(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】多相モータ用絶縁構造及び多相モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/34 20060101AFI20240910BHJP
H02K 3/50 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
H02K3/34 D
H02K3/50 A
(21)【出願番号】P 2023518683
(86)(22)【出願日】2022-04-28
(86)【国際出願番号】 JP2022019378
(87)【国際公開番号】W WO2022234825
(87)【国際公開日】2022-11-10
【審査請求日】2023-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2021078882
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森野 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】石原 幹三
【審査官】稲葉 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-204647(JP,A)
【文献】特開2003-134758(JP,A)
【文献】特開2018-117469(JP,A)
【文献】特開2000-209802(JP,A)
【文献】特開2011-036093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/34
H02K 3/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ部を備えるとともに、前記ステータ部においてステータコアと多相コイルとが設けられる多相モータに用いられ、
前記多相コイルにおける前記ステータコアの端部よりも突出した複数のコイルエンドをまとめて覆う被覆部を備え、
前記被覆部は、複数の前記コイルエンドの位置関係を定めて保持し、絶縁材料を含んで構成され、
各相のコイル部を並列に接続する複数の導電部が前記被覆部に一体化されており、
前記被覆部は、前記ステータコアの環状の端部に沿って環状に設けられ、
前記被覆部には、軸方向に貫通する複数の孔が、周方向に並んで設けられ、
各相の前記コイル部は、複数の前記孔にそれぞれ挿通され、前記軸方向一方側に突出する一端を有し、
前記被覆部から前記軸方向一方側に立ち上がる基部を備え、
前記基部は、複数の前記導電部を外周側から露出させて一体的に保持し、
各相の前記コイル部の前記一端は、複数の前記導電部における前記基部から露出する部分のそれぞれに外側から接触して電気的に接続される
多相モータ用絶縁構造。
【請求項3】
前記多相コイルに電気的に接続される複数の電力端子を保持し、絶縁材料を含んで構成される端子保持部を有し、
前記端子保持部は、前記被覆部に付設されている
請求項1に記載の多相モータ用絶縁構造。
【請求項4】
前記端子保持部は、インバータの出力側のコネクタと接続され、
前記電力端子と前記インバータの出力端子が電気的に接続される
請求項3に記載の多相モータ用絶縁構造。
【請求項5】
第1相のコイル部、第2相のコイル部、及び第3相のコイル部を並列に接続する導電部が前記被覆部に一体化されている
請求項1又は請求項3に記載の多相モータ用絶縁構造。
【請求項6】
前記被覆部は、前記ステータ部に対して着脱可能である
請求項1又は請求項3に記載の多相モータ用絶縁構造。
【請求項7】
請求項1又は請求項3に記載の多相モータ用絶縁構造が用いられる多相モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多相モータ用絶縁構造及び多相モータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示される回転電機に用いるステータは、ステータ部と、ステータ部に巻装されるセグメントコイルと、を備えている。セグメントコイルは、三相のセグメントコイルとして構成されている。セグメントコイルは、ステータコアから軸方向一方側に張り出すコイルエンドを有する。コイルエンドは、粉体を用いた絶縁処理が施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるステータの構造では、各コイルエンドを絶縁処理するために、各コイルエンドに粉体を塗装等する製造工程が必要となる。そのため、コイルエンド間における塗装の均一性等、製造上の精度等が求められることになる。そこで、容易に複数のコイルエンドの絶縁性を確保し得る絶縁構造が求められている。
【0005】
本開示は、容易に複数のコイルエンドの絶縁性を確保し得ることを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一つである多相モータに用いる絶縁構造は、
ステータ部を備えるとともに、前記ステータ部においてステータコアと多相コイルとが設けられる多相モータに用いられ、
前記多相コイルにおける前記ステータコアの端部よりも突出した複数のコイルエンドをまとめて覆い、複数の前記コイルエンドの位置関係を定めて保持し、絶縁材料を含んで構成される被覆部を備える。
【0007】
本開示の一つである多相モータは、上記多相モータ用絶縁構造が用いられる。
【発明の効果】
【0008】
本開示は、容易に複数のコイルエンドの絶縁性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の第1実施形態のモータの分解斜視図である。
【
図2】回転角センサ及び接続コネクタが組み付けられたステータ部を示す斜視図である。
【
図3】
図2に示す回転角センサ、接続コネクタ、及びステータ部の一部を示す側面図である。
【
図4】
図2に示す回転角センサ、接続コネクタ、及びステータ部を示す側方から見た断面図である。
【
図5】接続コネクタを軸方向一方側から見た斜視図である。
【
図6】接続コネクタを軸方向他方側から見た斜視図である。
【
図9】
図8とは異なる方向から見た接続コネクタの側面図である。
【
図10】モータの組立工程の流れを説明する説明図である。
【
図11】
図10に続くモータの組立工程の流れを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、本開示の実施形態が列記されて例示される。なお、以下で例示される〔1〕~〔6〕の特徴は、矛盾しない範囲でどのように組み合わされてもよい。
【0011】
〔1〕ステータ部を備えるとともに、前記ステータ部においてステータコアと多相コイルとが設けられる多相モータに用いられ、
前記多相コイルにおける前記ステータコアの端部よりも突出した複数のコイルエンドをまとめて覆い、複数の前記コイルエンドの位置関係を定めて保持し、絶縁材料を含んで構成される被覆部を備える多相モータ用絶縁構造。
【0012】
この多相モータ用絶縁構造において、被覆部は、複数のコイルエンドの位置関係を定めて保持する構成であるため、複数のコイルエンドに対して一括して組み付けることができる。そして、被覆部は、絶縁材料を含んで構成され、複数のコイルエンドをまとめて覆う構成であるため、複数のコイルエンドの絶縁性を確保することができる。したがって、多相モータ用絶縁構造は、被覆部でステータコアの端部側を覆うことで、容易に複数のコイルエンドの絶縁性を確保することができる。
【0013】
〔2〕本開示の多相モータ用絶縁構造において、前記被覆部は、前記ステータコアの環状の端部に沿って環状に設けられ得る。
この構成によれば、被覆部を安定してステータ部に固定することができる。
【0014】
〔3〕本開示の多相モータ用絶縁構造は、前記多相コイルに電気的に接続される複数の電力端子を保持し、絶縁材料を含んで構成される端子保持部を有し得る。前記端子保持部は、前記被覆部に付設され得る。
この構成によれば、多相モータ用絶縁構造を電力端子の保持構造として機能させることができる。
【0015】
〔4〕本開示の多相モータ用絶縁構造において、前記端子保持部は、インバータの出力側のコネクタと接続され得る。前記電力端子と前記インバータの出力端子が電気的に接続され得る。
この構成によれば、電力端子を保持する端子保持部がインバータの出力側のコネクタと接続されるため、多相モータとインバータの間における電力端子を保持する機構を減らすことができる。
【0016】
〔5〕本開示の多相モータ用絶縁構造において、第1相のコイル部、第2相のコイル部、及び第3相のコイル部を並列に接続する導電部が前記被覆部に一体化され得る。
この構成によれば、導電部を保持するように被覆部を機能させることができ、導電部を多相モータ用絶縁構造に組み込むことができる。
【0017】
〔6〕本開示の多相モータ用絶縁構造において、前記被覆部は、前記ステータ部に対して着脱可能にし得る。
この構成によれば、絶縁部材がステータ部に溶着等により着脱不能となる構成に比べて、コイルエンド38に対する絶縁処理を容易に行うことができるようになる。
【0018】
〔7〕本開示の多相モータは、〔1〕から〔6〕のいずれかに記載の多相モータ用絶縁構造が用いられる。
この構成によれば、〔1〕から〔6〕のいずれかと同様の効果を奏する多相モータを実現できる。
【0019】
<第1実施形態>
1.モータの構成
第1実施形態のモータ10は、多相交流電源を利用する多相モータである。モータ10は、
図1に示すように、ハウジング11と、エンドカバー13と、ステータ部21と、ロータ部23と、接続コネクタ25と、回転角センサ27と、フランジ29と、を備えている。本発明の「多相モータ用絶縁構造」は、モータ10に用いられる絶縁構造であり、一例として接続コネクタ25に適用されている。
【0020】
ハウジング11は、軸方向の一端に開口を有する有底円筒状である。エンドカバー13は、ハウジング11の開口を塞ぐように、ハウジング11に組み付けられる。ハウジング11内には、ステータ部21、ロータ部23、接続コネクタ25、回転角センサ27、及びフランジ29が収容される。ハウジング11には、後述する接続コネクタ25の電力端子41A,42A,43A及びソケット77が露出する接続開口11Aが設けられている。回転角センサ27は、センサコネクタ28を介して接続コネクタ25に接続されている。
【0021】
2.ステータ部の構成
ステータ部21は、ハウジング11の内側に固定されている。ロータ部23は、ステータ部21の内側に回転可能に配置されている。接続コネクタ25は、
図2に示すように、軸方向一方側からステータ部21に組み付けられている。ここで、
図1の矢印で示すように、モータ10においてハウジング11の開口が設けられる側を「軸方向一方側」とし、「軸方向一方側」とは反対側を「軸方向他方側」とする。接続コネクタ25は、例えばインバータから供給される電流をステータ部21の多相コイル32に駆動電流として供給する。回転角センサ27は、いわゆるレゾルバであり、ロータ部23の回転角度を検出する。回転角センサ27は、軸方向一方側からフランジ29に支持されている。フランジ29は、接続コネクタ25を覆い、軸方向一方側からロータ部23を回転可能に支持している。
【0022】
ステータ部21は、
図2~
図4に示すように、ステータコア31と、多相コイル32と、を有している。ステータコア31は、円筒状の電磁鋼板がステータ部21の軸方向に積層されて構成されている。ステータコア31は、
図4に示すように、ヨーク33と、複数のティース34と、を具備している。ヨーク33は、ステータ部21の周方向に沿って延びる環状の形態である。ティース34は、ヨーク33の内周面から径方向内側へ突出している。複数のティース34は、周方向に互いに間隔をおいて配置されている。隣接するティース34の間には、スロット35が形成されている。
【0023】
多相コイル32は、三相のセグメントコイルとして構成されている。なお、
図1~
図4,
図8では、多相コイル32の構成を簡略化して示している。多相コイル32には、
図2,
図3に示すように、第1相(U相)のコイル部36U,37U、第2相(V相)のコイル部36V,37V、及び第3相(W相)のコイル部36W,37Wと、が含まれている。以下、コイル部36U,36V,36W,37U,37V,37Wを簡略化した図で説明するが、コイル部36U,36V,36W,37U,37V,37Wの具体的な構成は以下で説明する構成に限定されない。
【0024】
コイル部36U,36V,36W,37U,37V,37Wは、それぞれ複数のスロット35を通るように複数のティース34に装着されている。コイル部36U,36V,36W,37U,37V,37Wは、
図2,
図3に示すように、それぞれステータコア31から軸方向一方側に突出する一端36UA,36VA,36WA,37UA,37VA,37WAを備えている。一端36UA,36VA,36WA,37UA,37VA,37WAは、
図2に示すように、それぞれ後述する導電部41B,42B,43B,41C,42C,43Cに外側から接触して電気的に接続される。図示を省略するが、コイル部36Uの他端とコイル部37Uの他端、コイル部36Vの他端とコイル部37Vの他端、コイル部36Wの他端とコイル部37Wの他端は、それぞれ中性線バスバー(図示略)を介して電気的に接続されている。各中性線バスバーは、中性点で電気的に接続されている。
【0025】
多相コイル32は、
図1~
図4に示すように、ステータコア31の端部よりも突出した複数のコイルエンド38を備えている。複数のコイルエンド38は、ステータコア31から軸方向一方側に張り出している。各コイルエンド38は、コイル部36U,36V,36W,37U,37V,37Wのいずれかにおける、ステータコア31から軸方向一方側に張り出す部分によって構成されている。複数のコイルエンド38は、ステータコア31の周方向に沿って2列に並んで配置されている。
【0026】
3.センサコネクタの構成
回転角センサ27と接続コネクタ25との間には、
図5~
図9に示すように、センサコネクタ28が設けられている。センサコネクタ28は、回転角センサ27の検出信号を外部に出力するコネクタである。
図7に示すように、センサコネクタ28は、信号線(図示略)と、センサ側接続部28Aと、出力側接続部28Bと、を具備している。センサ側接続部28Aは、回転角センサ27に接続されるソケットである。出力側接続部28Bは、後述する保持部70の入力側ソケット部77Aに組み付けられる。出力側接続部28Bが入力側ソケット部77Aに組み付けられることで、センサコネクタ28の信号線が後述する接続コネクタ25の信号端子51(
図7参照)に接続される。
【0027】
4.接続コネクタの構成
接続コネクタ25は、
図2~
図4に示すように、ステータ部21に固定されている。接続コネクタ25は、インバータに接続され、インバータから供給される駆動電流を多相コイル32に供給する。接続コネクタ25は、
図5~
図9に示すように、3つのバスバー41,42,43と、信号端子51(
図7参照)と、サーミスタ60と、保持部70と、を備えている。
【0028】
バスバー41は、インバータと多相コイル32との間に介在する導電路である。バスバー41は、
図5~
図8に示すように、電力端子41Aと、導電部41B,41Cと、を有している。電力端子41Aは、インバータの出力端子に電気的に接続される。導電部41B,41Cは、電力端子41Aから分岐するように延出している。電力端子41Aは、導電部41B,41Cを介して、第1相(U相)のコイル部36U,37Uに電気的に接続される。導電部41B,41Cは、第1相のコイル部36U,37Uを電力端子41Aに対して並列に接続する。
【0029】
バスバー42は、バスバー41と同様の構成であり、
図5~
図8に示すように、電力端子42Aと、導電部42B,42Cと、を有している。導電部42B,42Cは、第2相のコイル部36V,37Vをバスバー42に並列に接続する部分である。電力端子42Aは、導電部42B,42Cを介して、コイル部36V,37Vに電気的に接続される。
【0030】
バスバー43は、バスバー41と同様の構成であり、
図5~
図8に示すように、電力端子43Aと、導電部43B,43Cと、を有している。電力端子43Aは、接続コネクタ25がインバータの出力側のコネクタと接続された状態で、インバータの出力端子と電気的に接続される。導電部43B,43Cは、第3相のコイル部36W,37Wをバスバー43に並列に接続する部分である。電力端子43Aは、導電部43B,43Cを介して、コイル部36W,37Wに電気的に接続される。
【0031】
信号端子51は、回転角センサ27からの信号を伝送する端子である。信号端子51は、一例として
図7に開示されるが、図示される構成に限定されない。信号端子51は、後述する保持部70(端子保持部72)に保持されている。信号端子51の一端は、センサコネクタ28の信号線(図示略)に接続される。信号端子51の他端は、例えば外部ソケットの端子に接続される。
【0032】
サーミスタ60は、多相コイル32の温度を検出する。
図7に示すように、サーミスタ60のリード線の一端61は、第3相(W相)の導電部43Cに接触している。サーミスタ60のリード線の他端62は、センサコネクタ28のソケット77内に配されている。
【0033】
保持部70は、
図5~
図9に示すように、3つのバスバー41,42,43、信号端子51、及びサーミスタ60を一体的に保持している。より具体的には、
図5に示すように、保持部70は、電力端子41A,42A,43A、信号端子51、サーミスタ60を一体的に保持している。これにより、接続コネクタ25は、電力端子41A,42A,43A、信号端子51、サーミスタ60をそれぞれ保持する構成を簡略化することができる。保持部70は、絶縁材料を含んで構成されている。例えば、保持部70は、絶縁材料のみによって構成されている。保持部70は、例えば樹脂材料を用いたモールド成形等によって形成されている。
【0034】
保持部70は、
図5~
図9に示すように、被覆部71と、端子保持部72と、を有している。被覆部71は、図
5に示すように、軸方向を板厚とする板状、かつ円環状に構成されている。被覆部71は、絶縁材料を含んで構成されている。例えば、被覆部71は、絶縁材料のみによって構成されている。被覆部71は、ステータ部21の環状の端部(複数のコイルエンド38)に沿って環状に固定される。被覆部71は、多相コイル32の複数のコイルエンド38をまとめて覆い、複数のコイルエンド38の位置関係を定めて保持する。被覆部71は、ステータ部21(複数のコイルエンド38)に対して着脱可能である。
【0035】
被覆部71には、
図5に示す6つの孔73と、
図6に示す複数の凹部74と、が設けられている。6つの孔73は、
図5に示すように、周方向に並んでいる。孔73は、被覆部71を軸方向に貫通している。6つの孔73には、
図2に示すように、それぞれ多相コイル32の導電部41B,41C,42B,42C,43B,43Cの端部が挿通される。凹部74は、
図6に示すように、被覆部71における軸方向他方側に設けられている。凹部74は、軸方向一方側に凹んでいる。複数の凹部74は、周方向に沿って2列に並んで配置されている。外側の複数の凹部74、及び6つの孔73は、周方向に環状に並んでいる。凹部74は、
図4に示すように、コイルエンド38を覆っている。なお、
図4では、一部のコイルエンド38が凹部74に覆われている状態で現れているが、その他のコイルエンド38も同様に凹部74に覆われている。コイルエンド38が凹部74に嵌め込まれることで、凹部74がコイルエンド38に固定されている。被覆部71は、コイルエンド38を凹部74に嵌め込むことで、ステータ部21に取り付けられる。被覆部71は、コイルエンド38を凹部74から脱離させることで、ステータ部21から取り外される。
【0036】
端子保持部72は、
図5~
図7に示すように、被覆部71に付設されている。端子保持部72は、絶縁材料を含んで構成されている。例えば、端子保持部72は、絶縁材料のみによって構成されている。端子保持部72は、被覆部71に付属して設けられている。端子保持部72は、
図5~
図7に示すように、張出部75と、固定部76と、を具備している。張出部75は、被覆部71に対して一体化して設けられている。張出部75は、基部75Aと、突出部75Bと、を含んでいる。基部75Aは、被覆部71から軸方向一方側に立ち上がっている。基部75Aは、
図5,
図7に示すように、被覆部71における6つの孔73の内側に設けられている。突出部75Bは、基部75Aの周方向一端から外周側(被覆部71の軸とは反対側)に突出している。固定部76は、電力端子41A,42A,43Aの各一部(長手方向の中央側部分)を覆って、電力端子41A,42A,43Aを固定している。固定部76には、
図7に示すように、ソケット77が設けられている。ソケット77には、入力側ソケット部77Aと、出力側ソケット部77Bと、が設けられている。入力側ソケット部77Aには、センサコネクタ28の出力側接続部28Bが接続される。出力側ソケット部77Bには、外部ソケットが接続される。例えば、端子保持部72(具体的には出力側ソケット部77B)は、インバータの出力側のコネクタと接続される。電力端子41A,42A,43Aは、インバータの出力端子と電気的に接続される。信号端子51は、ソケット77と一体成形されており、ソケット77に保持されている。
【0037】
図5~
図9に示すように、端子保持部72は、3つのバスバー41,42,43を覆っている。
図8に示すように、軸方向他方側から一方側に向かって、バスバー41、バスバー42、バスバー43の順に並んでいる。基部75Aは、
図7,
図8に示すように、導電部41B,41C,42B,42C,43B,43Cを一体的に保持している。すなわち、導電部41B,41C,42B,42C,43B,43Cは、被覆部71(具体的には、基部75A)に一体化されている。導電部41B,41C,42B,42C,43B,43Cの一端(コイル部36U,37U,36V,37V,36W,37Wに接続される部分)は、基部75Aの外周面から露出し、軸方向一方側に折れ曲がっている。電力端子41A,42A,43Aは、
図5~
図7に示すように、突出部75Bから露出している。電力端子41A,42A,43Aは、突出部75Bの延出方向と直交する方向に突出している。出力側ソケット部77Bに対する外部ソケットの接続方向は、電力端子41A,42A,43Aの突出方向と同じ方向となっている。
【0038】
図5に示すように、電力端子41A,42A,43Aと信号端子51とサーミスタ60とが、端子保持部72に一体化した状態で保持されている。具体的には、電力端子41A,42A,43Aは、張出部75及び固定部76に一体化している。
図7に示すように、信号端子51は、固定部76(ソケット77)に一体化している。サーミスタ60のリード線の一端61側は、
図7に示すように、張出部75に覆われている。サーミスタ60のリード線の他端62側は、固定部76に覆われている。サーミスタ60のリード線の他端62は、ソケット77内に配されている。
【0039】
5.モータの組み付け工程
次に、モータ10の組み付け工程について説明する。まず、
図10(A)に示すように、接続コネクタ25、回転角センサ27、及びフランジ29を用意する。次に、
図10(B)に示すように、接続コネクタ25に対して、回転角センサ27及びフランジ29を組み付ける。具体的には、接続コネクタ25の入力側ソケット部77Aに、センサコネクタ28の出力側接続部28Bを接続する。さらに、接続コネクタ25に対して、軸方向一方側からフランジ29を組み付ける。
【0040】
続いて、
図10(C)に示すように、回転角センサ27及びフランジ29が組み付けられた接続コネクタ25に対して、ロータ部23を組み付ける。続いて、
図11(A)(B)に示すように、ユニット化されたロータ部23、接続コネクタ25、回転角センサ27、及びフランジ29をハウジング11に組み付ける。具体的には、コイルエンド38を凹部74に嵌め込むことで(
図4等参照)、被覆部71をステータ部21に取り付ける。続いて、エンドカバー13をハウジング11の開口を塞ぐようにハウジング11に組み付ける。以上のようにして、モータ10が完成する。
【0041】
6.効果の例
次の説明は、第1実施形態の効果に関する。
本開示の多相モータ用絶縁構造において、被覆部71は、複数のコイルエンド38の位置関係を定めて保持する構成であるため、複数のコイルエンド38に対して一括して組み付けることができる。そして、被覆部71は、絶縁材料を含んで構成され、複数のコイルエンド38をまとめて覆う構成であるため、複数のコイルエンド38の絶縁性を確保することができる。したがって、多相モータ用絶縁構造は、被覆部71でステータコア31の端部側を覆うことで、容易に複数のコイルエンド38の絶縁性を確保することができる。
【0042】
本開示の多相モータ用絶縁構造において、被覆部71は、ステータコア31の環状の端部に沿って環状に設けられている。これにより、被覆部71を安定してステータ部21に固定することができる。
【0043】
本開示の多相モータ用絶縁構造において、多相コイル32に電気的に接続される複数の電力端子41A,42A,43Aを保持し、絶縁材料を含んで構成される端子保持部72を有する。これにより、多相モータ用絶縁構造を電力端子41A,42A,43Aの保持構造として機能させることができる。
【0044】
本開示の多相モータ用絶縁構造において、端子保持部72は、インバータの出力側のコネクタと接続される。電力端子41A,42A,43Aとインバータの出力端子が電気的に接続される。これにより、電力端子41A,42A,43Aを保持する端子保持部72がインバータの出力側のコネクタと接続されるため、モータ10とインバータの間における電力端子41A,42A,43Aを保持する機構を減らすことができる。
【0045】
本開示の多相モータ用絶縁構造において、第1相のコイル部36U,37U、第2相のコイル部36V,37V、及び第3相のコイル部36W,37Wを並列に接続する導電部41B,41C,42B,42C,43B,43Cが被覆部71に一体化される。これにより、導電部41B,41C,42B,42C,43B,43Cを保持するように被覆部71を機能させることができ、導電部41B,41C,42B,42C,43B,43Cを多相モータ用絶縁構造に組み込むことができる。
【0046】
本開示の多相モータ用絶縁構造において、被覆部71は、ステータ部21に対して着脱可能である。これにより、絶縁部材がステータ部21に溶着等により着脱不能となる構成に比べて、コイルエンド38に対する絶縁処理を容易に行うことができるようになる。
【0047】
<他の実施形態>
本開示は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述又は後述の実施形態の特徴は、矛盾しない範囲であらゆる組み合わせが可能である。また、上述又は後述の実施形態のいずれの特徴も、必須のものとして明示されていなければ省略することもできる。更に、上述した実施形態は、次のように変更されてもよい。
【0048】
第1実施形態では、被覆部71が、全てのコイルエンド38をまとめて覆う構成を例示したが、全てのコイルエンド38における一部の複数のコイルエンド38をまとめて覆う構成であってもよい。
【0049】
第1実施形態では、被覆部71は、円環状であったが、四角環状等、その他の形状であってもよい。
【0050】
第1実施形態では、保持部70は、端子保持部72を有していたが、端子保持部72を有さなくてもよい。例えば、保持部70は、被覆部71のみによって構成されていてもよい。
【0051】
第1実施形態では、U相、V相、W相のコイル部としてそれぞれ2つ設けられる構成を示したが、2つに限られない。
【0052】
第1実施形態では、保持部70の張出部75と固定部76とが別体として構成されていたが、分離不能に一体成形される構成であってもよい。
【0053】
第1実施形態では、保持部70に保持される信号端子として、ソケット77に保持される信号端子51を例示したが、センサコネクタ28の出力側接続部28Bに保持される端子(センサコネクタ28の信号線の端部)も含まれ得る。
【0054】
第1実施形態では、サーミスタ60のリード線の一端61が第3相(W相)の導電部43Cに接触していたが、その他の導電部に接触する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10…モータ(多相モータ)
11…ハウジング
11A…接続開口
13…エンドカバー
21…ステータ部
23…ロータ部
25…接続コネクタ
27…回転角センサ
28…センサコネクタ
28A…センサ側接続部
28B…出力側接続部
29…フランジ
31…ステータコア
32…多相コイル
33…ヨーク
34…ティース
35…スロット
36U,36V,36W,37U,37V,37W…コイル部
36UA,36VA,36WA,37UA,37VA,37WA…一端
38…コイルエンド
41,42,43…バスバー
41A,42A,43A…電力端子
41B,41C,42B,42C,43B,43C…導電部
51…信号端子
60…サーミスタ
61…一端
62…他端
70…保持部
71…被覆部
72…端子保持部
73…孔
74…凹部
75…張出部
75A…基部
75B…突出部
76…固定部
77…ソケット
77A…入力側ソケット部
77B…出力側ソケット部