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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】演算装置
(51)【国際特許分類】
   G01V 3/12 20060101AFI20240910BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
G01V3/12 A
A61B5/11 110
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023573959
(86)(22)【出願日】2022-12-26
(86)【国際出願番号】 JP2022047897
(87)【国際公開番号】W WO2023136112
(87)【国際公開日】2023-07-20
【審査請求日】2024-07-08
(31)【優先権主張番号】P 2022002822
(32)【優先日】2022-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 雄彦
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 敬
(72)【発明者】
【氏名】能澤 伸幸
(72)【発明者】
【氏名】牧野 純
(72)【発明者】
【氏名】木村 和也
(72)【発明者】
【氏名】藤原 亮太
(72)【発明者】
【氏名】門田 将人
(72)【発明者】
【氏名】木次谷 望
(72)【発明者】
【氏名】田邊 祐馬
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太
【審査官】櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-179020(JP,A)
【文献】特開2012-18124(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0052212(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0087353(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第110958568(CN,A)
【文献】尾原 和也 外2名,Wi-Fiチャネル状態情報を用いた屋内日常物の状態推定,情報処理学会研究報告,2017年,Vol.2017, No.18,pp.1-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00-99/00
G01S 7/00-7/42
G01S 13/00-13/95
G08B 13/00-15/02
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1領域内の物体の位置、人の位置または人の動きを検出する検出装置に用いられる演算装置であって、
前記検出装置は、前記第1領域内に配置されている通信装置を備えており、
前記通信装置は、第1送信アンテナ乃至第T送信アンテナおよび第1受信アンテナ乃至第R受信アンテナを含み、
前記第1受信アンテナ乃至前記第R受信アンテナは、前記第1送信アンテナ乃至前記第T送信アンテナから電磁波により送信された第1サブキャリア乃至第Nサブキャリアの信号を受信し、
T、RおよびNは、1以上の整数であり、
前記演算装置は、
前記第1領域における天候に関する天候情報を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにおいて取得した前記天候情報に基づいて、動作モードを選択するステップと、
前記選択された動作モードに基づいて、前記第1送信アンテナ乃至前記第T送信アンテナが送信する前記電磁波の送信強度を設定するステップと、又は、前記第1受信アンテナ乃至前記第R受信アンテナが受信する前記電磁波の受信感度を設定するステップと、
前記第1受信アンテナ乃至前記第R受信アンテナが受信した前記第1サブキャリア乃至前記第Nサブキャリアの信号に基づいて、前記第1送信アンテナ乃至前記第T送信アンテナと前記第1受信アンテナ乃至前記第R受信アンテナとの間の前記電磁波の伝送経路の状態を示すチャネル状態情報を算出する算出ステップと、
前記算出ステップにおいて算出した前記チャネル状態情報に基づいて、前記第1領域内の前記物体の位置、前記人の位置または前記人の動きを検出する検出ステップと、を実行
前記動作モードは、第1感度により前記第1受信アンテナ乃至前記第R受信アンテナに電磁波を受信させる第1感度モードと、前記第1感度よりも高い第2感度により前記第1受信アンテナ乃至前記第R受信アンテナに電磁波を受信させる第2感度モードと、を含んでおり、
前記演算装置は、雨および雪が降っていないことを示す前記天候情報を取得した場合、前記第1感度モードを選択し、
前記演算装置は、雨または雪が降っていることを示す前記天候情報を取得した場合、前記第2感度モードを選択する、
演算装置。
【請求項2】
前記動作モードは、第1強度を有する電磁波を前記第1送信アンテナ乃至前記第T送信アンテナに送信させる第1強度モードと、前記第1強度よりも強い第2強度を有する電磁波を前記第1送信アンテナ乃至前記第T送信アンテナに送信させる第2強度モードと、を含んでおり、
前記演算装置は、雨および雪が降っていないことを示す前記天候情報を取得した場合、前記第1強度モードを選択し、
前記演算装置は、雨または雪が降っていることを示す前記天候情報を取得した場合、前記第2強度モードを選択する、
請求項1に記載の演算装置。
【請求項3】
前記第1送信アンテナ乃至前記第T送信アンテナが送信する信号のそれぞれは、複素数であるx1乃至xTで表され、
前記第1受信アンテナ乃至前記第R受信アンテナが受信する信号のそれぞれは、複素数であるy1乃至yRで表され、
x1乃至xTおよびy1乃至yRは、以下の数式1乃至数式5を満たしており、
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【数5】
iは、1以上N以下の整数であり、
mは、1以上R以下の整数であり、
nは、1以上T以下の整数であり、
Hiは、第iサブキャリアの前記第1送信アンテナ乃至前記第T送信アンテナと前記第1受信アンテナ乃至前記第R受信アンテナとの間の前記チャネル状態情報であり、
hmnは、第m送信アンテナと第n受信アンテナとの間の前記チャネル状態情報であり、
||hmn||は、hmnの振幅であり、
∠hmnは、hmnの位相であり、
niは、第iサブキャリアのノイズベクトルである、
請求項1または請求項に記載の演算装置。
【請求項4】
前記演算装置は、前記検出ステップにおいて、機械学習モデルを用いて、前記第1領域内の前記物体の位置、前記人の位置または前記人の動きを検出する、
請求項1または請求項に記載の演算装置。
【請求項5】
前記機械学習モデルは、雨および雪が降っていない場合の前記チャネル状態情報を教師データとして用いる第1機械学習モデルおよび雨または雪が降っている場合の前記チャネル状態情報を教師データとして用いる第2機械学習モデルを含む、
請求項に記載の演算装置。
【請求項6】
前記動作モードは、前記第1機械学習モデルを用いて、前記第1領域内の前記物体の位置、前記人の位置または前記人の動きを検出する第1機械学習モデルモードと、前記第2機械学習モデルを用いて、前記第1領域内の前記物体の位置、前記人の位置または前記人の動きを検出する第2機械学習モデルモードと、を含んでおり、
前記演算装置は、雨および雪が降っていないことを示す前記天候情報を取得した場合、前記第1機械学習モデルモードを選択し、
前記演算装置は、雨または雪が降っていることを示す前記天候情報を取得した場合、前記第2機械学習モデルモードを選択する、
請求項に記載の演算装置。
【請求項7】
前記演算装置は、前記チャネル状態情報に基づいて、前記天候情報を取得する、
請求項1または請求項に記載の演算装置。
【請求項8】
前記チャネル状態情報は、前記第1領域内の前記物体の位置、前記人の位置または前記人の動きが変化すると、変化する性質を有している、
請求項1または請求項に記載の演算装置。
【請求項9】
前記チャネル状態情報は、前記第1領域の位置における降雨または降雪の有無が変化すると、変化する性質を有している、
請求項1または請求項に記載の演算装置。
【請求項10】
前記第1領域は、ビークルのキャビンである、
請求項1または請求項に記載の演算装置。
【請求項11】
前記第1領域は、建物の内部空間である、
請求項1または請求項に記載の演算装置。
【請求項12】
前記演算装置は、前記第1領域内に配置されている、
請求項1または請求項に記載の演算装置。
【請求項13】
前記人の動きは、前記人の呼吸による動きを含んでいる、
請求項1または請求項に記載の演算装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の位置、人の位置または人の動きを検出する演算装置および演算プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の演算装置に関する発明としては、例えば、特許文献1に記載の送信装置が知られている。特許文献1に記載の送信装置は、電磁波を用いて周囲のセンシングを行う。具体的には、送信装置は、電磁波を用いて、人または車を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2020/122220号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の送信装置において、降雨または降雪の有無にかかわらず、周囲をより高精度にセンシングしたいという要望がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、降雨または降雪の有無にかかわらず、周囲をより高精度にセンシングすることができる演算装置および演算プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る演算装置は、
第1領域内の物体の位置、人の位置または人の動きを検出する検出装置に用いられる演算装置であって、
前記検出装置は、前記第1領域内に配置されている通信装置を備えており、
前記通信装置は、第1送信アンテナ乃至第T送信アンテナおよび第1受信アンテナ乃至第R受信アンテナを含み、
前記第1受信アンテナ乃至前記第R受信アンテナは、前記第1送信アンテナ乃至前記第T送信アンテナから電磁波により送信された第1サブキャリア乃至第Nサブキャリアの信号を受信し、
T、RおよびNは、1以上の整数であり、
前記演算装置は、
前記第1領域における天候に関する天候情報を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにおいて取得した前記天候情報に基づいて、動作モードを選択するステップと、
前記選択された動作モードに基づいて、前記第1送信アンテナ乃至前記第T送信アンテナが送信する前記電磁波の送信強度を設定するステップと、又は、前記第1受信アンテナ乃至前記第R受信アンテナが受信する前記電磁波の受信感度を設定するステップと、
前記第1受信アンテナ乃至前記第R受信アンテナが受信した前記第1サブキャリア乃至前記第Nサブキャリアの信号に基づいて、前記第1送信アンテナ乃至前記第T送信アンテナと前記第1受信アンテナ乃至前記第R受信アンテナとの間の前記電磁波の伝送経路の状態を示すチャネル状態情報を算出する算出ステップと、
前記算出ステップにおいて算出した前記チャネル状態情報に基づいて、前記第1領域内の前記物体の位置、前記人の位置または前記人の動きを検出する検出ステップと、を実行する。
【0007】
本発明の一形態に係る演算プログラムは、
第1領域内の物体の位置、人の位置または人の動きを検出する検出装置に用いられる演算装置において実行される演算プログラムであって、
前記検出装置は、前記第1領域内に配置されている通信装置を備えており、
前記通信装置は、第1送信アンテナ乃至第T送信アンテナおよび第1受信アンテナ乃至第R受信アンテナを含み、
前記第1受信アンテナ乃至前記第R受信アンテナは、前記第1送信アンテナ乃至前記第T送信アンテナから電磁波により送信された第1サブキャリア乃至第Nサブキャリアの信号を受信し、
T、RおよびNは、1以上の整数であり、
前記演算プログラムは、
前記第1領域における天候に関する天候情報を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにおいて取得した前記天候情報に基づいて、動作モードを選択するステップと、
前記選択された動作モードに基づいて、前記第1送信アンテナ乃至前記第T送信アンテナが送信する前記電磁波の送信強度を設定するステップと、又は、前記第1受信アンテナ乃至前記第R受信アンテナが受信する前記電磁波の受信感度を設定するステップと、
前記第1受信アンテナ乃至前記第R受信アンテナが受信した前記第1サブキャリア乃至前記第Nサブキャリアの信号に基づいて、前記第1送信アンテナ乃至前記第T送信アンテナと前記第1受信アンテナ乃至前記第R受信アンテナとの間の前記電磁波の伝送経路の状態を示すチャネル状態情報を算出する算出ステップと、
前記算出ステップにおいて算出した前記チャネル状態情報に基づいて、前記第1領域内の前記物体の位置、前記人の位置または前記人の動きを検出する検出ステップと、を実行する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、降雨または降雪の有無にかかわらず、周囲をより高精度にセンシングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1の実施形態に係る乗用車1の側面図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る検出装置20のブロック図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る乗用車1のキャビン10の上面図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る第1送信アンテナ4t1乃至第T送信アンテナ4tTと第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRとの間の電磁波の伝送経路の一例を示す図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る演算装置5が実行する処理を示すフローチャートである。
図6図6は、第1の実施形態に係る第1領域内の人3の動作時の第m送信アンテナ4tmと第n受信アンテナ4rnとの間のチャネル状態情報hmnの振幅および位相の一例を示す図である。
図7図7は、第1の実施形態に係る第1領域内の人3の呼吸時の第m送信アンテナ4tmと第n受信アンテナ4rnとの間のチャネル状態情報hmnの振幅および位相の一例を示す図である。
図8図8は、第2の実施形態に係る演算装置5が実行する処理を示すフローチャートである。
図9図9は、第3の実施形態に係る演算装置5が実行する処理を示すフローチャートである。
図10図10は、第4の実施形態に係る演算装置5が実行する処理を示すフローチャートである。
図11図11は、第5の実施形態に係る演算装置5が実行する処理を示すフローチャートである。
図12図12は、第5の実施形態に係る晴天時の第1領域内の人3の呼吸時の第m送信アンテナ4tmと第n受信アンテナ4rnとの間のチャネル状態情報hmnの振幅および位相の一例を示す図である。
図13図13は、第5の実施形態に係る雨天時の第1領域内の人3の呼吸時の第m送信アンテナ4tmと第n受信アンテナ4rnとの間のチャネル状態情報hmnの振幅および位相の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施形態]
以下に、本発明の第1の実施形態に係る演算装置5を備える検出装置20について、図を参照しながら説明する。図1は、第1の実施形態に係る乗用車1の側面図である。図2は、第1の実施形態に係る検出装置20のブロック図である。図3は、第1の実施形態に係る乗用車1のキャビン10の上面図である。図4は、第1の実施形態に係る第1送信アンテナ4t1乃至第T送信アンテナ4tTと第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRとの間の電磁波の伝送経路の一例を示す図である。図5は、第1の実施形態に係る演算装置5が実行する処理を示すフローチャートである。図6は、第1の実施形態に係る第1領域内の人3の動作時の第m送信アンテナ4tmと第n受信アンテナ4rnとの間のチャネル状態情報hmnの振幅および位相の一例を示す図である。図6において、横軸は、時間を示し、かつ、縦軸は、振幅または位相を示す。図7は、第1の実施形態に係る第1領域内の人3の呼吸時の第m送信アンテナ4tmと第n受信アンテナ4rnとの間のチャネル状態情報hmnの振幅および位相の一例を示す図である。図7において、横軸は、時間を示し、かつ、縦軸は、振幅または位相を示す。図6および図7のそれぞれは、晴天時に、乗用車1のリアシートに人3が着席して呼吸をしている時の実験結果である。
【0011】
検出装置20は、第1領域内の物体2の位置、人3の位置または人3の動きを検出する検出装置である。本実施形態では、検出装置20は、一例として、図1および図3に示すように、乗用車1のキャビン10内の物体2の位置、人3の位置または人3の動きを検出する検出装置として用いられる。なお、乗用車1のキャビン10は、第1領域の一例である。また、乗用車1は、ビークルの一例である。すなわち、本実施形態では、第1領域は、ビークルのキャビン10である。なお、本実施形態では、乗用車1は、図1に示すように、窓を有している。また、物体2は、例えば、スマートフォンである。
【0012】
検出装置20は、一例として、図2に示すように、通信装置4を備えている。また、演算装置5は、図2に示すように、検出装置20に用いられる。
【0013】
通信装置4は、図2に示すように、送信装置41、第1送信アンテナ4t1乃至第T送信アンテナ4tT、受信装置42および第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRを含んでいる。ここで、TおよびRは、それぞれ1以上の整数である。
【0014】
通信装置4は、図3に示すように、キャビン10内に配置されている。すなわち、通信装置4は、第1領域内に配置されている。また、本実施形態では、演算装置5は、図3に示すように、キャビン10内に配置されている。すなわち、演算装置5は、第1領域内に配置されている。
【0015】
電磁波の伝搬は、電磁波の経路が変化すると、変化する性質を有している。電磁波の経路は、電磁波が通過する環境が変化すると、変化する。環境の変化は、例えば、電磁波が通過する環境に存在する物体2の位置、物体2の動き、人3の位置、人3の動き、人3の動きに伴う物体2の動き、または、降雨の有無または降雪の有無である。
【0016】
本実施形態では、電磁波の一例として、Wi-Fi(登録商標)による電波を使用する。本実施形態では、送信装置41および受信装置42は、Wi-Fi(登録商標)のアクセスポイントである。第1送信アンテナ4t1乃至第T送信アンテナ4tTは、Wi-Fi(登録商標)送信アンテナである。また、第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRは、Wi-Fi(登録商標)受信アンテナである。
【0017】
本実施形態では、電磁波伝搬情報として、Wi-Fi(登録商標)のチャネル状態情報(Channel State Information:CSI)を用いる。Wi-Fi(登録商標)のチャネル状態情報CSIは、チャネル状態情報の一例である。以下に、詳細を説明する。
【0018】
送信装置41は、第1送信信号乃至第T送信信号のそれぞれを生成する。送信装置41は、第1送信信号乃至第T送信信号のそれぞれを第1送信アンテナ4t1乃至第T送信アンテナ4tTのそれぞれに送信させる。第1送信信号乃至第T送信信号のそれぞれは、第1サブキャリア乃至第Nサブキャリアの信号を含んでいる。ここで、Nは、1以上の整数である。
【0019】
第1サブキャリア乃至第Nサブキャリアの信号のそれぞれは、送信装置41がOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)によりデジタル変調された信号である。第1サブキャリア乃至第Nサブキャリアのそれぞれは、互いに直交しているため、互いに干渉しない。
【0020】
第1送信アンテナ4t1乃至第T送信アンテナ4tTのそれぞれは、電磁波により第1送信信号乃至第T送信信号のそれぞれを送信する。第1送信アンテナ4t1乃至第T送信アンテナ4tTのそれぞれから送信された第1送信信号乃至第T送信信号のそれぞれは、図4に示すように、電磁波が通過する環境に存在する物体2、人3に反射して、第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRの少なくともいずれかに受信される。
【0021】
第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRのそれぞれが受信した第1受信信号乃至第R受信信号のそれぞれは、第1サブキャリア乃至第Nサブキャリアの信号を含んでいる。すなわち、第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRは、第1送信アンテナ4t1乃至第T送信アンテナ4tTから電磁波により送信された第1サブキャリア乃至第Nサブキャリアの信号を受信する。
【0022】
受信装置42は、第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRのそれぞれが受信した第1受信信号乃至第R受信信号のそれぞれを取得する。
【0023】
第1送信信号乃至第T送信信号のそれぞれは、複素数であるx1乃至xTで表される。すなわち、第1送信アンテナ4t1乃至第T送信アンテナ4tTが送信する信号のそれぞれは、複素数であるx1乃至xTで表される。また、第1受信信号乃至第R受信信号のそれぞれは、複素数であるy1乃至yRで表される。すなわち、第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRが受信する信号のそれぞれは、複素数であるy1乃至yRで表される。このとき、x1乃至xTおよびy1乃至yRは、以下の数式1乃至数式5を満たす。
【0024】
【数1】
【0025】
【数2】
【0026】
【数3】
【0027】
【数4】
【0028】
【数5】
【0029】
ここで、iは、1以上N以下の整数である。また、mは、1以上R以下の整数である。また、nは、1以上T以下の整数である。また、Hiは、第iサブキャリアの第1送信アンテナ4t1乃至第T送信アンテナ4tTと第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRとの間のチャネル状態情報である。また、hmnは、第m送信アンテナ4tmと第n受信アンテナ4rnとの間のチャネル状態情報である。||hmn||は、hmnの振幅である。また、∠hmnは、hmnの位相である。また、niは、第iサブキャリアのノイズベクトルである。
【0030】
演算装置5は、送信装置41および受信装置42のそれぞれと通信可能に接続されている。演算装置5は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等の処理回路である。記憶装置(図示せず)は、図5に示すフローチャートの演算プログラムを記憶している。演算装置5は、この演算プログラムを読み出して実行する。
【0031】
以下、演算装置5における処理の詳細を説明する。本処理は、演算装置5が第1領域における天候に関する天候情報を取得することにより開始される(図5:START)。具体的には、まず、演算装置5は、第1領域における天候に関する天候情報を取得する(図5:取得ステップS11)。具体的には、演算装置5は、例えば、第1領域における天候に関する天候情報を検出する気象センサから第1領域における天候に関する天候情報を取得する。なお、演算装置5は、ユーザが第1領域における天候に関する天候情報を演算装置5に入力することにより、第1領域における天候に関する天候情報を取得してもよい。また、演算装置5は、例えば、車内LAN(Local Area Network)に接続され、車内LANに接続されている車載電子機器から第1領域における天候に関する天候情報を取得してもよい。
【0032】
演算装置5は、雨および雪が降っていないことを示す天候情報を取得した場合(図5:ステップS12)、第1モードを選択する(図5:ステップS13)。一方、演算装置5は、雨または雪が降っていることを示す天候情報を取得した場合(図5:ステップS12)、第2モードを選択する(図5:ステップS23)。すなわち、演算装置5は、取得ステップS11において取得した天候情報に基づいて、動作モードを選択する。また、本実施形態では、動作モードは、第1モードと、第2モードと、を含んでいる。
【0033】
本実施形態では、演算装置5は、第1モードにおいて、第1強度を有する電磁波を第1送信アンテナ4t1乃至第T送信アンテナ4tTに送信させる(図5:ステップS14)。より詳細には、演算装置5は、送信装置41に第1強度を有する第1送信信号乃至第T送信信号を生成させる。また、送信装置41は、第1強度を有する第1送信信号乃至第T送信信号のそれぞれを第1送信アンテナ4t1乃至第T送信アンテナ4tTのそれぞれに送信させる。
【0034】
本実施形態では、演算装置5は、第2モードにおいて、第1強度よりも強い第2強度を有する電磁波を第1送信アンテナ4t1乃至第T送信アンテナ4tTに送信させる(図5:ステップS24)。より詳細には、演算装置5は、送信装置41に第1強度よりも強い第2強度を有する第1送信信号乃至第T送信信号を生成させる。また、送信装置41は、第1強度よりも強い第2強度を有する第1送信信号乃至第T送信信号のそれぞれを第1送信アンテナ4t1乃至第T送信アンテナ4tTのそれぞれに送信させる。
【0035】
次に、演算装置5は、第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRが受信した第1サブキャリア乃至第Nサブキャリアの信号に基づいて、第1送信アンテナ4t1乃至第T送信アンテナ4tTと第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナとの間の電磁波の伝送経路の状態を示すチャネル状態情報H1乃至HNを算出する(図5:算出ステップS15、算出ステップS25)。
【0036】
より詳細には、演算装置5は、送信装置41が生成した第1送信信号乃至第T送信信号のそれぞれおよび受信装置42が取得した第1受信信号乃至第R受信信号のそれぞれを送信装置41および受信装置42のそれぞれから取得する。
【0037】
演算装置5は、数式1を用いて、第iサブキャリアの第1送信アンテナ4t1乃至第T送信アンテナ4tTと第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRとの間のチャネル状態情報Hiを算出する。演算装置5は、この算出を、第1サブキャリア乃至第Nサブキャリアに対して行う。したがって、演算装置5は、第1送信アンテナ4t1乃至第T送信アンテナ4tTと第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRとの間のチャネル状態情報H1乃至HNのそれぞれを算出する。
【0038】
次に、演算装置5は、算出ステップS15または算出ステップS25において算出した第1送信アンテナ4t1乃至第T送信アンテナ4tTと第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRとの間のチャネル状態情報H1乃至HNに基づいて、第1領域内の物体2の位置、人3の位置または人3の動きを検出する(図5:検出ステップS16、検出ステップS26)。
【0039】
より詳細には、人3の動きとは、人3の呼吸による動きおよび人3の動作の両方を含んでいる。人3の動きとは、人3の呼吸による動きまたは人3の動作のいずれかのみであってもよい。すなわち、人3の動きは、人3の呼吸による動きを含んでいる。
【0040】
以上の取得ステップS11から検出ステップS16までの処理または取得ステップS11から検出ステップS26までの処理を実行することにより、演算装置5における処理は、完了する(図5:END)。
【0041】
電磁波の経路は、電磁波が通過する環境が変化すると、変化する。これにより、第1送信アンテナ4t1乃至第T送信アンテナ4tTと第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRとの間のチャネル状態情報H1乃至HNは、第1領域内の物体2の位置、物体2の動き、人3の位置、人3の動きが変化すると、変化する性質を有している。具体的には、第1領域内の人3の動作時の第m送信アンテナ4tmと第n受信アンテナ4rnとの間のチャネル状態情報hmnは、図6に示すように、人3の動作により、変化する。また、第1領域内の人3の呼吸時の第m送信アンテナ4tmと第n受信アンテナ4rnとの間のチャネル状態情報hmnは、図7に示すように、人3の呼吸による動きの有無により、変化する。
【0042】
また、第1領域内の人3の動作時の第m送信アンテナ4tmと第n受信アンテナ4rnとの間のチャネル状態情報hmnは、第1領域内の人3の呼吸時の第m送信アンテナ4tmと第n受信アンテナ4rnとの間のチャネル状態情報hmnと異なる。より詳細には、図6に示す第1領域内の人3の動作時の第m送信アンテナ4tmと第n受信アンテナ4rnとの間のチャネル状態情報hmnの振幅は、図7に示す第1領域内の人3の呼吸時の第m送信アンテナ4tmと第n受信アンテナ4rnとの間のチャネル状態情報hmnの振幅よりも大きい。したがって、演算装置5は、第m送信アンテナ4tmと第n受信アンテナ4rnとの間のチャネル状態情報hmnを算出することにより、第1領域内の人3の位置の変化または第1領域内の人3の動きを検出することができる。
【0043】
[効果]
演算装置5によれば、降雨または降雪の有無にかかわらず、周囲をより高精度にセンシングすることができる。より詳細には、演算装置5は、第1領域における天候に関する天候情報を取得する。演算装置5は、第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRが受信した第1サブキャリア乃至第Nサブキャリアの信号に基づいて、第1送信アンテナ4t1乃至第T送信アンテナ4tTと第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナとの間の電磁波の伝送経路の状態を示すチャネル状態情報H1乃至HNを算出する。ここで、電磁波の経路は、電磁波が通過する環境が変化すると、変化する。したがって、降雨または降雪の有無により、電磁波の経路が変化する。より詳細には、雨または雪が降ると、例えば、水が乗用車1の窓に付着する。そのため、降雨の有無または降雪の有無により、乗用車1の窓における電磁波の反射の状態が変化する。そこで、演算装置5は、取得した第1領域における天候に関する天候情報に基づいて、動作モードを選択する。演算装置5は、選択した動作モードにおいて、算出した第1送信アンテナ4t1乃至第T送信アンテナ4tTと第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRとの間のチャネル状態情報H1乃至HNに基づいて、第1領域内の物体2の位置、人3の位置または人3の動きを検出する。その結果、演算装置5は、天候に適した動作モードにより、第1領域内の物体2の位置、人3の位置または人3の動きを検出できる。以上より、演算装置5によれば、降雨または降雪の有無にかかわらず、周囲をより高精度にセンシングすることができる。
【0044】
演算装置5によれば、降雨または降雪の有無にかかわらず、周囲をより高精度にセンシングすることができる。より詳細には、演算装置5は、雨および雪が降っていないことを示す天候情報を取得した場合、第1強度を有する電磁波を第1送信アンテナ4t1乃至第T送信アンテナ4tTに送信させる第1モードを選択する。一方、演算装置5は、雨または雪が降っていることを示す天候情報を取得した場合、第1強度よりも強い第2強度を有する電磁波を第1送信アンテナ4t1乃至第T送信アンテナ4tTに送信させる第2モードを選択する。これにより、降雨時または降雪時においても、演算装置5が第1領域内の物体2の位置、人3の位置または人3の動きを検出できるほどの第1サブキャリア乃至第Nサブキャリアの信号を第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRが受信できるようになる。その結果、演算装置5によれば、降雨または降雪の有無にかかわらず、周囲をより高精度にセンシングすることができる。
【0045】
[第2の実施形態]
以下に第2の実施形態に係る演算装置5を備える検出装置20aについて図を参照しながら説明する。図8は、第2の実施形態に係る演算装置5が実行する処理を示すフローチャートである。なお、第2の実施形態に係る演算装置5を備える検出装置20aについては、第1の実施形態に係る演算装置5を備える検出装置20と異なる部分のみ説明し、後は省略する。
【0046】
本実施形態では、動作モードは、第3モードと、第4モードと、を含んでいる点において、検出装置20と相違する。
【0047】
本実施形態では、演算装置5は、雨および雪が降っていないことを示す天候情報を取得した場合(図8:ステップS12)、第3モードを選択する(図8:ステップS13a)。一方、演算装置5は、雨または雪が降っていることを示す天候情報を取得した場合(図8:ステップS12)、第4モードを選択する(図8:ステップS23a)。
【0048】
本実施形態では、演算装置5は、第3モードにおいて、第1感度により第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRに電磁波を送信させる(図8:ステップS14a)。より詳細には、演算装置5は、例えば、受信装置42の増幅率を第1増幅率に設定させる。より正確には、受信装置42は、第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRのそれぞれが受信した第1受信信号乃至第R受信信号のそれぞれを取得する。受信装置42は、取得した第1受信信号乃至第R受信信号のそれぞれに第1増幅率を乗じる。演算装置5は、受信装置42が第1受信信号乃至第R受信信号のそれぞれに第1増幅率を乗じた結果である第1信号乃至第R信号を受信装置42から取得する。演算装置5は、第1信号乃至第R信号を第1受信信号乃至第R受信信号として扱う。
【0049】
本実施形態では、演算装置5は、第4モードにおいて、第1感度よりも強い第2感度により第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRに電磁波を受信させる(図8:ステップS24a)。より詳細には、演算装置5は、例えば、受信装置42の増幅率を第1増幅率よりも高い第2増幅率に設定させる。より正確には、受信装置42は、第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRのそれぞれが受信した第1受信信号乃至第R受信信号のそれぞれを取得する。受信装置42は、取得した第1受信信号乃至第R受信信号のそれぞれに第2増幅率を乗じる。演算装置5は、受信装置42が第1受信信号乃至第R受信信号のそれぞれに第2増幅率を乗じた結果である第1信号乃至第R信号を受信装置42から取得する。演算装置5は、第1信号乃至第R信号を第1受信信号乃至第R受信信号として扱う。
【0050】
以上のような演算装置5においても、第1の実施形態に係る演算装置5と同じ効果を奏する。より詳細には、演算装置5は、雨および雪が降っていないことを示す天候情報を取得した場合、第1感度により第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRに電磁波を受信させる第3モードを選択する。一方、演算装置5は、雨または雪が降っていることを示す天候情報を取得した場合、第1感度よりも高い第2感度により第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRに電磁波を受信させる第4モードを選択する。これにより、降雨時または降雪時においても、演算装置5が第1領域内の物体2の位置、人3の位置または人3の動きを検出できるほどの第1サブキャリア乃至第Nサブキャリアの信号を第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRが受信できるようになる。その結果、第2の実施形態に係る演算装置5によれば、降雨または降雪の有無にかかわらず、周囲をより高精度にセンシングすることができる。
【0051】
[第3の実施形態]
以下に第3の実施形態に係る演算装置5を備える検出装置20bについて図を参照しながら説明する。図9は、第3の実施形態に係る演算装置5が実行する処理を示すフローチャートである。なお、第3の実施形態に係る演算装置5を備える検出装置20bについては、第1の実施形態に係る演算装置5を備える検出装置20と異なる部分のみ説明し、後は省略する。
【0052】
本実施形態では、演算装置5は、図9に示す検出ステップS16b、および、図9に示す検出ステップS26bにおいて、機械学習モデルを用いて、第1領域内の物体2の位置、人3の位置または人3の動きを検出する点において、検出装置20と相違する。
【0053】
機械学習モデルは、第1送信アンテナ4t1乃至第T送信アンテナ4tTと第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRとの間のチャネル状態情報H1乃至HNと、第1領域内の物体2の位置、物体2の動き、人3の位置、人3の動きと、の関係を示す教師データを用いる。したがって、機械学習モデルは、第1送信アンテナ4t1乃至第T送信アンテナ4tTと第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRとの間のチャネル状態情報H1乃至HNと、第1領域内の物体2の位置、物体2の動き、人3の位置、人3の動きと、の関係を示す教師データにより、第1送信アンテナ4t1乃至第T送信アンテナ4tTと第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRとの間のチャネル状態情報H1乃至HNと、第1領域内の物体2の位置、物体2の動き、人3の位置、人3の動きと、の関係を事前に学習している。
【0054】
そして、演算装置5は、演算装置5が算出した第1送信アンテナ4t1乃至第T送信アンテナ4tTと第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナとの間の電磁波の伝送経路の状態を示すチャネル状態情報H1乃至HNに対応する第1領域内の物体2の位置、物体2の動き、人3の位置、人3の動きを、機械学習モデルを用いて、検出する。
【0055】
第3の実施形態に係る演算装置5によれば、周囲をより高精度にセンシングすることができる。より詳細には、演算装置5は、図9に示す検出ステップS16b、および、図9に示す検出ステップS26bにおいて、機械学習モデルを用いて、第1領域内の物体2の位置、人3の位置または人3の動きを検出する。これにより、第1領域内の物体2の位置、人3の位置または人3の動きの検出精度を向上させることができる。その結果、第3の実施形態に係る演算装置5によれば、周囲をより高精度にセンシングすることができる。
【0056】
[第4の実施形態]
以下に第4の実施形態に係る演算装置5を備える検出装置20cについて図を参照しながら説明する。図10は、第4の実施形態に係る演算装置5が実行する処理を示すフローチャートである。なお、第4の実施形態に係る演算装置5を備える検出装置20cについては、第1の実施形態に係る演算装置5を備える検出装置20と異なる部分のみ説明し、後は省略する。
【0057】
本実施形態では、動作モードは、第5モードと、第6モードと、を含んでいる点において、検出装置20と相違する。
【0058】
機械学習モデルは、雨および雪が降っていない場合の第1送信アンテナ4t1乃至第T送信アンテナ4tTと第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRとの間のチャネル状態情報H1乃至HNを教師データとして用いる第1機械学習モデルおよび雨または雪が降っている場合の第1送信アンテナ4t1乃至第T送信アンテナ4tTと第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRとの間のチャネル状態情報H1乃至HNを教師データとして用いる第2機械学習モデルを含んでいる。
【0059】
より詳細には、第1機械学習モデルは、雨および雪が降っていない場合の第1送信アンテナ4t1乃至第T送信アンテナ4tTと第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRとの間のチャネル状態情報H1乃至HNと、第1領域内の物体2の位置、物体2の動き、人3の位置、人3の動きと、の関係を示す教師データを用いる。
【0060】
また、第2機械学習モデルは、雨または雪が降っている場合の第1送信アンテナ4t1乃至第T送信アンテナ4tTと第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRとの間のチャネル状態情報H1乃至HNと、第1領域内の物体2の位置、物体2の動き、人3の位置、人3の動きと、の関係を示す教師データを用いる。
【0061】
本実施形態では、演算装置5は、雨および雪が降っていないことを示す天候情報を取得した場合(図10:ステップS12)、第5モードを選択する(図10:ステップS13c)。一方、演算装置5は、雨または雪が降っていることを示す天候情報を取得した場合(図10:ステップS12)、第6モードを選択する(図10:ステップS23c)。
【0062】
本実施形態では、演算装置5は、第5モードにおいて、第1機械学習モデルを用いて、第1領域内の物体2の位置、人3の位置または人3の動きを検出する(図10:ステップS16c)。
【0063】
本実施形態では、演算装置5は、第6モードにおいて、第2機械学習モデルを用いて、第1領域内の物体2の位置、人3の位置または人3の動きを検出する(図10:検出ステップS26c)。
【0064】
以上のような演算装置5においても、第1の実施形態に係る演算装置5と同じ効果を奏する。より詳細には、機械学習モデルは、雨および雪が降っていない場合の第1送信アンテナ4t1乃至第T送信アンテナ4tTと第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRとの間のチャネル状態情報H1乃至HNを教師データとして用いる第1機械学習モデルおよび雨または雪が降っている場合の第1送信アンテナ4t1乃至第T送信アンテナ4tTと第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRとの間のチャネル状態情報H1乃至HNを教師データとして用いる第2機械学習モデルを含んでいる。これにより、降雨または降雪の有無による第1領域内の物体2の位置、人3の位置または人3の動きの検出精度の低下を抑制することができる。その結果、第4の実施形態に係る演算装置5によれば、降雨または降雪の有無にかかわらず、周囲をより高精度にセンシングすることができる。
【0065】
また、第4の実施形態に係る演算装置5は、雨および雪が降っていないことを示す天候情報を取得した場合、第1機械学習モデルを用いて、第1領域内の物体2の位置、人3の位置または人3の動きを検出する第5モードを選択する。一方、演算装置5は、雨または雪が降っていることを示す天候情報を取得した場合、第2機械学習モデルを用いて、第1領域内の物体2の位置、人3の位置または人3の動きを検出する第6モードを選択する。これにより、降雨または降雪の有無による第1領域内の物体2の位置、人3の位置または人3の動きの検出精度の低下を抑制することができる。その結果、第4の実施形態に係る演算装置5によれば、降雨または降雪の有無にかかわらず、周囲をより高精度にセンシングすることができる。
【0066】
[第5の実施形態]
以下に第5の実施形態に係る演算装置5を備える検出装置20dについて図を参照しながら説明する。図11は、第5の実施形態に係る演算装置5が実行する処理を示すフローチャートである。図12は、第5の実施形態に係る晴天時の第1領域内の人3の動作時の第m送信アンテナ4tmと第n受信アンテナ4rnとの間のチャネル状態情報hmnの振幅および位相の一例を示す図である。図12において、横軸は、時間を示し、かつ、縦軸は、振幅または位相を示す。図13は、第5の実施形態に係る雨天時の第1領域内の人3の動作時の第m送信アンテナ4tmと第n受信アンテナ4rnとの間のチャネル状態情報hmnの振幅および位相の一例を示す図である。図13において、横軸は、時間を示し、かつ、縦軸は、振幅または位相を示す。図12および図13のそれぞれは、乗用車1のリアシートに人3が着席して呼吸をしている時の実験結果である。なお、第5の実施形態に係る演算装置5を備える検出装置20dについては、第1の実施形態に係る演算装置5を備える検出装置20と異なる部分のみ説明し、後は省略する。
【0067】
本実施形態では、演算装置5は、図11に示す取得ステップS12dにおいて、第1送信アンテナ4t1乃至第T送信アンテナ4tTと第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRとの間のチャネル状態情報H1乃至HNに基づいて、第1領域における天候に関する天候情報を取得する点において、検出装置20と相違する。
【0068】
電磁波の経路は、電磁波が通過する環境が変化すると、変化する。したがって、降雨または降雪の有無により、電磁波の経路が変化する。より詳細には、雨または雪が降ると、水が乗用車1の窓に付着する。そのため、降雨の有無または降雪の有無により、乗用車1の窓における電磁波の反射の状態が変化する。したがって、第1送信アンテナ4t1乃至第T送信アンテナ4tTと第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRとの間のチャネル状態情報H1乃至HNは、第1領域の位置における降雨の有無または降雪の有無が変化すると、変化する性質を有している。
【0069】
まず、演算装置5は、第1送信アンテナ4t1乃至第T送信アンテナ4tTと第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRとの間のチャネル状態情報H1乃至HNを算出する(図11:算出ステップS11d)。
【0070】
次に、演算装置5は、算出した第1送信アンテナ4t1乃至第T送信アンテナ4tTと第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRとの間のチャネル状態情報H1乃至HNに基づいて、第1領域における天候に関する天候情報を取得する(図11:取得ステップS12d)。
【0071】
より詳細には、図12に示す晴天時の第1領域内の人3の呼吸時の第m送信アンテナ4tmと第n受信アンテナ4rnとの間のチャネル状態情報hmnの振幅は、図13に示す雨天時の第1領域内の人3の呼吸時の第m送信アンテナ4tmと第n受信アンテナ4rnとの間のチャネル状態情報hmnの振幅と異なる。
【0072】
本実施形態では、図12に示す晴天時の第1領域内の人3の呼吸時の第m送信アンテナ4tmと第n受信アンテナ4rnとの間のチャネル状態情報hmnの振幅は、図13に示す雨天時の第1領域内の人3の呼吸時の第m送信アンテナ4tmと第n受信アンテナ4rnとの間のチャネル状態情報hmnの振幅よりも小さい。そのため、演算装置5は、算出した第1送信アンテナ4t1乃至第T送信アンテナ4tTと第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRとの間のチャネル状態情報H1乃至HNに基づいて、第1領域における天候に関する天候情報を取得することができる。より詳細には、演算装置5は、算出した第1送信アンテナ4t1乃至第T送信アンテナ4tTと第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRとの間のチャネル状態情報H1乃至HNに基づいて、第1領域における降雨または降雪の有無を判定することができる。
【0073】
なお、図11に示すステップS14d乃至検出ステップS17dおよびステップS24d乃至検出ステップS27dのそれぞれについては、図5に示すステップS13乃至検出ステップS16およびステップS23乃至検出ステップS26のそれぞれと同じであるため、説明を省略する。
【0074】
第5の実施形態に係る演算装置5によれば、第1領域における天候に関する天候情報を検出する気象センサから第1領域における天候に関する天候情報を取得しない場合においても、降雨または降雪の有無にかかわらず、周囲をより高精度にセンシングすることができる。より詳細には、第1送信アンテナ4t1乃至第T送信アンテナ4tTと第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRとの間のチャネル状態情報H1乃至HNは、第1領域の位置における降雨の有無または降雪の有無が変化すると、変化する性質を有している。これにより、演算装置5は、第1送信アンテナ4t1乃至第T送信アンテナ4tTと第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRとの間のチャネル状態情報H1乃至HNに基づいて、第1領域における天候に関する天候情報を取得することができる。その結果、第1領域における天候に関する天候情報を検出する気象センサから第1領域における天候に関する天候情報を取得しない場合においても、演算装置5は、第1領域における天候に関する天候情報を取得することができる。その結果、第5の実施形態に係る演算装置5によれば、第1領域における天候に関する天候情報を検出する気象センサから第1領域における天候に関する天候情報を取得しない場合においても、降雨または降雪の有無にかかわらず、周囲をより高精度にセンシングすることができる。
【0075】
[その他の実施形態]
本発明に係る演算装置は、第1の実施形態に係る演算装置5、第2の実施形態に係る演算装置5、第3の実施形態に係る演算装置5、第4の実施形態に係る演算装置5、第5の実施形態に係る演算装置5に限らず、その要旨の範囲において変更可能である。また、第1の実施形態に係る演算装置5、第2の実施形態に係る演算装置5、第3の実施形態に係る演算装置5、第4の実施形態に係る演算装置5、第5の実施形態に係る演算装置5の構成を任意に組み合わせてもよい。
【0076】
なお、機械学習モデル、第1機械学習モデルおよび第2機械学習モデルのそれぞれは、教師データが用いられない機械学習モデルであってもよい。
【0077】
なお、乗用車1は、窓を有していなくてもよい。
【0078】
なお、ビークルは、乗用車1以外に限られない。ビークルは、例えば、ゴルフカート、飛行機、ロケット、列車、ヘリコプターまたは船舶であってもよい。
【0079】
なお、第1領域は、ビークルのキャビン10に限られない。キャビン10は、例えば、トランクまたは貨物室であってもよい。また、第1領域は、例えば、建物の内部空間であってもよい。この場合においても、検出装置20と同じ効果を奏する。
【0080】
なお、第1領域は、閉空間でなくてもよい。この場合、第1領域は、第1領域外の領域と繋がっていてもよい。
【0081】
なお、演算装置5は、第1送信アンテナ4t1乃至第T送信アンテナ4tTのそれぞれおよび第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRのそれぞれが有する機械的特性および電磁気的特性からノイズniを推定し、ノイズniを除去してもよい。
【0082】
なお、人3は、大人に限られない。人3は、例えば、子供であってもよいし、赤ちゃんであってもよい。
【0083】
なお、物体2の位置または人3の位置は、座席の上に限られない。物体2の位置または人3の位置は、例えば、座席の下であってもよい。
【0084】
なお、電磁波は、Wi-Fi(登録商標)に限られない。電磁波は、例えば、Bluetooth(登録商標)等であってもよい。
【0085】
なお、演算装置5は、第1モードにおいて、第1感度により第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRに電磁波を送信させ、かつ、第2モードにおいて、第1感度よりも強い第2感度により第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRに電磁波を受信させてもよい。
【0086】
なお、演算装置5は、第3モードにおいて、第1強度を有する電磁波を第1送信アンテナ4t1乃至第T送信アンテナ4tTに送信させ、かつ、第4モードにおいて、第1強度よりも強い第2強度を有する電磁波を第1送信アンテナ4t1乃至第T送信アンテナ4tTに送信させてもよい。
【0087】
なお、第3の実施形態に係る演算装置5、第4の実施形態に係る演算装置5において、第1強度と第2強度とは、同じ強度であってもよい。
【0088】
なお、演算装置5は、第1領域内に配置されることに限られない。演算装置5は、第1領域外に配置されていてもよいし、第1領域内と第1領域外とに配置されていてもよい。
【0089】
なお、第1領域における天候に関する天候情報は、降雨の有無または降雪の有無に限らず、例えば、雹の有無または火山灰の有無であってもよい。
【0090】
なお、第4モードにおいて、第1感度よりも強い第2感度により第1受信アンテナ4r1乃至第R受信アンテナ4rRに電磁波を受信させる方法は、演算装置5が受信装置42の増幅率を第1増幅率よりも高い第2増幅率に設定させることに限られず、他の方法であってもよい。
【符号の説明】
【0091】
1:乗用車
2:物体
3:人
4:通信装置
4r1:第1受信アンテナ
4rR:第R受信アンテナ
4rn:第n受信アンテナ
4t1:第1送信アンテナ
4tT:第T送信アンテナ
4tm:第m送信アンテナ
5:演算装置
10:キャビン
20,20a,20b,20c,20d:検出装置
41:送信装置
42:受信装置
H1,Hi,hmn:チャネル状態情報
S11,S12d:取得ステップ
S11d,S15,S25:算出ステップ
S16,S16b,S17d,S26,S26b,S26c,S27d:検出ステップ
S12,S13,S13a,S13c,S14,S14a,S14d,S16c,S23,S23a,S23c,S24,S24a,S24d:ステップ
ni:ノイズ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13