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特許7552982ルミネセント光学装置およびそのようなルミネセント光学装置に用いられるフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】ルミネセント光学装置およびそのようなルミネセント光学装置に用いられるフィルム
(51)【国際特許分類】
   F21S 9/03 20060101AFI20240910BHJP
   G09F 13/20 20060101ALI20240910BHJP
   H02S 40/22 20140101ALI20240910BHJP
   F21S 9/02 20060101ALI20240910BHJP
   F21V 7/30 20180101ALI20240910BHJP
   F21V 7/26 20180101ALI20240910BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20240910BHJP
   F21S 19/00 20060101ALI20240910BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240910BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20240910BHJP
【FI】
F21S9/03
G09F13/20 G
H02S40/22
F21S9/02 420
F21V7/30
F21V7/26
F21S2/00 435
F21S19/00
F21Y115:10
F21Y115:30
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021558520
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-16
(86)【国際出願番号】 NL2020050185
(87)【国際公開番号】W WO2020197384
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-03-15
(31)【優先権主張番号】2022806
(32)【優先日】2019-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】523304375
【氏名又は名称】クリアビュー ヨーロップ ホールディング ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】CLEARVUE EUROPE HOLDING B.V.
【住所又は居所原語表記】PLANTAGE KERKLAAN, 45 H 1018CV AMSTERDAM, NETHERLANDS
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】テル シフォルスト、ジェローン
(72)【発明者】
【氏名】ワーヘナー、トゥーニス ヨート ロイス
(72)【発明者】
【氏名】デバイェ、ミハエル ジョージ
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-501353(JP,A)
【文献】特表2015-515086(JP,A)
【文献】特表2008-516264(JP,A)
【文献】特開2016-165460(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 9/03
G09F 13/20
H02S 40/22
F21S 9/02
F21V 7/30
F21V 7/26
F21S 2/00
F21S 19/00
F21Y 115/10
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を導くように構成された担体パネル(11、21)と、
前記担体パネル(11、21)に光学的に結合し、前記担体パネルから受け取る光から電気エネルギを生成するように構成された少なくとも1つの光起電セル(12、22)と、
前記少なくとも1つの光起電セル(12、22)に接続され、前記光起電セル(10、20)によって生成された電気エネルギを貯蔵するように構成されたエネルギ貯蔵装置(13、23)と、
前記担体パネル(11、21)に光学的に結合し、前記エネルギ貯蔵装置(13、23)に電気的に結合し、前記担体パネル(11、21)へと光を放射するように構成された少なくとも1つの光源(14、24)と
少なくとも1つのセンサ(30)からの異なる読み取り値に応答して異なる波長の光を放射するために前記少なくとも1つの光源(24)に動作可能に接続された前記少なくとも1つのセンサ(30)、とくには動きセンサ、光学センサ、温度センサ、湿度センサ、粒子センサ、赤外線(IR)センサ、放射線センサ、およびCO センサのうちの少なくとも1つと、
前記少なくとも1つの光源(24)および前記少なくとも1つのセンサ(30)に電気的に接続され、異なる波長の光を放射するように前記少なくとも1つの光源(24)を制御するように構成された、とくにはプロセッサ制御式の制御ユニットである制御ユニット(29)と
を備えており、
前記担体パネル(11、21)には、周囲光による励起時にルミネセント光を前記担体パネル(11、21)へと放射し、前記担体パネル(11、21)によって導かれた前記少なくとも1つの光源(14、24)からの光による励起時に可視ルミネセント光を外部に放射するように構成された複数のルミネセントドメイン(25~28)が設けられ、
前記複数のルミネセントドメインのうちの異なるルミネセントドメイン(25~28)が、異なる波長の光による励起時に可視ルミネセント光を放射するように構成されたルミネセンス材料を含んでおり、
前記少なくとも1つの光源(14、24)は、それぞれのルミネセントドメイン(25~28)を励起してルミネセント光を放射させるために、異なる波長の光を放射するように構成されている、
ルミネセント光学装置(10、20)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの光源(14、24)は、1つ以上の制御可能な発光ダイオード(LED)および前記担体パネルを取り囲む光拡散光ファイバのうちの少なくとも一方を備える、請求項1に記載のルミネセント光学装置。
【請求項3】
前記複数のルミネセントドメイン(25~28)は、厚さが異なる、濃度が異なる、および組成が異なる、のうちの少なくとも1つであるドメインを含む、請求項1または2に記載のルミネセント光学装置。
【請求項4】
前記複数のルミネセントドメイン(25~28)は、前記担体パネル(11、21)の周辺部分から中央部分へと下り勾配の様相で変化し、とくには前記担体パネル(11、21)の周辺部分におけるより大きな厚さまたはより高い濃度の少なくとも一方から、中央部分におけるより小さな厚さまたはより低い濃度の少なくとも一方へと変化するドメインを含む、請求項に記載のルミネセント光学装置。
【請求項5】
前記複数のルミネセントドメイン(25~28)は、クラスタ、マトリックス、およびアレイのうちの少なくとも1つ、とくには高解像度印刷を使用して形成されたピクセルからなるドメインを含むアレイに配置される、請求項に記載のルミネセント光学装置。
【請求項6】
サイネージ、ビルディング一体型光起電(BIPV)、広告パネル、自動車用ガラス、および審美品のうちの少なくとも1つを動作させるように構成された、請求項1~のいずれか一項に記載のルミネセント光学装置。
【請求項7】
前記複数のルミネセントドメイン(65~68)は、フィルム(70)によって、該フィルムが前記担体パネル(61)に取り付けられる、または該フィルムが担体パネル(61、81)の間に積層される、のうちの少なくとも一方によって構成される、請求項1~のいずれか一項に記載のルミネセント光学装置。
【請求項8】
前記担体パネル(61)は、反対向きの表面を備え、該表面の少なくとも一方にフィルム(70)が取り付けられる、請求項に記載のルミネセント光学装置。
【請求項9】
前記フィルム(70)は、とくには前記フィルム(70)を前記担体パネル(61)に光学的に結合させる接着剤および静電気のうちの少なくとも一方によって、前記担体パネル(61)に取り外し可能に取り付け(610)される、請求項またはに記載のルミネセント光学装置。
【請求項10】
前記複数のルミネセントドメイン(65~68)は、インクジェット印刷、スロットダイコーティング、およびスクリーン印刷のうちの少なくとも1つによって前記フィルム(70)上に設けられる、請求項のいずれか一項に記載のルミネセント光学装置。
【請求項11】
前記担体パネル(11、21)は、機械的に柔軟なパネルである、請求項1~1のいずれか一項に記載のルミネセント光学装置。
【請求項12】
請求項~1のいずれか一項に記載のルミネセント光学装置(10、20)において使用するためのルミネセンス材料を含む複数のルミネセントドメイン(65~68)を備えているフィルム(70)。
【請求項13】
分離可能な断片にて配置され、ロール上に設けられた、請求項1に記載のフィルム(70)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、広くには、光学装置に関し、とくには、フォトルミネセンスを使用するルミネセント光学装置、およびそのようなルミネセント光学装置と共に使用するためのフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
物質による光の放出であって、熱によって引き起こされるものではない光の放出は、一般に、ルミネセンスと呼ばれる。フォトルミネセンス(photo-luminescence)、すなわちPLと呼ばれ、一般に蛍光およびリン光に分類されるルミネセンスの一形態は、電磁放射線にさらされた物質がエネルギを吸収し、このエネルギが発せられる電磁放射線の形態で放出されることによってもたらされる。ほとんどの場合、発せられる電磁放射線は、吸収された電磁放射線よりも長い波長を有する。
【0003】
ルミネセント太陽集光器(luminescent solar concentrator)、すなわちLSCは、フォトルミネセンス材料および太陽電池を利用して電気エネルギを生成する装置である。LSCは、比較的大きな表面積にわたってフォトルミネセンス材料が発する電磁放射線または光を収集し、発せられた放射線を比較的小さな太陽電池ターゲット、例えば光起電(Photo-Voltaic)、すなわちPVセルへと導くことによって動作する。
【0004】
一例として、LSCを、プラスチックまたはガラスなどの比較的高い屈折率を有する材料で作られた透明な担体の表面に高蛍光インクコーティングを塗布することによって構成することができる。LSCに入射する電磁放射線、とくには太陽光または周囲光が、蛍光体によって吸収され、蛍光体が発する電磁放射線または光が、透明な担体に結び付けられる。担体材料の高い屈折率により、発せられた光の大部分が、全反射によって担体内に閉じ込められる。発せられた光のうち、臨界角度とも呼ばれる有効角度の外側の部分は、蛍光としてLSCから出て行く。発せられた光のうちの透明な担体内に閉じ込められた部分は、透明な担体の側面へと移動し、透明な担体の側面において、光起電セルが、透明な担体の1つ以上のエッジに光学的に結合している。光起電セルは、発せられた光の一部を電気エネルギに変換して、電池などのエネルギ貯蔵装置を充電する。
【0005】
LSCによって生成され、エネルギ貯蔵装置に貯蔵された電気を、さまざまな目的に使用することができる。参照によって本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2012/0118381号明細書が、光源を透明な担体のエッジに光学的に結合させて備えており、透明な担体の表面または透明な担体の表面に配置されたフィルムに適用されたルミネセンス材料のパターンによって形成された画像を照明するLSCを開示している。光源は、エネルギ貯蔵装置からの電力で動作する。
【0006】
パターンは、LSCによって有色の単一の画像を表示するために、光源によって照明されたときに異なる色の光を発する異なるルミネセンス材料を含むことができる。
【0007】
実際には、ルミネセンス材料のパターンから異なる画像を選択的に表示するためのLSCのより多才な動作が、必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願公開第2012/0118381号明細書
【発明の概要】
【0009】
上述の目的は、本開示の第1の態様において、光を導くように構成された担体パネルと、担体パネルに光学的に結合し、担体パネルから受け取る光から電気エネルギを生成するように構成された少なくとも1つの光起電セルと、少なくとも1つの光起電セルに電気的に接続され、光起電セルによって生成された電気エネルギを貯蔵するように構成されたエネルギ貯蔵装置と、担体パネルに光学的に結合し、エネルギ貯蔵装置に電気的に接続され、担体パネルへと光を放射するように構成された光源と、を備えるルミネセント光学装置によって解決される。複数のルミネセントドメインが、担体パネルに設けられ、周囲光による励起時にルミネセント光を担体パネルへと放射し、担体パネルによって導かれた光源からの光による励起時に可視ルミネセント光を外部に放射するように構成される。複数のルミネセントドメインのうちの異なるルミネセントドメインが、異なる波長の光による励起時に可視ルミネセント光を放射するように構成されたルミネセンス材料で構成され、光源は、それぞれのドメインを励起してルミネセント光を放射させるために異なる波長の光を放射するように構成される。
【0010】
本開示は、特定のルミネセンス材料、すなわちフォトルミネセンス材料によるルミネセント光の放射が、電磁放射線の波長、すなわちそれぞれのルミネセンス材料に入射する光の波長に依存するという洞察に基づく。特定の波長または特定の波長範囲の光による励起時に異なる画像を表す可視ルミネセント光を放射するルミネセンス材料のルミネセントドメインのパターンを構築することにより、光源によって放射される光の1つ以上の波長を制御することによって特定の画像に対応するそれぞれのドメインを選択的に照明することで、異なる画像を表示することができる。
【0011】
したがって、本開示によるルミネセント光学装置によれば、光源が放射する光の組成を適切に選択することにより、ルミネセントドメインのパターンから異なる画像を表示することができる。例えば、異なる画像を表示し、さらには/あるいは同じ画像を異なる色で表示するために、異なるルミネセンス材料のドメインを選択してグループに配置できることを、理解できるであろう。画像という用語を、写真、アイコン、図表、標識、ピクトグラム、だけでなく、文字などのテキストコンテンツ、図形、マーク、あるいは任意の他の種類のグラフィックまたは情報またはコンテンツを含むその最も一般的な形態にて解釈すべきである。
【0012】
上述のような構成において、ルミネセント光学装置によって生成および貯蔵された電気エネルギは、外部電源および/または外部接続ケーブルを必要とせずに光源を動作させるために使用される。したがって、本開示によるルミネセント光学装置は、さまざまな目的のために、エネルギを収集し、自身を照明し、さまざまなコンテンツを便利かつ柔軟に表示することができるスタンドアロンの完全に一体化された装置として機能する。例えば、ルミネセント光学装置は、色彩豊かに設計された窓、壁要素、広告パネル、サイネージ、および他の建築材料を提供することを可能にする。
【0013】
さらに、多色の放射の実現は、さまざまな色の場合によっては異なる輝度の画像の複雑なパターンを表示可能にする。したがって、得られる製品に3D効果をもたらすための色深度などの芸術的および審美的効果を与えることができる。
【0014】
光源とルミネセンス材料の複数のルミネセントドメインとを組み合わせて、表示されたコンテンツを光らせるなど、より動的な効果を生み出すことも可能である。動的な効果を選択的に可能にすることで、例えば警告または通知の目的へのルミネセント光学装置の適用がさらに向上する。
【0015】
さらに、ルミネセント光学装置は、装置の周囲の変化に応答し、あるいは装置の周囲の変化に関連して、自身の表示を変化させるように構成されてもよい。この目的のために、ルミネセント光学装置は、周囲に関する情報または測定データを収集するための1つ以上のセンサをさらに備えることができる。ルミネセント光学装置とその周囲との統合または接続は、ルミネセント光学装置の応答的な動作を可能にするため、有益である。
【0016】
本ルミネセント光学装置のさらに別の利点は、ドメインの異なるルミネセンス材料が、周囲光のより多くの部分、すなわちさまざまな波長を、異なる材料によって吸収できるがゆえに、周囲光を電気エネルギに変換するための装置の動作範囲を効果的に改善することである。
【0017】
本開示の一実施形態によれば、光源は、プログラムによって制御することができる発光ダイオード(LED)などの1つ以上の制御可能なLEDを備えることができる。具体的には、装置は、表示すべき特定の画像に対応する異なるルミネセンス材料のドメインのうちの該当のドメインを励起するために、複数の異なる単色LEDを備え、あるいは多色のLEDを使用して、特定の色、すなわち波長の光を照射することができる。
【0018】
LEDを、ルミネセンス材料のドメインの均一な照明をもたらすために、例えば矩形の担体パネルの反対向きの側面またはエッジなど、透明な担体パネルの1つまたはいくつかの位置に配置することができる。
【0019】
あるいは、光源は、異なる波長または波長範囲の光を放射することができるレーザ光源に接続された光拡散光ファイバを備えてもよい。光拡散光ファイバは、担体パネルの1つ以上の側面またはエッジに配置される光起電セルに結合するルミネセント光の量に影響を及ぼさず、あるいは無視できるほどの影響しか及ぼさずに、担体パネルの可能な限り均一な照明をもたらすために、例えば矩形の担体パネルの側面またはエッジを完全に取り囲むなど、担体パネルを完全に取り囲むように配置されてよい。この意味で、担体パネルの任意の利用可能なエッジを、エネルギの生成に影響を及ぼすことなく照明に使用することができる。
【0020】
本開示の一実施形態によれば、ルミネセント光学装置を周囲環境に関連して動作させるために、装置は、周囲のパラメータまたは測定値を監視または検出するための少なくとも1つのセンサをさらに備えることができる。1つまたは複数のセンサを、ルミネセント光学装置の1つまたは複数の光起電セルによって生成されてルミネセント光学装置のエネルギ貯蔵装置に貯蔵された電気エネルギによって動作させることができる。表示される画像、すなわち光源が発生させる光の波長を、センサの測定データに応じて変化させることができる。ルミネセント光学装置を、1つまたは複数のセンサをプラグアンドプレイモードで接続するように構成することができ、これにより、装置が必要に応じて環境の1つ以上の態様を選択的に監視することを可能にできる。
【0021】
とくには、少なくとも1つのセンサは、光源に動作可能に接続された動きセンサ、光学センサ、温度センサ、湿度センサ、粒子センサ、赤外線(IR)センサ、放射線センサ、およびCOセンサのうちの1つ以上を含むことができる。これにより、光源は、少なくとも1つのセンサからの異なる読み取り値または測定データに応答して異なる波長の光を放射することができる。
【0022】
一例として、動きセンサおよび光センサを用いて、例えば、エネルギ貯蔵装置に貯蔵されたエネルギを節約するために、光センサの読み取り値から知覚されるとおりの夜間において、動きセンサの読み取り値から検出されるとおりの装置の近傍を移動している人に静かに知らせる必要がある場合に限り、光学装置による画像の表示をオンにすることを決定することができる。
【0023】
別の例として、光センサ、温度センサ、などの環境の質に関連するセンサを使用して、窓を開ける、窓のガラスを切り替える、などの動作を制御することができる。
【0024】
本開示の一実施形態によれば、ルミネセント光学装置は、光源がもたらす光を制御するための別個の制御ユニットをさらに備えてもよい。制御ユニットは、光源および少なくとも1つのセンサに電気的に接続され、エネルギ貯蔵装置から電力が供給され、異なる波長の光を放射するように光源を制御するように構成される。
【0025】
制御ユニット、とくにはプロセッサ制御式の制御ユニットを組み込むことにより、それぞれの画像または画像効果を表示するためのそれぞれの波長または波長範囲の光、すなわち電磁放射線を選択的に放射することによって、ルミネセント装置の表示効果をプログラム可能に制御することが可能になる。制御ユニットは、必要に応じてカスタマイズされる異なる(予め定められた)モード間の切り替えを行うことができ、光源がより多様なやり方で異なる波長の光を放射することを可能にして、特定の適用領域に適合させた(予め定められた)画像および効果のカスタマイズされた柔軟な表示を可能にする。
【0026】
複数のルミネセントドメインは、厚さ、濃度、および組成の少なくとも1つに関して互いに異なるルミネセンス材料のドメインを含むことができる。それぞれのドメインにおけるルミネセンス材料の濃度および/または厚さを変えることによって、放射されるルミネセント光の強度を変化させることが可能である。さらにより多様な表示効果を実現できるように、異なるドメイン間に濃度または厚さの勾配を持たせることも可能である。
【0027】
好都合な開示において、複数のルミネセントドメインは、担体パネルの周辺部分から中央部分へと下り勾配の様相で変化するドメインを含む。すなわち、PVセルが配置されている担体パネルのエッジの近くに位置するドメインには、これらのドメインによって放射されるルミネセント光が比較的短い距離にてPVセルに到達できるため、被覆割合、厚さ、および/または濃度がより大きいルミネセント材料が設けられる。これにより、とりわけ、放射されたルミネセント光が担体パネルに位置する他のドメインによって再吸収されることによって引き起こされる損失が小さくなる。担体パネルのエッジ付近のドメインのこのような配置は、ルミネセント光学装置の出力を有益に増加させる。
【0028】
異なる照射色の変化は、異なる励起波長に応答するルミネセンス材料を使用するドメインの組成の変化に実質的に依存する。例えば、同じドメインに異なる材料組成物を混合することにより、さらに鮮やかな表示効果が提供される。
【0029】
全体として、異なるルミネセントドメインをクラスタあるいはマトリックスまたはアレイの形態に配置することが、ルミネセント光学装置について、異なる所望の画像外観要件を有する広範囲の用途への汎用的使用を提供するために有益である。
【0030】
一例として、そのようなマトリックスまたはアレイは、小さなピクセルからなるドメインを含むさまざまなサイズのドメインを含むことができる。そのようなピクセルは、周囲光によって励起されたときには基本的に目に見えないが、光源によって励起されたときには見えるようになる寸法を有することができる。そのような小さなピクセルを、例えば、より高い審美的要件を有する用途に使用することができる。
【0031】
本開示の別の実施形態によれば、複数のルミネセントドメインは、担体パネルに別途取り付けられるフィルムによって構成される。ルミネセントドメインをルミネセント光学装置とは別の構造上に配置することにより、光学装置の使用における柔軟性をさらに向上させることができる。すなわち、光学装置は、ルミネセントドメインの特定のパターンを有さずに均一に製造されてよい。その後に、表示されるべき画像を、特定の用途に適合させたルミネセントドメインを含む特定の予め製造されたフィルムを選択することによって適用することができる。
【0032】
またさらに、ルミネセント光学装置の担体パネルが反対向きの表面を備える場合、ルミネセント光学装置の反対向きの表面に異なるフィルムを取り付けることが可能であり、異なるパターン、色、およびコンテンツを有するフィルムを異なる要件に基づいて担体パネル上に配置することにより、例えば表示することができる画像の数を増やすことができる。
【0033】
とくにはフィルムと担体パネルとを光学的に結合させる接着剤、あるいは例えば静電気によって、フィルムを担体パネルに着脱可能に取り付けることが、さらにより柔軟である。このようにして、広告板上のアナウンスを変更するのと同様に、フィルムを時々交換することによって、表示される画像を容易に変更することができる。
【0034】
フィルムを、2つの担体パネルの間に積層し、あるいは挟んでもよい。したがって、フィルム上のドメインによって発せられたルミネセント光を、両方の担体パネルのエッジに配置されたPVセルによって使用し、エネルギを生成することができる。さらに、フィルム上のルミネセントドメインによって形成されたパターンを、担体パネル間にフィルムを積層する結果として、損傷または気象条件などの外部の大気条件から保護することができる。
【0035】
フィルム上のルミネセントドメインによって形成されたパターンの寿命を、フィルムと担体パネルとの間に紫外線(UV)保護箔を取り入れることによって向上させることができる。いくつかのフィルムおよびUV保護箔を、担体パネル間に積層することができる。
【0036】
複数のルミネセントドメインを、インクジェット印刷、スロットダイコーティング、およびスクリーン印刷のうちの少なくとも1つによってフィルム上に設けることができると考えられる。フィルムは、大量生産に適しており、したがってより低コストで製造することが可能である。
【0037】
機械的に柔軟である担体パネルを有することも有利であり、これにより、ルミネセント光学装置を、丸めることが可能または曲げることが可能であってよい湾曲した構造上に配置すること、または湾曲した構造として構成することが可能になる。これにより、装置の適用性および柔軟性がさらに改善される。
【0038】
上述のルミネセント光学装置を、サイネージ、ビルディング一体型光起電(BIPV)、広告パネル、自動車用ガラス、および審美品のうちの少なくとも1つを動作させるように構成することができる。これらの製品および装置は、製品および装置自体によって生成された電気エネルギによって動作する一体型の光源を使用してコンテンツを表示することができる。
【0039】
本開示の第2の態様は、上記開示のとおりの上述のルミネセント光学装置と共に使用するためのルミネセンス材料を含んでいる複数のルミネセントドメインを備えるフィルムを提供する。
【0040】
このようなフィルムを、分離可能な断片に配置して、ロール上に設けることができる。結果として、フィルム片を必要なときにロールから容易に取り外し、担体パネルに取り付けることができる。
【0041】
本開示の上述の特徴および利点ならびにその他の特徴および利点は、添付の図面を参照する以下の説明から最も良好に理解されるであろう。図面において、類似の参照番号は、同一の部分あるいは同一または同等の機能または動作を実行する部分を指す。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】平面図における本開示によるルミネセント光学装置の一実施形態を概略的かつ例示的に示している。
図2】側面図からの本開示によるルミネセント光学装置の一実施形態を概略的かつ例示的に示している。
図3】ルミネセント光学装置のエッジを巡って巻き付けられた光拡散光ファイバを備える光源を斜視図にて示している。
図4】本開示によるルミネセント光学装置を使用して表示される種々の画像の例を示している。
図5】本開示によるルミネセント光学装置を使用して表示される種々の画像の例を示している。
図6】担体パネルに取り付けられたフィルムを含むルミネセントドメインを有するルミネセント光学装置の一実施形態を概略的かつ例示的に示している。
図7】2つの担体パネルの間に積層されたフィルムを含むルミネセントドメインを有するルミネセント光学装置の一実施形態を概略的かつ例示的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本開示は、平面的な構造を一般的に採用するルミネセント光学装置に関して以下で詳述される。しかしながら、平面的な構造は、例示を目的としたものにすぎず、本開示を限定するものではないことを、当業者であれば理解できるであろう。
【0044】
本開示の以下の説明および特許請求の範囲において、以下の用語が使用される。
【0045】
「ルミネセント」という用語は、充分な量子エネルギの光などの電磁放射線からエネルギを吸収した後のルミネセンス材料による光の放射を指す。この用語は、蛍光およびリン光の両方を含む。
【0046】
「ドメイン」という用語は、互いに独立して形成され、例えば、異なる組成、異なる厚さ、または異なる濃度のルミネセンス材料を含んでいる領域を指す。
【0047】
「光学的に結合」という用語は、光または放射線の大部分がルミネセント光学装置の或る部分からルミネセント光学装置の別の部分へと伝えられることを意味する。
【0048】
図1が、本開示によるルミネセント光学装置10の例示的な実施形態の上面図を概略的かつ例示的に示している。
【0049】
ルミネセント光学装置10は、光を導くように配置された矩形の透明な担体パネル11と、担体パネル11のエッジに光学的に結合し、担体パネル11から受け取った光から電気エネルギを生成するように配置された少なくとも1つの光起電(PV)セル12とを備える。エネルギ貯蔵装置13が、少なくとも1つのPVセル12に電気的に接続され、少なくとも1つの光起電セル12によって生成された電気エネルギを貯蔵するように構成される。さらに、エネルギ貯蔵装置13は、制御ユニット19、とりわけプロセッサ制御式の制御ユニットを介して、少なくとも1つの光源14に電気的に接続される。少なくとも1つの光源14は、担体パネル11のエッジに光学的に結合し、担体パネル11へと光を放射するように構成される。ルミネセント光学装置は、図2を参照して説明される担体パネル11の片面または両面に配置されたルミネセントドメインをさらに含む。
【0050】
PVセル12および光源14が、図1に示されている以外に、担体パネル11の他の側面または3つ以上の側面に光学的に接続されてよく、あるいは上面および/または下面にさえ光学的に接続されてよいことを、理解できるであろう。
【0051】
図2が、本開示によるルミネセント光学装置20の一実施形態を概略的かつ例示的に示している。図1および図2の同様の参照番号は、ルミネセント光学装置の同様の構成要素を指しており、再度の詳しい説明は行わない。
【0052】
図1で説明した構成要素に加えて、ルミネセント光学装置20は、担体パネル21の表面に設けられ、周囲光による励起時に、ルミネセント光を担体パネル21内へと放射し、担体パネル21によって導かれる少なくとも1つの光源24からの光による励起時に、可視ルミネセント光を外部へと放射するように構成された複数のルミネセントドメイン25~28を備える。ルミネセントドメイン25~28は、少なくとも1つの光源24から発せられた異なる波長の光による励起時に可視光を放射することができる異なるルミネセンス材料25a~28aを含むことができる。
【0053】
ルミネセントドメイン25~28は、第1の波長の光による励起時に可視ルミネセント光を放射するように構成されたルミネセンス材料を含むルミネセントドメインの第1のグループ、および少なくとも1つのさらなる波長の光による励起時に可視ルミネセント光を放射するように構成されたルミネセンス材料を含むルミネセントドメインの少なくとも1つのさらなるグループを含むことができる。したがって、少なくとも1つの光源14を、ルミネセントドメインの1つのグループおよび少なくとも1つのさらなるグループのそれぞれのグループを励起してルミネセント光を放射させるために、第1の波長および少なくとも1つのさらなる波長の光を選択的に発するように構成することができる。
【0054】
担体パネル21を、プラスチックまたはガラスなどの比較的高い屈折率を有する光透過性材料から、平坦、湾曲、および用途に適した任意の他の形状などのさまざまな形状に形成することができる。とくには、担体パネル21は、ルミネセントドメイン25~28が放射線を充分に収集して担体パネル21内へと光を放射することができ、担体パネル21が全反射によって担体パネル21内に捕捉された光を少なくとも1つの光起電セル22へと運ぶことができるように、ルミネセントドメイン25~28を配置するための比較的大きな面積の表面を有すると好都合である。
【0055】
担体パネル21とPVセル22との間の光学的結合は、担体パネル21からPVセル22への収集されて案内された光放射の効率的な結合が存在するように設けられる。PVセル22を担体パネル21の比較的小さいエッジに配置することが有利であり、必要となるPVセルが少なくて済み、したがってルミネセント光学装置20のコストが節約される。
【0056】
エネルギ貯蔵装置23は、電池、コンデンサ、などの任意の適切な既知の装置であってよい。
【0057】
少なくとも1つの光源24を、例えば担体パネル21のエッジにおいて担体パネル21に光を結合させるように配置することができる。担体パネル21上のルミネセントドメイン25~28に含まれるルミネセンス材料25a~28aは、担体パネル21によって案内された光源24からの光を吸収し、吸収された光は、例えば蛍光により、異なる色の可視光を含む可視光として放出される。
【0058】
少なくとも1つの光源24は、軽量であり、ルミネセント光学装置10、20を照明する目的に適している任意の適切な光源を含むことができる。例えば、光源24は、各々が単一の異なる色を有し、あるいはそれぞれの選択された電流での動作時に異なる色の光を放射することができる1つ以上の発光ダイオード、すなわちLEDを備えることができる。光源を構成するLEDによる光の放射を、異なる波長の光が放射されることで、それぞれのルミネセントドメイン25~28が励起され、結果としてルミネセントドメイン25が可視ルミネセント光、とくには異なる色の光を放射することができるように、必要に応じてプログラムすることができる。
【0059】
すなわち、少なくとも1つの光源24を、第1のドメインまたは第1組のドメインを励起する第1の波長の光、第2のドメインまたは第2組のドメインを励起する第1の波長とは異なる第2の波長の光、などを放射するように制御することができる。光源を、例えば、第1および第2のドメイン、すなわち第1組および第2組のドメインを同時に励起するために、第1および第2の両方の波長を含む光を放射するようにさらに制御することができる。
【0060】
さらに、所望の照明効果を達成する目的で、LEDは、担体パネル20の異なる位置に配置されてもよい。例えば、LEDの位置を、担体パネル21におけるルミネセントドメイン25~28の配置に対応させることにより、ルミネセントドメイン25~28に含まれる異なるルミネセンス材料をそれぞれの波長の光で励起することができる。別の例として、LEDを、担体パネル21の反対向きの側面またはエッジなどのルミネセント光学装置のフレーム内に配置することにより、担体パネル21上のルミネセントドメインを均一なやり方で照明することができる。
【0061】
ルミネセンス材料を選択する際に、例えば最小のエネルギ消費に対してLEDによって放射され得る波長によってルミネセンス材料を選択することによって、エネルギ消費を考慮に入れることも可能である。
【0062】
あるいは、図3に示されるように、光源24は、担体パネル21の1つ以上のエッジを取り囲む光拡散光ファイバ32備えることができる。光拡散光ファイバ32の配置は、とりわけその相対的に細い直径ゆえに、担体パネル21の1つ以上の側面またはエッジに位置するPVセルに結合するルミネセント光の量に影響を及ぼさず、あるいは無視できる程度の影響しか及ぼさない。このように配置され、レーザ装置(図示せず)によって動作する光ファイバ32は、より均一な照明を担体パネルへともたらす。さらに、光ファイバ32の使用は、光拡散光ファイバを矩形以外のさまざまな形状の担体パネルを包むように曲げることができるという特徴に起因して、全体としてのルミネセント光学装置20の適用性も向上させる。PVセルを、例えば、光ファイバ32の反対側の位置で担体に光学的に結合させることができる。
【0063】
LEDまたは光拡散光ファイバ32の照明を制御するために、ルミネセント光学装置20は、光源24、すなわちLEDまたは光拡散光ファイバ32のレーザ装置に電気的に接続された制御ユニット29をさらに備えることができる。
【0064】
制御ユニット29を組み込むことにより、ルミネセント装置20全体の表示効果をより容易に、すなわち柔軟かつ選択的に制御することが可能になる。例えば、制御ユニット29は、必要に応じてカスタマイズまたは事前設定される異なるモード間の切り替えを行うことができ、光源24がより多様なやり方で異なる波長の光を発することを可能にすることにより、例えばカスタマイズされたより柔軟な表示効果および用途を可能にする。
【0065】
異なる波長の光を発するための制御ユニット29を使用した光源24の制御を、本明細書においてさらに詳述されるように、ルミネセント装置の周囲または環境の変化に関連して実行することができる。
【0066】
複数のルミネセントドメイン25~28に含まれるルミネセンス材料25a~28aは、これらに限られるわけではないが有機蛍光染料、量子ドット、およびリン光体を含む高蛍光インクであってよい。ルミネセント材料は、市販品であってよく、これは、装置の経済的な製造に有利である。
【0067】
ルミネセントドメイン25~28は、ルミネセントドメイン25~28に含まれるルミネセンス材料25a~28aの濃度、厚さ、または組成に関して、互いに異なっていてもよい。それぞれのルミネセントドメイン25~28内のルミネセンス材料25a~28aの濃度および/または厚さを変えることにより、例えば、放射される可視ルミネセント光の強度を変えることが可能になる。ルミネセンス材料25a~28aの濃度を変えることにより、例えば、発電効率をより高くすることも可能になる。同時に、ルミネセンス材料25a~28aの組成を変えることで、該当のルミネセントドメイン25~28が異なる励起波長に応答できるようになり、したがって異なる色の光を含む可視光を選択的に放射できるようになる。
【0068】
一例として、ルミネセントドメイン25~28を、担体パネル21の中心に向かってルミネセント材料25a~28aの「フェードアウト」が存在するように配置することができる。ここで、フェードアウトとは、例えば、担体パネル21の中央部分に位置するルミネセントドメイン25~28と比較して、PVセルが配置されている担体パネル21のエッジの近くに位置するルミネセントドメイン25~28が、より大きな被覆割合、厚さ、および/または濃度のルミネセント材料25a~28aを有することを可能にすることを指す。
【0069】
結果として、担体パネル21のエッジに近いドメイン25~28によって発せられたルミネセント光は、光の移動距離がより短いため、より容易にPVセル22に到達することができ、ルミネセント光が担体パネル21からPVセル22へと結合できず、ルミネセント材料25a~28aによって再び吸収されることで引き起こされる損失を低減することができる。ドメインのこのような構造は、ルミネセント光学装置の出力を有利に増加させる。
【0070】
ルミネセントドメイン25~28を、クラスタあるいはマトリックスまたはアレイの形態で配置することができる。一例として、マトリックスまたはアレイは、小さなピクセルからなるドメインを含むさまざまなサイズのルミネセントドメインを含むことができる。そのようなピクセルは、基本的に、ピクセルに入射する周囲光によって励起されたときに人間の目には見えないが、光源からの光によって励起されるときに見えるようになる。このような小さなピクセルを、より高い審美的要件を有する用途などに使用することができる。
【0071】
ルミネセントドメイン25~28は、表示の目的および表示される内容に基づいて、互いに離して配置しても、互いに隣接させて配置してもよい。2つのルミネセントドメイン25~28が互いに隣接させて配置される場合、2つのドメイン25~28の間の境界は、所望の表示効果を与えるために適した任意の形状をとることができる。したがって、複数のルミネセントドメイン25~28を使用することによって、複雑な画像を生成することができる。
【0072】
上述のルミネセント光学装置20は、エネルギを収集し、収集したエネルギから電気エネルギを生成し、生成した電気エネルギを使用して自身を照明し、さまざまな目的のために便利かつ柔軟にさまざまなコンテンツを表示することができるスタンドアロンの完全に一体化された装置として機能することができる。外部電源または外部接続ケーブルは不要であり、装置自体が自己完結となり、柔軟に使用することができる。
【0073】
異なるルミネセントドメイン25~28によって形成された同じパターンで、異なる画像を表示することが可能である。図4が、ルミネセントドメイン41、42を含むパターンを有するルミネセント光学装置40を概略的に示している。ルミネセントドメイン41は、第1の波長に応答して第1の色、例えば黄色の光を放射するルミネセンス材料を含み、ルミネセントドメイン42は、第2の波長に応答して第2の色、例えば赤色の光を放射するルミネセンス材料を含む。したがって、光源24を第1の波長または第2の波長の光をそれぞれ発するように制御することによって、ルミネセント光学装置40は、クエスチョンマークを有する第1の画像またはエクスクラメーションマークを有する第2の画像を表示することができる。ドメイン41および42を、例えば、異なる波長の光によって励起されたときに同じ色の光を放射するように選択してもよいことを、当業者であれば理解できるであろう。
【0074】
別の例として、図5が、ルミネセントドメイン51、52、53、および54を含むパターンを有するルミネセント光学装置50を概略的に示している。ルミネセントドメイン53および54は、異なる波長に応答するように設計されており、したがって異なる励起波長がそれぞれ使用されるとき、ルミネセント光学装置50に例えば笑顔または悲しい顔を表示させることができる。
【0075】
再び図2を参照すると、光源24の照明、すなわち光源24による異なる波長の光の放射を制御する目的で、ルミネセント光学装置20は、好都合には、1つ以上のセンサ30をさらに含むことができる。センサは、外部電源を必要とせずに、ルミネセント光学装置20によって生成された電気エネルギによって好都合に動作できるように、エネルギ貯蔵装置23に電気的に接続される。さらに、センサ30は、制御ユニット29にも電気的に接続される。
【0076】
ルミネセント光学装置20は、例えば、プラグアンドプレイモードでセンサ30を備えるように設計されてよい。センサ30を、必要に応じて交換することも可能である。
【0077】
フィードバックループを取り入れることにより、センサによって測定され、あるいはセンサによって読み取られたデータを使用して光源24の照明を変更することができ、測定値に応じた表示画像の視覚的レンダリングを可能にすることができる。光源24の照明の変更は、例えば、これらに限られるわけではないが、色の変化、または表示されたコンテンツの輝度の増減に対応することができる。
【0078】
センサ30は、動きセンサ、光学センサ、温度センサ、湿度センサ、粒子センサ、赤外線(IR)センサ、放射線センサ、およびCOセンサのうちの1つ以上を含むことができる。
【0079】
制御ユニット29の制御下で、少なくとも1つのセンサ30からの異なる読み取り値または測定データに応答して、光源24は、異なる波長の光を放射することができる。
【0080】
一例として、ルミネセント光学装置20が広告パネルとして使用され、センサ30が光学センサである場合、光源24を、制御ユニット29によって、周囲光の強度がしきい値を下回ったとき、すなわち夜になったときに、点灯するように制御することができる。
【0081】
センサ30によって測定されたデータを、他の制御動作を実行するために使用することもできる。他の例として、ルミネセント光学装置20が窓ガラスとして用いられ、センサ30が温度センサを含む場合、制御ユニット29を、気温がしきい値を下回るときに窓を閉じるアクチュエータを制御するために使用することができる。
【0082】
センサ30を備えることにより、ルミネセント光学装置20の適用性が大幅に向上し、ルミネセント光学装置20をあらゆる種類の状況および目的に使用することが可能になる。例えば、上述のルミネセント光学装置20を、サイネージ、ビルディング一体型光起電(BIPV)、広告パネル、自動車用ガラス、審美品、などのうちの少なくとも1つを動作させるように構成することができる。
【0083】
ルミネセント光学装置20は、例えば、Wi-FiまたはBluetooth(登録商標)などの任意の現時点において利用可能な伝送技術を使用して、データネットワークにおける通信または処理装置との通信が可能であることを、当業者であれば理解できるであろう。
【0084】
必要に応じ、AC-DCコンバータを使用して、電力をPVセルまたはエネルギ貯蔵装置から送電網へと戻すことができるように、電源コードが随意により設けられてもよいことを、当業者であれば理解できるであろう。これは、BIPVとして動作するルミネセント光学装置にとってとくに好都合である。
【0085】
図6を参照すると、フィルムまたは箔70に含まれるルミネセントドメイン65~68を含むルミネセント光学装置60が概略の断面図にて示されており、フィルムまたは箔70は、随意により取り外しできるやり方で、ルミネセント光学装置60の担体パネル61に取り付けられている(610)。ルミネセント光学装置60の他の構成要素は、便利のために図示されていない。
【0086】
一例として、ルミネセントドメイン66~68を含むフィルムまたは箔70を、透明な接着剤またはテープなどの粘着性の光学的結合によって担体パネル61に取り付けることができる。フィルムまたは箔70と担体パネル61との間の取り付けを、静電気を介して実現することも可能である。
【0087】
所望の画像を表示するための必須部分であるルミネセントドメイン65~68を含む分離可能かつ取り外し可能なフィルム70を有することにより、フィルムを必要に応じて変更することができ、したがって異なる要件に基づいて表示パターンまたは画像を変更することができる。これは、ある意味において、広告板を時々変更することに似ている。
【0088】
両方とも観察者に露出される2つの反対向きの表面を有する担体パネル61の場合、フィルムまたは箔28を両方の表面に取り付けることも可能である。これにより、ルミネセント光学装置60の使用におけるさらなる柔軟性が可能になる。
【0089】
図7に示される別の実施形態においては、ルミネセントドメインを含むフィルム70が、担体パネル61とさらなる担体パネル81との間に積層される。この設計では、フィルム70上のルミネセントドメインによって発せられたルミネセント光を、両方の担体パネル61、81のエッジに配置されたPVセル(図示せず)によって使用し、エネルギを生成することができる。さらに、フィルム71上のルミネセントドメインによって形成されたパターンを、担体パネル61、81の間にフィルムを積層する結果として、保護することができる。
【0090】
フィルム70上のルミネセントドメインによって形成されたパターンの寿命を、フィルム70と担体パネル61、81との間に1つ以上のUV保護箔91を取り入れ、フィルムおよびUV保護箔の両方を担体パネル61、81の間に積層することによって、向上させることができる。
【0091】
IR反射または遮音などの他の機能特性のための箔が、適切であると考えられる場合に、フィルム70上に重ねられ、担体パネル61、81の間に積層されてもよいことを、当業者であれば理解できるであろう。
【0092】
複数のルミネセントドメイン65~68を、これらに限られるわけではないがインクジェット印刷、スロットダイコーティング、およびスクリーン印刷などの堆積技術によってフィルムまたは箔70上に設けることができる。結果として、複数の色コーティングを堆積させることによって多色部分を生成し、所望の画像をもたらすことができる。
【0093】
ルミネセンス材料を含むルミネセントドメイン65~68を使用することによって形成される表示画像またはコンテンツを、取り除くことができるフィルムまたは箔70上にインクを堆積させることによって恒久的または非恒久的に形成することができ、センサ30および制御ユニット29などの電子部品の再利用を可能にしつつ、依然として上述のすべての特徴を使用し、ルミネセント光学装置上に描かれる画像を変更することができる。
【0094】
ルミネセント光学装置の柔軟性をさらに高めるために、担体パネルは機械的に柔軟であってよく、これにより、ルミネセント光学装置を湾曲した構造物上に配置または湾曲した構造物として配置することができる。
【0095】
取り外し可能なフィルム70を分離可能な断片に配置し、ロール上に設けることも好都合である。結果として、フィルム片70を、必要に応じてロールから容易に取り外し、担体パネル61に取り付けることができる。
【0096】
印刷によるパターンを有するフィルムを含むルミネセント光学装置の場合、印刷厚さは、通常は、約1マイクロメートル~約50マイクロメートルの範囲である。具体的な用途に応じて、担体パネルは、数ミリメートル~数センチメートルの範囲の厚さを有することができる。
【0097】
一例として、窓ガラスの用途において、担体パネルは、5mm~2cmの間の厚さを有することができる。
【0098】
三層ガラス構造の場合、4mmのガラスパネル、8mm~12mmのアルゴン層、別の4mmのガラスパネル、数ミリメートルの別のアルゴン層、および4mmのガラスパネルの積み重ねが存在でき、積み重ねの合計の厚さは28~36mmとなる。二重ガラスについては、24mmであることが多い。
【0099】
フィルムまたは箔に使用される材料に応じて、フィルムは、ミクロン範囲からmm範囲までの厚さを有することができる。例えば、積み重ねにおいて機能層として使用されるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムまたは箔が、多くの場合にミクロン範囲である一方で、ポリビニルアルコール(PVA)および/またはポリビニルブチラール(PVB)の接着層は、多くの場合に0.1~0.8mmである。
【0100】
例えば正方形の担体パネルのサイズは、用途に応じて、数cmから数メートルまでのいずれかであってよい。一例として、建物の窓および広告板の場合、担体パネルは、幅および長さの両方において容易に数百ミリメートルまでになり得る。
【0101】
少なくとも1つの光源を、外部電源から動作させることもでき、その場合、少なくとも1つのPVセルおよび貯蔵装置は省略されてもよい。
【0102】
本開示は、上記開示の例に限定されるものではなく、当業者であれば、独創的な技量を適用するまでもなく、添付の特許請求の範囲に開示されるとおりの本開示の範囲を超えて、変更および改良が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7