(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】エネルギー貯蔵システムの充電容量算出装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/389 20190101AFI20240910BHJP
G01R 31/388 20190101ALI20240910BHJP
G01R 31/3828 20190101ALI20240910BHJP
G01R 31/367 20190101ALI20240910BHJP
G01R 31/374 20190101ALI20240910BHJP
【FI】
G01R31/389
G01R31/388
G01R31/3828
G01R31/367
G01R31/374
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023084832
(22)【出願日】2023-05-23
(62)【分割の表示】P 2020508444の分割
【原出願日】2019-02-20
【審査請求日】2023-05-30
(31)【優先権主張番号】10-2018-0020003
(32)【優先日】2018-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0019143
(32)【優先日】2019-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100229448
【氏名又は名称】中槇 利明
(72)【発明者】
【氏名】ボ・ミ・イム
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-540962(JP,A)
【文献】特開2013-178142(JP,A)
【文献】特開2015-215169(JP,A)
【文献】国際公開第2014/128904(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0231387(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36-31/396
H01M 10/42
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡張カルマンフィルタを用いて
、複数のバッテリーラックを含むエネルギー蓄積システムの充電容量を算出する方法であって、
前記エネルギー蓄積システムの抵抗(R)およびキャパシタンス(C)を算出し、算出された前記エネルギー蓄積システムの抵抗(R)およびキャパシタンス(C)の値から拡張カルマンフィルタの状態変数を算出する状態変数算出ステップ
と、
算出された状態変数をカルマンフィルタに適用して
前記エネルギー蓄積システムの充電容量を算出するエネルギー蓄積システム充電容量算出ステップ
と、を含
み、
前記エネルギー蓄積システムの抵抗(R)およびキャパシタンス(C)の値
を算出することは、
前記エネルギー蓄積システムに
前記エネルギー蓄積システムの抵抗およびキャパシタンス値の測定が可能な最小電流値から
0.1c-rateの範囲内の所定の電流を印加する電流印加ステップ;
前記所定の電流が印加される間の前記エネルギー蓄積システムの電圧を測定する第1電圧測定ステップ;
前記エネルギー蓄積システムに印加されていた前記所定の電流を切断した後、
前記エネルギー蓄積システムの電圧を測定する第2電圧測定ステップ;及び
前記第1電圧測定ステップで測定された
前記エネルギー蓄積システムの第1電圧、前記第2電圧測定ステップで測定された
前記エネルギー蓄積システムの第2電圧および前記所定の電流に基づいて
前記エネルギー蓄積システムの抵抗(R)およびキャパシタンス(C)を算出する抵抗(R)およびキャパシタンス(C)算出ステップを含
み、
前記エネルギー蓄積システムの抵抗(R)およびキャパシタンス(C)の値を算出することは、さらに、
温度別の前記エネルギー蓄積システムの抵抗(R)及びキャパシタンス(C)のルックアップテーブルを形成するために、前記エネルギー蓄積システムの温度を変更しながら、前記電流印加ステップ、前記第1電圧測定ステップ、前記第2電圧測定ステップ、および、前記抵抗(R)およびキャパシタンス(C)算出ステップを繰り返すことを含むことを特徴とするエネルギー蓄積システムの充電容量算出方法。
【請求項2】
前記状態変数算出ステップは、
前記エネルギー蓄積システムの充電容量に関する状態変数を生成する充電容量状態変数算出ステップ;および
前記エネルギー蓄積システムの電圧に関する状態変数を生成する電圧状態変数算出ステップ;を含
むことを特徴とする請求項
1に記載のエネルギー蓄積システムの充電容量算出方法。
【請求項3】
前記充電容量状態変数算出ステップは、
前記エネルギー蓄積システムで測定された電流を積算する電流積算法を用いて充電容量状態変数を算出し、
前記算出された充電容量状態変数は、下記の数式1に従って時間更新されることを特徴とする請求項
2に記載のエネルギー蓄積システムの充電容量算出方法。
【数1】
(但し、Q
capacity:二次電池の容量、k:時間インデックス、i[k]:時間インデックスkから測定された電流、t:時間)
【請求項4】
前記電圧状態変数算出ステップは、
電圧モデル回路を使用して前記エネルギー蓄積システムの電圧状態変数を算出し、
前記算出された電圧状態変数は、下記の数式2に従って時間更新されることを特徴とする請求項
3に記載のエネルギー蓄積システムの充電容量算出方法。
【数2】
(但し、R
1及びC
1は、
図5の回路モデルに含まれている抵抗及びキャパシタンスの値、k:時間インデックス、I[k]:時間インデックスkから測定された電流、t:時間)
【請求項5】
複数のバッテリーラック、および
前記複数のバッテリーラックを制御するBSC(Battery Section Controller)を含む構成のエネルギー蓄積システムであって、
前記BSCは、
当該エネルギー蓄積システムの出力電圧を測定する電圧測定部、
当該エネルギー蓄積システムの出力電流を測定する電流測定部、
当該エネルギー蓄積システムの抵抗およびキャパシタンス値が測定可能な最小電流値から
0.1c-rateの範囲内の所定の電流を印加して算出される温度別の
当該エネルギー蓄積システムの抵抗(R)およびキャパシタンス(C)を記録したルックアップテーブルが格納された格納部、および
前記ルックアップテーブルに格納された温度別の
当該エネルギー蓄積システムの抵抗(R)およびキャパシタンス(C)値を利用して
当該エネルギー蓄積システムの電圧状態変数および充電容量状態変数を算出し、算出された電圧状態変数および充電容量状態変数をカルマンフィルタに適用して
当該エネルギー蓄積システムの充電容量を算出する充電容量算出部、を含
み、
前記電圧測定部は、
当該エネルギー蓄積システムに前記所定の電流が印加される間の当該エネルギー蓄積システムの電圧である第1電圧、および
当該エネルギー蓄積システムに印加される電流が遮断された後の当該エネルギー蓄積システムの電圧である第2電圧;を測定し、
前記BSCは、前記ルックアップテーブルを形成するために、当該エネルギー蓄積システムの温度を変更しながら、前記第1電圧、前記第2電圧および前記所定の電流に基づいて、当該エネルギー蓄積システムの抵抗(R)およびキャパシタンス(C)を繰り返し算出するように構成されることを特徴とするエネルギー蓄積システム。
【請求項6】
前記充電容量算出部で算出された充電容量状態変数は、
下記の数式1に従って時間更新されることを特徴とする請求項
5に記載のエネルギー蓄積システム。
【数3】
(但し、Q
capacity:二次電池の容量、k:時間インデックス、I[k]:時間インデックスkから測定された電流、t:時間)
【請求項7】
前記充電容量算出部で算出される前記算出された電圧状態変数は、
下記の数式2に従って時間更新されることを特徴とする請求項
6に記載のエネルギー蓄積システム。
【数4】
(但し、R
1及びC
1は、
図5の回路モデルに含まれている抵抗及びキャパシタンスの値、k:時間インデックス、I[k]:時間インデックスkから測定された電流、t:時間)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー貯蔵システムの充電容量を算出する装置及び方法に関する。
【0002】
具体的には、拡張カルマンフィルターに用いられる電圧モデルの正確度を高めて、エネルギー貯蔵システムの充電容量を正確に算出する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
産業の発達と伴い、電力の需要が高まりつつあり、昼夜間、季節間、日別間の電力使用量の格差が次第に広がってきている。近年、この理由から、系統の余剰の電力を活用して、ピーク負荷を削減するための数多くの技術が急速に開発されている。
【0004】
これらの技術に代表されるものが、系統の余剰の電力をバッテリーに貯蔵したり、系統の不足した電力をバッテリーから供給したりするエネルギー貯蔵システムである。
【0005】
かようなエネルギー貯蔵システムの寿命を長時間にわたって維持し、かつ、安全に使用するためには、エネルギー貯蔵システムを適正な充電容量の範囲内で駆動せねばならず、エネルギー貯蔵システムの寿命は、充電/放電回数に応じて大きく異なる。
【0006】
したがって、エネルギー貯蔵システムの電流、電圧及び温度を測定して、エネルギー貯蔵システムの充電容量(SOC)を正確に算出することにより、エネルギー貯蔵システムの状態を把握することが重要である。
【0007】
従来のエネルギー貯蔵システムの充電容量(SOC)を算出する方法としては、電流積算法があった。しかしながら、従来の電流積算法は、電流を測定する電流センサーに誤差が存在し、電流を積算する過程において電流センサーの誤差もまた積算されてしまい、正確な充電容量を算出することが困難であった。
【0008】
このような従来の問題を解消するための別の従来の技術としては、エネルギー貯蔵システムの充電容量を算出するとき、前記電流センサーにおいて測定される電流に基づいて、充電容量を算出する電流積算方式と、エネルギー貯蔵システムの電圧モデルを拡張カルマンフィルターに代入して充電容量を算出する方法とがあった。
【0009】
しかしながら、従来の拡張カルマンフィルターに電流積算方式とエネルギー貯蔵システムの電圧モデルを使用する技術においても、エネルギー貯蔵システムの電圧モデルを算出するのに用いられる抵抗(R)、キャパシタンス(C)の正確度が低下して、最終的に算出される充電容量に誤差が生じてしまうという問題が依然として存在していた。
【0010】
したがって、本発明では、エネルギー貯蔵システムの電圧モデルを算出するのに用いられる抵抗(R)、キャパシタンス(C)を正確に算出し、電圧モデルの比重が高いカルマンフィルターを用いて、最終的に算出されるエネルギー貯蔵システムの充電容量の誤差を減らす装置及び方法を提案する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】大韓民国特許公報第10-2013-0105123号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、従来の問題を解消するためのものであって、エネルギー貯蔵システムの電圧モデルを正確に算出して、エネルギー貯蔵システムの正確な充電容量を算出する装置及び方法を提供する。
【0013】
より具体的には、エネルギー貯蔵システムの電圧モデルに用いられる抵抗(R)、キャパシタンス(C)を正確に算出して、正確な電圧モデルを拡張カルマンフィルターに代入することにより、正確な充電容量を算出する装置及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の実施の形態に係るエネルギー貯蔵システムの抵抗(R)及びキャパシタンス(C)を算出する方法は、前記エネルギー貯蔵システムに一定の値を有する所定の電流を印加する電流印加ステップと、前記エネルギー貯蔵システムに一定の値を有する所定の電流が印加される間の前記エネルギー貯蔵システムの電圧を測定する第1の電圧測定ステップと、前記エネルギー貯蔵システムに印加されていた、一定の値を有する所定の電流を切った後、エネルギー貯蔵システムの電圧を測定する第2の電圧測定ステップと、前記第1の電圧測定ステップにおいて測定されたエネルギー貯蔵システムの電圧、第2の電圧測定ステップにおいて測定されたエネルギー貯蔵システムの電圧、及び前記一定の値を有する所定の電流に基づいて、エネルギー貯蔵システムの抵抗(R)及びキャパシタンス(C)を算出する抵抗(R)及びキャパシタンス(C)算出ステップと、を含んでなってもよい。
【0015】
前記電流印加ステップにおいて印加される一定の値を有する所定の電流は、c-rate(Cレート)の低い電流である。
【0016】
本発明の他の実施の形態に係る低いc-rateにより算出された抵抗(R)及びキャパシタンス(C)に基づいて算出されるエネルギー貯蔵システムの電圧モデル及び拡張カルマンフィルターを用いてエネルギー貯蔵システムの充電容量を算出する方法は、前記拡張カルマンフィルターの状態変数を算出する状態変数算出ステップ、前記状態変数を前記拡張カルマンフィルターに代入してエネルギー貯蔵システムの充電容量を算出するエネルギー貯蔵システム充電容量算出ステップを含んでなってもよい。
【0017】
前記拡張カルマンフィルターは、前記状態変数を時間更新するステップと、前記状態変数の誤差共分散を時間更新するステップと、前記拡張カルマンフィルターのカルマンゲイン(gain)を算出するステップと、前記カルマンゲイン(gain)を用いて、状態変数を推定するステップと、前記カルマンゲイン(gain)を用いて、前記状態変数の誤差共分散を補正するステップと、を繰り返し行ってもよい。
【0018】
前記状態変数算出ステップは、前記エネルギー貯蔵システムの充電容量に対する状態変数を生成する充電容量状態変数算出ステップ及び前記エネルギー貯蔵システムの電圧に対する状態変数を生成する電圧状態変数算出ステップを含んでなってもよい。
【0019】
前記充電容量状態変数算出ステップにおいては、前記エネルギー貯蔵システムの電流を積算して充電容量状態変数を算出し、算出された充電容量状態変数は、拡張カルマンフィルターにおいて数式1に基づいて前記エネルギー貯蔵システムの電流を積算して算出された充電容量状態変数を時間更新してもよい。
【0020】
【数1】
(但し、Q
capacity:二次電池の容量、k:時間インデックス、I[k]:時間インデックスkから測定された電流、t:時間)
【0021】
前記電圧状態変数算出ステップにおいては、電圧モデル回路を用いて、前記エネルギー貯蔵システムの電圧状態変数を算出し、前記算出された電圧状態変数は、拡張カルマンフィルターにおいて、数式2に基づいて、前記エネルギー貯蔵システムの電圧状態変数を時間更新してもよい。
【0022】
【数2】
(但し、R
1及びC
1は、
図5の回路モデルに含まれている抵抗及びキャパシタンスの値、k:時間インデックス、I[k]:時間インデックスkから測定された電流、t:時間)
【0023】
一方、本発明の実施の形態に係るエネルギー貯蔵システムは、複数のバッテリーラックと、前記複数のバッテリーラックを制御するバッテリーセクションコントローラー(BSC;Battery Section Controller)と、を備えてなり、
前記BSCは、エネルギー貯蔵システムの出力電圧を測定する電圧測定部と、エネルギー貯蔵システムの出力電流を測定する電流測定部と、0.1c-rateの電流により算出された温度別のエネルギー貯蔵システムの抵抗(R)及びキャパシタンス(C)のルックアップテーブルが保存されている保存部と、前記測定された電圧と電流及び算出された抵抗及びキャパシタンスに基づいて、エネルギー貯蔵システムの充電容量を算出する充電容量算出部と、を備えてなってもよい。
【0024】
前記電圧測定部は、前記エネルギー貯蔵システムに所定の電流が印加される間のエネルギー貯蔵システムの電圧である第1の電圧及び前記エネルギー貯蔵システムに印加される電流が切れた後に、エネルギー貯蔵システムの電圧である第2の電圧を測定してもよい。
【0025】
前記充電容量算出部は、前記ルックアップテーブルの抵抗及びキャパシタンスに基づいて、エネルギー貯蔵システムの電圧に対する状態変数を算出する電圧状態変数算出部、及び前記測定されたエネルギー貯蔵システムの出力電流を積算する電流積算法を用いて、エネルギー貯蔵システムの充電容量に対する状態変数を算出する充電容量状態変数算出部を備えてなり、前記算出された電圧状態変数及び充電容量状態変数をカルマンフィルターに代入して、エネルギー貯蔵システムの充電容量を算出してもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、エネルギー貯蔵システムの電圧モデルに用いられる抵抗(R)、キャパシタンス(C)を正確に算出してエネルギー貯蔵システムの電圧モデルを正確に算出することができる。
【0027】
また、本発明は、正確なエネルギー貯蔵システムの電圧モデルを算出することにより、エネルギー貯蔵システムの充電容量を正確に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明のエネルギー貯蔵システムの電圧モデルを算出するのに用いられる抵抗(R)、キャパシタンス(C)を算出する方法を示すフローチャートである。
【
図2】本発明の実施の形態に係る拡張カルマンフィルターの動作を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の実施の形態に係るエネルギー貯蔵システムの電圧モデル算出するのに用いられる抵抗(R)、キャパシタンス(C)を算出する実際の実験方法(DCPR)を示す図である。
【
図4】従来の電圧モデルに基づいて算出された放電後の充電容量の変化と、本発明の電圧モデルの算出方法により算出された充電容量の変化とを比較した図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係るエネルギー貯蔵システムの電圧を算出する電圧モデル回路である。
【
図6】本発明のエネルギー貯蔵システムの電圧モデルを算出するのに用いられる抵抗及びキャパシタンス算出方法を用いてエネルギー貯蔵システムの充電容量を算出する方法を用いて算出された充電容量と、従来の技術(電流積算方法のみを用いる)により算出された充電容量とを比較する図である。
【
図7】誤差条件を反映して、本発明のエネルギー貯蔵システムの電圧モデルを算出するのに用いられる抵抗及びキャパシタンスの算出方法を用いてエネルギー貯蔵システムの充電容量を算出する方法を用いて算出された充電容量と、既存のアルゴリズム(高いc-rateにより算出された電圧モデル及びカルマンフィルターにおいて電圧モデルの比重が低いアルゴリズムを用いる従来の技術)により算出された充電容量とを比較する図である。
【
図8】既存のアルゴリズムと、本発明の充電容量推定方法を用いて容量テストを行った結果とを比較した図である。
【
図9】本発明の実施の形態に係るエネルギー貯蔵システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下では、添付図面に基づいて、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施の形態について詳しく説明する。しかしながら、本発明は、種々の異なる形態に具体化可能であり、ここで説明する実施の形態に何ら限定されるものではない。なお、図中、本発明を明確に説明するために、説明とは無関係な部分は省略し、明細書の全般に亘って、類似の部分には類似の図面符号を付している。
【0030】
「第1の」、「第2の」などのように序数を含む言い回しは、様々な構成要素を説明するうえで使用可能であるが、前記構成要素は、前記言い回しによって何等限定されない。前記言い回しは、ある構成要素を他の構成要素から区別する目的でしか使えない。例えば、本発明の権利範囲を逸脱しない範囲内において第1の構成要素は第2の構成要素と命名されてもよく、同様に、第2の構成要素もまた第1の構成要素と命名されてもよい。本出願において用いた用語は、単に特定の実施の形態を説明するために用いられたものであり、本発明を限定しようとする意図はない。単数の表現は、文脈からみて明らかに他の意味を有さない限り、複数の言い回しを含む。
【0031】
明細書の全般に亘って、ある部分が他の部分と「連結」されているとか、「接続」されているとか、と言及された場合、これは、前記ある部分が前記他の部分に「直接的に連結されたり接続」されたりする場合だけではなく、これらの間に他の素子を間に挟んで「電気的に連結されたり接続」されたりする場合をも含む。なお、ある部分がある構成要素を「備える」としたとき、これは、特に断りのない限り、他の構成要素を除外するわけではなく、他の構成要素をさらに備えていてもよいことを意味する。本願の明細書の全般に亘って用いられる度合いの言い回しである「~するステップ」又は「~のステップ」は、「~のためのステップ」を意味するものではない。
【0032】
本発明において用いられる用語としては、本発明における機能を考慮しつつ、できる限り現在汎広く用いられている一般的な用語を選択したが、これは、当分野に携わっている技術者の意図又は判例、新たな技術の出現などによって異なる。なお、特定の場合は、出願人が任意に選定した用語もあり、この場合に、当該する発明の説明の部分の欄において詳しくその意味を記載する。よって、本発明において用いられる用語は、単なる用語の名称ではなく、その用語が有する意味と本発明の全般に亘っての内容を踏まえて定義されるべきである。
【0033】
1.本発明の実施の形態に係るエネルギー貯蔵システムの電圧モデルを算出するのに用いられる抵抗(R)及びキャパシタンス(C)を算出する方法
従来のエネルギー貯蔵システムの充電容量を算出する方法であって、電流積算方法を用いてエネルギー貯蔵システムの充電容量を算出していた。電流積算方法は、充電電流及び放電電流を時間により積分して充電容量を決定する。しかしながら、電流積算方法は、充電電流及び放電電流を測定する電流センサーに誤差が存在し、このような誤差は、電流を積算する時間が累積されることにつれて一緒に累積されて、最終的に電流積算方法により算出される充電容量の正確度が低下してしまう。
【0034】
従来には、このような問題を解消するために、エネルギー貯蔵システムの電圧モデルと電流積算方法の両方を拡張カルマンフィルターに代入して、より正確な充電容量を算出していた。
【0035】
しかし、従来には、拡張カルマンフィルターに代入されるエネルギー貯蔵システムの電圧モデルを算出するのに用いられる抵抗(R)及びキャパシタンス(C)が正確に算出されないため、エネルギー貯蔵システムの充電容量に誤差が依然として存在していた。
【0036】
したがって、本発明では、エネルギー貯蔵システムの電圧モデルを算出するのに用いられる抵抗(R)及びキャパシタンス(C)を正確に算出する方法を提案する。
【0037】
図1は、本発明のエネルギー貯蔵システムの電圧モデルを算出するのに用いられる抵抗(R)及びキャパシタンス(C)を算出する方法である。
【0038】
本発明は、エネルギー貯蔵システムの電圧モデルを算出するのにエネルギー貯蔵システムの抵抗(R)及びキャパシタンス(C)が用いられる。
【0039】
本発明のエネルギー貯蔵システムの抵抗(R)及びキャパシタンス(C)の算出方法は、低いc-rateの電流を使用するところに特徴がある。
【0040】
本発明において、エネルギー貯蔵システムの抵抗(R)及びキャパシタンス(C)の算出方法は、
図3に示すDCPR方法を用いて算出可能である。
【0041】
以下では、
図1及び
図3に基づいて、本発明のエネルギー貯蔵システムの抵抗(R)及びキャパシタンス(C)を算出する方法について説明する。
【0042】
1-1.エネルギー貯蔵システムに一定の値を有する所定の電流を印加する電流印加ステップ(S110)
本発明は、エネルギー貯蔵システムに一定の値を有する所定の電流を印加して、エネルギー貯蔵システムの電圧の変化を測定し、これに基づいて、エネルギー貯蔵システムの抵抗(R)及びキャパシタンス(C)値を算出する。
【0043】
前記電流印加ステップは、所定の充電容量で充電されている状態のエネルギー貯蔵システムに一定の値を有する所定の電流を印加するステップである。このように、一定の値を有する所定の電流をエネルギー貯蔵システムに印加した後、次の第1の電圧測定ステップを行う。このとき、印加される一定の値を有する所定の電流は、低いc-rateを有する電流である。c-rateは、電流の強さを意味してもよい。
【0044】
印加される一定の値を有する電流としては、通算して2~3c-rate以上を有する電流を用いる。ところが、本発明の発明者は、2~3c-rateよりも低いc-rateの電流を印加して、エネルギー貯蔵システムの抵抗及びキャパシタンス値をより正確に算出することを想到した。
【0045】
したがって、本発明における前記低いc-rateの電流は、エネルギー貯蔵システムの抵抗及びキャパシタンスを測定可能な最小の電流値から2c-rateまでの値を有する電流であってもよい。
【0046】
好ましくは、前記低いc-rateを有する電流は、0.1c-rateの電流であってもよく、これは、1c-rateの電流の1/10に相当する値である。
【0047】
高いc-rateを有する電流を印加すれば、電流の印加が終わった後、エネルギー貯蔵システムの電圧に変動が生じる。これに対し、低いc-rateを有する電流を印加すれば、電流の印加が終わった後、エネルギー貯蔵システムの電圧が素早く安定してより正確なエネルギー貯蔵システムの抵抗(R)及びキャパシタンス(C)を算出することができる。
【0048】
1-2.エネルギー貯蔵システムに一定の値を有する所定の電流が印加される間のエネルギー貯蔵システムの電圧を測定する第1の電圧測定ステップ(S120)
本発明の第1の電圧測定ステップは、エネルギー貯蔵システムに一定の値を有する所定の電流が流れる間にエネルギー貯蔵システムの電圧を測定するステップである。
【0049】
具体的に、前記電圧印加ステップにおいて所定の充電容量で充電されている状態のエネルギー貯蔵システムに一定の値を有する所定の電流を印加すれば、前記エネルギー貯蔵システムの電圧は、所定の値だけ変動する。このとき、測定されるエネルギー貯蔵システムの電圧は、後述する抵抗(R)及びキャパシタンス(C)算出ステップにおいて用いられる。
【0050】
1-3.エネルギー貯蔵システムに印加されていた一定の値を有する所定の電流を切った後、エネルギー貯蔵システムの電圧を測定する第2の電圧測定ステップ(S130)
本発明の第2の電圧測定ステップは、前記第1の電圧測定ステップが終わった後、一定の値を有する所定の電流の印加を終了し、エネルギー貯蔵システムの電圧を測定するステップである。
【0051】
具体的に、エネルギー貯蔵システムに一定の値を有する所定の電流が印加されてから切れると、エネルギー貯蔵システムの電圧は変動する。例えば、充電方向に電流が印加されてから電流が切れる場合には、エネルギー貯蔵システムの電圧が下がり、放電方向に電流が印加されてから電流が切れる場合には、エネルギー貯蔵システムの電圧が上がってもよい。このときに測定されるエネルギー貯蔵システムの電圧の変動は、後述する抵抗(R)及びキャパシタンス(C)算出ステップにおいて用いられる。
【0052】
1-4.前記第1の電圧測定ステップにおいて測定されたエネルギー貯蔵システムの電圧、第2の電圧測定ステップにおいて測定されたエネルギー貯蔵システムの電圧及び前記一定の値を有する所定の電流に基づいて、エネルギー貯蔵システムの抵抗(R)、キャパシタンス(C)を算出する抵抗(R)、キャパシタンス(C)算出ステップ(S140)
本発明の抵抗(R)、キャパシタンス(C)算出ステップは、前記第1の電圧測定ステップ(S120)において測定されたエネルギー貯蔵システムの電圧、第2の電圧測定ステップ(S130)において測定されたエネルギー貯蔵システムの電圧及び前記一定の値を有する所定の電流に基づいて、エネルギー貯蔵システムの抵抗(R)及びキャパシタンス(C)を算出するステップである。具体的に、エネルギー貯蔵システムに印加される一定の値を有する所定の電流は既知であり、前記一定の値を有する所定の電流の流れの有無による電圧をも既知であるため、エネルギー貯蔵システムの抵抗(R)及びキャパシタンス(C)を算出することができる。
【0053】
例えば、
図5の回路において、前記V
cellは、OCV電圧とR
0に印加される電圧及びC
1に印加される電圧を合計した値である。一方、OCV値は、バッテリーセルの充電容量に応じて既に設定されている値であり、R
0の抵抗値は、時間tに測定されるV
cellの電圧(V
t)と時間t+1において測定されるV
cellの電圧(V
t+1)との差分を回路に流れる低いc-rateの電流で割った値であり、R
0に印加される電圧もまた既知である。したがって、C
1に印加される電圧値及び電流値が既知であるため 、R
1値とC
1値を算出することができる。
【0054】
このような方法でエネルギー貯蔵システムの温度を変更しながら繰り返し算出されたエネルギー貯蔵システムの抵抗(R)及びキャパシタンス(C)を温度別のエネルギー貯蔵システムの抵抗及びキャパシタンスルックアップテーブルの形式で作成して保存されてもよい。
【0055】
一方、本発明では、低いc-rate(0.1c-rate)を有する電流を用いているため、前記第2の電圧測定ステップにおいて測定されるエネルギー貯蔵システムの電圧は電流が流れない後に素早く安定することから、電流が流れるときのエネルギー貯蔵システムの電圧と、電流が流れないときのエネルギー貯蔵システムの電圧とが正確に測定される。
【0056】
したがって、前述したエネルギー貯蔵システムの抵抗(R)及びキャパシタンス(C)の算出方法を用いて、エネルギー貯蔵システムの電圧モデルを算出し、これに基づいて、エネルギー貯蔵システムの充電容量を算出すれば、エネルギー貯蔵システムの充電容量を正確に算出することができる。
【0057】
一方、本発明の電流印加ステップと第1の電圧測定ステップとの間、及び第1の電圧測定ステップと第2の電圧測定ステップとの間には所定の休止(rest)時間があってもよい。
【0058】
以下では、前述した本発明のエネルギー貯蔵システムの抵抗(R)及びキャパシタンス(C)の算出方法を用いて、エネルギー貯蔵システムの電圧モデルを正確に算出し、これに基づいて、エネルギー貯蔵システムの充電容量を算出する方法について説明する。
【0059】
2.本発明のエネルギー貯蔵システムの充電容量を算出する方法。
従来のエネルギー貯蔵システムの充電容量は、電圧モデルと電流積算モデルを拡張カルマンフィルターの状態変数として代入して算出していた。しかしながら、従来には、電圧モデルを算出するときに用いられる抵抗(R)及びキャパシタンス(C)値が正確に算出されないため、算出される充電容量に誤差が生じていた。
【0060】
具体的に、従来には、電圧モデルを算出するときに用いられる抵抗(R)及びキャパシタンス(C)を算出するとき、約2~3c-rateの高いc-rateの電流を用いて算出していた。
【0061】
しかし、本発明では、電圧モデルを算出するときに用いられる抵抗(R)及びキャパシタンス(C)を算出するとき、低いc-rateの電流を用いることにより、抵抗(R)及びキャパシタンス(C)の算出正確度を高めている。
【0062】
一方、前記低いc-rateの電流は、エネルギー貯蔵システムの抵抗及びキャパシタンスを測定可能な最小の電流値から2c-rateまでの値であってもよい。
【0063】
好ましくは、前記低いc-rateを有する電流は、0.1c-rateの電流であってもよく、これは、1c-rateの電流の1/10に相当する値である。
図4は、従来の電圧モデルに基づいて算出された放電後の充電容量の変化と、本発明の電圧モデルの算出方法により算出された充電容量の変化とを比較した図である。
【0064】
図4を参照すると、従来の方式により算出された抵抗(R)及びキャパシタンス(C)に基づいて電圧モデルを算出すれば、放電後に拡張カルマンフィルターにより算出される充電容量の変化率(3%)が大きいことを確認することができる。
【0065】
放電後には充電容量の変化がないことが正常であるが、従来の方式は3%の変化率があるため、従来の方式は不正確である。
【0066】
しかし、前述した本発明のように、低いc-rateの電流を用いて算出された抵抗(R)及びキャパシタンス(C)に基づいて電圧モデルを算出すれば、放電後に拡張カルマンフィルターにより算出される充電容量の変化率(0.5%)が非常に小さいことを確認することができる。
【0067】
すなわち、本発明は、放電後における充電容量の変化率が小さいことから、より正確に充電容量を算出する効果を奏するということが分かる。
【0068】
したがって、本発明のエネルギー貯蔵システムの充電容量算出方法を用いれば、従来よりも正確な充電容量を算出することができる。
【0069】
図2は、本発明の実施の形態に係る拡張カルマンフィルターの動作を示すフローチャートである。
【0070】
一方、拡張カルマンフィルターは、動的なシステムに対して外部において測定可能な変数とシステムの外乱(外部誤差)を考慮してシステムの状態を確率統計的に推定可能な適応的なソフトウェアアルゴリズムである。
【0071】
具体的に、拡張カルマンフィルターは、状態変数を時間更新するステップと、前記状態変数の誤差共分散を時間更新するステップと、前記拡張カルマンフィルターのカルマンゲイン(gain)を算出するステップと、前記算出されたカルマンゲイン(gain)を用いて状態変数を推定するステップと、前記カルマンゲイン(gain)を用いて前記状態変数の誤差共分散を補正するステップと、を繰り返し行ってもよい。
【0072】
すなわち、拡張カルマンフィルターは、推定→補正→推定→補正を繰り返し行って誤差を減らす方法である。
【0073】
本発明において、拡張カルマンフィルターの状態方程式は、状態変数を含んでなり、状態変数を時間に応じて更新する。状態変数としては、エネルギー貯蔵システムの充電容量状態変数とエネルギー貯蔵システムの電圧状態変数が用いられる。
【0074】
2.1 状態変数の一つであるエネルギー貯蔵システムの充電容量状態変数を算出する方法
本発明の状態変数のうち、エネルギー貯蔵システムの充電容量算出方法は、エネルギー貯蔵システムの電流を測定し、測定された電流を積算することにより、エネルギー貯蔵システムの充電容量を算出することができる。
【0075】
エネルギー貯蔵システムの電流を測定する方法としては、エネルギー貯蔵システムを制御及び管理するエネルギー貯蔵システム制御部において測定されるエネルギー貯蔵システムの電流情報を用いる方法が挙げられる。
【0076】
すなわち、充電容量状態変数の初期値は、エネルギー貯蔵システムの電流を測定し、これを電流積算法により積算することにより、SOC1値が算出可能である。
【0077】
前述した方法により算出されるエネルギー貯蔵システムの充電容量状態変数は、拡張カルマンフィルターにおいて下記の数式1で時間更新されてもよい。
【0078】
【数3】
(但し、Q
capacity:二次電池の容量、k:時間インデックス、I[k]:時間インデックスkから測定された電流、t:時間)
【0079】
2.2 状態変数のうち、エネルギー貯蔵システムの電圧状態変数を算出する方法
本発明の状態変数のうち、エネルギー貯蔵システムの電圧状態変数を算出する方法は、
図5の電圧モデル回路を用いて算出可能である。
【0080】
図5の電圧モデル回路は、エネルギー貯蔵システムに流れる所定の電流値に応じて可変となる開放電圧源210と、少なくとも一つの抵抗(R)
0 220と、R
1 230と、少なくとも一つのキャパシターC
1と、を備えてなる。前記電圧モデル回路を構成する抵抗(R)
0 220と、R
1 230とキャパシターC
1との値は、上述した本発明の実施の形態に従って低いc-rateの一定の値を有する電流により算出されて保存される温度別のエネルギー貯蔵システムの抵抗及びキャパシタンスルックアップテーブルから検出してもよい。
【0081】
このように、温度別のエネルギー貯蔵システムの抵抗及びキャパシタンスルックアップテーブルから前記電圧モデル回路を構成する抵抗及びキャパシタンス値を検出すれば、電圧状態変数の初期値であるV1値が算出可能である。
【0082】
具体的に、R1、C1、及びR0のそれぞれの値とR1、C1、及びR0のそれぞれに流れる電流が既知であるため、C1に印加される電圧であるV1値を算出することができる。
【0083】
一方、前述した方法により算出されるエネルギー貯蔵システムの電圧状態変数は、下記の数式2を用いて、拡張カルマンフィルターにおいて時間更新されてもよい。
【0084】
【数4】
(但し、R
1及びC
1は、
図5の回路モデルに含まれている抵抗及びキャパシタンスの値、k:時間インデックス、I[k]:時間インデックスkから測定された電流、t:時間)
【0085】
2.3 エネルギー貯蔵システムの充電容量を算出するエネルギー貯蔵システムの充電容量算出ステップ
一方、数式3は、本発明の拡張カルマンフィルターに状態変数として用いられる前記数式1(充電容量状態変数を時間更新する数式)及び数式2(電圧状態変数を時間更新する数式)をベクトル状態方程式で示す数式である。
【0086】
【数5】
(但し、Capacity:二次電池の容量、R
1及びC
1は、
図5の回路モデルに含まれている抵抗及びキャパシタンスの値、k:時間インデックス、I[k]:時間インデックスkから測定された電流、t:時間)
【0087】
前記数式3を拡張カルマンフィルターの初期値(k=0のとき)に取り込んでエネルギー貯蔵システムの充電容量を正確に算出することができる。
【0088】
本発明において用いられる拡張カルマンフィルターは、次の手順(時間更新(推定)→測定更新(補正)→時間更新(推定)→測定更新(補正))を繰り返し行って算出される充電容量の誤差を減らすことができる。
【0089】
【数6】
(P:誤差共分散、H:変換係数、K:カルマンゲイン、Q:真値に対する標準偏差A:状態変数(数式3)、z:観測値、R:観測真値との誤差、k:ステップの次数、u:追加入力値、I:単位行列)
【0090】
そして、拡張カルマンフィルターの誤差は、入力される状態変数の誤差が小さいほど、さらに正確な値を算出することができる。
【0091】
換言すれば、本発明は、前記低いc-rateの電流により算出された抵抗(R)及びキャパシタンス(C)の値で正確な電圧モデルを算出して拡張カルマンフィルターに代入することから、従来の技術により算出された電圧モデルに比べて誤差が減る。
【0092】
<具体的な実験データ>
以下では、本発明の特徴である低いc-rateを用いて測定されたエネルギー貯蔵システムの抵抗(R)及びキャパシタンス(C)を用いてエネルギー貯蔵システムの電圧モデルを生成し、これに基づいてエネルギー貯蔵システムの充電容量を算出した結果データと、従来の技術により算出された充電容量の結果データとを比較して説明する。
【0093】
表1及び
図6は、本発明のエネルギー貯蔵システムの電圧モデルを算出するのに用いられる抵抗及びキャパシタンス算出方法を用いてエネルギー貯蔵システムの充電容量を算出する方法を用いて算出された充電容量と、従来の技術(電流積算方法のみを用いる)により算出された充電容量とを比較する表及び図である。
【0094】
【0095】
表1において、前記外部誤差は、電流センサーによる誤差である。一方、前記外部誤差の有無に応じた温度別の誤差値は、実際に測定した充電容量値と、本発明または従来の方式による算出方法により算出された充電容量値との差分である。
【0096】
表1及び
図6を参照すると、外部誤差が存在しない場合(電流センサーに誤差がない場合)には、従来の技術により算出されたSOC(充電容量)の誤差が本発明の方法により算出されたSOC誤差よりも小さいことを確認することができる。これに対し、外部誤差が存在する場合には、本発明の方法により算出されたSOC誤差が従来の技術により算出されたSOC誤差よりも小さいことを確認することができる。なお、外部誤差が存在するとき、SOC誤差の増加率を見ても、本発明の方法により算出されたSOCの誤差は最大で約3%であるのに対し、従来の技術により算出されたSCO誤差は最大で7%を超えるため、2倍以上の差分が出る。
【0097】
したがって、外部誤差がない場合には従来の技術の方がより正確であるが、実際にエネルギー貯蔵システムに用いられる環境下では電流センサーには誤差が生じざるを得ないため、実際の使用環境下でエネルギー貯蔵システムの充電容量を算出する方法は、本発明の方法の方が従来の技術の方法よりも正確であるといえる。
【0098】
一方、表2及び
図7は、誤差条件を反映して、本発明のエネルギー貯蔵システムの電圧モデルを算出するのに用いられる抵抗及びキャパシタンス算出方法を用いてエネルギー貯蔵システムの充電容量を算出する方法を用いて算出された充電容量と、既存のアルゴリズム(高いc-rateにより算出された電圧モデル及びカルマンフィルターにおいて電圧モデルの比重が低いアルゴリズムを用いる従来の技術)により算出された充電容量とを比較する表及び図である。
【0099】
【0100】
表2及び
図7を参照すると、電流センサーに+-3%の誤差(外部誤差)がある場合(
図7の(a))に、既存のアルゴリズムにより算出された充電容量の最大の誤差は2.5%であるのに対し、本発明の充電容量(SOC)の算出方法を用いる場合(
図7の(b))、充電容量の最大の誤差は1%であって、既存のアルゴリズムよりも本発明の充電容量算出方法の方が、誤差がさらに小さいことを確認することができる。なお、エネルギー貯蔵システムの退化度(SOH)誤差(外部誤差)が+-5%であり、固定で発生する工程容量の許容誤差(外部誤差)の範囲が+-2.5%である場合には、既存のアルゴリズムにより算出された充電容量の最大の誤差は9%であるのに対し、本発明の充電容量算出方法を用いる場合、充電容量の誤差は最大で1.5%であることを確認することができる。
【0101】
結果的に、外部の誤差が大きいほど、既存のアルゴリズムを用いて充電容量を測定する場合よりも本発明の充電容量算出方法を用いる場合の方が、誤差が少なく生じることを確認することができる。
【0102】
一方、表3及び
図8は、既存のアルゴリズムと本発明の充電容量推定方法を用いて容量テストを行った結果とを比較した表及び図である。
【0103】
【0104】
表3及び
図8を参照すると、既存のアルゴリズムを用いて容量テストを行ったところ、充電方向では最大で3.9%の誤差が、かつ、放電方向では最大で5%の誤差が生じたことを確認することができる。これに対し、本発明の充電容量算出方法を用いて容量テストを行ったところ、充電方向では最大で2%、放電方向では最大で2、3%の誤差が生じることを確認することができる。
【0105】
結果的に、本発明の充電容量算出方法を用いる方が、充放電の両方に対して容量テストを行ったところ、誤差が小さいことを確認することができる。
【0106】
一方、既存のアルゴリズムは、前術したように、最大の誤差が生じると、現在の充電容量を正確に判断することができないため、最大で約1分ほどエネルギー貯蔵システムが充電または放電を続けることがある。このように、充電または放電を続けると、エネルギー貯蔵システムの最大の充電容量または最大の放電容量を外れた範囲内においても充電または放電が続くため、エネルギー貯蔵システムにダメージを与える虞がある。
【0107】
3.本発明の実施の形態に係るエネルギー貯蔵システム
図9は、本発明の実施の形態に係るエネルギー貯蔵システムの構成を示す図である。
【0108】
以下では、
図9に基づき、本発明の実施の形態に係るエネルギー貯蔵システムについて説明する。
【0109】
本発明の実施の形態に係るエネルギー貯蔵システム10は、複数のバッテリーラック11及び前記複数のバッテリーラックを制御するBSC(Battery Section Controller)110を備えてなってもよい。
【0110】
具体的に、前記BSC 110は、エネルギー貯蔵システムの出力電圧を測定する電圧測定部120と、エネルギー貯蔵システムの出力電流を測定する電流測定部130と、一定の値を有する所定の電流により算出された温度別のエネルギー貯蔵システムの抵抗及びキャパシタンスルックアップテーブルが保存されている保存部140及び前記測定された電圧と電流及び算出された抵抗及びキャパシタンスに基づいて、エネルギー貯蔵システムの充電容量を算出する充電容量算出部150を備えてなってもよい。
【0111】
一定の値を有する電流としては、通算して、2~3c-rate以上を有する電流を用いる。ところが、本発明の発明者は、2~3c-rateよりも低いc-rateの電流を印加して、エネルギー貯蔵システムの抵抗及びキャパシタンス値をより正確に算出することを想到した。
【0112】
したがって、本発明における前記低いc-rateの電流は、エネルギー貯蔵システムの抵抗及びキャパシタンスを測定可能な最小の電流値から2c-rateまでの値を有する電流であってもよい。
【0113】
好ましくは、前記低いc-rateを有する電流は、0.1c-rateの電流であってもよく、これは、1c-rateの電流の1/10に相当する値である。
【0114】
一方、前記電圧測定部120は、エネルギー貯蔵システムに所定の電流が印加される間のエネルギー貯蔵システムの電圧である第1の電圧及び前記エネルギー貯蔵システムに印加される電流が切れた後に、エネルギー貯蔵システムの電圧である第2の電圧を測定してもよい。
【0115】
一方、前記電流測定部130は、エネルギー貯蔵システムの出力電流を測定し、測定されたエネルギー貯蔵システムの出力電流は、後述するエネルギー貯蔵システムの充電容量状態変数値を算出するのに用いられる。
【0116】
前記保存部140に保存されているルックアップテーブルは、上述した本発明の実施の形態に係るエネルギー貯蔵システムの電圧モデルを算出するのに用いられる抵抗(R)及びキャパシタンス(C)を算出する方法に従って作成されて保存されてもよい。
【0117】
一方、前記充電容量算出部150は、前記ルックアップテーブルの抵抗及びキャパシタンスに基づいて、エネルギー貯蔵システムの電圧に対する状態変数を算出する電圧状態変数算出部151及び前記測定されたエネルギー貯蔵システムの出力電流を積算する電流積算法を用いて、エネルギー貯蔵システムの充電容量に対する状態変数を算出する充電容量状態変数算出部152を備えてなり、前記算出された電圧状態変数及び充電容量状態変数をカルマンフィルターに代入して、エネルギー貯蔵システムの充電容量を算出してもよい。
【0118】
具体的なエネルギー貯蔵システムの充電容量は、上述した本発明のエネルギー貯蔵システムの充電容量を算出する方法の手順を行って算出されてもよい。
【0119】
例えば、前記充電容量状態変数算出部において算出された充電容量状態変数は、下記の数式1に従って時間更新されてもよい。
【0120】
【数7】
(但し、Q
capacity:二次電池の容量、k:時間インデックス、I[k]:時間インデックスkから測定された電流、t:時間)
【0121】
一方、前記電圧状態変数算出部において算出される前記算出された電圧状態変数は、下記の数式2に従って時間更新されてもよい。
【0122】
【数8】
(但し、R
1及びC
1は、
図5の回路モデルに含まれている抵抗及びキャパシタンスの値、k:時間インデックス、I[k]:時間インデックスkから測定された電流、t:時間)
【0123】
一方、本発明の技術的思想は、前記実施形態に基づいて具体的に記述されたが、前記実施形態はその説明のためのものであり、その制限のためのものではないということに留意すべきである。なお、本発明の技術分野における当業者であれば、本発明の技術思想の範囲内において種々の実施形態が実施可能であるということが理解できる筈である。
【符号の説明】
【0124】
10 エネルギー貯蔵システム
11 バッテリーラック
110 BSC(Battery Section Controller)
120 電圧測定部
130 電流測定部
140 保存部
150 充電容量算出部
151 電圧状態変数算出部
152 充電容量状態変数算出部
210 開放電圧源