IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 華為技術有限公司の特許一覧

<>
  • 特許-電気光変調器、光チップ及び集積チップ 図1
  • 特許-電気光変調器、光チップ及び集積チップ 図2
  • 特許-電気光変調器、光チップ及び集積チップ 図3
  • 特許-電気光変調器、光チップ及び集積チップ 図3A
  • 特許-電気光変調器、光チップ及び集積チップ 図3B
  • 特許-電気光変調器、光チップ及び集積チップ 図3C
  • 特許-電気光変調器、光チップ及び集積チップ 図3D
  • 特許-電気光変調器、光チップ及び集積チップ 図4
  • 特許-電気光変調器、光チップ及び集積チップ 図5
  • 特許-電気光変調器、光チップ及び集積チップ 図6
  • 特許-電気光変調器、光チップ及び集積チップ 図7
  • 特許-電気光変調器、光チップ及び集積チップ 図8
  • 特許-電気光変調器、光チップ及び集積チップ 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】電気光変調器、光チップ及び集積チップ
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/035 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
G02F1/035
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022573431
(86)(22)【出願日】2020-05-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-26
(86)【国際出願番号】 CN2020093632
(87)【国際公開番号】W WO2021243493
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】503433420
【氏名又は名称】華為技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI TECHNOLOGIES CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Huawei Administration Building, Bantian, Longgang District, Shenzhen, Guangdong 518129, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ホォンミン
(72)【発明者】
【氏名】スン,モンディエ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,シン
(72)【発明者】
【氏名】タン,フゥション
(72)【発明者】
【氏名】シャオ,ハイフォン
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ,レイ
(72)【発明者】
【氏名】リィウ,レイ
【審査官】林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-194544(JP,A)
【文献】特表2016-537691(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110609399(CN,A)
【文献】国際公開第2019/039215(WO,A1)
【文献】特開2017-219587(JP,A)
【文献】特開2004-004589(JP,A)
【文献】特開2007-010942(JP,A)
【文献】国際公開第2014/104309(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0081314(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00-1/125
G02F 1/21-1/39
G02B 6/12-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光変調器であって、前記電気光変調器は基板の表面に配置され、前記電気光変調器は、
前記基板上に配置された光導波路層であって、前記基板に平行な電気-光結晶層と、前記基板と離れた前記電気-光結晶層の側に配置されたリッジ導波路と、を含み、前記リッジ導波路は対称的に配置された第1分岐と第2分岐を含み、前記第1分岐の入力端は前記第2分岐の入力端に結合され、前記第1分岐の出力端は前記第2分岐の出力端に結合される、光導波路層と、
前記光導波路層に配置された変調電極であって、前記変調電極は、前記リッジ導波路の光の伝搬方向に沿って前記リッジ導波路の両側に配置され、前記リッジ導波路を挟んでキャパシタを形成するよう配置される、変調電極と、
前記変調電極に配置され、前記変調電極に電気的に結合された金属電極と、
を含み、
前記金属電極の第1端は無線周波数ドライバに結合され、
前記金属電極は、前記無線周波数ドライバにより入力される変調信号を受信するよう構成され、前記変調電極は、前記変調信号に基づき、前記リッジ導波路により伝送される光波に電気光変調を実行するよう構成され、
前記金属電極の第2端は直流電圧端に結合され、前記直流電圧端は、電圧信号を入力し、前記金属電極を用いて前記電気光変調器にバイアス電圧を提供するよう構成され
前記変調電極が第1電極対と第2電極対を含み、前記第1電極対は前記第1分岐の光の伝搬方向に沿って前記第1分岐の両側に対称的に配置され、前記第2電極対は前記第2分岐の光の伝搬方向に沿って前記第2分岐の両側に対称的に配置され、
前記第1電極対の第1端が無線周波数ドライバの信号出力端に結合され、前記第1電極対の第2端が前記第2電極対の第1端に結合され、前記第2電極対の第2端が終端抵抗に結合され、
前記第1分岐と前記第2分岐は各々第1部分と第2部分を含み、前記第1分岐の前記第1部分は前記第1分岐のうち前記無線周波数ドライバの前記信号出力端に近い部分に配置され、前記第2分岐の前記第2部分は前記第2分岐のうち前記終端抵抗に近い部分に配置され、前記第1分岐の前記第2部分は前記第1分岐のうち前記終端抵抗に近い部分に配置され、前記第2分岐の前記第1部分は前記第2分岐のうち前記無線周波数ドライバの前記信号出力端に近い部分に配置され、
前記第1電極対に前記変調信号がロードされるとき、前記第1分岐の前記第1部分に電界がロードされ、前記第2分岐の前記第1部分に電界はロードされず、
前記第2電極対に前記変調信号がロードされるとき、前記第2分岐の前記第2部分に電界がロードされ、前記第1分岐の前記第2部分に電界はロードされない、電気光変調器。
【請求項2】
前記基板の前記表面に配置された絶縁層を更に含み、前記光導波路層と前記変調電極は、前記絶縁層の表面に配置され、前記変調電極の表面上の前記絶縁層に開口が配置され、前記金属電極は前記開口に形成される、請求項1に記載の電気光変調器。
【請求項3】
前記金属電極は連続的に配置され、前記変調電極は不連続に配置され、前記不連続に配置された変調電極は、複数の前記キャパシタを形成する、請求項1又は2に記載の電気光変調器。
【請求項4】
電気光変調器であって、前記電気光変調器は基板の表面に配置され、前記電気光変調器は、
前記基板上に配置された光導波路層であって、前記基板に平行な電気-光結晶層と、前記基板と離れた前記電気-光結晶層の側に配置されたリッジ導波路と、を含み、前記リッジ導波路は対称的に配置された第1分岐と第2分岐を含み、前記第1分岐の入力端は前記第2分岐の入力端に結合され、前記第1分岐の出力端は前記第2分岐の出力端に結合される、光導波路層と、
前記光導波路層に配置された変調電極であって、前記変調電極は、前記リッジ導波路の光の伝搬方向に沿って前記リッジ導波路の両側に配置され、前記リッジ導波路を挟んでキャパシタを形成するよう配置される、変調電極と、
前記変調電極に配置され、前記変調電極に電気的に結合された金属電極と、
を含み、
前記金属電極の第1端は無線周波数ドライバに結合され、
前記金属電極は、前記無線周波数ドライバにより入力される変調信号を受信するよう構成され、前記変調電極は、前記変調信号に基づき、前記リッジ導波路により伝送される光波に電気光変調を実行するよう構成され、
前記金属電極の第2端は直流電圧端に結合され、前記直流電圧端は、電圧信号を入力し、前記金属電極を用いて前記電気光変調器にバイアス電圧を提供するよう構成され、
前記変調電極が第1電極対と第2電極対を含み、前記第1電極対は前記第1分岐の光の伝搬方向に沿って前記第1分岐の両側に対称的に配置され、前記第2電極対は前記第2分岐の光の伝搬方向に沿って前記第2分岐の両側に対称的に配置され、
前記第1電極対と前記第2電極対の前記第1端は、無線周波数ドライバの信号出力端に別々に結合され、前記第1電極対と前記第2電極対の両方の第2端は、終端抵抗に結合され、
前記第1電極対は第1電極と第2電極を含み、前記第2電極対は第3電極と第4電極を含み、前記第1電極と前記第4電極は前記第1分岐と前記第2分岐の間に位置し、前記第1電極と前記第3電極は前記無線周波数ドライバの前記信号出力端の正極に結合され、前記第2電極と前記第4電極は前記無線周波数ドライバの前記信号出力端の負極に結合され、
前記光導波路層が電気光学材料を採用し、前記第1電極対によって前記第1分岐に印加される電界の方向は、前記第2電極対によって前記第2分岐に印加される電界の方向と同じであり、前記第1分岐から出力される光信号の位相は前記第2分岐から出力される光信号の位相と反対である電気光変調器。
【請求項5】
電気光変調器であって、前記電気光変調器は基板の表面に配置され、前記電気光変調器は、
前記基板上に配置された光導波路層であって、前記基板に平行な電気-光結晶層と、前記基板と離れた前記電気-光結晶層の側に配置されたリッジ導波路と、を含み、前記リッジ導波路は対称的に配置された第1分岐と第2分岐を含み、前記第1分岐の入力端は前記第2分岐の入力端に結合され、前記第1分岐の出力端は前記第2分岐の出力端に結合される、光導波路層と、
前記光導波路層に配置された変調電極であって、前記変調電極は、前記リッジ導波路の光の伝搬方向に沿って前記リッジ導波路の両側に配置され、前記リッジ導波路を挟んでキャパシタを形成するよう配置される、変調電極と、
前記変調電極に配置され、前記変調電極に電気的に結合された金属電極と、
を含み、
前記金属電極の第1端は無線周波数ドライバに結合され、
前記金属電極は、前記無線周波数ドライバにより入力される変調信号を受信するよう構成され、前記変調電極は、前記変調信号に基づき、前記リッジ導波路により伝送される光波に電気光変調を実行するよう構成され、
前記金属電極の第2端は直流電圧端に結合され、前記直流電圧端は、電圧信号を入力し、前記金属電極を用いて前記電気光変調器にバイアス電圧を提供するよう構成され、
前記変調電極が第1電極対、第2電極対、及び第3電極対を含み、前記第1電極対の第1端が前記無線周波数ドライバの信号出力端に結合され、前記第1電極対の第2端が前記第2電極対の第1端に結合され、前記第3電極対の第1端が前記第2電極対の第2端に結合され、前記第3電極対の第2端が終端抵抗に結合され、
前記第1分岐と前記第2分岐は各々、S字状に分布して互いに平行である第1部分、第2部分、及び第3部分を含み、前記第2部分は前記第1部分と前記第3部分の間に位置し、前記第1電極対は前記第1分岐の光の伝搬方向に沿って前記第1分岐の前記第1部分の両側に配置され、前記第2電極対は前記第2分岐の光の伝搬方向に沿って前記第2分岐の前記第2部分の両側に配置され、前記第3電極対は前記第1分岐の光の伝搬方向に沿って前記第1分岐の前記第3部分の両側に配置され、
前記第3電極対により前記第1分岐に印加される電界の方向は、前記第2電極対により前記第2分岐に印加される電界の方向と反対であり、
前記第1電極対に前記変調信号がロードされるとき、前記第1分岐の前記第1部分に電界がロードされ、前記第2分岐の前記第1部分に電界はロードされず、
前記第2電極対に前記変調信号がロードされるとき、前記第2分岐の前記第2部分に電界がロードされ、前記第1分岐の前記第2部分に電界はロードされず、
前記第3電極対に前記変調信号がロードされるとき、前記第1分岐の前記第3部分に電界がロードされ、前記第2分岐の前記第3部分に電界はロードされない、電気光変調器。
【請求項6】
光チップであって、基板と、請求項1~のいずれかに記載の電気光変調器とを含み、前記電気光変調器が前記基板の表面に配置されている、光チップ。
【請求項7】
入力導波路と出力導波路を更に含み、前記入力導波路が光導波路層の入力端に結合され、前記出力導波路が前記光導波路層の出力端に結合されている、請求項に記載の光チップ。
【請求項8】
光電検出器を更に含み、前記光電検出器は、結合導波路を使用して前記出力導波路に結合され、前記光電検出器は変調された光信号を検出するように構成される、請求項に記載の光チップ。
【請求項9】
集積チップであって、電気チップと、請求項6~8のいずれかに記載の光チップと、を含み、前記電気チップは前記光チップの表面に配置され、前記電気チップははんだボールを使用して溶接によって前記光チップに結合される、集積チップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の実施形態は、電気光変調の分野、特に、電気光変調器、光チップ、及び集積チップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光通信技術の発展に伴い、通信における光ネットワークの応用が普及している。例えば、インターネットを利用するために光ファイバブロードバンドを採用するユーザが増えている。ユーザがインターネットを利用するために光ファイバブロードバンドを採用する場合、電気光変調器を配備する必要がある。電気光変調器は、電気信号を光信号に変調するように構成することができる。
【0003】
既存の電気光変調器では、変調電極設計の駆動モードは、単端子交流結合の方法を採用している。キャパシタやインダクタなどの周辺回路は、信号処理のために配置する必要がある。結果として、構造が複雑で、サイズが比較的大きく、コストが高く、部品の小型化につながらない。
【発明の概要】
【0004】
本願の実施形態は、電気光変調器の複雑な周辺回路、高コスト及び大きなサイズの問題を解決するために、電気光変調器、光チップ及び集積チップを提供する。
【0005】
前述の目的を達成するために、本願は、以下の技術的ソリューションを採用する。本願の実施形態の第1態様によると、電気光変調器が提供される。電気光変調器は、基板の表面に配置される。電気光変調器は、基板上に配置される光導波路層と、光導波路層上に配置される変調電極と、変調電極上に配置され、変調電極と電気的に結合される金属電極とを含む。金属電極の第1端は無線周波数ドライバに結合されている。金属電極は、無線周波数ドライバによって入力された変調信号を受信するように構成されている。変調電極は、変調信号に基づいて光導波路層上で電気光変調を行うように構成される。金属電極の第2端は直流電圧端に結合され、直流電圧端は電圧信号を入力し、金属電極を使用して無線周波数ドライバにバイアス電圧を提供するように構成される。このように、変調電極は金属電極を用いて無線周波数ドライバの信号出力端に電気的に結合され、金属電極を用いて直流電圧端から入力される電圧信号を受けてよい。更に、金属電極は直流電圧端に結合されているため、無線周波数ドライバに電力を供給するために金属電極を多重化することができる。電気光変調器は金属電極を多重化し、開路直流結合によって電気光変調器のドライバに電力を供給する。複雑な周辺回路を配置する必要がないため、電気光変調器のコストとサイズが削減され、装置の小型化につながる。
【0006】
任意的な実装では、光導波路層は基板に平行な電気光学結晶層を含む。変調電極とリッジ導波路は、電気光結晶層の、基板から離れた側に配置される。変調電極は、リッジ導波路の2つの側に配置される。変調電極は、リッジ導波路によって伝送される光波に対して電気光変調を行うように構成される。このようにして、変調電極間にキャパシタを形成することができる。リッジ導波路によって伝送される光波に対して電気光変調を行うために、キャパシタ結合によって電界を形成することができる。
【0007】
任意的な実装では、電気光変調器は基板の表面に配置された絶縁層をさらに含む。光導波路層と変調電極は絶縁層に位置する。変調電極表面の絶縁層に開口部が配置され、その開口部に金属電極が形成される。このように、絶縁層に変調電極を配置することで、変調電極の短絡を回避する。
【0008】
任意的な実装では、光導波路層は対称的に配置された第1分岐と第2分岐を含む。第1分岐の入力端は第2分岐の入力端に結合され、第1分岐の出力端は第2分岐の出力端に結合される。変調電極の第1端は第1分岐と第2分岐の入力端に結合され、変調電極の第2端は第1分岐と第2分岐の出力端に結合される。変調電極の第1端は無線周波数ドライバの信号出力端に結合され、変調電極の第2端は終端抵抗に結合され、変調電極の第2端は直流電圧端に結合される。第1分岐から出力される光信号の位相は、第2分岐から出力される光信号の位相と反対である。このように、プッシュプル変調方式が実装され、変調効率が向上する。
【0009】
任意の実装では、変調電極は第1電極対と第2電極対を含み、第1電極対は第1分岐の2つの側に対称的に配置され、第2電極対は第2分岐の2つの側に対称的に配置される。このように、第1電極対と第2電極対は、第1分岐と第2分岐とで別々に変調を行うことができる。また、変調電極は対称構造を採用しているため、チャープフリー変調を実現でき、信号の伝送品質を確保することができる。
【0010】
任意的な実装では、第1電極対の第1端は無線周波数ドライバの信号出力端に結合される。第1電極対の第2端は第2電極対の第1端に結合される。第2電極対の第2端は直流電圧端に結合される。第1分岐と第2分岐は各々第1部分と第2部分を含む。第1分岐の第1部分は第2分岐の第1部分と反対であり、第1分岐の第2部分は第2分岐の第2部分と反対である。第1電極対は第1分岐の第1部分の両側に配置され、第2電極対は第2分岐の第2部分の両側に配置される。第1分岐の分極方向は第2分岐の分極方向と反対である。第1電極対により第1分岐に印加する電界の方向は、第2電極対により第2分岐に印加する電界の方向と同じである。そのため、動作中は、まず無線周波数ドライバの信号出力端を使用して電気光変調器の第1電極対に無線周波数信号をロードし、次に電気光変調器の第2電極対にロードする。第1電極対及び第2電極対は直列に結合され、第1電極対により第1分岐に印加する電界の方向は第2電極対により第2分岐に印加する電界の方向が同じになるようにする。第1分岐の分極方向と第2分岐の分極方向が逆になるため、最終的に第1分岐から出力される光信号の位相と第2分岐から出力される光信号の位相が逆になる。そのため、周辺回路を導入せずにプッシュプル変調方式を実装し、その結果、変調効率を向上させ、電気光変調器のサイズを小さくすることができる。
【0011】
任意的な実装では、変調電極はさらに第3電極対を含む。第1電極対の第1端は無線周波数ドライバの信号出力端に結合され、第1電極対の第2端は第2電極対の第1端に結合される。第3電極対の第1端は第2電極対の第2端に結合され、第3電極対の第2端は直流電圧端に結合される。第1分岐と第2分岐にはそれぞれ、第1部分、第2部分、及び第3部分が含まれ、これらは互いに平行でありS字状に分布し、第2部分は第1部分と第3部分の間に位置する。第1電極対は第1分岐の第1部分の2つの側に配置され、第2電極対は第2分岐の第2部分の2つの側に配置され、第3電極対は第1分岐の第3部分の2つの側に配置される。第1電極対により第1分岐に印加する電界の方向は、第2電極対により第2分岐に印加する電界の方向と反対である。第3電極対により第1分岐に印加される電界の方向は、第2電極対により第2分岐に印加される電界の方向と反対である。第1分岐の分極方向は第2分岐の分極方向と同じである。そのため、動作中は、まず無線周波数ドライバの信号出力端を使用して、電気光変調器の第1電極対に無線周波数信号をロードし、第2分岐の第1部分には電界をロードしない。次に、光路と電界を変調アームで180°回転させる。その結果、無線周波数信号は、電気光変調器の第2電極対にロードされる。この場合、電界は第1分岐の第2部分にロードされない。その後、光路と電界は変調アームで再び180°回転する。その結果、無線周波数信号は、電気光変調器の第3電極対にロードされる。電界は第2分岐の第3部分にロードされない。したがって、第1電極対の電界の方向は第2電極対の電界の方向と反対であり、第3電極対の電界の方向は第2電極対の電界の方向と反対である。第1分岐の分極方向と第2分岐の分極方向が同じになり、その結果、最終的に第1分岐から出力される光信号の位相と第2分岐から出力される光信号の位相が逆になる。そのため、周辺回路を導入せずにプッシュプル変調方式を実装し、その結果、変調効率を向上させ、電気光変調器のサイズを小さくすることができる。
【0012】
任意的な実装では、第1電極対と第2電極対の第1端は、無線周波数ドライバの信号出力端に別々に結合され、第1電極対と第2電極対の両方の第2端は抵抗器に結合される。第1電極対は第1電極と第2電極を含み、第2電極対は第3電極と第4電極を含む。例えば、第1電極と第2電極は各々第1分岐と第2分岐の両側に位置し、第3電極と第4電極は第1分岐と第2分岐の間に位置する。第1電極、第2電極、第3電極、第4電極は、第1電極対により第1分岐に印加される電界の方向と第2電極対により第2分岐に印加される電界の方向が逆になり、第1分岐の分極方向が第2分岐の分極方向と同じになるように、S+S-とS-S+の入力様式を採用することができる。このように、第1電極対と第2電極対は並列に結合される。第1電極対と第2電極対の正極と負極の間の結合方法を調整して、第1分岐から最終的に出力される光信号の位相と第2分岐から最終的に出力される光信号の位相が逆になるように、第1電極対と第2電極対の電界の方向を変更することで、プッシュプル変調方式を実装できる。したがって、変調効率を向上させ、電気光変調器のサイズを小さくすることができる。
【0013】
任意的な実装では、第1電極対と第2電極対の第1端は、無線周波数ドライバの信号出力端に別々に結合され、第1電極対と第2電極対の両両方の第2端は抵抗器に結合される。第1電極対は第1電極と第2電極を含み、第2電極対は第3電極と第4電極を含む。例えば、第1電極と第2電極は各々第1分岐と第2分岐の両側に位置し、第3電極と第4電極は第1分岐と第2分岐の間に位置する。第1電極、第2電極、第3電極、第4電極は、第1電極対により第1分岐に印加される電界の方向と第2電極対により第2分岐に印加される電界の方向が同じになり、第1分岐の分極方向が第2分岐の分極方向と反対になるように、S+S-とS+S-の入力方法を採用することができる。このように第1電極と第2電極対を並列に結合されることで、第1電極対の電界の向きと第2電極対の電界の向きが同じになり、第1分岐の分極の向きと第2分岐の分極の向きが逆になるようにして、最終的に第1分岐から出力される光信号の位相と第2分岐から出力される光信号の位相が逆になる、つまりプッシュプル変調方式を実装する。したがって、変調効率を向上させ、電気光変調器のサイズを小さくする。
【0014】
本願の第2態様によれば、基板と前述の電気光変調器を含む光チップが提供され、ここで、電気光変調器は基板の表面に配置される。そのため、光チップは前述の電気光変調器を採用しており、光チップの小型化と他のチップとのパッケージングを容易にしている。
【0015】
任意的な実装では、光チップはさらに入力導波路と出力導波路を含み、入力導波路は電気光変調器の入力端に結合され、出力導波路は電気光変調器の出力端に結合される。このように、被変調光信号は入力導波路を用いて入力でき、変調光信号は出力導波路を用いて出力できる。
【0016】
任意的な実装では、光チップはさらに光電検出器を含み、光電検出器は結合導波路を使用して出力導波路に結合され、光電検出器は変調された光信号を検出するように構成される。このように、光電検出器を配置して、高集積度を有し及び受信と送信を統合した小型光チップを実装することができる。
【0017】
本願の第3態様によれば、電気チップと前述の光チップを含む集積チップが提供され、電気チップは光チップの表面に配置され、電気チップははんだボールを使用して溶接により光チップに結合される。このように、溶接結合方式を採用しており、回路の簡素化に役立っている。また、光チップのサイズが小さくなり、集積チップのサイズが小さくなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】電気光変調器の等価回路図である。
【0019】
図2】本願の実施形態による電気光変調器の構造の概略図である。
【0020】
図3】本願の実施形態による電気光変調器の更に別の等価回路の図である。
【0021】
図3A】本願の実施形態による電気光変調器のXカット構造の概略図である。
【0022】
図3B】本願の実施形態による電気光変調器のZカット構造の概略図である。
【0023】
図3C】本願の実施形態による電気光変調器のYカット構造の概略図である。
【0024】
図3D】本願の実施形態によるニオブ酸リチウム材料の電気ヒステリシス曲線の図である。
【0025】
図4】本願の実施形態による別の電気光変調器の等価回路の図である。
【0026】
図5】本願の実施形態による別の電気光変調器の等価回路の図である。
【0027】
図6】本願の実施形態による別の電気光変調器の等価回路の図である。
【0028】
図7】本願の実施形態による光チップの構造の概略図である。
【0029】
図8】集積チップの構造の概略図である。
【0030】
図9】本願の実施形態による集積チップの構造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本願の目的、技術的ソリューション、及び利点を明確にするために、以下は、添付の図面を参照して本願を詳細に説明する。
【0032】
以下で言及される用語「第1」及び「第2」は、単に説明の目的を意図しており、相対的な重要性の指示又は示唆、又は示される技術的特徴の量の暗示的示唆として理解されるべきではない。従って、「第1」又は「第2」により限定される特徴は、明示的示す又は暗示的に1つ以上の特徴を含んでよい。本願の説明では、特に断りの無い限り、「複数の」は、2つ又は2より多くを意味する。
【0033】
また、本願では、添付の図面に示されている部品の例示的な位置に対して、「上」や「下」などの方向用語が定義されている。これらの方向用語は、相対的な概念であり、相対的な説明と明確化のために使用され、添付の図面に示されている部品の位置の変更に基づいてそれに応じて変更される可能性があることを理解する必要がある。
【0034】
本願は、光ネットワーク内の電気領域から光領域に変換する変換インタフェースとして使用することができ及び通信システムで使用される電気光変調器を提供する。
【0035】
光ネットワークは、光ファイバを主な伝送媒体として使用する、広域ネットワーク、大都市域ネットワーク、又は新しく作成された広範囲のローカルエリアネットワークであることに注意する必要がある。
【0036】
図1は、電気光変調器の構造の概略図である。なお、電気光変調器は通常、半導体部品である。図1は半導体部品の等価回路図である。図1に示すように、電気光変調器は対称的に配置された第1分岐202と第2分岐201を含み、第1分岐202の入力端は第2分岐201の入力端に結合され、第1分岐202の出力端は第2分岐201の出力端に結合される。
【0037】
例えば、電気光変調器はマッハツェンダー変調器(Mach-Zehnder Modulator)であり、入力光を2つの等しい信号に分割して、各々第1分岐202と第2分岐201に入力する。第1分岐202と第2分岐201は電気光材料、例えばニオブ酸リチウム材料を採用している。ニオブ酸リチウム材料の屈折率は、外部から加えられる電気信号の大きさによって変化する。
【0038】
第1分岐202と第2分岐201の両側に、第1金属層101と第2金属層103がそれぞれ配置されている。第3金属層102は、第1分岐202と第2分岐201の間に配置されている。第1金属層101と第3金属層102は第1電極対を形成し、第2金属層103と第3金属層102は第2電極対を形成する。
【0039】
例えば、電気光変調器の入力端の側に無線周波数入力端11と直流電圧端12が配置されている。無線周波数入力端11(すなわち、電気光変調器のドライバの出力端)は、高周波数変調交流電気信号を第1電極対と第2電極対に入力するように構成されている。直流電圧端12は、直流バイアス電気信号を電気光変調器のドライバに入力するように構成されている。
【0040】
例えば、高周波数ドライバの信号出力端11は、キャパシタ111を使用して第1電極対と第2電極対に結合されている。キャパシタ111は、直流信号を除去するように構成されている。直流電圧端12はインダクタ121を用いて電気光変調器の変調電極に結合され、インダクタ121は高周波数信号を除去するように構成されている。
【0041】
直流電圧端12によって入力された変調信号は、第1電極対と第2電極対を含むキャパシタ構造111を用いて、第1分岐202と第2分岐201に別々に結合することができる。
【0042】
上記の実施形態では、例えば、第1電極対と第2電極対は交流バイアス電極を採用している。高周波数交流信号のみが変調器に入力されることと、直流信号のみが信号出力端11に入力されることを実現するために、無線周波数ドライバの信号出力端11、直流電圧端12、並びに電気光変調器の第1電極対と第2電極対の間に、キャパシタ111やインダクタ121などの周辺回路を配置し、各々直流信号と高周波数交流信号を得る。周辺回路の構造は複雑で、デバイスサイズも比較的大きく、デバイスの小型化にはつながらない。
【0043】
図8は、本願による集積チップの構造の概略図である。図8に示すように、集積チップは、基板01、基板上に配置された光チップ01及び電気チップ03を含む。例えば、光チップ02は図1に示す電気光変調器を採用しており、比較的大きなサイズである。光チップ02と電気チップ03はワイヤで結合されている。
【0044】
本願の実施形態は、電気光変調器を提供する。図2は、本願の実施形態による電気光変調器の構造の概略図である。図3は、本願の実施形態による電気光変調器の等価回路の図である。図2及び図3に示すように、電気光変調器は、基板01上に配置される光導波路層002と、光導波路層002上に配置される変調電極003と、変調電極003上に配置され、変調電極003と電気的に結合される金属電極004とを含む。
【0045】
第1電極004の第1端は無線周波数ドライバの信号出力端11に結合される。
【0046】
金属電極004は、無線周波数ドライバによって入力された変調信号を受信するように構成されており、変調電極は、変調信号に基づいて光導波路層上で電気光変調を行うように構成されている。
【0047】
金属電極004の第2端は直流電圧端12に結合される。直流電圧端12は、電圧信号を入力するように構成されており、金属電極004を使用して無線周波数ドライバにバイアス電圧を提供する。
【0048】
無線周波数ドライバは、少なくとも無線周波数信号出力端とバイアス電圧入力端を含むことに注意する必要がある。例えば、無線周波数信号出力端は、金属電極004を使用して変調電極003に結合される。無線周波数信号出力端は、金属電極004に無線周波数信号を出力することができる。変調電極003は、変調信号に基づいて光導波路層上で電気光変調を行うように構成される。バイアス電圧入力端は、金属電極004に結合され、直流電圧端から出力されるバイアス電圧を、金属電極004を使用して受け取り、無線周波数ドライバに電力を供給することができる。
【0049】
無線周波数信号出力端とバイアス電圧入力端の具体的な配置方法は、当業者に知られている従来技術であり、詳細についてはここでは説明しない。
【0050】
図3に示すように、金属電極004を連続的に配置し、異なる変調電極003は不連続である。そのため、無線周波数ドライバから入力された高周波数変調信号は、変調電極003を用いて導波路にロードされ、終端抵抗104で終端されてよい。直流電圧端12から送信される直流電圧信号は、無線周波数ドライバへの動作に必要なバイアス電圧を、金属電極004を用いて与えることができる。
【0051】
動作中、直流電圧端12は、金属電極を用いて無線周波数ドライバに電力を供給することにより、無線周波数ドライバが動作を開始し、その後、無線周波数ドライバは変調信号を出力する。金属電極004は、無線周波数ドライバによって入力された変調信号を受信し、変調電極003は、変調信号に基づいて光導波路層上で電気光変調を行う。
【0052】
本願の実施形態で提供される電気光変調器によれば、変調電極は、無線周波数ドライバの信号出力端に金属電極を用いて電気的に結合され、直流電圧端から入力された電圧信号を、金属電極を用いて受信する。更に、直流電圧端に金属電極を結合させることにより、無線周波数ドライバに電力を供給するために金属電極を多重化することができる。電気光変調器は金属電極を多重化し、開路直流結合によって電気光変調器のドライバに電力を供給する。複雑な周辺回路を配置する必要がないため、電気光変調器のコストとサイズが削減され、装置の小型化につながる。
【0053】
図2に示すように、光導波路層002は、基板に平行な電気光学結晶層005と、電気光学結晶層005の側で基板から離れた側に配置されたリッジ導波路006を含んでいる。変調電極003は、リッジ導波路006の2つの側に配置される。変調電極003は、リッジ導波路006によって伝送される光波に対して電気光変調を行うように構成される。このように、変調電極003はキャパシタを形成し、キャパシタ結合によって変調電極003間に電界を形成し、リッジ導波路006によって伝送される光波に対して電気光変調を行うことができる。
【0054】
なお、電気光学結晶層005とリッジ導波路006を一体的に形成してもよいことに注意する。例えば、電気光学結晶層005とリッジ導波路006の材料は電気光学材料であり、具体的にはニオブ酸リチウム材料である。ニオブ酸リチウム材料の屈折率は、外部から加えられる電気信号の大きさによって変化する。
【0055】
例えば、基板01の材料はシリコン(Si)であり、基板01の表面に絶縁層02が配置されている。例えば、絶縁層02の材料は二酸化ケイ素である。光導波路層002と変調電極003は絶縁層02に位置する。
【0056】
本願の他の幾つかの実施形態では、更に図2を参照すると、変調電極の表面の絶縁層に開口部が配置され、開口部に金属電極004が形成されている。
【0057】
このように、変調電極003は絶縁層に配置され、変調電極003の動作中の短絡を回避することができる。
【0058】
図3に示すように、光導波路層には、対称的に配置された第1分岐202と第2分岐201(すなわち、図2のリッジ導波路006)があり、第1分岐202と第2分岐201の各々の両側に変調電極(図3の10と20)が配置されている。
【0059】
第1分岐202の入力端は第2分岐201の入力端に結合され、第1分岐202の出力端は第2分岐201の出力端に結合されている。
【0060】
変調電極は第1分岐202と第2分岐201の両側に配置され、第1分岐202と第2分岐201の周囲の電界を変調するように構成されており、第1分岐202から出力される光信号の位相と第2分岐201から出力される光信号の位相が逆になるようになっている。変調電極の第1端は第1分岐202と第2分岐201の入力端21に結合され、変調電極の第2端は第1分岐202と第2分岐201の出力端22に結合される。変調電極の第2端は終端抵抗104に結合されている。
【0061】
終端抵抗104は直列に結合された2つの抵抗器であってもよい。例えば、抵抗値は32.5オームである。
【0062】
第1分岐202の位相方向と第2分岐201の位相方向が逆になることには、第1分岐202の分極方向と第2分岐201の分極方向が同じであり、変調電極対により第1分岐202と第2分岐201に印加する電界の方向を調整して、第1分岐202の電界の方向と第2分岐201の電界の方向が逆になり、第1分岐202の位相の方向と第2分岐201の位相の方向が逆になるようにすることを含む。
【0063】
あるいは、変調電極対により第1分岐202と第2分岐201に印加される外部印加電界の方向を同じにし、第1分岐202の分極方向は第2分岐201の分極方向と逆にすることで、第1分岐202の位相方向は第2分岐201の位相方向と逆になるようにする。
【0064】
例えば、第1分岐202と第2分岐201は電気光材料、具体的にはニオブ酸リチウム材料を採用している。ニオブ酸リチウム材料の屈折率は、外部から加えられる電気信号の大きさによって変化する。
【0065】
第1分岐202及び第2分岐201の分極方向は、本願のこの実施形態では制限されない。本願の実装では、図2に示すように、第1分岐202及び第2分岐201は、Zカットされたニオブ酸リチウム基板上に作成され、Y方向に沿って光を伝送する構造を採用してもよい。
【0066】
本願の別の実装では、図3Aに示すように、第1分岐202及び第2分岐201は、Xカットされたニオブ酸リチウム基板上に作成され、Z方向に沿って光を伝送する構造を代替的に採用してもよい。
【0067】
本願の別の実装では、図3Bに示すように、第1分岐202及び第2分岐201は、Zカットされたニオブ酸リチウム基板上に作成され、X軸方向に沿って光を伝送する構造を代替的に採用してもよい。
【0068】
本願の別の実装では、図3Cに示すように、第1分岐202及び第2分岐201は、Yカットされたニオブ酸リチウム基板上に作成され、Z方向に沿って光を伝送する構造を代替的に採用してもよい。
【0069】
なお、ニオブ酸リチウムは優れた強誘電体材料であり、自発分極と外部印加電界を用いた分極の特徴を持つ。図3Dはニオブ酸リチウム材料の電気ヒステリシス曲線を示す。水平座標は外部印加電界強度E、垂直座標は分極強度P、Psは対応する分極強度のニオブ酸リチウム材料の分極方向である。ニオブ酸リチウム材料に外部から逆電界を印加すると、自発分極の方向が反転する傾向がある。外部から印加された電界が十分に強い場合、イオンは障壁を乗り越え、ある平衡位置から別の平衡位置への遷移を生じる。そのため、分極方向が逆転し、変化トラックは曲線1に従う。この場合、電界強度は低下する。分極強度は、電気ヒステリシスループと呼ばれる別の曲線2に従って変化する。電界強度が0に減少しても、自発分極は存在したままである。この場合、分極方向はA点からB点に変化する、すなわち分極方向が反転する。逆方向に電圧をかけ続け、電界強度が特定の値に達するときのみ、分極強度は0になる。この電圧値を保磁力Ecという。
【0070】
本願のこの実施形態では、パルス電圧を追加して、電気光変調器の第2分岐201で分極を実行し、第1分岐202の分極方向が第2分岐201の分極方向と反対になるようにすることができる。例えば、無線周波数信号を最初に変調器の第1分岐202にロードすることができる。ロードされた電界の方向は、図2の矢印で示されている。外部から印加された電界の方向は、方向"+Z"と反対になる。無線周波数信号が、等価変調領域の1/2の長さにロードされた後、電界は第2分岐201に変換される。分極後の方向"+Z"は下向きの矢印で示され、電界の方向は変化せず、第1分岐202の分極方向と第2分岐201の分極方向は逆になる。
【0071】
さらに、例えば、電気光変調器は、無線周波数ドライバの信号出力端11(すなわち、電気光変調器のドライバの出力端)と直流電圧端12をさらに含む。無線周波数ドライバの信号出力端11は、変調電極の第1端に結合され、無線周波数ドライバの信号出力端11は、変調信号を入力するように構成される。直流電圧端12は、終端抵抗104を使用して変調電極の第2端に結合され、直流電圧端12は、直流バイアス電気信号を電気光変調器のドライバに入力するように構成される。
【0072】
動作中、入力された光波は電気光変調器の入力端を通過した後、1つのY分岐で2つの等しい光波に分割され、2つの等しい光波は各々第1分岐202と第2分岐201を用いて伝送される。第1分岐202と第2分岐201は電気光学材料で作られており、外部から加えられた電界の大きさによって電気光学材料の屈折率が変化するため、2つの光信号が第2Y分岐に到達するとき位相差が生じる。
【0073】
無線周波数ドライバの信号出力端11から入力された無線周波数信号は、電気光変調のために変調電極に直接結合される。電界強度を調整して光信号の位相差を変化させ、光信号を変調する。最後に、直列に結合された終端抵抗104で無線周波数信号を終端する。さらに、終端抵抗104に直流バイアス電圧をロードして、電気光変調器のドライバに電力を供給することもできる。
【0074】
本願の本実施形態で提供される電気光変調器によれば、無線周波数ドライバの信号出力端11と直流電圧端12は、変調電極の2つの端に位置する。変調電極は開回路直流結合の方式を採用している。従来の単端子交流結合と比較して、キャパシタ111やインダクタ121などのフィルタリング部品を配置する必要がなく、周辺回路が大幅に簡略化されている。電気光変調器の性能に影響を与えないことを前提とすれば、電気光変調器の集積度をさらに向上させることができ、高密度パッケージレイアウトの困難さや配線圧力を効果的に低減することができ、チップのコパッケージ化を容易にすることができる。また、変調電極は対称構造を採用しているため、チャープフリー変調を実現でき、信号の伝送品質を確保することができる。
【0075】
また、電気光変調器は、プッシュプル方式で変調を実行するため、第1分岐202の位相方向と第2分岐201の位相方向が逆になり、それにより変調効率を向上する。
【0076】
変調電極の特定の構造は、本願の実施形態において限定されない。本願の実装では、図2に示すように、変調電極は第1電極対20と第2電極対10を含み、第1電極対20は第1分岐202の両側に配置され、第2電極対10は第2分岐201の両側に配置される。
【0077】
本願の実装では、第1分岐202の分極方向は第2分岐201の分極方向と反対である。第1電極対20により第1分岐202に印加する電界の方向は、第2電極対10により第2分岐201に印加する電界の方向と同じである。電気光変調器は、プッシュプル方式で駆動される。
【0078】
例えば、図に示すように、第1電極対20と第2電極対10は直列に結合される。第1電極対20の第1端は無線周波数ドライバの信号出力端11に結合される。第1電極対20の第2端は第2電極対10の第1端に結合される。第2電極対10の第2端は抵抗器に結合され、第2電極対の第2端は直流電圧端12に結合される。
【0079】
更に図を参照する。第1分岐202と第2分岐201は各々第1部分と第2部分を含む。第1分岐202の第1部分は第2分岐201の第1部分と反対であり201、第1分岐202の第2部分は第2分岐201の第2部分と反対である。
【0080】
第1電極対20は第1分岐202の第1部分の両側に配置され、第2電極対10は第2分岐201の第2部分の両側に配置される。第1分岐202の分極方向は第2分岐201の分極方向と反対である。第1電極対20により第1分岐202に印加する電界の方向は、第2電極対10により第2分岐201に印加する電界の方向と同じである。
【0081】
動作中は、無線周波数ドライバの信号出力端11を用いて、電気光変調器の第1電極対20に無線周波数信号をロードする。第1電極対20により、第1分岐202の第1部分に印加される電界の方向を下向きの矢印で示す。この場合、第2分岐201の第1部分には電界はロードされない。次に、無線周波数信号は、電気光変調器の第2電極対10にロードされる。第2電極対10により第2分岐201の第2部分に印加する電界の方向は、第1電極対20により第1分岐202に印加する電界の方向と同じである。この場合、電界は第1分岐202の第2部分にロードされない。この場合、第1分岐202の分極方向と第2分岐201の分極方向が逆になるため、第1分岐202から出力される光信号の位相が第2分岐201から出力される光信号の位相と逆になる。したがって、プッシュプル変調方式が実装され、変調効率が向上する。
【0082】
別の例では、図4に示すように、第1電極対20と第2電極対10は並列に結合される。第1電極対20の第1端と第2電極対10の第1端の両方が、無線周波数ドライバの信号出力端11に結合されている。第1電極対20の第2端と第2電極対10の第2端の両方が抵抗器に結合されている。更に、第1電極対20の第2端と第2電極対10の第2端が直流電圧端12に結合される。第1分岐202の分極方向は第2分岐201の分極方向と反対である。
【0083】
一群の差動入力信号が、無線周波数ドライバの信号出力端11に追加される。第1電極対20と第2電極対10は、各々第1電極と第2電極を含む。第1電極対20の第1電極は第1分岐202の上側にあり、第1電極対20の第2電極は第1分岐202の下側にある。第2電極対10の第1電極は第2分岐201の上側にあり、第2電極対10の第2電極は第2分岐201の下側にある。
【0084】
第1電極対20の第1電極は無線周波数ドライバの信号出力端子11の正極に結合され、第1電極対20の第2電極は無線周波数ドライバの信号出力端子11の負極に結合されている。第2電極対10の第1電極は無線周波数ドライバの信号出力端子11の正極に結合され、第2電極対10の第2電極は無線周波数ドライバの信号出力端子11の負極に結合されている。第1電極対20により第1分岐202に印加する電界の方向は、第2電極対10により第2分岐201に印加する電界の方向と同じである。
【0085】
動作中は、無線周波数ドライバの信号出力端子11を用いて、電気光変調器の第1電極対20と第2電極対10に同時に無線周波数信号がロードされる。第1電極対20により第1分岐202に印加される電界の方向は下向きの矢印で示される。第2電極対10により第2分岐201に印加される電界の方向を下向きの矢印で示す。第1分岐202の分極方向と第2分岐201の分極方向が逆になるため、第1分岐202から出力される光信号の位相と第2分岐201から出力される光信号の位相が逆になる。最後に、終端抵抗104で無線周波数信号が終端される。
【0086】
本願の別の実装では、第1分岐202の分極方向は第2分岐201の分極方向と同じである。第1電極対20により第1分岐202に印加する電界の方向は、第2電極対10により第2分岐201に印加する電界の方向と反対である。電気光変調器は、プッシュプル方式で駆動される。
【0087】
図5に示すように、電気光変調器は、第1電極対20、第2電極対10、第3電極対30を含む。第1電極対20、第2電極対10、及び第3電極対30は直列に結合される。第1電極対20の第1端は無線周波数ドライバの信号出力端11に結合される。第1電極対20の第2端は第2電極対10の第1端に結合される。第3電極対30の第1端は第2電極対10の第2端に結合される。第3電極対30の第2端は、抵抗器に結合されている。第2電極対10の第2端は直流電圧端12に結合される。
【0088】
第1分岐202と第2分岐201はともにS字状に分布している。第1分岐202と第2分岐201はそれぞれ互いに平行な第1部分、第2部分、第3部分を含む。第2部分は第1部分と第3部分の間に配置される。第1電極対20は第1分岐202の第1部分の2つの側に配置され、第2電極対10は第2分岐201の第2部分の2つの側に配置され、第3電極対30は第1分岐202の第3部分の2つの側に配置される。第1電極対20により第1分岐202に印加する電界の方向は、第2電極対10により第2分岐201に印加する電界の方向と反対である。第1電極対30により第1分岐に印加される電界の方向は、第2電極対10により第2分岐201に印加される電界の方向と反対である。第1分岐202の分極方向は第2分岐201の分極方向と同じである。
【0089】
動作中は、無線周波数ドライバの信号出力端11を用いて、電気光変調器の第1電極対20に無線周波数信号をロードする。第1電極対20を用いて、第1分岐202の第1部分に印加される電界の方向を下向きの矢印で示す。この場合、第2分岐201の第1部分には電界はロードされない。その後、光路と電界は180°回転し、導波路と電極を回転させて、電気光変調器の第2電極対10に無線周波数信号をロードする。第2電極対10により第2分岐201の第2部分に印加される電界の方向を向きの矢印で示す。この場合、電界は第1分岐202の第2部分にロードされない。その後、再び光路と電界は180°回転し、導波路と電極を回転させて、電気光変調器の第3電極対30に無線周波数信号をロードする。第1電極対30により第1分岐202の第3部分に印加される電界の方向を下向きの矢印で示す。この場合、第2分岐201の第3部分には電界がロードされない。最後に終端抵抗104で無線周波数信号が終端する。
【0090】
本願の別の実装では、図6に示すように、第1電極対と第2電極対10が並列に結合される。一群の差動入力信号が、無線周波数ドライバの信号出力端11に追加され、S+S-及びS+S-の入力方式が採用される。第1電極対20及び第2電極対10の第1端は、無線周波数ドライバの信号出力端11に別々に結合される。第1電極対20と第2電極対10の両方の第2端が、抵抗器に結合されている。第1電極対20の第2端と第2電極対10の第2端は、各々直流電圧端12に結合される。第1分岐202の分極方向は第2分岐201の分極方向と同じである。
【0091】
第1電極対20と第2電極対10は、各々第1電極と第2電極を含む。第1電極対20の第1電極は第1分岐202の上側にあり、第1電極対20の第2電極は第1分岐202の下側にある。第2電極対10の第1電極は第2分岐201の上側にあり、第2電極対10の第2電極は第2分岐201の下側にある。
【0092】
第1電極対20の第1電極は無線周波数ドライバの信号出力端子11の正極に結合され、第1電極対20の第2電極は無線周波数ドライバの信号出力端子11の負極に結合されている。第2電極対10の第1電極は無線周波数ドライバの信号出力端子11の負極に結合され、第2電極対10の第2電極は無線周波数ドライバの信号出力端子11の正極に結合されている。第1電極対20により第1分岐202に印加する電界の方向は、第2電極対10により第2分岐201に印加する電界の方向と反対である。
【0093】
動作中は、無線周波数ドライバの信号出力端子11を用いて、電気光変調器の第1電極対20と第2電極対10に同時に無線周波数信号がロードされる。第1電極対20により第1分岐202に印加される電界の方向は下向きの矢印で示される。第2電極対10により第2分岐201に印加される電界の方向を下向きの矢印で示す。第1分岐202の分極方向と第2分岐回路201の分極方向が同じになるため、第1分岐202から出力される光信号の位相と第2分岐201から出力される光信号の位相が逆になる。最後に、終端抵抗104で無線周波数信号が終端される。
【0094】
上記の実施形態で比較すると、電気光変調器は小型で周辺回路がなく、コパッケージに適しているなどの特徴があることがわかる。
【0095】
本願の実施形態は、光チップを更に提供する。光チップは、基板01、電気光変調器、及び基板上に配置された他のコンポーネントを含むことができる。他のコンポーネントは、結合導波路を使用して電気光変調器に結合されることができる。
【0096】
他のコンポーネントは、レーザダイオード、半導体光増幅器、及び光電検出器の少なくとも1つであることができる。同じ基板上に1つのタイプの複数のコンポーネントがあってもよく、コンポーネントは必要な結合シーケンスで結合されていてもよいことが理解できる。
【0097】
図7は、本願の実施形態による光チップの構造の概略図である。図7に示すように、光チップは、基板01、基板上に配置された電気光変調器、入力導波路010、及び出力導波路011を含む。
【0098】
本願の実施形態においては、変調電極の材料は限定されない。本願の実装においては、変調電極003の材料は、銅(Cu)や亜鉛(Zn)などの金属材料である。
【0099】
本願の別の実施形態においては、変調電極003の材料は透過導電性酸化物(Transparent Conductive Oxide, TCO)であり、TCOは高い導電性を有し、比較的少ない量の光を吸収する。TCOがAuに代わってより低い層の電極として機能するとき、電極距離はさらに短縮されるので、光照射領域の電界強度が向上し、それにより電気光変調器の変調効率が向上する。従来の変調電極の場合のチップ長と比較して、同じ位相変調を実施する対応するチップの長さが短くなり、チップの小型化に役立つ。
【0100】
例えば、光チップはさらに光源014と光電検出器012を更に含む。例えば、光源014と二酸化ケイ素層は基板01の表面に平行に配置されている。光電検出器012は二酸化ケイ素層の表面に配置されている。光源014は発光するように構成されている。入力導波路010は、光源014によって放射された光を電気光変調器に伝送するように構成されている。電気光変調器は、光源014によって放射された光を変調するように構成されている。光電検出器012は、結合導波路013を使用して、電気光変調器001の出力導波路011に結合されることができる。光電検出器012は、電気光変調器によって変調された光信号を検出することができる。
【0101】
本願の実施形態は、電気チップと前述の光チップを含む集積チップをさらに提供する。
【0102】
光チップ内の電気光変調器は、図2図4図5、又は図6に示す構造を有してもよい。光チップのサイズは比較的小さく、溶接により電気チップと一緒にパッケージされてもよい。
【0103】
図9に示すように、電気チップを光チップの表面に配置し、はんだボールを用いて溶接により電気チップを光チップに結合する。
【0104】
前述の説明は、単に本願の特定の実装であり、本願の保護範囲を限定することを意図しない。本願に開示された技術的範囲内の変更又は代替は、本願の保護範囲に含まれる。したがって、本願の保護範囲は、特許請求の範囲の保護範囲に従うべきである。
図1
図2
図3
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
図8
図9