すなわち、図7に示すように、第1フィルタ部材18も第2フィルタ部材19も筒状に形成されている。ここで、第1フィルタ部材18は、例えば、不織布からなるHEPAフィルタであり、第2フィルタ部材19は、例えば、スポンジからなる。スポンジは、一例として、ポリウレタン等の樹脂からなる。
【0022】
また、図3に示すフィルタ収容室22には、軸線Qと平行な方向において、フィルタ収容室22の第2フィルタ部材19と流入口(第2サイクロン排気口)16との間に第1の間隙(空間)25が形成されている。言い換えると、筒状の第2フィルタ部材19は、その外周面の第2サイクロン排気口(流入口)16と対向する側の面に第1吸気面23を有しており、この第1吸気面23と第2サイクロン排気口16との間に、第1の間隙25が形成されている。つまり、第1の間隙25を形成したことで、第2フィルタ部材19が第2サイクロン排気口(流入口)16を塞がないようにしている。
【0023】
このように第2フィルタ部材19の外周面の第1吸気面23と第2サイクロン排気口16との間に第1の間隙25が形成されたことで、塵埃を含んだ空気がこの第1の間隙25を通って第2フィルタ部材19内に入り込むことができる。これにより、第1フィルタ部材18に塵埃が至る前に第2フィルタ部材19によって塵埃を捕集することができ、第1フィルタ部材18での目詰まりの発生を抑制することができる。また、第2フィルタ部材19において、第1の間隙25によって空気流が第1吸気面23の広範囲を通過することが可能になる。その結果、気流中に含まれる塵埃を第2フィルタ部材19の広い表面積で捕集することができ、第2フィルタ部材19で捕集可能な塵埃の総量を増やすことができる。
【0024】
これにより、第1フィルタ部材18が早期に目詰まりを引き起こすことを低減でき、吸引力が早期に低下することを抑制できる。さらに、第1フィルタ部材18のメンテナンス頻度を少なくすることができ、クリーナ1の作業性の向上を図ることができる。
【0025】
なお、石膏ボードから発生する粉塵などであっても、第2フィルタ部材19の外周部の広い表面積の部分に付着させて捕集することができる。ただし、第2フィルタ部材19は、目が粗く、通気性が高いため、石膏ボードから発生する粉塵を大量に付着させても空気を確実に通すことが可能である。
【0026】
また、フィルタ収容室22には、軸線Qを中心とした径方向Yにおいて第2フィルタ部材19の外周部に、図6に示すように、複数の流入口(第2サイクロン排気口)16が設けられているとともに、これら複数の流入口(第2サイクロン排気口)16と連通する第2の間隙(空間)26が形成されている。言い換えると、図3に示す第2フィルタ部材19の外周面には、第1吸気面23よりも第2サイクロン排気口16から遠い位置に第2吸気面24が設けられており、第2吸気面24と、フィルタ部31の内壁面であるフィルタ収容室壁面27との間には、第2の間隙26が形成されている。第2フィルタ部材19の外周部において、第1の間隙25と第2の間隙26とは連通している。言い換えれば、第2フィルタ部材19の外周部は、図7に示す第1吸気面23と第2吸気面24とからなる広い面積の露出する部分を有している。つまり、第2フィルタ部材19の外周部は、塞がれることなく露出する広い表面積の部分を有している。
【0027】
したがって、第2の間隙26が設けられたことで、空気が第2吸気面24側に回り込む間隙を確保することができ、空気を第2吸気面24側に回り込ませた状態で第2フィルタ部材19の内部に進入させることが可能になる。これにより、気流中に含まれる塵埃を、第2吸気面24を活用してより広い表面積で捕集することができ、その結果、第2フィルタ部材19で捕集可能な塵埃の総量を増やすことができる。
【0028】
また、第2フィルタ部材19の外周面が第2吸気面24を備えていることにより、第2フィルタ部材19の外周部は、塞がれることなく露出する大きな体積の部分を有している。これにより、塵埃を第2フィルタ部材19の大きな体積の部分に大量に付着させることができ、第2フィルタ部材19で捕集可能な塵埃の総量をさらに増やすことができる。
【0029】
また、図3および図6に示すように、流入口(第2サイクロン排気口)16は、軸線Qを中心とした周方向Rに複数並んで配置されており、筒状の第2フィルタ部材19は、軸線Qを中心とした径方向Yにおいて、複数の流入口(第2サイクロン排気口)16と重なるように設けられている。
【0030】
これにより、複数の流入口(第2サイクロン排気口)16のそれぞれから排出された空気をそのまま第2フィルタ部材19内に通すことができ、空気に含まれる塵埃を容易に捕集することができる。
【0031】
また、第2フィルタ部材19は、第1フィルタ部材18の外周部に着脱可能に取り付けられている。ここで、図3に示すように、第1フィルタ部材18は、その第2サイクロン部29側に配置される樹脂製の円盤状の壁部18aを有しており、この壁部18aの外周部にはフランジ部18bが形成されている。そして、第2フィルタ部材19は、フランジ部18bに対して着脱可能に嵌合されている。したがって、第2フィルタ部材19は、第2フィルタ部材19を変形させてフランジ部18bへの嵌合を解除することで、単独で、かつ、容易に第1フィルタ部材18から取り外すことができる。すなわち、第2フィルタ部材19をメンテナンスする際、第1フィルタ部材18第2フィルタ部材19のみを取り外してメンテナンスすることができる。例えば、第2フィルタ部材19がスポンジからなる場合、第2フィルタ部材19のみを取り外して容易に水洗いすることができる。石膏ボードから発生する粉塵が第2フィルタ部材19に大量に付着している場合であっても、第2フィルタ部材19のみを取り外して容易に水洗いすることができ、クリーナ1の作業性の向上を図ることができる。
【0032】
また、第1フィルタ部材18は、その第2サイクロン部29側に配置される樹脂製の円盤状の壁部18aを有している。この円盤状の壁部18aにより、第1の間隙25に流入した塵埃を含む空気が、フィルタ収容室22内部の中心部側に流れることを阻止することができる。つまり、第1の間隙25に流入した塵埃を含む空気が、第2フィルタ部材19を通過することなく直接第1フィルタ部材18内に進入することを阻止できる。これにより、第1フィルタ部材18に石膏ボード等の粉塵が付着することを低減できる。
【0033】
次に、本実施の形態のクリーナ1の変形例について説明する。図8および図9に示す第1変形例は、図1に示すクリーナ1に対して第2フィルタ部材19の外周部の形状を変えたものである。図9に示すように、第1変形例では、筒状の第1フィルタ部材18の外周部に筒状の第2フィルタ部材19が取り付けられ、この第2フィルタ部材19において、その外周部に凹凸が形成されている。具体的には、第2フィルタ部材19の外周部に凹部19aと凸部19bが形成されている。そして、図8に示すように、凸部19bの上面はフィルタ収容室壁面27に接触するように外周部を形成し、第2フィルタ部材19の外周部の表面積と体積が増えるようにした形状である。このように外周部に凹凸が形成された形状の第2フィルタ部材19を採用することも可能である。
【0034】
また、図10に示す第2変形例は、第1フィルタ部材18が折りたたまれた形状のフィルタとなっており、空気が通過する際に、第1フィルタ部材18に対して径方向Yと、軸線Qに沿った方向とから進入させるものである。そこで、空気が第1フィルタ部材18を通過する前に第2フィルタ部材19を通過する必要があるため、第2フィルタ部材19は、リング状のフィルタ外周部19cと、このフィルタ外周部19cと一体に形成された円盤状のフィルタ中央部19dとからなる。これにより、第2フィルタ部材19の円盤状のフィルタ中央部19dが、第1フィルタ部材18の第2サイクロン部29側を覆う構造となっている。これにより、第1の間隙25に流入した塵埃を含む空気の一部が、フィルタ収容室22内部に形成されるの中心向け流路22aに入り込んで本体中心部に向かって空気流P11となって流れた後、第2フィルタ部材19の円盤状のフィルタ中央部19dを通過し、さらに第1フィルタ部材18を通過させる。また、第1の間隙25に流入した塵埃を含む空気の他部は、第2フィルタ部材19のフィルタ外周部19cを通過させて、さらに第1フィルタ部材18を通過させる。
【0035】
これにより、第1の間隙25に流入した塵埃を含む空気を、より大きな表面積の第2フィルタ部材19に通過させてから第1フィルタ部材18に通過させることができる。したがって、図10に示す第2変形例のクリーナ1においても、図1に示すクリーナ1と同様の効果を得ることが可能である。
【0036】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記実施の形態では、第2サイクロン部29に複数の流入口(第2サイクロン排気口)16が形成され、これら複数の流入口(第2サイクロン排気口)16のそれぞれがフィルタ収容室22に連通している構造を説明した。しかしながら、複数の第2サイクロン排気口16のそれぞれが1つの流路に連通し、この1つの流路がフィルタ収容室22に連通している構造であってもよい。
【0037】
上記実施の形態では、流出口21と流入口16とがいずれも軸線Qに沿って開口しているが、開口方向はこれに限られず、互いに異なっていてもよい。また、第1フィルタ部材18及び第2フィルタ部材19はいずれも軸線Qを中心とする筒状に形成されているが、筒の軸線方向はこれに限られず、互いに異なっていてもよい。例えば、流出口21が軸線Qに沿って開口し、第1フィルタ部材18及び第2フィルタ部材19は軸線Qを中心とする筒状に形成されているが、流入口16は軸線Qと垂直な軸線に沿って開口する構成、つまり流入口の開口方向を軸線Qと異なる方向とする構成としてもよい。この場合に第1の間隙25は、少なくとも流入口16の開口方向、つまり軸線Qと垂直な該軸線の方向において、第2フィルタ部材19と流入口16との間に形成される。
【0038】
上記実施の形態では、第1の間隙25と第2の間隙26とを設けたが、第2フィルタ部材19と流入口16との間に空間が形成されれば本発明の目的は達成されるため、第1の間隙25及び第2の間隙26のうちいずれか一方しか設けられない構成、あるいはいずれも設けられない構成としてもよい。例えば第2フィルタ部材19の外周円よりも外周側に流入口16を形成する場合、第1の間隙25が設けられずとも空間は形成されるため、本発明の目的は達成される。
【符号の説明】
【0039】
1…クリーナ(作業機)、2…本体部、3…集じん部、4…把持部、5…電池、6ハウジング、7…塵埃収容部材、8…集じん部吸気口、9…操作部、10…ファンモータ、11…第1サイクロン吸気口、12…第1サイクロン排気口、13…メッシュフィルタ、14…第1サイクロン集じん室、15…第2サイクロン吸気口、16…第2サイクロン排気口(流入口)、17…第2サイクロン集じん室、18…第1フィルタ部材、18a…壁部、18b…フランジ部、19…第2フィルタ部材、19a…凹部、19b…凸部、19c…フィルタ外周部、19d…フィルタ中央部、20…本体排気口、21…ファンモータ吸気口(流出口)、22…フィルタ収容室(フィルタ収容部)、22a…中心向け流路、23…第1吸気面、24…第2吸気面、25…第1の間隙、26…第2の間隙、27…フィルタ収容室壁面、28…第1サイクロン部、29…第2サイクロン部、30…ファン収容部、31…フィルタ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10