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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】光-電気複合コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/46 20060101AFI20240910BHJP
   H01R 13/514 20060101ALI20240910BHJP
   G02B 6/36 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
H01R13/46 D
H01R13/514
G02B6/36
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023552888
(86)(22)【出願日】2022-10-04
(86)【国際出願番号】 JP2022037079
(87)【国際公開番号】W WO2023058634
(87)【国際公開日】2023-04-13
【審査請求日】2024-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2021163993
(32)【優先日】2021-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】弁理士法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前岨 宏芳
(72)【発明者】
【氏名】生田 勝也
(72)【発明者】
【氏名】石田 英敏
【審査官】▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-147346(JP,A)
【文献】特開2013-083880(JP,A)
【文献】特開2010-049147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/46
H01R 13/514
G02B 6/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ光ケーブルの光ファイバを結合される少なくとも1つの光フェルールと、
それぞれ電線を結合される少なくとも1つの電気接続端子と、
前記少なくとも1つの光フェルールを収容するサブハウジングと、
前記サブハウジング内に収容され、前記光フェルールのそれぞれを先端側に向かって付勢するバネ部材と、
前記サブハウジングと前記電気接続端子を一括して収容可能なメインハウジングと、を有し、
前記サブハウジングは、前記光フェルールと前記バネ部材を収容して光サブコネクタを構成し、
前記メインハウジングは、前記光サブコネクタおよび前記電気接続端子を収容して固定しており、
前記サブハウジングは、収容する前記光フェルールの軸に沿った前後方向に直交する上下方向に分割された、上方部材と下方部材の2つの分割部材より構成され、
前記サブハウジングは、後端部に、前記光フェルールに結合された前記光ケーブルに取り付けられたケーブル固定部材を、前記2つの分割部材の間に挟み込んで固定するケーブル保持部を有し、
前記光サブコネクタにおいては、前記光ケーブルを結合した前記光フェルールが、前記バネ部材によって前方へ付勢され、かつ前記ケーブル固定部材を前記ケーブル保持部によって挟み込まれた状態で、前記サブハウジングに収容されており、
前記サブハウジングにおいては、前記上方部材の前後方向に沿った下端縁と、前記下方部材の前後方向に沿った上端縁の2つの端縁が、相互に突き合わせられた状態で、前記上方部材と前記下方部材とが結合され、
前記2つの端縁のうち一方の端縁は、前後方向中途部に、他方の端縁に向かって突出したリブ部を有し、
前記他方の端縁は、前後方向中途部に、前記リブ部を収容し、前記リブ部と係合する凹部として、リブ収容部を有し、
前記リブ部は、前記一方の端縁から板状のタブとして突出しており、爪状構造を有さず、平滑な端縁を有しており、
前記リブ収容部は、前記他方の端縁に臨む凹構造として形成され、平滑な端縁を有しており、
前記上方部材と前記下方部材を相互に結合させた状態において、前記リブ部の前記平滑な端縁が、前記リブ収容部の前記平滑な端縁に接触した状態で、前記リブ部と前記リブ収容部とが係合している、光-電気複合コネクタ。
【請求項2】
前記光-電気複合コネクタを、光フェルールを含んだ相手方コネクタと接続した際に、前記バネ部材が、前記光サブコネクタを構成する前記光フェルールの先端面を、前記相手方コネクタの前記光フェルールの先端面に向かって押圧する、請求項1に記載の光-電気複合コネクタ。
【請求項3】
前記サブハウジングにおいては、前記上方部材と前記下方部材を相互に結合させた状態で、前記リブ部と前記リブ収容部を係合させた係合部が、他の部位と比較して、前後方向に沿った中心軸を中心として外側に張り出していない、請求項1に記載の光-電気複合コネクタ。
【請求項4】
前記上方部材と前記下方部材を相互に結合させた状態で、前記サブハウジングの外周面は、前記リブ部と前記リブ収容部を係合させた係合部と、該係合部の前後の箇所とで、面一になっている、請求項3に記載の光-電気複合コネクタ。
【請求項5】
前記上方部材と前記下方部材の一方には、後端部に、ロック爪が一体に形成された後方係合片が設けられ、他方には、前記後方係合片を収容し、かつ前記ロック爪を係止可能な窪みとして後方係合凹部が設けられている、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の光-電気複合コネクタ。
【請求項6】
前記リブ部は、前記後方係合片よりも、前後方向に大きな領域を占めている、請求項5に記載の光-電気複合コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光-電気複合コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバを用いた光ケーブルは、多量の情報の高速通信が可能であることから、家庭用、産業用等の情報通信に広く利用されている。また、自動車には、カーナビゲーションシステム等、各種の電子機器が装備されているが、それらの機器における通信にも、光ケーブルを用いた光通信が使用され始めている。特に近年、自動車分野において、通信の高速化が加速しているが、数Gbpsを超えるような高速の通信を、電気ケーブルによって行うことには課題が多く、通信の高速化に伴って、車載通信機器において、高速通信に対応可能な光ケーブルの重要性がますます高まっている。特に、ガラス製光ファイバを備えた光ケーブルを、高速通信に好適に用いることができる。
【0003】
一方で、光ケーブルは、通信装置を作動させるのに必要なエネルギーを供給する用途には適しておらず、光ケーブルと合わせて、金属線を備えた電線も使用される。そこで、光ケーブルおよび電線を通信装置等の装置に簡便に接続できるようにするために、光ケーブルと電線を一括して装置に接続できるコネクタが開発されている。その種の光-電気複合コネクタは、特許文献1等に開示されており、一部では実用化も行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2007/088863号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、光ケーブルと電線を一括して通信機器等の機器に接続する手段として、光-電気複合コネクタが開発されているが、その種の複合コネクタは、光ケーブルのみを接続する光コネクタや、電線のみを接続する電気コネクタと比較して、製造が難しくなりやすい。通常、光コネクタと電気コネクタでは、製造工程や製造設備が全く異なっており、同一の製造ラインで、光ケーブルの接続部と電線の接続部を一体に備えた複合コネクタを製造することに困難が伴うことが、理由の1つである。特に、光フェルール等の光通信部材を、コネクタハウジングの中で、所定の位置に正確に位置合わせして、電線とともに組み付けることに、困難が生じやすい。さらに、自動車内での通信の高速化が進むのに伴って、従来用いられてきたプラスチック光ファイバ(POF)から、ガラス光ファイバ(AGF)への置換が、近年進められているが、AGFがPOFよりも小径であることに対応して、AGF用の光通信部材の方が、POF用の光通信部材よりも小型であり、コネクタハウジング内で正しく配置することが、とりわけ難しい。しかも、AGF用の光通信部材においては、高い通信性能を得るために、配置に高い精度が求められる。
【0006】
上記に鑑み、組み立てを行いやすい光-電気複合コネクタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の光-電気複合コネクタは、それぞれ光ケーブルの光ファイバを結合される少なくとも1つの光フェルールと、それぞれ電線を結合される少なくとも1つの電気接続端子と、前記少なくとも1つの光フェルールを収容するサブハウジングと、前記サブハウジング内に収容され、前記光フェルールのそれぞれを先端側に向かって付勢するバネ部材と、前記サブハウジングと前記電気接続端子を一括して収容可能なメインハウジングと、を有し、前記サブハウジングは、前記光フェルールと前記バネ部材を収容して光サブコネクタを構成し、前記メインハウジングは、前記光サブコネクタおよび前記電気接続端子を収容して固定している。
【発明の効果】
【0008】
本開示にかかる光-電気複合コネクタは、組み立てを行いやすい光-電気複合コネクタとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1A,1Bは、本開示の一実施形態にかかる光-電気複合コネクタの全体を示す斜視図である。図1Aは前方、図1Bは後方から見た状態を示している。
図2図2は、上記光-電気複合コネクタを示す分解斜視図である。
図3図3A,3Bは、上記光-電気複合コネクタに含まれる光サブコネクタを示す図である。図3Aは、斜視図であり、図3Bは、図3A中のA-A断面を示す部分断面図である。
図4図4A,4Bは、光サブコネクタにおけるサブハウジングの変形量を見積もったシミュレーション結果を示す側面図である。図4Aは、上記図3Aに示したリブ部による係合構造を有する形態を示し、図4Bは、リブ部による係合構造を有さない形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
本開示にかかる光-電気複合コネクタは、それぞれ光ケーブルの光ファイバを結合される少なくとも1つの光フェルールと、それぞれ電線を結合される少なくとも1つの電気接続端子と、前記少なくとも1つの光フェルールを収容するサブハウジングと、前記サブハウジング内に収容され、前記光フェルールのそれぞれを先端側に向かって付勢するバネ部材と、前記サブハウジングと前記電気接続端子を一括して収容可能なメインハウジングと、を有し、前記サブハウジングは、前記光フェルールと前記バネ部材を収容して光サブコネクタを構成し、前記メインハウジングは、前記光サブコネクタおよび前記電気接続端子を収容して固定している。
【0011】
上記光-電気複合コネクタにおいては、電気接続端子を収容するメインハウジングに、光フェルールを直接収容するのではなく、電気接続端子とは別にサブハウジングに光フェルールを収容して、光サブコネクタを構成したうえで、メインハウジングにその光サブコネクタを収容している。光サブコネクタは、従来の光コネクタの製造工程や製造設備を利用して製造することができ、完成した光サブコネクタを、電気接続端子とともにメインハウジングに組み付ける工程は、電気接続端子とともに光フェルールをハウジングに直接組み付ける工程と比較して、簡便に実施することができる。さらに、光サブコネクタにおいて、サブハウジングの内部に、光フェルールを先端側に向かって付勢するバネ部材を設けておくことで、サブハウジング内で光フェルールを、先端側に向かって押圧された正規の位置および姿勢に保ちやすくなり、光サブコネクタの製造性が高くなる。バネ部材の存在による製造性向上の効果は、AGF等、細い光ファイバに結合される先端面の面積の小さい光フェルールを用いる場合に、特に顕著となる。
【0012】
ここで、前記光-電気複合コネクタを、光フェルールを含んだ相手方コネクタと接続した際に、前記バネ部材が、前記光サブコネクタを構成する前記光フェルールの先端面を、前記相手方コネクタの前記光フェルールの先端面に向かって押圧するものであるとよい。すると、バネ部材による付勢力によって、光フェルール同士が、先端面において突き合わせられ、さらにその突き合わせた状態が維持されやすくなる。その結果、光フェルール間での光信号の反射損失が抑制され、良好な光接続が得られる。この効果も、AGF等、細い光ファイバに結合される先端面の面積の小さい光フェルールを用いる場合に、特に顕著となる。
【0013】
また、前記サブハウジングは、収容する前記光フェルールの軸に沿った前後方向に直交する上下方向に分割された、上方部材と下方部材の2つの分割部材より構成され、前記サブハウジングは、後端部に、前記光フェルールに結合された前記光ケーブルに取り付けられたケーブル固定部材を、前記2つの分割部材の間に挟み込んで固定するケーブル保持部を有し、前記光サブコネクタにおいては、前記光ケーブルを結合した前記光フェルールが、前記バネ部材によって前方へ付勢され、かつ前記ケーブル固定部材を前記ケーブル保持部によって挟み込まれた状態で、前記サブハウジングに収容されているとよい。すると、サブハウジングが2つの分割部材より構成されていることで、サブハウジング内に光フェルールとバネ部材を配置して光サブコネクタを作製する工程を、簡便に実施することができる。また、サブハウジング内で、光フェルールをバネ部材で前方へ付勢した状態に保つとともに、光ケーブルに取り付けられたケーブル固定部材を、2つの分割部材の間に挟んで保持することで、光フェルールをサブハウジング内の正規の位置に保持することができ、さらに光ケーブルが張力を受けることがあっても、その光フェルールの配置を安定に保つことができる。そのため、光サブコネクタの作製およびメインハウジングへの組み付けの作業性、また製造された光-電気複合コネクタの使用時の利便性が高くなる。
【0014】
この場合に、前記サブハウジングにおいては、前記上方部材の前後方向に沿った下端縁と、前記下方部材の前後方向に沿った上端縁の2つの端縁が、相互に突き合わせられた状態で、前記上方部材と前記下方部材とが結合され、前記2つの端縁のうち一方の端縁は、前後方向中途部に、他方の端縁に向かって突出したリブ部を有し、前記他方の端縁は、前後方向中途部に、前記リブ部を収容し、前記リブ部と係合する凹部として、リブ収容部を有するとよい。すると、サブハウジングにおいて、リブ部とリブ収容部の係合により上方部材と下方部材を強固に結合できる。さらに、サブハウジングに収容されて、光フェルールを付勢しているバネ部材の復元力がサブハウジングに伝達されても、上方部材と下方部材が強固に結合した状態が安定に維持されるとともに、サブハウジングに伝達された力が分散されることで、サブハウジングの前後方向への撓み変形の発生が抑制される。
【0015】
さらに、前記サブハウジングにおいては、前記上方部材と前記下方部材を相互に結合させた状態で、前記リブ部と前記リブ収容部を係合させた係合部が、他の部位と比較して、前後方向に沿った中心軸を中心として外側に張り出していないとよい。すると、リブ部を設けても、光サブコネクタの大型化を抑えることができ、光-電気複合コネクタ全体としても、サイズを小さく抑えることができる。また、光サブコネクタをメインハウジングに組み付ける際に、リブ部が組み付け作業を妨げにくいため、組み付けにおける作業性が高くなる。
【0016】
前記上方部材と前記下方部材を相互に結合させた状態で、前記サブハウジングの外周面は、前記リブ部と前記リブ収容部を係合させた係合部と、該係合部の前後の箇所とで、面一になっているとよい。すると、光サブコネクタの大型化抑制、および組み付けにおける作業性向上の効果が、特に高く得られる。
【0017】
あるいは、前記サブハウジングは、収容する前記光フェルールの軸に沿った前後方向に分割された、前方部材と後方部材の2つの分割部材より構成され、前記後方部材は、後端部に、前記光フェルールに結合された前記光ケーブルに取り付けられたケーブル固定部材を、固定して保持するケーブル保持部を有し、前記光サブコネクタにおいては、前記光ケーブルを結合した前記光フェルールが、前記バネ部材によって前方へ付勢され、かつ前記ケーブル固定部材を前記ケーブル保持部に固定された状態で、前記サブハウジングに収容されているとよい。この場合にも、サブハウジングが2つの分割部材より構成されていることで、光サブコネクタの作製工程を簡便に実施できる。また、バネ部材による光フェルールの前方への付勢と、ケーブル保持部によるケーブル固定部材の固定により、光フェルールをサブハウジング内の正規の位置に保持することができ、さらに光ケーブルが張力を受けることがあっても、その光フェルールの配置を安定に保つことができる。そのため、光サブコネクタの作製およびメインハウジングへの組み付けの作業性、また製造された光-電気複合コネクタの使用時の利便性が高くなる。
【0018】
[本開示の実施形態の詳細]
以下に、本開示の実施形態にかかる光-電気複合コネクタについて、図面を用いて詳細に説明する。本明細書において、「円形」、「角筒状」、「中心」、「並列」、「面一」等、部材の形状や配置を示す語には、幾何的に厳密な概念のみならず、光-電気複合コネクタとして一般に許容される範囲の誤差も含むものとする。
【0019】
<光-電複合コネクタの構造の概略>
図1A,1Bおよび図2に、本開示の一実施形態にかかる光-電気複合コネクタ(以下、単に複合コネクタと称する場合がある)1を、それぞれ斜視図および分解斜視図にて表示する。本実施形態にかかる複合コネクタ1は、光ケーブル8と電線9の集合体の先端に接続され、光通信のための光接続と、導通のための電気接続を同時に行うものである。本実施形態にかかる複合コネクタ1は、通信機器やプリント回路基板等の部材に固定されるものではなく、光ケーブル8および電線9とともに、相手方コネクタに対して着脱可能となったケーブルコネクタとして構成されている。
【0020】
本実施形態にかかる複合コネクタ1は、光通信部分として、少なくとも1つの光フェルール5を備えるとともに、電気接続部分として、少なくとも1つの電気接続端子7を備えている。そして、光フェルール5を収容する収容部材として、サブハウジング3を備える。サブハウジング3には、光フェルール5とともに、バネ部材6が収容され、光サブコネクタSが構成される。さらに、複合コネクタ1は、サブハウジング3と電気接続端子7を一括して収容可能なメインハウジング2を備えており、メインハウジング2に、光サブコネクタSと電気接続端子7を収容して固定している。
【0021】
本明細書において、光-電気複合コネクタ1が相手方コネクタと接続される方向を前方、光ケーブル8および電線9が接続される方向を後方として、前後方向(a方向)を規定する。つまり、光フェルール5および電気接続端子7の軸方向が前後方向となり、光フェルール5および電気接続端子7の先端側が前方となる。そして、前後方向に直交し、1対の電気接続端子7と、光フェルール5を収容したサブハウジング3とが並列される方向を上下方向(c方向)とし、前後方向および上下方向に直交する方向を幅方向(b方向)とする。
【0022】
光フェルール5は、公知の光ファイバ用のフェルールより構成されており、光ケーブル8が、固定されている。ここで、光ケーブル8および光フェルール5の種類は、特に限定されるものではないが、高速での通信に適用する観点から、光ケーブル8として、ガラス製光ファイバ(AGF)を備えたものを用いることが好ましい。一般に広く普及しているAGFは、クラッド径が125μmのものであり、マルチモード型の場合でもコア径が100μm以下と小さい場合が多く、適合する光フェルールも、先端面の面積が小さくなっている。光ケーブル8は、先端部にて露出された光ファイバ81を、光フェルール5の先端面と面一にして、光フェルール5に結合固定されている。
【0023】
さらに、光フェルール5に結合された光ケーブル8の先端部には、光ケーブル8の外周に固定して、ストップリング83とかしめリング84よりなるケーブル固定部材82が設けられている。ストップリング83は円環状の部材である。かしめリング84は段差を備えた円筒状の部材であり、前方に大径部841を有し、後方に、大径部841と連続して、大径部841よりも径の小さい小径部842を有する。ストップリング83と、その外周に配置したかしめリング84の大径部841との間に、光ケーブル8から引き出した補強素線(不図示)を挟み込むとともに、小径部842にて、かしめリング84が光ケーブル8の外被の上に固定される。
【0024】
図示した形態においては、複合コネクタ1に含まれる光フェルール5の数は1つであるが、複数としてもよい。光フェルール5が複数である場合には、それぞれの光フェルール5が独立に光ファイバ81に結合される。複数の光フェルール5が複合コネクタ1に含まれる場合に、複数の光フェルール5が、それぞれに対応するバネ部材6とともに共通のサブハウジング3に収容されて、光サブコネクタSを構成してもよい。また、1つあるいは複数の光フェルール5およびばね部材6の組をサブハウジング3に収容して構成した光サブコネクタSを、複数、メインハウジング2に収容するように構成してもよい。
【0025】
電気接続端子7は、公知の絶縁電線用の電気接続端子として構成されている。電気接続端子7は、絶縁電線9の先端部に固定され、絶縁電線9の先端側に露出された電線導体に電気的に接続されている。電気接続端子7の種類は特に限定されるものではないが、嵌合型のメス型端子を好適に適用することができる。図示した形態では、複合コネクタ1に含まれる電気接続端子7の数は1対(2つ)としているが、少なくとも1つの電気接続端子7が含まれていれば、その数は特に限定されない。
【0026】
光ケーブル8を結合された光フェルール5は、バネ部材6とともにサブハウジング3に収容され、光サブコネクタSを構成している。サブハウジング3および光サブコネクタSの構造については、後に詳しく説明するが、図示した形態では、1つの光フェルール5が、サブハウジング3の中心軸上に配置されている。サブハウジング3の前方には、光フェルール5の先端面を臨み、光フェルールを含む相手方コネクタの光接続部が進入可能な開口として、接続用サブ開口3aが形成されている。
【0027】
メインハウジング2は、前方に前端面2cを有し、後方が開放された略角筒状の樹脂部材として構成されている。メインハウジング2は、ハウジング本体部10とリテーナ部材20の2つの部材を結合して、角筒形状に形成されている。ハウジング本体部10は、前方に筒状部12を有するとともに、筒状部12の後方に、筒状部12と一体に、幅方向の一方(-b方向)が開放された形状の開放部13を有している。リテーナ部材20は、ハウジング本体部10の開放部13を幅方向外側(-b方向)から覆う形状を有しており、ハウジング本体部10の開放部13にリテーナ部材20を結合することで、略角筒状のメインハウジング2となる。
【0028】
リテーナ部材20には、上下の壁面に、ループ状の係止タブ21が設けられている。そして、ハウジング本体部10には、リテーナ部材20を結合した際に係止タブ21に対応する位置に、係止タブ21を係止可能な係止突起14が設けられている。ハウジング本体部10の開放部13をリテーナ部材20で覆い、係止突起14に係止タブ21のループ構造を係止させることで、ハウジング本体部10とリテーナ部材20を結合することができる。係止タブ21と係止突起14の間の係止構造は、一度係止すると、容易には解除できない。さらに、メインハウジング2には、ハウジング本体部10とリテーナ部材20の間の結合を保持する部材を、係止タブ21と係止突起14の組以外にも補助的に設けてもよい。例えば、係止タブ21および係止突起14よりも前方において、ハウジング本体部10の外壁面に爪15を設けるとともに、リテーナ部材20の対応する位置に、その爪15と係合する爪(不図示)を設けておいてもよい。
【0029】
ハウジング本体部10とリテーナ部材20より構成されるメインハウジング2の内部空間は、隔壁2aによって、上下方向に、下方のサブコネクタ収容空間2fと、端子収容空間2gを含む上方の空間とに区画されている。サブコネクタ収容空間2fには、光フェルール5等を収容して光サブコネクタSとしたサブハウジング3が収容され、端子収容空間2gには、電線9を接続した電気接続端子7が収容される。電気接続端子7、およびサブハウジング3に収容された光フェルール5は、メインハウジング2内で、それぞれの軸方向を前後方向に向けて配置される。メインハウジング2の前端面2cには、サブハウジング3の接続用サブ開口3aの前方にあたる位置に、光接続用開口2dが形成され、光フェルールを含む相手方コネクタの光接続部が、光接続用開口2dおよび接続用サブ開口3aを通って、サブハウジング3の内部に進入可能となっている。また、前端面2cの、各電気接続端子7の前方にあたる位置に、電気接続用開口2eが形成され、電気接続端子を含む相手方コネクタの電気接続部が、端子収容空間2gに進入可能となっている。
【0030】
メインハウジング2において、サブコネクタ収容空間2fの後端の開口間口2bは、がたつきなくサブハウジング3を収容できる大きさおよび形状を有している。さらに、リテーナ部材20には、側方(-b方向)の内壁面から内側(+b方向)に向かって突出して、隔壁2aの一部を兼ねる係止用内突起22が設けられており、この係止用内突起22が、サブコネクタ収容空間2fに収容されたサブハウジング3の外壁面に設けられている係止用突出部31と、前後方向に相互に係止される。さらに、サブハウジング3は前端部に、前方が小断面積、後方が大断面積となった段付き構造3cを有しており(図3A参照)、この段付き構造3cにおいて、サブハウジング3が光接続用開口2dに対して抜け止めされる。これら開口間口2bの大きさおよび形状の設定と、係止用内突起22と係止用突出部31の間の係止構造の形成、さらにサブハウジング3の前端部における抜け止め構造により、メインハウジング2において、サブコネクタ収容空間2fに収容された光サブコネクタSが位置決めされ、メインハウジング2内の所定の位置に固定される。
【0031】
一方、メインハウジング2において、電気接続端子7は、端子収容空間2gに収容される。メインハウジング2を構成するリテーナ部材20には、前方に向かってハウジング本体部10の筒状部12の中途部にあたる位置まで延出した延出部23の先端に、端子係止片24が設けられている。この端子係止片24は、端子収容空間2gに収容した電気接続端子7の外表面に形成された段差構造71に、係止することができる。このリテーナ部材20の端子係止片24と電気接続端子7の段差構造71の間の係止構造により、端子収容空間2gに収容された電気接続端子7が位置決めされ、メインハウジング2内の所定の位置に固定される。
【0032】
本実施形態にかかる複合コネクタ1を製造するに際しては、光ケーブル8を結合した光フェルール5とバネ部材6をサブハウジング3に収容して、あらかじめ光サブコネクタSを組み立てておく。そして、その光サブコネクタSと、電線9を結合した電気接続端子7とを、メインハウジング2に組み付ける。メインハウジング2への組み付けに際しては、ハウジング本体部10において、サブコネクタ収容空間2fおよび端子収容空間2gに相当する箇所に、それぞれ光サブコネクタSと電気接続端子7を配置してから、ハウジング本体部10にリテーナ部材20を結合させる。この際、リテーナ部材20の係止用内突起22および端子係止片24を、それぞれ、サブハウジング3の係止用突出部31および電気接続端子7の段差構造71に係止させればよい。
【0033】
このように、本実施形態にかかる複合コネクタ1においては、メインハウジング2に、光フェルール5を直接固定するのではなく、サブハウジング3に光フェルール5を収容して光サブコネクタSとした状態で、その光サブコネクタSを、電気接続端子7とともに、メインハウジング2に組み付け、固定している。このことにより、複合コネクタ1の光通信部分の組み立てを、行いやすくなっている。通常、光コネクタと電気コネクタでは、製造工程および製造設備が大きく異なり、光フェルールと電気接続端子をともに含むコネクタを同一の製造ラインで製造することは困難であるが、本実施形態のように、光フェルール5をサブハウジング3に収容して光サブコネクタSとして組み立てておき、その光サブコネクタSの形で、メインハウジング2への光フェルール5の組み付けを行うようにすれば、光サブコネクタSの組み立てを、従来の光コネクタ用の製造工程および製造設備を適用して、電気接続部の組み上げと独立して行うことができる。そのようにして組み立てた光サブコネクタSを、電気接続端子7とともにメインハウジング2に組み付ける工程は、従来の電気コネクタの製造工程および製造設備を応用して、大きな困難なく実施することができる。特に、光フェルール5が、AGF用の小径のものである場合には、コネクタの組み立て工程での扱いが困難になりやすいが、あらかじめ光サブコネクタSの状態としておけば、その後の組み立て工程において、光フェルール5の径の小ささによる困難も生じにくい。
【0034】
<光サブコネクタの構造>
本実施形態にかかる複合コネクタ1においては、上記のように、光フェルール5が、光サブコネクタSの形で、メインハウジング2に取り付けられる。この光サブコネクタS、および光サブコネクタSを構成するサブハウジング3の構成について、詳細に説明する。光サブコネクタSの構成を図3A,3Bに示す。図3Aは斜視図であり、図3Bは、図3A中のA-A断面を示す断面図である。
【0035】
光サブコネクタSの外郭となるサブハウジング3は、前後に開口を有する中空筒状の樹脂部材として構成されており、内部に、光ケーブル8を接続した光フェルール5を、少なくとも1つ収容することができる。サブハウジング3は、上方部材30と下方部材40の2つの分割部材より構成されており、そのうち下方部材40が主部材となっている。下方部材40は、前方に筒状部41を有するとともに、筒状部41の後方に、筒状部41と一体に、上方が開放された形状の開放部42を有している。上方部材30は、下方部材40の開放部42を上方から覆う形状を有しており、下方部材40の開放部42に上方部材30を結合することで、筒状のサブハウジング3となる。
【0036】
下方部材40は、前後方向に沿った平滑な開放部42の上端縁44の後端部に、上方に向かって突出した後方係合片43を有している。後方係合片43の上端部には、ロック爪431が一体に形成されている。そして、上方部材30は、前後方向に沿った平滑な下端縁33の後端部に、後方係合凹部32を有している。後方係合凹部32は、後方係合片43を収容し、かつロック爪431を係止可能な窪みとして形成されている。上方部材30の下端縁33と下方部材40の上端縁44を相互に突き合わせた状態で、上方部材30と下方部材40を結合し、後方係合片43を後方係合凹部32に収容して係合させることで、筒状のサブハウジング3が構成される。サブハウジング3において、後方係合片43と後方係合凹部32の間の係合が、上方部材30と下方部材40が結合された状態を維持するものとなる。後方係合片43と後方係合凹部32の間の係合構造は、一度係合すると、容易には解除できない。
【0037】
さらに、上方部材30は、下端縁33の前後方向中途部に、下方に向かって突出したリブ部34を、一体に有している。そして、下方部材40は、下方部材40の上端縁44の前後方向中途部に、リブ収容部45を有している。リブ収容部45は、上方部材30から突出したリブ部34を収容する凹部として形成されており、リブ部34と係合することができる。上方部材30の下端縁33と下方部材40の上端縁44を相互に突き合わせて、上方部材30と下方部材40を結合させた際に、リブ部34がリブ収容部45に収容され、係合が形成される。このリブ部34とリブ収容部45の係合は、上記の後方係合片43と後方係合凹部32の係合を補助して、上方部材30と下方部材40が結合された状態を維持するとともに、後に説明するように、サブハウジング3の変形を抑制するものとなる。それらリブ部34の機能を高める観点から、好ましくは、後方係合片43よりも、リブ部34の方が、前後方向に大きな領域を占めて形成されているとよい。なお、リブ部34には、後方係合片43とは異なり、係止用の爪状構造は設けられず、上方部材30の下端縁33から板状のタブとして突出したリブ部34の平滑な端縁が、下方部材40の上端縁44に臨む凹構造として形成されたリブ収容部45の平滑な端縁に接触した状態で、リブ部34とリブ収容部45が係合する。
【0038】
サブハウジング3の後端部には、ケーブル固定部材82を保持するケーブル保持部3bが形成されている。ケーブル保持部3bとしては、まず、上方部材30の後端部に、ケーブル固定部材82(かしめリング84)の小径部842を収容可能な半円筒状の窪みとして、陥没部35が形成されている。そして、陥没部35のよりも前方に、ケーブル固定部材82(かしめリング84)の大径部841の上側の一部分が嵌入可能な開口として、窓部36が設けられている。加えて、下方部材40の後端部にも、上方部材30の窓部36と同様に、ケーブル固定部材82の大径部841の下側の一部が嵌入可能な窓部46が形成されている。これら陥没部35と2つの窓部36,46が、ケーブル保持部3bとなり、ケーブル固定部材82にて、光ケーブル8を保持するものとなる。つまり、光ケーブル8に取り付けたケーブル固定部材82を、下方部材40の後端部に載置し、上方部材30に設けられた陥没部35を固定部材82の小径部842に沿わせ、かつ窓部36,46に大径部841を嵌め込んだ状態で、上方部材30と下方部材40の間にケーブル固定部材82を挟み込むことで、光フェルール5が結合され、かつケーブル固定部材82が取り付けられた光ケーブル8が、ケーブル固定部材82にて、サブハウジング3に強固に保持される。
【0039】
光サブコネクタSにおいては、図2の分解斜視図および図3Bの縦断面図に表示されるように、サブハウジング3の内部に、光ケーブル8を結合した光フェルール5と、バネ部材6が収容されている。サブハウジング3において、下方部材40の筒状部41の内側には、光フェルール5の中ほどの鍔部52のテーパ形状に沿って先細りになった空間として、フェルール保持部47が設けられており、フェルール保持部47によって、光フェルール5がサブハウジング3内で位置決めされる。
【0040】
光フェルール5の後方には、コイルバネよりなるバネ部材6が配置される。バネ部材6は、伸縮軸を前後方向に向けて、前方側の一部を筒状部41に収容される。バネ部材6の中空部には、前方から、光フェルール5の後端のバネ挿入部51が挿入される。バネ部材6の後端は、上方部材30の内側から、下方に向かって突出したバネ保持突起37に当接して、位置決めされる。サブハウジング3内で、フェルール保持部47によって位置決めされた光フェルール5の鍔部52の後端面と、バネ保持突起37の間の距離は、バネ部材6の自然長よりも短く設定されており、サブハウジング3内で、バネ部材6は、圧縮された状態で、光フェルール5の鍔部52とバネ保持突起37の間に保持されることになる。バネ部材6は、圧縮されることで、復元力によって、光フェルール5を鍔部52にて前方に押し出すものとなり、光フェルール5を前方へと付勢する。複合コネクタ1を相手方コネクタと嵌合させた際に、バネ部材6は、光フェルール5の先端面を相手方の光フェルールの先端面に向かって突き当て、さらに押圧する役割を果たす。
【0041】
このように、光サブコネクタSにおいて、サブハウジング3内に、光フェルール5とともに、光フェルール5を先端側に向かって付勢することができるバネ部材6を配置しておくことで、複合コネクタ1の組み立てが、実施しやすくなる。まず、光サブコネクタSを組み立てる際に、サブハウジング3内で光フェルール5を、先端側に向かって押された正しい位置および姿勢に保ちやすくなり、高い製造性が得られるからである。また、サブハウジング3内での光フェルール5の位置および姿勢、またメインハウジング2内でサブハウジング3を固定する位置および姿勢に、多少の誤差が生じたとしても、複合コネクタ1を相手方コネクタと接続した際に、バネ部材6の付勢力の効果により、サブハウジング3内の光フェルール5の先端面を、相手方の光フェルールの先端面に押し付け、両光フェルールの間で、適切な光接続を実現できるからである。特に、光フェルール5として、AGF用の小径のものを使用する場合には、POF用の大径のものを使用する場合と比較して、光フェルール5を所定の位置および姿勢に配置することが困難となりやすいため、バネ部材6を設けることによるそれらの効果が、とりわけ高く得られる。
【0042】
さらに、サブハウジング3が、上方部材30と下方部材40の2つの部材に分割されて構成されていることで、サブハウジング3内の正しい位置に、光フェルール5とバネ部材6を配置したうえで、サブハウジング3を筒状に組み立てることができ、光サブコネクタSの組み立て性が高くなっている。例えば、サブハウジング3の組み立ての際に、光ケーブル8を結合した光フェルール5のバネ挿入部51を、バネ部材6に嵌め込んだ状態で、下方部材40に光フェルール5とバネ部材6を載置すればよい。この際、光フェルール5は、フェルール保持部47によって位置決めされる。そして、上方部材30を下方部材40の上方に配置して、後方係合片43と後方係合凹部32の間の係合、およびリブ部34とリブ収容部45の間の係合を伴って、上方部材30と下方部材40を結合し、サブハウジング3を形成すればよい。この際、サブハウジング3の後端のケーブル保持部3bで、ケーブル固定部材82を上下から挟み込む。また、上方部材30を下方部材40に結合させながら、上方部材30の内側のバネ保持突起37で、バネ部材6を光フェルール5の鍔部52に向かって押し付けて、バネ部材6を圧縮する。
【0043】
組み立てられた光サブコネクタSにおいては、圧縮されたバネ部材6によって、光フェルール5が前方に付勢されることで、光フェルール5がサブハウジング3内で正規の位置および姿勢に保持されやすくなるのに加え、光ケーブル8に取り付けたケーブル固定部材82をケーブル保持部3bによって固定していることで、光ケーブル8が張力を受けることがあっても、光ケーブル8に結合された光フェルール5をその正規の位置および姿勢に保持しやすくなる。そのため、光サブコネクタSを組み立てる工程、またメインハウジング2に光サブコネクタSを組み込む工程、さらには製造された複合コネクタ1の使用中において、光ケーブル8への張力の印加によって、光フェルール5が位置ずれを起こす懸念が低減され、光-電気複合コネクタ1の製造性および使用時の利便性が高くなる。
【0044】
ここでは、サブハウジング3は、上下方向に分割された2つの分割部材30,40よりなっているが、前後方向に2つに分割された、前方部材と後方部材の2つの分割部材より構成されてもよい。その場合には、後方部材の後端部に、ケーブル固定部材82を固定して保持するケーブル保持部を設けておけばよい。そして、上記の上下分割の場合と同様に、光フェルール5がバネ部材6によって前方へ付勢され、かつケーブル固定部材82がケーブル保持部に固定された状態で、光ケーブル8を結合した光フェルール5を、前方部材と後方部材を結合して構成されるサブハウジングに収容すればよい。このように、前後にハウジングが分割された形態の光コネクタとして、LCコネクタが知られており、ここでも、光サブコネクタとして、LCコネクタと同様の形態を適用すればよい。
【0045】
<リブ部によるサブハウジングの変形抑制>
本実施形態にかかる複合コネクタ1においては、上で説明したとおり、光サブコネクタSを構成するサブハウジング3の前後方向中途部に、リブ部34とリブ収容部45の係合構造が設けられている。この係合構造は、光サブコネクタSにおいて、サブハウジング3の変形を抑制するものとなる。
【0046】
光サブコネクタSにおいては、サブハウジング3の中に、バネ部材6が収容され、光フェルール5を前方に向かって付勢している。複合コネクタ1を相手方コネクタと嵌合させ、この光フェルール5を、相手方の光フェルールと突き合わせた際に、バネ部材6は、相手方光フェルールから押圧力を受け、後方に向かって圧縮されることになる。すると、バネ部材6に前後方向に働く復元力が大きくなる。バネ部材6の復元力は、光フェルール5と光ケーブル8の結合体、主にケーブル固定部材82を介して、サブハウジング3に伝達され、サブハウジング3を前後に押し広げる方向の力として作用する。ここで、サブハウジング3が、上方部材30と下方部材40の2つの分割部材を結合して形成されており、上下への分割状態が前方と後方で対称となっていないことにより、つまり、サブハウジング3の前方部は上下分割されない筒状部41より構成されているのに対し、後方部は下方部材40の開放部42と上方部材30とに上下分割されていることにより、バネ部材6の復元力によってサブハウジング3に及ぼされる力は、前後方向に対称とならない。サブハウジング3に前後方向に非対称な力が印加されると、サブハウジング3において、前後方向に沿って撓み変形が生じる可能性がある。
【0047】
しかし、本実施形態においては、サブハウジング3の前後方向中途部に、上下の分割部材30,40にそれぞれリブ部34とリブ収容部45を設け、両者を係合させることで、バネ部材6からサブハウジング3に印加される力の前後方向の非対称性を緩和することができる。リブ部34とリブ収容部45の間の係合部を介して、バネ部材6からサブハウジング3に印加される力を、上方部材30と下方部材40の間で分散させられるからである。力の分布の非対称性を緩和することで、サブハウジング3の前後方向に沿った変形が抑制される。
【0048】
図4A,4Bに、光サブコネクタSにおいて、バネ部材6が圧縮を受けた際にサブハウジング3に発生する変形をシミュレーションした結果を示す。シミュレーションは、有限要素法による応力解析によって行った。図では、光サブコネクタSを、幅方向外側から見た側面図を示しており、変形を受けた外形を輪郭で図示するとともに、各位置における上下方向の撓み量を、カラースケールにて表示している(別途提出のカラー画像参照)。合わせて、後端部の下端が下方に撓み変形した撓み量を、数値にて表示している。図4Aは、図3A,3Bに示したとおり、リブ部34とリブ収容部45よりなる係合部をサブハウジング3に設けた形態、図4Bは、サブハウジング3にリブ部34およびリブ収容部45を設けず、単に、上方部材30の平滑な下端縁33と、下方部材40の平滑な上端縁44を突き合わせたものとなっている。
【0049】
図4A,4Bによると、いずれの形態においても、サブハウジング3の形状を見ると、後方部分(図中右側)が下方に撓んだ形状に変形していることが分かる。カラースケールでも、後方ほど撓み量が大きくなっていることが示される。しかし、図4Bのリブ部34が設けられていない形態に比べ、図4Aのリブ部34が設けられている形態の方が、後方部分の撓み変形が小さく、数値を表示した後端の撓み量も、図4Bの場合の70%以下に抑えられている。また、カラースケールによると、図4Bでは、前後方向に沿って、下方部材40の後端部のごく狭い領域に、撓み量の大きい領域が集中しているのに対し、図4Aでは、下方部材40の後端部への撓みの集中が緩和されている。より具体的には、下方部材40と上方部材30の間の撓み量の分布の差が小さくなるとともに、前後方向に沿って撓み量が緩やかに変化して分布するようになっている。
【0050】
これらのシミュレーション結果から、サブハウジング3の上方部材30と下方部材40の間の接合箇所の前後方向中途部に、リブ部34とリブ収容部45を設け、それらの係合構造を形成しておくことで、バネ部材6の圧縮に伴うサブハウジング3の前後方向に沿った変形が、抑えられることが分かる。これは、圧縮されたバネ部材6からサブハウジング3に対して、前後方向に押し広げる方向に印加される力が、リブ部34とリブ収容部45の係合構造によって、上方部材30と下方部材40の間で、また前後方向に沿って分散されるためであると解釈される。
【0051】
リブ部34およびリブ収容部45を、大きな領域を占めて形成するほど、光サブコネクタSにおいて、サブハウジング3の撓み変形を効果的に抑制できると考えられる。しかし、リブ部34を大きく形成しすぎると、光サブコネクタSが大型化し、複合コネクタ1全体の大型化につながり、好ましくない。また、サブハウジング3に大きなリブ部34を設けると、周囲と比較して、リブ部34とリブ収容部45よりなる係合部が外側に突出した構造となりやすく、そのような構造は、光サブコネクタSの組み立てや、メインハウジング2への組み付けの工程において、作業の邪魔になり、複合コネクタ1の製造性を損なう可能性がある。
【0052】
それらの事態を避けるために、本実施形態においては、リブ部34とリブ収容部45よりなる係合部が、大型化しないよう、また突出した形状とならないように、リブ部34およびリブ収容部45の形状を設定している。具合的には、リブ部34は、上方部材30の側方面38と面一に、下端縁33から延出している。リブ収容部45は、下方部材40の側方面48おいて、厚みのうち外側の一部が上端縁44から下方に向かって切り欠かれた、凹構造として設けられている。リブ部34とリブ収容部45を、このような単純な形状としておくことで、上方部材30と下方部材40を結合させ、リブ部34とリブ収容部45を係合させた際に、リブ部34とリブ収容部45を係合させた係合部が、他の部位と比較して、前後方向に沿ったサブハウジング3の中心軸(図示した形態では光フェルール5の中心軸に一致)を中心として外側に、つまり上下方向にも幅方向にも、張り出さない。また、その係合部は、サブハウジング3の外周面(側方面38,48)において、係合部の前後の箇所と面一になっている。このように構成することで、サブハウジング3において、下方部材40の開放部42と上方部材30から形成される後方部分が、単純な角筒に近似できる形となり、局所的に大型になった部位や、突出した部位を有さないものとなっている。その結果、光サブコネクタSおよび複合コネクタ1全体の小型化が達成され、また光サブコネクタSの組み立ておよび組み付けの工程の簡素化が促進される。
【0053】
<その他の形態>
上記実施形態においては、サブハウジング3の上方部材30にリブ部34を設け、下方部材40にリブ収容部45を設けているが、リブ部とリブ収容部を逆に設けてもよい。つまり、上方部材30の下端縁33と下方部材40の上端縁44の2つの端縁のうち、一方の端縁の前後方向中途部に、他方の端縁に向かって突出したリブ部を形成すればよい。そして、他方の端縁の前後方向中途部に、リブ部を収容し、リブ部と係合できる凹部として、リブ収容部を設ければよい。
【0054】
また、上記のとおり、電気接続端子7の種類や数は特に限定されるものではない。例えば、電気接続端子7として、特定の規格への適合が想定されない一般端子を用いても、イーサネット(登録商標)規格等、所定の規格を満たす端子を用いても、いずれでもよい。一般端子を用いる形態は、低コスト性において優れ、所定の規格を満たす端子を用いる形態は、通信性能等、電気接続部の性能を担保できる点で優れる。
【0055】
電気接続端子7を複数設ける場合に、それらの電気接続端子7を並べる方向も、特に限定されるものではない。上記実施形態では、図示したとおり、1対の電気接続端子7を、光フェルール5を収容したサブハウジング3とともに、上下方向(c方向)に並べているが(以下、直列配置と称する)、例えば、1対の電気接続端子7を幅方向(b方向)に並べた状態で、光フェルール5を収容したサブハウジング3と上下方向(c方向)に並べるようにしてもよい(以下、並列配置と称する)。直列配置と並列配置のいずれを採用するかは、複合コネクタ1の用途や電気接続端子7の種類等に応じて選択すればよい。また、本実施形態にかかる複合コネクタは、ケーブルコネクタであり、基板コネクタ(PCBコネクタ)等、嵌合させる相手方のコネクタにおける電気接続部と光接続部の配置に合わせて、直列配置か並列配置かを選べばよい。ただし、並列配置とする方が、複合コネクタ1全体を小型に設定しやすく、省スペース性の点では優れる。
【0056】
さらに、上記実施形態においては、複合コネクタ1に防水性を付与していないが、複合コネクタ1を防水コネクタとして構成してもよい。例えば、サブコネクタ収容空間2fおよび端子収容空間2gを含むメインハウジング2の後端の開口部を、防水栓で閉塞する形態が考えられる。
【0057】
本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 (光-電気)複合ケーブル
2 メインハウジング
2a 隔壁
2b サブコネクタ収容空間の後端の開口間口
2c 前端面
2d 光接続用開口
2e 電気接続用開口
2f サブコネクタ収容空間
2g 端子収容空間
3 サブハウジング
3a 接続用サブ開口
3b ケーブル保持部
3c 段付き構造
5 光フェルール
6 バネ部材
7 電気接続端子
8 光ケーブル
9 (絶縁)電線
10 ハウジング本体部
12 筒状部
13 開放部
14 係止突起
15 爪
20 リテーナ部材
21 係止タブ
22 係止用内突起
23 延出部
24 端子係止片
30 上方部材
31 係止用突出部
32 後方係合凹部
33 下端縁
34 リブ部
35 陥没部
36 窓部
37 バネ保持突起
38 側方面
40 下方部材
41 筒状部
42 開放部
43 後方係合片
431 ロック爪
44 上端縁
45 リブ収容部
46 窓部
47 フェルール保持部
48 側方面
51 光フェルールのバネ挿入部
52 光フェルールの鍔部
71 電気接続端子の段差構造
81 光ファイバ
82 ケーブル固定部材
83 ストップリング
84 かしめリング
841 大径部
842 小径部
a 前後方向
b 幅方向
c 上下方向
S 光サブコネクタ
図1
図2
図3
図4