(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/04 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
G01N35/04 G
G01N35/04 B
(21)【出願番号】P 2023546775
(86)(22)【出願日】2022-06-02
(86)【国際出願番号】 JP2022022521
(87)【国際公開番号】W WO2023037674
(87)【国際公開日】2023-03-16
【審査請求日】2023-12-19
(31)【優先権主張番号】P 2021148127
(32)【優先日】2021-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伴野 太一
(72)【発明者】
【氏名】水島 洋
(72)【発明者】
【氏名】中塚 聖和
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/039558(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/090159(WO,A1)
【文献】特開2004-180675(JP,A)
【文献】特表2008-533989(JP,A)
【文献】米国特許第5416329(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00 - 35/10
G01N 1/00 - 1/44
G01N 30/04
C12M 1/00 - 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項8】
前記分析部がクロマトグラフである、請求項7に記載の分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフやガスクロマトグラフ等の分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフやガスクロマトグラフ等の分析装置では、試料収容部に複数の試料を収容し、該試料収容部をオートサンプラに装入したうえで、それら複数の試料に対して順次分析を実行する処理が行われる。試料収容部には、複数のウェルを備えるマイクロプレートや、個々の試料を貯留したバイアル瓶を複数保持するバイアルラック等がある。
【0003】
特許文献1に記載の分析装置は、試料に分注すべき試薬のボトルを複数本、試薬ディスクに設置する試薬搭載部を備えている。試薬ディスクは保冷されており、外部からそこに試料を搬入し搬出するための試料搬入出口と、該試料搬入出口を開閉する開閉カバーとが設けられている。この試薬ディスクに試薬を装入する際には、開閉カバーを開放し、オペレーターが複数本の試薬ボトルを一つ一つ試薬ディスク内の試薬搭載部に載置し、開閉カバーを閉鎖する、という作業を行う。試薬ディスクから試料を取り出す場合にも同様に、開閉カバーを開放した後、オペレーターが試薬ボトルを一つ一つ試薬搭載部から取り上げて試薬ディスクから搬出し、開閉カバーを閉鎖する、という作業を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【文献】米国国家規格協会編, "for Microplates - Bottom Outside Flange Dimensions", [online], 2011年10月13日, 米国国家規格協会, [2021年7月29日検索], インターネット<URL:https://www.slas.org/SLAS/assets/File/public/standards/ANSI_SLAS_3-2004_BottomOutsideFlangeDimensions.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の分析装置では、試薬(試料)中の溶媒の揮発や溶質の分解を防ぐために、試薬(試料)は試薬ディスク(試料保冷庫)内で冷却されている。一方、分析対象の試料によっては、溶質の析出を防ぐために、試料を、試料保冷庫ではなく試料加熱庫内で加温する必要がある。以下、試料保冷庫と試料加熱庫をまとめて試料保温庫と呼ぶが、いずれにせよ、試料保温庫内の温度は外部とは異なるため、試料を試料保温庫に搬入又は搬出する際に、試料保温庫内に外気をできるだけ流入させないようにする必要がある。しかし、特許文献1に記載の分析装置のようにオペレータが1つずつ試薬(試料)を試料保温庫に搬入・搬出するような構造であると、未熟なオペレータが操作に手間取った場合等に開閉カバーが長時間開放されてしまい、試料保温庫内の温度が大幅に変化してしまう。そうすると、試料保温庫内が本来の温度に戻るまでに溶媒の揮発や溶質の分解(保冷庫の場合)、溶質の析出(加熱庫の場合)が生じてしまうおそれがある。また、保冷庫の場合に水分を含んだ外気が流入すると、庫内に結露が発生してしまうおそれがある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、試料を、試料保温庫を含む所定の試料収容庫内に搬入及び搬出する際に、該試料収容庫内の温度が変化することをできるだけ抑えることができる試料装入部を備える分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために成された本発明に係る分析装置は、
開閉部を有し、該開閉部を介して試料収容部を受ける内部載置台を内部に備える試料収容庫と、
前記試料収容庫に前記試料収容部を装入するための試料装入部と
を備え、
前記試料収容部は、面方向を有し、該面方向における端部に設けられたフランジを有し、
前記試料装入部は、
前記試料収容庫の外部に設けられ、表面を有する外部載置台と、
前記外部載置台の表面上で、前記内部載置台を基準として、より離間した第1位置と前記内部載置台を基準としてより接近した第2位置の間で移動可能に設けられ、前記試料収容部のフランジと係合する係合部を有する移動台と、
前記移動台を移動させ、前記試料収容部の前記フランジと前記移動台の前記係合部との係合状態を変更する駆動部とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る試料装入装置によれば、オペレータは試料を予め試料収容部に収納しておき、試料収容部を試料収容庫内に装入する際、試料収容部を第1位置にある移動台上に載置して試料収容部のフランジを移動台の係合部に係合させるだけでよい。その後は、試料装入装置が自動的に、開閉部を開放し、移動部により移動台を第2位置に移動させたうえで開閉部を閉鎖し、駆動部によってフランジと係合部を非係合状態とするだけで、試料収容部が試料収容庫内に装入される。試料収容部を試料収容庫内から取り出す際も同様であり、試料装入装置が自動的に、駆動部によってフランジと係合部を係合状態とし、開閉部を開放したうえで移動部により移動台を第2位置から第1位置へと移動させ、開閉部を閉鎖する。オペレータは、第1位置に移動した移動台上に載置されフランジが係合部に係合されている試料収容部を、移動台から取り上げるだけでよい。このように、試料を試料収容庫内に装入し、取り出す操作が、試料収容部の装入・取り出し操作により一括して簡単に行えることから、試料収容庫の開閉部が開いている時間を最小にすることができ、試料収容庫内の温度が変化したり結露したりすることを最小限に抑えることができる。
【0010】
なお、試料収容部を移動台上に載置し、又は移動台から取り出す操作は、オペレータの代わりにロボットが行ってもよい。また、それに同期させて前記開閉部の開閉動作及び前記駆動部の位置変更操作も自動的に行うことにより、オペレータの負担が軽減されるとともに、試料収容庫の開閉部が開いている時間も更に短くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】本発明に係る試料装入装置によって分析装置に装入されるマイクロプレート(試料収容部)の例を示す上面図。
【
図2】本発明に係る試料装入装置を有するクロマトグラフの一実施形態を示す概略構成図。
【
図3A】本発明に係る試料装入装置の一実施形態の構成を示し、移動台が第1位置にあるときの状態を示す上面図。
【
図3B】本実施形態の試料装入装置において移動台が第2及び第3位置にあるときの状態を示す上面図。
【
図4A】本実施形態の試料装入装置が有する移動台及び係合部の拡大上面図。
【
図4C】係合部に試料収容部のフランジを係合させた状態を示す拡大図。
【
図5A】本実施形態の試料装入装置において、移動台が第1位置にあるときの状態を示すB-B断面図。
【
図5B】移動台が第2位置にあるときの状態を示すB-B断面図。
【
図5C】移動台が第3位置にあるときの状態を示すB-B断面図。
【
図6A】本実施形態の試料装入装置において、移動台が第1位置にあるときの状態を示すC-C断面図。
【
図6B】移動台が第2位置にあるときの状態を示すC-C断面図。
【
図6C】移動台が第3位置にあるときの状態を示すC-C断面図。
【
図7】本実施形態の試料装入装置において試料収容庫へのマイクロプレートの装入が完了した状態を示すB-B断面図。
【
図8】変形例の試料装入装置において内部載置台の試料搬入出口側の先端に切れ込みを設けた例を示す上面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る分析装置であるクロマトグラフの実施形態を説明する。
【0013】
まず、
図1を用いて、本実施形態の分析装置において試料収容庫に装入される試料収容部の例を説明する。この試料収容部90は、米国の生体分子スクリーニング学会(the Society for Biomolecular Screening:SBS)が制定し米国国家規格協会(American National Standards Institute:ANSI)が認可したANSI/SBS規格に則ったマイクロプレートである。ANSI/SBS規格のうち「ANSI/SBS 3-2004」では、マイクロプレートの外周部から突出
し、先端が下方に向かって延びるフランジを設けることが規定されている(非特許文献1)。試料収容部90は、試料が収容されるウェル911が複数個(
図1の例では96個であるが、それには限定されない)設けられた本体部91と、該本体部91の面方向における端部に設けられたフランジ93とを有する。なお、フランジ93は、ここで示した例では本体部91の全周に亘って設けられているが、本体部91の外周部の一部のみに設けられていてもよい。また、ここではマイクロプレートの例を示したが、マイクロプレート以外のバイアルラック等の試料収容部においてもANSI/SBS規格に準拠して同様のフランジを設けたものが普及しており、そのようなバイアルラック等の試料収容部を、本実施形態の分析装置で取り扱うことができる。
【0014】
図2に、本実施形態の分析装置であるクロマトグラフの構成の概略を示す。このクロマトグラフ1は、試料装入装置(試料装入部)10と、試料収容庫20と、オートサンプラ30と、液体クロマトグラフ(LC)部40とを備える。以下では、まず試料装入装置10以外の各部の構成を説明した後、試料装入装置10の構成を詳細に説明する。
【0015】
試料収容庫20は、その内部に内部載置台21と試料保管棚22が配置されており、側壁の一部に開口(試料搬入出口)23が設けられている。本実施形態では、オートサンプラ30も試料収容庫20内に配置されている。
【0016】
内部載置台21は後述のように、試料装入装置10によって試料収容部90が試料収容庫20に装入されたとき、及び試料収容部90が試料収容庫20から取り出される直前に、試料収容部90が載置される台である。内部載置台21はその上面が試料搬入出口23と同じ高さに位置している。試料保管棚22は、試料収容庫20に装入された試料収容部90がオートサンプラ30に移送されるまでの間、及び試料収容部90内の試料がオートサンプラ30で採取された後に試料収容庫20から取り出されるまでの間、試料収容部90を保管する棚である。試料保管棚22は、本実施形態では内部載置台21の下方に設けられているが、試料収容庫20内であれば内部載置台21の位置はこの例には限定されない。内部載置台21と試料保管棚22の間、及び試料保管棚22とオートサンプラ30の間では、マニピュレータ(図示省略)により試料収容部90を移動させる。
【0017】
開閉扉(開閉部)24は、試料搬入出口23を試料収容庫20の外側から閉鎖する扉であって、試料搬入出口23の高さから所定の位置(開放位置)まで下降することで試料搬入出口23を開放し、試料搬入出口23が開放された状態から所定の位置(閉鎖位置)まで上昇することで試料搬入出口23を閉鎖する。開閉扉24は後述のように、移動台傾斜兼開閉扉昇降モータ1521の動作により昇降する。
【0018】
試料収容庫20にはさらに、庫内を加熱及び/又は冷却することによって該庫内を所定の温度範囲内の温度に維持する保温装置25が設けられている。
【0019】
オートサンプラ30は、試料収容部90が載置される試料プレート31と、該試料プレート31を互いに直交するX軸方向、Y軸方向に移動させるプレート移動部32と、ニードル33や該ニードル33の昇降機構等を含む試料採取部34とを備える。プレート移動部32は、試料プレート31に載置された試料収容部90が有する複数のウェル911(あるいはバイアル等。以下同様。)を順次ニードル33の直下に移動させてゆき、ニードル33は各ウェル911が直下に到達する度に該ウェル911まで降下して液体試料を吸引採取する。採取された液体試料は、次に述べるLC部40のインジェクタ43に供給される。
【0020】
LC部40は、移動相が貯留された移動相容器41と、該移動相容器41中の移動相を吸引して略一定の流速で送給するポンプ42と、移動相中に試料溶液を注入するインジェクタ43と、移動相中に注入された試料溶液に含まれる各種成分を時間的に分離するカラム44と、カラム44により分離された各種成分を順次検出する検出器45とを備える。検出器45には、質量分析計、フォトダイオードアレイ(PDA)検出器、紫外可視分光光度検出器等を用いることができる。
【0021】
なお、オートサンプラ30及びLC部40は、従来の液体クロマトグラフが有するオートサンプラ及びLC部と同様の構成を有する。オートサンプラ30及びLC部40には、上記とは異なる構成を適用することも可能である。例えば、オートサンプラ30内に、試料に溶媒や該試料に化学反応を生じさせるための試薬等を添加する処理を行う機構を追加してもよい。さらに、液体クロマトグラフ(LC部40)の代わりにガスクロマトグラフを用い、試料収容部のバイアル瓶に封入された気体試料をオートサンプラ30で収集するようにしてもよい。
【0022】
以下、
図3~
図6を参照しつつ、試料装入装置10の構成を詳細に説明する。試料装入装置10は試料収容庫20の外部に設けられており、外部載置台11と、移動台12と、係合部13と、補助載置台14と、移動台移動機構(駆動部)15とを有する。
【0023】
外部載置台11は、直方体の箱状の本体111と、移動台案内レール112と、補助載置台支持レール113とを有する(
図3A)。本体111は、上面の長方形の短辺のうちの一方が試料搬入出口23と対向するように設けられている。以下、試料装入装置10の各構成要素の説明では、外部載置台11の試料搬入出口23側の端部を前側として、前後左右を規定する。本体111のうち、前側の側面と、上面のうち試料搬入出口23寄りの端部を含む一部は開口となっており、上面側の開口付近に移動台12及び補助載置台14が配置されている。移動台案内レール112及び補助載置台支持レール113は前後方向に延び、それぞれ横方向に2本ずつ平行に、本体111内に設けられている。移動台案内
レール112は補助載置台支持レール113の下方に配置されている。
【0024】
移動台12は長方形の板状の部材から成り(
図4A、
図4B)、長方形の一方の短辺を前側に向けて配置されている。移動台12の後端は前記長方形から左右両側方に突出しており、この突出部の先端に設けられた把持部121が移動台案内レール112を把持している(
図3A)。なお、図を見易くするために、
図3A以外の図では移動台案内レール112及び把持部121の図示を省略している。
【0025】
係合部13は移動台12の上面の前側先端付近に設けられており、該移動台12の上面から上方に延びる第1爪部131及び第2爪部132を有する(
図4A、
図4B)。第2爪部132は第1爪部131よりも後側に、第1爪部131と隙間133を隔てて配置されている。隙間133は、マイクロプレート90のフランジ93の厚さよりも大きく設定されている。この隙間133にフランジ93が挿入されることにより、係合部13がフランジ93と係合する(
図4C)。第1爪部131及び第2爪部132にはそれぞれ、高さ方向の中央付近から上端に向かうに従って、隙間133側の面が該隙間133から遠ざかる形状に形成されたテーパ134が設けられている。なお、テーパ134は第1爪部131と第2爪部132のうちのいずれか一方のみに設けてもよい。
【0026】
補助載置台14は、補助載置台支持レール113の上に載置された長方形の板状部材から成り、該板状部材の中央に長方形の孔141が設けられている。これら板状部材及び孔141の長方形は、一方の短辺が前側となるように設けられている。
【0027】
係合部13は、上面視して補助載置台14の孔141の内側に配置されており、係合部13の上端は補助載置台14の上面よりも上側まで延びている。移動台12の上面は補助載置台14の上面よりも下側にある。
【0028】
移動台移動機構15は、移動台直線移動機構151と、移動台傾斜機構152から成る。移動台直線移動機構151は、モータ及び該モータの回転運動を直線運動に変換する機構から成り、この直線運動によって移動台12を前後方向に直線状に移動させる。本実施形態ではさらに、補助載置台14も移動台直線移動機構151によって前後方向に直線状に移動する。移動台12は、この前後方向の移動によって、内部載置台21から離間する第1位置(
図3A、
図5A、
図6A)と内部載置台21に接近する第2位置(
図3B、
図5B、
図6B)の間で移動する。移動台12が第1位置にあるときには係合部13は試料収容庫20の外に配置され、移動台12が第2位置にあるときには係合部13は試料収容庫20の中に配置される。また、補助載置台14の前端は、試料収容庫20外と試料収容庫20内の間で移動する。
【0029】
なお、補助載置台14を移動させることは本発明では必須ではなく、移動台12(及びそれに固定された係合部13)のみを前後方向に移動させるようにしてもよい。その場合には、本実施形態のように補助載置台14の孔141の前端を開放しておき、係合部13がこの開放部を通過して試料収容庫20内に到達するようにするとよい。さらには、補助載置台14は省略してもよい。
【0030】
移動台傾斜機構152は、移動台傾斜兼開閉扉昇降モータ1521と、該モータの回転運動を上下方向の直線運動に変換する機構(図示せず)と、該直線運動により上下方向に移動する当接具1522とを有する。また、外部載置台11の側面のうち重心よりも前寄りの位置には、左右方向に延び略水平な回動軸114が設けられている。外部載置台11の側面にはさらに、下方及び前方に延びる板材115が固定されており、該板材115の前端であって回動軸114よりも前方且つ下方には突起116が固定されている(
図6)。
【0031】
外部載置台11は、当接具1522が突起116よりも上方にあるときには、外部載置台11の自重によって回動軸114よりも後側が降下するように付勢されており、外部載置台11上の移動台12が略水平になったときに外部載置台11の下方にストッパ(図示省略)が接触することにより、移動台12が略水平な状態が維持される。この状態から、当接具1522が降下して突起116に当接すると、突起116は後方に押される(
図6C)。突起116は板材115を介して外部載置台11に固定されていることから、突起116が後方に押されるのに伴って、外部載置台11は回動軸114を中心に回動し、回動軸114よりも前側が降下するように傾斜する。それに伴って、移動台12及び補助載置台14も前側が降下するように傾斜する。この状態から当接具1522が上昇して突起116から離れると、外部載置台11はその自重によって回動軸114よりも後側が降下し、ストッパに接触する。これにより、移動台12及び補助載置台14は略水平な状態に戻る。
【0032】
本実施形態では、当接具1522は開閉扉24の側面に固定されている。移動台傾斜兼開閉扉昇降モータ1521の回転に伴って、開閉扉24の下方に延びる連結棒241が上下することにより、開閉扉24が昇降すると共に、当接具1522も昇降する。開閉扉24が試料搬入出口23を閉鎖する閉鎖位置にある状態(
図6A)から、試料搬入出口23の全体がちょうど開放される開放位置まで降下した状態では、当接具1522は突起116には接触していない(
図6B)。開閉扉24が該開放位置からさらに降下し、当接具1522が突起116に接触したとき、上述のように移動台12等が傾斜する(
図6C)。移動台12が第2位置にある状態からこのように傾斜させたときの移動台12の位置が上述の第3位置に該当する。
【0033】
このように、本実施形態では、開閉扉24の開閉動作と外部載置台11や移動台12等の傾斜の動作を同じモータ(移動台傾斜兼開閉扉昇降モータ1521)で実行することができるため、装置コストを抑えることができる。
【0034】
なお、上記の説明では当接具1522によって突起116が後方に押されるように説明したが、当接具1522が突起116を下方に押すようにしてもよい。また、当接具1522を開閉扉24に固定する代わりに、連結棒241に固定してもよい。
【0035】
以下、
図3~
図7を参照しつつ、試料装入装置10によって試料収容部90を試料収容庫20に装入する動作、及び試料収容部90を試料収容庫20から取り出す動作を説明する。
【0036】
後述のように、装入及び取り出しの動作が完了した時には移動台12が第1位置にあるため、新たな装入の動作を開始する際には、移動台12は第1位置に配置された状態となっている。また、試料搬入出口23は、開閉扉24により閉鎖された状態となっている。この状態で、移動台12及び補助載置台14に試料収容部90を載置し、試料収容部90のフランジ93と移動台12の係合部13を係合させる(
図3A、
図5A、
図6A)。ここで、補助載置台14は、試料収容部90の側部(後述のように移動台12が第1位置と第2位置の間を移動する方向に関して側方の端部)を含む部分を支持する。
【0037】
次に、移動台傾斜兼開閉扉昇降モータ1521を動作させ、試料搬入出口23が開放されつつ当接具1522は突起116に当接しない位置まで開閉扉24を降下させる。このように試料搬入出口23が開放されている状態で、移動台直線移動機構151は移動台12及び補助載置台14を前方、すなわち内部載置台21に近づける方向に移動させ、移動台12を第2位置に配置する(
図3B、
図5B、
図6B)。これにより、係合部13は内部載置台21の直後に配置され、試料収容部90は第1係合部931を除くほとんどの部分が内部載置台21上に載置される。このときには、上記のように当接具1522は突起116に当接しないため、移動台12は傾斜していない。
【0038】
続いて、移動台傾斜機構152が移動台傾斜兼開閉扉昇降モータ1521を動作させることによって当接具1522(及びそれが固定された開閉扉24)をさらに降下させ、当接具1522を突起116に当接させることにより、外部載置台11、移動台12等を傾斜させる(
図5C、
図6C)。これにより、移動台12は第3位置に配置され、試料収容部90のフランジ93と移動台12の係合部13の係合が外れ、非係合状態となる。
【0039】
次に、移動台直線移動機構151によって移動台12及び補助載置台14を内部載置台21から離れる方向に移動させる。その後、移動台傾斜機構152が移動台傾斜兼開閉扉昇降モータ1521を動作させるによって開閉扉24及び当接具1522を上昇させることにより、外部載置台11、移動台12等の傾斜を解除すると共に開閉扉24により試料搬入出口23を閉鎖する。これにより、移動台12は第1位置に戻る。
【0040】
以上の操作により、試料収容部90が試料収容庫20内に装入されると共に、試料装入装置10が初期の状態に戻る(
図7)。
【0041】
試料収容部90を試料収容庫20から取り出す際には、装入時とは逆の順で操作を行えばよい。
【0042】
なお、取り出しの操作はオートサンプラ30や試料保管棚22から移送された試料収容部90が内部載置台21に載置された状態から開始するが、必ずしも試料収容部90が内部載置台21上の一定の位置に載置されるとは限らず、多少の位置ずれが生じることがある。そのような場合に、係合部13の第1爪部131及び第2爪部132にテーパ134を設けておく(
図4B)ことにより、内部載置台21上で試料収容部90の位置が前後方向に多少ずれていても、フランジ93を係合部13に係合させることができる。左右方向の位置ずれは、第1爪部131及び第2爪部132を左右方向に或る程度の長さをもって設けておく(
図4A)ことにより対応することができる。
【0043】
本実施形態の試料装入装置10によれば、予め複数の試料を収納した試料収容部90を試料収容庫20内に装入し、取り出す操作を一括して簡単に行えることから、試料収容庫20の試料搬入出口23の開閉扉24が開いている時間を最小にすることができ、試料収容庫20内の温度が変化したり結露したりすることを最小限に抑えることができる。
【0044】
実際に本発明者が作製した試料装入装置10では、開閉扉24が開放されている時間を10~20秒程度に抑えることができた。作製した試料装入装置10を用いて、室温が25℃である環境下で試料収容庫20内を5~7℃の範囲内の温度に冷却するよう温度調整しつつ、マイクロプレート90を搬入する実験を行った。その際の開閉扉24の開放時間は10秒間とし、試料収容庫20内の温度と、搬入するマイクロプレート90とは別に予め試料保管棚22に収容しておいたマイクロプレート内の試料の温度の時間変化を測定した。その結果、開閉扉24の開放中には、試料収容庫20内の温度は10.5℃まで、試料保管棚22上の試料の温度は8~9℃まで上昇したが、それらの温度は開閉扉24の閉鎖直後から低下し、いずれも12分程度で開閉扉24の開放前の温度(5~7℃)に戻った。また、試料収容庫20内の冷却に伴って該試料収容庫20の内表面が冷却された状態で温度が高い空気が進入すると、その空気が該内表面で冷却されて結露が発生するおそれがあるが、上記の実験後に該内表面を確認したところ、そのような結露は発生していなかった。
【0045】
また、試料収容部90を外部載置台11に載置する操作、及び外部載置台11から取り上げる操作をオペレータの代わりにロボットが行えば、オペレータの負担をより軽減することができる。その際には、開閉扉24の開閉動作及び移動台12の移動操作をロボットの動作に同期させることにより、作業時間をさらに短くすることができる。
【0046】
本発明は上記実施形態には限定されず、本発明の主旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【0047】
例えば、上記実施形態において、移動台を外部載置台の表面に対して傾斜した第3位置に移動させ、試料プレートのフランジと移動台の係合部とが非係合状態とする例について説明した。本発明はこれに限定されることなく、試料プレートのフランジと前記移動台の係合部との係合状態を変更する機構を設ける。例えば、係合部が移動台から電気的または機械的な機構により突出し、かつ、同移動台内に引っ込んで収容される構成であれば、移動台は傾斜せずとも前記係合状態を変更することができる。
【0048】
上記実施形態において、内部載置台21の試料搬入出口23側の端部に切れ込み211を設けてもよい(
図8)。移動台12を第2位置に移動させる際に、移動台12の先端が切れ込み211内まで達するようにすることにより、試料収容部90を内部載置台21上のより奥の位置まで到達させることができ、試料収容部90のうち内部載置台21により支持される部分がより広くなる。そのため、試料収容部90をより安定に内部載置台21上に載置することができる。
【0049】
上記実施形態では、試料収容庫20内を所定の温度範囲内の温度に維持する保温装置25を設けたが、温度にさほど敏感ではない試料を取り扱う場合には、保温装置25を省略してもよい。そのような場合には、開閉扉24の開放による試料収容庫20内の温度変化は問題とはならないが、当該実施形態の試料装入装置により、オペレータの操作の負担を抑えて迅速に試料収容部の装入及び取り出しを行うことができる。
【0050】
上記実施形態では、試料分析装置がクロマトグラフである場合を例に説明したが、多数の液体試料を順次分析する装置であれば、クロマトグラフ以外の試料分析装置にも本発明を適用することができる。
【0051】
[態様]
上述した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0052】
[第1項]
第1項に係る分析装置は、
開閉部を有し、該開閉部を介して試料収容部を受ける内部載置台を内部に備える試料収容庫と、
前記試料収容庫に前記試料収容部を装入するための試料装入部と
を備え、
前記試料収容部は、面方向を有し、該面方向における端部に設けられたフランジを有し、
前記試料装入部は、
前記試料収容庫の外部に設けられ、表面を有する外部載置台と、
前記外部載置台の表面上で、前記内部載置台を基準として、より離間した第1位置と前記内部載置台を基準としてより接近した第2位置の間で移動可能に設けられ、前記試料収容部のフランジと係合する係合部を有する移動台と、
前記移動台を移動させ、前記試料収容部の前記フランジと前記移動台の前記係合部との係合状態を変更する駆動部と
を備える。
【0053】
第1項に係る分析装置によれば、オペレータは試料を予め試料収容部に収納しておき、試料収容部を試料収容庫内に装入する際、試料収容部を第1位置にある移動台上に載置して試料収容部のフランジを移動台の係合部に係合させるだけでよい。その後は、試料装入装置が自動的に、開閉扉部を開放し、移動部により移動台を第2位置に移動させたうえで開閉部を閉鎖し、駆動部によってフランジと係合部を非係合状態とするだけで、試料収容部が試料収容庫内に装入される。試料収容部を試料収容庫内から取り出す際も同様であり、試料装入装置が自動的に、駆動部によってフランジと係合部を係合状態とし、開閉部を開放し、移動部により移動台を第2位置から第1位置へと移動させ、開閉部を閉鎖する。オペレータは、第1位置に移動した移動台上に載置されフランジが係合部に係合されている試料収容部を、移動台から取り上げるだけでよい。このように、試料を試料収容庫内に装入し、取り出す操作が、試料収容部の装入・取り出し操作により一括して簡単に行えることから、試料収容庫の開閉部が開いている時間を最小にすることができ、試料収容庫内の温度が変化したり結露したりすることを最小限に抑えることができる。
【0054】
[第2項]
第2項に係る分析装置は、第1項に係る分析装置において、前記駆動部が、前記移動台を、前記第1位置、前記第2位置、及び、該第2位置にある状態から前記フランジと前記係合部とが非係合状態となるように該移動台が傾斜した第3位置の間で移動させる。
【0055】
第2項に係る分析装置によれば、移動台を傾斜させることでフランジと係合部を容易に非係合状態にすることができる。また、移動台の傾斜を解除することによってフランジと係合部を容易に係合状態にすることもできる。
【0056】
[第3項]
第3項に係る分析装置は、第2項に係る分析装置において、
前記外部載置台が、前記移動台の前記第1位置と前記第2位置の間の移動方向に略垂直且つ略水平である回動軸を備え、
前記試料収容庫が、前記試料収容部が通過する開口である試料搬入出口を有し、
前記開閉部が、前記試料搬入出口を閉鎖する閉鎖位置と、該閉鎖位置よりも下方であって前記試料搬入出口を開放する開放位置の間で昇降可能な開閉扉を備え、
前記駆動部が、前記外部載置台の前記回動軸よりも前記第2位置寄りの部分を降下及び上昇させると共に、前記開閉扉を降下及び上昇させる昇降駆動部を備える。
【0057】
第3項に係る分析装置では、昇降駆動部は、前記外部載置台の前記回動軸よりも前記第2位置寄りの部分を降下させることにより外部載置台及び該外部載置台上にある移動台を傾斜させると共に、該第2位置寄りの部分を上昇させることにより外部載置台及び移動台の傾斜を解除する。また、昇降駆動部は、開閉部の開閉扉を閉鎖位置から開放位置まで降下させることにより試料搬入出口を開放し、開閉扉を開放位置から閉鎖位置まで上昇させることにより試料搬入出口を閉鎖する。このように、第3項に係る分析装置によれば、移動台の傾斜及び傾斜の解除と開閉部の開閉を同一の昇降駆動部によって行うことができるため、装置コストを抑えることができる。
【0058】
[第4項]
第4項に係る分析装置は、第1項~第3項のいずれか1項に係る分析装置においてさらに、前記試料収容部の、前記移動台が前記第1位置と前記第2位置の間を移動する方向に関して側方の端部を支持する補助載置台を前記外部載置台上に備える。
【0059】
[第5項]
第5項に係る分析装置は、第4項に係る分析装置において、前記移動台が前記第1位置と前記第2位置の間を移動するのに伴って、前記補助載置台が該移動台と同方向に移動可能である。
【0060】
第4項に係る分析装置によれば、移動台を第1位置から第2位置(又はその逆)に移動させる際に、外部載置台も内部載置台に接近するよう(又はその逆)に移動させることにより、試料収容部を外部載置台上に安定して支持した状態で移動させることができる。また、第5項に係る分析装置によれば、移動台の移動に伴って補助補助載置台も移動するため、さらに安定して支持した状態で試料収容部を移動させることができる。
【0061】
[第6項]
第6項に係る分析装置は、第1項~第5項のいずれか1項に係る分析装置において、前記係合部が、前記第1位置と前記第2位置の間での前記移動台の移動方向に、隙間を介して並んで配置された2個の爪部を備え、該2個の爪部のいずれか一方又は両方に、上端に向かって前記隙間側の面が該隙間から遠ざかる形状に形成されたテーパを有する。
【0062】
第6項に係る分析装置によれば、内部載置台上において試料収容部が移動台の移動方向に関して所定の位置から多少ずれて配置されていても、試料収容部のフランジがテーパに沿って2個の爪部の間の隙間に導入されるため、フランジと係合部を係合させることがで
きる。
【0063】
[第7項]
第7項に係る分析装置は、第1項~第6項のいずれか1項に係る分析装置においてさらに、
前記試料収容庫に装入された前記試料収容部に収容された試料を採取する試料採取部と、
前記試料採取部で採取された試料を分析する分析部と
を備える。
【0064】
[第8項]
第8項に係る分析装置は、第7項に係る分析装置において、前記分析部がクロマトグラフである。
【0065】
第7項及び第8項に係る試料分析装置によれば、前記試料装入部を備えているため、試料採取部で採取された試料中の溶媒の揮発や溶質の分解、溶質の析出等が生じることを抑えることができ、分析部(第8項に係る分析装置ではクロマトグラフ)において、より正確な分析を行うことができる。
【符号の説明】
【0066】
1…クロマトグラフ(分析装置)
10…試料装入装置(試料装入部)
11…外部載置台
111…外部載置台の本体
112…移動台案内レール
113…補助載置台支持レール
114…回動軸
115…板材
116…突起
12…移動台
121…把持部
13…第2係合部
131…第1爪部
132…第2爪部
133…隙間
134…テーパ
14…補助載置台
141…補助載置台に設けられた孔
15…移動台移動機構(駆動部)
151…移動台直線移動機構
152…移動台傾斜機構
1521…移動台傾斜兼開閉扉昇降モータ
1522…当接具
20…試料収容庫
21…内部載置台
22…試料保管棚
23…試料搬入出口
24…開閉扉(開閉部)
241…連結棒
25…保温装置
30…オートサンプラ
31…試料プレート
32…プレート移動部
33…ニードル
34…試料採取部
40…LC部
41…移動相容器
42…ポンプ
43…インジェクタ
44…カラム
45…検出器
90…試料収容部(マイクロプレート)
91…試料収容部の本体部
911…ウェル
93…フランジ