(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】車両制御方法及び車両制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/16 20200101AFI20240910BHJP
B60W 40/04 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
B60W30/16
B60W40/04
(21)【出願番号】P 2023544884
(86)(22)【出願日】2021-09-01
(86)【国際出願番号】 JP2021032161
(87)【国際公開番号】W WO2023032092
(87)【国際公開日】2023-03-09
【審査請求日】2024-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】江本 周平
【審査官】佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-154614(JP,A)
【文献】特開平5-54297(JP,A)
【文献】特開2001-1789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/16
B60W 40/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の斜め前方を走行している第1他車両が、前記自車両の前方において前記自車両が走行する第1車線へ合流する第2車線を走行する車両であるか否かを判定する処理と、
前記第1他車両が前記第1車線へ合流する前記第2車線を走行していると判定した場合に、前記第1車線上で前記自車両の前方を走行する先行車両との間の車間距離を維持する車速制御における前記先行車両に対する第1目標車間距離よりも短くなるように、前記第1車線の前後方向における前記第1他車両の後端位置から前記自車両の先端位置までの前後方向距離を維持する車速制御における前記第1他車両に対する第2目標車間距離を設定する処理と、
前記前後方向距離が前記第2目標車間距離となるように前記自車両の車速を制御する前記自車両の車速を制御する処理と、
をコントローラに実行させることを特徴とする車両制御方法。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記第1他車両が前記自車両前方において前記第1車線へ車線変更した後、所定時間が経過するか、前記自車両が所定距離走行するか、前記第1車線と前記第2車線との合流区間の終了地点を前記自車両が通過するまで、前記第1他車両と前記自車両との間の車間距離が前記第1目標車間距離よりも短くなるように前記自車両の車速を制御し、
前記所定時間が経過するか、前記自車両が前記所定距離走行するか、前記終了地点を前記自車両が通過した後に、前記自車両と前記第1他車両との間の車間距離が第1目標車間距離となるように前記自車両の車速を制御する、
請求項1に記載の車両制御方法。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
前記前後方向距離を前記第2目標車間距離まで延長する場合の減速度を、前記先行車両との間の車間距離を維持する車速制御における減速度の許容上限値よりも小さくなるように制限することを特徴とする請求項1に記載の車両制御方法。
【請求項5】
前記前後方向距離を前記第2目標車間距離まで短縮する場合の車速の変化率の上限を、前記自車両と前記第1他車両との車間距離を前記第2目標車間距離まで延長する場合の車速の変化率の上限よりも大きな値に設定することを特徴とする請求項1又は4に記載の車両制御方法。
【請求項6】
前記前後方向距離を前記第2目標車間距離まで短縮する車速制御を開始する応答性を、前記前後方向距離を前記第2目標車間距離まで延長する車速制御を開始する応答性よりも高くする、ことを特徴とする請求項1、4又は5に記載の車両制御方法。
【請求項7】
前記第1他車両の車速と標準的な車頭時間との積の2分の1を車間距離上限値として算出する処理と、
前記自車両が先行車両の減速に追従しうる最短の車間距離として予め設定した車間距離下限値以上、且つ前記車間距離上限値以下の距離を、前記第2目標車間距離として設定する処理と、
を前記コントローラに実行させることを特徴とする請求項1及び4~6のいずれか一項に記載の車両制御方法。
【請求項8】
自車両の斜め前方を走行している第1他車両が、前記自車両の前方において前記自車両が走行する第1車線へ合流する第2車線を走行する車両であるか否かを判定する処理と、
前記第1他車両が前記第1車線へ合流する前記第2車線を走行していると判定した場合に、前記第1車線上で前記自車両の前方を走行する先行車両との間の車間距離を維持する車速制御における前記先行車両に対する第1目標車間距離よりも短くなるように、前記第1車線の前後方向における前記第1他車両の後端位置から前記自車両の先端位置までの前後方向距離を維持する車速制御における前記第1他車両に対する第2目標車間距離を設定する処理と、
前記前後方向距離が前記第2目標車間距離となるように前記自車両の車速を制御する処理と、
を実行するコントローラを備えることを特徴とする車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御方法及び車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
先行車両との距離が一定になるように車間距離を制御する技術として、例えば下記特許文献1に記載の車間距離制御装置が記載されている。この車間距離制御装置は、合流地点において自車両の側方に他車両を検出した場合に先行車両との車間距離を延長することにより、自車両及び他車両の運転者の不安感を少なくすることを意図している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、合流車線と本線との間が合流地点の直前まで壁などで遮蔽されていることがある。このため、自車両が走行する車線に合流する他車線上の他車両が自車両の斜め前方を走行する場合には、この他車両を自車両から検出し易いが、この他車両の後続車両を検出することが難しいことがある。このように後続車両を検出できないまま、後続車両と自車両とが横並びの状態で合流地点に到達すると、自車両は、後続車両を検出した直後に急減速又は急加速を行って、自車両と後続車両との相対的な前後関係を調整する必要が生じる。後続車両も同様である。この結果、自車両や後続車両の乗員に不安感を与える虞がある。
本発明は、自車両が走行する車線と他車両が走行する他車線とが自車両の前方で合流する合流区間において、自車両や他車両の運転者が感じる不安感を軽減するように自車両の速度を調整することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様の車両制御方法では、自車両の前方において自車両が走行する第1車線へ合流する第2車線を走行する第1他車両が、自車両の斜め前方を走行しているか否かを判定する処理と、第1他車両が自車両の斜め前方を走行していると判定した場合、第1車線上で自車両の前方を走行する先行車両との間の車間距離を維持する車速制御における第1目標車間距離よりも、第1車線の前後方向における第1他車両の後端位置から自車両の先端位置までの前後方向距離が短くなるように、自車両の車速を制御する処理と、をコントローラに実行させる。
【発明の効果】
【0006】
発明によれば、自車両が走行する車線と他車両が走行する他車線とが自車両の前方で合流する合流区間において、自車両や他車両の運転者が感じる不安感を軽減するように自車両の速度を調整できる。
本発明の目的及び利点は、特許請求の範囲に示した要素及びその組合せを用いて具現化され達成される。前述の一般的な記述及び以下の詳細な記述の両方は、単なる例示及び説明であり、特許請求の範囲のように本発明を限定するものでないと解するべきである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態の車両制御装置の概略構成の一例を示す図である。
【
図2A】従来の車間距離制御の課題の説明図である。
【
図2B】実施形態の車両制御方法の一例の説明図である。
【
図3】
図1のコントローラの機能構成の一例のブロック図である。
【
図4A】車間距離制御の追従対象となる対象車両の一例を示す図である。
【
図4B】車間距離制御の追従対象となる対象車両の他の例を示す図である。
【
図4C】車間距離制御の追従対象とならない車両を示す図である。
【
図5】実施形態の車両制御方法の一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(構成)
図1は、実施形態の車両制御装置を搭載する車両の概略構成の一例を示す図である。自車両1は、自車両1の走行を制御する車両制御装置10を備える。車両制御装置10は、センサによって自車両1の周囲の走行環境を検出し、周囲の走行環境に基づいて自車両1の走行を支援する。車両制御装置10による自車両1の走行支援制御は、例えば、運転者が関与せずに自動で自車両1を走行させる自律走行制御を含んでよい。また、車両制御装置10による走行支援制御は、自車両1の操舵角、駆動力又は制動力を部分的に制御して、自車両1の運転者を支援する運転支援制御を含んでもよい。
【0009】
車両制御装置10は、物体センサ11と、車両センサ12と、測位装置13と、地図データベース14と、ナビゲーション装置15と、コントローラ16と、アクチュエータ17を備える。図面において、地図データベースを「地
図DB」と表記し、ヒューマンマシンインタフェースを「HMI」と表記する。
物体センサ11は、自車両1に搭載されたレーザレーダやミリ波レーダ、ソナー、カメラ、LIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)など、自車両1の周辺の物体を検出する複数の異なる種類の物体検出センサを備える。
【0010】
車両センサ12は、自車両1に搭載され、自車両1から得られる様々な情報(車両信号)を検出する。車両センサ12には、例えば、自車両1の走行速度(車速)を検出する車速センサ、各タイヤの回転速度を検出する車輪速センサ、3軸方向の加速度(減速度を含む)を検出する3軸加速度センサ(Gセンサ)、操舵角(転舵角を含む)を検出する操舵角センサ、自車両1に生じる角速度を検出するジャイロセンサ、ヨーレートを検出するヨーレートセンサ、自車両のアクセル開度を検出するアクセルセンサと、運転者によるブレーキ操作量を検出するブレーキセンサが含まれる。
【0011】
測位装置13は、全地球型測位システム(GNSS)受信機を備え、複数の航法衛星から電波を受信して自車両1の現在位置を測定する。GNSS受信機は、例えば地球測位システム(GPS)受信機等であってよい。測位装置13は、例えば慣性航法装置であってもよい。
地図データベース14は、自動運転用の地図として好適な高精度地図データ(以下、単に「高精度地図」という。)を記憶してよい。高精度地図は、ナビゲーション用の地図データ(以下、単に「ナビ地図」という)よりも高精度の地図データであり、道路単位の情報よりも詳細な車線単位の情報を含む。例えば、高精度地図は車線単位の情報として、車線基準線(例えば車線内の中央の線)上の基準点を示す車線ノードの情報と、車線ノード間の車線の区間態様を示す車線リンクの情報を含む。車線ノードの情報は、その車線ノードの識別番号、位置座標、接続される車線リンク数、接続される車線リンクの識別番号を含む。車線リンクの情報は、その車線リンクの識別番号、車線の種類、車線の幅員、車線境界線の種類、車線の形状、車線区分線の形状、車線基準線の形状を含む。高精度地図は更に、車線上又はその近傍に存在する信号機、停止線、標識、建物、電柱、縁石、横断歩道等の地物の種類及び位置座標と、地物の位置座標に対応する車線ノードの識別番号及び車線リンクの識別番号等の地物の情報を含む。
【0012】
ナビゲーション装置15は、測位装置13により自車両の現在位置を認識し、その現在位置における地図情報を地図データベース14から取得する。ナビゲーション装置15は、乗員が入力した目的地までの道路単位の経路(以下「ナビゲーション経路」と表記することがある)を設定し、このナビゲーション経路に従って乗員に道路案内を行う。また、ナビゲーション装置15は、ナビゲーション経路の情報をコントローラ16へ出力する。コントローラ16は、自律走行制御の際に、ナビゲーション経路に沿って走行するように自車両を自動で運転してよい。
【0013】
コントローラ16は、自車両1の走行を制御する電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)である。コントローラ16は、プロセッサ20と、記憶装置21等の周辺部品とを含む。プロセッサ20は、例えばCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)であってよい。記憶装置21は、半導体記憶装置や、磁気記憶装置、光学記憶装置等を備えてよい。記憶装置21は、レジスタ、キャッシュメモリ、主記憶装置として使用されるROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等のメモリを含んでよい。以下に説明するコントローラ16の機能は、例えばプロセッサ20が、記憶装置21に格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。コントローラ16は、以下に説明する各情報処理を実行するための専用のハードウエア(例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等のプログラマブル・ロジック・デバイス)で形成してもよい。
【0014】
アクチュエータ17は、コントローラ16からの制御信号に応じて、自車両1のステアリングホイール、アクセル開度及びブレーキ装置を操作して、自車両1の車両挙動を発生させる。アクチュエータ17は、ステアリングアクチュエータと、アクセル開度アクチュエータと、ブレーキ制御アクチュエータを備える。ステアリングアクチュエータは、自車両1のステアリングの操舵方向及び操舵量を制御する。アクセル開度アクチュエータは、自車両1のアクセル開度を制御する。ブレーキ制御アクチュエータは、自車両1のブレーキ装置の制動動作を制御する。
【0015】
次に、コントローラ16による自車両1の制御の一例を説明する。
図2Aは従来の車間距離制御の課題の説明図である。
いま、第1車線2a上を自車両1が走行しており、自車両1の前方の合流区間Smにおいて第2車線2bが第1車線2aに合流する状況を想定する。例えば、第1車線2aが本線で第2車線2bが合流車線であってもよく、第2車線2bが本線で第1車線2aが合流車線であってもよい。位置PsとPeはそれぞれ合流区間Smの開始地点と終了地点である。
自車両1は、第1車線2a上で自車両1の前方を走行する先行車両3を追従対象とする車間距離制御を実施している。すなわち、先行車両3との間の車間距離を目標車間距離に維持する車速制御を実施している。
以下の説明において、車間距離制御の追従対象の車両を「対象車両」と表記することがある。
車間距離制御では、先行車両3と自車両1との車間距離が目標車間距離L1となり、且つ予め設定された設定速度以下で走行するように自車両1の車速Vが制御される。目標車間距離L1は、標準的な車間距離として予め定義された値に設定される。自車両の車速をVとし、標準的な車頭時間(Time Headway)をNとすると、例えば目標車間距離L1は、次式(1)によって設定してよい。
L1=V×N …(1)
標準的な車頭時間Nは、例えば1.0~2.0秒であり、より好ましくは1.5~1.8秒である。
【0016】
第1車線2aと第2車線2bとは壁4などで遮蔽されている。このため、第2車線2b上の第1他車両5が自車両1の斜め前方を走行している場合には、合流車線と本線との間が合流地点へ到達する前であっても、自車両1から第1他車両5を検出し易い。しかし、第1他車両5の後続車両6は、壁4のために自車両1から検出することが難しい。
このため、
図2Aに示すように自車両1と後続車両6とが横並びの状態となり、そのまま自車両1と後続車両6が合流地点に到達すると、自車両1は、後続車両6を検出した直後に急減速又は急加速を行って、自車両1と後続車両6との相対的な前後関係を調整する必要が生じる。後続車両6も同様である。この結果、自車両1や後続車両6の乗員に不安感を与える虞がある。
【0017】
図2Bは、実施形態の車両制御方法の一例の説明図である。実施形態の車両制御方法においてコントローラ16は、自車両1の前方において自車両1が走行する第1車線2aへ合流する第2車線2bを走行する第1他車両5が、自車両1の斜め前方を走行しているか否かを判定する。
第1他車両5が自車両1の斜め前方を走行していると判定した場合に、コントローラ16は、先行車両3との間の車間距離を維持する車速制御における第1目標車間距離L1よりも、自車両1と第1他車両5との間の車間距離が短くなるように自車両1の車速を制御する。
【0018】
ここで、第1車線2a上を走行する自車両1と第2車線2b上を走行する第1他車両5との間の車間距離は、例えば、第1車線2a(又は第2車線2b)の前後方向における第1他車両5の後端位置から自車両1の先端位置までの前後方向距離として定義する。
例えば、自車両1と第1他車両5との間の車間距離を第1目標車間距離L1よりも短くするために、コントローラ16は、自車両1と第1他車両5との間の車間距離の目標値として、第1目標車間距離L1よりも短い第2目標車間距離L2を設定し、自車両1と第1他車両5との間の車間距離が第2目標車間距離L2となるように、自車両1の車速を制御してもよい。
【0019】
このように、第2車線2bを走行する第1他車両5との車間距離が比較的短くなるように車間距離制御を実施することにより、合流地点付近に到達した自車両1が第1他車両5の後続車両6を検出した時点で、自車両1が後続車両6よりも前方に位置し易くなる。この結果、合流地点に到達したときに、後続車両6が自車両1の後方のスペースに入りやすくなる。このため、急減速又は急加速を行って後続車両6が第1車線2aへ進入するスペースを空ける必要がなくなるので、自車両や他車両の運転者が感じる不安感を軽減できる。
【0020】
以下、コントローラ16の機能を詳しく説明する。
図3は、コントローラ16の機能構成の一例のブロック図である。コントローラ16は、物体検出部30と、自車両位置推定部31と、地図取得部32と、検出統合部33と、物体追跡部34と、地図内位置演算部35と、車両制御部36を備える。
物体検出部30は、物体センサ11の検出信号に基づいて、自車両1の周辺の物体、例えば車両(自動車や自動二輪車)、歩行者、障害物などの位置、姿勢、大きさ、速度などを検出する。物体検出部30は、例えば自車両1を空中から眺める天頂図(平面図ともいう)において、物体の2次元位置、姿勢、大きさ、速度などを表現する検出結果を出力する。
【0021】
自車両位置推定部31は、測位装置13による測定結果や、車両センサ12からの検出結果を用いたオドメトリに基づいて、自車両1の絶対位置、すなわち、所定の基準点に対する自車両1の位置、姿勢及び速度を計測する。地図取得部32は、地図データベース14から自車両1が走行する道路の構造を示す地図情報を取得する。地図取得部32は、通信装置により外部の地図データサーバから地図情報を取得してもよい。
【0022】
検出統合部33は、複数の物体検出センサの各々から物体検出部30が得た複数の検出結果を統合して、各物体に対して一つの2次元位置、姿勢、大きさ、速度などを出力する。具体的には、物体検出センサの各々から得られた物体の挙動から、各物体検出センサの誤差特性などを考慮した上で最も誤差が少なくなる最も合理的な物体の挙動を算出する。具体的には、既知のセンサ・フュージョン技術を用いることにより、複数種類のセンサで取得した検出結果を総合的に評価して、より正確な検出結果を得る。
物体追跡部34は、物体検出部30によって検出された物体を追跡する。具体的には、検出統合部33により統合された検出結果に基づいて、異なる時刻に出力された物体の挙動から、異なる時刻間における物体の同一性の検証(対応付け)を行い、かつ、その対応付けを基に、物体の速度などの挙動を予測する。
【0023】
地図内位置演算部35は、自車両位置推定部31により得られた自車両1の絶対位置、及び地図取得部32により取得された地図情報から、地図上における自車両1の位置及び姿勢を推定する。また、地図内位置演算部35は、自車両1が走行している道路、さらに当該道路のうちで自車両1が走行する第1車線2aを特定し、第1車線2a内における自車両1の横方向位置(車幅方向位置、車線内横位置)を算出する。
車両制御部36は、物体追跡部34による物体の挙動の予測結果と、地図内位置演算部35による自車両1の位置及び姿勢の演算結果と、乗員(例えば運転者)の入力に基づいて、アクチュエータ17を駆動して自車両1の走行を制御する。車両制御部36は、ルート設定部40と、パス生成部41と、制御指令値演算部42を備える。
【0024】
ルート設定部40は、地図内位置演算部35が演算した自車両1の現在位置と乗員から入力された目的地とに基づいて(または、ナビゲーション装置15が設定したナビゲーション経路に基づいて)、自車両1が走行すべき車線単位の目標ルート(以下、単に「ルート」と表記する)を設定する。このルートは、静的に設定される目標経路であり、地図データベース14に格納される高精度地図の車線形状や、物体センサ11で検出した車線境界線の形状に基づいて設定される。例えば、現在位置から目的地まで移動する際に走行する道路の車線中央をルートとして設定してよい。
【0025】
パス生成部41は、自車両1が車線変更等の運転行動を行うか否かを判断し、判断結果に基づいて自車両1が走行すべき目標パス(以下、単に「パス」と表記する)を設定する。このパスは、自車両1の運転行動に応じて動的に設定され、例えば交通状況に応じて自車両1に車線変更させる場合には、パス生成部41は、車線変更前の車線から車線変更後の車線まで自車両1が移動する移動経路を、自車両1の車両モデルに基づいて生成する。反対に、自車両1に車線変更させない場合には、ルートと一致するようなパスを生成する。
【0026】
制御指令値演算部42は、パス生成部41が生成したパスPに沿って、自車両1が周囲の物体との間隔を保ちながら移動するような制御指令値(操舵指令値や車速指令値)を算出する。制御指令値演算部42は、先行車両までの距離と、先行車両との相対速度、相対加速度に基づいて自車両1の車速指令値を算出する。そして、車速指令値とパスPに基づいて、現時刻tからt+N×dt秒後まで、各時刻t+i×dt(iは1~Nの整数)の自車両の目標位置、姿勢、速度及び曲率をNステップ分計算することで、自車両1の目標走行軌道を算出する。
【0027】
制御指令値演算部42は、自車両1が周辺物との距離を保ちながら、目標走行軌道になるべく近づくように、加減速度や舵角指令値を算出する。このような制御は、例えば、障害物との距離によるポテンシャル関数を使った最適制御などの一般的な障害物回避アルゴリズムで実現できる。しかし、障害物回避制御で設定される障害物とのマージンは、障害物に接近しすぎないように設定された限界値であり一般的な乗員の感覚よりは狭いことが多い。
このため制御指令値演算部42は、目標走行軌道を生成する際、車間距離制御の追従対象となる対象車両との距離を広く保つように車速指令値を算出する。これにより、最終的な車速指令値や操舵指令値が先行車両に近づきすぎないように制御される。
【0028】
制御指令値演算部42によって実行される車間距離制御について説明する。まず制御指令値演算部42は、車間距離制御の追従対象となる対象車両を特定する。制御指令値演算部42は、物体追跡部34が推定した他車両の位置、速度及び加速度などの運動状態に基づいて、所定の予測時間幅T秒後の他車両の位置を予測する。例えば、速度や加速度からT秒間の移動量Dを算出し、現在の他車両の位置から車線に沿って移動量D分だけ進んだ位置を他車両の予測位置として算出する。
【0029】
図4AのP3は、第1車線2a上で自車両1の前方を走行する第2他車両3の予測位置の一例を示す。
図4A~4CのP1は自車両1のT秒後の予測位置を示す。
図4BのP5は、第2車線2b上で自車両1の斜め前方を走行する第1他車両5の予測位置の一例を示す。
図4CのP7は、第1車線2aの隣接車線2cを走行する第3他車両7のT秒後の予測位置の一例を示す。
図4Cの第4他車両8は第2車線2b上で停車していており、現在時刻からT秒後までの第4他車両8の移動量は0である。
【0030】
制御指令値演算部42は、これら他車両3、5、7及び8の予測位置に基づいて、これら他車両3、5、7及び8を車間距離制御の追従対象とするか否かを判定する(すなわち、他車両3、5、7及び8が対象車両であるか否かを判定する)。具体的には、制御指令値演算部42は、自車両1の予測位置P1から第1車線2aに沿って前方へ進行した場合に、他車両のT秒後の予測位置が自車両1の進行ルート上に位置する場合に、他車両を対象車両と特定する。他車両のT秒後の予測位置が自車両1の進行ルート上に位置しない場合には、他車両は対象車両でないと判定する。
【0031】
図4Aの例では、第2他車両3の予測位置P3は自車両1の進行ルート上に位置する。このため制御指令値演算部
42は、第2他車両3が対象車両であると判定する。制御指令値演算部
42は、自車両1が走行する第1車線
2a上の先行車両を対象と判定してもよい。
図4Bの例では、第1他車両5の予測位置P5は自車両1の進行ルート上に位置する。このため制御指令値演算部
42は、第1他車両5が対象車両であると判定する。なお、制御指令値演算部
42は、自車両1から第1車線2aと第2車線2bとの合流地点までの距離d1と、第2車線2b上を走行する第1他車両5から合流地点までの距離d2とを比較して、距離d2が距離d1よりも短い場合に第1他車両5が対象車両であると判定してもよい。
図4Cの例では、第3他車両7の予測位置P7は自車両1の進行ルート上に位置しない。第4他車両8は移動しないため、第4他車両8のT秒後の予測位置も自車両1の進行ルート上に位置しない。このため制御指令値演算部
42は、第3他車両7と第4他車両8は対象車両でないと判定する。
【0032】
これによって、自車両1が走行する第1車線2a上を走行する第2他車両3だけでなく、第1車線2aに合流する第2車線2b上を走行する第1他車両5も、車間距離制御の追従対象とすることができる。さらに、
図4Cのように合流車線上で停車している第4他車両8など、自車両1に先を譲っている車を追従対象から外すことで、不必要な減速を避けることができる。
予測時間幅Tは、周辺車両が将来的に合流するかどうかを計算するための長さであり、10秒~20秒程度が望ましい。例えばT=10秒とした場合、10秒以内に合流する可能性のある車だけが抽出される。Tが短すぎると、合流してくる対象車両(例えば第1他車両5)に対する反応が遅くなり、急な加減速が必要になる。一方、Tが長すぎると、合流地点まで距離があるにもかかわらず、合流してくる対象車両に対して車間制御を始めるため、乗員に違和感を与える可能性がある。
【0033】
次に制御指令値演算部
42は、対象車両であると判定された他車両(
図4A~
図4Cの例では第1他車両5及び第2他車両3)が、自車両1が走行する第1車線2aへ合流する車線上の他車両であるか否かを判定する。例えば、第1他車両5及び第2他車両3の現在位置が自車両1の現在位置と同一車線に位置する場合には、第1車線2aへ合流する車線上の他車両でないと判定し、同一車線に位置しない場合には第1車線2aへ合流する車線上の他車両と判定する。
図4A~
図4Cの例では、第1他車両5を第1車線2aへ合流する車線上の他車両と判定し、第2他車両3を第1車線2aへ合流する車線上の他車両でないと判定する。
【0034】
制御指令値演算部
42は、第1車線2aへ合流する車線上の他車両以外の車両(
図4A~
図4Cの例では第1車線2a上の第2他車両3)を追従対象とする車間距離制御の目標車間距離を、標準的な(通常の)車間距離である第1目標車間距離L1に設定する。第1目標車間距離L1は、乗員(例えば運転者)に不安感を与えない程度の車間距離であり、車速に比例した長さとしてよい。例えば第1目標車間距離L1は上式(1)により設定してよい。
制御指令値演算部
42は、第1車線2aへ合流する車線上の他車両(
図4A~
図4Cの例では第2車線2b上の第1他車両5)を追従対象とする車間距離制御の目標車間距離を、第1目標車間距離L1よりも短い第2目標車間距離L2に設定する。第1車線2aへ合流する車線上の他車両との車間距離を、第1目標車間距離L1よりも短い第2目標車間距離L2とすることで、
図2Bに示すように未検知の後続車両6の前方に自車両1が位置にいる状態となり易くなる。
【0035】
例えば、第2目標車間距離L2は、以下に例示する車間距離下限値Lmin以上かつ車間距離上限値Lmax以下の範囲の値に設定してよい。
車間距離下限値Lminは、自車両が先行車両の減速に追従しうる最短の車間距離であり、例えば、前述の障害物回避制御で設定される障害物とのマージンと同程度の距離である。車間距離下限値Lminは、自車両1の運動性能や安全率などを考慮して設計される。
第2目標車間距離L2が車間距離下限値Lminよりも短い場合には、第1他車両5が第1車線2aに進入するときに、自車両1と第1他車両5との間の距離が近くなるため回避動作が必要になる。このような回避動作は一般的に、自車両1や周囲の他車両の乗員に不安感を与える可能性がある。
【0036】
車間距離上限値Lmaxは、第1他車両5の後続車両6と自車両1とが横並びの状態で合流地点に到達する状況を防ぐために設定する値である。理想的には、自車両1と第1他車両5との間の第2目標車間距離L2が、第1他車両5と後続車両6との車間距離の半分程度となっていることが好ましい。しかし、第1車線2aと第2車線2bとが壁などにより遮蔽されていると、自車両1が合流地点付近に到達するまで後続車両6を検出できない。このため、第1他車両5と後続車両6との車間距離が標準的な車間距離であると仮定する。
標準的な車間距離は、車速×(標準的な車頭時間N)により近似できるので、例えば次式(2)によって車間距離上限値Lmaxを設定してよい。
Lmax=Vi×N×0.5 …(2)
なお、式(2)においてViは、第1他車両5の車速である。
【0037】
第1他車両5と後続車両6の車間距離を予想するには、自車両1の車速ではなく第1他車両5の車速を用いる方がよい。例えば、第2車線2b上の第1他車両5が、第1車線2a上の車速よりも低速で走行している場合、後続車両6は第1他車両5に近づいている虞がある。第2目標車間距離L2を、第1他車両5の車速Viに基づいて決定することで、第1他車両5が遅い場合であっても自車両1が後続車両6の前方に位置し易くなる。
【0038】
制御指令値演算部
42は、上記のように対象車両に対して設定した目標車間距離を用いて車間制御を行う。例えば制御指令値演算部
42は、特定した全ての対象車両と自車両1との間の車間距離を、各々の対象車両について設定した目標車間距離以上となるように、自車両の車速指令値Vを算出してよい。具体的には、次式(3)のような評価関数Fを定義して、評価関数Fが最小となるような車速指令値Vを最適化計算によって演算してもよい。
【数1】
【0039】
式
(3)において、Lr
iは対象車両iに対して設定された目標車間距離であり、L
iは対象車両iと自車両1との間の現在の車間距離であり、V
iは対象車両iの速度であり、Vrは設定車速であり、W
Lは車間距離のウエイトであり、W
Vは設定車速のウエイトである。
評価関数Fの第1項は、対象車両iとの車間距離が、目標車間距離Lr
iよりも短くなると増加し目標車間距
離Lr
i
よりも長ければ0である。全ての対象車両iについて算出したコストを総和することで、全ての対象車両iとの車間距離が各々の目標車間距離Lr
i以上となるように最適化される。
例えば
図2A及び
図2Bの例では、評価関数Fは、第1他車両5と自車両1との車間距離が第2目標車間距離L2より短くなるほど増加するコストと、第2他車両3と自車両1との車間距離が第1目標車間距離L1より短くなるほど増加するコストとの総和を含んでいる。
評価関数Fの第2項は、自車両1の車速と設定車速Vrとの差が大きいほど大きくなる。これにより、対象車両iと自車両1との車間距離が十分離れているときは、車速Vが設定車速Vrに近づくように加減速する。
【0040】
なお、制御指令値演算部42は、第1他車両5が自車両1の前方にて第2車線2bから第1車線2aへ車線変更した後、暫くの間、第1他車両5に対する目標車間距離(すなわち、第1他車両を追従対象とする車間距離制御の目標車間距離)を第2目標車間距離L2に維持してもよい。これにより、第1他車両5の後続車両6が、第1他車両5に続いて自車両1の前方に車線変更するのを抑制できる。
例えば、第1他車両5が自車両1の前方において車線変更した後、所定時間が経過するか、自車両1が所定距離走行するか、自車両1が合流区間Smの終了地点Peを通過するまで、第1他車両5に対する目標車間距離を第2目標車間距離L2に維持してもよい。その後、所定時間が経過するか、自車両1が所定距離走行するか、自車両1が合流区間Smの終了地点Peを通過した後に、第1他車両5に対する目標車間距離を第2目標車間距離L2から第1目標車間距離L1へ変更する。
【0041】
また例えば制御指令値演算部42は、自車両1と第1他車両5との車間距離が第2目標車間距離L2よりも短い状態から、自車両1と第1他車両5との車間距離を第2目標車間距離L2まで延長する場合の減速度を制限してもよい。例えば、第1車線2a上の先行車両3を追従対象とする車間距離制御を行う場合に許容される減速度の上限値よりも小さくなるように制限してよい。
また例えば制御指令値演算部42は、自車両1と第1他車両5との車間距離が第2目標車間距離L2よりも長い状態から、自車両1と第1他車両5との車間距離を第2目標車間距離L2まで短縮する場合の車速の変化率の絶対値の上限を、自車両1と第1他車両5との車間距離が第2目標車間距離L2よりも短い状態から、自車両1と第1他車両5との車間距離を第2目標車間距離L2まで延長する場合の車速の変化率の絶対値の上限よりも大きな値に設定してもよい。
以上のように自車両1と第1他車両5との車間距離を第2目標車間距離に調整する際の加速度及び減速度を設定することで、自車両1と第1他車両5との車間距離が短くなり易くなる。このため、自車両1が合流地点に到達したときに、第1他車両5の後続車両6よりも自車両1の方が前方に位置し易くなる。
【0042】
また、自車両1と第1他車両5との車間距離が第2目標車間距離L2よりも長い状態を検出してから自車両1と第1他車両5との車間距離を第2目標車間距離L2まで短縮する制御を開始する応答性を高くし、自車両1と第1他車両5との車間距離が第2目標車間距離L2よりも短い状態を検出してから自車両1と第1他車両5との車間距離を第2目標車間距離L2まで延長する制御を開始する応答性を低く設定してもよい。
例えば、自車両1と第1他車両5との車間距離を第2目標車間距離L2まで短縮する制御を開始する応答性を、自車両1と第1他車両5との車間距離を第2目標車間距離L2まで延長する制御を開始する応答性よりも高くしてもよい。
以上のように自車両1と第1他車両5との車間距離を第2目標車間距離に調整する際の制御開始の応答性を設定することで、自車両1と第1他車両5との車間距離が短くなり易くなる。このため、自車両1が合流地点に到達したときに、第1他車両5の後続車両6よりも自車両1の方が前方に位置し易くなる。
【0043】
(動作)
図5は、実施形態の車両制御方法の一例のフローチャートである。
ステップS1において物体追跡部34は、自車両1の周囲の他車両の位置、速度及び加速度などの運動状態を検出する。
ステップS2において制御指令値演算部
42は、予測時間幅T秒後の他車両の予測位置を算出する。
ステップS3~S7では、物体追跡部34が検出した他車両の各々を1つずつ選択し、選択した他車両(以下「注目車両」と表記する)が車間距離制御の追従対象となる対象車両であるかを判定し、対象車両に対して目標車間距離を設定する。
【0044】
ステップS3において制御指令値演算部42は、注目車両の予測位置が、自車両1のT秒後の予測位置と同一車線の前方に位置するか否かを判定する。注目車両の予測位置が自車両1の予測位置と同一車線の前方に位置する(S3:Y)場合には、注目車両が対象車両であると判定して処理はステップS4へ進む。注目車両の予測位置が自車両1の予測位置と同一車線の前方に位置しない場合(S3:N)には、注目車両が対象車両でないと判定して処理はステップS7へ進む。
【0045】
ステップS4において制御指令値演算部42は、注目車両の現在位置が自車両1の現在位置と同一車線に位置するか否かを判定する。注目車両の現在位置が自車両1の現在位置と同一車線に位置する場合(S4:Y)に処理はステップS5へ進む。注目車両の現在位置が自車両1の現在位置と同一車線に位置しない場合(S4:N)に処理はステップS6へ進む。
ステップS5において制御指令値演算部42は、注目車両に対する目標車間距離を第1目標車間距離L1に設定する。その後に処理はステップS7へ進む。
ステップS6において制御指令値演算部42は、注目車両に対する目標車間距離を第2目標車間距離L2に設定する。その後に処理はステップS7へ進む。
【0046】
ステップS7において制御指令値演算部42は、物体追跡部34が検出した全ての他車両がステップS3で判定されたか否かを判定する。全ての他車両が判定された場合(S7:Y)に処理はステップS8へ進む。まだ判定されていない他車両が残っている場合(S7:N)には、これら判定されていない他車両のいずれかを注目車両に選択して処理はステップS3へ戻る。
ステップS8において制御指令値演算部42は、対象車両に対して設定した目標車間距離を用いて自車両1の車速指令値を演算する。
ステップS9において制御指令値演算部42は、演算した車速指令値に基づいてアクチュエータ17のアクセル開度アクチュエータと、ブレーキ制御アクチュエータを駆動し、自車両1の車速を制御する。その後に処理は終了する。
【0047】
(実施形態の効果)
(1)コントローラ16は、自車両1の前方において自車両1が走行する第1車線へ合流する第2車線を走行する第1他車両が、自車両1の斜め前方を走行しているか否かを判定する処理と、第1他車両が自車両1の斜め前方を走行していると判定した場合、第1車線上で自車両1の前方を走行する先行車両との間の車間距離を維持する車速制御における第1目標車間距離よりも、第1車線の前後方向における第1他車両の後端位置から自車両1の先端位置までの前後方向距離が短くなるように、自車両1の車速を制御する処理と、を実行する。
これにより、合流地点に付近に到達した自車両1が第1他車両の後続車両を検出した時点で、自車両1が後続車両よりも前方に位置し易くなる。この結果、合流地点に到達したときに、後続車両が自車両1の後方のスペースに入りやすくなる。このため、後続車両が第1車線へ進入するスペースを空けるために急減速又は急加速をする必要がなくなるので、自車両や後続車両の運転者が感じる不安感を軽減できる。
【0048】
(2)コントローラ16は、第1他車両が自車両1前方において第1車線へ車線変更した後、所定時間が経過するか、自車両1が所定距離走行するか、第1車線と第2車線との合流区間の終了地点を自車両1が通過するまで、第1他車両と自車両1との間の車間距離が第1目標車間距離よりも短くなるように自車両1の車速を制御し、所定時間が経過するか、自車両1が所定距離走行するか、終了地点を自車両1が通過した後に、自車両1と第1他車両との間の車間距離が第1目標車間距離となるように自車両1の車速を制御してよい。
これにより、第1他車両の後続車両が、第1他車両に続いて自車両1の前方に車線変更するのを抑制できる。
(3)コントローラ16は、第1他車両が自車両1の斜め前方を走行していると判定した場合、前後方向距離の目標値として第1目標車間距離よりも短い第2目標車間距離を設定し、前後方向距離が第2目標車間距離となるように自車両1の車速を制御してよい。
これにより、前後方向距離が第1目標車間距離よりも短くなるように自車両1の車速を制御できる。
【0049】
(4)コントローラ16は、前後方向距離を第2目標車間距離まで延長する場合の減速度を、先行車両との間の車間距離を維持する車速制御における減速度の許容上限値よりも小さくなるように制限してよい。
また、コントローラ16は、前後方向距離を第2目標車間距離まで短縮する場合の車速の変化率の上限を、自車両1と第1他車両との車間距離を第2目標車間距離まで延長する場合の車速の変化率の上限よりも大きな値に設定してもよい。
また、前後方向距離を第2目標車間距離まで短縮する車速制御を開始する応答性を、前後方向距離を第2目標車間距離まで延長する車速制御を開始する応答性よりも高くしてもよい。
これにより、自車両1と第1他車両との車間距離が短くなり易くなる。このため、自車両1が合流地点に到達したときに、第1他車両の後続車両よりも自車両1の方が前方に位置し易くなる。
【0050】
(5)コントローラ16は、第1他車両の車速と標準的な車頭時間との積の2分の1を車間距離上限値として算出する処理と、自車両1が先行車両の減速に追従しうる最短の車間距離として予め設定した車間距離下限値以上、且つ車間距離上限値以下の距離を、第2目標車間距離として設定する処理とを実行してもよい。
第2目標車間距離を車間距離上限値以下の値に設定することで、自車両1と第1他車両との間の車間距離を、第1他車両と後続車両との間の車間距離の半分以下にし易くなる。これにより、第1他車両と後続車両との車間距離が標準的な車間距離よりも短い場合でも、後続車両よりも先に自車両1が合流地点に到達できる。
第2目標車間距離を車間距離下限値以上の値に設定することで、第1他車両が第1車線に車線変更しても自車両1と第1他車両が過度に接近するのを防止できる。これにより自車両1や第1他車両の運転者が感じる不安感を軽減できる。
【0051】
ここに記載されている全ての例及び条件的な用語は、読者が、本発明と技術の進展のために発明者により与えられる概念とを理解する際の助けとなるように、教育的な目的を意図したものであり、具体的に記載されている上記の例及び条件、並びに本発明の優位性及び劣等性を示すことに関する本明細書における例の構成に限定されることなく解釈されるべきものである。本発明の実施例は詳細に説明されているが、本発明の精神及び範囲から外れることなく、様々な変更、置換及び修正をこれに加えることが可能であると解すべきである。
【符号の説明】
【0052】
1…自車両、2a…第1車線、2b…第2車線、3…第2他車両、4…壁、5…第1他車両、6…後続車両