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特許7553009有機電界発光素子及び有機電界発光素子用化合物
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  • 特許-有機電界発光素子及び有機電界発光素子用化合物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】有機電界発光素子及び有機電界発光素子用化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 219/02 20060101AFI20240910BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240910BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20240910BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20240910BHJP
   H10K 50/16 20230101ALI20240910BHJP
   H10K 50/15 20230101ALI20240910BHJP
   C07D 209/88 20060101ALN20240910BHJP
   C07D 209/86 20060101ALN20240910BHJP
【FI】
C07D219/02 CSP
H05B33/14 B
C09K11/06 645
H05B33/10
H05B33/22 B
H05B33/22 D
C07D209/88
C07D209/86
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020058448
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2020172483
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】10-2019-0040336
(32)【優先日】2019-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】512187343
【氏名又は名称】三星ディスプレイ株式會社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Display Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】1, Samsung-ro, Giheung-gu, Yongin-si, Gyeonggi-do, Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】519001383
【氏名又は名称】ソウル ナショナル ユニバーシティ アールアンドディービー ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002619
【氏名又は名称】弁理士法人PORT
(72)【発明者】
【氏名】パク スユン
(72)【発明者】
【氏名】キム セウン
(72)【発明者】
【氏名】クウォン ジオン
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒョジョン
(72)【発明者】
【氏名】リュ チヒュン
(72)【発明者】
【氏名】イ チャンヒ
(72)【発明者】
【氏名】チョン ヘイン
(72)【発明者】
【氏名】ハン ヨンソク
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-518281(JP,A)
【文献】特開2016-094418(JP,A)
【文献】国際公開第2019/009307(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/161437(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03367456(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03010052(EP,A1)
【文献】中国特許出願公開第104046351(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0093009(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109422756(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108727374(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108530357(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108484592(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107312523(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106117524(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105481794(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105038764(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103483332(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108218664(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108264521(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107602605(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105461611(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0136713(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0127701(KR,A)
【文献】Zhao, Juan et al.,Highly-Efficient Doped and Nondoped Organic Light-Emitting Diodes with External Quantum Efficiencies over 20% from a Multifunctional Green Thermally Activated Delayed Fluorescence Emitter,Journal of Physical Chemistry C,2019年,(2019), 123(2), 1015-1020
【文献】Huang, Bi et al.,Thermally activated delayed fluorescence materials based on 3,6-di-tert-butyl-9-((phenylsulfonyl)phenyl)-9H-carbazoles,Dyes and Pigments,2014年,(2014), 111, 135-144
【文献】Lee, In Ho et al.,Aggregation-induced emission type thermally activated delayed fluorescent materials for high efficiency in non-doped organic light-emitting diodes,Organic Electronics,2016年,(2016), 29, 22-26
【文献】Huang, Manli et al.,Carbazole-dendronized thermally activated delayed fluorescent molecules with small singlet-triplet gaps for solution-processed organic light-emitting diodes,Dyes and Pigments,2018年,(2018), 153, 92-98
【文献】Xie, Guohua et al.,Inheriting the Characteristics of TADF Small Molecule by Side-Chain Engineering Strategy to Enable Bluish-Green Polymers with High PLQYs up to 74% and External Quantum Efficiency over 16% in Light-Emitting Diodes,Advanced Materials,2017年,(2017), 29(11), 1604223(1-7)
【文献】Xu, Bingjia et al.,Achieving remarkable mechanochromism and white-light emission with thermally activated delayed fluorescence through the molecular heredity principle,Chemical Science,2016年,(2016), 7(3), 2201-2206
【文献】Xie, Zongliang et al.,White-Light Emission Strategy of a Single Organic Compound with Aggregation-Induced Emission and Delayed Fluorescence Properties,Angewandte Chemie, International Edition,2015年,(2015), 54(24), 7181-7184
【文献】Xu, Shidang et al.,An Organic Molecule with Asymmetric Structure Exhibiting Aggregation-Induced Emission, Delayed Fluorescence, and Mechanoluminescence,Angewandte Chemie, International Edition,2015年,(2015), 54(3), 874-878
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
H10K
C09K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される化合物。
【化1】

(前記化学式1において、
及びLはそれぞれ独立して置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリーレン基であり、
nはであり
はシアノ基、アミノ基、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルコキシ基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下の脂肪族ヘテロ環基であり
Uは下記化学式2で表され、
【化2】

前記化学式2において、
はCR であり、
及びRはそれぞれ独立して水素原子、重水素原子、または置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基であり
~Rはそれぞれ独立して重水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基であり
及びbはそれぞれ独立して0以上4以下の整数であり、
「―*」は、結合される部分であり、
前記置換とは、重水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、およびアミノ基、炭素数1以上10以下のアルキル基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基で置換することである。)
【請求項2】
前記L及び前記Lは、同一である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記L及び前記Lは、無置換のフェニレン基である請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記化学式1は、下記化学式1-1で表される請求項1に記載の化合物。
【化3】
【請求項5】
前記化学式1は、下記化学式1-2で表される請求項1に記載の化合物。
【化4】
【請求項6】
前記化学式2は、下記D3で表される請求項1に記載の化合物。
【化5】
【請求項7】
前記化学式1は、下記化学式1-3で表される請求項1に記載の化合物。
【化7】
【請求項8】
前記化学式1で表される化合物は、熱活性遅延蛍光ドーパントである請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
前記化学式1で表される化合物の最低三重項励起エネルギー準位と最低一重項励起エネルギー準位との差は0.2eV以下である請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
前記化学式1で表される化合物は、中心波長が420nm以上480nm以下の光を放出する発光材料である請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
前記化学式1で表される化合物は、下記第1化合物群の化合物のうちいずれか一つで表される請求項1に記載の化合物。
[第1化合物群]
【化8】
【請求項12】
第1電極と、
前記第1電極の上に配置される第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に配置される複数の有機層と、を含み、
前記有機層のうち少なくとも一つの有機層は、前記請求項1乃至請求項10のうちいずれか一項に記載の化合物を含む有機電界発光素子。
【請求項13】
前記有機層は、発光層と、
前記第1電極と前記発光層との間に配置される正孔輸送領域と、
前記発光層と前記第2電極との間に配置される電子輸送領域と、を含み、
前記発光層は、前記化学式1で表される化合物を含む請求項11に記載の有機電界発光素子。
【請求項14】
前記発光層はホスト及びドーパントを含む遅延蛍光発光層であり、
前記ドーパントは、前記化学式1で表される化合物を含む請求項12に記載の有機電界発光素子。
【請求項15】
前記発光層は、青色光を放出する請求項12に記載の有機電界発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機電界発光素子及び有機電界発光素子に使用される化合物に関し、より詳しくは、発光材料として使用される化合物及びそれを含む有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、映像表示装置として、有機電界発光表示装置(Organic Electroluminescence Display)の開発が盛んに行われている。有機電界発光表示装置は液晶表示装置などとは異なって、第1電極及び第2電極から注入された正孔及び電子を発光層において再結合させることで、発光層において有機化合物を含む発光材料を発光させて表示を実現するいわゆる自発光型表示装置である。
【0003】
有機電界発光素子を表示装置に応用するに当たっては、有機電界発光素子の低駆動電圧化、高発光効率化及び長寿命化が要求されており、これを安定的に実現し得る有機電界発光素子用材料の開発が持続的に要求されている。
【0004】
特に、最近は高効率の有機電界発光素子を実現するために三重項状態のエネルギーを利用するりん光発光や、三重項励起子の衝突によって一重項例励起子が生成される現象(Triplet-triplet annihilation、TTA)を利用した遅延蛍光発光に関する技術が開発されており、遅延蛍光現象を利用した熱活性遅延蛍光(Thermally Activated Delayed Fluorescence、TADF)材料に関する開発が進んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】韓国公開特許第2018-0085860
【文献】韓国公開特許第2018-0098651
【文献】韓国公開特許第2018-0067243
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的の一つは、発光効率及び色純度が改善された有機電界発光素子を提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、有機電界発光素子の色純度を改善することができる化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態によると、第1電極と、第1電極の上に配置される第2電極と、第1電極と第2電極との間に配置される複数の有機層と、を含み、前記有機層のうち少なくとも一つの有機層は、下記化学式1で表される化合物を含む有機電界発光素子が提供される。
【化1】

前記化学式1において、L及びLはそれぞれ独立して置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリーレン基である。nは0または1である。nが0の場合、Lは、環形成炭素数6以上30以下のアリール基である。FUは重水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルコキシ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリールオキシ基、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキルアミノ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリールアミノ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロ環基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基である。FUとDUは互いに異なり、DUは下記化学式2で表される。
【化2】

前記化学式2において、Xは単結合(direct linkage)、O、S、またはCRであり、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、重水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基であり、隣接する基と互いに結合して環を形成してもよい。R~Rはそれぞれ独立して重水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキルアミノ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリールアミノ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基、または置換若しくは無置換のイミノ基であり、隣接する基と互いに結合して環を形成してもよい。a及びbはそれぞれ独立して0以上4以下の整数である。
【0009】
前記有機層は、発光層と、前記第1電極と前記発光層との間に配置される正孔輸送領域と、前記発光層と前記第2電極との間に配置される電子輸送領域と、を含み、前記発光層は、前記化学式1で表される化合物を含んでもよい。
【0010】
前記発光層は遅延蛍光を放出してもよい。
【0011】
前記発光層はホスト及びドーパントを含む遅延蛍光発光層であり、前記ドーパントは前記化学式1で表される化合物を含んでもよい。
【0012】
前記発光層は青色光を放出してもよい。
【0013】
前記化学式1は、下記化学式1-1で表されてもよい。
【化3】

前記化学式1-1において、n、FU、及びDUは前記化学式1で定義した通りである。
【0014】
前記化学式1は、下記化学式1-2で表されてもよい。
【化4】

前記化学式1-2において、n、FU、及びDUは前記化学式1で定義した通りである。
【0015】
前記化学式2は、下記D1~D5のうちいずれか一つで表されてもよい。
【化5】

【化6】

前記D1~D5において、R、R、a、及びbは、前記化学式2で定義した通りである。
【0016】
前記化学式1で表される化合物は、下記第1化合物群の化合物のうち少なくとも一つを含んでもよい。
[第1化合物群]
【化7】
【0017】
他の実施形態によると、下記化学式1で表される化合物が提供される。
【化8】

前記化学式1において、L及びLはそれぞれ独立して置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリーレン基である。nは0または1である。nが0の場合、Lは、環形成炭素数6以上30以下のアリール基である。FUは重水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルコキシ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリールオキシ基、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキルアミノ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリールアミノ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロ環基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基である。FUとDUは互いに異なり、DUは下記化学式2で表される。
【化9】

前記化学前記2において、Xは単結合、O、S、またはCRであり、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、重水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基であり、隣接する基と互いに結合して環を形成してもよい。R~Rはそれぞれ独立して重水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキルアミノ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリールアミノ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基、または置換若しくは無置換のイミノ基であり、隣接する基と互いに結合して環を形成してもよい。a及びbはそれぞれ独立して0以上4以下の整数である。
【0018】
前記L及びLは同じであってもよい。
【0019】
前記L及びLは無置換のフェニレン基であってもよい。
【0020】
前記化学式1は、下記化学式1-1で表されてもよい。
【化10】
【0021】
前記化学式1は、下記化学式1-2で表されてもよい。
【化11】
【0022】
前記化学式2は、下記D1~D5のうちいずれか一つで表されてもよい。
【化12】

【化13】
【0023】
前記化学式1は、下記化学式1-3で表されてもよい。
【化14】

前記化学式1-3において、n及びFUは前記化学式1で定義した通りであり、R、R、a、及びbは前記化学式2で定義した通りである。
【0024】
前記化学式1で表される化合物は、熱活性遅延蛍光ドーパントであってもよい。
【0025】
前記化学式1で表される化合物の最低三重項励起エネルギー準位と最低一重項励起エネルギー準位との差は0.2eV以下であってもよい。
【0026】
前記化学式1で表される化合物は、中心波長が420nm以上480nm以下の光を放出する発光材料であってもよい。
【発明の効果】
【0027】
一実施形態による有機電界発光素子は、良好な発光効率及び優れた色純度を有する素子特性を示す。
【0028】
一実施形態による化合物は、スルホニル基を基準に両側が互いに非対称の化合物構造を有することで、有機電界発光素子の発光層に使用されると、有機電界発光素子の色純度を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施形態による有機電界発光素子を概略的に示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態による有機電界発光素子を概略的に示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態による有機電界発光素子を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、多様な変更を加えることができ、多様な形態を有することができるため、特定の実施形態を図面に例示し、本文に詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとする意図ではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変更、均等物及び代替物を含むと理解すべきである。
【0031】
本明細書において、ある構成要素(または領域、層、部分など)が他の構成要素の「上にある」、または「結合される」と言及されれば、それは他の構成要素の上に直接配置・連結・結合され得るか、またはそれらの間に第3の構成要素が配置され得ることを意味する。
【0032】
同じ図面符号は同じ構成要素を指す。また、図面において、構成要素の厚さ、割合、及び寸法は技術的内容の効果的な説明のために誇張されている場合がある。
【0033】
「及び/または」は、関連する構成が定義する一つ以上の組み合わせを全て含む。
【0034】
第1、第2などの用語は多様な構成要素を説明するのに使用されるが、該構成要素は該用語に限らない。用語は一つの構造要素を他の構成要素から区別する目的にのみ使用される。例えば、本発明の権利範囲を逸脱しない限り、第1構成要素は第2構成要素と命名されてもよく、類似して第2構成要素も第1構成要素と命名されてもよい。単数の表現は、文脈上明白に異なる意味にならない限り、複数の表現を含む。
【0035】
また、「下に」、「下側に」、「上に」、「上側に」などの用語は、図面に示した構成の相関関係を説明するために使用される。該用語は相対的な概念であって、図面に示した方向を基準に説明される。
【0036】
異なるように定義されない限り、本明細書で使用された全ての用語(技術的及び科学的用語を含む)は、本発明の属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるようなものと同じ意味を有する。また、一般的に使用される辞書に定義されている用語のような用語は、関連技術の脈絡での意味と一致する意味を有すると解釈すべきであり、理想的な、または過度に形式的な意味に解釈されない限り、明示的にここで定義される。
【0037】
「含む」または「有する」などの用語は明細書の上に記載された特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを意味するものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部分品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないと理解すべきである。
【0038】
本明細書において、「置換若しくは無置換の」とは、重水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、シリル基、オキシ基、チオ基、スルフィニル基、スルホニル基、カルボニル基、ボリル基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、炭化水素環基、アリール基、及びヘテロ環基からなる群より選択される一つ以上の置換基によって置換される、若しくは無置換であることを意味する。また、前記例示された置換基それぞれは、置換若しくは無置換であってもよい。例えば、ビフェニリル基はアリール基と解釈されてもよく、フェニル基に置換されたフェニル基と解釈されてもよい。
【0039】
本明細書において、「隣接する基と互いに結合して環を形成」するとは、隣接する基と互いに結合して置換若しくは無置換の炭化水素環、または置換若しくは無置換のヘテロ環を形成することを意味する。炭化水素環は、脂肪族炭化水素環、及び芳香族炭化水素環を含む。ヘテロ環基は、脂肪族ヘテロ環基、及び芳香族ヘテロ環基を含む。隣接する基と互いに結合して形成された環は、単環または多環である。また、互いに結合して形成された環は、他の環と結合されてスピロ構造を形成してもよい。
【0040】
本明細書において、「隣接する基」とは当該置換基が置換された原子と直接結合された原子に置換された置換基、当該置換基が置換された原子に置換された他の置換基または当該置換基と立体構造的に最も隣接する置換基を意味する。例えば、1,2-ジメチルベンゼンにおける2つのメチル基は互いに「隣接する基」と解釈され、1,1-ジエチルシクロペンテンにおける2つのエチル基は互いに「隣接する基」と解釈される。
【0041】
一方、本明細書において直接結合するとは、単結合を意味する。
【0042】
本明細書において、ハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子が挙げられる。
【0043】
本明細書において、アルキル基は直鎖、分枝鎖、または環状である。アルキル基の炭素数は、1以上50以下、1以上30以下、1以上20以下、1以上10以下、または1以上6以下である。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、i-ブチル基、2-エチルブチル基、3、3-ジメチルブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基、シクロペンチル基、1-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2-エチルペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、n-ヘキシル基、1-メチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、2-ブチルヘキシル基、シクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、4-t-ブチルシクロヘキシル基、n-ヘプチル基、1-メチルペプチル基、2、2-ジメチルヘプチル基、2-エチルヘプチル基、2-ブチルヘプチル基、n-オクチル基、tーオクチル基、2-エチルオクチル基、2-ブチルオクチル基、2-ヘキシルオクチル基、3、7-ジメチルオクチル基、シクロオクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、アダマンチル基、2-エチルデシル基、2-ブチルデシル基、2-ヘキシルデシル基、2-オクチルデシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、2-エチルドデシル基、2-ブチルドデシル基、2-ヘキシルドデシル基、2-オクチルデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、2-エチルヘキサデシル基、2-ブチルヘキサデシル基、2-ヘキシルヘキサデシル基、2-オクチルヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-イコシル基、2-エチルイコシル基、2-ブチルイコシル基、2-ヘキシルイコシル基、2-オクチルイコシル基、n-ヘンイコシル基、n-ドコシル基、n-トリコシル基、n-テトラコシル基、n-ペンタコシル基、n-ヘキサコシル基、n-ヘプタコシル基、n-オクタコシル基、n-ノナコシル基、及びn-トリアコンチル基などが挙げられるが、これらに限らない。
【0044】
本明細書において、炭化水素環は、脂肪族炭化水素環及び芳香族炭化水素環を含む。ヘテロ環は、脂肪族ヘテロ環及び芳香族ヘテロ環を含む。炭化水素環及びヘテロ環は、単環または多環である。
【0045】
本明細書において、炭化水素環基は、脂肪族炭化水素環から誘導された任意の作用基または置換基、または芳香族炭化水素環から誘導された任意の作用基または置換基である。炭化水素環基の環形成炭素数は、5以上60以下である。
【0046】
本明細書において、ヘテロ環基は、少なくとも一つのヘテロ原子を環形成原子として含むヘテロ環から誘導された任意の作用基または置換基である。ヘテロ環基の環形成炭素数は、5以上60以下である。
【0047】
本明細書において、アリール基は、芳香族炭化水素環から誘導された任意の作用基または置換基を意味する。アリール基は、単環式アリール基または多環式アリール基である。アリール基の環形成炭素数は、6以上30以下、6以上20以下、または6以上15以下である。アリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、クォーターフェニリル基、キンクフェニリル基、セクシフェニリル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、ベンゾフルオランテニル基、クリセニル基などが挙げられるが、これらに限らない。
【0048】
本明細書において、フルオレニル基は置換され、2つの置換基が互いに結合してスピロ構造を形成してもよい。フルオレニル基が置換される場合の例示は以下のようである。但し、これらに限らない。
【化15】
【0049】
本明細書において、ヘテロアリール基はヘテロ原子としてB、O、N、P、Si、及びSのうち一つ以上を含む。ヘテロアリール基がヘテロ原子を2つ以上含めば、2つ以上のヘテロ原子は互いに同じであってもよく、異なってもよい。ヘテロアリール基は、単環式へテロ環基または多環式へテロ環基である。ヘテロアリール基の環形成炭素数は、2以上30以下、2以上20以下、または2以上10以下である。ヘテロアリール基の例としては、チオフェニル基、フラニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、トリアゾリル基、ピリジニル基、ビピリジニル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、トリアゾリル基、アクリジニル基、ピリダジニル基、キノリニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、フェノキサジニル基、フタラジニル基、ピリドピリミジニル基、ピリドピラジニル基、ピラジノピラジニル基、イソキノリニル基、インドリル基、カルバゾリル基、N-アリールカルバゾリル基、N-ヘテロアリールカルバゾリル基、N-アルキルカルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾカルバゾリル基、ベンゾチオフェニル基、ジベンゾチオフェニル基、チエノチオフェニル基、ベンゾフラニル基、フェナントロリニル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、フェノチアジニル基、ジベンゾシロリル基、及びジベンゾフラニル基などが挙げられるが、これらに限らない。
【0050】
本明細書において、アリーレン基は2価基であることを除いては、上述したアリール基に関する説明が適用される。ヘテロアリーレン基は2価基であることを除いては、上述したヘテロアリール基に関する説明が適用される。
【0051】
本明細書において、オキシ基はアルコキシオキシ基及びアリールオキシ基を含む。アルコキシ基は直鎖、分枝鎖、または環状であってもよい。アルコキシ基の炭素数は特に限らないが、例えば、1以上20以下、または1以上10以下であってもよい。オキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ベンジルオキシ基などが挙げられるが、これらに限らない。
【0052】
本明細書において、アミノ基の炭素数は特に限らないが、1以上30以下である。アミノ基は、アルキルアミノ基及びアリールアミノ基を含む。アミノ基の例としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、9-メチル-アントラセニルアミノ基、トリフェニルアミノ基などが挙げられるが、これらに限らない。
【0053】
本明細書において、アルコキシ基及びアルキルアミノ基におけるアルキル基は、上述したアルキル基の例示と同様である。
【0054】
本明細書において、アリールオキシ基及びアリールアミノ基のうちのアリール基は、上述したアリール基の例示と同様である。
【0055】
【0056】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態による有機電界発光素子及びそれに含まれた一実施形態による化合物について説明する。
【0057】
図1図3は、本発明の一実施形態による有機電界発光素子を概略的に示す断面図である。図1図3を参照すると、一実施形態の有機電界発光素子10において、第1電極EL1及び第2電極EL2は互いに対向して配置され、第1電極EL1と第2電極EL2との間には複数の有機層が配置される。複数の有機層は正孔輸送領域HTR、発光層EML、及び電子輸送領域ETRを含む。つまり、本発明の一実施形態による有機電界発光素子10は、順次積層される第1電極EL1、正孔輸送領域HTR、発光層EML、電子輸送領域ETR、及び第2電極EL2を含む。一実施形態に係る有機発光素子10は、第1電極EL1と第2電極EL2との間に配置される少なくとも一つの有機層に後述する一実施形態による化合物を含む。
【0058】
例えば、一実施形態に係る有機発光素子10は、第1電極EL1と第2電極EL2との間に配置される発光層EMLに後述する一実施形態による化合物を含む。しかし、実施形態はこれに限らず、一実施形態に係る有機発光素子10は、発光層EML以外に、第1電極EL1と第2電極EL2との間に配置される複数の有機層の間のうち少なくとも一つの有機層に後述する本発明の一実施形態による化合物を更に含んでもよい。例えば、一実施形態に係る有機電界発光素子10は、一実施形態に係る化合物を発光層EMLの発光材料として含み、更に正孔輸送領域HTR及び電子輸送領域ETRに含まれる少なくとも一つの有機層に後述する一実施形態に係る化合物を含んでもよい。
【0059】
一方、図2図1とは異なり、正孔輸送領域HTRが正孔注入層HIL及び正孔輸送層HTLを含み、電子輸送領域ETRが電子注入層EIL及び電子輸送層ETLを含む一実施形態に係る有機電界発光素子10の断面図を示す。また、図3図1とは異なり、正孔輸送領域HTRが正孔注入層HIL、正孔輸送層HTL、及び電子阻止層EBLを含み、電子輸送領域ETRが電子注入層EIL、電子輸送層ETL、及び正孔阻止層HBLを含む一実施形態に係る有機電界発光素子10の断面図を示す。
【0060】
第1電極EL1は導電性を有する。第1電極EL1は、金属合金または導電性化合物からなる。第1電極EL1はアノード(anode)である。また、第1電極EL1は画素電極である。第1電極EL1は、透過型電極、半透過型電極、または反射型電極である。第1電極EL1が透過型電極であれば、第1電極EL1は透明金属酸化物、例えば、ITO(indium tin oxide)、IZO(indium zinc oxide)、ZnO(zinc oxide)、ITZO(indium tin zinc oxide)などを含む。第1電極EL1が半透過型電極または反射型電極であれば、第1電極EL1はAg、Mg、Cu、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr、Li、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Mo、Ti、またはこれらの化合物や混合物(例えば、AgとMgの合金)を含む。また、第1電極ELは、前述の物質からなる反射膜や半透過膜、及びITO、IZO、ZnO、ITZOなどからなる透明導電膜を含む複数の層構造を有してもよい。例えば、第1電極EL1はITO/Ag/ITOの3槽構造を有してもよいが、これに限らない。第1電極EL1の厚さは、約100nm~約1000nmであり、例えば、約100nm~約300nm0である。
【0061】
正孔輸送領域HTRは第1電極EL1の上に設けられる。正孔輸送領域HTRは、正孔注入層HIL、正孔輸送層HTL、正孔バッファ層(図示せず)、及び電子阻止層EBLのうち少なくとも一つを含む。
【0062】
正孔輸送領域HTRは、単一物質からなる単一層、複数の互いに異なる物質からなる単一層、または複数の互いに異なる物質からなる複数の層を有する多層構造を有する。
【0063】
例えば、正孔輸送領域HTRは正孔注入層HILまたは正孔輸送層HTLの単一層の構造を有してもよく、正孔注入物質及び正孔輸送物質からなる単一層の構造を有してもよい。また、正孔輸送領域HTRは、複数の互いに異なる物質からなる単一層の構造を有するか、第1電極EL1から順番に積層される正孔注入層HIL/正孔輸送層HTL、正孔注入層HIL/正孔輸送層HTL/正孔バッファ層(図示せず)、正孔注入層HIL/正孔バッファ層(図示せず)、正孔輸送層HTL/正孔バッファ層、または正孔注入層HIL/正孔輸送層HTL/正孔阻止層EBLの構造を有してもよいが、これらに限らない。
【0064】
正孔輸送領域HTRは、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法(Langmuir-Blodgett)、インクジェットプリント法、レーザプリント法、レーザ熱転写法(Laser Induced Thermal Imaging、LITI)などのような多様な方法を利用して形成される。
【0065】
正孔注入層HTLは、例えば、銅フタロシアニンなどのフタロシアニン化合物と、DNTPD(N,N’-ジフェニル-N、N’-ビス-[4-フェニル-m-トリルアミノ)-フェニル]-ビフェニル-4,4’-ジアミン)、m-MTDATA(4,4’,4”-トリス(3-メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミノ)、TDATA(4,4’,4”-トリス(N,N-ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン)、2-TNATA(4,4’,4”-トリス{N,-(2-ナフチル)-N-フェニルアミノ}-トリフェニルアミン)、PEDOT/PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルフォナート)、PANI/DBSA(ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸)、PANI/CSA(ポリアニリン/カンファースルホン酸)、PANI/PSS(ポリアニリン)/ポリ(4-スチレンスルフォナート)、NPB(N,N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N’-ジフェニル-ベンジジン)、トリフェニルアミンを含むポリエテールケトン(TPAPEK)、4-イソプロピル-4’-メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、HAT-CN(ジピラジノ[2,3-f:2’,3’-h]キノキサリン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリル)などが挙げられる。
【0066】
正孔輸送層HTLは、例えば、N-フェニルカルバゾール、ポリビニルカルバゾールなどのカルバゾール系誘導体、フルオレン系誘導体、TPD(N、N’-ビス(3-メチルフェニル)-N、N’-ジフェニル-[1、1-ビフェニル]-4、4’-ジアミン)、TCTA(4、4’、4”-トリス(N-カルバゾリル)トリフェニルアミン)などのようなトリフェニルアミン系誘導体、NPB(N、N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N、N’-ジフェニル-ベンジジン)、TAPC(4、4’-シクロへキシリデンビス[N、N-ビス(4-メチルフェニル)ベンゼンアミン])、HMTPD(4、4’-ビス[N、N’-(3-トリル)アミノ]-3、3’-ジメチルビフェニル)、mPC(1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン)などを更に含んでもよい。
【0067】
正孔輸送領域HTRの厚さは、約5nm~約1000nm、例えば約10nm~約500nmであってもよい。正孔注入層HILの厚さは、例えば約3nm~約100nmであり、正孔輸送層HTLの厚さは、約1nm~約100nmであってもよい。例えば、電子阻止層EBLの厚さは、約1nm~約100nmであってもよい。正孔輸送領域HTR、正孔注入層HIL、正孔輸送層HTL、及び電子阻止層EBLの厚さが上述したような範囲を満たす場合、実質的な駆動電圧の上昇なしに十分な正孔輸送特性が得られる。
【0068】
正孔輸送領域HTRは、上述した物質以外に、導電性を向上するために電荷生成物質を更に含む。電荷発生物質は、正孔輸送領域HTR内に均一にまたは不均一に分散されている。電荷発生物質は、例えば、p-ドーパント(dopant)である。p-ドーパントはキノン誘導体、金属酸化物及びシアノ基含有化合物のうち一つであってもよいが、これに限らない。例えば、p-ドーパントの例としては、TCNQ(テトラシアノキノジメタン)及びF4-TCNQ(2,3,5,6-テトラフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン)などのようなキノン誘導体、タングステン酸化物、及びモリブデン酸化物のような金属酸化物などが挙げられるが、これらに限らない。
【0069】
上述したように、正孔輸送領域HTRは、正孔輸送層HTL及び正孔注入層HIL以外に、正孔バッファ層(図示せず)及び電子阻止層EBLのうち少なくとも一つを更に含んでもよい。正孔バッファ層(図示せず)は、発光層EMLから放出される光の波長による共振距離を補償して光放出効率を増加させる。正孔バッファ層(図示せず)に含まれる物質としては、正孔輸送領域HTRに含まれ得る物質を使用する。電子阻止層EBLは、電子輸送領域ETRから正孔輸送領域HTRへの電子の注入を防止する役割をする層である。
【0070】
発光層EMLは正孔輸送領域HTRの上に設けられる。発光層EMLは、例えば、約10nm~約100nm、または約10nm~約30nmの厚さを有してもよい。発光層EMLは、単一物質からなる単一層、複数の互いに異なる物質からなる単一層、または複数の互いに異なる物質からなる複数の層を有する多層構造を有する。
【0071】
一実施形態に係る有機電界発光素子10において、発光層EMLは一実施形態による化合物を含む。
【0072】
一実施形態に係る化合物はスルホニル基(SO)を含み、スルホニル基の一側に結合される少なくとも一つの電子供与部(Electron Donor)を含む。例えば、一実施形態に係る化合物はスルホニル基を含み、スルホニル基の一側に結合される第1電子供与部、及びスルホニル基の他側に結合され、第1電子供与部とは異なる第2電極供与部を含んでもよい。また、一実施形態に係る化合物はスルホニル基を含み、スルホニル基の一側に結合される第1電子供与部、及びスルホニル基の他側に結合される電子受容部(Electron Acceptor)を含んでもよい。或は、一実施形態に係る化合物はスルホニル基を電子受容部とし、スルホニル基の一側に結合される電子供与部を含んでもよい。
【0073】
一実施形態に係る化合物において、電子供与部は環形成原子として窒素(N)原子を含む3環以上のヘテロ環基である。例えば、電子供与部は、アクリジン誘導体、フェノチアジン誘導体、フェノキサジン誘導体、またはカルバゾール誘導体などの1価基であってもよい。しかし、これらに限らない。
【0074】
また、一実施形態に係る化合物において、電子受容部は、シアノ基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアリールオキシ基、置換若しくは無置換のアミン基、置換若しくは無置換のヘテロ環基、または置換若しくは無置換のアリール基などであってもよい。また、スルホニル基自体が電子受容部でもある。しかし、これらに限らない。
【0075】
一実施形態に係る有機電界発光素子10において、発光層EMLは下記化学式1で表される化合物を含む。
【化16】
【0076】
前記化学式1において、L及びLはそれぞれ独立して置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリーレン基である。例えば、L及びLは、それぞれ独立して無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリーレン基であってもよい。一実施形態において、L及びLは同じである。例えば、L及びLはいずれも無置換のフェニレン基であってもよい。
【0077】
化学式1において、nは0または1である。nが0の場合、Lは、環形成炭素数6以上30以下のアリール基である。
【0078】
化学式1において、FUは重水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルコキシ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリールオキシ基、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキルアミン基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリールアミン基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロ環基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基である。
【0079】
化学式1において、DUは下記化学式2で表される。化学式1において、FUとDUは互いに異なる。
【化17】
【0080】
化学式2において、Xは単結合、O、S、またはCRである。
【0081】
XがCRであれば、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、重水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基である。R及びRは、隣接する基と互いに結合して環を形成してもよい。例えば、R及びRはアルキル基であってもよい。例えば、R及びRはメチル基である。
【0082】
化学式2において、R~Rはそれぞれ独立して重水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキルアミノ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリールアミノ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基、または置換若しくは無置換のイミノ基である。R及びRは、隣接する基と互いに結合して環を形成してもよい。
【0083】
イミノ基は、例えば、以下のように表わされる。ここで、R及びR’は同じでも異なっていてもよい。R及びR’は、水素原子、1~10個の炭素原子を有する置換若しくは無置換のアルキル基、6~30個の環形成炭素原子を有する置換も若しくは無置換のアリール基、または2~10個の炭素原子を有する置換若しくは無置換のアルケニル基である。R及びR’は、隣接する基と互いに結合して環を形成してもよい。
【化18】
【0084】
化学式2において、a及びbはそれぞれ独立して0以上4以下の整数である。aが2以上の整数であれば、複数個のRはいずれも同じであってもよく、少なくとも一つが残りと異なってもよい。また、aが2以上の整数であれば、複数個のRはいずれも同じであってもよく、少なくとも一つが残りと異なってもよい。
【0085】
化学式2で表されるDUは電子供与部である。DUは、置換若しくは無置換のフェノキサジン誘導体、置換若しくは無置換のフェノチアジン誘導体、置換若しくは無置換のアクリジン誘導体、置換若しくは無置換のカルバゾール誘導体、または置換若しくは無置換のインドロカルバゾール誘導体の1価基である。
【0086】
化学式2は、下記D1~D5のうちいずれか一つで表されてもよい。
【化19】

【化20】
【0087】
D1~D3は、それぞれ化学式2においてXがO、S、またはC(CHである場合を示し、D4及びD5はXが単結合である場合を示す。
【0088】
D1~D5において、R、R、a、及びbに関しては上述した化学式2で説明した内容と同じ内容が適用される。
【0089】
化学式1で表される化合物は、スルホニル基(SO)を基準に一方の側に「DU」で表される電子供与部が結合され、他方の側に「FU」で表される機能部が結合されている。「FU」は、電子供与部または電子受容部である。化学式1で表される化合物においてFUは省略されてもよいが、この際、DUは電子供与部であり、スルホニル基が電子受容部である。
【0090】
つまり、化学式1で表される一実施形態に係る合物は、少なくとも一つの電子供与部及び少なくとも一つの電子受容部を一つの分子内に含む熱活性遅延発光材料である。
【0091】
化学式1で表される化合物は、スルホニル基を中心に両側に結合されたDU及びFUが互いに異なる構造を有する、またはFUが省略されることにより、非対称の構造を有する。つまり、一実施形態に係る化合物は、スルホニル基を基準に両側が非対称の構造を有するように置換基を導入し、電子供与部と電子受容部の機能を相対的に調節することで、化合物全体におけるエネルギーレベルを調節する。一実施形態に係る化合物は、調節されたエネルギーレベルを有することで、発光層EML材料として使用されると、有機電界発光素子の色純度を改善することができる。
【0092】
化学式1は、下記化学式1-1で表されてもよい。
【化21】
【0093】
化学式1-1において、n、FU、及びDUは化学式1で説明した内容と同じ内容が適用される。化学式1-1は、スルホニル基とDUとの間、及びスルホニル基とFUとの間にリンカーとして無置換のフェニレン基を含む場合を示す。化学式1-1において、スルホニル基とFUとの間にリンカーとして配置されたフェニレン基はフェニル基となる。
【0094】
化学式1は、下記化学式1-2で表されてもよい。
【化22】
【0095】
化学式1-2において、n、FU、及びDUは化学式1で説明した内容と同じ内容が適用される。化学式1-2で表される化合物は、リンカーであるフェニレン基に対してスルホニル基とDUがパラ(para)位に結合され、スルホニル基とFUがパラ位に結合される場合を示す。
【0096】
化学式1は下記化学式1-3で表されてもよい。
【化23】
【0097】
化学式1-3で表される化合物は、化学式1においてDUがアクリジン誘導体の1価基である場合を示す。つまり、化学式1-3は、化学式1においてDUがD3で表される場合を示す。化学式1-3において、n及びFUは化学式1で説明した内容と同じ内容が適用され、R、R、a、及びbは化学式2で説明した内容と同じ内容が適用される。
【0098】
一実施形態に係る化合物は、下記第1化合物群に示した化合物のうちいずれか一つであってもよい。一実施形態に係る有機電界発光素子10は、第1化合物群に示した化合物のうち少なくとも一つの化合物を発光層EMLに含む。
[第1化合物群]
【化24】
【0099】
化学式1で表される一実施形態に係る化合物は、熱活性遅延蛍光発光材料である。また、化学式1で表される一実施形態に係る化合物は、最低三重項励起エネルギー準位(T1 level)と最低一重項励起エネルギー準位(S1 level)との差(ΔEst)が0.2eV以下である熱活性遅延蛍光ドーパントである。例えば、化学式1で表される一実施形態に係る化合物のΔEstは、0.1eV以下であってもよい。
【0100】
化学式1で表される一実施形態に係る化合物は、420nm以上480nm以下の波長領域に発光中心波長を有する発光材料である。例えば、化学式1で表される化合物は、430nm以上470nm以下の波長領域に発光中心波長を有する発光材料であってもよい。化学式1で表される化合物は、青色熱活性遅延蛍光ドーパントであってもよい。
【0101】
一実施形態に係る有機電界発光素子10において、発光層EMLは遅延蛍光を放出する。例えば、発光層EMLは熱活性遅延蛍を放出してもよい。
【0102】
また、有機電界発光素子10の発光層EMLは青色光を放出する。例えば、一実施形態に係る有機電界発光素子10の発光層EMLは、480nm以上の領域の青色光を放出してもよい。しかし、これに限らず、発光層EMLは赤色光または緑色光を放出してもよい。
【0103】
図示していないが、一実施形態に係る有機電界発光素子10は、複数の発光層を含んでもよい。複数の発光層は順次積層されて設けられるが、例えば、複数の発光層を含む有機電界発光素子10は白色光を放出してもよい。複数の発光層を含む有機電界発光素子10は、タンデム(Tandem)構造の有機電界発光素子である。有機電界発光素子10が複数の発光層を含む場合、少なくとも一つの発光層EMLは、上述した一実施形態に係る化合物を含む。
【0104】
一実施形態において、発光層EMLはホスト及びドーパントを含み、上述した化合物をドーパントとして含む。例えば、一実施形態に係る有機電界発光素子10において、発光層EMLは遅延蛍光発光用ホスト及び遅延蛍光発光用ドーパントを含むが、上述した一実施形態に係る化合物を遅延蛍光発光用ドーパントとして含んでもよい。発光層EMLは、上述した第1化合物群に示した化合物のうち少なくとも一つを熱活性遅延蛍光ドーパントとして含んでもよい。
【0105】
一実施形態において、発光層EMLは遅延蛍光発光層であり、発光層MELは公知のホスト材料、及び上述した一実施形態に係る化合物を含む。例えば、一実施形態に係る化合物はTADFドーパントとして使用されてもよい。
【0106】
発光層EMLは公知のホスト材料を含む。例えば、発光層EMLはホスト材料として、Alq(トリス(8-ヒドロキシキノリノ)アルミニウム)、CBP(4,4’-ビス(N-カルバゾリル)-1,1’-ビフェニル)、PVK(ポリ(n-ビニルカルバゾール)、ADN(9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン)、TCTA(4,4’,4”-トリス(カルバゾール-9-イル)-トリフェニルアミン)、TPBi(1,3,5-トリス(N-フェニルベンゾイミダゾール-2-イル)ベンゼン)、TBADN(3-tert-ブチル-9,10-ジ(ナフト-2-イル)アントラセン)、DSA(ジスチリルアリレン)、CDBP(4,4’-ビス(9-カルバゾリル)-2,2’-ジメチル-ビフェニル)、MADN(2-メチル-9,10-ビス(ナフタレン-2-イル)アントラセン)、DPEPO(ビス[2-(ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテルオキシド)、CP1(ヘキサフェニルシクロトリホスファゼン)、UGH2(1,4-ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン)、DPSiO(ヘキサフェニルシクロトリシロキサン)、DPSiO(オクタフェニルシクロテトラシロキサン)、またはPPF(2、8-ビス(ジフェニルホスフォリル)ジゼンゾフラン)、mCBP(3,3’-ビス(N-カルバゾリル)-1,1’-ビフェニル)、mCP(1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン)などを含んでもよい。しかし、これらに限らず、前述のホスト材料以外にも公知の遅延蛍光ホスト材料が含まれてもよい。
【0107】
一実施形態に係る有機電界発光素子10において、発光層EMLは公知のドーパント材料を更に含んでもよい。発光層MELは、ドーパントとして、例えば、スチリル誘導体(例えば、1,4-ビス[2-(3-N-エチルカルバゾリル)ビニル]ベンゼン(BCzVB)、4-(ジ-p-トリルアミノ)-4’-[(ジ-p-トリルアミノ)スチリル]スチルベン(DPAVB)、N-(4-((E)-2-(6-((E)-4-(ジフェニルアミノ)スチリル)ナフタレン-2-イル)ビニル)フェニル)-N-フェニルベンゼンアミン(N-BDAVBi)、ぺリレン及びその誘導体(例えば、2,5,8,11-テトラ-t-ブチルぺリレン(TBP))、ピレン及びその誘導体(例えば、1,1-ジピレン、1,4-ジピレニルベンゼン、1,4-ビス(N、N-ジフェニルアミノ)ピレン)などを含んでもよい。
【0108】
図1図3に示した一実施形態に係る有機電界発光素子10において、電子輸送領域ETRは発光層EMLの上に設けられる。電子輸送領域ETRは、正孔阻止層HBL、電子輸送層ETL、及び電子注入層のEILうち少なくとも一つを含むが、これらに限らない。
【0109】
電子輸送領域ETRは、単一物質からなる単一層、複数の互いに異なる物質からなる単一層、または複数の互いに異なる物質からなる複数の層を有する多層構造を有する。
【0110】
例えば、電子輸送領域ETRは電子注入層のEILまたは電子輸送層ETLの単一層構造を有してもよく、電子注入物質と電子輸送物質からなる単一層構造を有してもよい。また、電子輸送領域ETRは、複数の互いに異なる物質からなる単一層の構造を有するか、発光層EMLから順番に積層された電子輸送層ETL/電子注入層EIL、正孔阻止層HBL/電子輸送層ETL/電子注入層EILの構造を有してもよいが、これらに限らない。電子輸送領域ETRの厚さは、例えば、約20nm~約150nmであってもよい。
【0111】
電子輸送領域ETRは、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、インクジェットプリント法、レーザプリント法、レーザ熱転写法などのような多様な方法を利用して形成される。
【0112】
電子輸送領域ETRが電子輸送層ETLを含めば、電子輸送領域ETRはアントラセン系化合物を含む。但し、これに限らず、電子輸送領域は、例えば、Alq(トリス(8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム)、1,3,5-トリ[(3-ピリジル)-フェン-3-イル]ベンゼン、2,4,6-トリス(3’-ピリジン-3-イル)ビフェニル-3-イル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-(N-フェニルベンゾイミダゾリル-1-イルフェニル)-9,10-ジナフチルアントラセン、TPBi(1,3,5-トリ(1-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)フェニル)、BCP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、Bphen(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、TAZ(3-(4-ビフェニルイル)-4-フェニル-5-テルト-ブチルフェニル-1,2,4-トリアゾール)、NTAZ(4-(ナフタレン-1-イル)-3,5-ジフェニル-4H-1,2,4-トリアゾール)、tBu-PBD(2-(4-ビフェニルイル)-5-(4-テルトーブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール)、BAlq(ビス(2-メチル-8-キノリノラト-N1,O8)-(1,1’-ビフェニル-4-オラト)アルミニウム)、Bebq(ベリリウムビス(ベンゾキノリン-10-オラト)、ADN(9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン)、及びこれらの混合物を含んでもよい。電子輸送層ETLの厚さは、約10nm~約100nmであり、例えば、約15nm~約50nmであってもよい。電子輸送層HTLの厚さが上述したような範囲を満たせば、実質的な駆動電圧の上昇なしに十分な電子輸送特性が得られる。
【0113】
電子輸送領域ETRが電子注入層EILを含む場合、電子輸送領域ETRは、LiF、LiQ(8-ヒドロキシキノリノラト-リチウム)、LiO、BaO、NaCl、CsF、Ybのようなランタノイド金属、またはRbCl、Rblのようなハロゲン化金属などが使用されてもよいが、これらに限らない。電子注入層EILはまた、電子輸送物質と絶縁性の有機金属塩(organo metal salt)が混合された物質を含んでもよい。有機金属塩は、エネルギーバンドギャップ(energy band gap)が約4eV以上の物質である。例えば、有機金属塩は、酢酸金属塩(metal acetate)、安息香酸金属塩(metal benzoate)、アセト酢酸金属塩(metal acetoacetate)、金属アセチルアセトナート(metal acetylacetonate)、またはステアリン酸金属塩(stearate)を含んでもよい。電子注入層EILの厚さは、約0.1nm~約10nmであり、例えば、約0.3nm~約9nmである。電子注入層EILの厚さが上述したような範囲を満たせば、実質的な駆動電圧の上昇なしに十分な電子注入特性が得られる。
【0114】
電子輸送領域ETRは、上述したように、正孔阻止層HBLを含んでもよい。正孔阻止層HBLは、例えば、BCP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、及びBphen(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)のうち少なくとも一つを含んでもよいが、これらに限らない。
【0115】
第2電極EL2は、電子輸送領域ETRの上に設けられる。第2電極EL2は、共通電極または負極である。第2電極EL2は、透過型電極、半透過型電極、または反射型電極である。第2電極EL2が透過型電極であれば、第2電極EL2は透明金属酸化物、例えば、ITO、IZO、ZnO、ITZOなどからなる。
【0116】
第2電極EL2が半透過型電極または反射型電極であれば、第2電極EL2はAg、Mg、Cu、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr、Li、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Mo、Ti、またはこれらを含む化合物や混合物(例えば、AgとMgの合金)を含む。また、第2電極EL2は、前述の物質からなる反射膜や半透過膜、及びITO、IZO、ZnO、ITZOなどからなる透明導電膜を含む複数の層構造を有してもよい。
【0117】
図示していないが、第2電極EL2は補助電極と接続される。第2電極EL2が補助電極と接続されれば、第2電極EL2の抵抗を減少させることができる。
【0118】
図示していないが、一実施形態に係る有機電界発光素子10の第2電極EL2の上には、キャッピング層(図示せず)が更に配置されてもよい。キャッピング層(図示せず)は、例えば、α-NPD、NPB、TPD、m-MTDATA、Alq3、CuPc、TPD15(N4,N4,N4’,N4’-テトラ(ビフェニル-4-イル)ビフェニル-4,4’-ジアミン)、TCTA(4,4’,4”-トリス(カルバゾール ソル-9-イル)トリフェニルアミン)、N,N’-ビス(ナフタレン-1-イル)などを含んでもよい。
【0119】
本発明の一実施形態による有機電界発光素子10は、上述した一実施形態に係る化合物を第1電極EL1と第2電極EL2との間に配置される発光層EMLに含むことで、良好な発光効率及び優秀な色純度特性を示す。また、一実施形態に係る化合物は熱活性遅延蛍光ドーパントであり、発光層EMLは当該化合物を含むことにより、熱活性遅延蛍光を放出して、青色波長領域で良好な発光効率特性を示す。
【0120】
一方、上述した一実施形態に係る化合物は、発光層EML以外の有機層で有機電界発光素子10用材料として含まれる。例えば、本発明の一実施形態に係る有機電界発光素子10は、上述した一実施形態に係る化合物を第1電極EL1と第2電極EL2との間に配置される少なくとも一つの有機層、または第2電極EL2の上に配置されるキャッピング層(図示せず)に含んでもよい。
【0121】
上述した一実施形態に係る化合物は少なくとも一つの電子供与部及び少なくとも一つの電子受容部を含み、一つの分子の中に電子供与部と電子受容部の両方を含むことで分子内における電子移動が容易である。また、一実施形態に係る化合物は、機能部であるFUに電子供与部または電子受容部を導入することで、一つの分子内における電子供与性及び電子受容性の程度を調節することによって、発光される光の波長領域を調節することができる。つまり、一実施形態に係る化合物は、スルホニル基を基準に両側が非対称の構造を有するように置換基を導入し、電子供与部と電子受容部の機能を相対的に調節して、化合物全体におけるエネルギーレベルを調節することで、発光材料として使用されると光の色純度を改善する。以下では実施例及び比較例を参照し、本発明の一実施形態による化合物及び一実施形態に係る有機電界発光素子について詳しく説明する。また、以下に示す実施例は本発明の理解を助けるための一例であって、本発明の範囲はこれに限らない。
【実施例
【0122】
1.化合物の合成
まず、本実施形態による化合物の合成方法について、化合物1~化合物6の合成方法を例示して詳しく説明する。また、以下で説明する化合物の合成法は一例であって、本発明の実施形態による化合物の合成法は下記実施例に限らない。
【0123】
(1)化合物1の合成
化合物1は、例えば、下記反応式1によって合成される。
[反応式1]
【化25】
【0124】
(中間体Aの合成)
ビス(4-フルオロフェニル)スルホン(12.2mmol)、炭酸カリウム(12.2mmol)、ピペリジン(12.2mmol)を丸底フラスコに入れた後、アルゴン(Ar)ガスをフラスコに加える。無水DMF(20ml)を溶媒にして、丸底フラスコに熱を加えて55℃で12時間還流攪拌する。反応が終わったら、反応溶液を水に溶かし、塩化メチレンで有機物を抽出した後、カラムクロマトグラフィを介して精製して、中間体A(1-(4-((4-フルオロフェニル)スルホニル)フェニル)ピペリジン)を得る。
【0125】
(化合物1の合成)
ジメチルアクリジン(9.39mmol)、NaH(10.33mmol)を丸底フラスコに入れた後、アルゴンガスをフラスコに加える。無水DMF(20ml)を溶媒にして、30分間還流攪拌する。中間体A(9.39mmol)を無水DMF(10ml)に溶かした溶液を丸底フラスコに注入し、55℃で2時間還流攪拌する。反応が終わったら、反応溶液を水に溶かし、塩化メチレンで有機物を抽出した後、カラムクロマトグラフィを介して精製して、白色固相の目的物質である化合物1を得る。
【0126】
(2)化合物2の合成
化合物2は、例えば、下記反応式2によって合成される。
[反応式2]
【化26】
【0127】
(中間体B1の合成)
ビス(4-フルオロフェニル)スルホン(19.66mmol)、KOH(39.33mmol)を丸底フラスコに入れ、DMSO(20ml)を溶媒にして溶かしてから、75℃で24時間還流攪拌する。反応が終わったら、反応溶液を水に溶かし、塩化メチレンで有機物を抽出した後、カラムクロマトグラフィを介して精製して、中間体B1を得る。
【0128】
(中間体B2の合成)
中間体B1(15.85mmol)、CHI(15.85mmol)、炭酸カリウム(19.03mmol)を丸底フラスコに入れた後、DMF(20ml)を溶媒にして、75℃で24時間還流攪拌する。反応が終わったら、反応溶液を水に溶かし、塩化メチレンで有機物を抽出した後、カラムクロマトグラフィを介して精製して、中間体B2を得る。
【0129】
(化合物2の合成)
ジメチルアクリジン(9.39mmol)、NaH(10.33mmol)を丸底フラスコに入れた後、アルゴンガスをフラスコに加える。次に、無水DMF(20ml)を溶媒にして、30分間還流攪拌する。中間体B1(9.39mmol)を無水DMF(10ml)に溶かした溶液を丸底フラスコに注入し、55℃で2時間還流攪拌する。反応が終わったら、反応溶液を水に溶かし、塩化メチレンで有機物を抽出した後、カラムクロマトグラフィを介して精製して、白色固相の目的物質である化合物2を得る。
【0130】
(3)化合物3の合成
化合物3は、例えば、下記反応式3によって合成される。
[反応式3]
【化27】
【0131】
(中間体Cの合成)
4-メチルベンゼンスルホニルクロリド(5.24mmol)、塩化第二鉄(6.56mmol)を丸底フラスコに入れた後、フルオロベンゼン(15.73mmol)を溶媒にして、40℃で12時間還流攪拌する。反応が終わったら、反応溶液を水に溶かし、塩化メチレンで有機物を抽出した後、カラムクロマトグラフィを介して精製して、中間体Cを得る。
【0132】
(化合物3の合成)
ジメチルアクリジン(1.99ml)、NaH(2.60mmol)を丸底フラスコに入れた後、アルゴンガスをフラスコに加える。次に、無水DMF(20ml)を溶媒にして、30分間還流攪拌する。中間体C(1.99mmol)を無水DMF(10ml)に溶かした溶液を、55℃で2時間還流攪拌する。反応が終わったら、反応溶液を水に溶かし、塩化メチレンで有機物を抽出した後、カラムクロマトグラフィを介して精製して、白色固相の目的物質である化合物3を得る。
【0133】
(4)化合物4の合成
化合物4は、例えば、下記反応式4によって合成される。
[反応式4]
【化28】
【0134】
(中間体Dの合成)
ベンゼンスルホニルクロリド(28.31mmol)、塩化第二鉄(35.39mmol)を丸底フラスコに入れた後、フルオロベンゼン(84.93mmol)を溶媒にして、40℃で12時間還流攪拌する。反応が終わったら、水に反応溶液を水に溶かし、塩化メチレンで有機物を抽出した後、カラムクロマトグラフィを介して精製して、中間体Dを得る。
【0135】
(化合物4の合成)
ジメチルアクリジン(16.08mmol)、NaH(19.3mmol)を丸底フラスコに入れた後、アルゴンガスをフラスコに加える。次に、無水DMF(20ml)を溶媒にして、30分間還流攪拌する。中間体D(16.08mmol)を無水DMF(10ml)に溶かした溶液を丸底フラスコに注入し、55℃で2時間還流攪拌する。反応が終わったら、反応溶液を水に溶かし、塩化メチレンで有機物を抽出した後、カラムクロマトグラフィを介して精製して、白色固相の目的物質である化合物4を得る。
【0136】
(5)化合物5の合成
化合物5は、例えば、下記反応式5によって合成される。
[反応式5]
【化29】
【0137】
(中間体Eの合成)
4-(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホニルクロリド(10.21mmol)、塩化第二鉄(12.77mmol)を丸底フラスコに入れた後、フルオロベンゼン(30.66mmol)を溶媒にして、40℃で12時間還流攪拌する。反応が終わったら、反応溶液を水に溶かし、塩化メチレンで有機物を抽出した後、カラムクロマトグラフィを介して精製して、中間体Eを得る。
【0138】
(化合物5の合成)
ジメチルアクリジン(15.25mmol)、NaH(18.30mmol)を丸底フラスコに入れた後、アルゴンガスをフラスコに加える。次に、無水DMF(20ml)を溶媒にして、30分間還流攪拌する。中間体E(18.30mmol)を無水DMF(10ml)に溶かした溶液を、55℃で2時間還流攪拌する。反応が終わったら、反応溶液を水に溶かし、塩化メチレンで有機物を抽出した後、カラムクロマトグラフィを介して精製して、白色固相の目的物質である化合物5を得る。
【0139】
(6)化合物6の合成
化合物6は、例えば、下記反応式6によって合成される。
[反応式6]
【化30】
【0140】
(中間体F1の合成)
4-フルオロベンゼンスルホニルクロリド(48.71mmol)、亜硫酸ナトリウム(97.42mmol)、重炭酸ナトリウム(97.42mmol)を丸底フラスコに入れた後、蒸留水(60ml)を溶媒にして、80℃で4時間還流攪拌する。反応が終わったら、エタノールを利用して有機物を抽出した後、カラムクロマトグラフィを介して精製して、中間体F1を得る。
【0141】
(中間体F2の合成)
4-フルオロベンゾニトリル(59.23mmol)を丸底フラスコに入れた後、DMSO(20ml)を溶媒にして、120℃で還流攪拌する。中間体F1(19.74mmol)をDMSO(20ml)に溶かしてから注入し、120℃で24時間還流攪拌する。反応が終わったら、反応溶液を水に溶かし、塩化メチレンで有機物を抽出した後、カラムクロマトグラフィを介して精製して、白色固相の中間体F2を得る。
【0142】
(化合物6の合成)
ジメチルアクリジン(11.60mmol)、NaH(12.76mmol)を丸底フラスコに入れた後、アルゴンガスをフラスコに加える。次に、無水DMF(20ml)を溶媒にして、30分間還流攪拌する。中間体F2(11.60mmol)を無水DMF(10ml)に溶かした溶液を丸底フラスコに注入し、55℃で2時間還流攪拌する。反応が終わったら、反応溶液を水に溶かし、塩化メチレンで有機物を抽出した後、カラムクロマトグラフィを介して精製して、固相の目的物質である化合物6を得る。
【0143】
2.化合物のエネルギー準位の評価
化合物1~化合物5、及び比較例化合物C1を表1に示した。
【表1】
【0144】
下記表2では、実施例化合物である化合物1~化合物5、及び比較例化合物C1のEST、及び量子効率Φab、PLを示している。ESTは最低一重項励起エネルギー順位(S1 level)と最低三重項励起エネルギー準位(T1 level)の差に当たる。表2のエネルギー準位値は、常温における蛍光と低温におけるりん光スペクトルを介して計算している。量子効率Φab、PLは、フォトルミネッセンス量子収量(Photoluminescence quantum yeild:PLYQ)に当たる。
【表2】
【0145】
表2の結果を参照すると、化合物1~化合物5と比較例化合物C1は、EST値が0.2eV未満に低く示されている。化合物1~化合物5がいずれも小さいEST値を有することで、熱活性遅延蛍光ドーパント材料として使用可能であると判断される。
【0146】
一方、比較例化合物C1は実施例化合物と類似したEST値を有することから、熱活性遅延蛍光ドーパント材料として使用可能であると判断される。
【0147】
一方、実施例化合物のうち化合物5は、比較例化合物C1及び他の実施例化合物に比べ高い量子収量値を示すことが分かる。
【0148】
3.有機電界発光素子の製作及び評価
(有機電界発光素子の製作)
一実施形態に係る有機電界発光素子を下記方法で製造した。上述した実施例化合物である化合物1~化合物4を発光層のドーパント材料として使用し、実施例1~実施例4の有機電界発光素子を製作した。比較例1は、比較例化合物C1を発光層のドーパント材料として使用して製作された有機電界発光素子に当たる。
【0149】
ガラス基板の上にITOをパターニングした後、イソプロピルアルコール及び超純水で洗浄し、超音波で洗浄した後、30分間UVを照射してから、オゾン処理を行った。次に、65nmの厚さでNPBを蒸着し、正孔輸送層を形成した。
【0150】
正孔輸送層の上に、mCPと本発明の化合物1、化合物2、化合物3、化合物4または比較例化合物C1を90:10の割合で共蒸着し、厚さ30nmの発光層を形成した。つまり、共蒸着して形成した発光層は、実施例1~実施例4ではそれぞれ化合物1~化合物4をmCPと混合して蒸着しており、比較例1では比較例化合物C1をmCPと混合して蒸着している。
【0151】
発光層の上にTPBiで厚さ30nmの電子輸送層を形成し、次のLiFを蒸着して、厚さ1nmの電子注入層を形成した。電子注入層の上に、アルミニウム(Al)で厚さ100nmの第2電極を形成した。
【0152】
実施例及び比較例の有機電界発光素子の製作に使用した化合物を以下に開示する。
【化31】
【0153】
(有機電界発光素子の特性評価)
表3は、実施例1~実施例4、及び比較例1に対する有機電界発光素子の評価結果を示している。表3は、製作された有機電界発光素子の駆動電圧、発光効率、最大発光波長、及び色座標を比較して示している。
【0154】
表3に示した実施例及び比較例に対する特性評価の結果は、電圧及び電流密度はソースメータ(Kethley Instrument社製、SMU236)で電源を供給し、輝度計PR650で測定した。
【0155】
表3において、発光効率は最大外部量子収量を示し、発光波長は発光ピークにおける最大輝度値を示す波長を示す。一方、色座標はCIE1976の色座標を示す。
【表3】
【0156】
表3の結果を参照すると、本発明の一実施例による化合物を発光層材料として使用した有機電界発光素子の実施例の場合、比較例に比べ、類似した駆動電圧値と良好な発光効率を示すことが分かる。また、実施例の発光中心波長は460nm以下であって、青色波長領域の光を放出することが分かる。
【0157】
一方、実施例1~実施例4の色座標の結果は、比較例1に比べCIEy値がより小さく示されることから、青色光の色純度が改善されていることが分かる。
【0158】
つまり、一実施形態に係る化合物の場合、スルホニル基を基準に両側に置換基を導入して非対称の構造を有し、電子供与部と電子受容部との間のエネルギーを能動的に調節することで、TADF特性を維持しながらも対称の構造を有する比較例化合物C1を使用した場合に比べ、改善された色純度特性を示す。
【0159】
一実施形態に係る有機電界発光素子は、一実施形態に係る化合物を含むことで良好な発光効率特性を示しながらも、改善された色純度特性を示す。また、一実施形態に係る有機電界発光素子は、一実施形態に係る化合物を発光層材料として含むことで、青色光波長領域で良好な発光効率及び優秀な色品質を具現する。
【0160】
これまで本発明の好ましい実施例を参照して説明したが、該当技術分野における熟練した当業者または該当技術分野における通常の知識を有する者であれば、後述する特許請求の範囲に記載された本発明の思想及び技術領域から逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正及び変更し得ることを理解できるはずである。
【0161】
よって、本発明の技術的範囲は明細書の詳細な説明に記載されている内容に限らず、特許請求の範囲によって決められるべきである。
【符号の説明】
【0162】
10:有機電界発光素子 EL1:第1電極
EL2:第2電極 HTR:正孔輸送領域
EML:発光層 ETR:電子輸送領域
図1
図2
図3