(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】電力増幅器および高周波モジュール
(51)【国際特許分類】
H03F 3/24 20060101AFI20240910BHJP
H03F 3/68 20060101ALN20240910BHJP
【FI】
H03F3/24
H03F3/68
(21)【出願番号】P 2023531256
(86)(22)【出願日】2021-06-30
(86)【国際出願番号】 JP2021024816
(87)【国際公開番号】W WO2023276063
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金谷 康
(72)【発明者】
【氏名】山本 和也
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-154159(JP,A)
【文献】特開2002-171196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 3/24
H03F 3/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から高周波信号が入力される入力端子と、
前記入力端子を介して前記高周波信号が入力され、前記高周波信号を増幅するMMICと、
入力整合回路と、
前記入力整合回路を介して、前記MMICが増幅した前記高周波信号が入力され、前記高周波信号を増幅するトランジスタと、
出力整合回路と、
外部から前記トランジスタのドレイン電圧が入力され、前記出力整合回路を介して前記トランジスタが増幅した前記高周波信号が入力され、前記高周波信号を外部に出力する出力端子と、
前記トランジスタのドレインと前記MMICのドレインとを接続するドレインバイアス回路基板と、
を備え、
前記トランジスタと前記MMICは、50Ωより小さいインピーダンスで共役整合されていることを特徴とする電力増幅器。
【請求項2】
前記入力端子には、外部から前記MMICのゲート電圧が入力されることを特徴とする請求項1に記載の電力増幅器。
【請求項3】
端子として、前記入力端子と前記出力端子のみを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の電力増幅器。
【請求項4】
前記ドレインバイアス回路基板には、前記トランジスタのドレインと前記MMICのドレインとを接続する線路上にチョークインダクタが設けられることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の電力増幅器。
【請求項5】
前記ドレインバイアス回路基板を介して前記トランジスタのドレインと前記MMICのドレインとを繋ぐ経路は、第1コンデンサによって接地用端子に接続されていることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の電力増幅器。
【請求項6】
前記第1コンデンサは、前記高周波信号の差周波数に対して、前記トランジスタから見たインピーダンスが50Ω以下となるような容量を有することを特徴とする請求項5に記載の電力増幅器。
【請求項7】
前記経路上に設けられ、前記高周波信号の1/4波長の線路長を有するショートスタブを備えることを特徴とする請求項5または6に記載の電力増幅器。
【請求項8】
前記ドレインバイアス回路基板は、前記高周波信号の1/4波長の線路長を有することを特徴とする請求項5または6に記載の電力増幅器。
【請求項9】
前記入力端子を介して外部から入力されたゲート電圧を分圧する分圧回路を備え、
前記MMIC内の増幅器のゲートまたは前記トランジスタのゲートには、前記分圧回路により前記ゲート電圧が分圧された電圧が供給されることを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の電力増幅器。
【請求項10】
前記分圧回路から前記増幅器のゲートに供給される電圧と、前記分圧回路から前記トランジスタのゲートに供給される電圧は異なることを特徴とする請求項9に記載の電力増幅器。
【請求項11】
前記増幅器はSi基板に形成され、
前記トランジスタは、SiC基板に形成されることを特徴とする請求項10に記載の電力増幅器。
【請求項12】
前記増幅器と前記トランジスタの一方は、入力電力に対して利得が低下する電圧を前記分圧回路から供給され、
前記増幅器と前記トランジスタの他方は、入力電力に対して利得が増加する電圧を前記分圧回路から供給されることを特徴とする請求項9または10に記載の電力増幅器。
【請求項13】
第1の前記MMICと、
第2の前記MMICと、
前記第1のMMICが増幅した高周波信号を増幅する第1の前記トランジスタと、
前記第2のMMICが増幅した高周波信号を増幅する第2の前記トランジスタと、
前記第1のトランジスタのドレインと前記第1のMMICのドレインとを接続する第1の前記ドレインバイアス回路基板と、
前記第2のトランジスタのドレインと前記第2のMMICのドレインとを接続する第2の前記ドレインバイアス回路基板と、
を備え、
前記第1のドレインバイアス回路基板と前記第2のドレインバイアス回路基板は、前記第1のMMIC、前記第2のMMIC、前記第1のトランジスタ、前記第2のトランジスタが配置された領域の外側に配置されることを特徴とする請求項1から12の何れか1項に記載の電力増幅器。
【請求項14】
第1の前記MMICと、
第2の前記MMICと、
前記第1のMMICが増幅した高周波信号を増幅する第1の前記トランジスタと、
前記第2のMMICが増幅した高周波信号を増幅する第2の前記トランジスタと、
を備え、
前記ドレインバイアス回路基板は、前記入力端子から前記第1のMMICと前記第1のトランジスタを通って前記出力端子に至る第1経路と、前記入力端子から前記第2のMMICと前記第2のトランジスタを通って前記出力端子に至る第2経路との間に配置されることを特徴とする請求項1から12の何れか1項に記載の電力増幅器。
【請求項15】
第1の前記MMICと、
第2の前記MMICと、
前記第1のMMICが増幅した高周波信号を増幅する第1の前記トランジスタと、
前記第2のMMICが増幅した高周波信号を増幅する第2の前記トランジスタと、
前記入力端子から前記第1のMMICと前記第1のトランジスタを通って前記出力端子に至る第1経路と、前記入力端子から前記第2のMMICと前記第2のトランジスタを通って前記出力端子に至る第2経路との間に配置されたダイオードリニアライザと、
を備えることを特徴とする請求項1から12の何れか1項に記載の電力増幅器。
【請求項16】
請求項1から15の何れか1項に記載の電力増幅器を備えることを特徴とする高周波モジュール。
【請求項17】
前記出力端子に前記ドレイン電圧を供給するドレインバイアス供給点を備え、
前記ドレインバイアス回路基板を介して前記トランジスタのドレインと前記MMICのドレインとを繋ぐ経路は、第1コンデンサによって接地用端子に接続され、
前記ドレインバイアス供給点と前記出力端子を繋ぐ経路は、第2コンデンサによって接地用端子に接続されていることを特徴とする請求項16に記載の高周波モジュール。
【請求項18】
前記第2コンデンサは、前記高周波信号の差周波数に対して、前記トランジスタから見たインピーダンスが50Ω以下となるような容量を有することを特徴とする請求項17に記載の高周波モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力増幅器および高周波モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、GaNから形成されたMMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit)が開示されている。このMMICでは、Ku帯で50Wの高出力が実現できる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】QORVO,TGA2239-CP,13.4-15.5GHz,50Watt,GaN Power Amplifier,Product Data Sheet,Rev.B,February 2021,<URL:https://www.qorvo.com/products/p/TGA2239-CP〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
14GHz帯に代表される衛星通信用小型地球局に使用される高周波モジュールには、小型化のために一般に半導体電力増幅器が用いられている。高周波モジュールは例えば40~100Wの高出力である。このため、高周波モジュール送信回路の最終段の半導体電力増幅器には内部整合型FET(Field Effect Transistor)が主に採用される。ドライバー段には、一般に内部整合型FETまたはMMICが用いられる。
【0005】
例えば、高周波モジュールの出力が70Wの場合、最終段に70W級の内部整合型FETが用いられる。このような高周波モジュールでは、例えば70W級の内部整合型FETをドライブする50W級の内部整合型FETと、50W級の内部整合型FETの前段に30W級の内部整合型FETとがさらに設けられる。30W級の増幅器にはMMICが使用される場合もある。
【0006】
一般に内部整合型FETは入力側及び出力側が50Ωに整合されている。このため、各段間の整合回路は不要である。しかし、RF(Radio Frequency)/DC(Direct Current)分離回路を兼ねたバイアス回路または前後段のバイアス回路とDCを分離するカップリング用コンデンサ等の周辺回路が必要となることが考えられる。このため、高周波モジュール全体のサイズが大型化するおそれがある。特に、内部整合型FETは利得が10dB程度の1段増幅器である。このため、高周波モジュールを多段化する場合、高周波モジュールのサイズが著しく増加する可能性がある。
【0007】
また、MMICの高出力化に伴い、非特許文献1のように、Ku帯で50W級以上の高出力MMICが実現されている。MMICは、多段増幅器から構成可能である。つまり、最終段とドライバー段を1つのMMICに集積することができる。このため、高周波モジュールの小型化が可能となる。しかし、特にGaN-MMICに使用されるSiC基板は一般に非常に高価である。このため、製造コストが増大するおそれがある。
【0008】
また、中出力MMICと高出力の内部整合型FETを組み合わせて1つのパッケージに集積することが考えられる。この場合も、MMICと内部整合型FETとの間の整合回路により、パッケージサイズが大型化する可能性がある。
【0009】
本開示は、小型化が可能な電力増幅器および高周波モジュールを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る電力増幅器は、外部から高周波信号が入力される入力端子と、前記入力端子を介して前記高周波信号が入力され、前記高周波信号を増幅するMMICと、入力整合回路と、前記入力整合回路を介して、前記MMICが増幅した前記高周波信号が入力され、前記高周波信号を増幅するトランジスタと、出力整合回路と、外部から前記トランジスタのドレイン電圧が入力され、前記出力整合回路を介して前記トランジスタが増幅した前記高周波信号が入力され、前記高周波信号を外部に出力する出力端子と、前記トランジスタのドレインと前記MMICのドレインとを接続するドレインバイアス回路基板と、を備え、前記トランジスタと前記MMICは、50Ωより小さいインピーダンスで共役整合されている。
【発明の効果】
【0011】
本開示に係る電力増幅器では、トランジスタとMMICは、50Ωより小さいインピーダンスで共役整合されている。このため、電力増幅器を小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1に係る高周波モジュールの構成を説明する図である。
【
図2】実施の形態1に係る電力増幅器の平面図である。
【
図3】実施の形態1に係る電力増幅器の詳細な構成を説明する平面図である。
【
図4】実施の形態1に係るMMICの等価回路図である。
【
図5】実施の形態1に係るゲートバイアス回路とドレインバイアス回路の構成を示す図である。
【
図6】実施の形態1の変形例に係るドレインバイアス回路基板の構成を示す図である。
【
図7】実施の形態1に係る安定化回路を示す図である。
【
図8】実施の形態1の比較例に係る高周波モジュールの構成を説明する図である。
【
図9】実施の形態2に係る電力増幅器の平面図である。
【
図10】実施の形態2に係るドレインバイアス回路の構成を示す図である。
【
図11】実施の形態3に係る分圧回路の等価回路図である。
【
図12】実施の形態4に係る電力増幅器の平面図である。
【
図13】実施の形態5に係る電力増幅器の平面図である。
【
図14】実施の形態5の変形例に係る電力増幅器の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
各実施の形態に係る電力増幅器および高周波モジュールについて図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0014】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る高周波モジュール100の構成を説明する図である。高周波モジュール100は、電力増幅器10と、電力増幅器10にゲート電圧を供給するゲートバイアス回路80と、電力増幅器にドレイン電圧を供給するドレインバイアス回路90を備える。電力増幅器10は、例えば周波数がKu帯であり、出力が70W級である。
【0015】
図2は、実施の形態1に係る電力増幅器10の平面図である。電力増幅器10は、端子として、入力端子11と出力端子12のみを備える。入力端子11には、外部からゲートバイアス回路80を介して高周波信号が入力される。また、入力端子11には、ゲートバイアス回路80からMMIC20のゲート電圧が入力される。
【0016】
MMIC20は、入力端子11を介して高周波信号が入力され、高周波信号を増幅する。電力増幅器10はMMIC20としてMMIC20a、20bを備える。MMIC20の出力には、入力整合回路30が接続される。電力増幅器10は入力整合回路30として、MMIC20aに接続された入力整合回路30aと、MMIC20bに接続された入力整合回路30bを備える。
【0017】
入力整合回路30の出力にはトランジスタ40が接続される。トランジスタ40は、入力整合回路30を介して、MMIC30が増幅した高周波信号が入力され、高周波信号を増幅する。電力増幅器10はトランジスタ40として、入力整合回路30aに接続されるトランジスタ40aと、入力整合回路30bに接続されるトランジスタ40bを備える。トランジスタ40aは、MMIC30aが増幅した高周波信号を増幅する。トランジスタ40bは、MMIC30bが増幅した高周波信号を増幅する。トランジスタ40a、40bの各々は、1つのトランジスタチップである。トランジスタ40の出力には、出力整合回路50が接続される。
【0018】
出力端子12は、出力整合回路50を介してトランジスタ40が増幅した高周波信号が入力され、ドレインバイアス回路90を介して高周波信号を外部に出力する。また、出力端子12には、ドレインバイアス回路90からトランジスタ40のドレイン電圧が入力される。
【0019】
ドレインバイアス回路基板60は、トランジスタ40のドレインとMMIC30のドレインとを接続する。電力増幅器10はドレインバイアス回路基板60として、ドレインバイアス回路基板60a、60bを備える。ドレインバイアス回路基板60aは、トランジスタ40aのドレインとMMIC30aのドレインとを接続する。ドレインバイアス回路基板60bは、トランジスタ40bのドレインとMMIC30bのドレインとを接続する。ドレインバイアス回路基板60a、60bは、MMIC30a、30b、トランジスタ40a、40bが配置された領域の外側に配置される。
【0020】
以降では、入力端子11からMMIC30aとトランジスタ40aを通って、出力端子12に至る経路を第1経路10aと呼ぶ。また、入力端子11からMMIC30bとトランジスタ40bを通って、出力端子12に至る経路を第2経路10bと呼ぶ。
【0021】
図3は、実施の形態1に係る電力増幅器10の詳細な構成を説明する平面図である。電力増幅器10は3段増幅器である。具体的には、電力増幅器10は2段の増幅器から構成されたMMIC20と、1段のトランジスタ40から構成される。
【0022】
電力増幅器10は出力整合回路50として、トランジスタ40aに接続される出力整合回路50aと、トランジスタ40bに接続される出力整合回路50bを備える。出力整合回路50aは、2種類の整合回路基板51a、55aを含む。同様に、出力整合回路50bは、2種類の整合回路基板51b、55bを含む。出力整合回路50a、50bは、複数のトランジスタセル42から入力される信号を合成し、ワイヤ13を介して出力端子12に出力する。
【0023】
整合回路基板51a、51bの各々は、基板52と、基板52上に形成されたパターン53を有する。トランジスタ40と接続される整合回路基板51a、51bでは、基板52として例えば誘電率が40程度の酸化チタン基板が用いられる。一般に、トランジスタ直後の整合回路にはインピーダンスが低い線路が必要となる。このため、比誘電率が高い酸化チタン基板により、低インピーダンス線路を実現している。また、比誘電率が40程度の高誘電率基板を用いることで、線路幅を狭くできる。従って、回路サイズを小型化できる。
【0024】
整合回路基板55a、55bの各々は、基板56と、基板56上に形成されたパターン57を有する。基板56には、例えば誘電率が10程度のアルミナ基板が用いられる。
【0025】
各トランジスタ40a、40bでは、基板41上に複数のトランジスタセル42が形成されている。基板41は例えばSiC基板である。トランジスタセル42は、例えばGaN系化合物半導体から形成される。各トランジスタセル42のゲート側には、プリマッチ回路43が形成される。プリマッチ回路は、高調波処理回路と安定化回路を兼ねている。これにより、トランジスタ40の効率を向上させるとともに、動作を安定させることができる。
【0026】
入力整合回路30a、30bの各々は、基板31と、基板31上に形成されたパターン32を有する。入力整合回路30では、MMIC20の各出力からの信号が3つのトランジスタセル42に分配される。入力整合回路30a、30bは、MMIC20a、20bとトランジスタ40a、40bを24Ωで整合させる。一般に入力整合回路では、50Ωで共役整合が行われる。これに対し本実施の形態では、その1/2程度のインピーダンスで整合を行う。なお、入力整合回路30と同じ特性を持つ回路をトランジスタ40あるいはMMIC20上に形成しても良い。この場合、入力整合回路30は削除できる。
【0027】
MMIC20は、基板28と、基板28に形成された2段の増幅器を有する。基板28は例えばSiC基板である。
図4は、実施の形態1に係るMMIC20の等価回路図である。MMIC20a、20bの各々は1つのチップである。MMIC20は、出力側回路26、2段目のトランジスタTr22a~Tr22d、段間回路25、1段目のトランジスタTr21a、Tr21b、入力側回路24から構成されている。Tr21a~Tr21b、Tr22a~Tr22dは例えばGaN系化合物半導体から形成される。なお、
図4において分布定数線路、整合回路、安定化回路等は省略されている。
【0028】
出力側回路26は、主線路、ショートスタブである1/4波長線路27、キャパシタC21、カップリング用のキャパシタC22およびボンディングパッドから構成されている。キャパシタC21は、MIM(Metal-Insulator-Metal)キャパシタである。1/4波長線路27は、キャパシタC21を介して主線路と接地用端子とを電気的に接続する。ボンディングパッドは、出力パッド23およびドレインパッド22を含む。本実施の形態では、出力パッド23で24Ωとなっている。入力整合回路30のインピーダンスも24Ωであるため、MMIC20と入力整合回路30は整合している。
【0029】
段間回路25は2段目のトランジスタTr22a~Tr22dと1段目のトランジスタTr21a、Tr21bを共役整合させている。整合の取り方はバンドパスフィルタ型である。入力側回路24は、1段目のトランジスタTr21a、Tr21bの入力インピーダンスを100Ωまで変成している。2つのMMIC20a、20bをワイヤ13でパッケージ15の入力端子11に接続することで、電力増幅器10の入力インピーダンスは50Ωとなる。入力端子11はフィードスルーとも呼ばれる。
【0030】
続いて、ドレインバイアス回路90の説明をする。
図5は、実施の形態1に係るゲートバイアス回路80とドレインバイアス回路90の構成を示す図である。電力増幅器10において、パッケージ15の出力端子12はDCとRFが分離されていない。このため、ドレイン電圧は出力端子12から給電される。ドレインバイアス回路90は、出力端子12にドレイン電圧を供給するドレインバイアス供給点Vddを備える。ドレイン電圧は、モジュール基板上に設けられたドレインバイアス供給点Vddから、1/4波長線路91b、91d、1/4波長オープンスタブ91a、91cを介して出力端子12へ供給される。出力端子12に供給されたドレイン電圧は、
図3に示されるように、出力整合回路50を介して、トランジスタ40のドレインへ給電される。
【0031】
なお、1/4波長オープンスタブ91aと1/4波長線路91bにより、主線路から見たドレインバイアス回路90は高インピーダンスになる。このため、ドレインバイアス回路90が主線路に与える影響を抑制できる。なお、1/4波長オープンスタブ91cと1/4波長線路91dは、主線路から電源側を見たインピーダンスを更に高めるために設けられる。
【0032】
次に、MMIC20へのドレイン電圧の供給方法について説明する。
図3に示されるように、出力整合回路50とドレインバイアス回路基板60はワイヤ13で接続されている。また、ドレインバイアス回路基板60とMMIC20のドレインパッド22はワイヤ13で接続されている。
図4に示されるように、2段目および1段目のトランジスタTr21a、Tr21b、Tr22a~Tr22dのドレインは、1/4波長線路27とキャパシタC21を介してドレインパッド22に接続されている。キャパシタC21はバイパスキャパシタとも呼ばれる。これにて、全段のドレインが共通化される。
【0033】
なお、キャパシタC21はドレインバイアス回路90が1、2段目の主回路に及ぼす影響を抑制するように設けられる。キャパシタC21は、ドレインバイアス回路90がトランジスタ40の主回路へ及ぼす影響も抑制できる。また、複数個のバイパスコンデンサをドレインバイアス回路基板60上に追加しても構わない。これにより、主回路への影響を抑制し、低周波数での安定性を向上できる。
【0034】
図6は実施の形態1の変形例に係るドレインバイアス回路基板60の構成を示す図である。ドレインバイアス回路基板60には、トランジスタ40のドレインとMMIC20のドレインとを接続する線路62上にチョークインダクタL61が設けられても良い。これにより、ドレインバイアス回路90とのループを遮断できる。なお、ドレインバイアス回路基板60には、基板61上に少なくともトランジスタ40のドレインとMMIC20のドレインを接続する線路62が設けられれば良い。
【0035】
ドレインバイアス回路基板60の基板61は、安価な樹脂基板で良い。また、ドレインバイアス回路基板60には、Si、GaAs、ガラス等の基板に形成されたIPD(Integrated Passive Device)が用いられても良い。
【0036】
次に、ゲートバイアス回路80について説明をする。ゲートバイアス回路80の構成は、ドレインバイアス回路90の構成と同じである。
図5に示されるように、ゲート電圧は、モジュール基板上に設けられたゲートバイアス供給点Vggから1/4波長線路81b、81d、1/4波長オープンスタブ81a、81cを介してパッケージ15の入力端子11へ供給される。入力端子11はワイヤ13を介してMMIC20の入力パッド21に接続される。
【0037】
MMI20Cの入力側回路24にはカップリング用のキャパシタが設けられない。このため、入力パッド21に入力されたゲート電圧は、1段目のトランジスタTr21a、Tr21bのゲートへ給電される。2段目のトランジスタTr22a~Tr22dでは、MMI20C上に形成されたチョークインダクタL21、L22を介して、ゲート電圧が給電される。トランジスタ40では、チョークインダクタL21、L23、出力パッド23、ワイヤ13、入力整合回路30、プリマッチ回路43を介して、ゲート電圧がトランジスタセル42のゲートに給電される。
【0038】
なお、チョークインダクタL21、L22、L23には発振抑制用のパスコンを設けても良い。
図7は、
図4にて省略された実施の形態1に係る安定化回路29を示す図である。安定化回路29は整合回路も兼ねている。安定化回路29は、例えば整合用線路29a、抵抗R29、パスコンC29を含む。チョークインダクタL21、L22の位置は、主線路ではなく、
図7に示されるように安定化回路29のパスコンC29の手前でも構わない。
【0039】
図8は、実施の形態1の比較例に係る高周波モジュール800の構成を説明する図である。高周波モジュール800の出力は70Wである。高周波モジュール800において、最終段に70W級の内部整合型FET810cが用いられる。さらに、内部整合型FET810cをドライブするために、50W級の内部整合型FET810bと30W級の内部整合型FET810aが設けられる。
【0040】
内部整合型FET810a~810cの各々は、入力側及び出力側が50Ωに整合されている。このため、各段間の整合回路は不要である。しかし、このような構成では、各段にゲートバイアス回路、ドレインバイアス回路等が必要となり、高周波モジュール800が大型化するおそれがある。特に、内部整合型FETは一般に利得が10dB程度の1段増幅器である。このため、内部整合型FETを用いて多段化する場合、高周波モジュール800が著しく大型化するおそれがある。
【0041】
これに対し本実施の形態では、内部整合型FETと同様の2端子のみを有するパッケージ15にて、多段増幅器を構成できる。本実施の形態では、例えば約30dBの利得を有し、70W級の電力を出力することが可能となる。このため、高周波モジュール100を1個の電力増幅器10で構成できる。従って、高周波モジュール100を小型化できる。また、高周波モジュール100を低コストで製造できる。
【0042】
また、電力増幅器10では、多段増幅器が1パッケージに収納されている。このため、
図8のように複数の内部整合型FETを使用する場合と比較して、利得を向上できる。
【0043】
また、本実施の形態では、2端子パッケージを使用できるため、従来の高周波モジュールからの改定設計が容易となる。また、パッケージ15として、従来から使用されている製品群と同型のパッケージを使用できる。また、製造時の検査治具、評価治具として、従来製品で使用しているものを使用することができる。このため、調達コスト等のイニシャルコストおよびランニングコストを低減できる。
【0044】
また、本実施の形態では低出力の小型なGaN-MMIC20と、必要最低限の回路から構成された高出力のトランジスタ40とを組み合わせて電力増幅器10を構成している。このため、全段の全ての回路をGaN-MMICで構成する場合と比較して、製造コストを抑制できる。つまり、GaN-HEMTに必要な高価なSiC基板の使用を最小限することができる。また、一般にMMICは多ピンパッケージが採用されている。これに対し本実施の形態では、上述の通り2端子パッケージを使用できる。
【0045】
また、本実施の形態では段間が50Ω整合ではない。MMIC20の出力側インピーダンスは、Ku帯では低インピーダンスとなる。このため、入力整合回路30がMMIC20の出力側インピーダンスに近い24Ωで整合することで、容易に整合が可能となる。また、50Ωで整合していないため、入力整合回路30を小型化できる。従って、電力増幅器10および高周波モジュール100を小型化できる。また、入力整合回路30を簡略化できるため、整合回路損失の低減により、利得を向上できる。また、電力増幅器10を広帯域化できる。また、入力整合回路30の損失が低減するため、MMIC20の出力を低減できる。従って、低歪特性が得られる。
【0046】
本実施の形態では、一例としてトランジスタ40とMMIC20が24Ωで共役整合される。これに限らず、トランジスタ40とMMIC20は、50Ωより小さいインピーダンスで共役整合されていれば良い。
【0047】
また、本実施の形態では、ドレインバイアス回路基板60a、60bはパッケージ15の両側に配置される。この構成では、MMIC20のドレイン電流が2つのドレインバイアス回路基板60a、60bに分散される。よって、ドレインバイアス回路基板60a、60bの配線幅を小さくできる。従って、高インピーダンスな線路62を実現でき、トランジスタ40のドレインとMMIC20のドレインとのアイソレーションを向上できる。このため、安定性を向上でき、不要発振を抑制できる。
【0048】
図3では左右の出力整合回路50a、50bからの信号が、ワイヤ13を介して出力端子12で合成される。この変形例として、
図2に示されるように、1つの出力整合回路50上で、第1経路10aと第2経路10bの信号を合成しても良い。この場合、長さがばらつき易いワイヤ13を介さずに合成できるため、製造ばらつきを抑制できる。
【0049】
本実施の形態のトランジスタ40は、一例としてSiC基板上に形成されたGaNトランジスタである。これに限らず、トランジスタ40は、GaAsトランジスタであっても良い。また、トランジスタ40はSi基板、GaN基板またはダイヤモンド基板に形成されていても良い。また、電力増幅器10はDoherty増幅器であっても良い。
【0050】
上述した変形は、以下の実施の形態に係る電力増幅器および高周波モジュールについて適宜応用することができる。なお、以下の実施の形態に係る電力増幅器および高周波モジュールについては実施の形態1との共通点が多いので、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0051】
実施の形態2.
図9は、実施の形態2に係る電力増幅器210の平面図である。本実施の形態では、ドレインバイアス回路基板60を介してトランジスタ40のドレインとMMIC20のドレインとを繋ぐ経路は、コンデンサC71、C72によって接地用端子に接続されている。コンデンサC71、C72は、トランジスタ40が増幅する高周波信号の差周波数に対して、トランジスタ40から見たインピーダンスが50Ω以下となるような容量を有する。
【0052】
また、ドレインバイアス回路基板60を介してトランジスタ40のドレインとMMIC20のドレインとを繋ぐ経路上には、ショートスタブ258a、258bが設けられる。ショートスタブ258a、258bは、基板56上に設けられ、トランジスタ40が増幅する高周波信号の1/4波長の線路長を有する。ショートスタブ258aは、コンデンサC71とパターン57の間に接続され、コンデンサC71を介して接地用端子と接続される。ショートスタブ258bは、コンデンサC72とパターン57の間に接続され、コンデンサC72を介して接地用端子と接続される。また、ドレインバイアス回路基板60の線路62は、トランジスタ40が増幅する高周波信号の1/4波長の線路長を有する。他の構成は、電力増幅器10の構成と同様である。
【0053】
ショートスタブ258a、258bおよびコンデンサC71、C72は、差周波短絡回路を構成する。差周波について説明する。周波数f1、f2の2波の基本波信号がトランジスタに入力されると、差周波数|f2-f1|、|f1-f2|で歪成分が発生する。これらの歪成分と基本波信号とのミキシングで、基本波信号の周波数f1、f2の近くにおいて2f2-f1、2f1-f2の歪成分が発生する。これをIMD3(3rd Intermodulation Distortion)と称する。
【0054】
IMD3の周波数は基本波信号の周波数に近いため、IMD3が大きいと通信品質が大きく劣化することがある。このため電力増幅器では、一般にIMD3を最小限に抑制することが要求される。例えば、衛星通信用電力増幅器の場合、基本波をf1=14.00GHz、f2=14.01GHzとすると、差周波数はΔf=10MHzである。このとき、IMD3は基本波信号に対して、例えば-25dBc以下となることが要求される。加えて、近年では通信容量を拡大するためにマルチキャリア通信が盛んである。このとき、差周波数が数MHz~400MHz程度の広帯域な差周波特性が要求されることがある。
【0055】
差周波短絡回路は、IMD3を抑制するために設けられる。本実施の形態の差周波短絡回路は、主信号である基本波に対して1/4波長の電気長を有するショートスタブ258a、258bの先端にチップコンデンサであるコンデンサC71、C72を付加することで構成される。差周波を抑制するには、トランジスタ40のドレイン端で、差周波数に対するインピーダンスが短絡であると良い。このため、コンデンサC71、C72には、差周波に対して短絡となるように共振周波数が高いコンデンサを使用する。
【0056】
また、差周波短絡回路は、基本波のRF特性には影響を与えないことが望ましい。本実施の形態では、ショートスタブ258a、258bのインピーダンスは基本波に対して開放である。このため、ショートスタブ258a、258bが基本波特性に与える影響を抑制できる。
【0057】
また、差周波数を広帯域で抑制する場合は、トランジスタ40のドレイン端から見たインピーダンスが、所望の差周波数に対して短絡あるいは50Ω以下の低インピーダンスとなるように、複数のコンデンサを使用することが有効である。例えば、差周波数を1MHz~375MHzの範囲で短絡させる場合、トランジスタ40の出力側回路に3組のコンデンサおよびショートスタブを設置すると良いことが見出されている。例えば、157MHz、27MHz、5MHzでインピーダンスが50Ω以下となるように、3つのチップコンデンサを選定すると良い。これにより、差周波に対するインピーダンスを広帯域にわたって低減できる。
【0058】
本実施の形態では、電力増幅器210に2組のショートスタブ258a、258bおよびコンデンサC71、C72が設けられる。なお、
図9において1つのショートスタブ258aにコンデンサC72を2つ接続しているが、2つのコンデンサC72は同じ周波数を短絡させることを目的としているため、1つと数える。
図10に示されるように、3組目の差周波短絡回路はドレインバイアス回路90に設けられる。
【0059】
図10は、実施の形態2に係るドレインバイアス回路90の構成を示す図である。ドレインバイアス回路90には、3組目の差周波短絡回路として、ショートスタブ91と、ショートスタブ91の先端に接続されたコンデンサC91が設けられる。ショートスタブ91は、トランジスタ40が増幅する高周波信号の1/4波長の線路長を有する。ドレインバイアス供給点Vddと出力端子12を繋ぐ経路は、コンデンサC91によって接地用端子に接続されている。コンデンサC91は、トランジスタ40が増幅する高周波信号の差周波数に対して、トランジスタ40から見たインピーダンスが50Ω以下となるような容量を有する。
【0060】
以上から、本実施の形態では3組の差周波短絡回路により、差周波数を広帯域で抑制できる。また、ショートスタブ258a、258b、91は、Ku帯で1/4波長線路となる。このため、Ku帯において差周波短絡回路が最終段の主回路に与える影響を抑制できる。なお、コンデンサC71が157MHz用であり、コンデンサC72が27MHz用であり、コンデンサC91が5MHz用である。
【0061】
本実施の形態では、既存のパッケージ15に収まるように、3番目の差周波短絡回路についてはモジュール基板上に設けられる。なお、5MHz用の差周波短絡回路はドレインバイアス回路の機能も兼ね備えている。
【0062】
ここで、GaN系の増幅器はGaAs系の増幅器と比較して、一般に歪特性が良好ではない。このため、GaNトランジスタからなる多段増幅器では、ドライバー段で発生する歪を無視できないことがある。また、ドライバー段のIMD3を抑制すると、増幅器全体のIMD3を低減できる。このため、ドライバー段においても差周波短絡回路が設けられると良い。
【0063】
つまり、1、2段目のトランジスタTr21a、Tr21b、Tr22a~Tr22dに対しても、コンデンサを使用して差周波を短絡させることが好ましい。例えばMMIC20上に、先端にキャパシタを接続したショートスタブを設置すると良い。この差周波短絡回路は、トランジスタTr21a、Tr21b、Tr22a~Tr22dのドレインに接続される。差周波短絡回路として、例えば1/4波長線路27とキャパシタC21を使用することができる。
【0064】
また、トランジスタTr21a、Tr21b、Tr22a~Tr22dのドレインは、MMICチップの外側では、ドレインバイアス回路基板60を介して、コンデンサC71、C72、C91に接続される。本実施の形態において、ドレインバイアス回路基板60の線路長は1/4波長である。このため、基本波に対してドレインパッド22から外側のインピーダンスが高く、ドレインバイアス回路基板60がドライバー段のRF特性に影響を与えることを抑制できる。このように、ドレインバイアス回路基板60をドライバー段の差周波短絡回路として使用できる。
【0065】
なお、電力増幅器210が多段増幅器特有のループ利得をもつ場合、ドレインバイアス回路基板60のコンデンサC72と反対側の配線端にチョークインダクタを設置しても良い。
【0066】
本実施の形態では、最終段のみならず、ドライバー段のトランジスタにおいても差周波数を広帯域で短絡できる。従って、電力増幅器210の全体で低歪な特性を実現できる。
【0067】
図8に示されるような3段増幅器で差周波を短絡させる場合、1段あたり3組のショートスタブが使用されることとなる。このため、3段増幅器では9組のショートスタブが必要となり、回路サイズが大きくなるおそれがある。また、本実施の形態のように1つのパッケージ15で多段増幅器を構成すると、ドライバー段用の差周波短絡回路を設置するスペースの確保が困難となることが考えられる。また、パッケージ15の外側にドライバー段用の差周波短絡回路を設ける場合、パッケージ15にドライバー段のドレイン端子を個別に設ける必要がある。このため、端子数が増加するおそれがある。また、差周波短絡回路を設けるためにモジュール基板の回路規模が大きくなるおそれがある。
【0068】
これに対し、本実施の形態では、ドレインバイアス回路基板60を活用することで差周波短絡回路の面積を抑制できる。また、ドライバー段用の差周波短絡回路を別個にモジュール基板に設ける必要が無く、モジュール基板の回路規模を抑制できる。また、パッケージ15の端子数の増加を抑制できる。
【0069】
また、本実施の形態においてドレインバイアス回路基板60a、60bはパッケージ15の両側に配置される。これにより、ショートスタブ258a、258bを容易にレイアウトできる。
【0070】
なお、本実施の形態では、周波数が低い5MHz用のショートスタブは、回路サイズの都合上、モジュール基板上に設置している。これに限らず、全ての差周波短絡回路が電力増幅器210内に配置されても良い。
【0071】
実施の形態3.
図11は、実施の形態3に係る分圧回路325の等価回路図である。MMIC20は、入力端子11を介して外部から入力されたゲート電圧を分圧する分圧回路325を備える。MMIC20内の増幅器であるトランジスタTr21a、Tr21b、Tr22a~Tr22dのゲートまたはトランジスタ40のゲートには、分圧回路325により、ゲート電圧が分圧された電圧が供給される。なお、
図11では便宜上、MMIC20およびトランジスタ40が簡略化されて示されている。
図11においてトランジスタTr21は、トランジスタTr21a、Tr21bに該当し、トランジスタTr22は、トランジスタTr22a~Tr22dに該当する。
【0072】
分圧回路325は抵抗R21~R26を有する。抵抗R21~R26の抵抗値により、各段のトランジスタに供給されるゲート電圧が決まる。このため、段毎に異なるゲート電圧を印加できる。例えば、分圧回路325からMMIC20内のトランジスタTr21、Tr22のゲートに供給される電圧と、分圧回路325からトランジスタ40のゲートに供給される電圧は異なっても良い。この構成では、電力増幅器10内で異なる種類のトランジスタを用いることができる。
【0073】
例えば、MMIC20内のトランジスタTr21、22はSi基板に形成され、トランジスタ40はSiC基板に形成されても良い。具体的には、最終段には良好なRF特性が得られるSiC基板上に形成されたGaNトランジスタを使用し、ドライバー段にはコスト削減のために安価なSi基板上に形成されたGaNトランジスタを使用する。これにより、RF特性を確保しつつコストを抑制できる。歪特性または信頼性の改善のため、SiC基板上のトランジスタとSi基板上のトランジスタではエピ構造が異なり、最適なゲート電圧が異なることがある。本実施の形態によれば、異なる基板に形成されたトランジスタに最適なゲートバイアスを給電できる。なお、Si基板上のトランジスタTr21、22と、SiC基板上のトランジスタ40とで、最適なドレイン電圧が異なることがある。この場合、
図6のインダクタL61を抵抗に置き換えても良い。あるいは、線路62上においてインダクタL61と直列に抵抗を追加しても良い。これにより、ドレインバイアス回路基板60上の抵抗の電圧降下によりTr21、22に最適なドレイン電圧を給電できる。
【0074】
また、利得と入力電力の関係において、利得圧縮するか利得拡大するかは、ゲート電圧によるドレイン電流の3階微分であるgm3に依存することが見出されている。利得と入力電力の関係は、AM-AM特性とも呼ばれ、IMD3に大きな影響を与える。ここで、利得圧縮は、入力電力に対して利得が低下することを示し、利得拡大は入力電力に対して利得が増加することを示す。gm3>0のとき利得拡大となり、gm3<0のとき利得圧縮となる。gm3はゲート電圧に依存する。このため、ゲート電圧によって、利得拡大となるか利得圧縮となるかを制御できる。
【0075】
本実施の形態において、MMIC20内のトランジスタTr21、22とトランジスタ40の一方は、入力電力に対して利得が低下する電圧を分圧回路325から供給され、他方は、入力電力に対して利得が増加する電圧を分圧回路325から供給されても良い。例えば、トランジスタ40に利得拡大となるゲート電圧を供給し、トランジスタTr21、22に利得圧縮となるゲート電圧を供給する。このとき、MMIC20とトランジスタ40とでAM-AM特性が逆特性となる。つまり、電力増幅器10全体ではAM-AMが相殺される。これにより、IMD3を改善することができる。この場合、全段で同一プロセスのトランジスタを使用することを前提とする。
【0076】
また、抵抗R21~R26を目標値より低い値に予め設定しても良い。これにより製造ロット毎の特性ばらつきが大きい場合でも、抵抗R21~R26をレーザートリミングすることで、RF特性を改善できる。また、高歩留で電力増幅器10を製造することできる。また、分圧回路325は電力増幅器10のうちMMIC20以外に設けられても良い。分圧回路325は1つのチップであっても良い。
【0077】
実施の形態4.
図12は、実施の形態4に係る電力増幅器410の平面図である。本実施の形態においてドレインバイアス回路基板60は、第1経路10aと第2経路10bとの間に配置される。本実施の形態では、第1経路10aと第2経路10bで共通のドレインバイアス回路基板60が使用される。また、差周波短絡用のコンデンサについても、第1経路10aと第2経路10bで共通のコンデンサC70が、第1経路10aと第2経路10bとの間に配置されても良い。これにより、部品数を削減でき、材料コストおよび組立コストを低減できる。
【0078】
実施の形態5.
図13は、実施の形態5に係る電力増幅器510の平面図である。電力増幅器510は、第1経路10aと第2経路10bとの間に配置されたダイオードリニアライザ75を備える。ダイオードリニアライザ75において、ダイオードD11のアノードは抵抗R11を介して接地用端子に接続される。なお、
図13ではドレインバイアス回路基板60は省略されている。
【0079】
これにより、パッケージ15を大型化することなくダイオードリニアライザ75を配置できる。従って、歪特性を大きく改善できる。この際、ダイオードD11のアノードを接地することでダイオードリニアライザ75のバイアス端子は不要となる。従って、パッケージ15の端子数を2端子に維持できる。
【0080】
ダイオードD11は、MMIC20の1段目の前段に並列に接続されると良い。電力が増幅された後のトランジスタ40の後段等にダイオードD11を接続する場合、耐電力の大きなダイオードD11が必要になる。
【0081】
図14は、実施の形態5の変形例に係る電力増幅器610の平面図である。抵抗R11はMMIC20に設けられても良い。
【0082】
各実施の形態で説明した技術的特徴は適宜に組み合わせて用いても良い。
【符号の説明】
【0083】
10 電力増幅器、10a 第1経路、10b 第2経路、11 入力端子、12 出力端子、13 ワイヤ、15 パッケージ、20、20a、20b MMIC、21 入力パッド、22 ドレインパッド、23 出力パッド、24 入力側回路、25 段間回路、26 出力側回路、27 1/4波長線路、28 基板、29 安定化回路、29a 整合用線路、30、30a、30b 入力整合回路、31 基板、32 パターン、40、40a、40b トランジスタ、41 基板、42 トランジスタセル、43 プリマッチ回路、50、50a、50b 出力整合回路、51a、51b 整合回路基板、52 基板、53 パターン、55a、55b 整合回路基板、56 基板、57 パターン、60、60a、60b ドレインバイアス回路基板、61 基板、62 線路、75 ダイオードリニアライザ、80 ゲートバイアス回路、81a 波長オープンスタブ、81b 1/4波長線路、90 ドレインバイアス回路、91 ショートスタブ、91a 波長オープンスタブ、91b 1/4波長線路、91c 1/4波長オープンスタブ、91d 1/4波長線路、100 高周波モジュール、210 電力増幅器、258a、258b ショートスタブ、325 分圧回路、410、510、610 電力増幅器、800 高周波モジュール、810a~810c 内部整合型FET、C21、C22 キャパシタ、C29 パスコン、C70、C71、C72、C91 コンデンサ、D11 ダイオード、L21~L23、L61 チョークインダクタ、R11、R21~R26、R29 抵抗、Tr21、Tr21a、Tr22b、Tr22、Tr22a~Tr22d トランジスタ、Vdd ドレインバイアス供給点、Vgg ゲートバイアス供給点