IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】超音波トランスデューサ
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/32 20060101AFI20240910BHJP
   H04R 17/00 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
H04R1/32 330
H04R17/00 330L
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023562236
(86)(22)【出願日】2022-11-18
(86)【国際出願番号】 JP2022042880
(87)【国際公開番号】W WO2023203805
(87)【国際公開日】2023-10-26
【審査請求日】2023-10-10
(31)【優先権主張番号】P 2022068487
(32)【優先日】2022-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩誠
【審査官】▲高▼橋 真之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-55292(JP,A)
【文献】特開2004-297219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/32
H04R 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付面を有する外装部と、
前記取付面に取り付けられ、前記取付面に沿って延在している金属板部と、
前記金属板部に取り付けられた筒体と、
前記筒体に取り付けられており、前記金属板部に間隔をあけて対向する超音波振動子と、
前記金属板部に取り付けられており、前記筒体に一定の間隔をあけて前記筒体を挟んでいる拘束部とを備え、
前記取付面に直交する第1方向から見て前記外装部および前記金属板部における前記筒体の内側に位置する部分であるメイン振動部は、前記超音波振動子とは前記第1方向において逆位相で共振振動し、
前記第1方向から見て、前記第1方向と直交する第2方向において前記外装部および前記金属板部における前記筒体の外側かつ前記拘束部の内側に位置する部分であるサブ振動部は、前記メイン振動部とは前記第1方向において逆位相で共振振動し、
前記第1方向から見て、前記金属板部の前記サブ振動部となる位置に、前記金属板部を貫通しつつ前記第1方向および前記第2方向の各々に直交する第3方向に延在するスリットが形成されており、
前記第1方向から見て、前記筒体と前記拘束部との間における前記第2方向の位置範囲において前記筒体の外縁を0%の位置とするとともに前記拘束部の内縁を100%の位置としたとき、前記スリットの中心は、35%以上の位置に配置されている、超音波トランスデューサ。
【請求項2】
取付面を有する外装部と、
前記取付面に取り付けられ、前記取付面に沿って延在している金属板部と、
前記金属板部に取り付けられた筒体と、
前記筒体に取り付けられており、前記金属板部に間隔をあけて対向する超音波振動子と、
前記金属板部に取り付けられており、前記筒体に一定の間隔をあけて前記筒体を挟んでいる拘束部とを備え、
前記取付面に直交する第1方向から見て前記外装部および前記金属板部における前記筒体の内側に位置する部分であるメイン振動部は、前記超音波振動子とは前記第1方向において逆位相で共振振動し、
前記第1方向から見て、前記第1方向と直交する第2方向において前記外装部および前記金属板部における前記筒体の外側かつ前記拘束部の内側に位置する部分であるサブ振動部は、前記メイン振動部とは前記第1方向において逆位相で共振振動し、
前記金属板部における外装部側の第1面とは反対の第2面において、前記第1方向から見て前記金属板部の前記サブ振動部となる位置に、前記第1方向および前記第2方向の各々に直交する第3方向に延在する第1有底溝が形成されており、
前記第1方向から見て、前記筒体と前記拘束部との間における前記第2方向の位置範囲において前記筒体の外縁を0%の位置とするとともに前記拘束部の内縁を100%の位置としたとき、前記第1有底溝の中心は、25%以上60%以下の位置または83%以上の位置に配置されている、超音波トランスデューサ。
【請求項3】
取付面を有する外装部と、
前記取付面に取り付けられ、前記取付面に沿って延在している金属板部と、
前記金属板部に取り付けられた筒体と、
前記筒体に取り付けられており、前記金属板部に間隔をあけて対向する超音波振動子と、
前記金属板部に取り付けられており、前記筒体に一定の間隔をあけて前記筒体を挟んでいる拘束部とを備え、
前記取付面に直交する第1方向から見て前記外装部および前記金属板部における前記筒体の内側に位置する部分であるメイン振動部は、前記超音波振動子とは前記第1方向において逆位相で共振振動し、
前記第1方向から見て、前記第1方向と直交する第2方向において前記外装部および前記金属板部における前記筒体の外側かつ前記拘束部の内側に位置する部分であるサブ振動部は、前記メイン振動部とは前記第1方向において逆位相で共振振動し、
前記金属板部における外装部側の第1面において、前記第1方向から見て前記金属板部の前記サブ振動部となる位置に、前記第1方向および前記第2方向の各々に直交する第3方向に延在する第2有底溝が形成されており、
前記第1方向から見て、前記筒体と前記拘束部との間における前記第2方向の位置範囲において前記筒体の外縁を0%の位置とするとともに前記拘束部の内縁を100%の位置としたとき、前記第2有底溝の中心は、16%以上76%以下の位置または94%以上の位置に配置されている、超音波トランスデューサ。
【請求項4】
前記第1面において、前記第1方向から見て前記金属板部の前記サブ振動部となる位置に、前記第3方向に延在する第2有底溝が形成されており、
前記第1方向から見て、前記第2有底溝の中心は、16%以上76%以下の位置または94%以上の位置に配置されている、請求項2に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項5】
前記第1有底溝として、前記第1方向から見て中心が25%以上60%以下の位置に配置されている第1有底溝および中心が83%以上の位置に配置されている第1有底溝の各々が前記第2面に形成されている、請求項4に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項6】
前記拘束部の基本モードの共振周波数は、前記超音波振動子の共振周波数に比較して20%以上低い周波数であり、
前記拘束部の高次モードの共振周波数は、前記超音波振動子の共振周波数に比較して20%以上高い周波数である、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項7】
前記超音波振動子は、積層された2つの圧電体を含み、前記2つの圧電体の各々は、第1電極および第2電極に挟まれて交流電圧を印加可能に構成されており、
前記第1電極は、接地電位に固定されており、
前記筒体および前記拘束部の各々は、金属で構成されており、
前記第1電極、前記筒体、前記金属板部および前記拘束部は、機械的かつ電気的に互いに接続されて電磁シールドを構成している、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項8】
前記外装部は、ポリプロピレンを主成分とする樹脂で構成されており、
前記金属板部は、アルミニウム合金で構成されており、
前記メイン振動部および前記サブ振動部の各々を構成する部分の前記外装部の厚みに対する、前記金属板部の厚みの比率は100%以上160%以下である、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項9】
前記外装部は、ポリプロピレン主成分とする樹脂で構成されており、
前記金属板部は、ステンレス鋼で構成されており、
前記メイン振動部および前記サブ振動部の各々を構成する部分の前記外装部の厚みに対する、前記金属板部の厚みの比率は60%以上100%以下である、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項10】
前記金属板部、前記筒体および前記拘束部は、一体で形成されている、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の超音波トランスデューサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波トランスデューサに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波センサの構成を開示した先行文献として、特開2007-142967号公報(特許文献1)がある。特許文献1に記載された超音波センサは、車両用バンパまたは樹脂部分の内面側に取り付けられる。超音波センサは、超音波振動子と、筐体とを有する。超音波振動子は、超音波を送受信する。筐体は、超音波振動子を収容する。筐体の底面部の内面に超音波振動子を接触させて固定するとともに、当該底面部の外面が、車両用バンパまたは樹脂部分の内面に当接する。
【0003】
筐体の底面部の一部に、超音波伝達部が形成されている。超音波伝達部は、車両用バンパまたは樹脂部分と、超音波振動子とに接触するように配置されている。超音波伝達部は、筐体の材質とは異なる材質であって、超音波振動子の音響インピーダンスと、車両用バンパまたは樹脂部分の音響インピーダンスとの中間の音響インピーダンスを有する材質からなる。超音波センサは、超音波の送受信を、超音波伝達部および車両用バンパまたは樹脂部分を介して行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-142967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
超音波トランスデューサにおいては、指向性の角度範囲を広く確保しつつ小型化することが求められている。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであって、指向性の角度範囲を広く確保しつつ小型化することができる、超音波トランスデューサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1局面に基づく超音波トランスデューサは、外装部と、金属板部と、筒体と、超音波振動子と、拘束部とを備える。外装部は、取付面を有する。金属板部は、上記取付面に取り付けられ、上記取付面に沿って延在している。筒体は、金属板部に取り付けられている。超音波振動子は、筒体に取り付けられており、金属板部に間隔をあけて対向する。拘束部は、金属板部に取り付けられており、筒体に一定の間隔をあけて筒体を挟んでいる。上記取付面に直交する第1方向から見て外装部および金属板部における筒体の内側に位置する部分であるメイン振動部は、超音波振動子とは上記第1方向において逆位相で共振振動する。上記第1方向から見て、上記第1方向と直交する第2方向において外装部および金属板部における筒体の外側かつ拘束部の内側に位置する部分であるサブ振動部は、メイン振動部とは上記第1方向において逆位相で共振振動する。上記第1方向から見て、金属板部のサブ振動部となる位置に、金属板部を貫通しつつ筒体の上記第1方向および上記第2方向の各々に直交する第3方向に延在するスリットが形成されている。上記第1方向から見て、筒体と拘束部との間における上記第2方向の位置範囲において筒体の外縁を0%の位置とするとともに拘束部の内縁を100%の位置としたとき、スリットの中心は、35%以上の位置に配置されている。
【0008】
本発明の第2局面に基づく超音波トランスデューサは、外装部と、金属板部と、筒体と、超音波振動子と、拘束部とを備える。外装部は、取付面を有する。金属板部は、上記取付面に取り付けられ、上記取付面に沿って延在している。筒体は、金属板部に取り付けられている。超音波振動子は、筒体に取り付けられており、金属板部に間隔をあけて対向する。拘束部は、金属板部に取り付けられており、筒体に一定の間隔をあけて筒体を挟んでいる。上記取付面に直交する第1方向から見て外装部および金属板部における筒体の内側に位置する部分であるメイン振動部は、超音波振動子とは上記第1方向において逆位相で共振振動する。上記第1方向から見て、上記第1方向と直交する第2方向において外装部および金属板部における筒体の外側かつ拘束部の内側に位置する部分であるサブ振動部は、メイン振動部とは上記第1方向において逆位相で共振振動する。金属板部における外装部側の第1面とは反対の第2面において、上記第1方向から見て金属板部のサブ振動部となる位置に、上記第1方向および上記第2方向の各々に直交する第3方向に延在する第1有底溝が形成されている。上記第1方向から見て、筒体と拘束部との間における上記第2方向の位置範囲において筒体の外縁を0%の位置とするとともに拘束部の内縁を100%の位置としたとき、第1有底溝の中心は、25%以上60%以下の位置または83%以上の位置に配置されている。
【0009】
本発明の第3局面に基づく超音波トランスデューサは、外装部と、金属板部と、筒体と、超音波振動子と、拘束部とを備える。外装部は、取付面を有する。金属板部は、上記取付面に取り付けられ、上記取付面に沿って延在している。筒体は、金属板部に取り付けられている。超音波振動子は、筒体に取り付けられており、金属板部に間隔をあけて対向する。拘束部は、金属板部に取り付けられており、筒体に一定の間隔をあけて筒体を挟んでいる。上記取付面に直交する第1方向から見て外装部および金属板部における筒体の内側に位置する部分であるメイン振動部は、超音波振動子とは上記第1方向において逆位相で共振振動する。上記第1方向から見て、上記第1方向と直交する第2方向において外装部および金属板部における筒体の外側かつ拘束部の内側に位置する部分であるサブ振動部は、メイン振動部とは上記第1方向において逆位相で共振振動する。金属板部における外装部側の第1面において、上記第1方向から見て金属板部のサブ振動部となる位置に、上記第1方向および上記第2方向の各々に直交する第3方向に延在する第2有底溝が形成されている。上記第1方向から見て、筒体と拘束部との間における上記第2方向の位置範囲において筒体の外縁を0%の位置とするとともに拘束部の内縁を100%の位置としたとき、第2有底溝の中心は、16%以上76%以下の位置または94%以上の位置に配置されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、超音波トランスデューサにおいて指向性の角度範囲を広く確保しつつ小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態1に係る超音波トランスデューサの構成を示す縦断面図である。
図2】本発明の実施形態1に係る超音波トランスデューサの構成を示す分解斜視図である。
図3】本発明の実施形態1に係る超音波トランスデューサが備える超音波振動子の構成を示す断面図である。
図4】拘束部が基本モードで共振している状態を第1方向から見た平面図である。
図5】拘束部が高次モードで共振している状態を第1方向から見た平面図である。
図6】本発明の実施形態1に係る超音波トランスデューサが超音波を送信または受信しているときの、有限要素法を用いてシミュレーション解析した変位状態を示す斜視図である。
図7図6の超音波トランスデューサをVII-VII線矢印方向から見た断面図である。
図8】メイン音源の両側に、メイン音源とは逆位相で振動するサブ音源を配置した状態を示す模式図である。
図9】メイン音源とサブ音源との間の距離を4mm、6mmおよび8mmの3種類に変化させて、有限要素法を用いてシミュレーション解析した指向性を示すグラフである。
図10】スリットの中心の位置と、メイン振動部の共振振幅に対するサブ振動部の共振振幅の比率との関係を示すグラフである。
図11図10のデータから抽出した、スリットの中心が19%の位置、69%の位置または94%の位置である3つのケースについて、有限要素法を用いてシミュレーション解析した指向性を示すグラフである。
図12】サブ振動部の共振周波数からメイン振動部の共振周波数を引いた差分と、メイン振動部の共振振幅に対するサブ振動部の共振振幅の比率との関係を示すグラフである。
図13】筒体と拘束部との間隔と、メイン振動部の共振振幅に対するサブ振動部の共振振幅の比率との関係を示すグラフである。
図14】第1変形例に係る超音波振動子の構成を示す断面図である。
図15】第1変形例に係る超音波トランスデューサ、および、拘束部が絶縁材料で構成されている点のみ第1変形例に係る超音波トランスデューサとは異なる参考例に係る超音波トランスデューサの、各々における超音波振動子から生ずるノイズの大きさを示すグラフである。
図16】第2変形例に係る超音波振動子の構成を示す断面図である。
図17】第3変形例に係る超音波振動子の構成を示す断面図である。
図18】本発明の実施形態1の第4変形例に係る超音波トランスデューサの構成を示す縦断面図である。
図19】本発明の実施形態1の第5変形例に係る超音波トランスデューサの構成を示す縦断面図である。
図20】第1実施例に係る金属板部および拘束部を示す斜視図である。
図21】第2実施例に係る金属板部および拘束部を示す斜視図である。
図22】第3実施例に係る金属板部および拘束部を示す斜視図である。
図23】第4実施例に係る金属板部および拘束部を示す斜視図である。
図24】超音波振動子の長さに対するスリットの延在長さの比率と、メイン振動部の共振振幅に対するサブ振動部の共振振幅の比率との関係を示すグラフである。
図25】メイン振動部およびサブ振動部の各々を構成する部分の外装部の厚みに対する金属板部の厚みの比率と、超音波振動子の第1方向の単位変位当たりのサブ振動部に作用する応力およびサブ振動部の共振振幅の各々との関係を示すグラフである。
図26】本発明の実施形態1の第6変形例に係る超音波トランスデューサが備える、金属板部、筒体および拘束部を示す縦断面図である。
図27】本発明の実施形態2に係る超音波トランスデューサの構成を示す縦断面図である。
図28】第1有底溝の中心の位置と、メイン振動部の共振振幅に対するサブ振動部の共振振幅の比率との関係を示すグラフである。
図29図28のデータから抽出した、第1有底溝の中心が4%の位置、39%の位置、75%の位置または89%の位置である4つのケースについて、有限要素法を用いてシミュレーション解析した指向性を示すグラフである。
図30】本発明の実施形態2に係る超音波トランスデューサにおいて金属板部と拘束部とによって形成された内部空間がダンピング材で埋められた状態を示す断面図である。
図31】本発明の実施形態3に係る超音波トランスデューサの構成を示す縦断面図である。
図32】第2有底溝の中心の位置と、メイン振動部の共振振幅に対するサブ振動部の共振振幅の比率との関係を示すグラフである。
図33】第2有底溝の中心が4%の位置、46%の位置、82%の位置または96%の位置である4つのケースについて、有限要素法を用いてシミュレーション解析した指向性を示すグラフである。
図34】第1方向における第2面からの位置と、サブ振動部の共振振動時に金属板部の46%の位置に生ずる第2方向の応力との関係を示すグラフである。
図35】本発明の実施形態4に係る超音波トランスデューサの構成を示す縦断面図である。
図36】金属板部に有底溝が形成されていない超音波トランスデューサ、金属板部に第1有底溝のみが形成されている超音波トランスデューサ、金属板部に第2有底溝のみが形成されている超音波トランスデューサ、および、金属板部に第1有底溝および第2有底溝が形成されている超音波トランスデューサの、4つのケースについて、有限要素法を用いてシミュレーション解析した指向性を示すグラフである。
図37】本発明の実施形態4の変形例に係る超音波トランスデューサの構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の各実施形態に係る超音波トランスデューサについて図面を参照して説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0013】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る超音波トランスデューサの構成を示す縦断面図である。図2は、本発明の実施形態1に係る超音波トランスデューサの構成を示す分解斜視図である。図1および図2に示すように、本発明の実施形態1に係る超音波トランスデューサ100は、外装部110と、金属板部150と、筒体120と、超音波振動子130と、拘束部140とを備える。
【0014】
外装部110は、たとえば、車両用バンパ、パソコンもしくはスマートホンの筐体、家具、または、家の壁などの外装の一部である。外装部110は、内面111を有する。外装部110は、略平板状の形状を有している。外装部110は、ポリプロピレンなどを主成分とする樹脂で構成されている。外装部110の内面111に、凹部112が形成されている。外装部110の厚みは、たとえば、3mmであり、凹部112が形成されている部分の外装部110の厚みは、たとえば、1mmである。なお、凹部112は、外装部110に必ずしも形成されていなくてもよい。
【0015】
図中においては、外装部110の内面111に直交する第1方向をZ軸方向、第1方向に直交する第2方向をX軸方向、第1方向および第2方向の各々に直交する第3方向をY軸方向として示している。
【0016】
金属板部150は、平板状である。金属板部150は、外装部110の取付面である内面111に取り付けられ、外装部110の内面111に沿って延在している。本実施形態においては、金属板部150は、凹部112内に取り付けられている。金属板部150は、アルミニウムを含むジェラルミンなどのアルミニウム合金、または、ステンレス鋼などの金属で構成されている。金属板部150の厚みの寸法は、後述する第2方向(X軸方向)における筒体120と拘束部140との間隔の寸法より小さい。金属板部150の厚みは、たとえば、1mmである。
【0017】
筒体120は、第1方向(Z軸方向)から見て、金属板部150の中央部に取り付けられている。本実施形態においては、筒体120の第1方向(Z軸方向)の一端が、金属板部150に接着されている。筒体120は、矩形環状の形状を有している。筒体120は、第3方向(Y軸方向)に沿う長手方向を有し、第2方向(X軸方向)に沿う短手方向を有している。筒体120の軸方向は、第1方向(Z軸方向)に沿っている。
【0018】
筒体120は、樹脂、ガラスエポキシまたは金属などから形成されている。超音波トランスデューサ100の温度変化による特性変化を抑制する観点では、筒体120は金属で構成されていることが好ましい。一方、超音波トランスデューサ100が送信または受信する超音波を低周波数化する観点、および、超音波トランスデューサ100を小型化する観点では、筒体120は樹脂で構成されていることが好ましい。本実施形態においては、筒体120は、アルミニウムで構成されている。
【0019】
図3は、本発明の実施形態1に係る超音波トランスデューサが備える超音波振動子の構成を示す断面図である。図1に示すように、超音波振動子130は、筒体120に取り付けられており、金属板部150に間隔をあけて対向する。具体的には、超音波振動子130は、筒体120の第1方向(Z軸方向)の他端に取り付けられており、筒体120の内側空間を間に挟んで金属板部150と対向している。
【0020】
図1図3に示すように、超音波振動子130は、圧電体131を含む圧電素子である。図3に示すように、本実施形態においては、超音波振動子130は、積層された2つの圧電体131を含む。2つの圧電体131の分極方向Dpは、互いに異なっている。具体的には、2つの圧電体131の分極方向Dpは、第1方向(Z軸方向)において互いに向かい合っている。2つの圧電体131は、第1電極132および第2電極133に挟まれており、2つの圧電体131の間に中間電極134が配置されている。第1電極132および第2電極133は交流電圧を印加可能な処理回路10と電気的に接続されている。超音波振動子130は、いわゆる、シリーズ型のバイモルフ型圧電振動子である。2つの圧電体131の厚みの合計は、後述するメイン振動部およびサブ振動部の各々の横波の音速と超音波振動子130の横波の音速とを合わせる観点から、たとえば、1.05mm以上1.95mm以下である。
【0021】
拘束部140は、第1方向(Z軸方向)から見て、金属板部250の縁部に取り付けられている。拘束部140は、筒体120に一定の間隔をあけて筒体120を挟んでいる。本実施形態においては、拘束部140は、環状の形状を有している。具体的には、拘束部140は、矩形環状の形状を有している。拘束部140は、筒体120に間隔をあけつつ筒体120を外側から取り囲んでいる。ただし、拘束部140は、第2方向(X軸方向)において筒体120に一定の間隔をあけて筒体120を挟んでいればよい。拘束部140の第1方向(Z軸方向)の一端が、金属板部150に接着されている。
【0022】
拘束部140は、ステンレス鋼もしくはアルミニウムなどの金属、または、ガラスエポキシなどの剛性の高い材料で構成されている。金属板部150を間に挟んで拘束部140が取り付けられている部分の外装部110が拘束されることによって、後述するサブ振動部の振動をサブ振動部内に閉じ込めて安定させることができる。
【0023】
拘束部140の共振周波数が超音波振動子130の共振周波数に近い場合、超音波振動子130の共振に不要な振動が付加され、超音波トランスデューサ100の出力特性および入力特性が低下する。図4は、拘束部が基本モードで共振している状態を第1方向から見た平面図である。図5は、拘束部が高次モードで共振している状態を第1方向から見た平面図である。本実施形態においては、図4に示す拘束部140の基本モードの共振周波数は、超音波振動子130の共振周波数に比較して20%以上低い周波数である。図5に示す拘束部140の高次モードの共振周波数は、超音波振動子130の共振周波数に比較して20%以上高い周波数である。
【0024】
図6は、本発明の実施形態1に係る超音波トランスデューサが超音波を送信または受信しているときの、有限要素法を用いてシミュレーション解析した変位状態を示す斜視図である。図7は、図6の超音波トランスデューサをVII-VII線矢印方向から見た断面図である。シミュレーション解析条件として、凹部112が形成されている部分の外装部110の厚みを1mm、金属板部150の厚みを1mm、圧電体131の厚みを0.6mm、筒体120の外形の長手寸法を16mm、短手寸法を6mm、筒体120の第1方向(Z軸方向)の厚みを0.4mm、筒体120の第2方向(X軸方向)の幅を0.5mmとした。すなわち、筒体120の内形の長手寸法を15mm、短手寸法を5mmとした。拘束部140の第2方向(X軸方向)の幅を2mm、拘束部140の第1方向(Z軸方向)の厚みを3mmとした。筒体120と拘束部140との第2方向(X軸方向)における間隔を4mmとした。
【0025】
図6および図7に示すように、本発明の実施形態1に係る超音波トランスデューサ100は、第1方向(Z軸方向)から見て、外装部110および金属板部150における筒体120の内側に位置する部分であるメイン振動部110m、および、第2方向(X軸方向)において外装部110および金属板部150における筒体120の外側かつ拘束部140の内側に位置する部分であるサブ振動部110sを有する。メイン振動部110mおよびサブ振動部110sの各々は、外装部110において凹部112が形成されて薄くなっている部分と金属板部150とで構成されている。
【0026】
図7に示すように、メイン振動部110mは、超音波振動子130とは第1方向(Z軸方向)において逆位相で共振振動する。すなわち、メイン振動部110mの共振振動Bmの変位方向と、超音波振動子130の共振振動Bpの変位方向とは、第1方向(Z軸方向)において互いに反対向きである。
【0027】
サブ振動部110sは、メイン振動部110mとは第1方向(Z軸方向)において逆位相で共振振動する。すなわち、サブ振動部110sの共振振動Bsの変位方向と、メイン振動部110mの共振振動Bmの変位方向とは、第1方向(Z軸方向)において互いに反対向きである。
【0028】
図7に示すように、メイン振動部110mが超音波振動子130とは第1方向(Z軸方向)において逆位相で共振振動することにより、図6に示すように、外装部110におけるメイン振動部110mの周囲への振動漏れを小さくすることができる。これにより、超音波トランスデューサ100の指向性の角度範囲を広く確保することができる。また、超音波トランスデューサ100においては、サブ振動部110sにおいて上記の共振振動Bsを励起させることによって、高音圧の超音波の送信および高感度の超音波の受信の少なくとも一方を実現しつつ超音波トランスデューサ100の指向性の角度範囲を広く確保することができる。
【0029】
外装部110を構成するポリプロピレンなどの樹脂は、低温で硬く、高温で柔らかくなるため、ヤング率が温度によって大きく変化する。そのため、メイン振動部110mおよびサブ振動部110sの各々の共振周波数が温度によって変化する。
【0030】
本発明の実施形態1に係る超音波トランスデューサ100においては、メイン振動部110mおよびサブ振動部110sの各々が、温度によるヤング率の変化が外装部110より少ない金属板部150を含むことにより、メイン振動部110mおよびサブ振動部110sの各々の共振周波数の温度による変化を低減することができる。その結果、超音波トランスデューサ100の温度特性を安定させることができる。なお、金属板部150を構成する材料のヤング率が大きいほど、金属板部150の厚みを薄くすることができる。たとえば、ポリプロピレンを主成分とする樹脂で構成されている、メイン振動部110mおよびサブ振動部110sの各々を構成する部分の外装部110の厚み1mmに対して、アルミニウム合金で構成されている金属板部150の厚みは1mmまで、ステンレス鋼で構成されている金属板部150の厚みは0.6mmまで薄くすることが可能である。
【0031】
また、本発明の実施形態1に係る超音波トランスデューサ100においては、メイン振動部110mおよびサブ振動部110sの各々を構成する外装部110の厚みを薄くすることにより、メイン振動部110mおよびサブ振動部110sの各々の共振周波数の温度による変化を低減することができる。これによっても、超音波トランスデューサ100の温度特性を安定させることができる。たとえば、メイン振動部110mおよびサブ振動部110sの各々を構成する部分の外装部110の厚みは、金属板部150の厚みの2倍以下である。
【0032】
ここで、メイン音源の両側に、メイン音源とは逆位相で振動するサブ音源を配置した場合のメイン音源とサブ音源との間の距離と指向性との関係について有限要素法を用いてシミュレーション解析した結果について説明する。
【0033】
図8は、メイン音源の両側に、メイン音源とは逆位相で振動するサブ音源を配置した状態を示す模式図である。図8に示すように、メイン音源MSの両側に、メイン音源MSとは逆位相で振動するサブ音源SSを配置した簡素化したモデルを用いて、メイン音源MSとサブ音源SSとの間の距離Dをパラメータとして有限要素法を用いてシミュレーション解析した。メイン音源MSとサブ音源SSとの音圧比率は、9:1とした。メイン音源MSおよびサブ音源SSの各々の共振周波数は、54kHzとした。
【0034】
図9は、メイン音源とサブ音源との間の距離を4mm、6mmおよび8mmの3種類に変化させて、有限要素法を用いてシミュレーション解析した指向性を示すグラフである。図9においては、縦軸に、音圧レベル(dB)、円周軸に、メイン音源の中心からの放射角度(°)を示している。また、メイン音源MSとサブ音源SSとの間の距離Dが4mmのときの指向性を実線、距離Dが6mmのときの指向性を点線、距離Dが8mmのときの指向性を1点鎖線で示している。なお、上記の3つのケースの各々において、放射角度θ=0°の正面方向における音圧レベルを0dBとして、放射角度θと音圧レベルとの推移を示している。
【0035】
図9に示すように、音圧レベルが-3dBまで低下する放射角度の絶対値は、距離Dが4mmのときは54°、距離Dが6mmのときは47°、距離Dが8mmのときは38°であった。このように、メイン音源MSとサブ音源SSとの間の距離Dが短いほど、超音波トランスデューサの指向性の角度範囲が広くなる傾向が認められた。
【0036】
以下、本発明の一形態に係る超音波トランスデューサ100が備える金属板部150について詳細に説明する。
【0037】
図1に示すように、本発明の一形態に係る超音波トランスデューサ100においては、第1方向(Z軸方向)から見て、金属板部150のサブ振動部110sとなる位置に、金属板部150を貫通しつつ第3方向(Y軸方向)に延在するスリット151が形成されている。第1方向(Z軸方向)から見て、筒体120と拘束部140との間における第2方向(X軸方向)の位置範囲において筒体120の外縁を0%の位置とするとともに拘束部140の内縁を100%の位置としたとき、スリット151の中心151cは、35%以上の位置に配置されている。
【0038】
上記のように、メイン振動部110mおよびサブ振動部110sの各々が金属板部150を含むことにより超音波トランスデューサの温度特性を安定させることができる。超音波トランスデューサの温度特性をより安定させるためには、金属板部150が厚いことが好ましいが、金属板部150が厚くなるにしたがって、メイン振動部110mおよびサブ振動部110sの各々の共振周波数が高くなり、超音波トランスデューサの指向性の角度範囲が狭くなる。仮に、メイン振動部110mおよびサブ振動部110sの各々の振動領域の面積を大きくした場合、メイン振動部110mおよびサブ振動部110sの各々の共振周波数を下げることはできるが、超音波トランスデューサが大型化する。そこで、本実施形態に係る超音波トランスデューサ100においては、金属板部150の所望の位置にスリット151を形成することにより、超音波トランスデューサ100の指向性の角度範囲を広く確保しつつ超音波トランスデューサ100を小型化している。
【0039】
ここで、金属板部150に形成されたスリット151の中心151cの位置と、メイン振動部110mの共振振幅に対するサブ振動部110sの共振振幅の比率との関係について、有限要素法を用いてシミュレーション解析した結果について説明する。
【0040】
図10は、スリットの中心の位置と、メイン振動部の共振振幅に対するサブ振動部の共振振幅の比率との関係を示すグラフである。図10においては、縦軸に、メイン振動部の共振振幅に対するサブ振動部の共振振幅の比率(%)、横軸に、スリットの中心の位置を示している。また、金属板部にスリットが形成されていない比較例に係る超音波トランスデューサにおける、メイン振動部の共振振幅に対するサブ振動部の共振振幅の比率を、点線で示している。
【0041】
シミュレーション解析条件のパラメータとして、図6および図7に示す共振モードの超音波トランスデューサにおいて、第1方向(Z軸方向)から見て、筒体120と拘束部140との間における第2方向(X軸方向)の位置範囲において、スリット151の中心151cを変位させた。図1に示すように、筒体120と拘束部140との間における第2方向(X軸方向)の位置範囲において、筒体120の外縁を0%の位置とするとともに拘束部140の内縁を100%の位置とした。
【0042】
また、金属板部150の厚みを1mm、サブ振動部110sの振動領域の第2方向(X軸方向)の長さ、すなわち筒体120と拘束部140との第2方向(X軸方向)における間隔を4mm、スリット151の第2方向(X軸方向)における幅を0.5mmとした。スリット151の中心151cの位置は、スリット151の第2方向(X軸方向)における幅の中央の位置である。
【0043】
図10に示すように、メイン振動部110mの共振振幅に対するサブ振動部110sの共振振幅の比率は、スリット151の中心151cが34%以下の位置に配置されているとき、金属板部にスリットが形成されていない比較例における当該比率と同程度または当該比率以下であったが、スリット151の中心151cが35%以上の位置に配置されているとき、金属板部にスリットが形成されていない比較例における当該比率と同程度である比率を超えて急激に増加し、スリット151の中心151cが94%の位置、すなわち、拘束部140の内縁の近傍の位置に到達するまで増加した。
【0044】
スリット151の中心151cが78%以上の位置に配置されているとき、メイン振動部110mの共振振幅に対するサブ振動部110sの共振振幅の比率を25%以上確保することができていた。
【0045】
スリット151の中心151cが拘束部140の内縁に近いほどサブ振動部110sの共振振幅が大きくなる理由は、サブ振動部110sは拘束部140の内縁の位置(100%の位置)をノード点として共振振動するため、拘束部140の内縁の位置(100%の位置)においてサブ振動部110sに生ずるせん断応力が最も大きくなり、スリット151が拘束部140の内縁の近くに位置するほど、上記せん断応力によるサブ振動部110sの変位が大きくなるからである。スリット151の中心151cが筒体120の外縁の近傍に位置するときにサブ振動部110sの共振振幅が小さくなる理由は、超音波振動子130の振動がスリット151によって緩和されてサブ振動部110sに伝わりにくくなるためである。
【0046】
図11は、図10のデータから抽出した、スリットの中心が19%の位置、69%の位置または94%の位置である3つのケースについて、有限要素法を用いてシミュレーション解析した指向性を示すグラフである。図11においては、縦軸に、音圧レベル(dB)、円周軸に、メイン振動部の中心からの放射角度(°)を示している。また、スリット151の中心151cが19%の位置であるときの指向性を実線、スリット151の中心151cが69%の位置であるときの指向性を点線、スリット151の中心151cが94%の位置であるときの指向性を1点鎖線で示している。なお、上記の3つのケースの各々において、放射角度θ=0°の正面方向における音圧レベルを0dBとして、放射角度θと音圧レベルとの推移を示している。
【0047】
図11に示すように、スリット151の中心151cが拘束部140の内縁の位置(100%の位置)に近づくほど、指向性の角度範囲が広くなっていた。すなわち、メイン振動部110mの共振振幅に対するサブ振動部110sの共振振幅の比率が大きくなるにしたがって、指向性の角度範囲が広くなっていた。
【0048】
次に、サブ振動部110sの共振周波数からメイン振動部110mの共振周波数を引いた差分と、メイン振動部110mの共振振幅に対するサブ振動部110sの共振振幅の比率との関係について、有限要素法を用いてシミュレーション解析した結果について説明する。
【0049】
図12は、サブ振動部の共振周波数からメイン振動部の共振周波数を引いた差分と、メイン振動部の共振振幅に対するサブ振動部の共振振幅の比率との関係を示すグラフである。図12においては、縦軸に、メイン振動部の共振振幅に対するサブ振動部の共振振幅の比率(%)、横軸に、サブ振動部の共振周波数からメイン振動部の共振周波数を引いた差分(kHz)を示している。また、スリット151の中心151cが94%の位置にある本実施形態に係る超音波トランスデューサのデータを実線、金属板部にスリットが形成されていない比較例に係る超音波トランスデューサのデータを点線で示している。
【0050】
図11に示すように、スリット151の中心151cが94%の位置にある本実施形態に係る超音波トランスデューサは、サブ振動部110sの共振周波数からメイン振動部110mの共振周波数を引いた差分が10kHz以上大きくなっても、金属板部にスリットが形成されていない比較例に係る超音波トランスデューサよりもサブ振動部110sの共振振幅を大きく確保することができていた。
【0051】
サブ振動部110sの共振周波数は、筒体120と拘束部140との第2方向(X軸方向)における間隔によって変化する。図13は、筒体と拘束部との間隔と、メイン振動部の共振振幅に対するサブ振動部の共振振幅の比率との関係を示すグラフである。図13においては、縦軸に、メイン振動部の共振振幅に対するサブ振動部の共振振幅の比率(%)、横軸に、筒体と拘束部との間隔(mm)を示している。また、スリット151の中心151cが94%の位置にある本実施形態に係る超音波トランスデューサのデータを実線、金属板部にスリットが形成されていない比較例に係る超音波トランスデューサのデータを点線で示している。
【0052】
図13に示すように、スリット151の中心151cが94%の位置にある本実施形態に係る超音波トランスデューサは、筒体120と拘束部140との第2方向(X軸方向)における間隔が狭くなっても、金属板部にスリットが形成されていない比較例に係る超音波トランスデューサよりもサブ振動部110sの共振振幅を大きく確保することができていた。たとえば、指向性の角度範囲を広く確保するために、メイン振動部110mの共振振幅に対するサブ振動部110sの共振振幅の比率を40%にするには、筒体120と拘束部140との第2方向(X軸方向)における間隔を、本実施形態に係る超音波トランスデューサでは4mmにすることができるが、比較例に係る超音波トランスデューサでは8mm以上にしなければならない。
【0053】
よって、スリット151を拘束部140の内縁の近くに配置することにより、超音波トランスデューサ100の指向性の角度範囲を広く確保しつつ超音波トランスデューサ100を小型化することができる。
【0054】
また、筒体120と拘束部140との第2方向(X軸方向)における間隔を狭くすることにより、メイン振動部110mとサブ振動部110sとの間の距離が短くなるため、これによっても超音波トランスデューサ100の指向性の角度範囲を広く確保することができる。
【0055】
本実施形態においては、超音波振動子130は、いわゆる、シリーズ型のバイモルフ型圧電振動子であったが、超音波振動子130は、他の型の圧電振動子であってもよい。以下、本発明の実施形態1の変形例に係る超音波トランスデューサの超音波振動子について説明する。
【0056】
図14は、第1変形例に係る超音波振動子の構成を示す断面図である。図14に示すように、第1変形例に係る超音波振動子130aは、積層された2つの圧電体131を含む圧電素子である。2つの圧電体131の分極方向Dpは、互いに等しい。超音波振動子130aは、いわゆる、パラレル型のバイモルフ型圧電振動子である。
【0057】
第1変形例に係る超音波トランスデューサにおいては、2つの圧電体131の各々は、第1電極132および第2電極133に挟まれて交流電圧を印加可能に構成されている。第1電極132は、接地電位に固定されている。筒体120および拘束部140の各々は、金属で構成されており、第1電極132、筒体120、金属板部150および拘束部140は、機械的かつ電気的に互いに接続されて電磁シールドを構成している。
【0058】
図15は、第1変形例に係る超音波トランスデューサ、および、拘束部が絶縁材料で構成されている点のみ第1変形例に係る超音波トランスデューサとは異なる参考例に係る超音波トランスデューサの、各々における超音波振動子から生ずるノイズの大きさを示すグラフである。図15に示すように、参考例に係る超音波トランスデューサのノイズの大きさが190mVであったのに対して、第1変形例に係る超音波トランスデューサのノイズの大きさは165mVであり、上記の電磁シールドを構成することによりノイズが低減できることが確認できた。
【0059】
図16は、第2変形例に係る超音波振動子の構成を示す断面図である。図16に示すように、第2変形例に係る超音波振動子130bは、積層された4つの圧電体131を含む圧電素子である。4つの圧電体131のうち外側に位置する2つの圧電体131の分極方向Dpは、第1方向(Z軸方向)の一方を向いており、4つの圧電体131のうち内側に位置する2つの圧電体131の分極方向Dpは、第1方向(Z軸方向)の他方を向いている。超音波振動子130bは、いわゆる、マルチモルフ型圧電振動子である。
【0060】
図17は、第3変形例に係る超音波振動子の構成を示す断面図である。図17に示すように、第3変形例に係る超音波振動子130cは、1つの圧電体131を含む圧電素子である。具体的には、圧電体131は、第1電極132および金属からなる振動板135に挟まれている。超音波振動子130cは、いわゆる、ユニモルフ型圧電振動子である。
【0061】
図18は、本発明の実施形態1の第4変形例に係る超音波トランスデューサの構成を示す縦断面図である。図18に示すように、本発明の実施形態1の第4変形例に係る超音波トランスデューサ100aは、外装部110と、筒体120aと、超音波振動子と、拘束部140と、金属板部150とを備える。筒体120aは、有底筒状の形状を有している。筒体120aは、金属で構成されている。筒体120aの外側の底面に圧電体131が貼り付けられており、ユニモルフ型圧電振動子である超音波振動子が構成されている。
【0062】
図19は、本発明の実施形態1の第5変形例に係る超音波トランスデューサの構成を示す縦断面図である。図19に示すように、本発明の実施形態1の第5変形例に係る超音波トランスデューサ100bは、外装部110と、筒体120と、超音波振動子130と、拘束部140と、金属板部150bとを備える。第1方向(Z軸方向)から見て、金属板部150bのスリット151の一部は、拘束部140と重なっている。第1方向(Z軸方向)から見て、金属板部150bのスリット151の幅の半分以上の一部が、拘束部140と重なっていてもよい。
【0063】
ここで、スリット151の延在長さと、メイン振動部110mの共振振幅に対するサブ振動部110sの共振振幅の比率との関係について、有限要素法を用いてシミュレーション解析した結果について説明する。図20は、第1実施例に係る金属板部および拘束部を示す斜視図である。図21は、第2実施例に係る金属板部および拘束部を示す斜視図である。図22は、第3実施例に係る金属板部および拘束部を示す斜視図である。図23は、第4実施例に係る金属板部および拘束部を示す斜視図である。
【0064】
図24は、超音波振動子の長さに対するスリットの延在長さの比率と、メイン振動部の共振振幅に対するサブ振動部の共振振幅の比率との関係を示すグラフである。図24においては、縦軸に、メイン振動部の共振振幅に対するサブ振動部の共振振幅の比率(%)、横軸に、超音波振動子の長さに対するスリットの延在長さの比率(%)を示している。
【0065】
シミュレーション解析条件として、筒体120と拘束部140との第2方向(X軸方向)における間隔を4.5mm、スリット151の第2方向(X軸方向)における幅を1mmとし、スリット151の中心151cを89%の位置に配置した。
【0066】
図20に示すように、第1実施例に係る金属板部150cにおいては、第3方向(Y軸方向)における中央部に長さが4mmのスリット151が形成されている。図21に示すように、第2実施例に係る金属板部150dにおいては、第3方向(Y軸方向)における中央部から両端部に向かって長さが8mmのスリット151が形成されている。図22に示すように、第3実施例に係る金属板部150eにおいては、第3方向(Y軸方向)における中央部から両端部に向かって長さが12mmのスリット151が形成されている。図23に示すように、第4実施例に係る金属板部150fにおいては、第3方向(Y軸方向)における中央部から両端部に向かって長さが16mmのスリット151が形成されている。
【0067】
図24に示すように、メイン振動部110mの共振振幅に対するサブ振動部110sの共振振幅の比率は、超音波振動子130の長さに対するスリット151の延在長さの比率が15%以上85%以下の範囲内で大きくなるにしたがって増加した。この解析結果から、超音波振動子130の長さに対するスリット151の延在長さの比率を調整することにより、メイン振動部110mの共振振幅に対するサブ振動部110sの共振振幅の比率を所望の値に変更できることが確認できた。
【0068】
ここで、メイン振動部110mおよびサブ振動部110sの各々を構成する部分の外装部110の厚みに対する金属板部150の厚みの比率と、超音波振動子130の単位変位当たりのサブ振動部110sに作用する第1方向(Z軸方向)の応力およびサブ振動部110sの共振振幅の各々との関係について、有限要素法を用いてシミュレーション解析した結果について説明する。
【0069】
図25は、メイン振動部およびサブ振動部の各々を構成する部分の外装部の厚みに対する金属板部の厚みの比率と、超音波振動子の単位変位当たりのサブ振動部に作用する第1方向の応力およびサブ振動部の共振振幅の各々との関係を示すグラフである。図25においては、左側の縦軸に、サブ振動部の共振振幅(μm)、右側の縦軸に、超音波振動子の単位変位当たりのサブ振動部に作用する第1方向の応力(MPa/μm)、横軸に、メイン振動部およびサブ振動部の各々を構成する部分の外装部の厚みに対する金属板部の厚みの比率(%)を示している。また、サブ振動部の共振振幅を実線で示し、超音波振動子の単位変位当たりのサブ振動部に作用する第1方向の応力を点線で示している。
【0070】
シミュレーション解析条件として、ポリプロピレンを主成分とする樹脂で外装部110を構成し、アルミニウム合金で金属板部150を構成し、超音波振動子130を駆動する電圧の振幅を1Vとした。メイン振動部110mおよびサブ振動部110sの各々を構成する部分の外装部110の厚みを1mmとした。
【0071】
図25に示すように、メイン振動部110mおよびサブ振動部110sの各々を構成する部分の外装部110の厚みに対する金属板部150の厚みの比率が大きくなるにしたがって、超音波振動子130の単位変位当たりのサブ振動部110sに作用する第1方向(Z軸方向)の応力は大きくなった。メイン振動部110mおよびサブ振動部110sの各々を構成する部分の外装部110の厚みに対する金属板部150の厚みの比率が160%を超えると、超音波振動子130の単位変位当たりのサブ振動部110sに作用する第1方向(Z軸方向)の応力が大きくなっているにも関わらず、サブ振動部110s共振振幅は小さくなっていた。
【0072】
ポリプロピレンを主成分とする樹脂で外装部110を構成し、アルミニウム合金で金属板部150を構成している場合、メイン振動部110mおよびサブ振動部110sの各々を構成する部分の外装部110の厚みに対する金属板部150の厚みの比率が100%以上のとき、超音波トランスデューサ100の温度特性を安定させることができる。上記のようにサブ振動部110sの共振振幅を大きくするとともに、超音波トランスデューサ100の温度特性を安定させることも考慮すると、メイン振動部110mおよびサブ振動部110sの各々を構成する部分の外装部110の厚みに対する金属板部150の厚みの比率は、100%以上160%以下であることが好ましい。
【0073】
超音波振動子130の質量に対する、メイン振動部110mおよびサブ振動部110sの各々を構成する部分の外装部110の質量の比率が大きくなるにしたがって、サブ振動部110sの変位は小さくなる。ステンレス鋼の密度は、アルミニウム合金の密度の約3倍である。そのため、金属板部150がステンレス鋼で構成されている場合、超音波振動子130の単位変位当たりのサブ振動部110sの変位が小さくなる。また、ステンレス鋼は、機械的Q値が高いため、金属板部150がステンレス鋼で構成されている場合、サブ振動部110sの変位の帯域が狭くなるので、超音波振動子130の駆動周波数とサブ振動部110sの共振周波数とのずれに対して超音波トランスデューサ100の特性変動が大きくなる。よって、超音波トランスデューサ100の特性変動が大きくなることを抑制する観点から、メイン振動部110mおよびサブ振動部110sの各々を構成する部分の外装部110の厚みに対する金属板部150の厚みの比率は、100%以下であることが好ましい。
【0074】
ポリプロピレンを主成分とする樹脂で外装部110を構成し、ステンレス鋼で金属板部150を構成している場合、メイン振動部110mおよびサブ振動部110sの各々を構成する部分の外装部110の厚みに対する金属板部150の厚みの比率が60%以上のとき、超音波トランスデューサ100の温度特性を安定させることができる。上記のように超音波トランスデューサ100の特性変動が大きくなることを抑制するとともに、超音波トランスデューサ100の温度特性を安定させることも考慮すると、メイン振動部110mおよびサブ振動部110sの各々を構成する部分の外装部110の厚みに対する金属板部150の厚みの比率は、60%以上100%以下であることが好ましい。
【0075】
図26は、本発明の実施形態1の第6変形例に係る超音波トランスデューサが備える、金属板部、筒体および拘束部を示す縦断面図である。図26に示すように、本発明の実施形態1の第6変形例に係る超音波トランスデューサが備える、金属板部150、筒体120および拘束部140は、鍛造などにより一体で形成されている。具体的には、拘束部140および金属板部150が、有底筒状の金属部材で構成されており、筒体120が当該金属部材の底部から突出している。本変形例においては、筒体120と金属板部150との界面からの振動漏れを抑制しつつ、金属板部150、筒体120および拘束部140からなるシールド構造によるシールド性を高めることができる。
【0076】
本発明の実施形態1に係る超音波トランスデューサ100においては、第1方向(Z軸方向)から見て、金属板部150のサブ振動部110sとなる位置に、金属板部150を貫通しつつ第3方向(Y軸方向)に延在するスリット151が形成されている。第1方向(Z軸方向)から見て、筒体120と拘束部140との間における第2方向(X軸方向)の位置範囲において筒体120の外縁を0%の位置とするとともに拘束部140の内縁を100%の位置としたとき、スリット151の中心151cは、35%以上の位置に配置されている。これにより、超音波トランスデューサ100の指向性の角度範囲を広く確保しつつ超音波トランスデューサ100を小型化することができる。
【0077】
本発明の実施形態1に係る超音波トランスデューサ100においては、拘束部140は、環状の形状を有している。これにより、指向性の角度範囲を広げた第2方向(X軸方向)に直交する第3方向(Y軸方向)に振動漏れが発生することを抑制することができる。
【0078】
本発明の実施形態1に係る超音波トランスデューサにおいては、超音波振動子130は、圧電体を含む圧電素子である。これにより、超音波トランスデューサ100を簡易な構成にすることができる。
【0079】
本発明の実施形態1に係る超音波トランスデューサにおいては、サブ振動部110sの共振振幅は、メイン振動部110mの共振振幅より小さい。これにより、放射角度θ=0°の正面方向における音圧レベルが低くなりすぎることを抑制できる。
【0080】
(実施形態2)
以下、本発明の実施形態2に係る超音波トランスデューサについて図を参照して説明する。本発明の実施形態2に係る超音波トランスデューサは、金属板部に貫通スリットの代わりに有底溝が形成されている点が本発明の実施形態1に係る超音波トランスデューサと異なるため、本発明の実施形態1に係る超音波トランスデューサと同様である構成については説明を繰り返さない。
【0081】
図27は、本発明の実施形態2に係る超音波トランスデューサの構成を示す縦断面図である。図27に示すように、本発明の実施形態2に係る超音波トランスデューサ200は、外装部110と、筒体120と、超音波振動子130と、拘束部140と、金属板部250とを備える。
【0082】
金属板部250における外装部110側の第1面1Sとは反対の第2面2Sにおいて、第1方向(Z軸方向)から見て金属板部250のサブ振動部110sとなる位置に、第3方向(Y軸方向)に延在する第1有底溝251が形成されている。第1方向(Z軸方向)から見て、筒体120と拘束部140との間における第2方向(X軸方向)の位置範囲において筒体120の外縁を0%の位置とするとともに拘束部140の内縁を100%の位置としたとき、第1有底溝251の中心251cは、25%以上60%以下の位置または83%以上の位置に配置されている。本実施形態においては、第1有底溝251の深さの寸法は、金属板部250の厚みの寸法の半分である。
【0083】
ここで、金属板部250に形成された第1有底溝251の中心251cの位置と、メイン振動部110mの共振振幅に対するサブ振動部110sの共振振幅の比率との関係について、有限要素法を用いてシミュレーション解析した結果について説明する。
【0084】
図28は、第1有底溝の中心の位置と、メイン振動部の共振振幅に対するサブ振動部の共振振幅の比率との関係を示すグラフである。図28においては、縦軸に、メイン振動部の共振振幅に対するサブ振動部の共振振幅の比率(%)、横軸に、第1有底溝の中心の位置を示している。また、金属板部にスリットが形成されていない比較例に係る超音波トランスデューサにおける、メイン振動部の共振振幅に対するサブ振動部の共振振幅の比率を、点線で示している。
【0085】
シミュレーション解析条件のパラメータとして、図6および図7に示す共振モードの超音波トランスデューサにおいて、第1方向(Z軸方向)から見て、筒体120と拘束部140との間における第2方向(X軸方向)の位置範囲において、第1有底溝251の中心251cを変位させた。図27に示すように、筒体120と拘束部140との間における第2方向(X軸方向)の位置範囲において、筒体120の外縁を0%の位置とするとともに拘束部140の内縁を100%の位置とした。
【0086】
また、金属板部250の厚みを1mm、サブ振動部110sの振動領域の第2方向(X軸方向)の長さ、すなわち筒体120と拘束部140との第2方向(X軸方向)における間隔を7mm、第1有底溝251の第2方向(X軸方向)における幅を0.5mmとした。第1有底溝251の中心251cの位置は、第1有底溝251の第2方向(X軸方向)における幅の中央の位置である。
【0087】
図28に示すように、メイン振動部110mの共振振幅に対するサブ振動部110sの共振振幅の比率は、第1有底溝251の中心251cが24%以下の位置に配置されているとき、金属板部にスリットが形成されていない比較例における当該比率と同程度または当該比率以下であったが、第1有底溝251の中心251cが25%以上60%以下の位置に配置されているとき、金属板部にスリットが形成されていない比較例における当該比率と同程度である比率を超えていた。メイン振動部110mの共振振幅に対するサブ振動部110sの共振振幅の比率は、第1有底溝251の中心251cが61%以上82%以下の位置に配置されているとき、金属板部にスリットが形成されていない比較例における当該比率と同程度であったが、第1有底溝251の中心251cが83%以上の位置に配置されているとき、金属板部にスリットが形成されていない比較例における当該比率と同程度である比率を超えて急激に増加し、第1有底溝251の中心251cが96%の位置、すなわち、拘束部140の内縁の近傍の位置に到達するまで増加した。
【0088】
第1有底溝251の中心251cが32%以上46%の位置または89%以上の位置に配置されているとき、メイン振動部110mの共振振幅に対するサブ振動部110sの共振振幅の比率を25%以上確保することができていた。
【0089】
第1有底溝251の中心251cが拘束部140の内縁の近傍に位置するときにサブ振動部110sの共振振幅が大きくなる理由は、サブ振動部110sは拘束部140の内縁の位置(100%の位置)をノード点として共振振動するため、拘束部140の内縁の位置(100%の位置)においてサブ振動部110sに生ずるせん断応力が最も大きくなり、第1有底溝251が拘束部140の内縁の近くに位置するほど、上記せん断応力によるサブ振動部110sの変位が大きくなるからである。第1有底溝251の中心251cが25%以上60%以下の位置に配置されているときにサブ振動部110sの共振振幅が大きくなる理由は、金属板部250の第2面2Sの25%以上60%以下の位置においてサブ振動部110sに共振振動時に生ずる引張応力が最も大きくなり、金属板部250の第2面2Sの25%以上60%以下の位置に第1有底溝251が形成されていることによってサブ振動部110sの第2方向(X軸方向)の剛性が小さくなってサブ振動部110sの変位が大きくなるからである。
【0090】
第1有底溝251の中心251cが筒体120の外縁の近傍に位置するときにサブ振動部110sの共振振幅が小さくなる理由は、超音波振動子130の振動が第1有底溝251によって緩和されてサブ振動部110sに伝わりにくくなるためである。第1有底溝251の中心251cが61%以上82%以下の位置に配置されているときにサブ振動部110sの共振振幅が小さくなる理由は、金属板部250の第2面2Sの61%以上82%以下の位置においてサブ振動部110sに共振振動時に生ずる引張応力が比較的小さいため、61%以上82%以下の位置に第1有底溝251が形成されていることによるサブ振動部110sの変位を大きくする効果が少なくなるためである。
【0091】
図29は、図28のデータから抽出した、第1有底溝の中心が4%の位置、39%の位置、75%の位置または89%の位置である4つのケースについて、有限要素法を用いてシミュレーション解析した指向性を示すグラフである。図29においては、縦軸に、音圧レベル(dB)、円周軸に、メイン振動部の中心からの放射角度(°)を示している。また、第1有底溝251の中心251cが4%の位置であるときの指向性を実線、第1有底溝251の中心251cが39%の位置であるときの指向性を点線、第1有底溝251の中心251cが75%の位置であるときの指向性を1点鎖線、第1有底溝251の中心251cが89%の位置であるときの指向性を2点鎖線で示している。なお、上記の4つのケースの各々において、放射角度θ=0°の正面方向における音圧レベルを0dBとして、放射角度θと音圧レベルとの推移を示している。
【0092】
図29に示すように、メイン振動部110mの共振振幅に対するサブ振動部110sの共振振幅の比率が比較的大きかった、第1有底溝251の中心251cが39%または89%の位置にあるときは、メイン振動部110mの共振振幅に対するサブ振動部110sの共振振幅の比率が比較的小さかった、第1有底溝251の中心251cが4%または75%の位置にあるときに比べて、指向性の角度範囲が広くなっていた。すなわち、メイン振動部110mの共振振幅に対するサブ振動部110sの共振振幅の比率が大きくなるにしたがって、指向性の角度範囲が広くなっていた。
【0093】
本発明の実施形態2に係る超音波トランスデューサ200においては、第1方向(Z軸方向)から見て、金属板部250のサブ振動部110sとなる位置に、第3方向(Y軸方向)に延在する第1有底溝251が形成されている。第1方向(Z軸方向)から見て、筒体120と拘束部140との間における第2方向(X軸方向)の位置範囲において筒体120の外縁を0%の位置とするとともに拘束部140の内縁を100%の位置としたとき、第1有底溝251の中心251cは、25%以上60%以下の位置または83%以上の位置に配置されている。これにより、超音波トランスデューサ200の指向性の角度範囲を広く確保しつつ超音波トランスデューサ200を小型化することができる。
【0094】
図30は、本発明の実施形態2に係る超音波トランスデューサにおいて金属板部と拘束部とによって形成された内部空間がダンピング材で埋められた状態を示す断面図である。図30に示すように、本発明の実施形態2に係る超音波トランスデューサ200においては、金属板部250と拘束部140とによって形成された内部空間が、シリコーンなどのダンピング材260によって埋められた場合でも、第1有底溝251が金属板部250を貫通していないため、ダンピング材260が金属板部250の第1面1Sに漏れ出ることがない。そのため、金属板部250に、筒体120、超音波振動子130および拘束部140を取り付けてダンピング材260で封止したユニットを、外装部110の内面111に取り付ける場合に、金属板部250と外装部110の内面111との間にダンピング材260が入り込むことにより生ずる上記ユニットの外装部110への取り付け不良を防止することができる。
【0095】
なお、ダンピング材260のヤング率は、たとえば、0.1MPa以上100MPa以下である。外装部側とは反対側への不要な超音波の放射を抑制する観点では、ダンピング材260のヤング率は0.1MPa以上0.5MPa以下であることが好ましく、残響を抑制する観点では、ダンピング材260のヤング率は10MPa以上50MPa以下であることが好ましい。
【0096】
(実施形態3)
以下、本発明の実施形態3に係る超音波トランスデューサについて図を参照して説明する。本発明の実施形態3に係る超音波トランスデューサは、金属板部の第1面に有底溝が形成されている点が本発明の実施形態2に係る超音波トランスデューサと異なるため、本発明の実施形態2に係る超音波トランスデューサと同様である構成については説明を繰り返さない。
【0097】
図31は、本発明の実施形態3に係る超音波トランスデューサの構成を示す縦断面図である。図31に示すように、本発明の実施形態3に係る超音波トランスデューサ300は、外装部110と、筒体120と、超音波振動子130と、拘束部140と、金属板部350とを備える。
【0098】
金属板部350における外装部110側の第1面1Sにおいて、第1方向(Z軸方向)から見て金属板部350のサブ振動部110sとなる位置に、第3方向(Y軸方向)に延在する第2有底溝351が形成されている。第1方向(Z軸方向)から見て、筒体120と拘束部140との間における第2方向(X軸方向)の位置範囲において筒体120の外縁を0%の位置とするとともに拘束部140の内縁を100%の位置としたとき、第2有底溝351の中心351cは、16%以上76%以下の位置または94%以上の位置に配置されている。本実施形態においては、第2有底溝351の深さの寸法は、金属板部350の厚みの寸法の半分である。
【0099】
ここで、金属板部350に形成された第2有底溝351の中心351cの位置と、メイン振動部110mの共振振幅に対するサブ振動部110sの共振振幅の比率との関係について、有限要素法を用いてシミュレーション解析した結果について説明する。
【0100】
図32は、第2有底溝の中心の位置と、メイン振動部の共振振幅に対するサブ振動部の共振振幅の比率との関係を示すグラフである。図32においては、縦軸に、メイン振動部の共振振幅に対するサブ振動部の共振振幅の比率(%)、横軸に、第2有底溝の中心の位置を示している。また、金属板部にスリットが形成されていない比較例に係る超音波トランスデューサにおける、メイン振動部の共振振幅に対するサブ振動部の共振振幅の比率を、点線で示している。
【0101】
シミュレーション解析条件のパラメータとして、図6および図7に示す共振モードの超音波トランスデューサにおいて、第1方向(Z軸方向)から見て、筒体120と拘束部140との間における第2方向(X軸方向)の位置範囲において、第2有底溝351の中心351cを変位させた。図31に示すように、筒体120と拘束部140との間における第2方向(X軸方向)の位置範囲において、筒体120の外縁を0%の位置とするとともに拘束部140の内縁を100%の位置とした。
【0102】
また、金属板部350の厚みを1mm、サブ振動部110sの振動領域の第2方向(X軸方向)の長さ、すなわち筒体120と拘束部140との第2方向(X軸方向)における間隔を7mm、第2有底溝351の第2方向(X軸方向)における幅を0.5mmとした。第2有底溝351の中心351cの位置は、第2有底溝351の第2方向(X軸方向)における幅の中央の位置である。
【0103】
図32に示すように、メイン振動部110mの共振振幅に対するサブ振動部110sの共振振幅の比率は、第2有底溝351の中心351cが15%以下の位置に配置されているとき、金属板部にスリットが形成されていない比較例における当該比率と同程度または当該比率以下であったが、第2有底溝351の中心351cが16%以上76%以下の位置に配置されているとき、金属板部にスリットが形成されていない比較例における当該比率と同程度である比率を超えていた。メイン振動部110mの共振振幅に対するサブ振動部110sの共振振幅の比率は、第2有底溝351の中心351cが77%以上93%以下の位置に配置されているとき、金属板部にスリットが形成されていない比較例における当該比率と同程度であったが、第2有底溝351の中心351cが94%以上の位置に配置されているとき、金属板部にスリットが形成されていない比較例における当該比率と同程度である比率を超えていた。
【0104】
第2有底溝351の中心351cが21%以上68%以下の位置に配置されているとき、メイン振動部110mの共振振幅に対するサブ振動部110sの共振振幅の比率を25%以上確保することができていた。
【0105】
第2有底溝351の中心351cが拘束部140の内縁の近傍に位置するときにサブ振動部110sの共振振幅が大きくなる理由は、サブ振動部110sは拘束部140の内縁の位置(100%の位置)をノード点として共振振動するため、拘束部140の内縁の位置(100%の位置)においてサブ振動部110sに生ずるせん断応力が最も大きくなり、第2有底溝351が拘束部140の内縁の近くに位置するほど、上記せん断応力によるサブ振動部110sの変位が大きくなるからである。ただし、第2有底溝351は金属板部350の第1面1Sに形成されているため、実施形態2に係る金属板部250の第2面2Sに形成されている第1有底溝251に比較して、上記せん断応力によるサブ振動部110sの変位を大きくする効果が少なくなっている。
【0106】
第2有底溝351の中心351cが16%以上76%以下の位置に配置されているときにサブ振動部110sの共振振幅が大きくなる理由は、金属板部350の第1面1Sの16%以上76%以下の位置においてサブ振動部110sに共振振動時に生ずる引張応力が最も大きくなり、16%以上76%以下の位置に第2有底溝351が形成されていることによってサブ振動部110sの第2方向(X軸方向)の剛性が小さくなってサブ振動部110sの変位が大きくなるからである。
【0107】
第2有底溝351の中心351cが筒体120の外縁の近傍に位置するときにサブ振動部110sの共振振幅が小さくなる理由は、超音波振動子130の振動が第2有底溝351によって緩和されてサブ振動部110sに伝わりにくくなるためである。第2有底溝351の中心351cが77%以上93%以下の位置に配置されているときにサブ振動部110sの共振振幅が小さくなる理由は、金属板部350の第1面1Sの77%以上93%以下の位置においてサブ振動部110sに共振振動時に生ずる引張応力が比較的小さいため、77%以上93%以下の位置に第2有底溝351が形成されていることによるサブ振動部110sの変位を大きくする効果が少なくなるためである。
【0108】
図33は、第2有底溝の中心が4%の位置、46%の位置、82%の位置または96%の位置である4つのケースについて、有限要素法を用いてシミュレーション解析した指向性を示すグラフである。図28においては、縦軸に、音圧レベル(dB)、円周軸に、メイン振動部の中心からの放射角度(°)を示している。また、第2有底溝351の中心351cが4%の位置であるときの指向性を実線、第2有底溝351の中心351cが46%の位置であるときの指向性を点線、第2有底溝351の中心351cが82%の位置であるときの指向性を1点鎖線、第2有底溝351の中心351cが96%の位置であるときの指向性を2点鎖線で示している。なお、上記の4つのケースの各々において、放射角度θ=0°の正面方向における音圧レベルを0dBとして、放射角度θと音圧レベルとの推移を示している。
【0109】
図33に示すように、メイン振動部110mの共振振幅に対するサブ振動部110sの共振振幅の比率が比較的大きかった、第2有底溝351の中心351cが46%または96%の位置にあるときは、メイン振動部110mの共振振幅に対するサブ振動部110sの共振振幅の比率が比較的小さかった、第2有底溝351の中心351cが4%または82%の位置にあるときに比べて、指向性の角度範囲が広くなっていた。すなわち、メイン振動部110mの共振振幅に対するサブ振動部110sの共振振幅の比率が大きくなるにしたがって、指向性の角度範囲が広くなっていた。
【0110】
本発明の実施形態3に係る超音波トランスデューサ300においては、第1方向(Z軸方向)から見て、金属板部350のサブ振動部110sとなる位置に、第3方向(Y軸方向)に延在する第2有底溝351が形成されている。第1方向(Z軸方向)から見て、筒体120と拘束部140との間における第2方向(X軸方向)の位置範囲において筒体120の外縁を0%の位置とするとともに拘束部140の内縁を100%の位置としたとき、第2有底溝351の中心351cは、16%以上76%以下の位置または94%以上の位置に配置されている。これにより、超音波トランスデューサ300の指向性の角度範囲を広く確保しつつ超音波トランスデューサ300を小型化することができる。
【0111】
ここで、サブ振動部110sの共振振動時に金属板部の46%の位置に生ずる第2方向(X軸方向)の応力の第1方向(Z軸方向)における分布について有限要素法を用いてシミュレーション解析した結果について説明する。シミュレーション解析条件として、凹部112が形成されている部分の外装部110の厚みを1mm、金属板部の厚みを1mm、外装部110の材質をポリプロピレン、金属板部の材質をアルミニウム合金とした。
【0112】
図34は、第1方向における第2面からの位置と、サブ振動部の共振振動時に金属板部の46%の位置に生ずる第2方向の応力との関係を示すグラフである。図34においては、縦軸に、サブ振動部の共振振動時に金属板部の46%の位置に生ずる第2方向の応力(kPa)、横軸に、第1方向における第2面からの位置(mm)を示している。
【0113】
第1方向(Z軸方向)における第2面2Sからの位置が0mm以上1mm以下の範囲における第2方向(X軸方向)の応力Laは、金属板部に生じた応力である。第1方向(Z軸方向)における第2面2Sからの位置が1mm超2mm以下の範囲における第2方向(X軸方向)の応力Lbは、外装部110に生じた応力である。上記の応力Lbは、略0であり、サブ振動部110sの共振振動時に生ずる応力のほとんどが金属板部で生じていた。
【0114】
図7に示すように、サブ振動部110sの共振振動は、ベンディングモードであるため、サブ振動部110sの上側と下側とで応力の極性が反対になる。図34に示すように、上記の応力Laは、金属板部の厚みの略中央である、第1方向(Z軸方向)における第2面2Sから0.55mmの位置を境にして、極性が反対になっていた。極性が正である応力Laは、引張応力であり、極性が負である応力Laは、圧縮応力である。すなわち、第1方向(Z軸方向)における第2面2Sからの位置が0mm以上0.55mm以下の範囲の金属板部に引張応力が生じ、第1方向(Z軸方向)における第2面2Sからの位置が0.55mm超1mm以下の範囲の金属板部に圧縮応力が生じていた。
【0115】
この金属板部内の第1方向(Z軸方向)における応力分布にしたがって、金属板部に形成される有底溝の深さによってサブ振動部110sの共振振幅が変動するが、引張応力が生ずる領域と圧縮応力が生ずる領域とのいずれに有底溝が主に位置しているかによってサブ振動部110sの共振振幅の変動傾向が決まる。
【0116】
たとえば、実施形態2に係る第1有底溝251の深さが0.3mmである場合、第1有底溝251は引張応力が生ずる領域にのみ形成されているため、当該引張応力による曲げ変位の増加によってサブ振動部110sの共振振幅が大きくなる。実施形態2に係る第1有底溝251の深さが0.7mmである場合、第1有底溝251は引張応力が生ずる領域および圧縮応力が生ずる領域の両方に形成されているが、引張応力が生ずる領域に形成されている部分が第1有底溝251の大部分を占めるため、当該引張応力による曲げ変位の増加によってサブ振動部110sの共振振幅が大きくなる。
【0117】
たとえば、実施形態3に係る第2有底溝351の深さが0.3mmである場合、第2有底溝351は圧縮応力が生ずる領域にのみ形成されているため、当該圧縮応力による曲げ変位の増加によってサブ振動部110sの共振振幅が大きくなる。実施形態3に係る第2有底溝351の深さが0.7mmである場合、第2有底溝351は圧縮応力が生ずる領域および引張応力が生ずる領域の両方に形成されているが、圧縮応力が生ずる領域に形成されている部分が第2有底溝351の大部分を占めるため、当該圧縮応力による曲げ変位の増加によってサブ振動部110sの共振振幅が大きくなる。
【0118】
このように、第1有底溝251の深さの寸法は、金属板部250の厚みの寸法の半分に限定されず、金属板部250の厚みの寸法の30%以上70%以下であってもよい。同様に、第2有底溝351の深さの寸法は、金属板部350の厚みの寸法の半分に限定されず、金属板部350の厚みの寸法の30%以上70%以下であってもよい。
【0119】
第1有底溝251および第2有底溝351の各々の第2方向(X軸方向)の幅の寸法が大きくなるにしたがって、サブ振動部110sの共振振幅を大きくする効果は上がるが、超音波トランスデューサの温度特性を安定させる効果は下がる。超音波トランスデューサの温度特性を安定させつつサブ振動部110sの共振振幅を大きくすることができる、第1有底溝251または第2有底溝351を金属板部に容易に形成するためには、有底溝の幅と深さとが同程度、または、有底溝の幅と金属板部の厚みとが同程度であることが好ましい。
【0120】
(実施形態4)
以下、本発明の実施形態4に係る超音波トランスデューサについて図を参照して説明する。本発明の実施形態4に係る超音波トランスデューサは、金属板部に第1有底溝および第2有底溝の両方が形成されている点が本発明の実施形態2または実施形態3に係る超音波トランスデューサと異なるため、本発明の実施形態2または実施形態3に係る超音波トランスデューサと同様である構成については説明を繰り返さない。
【0121】
図35は、本発明の実施形態4に係る超音波トランスデューサの構成を示す縦断面図である。図35に示すように、本発明の実施形態4に係る超音波トランスデューサ400は、外装部110と、筒体120と、超音波振動子130と、拘束部140と、金属板部450とを備える。
【0122】
金属板部450の第2面2Sにおいて、第1方向(Z軸方向)から見て金属板部450のサブ振動部110sとなる位置に、第3方向(Y軸方向)に延在する第1有底溝251が形成されている。第1方向(Z軸方向)から見て、筒体120と拘束部140との間における第2方向(X軸方向)の位置範囲において筒体120の外縁を0%の位置とするとともに拘束部140の内縁を100%の位置としたとき、第1有底溝251の中心251cは、25%以上60%以下の位置または83%以上の位置に配置されている。本実施形態においては、第1有底溝251の深さの寸法は、金属板部450の厚みの寸法の半分である。
【0123】
金属板部450の第1面1Sにおいて、第1方向(Z軸方向)から見て金属板部450のサブ振動部110sとなる位置に、第3方向(Y軸方向)に延在する第2有底溝351が形成されている。第1方向(Z軸方向)から見て、筒体120と拘束部140との間における第2方向(X軸方向)の位置範囲において筒体120の外縁を0%の位置とするとともに拘束部140の内縁を100%の位置としたとき、第2有底溝351の中心351cは、16%以上76%以下の位置または94%以上の位置に配置されている。本実施形態においては、第2有底溝351の深さの寸法は、金属板部450の厚みの寸法の半分である。
【0124】
図36は、金属板部に有底溝が形成されていない超音波トランスデューサ、金属板部に第1有底溝のみが形成されている超音波トランスデューサ、金属板部に第2有底溝のみが形成されている超音波トランスデューサ、および、金属板部に第1有底溝および第2有底溝が形成されている超音波トランスデューサの、4つのケースについて、有限要素法を用いてシミュレーション解析した指向性を示すグラフである。図36においては、縦軸に、音圧レベル(dB)、円周軸に、メイン振動部の中心からの放射角度(°)を示している。また、金属板部に有底溝が形成されていない超音波トランスデューサの指向性を実線、金属板部に第1有底溝のみが形成されている超音波トランスデューサの指向性を点線、金属板部に第2有底溝のみが形成されている超音波トランスデューサの指向性を1点鎖線、金属板部に第1有底溝および第2有底溝が形成されている超音波トランスデューサの指向性を2点鎖線で示している。なお、上記の4つのケースの各々において、放射角度θ=0°の正面方向における音圧レベルを0dBとして、放射角度θと音圧レベルとの推移を示している。
【0125】
図36に示すように、金属板部450に第1有底溝251および第2有底溝351が形成されている本実施形態に係る超音波トランスデューサ400の指向性の角度範囲が他の3つの超音波トランスデューサよりも広くなっていた。
【0126】
本実施形態に係る超音波トランスデューサ400においても、指向性の角度範囲を広く確保しつつ超音波トランスデューサ400を小型化することができる。
【0127】
図37は、本発明の実施形態4の変形例に係る超音波トランスデューサの構成を示す縦断面図である。図37に示すように、本発明の実施形態4の変形例に係る超音波トランスデューサ400aは、外装部110と、筒体120と、超音波振動子130と、拘束部140と、金属板部450aとを備える。
【0128】
金属板部450aには、第1有底溝として、第1方向(Z軸方向)から見て中心251cが25%以上60%以下の位置に配置されている第1有底溝251および中心251cが83%以上の位置に配置されている第1有底溝251の各々が、第2面2Sに形成されている。
【0129】
金属板部450aの第1面1Sには、第1方向(Z軸方向)から見て中心351cが16%以上76%以下の位置または94%以上の位置に配置されている第2有底溝351が形成されている。なお、金属板部450aに、第2有底溝として、第1方向(Z軸方向)から見て中心351cが16%以上76%以下の位置に配置されている第2有底溝351および中心351cが94%以上の位置に配置されている第2有底溝351の各々が、第1面1Sに形成されていてもよい。
【0130】
本変形例に係る超音波トランスデューサ400aにおいても、指向性の角度範囲を広く確保しつつ超音波トランスデューサ400aを小型化することができる。
【0131】
(付記)
上述した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0132】
<1>
内面取付面を有する外装部と、
前記内面取付面に取り付けられ、前記内面取付面に沿って延在している金属板部と、
前記金属板部に取り付けられた筒体と、
前記筒体に取り付けられており、前記金属板部に間隔をあけて対向する超音波振動子と、
前記金属板部に取り付けられており、前記筒体に一定の間隔をあけて前記筒体を挟んでいる拘束部とを備え、
前記内面取付面に直交する第1方向から見て、前記外装部および前記金属板部における前記筒体の内側に位置する部分であるメイン振動部は、前記超音波振動子とは前記第1方向において逆位相で共振振動し、
前記第1方向から見て、前記第1方向と直交する第2方向において前記外装部および前記金属板部における前記筒体の外側かつ前記拘束部の内側に位置する部分であるサブ振動部は、前記メイン振動部とは前記第1方向において逆位相で共振振動し、
前記第1方向から見て、前記金属板部の前記サブ振動部となる位置に、前記金属板部を貫通しつつ前記筒体の外縁に並行前記第1方向および前記第2方向の各々に直交する第3方向に延在するスリットが形成されており、
前記第1方向から見て、前記筒体と前記拘束部との間における前記第2方向の位置範囲において前記筒体の外縁を0%の位置とするとともに前記拘束部の内縁を100%の位置としたとき、前記スリットの中心は、35%以上の位置に配置されている、超音波トランスデューサ。
【0133】
<2>
内面取付面を有する外装部と、
前記内面取付面に取り付けられ、前記内面取付面に沿って延在している金属板部と、
前記金属板部に取り付けられた筒体と、
前記筒体に取り付けられており、前記金属板部に間隔をあけて対向する超音波振動子と、
前記金属板部に取り付けられており、前記筒体に一定の間隔をあけて前記筒体を挟んでいる拘束部とを備え、
前記内面取付面に直交する第1方向から見て、前記外装部および前記金属板部における前記筒体の内側に位置する部分であるメイン振動部は、前記超音波振動子とは前記第1方向において逆位相で共振振動し、
前記第1方向から見て、前記第1方向と直交する第2方向において前記外装部および前記金属板部における前記筒体の外側かつ前記拘束部の内側に位置する部分であるサブ振動部は、前記メイン振動部とは前記第1方向において逆位相で共振振動し、
前記金属板部における外装部側の第1面とは反対の第2面において、前記第1方向から見て前記金属板部の前記サブ振動部となる位置に、前記第1方向および前記第2方向の各々に直交する第3方向前記筒体の外縁に並行に延在する第1有底溝が形成されており、
前記第1方向から見て、前記筒体と前記拘束部との間における前記第2方向の位置範囲において前記筒体の外縁を0%の位置とするとともに前記拘束部の内縁を100%の位置としたとき、前記第1有底溝の中心は、25%以上60%以下の位置または83%以上の位置に配置されている、超音波トランスデューサ。
【0134】
<3>
内面取付面を有する外装部と、
前記内面取付面に取り付けられ、前記内面取付面に沿って延在している金属板部と、
前記金属板部に取り付けられた筒体と、
前記筒体に取り付けられており、前記金属板部に間隔をあけて対向する超音波振動子と、
前記金属板部に取り付けられており、前記筒体に一定の間隔をあけて前記筒体を挟んでいる拘束部とを備え、
前記内面取付面に直交する第1方向から見て、前記外装部および前記金属板部における前記筒体の内側に位置する部分であるメイン振動部は、前記超音波振動子とは前記第1方向において逆位相で共振振動し、
前記第1方向から見て、前記第1方向と直交する第2方向において前記外装部および前記金属板部における前記筒体の外側かつ前記拘束部の内側に位置する部分であるサブ振動部は、前記メイン振動部とは前記第1方向において逆位相で共振振動し、
前記金属板部における外装部側の第1面において、前記第1方向から見て前記金属板部の前記サブ振動部となる位置に、前記第1方向および前記第2方向の各々に直交する第3方向前記筒体の外縁に並行に延在する第2有底溝が形成されており、
前記第1方向から見て、前記筒体と前記拘束部との間における前記第2方向の位置範囲において前記筒体の外縁を0%の位置とするとともに前記拘束部の内縁を100%の位置としたとき、前記第2有底溝の中心は、16%以上76%以下の位置または94%以上の位置に配置されている、超音波トランスデューサ。
【0135】
<4>
前記第1面において、前記第1方向から見て前記金属板部の前記サブ振動部となる位置に、前記第3方向前記筒体の外縁に並行に延在する第2有底溝が形成されており、
前記第1方向から見て、前記第2有底溝の中心は、16%以上76%以下の位置または94%以上の位置に配置されている、<2>に記載の超音波トランスデューサ。
【0136】
<5>
前記第1有底溝として、前記第1方向から見て中心が25%以上60%以下の位置に配置されている第1有底溝および中心が83%以上の位置に配置されている第1有底溝の各々が前記第2面に形成されている、<4>に記載の超音波トランスデューサ。
【0137】
<6>
前記拘束部の基本モードの共振周波数は、前記超音波振動子の共振周波数に比較して20%以上低い周波数であり、
前記拘束部の高次モードの共振周波数は、前記超音波振動子の共振周波数に比較して20%以上高い周波数である、<1>から<5>のいずれか1つに記載の超音波トランスデューサ。
【0138】
<7>
前記超音波振動子は、積層された2つの圧電体を含み、
前記2つの圧電体の各々は、第1電極および第2電極に挟まれて交流電圧を印加可能に構成されており、
前記第1電極は、接地電位に固定されており、
前記筒体および前記拘束部の各々は、金属で構成されており、
前記第1電極、前記筒体、前記金属板部および前記拘束部は、機械的かつ電気的に互いに接続されて電磁シールドを構成している、<1>から<6>のいずれか1つに記載の超音波トランスデューサ。
【0139】
<8>
前記外装部は、ポリプロピレンを主成分とする樹脂で構成されており、
前記金属板部は、アルミニウム合金で構成されており、
前記メイン振動部および前記サブ振動部の各々を構成する部分の前記外装部の厚みに対する、前記金属板部の厚みの比率は100%以上160%以下である、<1>から<7>のいずれか1つに記載の超音波トランスデューサ。
【0140】
<9>
前記外装部は、ポリプロピレン主成分とする樹脂で構成されており、
前記金属板部は、ステンレス鋼で構成されており、
前記メイン振動部および前記サブ振動部の各々を構成する部分の前記外装部の厚みに対する、前記金属板部の厚みの比率は60%以上100%以下である、<1>から<7>のいずれか1つに記載の超音波トランスデューサ。
【0141】
<10>
前記金属板部、前記筒体および前記拘束部は、一体で形成されている、<1>から<9>のいずれか1つに記載の超音波トランスデューサ。
【0142】
上述した実施形態の説明において、組み合わせ可能な構成を相互に組み合わせてもよい。
【0143】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0144】
1S 第1面、2S 第2面、10 処理回路、100,100a,100b,200,300,400,400a 超音波トランスデューサ、110 外装部、110m メイン振動部、110s サブ振動部、111 内面、112 凹部、120,120a 筒体、130,130a,130b,130c 超音波振動子、131 圧電体、132 第1電極、133 第2電極、134 中間電極、135 振動板、140 拘束部、150,150b,150c,150d,150e,150f,250,350,450,450a 金属板部、151 スリット、251 第1有底溝、260 ダンピング材、351 第2有底溝、MS メイン音源、SS サブ音源。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37