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特許7552977未接合領域形成用配置部材および防水シート接合方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】未接合領域形成用配置部材および防水シート接合方法
(51)【国際特許分類】
   E04D 5/14 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
E04D5/14 T
E04D5/14 P
E04D5/14 N
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020154177
(22)【出願日】2020-09-14
(65)【公開番号】P2022048043
(43)【公開日】2022-03-25
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000223403
【氏名又は名称】住ベシート防水株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】池田 浩和
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-065696(JP,A)
【文献】米国特許第08535461(US,B1)
【文献】特開2001-162980(JP,A)
【文献】特開昭49-126975(JP,A)
【文献】米国特許第5452553(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 5/00、5/14
B29C 65/00、65/50、65/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水性を有する第1防水シートを、溶剤または接着剤を含む液状材料を用いて、躯体としての床面側に敷設する際に用いられ、
前記第1防水シートは、該第1防水シートの縁部に、前記液状材料が供給されることにより、前記床面側に接合され、
前記第1防水シートの前記縁部において、前記第1防水シートが前記床面側に接合されている接合領域と、前記第1防水シートが前記床面側に接合されていない未接合領域とを有しており、
前記未接合領域を形成するために使用される未接合領域形成用配置部材であって、
前記第1防水シートの前記縁部に、前記液状材料を連続的に供給するときに、前記第1防水シートと前記床面側との間において、前記未接合領域に対して選択的に、当該未接合領域形成用配置部材が配置して使用されることを特徴とする未接合領域形成用配置部材。
【請求項2】
前記第1防水シートは、帯状をなし、前記液状材料は、前記第1防水シートの長手方向に沿った前記縁部に供給され、
前記未接合領域は、前記第1防水シートと、前記第1防水シートを上側として重ね合わされた、帯状をなす第2防水シートとの間で形成された段差を包含する領域である請求項1に記載の未接合領域形成用配置部材。
【請求項3】
前記第1防水シートと前記第2防水シートとは、前記第1防水シートの基端と前記第2防水シートの先端とを、これらの短手方向に沿って、前記第1防水シートを上側として重ね合わせて接合され、
前記段差は、前記第1防水シートの基端と前記第2防水シートの先端とが重ね合わされた、前記短手方向に沿った重なり部に形成されており、
前記未接合領域は、前記重なり部の先端側の2角を、それぞれ、包含する領域である請求項2に記載の未接合領域形成用配置部材。
【請求項4】
当該未接合領域形成用配置部材は、前記重なり部の基端を包含する前記未接合領域と、前記重なり部の先端を包含する前記未接合領域とに対応して、それぞれ独立して配置される、2枚の金属板を備える請求項3に記載の未接合領域形成用配置部材。
【請求項5】
前記金属板は、その平面視形状が多角形状をなしている請求項4に記載の未接合領域形成用配置部材。
【請求項6】
前記第1防水シートと前記第2防水シートとは、前記第1防水シートの途中と前記第2防水シートの途中とを、これら同士が直交するように、前記第1防水シートを上側として重ね合わされており、
前記段差は、前記第1防水シートと前記第2防水シートとが重ね合わされた重なり部における、前記第2防水シートの長手方向に沿った2つの縁部に、それぞれ形成されており、
前記未接合領域は、前記重なり部の4角を、それぞれ包含する領域である請求項2に記載の未接合領域形成用配置部材。
【請求項7】
当該未接合領域形成用配置部材は、前記重なり部の4角を、それぞれ包含する前記未接合領域に対応して、一括して配置される1枚の金属板を備える請求項6に記載の未接合領域形成用配置部材。
【請求項8】
前記金属板は、その平面視形状が四角形状をなしている請求項7に記載の未接合領域形成用配置部材。
【請求項9】
前記金属板は、その中央部に欠損部を有している請求項8に記載の未接合領域形成用配置部材。
【請求項10】
前記金属板は、その平面視形状がコの字状をなしている請求項7に記載の未接合領域形成用配置部材。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の未接合領域形成用配置部材を、前記第1防水シートと前記床面側との間において、前記未接合領域に対して選択的に配置する配置工程と、
前記第1防水シートの前記縁部に、前記液状材料を連続的に供給することで、前記接合領域において、前記第1防水シートを前記床面側に選択的に接合する接合工程とを有することを特徴とする防水シート接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未接合領域形成用配置部材および防水シート接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、屋根やベランダの床部として、図1に示すように、多数枚の断熱パネル1が敷設された断熱パネル敷設部30が適用された家屋が知られている。この断熱パネル敷設部30では、多数枚の断熱パネル1が行列状(マトリクス状)に並べられ、例えば、隣り合う断熱パネル同士において、図2に示すように、一方の断熱パネルは、突き合わされる端面において凹部70を備え、他方の断熱パネル1は、突き合わされる端面において凸部60を備えており、一方の断熱パネル1の凹部70と、他方の断熱パネル1の凸部60とが係合することで、隣り合う断熱パネル1同士が連結されている。
【0003】
そして、この断熱パネル敷設部30は、家屋が備える棟木や、母屋91および垂木等に、固定ビス9Cを用いて固定されることで、屋根や床部を構成している。
【0004】
また、かかる構成をなす断熱パネル敷設部30では、施工状態によっては、隣り合う断熱パネル1同士の境界部25に間隙が生じることがある。間隙があると、この間隙から雨水等が家屋の中に入り込み、雨漏りの原因となることがある。そこで、この間隙すなわち境界部を覆うように防水シート8を接合(貼付)して、雨水等の侵入を防止することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
以上のように、断熱パネル1同士の境界部には、防水シート8が接合される。ここで、前述の通り、多数枚の断熱パネル1は、行列状に配置されるため、これら同士の間に形成される境界部25は、直線状をなすものとなる。したがって、かかる境界部25に接合される防水シート8も直線状(帯状)をなし、この境界部25に対応するように、かかる形状をなす防水シート8が断熱パネルに接合される。
【0006】
そこで、断熱パネル1同士間の境界部25を覆うように、帯状をなす防水シート8を断熱パネル1に接合するために用いられる防水シート接合装置500として、例えば、特許文献2で記載されているような構成のものが挙げられる。
【0007】
すなわち、この防水シート接合装置500では、断熱パネル1同士間の境界部25を覆うように配置された防水シート8の縁部81に、図10に示すように、防水シート接合装置500が備えるノズル5から溶剤または接着剤を含む液状材料を供給し、その後、防水シート8の縁部81において、防水シート接合装置500が備えるローラー92Aにより、その表側から転圧することにより、防水シート8の縁部81において、防水シート8と断熱パネル1とが接合される。
【0008】
ところで、前述の通り、多数枚の断熱パネル1が行列状に配置され、これら同士の間に形成された、直線状なす境界部25は、図1に示すように、X軸方向に沿った境界部25Aと、Y軸方向に沿った境界部25Bとを有する。したがって、防水シート8も、境界部25Aに対応して接合される防水シート8Aと、境界部25Bに対応して接合される防水シート8Bとを有し、図1中E部のように、防水シート8Aを下側とし、防水シート8Bを上側として、これら同士が直交して重なる重なり部85が形成される。
【0009】
この重なり部85では、防水シート8Aを下側とし、防水シート8Bを上側とする段差が形成され、この段差において、防水シート8Aと防水シート8Bとの間に隙間が形成されることから、この隙間を介して、雨水等が家屋の中に入り込むおそれがある。そのため、通常、段差において防水シート8Aと防水シート8Bとを溶着することで、この隙間をなくす溶着作業が、作業者の手により実施されている。
【0010】
ところで、この作業者による溶着作業は、防水シート接合装置500を用いた、防水シート8と断熱パネル1との接合の後に実施される。したがって、重なり部85における段差において、防水シート8Aと防水シート8Bとの間に隙間が形成された状態で、防水シート接合装置500により防水シート8Aと防水シート8Bとが不本意にも接合されることとなる。そのため、前記溶着作業に先立って、作業者は、段差において、防水シート8Aと防水シート8Bとを剥離させる剥離作業を実施すること、すなわち、無駄な作業の実施を強いられているのが実情であった。
【0011】
また、このような問題は、図1中F部のように、X軸方向(同一方向)に沿った防水シート8Aの先端と、防水シート8Aの基端とが重なることで形成される重なり部86における段差においても、同様に生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2007-120248号公報
【文献】特開2020-6568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、溶剤または接着剤を含む液状材料を用いて、防水シートを躯体としての床面側に接合することで敷設する際に、防水シートの縁部において、防水シートが床面側に接合されている接合領域と、防水シートが床面側に接合されていない未接合領域とが形成されるように、形成すべき未接合領域に対応する、防水シートと床面側との間に、選択的に配置される未接合領域形成用配置部材、および、かかる未接合領域形成用配置部材を用いた防水シート接合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような目的は、下記(1)~(11)に記載の本発明により達成される。
(1) 防水性を有する第1防水シートを、溶剤または接着剤を含む液状材料を用いて、躯体としての床面側に敷設する際に用いられ、
前記第1防水シートは、該第1防水シートの縁部に、前記液状材料が供給されることにより、前記床面側に接合され、
前記第1防水シートの前記縁部において、前記第1防水シートが前記床面側に接合されている接合領域と、前記第1防水シートが前記床面側に接合されていない未接合領域とを有しており、
前記未接合領域を形成するために使用される未接合領域形成用配置部材であって、
前記第1防水シートの前記縁部に、前記液状材料を連続的に供給するときに、前記第1防水シートと前記床面側との間において、前記未接合領域に対して選択的に、当該未接合領域形成用配置部材が配置して使用されることを特徴とする未接合領域形成用配置部材。
【0015】
(2) 前記第1防水シートは、帯状をなし、前記液状材料は、前記第1防水シートの長手方向に沿った前記縁部に供給され、
前記未接合領域は、前記第1防水シートと、前記第1防水シートを上側として重ね合わされた、帯状をなす第2防水シートとの間で形成された段差を包含する領域である上記(1)に記載の未接合領域形成用配置部材。
【0016】
(3) 前記第1防水シートと前記第2防水シートとは、前記第1防水シートの基端と前記第2防水シートの先端とを、これらの短手方向に沿って、前記第1防水シートを上側として重ね合わせて接合され、
前記段差は、前記第1防水シートの基端と前記第2防水シートの先端とが重ね合わされた、前記短手方向に沿った重なり部に形成されており、
前記未接合領域は、前記重なり部の先端側の2角を、それぞれ、包含する領域である上記(2)に記載の未接合領域形成用配置部材。
【0017】
(4) 当該未接合領域形成用配置部材は、前記重なり部の基端を包含する前記未接合領域と、前記重なり部の先端を包含する前記未接合領域とに対応して、それぞれ独立して配置される、2枚の金属板を備える上記(3)に記載の未接合領域形成用配置部材。
【0018】
(5) 前記金属板は、その平面視形状が多角形状をなしている上記(4)に記載の未接合領域形成用配置部材。
【0019】
(6) 前記第1防水シートと前記第2防水シートとは、前記第1防水シートの途中と前記第2防水シートの途中とを、これら同士が直交するように、前記第1防水シートを上側として重ね合わされており、
前記段差は、前記第1防水シートと前記第2防水シートとが重ね合わされた重なり部における、前記第2防水シートの長手方向に沿った2つの縁部に、それぞれ形成されており、
前記未接合領域は、前記重なり部の4角を、それぞれ包含する領域である上記(2)に記載の未接合領域形成用配置部材。
【0020】
(7) 当該未接合領域形成用配置部材は、前記重なり部の4角を、それぞれ包含する前記未接合領域に対応して、一括して配置される1枚の金属板を備える上記(6)に記載の未接合領域形成用配置部材。
【0021】
(8) 前記金属板は、その平面視形状が四角形状をなしている上記(7)に記載の未接合領域形成用配置部材。
【0022】
(9) 前記金属板は、その中央部に欠損部を有している上記(8)に記載の未接合領域形成用配置部材。
【0023】
(10) 前記金属板は、その平面視形状がコの字状をなしている上記(7)に記載の未接合領域形成用配置部材。
【0024】
(11) 上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の未接合領域形成用配置部材を、前記第1防水シートと前記床面側との間において、前記未接合領域に対して選択的に配置する配置工程と、
前記第1防水シートの前記縁部に、前記液状材料を連続的に供給することで、前記接合領域において、前記第1防水シートを前記床面側に選択的に接合する接合工程とを有することを特徴とする防水シート接合方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、溶剤または接着剤を含む液状材料を用いて、防水シートを躯体としての床面側に接合することで敷設する際に、防水シートの縁部において、防水シートが床面側に接合されている接合領域と、防水シートが床面側に接合されていない未接合領域とを、形成すべき未接合領域に対応する、防水シートと床面側との間に、未接合領域形成用配置部材を選択的に配置すると言う比較的容易な作業で、確実に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】防水構造の好適な実施形態を示す平面図である。
図2図1中のA-A線断面図である。
図3図1中のB-B線断面図である。
図4図1中のC-C線断面図である。
図5図1中のD部における部分平面図である。
図6図1中のE部における部分平面図である。
図7図1中のE部における部分斜視図である。
図8図1中のF部における部分平面図である。
図9図1中のF部における部分斜視図である。
図10】防水シートの接合に用いられる防水シート接合装置の第1実施形態を示す斜視図である。
図11図10中の矢印A方向から見た側面図である。
図12図10中の矢印C方向から見た正面図である。
図13図10中の矢印B方向から見た平面図である。
図14図10に示す防水シート接合装置の供給系が備えるノズル近傍を部分的に拡大した部分拡大斜視図である。
図15】第1構成の未接合領域形成用配置部材を示す図((a)は、斜視図、(b)は重なり部に配置した平面図)である。
図16】第2構成の未接合領域形成用配置部材を示す図((a)は、斜視図、(b)は重なり部に配置した平面図)である。
図17】第3構成の未接合領域形成用配置部材を示す図((a)は、斜視図、(b)は重なり部に配置した平面図)である。
図18】第4構成の未接合領域形成用配置部材を示す図((a)は、斜視図、(b)は重なり部に配置した平面図)である。
図19】第5構成の未接合領域形成用配置部材を示す図((a)は、斜視図、(b)は重なり部に配置した平面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の未接合領域形成用配置部材および防水シート接合方法を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0028】
まず、本発明の未接合領域形成用配置部材および防水シート接合方法を説明するのに先立って、本発明の未接合領域形成用配置部材を用いた防水シート接合方法(本発明の防水シート接合方法)を適用して接合された防水シートを備える防水構造について説明する。
【0029】
なお、以下では、防水構造を、家屋が備える傾斜した屋根に適用した場合を一例に説明する。
【0030】
<防水構造>
図1は、防水構造の好適な実施形態を示す平面図、図2は、図1中のA-A線断面図、図3は、図1中のB-B線断面図、図4は、図1中のC-C線断面図、図5は、図1中のD部における部分平面図、図6は、図1中のE部における部分平面図、図7は、図1中のE部における部分斜視図、図8は、図1中のF部における部分平面図、図9は、図1中のF部における部分斜視図である。なお、以下では、説明の便宜上、図1に示すように、図中の左右方向をX軸方向、前後方向をY軸方向とする。また、図2図4中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」、図1図5図9中の紙面手前側を「上」または「上方」、紙面奥側を「下」または「下方」と言うことがある。また、図2中の左側を「下流側」、右側を「上流側」と言うことがある。
【0031】
図1に示すように、防水構造150は、家屋が備える屋根100に適用して、施工されたものであり、本実施形態では、複数枚の断熱パネル1と、複数枚の第1耐火シート2Aと、複数枚の第2耐火シート2Bと、複数枚の第3耐火シート2Cと、複数枚の防水シート8Aと、複数枚の防水シート8Bと、複数個の固定ビス9Cとを備えている。
【0032】
この屋根100は、水はけがよいものとすることを目的に、水平方向に対して傾斜して設けられている。この傾斜方向αは、図1中では、Y軸方向と同方向となっている。そして、この屋根100において、防水構造150は、家屋が備える母屋91や、棟木および垂木(図示せず)等に固定されること、すなわち、母屋91や、棟木および垂木等を介して家屋に固定されることで、屋根としての機能を発揮する。
【0033】
また、防水構造150を、耐火シート2A、2B、2Cおよび防水シート8A、8Bを備える構成とすることで、防水構造150は、優れた防水性とともに、優れた耐火性を発揮する。
【0034】
以下、防水構造150の各部の構成について説明する。
断熱パネル1は、図1に示すように、平面視で長方形状(四角形状)をなす平板からなり、その厚さ方向に貫通する貫通孔15を複数有する部材である。この断熱パネル1は、短辺方向と長辺方向とにそれぞれ同一方向として複数枚が格子状に並べて敷設されて、断熱パネル敷設部30(部材敷設部)を構成し、これにより、屋根100を形成している。
【0035】
本実施形態では、長辺方向がX軸方向と平行となっており、短辺方向がY軸方向と平行となっている。なお、屋根100の広さや形状にもよるが、X軸方向に敷設される断熱パネル1の枚数と、Y軸方向に敷設される断熱パネル1の枚数とは、同じとなる場合もあるし、異なる場合もある。
【0036】
各断熱パネル1は、配置箇所が異なること以外は、同じ積層構造を有するものである(図2図3参照)。以下、代表的に1枚の断熱パネル1の積層構造について説明する。
【0037】
断熱パネル1は、図2図4に示すように、樹脂層3aと、金属層4aと、金属層4bと、樹脂層5aと、樹脂層5bとを有する積層板である。
【0038】
樹脂層3aは、例えば、ポリウレタンフォームで構成され、断熱パネル1で断熱性を発揮する部分である。
【0039】
樹脂層3aの下面側には、金属層4aが積層され、樹脂層3aの上面側には、金属層4bが積層されている。金属層4aおよび金属層4bは、例えば、ガルバリウム鋼板(登録商標)やステンレス鋼板等の各種鋼板で構成され、断熱パネル1で耐環境性(防腐性)を発揮する部分である。
【0040】
樹脂層5aおよび樹脂層5bは、例えば、ポリ塩化ビニルで構成された膜である。樹脂層5aは、金属層4aを被覆しており、金属層4aへの防錆性および防水性を発揮する。樹脂層5bは、金属層4bを被覆しており、金属層4bへの防錆性および防水性を発揮する。
【0041】
前述したように、屋根100は、水平方向に対して傾斜している。従って、屋根100を構成する断熱パネル1も、水平方向に対して傾斜した姿勢で、家屋において敷設される。これにより、例えば、雨水等が上流側(傾斜方向αの上側)から下流側(傾斜方向αの下側)に向かって流下することから、断熱パネル敷設部30すなわち屋根100での排水性が向上する。なお、断熱パネル1の傾斜角度θ図2参照)としては、特に限定されない。
【0042】
また、断熱パネル1は、前述したように平面視で長方形状(四角形状)をなす平板であり、その縁部(外縁部)を、本実施形態では、長辺方向(X軸方向)に沿った縁部11(第1縁部)および縁部12(第2縁部)と、短辺方向(Y軸方向)に沿った縁部13(第3縁部)および縁部14(第4縁部)とに分けることができる(図1参照)。
【0043】
図2に示すように、縁部12には、この縁部12を構成する端面から、凸部60が図中の右側に向かって突出して形成されている。この凸部60は、前記長辺方向に沿って、すなわち、図2中の紙面手前側から奥側に向かって形成された凸条となっている。
【0044】
また、縁部11には、この縁部11を構成する端面から、凹部70が図2中の右側に向かって凹没して形成されている。この凹部70は、前記長辺方向に沿って、すなわち、図2中の紙面手前側から奥側に向かって形成された溝となっている。なお、凹部70の深さは、凸部60の突出量よりも大きいのが好ましい。
【0045】
そして、断熱パネル敷設部30のうち、Y軸方向(短辺方向)に隣り合う断熱パネル1同士は、一方の断熱パネル1の凹部70と、他方の断熱パネル1の凸部60とが、突き合わされることにより、係合することができる。これにより、双方の断熱パネル1同士が連結され(接合され)、よって、Y軸方向の互いの位置関係が規制される。
【0046】
図3に示すように、縁部13、すなわち縁部13を構成する端面は、前記短辺方向に沿って、換言すれば、図3中の紙面手前側から奥側に向かって平坦な平坦部となっている。
【0047】
さらに、縁部13と同様に、縁部14、すなわち縁部14を構成する端面も、前記短辺方向に沿って、換言すれば、図3中の紙面手前側から奥側に向かって平坦な平坦部となっている。また、このような平坦な形状をなす縁部13および縁部14は、それぞれ、断熱パネル1の平面視での面方向に対して垂直に形成されている。
【0048】
そして、断熱パネル敷設部30のうち、X軸方向(長辺方向)に隣り合う断熱パネル1同士は、一方の断熱パネル1の縁部13と、他方の断熱パネル1の縁部14とが、突き合わされることにより、互いに対向している。
【0049】
また、図4に示すように、各断熱パネル1は、前述の通り、ほぼ等間隔を空けて形成された複数の貫通孔15を備えている。そして、各貫通孔15にそれぞれ固定ビス9Cが挿通され、さらに、この固定ビス9Cは、家屋が有する母屋91が備える、内ネジを有する貫通孔に螺合されている。これにより、各断熱パネル1すなわち断熱パネル敷設部30は、固定ビス9Cにより、母屋91すなわち家屋に対して固定される。
【0050】
なお、複数の断熱パネル1は、図1に示すように、平面視で長方形状をなす平板からなる場合に限らず、平面視で四角形状をなすものであればよく、正方形状をなすものであってもよい。
【0051】
第1耐火シート2Aは、Y軸方向に隣り合う断熱パネル1同士を突き合わすことで形成された境界部25A、すなわち、縁部11と縁部12との間を覆うとともに、本実施形態では、断熱パネル1の縁部11、12付近において形成された貫通孔15に挿通された固定ビス9Cの頭部を覆う部材である(図1図2参照)。したがって、それぞれを覆う耐火シートを別体として形成する必要がなくなるため、耐火シートを貼付する際の時間と手間の簡略化を図ることができる。
【0052】
また、第2耐火シート2Bは、X軸方向に隣り合う断熱パネル1同士が突き合わされることで形成された境界部25B、すなわち、縁部13と縁部14との間を覆う部材である(図3参照)。
【0053】
さらに、第3耐火シート2Cは、断熱パネル1の中央部付近において形成された貫通孔15に挿通された固定ビス9Cの頭部を覆う部材である(図4参照)。
【0054】
第1耐火シート2A、第2耐火シート2Bおよび第3耐火シート2Cは、それぞれ、金属材料を主材料として含有する金属シートで構成されている。これにより、第1耐火シート2A、第2耐火シート2Bおよび第3耐火シート2Cには、それぞれ、耐火性が付与される。このような第1耐火シート2A、第2耐火シート2Bならびに第3耐火シート2Cを用いて、それぞれ、縁部11と縁部12との間および固定ビス9C、縁部13と縁部14との間、ならびに、固定ビス9Cを覆うことにより、断熱パネル敷設部30、ひいては、この断熱パネル敷設部30を備える家屋に優れた耐火性を付与することができる。
【0055】
なお、金属材料としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、銅、チタンおよびタングステン等が挙げられ、これらの金属を単独または合金として用いることができる。これらの中でも、アルミニウムであることが好ましい。これにより、第1耐火シート2A、第2耐火シート2Bおよび第3耐火シート2Cに、優れた耐火性を付与することができる。
【0056】
図1図2に示すように、第1耐火シート2Aは、帯状をなす。これにより、Y軸方向に隣り合う断熱パネル1同士を突き合わすことで形成されたX軸方向に直鎖状に延びる境界部25Aを、X軸方向に沿って一括して、すなわち、連続的に覆うことができる。したがって、当該境界部25Aを介して煙や火等が排出されるのを確実に防止することができる。また、第1耐火シート2Aは、その幅が、断熱パネル1の縁部11、12付近において形成された貫通孔15をも包含し得る大きさに設定されている。したがって、Y軸方向に隣り合う断熱パネル1同士の境界部25Aを、第1耐火シート2Aで覆う際に、貫通孔15に挿通して固定された固定ビス9Cの頭部をも一括して覆うことができる。したがって、当該境界部25Aおよび貫通孔15を介して煙や火等が排出されるのを確実に防止することができる。
【0057】
第1耐火シート2Aと同様に、第2耐火シート2Bも、帯状をなす。これにより、X軸方向に隣り合う断熱パネル1同士を突き合わすことで形成されたY軸方向に直線状に延びる境界部25Bを、Y軸方向に沿って一括して、すなわち、連続的に覆うことができる。したがって、当該境界部25Bを介して煙や火等が排出されるのを確実に防止することができる。
【0058】
第3耐火シート2Cは、耐火シート2A、2Bとは異なり、円盤状をなす。これにより、断熱パネル1の中央部に位置する貫通孔15に挿通して固定された固定ビス9Cに対して、個別に覆うことができる。したがって、貫通孔15を介して煙や火等が排出されるのを確実に防止することができる。
【0059】
防水シート8Aは、Y軸方向に隣り合う断熱パネル1同士の境界部25A、すなわち、縁部11と縁部12との間を、第1耐火シート2Aを介して覆う部材である(図2参照)。かかる構成をなす防水シート8Aを設けることで、当該境界部25Aを介して家屋の内部に雨水のような水が浸入するのを確実に防止することができる。
【0060】
また、防水シート8Bは、X軸方向に隣り合う断熱パネル1同士の境界部25B、すなわち、縁部13と縁部14との間を、第2耐火シート2Bを介して覆う部材である(図3参照)。かかる構成をなす防水シート8Bを設けることで、当該境界部25Bを介して家屋の内部に雨水のような水が浸入するのを確実に防止することができる。
【0061】
防水シート8Aおよび防水シート8Bは、それぞれ、樹脂材料を主材料として含有する樹脂シートで構成されている。これにより、防水シート8Aおよび防水シート8Bは、それぞれ、防水性を有するものとなる。
【0062】
なお、樹脂材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニルのような塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、塩化ビニル系樹脂であることが好ましい。これにより、防水シート8Aおよび防水シート8Bは、熱融着性や溶剤溶着性に優れたものとなる。防水シート8Aおよび防水シート8Bは、断熱パネル1に貼付されるものであり、その貼付方法として、例えば、熱融着による方法や、溶剤による溶着による方法が用いられる。従って、防水シート8Aが熱融着性や溶剤溶着性に優れることは、防水シート8Aおよび防水シート8Bを断熱パネル1に貼付する上で好ましい。
【0063】
また、塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニルを含む重合体、すなわちオリゴマー、プレポリマーおよびポリマーであれば特に限定されないが、例えば、塩化ビニルの単量重合体、または塩化ビニルと、酢酸ビニル、エチレン、もしくはプロピレン等との共重合体、およびこれらの2種以上の重合体の混合物等が挙げられる。
【0064】
また、樹脂材料には、さらに、各種可塑剤、各種安定化剤、各種酸化防止剤、各種紫外線吸収剤、加工助剤、滑剤、充填材、難燃剤および色材等を含んでいてもよく、特に、可塑剤が含まれることが好ましい。これにより、防水シート8Aおよび防水シート8Bを、より優れた柔軟性を有するものとし得る。
【0065】
図2に示すように、防水シート8Aは、帯状(長尺状)をなす。これにより、Y軸方向に隣り合う断熱パネル1同士の間に形成された境界部25AをX軸方向に沿って一括して、すなわち、連続的に覆うことができる。したがって、当該境界部25Aから雨水等が侵入するのを確実に防止することができる。
【0066】
防水シート8Aと同様に、防水シート8Bも、帯状をなす。これにより、X軸方向に隣り合う断熱パネル1同士の間に形成された境界部25BをY軸方向に沿って一括して、すなわち、連続的に覆うことができる。したがって、当該境界部25Bから雨水等が侵入するのを確実に防止することができる。
【0067】
なお、防水構造150では、断熱パネル1における樹脂層5aおよび樹脂層5bの形成が省略されていてもよい。この場合には、防水シート8A、8Bとは異なる防水シートを用意し、断熱パネル敷設部30の帯状をなす防水シート8A、8Bが敷設されていない領域のほぼ全面を、この防水シートを用いて、被覆すればよい。また、この場合、異なる防水シートと、防水シート8A、8Bとは、互いの縁部同士が重なるようにして接合されるが、その上下関係は、防水シート8A、8Bが上側もしくは下側であってもよい。かかる構成の防水構造150では、異なる防水シートは、樹脂層5a、5bとしての機能をも併せ持つ。すなわち、金属層4aへの防錆性および防水性を発揮する防水層としての機能をも発揮する。
【0068】
以上のような構成をなす防水構造150において、断熱パネル敷設部30が備える断熱パネル1同士を突き合わすことで形成された直線状をなす境界部25A、25Bが、帯状をなす耐火シート2A、2Bで、連続して被覆され、さらに、この耐火シート2A、2Bを介して、帯状をなす防水シート8A、8Bで、連続して被覆されている。
【0069】
この断熱パネル1に形成された境界部25(25A、25B)対する防水シート8(8A、8B)の連続した被覆(接合)を、容易かつ優れた精度で実施することを目的に、防水シート接合装置を用いて、境界部25を覆うように断熱パネル1対して防水シート8が接合されるが、以下、この防水シート接合装置500について説明する。
【0070】
<防水シート接合装置500>
図10は、防水シートの接合に用いられる防水シート接合装置の第1実施形態を示す斜視図、図11は、図10中の矢印A方向から見た側面図、図12は、図10中の矢印C方向から見た正面図、図13は、図10中の矢印B方向から見た平面図、図14は、図10に示す防水シート接合装置の供給系が備えるノズル近傍を部分的に拡大した部分拡大斜視図である。
【0071】
なお、以下では、説明の都合上、図10図12および図14中の上側、図13中の紙面手前側を「上(または上方)」または「表側」と言う。また、図10図12および図14中の下側、図13中の紙面奥側を「下(または下方)」または「裏側」と言う。さらに、図10図14中の斜め左下側、図11中の左側、図12中の紙面前方側、図13中の下側を「前(または前方)」と言う。また、図10図14中の斜め右上側、図11中の右側、図12中の紙面後方側、図13中の上側を「後(または後方)」と言う。また、図10図14に示すように、互いに直交する3軸をX軸、Y軸およびZ軸とする。また、X軸とY軸を含むXY平面が水平となっており、Z軸が鉛直となっている。
【0072】
図10に示す防水シート接合装置500(以下単に「接合装置」と言うこともある)は、防水性を有する帯状をなす防水シート8を、その長手方向に沿って、液状材料としての溶剤Q(可溶性溶剤)または接着剤を用いて、躯体としての断熱パネル敷設部30(床面)側において、境界部25A、25Bを覆うように、断熱パネル1に対して接合(敷設)する際に用いられる装置であるが、本実施形態では、溶剤Qを用いて溶着により防水シート8を接合する場合について説明する。
【0073】
接合装置500は、図10に示すように、溶剤Qを防水シート8に供給する供給系10と、供給系10ごと走行する走行系9とを備えている。以下、接合装置500が備える各部の構成について説明する。
【0074】
走行系9は、第1車体91Aと、第2車体91Bと、第2車体91Bの上部に支持、固定されたハンドル93とを有している。
【0075】
第2車体91Bは、フレーム94Bと、第2車体91Bの下部に回転可能に支持された4つの車輪92Bとを備えている。
【0076】
フレーム94Bは、2つの側板611と1つの前板612と1つの後板613と1つの中板614とで構成され、これらのうち2つの側板611は、Y軸方向に延びる長尺物であり、X軸方向に並べられ、間隙を介して互いに対向して配置されている。また、前板612、後板613および中板614は、それぞれ、X軸方向に延びる長尺物であり、前板612は、側板611の前方側の端部(先端)に配置され、また、後板613は、側板611の後方側の端部(基端)に配置され、さらに、中板614は、側板611の中央部に配置されており、2つの側板611を、これらを介して接合している。これにより、フレーム94Bは、中央部にX軸方向に延びる梁を備える、四角形状をなす枠体を構成している。
【0077】
フレーム94Bには、図10に示すように、その4角に、2対の車輪92Bが対をなすもの同士がX軸方向において対向するように配置され、各車輪92Bは、Y軸方向に回転可能にフレーム94Bに支持されている。そして、各車輪92Bが回転することにより、接合装置500は、第2車体91Bに搭載された供給系10ごと走行することができる。例えば、各車輪92Bが+Y軸方向(前進方向)に回転した場合には、接合装置500を+Y軸方向に前進させることができる。また、各車輪92Bが-Y軸方向(後退方向)に回転した場合には、接合装置500を-Y軸方向に後退させることができる。そして、接合装置500の+Y軸方向への前進および-Y軸方向への後進の際に、対向する車輪92Bは、それぞれ、Y軸方向に沿った対をなす車輪走行ラインLkを走行する。より詳しくは、X軸方向において対向する車輪92Bのうち-X軸方向側に位置する車輪92Bは、車輪走行ラインLk1を走行し、+X軸方向側に位置する車輪92Bは、車輪走行ラインLk2を走行する。
【0078】
第1車体91Aは、本実施形態において、X軸方向において対向する車輪92B同士の間、すなわち、Y軸方向に沿った対をなす車輪走行ラインLk同士の間において、X軸方向に並べて、2つ配置されており、この位置で、第2車体91Bに連結されている。
【0079】
また、2つの第1車体91Aは、それぞれ、Y軸方向に並べて配置された3つの押圧部94と、3つの押圧部94を連結する連結板95とを有している。
【0080】
なお、一方が-X軸方向側、他方が+X軸方向側に配置される2つの第1車体91Aは、それぞれ、図10図12図13に示すように、配置位置が異なること以外は、基本的に同じ構成である。そのため、以下、-X軸方向側に位置する第1車体91Aについて代表的に説明する。また、3つのうち1つが連結板95の+Y軸方向側の端部、1つが連結板95の-Y軸方向側の端部、さらに1つが連結板95の-Y軸方向側の中央部に連結される3つの押圧部94は、それぞれ、図10図13に示すように、配置位置が異なること以外は、基本的に同じ構成である。そのため、以下、+Y軸方向側の端部に位置する押圧部94について代表的に説明する。
【0081】
第1車体91Aにおいて、押圧部94は、フレーム94Aと、押圧部94の下部に回転可能に支持された複数(本実施形態では、8つ)のローラー92Aとを備えている。
【0082】
フレーム94Aは、2枚の側板942を有している。2枚の側板942は、X軸方向に並べられ、間隙を介して互いに対向して配置されている。
【0083】
フレーム94Aには、図11図12に示すように、2枚の側板942の間に、複数のローラー92Aが配置されている。各ローラー92Aは、その幅が防水シート8の幅を包含し得る大きさに設定されており、回転可能に2つの側板942に支持されている。そして、各ローラー92Aが回転することにより、第1車体91Aは、第2車体91Bとともに走行し、これにより、接合装置500は、供給系10ごと走行する。例えば、各車輪92Bが+Y軸方向に回転した場合には、各ローラー92Aも同様に+Y軸方向に回転し、その結果、接合装置500を+Y軸方向に前進させることができる。また、各車輪92Bが-Y軸方向に回転した場合には、各ローラー92Aも同様に-Y軸方向に回転し、その結果、接合装置500を-Y軸方向に後退させることができる。そして、接合装置500の+Y軸方向への前進および-Y軸方向への後進の際に、ローラー92Aは、対向する車輪92Bが走行する対をなす車輪走行ラインLk同士の間において、Y軸方向に沿ったローラ走行ラインLsを走行する。このローラー92Aが走行する位置が、防水シート8の縁部に対応しており、供給系10により溶剤Qが供給された後に、この防水シート8の縁部を、ローラー92Aにより、防水シート8Aの表側から転圧することで、防水シート8と断熱パネル1とを接合することができる。
【0084】
なお、図10図13に示すように、第2車体91Bに連結された2つの第1車体91Aのうち、-X軸方向側に位置する第1車体91Aが備えるローラー92Aは、2つのローラ走行ラインLsのうち、-X軸方向側に位置するローラ走行ラインLs1を走行し、+X軸方向側に位置する第1車体91Aが備えるローラー92Aは、+X軸方向側に位置するローラ走行ラインLs2を走行する。
【0085】
また、フレーム94Aに配置されるローラー92Aの配置数は、図11に示す構成では、+Y軸方向側の端部に位置する押圧部94において、8つであるが、+Y軸方向側の中央部に位置する押圧部94では、9つになっており、その数に限定されない。
【0086】
連結板95は、Y軸方向に延びる長尺物であり、X軸方向に沿うように配置され、連結部材95Aを介して、連結板95の両端部および中央部の3箇所において、それぞれ、押圧部94が連結されている。そして、この連結板95が第2車体91Bに連結されており、これにより、押圧部94は、連結板95と連結部材95Aを介して、第2車体91Bに固定される。すなわち、第1車体91Aが第2車体91Bに固定される。
【0087】
連結部材95Aは、連結板95と押圧部94とに対して上下方向に摺動可能に連結された軸部951と、コイル状(ばね状)とされ、内側に軸部951が挿通されたコイル部952とを有している。そして、軸部951は、連結板95と押圧部94とに対して、コイル部952のばね力に抗した状態で連結されている。
【0088】
かかる構成をなしている連結部材95Aにより、押圧部94を連結板95に対して、上下方向(Z軸方向)に揺動可能に、下方向(-Z軸方向)に向かって付勢することができる(図11図12参照)。
【0089】
よって、連結部材95Aが第2車体91Bに固定されていることから、押圧部94すなわち第1車体91Aは、第2車体91Bに対して、上下方向(Z軸方向)に揺動可能に、下方向(-Z軸方向)に向かって付勢されることとなる。したがって、第1車体91Aが備えるローラー92Aで防水シート8Aを、その表側から転圧することで防水シート8Aと防水シート8Bとを接合する際に、付勢力が異なるコイル部952を軸部951に挿通することで、防水シート8Aに掛かる荷重の大きさを所望の大きさに設定することができる。
【0090】
ハンドル93は、第2車体91Bにおけるフレーム94Bが有する中板614から上方に向かって突出して設けられたポール96に支持、固定されている。防水シート8の接合作業を行なう作業者は、ハンドル93を把持して、そのまま接合装置500を+Y軸方向に押して前進させたり、または、接合装置500を+Y軸方向に引いて後退させたりする操作を行うことができる。
【0091】
供給系10は、防水シート8の縁部、より具体的には、境界部25を覆うように配置された防水シート8の縁部に対応して、防水シート8と断熱パネル1との間に溶剤Qを供給する構造体である。
【0092】
供給系10は、-X軸方向側に配置された第1車体91Aに対応して設けられた供給部10Aと、+X軸方向側に配置された第1車体91Aに対応して設けられた第1車体91Aに対応して設けられた供給部10Bとで構成されている。供給部10Aと供給部10Bとは、配置箇所が異なること以外は、同じ構成であり、個別に設けられている。そのため、以下、供給部10Aについて代表的に説明する。なお、本実施形態では、図13に示すように、フレーム94Bの中央部におけるY軸方向に沿った仮想線VLを想定した場合、供給部10Aと供給部10Bとは、仮想線VLに関して対称的に配置されている。
【0093】
図10図13に示すように、供給部10Aは、溶剤Qを貯留する貯留部2と、貯留部2に連通し、貯留部2からの溶剤Qが通過する流路3と、流路3を通過する溶剤Qの流量を調整する流量調整部4と、流路3に連通し、流路3を通過した溶剤Qを防水シート8の縁部に供給(吐出)するノズル5と、流路3内の溶剤Qをノズル5側に向かって送り出すポンプ6と、動力をポンプ6に伝達する力伝達部7とを有している。なお、供給部10Aが有する各部は、供給部10Bに対して、前述の通り、個別に設けられるが、貯留部2は、共有のものとして設けられている。
【0094】
かかる構成をなす供給部10Aにおいて、本実施形態では、供給部10Aを構成する各部のうち、貯留部2と、流路3と、ポンプ6と、力伝達部7とが、第1車体91Aおよび第2車体91Bのうち、第2車体91B上に配置され、また、ノズル5が第1車体91A上に配置されている。以下、この供給部10Aを構成する各部について説明する。
【0095】
貯留部2は、本実施形態では、図10に示すように、円筒状をなすタンクで構成されている。なお、タンクには、外部と連通する通気孔があるのが好ましい。
【0096】
また、貯留部2は、フレーム94Bの上方に向かって突出して設けられた支柱943に固定されており、これにより、第2車体91B上に配置されている。
【0097】
この貯留部2は、供給部10Aだけではなく、供給部10Bと共有のものとして設けられている。これにより、接合装置500を用いた防水シート8と断熱パネル1との接合の途中で、供給部10Aもしくは供給部10Bのいずれか一方、すなわち、防水シート8のY軸方向に沿った2つの縁部81のうちのいずれか一方に、溶剤Qが供給されなくなるのを確実に防止することができる。
【0098】
貯留部2には、防水シート8の縁部に供給されることで、防水シート8と断熱パネル1とを溶着させるために用いられる、溶剤Qが貯留されている。この溶剤Qとしては、特に限定されないが、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ニトロベンゼン、四塩化炭素、ピリジン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン類、トルエン、メチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、中でも、テトラヒドロフランであることが好ましい。テトラヒドロフランは、揮発性に優れ、各種樹脂材料が溶解性を示す。そのため、防水シート8と断熱パネル1とを溶着させるために用いる溶剤として好ましい。
【0099】
流路3は、貯留部2の底部に、液密的に接続されており、この状態で、第2車体91B上に配置されている。
【0100】
この流路3は、貯留部2に連通し、溶剤Qが通過する金属製または樹脂製のパイプで一部または全部を構成することができる。
【0101】
なお、流路3は、本実施形態では、複数本のパイプが継手を介して接続され、また、パイプは、その長手方向の途中が1箇所または複数箇所で屈曲または湾曲しており、ポンプ6と流量調整部4とを介して、貯留部2とノズル5とを連結しており、溶剤Qを貯留部2からノズル5に供給する流路を構成している。
【0102】
ノズル5は、流路3の貯留部2と反対側の先端部に、液密的に接続されており、この状態で、第1車体91Aに配置されている。
【0103】
このノズル5は、本実施形態では、図14に示すように、偏平形状をなす金属製の中空体で構成され、流路3に連通している。
なお、ノズル5には、当該ノズル5を補強する補強材が設けられていてもよい。
【0104】
また、ノズル5は、図14に示すように、後方、すなわち、-Y軸方向側に向かって開口し、流路3を通過した溶剤Qを、防水シート8の縁部に吐出する吐出口51を有している。そして、吐出口51から吐出された溶剤Qは、防水シート8と断熱パネル1との接合に供される。吐出口51の形状は、図14に示す構成ではX軸方向に沿ったスリット状となっているが、防水シート8の縁部に供給し得るものであれば、これに限定されない。なお、ノズル5は、XY平面と平行に-X軸方向側に位置するものが+X軸方向側に向かって突出し、+X軸方向側に位置するものが-X軸方向側に向かって突出している。
【0105】
そして、図10図14に示すように、ノズル5は、溶剤Qを吐出する際には、防水シート8Aの幅方向の一方側、すなわち、-X軸方向側から、防水シート8の裏側(防水シート8と断熱パネル1との間)に挿入される。
【0106】
供給部10Aは、このようなノズル5を有し、このノズル5から溶剤Qを吐出することで、防水シート8の縁部に溶剤Qが供給される。
【0107】
なお、供給部10Aが有するノズル5の設置数は、本実施形態では、1つであるが、これに限定されず、例えば、2つ以上であってもよい。
【0108】
接合装置500を、+Y軸方向に押して前進させると、接合装置500の前進方向において、ノズル5は、押圧部94すなわち各ローラー92Aよりも前方に配置されている。そのため、防水シート8の長手方向に沿った縁部81に供給部10Aによりノズル5を介して溶剤Qが供給された後に、防水シート8と断熱パネル1とを、防水シート8の長手方向に沿った縁部81において、走行系9(押圧部94)が備えるローラー92Aにより、その表側から転圧することができる(図10図14参照)。この転圧により、溶剤Qの供給により溶融した防水シート8と断熱パネル1とが、防水シート8の縁部81において、接合されることとなる。その結果、防水シート8の縁部81における、防水シート8と断熱パネル1との間の防水性が確保されることとなる。以上のような接合装置500を用いた、ノズル5を介した防水シート8の縁部81への溶剤Qの供給と、この溶剤Qの供給の後のローラー92Aによる防水シート8の転圧とにより、本発明の防水シート接合方法における、接合装置500を用いた防水シート8を断熱パネル1(床面)に接合する接合工程が構成される。
【0109】
流量調整部4は、流路3の途中に設けられ、この状態で、第1車体91A上に配置されている。
【0110】
流量調整部4は、例えば、可変絞り弁で構成することができる。これにより、流量調整部4は、絞り開度を変えることによって、流路3を通過する溶剤Qの流量を無段階に調整することができる。このような流量調整部4により、ノズル5から溶剤Qを過不足なく供給することができる。
【0111】
なお、流量調整部4は、手動操作により溶剤Qの流量調整を行うよう構成されていてもよいし、または、例えば溶剤Qの粘度等の諸条件に基づいて自動的に溶剤Qの流量調整を行うよう構成されていてもよい。
【0112】
ポンプ6は、流路3の途中の流量調整部4よりも上流側に配置されており、この状態で、第2車体91B上に配置されている。
【0113】
このポンプ6は、流路3内の溶剤Qを貯留部2側からノズル5側に向かって送り出すものであり、例えば、歯車ポンプで構成することができる。歯車ポンプとしては、外接歯車ポンプや内接歯車ポンプ等を用いることができるが、外接歯車ポンプを用いるのが好ましい。
【0114】
ポンプ6が備える歯車は、力伝達部7を介して、車輪92Bの回転力が伝達され、この回転力により、流路3内の溶剤Qが貯留部2側からノズル5側に向かって送り出されることとなる。
【0115】
なお、ポンプ6としては、歯車ポンプの他、例えば、チューブポンプやダイヤフラムポンプ等の各種ポンプも用いることができる。
【0116】
力伝達部7は、ポンプ6と車輪92BA(92B)との間に位置しており、これにより、第2車体91B上に配置されており、車輪92BAの回転力を、ポンプ6が備える歯車に伝達する。そして、ポンプ6は、この回転力を用いて、流路3内の溶剤Qを貯留部2側からノズル5側に向かって送り出す。その結果、ノズル5から溶剤Qが吐出されることから、防水シート8の縁部において防水シート8と断熱パネル1とが溶融状態とされる。
【0117】
また、前述したように、溶剤Qの吐出後には、防水シート8の縁部において防水シート8が各ローラー92Aで転圧される(図10図14参照)。これにより、防水シート8の縁部において防水シート8と断熱パネル1とが接合される。
この接合作業終了後、ノズル5が防水シート8と断熱パネル1との間から抜去される。
【0118】
なお、貯留部2に貯留された溶剤Qを、サイフォンの原理により、ノズル5を介して、防水シート8の縁部に供給し得る場合には、供給部10Aは、ポンプ6と、力伝達部7とが省略されたものであってもよい。
【0119】
以上のような構成をなす接合装置500の+X軸方向に対する前進により、境界部25Aに沿って配置された防水シート8(防水シート8A)の縁部81において、防水シート8Aと断熱パネル1との間に、ノズル5から溶剤Qが供給された後に、ローラー92Aにより、防水シート8Aと断熱パネル1とが、その表側から転圧される。その結果、X軸方向に沿った境界部25Aを覆うようにして、防水シート8Aが断熱パネル1に対して接合される。
【0120】
そして、この接合装置500の+X軸方向に対する前進の後に、接合装置500の+Y軸方向に対する前進により、境界部25Bに沿って配置された防水シート8(防水シート8B)の縁部81において、防水シート8Bと断熱パネル1との間に、ノズル5から溶剤Qが供給された後に、ローラー92Aにより、防水シート8Bと断熱パネル1とが、その表側から転圧される。その結果、Y軸方向に沿った境界部25Bを覆うようにして、防水シート8Bが断熱パネル1に対して接合される。
【0121】
上記のような、接合装置500を用いた、境界部25Aに対応した防水シート8Aの接合と、境界部25Bに対応した防水シート8Bの接合とが、この順で行われるため、図1中E部のように、防水シート8Aの途中と防水シート8Bの途中とにおいて防水シート8Aを下側とし防水シート8Bを上側として、これら同士が直交して重ね合わされた重なり部85が形成される(図1図6図7参照)。
【0122】
この重なり部85では、図6図7に示すように、防水シート8Aを下側とし防水シート8Bを上側とする段差82が、重なり部85のX軸方向に沿った2つの縁部に形成され、これら段差82において、防水シート8Aと防水シート8Bとの間に隙間が形成されることから、この隙間を介して、雨水等が家屋の中に入り込むおそれがある。そのため、通常、段差82において防水シート8Aと防水シート8Bとを溶着することで、この隙間をなくす溶着作業が、作業者の手により実施されている。
【0123】
ところで、この作業者による溶着作業は、上述した、防水シート接合装置500を用いた、防水シート8と断熱パネル1との接合の後に実施される。したがって、何ら処置を施すことなく、防水シート接合装置500を用いて、防水シート8と断熱パネル1とを接合すると、重なり部85の段差82において、防水シート8Aと防水シート8Bとの間に隙間が形成された状態で、防水シート8Aと防水シート8Bとが不本意にも接合されることとなる。
【0124】
なお、段差82は、重なり部85のX軸方向に沿った2つの縁部に形成され、接合装置500による溶剤Qの供給は、防水シート8BのY軸方向に沿った2つの縁部81に供給される。そのため、防水シート8Aと防水シート8Bとの不本意な接合は、平面視において四角形状をなす重なり部85の4角87においてそれぞれ形成される。また、重なり部85おいて、防水シート8Aと防水シート8Bとのうち、防水シート8Aが下側に位置する第2防水シートを構成し、防水シート8Bが上側に位置する第1防水シートを構成する。
【0125】
これに対して、重なり部85の段差82において、防水シート8Aと防水シート8Bとの間に隙間が形成された状態で、防水シート接合装置500により防水シート8Aと防水シート8Bとが不本意にも接合されるのを、防止することができれば、前記溶着作業に先立って、作業者により実施される、段差82における、防水シート8Aと防水シート8Bとの剥離作業を省略すること、すなわち、無駄な作業の実施を省略することができる。
【0126】
そこで、接合装置500を用いた、Y軸方向に沿った境界部25Bに対応した防水シート8Bの接合を、防水シート8Aを下側とし防水シート8Bを上側として形成される重なり部85の段差82を包含する領域、より詳しくは、重なり部85の平面視における4角87をそれぞれ包含する領域84において、防水シート8Aと防水シート8Bとの間に、図15図17に示すように、未接合領域形成用配置部材201(本発明の未接合領域形成用配置部材)を選択的に配置した状態で実施する。
【0127】
ここで、接合装置500を用いた、X軸方向に沿った境界部25Aに対応した防水シート8Aの接合の後に実施される、Y軸方向に沿った境界部25Bに対応した防水シート8Bの接合では、防水シート8BのY軸方向(長手方向)に沿った縁部81において、断熱パネル敷設部30(床面)側で、防水シート8Bが断熱パネル1に当接する領域が、防水シート8Bと断熱パネル1とが接合されている接合領域を構成し、また、防水シート8Bが防水シート8Aに当接する領域、すなわち重なり部85が、防水シート8Bと防水シート8Aとが接合されていない未接合領域を構成している。
【0128】
未接合領域形成用配置部材201は、防水シート8BのY軸方向(長手方向)に沿った縁部81において、重なり部85に、防水シート8Bと防水シート8Aとが接合されていない未接合領域を形成するために使用されるものであり、接合装置500のY軸方向に沿った前進により、防水シート8BのY軸方向に沿った縁部81に、液状材料として溶剤Qを連続的に供給するときに、防水シート8Bと断熱パネル敷設部30(床面)側との間において、前記未接合領域である重なり部85に対応して選択的に配置して使用される。このように、未接合領域形成用配置部材201を重なり部85に対応して選択的に配置すると言う比較的容易な作業で、接合領域と未接合領域とを確実に形成することができる。なお、接合装置500のY軸方向に沿った前進の際に、予め、重なり部85に対応して選択的に未接合領域形成用配置部材201を配置する工程が、本発明の防水シート接合方法における配置工程が構成される。
【0129】
そして、接合装置500のY軸方向に沿った前進の後に、重なり部85から未接合領域形成用配置部材201を取り除くことで、重なり部85の段差82において、防水シート8Aと防水シート8Bとが不本意に接合されるのを、確実に防止することができる。そのため、段差82において防水シート8Aと防水シート8Bとを溶着することで隙間をなくす溶着作業に先立って、作業者により実施される、段差82における、防水シート8Aと防水シート8Bとの剥離作業を省略することができる。
【0130】
<未接合領域形成用配置部材201>
以下、重なり部85に対応して配置される未接合領域形成用配置部材201について説明する。
【0131】
図15は、第1構成の未接合領域形成用配置部材を示す図((a)は、斜視図、(b)は重なり部に配置した平面図)、図16は、第2構成の未接合領域形成用配置部材を示す図((a)は、斜視図、(b)は重なり部に配置した平面図)、図17は、第3構成の未接合領域形成用配置部材を示す図((a)は、斜視図、(b)は重なり部に配置した平面図)である。なお、以下では、説明の便宜上、図15図17中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言うことがある。
【0132】
未接合領域形成用配置部材201は、重なり部85において、その4角87を、それぞれ包含する未接合領域に対応して、配置されるものであれば、特に限定さないが、4角87の未接合領域を、一括して配置される1枚の金属板で構成されているのが好ましい。これにより、未接合領域に対する未接合領域形成用配置部材201(金属板)の配置を、1回の作業により実施することができる。そのため、この配置作業の簡略化を図ることができる。
【0133】
この未接合領域形成用配置部材201(金属板)は、その具体例として、図15図16に示すように、その平面視形状が四角形状をなしている第1構成および第2構成のものや、図17に示すように、その平面視形状がコの字状をなしている第3構成のものが挙げられ、かかる平面視形状をなす未接合領域形成用配置部材201を、重なり部85における、防水シート8Aと防水シート8Bとの間に配置することで、重なり部85の4角87の未接合領域を包含する〇印で示す領域84を、一括して配置し得るような大きさに設定されている。
【0134】
また、未接合領域形成用配置部材201(金属板)は、平面視形状が四角形状をなしている場合、図16に示すように、その中央部に欠損部210を有していることが好ましい。これにより、接合装置500を用いた、境界部25Bに対応した防水シート8Bの接合の後に、重なり部85から未接合領域形成用配置部材201を引き抜く際に、この欠損部210を把持部として用いることができる。そのため、この未接合領域形成用配置部材201を引き抜く引き抜き作業を、より容易に行うことができる。
【0135】
ところで、上記のような、接合装置500を用いた、境界部25Bに対応した防水シート8Bの接合は、帯状をなす防水シート8Bを用いて、複数本の境界部25Bに対して連続的に実施することとなる。そのため、2つの防水シート8Bを、不可避的につなぎ合わせる必要が生じることから、図1中F部のように、一方の防水シート8Bの基端と他方の防水シート8Bの先端とを、これらの短手方向(X軸方向)に沿って、一方の防水シート8Bを上側として重ね合わされた重なり部86が形成される(図1図8図9参照)。
【0136】
この重なり部86では、図8図9に示すように、他方の防水シート8Bを下側とし一方の防水シート8Bを上側とする段差83形成されている。より詳しくは、重なり部86のX軸方向に沿った2つの縁部のうち+Y軸方向側(一方の防水シート8B側)の縁部に形成され、この段差83において、一方の防水シート8Bと他方の防水シート8Bとの間に隙間が形成されることから、この隙間を介して、雨水等が家屋の中に入り込むおそれがある。そのため、前述した重なり部85における段差82と同様に、段差83において2つの防水シート8B同士を溶着することで、この隙間をなくす溶着作業が、作業者の手により実施されている。
【0137】
よって、この重なり部86の段差83においても、何ら処置を施すことなく、防水シート接合装置500を用いて、防水シート8Bと断熱パネル1とを接合すると、防水シート8B同士の間に隙間が形成された状態で、防水シート8B同士が不本意にも接合されることとなる。
【0138】
なお、段差83は、重なり部86のX軸方向に沿った2つの縁部のうち+Y軸方向側の端部に形成され、接合装置500による溶剤Qの供給は、防水シート8BのY軸方向に沿った2つの縁部81に供給される。そのため、防水シート8B同士の不本意な接合は、平面視において四角形状をなす重なり部86の+Y軸方向側の2角88においてそれぞれ形成される。また、重なり部86おいて、2つの防水シート8Bとのうち、一方の防水シート8Bが上側に位置する第1防水シートを構成し、他方の防水シート8Bが下側に位置する第2防水シートを構成する。
【0139】
そこで、接合装置500を用いた、Y軸方向に沿った境界部25Bに対応した2つの防水シート8Bを継ぎ合わせる接合を、一方の防水シート8Bを上側とし、他方の防水シート8Bを下側として形成される重なり部86の段差83を包含する領域、より詳しくは、重なり部86の平面視における4角のうち+Y軸方向側(重なり部86の先端側)の2角88をそれぞれ包含する領域89において、防水シート8B同士の間に、図18図19に示すように、未接合領域形成用配置部材202(本発明の未接合領域形成用配置部材)を選択的に配置した状態で実施する。
【0140】
ここで、接合装置500を用いた、Y軸方向に沿った境界部25Bに対応した2つの防水シート8Bを継ぎ合わせる接合では、防水シート8BのY軸方向(長手方向)に沿った縁部81において、断熱パネル敷設部30(床面)側で、1つの防水シート8Bが断熱パネル1に当接する領域が、防水シート8Bと断熱パネル1とが接合されている接合領域を構成し、また、2つの防水シート8Bを重ね合わせることで継ぎ合わせられる領域、すなわち重なり部86が、防水シート8B同士が接合されていない未接合領域を構成している。
【0141】
未接合領域形成用配置部材202は、防水シート8BのY軸方向(長手方向)に沿った縁部81において、重なり部86に、防水シート8B同士が接合されていない未接合領域を形成するために使用されるものであり、接合装置500の+Y軸方向に沿った前進により、防水シート8BのY軸方向に沿った縁部81に、液状材料として溶剤Qを連続的に供給するときに、上側に位置する一方の防水シート8Bと断熱パネル敷設部30(床面)側との間において、前記未接合領域である重なり部86に対して選択的に配置して使用される。
【0142】
そして、接合装置500の+Y軸方向に沿った前進の後に、重なり部86から未接合領域形成用配置部材202を取り除くことで、重なり部86の段差83において、防水シート8B同士が不本意に接合されるのを、確実に防止することができる。そのため、段差83において防水シート8B同士を溶着することで隙間をなくす溶着作業に先立って、作業者により実施される、段差83における、防水シート8B同士の剥離作業を省略することができる。
【0143】
<未接合領域形成用配置部材202>
以下、重なり部86に対応して配置される未接合領域形成用配置部材202について説明する。
【0144】
図18は、第4構成の未接合領域形成用配置部材を示す図((a)は、斜視図、(b)は重なり部に配置した平面図)、図19は、第5構成の未接合領域形成用配置部材を示す図((a)は、斜視図、(b)は重なり部に配置した平面図)である。なお、以下では、説明の便宜上、図18図19中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言うことがある。
【0145】
このような未接合領域形成用配置部材202は、重なり部86において、その+Y軸方向側の2角88を、それぞれ包含する未接合領域に対応して、配置されるものであれば、特に限定さないが、+Y軸方向側の2角88の未接合領域を、それぞれ独立して配置される2枚の金属板で構成されているのが好ましい。これにより、2角88の未接合領域に対する未接合領域形成用配置部材202(金属板)の配置を、2枚の金属板を用いてそれぞれ独立して実施することができる。そのため、未接合領域に対する未接合領域形成用配置部材202(金属板)の配置作業をより優れた精度で実施することができる。
【0146】
この未接合領域形成用配置部材202(金属板)は、その具体例として、図18図19に示すように、1つの金属板が、その平面視形状が三角形形状や四角形状のように多角形形状をなしている構成のものが挙げられ、かかる平面視形状をなす金属板を、未接合領域形成用配置部材201として、重なり部86における、防水シート8B同士の間に配置することで、重なり部86の2角88のうちの1角の未接合領域を包含する〇印で示す領域89を、独立して配置し得るような大きさに設定されている。
【0147】
また、未接合領域形成用配置部材202(金属板)は、平面視形状が多角形状をなしている場合、図18図19に示すように、その1辺から鉛直方向に立ち上がる立ち上がり面220を有していることが好ましい。これにより、接合装置500を用いた、境界部25Bに対応した防水シート8Bの接合の後に、重なり部86から未接合領域形成用配置部材202を引き抜く際に、この立ち上がり面を把持部として用いることができる。そのため、この未接合領域形成用配置部材202を引き抜く引き抜き作業を、より容易に行うことができる。
【0148】
なお、本実施形態では、Y軸方向に沿った境界部25Bに対応して接合される防水シート8Bが、2つのもので継ぎ合わせられ、これにより、重なり部86が形成されることとしたが、重なり部86は、防水シート8Bに形成される場合に限らず、X軸方向に沿った境界部25Aに対応して接合される防水シート8Aが、2つのもので継ぎ合わせられ、これにより、重なり部86は、防水シート8Aに形成されていてもよい。
【0149】
以上、本発明の未接合領域形成用配置部材および防水シート接合方法を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。また、未接合領域形成用配置部材、および防水シート接合方法に用いられる防水シート接合装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0150】
例えば、本発明の未接合領域形成用配置部材では、前記第1~第5構成で示した任意の2以上の構成を組み合わせるようにしてもよい。
【0151】
さらに、前記実施形態では、断熱パネル敷設部に帯状をなす防水シートを接合する際に形成される段差を包含する領域に、未接合領域形成用配置部材を選択的に配置して、帯状をなす防水シートの長手方向に沿った縁部に、接合領域と未接合領域とを形成する場合について説明したが、断熱パネル敷設部に接合される防水シートは、その形状が帯状をなすものに限定されず、いかなる形状をなしていてもよい。また、このような帯状とは異なる形状をなす防水シートの縁部に液状材料を用いて断熱パネル敷設部に接合するときに、この防水シートの縁部において、接合領域と未接合領域とを形成する場合にも、本発明の未接合領域形成用配置部材を用いることができる。すなわち、帯状とは異なる形状をなす防水シートの縁部における、形成すべき未接合領域を包含する領域に、未接合領域形成用配置部材を選択的に配置することで、接合領域と未接合領域とを形成することができる。
【0152】
また、本発明の防水シート接合方法では、任意の目的で、1以上の工程を追加することができる。
【符号の説明】
【0153】
1 断熱パネル
2 貯留部
2A 第1耐火シート
2B 第2耐火シート
2C 第3耐火シート
3 流路
3a 樹脂層
4 流量調整部
4a 金属層
4b 金属層
5 ノズル
5a 樹脂層
5b 樹脂層
6 ポンプ
7 力伝達部
8 防水シート
8A 防水シート
8B 防水シート
9 走行系
9C 固定ビス
10 供給系
10A 供給部
10B 供給部
11 縁部
12 縁部
13 縁部
14 縁部
15 貫通孔
25 境界部
25A 境界部
25B 境界部
30 断熱パネル敷設部
51 吐出口
60 凸部
70 凹部
81 縁部
82 段差
83 段差
84 領域
85 重なり部
86 重なり部
87 4角
88 2角
89 領域
91 母屋
91A 第1車体
91B 第2車体
92A ローラー
92B 車輪
92BA 車輪
93 ハンドル
94 押圧部
94A フレーム
94B フレーム
95 連結板
95A 連結部材
96 ポール
100 屋根
150 防水構造
201 未接合領域形成用配置部材
202 未接合領域形成用配置部材
210 欠損部
220 立ち上がり面
500 防水シート接合装置(接合装置)
611 側板
612 前板
613 後板
614 中板
942 側板
943 支柱
951 軸部
952 コイル部
Lk 車輪走行ライン
Lk1 車輪走行ライン
Lk2 車輪走行ライン
Ls ローラ走行ライン
Ls1 ローラ走行ライン
Ls2 ローラ走行ライン
Q 溶剤
VL 仮想線
α 傾斜方向
θ1 傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19