(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】タバコ抽出物シート、その製造方法およびこれを含む喫煙物品
(51)【国際特許分類】
A24B 3/14 20060101AFI20240910BHJP
A24B 15/26 20060101ALI20240910BHJP
A24B 15/24 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
A24B3/14
A24B15/26
A24B15/24
(21)【出願番号】P 2023524526
(86)(22)【出願日】2022-04-21
(86)【国際出願番号】 KR2022005743
(87)【国際公開番号】W WO2022231212
(87)【国際公開日】2022-11-03
【審査請求日】2023-04-24
(31)【優先権主張番号】10-2021-0055426
(32)【優先日】2021-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519217032
【氏名又は名称】ケーティー アンド ジー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジュン、キュン ビン
(72)【発明者】
【氏名】キム、イク ジョーン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ゲオン チャン
(72)【発明者】
【氏名】ジョウン、エウン ミ
(72)【発明者】
【氏名】ホワン、ミン ヒー
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-515119(JP,A)
【文献】特開2021-035370(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103462205(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104997160(CN,A)
【文献】国際公開第2010/113702(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/025714(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24B 3/14
A24B 15/26
A24B 15/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タバコ抽出物シートであって、
第1タバコ抽出溶液、第2タバコ抽出溶液およびシート形成剤を含むシート調液から製造され、
前記第1タバコ抽出溶液は、
第1抽出溶媒である水にタバコ物質を浸漬させることにより前記タバコ物質から抽出された第1喫味成分と、前記第1抽出溶媒として
の前記水
とを含み、
前記第2タバコ抽出溶液は、
第2抽出溶媒である酒精および可塑剤の何れかにタバコ物質を浸漬させることにより前記タバコ物質から抽出された第2喫味成分と、前記第2抽出溶媒として
の前記酒精および前記可塑剤の前記何れかと、を含
み、
前記第1抽出溶媒および前記第2抽出溶媒は互いに異なり、前記第1喫味成分および前記第2喫味成分は互いに異なり、
前記第1喫味成分および前記第2喫味成分は前記タバコ抽出物シートに含まれる、
タバコ抽出物シート。
【請求項2】
前記シート形成剤は、セルロース系物質である、請求項1に記載のタバコ抽出物シート。
【請求項3】
前記第2タバコ抽出溶液の
前記第2抽出溶媒は、
前記酒精である、請求項1または2に記載のタバコ抽出物シート。
【請求項4】
前記シート形成剤はメチルセルロースを含む、請求項3に記載のタバコ抽出物シート。
【請求項5】
前記シート調液には、
全体100重量部を基準として、
前記シート形成剤が5から20重量部、
前記第1タバコ抽出溶液が40から80重量部および
前記第2タバコ抽出溶液が10から50重量部で含まれる、請求項3に記載のタバコ抽出物シート。
【請求項6】
前記第2タバコ抽出溶液の
前記第2抽出溶媒は、
前記可塑剤である、請求項1または2に記載のタバコ抽出物シート。
【請求項7】
前記シート調液には、
全体100重量部を基準として、
前記シート形成剤が5から25重量部、
前記第1タバコ抽出溶液が50から80重量部および
前記第2タバコ抽出溶液が5から10重量部で含まれる、請求項
6に記載のタバコ抽出物シート。
【請求項8】
前記第2タバコ抽出溶液の
前記第2抽出溶媒は、
前記酒精であり、
前記シート調液は、第3タバコ抽出溶液をさらに含み、
前記第3タバコ抽出溶液は、第3抽出溶媒として可塑剤を含む、請求項1または2に記載のタバコ抽出物シート。
【請求項9】
前記シート調液には、
全体100重量部を基準として、
前記シート形成剤が5から20重量部、
前記第1タバコ抽出溶液が40から80重量部、
前記第2タバコ抽出溶液が10から50重量部および
前記第3タバコ抽出溶液が5から10重量部で含まれる、請求項
8に記載のタバコ抽出物シート。
【請求項10】
前記シート調液は、バルキング剤をさらに含む、請求項
8に記載のタバコ抽出物シート。
【請求項11】
前記シート調液には、
全体100重量部を基準として、
前記シート形成剤が5から15重量部、
前記第1タバコ抽出溶液が40から80重量部、
前記第2タバコ抽出溶液が10から50重量部、
前記第3タバコ抽出溶液が5から10重量部、
前記バルキング剤が1から10重量部で含まれる、請求項
10に記載のタバコ抽出物シート。
【請求項12】
前記シート調液は、LM-ペクチンをさらに含む、請求項1または2に記載のタバコ抽出物シート。
【請求項13】
喫煙物質部と、
フィルター部と、
前記喫煙物質部の少なくとも一部を包んでいるラッパーと、を含み、
前記喫煙物質部、前記フィルター部および前記ラッパーのうち少なくとも一つには、
請求項1に記載のタバコ抽出物シートが適用され
ている、
喫煙物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タバコ抽出物シート、その製造方法およびこれを含む喫煙物品に関する。より詳しくは、喫煙物品の喫味持続性を増進させることができるタバコ抽出物シート、その効率的な製造方法およびこれを含むことによって喫味持続性が増進された喫煙物品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、伝統シガレットの短所を克服する代替喫煙物品に関する需要が増加している。例えば、シガレットを電気的に加熱することによって煙および/またはエアロゾルを発生させるデバイスに関する需要が増加していて、これによって、加熱式シガレットに対する研究が活発に行われている。
【0003】
特に、最近では、加熱式シガレットの喫味(または喫味)を増進させるための研究が非常に活発に行われている。また、このような研究の一環として、刻みのような喫煙物質またはフィルタープラグに液状のタバコ抽出物、香液などを直接添加する方式が提案されたことがある。しかし、提案された方式が序盤パフ時の喫味を向上させることができるかもしれないが、添加された液状内の喫味成分が早く移行するので、中後半パフ時の不足した喫味を補充することはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の幾つかの実施形態を通じて解決しようとする技術的課題は、喫煙物品の喫味持続性を増進させることができるタバコ抽出物シートを提供することにある。
【0005】
本開示の幾つかの実施形態を通じて解決しようとする他の技術的課題は、タバコ抽出物シートの効率的な製造方法を提供することにある。
【0006】
本開示の幾つかの実施形態を通じて解決しようとするまた他の技術的課題は、喫味持続性が増進された喫煙物品を提供することにある。
【0007】
本開示の技術的課題は、以上で言及した技術的課題に制限されず、言及されていない他の技術的課題は、下記の記載から本開示の技術分野における通常の技術者が明確に理解できる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記技術的課題を解決するための、本開示の幾つかの実施形態によるタバコ抽出物シートは、第1タバコ抽出溶液、第2タバコ抽出溶液およびシート形成剤を含むシート調液から製造され、前記第1タバコ抽出溶液は、抽出溶媒として水を含み、前記第2タバコ抽出溶液は、抽出溶媒として水以外の物質を含むことができる。
【0009】
幾つかの実施形態において、前記シート形成剤は、セルロース系物質であってもよい。
【0010】
幾つかの実施形態において、前記第2タバコ抽出溶液の抽出溶媒は、酒精であってもよい。
【0011】
幾つかの実施形態において、前記第2タバコ抽出溶液の抽出溶媒は、可塑剤であってもよい。
【0012】
幾つかの実施形態において、前記第2タバコ抽出溶液の抽出溶媒は、酒精であり、前記シート調液は、第3タバコ抽出溶液をさらに含み、前記第3タバコ抽出溶液は、抽出溶媒として可塑剤を含んでもよい。
【0013】
幾つかの実施形態において、前記シート調液は、バルキング剤をさらに含んでもよい。
【0014】
前記技術的課題を解決するための、本開示の幾つかの実施形態による喫煙物品は、喫煙物質部、フィルター部および前記喫煙物質部の少なくとも一部を包んでいるラッパー(wrapper)を含み、前記喫煙物質部、前記フィルター部および前記ラッパーのうち少なくとも一つには、タバコ抽出物シートが適用され、前記タバコ抽出物シートは、一つ以上のタバコ抽出溶液およびシート形成剤を含むシート調液から製造されたものであってもよい。
【発明の効果】
【0015】
上述した本開示の幾つかの実施形態によれば、一つ以上のタバコ抽出溶液およびシート形成剤を含むシート調液からタバコ抽出物シートを提供することができる。このようなタバコ抽出物シートは、液状のタバコ抽出物とは異なって、喫味(香り喫味)成分が徐々に放出されるので、中後半パフ時の不足したタバコ味と喫味を補充することができ、これによって、喫煙物品の喫味持続性が向上することができる。
【0016】
また、シート調液の製造時に用いられる物質(e.g.水、酒精、可塑剤)がタバコ抽出溶液を構成する抽出溶媒として用いられ得る。これによって、タバコ抽出溶液とシート形成剤が配合されると、直ちにシート調液を製造でき、シート製造工程の効率性が大きく向上することができる。
【0017】
また、互いに異なる抽出溶媒で製造された複数のタバコ抽出溶液がシート調液を構成することができる。この場合、互いに異なる抽出溶媒によってタバコ物質から互いに異なる喫味成分を抽出することができ、喫煙物品のタバコ味と喫味がさらに向上することができる。
【0018】
本開示の技術的思想による効果は、以上で言及した効果に制限されず、言及されていない他の効果は、下記の記載から通常の技術者が明確に理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本開示の幾つかの実施形態によるタバコ抽出物シートの製造方法を概略的に示す例示的なフロチャートである。
【
図2】本開示の幾つかの実施形態による喫味持続性が増進された喫煙物品とタバコ抽出物シートの適用方式を説明するための例示図である。
【
図3】本開示の幾つかの実施形態による喫味持続性が増進された喫煙物品とタバコ抽出物シートの適用方式を説明するための例示図である。
【
図4】本開示の幾つかの実施形態によるラッピング材料の製造方法を説明するための例示図である。
【
図5】本開示の他の幾つかの実施形態によるラッピング材料の製造方法を説明するための例示図である。
【
図6】本開示の他の幾つかの実施形態による喫味持続性が増進された喫煙物品を概略的に示す例示図である。
【
図7】本開示のさらに他の幾つかの実施形態による喫味持続性が増進された喫煙物品を概略的に示す例示図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照して本開示の好ましい実施形態を詳細に説明する。本開示のメリットおよび特徴、そしてそれらを達成する方法は、添付の図面と共に詳細に後述している実施形態を参照すれば明確になるだろう。しかしながら、本開示の技術的思想は、以下の実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形状に具現でき、単に以下の実施形態は、本開示の技術的思想が完全になるようにし、本開示の属する技術分野における通常の知識を有する者に本開示の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本開示の技術的思想は、請求項の範疇によって定義されるのみである。
【0021】
各図面の構成要素に参照符号を付加するに際して、同じ構成要素に対しては、たとえ異なる図面上に表示されても、できるだけ同じ符号を有するようにしていることに留意しなければならない。また、本開示を説明するに際して、関連した公知構成または機能に関する具体的な説明が本開示の要旨を不明にすることができると判断される場合には、その詳細な説明は省略する。
【0022】
別途の定義がない限り、本明細書において使用されるすべての用語(技術および科学的用語を含む)は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に共通して理解され得る意味で使用され得る。また、一般的に使用される辞書に定義されている用語は、明白に特に定義されていない限り、理想的にまたは過度に解析されない。 本明細書において使用される用語は、実施形態を説明するためのものであり、本開示を制限しようとするものではない。本明細書において、単数型は、文章において特に言及しない限り、複数型も含む。
【0023】
また、本開示の構成要素を説明するに際して、第1、第2、A、B、(a)、(b)などの用語を使用できる。このような用語は、その構成要素を他の構成要素と区別するためのものに過ぎず、その用語により当該構成要素の本質や手順または順序などが限定されない。任意の構成要素が他の構成要素に「連結」、「結合」または「接続」されると記載された場合、その構成要素は、当該他の構成要素に直接的に連結されるか、または接続され得るが、各構成要素の間にさらに他の構成要素が「連結」、「結合」または「接続」され得ると理解しなければならない。
【0024】
本開示において使用される「含む(comprises)」および/または「含む(comprising)」は、言及された構成要素、段階、動作および/または素子は、一つ以上の他の構成要素、段階、動作および/または素子の存在または追加を排除しない。
【0025】
まず、本開示の多様な実施形態において使用される幾つかの用語について明確にする。
【0026】
以下の実施形態において、「喫煙物品」(smoking article)とは、タバコ、タバコ派生物、膨化処理タバコ(expanded tobacco)、再生タバコ(reconstituted tobacco)またはタバコ代用物に基づくかに関係なく、喫煙可能な任意の製品または喫煙体験を提供できる任意の製品を意味し得る。例えば、喫煙物品は、シガレット、葉巻(cigar)および小さい葉巻(cigarillo)などのような喫煙可能製品を含んでもよい。他の例として、喫煙物品は、燃焼型喫煙物品と加熱型喫煙物品を含んでもよい。
【0027】
以下の実施形態において、「喫煙物質」(smoking material)とは、煙(smoke)および/またはエアロゾル(aerosol)を発生させたり喫煙に用いられたりする物質を意味し得る。例えば、喫煙物質は、タバコ物質を含んでもよい。タバコ物質は、例えばタバコ葉切片、タバコ幹またはこれらから加工された物質などを含んでもよい。より具体的な例として、タバコ物質は、粉砕されたタバコの葉、粉砕された再生タバコ、膨化刻み、膨化主脈および板状葉などを含んでもよい。しかし、これに限定されるものではない。
【0028】
以下の実施形態において、「上流」(upstream)または「上流方向」は、喫煙者の口部から遠ざかる方向を意味し、「下流」(downstream)または「下流方向」は、喫煙者の口部から近づく方向を意味し得る。上流および下流という用語は、喫煙物品を構成する要素の相対的位置を説明するために用いられ得る。例えば、例えば、
図2に例示された喫煙物品100において、フィルター部120は、喫煙物質部110の下流または下流方向に位置し、喫煙物質部110は、フィルター部120の上流または上流方向に位置する。
【0029】
以下の実施形態において、「長さ方向」(longitudinal direction)は、喫煙物品の長さ方向軸に相当する方向を意味し得る。
【0030】
以下の実施形態において、「パフ」(puff)は、喫煙者の吸入(inhalation)を意味し、吸入とは、喫煙者の口や鼻を通じて喫煙者の口腔内、鼻腔内または肺に引き寄せる状況を意味し得る。
【0031】
以下では、本開示の多様な実施形態について添付の図面によって詳細に説明する。
【0032】
本開示の幾つかの実施形態によれば、喫煙物品の喫味持続性を増進させることができるタバコ抽出物シートを提供することができる。タバコ抽出物シートは、一つ以上のタバコ抽出溶液およびシート形成剤を含むシート調液から製造されたものであってもよく、多様な方式で喫煙物品に適用されて、喫煙物品の喫味持続性を増進させることができる。具体的に、タバコ抽出物シートは、含有された喫味成分を喫煙中に徐々に放出されることによって、中後半パフ時の不足したタバコ味と喫味を補充することができる。これによって、喫煙物品の喫味持続性を保障することができ、喫煙者の喫煙満足度が向上することができる。以下では、このようなタバコ抽出物シートとその製造方法に関して
図1を参照して詳細に説明する。
【0033】
図1は、本開示の幾つかの実施形態によるタバコ抽出物シートの製造方法を概略的に示す例示的なフロチャートである。ただし、これは、ただ本開示の目的を達成するための好ましい実施形態であり、必要に応じて一部の段階が追加または削除できることはもちろんである。
【0034】
図1に示されたように、本実施形態による製造方法は、一つ以上のタバコ抽出溶液を製造する段階S100から始まることができる。例えば、所定の条件下でタバコ物質(e.g.葉タバコ)を抽出溶媒に浸漬させ、ろ過網などを用いて不純物を除去することによって、タバコ抽出溶液を製造できる。また、このように製造されたタバコ抽出溶液は、タバコ物質から抽出された喫味成分(溶質)と抽出溶媒を含んでもよい。
【0035】
抽出溶媒は、水、酒精(e.g.エタノール)および可塑剤のうち少なくとも一つを含んでもよく、各抽出溶媒を用いて一つ以上のタバコ抽出溶液を製造できる。例えば、水を抽出溶媒として用いて第1タバコ抽出溶液を製造でき、酒精を抽出溶媒として用いて第2タバコ抽出溶液を製造できる。そして、可塑剤を抽出溶媒として用いて第3タバコ抽出溶液も製造されてもよい。ここで、可塑剤は、例えばプロピレングリコール(PG)またはグリセリン(GLY)が挙げられが、これに限定されるものではない。
【0036】
水、酒精または可塑剤を抽出溶媒として用いる理由は、シート製造工程の効率性が向上させるためのものと理解することができる。具体的に、水、酒精、可塑剤などは、元来シート調液の製造時に用いられる物質であり、このような物質を溶媒として含むタバコ抽出溶液をシート形成剤と配合すると、直ちにシート調液を製造できる。したがって、シート製造工程の効率性が向上することができる。
【0037】
参考として、水は、粉末形態のシート形成剤を溶かすために用いられ、酒精は、シート形成剤を水に溶かす前に分散させるための用途に用いられ得る。酒精によってシート形成剤が分散すると、水にさらに容易に溶けることができるためである。そして、可塑剤は、シートに柔軟性を付与することによって、シートの物理的特性を改善させるために用いられ得る
【0038】
一方、本段階S100で、抽出条件、タバコ物質の投入量などは、多様に設定可能である。
【0039】
幾つかの実施形態において、約50℃内外の温度条件下で約24時間の間タバコ物質が抽出溶媒に浸漬されてもよい。このような条件下で、タバコ物質から喫味成分を十分に抽出することができる。
【0040】
また、幾つかの実施形態において、タバコ物質の投入量は、タバコ抽出溶液に対して約10重量%~50重量%であってもよい。このような数値範囲内で、タバコ物質から喫味成分を十分に抽出することができる。
【0041】
段階S200で、一つ以上のタバコ抽出溶液とシート形成剤を配合して、シート調液を製造できる。例えば、粉末形態のシート形成剤を、酒精を含むタバコ抽出溶液と配合して分散させた後に、水を含むタバコ抽出溶液をさらに配合して、シート調液を製造できる。また、場合によって、可塑剤を含むタバコ抽出溶液がさらに配合されて、シート調液が製造されることもできる。
【0042】
前記シート形成剤は、固体状のシート(sheet)が形成されるためのベース物質を意味し得る。シート形成剤の例としては、セルロース系物質が挙げられる。しかし、これに限定されるものではない。セルロース系物質は、適切な物理性を有するシートを形成できるだけでなく、多量の喫味成分をよく固定して被覆することによって、優れた喫味保持量と保持性を保証することができる。その上、セルロース系物質は、高温の気流と接触時に相変化(結晶化)するにつれて熱エネルギーをよく吸収する性質を有するので、喫煙物品内気流に対する冷却効果も向上させることができる利点がある。また、セルロース系物質は、ハイドロコロイド物質であり、液体と会って粘着性を帯びるので、接着剤なしに喫煙物品のラッパー部位に付着することができ、これによって、接着剤による安全性問題から自由になりえるという利点もある。
【0043】
セルロース系物質の例としては、寒天、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0044】
一方、シート調液の構成成分と組成は、多様に設計可能であり、これは、実施形態によって変わることができる。
【0045】
第1実施形態において、シート調液は、シート形成剤、第1タバコ抽出溶液および第2タバコ抽出溶液を含んでもよい。この際、第1タバコ抽出溶液の溶媒は、水であり、第2タバコ抽出溶液の溶媒は、酒精であってもよい。
【0046】
また、第1実施形態によるシート調液は、全体100重量部を基準として、約5~20重量部のシート形成剤、約40~80重量部の第1タバコ抽出溶液(溶媒:水)および約10~50重量部の第2タバコ抽出溶液(溶媒:酒精)を含んでもよい。このような数値範囲内で、シート形成剤が溶媒によく溶けて、シート調液が適切に製造されることができ、タバコ抽出物シートの適切な物理性を保証することができ、タバコ抽出物シートの喫味成分保持量にも優れていることが確認された。また、互いに異なる抽出溶媒によって多様な喫味成分が抽出されて、喫煙物品のタバコ味と喫味がさらに向上することが官能評価によって確認された。
【0047】
第2実施形態において、シート調液は、シート形成剤、第1タバコ抽出溶液および第2タバコ抽出溶液を含んでもよい。この際、第1タバコ抽出溶液の溶媒は、水であり、第2タバコ抽出溶液の溶媒は、可塑剤であってもよい。
【0048】
また、第2実施形態によるシート調液は、全体100重量部を基準として、約5~25重量部のシート形成剤、約50~80重量部の第1タバコ抽出溶液(溶媒:水)および約5~10重量部の第2タバコ抽出溶液(溶媒:可塑剤)を含んでもよい。このような数値範囲内で、タバコ抽出物シートの物理性と喫味成分保持量に優れていることが確認された。また、互いに異なる抽出溶媒によって多様な喫味成分が抽出されて、喫煙物品のタバコ味と喫味がさらに向上することが官能評価によって確認された。
【0049】
第3実施形態において、シート調液は、シート形成剤、第1タバコ抽出溶液、第2タバコ抽出溶液および第3タバコ抽出溶液を含んでもよい。この際、第1タバコ抽出溶液の溶媒は、水であり、第2タバコ抽出溶液の溶媒は、酒精であり、第3タバコ抽出溶液の溶媒は、可塑剤であってもよい。
【0050】
また、第3実施形態によるシート調液は、全体100重量部を基準として、約5~20重量部のシート形成剤、約40~80重量部の第1タバコ抽出溶液(溶媒:水)、約10~50重量部の第2タバコ抽出溶液(溶媒:酒精)および約5~10重量部の第3タバコ抽出溶液(溶媒:可塑剤)を含んでもよい。このような数値範囲内で、シート形成剤が溶媒によく溶けて、シート調液が適切に製造されることができ、タバコ抽出物シートの物理性と喫味成分保持量に優れていることが確認された。また、互いに異なる抽出溶媒によって多様な喫味成分が抽出されて、喫煙物品のタバコ味と喫味がさらに向上することが官能評価によって確認された。
【0051】
幾つかの実施形態において、シート調液は、バルキング剤(bulking agent)をさらに含んでもよい。例えば、シート調液は、第3実施形態によるシート調液の構成成分にバルキング剤をさらに含んでもよい。この場合、シート調液は、全体100重量部を基準として、約5~15重量部のシート形成剤、約40~80重量部の第1タバコ抽出溶液(溶媒:水)、約10~50重量部の第2タバコ抽出溶液(溶媒:酒精)、約5~10重量部の第3タバコ抽出溶液(溶媒:可塑剤)がおよび約1~10重量部のバルキング剤を含んでもよい。
【0052】
バルキング剤は、水以外の構成成分の合計質量(すなわち、乾物質量)を増加させて、製造されるタバコ抽出物シートの体積を増加させることができ、タバコ抽出物シートの元来の機能に影響を及ぼさない物質であってもよい。具体的に、バルキング剤は、タバコ抽出物シートの体積を増加させ、かつ、スラリー(すなわち、シート調液)の粘度を実質的に上昇させないと同時に、タバコ抽出物シートの喫味成分保持(固定)機能に悪影響を及ぼさない特性を有していてもよい。好ましくは、バルキング剤は、デンプン類、変性デンプン、またはデンプン加水分解物であってもよい。しかし、これに限定されるものではない。
【0053】
変性デンプンは、酢酸デンプン、酸化デンプン、ヒドロキシプロピルリン酸二デンブン、ヒドロキシプロピルデンプン、リン酸二デンブン、リン酸一デンブン、リン酸化リン酸二デンブンなどを指す。
【0054】
デンプン加水分解物とは、デンプンを加水分解する工程を含むプロセスによって得られる物質を示す。デンプン加水分解物は、例えば、デンプンを直接加水分解して得られる物質(すなわち、デキストリン)、またはデンプンを加熱処理した後に加水分解して得られる物質(すなわち、難消化性デキストリン)を含んでもよい。バルキング剤は、例えば、デキストリン(dextrin)であってもよく、さらに具体的にシクロデキストリン(cyclodextrin)であってもよい。
【0055】
デンプン加水分解物は、一般的に、約2~約40の範囲に含まれるDE値を有するデンプン加水分解物、好ましくは、約2~約20の範囲に含まれるDE値を有するデンプン加水分解物であってもよい。約2~約20の範囲に含まれるDE値を有するデンプン加水分解物として、例えば、パインデックス#100(松谷化学工業(株))、パインファイバー(松谷化学工業(株))、TK-16(松谷化学工業(株))が活用されることができる。
【0056】
ここで、「DE」は、dextrose equivalentの略語であり、DE値は、デンプンの加水分解の程度、すなわちデンプンの糖化率を示す。本開示においてDE値は、ウィルシュテッター・シューデル(Willstatter-Schudel)法によって測定された値であってもよい。加水分解されたデンプン(デンプン加水分解物)の特性、例えば、デンプン加水分解物の分子量やデンプン加水分解物を構成する糖分子の配列などの特性は、デンプン加水分解物の分子ごとに一定でなく、任意の分布またはバリエーション(variation)を持って存在している。デンプン加水分解物の特性の分布やバリエーション、またはカットされる区間の差異などによって、デンプン加水分解物は、その分子ごとに異なる物性特徴(例えばDE値)が発現することができる。このように、デンプン加水分解物は、異なる物性特徴を示す分子の集合であるが、ウィルシュテッター・シューデル(Willstatter-Schudel)法での測定結果(すなわちDE値)は、デンプンの加水分解の程度を示す代表値として扱われている。
【0057】
好ましくは、デンプン加水分解物は、約2~約5のDE値を有するデキストリン、約10~約15のDE値を有する難消化性デキストリンおよびこれらの混合物からなる群から選択できる。約2~約5のDE値を有するデキストリンとして、例えばパインデックス#100(松谷化学工業(株))が活用されることができる。約10~約15のDE値を有する難消化性デキストリンとして、例えばパインファイバー(松谷化学工業(株))が活用されることができる。
【0058】
また、幾つかの実施形態において、シート形成剤は、改質されたセルロースであるか、改質されたセルロースを含んでもよい。ここで、「改質されたセルロース」は、分子構造内で特定の官能基が置換されたセルロースを意味し得る。改質されたセルロースの例としては、HPMC、MC、CMC、ECが挙げられるが、これに限定されるものではない。例えば、HPMCは、ヒドロキシプロピル基およびメチル基(またはメトキシ基)が置換された割合および分子量によって約4~40000の範囲内の等級(grade)を有していてもよい。等級によって、改質されたセルロースの粘度が決定できる。より具体的に、HPMCの物理化学的特性は、メトキシ基の割合、ヒドロキシプロピル基の割合および分子量と関連しているが、米国薬典(USP)によれば、HPMCの種類は、メトキシ基およびヒドロキシプロピル基の割合によってHPMC1828、HPMC2208、HPMC2906、およびHPMC2910などに分類できる。ここで、前方の二つの数字は、メトキシ基の割合であり、後方の二つの数字は、ヒドロキシプロピル基の割合を意味し得る。本発明者らの持続的な実験結果、改質されたセルロースを含むシート調液から製造されたタバコ抽出物シートは、シート物理性および喫味成分保持性に優れていることが確認された。
【0059】
また、幾つかの実施形態において、シート調液は、LM-ペクチン(low methoxyl pectin)をさらに含んでもよい。LM-ペクチンは、エステル化が比較的に少なく行われた低エステルペクチンまたは低メトキシルペクチンであり、具体的に分子構造の内部にカルボキシ基(carboxyl group)が約50%未満で含有されたペクチンを意味し得る。LM-ペクチンは、カラギナンとは異なって、放冷時にゲル化しない特性を有するので、シート調液の粘度を低減することができる(e.g.約600cp~800cp程度)。また、LM-ペクチンの添加時にタバコ抽出物シートの喫味成分保持性が増大することが実験を通じて確認された。
【0060】
LM-ペクチンは、分子構造の内部にカルボキシ基を約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、または約10%未満で含有していてもよい。LM-ペクチンの分子構造の内部にカルボキシ基含有量が少なくなるほど、LM-ペクチンを含むスラリーの粘度が低くなる。
【0061】
段階S300で、シート調液が所定の条件下で乾燥されることができ、その結果として、タバコ抽出物シートが生成されることができる。例えば、約50℃~90℃の温度条件下でシート調液が乾燥されることができる。しかし、これに限定されるものではない。
【0062】
以上では、
図1を参照して本開示の幾つかの実施形態によるタバコ抽出物シートとその製造方法について説明した。上述したことによれば、一つ以上のタバコ抽出溶液およびシート形成剤を含むシート調液からタバコ抽出物シートを提供することができる。このようなタバコ抽出物シートは、液状のタバコ抽出物とは異なって、喫味(香り喫味)成分が徐々に放出されるので、中後半パフ時の不足したタバコ味と喫味を補充することができ、これによって、喫煙物品の喫味持続性が向上することができる。また、元来シート調液の製造時に用いられる物質(e.g.水、酒精、可塑剤)がタバコ抽出溶液を構成する抽出溶媒として用いられ得る。したがって、タバコ抽出溶液とシート形成剤が配合されると、直ちにシート調液を製造でき、シート製造工程の効率性が大きく向上することができる。また、互いに異なる抽出溶媒で製造された複数のタバコ抽出溶液がシート調液を構成することができる。この場合、互いに異なる抽出溶媒によってタバコ物質から互いに異なる喫味成分を抽出することができ、喫煙物品のタバコ味と喫味がさらに向上することができる。
【0063】
以下では、上述したタバコ抽出物シートを含むことによって喫味持続性が増進された喫煙物品に関する多様な実施形態について
図2以降の図面を参照して説明する。
【0064】
図2は、本開示の幾つかの実施形態による喫味持続性が増進された喫煙物品100を概略的に示す例示図である。
【0065】
図2に示されたように、喫煙物品100は、フィルター部120、喫煙物質部110およびラッパー130を含んでもよい。ただし、
図2には、本開示の実施形態と関連する構成要素のみが示されている。したがって、本開示の属する技術分野における通常の技術者なら、
図2に示された構成要素以外に他の汎用的な構成要素をさらに含んでもよいことが分かる。また、
図2は、本開示の多様な実施形態による喫煙物品の一部の例示を図示しているだけであり、喫煙物品の詳細構造は、
図2に示されたものと異なっていてもよい。喫煙物品の詳細構造の他の例示に関しては、
図6および
図7をさらに参照する。以下、喫煙物品100の各構成要素について説明する。
【0066】
フィルター部120は、喫煙物質部110で発生した煙および/またはエアロゾルに対するろ過機能を行うことができる。このために、フィルター部120は、フィルター(ろ過)物質を含んでもよい。フィルター物質の例としては、セルロースアセテート繊維、紙などが挙げられるが、本開示の範囲がこれに限定されるものではない。フィルター部120は、フィルター物質(プラグ)を包んでいるラッパー130をさらに含むものであってもよい。
【0067】
フィルター部120は、喫煙物質部110の下流に位置し、喫煙物質部110の下流末端と連結されてもよい。例えば、フィルター部120と喫煙物質部110は、円柱(ロッド)の形状を有し、長さ軸方向に整列され、ティッピングラッパー(tipping wrapper)により連結されてもよい。ティッピングラッパーは、フィルター部120の少なくとも一部と喫煙物質部110の少なくとも一部を共にラッピングして、フィルター部120と喫煙物質部110を連結することができる。フィルター部120が喫煙物品100の下流末端を形成する場合、フィルター部120は、喫煙者の口部と接触するマウスピースとして機能することもできる。
【0068】
フィルター部120は、ロッドの形態で製造されるので、場合によって「フィルターロッド120」と称されることがあり、円柱型、内部に中空を含むチューブ型、リセス型などのように多様な形態で製造されてもよい。
【0069】
次に、喫煙物質部110は、燃焼または加熱されるにつれて煙および/またはエアロゾルを発生させることができる喫煙物質を含んでもよい。喫煙物質部110は、喫煙物質を包んでいるラッパー130をさらに含むものであってもよい。
【0070】
喫煙物質部110は、フィルター部120の上流に位置し、フィルター部120の上流末端と連結されてもよい。喫煙物質部110で発生した煙および/またはエアロゾルは、フィルター部120を通じて喫煙者の口部に吸入されることができる。
【0071】
喫煙物質部110も、ロッドの形態で製造されるので、場合によって「喫煙物質ロッド110」と称されることがある。
【0072】
喫煙物質は、例えばタバコ物質を含んでもよい。タバコ物質は、例えばタバコ葉切片、タバコ幹またはこれらから加工された物質などを含んでもよい。より具体的な例として、タバコ物質は、粉砕されたタバコの葉、粉砕された再構成タバコ、膨化刻み、膨化主脈および板状葉などを含んでもよい。しかし、これに限定されるものではない。また、タバコ物質は、タバコ刻み、タバコ粒子(particle)、タバコシート(sheet)、タバコビーズ(beads)、タバコ顆粒(granule)またはタバコ抽出物の形態を有していてもよいが、これに限定されるものではない。
【0073】
幾つかの実施形態において、喫煙物質は、湿潤剤(保湿剤)、香味剤および/または有機酸(organic acid)のような添加物質をさらに含んでもよい。例えば、湿潤剤は、グリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールおよびオレイルアルコールのうち少なくとも一つを含んでもよい。湿潤剤は、タバコ物質内の水分を適正レベルに維持して、固有の味をやわらかくし、霧化量を豊富にすることができる。また、香味剤は、例えば甘草、ショ糖、果糖シロップ、イソ甘味剤(isosweet)、ココア、ラベンダー、シナモン、カルダモム、セロリ、コロハ、カスカリラ、ビャクダン、ベルガモット、ゼラニウム、蜂蜜エッセンス、バラオイル、バニラ、レモンオイル、オレンジ オイル、ミントオイル、ケイヒ、キャラウェイ、コニャック、ジャスミン、カモミール、メントール、ケイヒ、イランイラン、サルビア、スペアミント、ショウガ、コエンドロ、クローブ抽出物(またはクローブ物質)またはコーヒーなどを含んでもよい。
【0074】
次に、ラッパー130は、喫煙物質部110および/またはフィルター部120の少なくとも一部を包んでいるものを意味し得る。ラッパー130は、喫煙物質部110またはフィルター部120の個別ラッパーを指すものであってもよく、ティッピングラッパーなどのように喫煙物質部110とフィルター部120の少なくとも一部を共に包んでいるラッパーを指すものであってもよく、喫煙物品100に用いられたすべてのラッパーを総称するものであってもよい。前記ラッパー130は、多孔性または非多孔性のラッピングペーパー(wrapping paper)からなってもよいが、本開示の範囲がこれに限定されるものではない。例えば、ラッパー130は、金属ホイル(foil)またはラッピングペーパーと金属ホイルの重ね合わせ形態からなってもよい。
【0075】
本開示の幾つかの実施形態によれば、タバコ抽出物シート10が喫煙物質部110に適用(投入)できる。例えば、タバコ抽出物シート10の裁刻物が喫煙物質部110に投入されることができる。この場合、タバコ抽出物シート10が喫煙物質部110全体にわたって均一に分布することができ、喫煙中に喫煙物品100の喫味強度が均一に維持されることができる。他の例として、図示のように、タバコ抽出物シート10がタバコシート20と共に喫煙物質部110に投入されることもできる。具体的な例として、タバコ抽出物シート10がタバコシート20に付着した状態で喫煙物質部110に投入されることができる。タバコシート20は、シート形態のタバコ物質であって、例えば板状葉のような再構成タバコであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0076】
他の幾つかの実施形態において、
図3に示されたように、タバコ抽出物シート10が喫煙物質部110またはフィルター部120のラッパー130に適用可能である。ただし、その具体的な適用方式は、変わることができる。
【0077】
一例として、タバコ抽出物シート10がラッパー130内側に配置(e.g.付着、コーティング)されてもよい。例えば、タバコ抽出物シート10が喫煙物質部110のラッパー130の内側に付着されてもよい。この場合、喫煙物質部110を加熱する熱によってタバコ抽出物シート10に含まれた喫味成分の移行が促進されることができる。また、ラッパー130の少なくとも一部が金属ホイルからなる場合、タバコ抽出物シート10は、金属ホイルの内側に配置されてもよい。この場合、金属ホイルを通じて伝達された熱によってタバコ抽出物シート10に含まれた喫味成分の移行がさらに促進されることができる。タバコ抽出物シート10をラッパー130に配置(e.g.付着、コーティング)する工程に関しては、
図4および
図5を参照して後述する。
【0078】
他の例として、タバコ抽出物シート10がラッパー130の少なくとも一部を構成することもできる。すなわち、タバコ抽出物シート10が喫煙物品100のラッパー130として機能することができる。この際、ラッパー130の少なくとも一部は、タバコ抽出物シート10だけで構成されることもでき、タバコ抽出物シート10とラッピングペーパーが一体化した形態で構成されることもできる。この場合、タバコ抽出物シート10をラッパー130に配置する工程(e.g.重ね合わせ工程、コーティング工程)が行われる必要がないところ、喫煙物品100の製造工程をより簡素化することができる。
【0079】
以下では、
図4および
図5を参照してタバコ抽出物シート10を配置する工程について説明する。
【0080】
幾つかの実施形態において、タバコ抽出物シート10とラッピングペーパーを重ね合わせる工程を通じてラッピング材料を製造できる。より理解の便宜を提供するために、
図4を参照して本実施形態について付加説明する。
【0081】
図4に示されたように、ラッピングペーパーが巻かれている第1ボビン410を通じてラッピングペーパーが供給され、これと同時に、タバコ抽出物シート10が巻かれている第2ボビン420を通じてタバコ抽出物シート10が供給されることができる。そして、供給されたラッピングペーパーとタバコ抽出物シート10は、プレスローラー440を通じて重ね合わせられることができる。この際、タバコ抽出物シート10がハイドロコロイド物質の一種であるセルロース系物質で構成された場合には、噴射機430を通じて所定の液体が噴射されることができる。そして、噴射された液体によってタバコ抽出物シート10が粘着性を有することとなり、別途の接着剤なくともタバコ抽出物シート10をラッピングペーパーと強く重ね合わせられることができる。また、これによって、喫煙物品のラッピング材料450を容易に製造することができる。製造したラッピング材料450は、適切なサイズに切断されて、喫煙物品のラッパーとして用いられ得る。
【0082】
前記所定の液体は、例えば水(水)、エタノールなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0083】
本実施形態において、第2ボビン420を通じて供給されるタバコ抽出物シート10の厚さは、約60μm~150μmであってもよく、好ましくは、約60μm~120μmであってもよい。このような数値範囲内で、タバコ抽出物シート10をラッピングペーパーに容易に重ね合わせられることができ、ラッピング材料450が過度に厚くなる問題が防止され、適切な柔軟性を確保することができる。
【0084】
他の幾つかの実施形態において、液状のシート調液をラッピングペーパー上に塗布し、乾燥するコーティング(coating)工程を通じてラッピング材料を製造できる。より理解の便宜を提供するために、
図5を参照して本実施形態について付加説明する。
【0085】
図5に示されたように、ラッピングペーパーが巻かれているボビン510を通じてラッピングペーパーが供給されることができる。そして、塗布機520(e.g.ノズル)を通じて液状(e.g.スラリー状態)のシート調液530が供給されるラッピングペーパー上に塗布されてもよい。シート調液530は、ラッピングペーパーの移送過程540中に自然乾燥されたり、別途の乾燥設備内で乾燥されたりすることができる。その結果として、シート調液530がラッピングペーパー上に適切にコーティングされて、ラッピング材料550を製造できる。製造されたラッピング材料550は、適切なサイズに切断されて、喫煙物品のラッパーとして用いられ得る。
【0086】
この際、コーティングされたシート調液530が占める厚さは、約100μm以下であってもよく、好ましくは、約90μm、80μm、70μm、60μmまたは50μm以下であってもよい。このような数値範囲内でラッピング材料550が過度に厚くなることが防止され、適切な柔軟性を確保することができる。
【0087】
以上では、
図2~
図5を参照して本開示の幾つかの実施形態による喫煙物品100とタバコ抽出物シート10の適用方式について説明した。上述したことによれば、タバコ抽出物シート10が多様な方式で喫煙物品100に適用されることによって、喫煙物品100の喫味持続性が向上することができる。
【0088】
以下では、本開示の他の幾つかの実施形態による香り持続性が増進された喫煙物品200、300について
図6および
図7を参照して説明する。ただし、本開示の明瞭さのために、上記で説明された喫煙物品100と重複する内容に関する説明は省略する。
【0089】
図6は、本開示の他の幾つかの実施形態による喫味持続性が増進された喫煙物品200を示す例示図である。
【0090】
図6に示されたように、喫煙物品200は、喫煙物質部210とフィルター部220を含んでもよく、フィルター部220は、複数のセグメント221、222を含んでもよい。
【0091】
喫煙物質部210は、上記で説明した喫煙物質部110に対応する。したがって、これに関する説明は省略する。
【0092】
次に、フィルター部220は、第1セグメント221と第2セグメント222で構成されてもよい。もちろん、フィルター部220は、第3セグメント(不図示)をさらに含んでもよい。
【0093】
第1セグメント221は、喫煙物質部210で発生した煙および/またはエアロゾルに対する冷却機能を行うことができる。したがって、場合によって第1セグメント221は、「冷却セグメント221」とも称される。
【0094】
第1セグメント221は、多様な形態で製造されてもよい。一例として、第1セグメント221は、紙材質で形成され、中空を含む円筒形態の紙管であってもよい。他の例として、第1セグメント221は、高分子物質または生分解性高分子物質で製作されたものであってもよい。例えば、第1セグメント221は、ポリ乳酸(PLA)繊維で製作されてもよいが、これに限定されない。さらに他の例として、第1セグメント221は、複数個の孔が穿設されたセルロースアセテートフィルターで製作されてもよい。さらに他の例として、第1セグメント221は、中空を含むチューブフィルターであってもよい。例えば、第1セグメント221は、中空を含むセルロースアセテートフィルターであってもよい。しかし、これに限定されるものではなく、冷却機能を行うことができると、第1セグメント221は、例示されたことと異なる形態で製造されることもできる。
【0095】
幾つかの実施形態において、第1セグメント221にタバコ抽出物シート10が適用されることもできる。例えば、タバコ抽出物シート10は、第1セグメント221の中空にぐるぐる巻かれた形態で配置されたり、中空の内壁に付着されたりすることもできる。さらに他の例として、複数のホールが形成されるように加工されたタバコ抽出物シート10がぐるぐる巻かれた形態で中空に配置されることもできる。この場合、複数のホールを通じて気流パスを容易に確保することができ、タバコ抽出物シート10と気流との接触面積の増加によって冷却効果も向上することができる。
【0096】
次に、第2セグメント222は、第1セグメント221を通過した煙および/またはエアロゾルに対するろ過機能を行うことができる。したがって、場合によって第2セグメント222は、「フィルターセグメント222」とも称される。または、第2セグメント222は、マウスピース部位に位置するところ、「マウスピースセグメント222」とも称される。
【0097】
幾つかの実施形態において、第2セグメント222は、少なくとも一つのカプセル240を含んでもよい。ここで、カプセル240は、香味を発生させる機能を行うこともでき、エアロゾルを発生させる機能を行うこともできる。例えば、カプセル240は、香料を含む液体を被膜で包んだ構造であってもよい。また、カプセル240は、球形または円筒形の形状を有していてもよいが、これに限定されるものではない。
【0098】
次に、ラッパー230は、上記で説明したラッパー130に対応する。したがって、これに関する説明は省略する。上記で言及したように、ラッパー230には、タバコ抽出物シート10が適用可能である。かくして、喫煙物品200の喫味持続性を大きく増進することができる。
【0099】
一方、
図6には、図示してはいないが、喫煙物品200は、末端に配置されたプラグ(不図示)をさらに含んでもよい。例えば、プラグは、喫煙物品200の上流末端に配置されて、喫煙物品200の全長を適切に調節する機能を行うことができる。また、喫煙物品200がエアロゾル発生装置(不図示)に挿入される場合、プラグは、喫煙物質部210がエアロゾル発生装置内部の適切な位置に配置されるように調節する機能を行うこともできる。
【0100】
図7は、本開示のさらに他の幾つかの実施形態による喫煙物品300を概略的に示す例示図である。
【0101】
図7に示されたように、喫煙物品300は、喫煙物質部310およびフィルター部320を含んでもよく、喫煙物質部310およびフィルター部320それぞれは、複数のセグメント311、312、321、322を含んでもよい。
【0102】
図示のように、喫煙物質部310は、第1セグメント311と第2セグメント312で構成されてもよい。もちろん、喫煙物質部310は、第3セグメント(不図示)をさらに含んでもよい。
【0103】
第1セグメント311は、保湿剤を含んでもよい。例えば、第1セグメント311は、保湿剤が含浸された捲縮紙を含んでもよい。保湿剤は、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールおよびオレイルアルコールのうち少なくとも一つを含んでもよい。
【0104】
次に、第2セグメント312は、タバコ物質のようなニコチン発生基材を含んでもよい。ニコチン発生基材は、例えば、タバコ刻み、タバコ粒子、タバコシート、タバコビーズ、タバコ顆粒を含んでもよい。他の例として、ニコチン発生基材は、タバコ抽出物が含浸された捲縮紙を含むこともできる。ニコチン発生基材が加熱される場合、ニコチン発生基材からニコチンが発生してフィルター部320にニコチンが移行することができる。
【0105】
次に、フィルター部320も、複数のセグメント321、322を含んでもよい。例えば、フィルター部320は、冷却機能を行う第3セグメント321とろ過機能を行う第4セグメント322を含んでもよい。前述した
図6のフィルター部220に関する内容がフィルター部320に同一に適用できるので、さらなる説明は省略する。
【0106】
次に、ラッパー330は、上記で説明したラッパー130に対応する。したがって、これに関する説明は省略する。上記で言及したように、ラッパー330には、タバコ抽出物シート10が適用可能である。かくして、喫煙物品300の喫味持続性を大きく増進することができる。
【0107】
以上では、
図6および
図7を参照して本開示の他の幾つかの実施形態による喫煙物品200、300について説明した。
【0108】
以下では、実施例および実験例を通じて上述したタバコ抽出物シート10の構成および効果についてより明確にすることとする。ただし、以下の実施例は、タバコ抽出物シート10の一部の例示に過ぎないので、本開示の範囲が以下の実施例によって限定されるものではない。
【0109】
[実施例1~7]
下記の表1に記載されたような重量比を有するタバコ抽出物シートを製造し、製造されたタバコ抽出物シートを喫煙物質部に投入して、加熱型シガレットを製造した。
【0110】
【0111】
[実験例1:製造難易度、物性および官能評価]
実施例1~7によるタバコ抽出物シートとシガレットに対して、調液製造難易度およびシート物性と、異臭味、喫味強度および香り喫味などの官能特性を総合的に評価する実験を進めた。官能特性の評価は、5年以上の喫煙経験を持っているパネルを対象に行われ、上中下の等級に基づいて評価を進め、評価結果は、下記の表2に記載されている。
【0112】
【0113】
前記表2を参照すると、MCと酒精を配合する場合、シート調液の製造容易性が向上することが確認された(実施例2、5~7参照)。
【0114】
また、酒精なしに製造された実施例4によるタバコ抽出物シートは、乾燥時に破砕現象が現れ、シート物性が相対的に落ちるものと評価された。また、シート調液の粘度が高くて、調液製造難易度が相当高いものと評価された。
【0115】
また、実施例1または3によるタバコ抽出物シート(またはシガレット)は、他の実施例に比べて喫煙中に異臭味が強く発生するものと評価された。言い換えれば、HPMCまたは寒天を用いたタバコ抽出物シートは、MCを用いたタバコ抽出物シートより異臭味が強いものと評価された。
【0116】
また、可塑剤(e.g.PG、GLY)の添加は、シートの物性(e.g.柔軟性、破砕)に肯定的な影響を及ぼすのに対し、香り喫味、喫味強度などの官能特性には大きく影響を及ぼさないものと評価された。したがって、シート調液の製造時に可塑剤を適切な比重で添加することが好ましいことが分かる。
【0117】
以上では、実施例および実験例を通じて上述したタバコ抽出物シート10の構成および効果についてより詳細に説明した。
【0118】
以上、添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明したが、本開示の属する技術分野における通常の知識を有する者は、その技術的思想や必須の特徴を変更することなく、本開示が他の具体的な形態で実施可能であることが理解できる。したがって、以上で記述した実施形態は、すべての面において例示的なものであり、限定的なものでないことを理解しなければならない。本開示の保護範囲は、下記の請求範囲により解されるべきであり、それと同等な範囲内にあるすべての技術思想は、本開示により定義される技術的思想の権利範囲に含まれるものと解されるべきである。