(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】タイヤ観測装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/25 20060101AFI20240910BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20240910BHJP
B60C 19/00 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
G01B11/25 H
G01B11/00 D
G01B11/00 H
B60C19/00 H
(21)【出願番号】P 2023533159
(86)(22)【出願日】2022-07-06
(86)【国際出願番号】 JP2022026780
(87)【国際公開番号】W WO2023282276
(87)【国際公開日】2023-01-12
【審査請求日】2023-11-30
(31)【優先権主張番号】P 2021112685
(32)【優先日】2021-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】院南 誠嗣
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-89357(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0069779(US,A1)
【文献】特開2013-134176(JP,A)
【文献】特開平10-197230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
B60C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のタイヤの画像を取得するカメラと、
前記カメラとともに動き、前記タイヤまでの距離を計測する複数の測距センサと、
前記カメラおよび前記測距センサの位置、前記カメラおよび前記測距センサの角度の少なくとも一つを調整する第1位置角度制御装置と、
前記カメラで取得した前記タイヤの画像を用いて、前記タイヤの表面状態を計測する演算装置と、
を備え、
前記複数の測距センサは、地面に対して異なる角度を成すように設置され、
前記演算装置は、前記複数の測距センサが計測した前記タイヤまでの複数の距離を用いて、前記カメラに対する前記タイヤの位置を算出し、
前記演算装置は、前記タイヤの位置を用いて、前記カメラの撮像中心が前記タイヤの計測対象位置に向くように、前記カメラの位置および角度の第1調整量を算出し、
前記第1位置角度制御装置は、前記第1調整量を用いて、前記カメラの位置および角度を調整する、
タイヤ観測装置。
【請求項2】
前記複数の測距センサは、第1の測距センサを含み、
前記第1の測距センサの測距方向と前記カメラの撮像方向の中心は同じ方向を向いている、
請求項1に記載のタイヤ観測装置。
【請求項3】
前記複数の測距センサは、第2の測距センサを含み、
前記第2の測距センサは、前記第1の測距センサよりも前記地面側に配置される、
請求項2に記載のタイヤ観測装置。
【請求項4】
前記複数の測距センサは、第1の測距センサと第2の測距センサを含み、
前記第1の測距センサと前記第2の測距センサは、それぞれの測距方向が前記カメラの光軸に対して鉛直方向に所定の角度を成すように配置される、
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のタイヤ観測装置。
【請求項5】
前記第1の測距センサの測距方向と前記第2の測距センサの測距方向との成す角は、10度以上70度以下である、
請求項4に記載のタイヤ観測装置。
【請求項6】
ライン状輝光を照射する照明装置と、
前記照明装置の位置、前記照明装置の角度を調整する第2位置角度制御装置と、
を備え、
前記演算装置は、
前記タイヤの位置と用いて
前記照明装置が計測対象位置へ前記ライン状輝光を照射するための前記照明装置の位置と角度の少なくとも一つの第2調整量を算出し、
前記第2位置角度制御装置は、前記第2調整量を用いて、前記照明装置の位置および角度の少なくとも一つを調整する、
請求項1乃至請求項
3の何れかに記載のタイヤ観測装置。
【請求項7】
前記演算装置は、計測対象位置に照射された前記ライン状輝光を撮像範囲の中心となるように前記カメラの位置と角度の少なくとも一つの第3調整量を算出し、
前記第1位置角度制御装置は、前記第3調整量を用いて、前記カメラの位置と角度の少なくとも1つを調整する、
請求項6に記載のタイヤ観測装置。
【請求項8】
車両のタイヤの画像を取得するカメラと、
ライン状輝光を照射する照明装置と、
地面に平行で且つ前記タイヤの幅方向に平行な方向に前記カメラと前記照明装置とを移動させる第3位置制御装置と、
前記カメラと前記照明装置の移動量を算出する演算装置と、
を備え、
前記照明装置は、前記タイヤの幅方向に延びる前記ライン状輝光を前記タイヤに照射し、
前記演算装置は、
前記カメラの画像から前記タイヤに照射されたライン状輝光像を抽出し、
前記ライン状輝光像の形状によって、前記カメラと前記照明装置の移動量を算出し、
前記第3位置制御装置は、前記移動量を用いて、前記カメラと前記照明装置を前記タイヤの幅方向に移動させる、
タイヤ観測装置。
【請求項9】
前記カメラは、
前記ライン状輝光像が含まれる画像を継続的に撮影し、
前記演算装置は、
前記ライン状輝光像の長さを継続的に算出し、
前記ライン状輝光像の長さが計測開始閾値以上になると、前記第3位置制御装置への移動量の算出を停止し、
前記第3位置制御装置は、前記カメラと前記照明装置の前記車両の幅方向の移動を停止する、
請求項8に記載のタイヤ観測装置。
【請求項10】
車両のタイヤの画像を取得するカメラと、
前記カメラに対して固定された位置で設置され、前記タイヤまでの距離を計測する複数の測距センサと、
地面に平行で且つ前記車両の幅方向に前記カメラおよび前記複数の測距センサを移動させる第3位置制御装置と、
前記カメラおよび前記複数の測距センサの移動量を算出する演算装置と、
を備え、
前記複数の測距センサは、前記地面の平行方向に前記カメラを挟んで配置された第3の測距センサと第4の測距センサとを含み、
前記演算装置は、
前記第3の測距センサが計測した前記タイヤまでの第3距離と、前記第4の測距センサが計測した前記タイヤまでの第4距離との距離差を算出し、
前記距離差が移動制御用閾値以上であると、距離が小さい測距センサ側へ、前記カメラおよび前記複数の測距センサを移動させるための移動量を算出し、
第3位置制御装置は、前記移動量を用いて前記カメラおよび前記複数の測距センサを移動させる、
タイヤ観測装置。
【請求項11】
前記複数の測距センサは継続的に距離を測定し、
前記演算装置は、
前記距離から前記距離差を継続的に算出し、
前記距離差が計測開始閾値以下になると、前記第3位置制御装置の移動量の算出を停止し、
前記第3位置制御装置は、前記カメラと前記複数の測距センサの移動を停止する、
請求項10に記載のタイヤ観測装置。
【請求項12】
前記カメラと前記複数の測距センサを、地面垂直方向を回転軸とした地面平行面内で回転させるための第3角度制御装置を、さらに備え、
前記演算装置は、前記距離差が計測開始閾値未満、水平角度制御閾値以上であると、距離が小さい方に向かって回転させる回転量を算出し、
前記第3角度制御装置は、前記回転量を用いて、前記カメラおよび前記複数の測距センサを、前記地面に平行な面内で回転させる、
請求項10または請求項11に記載のタイヤ観測装置。
【請求項13】
車両のタイヤの画像を取得するカメラと、
ライン状輝光を照射する照明装置と、
地面に平行な面内で前記カメラと前記照明装置とを回転させる第3角度制御装置と、
前記カメラと前記照明装置の回転量を算出する演算装置と、
を備え、
前記照明装置は、前記タイヤの幅方向に延びる前記ライン状輝光を前記タイヤに照射し、
前記カメラは、前記ライン状輝光が照射されたタイヤの画像を撮影し、
前記演算装置は、
前記画像のライン状輝光像の形状によって、前記カメラと前記照明装置の回転量を算出し、
前記第3角度制御装置は、前記回転量を用いて、前記カメラと前記照明装置を回転させる、
タイヤ観測装置。
【請求項14】
前記照明装置は、前記地面に平行な水平方向に延びる前記ライン状輝光を照射し、
前記演算装置は、
前記タイヤの両側端を最短で結ぶ幅方向に前記ライン状輝光の像が成す角から前記回転量を算出し、
前記タイヤの両側端を最短で結ぶ幅方向に前記ライン状輝光の像が平行であれば、前記回転量を算出しない、
請求項13に記載のタイヤ観測装置。
【請求項15】
車両のタイヤの画像を取得するカメラと、
ライン状輝光を照射する照明装置と、
地面に平行な面内で前記カメラと前記照明装置とを回転させる第3角度制御装置と、
前記カメラと前記照明装置の回転量を算出する演算装置と、
を備え、
前記照明装置は、前記タイヤの周方向に延びる前記ライン状輝光を照射し、
前記カメラは、前記ライン状輝光が照射された前記タイヤの画像を撮影し、
前記演算装置は、
前記画像のライン状輝光像の湾曲率および湾曲方向に基づいて前記回転量を算出し、
前記ライン状輝光の像が直線であれば、前記回転量を算出しない、
タイヤ観測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のタイヤの状態を観測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、カメラ、照明光源、データ処理ユニットを用いて、タイヤの状態を解析する装置が記載されている。特許文献1に記載の装置は、照明光源によって光が照射されたタイヤの表面をカメラで順次撮像し、タイヤ表面の複数の画像を取得する。データ処理ユニットは、順次撮像された複数の画像から、タイヤのトレッド画像を生成し、タイヤの具合を点検する。
【0003】
特許文献2には、タイヤの幅方向に並べて配置された2台のカメラ、照明装置、処理ユニットを用いて、タイヤ表面の摩耗状態や損傷の検査を行う装置が記載されている。特許文献2に記載の装置は、照明光源によって光が照射されたタイヤの表面を2台のカメラで撮像する。処理ユニットは、2台のカメラの合成画像を用いて検査を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2017-500540号公報
【文献】特開2017-198672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タイヤ表面の状態を計測する方法として、光切断法、展開図作成法等が知られている。これらの方法では、計測精度は、計測対象のタイヤ表面とカメラや照明装置との位置関係に大きく依存する。
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に記載の技術では、計測対象のタイヤに対して、カメラや照明装置を高精度な計測に適した位置に配置することが難しい。特に、走行中の車両について高精度な計測に適した位置に配置することが難しい。
【0007】
したがって、本発明の目的は、走行中の車両のタイヤに対してカメラや照明装置を高精度な計測に適した位置に配置する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のタイヤ観測装置は、カメラ、複数の測距センサ、第1位置角度制御装置、および、演算装置を備える。カメラは、計測対象のタイヤを備える車両が通る地面に配置され、車両の走行中にタイヤの画像を取得する。ここで地面とは、道路や駐車場などの車両の通行する場所や、車両整備を行う室内の床を含む。測距センサは、カメラに対して固定された位置で設置され、タイヤまでの距離を計測する。第1位置角度制御装置は、地面におけるカメラおよび測距センサの位置、カメラおよび測距センサの角度を調整する。演算装置は、カメラで取得したタイヤの画像を用いて、タイヤの表面状態を計測する。
【0009】
複数の測距センサは、地面の表面に対して異なる角度を成すように設置される。演算装置は、複数の測距センサが計測したタイヤまでの複数の距離を用いて、カメラに対するタイヤの位置を算出する。演算装置は、タイヤの位置を用いて、カメラの撮像中心がタイヤの中心またはタイヤの計測対象の表面に向くように、カメラの位置および角度の第1調整量を算出する。第1位置角度制御装置は、第1調整量を用いて、カメラの位置および角度を調整する。
【0010】
この構成では、タイヤの周方向における複数位置とカメラとの距離を複数の測距センサによって計測する。これらタイヤの周方向の複数位置が計測されることによって、タイヤの中心位置およびタイヤ表面の所定位置に対するカメラの位置および角度を精度良く調整できる。したがって、カメラは、タイヤの状態を計測するのに適する位置および角度に調整される。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、走行中の車両のタイヤに対してカメラや照明装置を高精度な計測に適した位置に配置できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るタイヤ観測装置の配置状態の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係るタイヤ観測装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る演算装置の一部の機能ブロック図である。
【
図4】
図4は、タイヤ観測装置を含むタイヤ観測システムにおける本願発明の特徴に関連する部分を概略的に示した構成図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る撮像装置の外観斜視図である。
【
図6】
図6(A)は、本発明の実施形態に係る撮像装置の側面図であり、
図6(B)は、撮像装置の平面図であり、
図6(C)は、撮像装置のカメラ部分を拡大した正面図である。
【
図7】
図7は、タイヤ観測装置20のメイン処理を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、S100に示した車両情報の取得処理の具体例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、計測開始の判定処理を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、照明装置起動の具体例を示すフローチャートである。
【
図11】
図11(A)、
図11(B)は、初期調整時のタイヤ表面と撮像装置との角度関係の第1例を示す模式図である。
【
図12】
図12は、初期角度調整の第1態様を示すフローチャートである。
【
図13】
図13(A)、
図13(B)、
図13(C)は、初期調整時のタイヤ表面と撮像装置との角度関係の第2例を示す模式図である。
【
図14】
図14(A)、
図14(B)、
図14(C)は、初期調整時のタイヤ表面と撮像装置との角度関係の第3例を示す模式図である。
【
図15】
図15(A)、
図15(B)は、初期調整時のタイヤ表面と撮像装置との角度関係の一例を示す模式図である。
【
図16】
図16は、測距センサを使ったときに角度調整方法を示すフローチャートである。
【
図17】
図17は、測距センサを用いた角度調整方法の第5例のフローチャートである。
【
図18】
図18は、タイヤに対する測距センサの角度および距離の計測結果の一例、および、この計測結果に基づくタイヤの形状モデルの一例を示す図である。
【
図19】
図19は、撮像装置の位置の初期調整の第1態様を示すフローチャートで、照明が照射するライン状輝光の像を用いて初期調整を行う場合を示す。
【
図21】
図21(A)、
図21(B)、
図21(C)は、初期調整時のタイヤと撮像装置との位置関係の位置例を示す模式図である。
【
図22】
図22は、第2の位置調整方法を示すフローチャートである。
【
図23】
図23は、タイヤの表面状態の計測処理を示すフローチャートである。
【
図24】
図24は、カメラの計測初期角度を示す側面図である。
【
図25】
図25(A)は、タイヤの中心座標を求める原理を示す側面図である。
図25(B)は、タイヤの中心にカメラの光軸を向けるときのカメラの鉛直方向角度ψCを示す側面図である。
【
図26】
図26は、画像処理を用いたタイヤの表面状態の計測処理を示すフローチャートである。
【
図27】
図27(A)、
図27(C)は、画像処理を行う場合のタイヤとカメラとの位置関係の一例を示す図であり、
図27(B)、
図27(D)は、画像の一例を示す。
【
図28】
図28(A)、
図28(B)は、タイヤと計測装置が異なる距離にあるときの、ライン状輝光を照明213によってタイヤ中央に向けて照射し、タイヤに照射されたライン状輝光をカメラ中央で撮影している様子を示す図であり、
図28(C)、
図28(D)は、その時撮影された画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態に係るタイヤ観測技術について、図を参照して説明する。
【0014】
[タイヤ観測装置の構成]
図1は、本発明の実施形態に係るタイヤ観測装置の配置状態の一例を示す図である。
図2は、本発明の実施形態に係るタイヤ観測装置の構成を示すブロック図である。
図3は、本発明の実施形態に係る演算装置の一部の機能ブロック図である。
【0015】
図1、
図2に示すように、タイヤ観測装置20は、タイヤ観測装置20は、撮像装置21R、撮像装置21L、演算装置22を備える。
【0016】
撮像装置21Rと撮像装置21Lとは、同様の構成である。なお、撮像装置21R、21Lのより具体的な構造は、撮像装置21として後述する。また、撮像装置21Rと撮像装置21Lは同様の構成を備える。したがって、以下では、必要な箇所を除いて、撮像装置21R、撮像装置21Lと分けることなく、撮像装置21として説明する。
【0017】
撮像装置21(21R、21L)は、車両90が走行する地面の表面付近に配置される。撮像装置21は、車両90が乗り越えても破損しないように地面に配置される。例えば、撮像装置21は、車両90が乗り越えても破損しないカバーで覆われている。この際、撮像装置21Rは、車両90のタイヤFT、RTがカメラ211(211R、211L)の所定の画像取得範囲に入り、測距センサ216(216R、216L)の所定の測距可能範囲に入るように、地面に配置される。
【0018】
撮像装置21Rと撮像装置21Lとは、車両90の走行方向に対して略直交する方向に並んで配置される。実際は平行に並んだ撮像装置21Rと撮像装置21Lに対し同時に計測が始まるように車両が進入してくる。撮像装置21Rは、車両90の右側のタイヤFT、RTを撮像可能な位置に配置され、撮像装置21Lは、車両90の左側のタイヤFT、RTを撮像可能な位置に配置される。撮像装置21Rと撮像装置21Lの間隔は、車両90の両側方のタイヤFTの間隔と略同じに設定される。なお、車両90が複数種類の場合、撮像装置21Rと撮像装置21Lとの間隔は、調整可能である。この調整に、後述のスライダ移動装置を用いることもできる。
【0019】
演算装置22は、撮像装置21とは異なる位置に設置される。演算装置22は、ケーブル等によって撮像装置21と電気的に接続される。なお、撮像装置21の近くにおいた無線通信機を使って演算装置22と無線通信を行ってもよい。
【0020】
[タイヤ観測装置20の機能的構成]
図2に示すように、撮像装置21(21R、21L)は、カメラ211(211R、211L)、カメラ回転部212(212R、212L)、照明213(213R、213L)、照明回転部214(214R、214L)、全体駆動部215(215R、215L)、および、測距センサ216(216R、216L)を備える。撮像装置21のこれらの機能部は、演算装置22のIF221に接続する。撮像装置21におけるカメラ211の位置および角度を調整する部分が、本発明の「第1位置角度制御装置」に対応し、照明213の位置および角度を調整する部分が、本発明の「第2位置角度制御装置」に対応する。全体駆動部215が、本発明の「第3角度制御装置」および「第3位置制御装置」に対応する。
【0021】
カメラ211は、設定した撮像範囲(例えば、車両90のタイヤFTまたはタイヤRTを含む撮像範囲)の画像を取得する。カメラ211は、取得した画像を演算装置22に出力する。
【0022】
カメラ回転部212は、カメラ211の光軸と地面との成す角(
図6(A)のψC(なお、
図6では地面に水平な面との成す角を示している。))が変化するようにカメラ211を回転させ、所定角度で固定する。言い換えれば、カメラ回転部212は、地面と平行で、カメラ211の光軸と垂直な方向を回転軸(
図6(A)、
図6(B)の回転軸AXC)として、カメラ211を回転させる。カメラ回転部212の回転制御は、演算装置22からのカメラ回転制御情報によって実行される。
【0023】
照明213は、所定形状の光(例えば、後述のライン状輝光)を照射する。照明213の照明制御(照明形状や照明のオンオフ)は、演算装置22からの照明制御情報によって実行される。
【0024】
照明回転部214は、照明213の光軸と地面との成す角(
図6(A)のψL(なお、
図6では地面に水平な面との成す角を示している。))が変化するように照明213を回転させ、所定角度で固定する。言い換えれば、照明回転部214は、地面と平行で照明213の光軸と垂直な方向を回転軸(
図6(A)、
図6(B)の回転軸AXL)として、照明213を回転させる。照明回転部214の回転制御は、演算装置22からの照明回転制御情報によって実行される。
【0025】
測距センサ216は、カメラ211に対して固定して配置される。測距センサ216は、所定方法(レーザ光、超音波等)で対象物(タイヤFTやタイヤRT)との距離を計測する。測距センサ216は、測距結果を演算装置22に出力する。
【0026】
全体駆動部215は、カメラ211、照明213、測距センサ216が設置される台座210(
図5、
図6(A)、
図6(B)参照)を、水平方向へ移動させたり、台座210を水平面内で回転させたりできる。全体駆動部215Rの駆動制御は、演算装置22からの全体移動回転制御情報によって実行される。
【0027】
演算装置22は、撮像装置21Rに対する上述の各制御と、撮像装置21Lに対する上述の各制御とを個別に行う。
【0028】
演算装置22は、例えば、パーソナルコンピュータ等によって構成される。演算装置22は、IF221、IF222、CPU231、GPU232、ROM241、RAM242、記憶装置250、操作装置260、表示装置270、および、通信装置280を備える。記憶装置250は、磁気媒体等を用いて実現される。表示装置270は、例えば液晶ディスプレイ等によって実現される。通信装置280は、演算装置22を外部の情報通信ネットワーク800(
図4参照)に接続する。また、操作装置や表示装置は必ずしも含まれなくてもよく、通信装置によって接続される外部機器を用いてもよい。
【0029】
演算装置22は、CPU231、GPU232、ROM241、および、RAM242によって、
図3に示すように、車両識別部301、車両情報取得部302、距離検出部303、角度算出部304、軌道推定部305、タイヤ検出部306、調整量算出部307、制御情報出力部308、表面状態計測部309、および、状態管理部310を実現する。すなわち、演算装置22は、
図3に示す機能部を実現するプログラムをROM241に記憶し、CPU231、GPU232でこのプログラムを実行する。この際、RAM242を演算領域として用いる。
【0030】
なお、これらの各部で実行する具体的な処理は適宜後述し、ここでは各部の機能を概略的に説明する。
【0031】
車両識別部301は、カメラ211R、211Lの少なくとも一方が取得した画像から、車両を識別する。
【0032】
車両情報取得部302は、カメラ211R、211Lの少なくとも一方が取得した画像から、車両90の車両情報(ナンバープレート、車両ID等)を取得する。車両情報取得部302は、車両情報から、車両90のタイヤ諸元(タイヤ径、タイヤ幅、両側方のタイヤの間隔、フロントのタイヤFTとリアのタイヤRTとの間隔等)を取得する。車両情報はカメラ211によって取得した画像以外にも、ETCやRFIDなどを使用して取得することも可能である。
【0033】
図4は、タイヤ観測装置を含むタイヤ観測システムにおける本願発明の特徴に関連する部分を概略的に示した構成図である。タイヤ観測システム80は、タイヤ観測装置20、管理装置81、表示端末82、および、情報通信ネットワーク800を備える。タイヤ観測装置20の演算装置22、管理装置81、および、表示端末82は、情報通信ネットワーク800によって接続される。演算装置22の記憶装置250、管理装置81の記憶装置815は、車両情報、タイヤ諸元、タイヤ状態、装置ID等がそれぞれ記憶されている。車両情報、タイヤ諸元、タイヤ状態は、互いに紐付けされている。
【0034】
車両情報取得部302は、車両情報が記憶装置250に既に登録されており、タイヤ諸元が記憶されていれば、記憶装置250からタイヤ諸元を取得する。車両情報取得部302は、車両情報が記憶装置250に登録されていなければ、管理装置81に車両情報を紹介する。管理装置81は、車両情報に基づいてタイヤ諸元を記憶装置815から読み出し、演算装置22に送信する。車両情報取得部302は、これにより、タイヤ諸元を取得できる。また、管理を管理装置81に集約し、タイヤ観測装置20内の記憶装置250内には車両情報を持たず、車両識別後に車両情報を管理する管理装置81(サーバ)から車両情報を取得してもよい。
【0035】
距離検出部303は、カメラ211で取得した画像から、カメラ211と車両90のタイヤFTまたはタイヤRTとの距離を検出する。
【0036】
角度算出部304は、カメラ211で取得した画像または測距センサの測距結果から、カメラ211と車両90のタイヤFTまたはタイヤRTとの水平面内の角度(水平角度)や鉛直方向の角度(鉛直角度)を算出する。
【0037】
タイヤ検出部306は、カメラ211で取得した画像から、車両90のタイヤFTまたはタイヤRTを検出する。
【0038】
調整量算出部307は、距離検出部303で検出した距離、角度算出部304で算出した角度を用いて、上述のカメラ211、照明213の鉛直方向角度の調整量、全体駆動部215に対する水平方向の移動の調整量、水平角度の調整量を算出する。
【0039】
制御情報出力部308は、調整量算出部307で算出した各調整量を用いて、上述のカメラ回転制御情報、照明回転制御情報、移動回転制御情報を適宜生成する。制御情報出力部308は、カメラ回転制御情報をカメラ回転部212に出力し、照明回転制御情報を照明回転部214に出力し、移動回転制御情報を全体駆動部215に出力する。
【0040】
表面状態計測部309は、カメラ211で取得した画像から、タイヤFTおよびタイヤRTの表面状態(溝の深さ、偏摩耗等)を計測する。
【0041】
状態管理部310は、計測結果と車両情報とを紐付けして、記憶装置250に記憶する。また、状態管理部310は、計測結果と車両情報とを紐付けして、情報通信ネットワーク800を介して、管理装置81に送信する。管理装置81は、受信した車両情報に基づいて計測結果を記憶装置815に記憶する。
【0042】
[撮像装置21の構造]
図5は、本発明の実施形態に係る撮像装置の外観斜視図である。
図6(A)は、本発明の実施形態に係る撮像装置の側面図であり、
図6(B)は、撮像装置の平面図であり、
図6(C)は、撮像装置のカメラ部分を拡大した正面図である。
【0043】
撮像装置21は、台座210、カメラ211、カメラ回転部212、照明213、照明回転部214、全体駆動部215、および、複数の測距センサ2161U、2161D、2162U、2162Dを備える。測距センサ2161U、2162Uが本発明の「第1の測距センサ」に対応し、測距センサ2161D、2162Dが本発明の「第2の測距センサ」に対応する。そして、測距センサ2161U、2162Uの一方が本発明の「第3の測距センサ」に対応し、他方が「第4の測距センサ」に対応する。
【0044】
台座210は、x軸方向とy軸方向とに延びる平面を有する平板である。x軸方向とy軸方向は、地面に平行に配置される。
【0045】
カメラ回転部212は、ベース部材2121、カメラ固定部材2122を備える。ベース部材2121は、台座210のx軸方向の一方端付近に固定される。ベース部材2121には、y軸方向に平行な回転軸AXCを有するモータが内蔵されている。カメラ固定部材2122は、ベース部材2121に対して、上述のモータによって回転可能に設置される。
【0046】
カメラ211は、カメラ固定部材2122に固定されている。カメラ211は、撮像装置21のx方向において、台座210におけるカメラ211およびカメラ回転部212が設置される第一の端部よりも外方を撮像するように配置される。モータが回転して、カメラ固定部材2122が回転することによって、カメラ211の光軸(撮像範囲の中心)は、回転軸AXCを中心に回転する。これにより、カメラ211は、水平方向を回転軸として回転し、光軸を鉛直方向に走査できる。そして、カメラ211は、所定の鉛直方向角度ψCで固定できる。
【0047】
照明回転部214は、ベース部材2141、照明固定部材2142を備える。ベース部材2121は、台座210のx軸方向の第二の端部側に固定される。すなわち、カメラ211の撮像方向に対し後方に照明213が配置される。ベース部材2141には、y軸方向に平行な回転軸AXLを有するモータが内蔵されている。照明固定部材2142は、ベース部材2141に対して、上述のモータによって回転可能に設置される。
【0048】
照明213は、照明固定部材2142に固定されている。照明213は、撮像装置21のx方向において、カメラ211の撮像方向を同じ方向を照射するように配置される。モータが回転して、照明固定部材2142が回転することによって、照明213の光軸は、回転軸AXLを中心に回転する。これにより、照明213は、水平方向を回転軸として回転し、光軸を鉛直方向に走査できる。そして、照明213は、所定の鉛直方向角度ψLで固定できる。
【0049】
回転軸AXCと回転軸AXLは平行であり、後述の計測技術の精度を上げるためには、X軸方向に沿って並んでいることが望ましい。また、カメラ211と照明213は、照明213が第一の端部側にあり、カメラ211が第二の端部側にあっても良い。
【0050】
測距センサ2161U、2162U、2161D、2162Dは、カメラ固定部材2122に固定される。これにより、測距センサ2161U、2162U、2161D、2162Dは、カメラ211に対して位置が固定される。
【0051】
測距センサ2161Uおよび測距センサ2162Uは、水平方向において、カメラ211を挟むように配置される。これにより、鉛直方向におけるカメラ211の光軸の位置と測距センサ2161Uおよび測距センサ2162Uの測定中心の位置は同じになる。さらに、水平方向において、カメラ211の光軸は、測距センサ2161Uを正面視した中心と測距センサ2162Uを正面視した中心との中間位置に配置されることが好ましい。
【0052】
測距センサ2161Uおよび測距センサ2162Uは、カメラ211の光軸に平行な方向に探知波(レーザ光、超音波等)を送信し、その反射波を受波することで、測距を行う。すなわち、カメラ211の撮像方向と測距センサ2161Uおよび測距センサ2162Uの測距方向は同じである。
【0053】
測距センサ2161Dは、鉛直方向において測距センサ2161Uの下側に配置される。測距センサ2161Dは、測距センサ2161Uに対して、回転軸AXCや回転軸AXLと平行方向を回転軸としてそれぞれの中心軸が成す角ψD(
図24等参照)を形成するように配置される。
【0054】
成す角ψDは、例えば、10度以上70度以下であるとよい。より好ましくは、成す角ψDは、30度程度であるとよい。これにより、後述するタイヤFTやタイヤRTの中心位置の算出等において有効に作用する。たとえば、角度が大きすぎると、タイヤFT、RTの周方向における2点を捉えることが難しくなり、角度が小さすぎると計測誤差が生じたときにタイヤFT、RTの中心の算出位置も大きくずれやすい。測距センサ216を適切な角度に設定することで、タイヤFT、RTの中心位置の算出をより確実に行うことができ、タイヤFT、RTの中心位置をより精度良く算出できる。
【0055】
測距センサ2161Dおよび測距センサ2162Dは、それぞれの中心軸に平行な方向に探知波(レーザ光、超音波等)を送信し、その反射波を受波することで、測距を行う。これにより、測距センサ2161Dおよび測距センサ2162Dは、測距センサ2161Uおよび測距センサ2162Uの測距方向に対して成す角ψDの方向を測距方向として、測距を行う。
【0056】
全体駆動部215は、スライダ2150、スライダ嵌合部材2151、支持部材2152、および、台座固定部材2153を備える。全体駆動部215が本発明の「第3位置制御装置」または「第3角度制御装置」に対応する。
【0057】
スライダ2150は、y方向に延びる形状であり、y方向に平行な溝を有する。スライダ嵌合部材2151は、スライダ2150の溝に嵌合し、溝に沿って移動可能に設置される。スライダ嵌合部材2151には図示しない動力源が設置されており、スライダ嵌合部材2151は、動力源からの動力によってスライダ2150の溝に沿って移動する。また、スライダ嵌合部材2151は、溝に沿った所定位置に固定可能である。
【0058】
支持部材2152は、スライダ嵌合部材2151に固定される。支持部材2152には、z軸方向に平行な回転軸AXBを有するモータが内蔵されている。
【0059】
台座固定部材2153は、支持部材2152に対して、上述のモータによって回転可能に設置される。また、台座固定部材2153は、台座210におけるカメラ211の設置位置と照明213の設置位置との中間位置において、台座210に固定される。
【0060】
支持部材2152のモータが回転して、台座固定部材2153が回転することによって、台座210は、回転軸AXBを中心に回転する。これにより、カメラ211、照明213、複数の測距センサ2161U、2162U、2161D、2162Dは、水平面内で回転できる。
【0061】
このような構成の撮像装置21は、車両90の走行方向がx軸方向に略平行なり、走行方向に直交する方向がy軸方向に略平行なるように、地面に設置される。
【0062】
この構造によって、撮像装置21は、カメラ211の鉛直方向角度ψCすなわち撮像方向をカメラ回転部212によって所望の角度に設定できる。撮像装置21は、照明213の鉛直方向角度ψLすなわち照射方向を所望の角度に設定できる。撮像装置21は、複数の測距センサ2161U、2162U、2161D、2162Dの測距方向を照明回転部214によって所望の角度に設定できる。
【0063】
また、撮像装置21は、水平面内での車両90の走行方向に略直交する方向において、カメラ211、照明213、複数の測距センサ2161U、2162U、2161D、2162Dのの位置を全体駆動部215によって所望の位置に設定できる。撮像装置21は、撮像装置21は、カメラ211、照明213、複数の測距センサ2161U、2162U、2161D、2162Dの水平面内での角度を全体駆動部215によって所望の角度に設定できる。
【0064】
[タイヤ観測方法]
上述の構成を用いて、タイヤ観測装置20は、以下に示すようにタイヤの表面状態を計測する。
【0065】
(メイン処理)
図7は、タイヤ観測装置20のメイン処理を示すフローチャートである。
図7に示すように、タイヤ観測装置20は、タイヤ観測装置20に向かって走行中の車両90の車両情報を取得する(S100)。タイヤ観測装置20は、車両情報からタイヤ諸元を取得する。
【0066】
タイヤ観測装置20は、撮像装置21の位置の初期調整を行う(S200)。概略的には、タイヤ観測装置20は、カメラ211が車両90のタイヤFTの略正面に配置されるように、撮像装置21を制御する。
【0067】
この際、タイヤ観測装置20は、照明213によるライン状輝光の像および複数の測距センサの測距結果の少なくとも一方を用いて、カメラ211等を全体駆動部215を制御し、タイヤ幅方向の位置を調整する。なお、ここでのタイヤ幅方向の位置とは、水平面内における走行方向に対して直交する方向の位置を意味するものであり、走行する車両の車幅方向と略平行である。
【0068】
タイヤ観測装置20は、タイヤFTの表面状態を計測する(S700)。まずは計測前に撮像装置21の位置および角度をカメラ回転部212や照明回転部214を制御して微調整する。概略的には、タイヤ観測装置20は、カメラ211がタイヤ幅方向の略中心に位置し、カメラ211の光軸がタイヤFTの計測適正点に当たるように、撮像装置21を制御する。この際、タイヤ観測装置20は、照明213によるライン状輝光の像および複数の測距センサの測距結果の少なくとも一方を用いて、カメラ211等をタイヤ幅方向の位置、水平方向の角度を調整する。なお、水平方向の角度とは、水平面内の角度であり、地面に直交する鉛直方向を回転軸とする角度である。
【0069】
微調整が終わったあと、タイヤFTの表面状態を計測する。概略的には、タイヤ観測装置20は、カメラ211の光軸がタイヤFTの計測適正点に当たる状態を維持しながら、カメラ211の画像を用いて、画像解析、光切断法等を用いて、タイヤFTの表面状態(溝の深さ、偏摩耗等)を計測する。
【0070】
タイヤ観測装置20は、計測終了の条件を満たしていなければ(S900:NO)、微調整と計測を継続的に行う。タイヤ観測装置20は、計測終了の条件を満たすと(S900:YES)、計測を終了する。
【0071】
なお、このフローは、フロントのタイヤFTに対する計測を示すものである。したがって、リアのタイヤRTの表面状態を計測する場合には、このフロントのタイヤFTの計測の後に、上述のステップS100からステップS700の処理を、リアのタイヤRTに対して行えばよい。なお、フロントのタイヤFTとリアのタイヤRTとの間に、中間のタイヤが存在する場合は、この中間のタイヤについても、リアのタイヤRTと同様の処理を行えばよい。
【0072】
(車両情報の取得処理)
図8は、S100に示した車両情報の取得処理の具体例を示すフローチャートである。なお、以下の説明において、演算装置22の実行する処理は、上述の
図3に示す各種機能部を適宜組み合わせて実行される。
【0073】
カメラ211は、車両検知範囲を撮像する(S110)。演算装置22は、画像を解析して車両90の有無を検知する。演算装置22が車両90を検知していなければ(S22:NO)、カメラ211による車両検知範囲の撮像は継続する。この撮像間隔は、適宜設定可能である。
【0074】
演算装置22が車両90を検知すると(S150:YES)、演算装置22は、画像から車両識別情報(ナンバープレート、車種、2次元コード等)を検出する(S160)。
【0075】
演算装置22は、車両識別情報を参照し、タイヤ諸元を取得する(S170)。この際、車両識別情報が記憶装置250に既に記憶されていれば、演算装置22は、記憶装置250からタイヤ諸元を取得する。車両識別情報が記憶装置250に記憶されていなければ、演算装置22は、管理装置81からタイヤ諸元を取得する。
【0076】
この際、演算装置22は、必要に応じてタイヤ諸元とともに車両形状情報を取得してもよい。
【0077】
車両情報を取得するフローが終わると、次に観測装置を初期調整するフロー(S200)に移る。S200のフローをさらに役割ごとに分けたものが
図9に示したフローである。
図9は、距離および角度の初期調整のメインフローを示すフローチャートである。
【0078】
まず演算装置22は、照明装置を起動し(S210)、撮像装置の初期角度調整(S300)を行った後、撮像装置の初期位置調整(S400)を行う。これら初期位置調整方法や初期角度調整方法は複数あるため、適応車種や場所に応じて組み合わせて実施することができる。
【0079】
次に演算装置22は、初期位置調整が終わるとタイヤと撮像装置との距離を検出し、距離が計測開始閾値以内であれば(S500:YES)、初期調整フローを終了し、計測のための微調整フロー(S700)へ進む。距離が計測開始閾値より大きければ(S500:NO)、初期位置調整や初期角度調整が繰り返された回数の確認(S600)に進む。回数が繰り返し閾値より少なければ(S600:Yes)、再び初期角度調整から調整を繰り返す。初期位置調整や初期角度調整が繰り返された回数が繰り返し閾値より大きければ(S600:No)、車両が停止していたり、後進している可能性があると判断し、エラーを通知し(S610)、計測を終了する。なお、以下では、適宜、初期調整における位置調整(初期位置調整)を単に「位置調整」とし、初期調整における角度調整(初期角度調整)を単に「角度調整」として、説明する。
【0080】
(照明起動の判定処理)
図10は、照明装置起動の具体例を示すフローチャートである。すなわち、S210の具体例を示すフローチャートである。
【0081】
演算装置22は、全体駆動部215がタイヤ諸元に基づきカメラ211および照明213をタイヤ幅方向(車幅方向)に位置調整し(S211)、カメラ211で車両の画像を取得し(S212)、カメラ211の撮像画像から車両形状を検出するよう指令を出す。演算装置22は、車両形状の大きさ(幅、高さ)等と取得した車両形状情報とを比較することで、カメラ211と車両90(タイヤFT)との距離(照明起動判定用の距離)を検出する(S213)。
【0082】
演算装置22は、照明起動判定用の距離が照明起動閾値よりも大きい間は(S214:NO)、車両の画像の取得(S212)、照明起動判定用の距離の検出(S213)を繰り返す。
【0083】
演算装置22は、照明起動判定用の距離が照明起動閾値以下になると(S214:YES)、車両画像から照明(照明の光)がタイヤに当たるように角度を調整(S215)したのち、照明213を起動する(S216)。照明213の起動が終われば照明起動フロー(S210)を終了し、撮像装置の初期角度調整フロー(S300)への進む。
【0084】
(初期角度調整1)
図11(A)、
図11(B)は、初期調整時のタイヤ表面と撮像装置との角度関係の第1例を示す模式図である。
図11(A)は、水平方向において撮像装置(カメラ)の光軸とタイヤ表面とが直交する場合を示し、
図11(B)は、水平方向において撮像装置(カメラ)の光軸とタイヤ表面とが直交していない場合を示す。
【0085】
図12に角度を調整するときのフローチャートを示す。
図12は、初期角度調整の第1態様を示すフローチャートである。照明213は、タイヤに向かってタイヤの幅方向に延びるライン状輝光を照射する(S301)。すなわち照明213は、車両90が向かってくる方向に光を照射する。これにより、照明213から照射されたライン状輝光は、タイヤFTの表面にタイヤFTの幅方向に延びる形状の像291(
図11(A)、
図11(B)参照)を形成する、タイヤ画像を取得し、タイヤに照射されているライン形状を取得する(S310)。
【0086】
ライン形状(ライン状輝光の像291の形状)から、直交判定を行う(S321)。より具体的には、ライン形状(ライン状輝光の像291の形状)から、平面視したときのタイヤFTの表面(つまり車両の進行方向)に対するカメラ211の光軸CCA(カメラ211の中心)のなす角度が略一致しているか否かを検出する。
【0087】
図11(A)に示すように、タイヤFTの表面とカメラ211の光軸CCAとが直交すると、ライン状輝光の像291にできるタイヤFTの溝の像が均一になる。一方、
図11(B)に示すように、タイヤFTの表面とカメラ211の光軸CCAとが直交していないと、ライン状輝光の像291にできるタイヤFTの溝の像が均一でなくなる。そして、この均一でなくなる度合い、分布は、水平方向におけるタイヤFTの表面に対するカメラ211の光軸CCAの角度(水平方向角度)によって一意的に決まる。
【0088】
したがって、タイヤFTの表面に対するカメラ211の光軸CCAの水平方向角度は、ライン形状によって検出できる。
【0089】
演算装置22は、タイヤFTの表面とカメラ211の光軸CCAとが直交していないと判定すると(S330:NO)、水平方向における角度のずれ方向および角度のずれ量を検出する(S351)。演算装置22は、角度のずれ方向および角度のずれ量から、水平方向角度を調整する角度調整量(回転量)を算出する。演算装置22は、角度調整量を含む角度制御情報を撮像装置21に出力する。撮像装置21は、角度制御情報から支持部材2152と台座固定部材2153を制御して、カメラ211の水平方向角度を調整する(S360)。
【0090】
なお、直交であるか否かの判定は、厳密に直交であることを判定してもよいが、計測誤差等を考慮して、水平方向角度が直交(90度)を含む所定閾値範囲内であることによって、直交であると判定してもよい。
【0091】
演算装置22および撮像装置21は、カメラ211の水平方向角度の調整を、タイヤFTの表面とカメラ211の光軸CCAとが直交であると判定するまで繰り返す。
【0092】
演算装置22は、タイヤFTの表面とカメラ211の光軸CCAとが直交であると判定すると(S330:YES)、初期角度調整を終了する。
【0093】
このような処理を行うことによって、タイヤ観測装置20は、カメラ211をタイヤFTの正面に、より確実に移動させ、水平方向においてカメラ211の光軸をタイヤFTの表面に直交させることができる。これにより、タイヤ観測装置20は、タイヤの表面状態の計測誤差を抑制できる。
【0094】
なお、水平方向角度の調整は、次の方法を用いることもできる。
【0095】
(初期角度調整2)
図13(A)、
図13(B)、
図13(C)は、初期調整時のタイヤ表面と撮像装置との角度関係の第2例を示す模式図である。
図13(A)は、水平方向において撮像装置(カメラ)の光軸とタイヤ表面とが直交する場合を示し、
図13(B)、
図13(C)は、水平方向において撮像装置(カメラ)の光軸とタイヤ表面とが直交していない場合を示す。
【0096】
図13(A)、
図13(B)、
図13(C)に示す第2例では、演算装置22は、水平方向のライン状輝光の角度を用いて、言い換えれば、タイヤFTの両側端を最短で結ぶ幅方向にライン状輝光の像291が成す角を用いて、水平方向角度を検出する。
【0097】
図13(A)に示すように、水平方向においてタイヤFTの表面とカメラ211の光軸CCAとが直交すると、ライン状輝光の像291は水平になる。言い換えれば、ライン状輝光の像291はタイヤFTの両側面に対して直交し、タイヤFTの両側端を最短で結ぶ幅方向とライン状輝光の像291の延びる方向は平行になる。
【0098】
一方、
図13(B)、
図13(C)に示すように、水平方向においてタイヤFTの表面とカメラ211の光軸CCAとが直交していないと、ライン状輝光の像291は水平ではなくなり、水平方向に対して傾く。言い換えれば、ライン状輝光の像291はタイヤFTの両側面に対して直交せず、90度でない所定角度で交わる。そして、このライン状輝光の像291の水平方向に対する傾きは、水平方向におけるタイヤFTの表面に対するカメラ211の光軸CCAの角度(水平方向角度)によって一意的に決まる。この角度調整2のフローチャートは、
図12のフローチャートを基本として、S321がS322「ライン形状がタイヤの両側面に対し直交しているかによって直交判定する」、S351が「ライン形状のタイヤの両側面からの角度でずれ方向とずれ量を算出(S352)」となる点で異なる(該当フローチャートは掲載していない)。
【0099】
実際にはタイヤのトラッドのため、
図13(A)、
図13(B)、
図13(C)のような直線ではなく、
図11(A)、
図11(B)のように凹凸のある形状となるが、画像処理によって、凹凸のうち、タイヤ表面に相当するライン状輝光のみを取り出して、傾きを調べることによって、タイヤFTの表面に対するカメラ211の光軸CCAの水平方向角度は、このライン状輝光の像291の傾きによって検出できる。
【0100】
(初期角度調整3)
図14(A)、
図14(B)、
図14(C)は、初期調整時のタイヤ表面と撮像装置との角度関係の第3例を示す模式図である。
図14(A)は、水平方向において撮像装置(カメラ)の光軸とタイヤ表面とが直交する場合を示し、
図14(B)、
図14(C)は、水平方向において撮像装置(カメラ)の光軸とタイヤ表面とが直交していない場合を示す。
【0101】
図14(A)、
図14(B)、
図14(C)に示す第3例では、演算装置22は、鉛直方向のライン状輝光の湾曲率および湾曲方向を用いて、水平方向角度を検出する。
【0102】
図14(A)に示すように、水平方向においてタイヤFTの表面とカメラ211の光軸CCAとが直交すると、ライン状輝光の像292は鉛直方向に延びる直線になる。
【0103】
一方、
図14(B)、
図14(C)に示すように、水平方向においてタイヤFTの表面とカメラ211の光軸CCAとが直交していないと、ライン状輝光の像291は鉛直方向に延びる直線ではなくなり、所定の方向および湾曲率で湾曲する。そして、このライン状輝光の像292の湾曲率および湾曲方向は、水平方向におけるタイヤFTの表面に対するカメラ211の光軸CCAの角度(水平方向角度)によって一意的に決まる。この角度調整3のフローチャートは、
図12のフローチャートを基本として、S321が「ライン形状が鉛直に直線となっているかによって直交判定する(S323)」、S323が「ライン形状の湾曲状態からずれ方向とずれ量を算出(S353)」となる点で異なる(フローチャートは掲載していない)。
【0104】
この場合もライン形状は、タイヤのトラッドにより凹凸のある形状となるが、タイヤ表面を測定した箇所のみから湾曲しているかどうかを検出することによって、タイヤFTの表面に対するカメラ211の光軸CCAの水平方向角度は、このライン状輝光の像292の湾曲率および湾曲方向によって検出できる。
【0105】
(初期角度調整4)
図15(A)、
図15(B)は、初期調整時のタイヤ表面と撮像装置との角度関係の一例を示す模式図である。
図15(A)は、水平方向において撮像装置(カメラ)の光軸とタイヤ表面とが直交する場合を示し、
図15(B)は、水平方向において撮像装置(カメラ)の光軸とタイヤ表面とが直交していない場合を示す。
【0106】
測距センサを使ったときの角度調整方法を
図16に示す。
図16は、測距センサを使ったときに角度調整方法を示すフローチャートである。
【0107】
まず測距センサ2161Uと2162Uでタイヤとの距離を算出する(S314)。次に得られた距離の差を算出する(S324)。
【0108】
図15(A)に示すように、水平方向においてタイヤFTの表面とカメラ211の光軸CCAとが直交すると、距離L1と距離L2とはほぼ同じになる。一方、
図15(B)に示すように、水平方向においてタイヤFTの表面とカメラ211の光軸CCAとが直交していないと、距離L1と距離L2とには、所定の距離差が生じる。そして、この距離差は、水平方向におけるタイヤFTの表面に対するカメラ211の光軸CCAの角度(水平方向角度)によって一意的に決まる。
【0109】
したがって、タイヤFTの表面に対するカメラ211の光軸CCAの水平方向角度は、水平方向に並ぶ測距センサの測距結果の距離差によって検出できる。
【0110】
そして、演算装置22は、距離の差が大きければ、タイヤFTの表面とカメラ211の光軸は直交していないと判断し(S330:NO)、距離の差からずれ方向とずれ量を算出する(S354)と、水平方向角度を調整する角度調整量(本発明の「第2調整量」に対応)を設定する。演算装置22は、角度調整量を含む水平角度制御情報を撮像装置21に出力する。撮像装置21は、水平角度制御情報を用いて、カメラ211の水平方向角度を調整する(S360)。
【0111】
なお、直交であるか否かの判定は、厳密に直交であることを判定してもよいが、計測誤差等を考慮して、水平方向角度が直交(90度)を含む所定閾値範囲内であることによって、直交であると判定してもよい。
【0112】
演算装置22および撮像装置21は、カメラ211の水平方向角度の調整を、タイヤFTの表面とカメラ211の光軸CCAとが直交であると判定するまで繰り返す。なお、角度調整と位置調整を測距センサによって行う場合は、S210の照明起動のフローは省略してもよい。
【0113】
(初期角度調整5)
図17は、測距センサを用いた角度調整方法の第5例のフローチャートである。
図18は、タイヤに対する測距センサの角度および距離の計測結果の一例、および、この計測結果に基づくタイヤの形状モデルの一例を示す図である。
【0114】
測距センサをタイヤに対して鉛直方向を軸として回転させる(S315)。すなわち全体駆動部215を使って回転させると、
図18に示すような、角度と距離の関係が求まる。
【0115】
この角度と距離の関係から、タイヤの形状モデルを作成する(S325)。タイヤの形状モデルを作成することによって、タイヤがどの位置にあるのかが算出できる。この形状モデルのデータをもとに、カメラ光軸がタイヤ表面に対して直交するためにはどの角度にすればいいかを算出する(S355)。
【0116】
そして、演算装置22は、算出した角度から角度調整量を含む角度制御情報を生成し、撮像装置21に出力する。撮像装置21は、角度制御情報を用いて、カメラ211を回転させ、カメラ211の水平方向角度を調整する(S365)。演算装置22は前述の方法によって初期角度調整が終われば、初期角度調整フロー(S300)を終了し、初期位置調整フロー(S400)へ進む。
【0117】
(初期位置調整1)
図19は、撮像装置の初期位置調整の第1態様を示すフローチャートで、照明213が照射するライン状輝光の像を用いて初期位置調整を行う場合を示す。
図20(A)、
図20(B)、
図20(C)、
図20(D)は、初期位置調整時のタイヤと撮像装置との位置関係の一例を示す模式図である。
図20(A)、
図20(B)は、カメラ211の光軸CCAとタイヤFTの中心CFTとの水平方向の位置ずれ量が大きい場合を示し、
図20(C)、
図20(D)は、カメラ211の光軸CCAとタイヤFTの中心CFTとの水平方向の位置ズレ量が小さい場合を示す。
図20(A)、
図20(C)は、撮像装置21からタイヤFT方向を見た図であり、
図20(B)、
図20(D)は、平面視した図である。
【0118】
カメラ211は、タイヤFTの表面のライン状輝光の像291を撮像する(S421)。言い換えれば、カメラ211は、タイヤFTの表面でのライン状輝光の反射光を受光する。ライン状輝光の像291を含む撮像画像は、演算装置22に入力される。
【0119】
演算装置22は、画像から画像のどの位置にライン状輝光が映っているか、すなわち、ライン状輝光のタイヤ幅方向の位置を検出し、中央判定を行う(S431)。
【0120】
例えば、
図20(A)、
図20(B)に示すように、水平方向におけるタイヤFTの中心CFTとカメラ211の光軸CCAと位置ズレ量が大きいと、撮影された画像におけるライン状輝光の像291は画像の中央から外れた位置になる。
【0121】
一方、
図20(C)、
図20(D)に示すように、水平方向におけるタイヤFTの中心CFTとカメラ211の光軸CCAとの位置ズレ量が小さい、もしくは、位置ズレが生じていないと、ライン状輝光の像291は画像の略中央に存在する。
【0122】
演算装置22は、タイヤFTの中心CFTとカメラ211の光軸CCAとが同位置でない、言い換えれば、カメラ211がタイヤの幅方向の中央にないと判定すると(S440:NO)、タイヤ幅方向(車幅方向)におけるずれ方向および位置を調整する移動量を検出する(S451)。演算装置22は、移動量を撮像装置21に出力する。撮像装置21は、移動量を用いて、カメラ211の水平方向位置を調整する(S460)。カメラ211の水平方向位置の調整とは、カメラ211を全体駆動部215のうちスライダ2150とスライダ嵌合部材2151を使って水平方向に移動させることである。
【0123】
なお、同位置であるか否かの判定は、水平方向の位置ズレ量が0であることを基準にすることもできる。しかしながら、演算装置22は、計測誤差等を考慮して、水平方向の位置ズレ量が所定閾値範囲内であることによって、同位置であると判定してもよい。この所定閾値はあらかじめ設定されていてもよいし、車両毎に設定されていてタイヤ諸元とともにデータベースから入手してもよい。
【0124】
演算装置22および撮像装置21は、カメラ211の水平方向位置の調整を、タイヤFTの中心CFTとカメラ211の光軸CCAとが同位置であると判定するまで繰り返す。
【0125】
ここで、もしライン状輝光像が上下方向において中央から所定値以上にずれている場合は、第1位置角度調整装置、特にカメラ回転部212を使って中央となるよう調整してもよい。
【0126】
演算装置22は、タイヤFTの中心CFTとカメラ211の光軸CCAとが同位置であると判定すると(S440:YES)、カメラ211の位置調整を行わず、計測開始距離判定フロー(S500)へと進む。
【0127】
(初期位置調整2)
第2の初期位置調整では、水平方向(路面に平行な方向)においてカメラ211を挟み込む複数の測距センサ2161U、2162Uを用いる。測距センサの測定可能範囲にあればこの方法を用いることができる。
【0128】
第2の初期位置調整方法を
図21、および
図22のフローチャートを参照しながら説明する。
図21(A)、
図21(B)、
図21(C)は、初期位置調整時のタイヤと撮像装置との位置関係の位置例を示す模式図である。
図21(A)は、撮像装置21とタイヤFTとの水平方向の位置ズレ量が小さい場合を示し、
図21(B)、
図21(C)は、撮像装置21とタイヤFTとの水平方向の位置ズレ量が大きい場合を示す。
図22は、第2の位置調整方法を示すフローチャートである。
【0129】
複数の測距センサ2161U、2162Uは、それぞれにタイヤFTまでの距離L1、L2を計測する(S425)。距離L1、距離L2がそれぞれに本発明の「第3距離、第4距離」に対応する。
【0130】
演算装置22は、測距センサ2161UとタイヤFTとの距離L1と、測距センサ2162UとタイヤFTとの距離L2との距離差を算出する(S435)。
【0131】
例えば、
図21(A)に示すように、水平方向におけるタイヤFTの中心CFTとカメラ211と位置ズレ量が小さく、複数の測距センサ2161U、2162Uの前方にタイヤFTが存在すると、距離L1と距離L2は略同じになる。したがって、距離L1と距離L2の距離差は、略0になる。
【0132】
一方、
図21(B)に示すように、水平方向におけるタイヤFTの中心CFTとカメラ211と位置ズレ量が大きく、測距センサ2161Uの前方にタイヤFTが存在し、測距センサ2162Uの前方にタイヤFTが存在しないと、距離L1は計測できるが、距離L2は計測できない。すなわち、距離L2は例えば無限大等に置き換えられる。したがって、距離L1と距離L2の距離差は、大幅に大きくなる。
【0133】
また、
図21(C)に示すように、水平方向におけるタイヤFTの中心CFTとカメラ211と位置ズレ量が大きく、測距センサ2161Uの前方にタイヤFTが存在せず、測距センサ2162Uの前方にタイヤFTが存在すると、距離L1は計測できないが、距離L2は計測できる。すなわち、距離L1は例えば無限大等に置き換えられる。したがって、距離L1と距離L2の距離差は、大幅に大きくなる。
【0134】
したがって、距離L1と距離L2の距離差を用いることで、タイヤFTの中心CFTとカメラ211と位置ズレが大きいか小さいかを判定できる。
【0135】
演算装置22は、距離差が位置ズレ閾値よりも大きいと判定すると、すなわち、距離差が移動制御用閾値以上であり、撮像装置21がタイヤの幅方向の中心から外れた位置にあると判定すると(S440:NO)、水平方向位置を調整する移動量を設定する(S455)。演算装置22は、移動量を含む移動制御情報を生成し、撮像装置21に出力する。撮像装置21は、移動量を用いて、カメラ211の水平方向位置を調整する(S460)。なお、位置ズレ閾値は、計測誤差等を考慮して設定される。
【0136】
演算装置22および撮像装置21は、カメラ211の水平方向位置の調整を、距離差が位置ズレ閾値以内になるまで繰り返す。カメラ211の水平方向位置の調整とは、カメラ211を水平方向に移動させることである。
【0137】
このようにして、撮像装置位置をタイヤに対して撮影に適した、すなわち測定対象のタイヤの中央部に調整することができる。
【0138】
初期位置調整を終了すると、
図9のフローでのS500に進み、距離が計測開始閾値以内かどうかの判定を行う。
【0139】
(距離判定1)
演算装置22は、ライン長(ライン状輝光の像291の長さ)を計測する。演算装置22は、ライン長からカメラ211とタイヤFTとの距離を算出する。この距離は、例えば、簡単な幾何学演算によって算出できる。
【0140】
この距離が計測開始距離(計測開始閾値)以下であれば、タイヤ表面の計測が可能として、初期調整フローを終了し、タイヤ表面計測へと進む。
【0141】
(距離判定2)
測距センサを用いる場合は、測距センサ2161Uと2121L、もしくは、2162Uと2162Uの二つを用い、後述のタイヤ中心位置座標を求めることによって求められる。これによりカメラ211とタイヤとの距離が計測開始距離(計測開始閾値)以下であれば、初期調整フローを終了し、タイヤ表面計測へと進む。
【0142】
なお、演算装置22は、カメラ211とタイヤFTとの距離が計測開始閾値よりも大きいと判定すると(S500:NO)、
図9のS300の手前に戻り、初期角度調整と初期位置調整とを再度行う。カメラ211とタイヤFTとの距離が計測開始閾値以下になるまで、上述の処理を繰り返す。
【0143】
このような処理を行うことによって、タイヤ観測装置20は、カメラ211をタイヤFTの正面に、より確実に移動させ、水平方向においてカメラ211の光軸をタイヤFTの表面に直交させることができる。これにより、タイヤ観測装置20は、走行中の車両90のタイヤFTに対してカメラ211や照明213を高精度な計測に適した位置および角度に配置できる。したがって、タイヤ観測装置20は、タイヤの表面状態の計測誤差を抑制できる。
【0144】
(タイヤの表面状態の計測(S700)の具体例)
(撮像前の撮像装置位置および角度の微調整)
図23は、タイヤの表面状態の計測処理を示すフローチャートである。
【0145】
演算装置22は、カメラ211の計測初期角度を設定する(S710)。ここでの角度とは、カメラ211や照明213の鉛直方向の角度、すなわち、カメラ回転部212や照明回転部214を用いて撮影角度を設定することを意味する。
【0146】
図24は、カメラの計測初期角度を示す側面図である。
図24に示すように、カメラ211の計測初期角度は、鉛直下側に配置される複数の測距センサ2161D、2162Dの測距方向(測距領域の中心軸)が水平方向に平行または水平方向よりも上方向を向くように設定される。これにより、演算装置22は、後述するタイヤの中心位置の算出を、初期状態からより確実に行うことができる。撮像装置の高さ次第では2161Dや2162Dの初期角度は水平より下方向へ向くことがあることは言うまでもない。
【0147】
測距センサ2161U、2162Uの少なくとも1つでは、タイヤFTまでの距離を計測する(S720)。演算装置22は、タイヤFTまでの距離がタイヤの表面状態の計測終了用閾値以下であれば(S730)、表面状態の計測を終了する(S890)。演算装置22は、タイヤFTまでの距離が計測できなければ(S730)、距離計測(S720)を継続する。
【0148】
演算装置22は、タイヤFTまでの距離がタイヤの表面状態の計測終了用閾値より大きければ(S730)、すなわち、撮像装置21がタイヤFTに対して近づきすぎていなければ、計測の次のステップに移行する。これにより、タイヤ観測装置20は、適する計測状態でタイヤの表面状態を計測でき、計測精度を向上できる。
【0149】
演算装置22は、タイヤFTまでの距離がタイヤの表面状態の計測終了用閾値より大きければ(S730)、タイヤFTの表面における鉛直方向の複数箇所の距離を取得する(S750)。より具体的には、演算装置22は、鉛直方向に並ぶ測距センサ2161Uと測距センサ2161Dの測距結果、または、鉛直方向に並ぶ測距センサ2162Uと測距センサ2162Dの測距結果を取得する。上述のように初期角度が設定されていることによって、鉛直方向において下側の測距センサ2161Dまたは測距センサ2162Dからも、タイヤFTの表面までの距離の測距結果を、より確実に取得できる。
【0150】
演算装置22は、鉛直方向に並ぶ複数の測距センサ2161Uと測距センサ2161Dの測距結果、または、鉛直方向に並ぶ測距センサ2162Uと測距センサ2162Dの測距結果を用いて、タイヤFTの中心座標を算出する(S770)。以下、鉛直方向に並ぶ複数の測距センサ2162Uと測距センサ2162Dの測距結果を用いる場合を示す。
【0151】
図25(A)は、タイヤの中心座標を求める原理を示す側面図である。
図25(B)は、タイヤの中心にカメラの光軸を向けるときのカメラの鉛直方向角度ψCを示す側面図である。
【0152】
タイヤFTの半径Rは、タイヤ諸元から得られる。複数の測距センサ2161Uと測距センサ2161Dの測距方向の成す角ψDは既知であり、例えば、記憶装置250に記憶されている。
【0153】
距離DUは、測距センサ2162Uによる測距距離であり、測距センサ2162Uの測距軸AX2162UとタイヤFTの表面との交点と、測距センサ2162Uとの距離である。距離DDは、測距センサ2162Dによる測距距離であり、測距センサ2162Dの測距軸AX2162DとタイヤFTの表面との交点と、測距センサ2162Uとの距離である。距離DU、DDは上述のステップS64において、測距センサ2162U、2162Dによって計測される。
【0154】
測距軸AX2162Uと測距軸AX2162Dとの交点を原点(0,0)として、距離DU、距離DD、成す角ψDが分かると、測距軸AX2162UとタイヤFTの表面との交点座標PU(xU,zU)、および、測距軸AX2162DとタイヤFTの表面との交点座標PD(xD,zD)を算出できる。
【0155】
次に、タイヤFTの外周の異なる二点である交点座標PU(xU,zU)および交点座標PD(xD,zD)が分かり、タイヤFTの半径Rが分かることによって、タイヤFTの中心座標Pc(xc,zc)を算出できる。
【0156】
(タイヤの表面状態の計測の具体例1(画像判断))
演算装置22は、タイヤFTの中心座標Pc(xc,zc)を算出すると、カメラ211の鉛直方向角度ψCを算出する。
【0157】
具体的には、カメラ211と回転軸AXCとの距離L1、回転軸AXCの水平面(地面の表面)からの距離L2(高さ)、回転軸AXCの座標P0c(x0c,z0c)、回転軸AXCから水平面(地面表面)に下ろした垂線の足の座標P0(x0,z0)は既知である。また、成す角ψDも既知である。したがって、これらの既知数、中心座標Pc(xc,zc)の幾何学的位置関係から、例えば、カメラ211の光軸AX211をタイヤFTの中心に向ける時の鉛直方向角度ψCを算出できる。
【0158】
演算装置22は、タイヤFTの中心座標Pc(xc,zc)が計測実行範囲内であれば(S780:YES)、タイヤFTの表面状態の計測を行う(S810)。また、演算装置22は、次の計測画像のタイミング(次フレーム)での鉛直方向角度を算出する(S811)。
【0159】
演算装置22は、タイヤFTの中心座標Pc(xc,zc)が計測実行範囲外、より具体的には、中心座標Pc(xc,zc)の実数解が得られない場合(S780:NO1)、鉛直方向角度の微調整を行う(S790)。鉛直方向角度の微調整とは、鉛直方向角度を所定の小さな角度だけ変更することである。
【0160】
演算装置22は、タイヤFTの中心座標Pc(xc,zc)が計測実行範囲外、より具体的には、カメラ211からタイヤFTの中心座標までの距離がタイヤの表面状態の計測終了用閾値以下であれば(S780:NO2)、表面計測を終了する(S890)。
【0161】
演算装置22は、次フレームの鉛直方向角度が継続角度範囲内であれば(S880:Yes)、角度制御情報を生成し、撮像装置21に与える。継続角度範囲は、撮像装置21が撮像した画像によって、タイヤFTの表面状態を精度良く計測できる角度範囲であり、予め設定されている。角度制御情報は、今回の鉛直方向角度と次フレームの鉛直方向角度との差に基づいて設定される。撮像装置21は、角度制御情報を用いて、カメラ211の鉛直方向角度ψCを調整する(S881)。
【0162】
このような処理を行うことによって、タイヤ観測装置20は、タイヤFTの表面状態を精度良く計測できる。
【0163】
図26は、画像処理を用いたタイヤの表面状態の計測処理を示すフローチャートである。
図27(A)、
図27(C)は、画像処理を行う場合のタイヤとカメラとの位置関係の一例を示す図であり、
図27(B)、
図27(D)は、画像の一例を示す。
図27(A)は
図23のフローチャートを用いて角度を調整した場合の観察装置とタイヤの関係を側方から観察したところで、
図27(B)は
図27(A)の時に撮影されるタイヤのイメージ図である。一方、
図27(C)は
図23のフローチャートでの角度調整を行わなかった場合の側方図を示し、その時の撮影画像は
図27(D)で示される。
【0164】
カメラ211は、上述の処理によって
図27(A)に示すように、位置および角度が調整された状態で、タイヤFTを含む画像を取得する(S820)。カメラ211は画像を演算装置22に出力する。
【0165】
演算装置22は、画像におけるタイヤFT以外の領域を除去する(S830)。演算装置22は、反射光パターンを抽出する(S840)。演算装置22は、反射光パターンと構成係数を用いて、画像の各画素に対応する三次元点データを生成する(S850)。
【0166】
演算装置22は、三次元点データから、溝、摩耗等を示す特徴点を抽出する(S860)。特徴点は、輝度差等によって抽出可能である。演算装置22は、特徴点を用いて、タイヤFTの表面状態(溝の深さ、偏摩耗等)を計測する(S870)。
【0167】
本願発明の構成を用いることによって、
図27(A)に示すように、車両90が走行中であっても、カメラ211は、タイヤFTの正面における計測に適する位置および角度(精度の高い計測が可能な位置および角度)に設定される。これにより、
図27(B)に示すように、タイヤFTの表面画像は一定した外形形状となり、溝や摩耗を検出しやすく、計測精度を容易に高められる。したがって、タイヤ観測装置20は、タイヤFTの表面状態を精度良く計測できる。
【0168】
一方、本願発明の構成を用いないことで、
図27(C)に示すように、カメラおよび照明の位置および角度を適切に設定できず、
図27(D)のような画像の中でタイヤ幅が大きく異なる場合、まずは画像の修正を行いタイヤ幅を略一定にするため、画像修正による精度の劣化が避けられない。
【0169】
(タイヤの表面状態の計測の具体例2(光切断法の利用))
次に光切断法によりタイヤの溝深さ測定を行う場合のタイヤとカメラと照明の位置関係の制御について説明する。
【0170】
図28(A)、
図28(B)は、タイヤと計測装置が異なる距離にあるときの、ライン状輝光を照明213によってタイヤ中央に向けて照射し、タイヤに照射されたライン状輝光をカメラ中央で撮影している様子を示す図であり、
図28(C)、
図28(D)は、その時撮影された画像の一例を示す図である。
図28(C)は、
図28(A)のときの画像であり、
図28(D)は、
図28(B)のときの画像である。
【0171】
光切断法を用いる場合には、照明213は、水平方向(タイヤFTの幅方向)に延びるライン状輝光を照射する。そして、
図28(A)、
図28(B)に示すように、照明213の光軸が測距センサによって求められたタイヤFTの中心座標Pc(xc,zc)を通るように、照明213の鉛直方向角度ψLが調整される。このときの角度の調整量が本発明の「第3調整量」に対応する。これは、カメラと照明の距離(不図示)が既知でることから、上述のカメラ211の光軸がタイヤFTの中心座標Pc(xc,zc)を通るように、カメラ211の鉛直方向角度ψCを調整する技術と同様に照明軸がタイヤ中心座標を通るよう算出されることで達成される。
【0172】
本願発明の構成を用いることによって、車両90の走行によって、カメラ211とタイヤFTとの距離が変化しても、
図28(C)、
図28(D)に示すように、光切断法に用いるライン状輝光の像を明確に撮像することができる。また、カメラ光軸のタイヤ表面に対する角度も明確になっているため、タイヤの溝深さを精度よく検出することができる。
【0173】
画像を使ったタイヤ表面の計測においても、光切断法を使ったタイヤ表面の計測においても、データ取得後の演算装置22での処理は同時に行われてもいいし、計測終了後に行われてもよい。すなわち画像における計測の場合のS820~S870の処理(光切断法についてのフローチャートは不図示)は画像を計測しながら平行しておこなってもよいし、計測終了後にまとめて処理しても良い。
【0174】
これにより、タイヤ観測装置20は、タイヤFTの表面状態を精度良く計測できる。
【0175】
なお、上述の構成では、測距センサ2161U、2162Uの測距方向(測距領域の中心軸)は、カメラ211の光軸に平行になり、これらの回転軸AXCの回転方向における位置は同じになるように設定されている。すなわち、測距センサ2161U、2162Uの測距方向が地面の表面に成す角と、カメラ211の撮像方向が地面の表面に成す角とは同じである。
【0176】
しかしながら、測距センサ2161U、2162Uの測距方向が道路の表面に成す角と、カメラ211の撮像方向が地面の表面に成す角とは異なっていてもよい。ただし、これらの成す角が同じであることによって、カメラ211の鉛直方向角度ψCを容易に算出できる。これにより、特にリアルタイム性を要求される走行中の車両90での表面状態計測においては、車両90の走行に応じてカメラ211の鉛直方向角度ψCを高速に調整でき、計測精度を、さらに確実に向上できる。
【0177】
さらに、
図23のフローを変形して、計測初期角度に設定(S710)したのち、測距センサ2161Uと2162D、もしくは2162Uと2162Dの組み合わせで測定し(S750)、測距結果のうち2161Uもしくは2162Uの値で距離から、計測に適正な距離であるかを判断し(S730)、計測閾値より大きければタイヤの中心座標を算出する(S770)。このタイヤ中心座標が範囲内であれば(S780:Yes)表面計測を行う(S810)ことでも、精度よく計測することが可能である。
【0178】
これらの位置調整方法や角度調整方法は、走行してくる車両に対して説明してきたが、
止まっている車両に対しても同様に位置調整や角度調整ができる。車両が停止している場合は、車両とカメラの位置は変わらないため、距離を検出して、次のフローに行くことはせず、位置調整や角度調整を行い、撮像装置の位置を適正な位置にしたのち、その場でタイヤ表面の計測を行うことができる。つまり、停止した車両のタイヤの表面を計測するタイヤ観察装置において、カメラの撮像中心にタイヤが撮影されるように撮像装置を位置制御したり、カメラ撮影方向がタイヤ表面に対し直交するように撮像装置を角度制御することによって、カメラ位置や角度を最適化し、精度のタイヤ表面の計測を行うことができる。
【符号の説明】
【0179】
20:タイヤ観測装置
21、21L、21R:撮像装置
22:演算装置
80:タイヤ観測システム
81:管理装置
82:表示端末
90:車両
210:台座
211、211L、211R:カメラ
212、212L、212R:カメラ回転部
213、213L、213R:照明
214、214L、214R:照明回転部
215、215L、215R:全体駆動部
216L、216R、2161U、2161D、2162U、2162D:測距センサ
221、222:IF
231:CPU
232:GPU
241:ROM
242:RAM
250:記憶装置
260:操作装置
270:表示装置
280:通信装置
291、292:像
301:車両識別部
302:車両情報取得部
303:距離検出部
304:角度算出部
306:タイヤ検出部
307:調整量算出部
308:制御情報出力部
309:表面状態計測部
310:状態管理部
800:情報通信ネットワーク
815:記憶装置
2121:ベース部材
2122:カメラ固定部材
2153:台座固定部材
2141:ベース部材
2142:照明固定部材
2150:スライダ
2151:スライダ嵌合部材
2152:支持部材
2153:台座固定部材
FT、RT:タイヤ