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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】車体構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 21/02 20060101AFI20240910BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
B62D21/02 A
B62D25/20 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023554106
(86)(22)【出願日】2021-10-11
(86)【国際出願番号】 JP2021037543
(87)【国際公開番号】W WO2023062676
(87)【国際公開日】2023-04-20
【審査請求日】2023-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177460
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 智子
(72)【発明者】
【氏名】秋本 康雄
(72)【発明者】
【氏名】末廣 渉
(72)【発明者】
【氏名】中 浩則
(72)【発明者】
【氏名】城 光
(72)【発明者】
【氏名】篠永 悠太
(72)【発明者】
【氏名】片村 弘基
(72)【発明者】
【氏名】井口 正晴
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-47714(JP,A)
【文献】特開昭60-76477(JP,A)
【文献】特開2007-55350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 21/02
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に間隔を置いて一対設けられ、車両前後方向に延びるサイドフレームと、一対の前記サイドフレームを連結するように車幅方向に延び、前記サイドフレームの側壁を貫通して前記サイドフレームに結合されるクロスメンバと、を備える車体構造であって、
前記サイドフレームの内部に位置し、少なくとも前記サイドフレームの側壁に設けられ、該サイドフレームを補強するように車両前後方向に延びるサイドフレーム補強部材と、
前記サイドフレームの側壁及び前記クロスメンバに結合され、前記クロスメンバと前記サイドフレームとの結合部を補強する結合部補強部材と、を有し、
前記サイドフレーム補強部材は、車幅方向から見て車両前後方向において前記クロスメンバの近傍まで延在し、車両上下方向から見て前記クロスメンバと重ならないように設けられ、
前記結合部補強部材は、車幅方向から見て前記サイドフレーム補強部材と重なる重なり部と、前記クロスメンバより車両前後方向において前記サイドフレーム補強部材側が反対側に比べ大きく形成された拡大部を有
前記拡大部に前記重なり部を有する、
ことを特徴とする車体構造。
【請求項2】
前記サイドフレーム補強部材は、前記クロスメンバより車両前後方向において車両中央部側に設けられ、
前記結合部補強部材は、前記クロスメンバより車両前後方向において車両中央部側が反対側に比べ大きく形成された拡大部を有し、前記拡大部に前記重なり部を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の車体構造。
【請求項3】
前記拡大部には、溶接孔が設けられ、前記溶接孔において前記結合部補強部材は前記サイドフレームの側壁に溶接される、
ことを特徴とする請求項2に記載の車体構造。
【請求項4】
前記サイドフレームは、車両前後方向において車両中央部から車両前後方向一方側に向かうにつれて車両上方へ傾斜するキックアップ部を有し、
前記キックアップ部に、前記サイドフレーム補強部材が設けられる、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車体構造。
【請求項5】
前記結合部補強部材は、車両上下方向の一方側端部が車幅方向に折り曲げられ、前記サイドフレームの車両上下方向一方側の面に溶接される折曲部を有する、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の車体構造。
【請求項6】
前記結合部補強部材の前記サイドフレームの側壁に結合される箇所における車両上下方向一方側端部には、車両前後方向において前記拡大部とは反対側へ延びる延長部が設けられる、
ことを特徴とする請求項2に記載の車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体前後方向に延びる一対のサイドフレームと、左右のサイドフレームの相互間を連結するクロスメンバとを備える車体構造において、サイドフレームの補強構造について、又サイドフレームとクロスメンバとの結合部の補強構造について種々の提案がされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、重量増加を抑えながら、サイドフレームの変形を防止ができる車体構造が示されている。特許文献1には、サイドフレームの車体前後方向の所定範囲にわたってサイドフレームの内部から補強する補強部材が設けられ、補強部材は、上側角部に配置される上側部材と、下側角部に配置される下側部材とを含む構造が示されている。
【0004】
また、特許文献2には、特許文献2の図6図7に示されるように、クロスメンバの端部がサイドフレームの内側及び外側のそれぞれの側壁に形成された貫通孔に挿入され溶接される、いわゆる貫通タイプのクロスメンバが記載されている。このようなクロスメンバとサイドフレームとの結合部分において、内側の貫通孔には、重なるように補強板が取りけられ、補強板もサイドフレームに溶接される構造が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-47714号公報
【文献】特開2014-69686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献1では、サイドフレームの内部からサイドフレームを補強する補強部材が、上側角部と下側角部に配置されることが示されているが、サイドフレームと貫通タイプのクロスメンバとの結合部分を補強する結合部の補強構造についての開示は見られない。
【0007】
また、特許文献1に示されるサイドフレームの補強部材とクロスメンバの貫通部分とが重なる部分においては、サイドフレームの上側角部及び下側角部とクロスメンバとの間隔が小さく、補強部材をクロスメンバを跨いで前後方向に通し難くなる。そのため、補強部材とクロスメンバとの間に車両前後方向で隙間が空くことになり、サイドフレームとクロスメンバとの結合部分近傍においてサイドフレームの強度が低下する。
【0008】
なお、特許文献2には、サイドフレームの内部にサブフレームを補強する補強部材を設ける構造については開示されていない。
【0009】
そこで、上記課題に鑑み、本発明の少なくとも一つの実施形態は、サイドフレームの補強と、サイドフレームとクロスメンバとの結合部の補強とを組み合わせることによって、サイドフレームの強度、剛性を向上できる車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)前述した目的を達成するために発明されたものであり、本発明の少なくとも一つの実施形態は、車幅方向に間隔を置いて一対設けられ、車両前後方向に延びるサイドフレームと、一対の前記サイドフレームを連結するように車幅方向に延び、前記サイドフレームの側壁を貫通して前記サイドフレームに結合されるクロスメンバと、を備える車体構造であって、少なくとも前記サイドフレームの側壁に設けられ、該サイドフレームを補強するように車両前後方向に延びるサイドフレーム補強部材と、前記サイドフレームの側壁及び前記クロスメンバに結合され、前記クロスメンバと前記サイドフレームとの結合部を補強する結合部補強部材と、を有し、前記サイドフレーム補強部材は、車幅方向から見て車両前後方向において前記クロスメンバの近傍まで延在し、前記結合部補強部材は、車幅方向から見て前記サイドフレーム補強部材と重なる重なり部を有する。
【0011】
このような構成(1)によれば、サイドフレーム補強部材と結合部補強部材とが、重なり部によって、車幅方向から見て車両前後方向において重なるので、車両外部からの入力荷重によってサイドフレームがクロスメンバとの結合部近傍で変形することを抑制できる。
【0012】
サイドフレーム補強部材と結合部補強部材との間に車両前後方向に隙間があいてしまうと、車両外部からの入力荷重によってその隙間部でサイドフレームが折れ曲がることが考えられるが、サイドフレーム補強部材と結合部補強部材とを重ねることで、このような問題を抑制できる。すなわち、サイドフレームの強度、剛性を向上できる。
【0013】
また、サイドフレーム補強部材は、少なくともサイドフレームの側壁に設けられるが、車幅方向から見て車両前後方向においてクロスメンバの近傍までしか延在していないので、クロスメンバがサイドフレームを貫通する構造であっても、サイドフレーム補強部材によってクロスメンバの断面形状が制限されることはなく、サイドフレームの側壁の大きさ(高さ)いっぱいまで太くできる。このため、クロスメンバの剛性を高めることが可能となる。
【0014】
(2)幾つかの実施形態では、前記サイドフレーム補強部材は、前記クロスメンバより車両前後方向において車両中央部側に設けられ、前記結合部補強部材は、前記クロスメンバより車両前後方向において車両中央部側が反対側に比べ大きく形成された拡大部を有し、前記拡大部に前記重なり部を有する。
【0015】
このような構成(2)によれば、結合部補強部材は、クロスメンバより車両前後方向において車両中央部側が反対側に比べ大きく形成された拡大部を有するので、車両中央部への側面衝突時の衝突荷重によってサイドフレームがクロスメンバとの接合部近傍で車幅方向に折れ曲がるような変形を抑制できる。
【0016】
また、クロスメンバより車両前後方向において車両中央部側だけに拡大部が形成され、反対側には形成されないので、サイドフレームの変形を、重量増加を抑えて達成できる。さらに、結合部補強部材の拡大部に重なり部を有するので、重なり部の長さを確保することができ、重なり部によるサイドフレームの変形抑制を効果的に得ることができる。
【0017】
(3)幾つかの実施形態では、前記拡大部には、溶接孔が設けられ、前記溶接孔において前記結合部補強部材は前記サイドフレームの側壁に溶接される。
【0018】
このような構成(3)によれば、拡大部に形成された溶接孔からの溶接によって、拡大部の周縁の溶接に加えて、拡大部のサイドフレームの側壁に対する接合強度が向上し、サイドフレームの変形を効果的に抑制できる。
【0019】
(4)幾つかの実施形態では、前記サイドフレームは、車両前後方向において車両中央部から車両前後方向一方側に向かうにつれて車両上方へ傾斜するキックアップ部を有し、前記キックアップ部に、前記サイドフレーム補強部材が設けられる。
【0020】
このような構成(4)によれば、車両上方へ傾斜するキックアップ部の湾曲部において、車両外部からの入力荷重によって変形が生じやすいが、キックアップ部にサイドフレーム補強部材が設けられることで、これら変形を抑制できる。
【0021】
(5)幾つかの実施形態では、前記結合部補強部材は、車両上下方向の一方側端部が車幅方向に折り曲げられ、前記サイドフレームの車両上下方向一方側の面に溶接される折曲部を有する。
【0022】
このような構成(5)によれば、結合部補強部材は、車両上下方向の一方側端部が車幅方向に折り曲げられる折曲部を有するので、結合部補強部材自体の剛性が向上することで、拡大部の車幅方向への折り曲げ変形がより一層抑制される。さらに、車幅方向に折り曲げられた部分が、サイドフレームの車両上下方向一方側の面に溶接されるので、サイドフレームの車両上下方向一方側の面を補強できる。
【0023】
(6)幾つかの実施形態では、前記結合部補強部材の前記サイドフレームの側壁に結合される箇所における車両上下方向一方側端部には、車両前後方向において前記拡大部とは反対側へ延びる延長部が設けられる。
【0024】
このような構成(6)によれば、延長部を設けてその先端部を溶接端とすることで、延長部の溶接端に向かうにつれてクロスメンバから離れるので、延長部の溶接端における応力集中を抑制できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、サイドフレームの補強と、サイドフレームとクロスメンバとの結合部の補強とを組み合わせることによって、サイドフレームの強度、剛性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係る車体構造が適用された車両全体の骨格部を概略的に示した全体斜視図である。
図2図1のB矢視方向のサイドフレームの概略側面図である。
図3図1のA部の拡大斜視図である。
図4図3のC-C断面図である。
図5】結合部リンフォースの他の実施形態を示し、図3に対応する拡大斜視図である。
図6図5のD-D断面図である。
図7図5に示す結合部リンフォースの折曲部及び延長部の溶接状態を示し、下方側からの斜視図である。
図8】結合部リンフォースのさらなる他の実施形態を示し、図3に対応する拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、実施形態として記載されている、または図面に示されている構成部品の相対的配置等は、本発明の範囲をこれらに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、説明中の上下前後左右の方向は、運転席から乗員が前方を見た方向で定義するものとする。図中において、「FR」は前方、「LH」左方、「UPR」は上方を示す。
【0028】
図1から図4に本発明の一実施形態を示す。図1に、車体構造1が適用された車両全体の骨格部を概略的に示した全体斜視図を示す。図1に示すように、車体構造1は、車幅方向に間隔を置いて一対設けられ、車両前後方向に延びるサイドフレーム3、5と、一対のサイドフレーム3、5を連結するように車幅方向に延びる複数のクロスメンバ7a~7fと、を備える。
【0029】
サイドフレーム3、5は、車幅方向に間隔を置いて一対設けられ、車両前後方向に延び、車両の車幅方向の中心に対して互いに対称な形状を有している。また、サイドフレーム3、5は、矩形状の閉断面を有する中空の部材である。図2に、図1のB矢視方向のサイドフレーム3の概略側面図を示す。
【0030】
一方のサイドフレーム3と他方のサイドフレーム5は、同様の構造であるため、サイドフレーム3について説明し、サイドフレーム5については説明を省略する。なお、図4、6ではサイドフレーム5について符号をかっこ書きで示す。
【0031】
クロスメンバ7a~7fのうち、車両前側から5番目に位置するクロスメンバ7e(特許請求の範囲におけるクロスメンバ)の前後のサイドフレーム3には、車両の後輪側のサスペンション機構を構成するリーフスプリングの前側取付部9、後側取付部11が設けられている(図2参照)。また、クロスメンバ7eの直後のサイドフレーム3には、リヤサスペンション機構を構成するショックアブソーバの取付ブラケット13が設置されている。
【0032】
クロスメンバ7eは、車幅方向に直線状に延び、円形又は略矩形の閉断面を有する中空の部材である。クロスメンバ7eの両端部のそれぞれは、サイドフレーム3の車内側に位置する内側壁3a、及び車外側に位置する外側壁3bのそれぞれに形成される貫通孔を貫通して、サイドフレーム3に取り付けられている。
【0033】
図2に示すように、サイドフレーム3の側面視の形状は、略水平方向に延び、中央部L1、中央部L1から車両前方側に向かうにつれて車両上方に傾斜する前方キックアップ部L2、中央部L1から車両後方側に向かうにつれて車両上方に傾斜する後方キックアップ部L3が形成されている。
【0034】
これら前方キックアップ部L2、後方キックアップ部L3は、車輪およびサスペンション機構の配置の関係から、中央部L1から車両前後方向端部に向かうにつれて車両上方に傾斜する傾斜部15、17を有している。
【0035】
前方キックアップ部L2には、サイドフレーム3の内部にサイドフレームリンフォース19が設けられると共にクロスメンバ7bの端部が結合される。この前方側のクロスメンバ7bは、エンジンが上方に搭載されるため下方に湾曲した形状を有している。
【0036】
後方キックアップ部L3には、サイドフレーム3の内部にサイドフレームリンフォース(特許請求の範囲におけるサイドフレーム補強部材)21が設けられると共にクロスメンバ7eの端部が結合される。クロスメンバ7eの端部とサイドフレーム3との結合部には、結合部リンフォース(特許請求の範囲における結合部補強部材)23が設けられている。
【0037】
図2において灰色部分に、サイドフレーム3のサイドフレームリンフォース19、21の設置領域の一例を示す。本実施形態では、サイドフレームリンフォース21は中央部L1と後方キックアップ部L3との境界を跨ぐように設置されている。
【0038】
前方キックアップ部L2のサイドフレームリンフォース19は、断面形状が略L形状を有し、サイドフレーム3の矩形閉断面内の4隅の内の少なくとも上下2隅に設けられ、車両前後方向に延在している。
【0039】
後方キックアップ部L3のサイドフレームリンフォース21は、断面形状が略L形状を有し、サイドフレーム3の矩形閉断面内の4隅の内の少なくとも1隅に沿って車両前後方向に延在している。中央部L1から後方キックアップ部L3にかけては、サイドフレーム3の4隅の内の上下2隅に設けられ、車両前後方向に延在している。
【0040】
なお、中央部L1、前方キックアップ部L2、後方キックアップ部L3におけるサイドフレームリンフォース19、21の設置領域は、図2の範囲に限るものではなく、補強の必要に応じて設置領域や、サイドフレーム3の4隅の内のいずれに設けるかが設定される。
【0041】
図3に、図1のA部の拡大斜視図を示し、図4に、図3のC-C概略断面図を示す。図3図4に示すように、クロスメンバ7e付近のサイドフレームリンフォース21は、サイドフレーム3の4隅の内の下側の車幅方向内側の1隅にだけ、断面形状の略L字形が沿うように接合されている。すなわち、サイドフレームリンフォース21は、サイドフレーム3の内側壁3aと下側の面に接合されている。
【0042】
サイドフレームリンフォース21の後端部は、車幅方向から見て車両前後方向においてクロスメンバ7eの近傍まで延在している。すなわち、サイドフレームリンフォース21の後端部は、図3に示すように、クロスメンバ7eが位置される車両前後方向の領域Rの範囲より外側に位置している。言い換えると、車両上下方向から見て、サイドフレームリンフォース21とクロスメンバ7eは重ならない。
【0043】
また、図3に示すように、クロスメンバ7eとサイドフレーム3との結合部22には、サイドフレーム3の側壁及びクロスメンバ7eに結合され、結合部22を補強する結合部リンフォース23が設けられている。結合部リンフォース23は、板状の金属製の部材からなり、クロスメンバ7eが貫通する貫通孔25が形成され、サイドフレーム3の長手方向に沿って延びる形状を有する。さらに、この結合部リンフォース23は、図4に示すように、サイドフレーム3の車内側に位置する内側壁3aに形成された貫通孔27aを覆うように、内側壁3aの外面3abに接合されている。
【0044】
また、図3に示すように、結合部リンフォース23は、クロスメンバ7eより車両前方側が後方側に比べ大きく形成された拡大部29を有しており、この拡大部29において車幅方向から見てサイドフレームリンフォース21と重なる重なり部31が形成される。
【0045】
すなわち、図4に示すように、サイドフレーム3の車内側に位置する内側壁3aを挟んで、内側壁3aの内面3aaにサイドフレームリンフォース21が設けられ、内側壁3aの外面3abに結合部リンフォース23が設けられ、車幅方向から見るとサイドフレームリンフォース21と結合部リンフォース23とが重なり部31で重なっている。
【0046】
なお、クロスメンバ7eとサイドフレーム3との結合部22における溶接状態は、図3図4に示すように、クロスメンバ7eが外側壁3bを貫通する貫通孔27bにおいては、貫通孔27bの周縁部とクロスメンバ7eが溶接(溶接部W1)され、クロスメンバ7eが内側壁3aを貫通する貫通孔27aにおいては、前述のように、貫通孔27aを覆うように、内側壁3aの外面3abに結合部リンフォース23の周縁部が溶接(溶接部W2)され、さらに、結合部リンフォース23の貫通孔25の周縁部がクロスメンバ7eに溶接(溶接部W3)されている。
【0047】
以上説明した一実施形態によれば、サイドフレーム3を補強するように車両前後方向に延びるサイドフレームリンフォース21と、クロスメンバ7eとサイドフレーム3との結合部22を補強する結合部リンフォース23とを有し、サイドフレームリンフォース21は、車幅方向から見て車両前後方向においてクロスメンバ7eの近傍まで延在し、さらに、結合部リンフォース23は、車幅方向から見てサイドフレームリンフォース21と重なる重なり部31を有すること特徴とする。
【0048】
このような構成によれば、サイドフレームリンフォース21と結合部リンフォース23とが、重なり部31によって、車幅方向から見て車両前後方向において重なるので、サイドフレーム3がクロスメンバ7eとの結合部近傍で変形することを抑制できる。
【0049】
サイドフレームリンフォース21と結合部リンフォース23との間に車両前後方向で隙間があいてしまうと、その隙間部で車両外部からの入力荷重によってサイドフレーム3が折れ曲がることが考えられるが、サイドフレームリンフォース21と結合部リンフォース23とを重ねることで、このような問題を抑制できる。すなわち、サイドフレーム3の強度、剛性を向上できる。
【0050】
また、サイドフレームリンフォース21は、サイドフレーム3の内側壁3aの内面3aaに設けられるが、車幅方向から見て車両前後方向においてクロスメンバ7eの近傍までしか延在していない。
【0051】
従って、サイドフレームリンフォース21は、クロスメンバ7eが位置する車両前後方向の領域Rの範囲より外側に位置するので、クロスメンバ7eがサイドフレーム3を貫通する構造であっても、サイドフレームリンフォース21によってクロスメンバ7eの断面形状が制限されることはなく、サイドフレーム3の内側壁3aの大きさ(高さ)いっぱいまで太くできる。このため、クロスメンバ7eの剛性を高めることが可能となる。
【0052】
さらに、結合部リンフォース23は、クロスメンバ7eより車両前後方向において、前方側(車両前後方向中央側)が後方側(反対側、すなわち車両前後方向端部側)に比べ大きく形成された拡大部29を有するので、車両中央部への側面衝突時の衝突荷重によってサイドフレーム3がクロスメンバ7eとの接合部近傍で車幅方向に折れ曲がるように変形することを抑制できる。なお、車両前後方向端部への側面衝突時は、衝突荷重を車両の回転によって逃がすことができるため、クロスメンバ7eより後方側は前方側に比べ補強の程度は小さくて済む。
【0053】
また、本実施形態では、クロスメンバ7eより車両前後方向において前側だけに拡大部29が形成され、反対側には形成されないので、サイドフレーム3の変形を、重量増加を抑えて達成できる。さらに、結合部リンフォース23の拡大部29に重なり部31を形成するで、重なり部31の長さを確保しやすく、重なり部31によるサイドフレーム3の変形抑制を効果的に得ることができる。
【0054】
また、サイドフレーム3の前方キックアップ部L2及び後方キックアップ部L3、すなわち、傾斜部15、17と中央部L1との境界においては、車両外部からの入力荷重によって変形が生じやすいが、前方キックアップ部L2には、サイドフレームリンフォース19が設けられ、後方キックアップ部L3には、サイドフレームリンフォース21が設けられることで、これら前方キックアップ部L2、及び後方キックアップ部L3における変形を抑制できる。
【0055】
さらに、後方キックアップ部L3においては、後輪側のサスペンション機構が設置されるため、クロスメンバ7eに大きな入力荷重が作用するが、サイドフレームリンフォース21と結合部リンフォース23とを車両前後方向で重ねるように設けることによって、サイドフレーム3の変形をより効果的に抑制できる。
【0056】
幾つかの実施形態では、図3に示すように、拡大部29には、溶接孔33が設けられ、拡大部29の周縁及び溶接孔33において結合部リンフォース23はサイドフレーム3の内側壁3aの外面3abに溶接される(溶接部W2及びW4)。
【0057】
溶接孔33は、拡大部29の車両前側端部とクロスメンバ7eとの間において上下に2箇所形成されている。また、溶接孔33は貫通孔であり、貫通孔の内周部がサイドフレーム3の内側壁3aの外面3abに溶接されている。
【0058】
このような構成によれば、拡大部29がサイドフレーム3の内側壁3aの外面3abに溶接され、しかも、溶接孔33を介してクロスメンバ7eの付近で接合されるので、拡大部29のサイドフレーム3に対する接合強度が拡大部29の周縁の溶接だけよりも向上し、サイドフレーム3、5の変形を効果的に抑制できる。
【0059】
幾つかの実施形態では、図5から図7に示すように、結合部リンフォース35は、車両上下方向の下方側端部が車幅方向に折り曲げられ、サイドフレーム3の車両上下方向の下側の面に溶接される折曲部37を有する。その他の構成は、図3の実施形態と同様である。
【0060】
折曲部37における溶接状態は、図7に示すように、折曲部37の車両前後方向の端部を除いて、サイドフレーム3の下面に車両前後方向に渡って溶接(溶接部W5)されている。
【0061】
このような構成によれば、結合部リンフォース35は、車両上下方向の下部が車幅方向に折り曲げられる折曲部37を有するので、結合部リンフォース35自体の剛性が向上することで、拡大部29の車幅方向への折り曲げ変形がより一層抑制される。さらに、折曲部37が、サイドフレーム3の車両上下方向の下面に溶接されるので、サイドフレーム3の下面を補強できる。
【0062】
なお、折曲部37が、下方側端部について説明したが、上方側端部を車幅方向に折り曲げて、サイドフレーム3の上面に溶接される構造としてもよい。
【0063】
幾つかの実施形態では、図5から図7に示すように、結合部リンフォース35のサイドフレーム3の内側壁3aの外面3abに結合される箇所における下方側端部、すなわち車両上下方向で折曲部37が設けられる側には、車両前後方向において拡大部29とは反対側へ延びる延長部39が設けられる。
【0064】
延長部39は、拡大部29とは反対側へ延びるにつれて上縁が下方へ傾斜している。延長部39における溶接状態は、図5図7に示すように、拡大部29とは反対側へ延びる延長部39の端部に向かって結合部リンフォース35の上周縁部が溶接(溶接部W6)されている。
【0065】
このような構成によれば、延長部39を設けてその延長部39の先端部を溶接端とし、溶接端に向かうにつれてクロスメンバ7eから離れるので、延長部39の先端部における溶接端での応力集中を抑制できる。
【0066】
すなわち、結合部リンフォース35の周縁部をサイドフレーム3の内側壁3aの外面3abに溶接する場合に、車幅方向に折り曲げられる折曲部37の車両前後方向の端部においては、折れ曲がり形状であるために、溶接の連続が困難であり溶接の切れ目となる溶接端が形成される。このような折曲部37の端部の溶接端においては応力集中が生じやすい。
【0067】
拡大部29側の折曲部37の一方端部では、拡大部29のためクロスメンバ7eより離れた位置となっていることからクロスメンバ7eから作用する荷重の影響は小さいが、拡大部29と反対側ではクロスメンバ7eからの距離が近いため影響が大きい。そこで、反対側へ延びる延長部39を設けて折曲部37の他方端部をクロスメンバ7eから遠ざけることで折曲部37の他方端部における溶接端での応力集中の影響を低減している。
【0068】
また、図5に示すように、延長部39の先端部(先端部の位置を示す先端線S)は、リヤサスペンション機構を構成するショックアブソーバをサイドフレーム3に取り付ける取付ブラケット13と、車両上下方向で重なるように位置されている。
【0069】
このような構成によれば、延長部39とショックアブソーバの取付ブラケット13とが、上下方向に重なるので、結合部リンフォース35と取付ブラケット13との間でサイドフレーム3が折れ曲がるような変形が抑制される。
【0070】
幾つかの実施形態では、図8に示すように、折曲部37の部分だけを延長した延長部39ではなく、結合部リンフォース41の全体を車両前後方向に延長して、延長した結合部リンフォース41の本体部分の上に、ショックアブソーバの取付ブラケット13を重ねて接合してもよい。
【0071】
このような構成によれば、ショックアブソーバの取付ブラケット13と結合部リンフォース41とが直接重なるので、取付ブラケット13と結合部リンフォース41とが車両前後方向において隙間があくことがなく、サイドフレーム3がその隙間で折れ曲がるような変形が確実に抑制される。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、サイドフレームの補強と、サイドフレームとクロスメンバとの結合部の補強とを組み合わせることによって、サイドフレームの強度、剛性を向上できるので、車体構造への利用に適している。
【符号の説明】
【0073】
1 車体構造
3、5 サイドフレーム
3a、5a 内側壁
3b、5b 外側壁
7a、7b、7c、7d、7e、7f クロスメンバ
9 リーフスプリングの前側取付部
11 リーフスプリングの後側取付部
13 ショックアブソーバの取付ブラケット
15、17 傾斜部
19、21 サイドフレームリンフォース(サイドフレーム補強部材)
22 結合部
23、35、41 結合部リンフォース(結合部補強部材)
25、27a、27b 貫通孔
29 拡大部
31 重なり部
33 溶接孔
L1 中央部
L2 前方キックアップ部(キックアップ部)
L3 後方キックアップ部(キックアップ部)
37 折曲部
39 延長部
R 領域
S 先端線
W1、W2、W3、W4、W5、W6 溶接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8