(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】SCADAウェブHMIシステム
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20240910BHJP
G05B 19/05 20060101ALI20240910BHJP
B21B 38/00 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
G05B23/02 301T
G05B19/05 D
B21B38/00 Z
(21)【出願番号】P 2024509173
(86)(22)【出願日】2023-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2023011286
(87)【国際公開番号】W WO2023182373
(87)【国際公開日】2023-09-28
【審査請求日】2024-01-22
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2022/014678
(32)【優先日】2022-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 享治
(72)【発明者】
【氏名】藤枝 宏之
(72)【発明者】
【氏名】清水 亮
(72)【発明者】
【氏名】野島 章
(72)【発明者】
【氏名】清水 伸夫
【審査官】渡邊 捷太郎
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103372573(CN,A)
【文献】特開2003-280732(JP,A)
【文献】国際公開第2020/090027(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/003818(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/129081(WO,A1)
【文献】特開2001-25805(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103861877(CN,A)
【文献】特開2014-147950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
G05B 19/05
B21B 38/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラマブルロジックコントローラ(PLC)から受信周期毎にPLC信号を受信するSCADAウェブHMIシステムであって、
少なくとも1つのプロセッサとモニタとを備え、
前記プロセッサは、
被圧延材を搬送する搬送テーブルの第1ゾーンに配置される伸縮可能な第1被圧延材パーツと、前記第1ゾーンに隣接する第2ゾーンに配置される伸縮可能な第2被圧延材パーツと、を含むHMI画面を前記モニタに描画し、前記第1被圧延材パーツおよび前記第2被圧延材パーツは前記受信周期よりも短い描画周期毎に描画され、
前記被圧延材の先端が前記第1ゾーンに入ったタイミングと前記被圧延材の搬送速度とを含む第1PLC信号を受信した時から、前記描画周期毎に、前記第1PLC信号に含まれた前記搬送速度と前記第1PLC信号を受信してからの経過時間とに基づいて第1被圧延材パーツ先端位置を計算し、前記第1被圧延材パーツの描画サイズを前記第1ゾーンの入側から前記第1被圧延材パーツ先端位置までの長さに設定し、
前記第1PLC信号を受信した後に前記被圧延材の前記先端が前記第2ゾーンに入ったタイミングと前記被圧延材の搬送速度とを含む第2PLC信号を受信した時に、前記第1被圧延材パーツ先端位置が前記第2ゾーンに達していない場合に、前記第1被圧延材パーツの描画サイズを前記第1ゾーンのゾーン長に設定し、
前記第2PLC信号を受信した時から、前記描画周期毎に、前記第2PLC信号に含まれた前記搬送速度と前記第2PLC信号を受信してからの経過時間とに基づいて第2被圧延材パーツ先端位置を計算し、前記第2被圧延材パーツの描画サイズを前記第2ゾーンの入側から前記第2被圧延材パーツ先端位置までの長さに設定
し、
前記第1PLC信号を受信してから前記第2PLC信号を受信するまでの間に搬送速度を含む第1中間PLC信号を受信した場合に、前記第1中間PLC信号に含まれた前記搬送速度と前記第1中間PLC信号を受信してからの経過時間とに基づく距離を、前記第1中間PLC信号を受信した時の前記第1被圧延材パーツ先端位置に加えることで前記第1被圧延材パーツ先端位置を更新し、前記第1被圧延材パーツの描画サイズを前記第1ゾーンの入側から前記第1被圧延材パーツ先端位置までの長さに設定する、ように構成されていること、
を特徴とするSCADAウェブHMIシステム
。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記被圧延材の尾端が前記第1ゾーンに入ったタイミングと前記被圧延材の搬送速度とを含む第3PLC信号を受信した時から、前記描画周期毎に、前記第3PLC信号に含まれた搬送速度と前記第3PLC信号を受信してからの経過時間とに基づいて第1被圧延材パーツ尾端位置を計算し、前記第1被圧延材パーツの描画サイズを前記第1被圧延材パーツ尾端位置から前記第1ゾーンの出側までの長さに設定し、
前記第3PLC信号を受信した後に前記被圧延材の前記尾端が前記第2ゾーンに入ったタイミングと前記被圧延材の搬送速度とを含む第4PLC信号を受信した時に、前記第1被圧延材パーツ尾端位置が前記第2ゾーンに達していない場合に、前記第1被圧延材パーツの描画サイズを長さ0に設定し、
前記第4PLC信号を受信した時から、前記描画周期毎に、前記第4PLC信号に含まれた前記搬送速度と前記第4PLC信号を受信してからの経過時間とに基づいて第2被圧延材パーツ尾端位置を計算し、前記第2被圧延材パーツの描画サイズを前記第2被圧延材パーツ尾端位置から前記第2ゾーンの出側までの長さに設定する、ように構成されていること、
を特徴とする請求項
1に記載のSCADAウェブHMIシステム。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記第3PLC信号を受信してから前記第4PLC信号を受信するまでの間に搬送速度を含む第3中間PLC信号を受信した場合に、前記第3中間PLC信号に含まれた前記搬送速度と前記第3中間PLC信号を受信してからの経過時間とに基づく距離を、前記第3中間PLC信号を受信した時の前記第1被圧延材パーツ尾端位置に加えることで前記第1被圧延材パーツ尾端位置を更新し、前記第1被圧延材パーツの描画サイズを前記第1被圧延材パーツ尾端位置から前記第1ゾーンの出側までの長さに設定する、ように構成されていること、
を特徴とする請求項
2に記載のSCADAウェブHMIシステム。
【請求項4】
前記プロセッサは、受信した前記第1PLC信号で指定された前記第1ゾーンにおける初期位置に前記第1被圧延材パーツを描画する、ように構成されていること、を特徴とする請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載のSCADAウェブHMIシステム。
【請求項5】
請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載のSCADAウェブHMIシステムであって、前記第1PLC信号は、前記第1ゾーンにおける前記第1被圧延材パーツ、前記第1被圧延材パーツの先端および前記第1被圧延材パーツの尾端の存否を夫々示す在荷フラグ、先端在荷フラグおよび尾端在荷フラグを含むものにおいて、
前記プロセッサは、前記在荷フラグ、前記先端在荷フラグおよび前記尾端在荷フラグの各値に基づいて、前記第1ゾーンにおける前記第1被圧延材パーツの表示状態を遷移させる、ように構成されていること、を特徴とするSCADAウェブHMIシステム。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記被圧延材の前記先端が前記第2ゾーンに入った後に、前記第1ゾーンと前記第2ゾーンとの境界に位置する前記第1被圧延材パーツの先端境界線と、前記境界に位置する前記第2被圧延材パーツの尾端境界線とを消去する、ように構成されていること、を特徴とする請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載のSCADAウェブHMIシステム。
【請求項7】
請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載のSCADAウェブHMIシステムであって、前記プロセッサは、前記第1被圧延材パーツおよび前記第2被圧延材パーツを直方体として立体的に描画するものにおいて、
前記プロセッサは、前記直方体の搬送方向の長さを変更するときに、前記直方体を展開して長方形に分解し、前記長方形に分解した状態で前記搬送方向の長さを変更し、前記直方体の上面に対応する前記長方形および前記直方体の前記搬送方向の尾端面に対応する前記長方形にそれぞれアフィン変換を適用して、平行四辺形からなる前記上面および前記尾端面を生成する、ように構成されていること、を特徴とするSCADAウェブHMIシステム。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記被圧延材の前記先端が前記第2ゾーンに入った後に、前記第1ゾーンと前記第2ゾーンとの境界に位置する前記第1被圧延材パーツの前記搬送方向の先端面である先端境界面と、前記境界に位置する前記第2被圧延材パーツの尾端面である尾端境界面とを消去する、ように構成されていること、を特徴とする請求項
7に記載のSCADAウェブHMIシステム。
【請求項9】
前記被圧延材はタンデム圧延機で圧延される長尺材であり、
前記第1ゾーンおよび前記第2ゾーンはそれぞれ前記タンデム圧延機の圧延スタンド間であること、
を特徴とする請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載のSCADAウェブHMIシステム。
【請求項10】
前記プロセッサは、ウェブブラウザを実行するように構成され、
前記ウェブブラウザは、前記描画周期毎に前記HMI画面を描画すること、
を特徴とする請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載のSCADAウェブHMIシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、SCADAウェブHMIシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
SCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)は、社会インフラシステムを監視制御する仕組みとして知られている。社会インフラシステムは、鉄鋼圧延システム、電力送変電システム、上下水道処理システム、ビル管理システム、道路システムなどである。
【0003】
SCADAは、産業制御システムの一種であり、コンピュータによるシステム監視とプロセス制御を行う。SCADAでは、システムの処理性能に合わせた即応性(リアルタイム性)が必要である。
【0004】
SCADAは一般に次のようなサブシステムから構成される。
(1)HMI(Human Machine Interface)
HMIは、対象プロセス(監視対象装置)のデータをオペレータに提示し、オペレータがプロセスを監視し制御できるようにする機構である。例えば特許文献1には、SCADAクライアント上で動作するHMI画面(HMI Screen)を備えるSCADA HMIが開示されている。
(2)監視制御システム
監視制御システムは、プロセス上の信号データ(PLC信号)を収集し、プロセスに対して制御コマンド(制御信号)を送る。監視制御システムは、PLC(Programmable Logic Controller)などによって構成される。
(3)遠方入出力装置(Remote Input Output)
遠方入出力装置は、プロセス内に設置されたセンサと接続し、センサの信号をデジタルのデータに変換し、そのデジタルデータを監視制御システムに送る。
(4)通信基盤
通信基盤は、監視制御システムと遠方入出力装置を接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した鉄鋼圧延システムの1つに熱間圧延ラインがある。熱間圧延ラインは、被圧延材を圧延する複数の圧延スタンドを有する圧延機(粗圧延機、仕上圧延機)を備える。従来のSCADA HMIでは、HMI画面に各圧延スタンドを表示し、PLCからPLC信号を受信した時に、各圧延スタンド間(ゾーン)に被圧延材が在荷しているか否かを2値(ONかOFFか)で表示していた。
【0007】
しかしながら、実際の被圧延材は熱間圧延ラインの上流側から下流側へ時間経過とともに搬送される。そのため、ゾーン内を移動する実際の被圧延材の先端位置や尾端位置を、トラッキングしHMI画面に表示することが望まれている。
特に、PLCからの信号が低周期(200~1000msec)である場合は、PLC信号の受信周期を待たずに、被圧延材の先端位置や尾端位置を推定してHMI画面にトラッキング状況を表示できることが望まれる。
【0008】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたもので、PLC信号の受信周期を待たずにHMI画面上で被圧延材の先端(および尾端)位置を精度高くトラッキングでき、最新のPLC信号を受信した場合にHMI画面上のトラッキング表示を補正できるSCADAウェブHMIシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の観点は、SCADAウェブHMIシステムに関連する。前記SCADAウェブHMIシステムは、PLCから受信周期毎にPLC信号を受信する。前記SCADAウェブHMIシステムは、少なくとも1つのプロセッサとモニタとを備える。
前記プロセッサは以下のように構成されている。
前記プロセッサは、被圧延材を搬送する搬送テーブルの第1ゾーンに配置される伸縮可能な第1被圧延材パーツと、前記第1ゾーンに隣接する第2ゾーンに配置される伸縮可能な第2被圧延材パーツと、を含むHMI画面を前記モニタに描画する。ここで、前記第1被圧延材パーツおよび前記第2被圧延材パーツは前記受信周期よりも短い描画周期毎に描画される。前記プロセッサは、前記被圧延材の先端が前記第1ゾーンに入ったタイミングと前記被圧延材の搬送速度とを含む第1PLC信号を受信した時から、前記描画周期毎に、前記第1PLC信号に含まれた前記搬送速度と前記第1PLC信号を受信してからの経過時間とに基づいて第1被圧延材パーツ先端位置を計算する。前記プロセッサは、前記第1被圧延材パーツの描画サイズを前記第1ゾーンの入側から前記第1被圧延材パーツ先端位置までの長さに設定する。前記プロセッサは、前記第1PLC信号を受信した後に前記被圧延材の前記先端が前記第2ゾーンに入ったタイミングと前記被圧延材の搬送速度とを含む第2PLC信号を受信した時に、前記第1被圧延材パーツ先端位置が前記第2ゾーンに達していない場合に、前記第1被圧延材パーツの描画サイズを前記第1ゾーンのゾーン長に設定する。前記プロセッサは、前記第2PLC信号を受信した時から、前記描画周期毎に、前記第2PLC信号に含まれた前記搬送速度と前記第2PLC信号を受信してからの経過時間とに基づいて第2被圧延材パーツ先端位置を計算する。前記プロセッサは、前記第2被圧延材パーツの描画サイズを前記第2ゾーンの入側から前記第2被圧延材パーツ先端位置までの長さに設定する。前記プロセッサは、前記第1PLC信号を受信してから前記第2PLC信号を受信するまでの間に搬送速度を含む第1中間PLC信号を受信した場合に、前記第1中間PLC信号に含まれた前記搬送速度と前記第1中間PLC信号を受信してからの経過時間とに基づく距離を、前記第1中間PLC信号を受信した時の前記第1被圧延材パーツ先端位置に加えることで前記第1被圧延材パーツ先端位置を更新する。前記プロセッサは、前記第1被圧延材パーツの描画サイズを前記第1ゾーンの入側から前記第1被圧延材パーツ先端位置までの長さに設定する。
【0011】
第2の観点は、第1の観点に加えて、次の特徴を更に有する。
前記プロセッサは、前記被圧延材の尾端が前記第1ゾーンに入ったタイミングと前記被圧延材の搬送速度とを含む第3PLC信号を受信した時から、前記描画周期毎に、前記第3PLC信号に含まれた搬送速度と前記第3PLC信号を受信してからの経過時間とに基づいて第1被圧延材パーツ尾端位置を計算する。前記プロセッサは、前記第1被圧延材パーツの描画サイズを前記第1被圧延材パーツ尾端位置から前記第1ゾーンの出側までの長さに設定する。前記プロセッサは、前記第3PLC信号を受信した後に前記被圧延材の前記尾端が前記第2ゾーンに入ったタイミングと前記被圧延材の搬送速度とを含む第4PLC信号を受信した時に、前記第1被圧延材パーツ尾端位置が前記第2ゾーンに達していない場合に、前記第1被圧延材パーツの描画サイズを長さ0に設定する。前記プロセッサは、前記第4PLC信号を受信した時から、前記描画周期毎に、前記第4PLC信号に含まれた前記搬送速度と前記第4PLC信号を受信してからの経過時間とに基づいて第2被圧延材パーツ尾端位置を計算する。前記プロセッサは、前記第2被圧延材パーツの描画サイズを前記第2被圧延材パーツ尾端位置から前記第2ゾーンの出側までの長さに設定する。
【0012】
第3の観点は、第2の観点に加えて、次の特徴を更に有する。
前記プロセッサは、前記第3PLC信号を受信してから前記第4PLC信号を受信するまでの間に搬送速度を含む第3中間PLC信号を受信した場合に、前記第3中間PLC信号に含まれた前記搬送速度と前記第3中間PLC信号を受信してからの経過時間とに基づく距離を、前記第3中間PLC信号を受信した時の前記第1被圧延材パーツ尾端位置に加えることで前記第1被圧延材パーツ尾端位置を更新する。前記プロセッサは、前記第1被圧延材パーツの描画サイズを前記第1被圧延材パーツ尾端位置から前記第1ゾーンの出側までの長さに設定する。
【0013】
第4の観点は、第1から第3の観点のいずれかに加えて、次の特徴を更に有する。
前記プロセッサは、受信した前記第1PLC信号で指定された前記第1ゾーンにおける初期位置に前記第1被圧延材パーツを描画する。
【0014】
第5の観点は、第1から第3の観点のいずれかに加えて、次の特徴を更に有する。
前記第1PLC信号は、前記第1ゾーンにおける前記第1被圧延材パーツ、前記第1被圧延材パーツの先端および前記第1被圧延材パーツの尾端の存否を夫々示す在荷フラグ、先端在荷フラグおよび尾端在荷フラグを含む。前記プロセッサは、前記在荷フラグ、前記先端在荷フラグおよび前記尾端在荷フラグの各値に基づいて、前記第1ゾーンにおける前記第1被圧延材パーツの表示状態を遷移させる。
【0015】
第6の観点は、第1から第3の観点のいずれかに加えて、次の特徴を更に有する。
前記プロセッサは、前記被圧延材の前記先端が前記第2ゾーンに入った後に、前記第1ゾーンと前記第2ゾーンとの境界に位置する前記第1被圧延材パーツの先端境界線と、前記境界に位置する前記第2被圧延材パーツの尾端境界線とを消去する。
【0016】
第7の観点は、第1から第3の観点のいずれかに加えて、次の特徴を更に有する。
前記プロセッサは、前記第1被圧延材パーツおよび前記第2被圧延材パーツを直方体として立体的に描画する。前記プロセッサは、前記直方体の搬送方向の長さを変更するときに、前記直方体を展開して長方形に分解し、前記長方形に分解した状態で前記搬送方向の長さを変更し、前記直方体の上面に対応する前記長方形および前記直方体の前記搬送方向の尾端面に対応する前記長方形にそれぞれアフィン変換を適用して、平行四辺形からなる前記上面および前記尾端面を生成する。
【0017】
第8の観点は、第7の観点に加えて、次の特徴を更に有する。
前記プロセッサは、前記被圧延材の前記先端が前記第2ゾーンに入った後に、前記第1ゾーンと前記第2ゾーンとの境界に位置する前記第1被圧延材パーツの前記搬送方向の先端面と、前記境界に位置する前記第2被圧延材パーツの尾端面とを消去する。
【0018】
第9の観点は、第1から第3の観点のいずれかに加えて、次の特徴を更に有する。
前記被圧延材はタンデム圧延機で圧延される長尺材である。前記第1ゾーンおよび前記第2ゾーンはそれぞれ前記タンデム圧延機の圧延スタンド間である。
【0019】
第10の観点は、第1から第3の観点のいずれかに加えて、次の特徴を更に有する。
前記プロセッサは、ウェブブラウザを実行するように構成されている。前記ウェブブラウザは、前記描画周期毎に前記HMI画面を描画する。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、PLC信号の受信周期を待たずにHMI画面上で被圧延材の先端(および尾端)位置を精度高くトラッキングでき、最新のPLC信号を受信した場合にHMI画面上のトラッキング表示を補正できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施の形態に係るSCADAのシステム構成を説明するための図である。
【
図2】実施の形態に係るSCADAウェブHMIシステムが有する機能の概要を例示するブロック図である。
【
図3】実施の形態に係るデバイスリストの一例について説明するための図である。
【
図4】実施の形態に係るHMI画面に配置された長尺材パーツの先端描画の特徴について説明するための図である。
【
図5】実施の形態に係るHMI画面に配置された長尺材パーツの尾端描画の特徴について説明するための図である。
【
図6】実施の形態に係るゾーン内移動距離の積算について説明するための図である。
【
図7】実施の形態に係るゾーン内移動距離に基づく長尺材パーツの先端位置および尾端位置を示す図である。
【
図8】実施の形態に係る長尺材パーツの描画処理について説明するためのフローチャートである。
【
図9】実施の形態に係る長尺材パーツの描画処理について説明するためのフローチャートである。
【
図10】実施の形態に係るHMIサーバ装置およびHMIクライアント装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図11】ゾーン境界に位置する長尺材パーツの部分に表示される縦線を消去する縦線消去処理を説明するための図である。
【
図12】長尺材パーツの表示位置を説明するための図である。
【
図13】長尺材パーツの初期位置設定処理を説明するための図である。
【
図14】長尺材パーツの初期位置設定処理を説明するための図である。
【
図15】複数スラブ状態の表示を説明するための図である。
【
図16】複数スラブ状態の表示を説明するための図である。
【
図17】複数スラブ状態の表示を説明するための図である。
【
図18】長尺材パーツの表示状態の遷移を説明するための図である。
【
図19】長尺材パーツの立体表示処理を説明するための図である。
【
図20】長尺材パーツの立体表示処理を説明するための図である。
【
図21】長尺材パーツを立体表示する場合の縦線消去処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0023】
実施の形態.
1.全体システム
図1は、SCADAのシステム構成を説明するための図である。SCADAは、ヒューマンマシンインターフェース(HMI)1、監視制御システムとしてのプログラマブルロジックコントローラ(PLC)2、通信基盤としての通信装置3、RIO4をサブシステムとして備える。SCADAは、PLC2またはRIO4を介して監視対象装置5に接続する。
【0024】
PLC2(監視制御システム)、通信装置3(通信基盤)、RIO4に関する説明は、背景技術で述べた通りであるため省略する。監視対象装置5は、監視制御対象のプラントを構成するセンサ、アクチュエータなどである。
【0025】
HMI1(SCADAウェブHMIシステム)は、SCADAウェブHMIサーバ装置(以下、HMIサーバ装置10と記す)と、少なくとも一つのSCADAウェブHMIクライアント装置(以下、HMIクライアント装置20と記す)とを備える。
【0026】
2.SCADAウェブHMIシステム
図2を参照して、SCADAウェブHMIシステムについて説明する。
HMIサーバ装置10は、コンピュータネットワークを介してPLC2とHMIクライアント装置20に接続する。HMIサーバ装置10は、PLC2から受信した信号に応じてHMI画面22の表示状態を更新するための更新データ(PLC信号)をウェブブラウザ21へ送信する。また、HMIサーバ装置10は、ウェブブラウザ21から制御信号を受信してPLC2へ送信する。
【0027】
HMIクライアント装置20は、監視制御ロジックを含まないシンクライアントであり、少なくとも1つのモニタ20e(
図10)を備える。HMIクライアント装置20は、ウェブブラウザ21を実行し、ウェブブラウザ21はモニタ20eにフルスクリーンで表示される。ウェブブラウザ21は、HMIサーバ装置10と通信し、プラントの状態を表示するパーツが配置されたHMI画面22を描画する。
【0028】
図2に例示されているHMI画面22について説明する。HMI画面22には、熱間圧延ラインの粗圧延セクションおける被圧延材のトラッキング状況が表示されている。
図2に示す粗圧延機は、3台の圧延スタンド(R1,R2,R3)が直列に配置されたタンデム圧延機である。粗圧延機は、被圧延材を順方向(上流から下流へ)および逆方向(下流から上流へ)に圧延可能である。
【0029】
HMI画面22は、第1圧延スタンドR1、第2圧延スタンドR2、第3圧延スタンドR3、および被圧延材としての長尺材を搬送する搬送テーブル6を示す表示パーツを含む。加えて、HMI画面22は、被圧延材の在荷状態を示すための、長手方向の表示長を伸縮自在な被圧延材パーツとしての長尺材パーツ(S0,S1,S2,S3)を含む。S0は、第1圧延スタンドR1の上流に配置される。S1は、第1圧延スタンドR1と第2圧延スタンドR2との間の区間(第1ゾーンZ1と記す)に配置される。S2は、第2圧延スタンドR2と第3圧延スタンドR3との間の区間(第2ゾーンZ2と記す)に配置される。S3は、第3圧延スタンドの下流に配置される。
【0030】
なお、粗圧延セクションや仕上圧延セクションのように長い区間はマクロトラッキングゾーンと呼ばれるのに対して、圧延スタンド間のように短い区間(Z1,Z2)はミクロトラッキングゾーンと呼ばれる。
【0031】
2-1.SCADAウェブHMIサーバ装置の構成
より詳細にHMIサーバ装置10について説明する。
HMIサーバ装置10は、後述する
図10に示すように、各種処理を実行するプロセッサ10a、各種情報(プログラムを含む)が格納されるメモリ10bを備える。各種情報は、画面データ13、パーツライブラリ14、デバイスリスト15を含む。プロセッサ10aは、メモリ10bに記憶された各種情報を読み込み、プログラムを実行することにより、PLC信号処理部11、ウェブサーバ処理部12として機能する。PLC信号処理部11およびウェブサーバ処理部12はプロセス間通信により相互にデータを送受信可能である。
【0032】
画面データ13は、HMI画面22毎に定義されたベクターデータである。例えば、ベクターデータは、Scalable Vector Graphics(SVG)フォーマットのデータである。SVGデータは、SVGエレメントの属性として、HMI画面22に配置されたパーツのパーツ名、形、位置、色、大きさを含む。なお、画面データ13には画面名が含まれる。
例えば、
図2に示されているHMI画面22の画面データ13は、圧延スタンド(R1,R2,R3)のパーツ、搬送テーブル6のパーツ、長尺材パーツ(S0,S1,S2,S3)を含む。
【0033】
パーツライブラリ14は、HMI画面22に配置されるパーツの種別毎に動作を記述したスクリプトの集合を含む。スクリプトは、パーツ種別毎に定義されたJavaScript(登録商標)プログラムである。スクリプトは、必要に応じてパラメータ値が与えられて各ウェブブラウザ21上で実行可能である。例えば、長尺材パーツ(S0,S1,S2,S3)のスクリプトは、PLC信号に含まれる在荷フラグの値、先端在荷フラグの値、尾端在荷フラグの値、搬送速度基準値、およびPLC信号の受信時刻を入力値として、長尺材パーツの描画サイズ(表示長、表示位置)を出力する。
【0034】
在荷フラグは、ゾーン内に被圧延材の一部が存在している場合にONである。先端在荷フラグは、ゾーン内に被圧延材の先端が存在している場合にONである。尾端在荷フラグは、ゾーン内に被圧延材の尾端が存在している場合にONである。在荷フラグと先端在荷フラグと尾端在荷フラグの値は、圧延スタンドの圧延荷重センサのセンサ値や圧延スタンドの近傍に配置されたレーザーセンサのセンサ値に基づいてPLC2により演算される。搬送速度基準値は、圧延スタンドのワークロール回転速度とワークロール径に基づいてPLC2により演算される被圧延材の搬送速度である。
【0035】
デバイスリスト15は、HMI画面22毎に定義されたデータであり、例えばComma-Separated Values(CSV)フォーマットのデータである。デバイスリスト15は、HMI画面22に配置されたパーツに紐付けられたアイテム名と、PLCの通信アドレスとを関連付けたデータである。アイテム名および通信アドレスはシステムでユニークである。
【0036】
図3は、
図2に示されているHMI画面22に関するデバイスリスト15の一部を示す図である。「G100」は、スクリーン番号である。「G100」に配置された第1ゾーンZ1における在荷状態を表示する第1長尺材パーツS1のパーツ名は「G100_1SLAB」である。第1長尺材パーツS1には、4つのトラッキングアイテムが設定されている。アイテム名はそれぞれ、「G100_1SLAB_M」、「G100_1SLAB_HE」、「G100_1SLAB_TE」および「G100_1SLAB_SRF」である。「G100_1SLAB_M」は、第1ゾーンZ1の在荷フラグであり、データ型はブール型である。「G100_1SLAB_HE」は、第1ゾーンZ1の先端在荷フラグであり、データ型はブール型である。「G100_1SLAB_TE」は、第1ゾーンZ1の尾端在荷フラグであり、データ型はブール型である。「G100_1SLAB_SRF」は、第1ゾーンZ1の搬送速度基準であり、データ型は実数型である。
【0037】
また、「G100」に配置された第2ゾーンZ2における在荷状態を表示する第2長尺材パーツS2のパーツ名は「G100_2SLAB」である。第2長尺材パーツS2には、4つのトラッキングアイテムが設定されている。アイテム名はそれぞれ、「G100_2SLAB_M」、「G100_2SLAB_HE」、「G100_2SLAB_TE」および「G100_2SLAB_SRF」である。「G100_2SLAB_M」は、第2ゾーンZ2の在荷フラグであり、データ型はブール型である。「G100_2SLAB_HE」は、第2ゾーンZ2の先端在荷フラグであり、データ型はブール型である。「G100_2SLAB_TE」は、第2ゾーンZ2の尾端在荷フラグであり、データ型はブール型である。「G100_2SLAB_SRF」は、第2ゾーンZ2の搬送速度基準であり、データ型は実数型である。
【0038】
図2に戻り説明を続ける。
PLC信号処理部11は、デバイスリスト15に含まれる通信アドレスに基づいて周期的にPLC2からPLC信号を受信し、ウェブサーバ処理部12へ送信する。PLC信号の受信周期は低周期(約200~1000msec)である。また、PLC信号処理部11は、ウェブサーバ処理部12から受信した制御信号をPLC2へ送信する。
【0039】
ウェブサーバ処理部12は、HMIクライアント装置20のウェブブラウザ21(ウェブブラウザ処理部31)と、HTTP(Hypertext Transfer Protocol)、HTTPS(Hypertext Transfer Protocol Secure)、WebSocketを用いて通信可能である。ウェブサーバ処理部12は、HMI画面毎の画面データ13(SVGファイル)、パーツ種別毎の動作を記述したパーツライブラリ14、デバイスリスト15に基づいて、HMI画面毎のコンテンツを生成する。コンテンツは、HTMLファイル、画面データ13(SVGファイル)、パーツライブラリ14を含む。ウェブサーバ処理部12は、ウェブブラウザ21(ウェブブラウザ処理部31)からのリクエストに応じてコンテンツを送信する。ウェブサーバ処理部12は、PLC信号処理部11からPLC信号を受信する。ウェブサーバ処理部12は、デバイスリスト15に基づいて、受信したPLC信号に対応するアイテム名を有するHMI画面22を表示しているウェブブラウザ21へ、PLC信号(PLC信号に応じたアイテム名の値)を送信する。
【0040】
2-2.SCADAウェブHMIクライアント装置の構成
より詳細にHMIクライアント装置20について説明する。
HMIクライアント装置20は、処理回路30(後述する
図10に示す、各種処理を実行するプロセッサ20a、各種情報(プログラムを含む)が格納されるメモリ20bを含む)、モニタ20eを備える。プロセッサ20aは、メモリ20bに記憶された各種情報を読み込み、プログラムを実行することにより、ウェブブラウザ処理部31として機能する。
【0041】
ウェブブラウザ処理部31は、ウェブブラウザ21ごとに実行される。ウェブブラウザ21は、産業プラントを監視制御するためのHMI画面22を描画する。HMI画面22には複数のパーツが配置されている。パーツは、例えば、オペレータの操作に応じてPLC2へ制御信号を送信するための操作パーツ、受信したPLC信号に応じて表示状態(数値、文字、色、形)が変化する表示パーツ、などを含む。
【0042】
ウェブブラウザ処理部31は起動時に、ウェブサーバ処理部12から、上述したコンテンツ(HTMLファイル、画面データ13、パーツライブラリ14)を受信し、メモリ20bに記憶する。コンテンツに基づいて、ウェブブラウザ21は、パーツが配置されたHMI画面22を描画する。
【0043】
ウェブブラウザ処理部31は、HMI画面22に配置されたパーツのパーツ種別に応じて、上述したパーツライブラリ14に含まれるパーツ種別毎のスクリプトを実行する。本実施形態では、長尺材パーツ(S0,S1,S2,S3)のスクリプトについて説明する。長尺材パーツのスクリプトは、受信したPLC信号に基づく入力値(上述した4つのトラッキングアイテムの値とPLC信号の受信時刻)に応じて、長尺材パーツの描画サイズを変化させる。
【0044】
3.長尺材パーツの特徴的な描画処理
図4~
図9を参照して本実施形態に係る長尺材パーツの描画処理について説明する。説明容易のため、以下の説明では
図2の第1ゾーンZ1に配置される伸縮可能な第1長尺材パーツS1と、第1ゾーンZ1に隣接する第2ゾーンZ2に配置される伸縮可能な第2長尺材パーツS2を例示して説明する。また、第1長尺材パーツS1および第2長尺材パーツS2はPLC信号の受信周期よりも通常は十分に短い描画周期毎に描画されるが、描画周期はブラウザの負荷状況に応じて変化するため一定ではない。
【0045】
まず、
図4を参照して、HMI画面22に配置された第1長尺材パーツS1と第2長尺材パーツS2の先端描画の特徴について説明する。
図4の(A)は、被圧延材の先端が第1ゾーンZ1に入ったタイミングと被圧延材の搬送速度基準値とを含む第1PLC信号を受信した後の第1長尺材パーツS1の連続的な描画について説明するための図である。
【0046】
ウェブブラウザ処理部31は、第1PLC信号を受信した時から、描画周期毎に、第1PLC信号に含まれた搬送速度基準値と第1PLC信号を受信してからの経過時間とに基づいて第1長尺材パーツ先端位置H1を計算する。ウェブブラウザ処理部31は、第1長尺材パーツS1の描画サイズを第1ゾーンZ1の入側から第1長尺材パーツ先端位置H1までの長さに設定する。ウェブブラウザ処理部31は、第1長尺材パーツS1について第1ゾーンZ1の入側から第1長尺材パーツ先端位置H1までの範囲を点灯色で描画し、第1長尺材パーツ先端位置H1から第1ゾーンZ1の出側までの範囲を消灯色で描画する。
【0047】
これによれば、PLC信号は低周期(200~1000msec)で受信されるところ、次のPLC信号を待たずに描画周期が到来する度に、第1長尺材パーツS1の先端を第1ゾーンZ1の出側に向かって進めることができ、被圧延材のトラッキング状況をなめらかに表示することができる。
【0048】
しかしながら、
図4の(B)に示されるように、第1PLC信号を受信した後に被圧延材の先端が第2ゾーンZ2に入ったタイミングと被圧延材の搬送速度基準値とを含む第2PLC信号を受信した時に、第1長尺材パーツ先端位置H1が第2ゾーンZ2に達していない場合がありうる。この場合、HMI画面22に描画される第1長尺材パーツS1の先端位置が実際の被圧延材の先端位置に追いついていない。
【0049】
この場合、ウェブブラウザ処理部31は、すぐに第1長尺材パーツS1の描画サイズ(表示長)を第1ゾーンのゾーン長(100%)に設定する(
図4の(C))。ウェブブラウザ処理部31は、第1長尺材パーツS1について第1ゾーンZ1の入側から第1長尺材パーツ先端位置H1(第1ゾーンZ1の出側)までの範囲を点灯色で描画する。
【0050】
これによれば、HMI画面22に描画される第1長尺材パーツS1の先端位置を、実際の被圧延材の先端位置に追いつかせることができる。
【0051】
その後、
図4の(D)に示されるように、ウェブブラウザ処理部31は、第2PLC信号を受信した時から、描画周期毎に、第2PLC信号に含まれた搬送速度基準値と第2PLC信号を受信してからの経過時間とに基づいて第2長尺材パーツ先端位置H2を計算する。ウェブブラウザ処理部31は、第2長尺材パーツS2の描画サイズを第2ゾーンZ2の入側から第2長尺材パーツ先端位置H2までの長さに設定する。ウェブブラウザ処理部31は、第2長尺材パーツS2について、第2ゾーンZ2の入側から第2長尺材パーツ先端位置H2までの範囲を点灯色で描画し、第2長尺材パーツ先端位置H2から第2ゾーンZ2の出側までの範囲を消灯色で描画する。
【0052】
これによれば、PLC信号は低周期で受信されるところ、次のPLC信号を待たずに描画周期が到来する度に、第2長尺材パーツS2の先端を第2ゾーンZ2の出側に向かって進めることができ、被圧延材のトラッキング状況をなめらかに表示することができる。
【0053】
次に、
図5を参照して、HMI画面22に配置された第1長尺材パーツS1と第2長尺材パーツS2の尾端描画の特徴について説明する。
図5の(A)は、被圧延材の尾端が第1ゾーンZ1に入ったタイミングと被圧延材の搬送速度基準値とを含む第3PLC信号を受信した後の第1長尺材パーツS1の連続的な描画について説明するための図である。
【0054】
ウェブブラウザ処理部31は、第3PLC信号を受信した時から、描画周期毎に、第3PLC信号に含まれた搬送速度基準値と第3PLC信号を受信してからの経過時間とに基づいて第1長尺材パーツ尾端位置T1を計算する。ウェブブラウザ処理部31は、第1長尺材パーツS1の描画サイズを第1長尺材パーツ尾端位置T1から第1ゾーンZ1の出側までの長さに設定する。ウェブブラウザ処理部31は、第1長尺材パーツS1について、第1ゾーンZ1の入側から第1長尺材パーツ尾端位置T1までの範囲を消灯色で描画し、第1長尺材パーツ尾端位置T1から第1ゾーンZ1の出側までの範囲を点灯色で描画する。
【0055】
これによれば、PLC信号は低周期で受信されるところ、次のPLC信号を待たずに描画周期が到来する度に、第1長尺材パーツS1の尾端を第1ゾーンZ1の出側に向かって進めることができ、被圧延材のトラッキング状況をなめらかに表示することができる。
【0056】
しかしながら、
図5の(B)に示されるように、第3PLC信号を受信した後に被圧延材の尾端が第2ゾーンZ2に入ったタイミングと被圧延材の搬送速度基準値とを含む第4PLC信号を受信した時に、第1長尺材パーツ尾端位置T1が第2ゾーンZ2に達していない場合がありうる。この場合、HMI画面22に描画される第1長尺材パーツS1の尾端位置が実際の被圧延材の尾端位置に追いついていない。
【0057】
この場合、ウェブブラウザ処理部31は、すぐに第1長尺材パーツS1の描画サイズ(表示長)を長さ0に設定する(
図5の(C))。ウェブブラウザ処理部31は、第1長尺材パーツS1について第1ゾーンZ1の入側から出側までの範囲を消灯色で描画する。
【0058】
これによれば、HMI画面22に描画される第1長尺材パーツS1の尾端位置を、実際の被圧延材の尾端位置に追いつかせることができる。
【0059】
その後、
図5の(D)に示されるように、ウェブブラウザ処理部31は、第4PLC信号を受信した時から、描画周期毎に、第4PLC信号に含まれた搬送速度基準値と第4PLC信号を受信してからの経過時間とに基づいて第2長尺材パーツ尾端位置T2を計算する。ウェブブラウザ処理部31は、第2長尺材パーツS2の描画サイズを第2長尺材パーツ尾端位置T2から第2ゾーンZ2の出側までの長さに設定する。ウェブブラウザ処理部31は、第2長尺材パーツS2について、第2ゾーンZ2の入側から第2長尺材パーツ尾端位置T2までの範囲を消灯色で描画し、第2長尺材パーツ尾端位置T2から第2ゾーンZ2の出側からまでの範囲を点灯色で描画する。
【0060】
これによれば、PLC信号は低周期で受信されるところ、PLC信号を待たずに描画周期が到来する度に、第2長尺材パーツS2の尾端を第2ゾーンZ2の出側に向かって進めることができ、被圧延材のトラッキング表示をなめらかに表現することができる。
【0061】
ところで、上述した
図4および
図5では説明容易のため、被圧延材の先端(または尾端)が第1ゾーンZ1に入ったタイミングを含む第1PLC信号(または第3PLC信号)が受信されてから、被圧延材の先端(または尾端)が第2ゾーンZ2に入った(第1ゾーンZ1を出た)タイミングを含む第2PLC信号が受信されるまでの間に受信されうるPLC信号については言及していない。しかし、実際には第1PLC信号が受信されてから第2PLC信号が受信されるまでの間に複数のPLC信号(中間PLC信号と記す)が受信されうる。中間PLC信号は、第1PLC信号(または第3PLC信号)とは搬送速度基準値が異なるPLC信号である。
【0062】
トラッキング精度を高めるため、ウェブブラウザ処理部31は、中間PLC信号に含まれる最新の搬送速度基準値を考慮して被圧延材の先端(または尾端)のゾーン内移動距離を積算し、長尺材パーツの先端(または尾端)の位置を計算する。
【0063】
具体的には、第1ゾーンZ1において、ウェブブラウザ処理部31は、第1PLC信号を受信してから第2PLC信号を受信するまでの間に搬送速度基準値を含む第1中間PLC信号を受信した場合に、第1中間PLC信号に含まれた搬送速度基準値と第1中間PLC信号を受信してからの経過時間とに基づく距離を、第1中間PLC信号を受信した時の第1長尺材パーツ先端位置H1に加えることで第1長尺材パーツ先端位置H1を更新する。ウェブブラウザ処理部31は、第1長尺材パーツS1の描画サイズを第1ゾーンZ1の入側から第1長尺材パーツ先端位置H1までの長さに設定する。
【0064】
同様に、ウェブブラウザ処理部31は、第3PLC信号を受信してから第4PLC信号を受信するまでの間に搬送速度基準値を含む第3中間PLC信号を受信した場合に、第3中間PLC信号に含まれた搬送速度基準値と第3中間PLC信号を受信してからの経過時間とに基づく距離を、第3中間PLC信号を受信した時の第1長尺材パーツ尾端位置T1に加えることで第1長尺材パーツ尾端位置T1を更新する。ウェブブラウザ処理部31は、第1長尺材パーツS1の描画サイズを第1長尺材パーツ尾端位置T1から第1ゾーンZ1の出側までの長さに設定する。
【0065】
図6は、ミクロトラッキングゾーンにおけるゾーン内移動距離の積算について説明するための図である。
図6において、nは速度変化回数、t(n)は時間、t(0)は先端(尾端)在荷ON時刻[sec]、t(N+1)は先端(尾端)在荷OFF時刻[sec]、v(n)は搬送速度基準値[m/sec]である。
図6に示されるように、先端(尾端)が第1ゾーンZ1を通過するまでにn回のPLC信号を受信する。各PLC信号において搬送速度基準値は変更されうる。ゾーン内移動距離P(N)[m]は次式(1)で表される。
【0066】
【0067】
図7は、ゾーン内移動距離P(N)に基づく長尺材パーツの先端位置および尾端位置を示す図である。
図7の(A)は、式(1)を用いて計算された長尺材パーツの先端移動距離P
HEAD(t)を示す図である。
図7の(B)は、式(1)を用いて計算された長尺材パーツの尾端移動距離P
TAIL(t)を示す図である。
図7の(C)は、式(1)を用いて計算された長尺材パーツの先端移動距離P
HEAD(t)および尾端移動距離P
TAIL(t)を示す図である。
図7の(C)における長尺材パーツの最大長(ゾーン長L[m])に対する表示長の割合は次式(2)で表される。
【0068】
【0069】
次に
図8および
図9に示すフローチャートを参照して、本実施形態に係る長尺材パーツの描画処理について説明する。フローチャートに示される処理は、描画周期毎に各ゾーンの長尺材パーツそれぞれにについて実行される。描画周期はPLCの受信周期よりも通常は、十分に短いが、描画周期は、ブラウザの負荷状況に応じて変化するため一定ではない。
【0070】
まず、ステップS100において、ウェブブラウザ処理部31は、受信した最新のPLC信号に含まれる在荷フラグがONであるかOFFであるかを判定する。在荷フラグは、当該ゾーン内に被圧延材の一部が存在している場合にONである。在荷フラグがONである場合は、ステップS110の処理が実行される。在荷フラグがOFFである場合は、ステップS
155の処理が実行される。一例として、在荷フラグは、上述した第1ゾーンZ1の「G100_1SLAB_M」や第2ゾーンZ2の「G100_2SLAB_M」である(
図3)。
【0071】
ステップS110において、ウェブブラウザ処理部31は、最新のPLC信号に含まれる先端在荷フラグがONであるかOFFであるかを判定する。先端在荷フラグは、当該ゾーン内に被圧延材の先端が存在している場合にONである。先端在荷フラグがONである場合、ステップS120の処理が実行される。先端在荷フラグがOFFである場合は、ステップS125において先端位置が100%に設定された後、ステップS160の処理が実行される。
【0072】
ステップS120において、ウェブブラウザ処理部31は、最新のPLC信号によって先端在荷フラグがOFFからONに切り替わり、かつ、当該PLC信号に含まれる搬送速度基準値がマイナス値であるか否かを判定する。搬送速度基準値がマイナス値である場合には、リバース圧延が実施されており、被圧延材は圧延ラインの下流側から上流側へ向かって圧延されている。ステップS120の判定条件が成立する場合は、ステップS130の処理が実行される。当該判定条件が成立しない場合は、ステップS135において先端開始位置が0%に設定された後、ステップS140の処理が実行される。
【0073】
ステップS120の判定条件が成立する場合、すなわちリバース圧延時に圧延ラインの下流側から当該ゾーンに被圧延材の先端が入った場合、ステップS130において、当該ゾーンの先端開始位置は長尺材パーツの最大長(ゾーン長)に対して100%に設定される。その後、ステップS140の処理が実行される。
【0074】
ステップS140において、ウェブブラウザ処理部31は、先端在荷フラグがONに切り替わってから現在までに受信した各PLC信号に基づいて搬送速度基準値×時間を積算して、長尺材パーツの先端移動距離を算出する(式(1))。
【0075】
次にステップS150において、ウェブブラウザ処理部31は、先端開始位置と先端移動距離から長尺材パーツの先端位置を計算する。一例として、
図4に示されている第1ゾーンZ1における第1長尺材パーツ先端位置H1が計算される。
【0076】
次にステップS160において、ウェブブラウザ処理部31は、HMI画面22上の長尺材パーツの尾端位置から先端位置までの間のみを点灯色で描画する(
図7の(C))。例えば、被圧延材の先端が在荷しているゾーンでは、当該ゾーンの入側から長尺材パーツ先端位置までが点灯色で描画される(
図7の(A))。被圧延材の尾端が在荷しているゾーンでは、長尺材パーツ尾端位置から当該ゾーンの出側までが点灯色で描画される(
図7の(B))。また、在荷フラグがONであるが被圧延材の先端も尾端も在荷していないゾーンでは、当該ゾーンの入側から出側までが点灯色で表示される。なお、在荷フラグがOFFであるゾーンでは、当該ゾーンの入側から出側までが消灯色で表示される。
【0077】
なお、上述したステップS100において在荷フラグがOFFである場合は、ステップS155の処理が実行される。ステップS155において、ウェブブラウザ処理部31は、在荷フラグがOFFであるゾーンの長尺材パーツの先端位置と尾端位置を0%にリセットする。その後、上述したステップS160の処理が実行される。
【0078】
また、上述したステップS100において在荷フラグがONである場合、
図9に示されているステップS210の処理が実行される。
【0079】
ステップS210において、ウェブブラウザ処理部31は、最新のPLC信号に含まれる尾端在荷フラグがONであるかOFFであるかを判定する。尾端在荷フラグは、当該ゾーン内に被圧延材の尾端が存在している場合にONである。尾端在荷フラグがONである場合、ステップS220の処理が実行される。尾端在荷フラグがOFFである場合は、ステップS225において尾端位置が100%に設定された後、
図8のルーチンに戻る。
【0080】
ステップS220において、ウェブブラウザ処理部31は、最新のPLC信号に含まれる尾端在荷フラグがOFFからONに切り替わり、かつ、当該PLC信号に含まれる搬送速度基準値がマイナス値であるか否かを判定する。搬送速度基準値がマイナス値である場合には、リバース圧延が実施されており、被圧延材は圧延ラインの下流側から上流側へ向かって圧延されている。ステップS220の判定条件が成立する場合は、ステップS230の処理が実行される。当該判定条件が成立しない場合は、ステップS235において尾端開始位置が0%に設定された後、ステップS240の処理が実行される。
【0081】
ステップS220の判定条件が成立する場合、すなわちリバース圧延時に圧延ラインの下流側から当該ゾーンに被圧延材の尾端が入った場合、ステップS230において、当該ゾーンの尾端開始位置は長尺材パーツの最大長(ゾーン長)に対して100%に設定される。その後、ステップS240の処理が実行される。
【0082】
ステップS240において、ウェブブラウザ処理部31は、尾端在荷フラグがONに切り替わってから現在までに受信した各PLC信号に基づいて搬送速度基準値×時間を積算して、長尺材パーツの尾端移動距離を算出する(式(1))。
【0083】
次にステップS250において、ウェブブラウザ処理部31は、尾端開始位置と尾端移動距離から長尺材パーツの尾端位置を計算する。一例として、
図5に示されている第1ゾーンZ1における第1長尺材パーツ尾端位置T1が計算される。その後、
図8のルーチンに戻る。
【0084】
4.効果
以上説明したように、本実施形態のシステムによれば、PLC信号の受信周期よりも短周期である描画周期毎に、被圧延材の先端(および尾端)位置を推定して長尺材パーツの描画サイズを変更する。これにより、PLC信号の受信周期を待たずにHMI画面上で被圧延材の先端(および尾端)位置を精度高くトラッキングできる。また、最新のPLC信号を受信した場合に、HMI画面上のトラッキング表示を補正できる。
【0085】
5.変形例
ところで、上述した実施の形態のシステムにおいては、長尺材パーツの具体例としてスラブやストリップ等の鋼材である被圧延材を例示しているが、形状は棒状、線状、シート状などであってもよいし、材質は樹脂や紙などであってもよい。また、ゾーンは、粗圧延機の圧延スタンド間に限定されるものではなく、仕上圧延機の圧延スタンド間や、ルーパのロール間などであってもよい。また、圧延ラインに限定されるものではない。
【0086】
また、上述した実施の形態のシステムにおいては、SCADAウェブHMIシステムはHMIサーバ装置10とHMIクライアント装置20とに分けられているが、システム構成はこれに限定されるものではない。例えば、サーバ機能とクライアント機能の両方を兼ねる単一の装置で構成されてもよい。
【0087】
また、上述した実施の形態のシステムにおいては、ウェブブラウザ21にHMI画面22を描画することとしているが、ウェブブラウザ21を介さずにモニタ20eにHMI画面22を描画することとしてもよい。
【0088】
また、上述した実施の形態のシステムにおいては、HMI画面22に表示されるパーツを2Dで描画しているが、3Dで描画することとしてもよい。3Dで描画する場合、ここで説明した点灯色と消灯色による塗りつぶしではなくて、点灯色の領域に3D形状のブロックを表示することになる。
【0089】
6.ハードウェア構成例
図10は、HMIサーバ装置10およびHMIクライアント装置20のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【0090】
上述したHMIサーバ装置10の各処理は、処理回路により実現される。処理回路は、プロセッサ10aと、メモリ10bと、ネットワークインタフェース10cとが接続して構成されている。プロセッサ10aは、メモリ10bに記憶された各種プログラムを実行することにより、HMIサーバ装置10の各機能を実現する。メモリ10bは、主記憶装置および補助記憶装置を含む。メモリ10bは、上述した画面データ13、パーツライブラリ14、デバイスリスト15を予め記憶している。ネットワークインタフェース10cは、コンピュータネットワークを介してPLC2およびHMIクライアント装置20と接続し、PLC信号および制御信号を送受信可能なデバイスである。
【0091】
上述したHMIクライアント装置20の各処理、並びに、後述するHMIクライアント装置20の各処理は、処理回路により実現される。処理回路は、プロセッサ20aと、メモリ20bと、ネットワークインタフェース20cと、入力インタフェース20dと、少なくとも一つのモニタ20eとが接続して構成されている。プロセッサ20aは、メモリ20bに記憶された各種プログラムを実行することにより、HMIクライアント装置20の各機能を実現する。メモリ20bは、主記憶装置および補助記憶装置を含む。ネットワークインタフェース20cは、コンピュータネットワークを介してHMIサーバ装置10に接続し、PLC信号および制御信号を送受信可能なデバイスである。入力インタフェース20dは、キーボード、マウス、タッチパネル等の入力デバイスである。モニタ20eは複数台設けられてもよい。なお、HMIクライアント装置20は、タブレット等の携帯端末であってもよい。
【0092】
7.ゾーン境界での縦線消去処理
ところで、
図5(A)に示すように、長尺材パーツの先端が第1ゾーンZ1から第2ゾーンZ2に入ることで、長尺材パーツS1,S2が第1ゾーンZ1および第2ゾーンZ2を跨ぐ場合がある。この場合、各ゾーンZ1,Z2で独立して、長尺材パーツS1,S2の先端位置H1,H2および尾端位置T1,T2を特定すると(
図11参照)、長尺材パーツS1,S2が一体であるにも関わらず、第1ゾーンZ1と第2ゾーンZ2との境界(以下「ゾーン境界」ともいう)に位置する長尺材の部分に縦線が表示されてしまう。
図11中に仮想線で示すように、ゾーン境界に、長尺材パーツS1の先端境界線L
HEADと長尺材パーツS2の尾端境界線L
TAILとが縦線として表示される。この縦線は、実在しない不要な表示であることから、見栄えをよくするためには消去することが望ましい。
【0093】
図11は、ゾーン境界に位置する長尺材パーツS1,S2の部分に表示される縦線を消去する縦線消去処理を説明するための図である。
図11に示すように、第1ゾーンZ1に長尺材パーツS1の尾端が位置するため、第1ゾーンZ1の在荷フラグはON、尾端在荷フラグはONである。ウェブブラウザ処理部31は、在荷フラグがONであり、且つ、先端在荷フラグがOFFである場合、第1ゾーンZ1の長尺材パーツS1の先端境界線を描画しないようにする。また、第2ゾーンZ2に長尺材パーツS2の先端が位置するため、第2ゾーンZ1の在荷フラグはON、先端在荷フラグはONである。ウェブブラウザ処理部31は、在荷フラグがONであり、且つ、尾端在荷フラグがOFFである場合、第2ゾーンZ2の長尺材パーツS2の尾端境界線を描画しないようにする。縦線消去処理によれば、ゾーン境界に実在しない先端境界線および尾端境界線を不描画とすることで、言い換えれば、縦線を消去することで、オペレータに対する見栄えを向上させることができる。
【0094】
8.長尺材パーツの表示状態遷移
[長尺材パーツの位置]
圧延方向に沿って連続して配置される3つのゾーンZn-1,Zn,Zn+1のうち、対象のゾーンZnにおける長尺材パーツSnの位置は、
図12に示す4つのパターンがある。各位置A~Dは、在荷フラグ、先端在荷フラグおよび尾端在荷フラグに対応させることができる。各位置A~Dは、圧延方向からは独立しており、圧延方向が正(右方向)であってもよく、圧延方向が負(左方向)であってもよい。
【0095】
図12(a)に示す位置Aは、例えば、長尺材Sn,Sn-1が前のゾーンZn-1からゾーンZnに移動中の場合である。位置Aでは、ゾーンZnの在荷フラグおよび先端在荷フラグはONであり、尾端在荷フラグはOFFである。
図12(b)に示す位置Bは、例えば、長尺材Snの全てがゾーンZnに含まれている場合である。位置Bでは、ゾーンZnの在荷フラグ、先端在荷フラグおよび尾端在荷フラグの全てがONである。
図12(c)に示す位置Cは、例えば、ゾーンZnから次のゾーンZn+1に移動中の場合である。位置Cでは、ゾーンZnの在荷フラグおよび尾端在荷フラグはONであり、先端在荷フラグはOFFである。
【0096】
ここで、長尺材を圧延していくと、長尺材が長くなり、3つのゾーンZn-1,Zn,Zn+1に跨る場合がある。このため、
図12(d)に示す位置Dが必要となる。位置Dでは、在荷フラグがONであり、先端在荷フラグおよび尾端在荷フラグがOFFである。
【0097】
[長尺材パーツの初期位置設定処理]
初期位置とは、長尺材パーツSnがゾーンZnに初めて出現するときの位置であり、ゾーンZnの在荷フラグがOFFからONに変化したときの表示位置をいう。初期位置は、在荷フラグがOFFからONに変化したときの先端在荷フラグおよび尾端在荷フラグの値に応じて、位置A~Dとなり得る。長尺材パーツSnは、初期位置に表示された後、速度基準の値に従って、右方向または左方向に移動を開始する。即ち、長尺材パーツSnの先端及び尾端の位置がトラッキングされる。
【0098】
図13(a)に示すように、初期位置が位置Aである場合は、前のゾーンZn-1から長尺材パーツの先端位置が右方向に進む場合であり、このときの速度基準の値は正である。位置Aに表示された長尺材パーツSnは、速度基準の値に従って、右方向に移動を開始する。なお、位置Aで速度基準の値が負である場合、ゾーンZnの在荷フラグはOFFとなり、長尺材パーツSnは消滅する。
【0099】
図13(b)に示すように、初期位置が位置Cである場合は、後のゾーンZn+1から長尺材パーツの尾端位置が左に戻る場合であり、このときの速度基準の値は負である。位置Cに表示された長尺材パーツSnは、速度基準の値に従って、左方向に移動を開始する。なお、位置Cで速度基準の値が正である場合、ゾーンZnの在荷フラグはOFFとなり、長尺材パーツSnは消滅する。
【0100】
図13(a)および
図13(b)に示す例では、ゾーンZnを、長尺材パーツSnが圧延方向の始端から終端まで移動することを想定している。粗圧延セクションでは、加熱炉から抽出される長尺材パーツとしてのスラブが、例えば、
図14(a)に示すように、速度基準が正(圧延方向が右方向)である場合、ゾーンZnの圧延方向始端以外の任意の位置Bに投入される場合がある。そこで、PLC信号でゾーンZnに長尺材パーツSnの先端および尾端の初期位置(以下「先端初期位置」および「尾端初期位置」という)を予め指定しておく。先端初期位置および尾端初期位置は、条件「0≦尾端初期位置<先端初期位置≦ゾーン長L」を満たすように指定すればよい。指定された先端初期位置および尾端初期位置は、固定値であってもよく、PLC2からの直値であってよい。また、PLC信号にアドレスに関する情報を含ませておき、対応するメモリ20bのアドレスから先端初期位置および尾端初期位置を読み出すように構成してもよい。
【0101】
[長尺材パーツの複数表示(複数スラブ状態)]
図15~
図17は、複数スラブ状態の表示を説明するための図である。
圧延ラインで先行する長尺材パーツ(以下「先行材」という)と後行する長尺材パーツ(以下「後行材」という)との間のピッチを狭くすれば、生産性が高くなる。また、オペレータによる手動介入により、先行材と後行材との間のピッチが狭くなる場合もある。
【0102】
このようにピッチがゾーンZnの長さよりも短い場合には、
図15(a)および
図15(b)に示すように、先行材SaがゾーンZnを移動しきる前に(先行材Saの尾端がゾーンZnに存在する間に)後行材Sbの先端がゾーンZnに入り込む。その結果、1つのゾーンZnに2つの長尺材パーツ(先行材および後行材)Sa,Sbが存在することになる。この状態を「複数スラブ状態」とする。複数スラブ状態を想定していないと、後行材SbがゾーンZnに入ったときに、先行材Saの尾端の積分(トラッキング)を消滅させてしまう。これでは、先行材Saのトラッキング精度が低下してしまう。
【0103】
そこで、複数スラブ状態では、2つの長尺材パーツSa,Sbは位置Aおよび位置Cの状態になるようにする。即ち、長尺材パーツSa,Sbのいずれか一方または両方が、位置Bの状態になることはない。これにより、ゾーンZnの先端在荷フラグおよび尾端在荷フラグをそれぞれ1つとすることができる。
【0104】
図15(a)に示すように、速度基準が正である場合、先行材Saが位置Cの状態で、先端在荷フラグがONになると、後行材SbがゾーンZnに入ったとみなされ、複数スラブ状態の表示となる。
図15(a)に示す状態から所定時間が経過すると、
図16(a)に示す状態となる。その後、
図17(a)に示すように先行材SaがゾーンZnを抜けて尾端在荷フラグがOFFに変化すると、複数スラブ状態は解消され、位置Aの状態となる。
【0105】
また、
図15(b)に示すように、速度基準が負である場合、先行材Saが位置Aの状態で、尾端在荷フラグがONになると、後行材SbがゾーンZnに入ったとみなされ、複数スラブ状態の表示となる。
図15(b)に示す状態から所定時間が経過すると、
図16(b)に示す状態となる。その後、
図17(b)に示すように先行材SaがゾーンZnを抜けて先端在荷フラグがOFFに変化すると、複数スラブ状態は解消され、位置Cの状態となる。
【0106】
ところで、トラッキングを再開する場合など、被圧延材の正確な位置が不明で、トラッキングセンサにより被圧延材がゾーンに位置するか否かの情報しか得られない場合がある。このような状況に対応するために(トラッキング修正を行うために)、初期位置として位置Dを設ける。
【0107】
図18は、上述した長尺材パーツの表示状態の遷移を説明するための図ある。
図18に示すように、ゾーンZnの在荷フラグがOFFからONに変化すると、速度基準、先端在荷フラグおよび尾端在荷フラグに応じて、長尺材パーツSnが位置Aから位置Dのいずれか1つの初期位置に表示される。このとき、先端初期位置および尾端初期位置が指定されている場合には、位置Cに表示される。また、トラッキング修正を行う場合には、位置Dに表示される。
【0108】
長尺材パーツSnは、初期位置に表示された後、速度基準の値に従って、右方向または左方向に移動を開始する。移動に伴い、先端在荷フラグや尾端在荷フラグが変化すると、長尺材パーツSnの位置A~Dを変化させる。
図15~
図17に示すように先行材Saと後行材Sbとの間のピッチが狭い場合には、複数スラブ状態を表示することができる。そして、在荷フラグがOFFに変化すると、長尺材パーツSnを消滅させる。このように、速度基準、先端在荷フラグおよび尾端在荷フラグに応じて、長尺材パーツSnの表示を変化させることができ、結果として、トラッキングを精度よく行うことができる。
【0109】
9.長尺材パーツの立体表示処理
上述した例では、長尺材パーツS1,S2は平面的な描画(以下「平面表示」という)を前提としている。平面表示では、圧延方向に直交する長尺材の幅方向から見るため、長尺材パーツS1,S2の形状は単純な長方形となる。トラッキングゾーンを画面表示するのに際して、オペレータに対して見やすくするために、圧延ラインを斜め方向から見て長尺材パーツS1,S2を立体的に描画(以下「立体表示」という)したい場合がある。
図19および
図20は、長尺材パーツS1,S2の立体表示処理を説明するための図である。
図19に示すように、立体表示では、長尺材パーツS1,S2の形状は、例えば、上面S
TOPおよび尾端面S
TAILの傾きが角度θ1である直方体となる。このような直方体で構成される長尺材パーツS1,S2の圧延方向の長さを単純に変更したのでは、上面S
TOPおよび尾端面S
TAILの傾きが角度θ2に変わってしまう。オペレータに対して見やすくするためには、上面S
TOPおよび尾端面S
TAILの傾きを維持したまま、長尺材パーツS1,S2の圧延方向の長さLを変更可能に構成することが望ましい。
【0110】
本実施の形態の立体表示処理では、
図20(a)に示すように、圧延方向に応じて、2種類の長尺材パーツS1a,S1bを用意する。長尺材パーツS1a,S1bの長さL、高さ(板厚)y、奥行き(板幅)z、傾きθは、図示省略するエンジニアリングツールによるHMI画面22の作図時(設計時)に自由に変更可能である。
【0111】
長尺材パーツS1bを用いる場合(右から左に圧延する場合)を例に説明すると、先ず、長尺材パーツS1bの上面S
TOPと尾端面S
TAILを展開する(
図20(a)参照)。展開により、直方体を生成するための基本となる長方形S
TOP_D,S
TAIL_Dに分解される。分解された長方形S
TOP_Dの短辺の長さはzである。長方形S
TAIL_Dの長辺の長さはxであり、短辺の長さはyである。このように展開した状態で、長方形S
TOP_Dの圧延方向の長さLと、側面S
SIDEに対応する長方形S
SIDE_Dの圧延方向の長さLとを変更する。長さLの変更は、伸長と短縮の双方を含む。
【0112】
次に、
図20(b)に示すように、長方形S
TAIL_Dにアフィン変換SkewX(θ)を適用することで、平行四辺形からなる尾端面S
TAILを生成する。同様に、
図20(c)に示すように、長方形S
TOP_Dにアフィン変換SkewY(θ)を適用することで、平行四辺形からなる上面S
TOPを生成する。なお、図示を簡略化するため、
図20(b)および
図20(c)にて長方形S
TOP_D,S
TAIL_Dを正方形で示している。以上によれば、上面S
TOPおよび尾端面S
TAILの傾きを維持したまま、立体表示される長尺材パーツS1,S2の圧延方向の長さLを変更することができる。
【0113】
10.立体表示する場合の縦線消去処理
長尺材パーツS1,S2を立体表示する場合、ゾーン境界(図示省略)に位置する先端境界面および尾端境界面が表示される。このように立体表示する場合に、上述の縦線消去処理を適用することができる。
図21は、長尺材パーツS1,S2を立体表示する場合の縦線消去処理を説明するための図である。
図21(a)は、長尺材パーツS1,S2を左から右に圧延する場合を示し、
図21(b)は、長尺材パーツS1,S2を右から左に圧延する場合を示す。いずれの圧延方向の場合でも、ウェブブラウザ処理部31は、先端在荷フラグがOFFである場合、ゾーン境界に位置して図中に太線で示す長尺材パーツS1の先端面(以下「先端境界面」という)I
HEADを描画しないようにする。また、ウェブブラウザ処理部31は、尾端在荷フラグがOFFである場合、ゾーン境界に位置して図中に太線で示す長尺材パーツS2の尾端面(以下「尾端境界面」という)I
TAILを描画しないようにする。尾端境界面I
TAILは、尾端境界線L
TAILと、尾端境界線L
TAILで囲まれた領域Rとで構成される。このように、長尺材パーツS1,S2を立体表示する場合に、ゾーン境界に実在しない先端境界面I
HEADおよび尾端境界面I
TAILを不描画とすることで、言い換えれば、先端境界面I
HEADおよび尾端境界面I
TAILを消去することで、オペレータに対する見栄えを向上させることができる。
【0114】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。上記実施の形態では、被圧延材として長尺材を用いる場合を例に説明したが、短尺材を用いる場合にも本発明を適用することができる。上述した実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数にこの発明が限定されるものではない。また、上述した実施の形態において説明する構造等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、この発明に必ずしも必須のものではない。
【符号の説明】
【0115】
R1…第1圧延スタンド、R2…第2圧延スタンド、R3…第3圧延スタンド
S1…第1長尺材パーツ(第1被圧延材パーツ)、S2…第2長尺材パーツ(第2被圧延材パーツ)
H1…第1長尺材パーツ先端位置(第1被圧延材パーツ先端位置)、H2…第2長尺材パーツ先端位置(第2被圧延材パーツ先端位置)
T1…第1長尺材パーツ尾端位置(第1被圧延材パーツ尾端位置)、T2…第2長尺材パーツ尾端位置(第2被圧延材パーツ尾端位置)
Z1…第1ゾーン、Z2…第2ゾーン
STOP…直方体の上面、STAIL…直方体の尾端面
STOP_D,STAIL_D…長方形
SkewX(θ),SkewY(θ)…アフィン変換
LHEAD…先端境界線、LTAIL…尾端境界線
IHEAD…先端境界面、ITAIL…尾端境界面
1…HMI(SCADAウェブHMIシステム)
2…PLC
3…通信装置
4…RIO
5…監視対象装置
6…搬送テーブル
10…サーバ装置
11…PLC信号処理部
12…ウェブサーバ処理部
13…画面データ
14…パーツライブラリ
15…デバイスリスト
20…HMIクライアント装置
21…ウェブブラウザ
22…HMI画面
30…処理回路
31…ウェブブラウザ処理部
10a,20a…プロセッサ
10b,20b…メモリ
10c,20c…ネットワークインタフェース
20d…入力インタフェース
20e…モニタ