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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 17/12 20060101AFI20240910BHJP
   F16H 57/023 20120101ALI20240910BHJP
   B60K 1/00 20060101ALI20240910BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20240910BHJP
   H02K 11/33 20160101ALI20240910BHJP
   B60L 9/18 20060101ALI20240910BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240910BHJP
【FI】
B60K17/12
F16H57/023
B60K1/00
H02K7/116
H02K11/33
B60L9/18 J
B60L50/60
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023563670
(86)(22)【出願日】2022-11-21
(86)【国際出願番号】 JP2022043028
(87)【国際公開番号】W WO2023095751
(87)【国際公開日】2023-06-01
【審査請求日】2024-03-18
(31)【優先権主張番号】P 2021190915
(32)【優先日】2021-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 丈元
(72)【発明者】
【氏名】山下 哲平
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 武史
(72)【発明者】
【氏名】山崎 彰一
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/133752(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/188904(WO,A1)
【文献】特開2021-151111(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112172489(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 17/12
F16H 57/023
B60K 1/00
H02K 7/116
H02K 11/33
B60L 9/18
B60L 50/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機と、
一対の車輪にそれぞれ駆動連結される一対の出力部材のうちの一方である第1出力部材と、
前記回転電機と一対の前記出力部材との間で駆動力を伝達する伝達機構と、
バッテリからの電力の供給を受け、前記回転電機に電力を供給するインバータ装置と、
前記回転電機、前記伝達機構、及び前記インバータ装置を収容するケースと、を備え、
前記回転電機と一対の前記出力部材とは、互いに平行な2つの軸に分かれて配置され、
前記伝達機構は、一対の前記出力部材の少なくとも一方に駆動連結される出力ギヤを、一対の前記出力部材と同軸に備え、
前記第1出力部材は、前記回転電機の前後の一方側に配置され、
前記出力ギヤは、軸方向に沿う軸方向視で、前記回転電機と前記インバータ装置のそれぞれと重複するように配置され、
前記インバータ装置は、前記第1出力部材に対して前記回転電機とは反対側、且つ、前記第1出力部材の上部に配置され、
前記ケースは、前記第1出力部材と前記インバータ装置との間を少なくとも部分的に仕切る周壁部を有し、
前記周壁部は、上下方向に沿う方向視で前記第1出力部材と重複する態様で車両前後方向かつ前記軸方向に延在する第1壁部と、車両前後方向に沿う方向視で前記第1出力部材と重複する態様で上下方向かつ前記軸方向に延在する第2壁部とを含み、
前記第1壁部及び前記第2壁部は、前記軸方向視で、前記出力ギヤに重複する、車両用駆動装置。
【請求項2】
前記インバータ装置は、上下方向に沿う方向視で、前記第1出力部材の軸心に重複する、請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記インバータ装置を収容する収容室は、車両前後方向かつ前記軸方向に延在する第1空間部と、上下方向かつ前記軸方向に延在する第2空間部とを含み、
前記第1空間部の上下方向の最大寸法は、前記第2空間部の車両前後方向の最大寸法よりも大きい、請求項1又は2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記インバータ装置は、上下方向に沿う方向視で、前記第1出力部材の軸心に重複する態様で車両前後方向及び前記軸方向に延在する第1構成要素と、車両前後方向に沿う方向視で、前記第1出力部材の軸心に重複する態様で上下方向及び前記軸方向に延在する第2構成要素とを含む、請求項3に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記インバータ装置は、パワーモジュールと、平滑コンデンサとを含み、
前記パワーモジュール及び前記平滑コンデンサのうちの、一方が前記第1空間部に配置され、他方が前記第2空間部に配置される、請求項3に記載の車両用駆動装置。
【請求項6】
前記平滑コンデンサが前記第1空間部に配置され、かつ、前記パワーモジュールが前記第2空間部に配置される、請求項5に記載の車両用駆動装置。
【請求項7】
前記軸方向視で前記第1空間部と前記第2空間部とが接続する側の角領域であって、前記軸方向視で前記出力ギヤに重複する角領域に、前記インバータ装置に電気的に接続される配線部が設けられる、請求項3に記載の車両用駆動装置。
【請求項8】
前記ケースの外部に配置されたケーブルと前記インバータ装置とを電気的に接続するためのコネクタが、前記軸方向視で、前記角領域に配置される、請求項7に記載の車両用駆動装置。
【請求項9】
前記ケースは、前記回転電機を収容する第1ケース部と、前記伝達機構を収容する第2ケース部とを含み、
前記インバータ装置は、車両前後方向で、前記第2ケース部の前記回転電機とは反対側の端部位置よりも、前記回転電機に近い側、かつ、上下方向で、前記第1ケース部の最も上側の位置より下側に、配置され、
前記ケースにおける上下方向の最も上側の位置及び最も下側の位置は、前記第1ケース部に位置する、請求項2に記載の車両用駆動装置。
【請求項10】
前記第1ケース部は、前記第2ケース部に対して前記軸方向の一方側に配置され、
前記第1ケース部は、前記軸方向の前記一方側の開口を覆う第1カバー部材を有し、
前記第2ケース部は、前記軸方向で前記一方側とは逆側の開口を覆う第2カバー部材を有し、
前記インバータ装置は、前記軸方向で前記第1ケース部と前記第2カバー部材の間に延在する、請求項9に記載の車両用駆動装置。
【請求項11】
車体へのマウント部を更に備え、
前記マウント部は、前記軸方向視で、前記出力ギヤと前記インバータ装置に重複する、請求項1に記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車輪に駆動連結される出力部材を、回転電機とインバータ装置との水平方向の間に配置する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-10269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来技術では、車両用駆動装置全体としての体格を有意に増加させることなく、インバータ装置の収容空間(インバータ装置のケースの容量)を増加させることが難しい。インバータ装置の収容空間は、車両用駆動装置の各種構成要素(例えば出力部材)の収容空間に対してケースの壁部により仕切られることが望ましいが、かかる壁部を、車両用駆動装置全体としての体格を有意に増加させることなく、配置することが有用である。
【0005】
そこで、1つの側面では、本開示は、車両用駆動装置全体としての体格を有意に増加させることなく、壁部により仕切られるインバータ装置の収容空間を効率的に増加させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一局面によれば、回転電機と、
一対の車輪にそれぞれ駆動連結される一対の出力部材のうちの一方である第1出力部材と、
前記回転電機と一対の前記出力部材との間で駆動力を伝達する伝達機構と、
バッテリからの電力の供給を受け、前記回転電機に電力を供給するインバータ装置と、
前記回転電機、前記伝達機構、及び前記インバータ装置を収容するケースと、を備え、
前記回転電機と一対の前記出力部材とは、互いに平行な2つの軸に分かれて配置され、
前記伝達機構は、一対の前記出力部材の少なくとも一方に駆動連結される出力ギヤを、一対の前記出力部材と同軸に備え、
前記第1出力部材は、前記回転電機の前後の一方側に配置され、
前記出力ギヤは、軸方向に沿う軸方向視で、前記回転電機と前記インバータ装置のそれぞれと重複するように配置され、
前記インバータ装置は、前記第1出力部材に対して前記回転電機とは反対側、且つ、前記第1出力部材の上部に配置され、
前記ケースは、前記第1出力部材と前記インバータ装置との間を少なくとも部分的に仕切る周壁部を有し、
前記周壁部は、上下方向に沿う方向視で前記第1出力部材と重複する態様で車両前後方向かつ前記軸方向に延在する第1壁部と、車両前後方向に沿う方向視で前記第1出力部材と重複する態様で上下方向かつ前記軸方向に延在する第2壁部とを含み、
前記第1壁部及び前記第2壁部は、前記軸方向視で、前記出力ギヤに重複する、車両用駆動装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、車両用駆動装置全体としての体格を有意に増加させることなく、壁部により仕切られるインバータ装置の収容空間を効率的に増加させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】車両における車両用駆動装置の搭載状態を示し上面視の概略図である。
図2】車両用駆動装置の要部断面図である。
図2A】車両用駆動装置を示すスケルトン図である。
図3】車両用駆動装置を概略的に示す3面図である。
図4】軸方向視で車両用駆動装置を概略的に示す図である。
図5】軸方向第1側から視た軸方向視で車両用駆動装置を概略的に示す図である。
図6図5に対する変形例の説明図である。
図7】軸方向第1側から視た軸方向視で車両用駆動装置の内部を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率はあくまでも一例であり、これに限定されるものではなく、また、図面内の形状等は、説明の都合上、部分的に誇張している場合がある。
【0010】
以下の説明では、鉛直方向V(図2等参照)は、車両用駆動装置100の使用状態での鉛直方向、すなわち、車両用駆動装置100をその使用状態での向きに配置した場合の鉛直方向を意味する。車両用駆動装置100は車両VC(図1参照)に搭載されて使用されるため、鉛直方向Vは、車両用駆動装置100が車両VCに搭載された状態(以下、「車両搭載状態」という)での鉛直方向、より具体的には、車両搭載状態であって車両VCが平坦路(水平面に沿う道路)に停止している状態での鉛直方向と一致する。そして、上側V1及び下側V2は、この鉛直方向Vにおける上側及び下側を意味する。また、以下の説明における各部材についての方向は、それらが車両用駆動装置100に組み付けられた状態での方向を表す。また、各部材についての寸法、配置方向、配置位置等に関する用語は、誤差(製造上許容され得る程度の誤差)による差異を有する状態を含む概念である。
【0011】
本明細書では、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力(トルクと同義)を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が1つ又は2つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材(例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等)が含まれる。なお、伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置(例えば、摩擦係合装置、噛み合い式係合装置等)が含まれていてもよい。
【0012】
本明細書では、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。また、本明細書では、2つの部材の配置に関して、「特定方向視で重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線に直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの部材の双方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを意味する。また、本明細書では、2つの部材の配置に関して、「特定方向の配置領域が重複する」とは、一方の部材の特定方向の配置領域内に、他方の部材の特定方向の配置領域の少なくとも一部が含まれることを意味する。
【0013】
図1は、車両VCにおける車両用駆動装置100の搭載状態を示した上面視の概略図である。図2は、車両用駆動装置100の要部断面図である。図2Aは、車両用駆動装置100を示すスケルトン図である。図3は、本実施例による車両用駆動装置100を概略的に示す3面図であり、内部が見えるように一部が透視で示されている。
【0014】
車両用駆動装置100は、図1に模式的に示すように、回転電機1と、一対の車輪W(図1参照)にそれぞれ駆動連結される一対の出力部材6と、回転電機1と一対の出力部材6との間で駆動力を伝達する伝達機構3と、回転電機1を駆動制御するインバータ装置90と、を備えている。車両用駆動装置100は、更に、回転電機1及びインバータ装置90を収容するケース2を備えている。ケース2は、一対の出力部材6及び伝達機構3も収容している。
【0015】
一対の出力部材6の一方である第1出力部材61は、一対の車輪Wの一方である第1車輪W1に駆動連結され、一対の出力部材6の他方である第2出力部材62は、一対の車輪Wの他方である第2車輪W2に駆動連結される。図1に示すように、車両用駆動装置100が搭載される車両VCは、第1車輪W1と一体的に回転する第1ドライブシャフト63と、第2車輪W2と一体的に回転する第2ドライブシャフト64と、を備えている。第1ドライブシャフト63は、例えば等速ジョイントを介して第1車輪W1に連結され、第2ドライブシャフト64は、例えば等速ジョイントを介して第2車輪W2に連結される。そして、第1出力部材61は、第1ドライブシャフト63と一体的に回転するように第1ドライブシャフト63に連結され、第2出力部材62は、第2ドライブシャフト64と一体的に回転するように第2ドライブシャフト64に連結される。
【0016】
車両用駆動装置100は、回転電機1の出力トルクを、一対の出力部材6を介して一対の車輪Wに伝達させて、車両用駆動装置100が搭載された車両VCを走行させる。すなわち、回転電機1は、一対の車輪Wの駆動力源である。一対の車輪Wは、車両VCにおける左右一対の車輪(例えば、左右一対の前輪、又は左右一対の後輪)である。回転電機1は、例えば、3相交流(多相交流の一例)で駆動される交流回転電機であってよい。回転電機1は、直流電力と交流電力との間の電力変換を行うインバータ装置90を介して、バッテリBA(キャパシタ等の蓄電装置を含む)と電気的に接続されており、バッテリBAから電力の供給を受けて力行し、或いは、車両VCの慣性力等により発電した電力を蓄電装置に供給して蓄電させる。
【0017】
図2に示すように、回転電機1と一対の出力部材6とは、互いに平行な2つの軸(具体的には、第1軸C1及び第2軸C2)に分かれて配置されている。具体的には、回転電機1が、第1軸C1上に配置され、一対の出力部材6が、第1軸C1とは異なる第2軸C2上に配置されている。第1軸C1及び第2軸C2は、互いに平行に配置される軸(仮想軸)である。伝達機構3は、一対の出力部材6の少なくとも一方に駆動連結される出力ギヤ30を、一対の出力部材6と同軸に(すなわち、第2軸C2上に)備えている。
【0018】
図1に示すように、車両用駆動装置100は、軸方向Aが車両左右方向に沿う向きで車両VCに搭載される。軸方向Aは、第1軸C1及び第2軸C2に平行な方向、言い換えれば、第1軸C1及び第2軸C2の間で共通する軸方向である。すなわち、軸方向Aは、回転電機1の回転軸心が延びる方向であり、一対の出力部材6の回転軸心が延びる方向でもある。ここで、軸方向Aの一方側を軸方向第1側A1とし、軸方向Aの他方側(軸方向Aにおける軸方向第1側A1とは反対側)を軸方向第2側A2とする。軸方向第1側A1は、軸方向Aにおける伝達機構3に対して回転電機1が配置される側である。図2に示すように、第1出力部材61は、一対の出力部材6のうちの軸方向第1側A1に配置される方の出力部材6であり、第2出力部材62は、一対の出力部材6のうちの軸方向第2側A2に配置される方の出力部材6である。
【0019】
図1に示すように、車両用駆動装置100は、軸方向第1側A1が車両右側となり、軸方向第2側A2が車両左側となる向きで、車両VCに搭載されてよい。この場合、第1出力部材61が駆動連結される第1車輪W1は、右輪であり、第2出力部材62が駆動連結される第2車輪W2は、左輪である。図1では、車両用駆動装置100が、左右一対の前輪を駆動する前輪駆動方式の駆動装置である場合を想定している。よって、図1に示す例では、第1車輪W1は右前輪であり、第2車輪W2は左前輪である。
【0020】
図2に示すように、回転電機1は、ロータ10及びステータ11を備えている。ステータ11は、ケース2に固定され、ロータ10は、ステータ11に対して回転可能にケース2に支持されている。回転電機1は、インナロータ型の回転電機であってよく、この場合、ロータ10は、ステータ11に対して径方向の内側に、径方向に沿う径方向視でステータ11と重複するように配置されてよい。ここでの径方向は、第1軸C1を基準とする径方向、言い換えれば、回転電機1の回転軸心を基準とする径方向である。
【0021】
ステータ11は、ステータコア12と、ステータコア12から軸方向Aに突出するコイルエンド部13と、を備えている。ステータコア12にはコイルが巻装されており、コイルにおけるステータコア12から軸方向Aに突出する部分がコイルエンド部13を形成している。コイルエンド部13は、ステータコア12に対して軸方向Aの両側に形成されている。
【0022】
伝達機構3は、回転電機1と出力ギヤ30との間の動力伝達経路に、減速機構34を備えている。減速機構34は、任意であり、カウンタギヤを用いる減速機構や、遊星歯車を用いる減速機構等を含んでよい。本実施例では、一例として、減速機構34は、遊星歯車機構を含み、減速機構34は、回転電機1と同軸に配置される。減速機構34の出力ギヤ(キャリア)342は、差動歯車機構5の出力ギヤ30と径方向に噛み合う。このような車両用駆動装置100は、2軸(第1軸C1及び第2軸C2)からなるコンパクトな構成を有することができる。なお、変形例では、車両用駆動装置100は、3軸以上を有してもよい。
【0023】
本実施例では、減速機構34は、回転電機1に駆動連結される態様で、回転電機1と同軸に(すなわち、第1軸C1上に)配置されている。減速機構34のサンギヤ341に噛み合う入力部材16は、ロータ10と一体的に回転するようにロータ10に連結されている。図2に示す例では、車両用駆動装置100は、ロータ10が固定されるロータ軸15を備えており、入力部材16は、ロータ軸15と一体的に回転するようにロータ軸15に連結されている。具体的には、入力部材16における軸方向第1側A1の部分が、ロータ軸15における軸方向第2側A2の部分に連結(ここでは、スプライン連結)されてよい。このような構成とは異なり、車両用駆動装置100がロータ軸15を備えず、ロータ10が入力部材16(具体的には、入力部材16における軸方向第1側A1の部分)に固定される構成とすることもできる。
【0024】
また、伝達機構3は、差動歯車機構5を更に備えている。差動歯車機構5は、回転電機1の側から伝達される駆動力を、一対の出力部材6に分配する。差動歯車機構5は、一対の出力部材6と同軸に(すなわち、第2軸C2上に)配置されてよい。差動歯車機構5は、回転電機1の側から出力ギヤ30に伝達される駆動力を一対の出力部材6に分配する。すなわち、出力ギヤ30は、差動歯車機構5を介して、一対の出力部材6の双方に駆動連結されている。なお、差動歯車機構5は、傘歯車式の差動歯車機構であってよく、出力ギヤ30は、差動歯車機構5が備える差動ケース部50と一体的に回転するように当該差動ケース部50に連結されてよい。
【0025】
図2に示す例では、差動歯車機構5は、出力ギヤ30の回転を、第1サイドギヤ51と第2サイドギヤ52とに分配する。第1サイドギヤ51は、第1出力部材61と一体的に回転し、第2サイドギヤ52は、第2出力部材62と一体的に回転する。第1サイドギヤ51は、第1出力部材61を構成する部材(ここでは、軸部材)とは別の部材に形成されてよく、第1出力部材61と一体的に回転するように第1出力部材61に連結(ここでは、スプライン連結)されてよい。第1出力部材61における少なくとも軸方向第1側A1の部分は、軸方向Aに延びる筒状(具体的には、円筒状)に形成されており、第1ドライブシャフト63(図1参照)は、第1出力部材61の内部(内周面に囲まれる空間)に、軸方向第1側A1から挿入されてよい。また、第2サイドギヤ52には、第2出力部材62が連結されてよい。なお、第2出力部材62は、第2ドライブシャフト64により実現されてもよい。
【0026】
本実施例では、差動歯車機構5の出力ギヤ30は、好ましくは、ケース2における軸方向第2側A2端部付近に配置される。この場合、減速機構34のうちの、出力ギヤ30と噛み合うギア(図示せず)が、減速機構34の最も軸方向第2側A2に配置されてよい。この場合、出力ギヤ30を車両用駆動装置100全体における軸方向第2側A2に寄せて配置できる。
【0027】
本実施例では、ケース2は、モータケース部21と、伝達機構ケース部22と、出力軸ケース部23と、インバータケース部24と、を一体化した形態で含む。ここで、「一体化した形態」とは、ボルト等の締結部材で一体化した形態や、一体成形(例えば鋳造やアルミナイジング等を利用した鋳込み)により一体化した形態を含む。
【0028】
モータケース部21は、回転電機1を収容するモータ収容室S1を形成し、伝達機構ケース部22は、伝達機構3を収容する伝達機構収容室S2を形成し、出力軸ケース部23は、第1出力部材61を収容する出力軸収容室S3を形成し、インバータケース部24は、インバータ装置90を収容するインバータ収容室S4を形成する。なお、モータケース部21がモータ収容室S1を形成するとは、モータ収容室S1を境界付ける壁部がモータケース部21を形成することを意味する。これは、伝達機構収容室S2、出力軸ケース部23、及びインバータケース部24についても同様である。
【0029】
本実施例では、出力軸ケース部23を有するので、第1出力部材61をケース2の外部に設ける場合に比べて、第1出力部材61を外部環境(例えば飛び石等)から有効に保護できる。また、第1出力部材61と周辺部品との間で確保すべきクリアランスを低減できる。ただし、変形例では、出力軸ケース部23の一部又は全部が省略されてもよい。
【0030】
なお、ケース2は、複数の部材(ケース部材やカバー部材)を接合して形成されてよい。従って、ケース2を形成する一のケース部材は、モータケース部21、伝達機構ケース部22、出力軸ケース部23、及びインバータケース部24のうちの、2つ以上のケース部を形成する場合がある。
【0031】
また、ケース2により形成されるモータ収容室S1、伝達機構収容室S2、出力軸収容室S3、及びインバータ収容室S4は、互いに完全に隔離されてもよいし、部分的に連通してもよいし、境界を有さない態様で共通化されてもよい。例えば、モータ収容室S1及び出力軸収容室S3は、互いを仕切る隔壁を有さない態様で、共通化されてもよい。この場合、回転電機1と第1出力部材61とが、ケース2が形成する共通の収容室(具体的には、モータ収容室S1及び出力軸収容室S3)に収容されることになる。
【0032】
以下の説明では、ケース2は、一例として、ケース部材200と、モータカバー部材201と、デフカバー部材202と、インバータカバー部材203とを、接合して形成されるものとする。なお、接合方法は、ボルト等による締結であってよい。
【0033】
ケース部材200は、一ピースの部材(例えば、ダイカスト法によって形成された、材質を共通とする1つの部材)に形成されてよい。この場合、モータ収容室S1と伝達機構収容室S2は、1枚の隔壁26によって区画されてよい。
【0034】
ケース部材200は、軸方向第1側A1において軸方向Aに開口するとともに、軸方向第2側A2において軸方向Aに開口する。
【0035】
モータカバー部材201は、ケース部材200における軸方向第1側A1の開口(すなわちモータ収容室S1の軸方向第1側A1の開口)を覆うように設けられる。モータカバー部材201は、一ピースの部材に形成されてよい。モータカバー部材201は、ケース部材200の軸方向第1側A1の端面(接合面)に接合されてよい。この場合、モータカバー部材201とケース部材200との間の接合面(合わせ面)221は、軸方向Aに垂直な平面内に延在してよい。
【0036】
デフカバー部材202は、ケース部材200における軸方向第2側A2の開口(すなわち伝達機構収容室S2の軸方向第2側A2側の開口)を覆うように設けられる。デフカバー部材202は、一ピースの部材に形成されてよい。デフカバー部材202は、ケース部材200の軸方向第2側A2の端面(接合面)に接合されてよい。この場合、デフカバー部材202とケース部材200との間の接合面(合わせ面)222は、軸方向Aに垂直な平面内に延在してよい。
【0037】
インバータカバー部材203は、ケース部材200におけるインバータ収容室S4の開口を覆うように設けられる。インバータカバー部材203は、一ピースの部材に形成されてよい。
【0038】
インバータ装置90は、モジュールの形態であってよく、ボルト等によってインバータケース部24を形成する壁部に固定されてよい。インバータ装置90は、インバータ回路を構成する複数のスイッチング素子を含むパワーモジュールPM(後述)と、インバータ回路を制御する制御装置が実装された制御基板SB(後述)と、インバータ回路の直流側の正負両極間電圧を平滑化する平滑コンデンサCM(後述)と、を備える。また、インバータ装置90は、電流センサのような各種センサや、Yコンデンサのようなフィルタ(図示せず)、各種配線(コネクタやバスバーを含む)等を更に備えてもよい。また、インバータ装置90は、パワーモジュールPMを冷却するための冷却水路(後述)を含んでよい。なお、平滑コンデンサCMは、複数のコンデンサ素子及び端子を樹脂でモールドしてなるモジュールの形態であってよい。
【0039】
ここで、図3に示すように、軸方向Aに沿う軸方向視で回転電機1とインバータ装置90とが並ぶ方向を第1方向Xとし、軸方向A及び第1方向Xの双方に直交する方向を第2方向Yとする。また、第1方向Xの一方側を第1方向第1側X1とし、第1方向Xの他方側(第1方向Xにおける第1方向第1側X1とは反対側)を第1方向第2側X2とし、第2方向Yの一方側を第2方向第1側Y1とし、第2方向Yの他方側(第2方向Yにおける第2方向第1側Y1とは反対側)を第2方向第2側Y2とする。第1方向第1側X1は、第1方向Xにおけるインバータ装置90に対して回転電機1が配置される側である。
【0040】
以下の説明では、第2方向は、上下方向の成分を有するものとする。この場合、第2方向は、車両VCにおける車両用駆動装置100の搭載状態で、重力方向(鉛直方向)に平行であってもよいし、傾斜してもよい。例えば、車両用駆動装置100は、第2方向第1側Y1が上側V1となり、第2方向第2側Y2が下側V2となる向きで、車両VCに搭載されてよい。また、車両用駆動装置100は、第1方向第1側X1が前側L1(車両前後方向Lの前側)となり、第1方向第2側X2が後側L2(車両前後方向Lの後側)となる向きで、車両VCに搭載されてよい。図1に示すように、車両用駆動装置100は、車両VCにおける車両前後方向Lの中央部よりも前側L1に搭載されてよい。なお、車両用駆動装置100が、車両VCにおける車両前後方向Lの中央部よりも後側L2に搭載される場合には、車両用駆動装置100を、第1方向第1側X1が後側L2となり、第1方向第2側X2が前側L1となる向きで車両VCに搭載することで、インバータ装置90が回転電機1よりも車両前後方向Lの中央側に配置される構成とすることができる。このように車両用駆動装置100が車両VCにおける車両前後方向Lの中央部よりも後側L2に搭載される場合、車両用駆動装置100により駆動される一対の車輪Wは、例えば左右一対の後輪とされてよい。
【0041】
車両VCが、左右一対の前輪及び左右一対の後輪を備える場合に、左右一対の前輪及び左右一対の後輪のうちの車両用駆動装置100により駆動されない方(図1に示す例では、左右一対の後輪)が、車両用駆動装置100以外の駆動装置により駆動される構成とすることもできる。車両用駆動装置100以外の駆動装置は、例えば、内燃機関(回転電機以外の駆動力源の一例)の出力トルクを駆動対象の一対の車輪に伝達させる構成の駆動装置、回転電機(車両用駆動装置100が備える回転電機1とは別の回転電機)の出力トルクを駆動対象の一対の車輪に伝達させる構成の駆動装置、或いは、内燃機関及び回転電機(車両用駆動装置100が備える回転電機1とは別の回転電機)の双方の出力トルクを駆動対象の一対の車輪に伝達させる構成の駆動装置とされる。車両用駆動装置100以外の駆動装置を、車両用駆動装置100と同じ構成の駆動装置とすることもできる。
【0042】
ところで、車両用駆動装置100のうちの、回転電機1は、軸方向視で最も大きい第2方向の体格を有しうる。なお、回転電機1の体格は、必要とされる出力等に応じて決まる。従って、第2方向の車両用駆動装置100全体としての体格を低減するためには、第1方向X視で、車両用駆動装置100の主要な構成要素(回転電機1以外の主要な構成要素)を回転電機1に重複するように配置することが有用となる。特に、車両用駆動装置100が比較的大きい外径を有する出力ギヤ30を含む場合、出力ギヤ30と回転電機1との位置関係は、第2方向の車両用駆動装置100全体としての体格に有意に影響しうる。
【0043】
この点を考慮して、本実施例では、出力ギヤ30は、好ましくは、第2方向の車両用駆動装置100全体としての体格に有意に影響しないように、回転電機1に対して配置される。すなわち、出力ギヤ30の中心軸(すなわち第2軸C2)と回転電機1の中心軸(すなわち第1軸C1)との間の第2方向Yのオフセット量は、比較的小さく設定される。具体的には、出力ギヤ30の中心軸と同心の一対の出力部材6は、第1方向視で、車両用駆動装置100のロータ軸15と重複するように配置される。この場合、出力ギヤ30と回転電機1とは、出力部材6の外形(例えば円形の外形部分)が、第1方向視で、ロータ軸15の外形(例えば円形の外形部分)と重複するように、互いに対する位置関係が設定されてよい。あるいは、出力部材6の中心軸(すなわち第2軸C2)が、第1方向視で、ロータ軸15と重複するように、互いに対する位置関係が設定されてもよいし、あるいは、ロータ軸15の中心軸(すなわち第1軸C1)が、第1方向視で、一対の出力部材6と重複するように、互いに対する位置関係が設定されてもよい。出力ギヤ30と回転電機1とを、このような位置関係で配置することで、第2方向の車両用駆動装置100全体としての体格に対する出力ギヤ30の影響を低減又は無くすことができる。すなわち、第2方向の車両用駆動装置100全体としての体格は、実質的に回転電機1の体格(及びそれに伴いモータケース部21の体格)によって決まるので、同じ回転電機1の体格の条件下で、第2方向の車両用駆動装置100全体としての体格の最小化を図ることができる。
【0044】
次に、図4以降を更に参照して、本実施例によるインバータ装置90の配置に関する特徴的な構成について説明する。
【0045】
図4は、軸方向視で車両用駆動装置100を概略的に示す図であり、ライン400を境界に軸方向Aにオフセットした異なる部分を示している。図5は、軸方向第1側A1から視た軸方向視で車両用駆動装置100を概略的に示す図であり、内部が見えるように一部が透視で示されている。図6は、図5に対する変形例の説明図である。
【0046】
本実施例では、インバータケース部24は、軸方向視でL字型の形態であり、上側ケース部241と、側方ケース部242とを含む。上側ケース部241及び側方ケース部242は、互いに連通する収容空間を形成する。
【0047】
具体的には、上側ケース部241は、第1方向Xかつ軸方向Aに延在し、内部に第1インバータ収容室S41を形成する。側方ケース部242は、第2方向Yかつ軸方向Aに延在し、内部に第2インバータ収容室S42を形成する。この場合、インバータケース部24は、差動ケース部50及び第1出力部材61まわりを(差動ケース部50及び第1出力部材61に対して第1方向X及び第2方向Yに対向する態様で)軸方向Aに延在する。すなわち、インバータケース部24は、出力軸ケース部23における差動ケース部50及び第1出力部材61を囲むように延在する周壁部250(第2軸C2まわりの全周のうちの一部に係る周壁部)を形成する。周壁部250は、出力軸収容室S3に対してインバータ収容室S4を仕切る態様で延在する。この場合、周壁部250は、第1方向Xかつ軸方向Aに延在する第1壁部251と、第2方向Yかつ軸方向Aに延在する第2壁部252とを含み、第1壁部251及び第2壁部252は、軸方向視で、出力ギヤ30に重複する。これにより、車両用駆動装置100全体としての第1方向Xの体格及び第2方向Yの体格を、周壁部250に起因して増加させることなく、出力軸収容室S3に対してインバータ収容室S4を仕切ることができる。
【0048】
第1壁部251及び第2壁部252は、第2軸C2まわりの各部品(差動ケース部50及び第1出力部材61)に対して所定のクリアランスを確保しつつ、軸方向視で第2軸C2に近づく態様で形成されてよい。これにより、インバータ装置90の配置スペースを効率的に増加できる。なお、図4に示す例では、第1壁部251及び第2壁部252は、軸方向視で、第2軸C2まわりの円弧状の形態であって第1出力部材61と同心状の円弧状の形態であるが、他の形態(例えば後述する角部249付近の角Rが比較的大きい形態)であってもよい。
【0049】
第1インバータ収容室S41及び第2インバータ収容室S42は、互いに連通してよく、第1方向第2側X2と第2方向第1側Y1の角部で直交する関係であってよい。この場合、インバータケース部24は、第1方向第2側X2と第2方向第1側Y1の角部249(図4参照)を有する。
【0050】
第1インバータ収容室S41及び第2インバータ収容室S42は、軸方向Aの延在範囲が重複する。例えば、第1インバータ収容室S41及び第2インバータ収容室S42は、軸方向Aの延在範囲が略同じであってよい。あるいは、第1インバータ収容室S41及び第2インバータ収容室S42の一方は、他方よりも軸方向の延在範囲が短く設定されてもよい。
【0051】
インバータケース部24は、好ましくは、ケース2全体としての体格増加を防止するために、ケース2全体としての第2方向Yの体格に影響しないように形成される。本実施例では、ケース2全体としての第2方向Yの体格は、回転電機1の第2方向Yの体格により決まり(図3及び図4のラインP0及びP2参照)、具体的には、モータケース部21の第2方向Yの体格により決まる。従って、インバータケース部24は、モータケース部21の最も第2方向第1側Y1の位置(図3及び図4のラインP2参照)よりも第2方向第2側Y2に配置される。この場合、ケース2全体としての第2方向Yの体格の低減を図ることができる。
【0052】
また、インバータケース部24の上側ケース部241は、好ましくは、軸方向Aでケース部材200の両端面の間に配置される。すなわち、インバータケース部24は、好ましくは、モータカバー部材201とケース部材200との間の接合面(合わせ面)221と、デフカバー部材202とケース部材200との間の接合面(合わせ面)222との軸方向Aの間に、配置される。この場合、インバータケース部24が軸方向Aでケース部材200の両端面から突出して形成される場合に比べて、インバータケース部24をデフカバー部材202における最も第2方向第1側Y1の位置よりも第2方向第2側Y2に配置することが容易である。すなわち、合わせ面221、222に係るフランジよりも第2方向第2側Y2にインバータケース部24の第2方向第2側Y2を配置できるので、インバータケース部24をデフカバー部材202における最も第2方向第1側Y1の位置よりも第2方向第2側Y2に配置することが容易となる。
【0053】
また、インバータケース部24は、好ましくは、ケース2全体としての体格増加を防止するために、ケース2全体としての第1方向Xの体格に影響しないように形成される。本実施例では、ケース2全体としての第1方向Xの体格のうちの、第1方向第2側X2の境界(外形)は、差動歯車機構5の体格により決まり、具体的には、伝達機構ケース部22の第1方向Xの体格により決まる。従って、インバータケース部24は、伝達機構ケース部22の最も第1方向第2側X2の位置(第1方向第2側X2の端部位置であり、図3及び図4のラインP1参照)よりも、第1方向第1側X1(回転電機1に近い側)に配置される。この場合、ケース2全体としての第1方向Xの体格の低減を図ることができる。
【0054】
なお、本実施例では、インバータ収容室S4は、第1方向第2側X2が第1方向Xに開口してよく、この場合、インバータカバー部材203は、軸方向Aかつ第2方向Yに延在してよい。この場合、インバータカバー部材203は、伝達機構ケース部22の最も第1方向第2側X2の位置よりも、第1方向第1側X1(回転電機1に近い側)に延在してよい。
【0055】
なお、第1インバータ収容室S41及び第2インバータ収容室S42のそれぞれの容量は、任意であるが、収容するインバータ装置90の構成要素に応じて決定されてよい。本実施例では、一例として、軸方向視での回転電機1の体格が出力ギヤ30の体格よりも大きいため、第2軸C2まわりでは、第2方向第1側Y1の方が第1方向第2側X2よりも、デッドスペース(伝達機構ケース部22の最も第1方向第2側X2の位置よりも第1方向第1側X1かつモータケース部21の最も第2方向第1側Y1の位置よりも第2方向第2側Y2のスペース)が形成されやすい。従って、第1インバータ収容室S41の第2方向Yの寸法(例えば最大寸法や平均寸法)は、好ましくは、第2インバータ収容室S42の第1方向Xの同寸法よりも大きく設定されてよい。この場合、インバータケース部24を、モータケース部21の最も第2方向第1側Y1の位置よりも第2方向第2側Y2に、かつ、伝達機構ケース部22の最も第1方向第2側X2の位置よりも第1方向第1側X1(回転電機1に近い側)に、配置することが容易となる。
【0056】
以下では、インバータ装置90の構成要素のうちの、上側ケース部241内に配置される構成要素を、第1インバータ部91と称し、側方ケース部242内に配置される構成要素を、第2インバータ部92とも称する。なお、第1インバータ部91は、好ましくは、平滑コンデンサCMを含んでよく、第2インバータ部92は、好ましくは、パワーモジュールPMを含んでよい。このような配置は、平滑コンデンサCMのほうがパワーモジュールPMよりも、必要な搭載スペースの厚み(高さ)が大きい場合に好適となる。
【0057】
図4に示すように、本実施例では、回転電機1とインバータ装置90の第1インバータ部91又は上側ケース部241とは、それぞれの鉛直方向Vの配置領域が重複するように配置されている。そのため、一例として、軸方向Aに直交する水平方向H(言い換えれば、軸方向A及び鉛直方向Vに直交する方向)を、第1方向Xとして定義することができる。この場合、図4に示すように、第2方向Yは鉛直方向Vに平行な方向となる。また、別例として、軸方向視で、第1軸C1と第1インバータ部91又は上側ケース部241の中心とを通る仮想直線に沿う方向を、第1方向Xとして定義することもできる。ここで、軸方向視での第1インバータ部91又は上側ケース部241の中心とは、第1インバータ部91又は上側ケース部241の軸方向視での外形(外縁)を成す図形の重心とすることができる。図4に示す例では、軸方向Aに直交する水平方向Hと、軸方向視で仮想直線に沿う方向とは、互いに平行な方向となる。すなわち、図4に示す例では、上記2つの定義のいずれによっても、第1方向Xは同じ方向に定義される。
【0058】
また、図4に示すように、第1出力部材61は、回転電機1及びインバータ装置90(あるいはインバータ装置90の第2インバータ部92又は側方ケース部242)の双方が配置される第2方向Yの位置において、回転電機1とインバータ装置90との第1方向Xの間に挟まれて配置されている。第1出力部材61における回転電機1とインバータ装置90との第1方向Xの間に挟まれる部分は、回転電機1と軸方向Aの配置領域が重複すると共に、インバータ装置90と軸方向Aの配置領域が重複するように配置されている(図3参照)。そして、図4に示すように、出力ギヤ30は、軸方向視で、回転電機1とインバータ装置90とのそれぞれと重複するように配置されてよい。具体的には、出力ギヤ30における第1方向第1側X1の部分が軸方向視で回転電機1と重複し、出力ギヤ30における第1方向第2側X2の部分が軸方向視でインバータ装置90と重複するように、出力ギヤ30が配置されてよい。図3に示すように、出力ギヤ30は、回転電機1及びインバータ装置90に対して軸方向Aの一方側(具体的には、軸方向第2側A2)に配置されている。
【0059】
なお、本実施例では、回転電機1及びインバータ装置90は、それぞれの軸方向Aの配置領域が重複しない態様で配置されてよい。すなわち、インバータ装置90又はインバータケース部24は、回転電機1よりも第1方向第2側X2に配置されてもよい。ただし、インバータ装置90又はインバータケース部24は、軸方向第1側A1の一部が、回転電機1の軸方向第2側A2の一部と、軸方向Aの配置領域が重複してもよい。これは、第1方向Xに関しても同様である。具体的には、インバータ装置90又はインバータケース部24は、回転電機1よりも第1方向第2側X2に配置されてもよい。すなわち、インバータ装置90又はインバータケース部24は、伝達機構3のうちの第2軸C2まわりの部分(伝達機構3のうちの減速機構34除く部分)に対して第2方向視で重複する領域に配置されてもよい。ただし、インバータ装置90又はインバータケース部24は、第1方向第1側X1の一部が、回転電機1又は減速機構34の第1方向第2側X2の一部と、第1方向Xの配置領域が重複してもよい。
【0060】
本実施例では、車両搭載状態において、インバータ装置90の側方ケース部242の少なくとも一部(図4に示す例では、一部のみ)が、第2軸C2よりも下側V2に配置される。なお、車両搭載状態において、軸方向視で、インバータ装置90の側方ケース部242の第2方向Yの位置が第1出力部材61の第2方向Yの位置に重複する限り、インバータ装置90の側方ケース部242の全体が、第2軸C2よりも上側V1に配置される構成とすることもできる。
【0061】
本実施例では、第1出力部材61が、回転電機1及びインバータ装置90の双方が配置される第2方向Yの位置において、回転電機1とインバータ装置90との第1方向Xの間に挟まれて配置されている。よって、回転電機1、インバータ装置90、及び第1出力部材61と同軸に配置される出力ギヤ30のそれぞれの第2方向Yの配置領域を重複させて、車両用駆動装置100全体として第2方向Yの体格の小型化を図ることができる。そして、本実施例では、出力ギヤ30が、軸方向視で、回転電機1とインバータ装置90とのそれぞれと重複するように配置されている。そのため、上述したように第1出力部材61が回転電機1とインバータ装置90との第1方向Xの間に挟まれて配置される構成としつつ、軸方向視で出力ギヤ30と重複する空間を有効に利用することで、回転電機1とインバータ装置90とを第1方向Xに近づけて配置することができる。これにより、車両用駆動装置100全体として第1方向Xの体格の小型化を図ることもできる。
【0062】
このようにして、本実施例によれば、車両用駆動装置100全体としての第1方向Xの体格及び第2方向Yの体格の小型化を図ること、すなわち、車両用駆動装置100の軸方向視での寸法の小型化を図ることができる。これにより、車両VCへの車両用駆動装置100の搭載性を高めることができる。
【0063】
なお、本実施例では、回転電機1とインバータ装置90の第2インバータ部92又は側方ケース部242とが、出力ギヤ30と同軸に配置される第1出力部材61に対して第1方向の両側に分かれて配置されている。そのため、回転電機1が軸方向視で出力ギヤ30と重複する割合と、インバータ装置90の第2インバータ部92又は側方ケース部242が軸方向視で出力ギヤ30と重複する割合との双方を高めやすくなっており、これにより、車両用駆動装置100の軸方向視での寸法の小型化を図りやすくなっている。
【0064】
また、本実施例によれば、インバータ装置90が収容されるインバータケース部24は、上側ケース部241と側方ケース部242とを含むので、インバータケース部24が上側ケース部241のみ又は側方ケース部242のみからなる場合に比べて、全体としての容量(インバータ収容室S4の容積)を効率的に増加させることができる。これにより、車両用駆動装置100全体としての第1方向Xの体格及び第2方向Yの体格を、インバータ装置90に起因して増加させることなく、インバータ装置90の効率的な配置(レイアウト)を実現できる。
【0065】
特に本実施例によれば、インバータ装置90の第1インバータ部91又は上側ケース部241は、第2方向視で、第1出力部材61の第2軸C2に重なる態様で、比較的広い第1方向Xの範囲にわたって延在する。図示の例では、インバータ装置90の第1インバータ部91又は上側ケース部241は、軸方向視で、第2軸C2よりも第1方向第1側X1まで延在する。これにより、第1インバータ部91又は上側ケース部241に、比較的大きい第1方向Xの体格を有する第1インバータ部91を配置することが可能となる。なお、本実施例の場合は、第1インバータ部91は、平滑コンデンサCMであるが、パワーモジュールPMであってもよいし、第1インバータ部91及び平滑コンデンサCMの双方を含んでもよい。
【0066】
また、本実施例によれば、軸方向視でインバータケース部24の角部249に重複する領域(角領域)を利用して、インバータ装置90に係る各種配線(例えば図4に示すように、バスバーB1)を配線部として集約することも可能である。このような軸方向視でインバータケース部24の角部249に重複する領域は、軸方向視で出力ギヤ30に重複する領域を含むので、車両用駆動装置100の軸方向視での寸法の大型化を招くことなく、各種配線を集約できる。従って、軸方向視でインバータケース部24の角部249に重複する領域に、コネクタ等を配置することしてもよい。なお、集約対象の各種配線は、任意であるが、例えば高圧のバッテリBA(図1参照)からの電力供給を受けるための高圧系配線(電源系の配線)や、制御系の低圧系配線を含んでもよい。また、軸方向視でインバータケース部24の角部249に重複する領域に配置される各種配線の一部又は全部は、ケース2(インバータケース部24)の外部に配置されてもよい。例えば、図3に示す例では、軸方向視でインバータケース部24の角部249に重複する領域に、コネクタCN10、CN11が配置されている。この場合、コネクタCN10は、軸方向第2側A2に配置され、コネクタCN11は、軸方向第1側A1に配置されている。コネクタCN10、CN11は、雄側又は雌側がインバータケース部24に固定されてよい。コネクタCN10、CN11は、ケース2の外部に配置された配線ケーブル(図示せず)とインバータ装置90とを電気的に接続するための配線部を形成してよい。コネクタCN10、CN11は、一方が高圧のバッテリBA(図1参照)からの電力供給を受けるための高圧系配線用であり、他方が制御系の低圧系配線用であってよい。この場合、コネクタCN10、CN11の間に適切な絶縁距離を容易に確保できる。なお、変形例では、コネクタCN10、CN11の一方が省略されてもよい。
【0067】
また、本実施例において、バッテリBAからの電力供給を受けるための高圧系のコネクタCN1(図4参照)は、減速機構34の第2方向第1側Y1に配置されてもよい。この場合、減速機構34の第2方向第1側Y1に形成されやすいデッドスペース(車両用駆動装置100の第2方向Yの体格に影響しないデッドスペース)を利用して、コネクタCN1を配置できる。この場合、高圧系のコネクタCN1(図4参照)は、図3に示したコネクタCN10、CN11のうちの、高圧系用のコネクタの代わりとして配置されてもよい。
【0068】
ところで、差動歯車機構5においては、第2軸C2まわりの体格に関して、差動歯車機構5の各構成要素のうちの、出力ギヤ30が最も大きくなる傾向がある。従って、差動歯車機構5のうちの出力ギヤ30を軸方向第2側A2に寄せて配置する場合、第2軸C2まわりの空間のうちの、出力ギヤ30よりも軸方向第1側A1側の空間が、径方向に比較的広くかつ軸方向Aに連続した態様で確保でき、他の構成要素(例えば後述する水路等)を効率的に配置できる。
【0069】
より具体的には、本実施例では、第2軸C2まわりには、軸方向第2側A2から軸方向第1側A1に向かって順に、主に、出力ギヤ30、差動ケース部50、及び第1出力部材61が設けられる。この場合、第2軸C2まわりの搭載スペース(他の部材の搭載スペース)は、軸方向第2側A2から軸方向第1側A1に向かって徐々に大きくなる。すなわち、第2軸C2まわりの搭載スペース(他の部材の搭載スペース)は、軸方向第2側A2から軸方向第1側A1に向かって徐々に大きくなる。従って、本実施例では、車両用駆動装置100は、第2軸C2まわりの差動ケース部50の軸方向Aの位置において、車両VCの車体へのマウント部MT(搭載部)を有してもよい。この場合、マウント部MTは、図4に示すように、軸方向視で、出力ギヤ30とインバータ装置90(又はインバータケース部24)に重複する領域に配置されもよい。これにより、第2軸C2まわりのデッドスペースとなりやすい空間を利用してマウント部MTを効率的に成立させることができる。なお、マウント部MTは、ケース2の外部に設けられてよい。
【0070】
また、本実施例では、上述したように、第2軸C2まわりの搭載スペース(他の部材の搭載スペース)は、軸方向第2側A2から軸方向第1側A1に向かって徐々に大きくなる。従って、インバータ装置90の上側ケース部241の第2方向Yの寸法(第2インバータ収容室S42の第2方向Yの寸法)についても、上側ケース部241の最も第2方向第1側Y1の位置を変化させることなく、軸方向第2側A2から軸方向第1側A1に向かって徐々に大きくすることができる。この場合、上側ケース部241には、軸方向第1側A1に位置する構成部品が軸方向第2側A2に位置する構成部品よりも第2方向Yの寸法が小さくなる態様で、インバータ装置90の各種構成部品が配置されてもよい。
【0071】
また、本実施例では、出力ギヤ30の第2方向第1側Y1にインバータ装置90の制御基板が配置されてもよい。この際、制御基板は、第2方向Yが法線方向になる向きで配置されてよい。この場合、制御基板は、第2方向Yの寸法が比較的小さいので、インバータケース部24をデフカバー部材202における最も第2方向第1側Y1の位置よりも第2方向第2側Y2に配置することが依然として可能となりうる。
【0072】
次に、図6及び図7を参照して、本実施例の車両用駆動装置100における油の潤滑構造及び冷却構造について概説する。
【0073】
図6は、軸方向第1側A1から視た軸方向視で車両用駆動装置100を概略的に示す図であり、内部が見えるように一部が透視で示されている。図6は、図5に示す油冷式の構造に対する水冷式の場合の変形例に対応する。図7は、軸方向第1側A1から視た軸方向視で車両用駆動装置100の内部(図3のラインQ-Qに沿った断面視での内部)を概略的に示す図であり、ライン700を境界に軸方向Aにオフセットした異なる部分を示している。図7には、ウォーターポンプW/Pが併せて模式的に示されている。また、図7には、位置関係の説明用に、出力ギヤ30の外周が一点鎖線で示されている。
【0074】
本実施例において、回転電機1は、油冷式であってもよいし、水冷式であってもよいし、これらの組み合わせであってもよい。油冷式の場合、インバータ収容室S4は、モータ収容室S1、伝達機構収容室S2、及び出力軸収容室S3に対して流体的に連通しない態様でシールされてよい。なお、この場合、図5に示すように、モータ収容室S1と出力軸収容室S3との間には、隔壁部が形成されず、互いに連通してもよい。この場合、回転電機1とインバータ装置90との間の配線接続部600は、モータ収容室S1又は出力軸収容室S3とインバータ収容室S4との間を仕切る軸方向Aの隔壁部29を貫通する態様で設けられてもよい。なお、配線接続部600は、回転電機1とインバータ装置90のパワーモジュールPMとを接続するための高圧系のコネクタ又は端子台の形態であってよい。なお、配線接続部600は、軸方向視で出力ギヤ30に重複する領域に配置されてもよい。
【0075】
他方、水冷式である場合、インバータ収容室S4は、モータ収容室S1等に対して流体的に連通してよい。この場合、例えば、図6に示すように、インバータ収容室S4及びモータ収容室S1を仕切る壁部(図5の隔壁部29のような壁部)の一部又は全部がなくされてよく、回転電機1とインバータ装置90との間の配線の配索が容易となる。例えば図6に示す例では、回転電機1とインバータ装置90との間の配線接続部600は、インバータ収容室S4及びモータ収容室S1のいずれにも連通する態様で設けられている。なお、この場合、図6に示すように、モータ収容室S1と出力軸収容室S3との間には、隔壁部28が形成されてよい。
【0076】
なお、回転電機1が水冷式である場合、ステータコア12の外周まわりに冷却水路(以下、区別のため、「モータ冷却水路129」と称する)が形成されてもよい。この場合、モータ冷却水路129は、ケース部材200に形成されてもよいし、ケース部材200に結合される別の支持部材204(ケース2のモータケース部21の構成要素)に形成されてもよい。この場合、別の支持部材204は、円筒形の形態であってよく、例えばアルミのような熱伝導性が高い材料により形成され、ステータコア12の径方向外側に焼き嵌めや鋳込み等により一体化されてもよい。これにより、支持部材204とステータコア12との間の熱抵抗を低減し、ステータコア12を介してコイル等を効率的に冷却できる。また、この場合、別の支持部材204は、ケース部材200に締結等により一体化されてよい。また、ロータ軸15が軸心孔を有する中空の形態である場合、モータ冷却水路129は、ロータ軸15の軸心孔に連通されてもよい。
【0077】
本実施例では、ケース2のインバータケース部24は、インバータ装置90を冷却する冷却水(例えばロングライフクーラントを含む冷却水)が通る冷却水路(以下、区別のため、「インバータ冷却水路99」と称する)を有する。
【0078】
インバータ冷却水路99は、軸方向視で出力ギヤ30に重複する領域に配置されてもよい。この場合、車両用駆動装置100全体としての第1方向Xの体格及び第2方向Yの体格を、インバータ冷却水路99に起因して増加させることなく、インバータ冷却水路99の効率的な配置(レイアウト)を実現できる。
【0079】
インバータ装置90の平滑コンデンサCMが上側ケース部241に配置される場合、インバータ冷却水路99は、第2方向視で、平滑コンデンサCM全体又は一部に重複する領域に延在する水路部分(以下、「上側水路部分」とも称する)(図示せず)を有してよい。この場合、上側水路部分は、平滑コンデンサCMよりも第2方向第2側Y2に配置されてよい。また、この場合、上側水路部分は、上述した周壁部250の第1壁部251に形成されてよい。
【0080】
インバータ装置90のパワーモジュールPMが側方ケース部242に配置される場合、インバータ冷却水路99は、第1方向視で、パワーモジュールPM全体又は一部に重複する領域に延在する水路部分(以下、「側方水路部分9902」とも称する)を有してよい。この場合、側方水路部分9902は、パワーモジュールPMよりも第1方向第1側X1に配置されてよい。また、この場合、側方水路部分9902は、上述した周壁部250の第2壁部252に形成されてよい。なお、パワーモジュールPMは、筐体の第1方向第1側X1の表面(インバータ冷却水路99内の冷却水に接する表面)に複数のフィンFが形成されてよい。
【0081】
また、インバータ装置90のパワーモジュールPMが側方ケース部242に配置される場合、側方水路部分9902は、第2方向Yで、パワーモジュールPMとともに、第1出力部材61の中心軸(すなわち第2軸C2)よりも第2方向第2側Y2から同中心軸(すなわち第2軸C2)よりも第2方向第1側Y1まで延在してもよい。ここで、軸方向A及び第2方向Yに延在する側方ケース部242と差動ケース部50との間の第1方向Xの離間距離は、第2方向Yに沿った各位置では、差動ケース部50の中心軸(すなわち第2軸C2)に第1方向視で重複する位置で最小となり、当該重複する位置から第2方向第1側Y1又は第2方向第2側Y2に離れるにつれて大きくなる。この点を利用して、インバータ冷却水路99の側方水路部分9902は、第1方向Xでの差動ケース部50との離間距離が比較的大きい領域(例えば、軸方向視で、第1出力部材61よりも第2方向第2側Y2の領域)において、入口部991とチャンバ部992を有してもよい。入口部991は、ウォーターポンプW/P(図7参照)から吐出される冷却水が導入される部位である。なお、以下では、「上流側」及び「下流側」の用語は、冷却水の流れを基準に用いられる。
【0082】
チャンバ部992は、インバータ冷却水路99の側方水路部分9902の軸方向A全長にわたって軸方向に延在してよい。チャンバ部992は、入口部991よりも断面積が有意に大きく、かつ、パワーモジュールPMに接する流路部分(例えばフィンFまわりの流路)よりも抵抗が有意に小さい。なお、インバータ冷却水路99の第2方向に沿った各位置の断面積は、流れ方向に対して垂直な平面で切断した際の断面積であり、この場合、第2方向に対して垂直な平面で切断した際の断面積に対応する。
【0083】
従って、かかるチャンバ部992を入口部991に対して下流側から隣接して設けることで、インバータ冷却水路99に導入される冷却水の必要な流量を効果的に確保できる。なお、チャンバ部992と同様のチャンバ室993は、インバータ冷却水路99の側方水路部分9902におけるパワーモジュールPMに接する流路部分の下流側に設けられてもよい。
【0084】
また、上述したモータ冷却水路129が設けられる場合、インバータ冷却水路99は、モータ冷却水路129に連通されてもよい。この場合、インバータ冷却水路99は、モータ冷却水路129よりも上流側に配置されてよく、この場合、モータ冷却水路129は、ウォーターポンプW/Pに冷却水を戻すための出口部(図示せず)を有してよい。出口部(図示せず)は、上述した入口部991とともに、軸方向視で出力ギヤ30に重複する領域に配置されてもよい。この場合、車両用駆動装置100全体としての第1方向Xの体格及び第2方向Yの体格を、インバータ冷却水路99に起因して増加させることなく、インバータ冷却水路99の効率的な配置を実現できる。
【0085】
また、上述したモータ冷却水路129が設けられる場合、インバータ冷却水路99とモータ冷却水路129とを接続するための水路(以下、「接続水路1290」とも称する)は、ケース2に形成されてもよい。すなわち、接続水路1290は、モータ冷却水路129やインバータ冷却水路99と同様、ケース内水路として実現されてよい。接続水路1290は、軸方向Aかつ第1方向Xに延在してよい。あるいは、接続水路1290は、軸方向A、第1方向Xかつ第2方向Yに延在してよい。この場合、接続水路1290は、ケース2のうちのモータケース部21及び伝達機構ケース部22又は出力軸ケース部23を形成する部位に形成されてもよい。また、接続水路1290は、軸方向視で第1出力部材61よりも上側、かつ、軸方向視で出力ギヤ30に重複する領域に配置されてよい。
【0086】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。また、各実施例の効果のうちの、従属項に係る効果は、上位概念(独立項)とは区別した付加的効果である。
【0087】
例えば、上述した実施例では、第1出力部材61は、回転電機1及びインバータ装置90の双方が配置される第2方向Yの位置において、回転電機1とインバータ装置90との第1方向Xの間に挟まれて配置されているが、これに限られない。例えば、インバータ装置90は、第1出力部材61よりも軸方向第2側A2に配置されてもよい。この場合、差動ケース部50は、回転電機1又は減速機構34及びインバータ装置90の双方が配置される第2方向Yの位置において、回転電機1又は減速機構34とインバータ装置90との第1方向Xの間に挟まれて配置されてよい。なお、このような場合でも、第1出力部材61は、軸方向視で、回転電機1及びインバータ装置90の双方が位置する第2方向Yの位置において、回転電機1とインバータ装置90との第1方向Xの間に位置してよい。
【0088】
また、上述した実施例では、インバータケース部24は、差動ケース部50及び第1出力部材61まわりを(差動ケース部50及び第1出力部材61に対して第1方向X及び第2方向Yに対向する態様で)軸方向Aに延在するが、これに限られない。例えば、上述した実施例において、インバータケース部24は、差動ケース部50及び第1出力部材61のうちの、差動ケース部50まわりを(差動ケース部50に対して第1方向X及び第2方向Yに対向する態様で)軸方向Aに延在してもよい。
【符号の説明】
【0089】
1・・・回転電機、3・・・伝達機構、2・・・ケース、21・・・モータケース部、22・・・・伝達機構ケース部、23・・・出力軸ケース部、24・・・インバータケース部、201・・・モータカバー部材(第1カバー部材)、202・・・デフカバー部材(第2カバー部材)、6・・・出力部材、61・・・第1出力部材、30・・・出力ギヤ、90・・・インバータ装置、91・・・第1インバータ部(第1構成要素)、92・・・第2インバータ部(第2構成要素)、C1・・・第1軸(軸)、C2・・・第2軸(軸)、BA・・・バッテリ、A・・・軸方向、X・・・第1方向、Y・・・第2方向、PM・・・パワーモジュール、CM・・・平滑コンデンサ、MT・・・マウント部、CN10、CN11・・・コネクタ、S3・・・出力軸収容室(第1収容室)、S4・・・インバータ収容室(第2収容室)、S41・・・第1インバータ収容室(第1空間部)、S42・・・第2インバータ収容室(第2空間部)
図1
図2
図2A
図3
図4
図5
図6
図7