(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】封止用樹脂組成物および片面封止構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/29 20060101AFI20240910BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20240910BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20240910BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240910BHJP
C08L 91/06 20060101ALI20240910BHJP
C08K 5/3472 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
H01L23/30 R
C08L63/00 C
C08K3/013
C08L91/06
C08K5/3472
(21)【出願番号】P 2023557810
(86)(22)【出願日】2023-03-24
(86)【国際出願番号】 JP2023011749
(87)【国際公開番号】W WO2023182485
(87)【国際公開日】2023-09-28
【審査請求日】2023-09-20
(31)【優先権主張番号】P 2022050381
(32)【優先日】2022-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】松尾 誠
【審査官】相澤 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-001638(JP,A)
【文献】特開2016-031985(JP,A)
【文献】特開2006-100489(JP,A)
【文献】特開2019-026715(JP,A)
【文献】特開2004-115583(JP,A)
【文献】特開2022-003130(JP,A)
【文献】特開2011-195841(JP,A)
【文献】特開2018-172545(JP,A)
【文献】特開2012-111844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/29
C08L 63/00
C08K 3/013
C08L 91/06
C08K 5/3472
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの電子装置が搭載された
、縦150mm以上400mm以下、横150mm以上400mm以下、厚さ30μm以上5000μm以下の寸法を有するマザーボードを、
一括で、片面封止して、
封止樹脂の厚みが0.1mm以上10mm以下である、片面封止型構造体を製造するために用いられる封止用樹脂組成物であって、
当該封止用樹脂組成物は、3官能以上のエポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、無機充填材、およびワックスを含み、
前記3官能以上のエポキシ樹脂は、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂を含み、
前記硬化剤は、トリフェノールメタン型フェノール樹脂を含み、
当該封止用樹脂組成物の成形収縮率は、0.1%以下である、封止用樹脂組成物(ただし、ナフチルエーテル骨格を有するエポキシ樹脂を含む封止用樹脂組成物を除く)。
【請求項2】
ガラス転移温度Tgが、150℃以上250℃以下である、請求項1に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項3】
40℃から80℃における平均線膨張係数が、9~13ppm/Kである、請求項1に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項4】
前記ワックスが、封止用樹脂組成物全体に対して、0.05質量%以上5質量%以下の量である、請求項1に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項5】
前記無機充填材が、封止用樹脂組成物全体に対して、80質量%以上90質量%以下の量である、請求項1に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項6】
トリアゾールをさらに含む、請求項1に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項7】
タブレット形状である、請求項1に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項8】
縦150mm以上400mm以下、横150mm以上400mm以下、厚さ30μm以上5000μm以下の寸法を有するマザーボードと、前記マザーボードの一方の面に搭載された電子装置と、を備える構造体を準備する工程と、
前記構造体の前記電子装置が搭載された面を、封止用樹脂組成物で
一括封止して、
封止樹脂の厚みが0.1mm以上10mm以下である、片面封止構造体を得る工程と、
を含む、片面封止構造体の製造方法であって、
前記封止用樹脂組成物は、3官能以上のエポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、無機充填材、およびワックスを含み、
前記3官能以上のエポキシ樹脂は、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂を含み、
前記硬化剤は、トリフェノールメタン型フェノール樹脂を含み、
前記封止用樹脂組成物の成形収縮率は、0.1%以下である、片面封止構造体の製造方法(ただし、ナフチルエーテル骨格を有するエポキシ樹脂を含む封止用樹脂組成物を使用する片面封止構造体の製造方法を除く)。
【請求項9】
マザーボードと、前記マザーボードの一方の面に搭載された電子装置と、を備える構造体を準備する前記工程が、前記マザーボードを表面処理する工程を含む、請求項8に記載の片面封止構造体の製造方法。
【請求項10】
前記封止用樹脂組成物のガラス転移温度Tgが、150℃以上250℃以下である、請求項8に記載の片面封止構造体の製造方法。
【請求項11】
前記封止用樹脂組成物の40℃から80℃における平均線膨張係数が、9~13ppm/Kである、請求項8に記載の片面封止構造体の製造方法。
【請求項12】
前記封止用樹脂組成物中の前記ワックスの含有量が、当該封止用樹脂組成物全体に対して、0.05質量%以上5質量%以下である、請求項8に記載の片面封止構造体の製造方法。
【請求項13】
前記封止用樹脂組成物中の前記無機充填材の含有量が、前記封止用樹脂組成物全体に対して、80質量%以上90質量%以下である、請求項8に記載の片面封止構造体の製造方法。
【請求項14】
前記封止用樹脂組成物がトリアゾールをさらに含む、請求項8に記載の片面封止構造体の製造方法。
【請求項15】
前記封止用樹脂組成物がタブレット形状である、請求項8に記載の片面封止構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用樹脂組成物、およびこれを用いる片面封止構造体の製造方法に関する。より詳細には、基板上に搭載された電子部品を樹脂封止した構成を有する構造体を製造するために使用する封止用樹脂組成物、および構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気・電子部品を搭載する積層板はその利用分野の拡大により、要求特性が広範かつ高度化している。例えば、車両に搭載されるエンジンコントロールユニットや自動変速機用コントロールユニットなどの電子制御装置については、車室内からエンジンルーム、オンエンジン、インミッション等への移設や、電子制御装置自体の小型化による単位体積当たりの発熱量の増加に伴い、耐熱性、耐振動性および耐衝撃性の要求がより高まっている。
【0003】
このような要求を満たすため、例えば、電子部品を実装する回路基板や外部端子を接続するコネクタハウジングを一体的に樹脂で封止する技術が開示されている(例えば、特許文献1)。このような技術によれば、上記回路基板等が樹脂で封止されているため、耐熱性、耐振動性および耐衝撃性に有利であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子制御装置が片面封止型モジュールである場合、基板の上面、すなわち電子部品が搭載された面側のみを樹脂で封止する片面封止が行われる。このような一括成形においては、成形後に基板全体に反りが発生するという問題点がある。この反りは基板の厚みや樹脂封止の厚みとのバランスの差により発生するものであり、成形後の基板の収縮力と封止樹脂の収縮力のうち強い方に反りが発生する。例えば、基板の一括封止を行うモジュールの成形においては、成形後にモジュールが樹脂側に反るという問題がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、成形時の成形収縮率が低減された封止用樹脂組成物、およびこれを用いて製造された反りの低減された片面封止型構造体を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、特定の配合を有することにより成形収縮率が低減された封止用樹脂組成物が得られ、またこれを用いて製造される片面封止型構造体の反りが低減されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明によれば、
少なくとも1つの電子装置が搭載された、縦150mm以上400mm以下、横150mm以上400mm以下、厚さ30μm以上5000μm以下の寸法を有するマザーボードを、一括で、片面封止して、封止樹脂の厚みが0.1mm以上10mm以下である、片面封止型構造体を製造するために用いられる封止用樹脂組成物であって、
当該封止用樹脂組成物は、3官能以上のエポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、無機充填材、およびワックスを含み、
前記3官能以上のエポキシ樹脂は、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂を含み、
前記硬化剤は、トリフェノールメタン型フェノール樹脂を含み、
当該封止用樹脂組成物の成形収縮率は、0.1%以下である、封止用樹脂組成物(ただし、ナフチルエーテル骨格を有するエポキシ樹脂を含む封止用樹脂組成物を除く)が提供される。
【0009】
また本発明によれば、
縦150mm以上400mm以下、横150mm以上400mm以下、厚さ30μm以上5000μm以下の寸法を有するマザーボードと、前記マザーボードの一方の面に搭載された電子装置と、を備える構造体を準備する工程と、
前記構造体の前記電子装置が搭載された面を、封止用樹脂組成物で一括封止して、封止樹脂の厚みが0.1mm以上10mm以下である、片面封止構造体を得る工程と、
を含む、片面封止構造体の製造方法であって、
前記封止用樹脂組成物は、3官能以上のエポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、無機充填材、およびワックスを含み、
前記3官能以上のエポキシ樹脂は、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂を含み、
前記硬化剤は、トリフェノールメタン型フェノール樹脂を含み、
前記封止用樹脂組成物の成形収縮率は、0.1%以下である、片面封止構造体の製造方法(ただし、ナフチルエーテル骨格を有するエポキシ樹脂を含む封止用樹脂組成物を使用する片面封止構造体の製造方法を除く)が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、成形時の成形収縮率が低減された封止用樹脂組成物、およびこれを用いて製造された反りの低減された片面封止型構造体を製造する方法を提供することを目的とする。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
[封止用樹脂組成物]
本実施形態の封止用樹脂組成物は、少なくとも1つの電子装置が搭載されたマザーボードを、このマザーボードの上面すなわち電子装置が搭載された面側のみを封止して、片面封止型構造体を製造するために用いられる。本実施形態の封止用樹脂組成物は、3官能以上のエポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、無機充填材、およびワックスを含み、当該樹脂組成物の成形収縮率は、0.1%以下である。
【0012】
本実施形態の封止用樹脂組成物は、上述の特定の成分を組み合わせて含むことにより、0.1%以下の成形収縮率を有する。このような成形収縮率の封止用樹脂組成物を封止材として用いて得られる片面封止型構造体は、反り、特に、封止樹脂側への反りが低減され、よって信頼性に優れる片面封止型構造体が得られる。以下、本実施形態の封止用樹脂組成物に用いられる各成分について説明する。
【0013】
(多官能エポキシ樹脂)
本実施形態の封止用樹脂組成物に用いられる3官能以上の多官能エポキシ樹脂とは、1分子中に3つ以上のエポキシ基を有する化合物を指す。3官能以上のエポキシ樹脂を用いることにより、これを硬化して得られる硬化物の耐熱性を向上させることができる。エポキシ樹脂の価数は、3~20価が好ましい。本実施形態で用いられる2官能以上のエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂、ヒドロキノン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスチオエーテル型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、芳香族変性フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、β-ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、α-ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂、アルキレングリコール型エポキシ樹脂、脂肪族環状エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタンテトラグリシジルアミン、アミノフェノール型エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。優れた耐熱性を有する観点から、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、芳香族変性フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、α-ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂等が好ましい。これは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
エポキシ樹脂の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して好ましくは5質量%以上40質量%以下、より好ましくは10質量%以上20質量%以下である。
【0015】
(硬化剤)
本実施形態の封止用樹脂組成物は、エポキシ樹脂を三次元架橋させるために硬化剤を含む。硬化剤としては、たとえばフェノール樹脂系硬化剤が好ましく用いられる。フェノール樹脂系硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等のノボラック型樹脂;トリフェノールメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。このようなフェノール樹脂系硬化剤により、耐燃性、耐湿性、電気特性、硬化性、保存安定性等のバランスが良好となる。特に、硬化性の点から、たとえばフェノール樹脂系硬化剤の水酸基当量は、90g/eq以上、250g/eq以下とすることができる。
【0016】
上述のフェノール樹脂系硬化剤に加え、例えば、重付加型の硬化剤、触媒型の硬化剤、縮合型の硬化剤等を用いてもよい。
【0017】
重付加型の硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、メタキシレンジアミン(MXDA)などの脂肪族ポリアミン、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、m-フェニレンジアミン(MPDA)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)などの芳香族ポリアミンのほか、ジシアンジアミド(DICY)、有機酸ジヒドララジドなどを含むポリアミン化合物;ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)などの脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)などの芳香族酸無水物などを含む酸無水物;ノボラック型フェノール樹脂、フェノールポリマーなどのポリフェノール化合物;ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテルなどのポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネートなどのイソシアネート化合物;カルボン酸含有ポリエステル樹脂などの有機酸類などが挙げられる。
【0018】
触媒型の硬化剤としては、例えば、ベンジルジメチルアミン(BDMA)、2,4,6-トリスジメチルアミノメチルフェノール(DMP-30)などの3級アミン化合物;2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール(EMI24)などのイミダゾール化合物;BF3錯体などのルイス酸などが挙げられる。
【0019】
縮合型の硬化剤としては、例えば、レゾール樹脂、メチロール基含有尿素樹脂のような尿素樹脂;メチロール基含有メラミン樹脂のようなメラミン樹脂などが挙げられる。
【0020】
このような他の硬化剤を、上述のフェノール樹脂系硬化剤と併用する場合において、フェノール樹脂系硬化剤の含有量の下限値としては、全硬化剤に対して、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが特に好ましい。配合割合が上記範囲内であると、耐熱性を保持しつつ、良好な流動性を発現させることができる。また、フェノール樹脂系硬化剤の含有量の上限値としては、特に限定されないが、全硬化剤に対して、100質量%以下であることが好ましい。
【0021】
本発明に係る封止用樹脂組成物に対する硬化剤の含有量の合計値の下限値については、特に限定されるものではないが、封止用樹脂組成物全体に対して、0.8質量%以上であることが好ましく、1.5質量%以上であることがより好ましい。配合割合の下限値が上記範囲内であると、良好な硬化性を得ることができる。また、封止用樹脂組成物に対する硬化剤の含有量の合計値の上限値についても、特に限定されるものではないが、封止用樹脂組成物全体に対して、12質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
【0022】
なお、硬化剤としてのフェノール樹脂と、上述の多官能エポキシ樹脂とは、封止用樹脂組成物中のエポキシ基数(EP)と、全フェノール樹脂のフェノール性水酸基数(OH)との当量比(EP)/(OH)が、0.8以上、1.3以下となるように配合することが好ましい。当量比が上記範囲内であると、得られる封止用樹脂組成物を成形する際、十分な硬化特性を得ることができる。ただし、エポキシ樹脂と反応し得るフェノール樹脂以外の樹脂を併用する場合は、適宜当量比を調整すればよい。
【0023】
(硬化促進剤)
本実施形態の封止用樹脂組成物に用いられる硬化促進剤としては、イミダゾール類を用いることが好ましい。イミダゾール類は、たとえばイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシジメチルイミダゾール、および2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2'-メチルイミダゾリル(1')]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2'-ウンデシルイミダゾリル(1')]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2'-エチル-4-メチルイミダゾリル(1')]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2'-メチルイミダゾリル(1')]-エチル-s-トリアジンのイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物から選択される一種または二種以上を含むことができる。
【0024】
硬化促進剤としてイミダゾール類が用いられる場合、イミダゾール類の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して0.01質量%以上であることが好ましく、0.03質量%以上であることがより好ましく、0.05質量%以上であることがとくに好ましい。イミダゾール類の含有量を上記下限値以上とすることによって、得られる封止材の耐温度サイクル性をより効果的に向上させることができる。また、封止成形時における硬化性を向上させることも可能である。一方で、イミダゾール類の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して2.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがとくに好ましい。イミダゾール類の含有量を上記上限値以下とすることにより、トランスファーモールド時における流動性を向上させ、充填性の向上に寄与することができる。
【0025】
硬化促進剤は、イミダゾール類の他に、たとえば有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン等のイミダゾール類以外のアミン系硬化促進剤から選択される一種または二種以上をさらに含むことができる。
【0026】
封止用樹脂組成物で用いることができる有機ホスフィンとしては、例えばエチルホスフィン、フェニルホスフィン等の第1ホスフィン;ジメチルホスフィン、ジフェニルホスフィン等の第2ホスフィン;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の第3ホスフィンが挙げられる。
【0027】
封止用樹脂組成物で用いることができるテトラ置換ホスホニウム化合物としては、例えば下記一般式(4)で表される化合物等が挙げられる。
【0028】
上記一般式(4)において、Pはリン原子を表す。R
4、R
5、R
6およびR
7は芳香族基またはアルキル基を表す。Aはヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基から選ばれる官能基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸のアニオンを表す。AHはヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基から選ばれる官能基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸を表す。x、yは1~3の数、zは0~3の数であり、かつx=yである。
【0029】
一般式(4)で表される化合物は、例えば以下のようにして得られるがこれに限定されるものではない。まず、テトラ置換ホスホニウムハライドと芳香族有機酸と塩基を有機溶剤に混ぜ均一に混合し、その溶液系内に芳香族有機酸アニオンを発生させる。次いで水を加えると、一般式(4)で表される化合物を沈殿させることができる。一般式(4)で表される化合物において、リン原子に結合するR4、R5、R6およびR7がフェニル基であり、かつAHはヒドロキシル基を芳香環に有する化合物、すなわちフェノール類であり、かつAは該フェノール類のアニオンであるのが好ましい。上記フェノール類としては、フェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコールなどの単環式フェノール類、ナフトール、ジヒドロキシナフタレン、アントラキノールなどの縮合多環式フェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどのビスフェノール類、フェニルフェノール、ビフェノールなどの多環式フェノール類などが例示される。
【0030】
硬化促進剤として用いられるホスホベタイン化合物としては、例えば、下記一般式(5)で表される化合物等が挙げられる。
【0031】
上記一般式(5)において、R
8は炭素数1~3のアルキル基、R
9はヒドロキシル基を表す。fは0~5の数であり、gは0~3の数である。
【0032】
一般式(5)で表される化合物は、例えば以下のようにして得られる。まず、第三ホスフィンであるトリ芳香族置換ホスフィンとジアゾニウム塩とを接触させ、トリ芳香族置換ホスフィンとジアゾニウム塩が有するジアゾニウム基とを置換させる工程を経て得られる。しかしこれに限定されるものではない。
【0033】
硬化促進剤として用いられるホスフィン化合物とキノン化合物との付加物としては、例えば、下記一般式(6)で表される化合物等が挙げられる。
【0034】
上記一般式(6)において、Pはリン原子を表す。R
10、R
11およびR
12は炭素数1~12のアルキル基または炭素数6~12のアリール基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。R
13、R
14およびR
15は水素原子または炭素数1~12の炭化水素基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよく、R
14とR
15が結合して環状構造となっていてもよい。
【0035】
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるホスフィン化合物としては、例えばトリフェニルホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリナフチルホスフィン、トリス(ベンジル)ホスフィン等の芳香環に無置換またはアルキル基、アルコキシル基等の置換基が存在するものが好ましく、アルキル基、アルコキシル基等の置換基としては1~6の炭素数を有するものが挙げられる。入手しやすさの観点からはトリフェニルホスフィンが好ましい。
【0036】
また、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるキノン化合物としては、ベンゾキノン、アントラキノン類が挙げられ、中でもp-ベンゾキノンが保存安定性の点から好ましい。
【0037】
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物の製造方法としては、有機第三ホスフィンとベンゾキノン類の両者が溶解することができる溶媒中で接触、混合させることにより付加物を得ることができる。溶媒としてはアセトンやメチルエチルケトン等のケトン類で付加物への溶解性が低いものがよい。しかしこれに限定されるものではない。
【0038】
一般式(6)で表される化合物において、リン原子に結合するR10、R11およびR12がフェニル基であり、かつR13、R14およびR15が水素原子である化合物、すなわち1,4-ベンゾキノンとトリフェニルホスフィンを付加させた化合物が封止用樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率を低下させる点で好ましい。
【0039】
硬化促進剤として使用されるホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物としては、例えば下記一般式(7)で表される化合物等が挙げられる。
【0040】
上記一般式(7)において、Pはリン原子を表し、Siは珪素原子を表す。R
16、R
17、R
18およびR
19は、それぞれ、芳香環または複素環を有する有機基、あるいは脂肪族基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。式中R
20は、基Y
2およびY
3と結合する有機基である。式中R
21は、基Y
4およびY
5と結合する有機基である。Y
2およびY
3は、プロトン供与性基がプロトンを放出してなる基を表し、同一分子内の基Y
2およびY
3が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。Y
4およびY
5はプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基を表し、同一分子内の基Y
4およびY
5が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。R
20、およびR
21は互いに同一であっても異なっていてもよく、Y
2、Y
3、Y
4およびY
5は互いに同一であっても異なっていてもよい。Z
1は芳香環または複素環を有する有機基、あるいは脂肪族基である。
【0041】
一般式(7)において、R16、R17、R18およびR19としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ナフチル基、ヒドロキシナフチル基、ベンジル基、メチル基、エチル基、n-ブチル基、n-オクチル基およびシクロヘキシル基等が挙げられ、これらの中でも、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシナフチル基等のアルキル基、アルコキシ基、水酸基などの置換基を有する芳香族基もしくは無置換の芳香族基がより好ましい。
【0042】
また、一般式(7)において、R20は、Y2およびY3と結合する有機基である。同様に、R21は、基Y4およびY5と結合する有機基である。Y2およびY3はプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基であり、同一分子内の基Y2およびY3が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。同様にY4およびY5はプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基であり、同一分子内の基Y4およびY5が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。基R20およびR21は互いに同一であっても異なっていてもよく、基Y2、Y3、Y4、およびY5は互いに同一であっても異なっていてもよい。このような一般式(7)中の-Y2-R20-Y3-、および-Y4-R21-Y5-で表される基は、プロトン供与体が、プロトンを2個放出してなる基で構成されるものであり、プロトン供与体としては、分子内にカルボキシル基、または水酸基を少なくとも2個有する有機酸が好ましく、さらには芳香環を構成する隣接する炭素にカルボキシル基または水酸基を少なくとも2個有する芳香族化合物が好ましく、芳香環を構成する隣接する炭素に水酸基を少なくとも2個有する芳香族化合物がより好ましく、例えば、カテコール、ピロガロール、1,2-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,2'-ビフェノール、1,1'-ビ-2-ナフトール、サリチル酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、クロラニル酸、タンニン酸、2-ヒドロキシベンジルアルコール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,2-プロパンジオールおよびグリセリン等が挙げられるが、これらの中でも、カテコール、1,2-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレンがより好ましい。
【0043】
また、一般式(7)中のZ1は、芳香環または複素環を有する有機基または脂肪族基を表し、これらの具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基およびオクチル基等の脂肪族炭化水素基や、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基およびビフェニル基等の芳香族炭化水素基、グリシジルオキシプロピル基、メルカプトプロピル基、アミノプロピル基等のグリシジルオキシ基、メルカプト基、アミノ基を有するアルキル基およびビニル基等の反応性置換基等が挙げられるが、これらの中でも、メチル基、エチル基、フェニル基、ナフチル基およびビフェニル基が熱安定性の面から、より好ましい。
【0044】
ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物の製造方法としては、メタノールを入れたフラスコに、フェニルトリメトキシシラン等のシラン化合物、2,3-ジヒドロキシナフタレン等のプロトン供与体を加えて溶かし、次に室温攪拌下ナトリウムメトキシド-メタノール溶液を滴下する。さらにそこへ予め用意したテトラフェニルホスホニウムブロマイド等のテトラ置換ホスホニウムハライドをメタノールに溶かした溶液を室温攪拌下滴下すると結晶が析出する。析出した結晶を濾過、水洗、真空乾燥すると、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物が得られる。しかし、これに限定されるものではない。
【0045】
硬化促進剤の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して0.05質量%以上であることが好ましく、0.08質量%以上であることがより好ましく、0.10質量%以上であることがとくに好ましい。硬化促進剤の含有量を上記下限値以上とすることにより、トランスファーモールド時における封止用樹脂組成物の硬化性を効果的に向上させることができる。一方で、硬化促進剤の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して2.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがとくに好ましい。硬化促進剤の含有量を上記上限値以下とすることにより、封止時における流動性を向上させ、充填性の向上に寄与することができる。
【0046】
(無機充填剤)
本実施形態の封止用樹脂組成物に用いられる無機充填剤としては、例えば、溶融破砕シリカ及び溶融球状シリカ等の溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、カオリン、タルク、クレイ、マイカ、ロックウール、ウォラストナイト、ガラスパウダー、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ガラスファイバー、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミ、カーボンブラック、グラファイト、二酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、セルロース、アラミド、木材、フェノール樹脂成形材料やエポキシ樹脂成形材料の硬化物を粉砕した粉砕粉等が挙げられる。この中でも、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶シリカ等のシリカが好ましく、溶融球状シリカがより好ましい。また、この中でも、炭酸カルシウムがコストの面で好ましい。無機充填剤は、一種で使用しても良いし、または二種以上を併用してもよい。
【0047】
無機充填剤の平均粒径D50は、好ましくは0.01μm以上、75μm以下であり、より好ましくは0.05μm以上、50μm以下である。無機充填剤の平均粒径を上記範囲内にすることにより、金型内の充填性が向上する。また、無機充填剤の平均粒径の上限値を75μm以下とすることにより、さらに充填性が向上する。平均粒径D50は、レーザー回折型測定装置RODOS SR型(SYMPATEC HEROS&RODOS)での体積換算平均粒径とした。
【0048】
また、本発明に係る封止用樹脂組成物においては、無機充填剤は、2種以上の異なる平均粒径D50を有する球状シリカを含むことができる。これにより、トランスファーモールドの際の流動性及び充填性が向上し得る。
【0049】
無機充填剤の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは65質量%以上であり、特に好ましくは75質量%以上である。下限値が上記範囲内であると、得られる封止用樹脂組成物の硬化に伴う吸湿量の増加や、強度の低下が低減できる。また、無機充填剤の量は、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは93質量%以下であり、より好ましくは91質量%以下であり、さらに好ましくは90質量%以下である。上限値が上記範囲内であると、得られる封止用樹脂組成物は良好な流動性を有するとともに、良好な成形性を備える。したがって、封止構造体の製造安定性が高まり、歩留まり及び耐久性のバランスに優れた構造体が得られる。
【0050】
また、無機充填剤として、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶シリカ等のシリカを用いる場合、シリカの含有量が、封止用樹脂組成物全体に対して、40質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。下限値が上記範囲内であると、トランスファーモールド時の封止用樹脂組成物の流動性と熱膨張率のバランスが良好となる。
【0051】
また、無機充填剤と、後述するような水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物や、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、三酸化アンチモン等の無機系難燃剤とを併用する場合には、これらの無機系難燃剤と上記無機充填剤の合計量は、上記無機充填剤の含有量の範囲内とすることが望ましい。
【0052】
(ワックス)
本実施形態に係る封止用樹脂組成物は、ワックスを含む。本実施形態の封止用樹脂組成物は、ワックスを含むことにより、その成形収縮率が、0.1%以下の程度まで低減される。本実施形態の封止用樹脂組成物に用いられるワックスとしては、融点が30℃から90℃のワックスが好ましく用いられる。このようなワックスを含むことにより、封止用樹脂組成物は、トランスファーモールドで適用される温度下で、溶融性が良好であり、よって封止時における流動性が向上するとともに、充填性が向上し得る。このようなワックスとしては、カルナバワックス等の天然ワックス、モンタン酸エステルワックスや酸化ポリエチレンワックス等の合成ワックス、ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸およびその金属塩類が挙げられる。
【0053】
ワックスの配合量は、封止用樹脂組成物全体に対して、例えば、0.05質量%以上、5.0質量%以下である。ワックスの配合量の下限値は、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは、0.5質量%以上であり、より好ましくは、1.0質量%以上である。ワックスの配合量の上限値は、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは、4.5質量%以下であり、より好ましくは4.0質量%以下である。上記範囲でワックスを配合することにより、得られる封止用樹脂組成物は、トランスファーモールド時において優れた流動性と、充填性とを有する。
【0054】
(その他の添加剤)
本実施形態の封止用樹脂組成物は、上記成分に加え、必要に応じてさらに、カップリング剤、密着助剤、着色剤、イオン捕捉剤、難燃剤、酸化防止剤等の他の添加剤を含み得る。
【0055】
(カップリング剤)
本発明に係る封止用樹脂組成物は、エポキシ樹脂と無機充填剤との密着性を向上させるため、シランカップリング剤等のカップリング剤を含んでもよい。カップリング剤例えばエポキシシラン、アミノシラン、ウレイドシラン、メルカプトシラン等が挙げられる。
【0056】
エポキシシランとしては、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。また、アミノシランとしては、例えば、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニルγ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニルγ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-6-(アミノヘキシル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(3-(トリメトキシシリルプロピル)-1,3-ベンゼンジメタナン等が挙げられる。また、ウレイドシランとしては、例えば、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。アミノシランの1級アミノ部位をケトン又はアルデヒドを反応させて保護した潜在性アミノシランカップリング剤として用いてもよい。また、アミノシランとしては、2級アミノ基を有してもよい。また、メルカプトシランとしては、例えば、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランのほか、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドのような熱分解することによってメルカプトシランカップリング剤と同様の機能を発現するシランカップリング剤など、が挙げられる。またこれらのシランカップリング剤は予め加水分解反応させたものを配合してもよい。これらのシランカップリング剤は1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0057】
連続成形性という観点では、メルカプトシランが好ましく、流動性の観点では、アミノシランが好ましく、密着性という観点ではエポキシシランが好ましい。
【0058】
本発明に係る封止用樹脂組成物に用いることができるシランカップリング剤等のカップリング剤の含有量の下限値としては、封止用樹脂組成物全体に対して、0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.05質量%以上、特に好ましくは0.1質量%以上である。シランカップリング剤等のカップリング剤の含有量の下限値が上記範囲内であれば、エポキシ樹脂と無機充填剤との界面強度が低下することがなく、良好な耐振動性を得ることができる。また、シランカップリング剤等のカップリング剤の含有量の上限値としては、封止用樹脂組成物全体に対して、1質量%以下が好ましく、より好ましくは0.8質量%以下、特に好ましくは0.6質量%以下である。シランカップリング剤等のカップリング剤の含有量の上限値が上記範囲内であれば、エポキシ樹脂と無機充填剤との界面強度が低下することがなく、良好な耐振動性を得ることができる。また、シランカップリング剤等のカップリング剤の含有量が上記範囲内であれば、封止用樹脂組成物の硬化物の吸水性が増大することが防止される。
【0059】
(密着助剤)
本発明に係る封止用樹脂組成物は、これを硬化して得られる封止部と基板との密着性を向上させるために、密着助剤を含んでいてもよい。密着助剤としては、例えば、トリアゾール化合物等が挙げられ、このトリアゾール化合物としては、1,2,4-トリアゾール環を有する化合物、1,2,3-トリアゾール環を有する化合物が挙げられる。具体的な化合物としては、例えば、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、4-アミノ-1,2,3-トリアゾール、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール-5-カルボン酸、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、4-メルカプト-1,2,3-トリアゾール、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール、3,5-ジメルカプト-1,2,4-トリアゾール、4,5-ジメルカプト-1,2,3-トリアゾール、3-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、4-アミノ-5-メルカプト-1,2,3-トリアゾール、3-ヒドラジノ-4-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾールおよび5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール-3-メタノール等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合せて用いることができる。これらのうち、少なくとも1つのメルカプト基を有する化合物であることが好ましい。
【0060】
封止用樹脂組成物中における密着助剤の含有量は、封止用樹脂組成物の全質量に対して、0.01~2質量%であることが好ましく、0.03~1質量%であることがより好ましい。密着助剤の含有量をかかる範囲内に設定することにより、上述の効果をより顕著に発揮させることができる
【0061】
(着色剤)
本実施形態の封止用樹脂組成物に用いられる着色剤としては、カーボンブラック、ベンガラ、酸化チタン、フタロシアニン、ペリレンブラック等が挙げられる。
【0062】
(イオン捕捉剤)
本実施形態の封止用樹脂組成物に用いられるイオン捕捉剤としては、ハイドロタルサイト類;マグネシウム、アルミニウム、ビスマス、チタン、ジルコニウムから選ばれる元素の含水酸化物等が挙げられる。
封止用樹脂組成物中のイオン捕捉剤の含有量は、半導体装置の信頼性を向上させる観点から、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.03質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上であり、また、好ましくは2.0質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以下である。
【0063】
(難燃剤)
本実施形態の封止用樹脂組成物に用いられる難燃剤としては、臭素化エポキシ樹脂、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ほう酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、フォスファゼン等が挙げられる。
【0064】
(酸化防止剤)
本実施形態の封止用樹脂組成物に用いられる酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物およびチオエーテル系化合物が挙げられる。
【0065】
[封止用樹脂組成物の製造方法]
本実施形態の封止用樹脂組成物は、上記成分および必要に応じて用いられる添加剤を所定の含有量となるように、タンブラーミキサーやヘンシェルミキサー等のミキサーやブレンダー等で均一に混合した後、ニーダー、ロール、ディスパー、アジホモミキサー、及びプラネタリーミキサー等で加熱しながら混練することにより製造できる。なお、混練時の温度としては、硬化反応が生じない温度範囲である必要があり、エポキシ樹脂および硬化剤の組成にもよるが、70~150℃程度で溶融混練することが好ましい。混練後に冷却固化し、混練物を、粉粒状、顆粒状、タブレット状、またはシート状に加工してもよい。
【0066】
粉粒状の樹脂組成物を得る方法としては、たとえば、粉砕装置により、混練物を粉砕する方法が挙げられる。混練物をシートに成形したものを粉砕してもよい。粉砕装置としては、たとえば、ハンマーミル、石臼式磨砕機、ロールクラッシャーを用いることができる。
【0067】
顆粒状の樹脂組成物を得る方法としては、たとえば、混練装置の出口に小径を有するダイスを設置して、ダイスから吐出される溶融状態の混練物を、カッター等で所定の長さに切断するというホットカット法に代表される造粒法を用いることもできる。この場合、ホットカット法等の造粒法により顆粒状または粉末状の樹脂組成物を得た後、樹脂組成物の温度があまり下がらないうちに脱気を行うことが好ましい。
【0068】
タブレット状の樹脂組成物を得る方法としては、たとえば、上述の粉粒状の樹脂組成物を、スクリューとスクリューの先端に設けられたダイスとを備える押出機に供給し、樹脂組成物を加熱して溶融し、その後、このダイスから、スクリューの回転により、溶融した樹脂組成物を押し出し、押し出された樹脂組成物を、所定の長さに切断して、タブレット状の樹脂組成物を得る手法を用いることができる。
【0069】
上記成分を所定の量で含む本実施形態の封止用樹脂組成物は、成形収縮率が、0.1%以下である。ここで、成形収縮率は、封止用樹脂組成物の硬化物のJIS K6911に準拠した方法にて測定される。封止樹脂組成物の成形収縮率は、好ましくは、0.09%以下であり、より好ましくは、0.08%以下である。成形収縮率が上記値以下であることにより、得られる封止構造体の封止樹脂側への反りが低減され、よって信頼性に優れる片面封止型構造体が得られる。
【0070】
上記成分を所定の量で含む本実施形態の封止用樹脂組成物は、その硬化物のガラス転移温度が、例えば、150℃~250℃であり、好ましくは、180~220℃である。
【0071】
上記成分を所定の量で含む本実施形態の封止用樹脂組成物は、その硬化物の40℃から80℃における線膨張係数が、例えば、9ppm/K以上13ppm/K以下であり、好ましくは、9ppm/K以上12ppm/K以下である。本実施形態の封止用樹脂組成物は、熱時における熱膨張係数が抑制されているため、樹脂の硬化過程における加熱や冷却時に生じる変形(熱膨張、熱収縮)を抑制することができ、結果として、得られる片面封止構造体の封止樹脂側への反りが低減され、よって信頼性に優れる片面封止型構造体が得られる。
【0072】
[封止用樹脂組成物の用途]
本実施形態の封止用樹脂組成物は、片面封止型構造体を製造するために用いられる。より詳細には、本実施形態の片面封止型構造体は、マザーボードの一方の面に電子装置を搭載し、マザーボードのこの電子装置が搭載された面を本実施形態の樹脂組成物で封止することにより製造される。
【0073】
本実施形態の片面封止型構造体の製造方法は、本実施形態の封止用樹脂組成物を用いて、電子装置が搭載された比較的大面積のマザーボードを一括封止する工程を含む。より詳細には、まず電子装置を実装したマザーボードを、所定の温度(例えば、150~190℃)の金型内に配置する。次に、プランジャにより本実施形態の封止用樹脂組成物を予め定めた成形圧力(たとえば、3~10MPa)で金型内(充填空間)に注入充填し、たとえば、90~180秒間の樹脂封止成形をおこなう。その後、必要に応じて所定の硬化温度及び硬化時間(例えば、150~190℃、2~6時間)でポストキュアを行う。これにより片面封止構造体が得られる。
【0074】
本実施形態の片面封止構造体の製造方法に用いられる大面積のマザーボードは、本発明では直径150mm以上、または縦150mm以上横150mm以上の四角形の寸法を有する基板を言う。具体的な実施形態において、縦150~400mm、横150~400mmの基板が用いられる。基板の厚さは、成型時にサポート機能を有する程度であればよく、好ましくは30μm~5,000μmであり、さらに好ましくは50μm~3,000μmである。マザーボードの材料としては、表面が絶縁処理された銅やアルミ基板、ガラスエポキシ基板、BT(ビスマレイミドトリアジン)樹脂基板、FRP(繊維強化プラスチック)基板などが挙げられ、特に、ガラスエポキシ基板やBT樹脂基板、セラミックス基板が好ましく用いられる。
【0075】
本実施形態の方法により得られる片面封止構造体において、封止樹脂の厚さは、マザーボードに搭載される電子装置の寸法により適宜調整することができ、例えば、0.1~10mmとすることができ、0.2~8mmが好ましい。
【0076】
本実施形態の方法により得られる片面封止型構造体は、たとえば、ハイブリッド車、燃料電池車および電気自動車などの自動車に搭載することができる。
【0077】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、実施形態の例を付記する。
1. 少なくとも1つの電子装置が搭載されたマザーボードを片面封止して、片面封止型構造体を製造するために用いられる封止用樹脂組成物であって、
当該封止用樹脂組成物は、3官能以上のエポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、無機充填材、およびワックスを含み、
当該封止用樹脂組成物の成形収縮率は、0.1%以下である、封止用樹脂組成物。
2. ガラス転移温度Tgが、150℃以上250℃以下である、1.に記載の封止用樹脂組成物。
3. 40℃から80℃における平均線膨張係数が、9~13ppm/Kである、1.または2.に記載の封止用樹脂組成物。
4. 前記ワックスが、封止用樹脂組成物全体に対して、0.05質量%以上5質量%以下の量である、1.乃至3.のいずれかに記載の封止用樹脂組成物。
5. 前記無機充填材が、封止用樹脂組成物全体に対して、80質量%以上90質量%以下の量である、1.乃至4.のいずれかに記載の封止用樹脂組成物。
6. トリアゾールをさらに含む、1.乃至5.のいずれかに記載の封止用樹脂組成物。
7. タブレット形状である、1.乃至6.のいずれかに記載の封止用樹脂組成物。
8. マザーボードと、前記マザーボードの一方の面に搭載された電子装置と、を備える構造体を準備する工程と、
前記構造体の前記電子装置が搭載された面を、封止用樹脂組成物で封止して、片面封止構造体を得る工程と、
を含む、片面封止構造体の製造方法であって、
前記封止用樹脂組成物は、3官能以上のエポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、無機充填材、およびワックスを含み、
前記封止用樹脂組成物の成形収縮率は、0.1%以下である、片面封止構造体の製造方法。
9. マザーボードと、前記マザーボードの一方の面に搭載された電子装置と、を備える構造体を準備する前記工程が、前記マザーボードを表面処理する工程を含む、8.に記載の片面封止構造体の製造方法。
10. 前記封止用樹脂組成物のガラス転移温度Tgが、150℃以上250℃以下である、8.または9.に記載の片面封止構造体の製造方法。
11. 前記封止用樹脂組成物の40℃から80℃における平均線膨張係数が、9~13ppm/Kである、8.乃至10.のいずれかに記載の片面封止構造体の製造方法。
12. 前記封止用樹脂組成物中の前記ワックスの含有量が、当該封止用樹脂組成物全体に対して、0.05質量%以上5質量%以下である、8.乃至11.のいずれかに記載の片面封止構造体の製造方法。
13. 前記封止用樹脂組成物中の前記無機充填材の含有量が、前記封止用樹脂組成物全体に対して、80質量%以上90質量%以下である、8.乃至12.のいずれかに記載の片面封止構造体の製造方法。
14. 前記封止用樹脂組成物がトリアゾールをさらに含む、8.乃至13.のいずれかに記載の片面封止構造体の製造方法。
15. 前記封止用樹脂組成物がタブレット形状である、8.乃至14.のいずれかに記載の片面封止構造体の製造方法。
【実施例】
【0078】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0079】
実施例で使用した成分を以下に記載する。
(エポキシ樹脂)
-エポキシ樹脂1:トリフェニルメタン型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、E-1032H60)
-エポキシ樹脂2:ビフェニル型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、YX4000K)
-エポキシ樹脂3:ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、NC-3000)
-エポキシ樹脂4:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、YL6810)
【0080】
(硬化剤)
-硬化剤1:トリスフェニルメタン型フェノールノボラック樹脂(明和化成株式会社製、MEH-7500)
-硬化剤2:ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂(明和化成株式会社製、MEH-7851SS)
-硬化剤3:ノボラック型フェノール樹脂(住友ベークライト株式会社製、PR-HF-3)
【0081】
(硬化促進剤)
-硬化促進剤1:テトラフェニルホスフォニウム4,4-スルフォニルジフェノラート
-硬化促進剤2:トリフェニルホスフィン(ケイ・アイ化成株式会社製、PP-360)
-硬化促進剤3:テトラフェニルホスフォニウム2,3-ジヒドロキシナフタレート
【0082】
(無機充填剤)
-無機充填剤1:シリカフィラー(アドマテックス社製、SO-25R、平均径0.5μm)
-無機充填剤2:シリカフィラー(デンカ社製、FB-105、平均径11μm)
-無機充填剤3:シリカフィラー(デンカ社製、FB-950、平均径23μm)
【0083】
(ワックス)
-ワックス1:カルナバワックス(東亞合成社製、TOWAX-132)
-ワックス2:ジエタノールアミン・ジモンタン酸エステル(伊藤製油社製、ITOHWAX TP NC-133)
-ワックス3:ステアリン酸(日油社製、SR-サクラ)
【0084】
(カップリング剤)
-カップリング剤1:N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製、CF-4083)
-カップリング剤2:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(JNC株式会社製、GPS-M)
-カップリング剤3:γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、KBM803P)
(密着助剤)
-密着助剤1:3-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール
(着色剤)
-着色剤1:カーボンブラック(三菱ケミカル株式会社製、カーボン#5)
(硬化抑制剤)
-硬化抑制剤1:2,3-ジヒドロキシナフタレン
(イオン捕捉剤)
-イオン捕捉剤1:ハイドロタルサイト(協和化学社製、DHT-4H)
(低応力剤)
-低応力剤1:シリコーンゴム(東レ・ダウコーニング株式会社製、CF-2152)
-低応力剤2:ブタジエン・アクリロニトリル・2.3-エポキシプロピル=メタクリラート・ジビニルベンゼン共重合物とタルクの混合物(JSR社製)
-低応力剤3:エポキシ・ポリエーテル変性シリコーンオイル(東レ・ダウコーニング社製、FZ-3730)
【0085】
(実施例1~3、比較例1~3)
上記の原材料を用い、表1の組成(質量部)となるように各成分を、ミキサーを用いて15~28℃で混合した。次いで、得られた混合物を、70~100℃でロール混練後、冷却、粉砕して、各封止樹脂組成物を得た。
【0086】
<物性の測定および評価>
得られた各封止用樹脂組成物について、下記の物性の測定および下記項目の評価・測定を行った。結果を表1に示す。
【0087】
(成形収縮率)
各例で得られた封止用樹脂組成物の硬化物の成形収縮率を以下のように測定した。
低圧トランスファー成形機(コータキ精機社製、KTS-30)を用いて、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒の条件で、各樹脂組成物を注入成形し、直径90mm×厚さ5mmの成形品を得た。次に、得られた成形品を、175℃、4時間の条件で後硬化(ポストキュア)して、各樹脂組成物の硬化物からなる試験片を得た。次に、JIS K6911に準拠した方法で得られた試験片の成形収縮率を測定した。なお、成形収縮率の単位は、%である。
【0088】
(ガラス転移温度)
各例で得られた封止用樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度を以下のように測定した。
まず、低圧トランスファー成形機(コータキ精機社製、「KTS-15」)を用いて金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒で樹脂組成物を注入成形し、10mm×4mm×4mmの試験片を得た。次いで、得られた試験片を175℃、4時間で後硬化した後、熱機械分析装置(セイコー電子工業社製、TMA100)を用いて、測定温度範囲0℃~320℃、昇温速度5℃/分の条件下で測定をおこなった。そして、この測定結果から、ガラス転移温度(℃)を算出した。
【0089】
(線膨張係数)
各例で得られた樹脂組成物の硬化物を、熱機械分析装置(セイコーインスツル株式会社製、TMA100)にセットし、温度範囲0℃~320℃、昇温速度5℃/分の条件下で測定を行った。測定データを解析し、40℃から80℃にわたる温度領域での、平均線膨張係数を求めた。平均線膨張係数の単位は[ppm/K]である。
【0090】
(流動性(スパイラルフロー))
各例で得られた樹脂組成物に対しスパイラルフロー測定を行った。スパイラルフロー測定は、低圧トランスファー成形機(コータキ精機社製、「KTS-15」)を用いて、EMMI-1-66に準じたスパイラルフロー測定用の金型に、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒の条件で封止用樹脂組成物を注入し、流動長(cm)を測定することにより行った。
【0091】
(反り量)
実施例および比較例について、封止用樹脂組成物を用いて以下のように封止した基板を作製し、封止した基板の反りを評価した。
基板(6層200mm×100mm×1.6mm厚、残銅率60~70%のPCB基板、外部接続のためのコネクタ搭載、Tg150℃以上、弾性率24.3GPa、CTE14ppm/K、ポアソン比0.3)の回路面のみに対し、金型温度175℃、成形圧力6MPa、硬化時間5分の条件で、成形樹脂厚4mmとなるように封止用樹脂組成物をトランスファー成形し、封止した基板を得た。次いで得られた封止した基板を175℃、4時間で後硬化した後、封止した基板を上に凸となるように静置し、最高位置と最低位置の高さの差を測定した。この差を封止した基板の反り量とした。
【0092】
【0093】
実施例の樹脂組成物を封止材として使用して製造した基板は、反り量が低減されていた。よって、信頼性に優れる片面封止型構造体を製造するために好適に使用できる。
【0094】
この出願は、2022年3月25日に出願された日本出願特願2022-050381号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。