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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】被覆除去器
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/245 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
G02B6/245
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021561217
(86)(22)【出願日】2020-10-19
(86)【国際出願番号】 JP2020039266
(87)【国際公開番号】W WO2021106428
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2023-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2019213574
(32)【優先日】2019-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000110309
【氏名又は名称】住友電工オプティフロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】戸田 吉宣
(72)【発明者】
【氏名】中村 弘志
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-050320(JP,A)
【文献】実開平01-090003(JP,U)
【文献】実開昭63-057601(JP,U)
【文献】特開2011-197083(JP,A)
【文献】特開2003-270450(JP,A)
【文献】特開2018-138970(JP,A)
【文献】実開平02-003502(JP,U)
【文献】特表2009-506348(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102692676(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/245-6/255
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスファイバと前記ガラスファイバの外周を覆う樹脂被覆とを有する第1及び第2の光ファイバ心線から、前記第1及び第2の光ファイバ心線の先端部に位置する前記樹脂被覆の部分を除去する被覆除去器であって、
所定方向における一方側から延在する前記第1の光ファイバ心線の前記先端部に位置する前記樹脂被覆の部分、又は前記所定方向における他方側から延在する前記第2の光ファイバ心線の前記先端部に位置する前記樹脂被覆の部分を保持する第1保持部と、
前記第1保持部に対して前記所定方向における一方側に配置され、前記第1の光ファイバ心線の前記先端部に隣接する基端部を保持する第2保持部と、
前記第1保持部に対して前記所定方向における他方側に配置され、前記第2の光ファイバ心線の前記先端部に隣接する基端部を保持する第3保持部と、
前記第1保持部、前記第2保持部及び前記第3保持部に対して前記所定方向と交差する方向に設けられ、前記第1保持部、前記第2保持部及び前記第3保持部を支持する基台部と、
を備え、
前記第1保持部は、前記第1及び第2の光ファイバ心線の前記先端部に位置する前記樹脂被覆の部分を加熱するヒータと、前記第1の光ファイバ心線の前記先端部と前記基端部との境界に位置する前記樹脂被覆の部分に切り込みを入れる第1の刃と、前記第2の光ファイバ心線の前記先端部と前記基端部との境界に位置する前記樹脂被覆の部分に切り込みを入れる第2の刃とを有し、前記基台部に対して相対的に、前記所定方向にスライド可能に設けられ、
前記第2保持部及び前記第3保持部は、前記基台部に対して相対的に固定されている、被覆除去器。
【請求項2】
前記ヒータは、前記第1の光ファイバ心線の前記先端部に位置する前記樹脂被覆の部分を加熱する第1の加熱領域と、前記第1の加熱領域に対して前記所定方向に並んで配置され、前記第2の光ファイバ心線の前記先端部に位置する前記樹脂被覆の部分を加熱する第2の加熱領域とを含む、請求項に記載の被覆除去器。
【請求項3】
前記ヒータは、前記第1及び第2の光ファイバ心線の前記先端部に位置する前記樹脂被覆の部分を加熱する加熱領域を含む、請求項に記載の被覆除去器。
【請求項4】
前記第2保持部は、前記第1の光ファイバ心線の有無を検出する第1の検出部を有し、
前記第3保持部は、前記第2の光ファイバ心線の有無を検出する第2の検出部を有し、
前記被覆除去器は、前記第1保持部が前記第2保持部寄りに位置することを検出する第1のセンサと、前記第1保持部が前記第3保持部寄りに位置することを検出する第2のセンサとを更に備える、請求項から請求項のいずれか1項に記載の被覆除去器。
【請求項5】
前記第1保持部は、前記第1の光ファイバ心線又は前記第2の光ファイバ心線の前記先端部を載置する第1基部と、前記第1基部に対して開閉自在に設けられた第1蓋部と、を有し、前記第1基部と前記第1蓋部との間に前記先端部を挟み込むことにより前記先端部を保持し、
前記第2保持部は、前記第1の光ファイバ心線の前記基端部を載置する第2基部と、前記第2基部に対して開閉自在に設けられた第2蓋部と、を有し、前記第2基部と前記第2蓋部との間に前記第1の光ファイバ心線の前記基端部を挟み込むことにより前記第1の光ファイバ心線の前記基端部を保持し、
前記第3保持部は、前記第2の光ファイバ心線の前記基端部を載置する第3基部と、前記第3基部に対して開閉自在に設けられた第3蓋部と、を有し、前記第3基部と前記第3蓋部との間に前記第2の光ファイバ心線の前記基端部を挟み込むことにより前記第2の光ファイバ心線の前記基端部を保持する、請求項から請求項のいずれか1項に記載の被覆除去器。
【請求項6】
前記第1保持部、前記第2保持部、及び前記第3保持部を前記所定方向に沿って貫く回動可能な軸と、
前記軸の回動動作を前記第1保持部の前記第1蓋部の開閉動作に変換する機構と、
前記軸の回動動作を前記第2保持部の前記第2蓋部の開閉動作に変換する機構と、
前記軸の回動動作を前記第3保持部の前記第3蓋部の開閉動作に変換する機構と、
を更に備える、請求項に記載の被覆除去器。
【請求項7】
前記ヒータは、前記所定方向において前記第1の刃と前記第2の刃との間に設けられている、請求項から請求項のいずれか1項に記載の被覆除去器。
【請求項8】
前記基台部は、前記所定方向に沿って延在するボールねじを有し、
前記第1保持部は、前記ボールねじと螺合する部分を有し、前記ボールねじの回転に応じてスライドする、請求項から請求項のいずれか1項に記載の被覆除去器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被覆除去器に関する。本出願は、2019年11月26日出願の日本出願第2019-213574号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被覆除去器が開示されている。この被覆除去器は、本体部と、光ファイバホルダ保持部とを備える。本体部は、光ファイバ載置部及び蓋部を有する。光ファイバ載置部には、ガラスファイバとガラスファイバを被覆する被覆部とを有する光ファイバ心線が載置される。光ファイバ載置部は、被覆部を切断する第1切断刃を有する。蓋部は、光ファイバ載置部に対して開閉可能に設けられている。蓋部は、第2切断刃を有する。蓋部が光ファイバ載置部に対して閉められたとき、第2切断刃は第1切断刃と対向する。光ファイバホルダ保持部は、光ファイバ心線を保持する光ファイバホルダを保持する。光ファイバホルダ保持部は、本体部の一端側に連結され、本体部に対して近接する方向及び離間する方向にスライド自在に設けられている。
【0003】
特許文献2には、被覆除去装置が開示されている。この被覆除去装置は、本体と、保持部と、スライド部とを備える。本体は、被覆除去用の刃を有する。保持部は、光ファイバを保持する。スライド部は、本体と保持部とを近接及び離間を可能に連結する。被覆除去装置は、刃によって光ファイバの被覆に切り込みを入れた後、本体と保持部とを離間させて、光ファイバの被覆を除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-184647号公報
【文献】特開2018-151433号公報
【発明の概要】
【0005】
本開示の一形態に係る被覆除去器は、ガラスファイバとガラスファイバの外周を覆う樹脂被覆とを有する光ファイバ心線から、その光ファイバ心線の先端部に位置する樹脂被覆の部分を除去する。被覆除去器は、第1保持部と、第2保持部と、基台部と、を備える。第1保持部は、先端部に位置する樹脂被覆の部分を保持する。第2保持部は、第1保持部に対して光ファイバ心線の延在方向に配置され、光ファイバ心線の先端部に隣接する基端部を保持する。基台部は、第1保持部及び第2保持部に対して光ファイバ心線の延在方向と交差する方向に設けられる。基台部は、第1保持部及び第2保持部を支持する。第1保持部は、先端部に位置する樹脂被覆の部分を加熱するヒータと、先端部と基端部との境界に位置する樹脂被覆の部分に切り込みを入れる刃とを有する。第1保持部は、基台部に対して相対的に、光ファイバ心線の延在方向にスライド可能に設けられる。第2保持部は、基台部に対して相対的に固定されている。
【0006】
本開示の別の形態に係る被覆除去器は、ガラスファイバとガラスファイバの外周を覆う樹脂被覆とを有する第1及び第2の光ファイバ心線から、第1及び第2の光ファイバ心線の先端部に位置する樹脂被覆の部分を除去する。被覆除去器は、第1保持部と、第2保持部と、第3保持部と、基台部と、を備える。第1保持部は、所定方向における一方側から延在する第1の光ファイバ心線の先端部に位置する樹脂被覆の部分、又は所定方向における他方側から延在する第2の光ファイバ心線の先端部に位置する樹脂被覆の部分を保持する。第2保持部は、第1保持部に対して所定方向における一方側に配置される。第2保持部は、第1の光ファイバ心線の先端部に隣接する基端部を保持する。第3保持部は、第1保持部に対して所定方向における他方側に配置される。第3保持部は、第2の光ファイバ心線の先端部に隣接する基端部を保持する。基台部は、第1保持部、第2保持部及び第3保持部に対して所定方向と交差する方向に設けられる。基台部は、第1保持部、第2保持部及び第3保持部を支持する。第1保持部は、ヒータと、第1の刃と、第2の刃とを有する。ヒータは、第1及び第2の光ファイバ心線の先端部に位置する樹脂被覆の部分を加熱する。第1の刃は、第1の光ファイバ心線の先端部と基端部との境界に位置する樹脂被覆の部分に切り込みを入れる。第2の刃は、第2の光ファイバ心線の先端部と基端部との境界に位置する樹脂被覆の部分に切り込みを入れる。第1保持部は、基台部に対して相対的に、所定方向にスライド可能に設けられる。第2保持部及び第3保持部は、基台部に対して相対的に固定されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一実施形態に係る被覆除去器の外観を示す斜視図であって、被覆除去器の蓋部が閉じている状態を示す。
図2図2は、一実施形態に係る被覆除去器の外観を示す斜視図であって、被覆除去器の蓋部が開いている状態を示す。
図3図3は、光ファイバ心線の側面図である。
図4図4は、図3のIV-IV線に沿った断面図であって、光ファイバ心線の中心軸線に垂直な断面を示す。
図5図5は、図1及び図2に示されたカバーを外した様子を示す斜視図である。
図6図6は、一変形例に係る被覆除去器の外観を示す斜視図であって、蓋部が開いている状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示が解決しようとする課題]
光ファイバ心線同士の融着接続を行う際には、まず接続対象である各光ファイバ心線の先端部の樹脂被覆を除去する。そして、光ファイバ心線の先端同士を突き合わせ、放電による融着を行う。融着後、樹脂被覆が除去された部分を樹脂チューブにより被覆する。被覆除去器は、各光ファイバ心線の先端部の樹脂被覆を除去する際に用いられる。
【0009】
一般的な被覆除去器は、光ファイバ心線の先端部を保持する先端保持部と、光ファイバ心線の基端部を保持する基端保持部とが別体として構成されている。先端保持部において樹脂被覆に切り込みを入れるとともに樹脂被覆を加熱する。その後、基端保持部を先端保持部から離間させることによって先端部の樹脂被覆を光ファイバ心線から引き抜く。しかしながら、基端保持部を先端保持部から離間させると、光ファイバ心線において基端保持部に保持された基端部が動く。従って、光ファイバ心線の作業余長を長くする必要があり、作業が煩雑になり易い。
【0010】
[本開示の効果]
本開示によれば、基端保持部を移動させずに済み、光ファイバ心線の作業余長を短くできる被覆除去器を提供することが可能となる。
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態を列記して説明する。本開示の一形態に係る被覆除去器は、ガラスファイバとガラスファイバの外周を覆う樹脂被覆とを有する光ファイバ心線から、その光ファイバ心線の先端部に位置する樹脂被覆の部分を除去する。被覆除去器は、第1保持部と、第2保持部と、基台部と、を備える。第1保持部は、先端部に位置する樹脂被覆の部分を保持する。第2保持部は、第1保持部に対して光ファイバ心線の延在方向に配置され、光ファイバ心線の先端部に隣接する基端部を保持する。基台部は、第1保持部及び第2保持部に対して光ファイバ心線の延在方向と交差する方向に設けられる。基台部は、第1保持部及び第2保持部を支持する。第1保持部は、先端部に位置する樹脂被覆の部分を加熱するヒータと、先端部と基端部との境界に位置する樹脂被覆の部分に切り込みを入れる刃とを有する。第1保持部は、基台部に対して相対的に、光ファイバ心線の延在方向にスライド可能に設けられる。第2保持部は、基台部に対して相対的に固定されている。
【0012】
この被覆除去器を使用する際には、まず先端保持部としての第1保持部をスライドさせて基端保持部としての第2保持部に近接させる。その状態で、光ファイバ心線を第1保持部及び第2保持部により保持させる。そして、光ファイバ心線の先端部に位置する樹脂被覆の部分をヒータにより加熱する。その後、第1保持部をスライドさせて第2保持部から離間させる。このとき、樹脂被覆は、刃による切り込みを有し、且つ加熱により軟化しているので、第1保持部のスライドに応じて光ファイバ心線から抜き取られ、光ファイバ心線から除去される。その後、第1保持部及び第2保持部による光ファイバ心線の保持を解除する。
【0013】
この被覆除去器では、光ファイバ心線の基端部を保持する第2保持部を基台部に対して相対的に固定し、光ファイバ心線の先端部を保持する第1保持部を基台部に対して相対的にスライドさせる。従って、基端保持部である第2保持部を移動させずに済み、光ファイバ心線において第2保持部に保持された基端部は動かない。従って、光ファイバ心線の作業余長を短くすることができ、作業を容易にできる。
【0014】
上記の被覆除去器において、第1保持部及び第2保持部は、基部と蓋部とを有してもよい。基部は、光ファイバ心線を載置する。蓋部は、基部に対して開閉自在に設けられている。第1保持部及び第2保持部は、基部と蓋部との間に光ファイバ心線を挟み込むことにより、光ファイバ心線を保持する。
【0015】
上記の被覆除去器は、回動可能な軸と、第1機構と、第2機構とを更に備えてもよい。軸は、第1保持部及び第2保持部を上記延在方向に沿って貫く。第1機構は、軸の回動動作を第1保持部の蓋部の開閉動作に変換する。第2機構は、軸の回動動作を第2保持部の蓋部の開閉動作に変換する。
【0016】
上記の被覆除去器において、基台部は、上記延在方向に沿って延在するボールねじを有し、第1保持部は、ボールねじと螺合する部分を有し、ボールねじの回転に応じてスライドしてもよい。
【0017】
本開示の別の形態に係る被覆除去器は、ガラスファイバとガラスファイバの外周を覆う樹脂被覆とを有する第1及び第2の光ファイバ心線から、第1及び第2の光ファイバ心線の先端部に位置する樹脂被覆の部分を除去する。被覆除去器は、第1保持部と、第2保持部と、第3保持部と、基台部と、を備える。第1保持部は、所定方向における一方側から延在する第1の光ファイバ心線の先端部に位置する樹脂被覆の部分、又は所定方向における他方側から延在する第2の光ファイバ心線の先端部に位置する樹脂被覆の部分を保持する。第2保持部は、第1保持部に対して所定方向における一方側に配置される。第2保持部は、第1の光ファイバ心線の先端部に隣接する基端部を保持する。第3保持部は、第1保持部に対して所定方向における他方側に配置される。第3保持部は、第2の光ファイバ心線の先端部に隣接する基端部を保持する。基台部は、第1保持部、第2保持部及び第3保持部に対して所定方向と交差する方向に設けられる。基台部は、第1保持部、第2保持部及び第3保持部を支持する。第1保持部は、ヒータと、第1の刃と、第2の刃とを有する。ヒータは、第1及び第2の光ファイバ心線の先端部に位置する樹脂被覆の部分を加熱する。第1の刃は、第1の光ファイバ心線の先端部と基端部との境界に位置する樹脂被覆の部分に切り込みを入れる。第2の刃は、第2の光ファイバ心線の先端部と基端部との境界に位置する樹脂被覆の部分に切り込みを入れる。第1保持部は、基台部に対して相対的に、所定方向にスライド可能に設けられる。第2保持部及び第3保持部は、基台部に対して相対的に固定されている。
【0018】
所定方向の一方側から延在する第1の光ファイバ心線の被覆を除去する場合においては、まず先端保持部としての第1保持部をスライドさせて基端保持部としての第2保持部に近接させる。その状態で、第1の光ファイバ心線を第1保持部及び第2保持部により保持させる。そして、第1の光ファイバ心線の先端部に位置する樹脂被覆の部分をヒータにより加熱する。その後、第1保持部をスライドさせて第2保持部から離間させる。言い換えると、第1保持部を第3保持部に近づける。このとき、樹脂被覆は、刃による切り込みを有し、且つ加熱により軟化しているので、第1保持部のスライドに応じて第1の光ファイバ心線から抜き取られ、第1の光ファイバ心線から除去される。その後、第1保持部及び第2保持部による第1の光ファイバ心線の保持を解除する。所定方向の他方側から延在する第2の光ファイバ心線の被覆を除去する場合においては、まず先端保持部としての第1保持部をスライドさせて基端保持部としての第3保持部に近接させる。その状態で、第2の光ファイバ心線を第1保持部及び第3保持部により保持させる。そして、第2の光ファイバ心線の先端部に位置する樹脂被覆の部分をヒータにより加熱する。その後、第1保持部をスライドさせて第3保持部から離間させる。言い換えると、第1保持部を第2保持部に近づける。このとき、樹脂被覆は、刃による切り込みを有し、且つ加熱により軟化しているので、第1保持部のスライドに応じて第2の光ファイバ心線から抜き取られ、第2の光ファイバ心線から除去される。その後、第1保持部及び第3保持部による第2の光ファイバ心線の保持を解除する。
【0019】
この被覆除去器では、第1及び第2の光ファイバ心線の基端部をそれぞれ保持する第2保持部及び第3保持部を基台部に対して相対的に固定する。そして、第1及び第2の光ファイバ心線の先端部を保持する第1保持部を基台部に対して相対的にスライドさせる。従って、基端保持部である第2保持部及び第3保持部を移動させずに済み、第1及び第2の光ファイバ心線において第2保持部及び第3保持部に保持された基端部は動かない。従って、第1及び第2の光ファイバ心線の作業余長を短くすることができ、作業を容易にできる。更に、この被覆除去器は、所定方向における一方側から延在する第1の光ファイバ心線と、所定方向における他方側から延在する第2の光ファイバ心線との双方において、被覆除去を可能とする。従って、融着対象である一対の光ファイバ心線それぞれの向きを変えずに被覆除去作業を行うことができ、融着に係る一連の作業を容易にすることができる。加えて、この被覆除去器では、第2保持部及び第3保持部を基台部に対して相対的に固定し、第2保持部と第3保持部との間に位置する第1保持部をスライドさせる。従って、第1保持部を固定し、第2保持部と第3保持部をスライドさせる場合と比較して、スライド動作に必要な領域を小さくできる。故に、被覆除去器を小型に構成できる。
【0020】
上記の被覆除去器において、ヒータは、第1の加熱領域と第2の加熱領域とを含んでもよい。第1の加熱領域は、第1の光ファイバ心線の先端部に位置する樹脂被覆の部分を加熱する。第2の加熱領域は、第1の加熱領域に対して所定方向に並んで配置され、第2の光ファイバ心線の先端部に位置する樹脂被覆の部分を加熱する。このように、所定方向における一方側から延在する第1の光ファイバ心線と、所定方向における他方側から延在する第2の光ファイバ心線とに対して別個の加熱領域を用いても、上記の効果を得ることができる。
【0021】
上記の被覆除去器において、ヒータは、第1及び第2の光ファイバ心線の先端部に位置する樹脂被覆の部分を加熱する加熱領域を含んでもよい。このように、所定方向における一方側から延在する第1の光ファイバ心線に用いられる加熱領域を、所定方向における他方側から延在する第2の光ファイバ心線に用いられる加熱領域と共通としてもよい。これにより、加熱領域を小さくして、被覆除去器の小型化が可能になる。
【0022】
上記の被覆除去器において、第2保持部は、第1の光ファイバ心線の有無を検出する第1の検出部を有し、第3保持部は、第2の光ファイバ心線の有無を検出する第2の検出部を有してもよい。加えて、被覆除去器は、第1のセンサと第2のセンサとを更に備えてもよい。第1のセンサは、第1保持部が第2保持部寄りに位置することを検出する。第2のセンサは、第1保持部が第3保持部寄りに位置することを検出する。これらの検出部及びセンサによれば、第1保持部と第2保持部及び第3保持部との相対位置を被覆除去器が認識できる。例えば、第2保持部が光ファイバ心線を保持しており第1保持部が第3保持部寄りに位置するときには、被覆除去器は被覆除去のための一連の動作を開始すべきでない。第3保持部が光ファイバ心線を保持しており第1保持部が第2保持部寄りに位置するときにも、被覆除去器は被覆除去のための一連の動作を開始すべきでない。この被覆除去器によれば、例えばそれらの状態において作業者が誤って被覆除去器を作動させたとしても、被覆除去のための一連の動作を自動で開始しないといった、セーフティ機能を容易に実現することができる。
【0023】
上記の被覆除去器において、第1保持部は、第1の光ファイバ心線又は第2の光ファイバ心線の先端部を載置する第1基部と、第1基部に対して開閉自在に設けられた第1蓋部と、を有してもよい。第1保持部は、第1基部と第1蓋部との間に先端部を挟み込むことにより、先端部を保持する。第2保持部は、第1の光ファイバ心線の基端部を載置する第2基部と、第2基部に対して開閉自在に設けられた第2蓋部と、を有してもよい。第2保持部は、第2基部と第2蓋部との間に第1の光ファイバ心線の基端部を挟み込むことにより、第1の光ファイバ心線の基端部を保持する。第3保持部は、第2の光ファイバ心線の基端部を載置する第3基部と、第3基部に対して開閉自在に設けられた第3蓋部と、を有してもよい。第3保持部は、第3基部と第3蓋部との間に第2の光ファイバ心線の基端部を挟み込むことにより、第2の光ファイバ心線の基端部を保持する。
【0024】
上記の被覆除去器は、回動可能な軸と、第1機構と、第2機構と、第3機構と、を更に備えてもよい。軸は、第1保持部、第2保持部、及び第3保持部を所定方向に沿って貫く。第1機構は、軸の回動動作を第1保持部の蓋部の開閉動作に変換する。第2機構は、軸の回動動作を第2保持部の蓋部の開閉動作に変換する。第3機構は、軸の回動動作を第3保持部の蓋部の開閉動作に変換する。
【0025】
上記の被覆除去器において、ヒータは、所定方向において第1の刃と第2の刃との間に設けられてもよい。
【0026】
上記の被覆除去器において、基台部は、所定方向に沿って延在するボールねじを有し、第1保持部は、ボールねじと螺合する部分を有し、ボールねじの回転に応じてスライドしてもよい。
【0027】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の被覆除去器の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0028】
図1及び図2は、本開示の一実施形態に係る被覆除去器(リムーバ)1の外観を示す斜視図である。図1は、被覆除去器1の蓋部22,32,42が閉じている状態を示す。図2は、被覆除去器1の蓋部22,32,42が開いている状態を示す。図1及び図2に示すように、被覆除去器1は、先端保持部2、基端保持部3、基端保持部4、及び基台部5を備える。先端保持部2は、本開示における第1保持部の例である。基端保持部3は、本開示における第2保持部の例である。基端保持部4は、本開示における第3保持部の例である。基台部5は、先端保持部2及び基端保持部3,4に対して、光ファイバ心線の延在方向である所定方向Aと交差する方向に設けられる。基台部5は、被覆除去器1を設置する作業台に接する。基台部5は、先端保持部2及び基端保持部3,4を支持する土台として機能する。基台部5は、所定方向Aに沿って延在する。
【0029】
被覆除去対象である光ファイバ心線について説明する。図3は、光ファイバ心線100の側面図である。図4は、図3のIV-IV線に沿った断面図である。図4は、光ファイバ心線100の中心軸線に垂直な断面を示す。光ファイバ心線100は、ガラスファイバ101と、ガラスファイバ101を覆う樹脂被覆102とを有する。ガラスファイバ101の断面は円形状である。ガラスファイバ101は、光ファイバ心線100の中心軸線に沿って延在する。ガラスファイバ101の直径D1は、例えば0.125mmである。樹脂被覆102の直径D2は、例えば0.25mmである。光ファイバ心線100は、先端部103と、基端部104とを有する。先端部103は、先端面105を含み、或る一定の長さを有する。基端部104は、先端部103に対して光ファイバ心線100の基端側に位置し、先端部103に隣接する。図1及び図2に示す被覆除去器1は、光ファイバ心線100の先端部103に位置する樹脂被覆102の部分を光ファイバ心線100から除去する装置である。
【0030】
再び図1及び図2を参照する。先端保持部2は、基部21と、蓋部22とを有する。蓋部22は、基部21に対してヒンジ26により開閉自在に設けられている。軸61は、回動可能に設けられ、所定方向Aに沿って延び、先端保持部2及び基端保持部3,4を所定方向Aに沿って貫く。蓋部22の開閉動作は、軸61の回動動作を蓋部22の開閉動作に変換するリンク機構を介して行われる。基部21は、光ファイバ心線100の先端部103を載置する面21aを有する。蓋部22は、面21aと対向する面22aを有する。先端保持部2は、所定方向Aにおける一方側、例えば基端保持部3側から光ファイバ心線100が延在する場合、及び所定方向Aにおける他方側、例えば基端保持部4側から光ファイバ心線100が延在する場合の双方において、面21aと面22aとの間に光ファイバ心線100の先端部103を挟み込む。先端保持部2は、このように面21aと面22aとの間に先端部103を挟み込むことにより、先端部103の樹脂被覆102を保持する。
【0031】
先端保持部2は、一対の刃24と、一対の刃25とを有する。一対の刃24は、本開示における第1の刃の例である。一対の刃25は、本開示における第2の刃の例である。一対の刃24は、所定方向Aにおける先端保持部2の一端寄りに配置されている。一対の刃24は、所定方向Aにおける一方側、例えば基端保持部3側から光ファイバ心線100が延在する場合に、先端部103と基端部104との境界に位置する樹脂被覆102の部分に切り込みを入れる。一対の刃25(第2の刃)は、所定方向Aにおける先端保持部2の他端寄りに配置されている。一対の刃25は、所定方向Aにおける他方側、例えば基端保持部4側から光ファイバ心線100が延在する場合に、先端部103と基端部104との境界に位置する樹脂被覆102の部分に切り込みを入れる。一対の刃24は、下刃24aと上刃24bとを有する。下刃24aは、基部21に取り付けられている。上刃24bは、蓋部22に取り付けられ、蓋部22が閉じられたときに下刃24aと対向する。下刃24a及び上刃24bは、所定方向Aを厚み方向とし、所定方向Aに垂直な平面に沿って延在する。下刃24a及び上刃24bは、それらの間に光ファイバ心線100を挟み込むことにより樹脂被覆102に切り込みを入れる。一対の刃25は、下刃25aと上刃25bとを有する。下刃25aは、基部21に取り付けられている。上刃25bは、蓋部22に取り付けられ、蓋部22が閉じられたときに下刃25aと対向する。下刃25a及び上刃25bは、所定方向Aを厚み方向とし、所定方向Aに垂直な平面に沿って延在する。下刃25a及び上刃25bは、それらの間に光ファイバ心線100を挟み込むことにより樹脂被覆102に切り込みを入れる。下刃24a,25a及び上刃24b,25bは、例えば金属製である。蓋部22が閉じられたときの下刃24aと上刃24bとの間隔、及び蓋部22が閉じられたときの下刃25aと上刃25bとの間隔は、下刃24a,25a及び上刃24b,25bが、樹脂被覆102に切り込みを入れることができ、ガラスファイバ101に当たらないように設定されている。
【0032】
先端保持部2は、樹脂被覆102を加熱するヒータ23を更に有する。ヒータ23は、例えば電熱線を含んで構成されている。ヒータ23は、基部21の面21aにおいて下刃24aと下刃25aとの間に設けられている。本実施形態のヒータ23は、加熱領域23aと、加熱領域23bとを含む。加熱領域23aは、本開示における第1の加熱領域の例である。加熱領域23bは、本開示における第2の加熱領域の例である。加熱領域23a,23bは、所定方向Aに並んで配置されている。加熱領域23aは下刃24aと加熱領域23bとの間に位置する。加熱領域23bは下刃25aと加熱領域23aとの間に位置する。加熱領域23aは、所定方向Aにおける一方側、例えば基端保持部3側から光ファイバ心線100が延在する場合に、樹脂被覆102を加熱する。加熱領域23bは、所定方向Aにおける他方側、例えば基端保持部4側から光ファイバ心線100が延在する場合に、樹脂被覆102を加熱する。ヒータ23への電力の供給は、ヒータ通電スイッチにより制御されている。ヒータ通電スイッチは、蓋部22が基部21に対して閉じられているときにオンとなり、蓋部22が基部21に対して開いているときにオフとなる。つまり、ヒータ23は、基部21に対して蓋部22が閉じられると発熱する。
【0033】
先端保持部2は、基台部5に対して相対的に、所定方向Aにスライド可能に設けられている。図5は、図1及び図2に示されたカバー51を外した様子を示す斜視図である。図5に示すように、基台部5は、所定方向Aに沿って延在するボールねじ52を有する。先端保持部2は、ボールねじ52と螺合する移動板27を有する。移動板27は、ボールねじ52の回転に応じて、ボールねじ52に沿って移動する。すなわち、ボールねじ52が或る方向に回転すると、先端保持部2は基端保持部3に近接する向き、言い換えると基端保持部4から離間する向きにスライドする。ボールねじ52がその方向とは逆の方向に回転すると、先端保持部2は基端保持部4に近接する向き、言い換えると基端保持部3から離間する向きにスライドする。ボールねじ52の動作は、被覆除去器1に内蔵されたコンピュータによって制御される。
【0034】
基端保持部3は、基台部5に対して相対的に固定されている。基端保持部3は、先端保持部2に対して所定方向Aにおける一方側に並んで配置されている。言い換えると、基端保持部3は、所定方向Aにおける一方側から光ファイバ心線100が延在する場合に、先端保持部2に対して光ファイバ心線100の延在方向における基端側に並んで配置されている。基端保持部3は、その場合に、光ファイバ心線100の先端部103より基端側の部分、すなわち基端部104の一部を保持する。より詳細には、基端保持部3は、光ファイバ心線100の基端部104の一部を保持する光ファイバホルダを保持する。基端保持部3は、光ファイバホルダが載置されるホルダ搭載部31と、蓋部32とを有する。蓋部32は、ホルダ搭載部31に対してヒンジ35により開閉自在に設けられている。蓋部32の開閉動作は、軸61の回動動作を蓋部32の開閉動作に変換するリンク機構を介して行われる。
【0035】
光ファイバホルダの下面には磁石が取り付けられている。ホルダ搭載部31の蓋部32と対向する面には、光ファイバホルダの磁石と結合する金属板33が設けられている。これにより、ホルダ搭載部31への光ファイバホルダの載置作業を容易化できる。蓋部32のホルダ搭載部31と対向する面には、ゴム板34が取り付けられている。基端保持部3は、ホルダ搭載部31に載置された光ファイバホルダを、ホルダ搭載部31の金属板33と蓋部32のゴム板34とにより挟んで保持する。光ファイバホルダの光ファイバ心線100に対する装着位置を調整することにより、樹脂被覆102の除去される部分の長さを調整することができる。
【0036】
基端保持部4は、基台部5に対して相対的に固定されている。基端保持部4は、先端保持部2に対して所定方向Aにおける他方側に並んで配置されている。言い換えると、基端保持部4は、所定方向Aにおける他方側から光ファイバ心線100が延在する場合に、先端保持部2に対して光ファイバ心線100の延在方向における基端側に並んで配置されている。基端保持部4は、その場合に、光ファイバ心線100の先端部103より基端側の部分、すなわち基端部104の一部を保持する。より詳細には、基端保持部4は、光ファイバ心線100の基端部104の一部を保持する光ファイバホルダを保持する。基端保持部4は、光ファイバホルダが載置されるホルダ搭載部41と、蓋部42とを有する。蓋部42は、ホルダ搭載部41に対してヒンジ45により開閉自在に設けられている。蓋部42の開閉動作は、軸61の回動動作を蓋部42の開閉動作に変換するリンク機構を介して行われる。
【0037】
ホルダ搭載部41の蓋部42と対向する面には、光ファイバホルダの磁石と結合する金属板43が設けられている。これにより、ホルダ搭載部41への光ファイバホルダの載置作業を容易化できる。蓋部42のホルダ搭載部41と対向する面には、ゴム板44が取り付けられている。基端保持部4は、ホルダ搭載部41に載置された光ファイバホルダを、ホルダ搭載部41の金属板43と蓋部42のゴム板44とにより挟んで保持する。
【0038】
基端保持部3及び基端保持部4は、光ファイバ心線100の有無を検出する検出部をそれぞれ有する。具体的には、ホルダ搭載部31,41において、金属板33,43の裏側にスイッチ64,65が設けられている。スイッチ64は、本開示における第1の検出部の例である。スイッチ65は、本開示における第2の検出部の例である。光ファイバホルダがホルダ搭載部31,41の何れかに載置されると、載置された方のホルダ搭載部のスイッチがオン状態となり、光ファイバホルダがホルダ搭載部に載置されたこと、すなわちホルダ搭載部上に光ファイバ心線100が存在することを検知する。
【0039】
被覆除去器1は、センサ54と、センサ55とを更に備える。センサ54は、本開示における第1のセンサの例である。センサ55は、本開示における第2のセンサの例である。センサ54は、基台部5において基端保持部3寄りの位置に設けられている。センサ54は、移動板27がセンサ54に当接すると、オン状態となり、先端保持部2が基端保持部3寄りに位置することを検出する。また、センサ55は、基台部5において基端保持部4寄りの位置に設けられている。センサ55は、移動板27がセンサ55に当接すると、オン状態となり、先端保持部2が基端保持部4寄りに位置することを検出する。
【0040】
被覆除去器1は、電源スイッチ11、モードスイッチ12、先端保持部移動スイッチ17、及び除去開始スイッチ18を更に備える。被覆除去器1は、加熱温度インジケータ13、加熱時間インジケータ14、モードインジケータ15、及び速度インジケータ16を更に備える。電源スイッチ11は、被覆除去器1の電源のオン/オフを作業者が行うためのスイッチである。モードスイッチ12は、例えばオートモード又はセミオートモードなどの被覆除去器1の動作モードを作業者が切り換えるためのスイッチである。先端保持部移動スイッチ17は、先端保持部2を、基端保持部3側から基端保持部4側へ、またはその逆方向に単に移動させるためのスイッチである。除去開始スイッチ18は、被覆除去を開始するためのスイッチである。動作モードがオートモードに設定されている場合、作業者が除去開始スイッチ18を押すと、蓋部22,32,42の閉動作、ヒータ23による加熱、及び先端保持部2のスライドといった一連の動作を自動的に行う。動作モードがセミオートモードに設定されている場合、作業者が除去開始スイッチ18を押すと、蓋部22,32,42の閉動作以外の動作、すなわちヒータ23による加熱及び先端保持部2のスライドを自動的に行う。
【0041】
加熱温度インジケータ13は、ヒータ23の現在の加熱温度設定値を示す。ヒータ23の加熱温度設定値は、加熱温度インジケータ13内に設けられたスイッチによって段階的に変更可能である。加熱時間インジケータ14は、ヒータ23の現在の加熱時間設定値を示す。ヒータ23の加熱時間設定値は、加熱時間インジケータ14内に設けられたスイッチによって段階的に変更可能である。モードインジケータ15は、現在の動作モードを示す。速度インジケータ16は、先端保持部2の現在の移動速度設定値を示す。先端保持部2の移動速度設定値は、速度インジケータ16内に設けられたスイッチによって段階的に変更可能である。
【0042】
以上の構成を備える被覆除去器1の動作について説明する。まず、作業者が先端保持部移動スイッチ17を操作し、先端保持部2をスライドさせて基端保持部3に近接させる。作業者が光ファイバ心線100(第1の光ファイバ心線)の基端部104に光ファイバホルダをセットするとともに、蓋部22,32,42を開く。作業者が光ファイバホルダを基端保持部3のホルダ搭載部31に載置するとともに、光ファイバ心線100の先端部103を先端保持部2の基部21に載置する。この場合、所定方向Aにおける一方側から光ファイバ心線100が延在する。作業者が除去開始スイッチ18を操作すると、蓋部22,32,42が閉じ、光ファイバ心線100が先端保持部2及び基端保持部3により保持される。そして、光ファイバ心線100の先端部103に位置する樹脂被覆102の部分をヒータ23の加熱領域23aにより加熱する。その後、先端保持部2をスライドさせて基端保持部3から離間させる。言い換えると、先端保持部2を基端保持部4に近づける。このとき、樹脂被覆102は、刃24による切り込みを有し、且つ加熱により軟化している。従って、光ファイバ心線100の先端部103に位置する樹脂被覆102の部分は、先端保持部2のスライドに応じて光ファイバ心線100から抜き取られ、光ファイバ心線100から除去される。その後、蓋部22,32,42が再び開き、先端保持部2及び基端保持部3による光ファイバ心線100の保持が解除される。こうして、光ファイバ心線100の被覆除去が完了する。
【0043】
次に、作業者が別の光ファイバ心線100(第2の光ファイバ心線)の基端部104に光ファイバホルダをセットする。作業者が光ファイバホルダを基端保持部4のホルダ搭載部41に載置するとともに、光ファイバ心線100の先端部103を先端保持部2の基部21に載置する。この場合、所定方向Aにおける他方側から光ファイバ心線100が延在する。作業者が除去開始スイッチ18を操作すると、蓋部22,32,42が閉じ、光ファイバ心線100が先端保持部2及び基端保持部4により保持される。そして、光ファイバ心線100の先端部103に位置する樹脂被覆102の部分をヒータ23の加熱領域23bにより加熱する。その後、先端保持部2をスライドさせて基端保持部4から離間させる。言い換えると、先端保持部2を基端保持部3に近づける。このとき、樹脂被覆102は、刃25による切り込みを有し、且つ加熱により軟化している。従って、光ファイバ心線100の先端部103に位置する樹脂被覆102の部分は、先端保持部2のスライドに応じて光ファイバ心線100から抜き取られ、光ファイバ心線100から除去される。その後、蓋部22,32,42が再び開き、先端保持部2及び基端保持部4による光ファイバ心線100の保持が解除される。こうして、光ファイバ心線100の被覆除去が完了する。
【0044】
以上に説明した被覆除去器1により得られる効果は次の通りである。この被覆除去器1では、所定方向Aの一方側から延在する光ファイバ心線100の基端部104を保持する基端保持部3、及び所定方向Aの他方側から延在する光ファイバ心線100の基端部104を保持する基端保持部4を、基台部5に対して相対的に固定する。そして、これらの光ファイバ心線100の先端部103を保持する先端保持部2を、基台部5に対して相対的にスライドさせる。この場合、基端保持部3,4は移動しない。言い換えると、被覆除去器1の設置場所に対して相対的に静止している。故に、各光ファイバ心線100において基端保持部3又は基端保持部4に保持された基端部104は動かない。従って、各光ファイバ心線100の作業余長を短くすることができ、作業を容易にできる。更に、この被覆除去器1では、所定方向Aにおける一方側から延在する光ファイバ心線100と、所定方向Aにおける他方側から延在する光ファイバ心線100との双方において、被覆除去を可能とする。従って、融着対象である一対の光ファイバ心線100それぞれの向きを変えずに被覆除去作業を行うことができ、融着に係る一連の作業を容易にすることができる。例えば、被覆除去が完了した一方の光ファイバ心線100を融着接続機にセットしている間に、他方の光ファイバ心線100の被覆除去を行うといった並行作業を行うことが可能になる。加えて、この被覆除去器1では、基端保持部3,4を基台部5に対して相対的に固定し、基端保持部3,4の間に位置する先端保持部2をスライドさせる。従って、先端保持部2を固定し、基端保持部3,4をスライドさせる場合と比較して、スライド動作に必要な領域を小さくできる。故に、被覆除去器1を小型に構成できる。
【0045】
本実施形態のように、ヒータ23は、加熱領域23aと、加熱領域23bとを含んでもよい。加熱領域23aは、所定方向Aにおける一方側から延在する光ファイバ心線100の樹脂被覆102を加熱する。加熱領域23bは、加熱領域23aに対して所定方向Aに並んで配置され、所定方向Aにおける他方側から延在する光ファイバ心線100の樹脂被覆102を加熱する。このように、所定方向Aにおける一方側から延在する光ファイバ心線100と、所定方向Aにおける他方側から延在する光ファイバ心線100とに対して別個の加熱領域を用いても、本実施形態の効果を得ることができる。
【0046】
本実施形態のように、基端保持部3は、所定方向Aにおける一方側から延在する光ファイバ心線100の有無を検出する検出部としてのスイッチ64を有してもよい。基端保持部4は、所定方向Aにおける他方側から延在する光ファイバ心線100の有無を検出する検出部としてのスイッチ65を有してもよい。加えて、被覆除去器1は、センサ54とセンサ55とを備えてもよい。センサ54は、先端保持部2が基端保持部3寄りに位置することを検出する。センサ55は、先端保持部2が基端保持部4寄りに位置することを検出する。これらのスイッチ64,65及びセンサ54,55によれば、先端保持部2と基端保持部3,4との相対位置を被覆除去器1が認識できる。例えば、基端保持部3が光ファイバ心線100を保持しており先端保持部2が基端保持部4寄りに位置するときには、被覆除去器1は被覆除去のための一連の動作を開始すべきでない。基端保持部4が光ファイバ心線100を保持しており先端保持部2が基端保持部3寄りに位置するときにも、被覆除去器1は被覆除去のための一連の動作を開始すべきでない。本実施形態の被覆除去器1によれば、例えばそれらの状態において作業者が誤って被覆除去器1を作動させたとしても、被覆除去のための一連の動作を自動で開始しないといった、セーフティ機能を容易に実現することができる。
【0047】
(変形例)
図6は、上記実施形態の一変形例に係る被覆除去器1Aの外観を示す斜視図である。図6は、蓋部22,32,42が開いている状態を示す。本変形例は、先端保持部2のヒータの構成において上記実施形態と相違し、他の構成において上記実施形態と一致する。本変形例の先端保持部2は、上記実施形態のヒータ23に代えて、ヒータ28を有する。ヒータ28は、加熱領域28aを含む。加熱領域28aは、所定方向Aにおける一方側から光ファイバ心線100が延在する場合に樹脂被覆102を加熱する。更に、加熱領域28aは、所定方向Aにおける他方側から光ファイバ心線100が延在する場合にも樹脂被覆102を加熱する。言い換えると、ヒータ28において、所定方向Aにおける一方側から延在する光ファイバ心線100の樹脂被覆102を加熱する領域は、所定方向Aにおける他方側から延在する光ファイバ心線100の樹脂被覆102を加熱する領域と共通である。
【0048】
本変形例のように、所定方向Aにおける一方側から延在する光ファイバ心線100に用いられる加熱領域を、所定方向Aにおける他方側から延在する光ファイバ心線100に用いられる加熱領域と共通としてもよい。この場合、必要な加熱領域を小さくして、被覆除去器の小型化が可能になる。
【0049】
本開示による被覆除去器は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態の被覆除去器1及び変形例の被覆除去器1Aは2つの基端保持部3,4を備えているが、被覆除去器は1つの基端保持部3又は4のみ備えてもよい。その場合であっても、光ファイバ心線の作業余長を短くすることができ、作業を容易にできる。その場合、先端保持部2の刃、及びヒータの加熱領域は、基端保持部3又は4に対応する1つのみ設けられれば足りる。
【符号の説明】
【0050】
1,1A…被覆除去器
2…先端保持部
3,4…基端保持部
5…基台部
11…電源スイッチ
12…モードスイッチ
13…加熱温度インジケータ
14…加熱時間インジケータ
15…モードインジケータ
16…速度インジケータ
17…先端保持部移動スイッチ
18…除去開始スイッチ
21…基部
21a…面
22…蓋部
22a…面
23…ヒータ
23a,23b…加熱領域
24,25…刃
24a,25a…下刃
24b,25b…上刃
26…ヒンジ
27…移動板
28…ヒータ
28a…加熱領域
31,41…ホルダ搭載部
32,42…蓋部
33,43…金属板
34,44…ゴム板
35,45…ヒンジ
51…カバー
52…ボールねじ
54…センサ
61…軸
100…光ファイバ心線
101…ガラスファイバ
102…樹脂被覆
103…先端部
104…基端部
105…先端面
A…所定方向
D1,D2…直径
図1
図2
図3
図4
図5
図6