(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】通信システム、通信制御装置、方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 4/44 20180101AFI20240910BHJP
H04W 52/38 20090101ALI20240910BHJP
【FI】
H04W4/44
H04W52/38
(21)【出願番号】P 2023510024
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2021013854
(87)【国際公開番号】W WO2022208731
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】網中 洋明
(72)【発明者】
【氏名】小林 航生
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 慶
(72)【発明者】
【氏名】尾形 一気
(72)【発明者】
【氏名】高澤 淳
【審査官】吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-170241(JP,A)
【文献】特開2005-269593(JP,A)
【文献】特開2013-123168(JP,A)
【文献】特開2007-200021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G1/00-99/00
H04W4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差点に通じる車道に移動体が存在するか否かを判定する判定手段と、
前記交差点に設置される信号機の灯火状態、及び前記判定手段の判定結果に基づいて、前記交差点を走行する移動体と無線通信が可能に構成される無線通信装置から出力される無線信号の送信出力を制御する制御手段とを備える通信制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記灯火状態が進行不可を示す場合、又は前記判定結果が前記車道に移動体が存在しないことを示す場合、前記灯火状態が進行可を示し、かつ前記判定結果が前記車道に移動体が存在することを示す場合に比べて、前記車道に出力される無線信号の送信出力を低下させる請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記判定結果が前記車道に移動体が存在することを示す場合と、前記判定結果が前記車道に移動体が存在しないことを示す場合とで、前記無線信号の出力方向を変更する請求項1又は2に記載の通信制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記判定結果が前記車道に移動体が存在することを示す場合、前記交差点に通じる道路において車道の領域に無線信号を出力し、前記判定結果が前記車道に移動体が存在しないことを示す場合、前記交差点に通じる道路において歩行者が通行する領域に無線信号を出力する請求項1から3何れか1項に記載の通信制御装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記歩行者が通行する領域に歩行者が存在するか否かを判定し、
前記制御手段は、前記判定結果が、前記車道に移動体が存在しないことを示し、かつ前記歩行者が通行する領域に歩行者が存在しないことを示す場合、前記無線信号の送信出力を停止する請求項4に記載の通信制御装置。
【請求項6】
前記無線通信装置は、前記交差点を第1の方向に走行する移動体と通信が可能に構成される第1の無線通信装置と、前記交差点を、前記第1の方向と交差する第2の方向に走行する移動体と通信が可能に構成される第2の無線通信装置を含み、
前記制御手段は、前記灯火状態が前記第1の方向において進行不可を示すか否か、及び、前記第2の方向において進行不可を示すか否かに応じて、前記第1の無線通信装置、及び前記第2の無線通信装置の無線信号の送信出力を制御する請求項1から5何れか1項に記載の通信制御装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記灯火状態が前記第1の方向において進行不可を示し、かつ前記第2の方向において進行可を示し、前記判定結果が前記第2の方向において車道に移動体が存在することを示す場合、前記第1の無線通信装置の無線信号の送信出力を、前記第2の無線通信装置の無線信号の送信出力より低下させる請求項6に記載の通信制御装置。
【請求項8】
前記制御手段は、更に、前記灯火状態が前記第1の方向において進行可を示す場合、前記第1の無線通信装置が無線信号を出力する方向を前記第1の方向に制御し、前記灯火状態が前記第2の方向において進行可を示す場合、前記第2の無線通信装置が無線信号を出力する方向を前記第2の方向に制御する請求項6又は7に記載の通信制御装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記無線信号の振幅、及び帯域幅の少なくとも一方を変化させることで、前記無線信号の送信出力を変化させる請求項1から8何れか1項に記載の通信制御装置。
【請求項10】
前記判定手段は、前記車道を撮影する撮像装置が出力する映像を用いて、前記車道に移動体が存在するか否かを判定する請求項1から9何れか1項に記載の通信制御装置。
【請求項11】
交差点を走行する移動体と無線通信が可能に構成される無線通信装置と、
前記無線通信装置を制御する通信制御装置とを備え、
前記通信制御装置は、
前記交差点に通じる車道に移動体が存在するか否かを判定する判定手段と、
前記交差点に設置される信号機の灯火状態、及び前記判定手段の判定結果に基づいて、前記無線通信装置から出力される無線信号の送信出力を制御する制御手段とを備える、通信システム。
【請求項12】
前記制御手段は、前記灯火状態が進行不可を示す場合、又は前記判定結果が前記車道に移動体が存在しないことを示す場合、前記灯火状態が進行可を示し、かつ前記判定結果が前記車道に移動体が存在することを示す場合に比べて、前記車道に出力される無線信号の送信出力を低下させる請求項11に記載の通信システム。
【請求項13】
前記車道を撮影する撮像装置を更に有し、
前記判定手段は、前記撮像装置が出力する映像を用いて、前記車道に移動体が存在するか否かを判定する請求項11又は12に記載の通信システム。
【請求項14】
交差点に設置される信号機の灯火状態を取得し、
前記交差点に通じる車道に移動体が存在するか否かを判定し、
前記信号機の灯火状態、及び前記交差点に通じる車道に移動体が存在するか否かの判定の結果に基づいて、前記交差点を走行する移動体と無線通信が可能に構成される無線通信装置から出力される無線信号の送信出力を制御する通信制御方法。
【請求項15】
交差点に設置される信号機の灯火状態を取得し、
前記交差点に通じる車道に移動体が存在するか否かを判定し、
前記信号機の灯火状態、及び前記交差点に通じる車道に移動体が存在するか否かの判定の結果に基づいて、前記交差点を走行する移動体と無線通信が可能に構成される無線通信装置から出力される無線信号の送信出力を制御する処理をプロセッサに実施させるためのプログラ
ム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通信システム、通信制御装置、方法、及びコンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術として、特許文献1は、移動体に搭載される移動通信機を開示する。移動通信機は、インフラ側の無線通信装置である路側通信機と無線通信する。移動通信機は、それが搭載される移動体の将来の挙動を予測する。移動通信機は、路側通信機が送信する周辺情報、及び移動体の今後の進行方向に関する方向情報に基づいて、移動体の将来の挙動を予測する。移動通信機は、予測結果に基づいて、無線通信における送信電力を調整する。移動通信機は、例えば、移動体が将来停止状態になると予測される停止モードでは、送信電力を低下させる。
【0003】
他の関連技術として、特許文献2は、通信制御装置を開示する。特許文献2に記載の通信制御装置は、少なくとも1つの路側通信機が無線送信を行う時間帯を時分割で割り当て、それ以外の時間帯を移動通信機による無線送信のために開放する。通信制御装置は、交通信号機の灯色に関する灯色情報を取得する。通信制御装置は、交通信号機が通行権を与える道路を移動する移動体に搭載された移動通信機に対する路側通信機の送信出力を、取得した交通信号機の灯色に対応して切り替える。通信制御装置は、交通信号機の灯色が赤の期間は、路側通信機の送信出力を通常より低下させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-219919号公報
【文献】特開2010-170241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、移動体において将来の挙動を予測し、移動通信機の送信電力を調整することを開示する。しかしながら、特許文献1には路側通信機の送信電力を調整することは開示されていない。一方、特許文献2は、交通信号機が赤信号の場合、路側通信機の送信出力を低下させることを開示する。この場合、車両が停止している期間、路側通信機の消費電力を削減できる。しかしながら、特許文献2において、実際に車道に車両が存在しているかどうかは判断されず、赤信号以外の期間において、路側通信機の消費電力を削減することはできない。
【0006】
本開示は、上記事情に鑑み、道路を走行する移動体と無線通信が可能に構成される路側の無線通信装置の消費電力を効果的に削減できる通信システム、通信制御装置、通信制御方法、及びコンピュータ可読媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示は、第1の態様として、通信制御装置を提供する。通信制御装置は、交差点に通じる車道に移動体が存在するか否かを判定する判定手段と、前記交差点に設置される信号機の灯火状態、及び前記判定手段の判定結果に基づいて、前記交差点を走行する移動体と無線通信が可能に構成される無線通信装置から出力される無線信号の送信出力を制御する制御手段とを含む。
【0008】
本開示は、第2の態様として、通信システムを提供する。通信システムは、交差点を走行する移動体と無線通信が可能に構成される無線通信装置と、前記無線通信装置を制御する通信制御装置とを有する。通信制御装置は、前記交差点に通じる車道に移動体が存在するか否かを判定する判定手段と、前記交差点に設置される信号機の灯火状態、及び前記判定手段の判定結果に基づいて、前記無線通信装置から出力される無線信号の送信出力を制御する制御手段とを含む。
【0009】
本開示は、第3の態様として、通信制御方法を提供する。通信制御方法は、交差点に設置される信号機の灯火状態を取得し、前記交差点に通じる車道に移動体が存在するか否かを判定し、前記信号機の灯火状態、及び前記交差点に通じる車道に移動体が存在するか否かの判定の結果に基づいて、前記交差点を走行する移動体と無線通信が可能に構成される無線通信装置から出力される無線信号の送信出力を制御することを含む。
【0010】
本開示は、第4の態様として、コンピュータ可読媒体を提供する。コンピュータ可読媒体は、交差点に設置される信号機の灯火状態を取得し、前記交差点に通じる車道に移動体が存在するか否かを判定し、前記信号機の灯火状態、及び前記交差点に通じる車道に移動体が存在するか否かの判定の結果に基づいて、前記交差点を走行する移動体と無線通信が可能に構成される無線通信装置から出力される無線信号の送信出力を制御する処理をプロセッサに実施させるためのプログラムを格納する。
【発明の効果】
【0011】
本開示に係る通信システム、通信制御装置、通信制御方法、及びコンピュータ可読媒体は、道路を走行する移動体と無線通信が可能に構成される路側の無線通信装置の消費電力を効果的に削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示に係る通信システムを概略的に示すブロック図。
【
図2】本開示の一実施形態に係る通信システムを示すブロック図。
【
図7】通信制御装置における動作手順を示すフローチャート。
【
図9】通信制御装置のハードウェア構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の実施の形態の説明に先立って、本開示の概要を説明する。
図1は、本開示に係る通信システムを概略的に示す。通信システム10は、通信制御装置20と、無線通信装置30とを有する。無線通信装置30は、交差点を走行する移動体と無線通信が可能に構成される。通信制御装置20は、無線通信装置30を制御する。
【0014】
通信制御装置20は、判定手段21、及び制御手段22を有する。判定手段21は、交差点に通じる車道に移動体が存在するか否かを判定する。制御手段22は、交差点に設置される信号機の灯火状態、及び判定手段21の判定結果に基づいて、無線通信装置30から出力される無線信号の送信出力を制御する。
【0015】
本開示では、制御手段22は、信号機の灯火状態、及び交差点に移動体が存在するか否かの判定結果に基づいて、交差点において移動体と通信する無線通信装置30から出力される無線信号の送信出力を制御する。本開示では、制御手段22は、例えば灯火状態が進行不可を示す場合、又は判定結果が車道に移動体が存在しないことを示す場合、送信出力を低下させることができる。本開示では、通信制御装置20は、移動体との通信が重要ではない場合に無線通信装置30の送信電力を削減することができ、無線通信装置30の消費電力を効果的に削減できる。
【0016】
以下、本開示の実施の形態を詳細に説明する。
図2は、本開示の一実施形態に係る通信システムを示す。通信システム100は、通信制御装置110、複数の路側機(路側機A-D)130A-130D、信号制御盤150、及びカメラ170を有する。通信システム100は、
図1に示される通信システム10に対応する。通信制御装置110は、
図1に示される通信制御装置20に対応する。路側機130A-130Dは、
図1に示される無線通信装置30に対応する無線通信装置を含む。
【0017】
なお、
図2には、1つの交差点における通信システム100の構成が示されているものとする。複数の交差点において、通信制御装置110、複数の路側機130、信号制御盤150、及びカメラ170が設置されてもよい。複数の交差点に設置される通信制御装置110は、互いに連携して動作してもよい。
【0018】
路側機(RSU:Roadside Unit)130A-130Dは、それぞれ交差点などの移動体が通行する道路に設置される。路側機130A-130Dは、例えば1つの交差点に設置される。路側機130A-130Dは、例えば信号機などの路上設備に搭載される。路側機130A-130Dは、交差点を走行する移動体と無線通信が可能に構成される。移動体は、例えば自動車、バス、タクシー、二輪車などの陸上車両を含む。
【0019】
なお、以下では、特に区別が必要ない場合、路側機130A-130Dは総称して路側機130とも呼ばれる。各路側機130は、移動体(車載通信装置)との間で路車間通信(V2I(Vehicle-to-roadside-Infrastructure)通信)を行う。また、各路側機130は、歩行者が所持する端末装置との間で、無線通信(Uu通信)を行うことができる。
【0020】
信号制御盤150は、交差点において、信号機を制御する。信号制御盤150は、例えばあらかじめ定められた信号サイクルに従って、交差点に設置された各信号機を制御する。信号制御盤150は、ネットワークを介して図示しない交通管制センタなどに接続され、交通管制センタから送信される指示に従って各信号機を制御してもよい。
【0021】
カメラ170は、交差点付近において、車道を撮影する撮像装置である。カメラ170は、路側機130が設置される交差点に配置される。なお、カメラ170の台数は1台には限定されず、1つの交差点に複数のカメラ170が設置されてもよい。
【0022】
通信制御装置110は、各路側機130、信号制御盤150、及びカメラ170に接続される。通信制御装置110は、信号制御盤150から取得した情報、及びカメラ170から取得した映像を用いて、路側機130を制御する。通信制御装置110は、例えば各交差点に設置される。通信制御装置110は、例えば各交差点において、その交差点に設置される路側機130のグループを制御する。通信制御装置110は、交差点から離れた遠隔地に設置されてもよい。その場合、通信制御装置110は、ネットワークを介して路側機130を制御してもよい。
【0023】
図3は、通信制御装置110の構成例を示す。通信制御装置110は、灯火状態取得部111、判定部112、及び通信制御部113を有する。通信制御装置110は、例えばプロセッサとメモリとを有する装置として構成される。通信制御装置110内の各部の機能の少なくとも一部は、プロセッサがメモリから読み出したプログラムに従って処理を実行することで実現され得る。
【0024】
灯火状態取得部111は、路側機130が設置される交差点の信号機の灯火状態を取得する。灯火状態取得部111は、例えば信号制御盤150から、信号機の灯火状態を取得する。灯火状態取得部111は、取得した信号機の灯火状態を通信制御部113に出力する。
【0025】
灯火状態取得部111は、カメラ170を用いて撮影された画像に対して画像解析を行い、信号機の灯火状態を取得してもよい。例えば、カメラ170の映像は信号機の映像を含み、灯火状態取得部111は、信号機の映像から、どの色が点灯しているかを判断してもよい。灯火状態取得部111は、ネットワークを介して、交通管制センタなどから信号機の灯火状態を取得してもよい。
【0026】
判定部112は、交差点に通じる車道に移動体が存在するか否かを判定する。別の言い方をすると、判定部112は、交差点に通じる車道に存在する移動体を検知する。判定部112は、例えば、カメラ170(
図2を参照)から出力される映像を用いて、車道に移動体が存在するか否かを判定してもよい。判定部112は、車道に移動体が存在する場合、その旨を示す判定結果(検知結果)を通信制御部113に出力する。
【0027】
判定部112は、更に、カメラ170から出力される映像などを用いて、交差点付近において、歩行者が通行する歩道などの領域に歩行者が存在するか否かを判定してもよい。判定部112は、歩道に歩行者が存在する場合、その旨を示す判定結果を通信制御部113に出力する。判定部112は、
図1に示される判定手段21に対応する。
【0028】
通信制御部113は、灯火状態取得部111が取得した信号機の灯火状態、及び判定部の判定結果に基づいて、路側機130から出力される無線信号の送信出力を制御する。通信制御部113は、例えば、信号機の灯火状態が進行不可を示し、かつ車道に移動体が存在しないと判定されている場合、灯火状態が進行可を示しかつ車道に移動体が存在すると判定されている場合に比べて、車道に出力される無線信号の送信出力を低下させる。ここで、信号機の灯火状態が進行不可を示すとは、例えば、信号機の灯火状態が「赤」又は「黄色」であることを意味する。あるいは、信号機の灯火状態が進行不可を示すとは、ある進行方向において、信号機の灯火状態が「赤」又は「黄色」であり、かつ「青色の灯火の矢印」又は「黄色の灯火の矢印」が点灯していない状態を意味する。通信制御部113は、例えば、路側機130から出力される無線信号の振幅、及び帯域幅の少なくとも一方を変化させることで、路側機130の送信出力を変化させてもよい。通信制御部113は、例えば路側機130の送信出力を、「高」又は「低」に制御する。
【0029】
通信制御部113は、車道に移動体が存在すると判定されている場合と、車道に移動体が存在しないと判定されている場合とで、路側機130から出力される無線信号の出力方向を変更してもよい。例えば、通信制御部113は、車道に移動体が存在すると判定されている場合、交差点に通じる道路において車道の領域に無線信号を出力する。通信制御部113は、車道に移動体が存在しないと判定されている場合、交差点に通じる道路において歩道に無線信号を出力する。通信制御部113は、車道に移動体が存在しないと判定され、かつ、歩道に歩行者が存在しないと判定されている場合、無線信号の送信出力を停止してもよい。通信制御部113は、
図1に示される制御手段22に対応する。
【0030】
図4は、路側機130が配置される交差点を模式的に示す。この例において、交差点には、信号機(信号機A-D)201A-201Dの4つの信号機が配置される。信号機201A及び201Bは、例えば南北方向(第1の方向)に走行する移動体の通行を制御する。信号機201C及び201Dは、例えば東西方向(第2の方向)に走行する移動体の通行を制御する。なお、以下では、特に区別が必要ない場合、信号機201A-201Dは、総称して信号機201とも呼ばれる。1つの交差点に設置される信号機201の数は4つには限定されない。
【0031】
路側機130Aは信号機201Aに対応して配置され、路側機130Bは信号機201Bに対応して配置される。路側機130A及び路側機130Bは、交差点を南北方向に走行する移動体と無線通信が可能に構成される無線通信装置(第1の無線通信装置)である。路側機130Aは、道路205Aを走行する移動体と無線通信が可能に構成される。路側機130Bは、道路205Bを走行する移動体と無線通信が可能に構成される。
【0032】
路側機130Cは信号機201Cに対応して配置され、路側機130Dは信号機201Dに対応して配置される。路側機130C及び路側機130Dは、交差点を東西方向に走行する移動体と無線通信が可能に構成される無線通信装置(第2の無線通信装置)である。路側機130Cは、道路205Cを走行する移動体と無線通信が可能に構成される。路側機130Dは、道路205Dを走行する移動体と無線通信が可能に構成される。なお、以下において、特に区別が必要ない場合、道路205A-205Dは、総称して道路205とも呼ばれる。
【0033】
図4において、カメラ170(
図2を参照)は図示が省略されている。各信号機201にはカメラ170が設置されていてもよい。例えば、信号機201Aに設置されるカメラ170は、道路205Aを撮影する。信号機201Bに設置されるカメラ170は、道路205Bを撮影する。信号機201Cに設置されるカメラ170は、道路205Cを撮影する。信号機201Dに設置されるカメラ170は、道路205Dを撮影する。
【0034】
通信制御装置110において、灯火状態取得部111は、南北方向の交通を制御する信号機201A及び201Bの灯火状態と、東西方向の交通を制御する信号機201C及び201Dの灯火状態を取得する。また、判定部112は、例えば各信号機201に設置されるカメラ170の映像を用いて、道路205A-205Dに移動体が存在するか否かを判定する。通信制御部113は、交差点において、どの方向が進行不可であるか、及び道路205A-205Dに移動体が存在するか否かに応じて、路側機130A-130Dの送信出力を制御する。
【0035】
例えば、通信制御部113は、信号機201の灯火状態が、南北方向において進行不可を示すか否か、及び、東西方向において進行不可を示すか否かに応じて、路側機130A及び130Bの送信出力と、路側機130C及び130Dの送信出力とを制御する。通信制御部113は、信号機201A及び201Bの灯火状態が進行不可を示す場合、路側機130A及び130Bの送信出力を「低」に制御する。通信制御部113は、信号機201C及び201Dの灯火状態が進行可を示し、かつ道路205C及び205Dの少なくとも一方に移動体が存在する場合、路側機130C及び130Dの送信出力を「高」に制御する。この場合、路側機130A及び130Bの送信出力は、路側機130C及び130Dの送信出力より低くなる。通信制御部113は、信号機201C及び201Dの灯火状態が進行可を示す場合であっても、道路205C及び205Dの何れにも移動体が存在しない場合、路側機130C及び130Dの送信出力を「低」に制御する。
【0036】
また、通信制御部113は、信号機201C及び201Dの灯火状態が進行不可を示す場合、路側機130C及び130Dの送信出力を「低」に制御する。通信制御部113は、信号機201A及び201Bの灯火状態が進行可を示し、かつ道路205A及び205Bの少なくとも一方に移動体が存在する場合、路側機130A及び130Bの送信出力を「高」に制御する。この場合、路側機130C及び130Dの送信出力は、路側機130A及び130Bの送信出力より低くなる。通信制御部113は、信号機201A及び201Aの灯火状態が進行可を示す場合であっても、道路205A及び205Bの何れにも移動体が存在しない場合、路側機130A及び130Bの送信出力を「低」に制御する。
【0037】
通信制御部113は、道路205に移動体が存在するか否かに応じて、路側機130が無線信号を出力する方向(通信範囲)を変化させてもよい。
図5及び
図6は、それぞれ、路側機130Aの通信範囲を模式的に示す。ここでは、例として、路側機130の通信範囲の変化を説明する。通信制御装置110の判定部112は、道路205Aに移動体が存在するか否かを判定する。通信制御部113は、道路205Aに移動体が存在する場合、
図5に示されるように、路側機130Aの無線信号の出力方向を、道路205Aに制御する。この場合、路側機130Aは、道路205Aにおいて、通信範囲131Aに存在する移動体との間で無線通信を行うことができる。
【0038】
通信制御部113は、道路205Aに移動体が存在しない場合、
図6に示されるように、路側機130Aの無線信号の出力方向を、車道以外の領域、例えば歩道の領域に制御する。この場合、路側機130Aは、信号機201Aの近辺において、歩道を含む通信範囲132Aに存在する歩行者などの人が所持する携帯端末との間で無線通信を行うことができる。通信制御部113は、信号機201Aの灯火状態が進行不可を示す場合も、同様に、路側機130Aが無線信号の出力方向を歩道の領域に制御してもよい。
【0039】
続いて、動作手順を説明する。
図7は、通信制御装置110における動作手順(通信制御方法)を示す。灯火状態取得部111は、信号機201(
図4を参照)の灯火状態を取得する(ステップS1)。判定部112は、道路205に移動体が存在するか否かを判定する(ステップS2)。例えば、灯火状態取得部111は、交差点において、移動体の通行方向ごとに、信号の灯火状態を取得する。また、判定部112は、通行方向ごとに、道路205に移動体が存在するか否かを判定する。
【0040】
通信制御部113は、ステップS1で取得された信号機201の灯火状態、及びステップS2の判定結果に基づいて、路側機130から出力される無線信号の送信出力を制御する(ステップS3)。通信制御部113は、例えば、灯火状態が進行可を示し、かつ道路205に移動体が存在すると判定されている場合、路側機130の送信出力を「高」に制御する。通信制御部113は、例えば、灯火状態が進行不可を示すか、又は、道路205に移動体が存在しないと判定されている場合、路側機130の送信出力を「低」に制御する。
【0041】
例えば2つの通行方向が交差する交差点において、第1の通行方向の灯火状態が進行可を示す場合、第2の通行方向の灯火状態は進行不可を示す。その場合、第2の通行方向の道路において、移動体は停車していると考えられる。路側機130は、停車中の移動体とは無線通信を行う必要がない場合がある。本実施形態において、通信制御部113は、信号機の灯火状態が進行不可を示す方向の路側機130の送信出力を低下させる。あるいは、通信制御部113は、路側機130の無線送信を停止させる。このようにすることで、移動体が停車している通行方向において、路側機130の消費電力を抑制することができる。
【0042】
本実施形態では、通信制御部113は、信号機201の灯火状態に加えて、道路に移動体が存在するか否かの判定結果に基づいて、路側機130の送信出力を制御する。道路に移動体が存在しない場合、路側機130は通信相手がいないため、送信出力を停止した場合でも特に問題は生じないと考えられる。本実施形態は、移動体が存在しない場合に、路側機130の送信出力を低下させる、或いは無線送信を停止させることで、路側機130の消費電力を抑制することができる。
【0043】
本実施形態は、移動体が存在しない、或いは移動体が停車している場合に、路側機130の送信出力を低下させることで、路側機130の無駄な電力消費を削減することができる。交差点において、路側機130、信号制御盤150、及びカメラ170は、同一の電源装置から電源供給を受けることが考えられる。本実施形態では、路側機130の消費電力を抑制できるため、交差点に設置される電源装置の電源容量を削減できる効果も期待できる。
【0044】
なお、上記実施形態において、通信制御部113は、信号機の灯火状態が第1の通行方向において進行可を示す場合、第1の通行方向に対応する路側機130が無線信号を出力する方向を、第1の通行方向に制御してもよい。また、通信制御部113は、信号機の灯火状態が第2の通行方向において進行可を示す場合、第2の通行方向に対応する路側機130が無線信号を出力する方向を、第2の通行方向に制御してもよい。
【0045】
図8は、路側機130A及び130Bの通信範囲を模式的に示す。
図8において、南北方向の交通を制御する信号機201A及び201Bの灯火状態は進行可を示しているものとする。その場合、路側機130A及び130Bは、南北方向に伸びる通信範囲133に無線信号の出力方向を向ける。南北方向に伸びる通信範囲133は、既存のビームフォーミング技術を用いて実現されてもよい。その場合、路側機130A及び130Bは、道路205A及び205Bを走行する移動体の移動方向に沿った通信範囲133で、移動体と無線通信することができる。
【0046】
続いて、通信制御装置110のハードウェア構成を説明する。
図9は、通信制御装置110のハードウェア構成を示す。通信制御装置110は、プロセッサ(CPU:Central Processing Unit)501、ROM(read only memory)502、及びRAM(random access memory)503を有する。通信制御装置110において、プロセッサ501、ROM502、及びRAM503は、バス504を介して相互に接続される。通信制御装置110は、図示は省略するが、周辺回路、通信回路、及びインタフェース回路などの他の回路を含み得る。
【0047】
ROM502は、不揮発性の記憶装置である。ROM502には、例えば比較的容量が少ないフラッシュメモリなどの半導体記憶装置が用いられる。ROM502は、プロセッサ501が実行するプログラムを格納する。
【0048】
上記プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体を用いて格納され、通信制御装置110に供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記憶媒体を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、例えば磁気記録媒体、光磁気記録媒体、光ディスク媒体、及び半導体メモリを含む。磁気記録媒体は、例えば、フレキシブルディスク、磁気テープ、又はハードディスクなどの媒体を含む。光磁気記録媒体は、例えば光磁気ディスクなどの媒体を含む。光ディスク媒体は、CD(compact disc)、又はDVD(digital versatile disk)などのディスク媒体を含む。半導体メモリは、マスクROM、PROM(programmable ROM)、EPROM(erasable PROM)、フラッシュROM、又はRAMなどのメモリを含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体を用いて通信制御装置110に供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバなどの有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムを通信制御装置110に供給できる。
【0049】
RAM503は、揮発性の記憶装置である。RAM503には、DRAM(Dynamic Random Access Memory)又はSRAM(Static Random Access Memory)などの各種半導体メモリデバイスが用いられる。RAM503は、データなどを一時的に格納する内部バッファとして用いられ得る。
【0050】
プロセッサ501は、ROM502に格納されたプログラムをRAM503に展開し、プログラムを実行する。CPU501がプログラムを実行することで、通信制御装置110内の各部の機能が実現され得る。
【0051】
以上、本開示の実施形態を詳細に説明したが、本開示は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に対して変更や修正を加えたものも、本開示に含まれる。
【0052】
例えば、上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
【0053】
[付記1]
交差点に通じる車道に移動体が存在するか否かを判定する判定手段と、
前記交差点に設置される信号機の灯火状態、及び前記判定手段の判定結果に基づいて、前記交差点を走行する移動体と無線通信が可能に構成される無線通信装置から出力される無線信号の送信出力を制御する制御手段とを備える通信制御装置。
【0054】
[付記2]
前記制御手段は、前記灯火状態が進行不可を示す場合、又は前記判定結果が前記車道に移動体が存在しないことを示す場合、前記灯火状態が進行可を示し、かつ前記判定結果が前記車道に移動体が存在することを示す場合に比べて、前記車道に出力される無線信号の送信出力を低下させる付記1に記載の通信制御装置。
【0055】
[付記3]
前記制御手段は、前記判定結果が前記車道に移動体が存在することを示す場合と、前記判定結果が前記車道に移動体が存在しないことを示す場合とで、前記無線信号の出力方向を変更する付記1又は2に記載の通信制御装置。
【0056】
[付記4]
前記制御手段は、前記判定結果が前記車道に移動体が存在することを示す場合、前記交差点に通じる道路において車道の領域に無線信号を出力し、前記判定結果が前記車道に移動体が存在しないことを示す場合、前記交差点に通じる道路において歩行者が通行する領域に無線信号を出力する付記1から3何れか1つに記載の通信制御装置。
【0057】
[付記5]
前記判定手段は、前記歩行者が通行する領域に歩行者が存在するか否かを判定し、
前記制御手段は、前記判定結果が、前記車道に移動体が存在しないことを示し、かつ前記歩行者が通行する領域に歩行者が存在しないことを示す場合、前記無線信号の送信出力を停止する付記4に記載の通信制御装置。
【0058】
[付記6]
前記無線通信装置は、前記交差点を第1の方向に走行する移動体と通信が可能に構成される第1の無線通信装置と、前記交差点を、前記第1の方向と交差する第2の方向に走行する移動体と通信が可能に構成される第2の無線通信装置を含み、
前記制御手段は、前記灯火状態が前記第1の方向において進行不可を示すか否か、及び、前記第2の方向において進行不可を示すか否かに応じて、前記第1の無線通信装置、及び前記第2の無線通信装置の無線信号の送信出力を制御する付記1から5何れか1つに記載の通信制御装置。
【0059】
[付記7]
前記制御手段は、前記灯火状態が前記第1の方向において進行不可を示し、かつ前記第2の方向において進行可を示し、前記判定結果が前記第2の方向において車道に移動体が存在することを示す場合、前記第1の無線通信装置の無線信号の送信出力を、前記第2の無線通信装置の無線信号の送信出力より低下させる付記6に記載の通信制御装置。
【0060】
[付記8]
前記制御手段は、更に、前記灯火状態が前記第1の方向において進行可を示す場合、前記第1の無線通信装置が無線信号を出力する方向を前記第1の方向に制御し、前記灯火状態が前記第2の方向において進行可を示す場合、前記第2の無線通信装置が無線信号を出力する方向を前記第2の方向に制御する付記6又は7に記載の通信制御装置。
【0061】
[付記9]
前記制御手段は、前記無線信号の振幅、及び帯域幅の少なくとも一方を変化させることで、前記無線信号の送信出力を変化させる付記1から8何れか1つに記載の通信制御装置。
【0062】
[付記10]
前記判定手段は、前記車道を撮影する撮像装置が出力する映像を用いて、前記車道に移動体が存在するか否かを判定する付記1から9何れか1つに記載の通信制御装置。
【0063】
[付記11]
交差点を走行する移動体と無線通信が可能に構成される無線通信装置と、
前記無線通信装置を制御する通信制御装置とを備え、
前記通信制御装置は、
前記交差点に通じる車道に移動体が存在するか否かを判定する判定手段と、
前記交差点に設置される信号機の灯火状態、及び前記判定手段の判定結果に基づいて、前記無線通信装置から出力される無線信号の送信出力を制御する制御手段とを備える、通信システム。
【0064】
[付記12]
前記制御手段は、前記灯火状態が進行不可を示す場合、又は前記判定結果が前記車道に移動体が存在しないことを示す場合、前記灯火状態が進行可を示し、かつ前記判定結果が前記車道に移動体が存在することを示す場合に比べて、前記車道に出力される無線信号の送信出力を低下させる付記11に記載の通信システム。
【0065】
[付記13]
前記車道を撮影する撮像装置を更に有し、
前記判定手段は、前記撮像装置が出力する映像を用いて、前記車道に移動体が存在するか否かを判定する付記11又は12に記載の通信システム。
【0066】
[付記14]
交差点に設置される信号機の灯火状態を取得し、
前記交差点に通じる車道に移動体が存在するか否かを判定し、
前記信号機の灯火状態、及び前記交差点に通じる車道に移動体が存在するか否かの判定の結果に基づいて、前記交差点を走行する移動体と無線通信が可能に構成される無線通信装置から出力される無線信号の送信出力を制御する通信制御方法。
【0067】
[付記15]
交差点に設置される信号機の灯火状態を取得し、
前記交差点に通じる車道に移動体が存在するか否かを判定し、
前記信号機の灯火状態、及び前記交差点に通じる車道に移動体が存在するか否かの判定の結果に基づいて、前記交差点を走行する移動体と無線通信が可能に構成される無線通信装置から出力される無線信号の送信出力を制御する処理をプロセッサに実施させるためのプログラムを格納する非一時的なコンピュータ可読媒体。
【符号の説明】
【0068】
10:通信システム
20:通信制御装置
21:判定手段
22:制御手段
30:無線通信装置
100:通信システム
110:通信制御装置
111:灯火状態取得部
112:判定部
113:通信制御部
130:路側機
150:信号制御盤
170:カメラ
201:信号機
205:道路
501:プロセッサ
502:ROM
503:RAM
504:バス