(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】回転電機用ステータ及び回転電機用ステータの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 3/28 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
H02K3/28 K
(21)【出願番号】P 2023531484
(86)(22)【出願日】2022-05-10
(86)【国際出願番号】 JP2022019833
(87)【国際公開番号】W WO2023276452
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2023-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2021108370
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】三好 洋一
(72)【発明者】
【氏名】長谷 将洋
【審査官】稲葉 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-037046(JP,A)
【文献】特開昭59-035544(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスロットを有するステータコアと、
径方向に視て閉じたコイル形状の2つのコイル部分を同心状に含む複数の二重巻コイルが、相ごとに前記ステータコアに全周にわたり巻装されることで、形成されるステータコイルとを含み、
一の二重巻コイルにおける前記2つのコイル部分は、それぞれ、異なるスロットに挿入される周方向両側のスロット挿入部と、前記周方向両側のスロット挿入部の軸方向両側の端部間で周方向に延在する軸方向両側の渡り部とにより、前記閉じたコイル形状を形成し、
複数の前記二重巻コイルは、一の前記二重巻コイルのスロット挿入部が、他の前記二重巻コイルのスロット挿入部と径方向で隣接する態様で、各スロット内に挿入され、
各相の前記二重巻コイルは、中性点から最も遠い側の第1の二重巻コイルと、それ以外の第2の二重巻コイルとを含み、
第1相の前記第1の二重巻コイル、第2相の前記第1の二重巻コイル、及び第3相の前記第1の二重巻コイルのうちの、前記第1相の前記第1の二重巻コイルと前記第2相の前記第1の二重巻コイルの組み合わせだけが少なくとも1つのスロット分の特定の周方向区間でオーバラップし、かつ、異なる相の前記第1の二重巻コイルのそれぞれの前記スロット挿入部が異なるスロット内に挿入される、回転電機用ステータ。
【請求項2】
前記第3相の前記第2の二重巻コイルの前記渡り部は、前記特定の周方向区間において、径方向で前記第1相の前記第1の二重巻コイルの前記渡り部と前記第2相の前記第1の二重巻コイルの前記渡り部との間に、配置される、請求項1に記載の回転電機用ステータ。
【請求項3】
複数のスロットは、前記特定の周方向区間において、前記第1相の前記第1の二重巻コイルと前記第1相の前記第2の二重巻コイルとが挿入される特定のスロットを含み、
前記特定のスロットが位置する周方向位置において、前記第1相の前記第2の二重巻コイルは、径方向で前記第1相の前記第1の二重巻コイルと前記第2相の前記第1の二重巻コイルとの間に、配置される、請求項2に記載の回転電機用ステータ。
【請求項4】
前記特定のスロットが位置する周方向位置において、前記第3相の前記第2の二重巻コイルは、径方向で前記第1相の前記第2の二重巻コイルと前記第2相の前記第1の二重巻コイルとの間に、配置される、請求項3に記載の回転電機用ステータ。
【請求項5】
複数のスロットを有するステータコアを準備する工程と、
周長が長い方のコイル部分と、周長が短い方のコイル部分とを同心状に有する二重巻コイルを複数準備する工程と、
複数の前記二重巻コイルを前記ステータコアに全周巻装することで、複数相のステータコイルを形成する巻装工程とを含み、
各相の前記二重巻コイルは、中性点から最も遠い側の第1の二重巻コイルと、それ以外の第2の二重巻コイルとを含み、
前記巻装工程は、第1相の前記第1の二重巻コイル、第2相の前記第1の二重巻コイル、及び第3相の前記第1の二重巻コイルのうちの、前記第1相の前記第1の二重巻コイルと前記第2相の前記第1の二重巻コイルの組み合わせだけを少なくとも1つのスロット分の特定の周方向区間でオーバラップさせつつ、異なる相の前記第1の二重巻コイルを異なるスロット内に挿入することを含む、回転電機用ステータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転電機用ステータ及び回転電機用ステータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のスロットの一部に、異なる相の複数のコイル線が周方向に重なって配置されている回転電機のステータが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来技術では、相ごとに、二重巻コイル部分と、一重巻きコイル部分とを、周方向に交互に配置する構成となるので、ステータコイルを形成するコイルの種類が多くなりかつ巻き方が複雑となるという問題がある。
【0005】
他方、1種類の二重巻コイルを利用した場合、かかる問題が解消できる反面、各相の二重巻コイルの配置に依存して、異相の二重巻コイル同士がコイルエンドやスロット内で近接しうる。異相の二重巻コイル同士が径方向に近接すると、例えば相間絶縁紙を設ける等の相間絶縁用の対策が必要となり、その対策分だけコストアップ等を招くおそれがある。特に、異相の二重巻コイルであって、中性点から最も遠い側の異相の二重巻コイルは、他の異相の二重巻コイル間よりも電位差が高いため、径方向に近接すると、相間絶縁の必要性が高くなる。
【0006】
そこで、本開示は、1種類の二重巻コイルを利用しつつ、相間絶縁用の対策の必要性を低減又は無くすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一局面によれば、複数のスロットを有するステータコアと、
径方向に視て閉じたコイル形状の2つのコイル部分を同心状に含む複数の二重巻コイルが、相ごとに前記ステータコアに全周にわたり巻装されることで、形成されるステータコイルとを含み、
一の二重巻コイルにおける前記2つのコイル部分は、それぞれ、異なるスロットに挿入される周方向両側のスロット挿入部と、前記周方向両側のスロット挿入部の軸方向両側の端部間で周方向に延在する軸方向両側の渡り部とにより、前記閉じたコイル形状を形成し、
複数の前記二重巻コイルは、一の前記二重巻コイルのスロット挿入部が、他の前記二重巻コイルのスロット挿入部と径方向で隣接する態様で、各スロット内に挿入され、
各相の前記二重巻コイルは、中性点から最も遠い側の第1の二重巻コイルと、それ以外の第2の二重巻コイルとを含み、
第1相の前記第1の二重巻コイル、第2相の前記第1の二重巻コイル、及び第3相の前記第1の二重巻コイルのうちの、前記第1相の前記第1の二重巻コイルと前記第2相の前記第1の二重巻コイルの組み合わせだけが少なくとも1つのスロット分の特定の周方向区間でオーバラップし、かつ、異なる相の前記第1の二重巻コイルのそれぞれの前記スロット挿入部が異なるスロット内に挿入される、回転電機用ステータが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、1種類の二重巻コイルを利用しつつ、相間絶縁用の対策を低減又は無くすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1による回転電機のステータの断面図である。
【
図2】二重巻コイルの好ましい例を、径方向に視た概略的な平面図である。
【
図3】二重巻コイルの他の例を、径方向に視た概略的な平面図である。
【
図5】第1二重巻コイルの配置を説明する断面図である。
【
図8】実施例2による回転電機のステータの断面図である。
【
図9】特定の周方向区間の端部スロットからの渡り部の配置(本実施例による構成)を示す断面図である。
【
図10】特定の周方向区間の端部スロットからの渡り部の配置(実施例2による構成)を示す断面図である。
【
図11】本実施例による回転電機のステータの製造方法の説明図(その1)である。
【
図12】本実施例による回転電機のステータの製造方法の説明図(その2)である。
【
図13】実施例3による回転電機のステータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率はあくまでも一例であり、これに限定されるものではなく、また、図面内の形状等は、説明の都合上、部分的に誇張している場合がある。
【0011】
図1は、本実施例による回転電機のステータ10の断面図である。以下の説明において、軸方向とは、回転電機の回転軸(回転中心)Iが延在する方向を指し、径方向とは、回転軸Iを中心とした径方向を指す。従って、径方向外側とは、回転軸Iから離れる側を指し、径方向内側とは、回転軸Iに向かう側を指す。また、周方向とは、回転軸Iまわりの回転方向に対応する。なお、
図1等では、見やすさのために、複数存在する同一属性の部位には、一部のみしか参照符号が付されていない場合がある。
【0012】
図1には、軸方向に垂直な断面で切断した際の、ステータ10の断面が示される。なお、
図1(後出の
図5等も同様)では、スロット15内に挿入されているコイル部(スロット挿入部)は、○内に“×”又は○内に“小さい●”が付された記号で示される。この記号の違いは、通電時の電流の流れる方向(すなわち軸方向で紙面を突き抜ける方向、又は、紙面から離れる方向)の相違に対応する。また、
図1(後出の
図5等も同様)では、ステータコイル12は、周方向の配置態様が分かるように、スロット挿入部以外の部分も併せて模式的に示されている。
【0013】
回転電機は、インナロータタイプであり、ステータ10がロータ(図示せず)の径方向外側を囲繞するように設けられる。回転電機は、例えばハイブリッド車両や電気自動車で使用される車両駆動用のモータであってよい。ただし、回転電機は、他の任意の用途に使用されるものであってもよい。
【0014】
ステータ10は、ステータコア11と、ステータコイル12とを備える。
【0015】
ステータコア11は、例えば円環状の磁性体の積層鋼板により形成されてよい。ステータコア11の内周部には、径方向内側に突出するティース14が放射状に形成される。複数のティース14は、周方向で隣り合うティース14間に、複数のスロット15を画成する。ティース14及びそれに伴うスロット15の数は任意であるが、本実施例では、一例として、36個設けられる。
図1には、36個のスロット15に対応付けて、1~36の数字が○内に示される。以下では、個別に各スロット15を表すときは、スロット15-k(k=1~36)で表記する。例えば、スロット15-1は、数字の“1”が入った○に対応付けられたスロット15を表す。なお、本実施例では、一例として、3相6極36スロットの回転電機であるが、これらの各数は適宜、変更されてもよい。なお、3相6極36スロットの場合は、6スロットが全節巻に係るコイルピッチとなり、従って、5スロット以下が短節巻に係るコイルピッチであり、7スロット以上が長節巻に係るコイルピッチとなる。
【0016】
ステータコイル12は、ステータコア11のティース14まわりに(すなわちスロット15内に)巻装される。ステータコイル12は、ステータコア11に二層巻で巻装される。なお、ステータコイル12は、例えば、1つ以上の並列関係で、Y結線の中性点で電気的に接続されてよい(
図4参照)。
【0017】
なお、二層巻では、角度の変化に応じた起磁力の変化(分布)を比較的なだらかにできるので(起磁力の波形を正弦波に、より近づけることができるので)、空間高調波を低減できる。すなわちNV(Noise Vibration)性能が良好となる。
【0018】
本実施例では、ステータコイル12は、U相(第1相の一例)、V相(第3相の一例)、W相(第2相の一例)のそれぞれの相ごとに、同心状にかつ異なる周長で巻回される二重巻コイル121U、121V、121Wにより形成される。二重巻コイル121Uは、U相用であり、本実施例では、6つ設けられる。同様に、二重巻コイル121Vは、V相用であり、6つ設けられ、二重巻コイル121Wは、W相用であり、6つ設けられる。なお、以下では、二重巻コイル121U、121V、121Wについて、各相を区別しない場合は、単に「二重巻コイル121」と表記する。
【0019】
一の二重巻コイル121は、径方向に視て略六角形の形態のコイル部分を同心状に2つ備え(
図2参照)、当該2つのコイル部分のうちの、周長(周方向の長さ)が長い方のコイル部分を、以下、「外側コイル部分」とも称し、周長が短い方のコイル部分を、以下、「内側コイル部分」とも称する。なお、二重巻コイル121の好ましい例は、
図2及び
図3を参照して後述する。
【0020】
一の二重巻コイル121は、4つのスロット15に挿入される。すなわち、外側コイル部分が2つのスロット15に挿入され、内側コイル部分が別の2つのスロット15に挿入される。
【0021】
具体的には、一の二重巻コイル121のうちの外側コイル部分は、周方向外側の対のスロット15に挿入され、同二重巻コイル121の内側コイル部分は、周方向内側の対のスロット15に挿入される。この場合、周方向外側の対のスロット15は、周方向で5つのスロット15を間に挟む(すなわち外側コイル部分は長節巻)。すなわち、一の二重巻コイル121のうちの外側コイル部分は、周方向で7つ分のスロット15にわたって配置される。また、周方向内側の対のスロット15は、周方向で3つのスロット15を間に挟む(すなわち内側コイル部分は短節巻)。すなわち、一の二重巻コイル121のうちの内側コイル部分は、周方向で5つ分のスロット15にわたって配置される。なお、この場合、外側コイル部分の周長は、7スロット分の周長であり、内側コイル部分の周長は、5スロット分の周長となり、それぞれのコイルピッチに対応する。
【0022】
例えば、6つの二重巻コイル121Uのうちの、
図1中で星マークに対応付けられた一の二重巻コイル121Uは、外側コイル部分が周方向外側の対のスロット15-2、15-8に挿入され、内側コイル部分が周方向内側の対のスロット15-3、15-7に挿入される。この場合、周方向外側の対のスロット15-2、15-8の周方向の中心は、周方向内側の対のスロット15-3、15-7の周方向の中心と一致し、当該中心は、スロット15-5の位置である。以上は、他の二重巻コイル121U、及び各二重巻コイル121V、121Wについても基本的に同じである。
【0023】
特に、本実施例では、二重巻コイル121U、121V、121Wのそれぞれの外側カセットコイル部分は、長節巻により、同じ相同士の対が、複数のスロット15のうちの、特定の複数のスロット(以下、「長節巻用スロット」とも称する)に挿入される。例えば、二重巻コイル121Uに係る長節巻用スロットは、スロット15-2、15-8、15-14、15-20、15-26、15-32である。
【0024】
他方、二重巻コイル121U、121V、121Wのそれぞれの内側コイル部分は、短節巻により、異なる相の対が、複数のスロットのうちの他の特定の複数のスロット(以下、「短節巻用スロット」とも称する)に挿入される。例えば、二重巻コイル121Uに係る短節巻用スロットは、スロット15-1、15-3、15-7、15-9、15-13、15-15、15-19、15-21、15-25、15-27、15-31、15-33である。そして、これらの短節巻用スロットのうちの、スロット15-1には、二重巻コイル121Vの内側コイル部分が挿入され、スロット15-3には、二重巻コイル121Wの内側コイル部分が挿入され、スロット15-7には、二重巻コイル121Vの内側コイル部分が挿入され、スロット15-9には、二重巻コイル121Wの内側コイル部分が挿入され、以下同様である。
【0025】
また、本実施例では、異なる相の内側コイル部分は、いずれか一方の相に係る内側コイル部分が径方向内側に、他方の相に係る内側コイル部分が径方向外側になる態様で、スロット15内に挿入される。本実施例による二重巻コイル121は、いずれの短節巻用スロットにおいても、U相に係る二重巻コイル121Uの内側コイル部分は、径方向で最も外側に位置し、W相に係る二重巻コイル121Wの内側コイル部分は、径方向で最も内側に位置する。その結果、いずれの短節巻用スロットにおいても、V相に係る二重巻コイル121Vの内側コイル部分は、二重巻コイル121Uの内側コイル部分の径方向内側に位置するか、二重巻コイル121Wの内側コイル部分の径方向外側に位置する。
【0026】
具体的には、二重巻コイル121Uの内側コイル部分は、いずれの短節巻用スロットにおいても、他の相の二重巻コイル121の内側コイル部分、すなわち、二重巻コイル121Vの内側コイル部分及び二重巻コイル121Wの内側コイル部分よりも径方向外側に位置する。
【0027】
また、二重巻コイル121Wの内側コイル部分は、いずれの短節巻用スロットにおいても、他の相の二重巻コイル121の内側コイル部分、すなわち、二重巻コイル121Uの内側コイル部分及び二重巻コイル121Vの内側コイル部分よりも径方向内側に位置する。
【0028】
そして、二重巻コイル121Vの内側コイル部分は、いずれの短節巻用スロットにおいても、二重巻コイル121Uの内側コイル部分と対となる場合は、二重巻コイル121Uの内側コイル部分よりも径方向内側に位置し、二重巻コイル121Wの内側コイル部分と対となる場合は、二重巻コイル121Wの内側コイル部分よりも径方向外側に位置する。
【0029】
このような本実施例によるステータコイル12によれば、径方向外側からU相、V相、及びW相の順に、インサート等を用いて容易に組み付けることができ、組み付け性が非常に良好となる(
図11及び
図12を参照して後述)。
【0030】
図2は、二重巻コイル121の好ましい例の説明図であり、径方向に視た概略的な平面図である。以下では、一の二重巻コイル121について説明するが、上述したように、他の二重巻コイル121も実質的に同様である(渡り線等の部分で相違があるだけである)。
【0031】
図2に示す例では、二重巻コイル121は、第1スロット挿入部1211と、第2スロット挿入部1212と、第3スロット挿入部1213と、第4スロット挿入部1214と、第1及び第2渡り部1215A、1215Bと、第3及び第4渡り部1216A、1216Bと、切替用の接続部1217と、端部1210、1218を含む。
【0032】
二重巻コイル121は、端部1210から端部1218まで一ピースであり、1本以上のコイル線(断面形状は円形や矩形)を、巻枠まわりに1回以上巻回して成形されてよい。なお、以下で説明するスロット挿入部の個数(N、N-1)は、当該コイル線の本数に対応する。
図2において、太線は、本数が2本以上である状態を示す。また、端部1210、1218は、図示のような直線上の形態から、曲げ成形される。
【0033】
第1スロット挿入部1211、第2スロット挿入部1212、第3スロット挿入部1213、及び第4スロット挿入部1214は、それぞれ、スロット15に挿入されるコイル片の部位である。なお、第1スロット挿入部1211、第2スロット挿入部1212、第3スロット挿入部1213、及び第4スロット挿入部1214がそれぞれ挿入されるスロット15は、互いに異なる。本実施例では、上述したように、一の二重巻コイル121に関して、第1スロット挿入部1211及び第4スロット挿入部1214が挿入される対のスロット15(長節巻用スロット)の間の中心は、第2スロット挿入部1212及び第3スロット挿入部1213が挿入される対のスロット15(短節巻用スロット)の間の中心と一致する。また、一の二重巻コイル121に関して、第1スロット挿入部1211が挿入されるスロット15(長節巻用スロット)と第2スロット挿入部1212が挿入されるスロット15(短節巻用スロット)とは、周方向で隣り合い、かつ、第4スロット挿入部1214が挿入されるスロット15(長節巻用スロット)と第3スロット挿入部1213が挿入されるスロット15(短節巻用スロット)とは、周方向で隣り合う関係となる。なお、この場合、第1スロット挿入部1211及び第4スロット挿入部1214が、第1及び第2渡り部1215A、1215Bとともに、上述した外側コイル部分を形成し、第2スロット挿入部1212及び第3スロット挿入部1213が、第3及び第4渡り部1216A、1216Bとともに、上述した内側コイル部分を形成する。
【0034】
例えば、
図1中で星マークに対応付けられた一の二重巻コイル121Uが
図2に示す二重巻コイル121により形成される場合、スロット15-8が長節巻用スロットであり、スロット15-7が短節巻用スロットであり、スロット15-3が短節巻用スロットであり、スロット15-2が長節巻用スロットである。
【0035】
第1渡り部1215Aは、リード側のコイルエンドを形成する。第1渡り部1215Aは、周方向の一方側が第1スロット挿入部1211のリード側端部に接続され、かつ、周方向の他方側が第4スロット挿入部1214のリード側端部に接続される。
【0036】
第2渡り部1215Bは、反リード側のコイルエンドを形成する。第2渡り部1215Bは、周方向の一方側が第1スロット挿入部1211の反リード側端部に接続され、かつ、周方向の他方側が第4スロット挿入部1214の反リード側端部に接続される。
【0037】
第3渡り部1216Aは、リード側のコイルエンドを形成する。第3渡り部1216Aは、周方向の一方側が第2スロット挿入部1212のリード側端部に接続され、かつ、周方向の他方側が第3スロット挿入部1213のリード側端部に接続される。
【0038】
第4渡り部1216Bは、反リード側のコイルエンドを形成する。第4渡り部1216Bは、周方向の一方側が第2スロット挿入部1212の反リード側端部に接続され、かつ、周方向の他方側が第3スロット挿入部1213の反リード側端部に接続される。
【0039】
切替用の接続部1217は、内側コイル部分と外側コイル部分との間の接続部を形成する。具体的には、切替用の接続部1217は、第4渡り部1216Bにおける第2スロット挿入部1212側の端部に接続される。切替用の接続部1217は、周方向の一方側が、一の第3スロット挿入部1213の反リード側端部に第4渡り部1216Bを介して接続され、かつ、周方向の他方側が、一の第1スロット挿入部1211の反リード側端部に接続される。
【0040】
ここで、上述のようにN個の第1スロット挿入部1211を有する二重巻コイル121を形成する場合は、端部1210から、第3スロット挿入部1213、第4渡り部1216B、第2スロット挿入部1212、第3渡り部1216A、第3スロット挿入部1213、第4渡り部1216B、といった具合に、N個の第3スロット挿入部1213及び第4渡り部1216Bが形成されるまで、繰り返す。そして、N個目の第4渡り部1216Bが形成されると、N個目の第4渡り部1216Bから切替用の接続部1217を形成し、ついで、同様に、第1スロット挿入部1211、第1渡り部1215A、第4スロット挿入部1214、第2渡り部1215B、第1スロット挿入部1211、第1渡り部1215A、第4スロット挿入部1214、第2渡り部1215B、といった具合に、N-1個の第2渡り部1215Bが形成されるまで、繰り返す。そして、N-1個目の第2渡り部1215Bが形成されると、N個目の第1スロット挿入部1211を形成してから端部1218を形成する。
【0041】
このような二重巻コイル121によれば、第1スロット挿入部1211と第4スロット挿入部1214のそれぞれの個数を1つだけ異ならせるとともに、第2スロット挿入部1212と第3スロット挿入部1213のそれぞれの個数を1つだけ異ならせることができる。すなわち、第1スロット挿入部1211の個数をN(≧2)とすると、第4スロット挿入部1214をN-1個とし、第2スロット挿入部1212をN-1個とし、第3スロット挿入部1213をN個とすることができる。なお、切替用の接続部1217は、N個の第1スロット挿入部1211のうちの1つに接続され、かつ、N個の第3スロット挿入部1213のうちの1つに第4渡り部1216Bを介して接続される。端部1210、1218も同様に、それぞれ、N個の第3スロット挿入部1213のうちの1つ、N個の第1スロット挿入部1211のうちの1つに接続される。なお、変形例では、切替用の接続部1217は、第2渡り部1215Bの一部を介して一の第1スロット挿入部1211の反リード側端部に接続されてよい。
【0042】
このような二重巻コイル121では、外側コイル部分の、対応するスロット15に挿入されるコイル片の本数(コイル本数)の合計と、内側コイル部分の、対応するスロット15に挿入されるコイル片の本数(コイル本数)の合計とは、同じである。すなわち、第1スロット挿入部1211の個数をN(≧2)とすると、第1スロット挿入部1211と第4スロット挿入部1214のそれぞれの個数の合計は、2N-1であり、第2スロット挿入部1212と第3スロット挿入部1213のそれぞれの個数の合計は、2N-1であり、同じとなる。
【0043】
なお、このような二重巻コイル121は、治具(インサータ)を用いて、対応するスロット15内に容易に組み付けることができ、組み付けの効率化を図ることができる。
【0044】
図3は、他の例による二重巻コイル121Aの説明図であり、径方向に視た概略的な平面図である。
【0045】
他の例による二重巻コイル121Aは、
図2に示した二重巻コイル121に対して、第2スロット挿入部1212、第4スロット挿入部1214、及び切替用の接続部1217が、それぞれ、第2スロット挿入部1212A、第4スロット挿入部1214A、及び切替用の接続部1217Aで置換された点が異なる。
【0046】
本質的には、他の例による二重巻コイル121Aは、
図2に示した二重巻コイル121に対して、切替用の接続部1217Aの位置が異なることで、第1スロット挿入部1211、第2スロット挿入部1212A、第3スロット挿入部1213、及び第4スロット挿入部1214Aのそれぞれの数が同一となる。すなわち、第1スロット挿入部1211の個数をNとすると、第4スロット挿入部1214AをN個とし、第2スロット挿入部1212AをN個とし、第3スロット挿入部1213をN個とすることができる。
【0047】
このような二重巻コイル121Aでは、
図2に示した二重巻コイル121と同様、外側コイル部分の、対応するスロット15に挿入されるコイル片の本数(コイル本数)の合計と、内側コイル部分の、対応するスロット15に挿入されるコイル片の本数(コイル本数)の合計とは、同じである。すなわち、第1スロット挿入部1211の個数をN(≧2)とすると、第1スロット挿入部1211と第4スロット挿入部1214Aのそれぞれの個数の合計は、2Nであり、第2スロット挿入部1212Aと第3スロット挿入部1213のそれぞれの個数の合計は、2Nであり、同じとなる。
【0048】
このようにして、
図2に示した構成の二重巻コイル121を用いることで、奇数個のスロット挿入部が挿入されたステータ10を形成できる。
【0049】
なお、
図3に示した構成の二重巻コイル121Aを用いると、偶数個のスロット挿入部が挿入されたステータ(図示せず)を形成できる。
【0050】
ところで、ステータ10の各スロット15に挿入されるスロット挿入部の数は、当該ステータ10を備えた回転電機により実現されるべき出力特性等に応じて異なる。一般的に、比較的高い出力の回転電機には、比較的多くの数のスロット挿入部が各スロット15に挿入される。
【0051】
この点、
図2に示した構成の二重巻コイル121又は
図3に示した構成の二重巻コイル121Aを選択的に用いる場合は、特定の出力特性を実現するための回転電機の構成の最適化を図ることができる。例えば、特定の出力特性が、合計7つのスロット挿入部が各スロット15内に挿入される際に実現される場合に、
図3に示した構成の二重巻コイル121Aを利用して、合計6つのスロット挿入部が各スロット15内に挿入される構成を実現した場合、出力特性が不足傾向となる。これに対して、
図3に示した構成の二重巻コイル121Aを利用して、合計8つのスロット挿入部が各スロット15内に挿入される構成を実現した場合、出力特性が過大となる。このような場合、
図2に示した構成の二重巻コイル121を用いることで、かかる不都合を防止できる。換言すると、一のスロット15内に挿入できるスロット挿入部の数の自由度を高めることができる。
【0052】
また、
図2に示した構成の二重巻コイル121を用いる場合は、第1スロット挿入部1211及び第3スロット挿入部1213をN個形成しつつ、第1及び第2渡り部1215A、1215Bや第3渡り部1216AをN-1個に留めることができる。これにより、コイルエンドを形成する第1及び第2渡り部1215A、1215Bの個数を効率的に低減でき、コイルエンドの体格の低減を図ることができる。
【0053】
図4は、ステータコイル12の接続態様の一例を模式的に示す図である。本実施例では、一例として、ステータコイル12は、
図4に模式的に示すように、相ごとに2組の並列関係で、Y結線の中性点で電気的に接続されている。具体的には、ステータコイル12は、U相の2組の二重巻コイル121U-1、121U-2が、並列関係で、中性点と動力線側のU相端子90Uとの間に電気的に接続されている。また、他の相も同様であり、ステータコイル12は、V相の2組の二重巻コイル121V-1、121V-2が、並列関係で、中性点と動力線側のV相端子90Vとの間に電気的に接続されている。また、ステータコイル12は、W相の2組の二重巻コイル121W-1、121W-2が、並列関係で、中性点と動力線側のW相端子90Wとの間に電気的に接続されている。
【0054】
なお、
図4では、各組の二重巻コイル、例えば二重巻コイル121U-1は、上述の3つの二重巻コイル121を含み、合計6つのコイル部分を形成する。以下では、各相の各組における3つの二重巻コイル121のうちの、中性点から最も遠い側の1つの二重巻コイル121を、「第1二重巻コイル121」とも称し、それ以外の2つの二重巻コイル121を、「第2二重巻コイル121」とも称する。また、各相について区別する際は、第1二重巻コイル121は、第1二重巻コイル121U、121V、121Wといった表記で表す場合がある。
【0055】
U相の2組のそれぞれにおいて、第1二重巻コイル121Uは、一端が動力線側のU相端子90Uに、他の二重巻コイル121を介することなく、電気的に接続され、他端が第2二重巻コイル121Uの動力線側の端部に電気的に接続される。同様に、V相の2組のそれぞれにおいて、第1二重巻コイル121Vは、一端が動力線側のV相端子90Vに、他の二重巻コイル121を介することなく、電気的に接続され、他端が第2二重巻コイル121Vの動力線側の端部に電気的に接続される。同様に、W相の2組のそれぞれにおいて、第1二重巻コイル121Wは、一端が動力線側のW相端子90Wに、他の二重巻コイル121を介することなく、電気的に接続され、他端が第2二重巻コイル121Wの動力線側の端部に電気的に接続される。
【0056】
次に、
図5以降を参照して、ステータコイル12の構成を更に詳しく説明する。なお、以下では、一例として、
図2に示した二重巻コイル121を利用する例について説明するが、
図3に示した二重巻コイル121Aや他の二重巻コイル(図示せず)を利用する場合も同様である。また、以下では、特に言及しない限り、リード側のコイルエンドに関して説明するが、反リード側のコイルエンドについても同様である。また、以下では、特に言及しない限り、二重巻コイル121の渡り部とは、
図2に示す二重巻コイル121における第1渡り部1215A及び第3渡り部1216Aを指す。また、以下では、特に言及しない限り、二重巻コイル121の外側コイル部分のスロット挿入部とは、
図2に示す二重巻コイル121における第1スロット挿入部1211及び第4スロット挿入部1214を指す。なお、渡り部とは、スロット挿入部の軸方向端部(スロット15内に収まる部分の軸方向端部)から始まる部分である。
【0057】
図5は、第1二重巻コイル121の配置の説明図であり、
図1に示した図において、第1二重巻コイル121だけをハッチングで示した図である。なお、
図5(後出の
図8等も同様)第1二重巻コイル121と第2二重巻コイル121の区別のため、第1二重巻コイル121には、符号121U等に後続するカッコ内に“ダイヤ(ひし形)”マークが付与されている。
図6は、
図5のQ6部付近の拡大図であり、特定の周方向区間における構成の説明図である。
図7は、各スロット15における二重巻コイル121の配置を説明する図であり、代表として、一部のスロット15-8から15-11における配置を概略的に示す図である。
【0058】
本実施例では、
図5及び
図6に示すように、U相の第1二重巻コイル121UとW相の第1二重巻コイル121Wとが特定の周方向区間(
図5及び
図6のQ6部参照)でオーバラップし、かつ、
図5及び
図7に示すように、異なる相の第1二重巻コイル121は異なるスロット15内に挿入される。
【0059】
具体的には、U相の2つの第1二重巻コイル121Uは、スロット15-2からスロット15-14の周方向区間にわたり周方向に延在し、V相の2つの第1二重巻コイル121Vは、スロット15-24からスロット15-36の周方向区間にわたり周方向に延在し、W相の2つの第1二重巻コイル121Wは、スロット15-10からスロット15-22の周方向区間にわたり周方向に延在する。従って、この場合、スロット15-10からスロット15-14の5スロット分の周方向区間が特定の周方向区間となり、当該特定の周方向区間において、U相の第1二重巻コイル121UとW相の第1二重巻コイル121Wとがオーバラップする。なお、オーバラップとは、同じ周方向区間に延在する態様を指す。
【0060】
また、U相の2つの第1二重巻コイル121Uは、スロット15-2、15-3、15-7、15-8、15-9、15-13、及び15-14に挿入され、V相の2つの第1二重巻コイル121Vは、スロット15-24、15-25、15-29、15-30、15-31、15-35、及び15-36に挿入される。そして、W相の2つの第1二重巻コイル121Wは、スロット15-10、15-11、15-15、15-16、15-17、15-21、及び15-22に挿入される。このようにして、U相の2つの第1二重巻コイル121Uは、V相の2つの第1二重巻コイル121VやW相の2つの第1二重巻コイル121Wとは異なるスロット15に挿入され、V相の2つの第1二重巻コイル121Vは、W相の2つの第1二重巻コイル121Wとは異なるスロット15に挿入される。
【0061】
ところで、U相端子90U、V相端子90V、及びW相端子90Wは、インバータ(図示せず)の各スイッチング素子のオン/オフ状態に応じて高電位側と低電位側に電気的に接続されるので、回転電機の駆動時には、高圧バッテリ(図示せず)の定格電圧(又はDC/DCコンバータ等で昇圧される場合は昇圧後の電圧)に応じた比較的大きい電位差が発生する。従って、異相の二重巻コイル121間においては、U相端子90U、V相端子90V、及びW相端子90Wに最も近い第1二重巻コイル121間において、最も大きい電位差が生じる。すなわち、異相の二重巻コイル121間のうち、第1二重巻コイル121間において、第2二重巻コイル121間や、第1二重巻コイル121と第2二重巻コイル121の間よりも、大きい電位差が生じる。
【0062】
このため、このような複数の二重巻コイル121によりステータコイル12を形成する場合、異相の第1二重巻コイル121間で必要な電気的な絶縁距離を確保できれば、ステータコイル12として必要な絶縁性を確保しやすくなる。
【0063】
この点、本実施例では、上述したように、周方向では、特定の周方向区間においてのみ、U相の第1二重巻コイル121UとW相の第1二重巻コイル121Wとがオーバラップするだけであるので、他の周方向区間におけるコイルエンドでの絶縁性の確保が容易である。従って、特定の周方向区間以外の周方向区間において、相間絶縁用の対策の必要性を低減又は無くすことができる。これにより、例えば、ステータコイル12のコイルエンドの全周のうちの、特定の周方向区間以外の周方向区間において、相間絶縁紙を設けない構成を実現できる。これにより、相間絶縁紙に起因した不都合(コストアップや組み付け工程の複雑化等)を防止できる。
【0064】
また、本実施例では、特定の周方向区間において、径方向でU相の第1二重巻コイル121Uの渡り部とW相の第1二重巻コイル121Wの渡り部との間には、
図5及び
図6に示すように、第2二重巻コイル121Vの渡り部が配置される。これにより、径方向でU相の第1二重巻コイル121UとW相の第1二重巻コイル121Wとは、特定の周方向区間において、オーバラップするものの、径方向で直接的に隣接しない。従って、特定の周方向区間においても、相間絶縁用の対策の必要性を低減又は無くすことができる。これにより、例えば、ステータコイル12のコイルエンドの全周のうちの、特定の周方向区間においても、相間絶縁紙を設けない構成を実現できる。
【0065】
また、本実施例によれば、異相の第1二重巻コイル121が同一のスロット15内に挿入されないので、すべてのスロット15内において、相間絶縁用の対策の必要性を低減又は無くすことができる。これにより、例えば、ステータコイル12のすべてのスロット挿入部(例えば、
図2に示す例では、第1スロット挿入部1211等)に対して相間絶縁紙を設けない構成を実現できる。また、このような相間絶縁紙をスロット15内に設けない構成を実現することで、スロット15内のコイル占積率を高めることができる。換言すると、相間絶縁紙をスロット15内に設ける場合に比べて、スロット15内のコイル占積率を変化させることなく、ステータコア11の体格を低減できる。
【0066】
次に、
図5、
図6、及び
図8から
図10を参照して、他の実施例(以下、「実施例2」とも称する)ととともに本実施例の構成を更に説明する。
【0067】
図8は、実施例2によるステータ10Aのステータコイル12Aの配置を示す断面図である。
図8では、
図5と同様、二重巻コイル121のうちの、第1二重巻コイル121だけがハッチングされている。
図8Aは、
図8のQ8部付近の拡大図である。
図9は、本実施例による特定の周方向区間の端部スロットからの渡り部の配置の説明図であり、回転軸Iを含む平面で切断したときのステータ10の一部の断面図である。
図10は、実施例2による特定の周方向区間の端部スロットからの渡り部の配置の説明図であり、回転軸Iを含む平面で切断したときのステータ10Aの一部の断面図である。
図9及び
図10には、前出の
図5等と同様、第1二重巻コイル121と第2二重巻コイル121の区別のため、第1二重巻コイル121には、カッコ内に“ダイヤ”マークが付与されている。
【0068】
実施例2によるステータ10Aのステータコイル12Aは、本実施例によるステータコイル12に対して、主に、特定の周方向区間の両端部を形成するスロット(本実施例では、スロット15-10、15-14)におけるスロット挿入部の配置が異なる。
【0069】
具体的には、本実施例によるステータコイル12では、特定の周方向区間の両端部を形成するスロット(以下、「特定の周方向区間の端部スロット(特定のスロットの一例)」とも称する)(本実施例では、スロット15-10、15-14)において、
図5及び
図6に示すように、一の相の第1二重巻コイル121のスロット挿入部は、同相の第2二重巻コイル121のスロット挿入部よりも、径方向で他の相の第1二重巻コイル121に対して遠い側に配置されている。より具体的には、スロット15-10では、W相の第1二重巻コイル121Wのスロット挿入部は、W相の第2二重巻コイル121Wのスロット挿入部よりも径方向内側(すなわち、スロット15-10を周方向に横断するU相の第1二重巻コイル121Uの渡り部に対して径方向で遠い側)に挿入されている。また、スロット15-14では、U相の第1二重巻コイル121Uのスロット挿入部は、U相の第2二重巻コイル121Uのスロット挿入部よりも径方向外側(すなわち、スロット15-14を周方向に横断するW相の第1二重巻コイル121Wの渡り部に対して径方向で遠い側)に挿入されている。
【0070】
これに対して、実施例2によるステータコイル12Aでは、特定の周方向区間(
図8のQ8部参照)の端部スロット(本実施例では、スロット15-10、15-14)において、
図8に示すように、一の相の第1二重巻コイル121のスロット挿入部は、他の相の第1二重巻コイル121に対して、同一の相の第2二重巻コイル121のスロット挿入部よりも、径方向で近い側に配置されている。より具体的には、スロット15-10では、W相の第1二重巻コイル121Wのスロット挿入部は、W相の第2二重巻コイル121Wのスロット挿入部よりも径方向外側(すなわち、スロット15-10を周方向に横断するU相の第1二重巻コイル121Uの渡り部に対して径方向で近い側)に挿入されている。また、スロット15-14では、U相の第1二重巻コイル121Uのスロット挿入部は、U相の第2二重巻コイル121Uのスロット挿入部よりも径方向内側(すなわち、スロット15-14を周方向に横断するW相の第1二重巻コイル121Wの渡り部に対して径方向で近い側)に挿入されている。
【0071】
このような実施例2では、
図10に示すように、特定の周方向区間の端部スロット(
図10では、スロット15-10、15-14のうちの、スロット15-10について図示)において、ステータコア11の軸方向端面近傍で、異相の第1二重巻コイル121の渡り部同士が近接しやすくなる(
図10のQ10部参照)。
図10では、スロット15-10において、W相の第1二重巻コイル121Wの渡り部は、径方向内側への曲げ区間において、U相の第1二重巻コイル121Uの渡り部に近接している。従って、このような実施例2では、特定の周方向区間の端部スロットにおいて、局所的に、相間絶縁用の対策が必要となりうる。
【0072】
これに対して、本実施例によれば、
図9に示すように、特定の周方向区間の端部スロット(
図9では、スロット15-10、15-14のうちの、スロット15-10について図示)において、ステータコア11の軸方向端面近傍で、異相の第1二重巻コイル121の渡り部同士が接触することはない(
図9のQ9部参照)。すなわち、異相の第1二重巻コイル121の渡り部と第2二重巻コイル121の渡り部同士が接触することで、異相の第1二重巻コイル121の渡り部同士が接触することが防止される。
図9では、スロット15-10において、W相の第2二重巻コイル121Wの渡り部は、径方向内側への曲げ区間において、U相の第1二重巻コイル121Uの渡り部に近接しているが、W相の第1二重巻コイル121Wの渡り部は、U相の第1二重巻コイル121Uの渡り部から径方向で離間できている。
【0073】
また、この場合、特定の周方向区間の端部スロット(
図9では、スロット15-10、15-14のうちの、スロット15-10について図示)において、異相の第1二重巻コイル121の渡り部の間には、2つの第2二重巻コイル121の渡り部が介在することになるので、異相の第1二重巻コイル121の渡り部の間の径方向の距離を効率的に大きくすることができる。
【0074】
このようにして、本実施例によれば、特定の周方向区間の端部スロットに関連して局所的に生じうる相間絶縁用の対策の必要性を低減又は無くすことができる。これにより、例えば、ステータコイル12のコイルエンドの全体にわたって相間絶縁紙を設けない構成を実現できる。
【0075】
なお、実施例2によっても、特定の周方向区間の端部スロットに関連して局所的に生じうる相間絶縁用の対策の必要性が生じるものの、上述した実施例に係るその他の効果が奏される。
【0076】
次に、
図4、
図11及び
図12を参照して、ステータ10の製造方法について説明する。ここでは、上述した実施例によるステータ10の製造方法について説明するが、上述した実施例2によるステータ10Aの製造方法についても同様であってよい。
【0077】
ステータ10の製造方法は、上述したステータコア11と二重巻コイル121とを準備する工程と、巻装工程とを含む。巻装工程は、相ごとの複数の二重巻コイル121をステータコア11に全周巻装することで、複数相のステータコイル12を形成することを含む。
【0078】
図11及び
図12は、本実施例による回転電機のステータ10の製造方法(ステータコイル12の組み付け方法)の説明図である。具体的には、
図11は、U相の1組目の二重巻コイル121U-1の組み付け工程の説明図であり、
図12は、W相の2組目の二重巻コイル121W-2の組み付け工程の説明図である。
図12には、組み付け済の各二重巻コイル121が、ハッチングされていない絵で、併せて図示されている。
【0079】
U相の1組目の二重巻コイル121U-1(
図4参照)は、上述した3つの二重巻コイル121U(
図4では、それぞれ121U(1)~(3)で表記)を含み、合計6つのコイル部分を形成する。U相の2組目の二重巻コイル121U-2についても同様であり、上述の3つの二重巻コイル121U(それぞれ121U(4)~(6)で表記)を含む。この場合、121U(1)と121U(4)とが、第1二重巻コイル121Uに対応する。これらは、他の相(V相及びW相)も同様である。
【0080】
具体的には、本実施例のステータコイル12の組み付け方法は、まず、U相の1組目の3つの二重巻コイル121U-1を、インサータ(図示せず)によりステータコア11に対して軸方向外側から軸方向に組み付けることを含む。
【0081】
例えば、
図2及び
図3に示した二重巻コイル121、121Aと同様の二重巻コイル121を用いる場合、インサータは、ステータコア11に対して軸方向外側から二重巻コイル121、121Aの第1及び第3渡り部1215A、1216A側をステータコア11の内径側の空間を通って軸方向の一方側から他方側まで至らせる態様で、軸方向の組み付けを実現してよい。この場合、インサータは、二重巻コイル121、121Aの第1スロット挿入部1211、第2スロット挿入部1212、第3スロット挿入部1213、及び第4スロット挿入部1214を各スロット15に軸方向に挿入しながら、第1及び第3渡り部1215A、1216A側をステータコア11の他方側まで至らせた後、第1及び第3渡り部1215A、1216Aを、径方向外側へと倒すことで、軸方向の組み付けを完了させることができる。あるいは、インサータは、第2及び第4渡り部1215B、1216B側をステータコア11の内径側の空間を通って軸方向の一方側から他方側まで至らせる態様で、軸方向の組み付けを実現してよい。
【0082】
ここで、U相の1組目の二重巻コイル121U-1は、上述の3つの二重巻コイル121U(1)~(3)を同時に組み付けることができるので、上述の3つの二重巻コイル121Uのそれぞれを別々にステータコア11に組み付ける場合よりも効率的な組み付けを実現できる。
【0083】
図11には、U相の1組目の二重巻コイル121U-1を形成する3つの二重巻コイル121U(1)、121U(2)、121U(3)を直列に電気的に接続する渡り線222U-1、222U-2が模式的に示されている。
図2及び
図3に示した二重巻コイル121、121Aと同様の二重巻コイル121を用いる場合、渡り線222U-1、222U-2は、
図2及び
図3に示した端部1210、1218から形成されてよい。具体的には、二重巻コイル121U(1)は、U相端子90U(
図4参照)に接続される端点U1を形成する端部1210を有し、二重巻コイル121U(1)の端部1218は、他の二重巻コイル121U(2)の端部1210へと、渡り線222U-1を介して連続し、当該他の二重巻コイル121U(2)の端部1218は、中性点UN1に接続される端部1218を有する更なる他の二重巻コイル121U(3)の端部1210へと、渡り線222U-2を介して連続する。なお、これらの3つの二重巻コイル121U(1)、121U(2)、121U(3)は、連続した1本のコイル線により形成されてよい。
【0084】
ついで、本実施例のステータコイル12の組み付け方法は、U相の2組目の3つの二重巻コイル121U(4)~(6)を、インサータ(図示せず)によりステータコア11に対して軸方向外側から軸方向に組み付けることを含む。なお、インサータは、U相の1組目の二重巻コイル121U-1を組み付ける際に利用するインサータと共通であってよく、組み付け方法も、U相の1組目の二重巻コイル121U-1を組み付ける際と同様であってよい。これは、後続するV相からW相についてもそれぞれ同様である。
【0085】
本実施例では、U相の2組目の二重巻コイル121U-2は、上述したU相の1組目の二重巻コイル121U-1の組み付け後に、U相の1組目の二重巻コイル121U-1に対して径方向内側からかつステータコア11に対して軸方向外側から軸方向に組み付けることが可能である。
【0086】
このため、U相の2組目の二重巻コイル121U-2についても、上述したU相の1組目の二重巻コイル121U-1と同様、上述の3つの二重巻コイル121U(4)、121U(5)、121U(6)を同時に(例えば互いに接続した状態で)組み付けることができる。これにより、上述の3つの二重巻コイル121Uのそれぞれを別々にステータコア11に組み付ける場合よりも効率的な組み付けを実現できる。
【0087】
なお、変形例では、U相の1組目の二重巻コイル121U-1と、U相の2組目の二重巻コイル121U-2とは、1回の組み付け工程で、インサータ(図示せず)によりステータコア11に対して軸方向外側から軸方向に組み付けることも可能である。この場合、U相の1組目の二重巻コイル121U-1と、U相の2組目の二重巻コイル121U-2とは、それぞれ別々のコイル線によりインサータにセットされてもよいし、連続した1本のコイル線によりインサータにセットされてもよい。これは、後続するV相からW相についてもそれぞれ同様である。
【0088】
本実施例のステータコイル12の組み付け方法は、以下同様に、V相及びW相の順に、同様の組み付けを実現することを含む。
【0089】
例えば、W相の2組目の二重巻コイル121W-2の組み付け工程では、
図12に示すように、W相の2組目の二重巻コイル121W-2は、第1二重巻コイル121Wである二重巻コイル121W(4)が、特定の周方向区間(
図5のQ6部参照)で、組み付け済の第1二重巻コイル121Uである二重巻コイル121U(1)にオーバラップする態様で、組み付けられる。
【0090】
なお、
図12には、W相の2組目の二重巻コイル121W-2を形成する3つの二重巻コイル121W(4)、121W(5)、121W(6)を直列に電気的に接続する渡り線222W-3、222W-4が模式的に示されている。
図2及び
図3に示した二重巻コイル121、121Aと同様の二重巻コイル121を用いる場合、渡り線222W-3、222W-4は、
図2及び
図3に示した端部1210、1218から形成されてよい。具体的には、中性点WN2に接続される端部1210を有する二重巻コイル121W(6)の端部1218は、他の二重巻コイル121W(5)の端部1210へと、渡り線222W-3を介して連続し、当該他の二重巻コイル121W(5)の端部1218は、更なる他の二重巻コイル121W(4)の端部1210へと、渡り線222W-4を介して連続し、更なる他の二重巻コイル121W(4)は、W相端子90W(
図4参照)に接続される端点W2を形成する端部1218を有する。
【0091】
このようにして本実施例では、巻装工程は、U相の第1二重巻コイル121UとW相の第1二重巻コイル121Wとを特定の周方向区間でオーバラップさせつつ、異なる相の第1二重巻コイル121Wを異なるスロット15内に挿入することを含む態様で、実現できる。
【0092】
次に、
図13を参照して、更なる他の実施例について説明する。
【0093】
図13は、更なる他の実施例(以下、「実施例3」と称する)によるステータ10Bのステータコイル12Bの配置を示す断面図である。
図13では、
図5と同様、二重巻コイル121のうちの、第1二重巻コイル121だけがハッチングされている。
【0094】
実施例3によるステータ10Bのステータコイル12Bは、本実施例によるステータコイル12に対して、相ごとに、複数の二重巻コイル121をステータコア11に全周巻装されることで、形成される点が共通であるが、複数の二重巻コイル121の配置が異なる。
【0095】
具体的には、上述した実施例では、U相の二重巻コイル121は、すべて他の相の二重巻コイル121よりも径方向外側に配置され、かつ、W相の二重巻コイル121は、すべて他の相の二重巻コイル121よりも径方向内側に配置されているが、実施例3では、複数の二重巻コイル121の一部は、相間で径方向内外での行き来が生じる態様で配置される。
【0096】
具体的には、上述した実施例による二重巻コイル121では、いずれの短節巻用スロットにおいても、U相に係る二重巻コイル121Uの内側コイル部分は、径方向で最も外側に位置し、W相に係る二重巻コイル121Wの内側コイル部分は、径方向で最も内側に位置する。その結果、いずれの短節巻用スロットにおいても、V相に係る二重巻コイル121Vの内側コイル部分は、二重巻コイル121Uの内側コイル部分の径方向内側に位置するか、二重巻コイル121Wの内側コイル部分の径方向外側に位置する。
【0097】
これに対して、実施例3による二重巻コイル121では、特定の周方向区間(後述)に延在する複数の二重巻コイル121を除いて、内側コイル部分のうちの周方向一方側のスロット挿入部(
図2に示す二重巻コイル121の場合は、第2スロット挿入部1212又は第3スロット挿入部1213)は、他の相のスロット挿入部よりも径方向外側に挿入され、周方向他方側のスロット挿入部は、他の相のスロット挿入部よりも径方向内側に挿入される。例えば、6つの二重巻コイル121Uのうちの、
図1中で星マークに対応付けられた一の二重巻コイル121Uは、スロット15-3では、同スロットに挿入されるW相の二重巻コイル121Wより径方向外側に挿入され、スロット15-7では、同スロットに挿入されるV相の二重巻コイル121Vより径方向内側に挿入されている。同様に、実施例3による二重巻コイル121では、特定の周方向区間(後述)に延在する複数の二重巻コイル121を除いて、外側コイル部分のうちの周方向一方側のスロット挿入部(
図2に示す二重巻コイル121の場合は、第1スロット挿入部1211又は第4スロット挿入部1214)は、他の同相のスロット挿入部よりも径方向外側に挿入され、周方向他方側のスロット挿入部は、他の同相のスロット挿入部よりも径方向内側に挿入される。
【0098】
このような複数の二重巻コイル121の配置により実現されるステータコイル12Bにおいても、第1二重巻コイル121(すなわち中性点から最も遠い側の二重巻コイル121)の配置を、上述した実施例と同様に相間絶縁用の対策の必要性を低減又は無くす態様で実現できる。
【0099】
具体的には、実施例3においても、U相の第1二重巻コイル121UとV相の第1二重巻コイル121Vとが特定の周方向区間(
図13のQ13部参照)でオーバラップし、かつ、
図13に示すように、異なる相の第1二重巻コイル121は異なるスロット15内に挿入される。
【0100】
より具体的には、U相の2つの第1二重巻コイル121Uは、時計回りでスロット15-32からスロット15-8の周方向区間にわたり周方向に延在し、V相の2つの第1二重巻コイル121Vは、スロット15-24からスロット15-36の周方向区間にわたり周方向に延在し、W相の2つの第1二重巻コイル121Wは、スロット15-10からスロット15-22の周方向区間にわたり周方向に延在する。従って、この場合、スロット15-32からスロット15-36の5スロット分の周方向区間が特定の周方向区間となり、当該特定の周方向区間において、U相の第1二重巻コイル121UとV相の第1二重巻コイル121Vとがオーバラップする。
【0101】
また、U相の2つの第1二重巻コイル121Uは、スロット15-2、15-3、15-7、15-8、15-32、15-33、及び15-1に挿入され、V相の2つの第1二重巻コイル121Vは、スロット15-24、15-25、15-29、15-30、15-31、15-35、及び15-36に挿入される。そして、W相の2つの第1二重巻コイル121Wは、スロット15-10、15-11、15-15、15-16、15-17、15-21、及び15-22に挿入される。このようにして、U相の2つの第1二重巻コイル121Uは、V相の2つの第1二重巻コイル121VやW相の2つの第1二重巻コイル121Wとは異なるスロット15に挿入され、V相の2つの第1二重巻コイル121Vは、W相の2つの第1二重巻コイル121Wとは異なるスロット15に挿入される。
【0102】
このように、実施例3においても、上述したように、周方向では、特定の周方向区間においてのみ、U相の第1二重巻コイル121UとV相の第1二重巻コイル121Vとがオーバラップするだけであるので、他の周方向区間におけるコイルエンドでの絶縁性の確保が容易である。従って、特定の周方向区間以外の周方向区間において、相間絶縁用の対策の必要性を低減又は無くすことができる。これにより、例えば、ステータコイル12Bのコイルエンドの全周のうちの、特定の周方向区間以外の周方向区間において、相間絶縁紙を設けない構成を実現できる。
【0103】
また、実施例3においても、特定の周方向区間において、径方向でU相の第1二重巻コイル121Uの渡り部とV相の第1二重巻コイル121Vの渡り部との間には、
図13に示すように、第2二重巻コイル121Wの渡り部が配置される。これにより、径方向でU相の第1二重巻コイル121UとV相の第1二重巻コイル121Vとは、特定の周方向区間において、オーバラップするものの、径方向で直接的に隣接しない。従って、特定の周方向区間においても、相間絶縁用の対策の必要性を低減又は無くすことができる。これにより、例えば、ステータコイル12Bのコイルエンドの全周のうちの、特定の周方向区間においても、相間絶縁紙を設けない構成を実現できる。
【0104】
また、実施例3においても、異相の第1二重巻コイル121が同一のスロット15内に挿入されないので、すべてのスロット15内において、相間絶縁用の対策の必要性を低減又は無くすことができる。これにより、例えば、ステータコイル12Bのすべてのスロット挿入部に対して相間絶縁紙を設けない構成を実現できる。
【0105】
また、実施例3においても、特定の周方向区間の端部スロットであるスロット15-32、15-36(特定のスロットの一例)において、異相の第1二重巻コイル121の渡り部同士が接触することはない。すなわち、スロット15-32においては、U相の第1二重巻コイル121Uは、U相の第2二重巻コイル121Uよりも径方向内側(V相の第1二重巻コイル121Vに対して径方向で遠い側)に配置され、スロット15-36においては、V相の第1二重巻コイル121Vは、V相の第2二重巻コイル121Vよりも径方向外側(U相の第1二重巻コイル121Uに対して径方向で遠い側)に配置される。従って、実施例3においても、
図9を参照して上述した実施例の場合と同様、異相の第1二重巻コイル121の渡り部と第2二重巻コイル121の渡り部同士が接触することで、異相の第1二重巻コイル121の渡り部同士が接触することが防止される。
【0106】
このようにして、実施例3においても、特定の周方向区間の端部スロットに関連して局所的に生じうる相間絶縁用の対策の必要性を低減又は無くすことができる。これにより、例えば、ステータコイル12Bのコイルエンドの全体にわたって相間絶縁紙を設けない構成を実現できる。
【0107】
ただし、変形例では、スロット15-32においては、U相の第1二重巻コイル121Uは、U相の第2二重巻コイル121Uよりも径方向外側(V相の第1二重巻コイル121Vに対して径方向で近い側)に配置され、及び/又は、スロット15-36においては、V相の第1二重巻コイル121Vは、V相の第2二重巻コイル121Vよりも径方向内側(U相の第1二重巻コイル121Uに対して径方向で近い側)に配置されてもよい。
【0108】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。また、各実施例の効果のうちの、従属項に係る効果は、上位概念(独立項)とは区別した付加的効果である。
【0109】
例えば、上述した各実施例では、3相6極36スロットの場合の構成を例示して説明したので、特定の周方向区間は、5スロット分の区間であるが、他の構成の場合、特定の周方向区間は、より少ない数又はより大きい数のスロット分の区間となる場合がある。
【0110】
また、上述した各実施例は、相間絶縁用の対策の必要性を低減又は無くすことができ、その結果、相間絶縁紙を設けない構成を実現できるが、相間絶縁紙以外の対策として、ワニスや樹脂等による相間絶縁用の対策が施されてもよい。
【符号の説明】
【0111】
10、10A、10B・・・ステータ(回転電機用ステータ)、11・・・ステータコア、12、12A、12B・・・ステータコイル、15・・・スロット、121・・・二重巻コイル、1211・・・第1スロット挿入部(スロット挿入部)、1212、1212A・・・第2スロット挿入部(スロット挿入部)、1213・・・第3スロット挿入部(スロット挿入部)、1214、1214A・・・第4スロット挿入部(スロット挿入部)、1215A・・・第1渡り部(渡り部)、1215B・・・第2渡り部(渡り部)、1216A・・・第3渡り部(渡り部)、1216B・・・第4渡り部(渡り部)