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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】手術器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/28 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
A61B17/28
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020176430
(22)【出願日】2020-10-21
(65)【公開番号】P2022067707
(43)【公開日】2022-05-09
【審査請求日】2023-10-10
(73)【特許権者】
【識別番号】391017849
【氏名又は名称】山梨県
(74)【代理人】
【識別番号】100097043
【弁理士】
【氏名又は名称】浅川 哲
(72)【発明者】
【氏名】山田 博之
(72)【発明者】
【氏名】阿部 治
(72)【発明者】
【氏名】西村 通喜
(72)【発明者】
【氏名】高尾 清利
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第02109147(US,A)
【文献】米国特許第02535215(US,A)
【文献】特開2019-025105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00 - A61B 18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部に挟持部を有する一対の挟持アーム部材と、一対の挟持アーム部材の他端部に連結され、相対的に前後方向にスライド可能な一対の操作アーム部材とを備え、
前記一対の挟持アーム部材には前記一対の操作アーム部材の開閉操作によって前記挟持部を開閉するための回転軸が設けられ、
前記一対の挟持アーム部材の各後端部と前記一対の操作アーム部材の各先端部とが前記回転軸の軸方向と直交する方向に軸方向を有する一対の屈曲軸によってそれぞれ連結され、
前記一対の操作アーム部材を開閉操作することにより、前記回転軸を支点として前記挟持部が開閉する一方、
前記一対の操作アーム部材を相対的に前後方向、すなわちアーム軸方向にスライドさせることにより、前記一対の屈曲軸がアーム軸方向に前後にずれ動いて、前記一対の屈曲軸を支点として一対の挟持アーム部材が前記開閉方向とは直交する方向に屈曲する手術器具。
【請求項2】
前記一対の挟持アーム部材間には、挟持部を閉方向に付勢するバネ材が掛け渡されている請求項に記載の手術器具。
【請求項3】
前記一対の操作アーム部材間には、前記一対の挟持アーム部材の屈曲角度を保持する係合手段が設けられている請求項1に記載の手術器具。
【請求項4】
前記一対の操作アーム部材間には、前記一対の操作アーム部材が互いに離れて分離するのを防止する分離防止部が設けられている請求項1に記載の手術器具。
【請求項5】
前記一対の操作アーム部材には、一対の挟持アーム部材の屈曲方向を規制するストッパが設けられている請求項1に記載の手術器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腹腔鏡下小切開手術(以下「ミニマム創手術」という。)などの切開創内において操作する手術器具に関する。
【背景技術】
【0002】
ミニマム創手術などの狭い切開創内では手術器具の操作は限られたものとなり、切開創内には直線的にしかアプローチできない。そのため、従来の手術器具では操作方向が限られてしまうことから、手術器具の先端部分を屈曲させることができる手術器具を用いてミニマム創手術を行いたいとの医療現場ニーズがあり、そのような手術器具の開発が望まれていた。
【0003】
従来、この種の手術器具としては、特許文献1に記載された持針器が知られている。この持針器は、挟持アーム部材と、当該挟持アーム部材を回動可能に支持する挟持アーム支持部材と、を有するアタッチメントが先端部に配置され、基端部にグリップ部が形成された持針器本体と、挟持アーム開閉駆動部と、挟持アーム回動駆動部とを備え、挟持操作伝達部及び回動操作伝達部を介して各駆動部に駆動力が伝達される構成となっている。詳細には挟持アーム部材を開閉駆動するための挟持操作部及び挟持アーム部材を回動駆動するための回動操作部がグリップ部に設けられており、挟持操作部における挟持操作レバーの押圧操作を金属線や樹脂線などのフレキシブル部材からなる操作伝達部材を介して挟持アーム開閉駆動部に伝達し、回動操作部における回転操作レバーの回動操作をワイヤなどの操作伝達部材を介して挟持アーム回転駆動部に伝達するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の持針器にあっては、グリップ部に設けられた挟持操作部及び回動操作部での操作が、操作伝達部材を介して挟持アーム部材に伝達されるものであり、操作時の手の動きが挟持アーム部材の駆動に直接反映されるものではないため、持針器を使いこなすまでに時間が掛かるといった問題があった。
【0006】
そこで、本願発の目的は、手元で操作する際の手の動きが挟持アーム部材に直接反映されることで、従来からの持針器と操作時の手の動きをほとんど変えることなく操作することができ、熟練を要することなく、容易に使いこなすことができる持針器などの手術器具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る手術器具は、一端部に挟持部を有する一対の挟持アーム部材と、一対の挟持アーム部材の他端部に連結される一対の操作アーム部材とを備え、前記一対の挟持アーム部材には前記挟持部を開閉するための回転軸が設けられ、前記一対の挟持アーム部材と一対の操作アーム部材とが一対の屈曲軸を介して連結され、前記一対の屈曲軸を支点として一対の挟持アーム部材が前記一対の操作アーム部材に対して屈曲する。
【0008】
また、本発明に係る手術器具は、前記一対の屈曲軸の軸方向が前記回転軸の軸方向と直交しており、一対の挟持アーム部材が挟持部の開閉方向とは直交する方向に屈曲する。
【0009】
また、本発明に係る手術器具は、前記一対の操作アーム部材がアーム軸方向に沿って相対的にスライドすることにより前記一対の屈曲軸が相互にずれ動き、屈曲軸を支点として一対の挟持アーム部材が屈曲する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る手術器具によれば、一対の操作アーム部材の手元側での操作により、回転軸を支点とした一対の挟持アーム部材の挟持部の開閉、及び屈曲軸を支点とした一対の挟持アーム部材の屈曲を可能としたので、一対の操作アーム部材を手元側で操作する際の動作を挟持アーム部材の開閉及び屈曲の動きに直接反映させることができる。その結果、従来からの手術器具と同様に操作することができ、熟練を要することなく、容易に使いこなすことができる。
【0011】
また、本発明に係る手術器具によれば、一対の屈曲軸の軸方向が回転軸の軸方向と直交しており、一対の挟持アーム部材が挟持部の開閉方向とは直交する方向に屈曲するので、狭い切開創内でも挟持アーム部材の動きを把握し易い。
【0012】
また、本発明に係る手術器具によれば、一対の操作アーム部材をアーム軸方向に沿って相対的にスライド操作することで、屈曲軸を支点として一対の挟持アーム部材を屈曲させることができるので、操作が確実であると共に極めて容易である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係る持針器の斜視図である。
図2】第1実施形態に係る持針器の先端部分の斜視図である。
図3】挟持部を閉じた時の先端部分の側面図である。
図4】挟持部を開いた時の先端部分の側面図である。
図5】一対の挟持アーム部材を屈曲させた先端部分の斜視図である。
図6】一対の操作アーム部材の手元側の斜視図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る持針器の斜視図である。
図8】一対の操作アーム部材の手元側の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る手術器具について、その実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、図面は、本発明の手術器具を模式的に表したものである。これらの実物の寸法は、図面上の寸法と必ずしも一致していない。また、重複説明は適宜省略させることがあり、同一部材には同一符号を付与することがある。また、本発明の技術的範囲は以下で説明する各実施の形態には限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。以下、本発明の手術器具の一例として持針器を説明するが、把持鉗子や切開ハサミなど、狭い切開創内で手術操作を行うための手術器具にも適用されるものである。
【0015】
図1乃至図6には本発明の第1実施形態に係る持針器1が示されている。この持針器1は、一端部に挟持部4を有する一対の挟持アーム部材2a,2bと、一対の挟持アーム部材2a,2bの他端部に連結される一対の操作アーム部材3a,3bと、を備える。前記一対の挟持アーム部材2a,2bはその中間部が回転軸5によって軸支される。そのため、前記挟持部4は、回転軸5を支点として一対の挟持片4a,4bが開閉動作する。一対の挟持片4a,4bは、回転軸5の軸方向に対して直交する方向で開閉する。また、一対の挟持片4a,4bは、その間で針を挟み易いように、かつ切開創内を侵襲しないように先端に向かって先細りとなる流線形状をしている。また、一対の挟持片4a,4bは閉じた時には互いに密着する平面やローレット面を内側に有している。なお、本発明の挟持部4は、基本的には従来の持針器と同様のものが適用される。
【0016】
前記各挟持アーム部材2a,2bは、回転軸5の後方側が二股状に分かれ、各後端部が一対の屈曲軸6a,6bを介して一対の操作アーム部材3a,3bの先端部に連結されている。具体的には一対の操作アーム部材3a,3bの各先端部が二股状に分かれてU字形状に形成され、二股状に分かれた先端部に各挟持アーム部材2a,2bの後端部が挿入される。そして、両者を前記屈曲軸6a,6bで連結することによって各挟持アーム部材2a,2bの後端部が一対の操作アーム部材3a,3bの先端部に回転可能に軸支される。一方の挟持アーム部材2aは、一方の屈曲軸6aを介して一方の操作アーム部材3aに連結され、他方の挟持アーム部材2bは、他方の屈曲軸6bを介して他方の操作アーム部材3bに連結されている。前記一対の屈曲軸6a,6bは、その軸心方向が前記回転軸5の軸心方向とは直交する方向である。そのため、一対の挟持アーム部材2a,2bを前記挟持部4の開閉方向とは直交する方向に屈曲させることが可能となる。
【0017】
本実施形態の持針器1は、前記一対の屈曲軸6a,6bの近傍において、一対の挟持アーム部材2a,2b間にバネ材としての圧縮コイルバネ8を備えている。この圧縮コイルバネ8は、一方の挟持アーム部材2aの後端部に固定されたピン9aと、他方の挟持アーム部材2bの後端部に固定されたピン9bとの間に掛け渡されるものである。この圧縮コイルバネ8の働きによって、一対の挟持片4a,4bは常に閉じる方向に付勢される。そのため、挟持部4で針を把持した時にはバネによる把持力が発生して針を把持することができる一方、屈曲軸6a,6bには把持による力が加わらないので、その状態で一対の挟持アーム部材2a,2bを所望の角度に屈曲操作することができる。なお、前記バネ部材としては、圧縮コイルバネ8の他に板バネやトルクバネなどを利用することができることは勿論である。
【0018】
前記一対の操作アーム部材3a,3bは、図1に示されるように、一対の挟持アーム部材2a,2bの後端部から延びる2本の長い金属製の棒状部材によって構成されている。一対の操作アーム部材3a,3bの手元側には親指と中指若しくは薬指などを差し込むための一対の指環10a,10bが設けられる。この実施形態では一対の指環10a,10bは同一形状に形成されている。したがって、持針器1を使用する際の向きは制約されない。また、一対の操作アーム部材3a,3bは、手元側から先端部側に向かって両者の間隔が次第に狭められて、先端部側では両者が重なった状態で一対の挟持アーム部材2a,2bの後端部に屈曲軸6a,6bを介して連結される。なお、一対の操作アーム部材3a,3bの長さは、操作性などを考慮して適宜設計される。
【0019】
本発明の持針器1は、前記一対の操作アーム部材3a,3bの開閉方向と一対の屈曲軸6a,6bの軸心方向とが一致している。その結果、図3及び図4に示されるように、一対の操作アーム部材3a,3bを開閉操作する際には、一対の挟持アーム部材2a,2bは、一対の操作アーム部材3a,3bの動きと一体となり、回転軸5を支点として挟持部4が開閉する。
【0020】
図5に示されるように、一対の挟持アーム部材2a,2bの屈曲操作は、一対の操作アーム部材3a,3bを閉じた状態で、両者を相対的に前後方向、即ちアーム軸方向Aにスライドさせることで行われる。そうすることで、一対の屈曲軸6a,6bが前後にずれ動く。前方にずれ動いた一方の屈曲軸6aに連結された一方の挟持アーム部材2aは前方に押され、後方にずれ動いた他方の屈曲軸6bに連結された他方の挟持アーム部材2bは後方に引かれるために、屈曲軸6a,6bを支点として、一対の挟持アーム部材2a,2bがB方向に回動し、一対の操作アーム部材3a,3bのアーム軸方向Aに対して一方向に屈曲することになる。一対の挟持アーム部材2a,2bの屈曲角度は、一対の操作アーム部材3a,3bのスライドの大きさに応じて変化する。
【0021】
図2図4及び図5に示されるように、一対の操作アーム部材3a,3bの先端部分には、当該操作アーム部材3a,3bが互いに離れて分離してしまうのを防ぐ分離防止部11が設けられている。この分離防止部11は、一方の操作アーム部材3aに設けられたガイド孔11aと、他方の操作アーム部材3bに設けられ前記ガイド孔11a内に突出するガイドピン11bとからなる。ガイド孔11aは屈曲したカム面を有する長円形状をしており、ガイドピン11bがカム面に沿ってガイド孔11a内を前後に移動することで、屈曲操作時に一対の操作アーム部材3a,3bの互いの先端部分が離れて分離してしまうのを防いでいる。図4に示されるように、ガイドピン11bの突出長さは、一対の操作アーム部材3a,3bを開いた状態においてガイドピン11bがガイド孔11aから外れないように、ガイド孔11aからある程度突出する程度が望ましい。また、ガイド孔11aの先端側の端部11a’は、ガイドピン11bの前方への移動を規制する第1ストッパとなっている。また、ガイド孔11aの後端側の端部11a’’は、ガイドピン11bの後方への移動を規制する第2ストッパとなっている。第1ストッパによって、一対の挟持アーム部材2a,2bの前記B方向への回動とは反対方向への回動を阻止している。また、第2ストッパによって、一対の挟持アーム部材2a,2bの最大屈曲角度を設定している。
【0022】
図1及び図6に示されるように、前記一対の操作アーム部材3a,3bの各指環10a,10bに隣接した位置には、一対の操作アーム部材3a,3bの開閉操作を拘束する係合手段12が設けられている。この係合手段12は、各指環10a,10bに内側において互いに向かい合うように配置された一対の矩形状の係合部材12a,12bと、その内側面に形成された係合溝と、を有する。この係合溝は、一対の操作アーム部材3a,3bの開方向への動きを拘束する縦溝14a,14bと、一対の挟持アーム部材2a,2bを屈曲させた時にその角度を保持するローレット溝15a,15bと、からなる。縦溝14a,14bは、一対の操作アーム部材3a,3bのアーム軸方向Aに沿って平行に延びる複数の溝条からなる。複数の溝条は同じ方向に傾斜している。この傾斜の方向は、一対の操作アーム部材3a,3bを開く方向に操作したときに互いの溝条に食い込むような方向である。したがって、両方の係合部材12a,12bの縦溝14a,14b同士を係合させることで、一対の操作アーム部材3a,3bの開方向への動きを拘束することができる。
【0023】
一方、ローレット溝15a,15bは、各係合部材12a,12bの一端において、前記縦溝14a,14bに隣接して設けられる。例えば、前記縦溝14a,14bとは直交する方向に切られた多数の細かい溝によって形成され、一対の操作アーム部材3a,3bのアーム軸方向Aに並設されたものである。一対の挟持アーム部材2a,2bを所望の角度に屈曲したのち、一対のローレット溝15a,15b同士を係合させることで、一対の操作アーム部材3a,3bのアーム軸方向Aのスライドが拘束され、それによって一対の挟持アーム部材2a,2bの屈曲角度が保持される。
【0024】
次に上記構成からなる持針器1の使用方法について説明する。図1に示されるように、先ず、一対の操作アーム部材3a,3bのアーム軸方向Aと同一線上に一対の挟持アーム部材2a,2bを保つ。次いで、指環10a,10bに指を挿入して一対の操作アーム部材3a,3bを開閉操作する。この開閉操作に伴って回転軸5を支点として挟持部4の挟持片4a,4bを開閉させて針を把持する。この時、圧縮コイルバネ8の作用によって挟持部4による針の把持が確保される。また、一対の操作アーム部材3a,3bの手元側に設けられた一対の係合部材12a,12bの縦溝14a,14b同士を係合させることで、一対の操作アーム部材3a,3bが不意に開いてしまうのを防ぐことができる。
【0025】
切開創内に差し入れた持針器1の先端部を切開創内で屈曲させる場合には、針を圧縮コイルバネ8の作用によって把持した状態で一対の操作アーム部材3a,3bをアーム軸方向Aに相対的にスライドさせる。図5に示されるように、一対の操作アーム部材3a,3bのスライドに伴って一対の屈曲軸6a,6bが互いに前後にずれ動き、一対の挟持アーム部材2a,2bが屈曲軸6a,6bを支点として一方向に回動し、一対の操作アーム部材3a,3bのアーム軸方向Aに対して屈曲する。所望の屈曲角度になったところでアーム軸方向のスライドを止め、一対の係合部材12a,12bに形成されたローレット溝15a,15b同士を係合させることで、一対の挟持アーム部材2a,2bの屈曲角度が保持される。このようにして、切開創内において持針器1の先端部を所望の角度に屈曲させた状態で持針器1を操作することができる。
【0026】
図7及び図8には本発明に係る持針器の第2実施形態が示されている。この持針器1’は、一対の操作アーム部材3a,3bの手元側に分離防止部20が設けられている点が第1実施形態のものとは異なっている。分離防止部20は、一方の操作アーム部材3aの指環10aから他方の操作アーム部材3bの指環10bに向かって延びる先端が直角に曲がったL形の棒状部材21と、他方の操作アーム部材3bの指環10bから一方の操作アーム部材3aの指環10aに向かって、前記棒状部材21とほぼ平行に延びる一対の規制部材22a,22bとを有する。一対の規制部材22a,22bの先端部分は前記棒状部材21を両側から挟むようにしてほぼ直角に曲がっている。一対の操作アーム部材3a,3bを開閉操作する際に、一対の規制部材22a,22bの先端部分で棒状部材21の左右方向の動きを規制することで、一対の操作アーム部材3a,3bが互いに離れて分離してしまうのを防ぐことができる。
【0027】
また、前記一対の規制部材22a,22bの直角に曲がっている部分には、棒状部材21の後方への移動を規制するストッパピン23が一対の規制部材22a,22bに掛け渡されるように設けられている。ストッパピン23に棒状部材21の後端が当たることで一方の操作アーム部材3aの後方へのスライドが規制されることになり、前記一対の挟持アーム部材2a,2bの一方向への屈曲を確保している。
【0028】
さらに、前記棒状部材21の先端部分と他方の操作アーム部材3bの指環10bの近傍部分との間には係合手段24が設けられる。この係合手段24は、棒状部材21の先端部分に形成される細長形状の係合片25と、他方の操作アーム部材3bの指環10bの近傍部分に設けられた矩形状の係合部材26とからなり、当該係合部材26の一面には前記係合片25と係合する縦溝27が形成されている。この縦溝27は、一対の操作アーム部材3a,3bのアーム軸方向Aに沿って平行に延びる複数の溝条からなり、これらの溝条に前記係合片25を係合させることで、一対の操作アーム部材3a,3bの開方向への動きを拘束すると共に、一対の挟持アーム部材2a,2bの屈曲角度を保持する。前記係合片25及び縦溝27は、一方向に傾斜している。この傾斜の方向は、一対の操作アーム部材3a,3bが閉じる方向では係合片25が縦溝27の各溝条を容易に乗り越えるが、逆方向の開く方向では係合片25が縦溝27の各溝条に食い込んで一対の操作アーム部材3a,3bが容易には開かない方向である。また、この持針器1’では、規制部材22aによっても操作アーム部材3aの係合解除方向への動きを規制しているため、一対の操作アーム部材3a,3bの係合を解除させる際には、操作アーム部材3aを閉方向に動作させ、係合片25をさらに移動させて全ての溝状27を乗り越えた後に、係合部材26における縦溝27の反対面を移動することで係合解除および開き操作が可能になる。なお、上記で説明した持針器1’の分離防止部20及び係合手段24以外の構成部分については、第1実施形態における持針器1とほぼ同様の構成からなるので、同一の符号を付することで詳細な説明を省略する。
【0029】
上記構成からなる持針器1’は、第1実施形態と同様、一対の操作アーム部材3a,3bを開閉操作することによって挟持部4を開閉し針を把持することができる。また、一対の操作アーム部材3a,3bをアーム軸方向Aに相対的にスライドさせることによって、一対の挟持アーム部材2a,2bを回動させ、所望角度に屈曲させることができる。そして、屈曲角度は、前述した持針器1’の分離防止部20及び係合手段24によって保持することができる。
【符号の説明】
【0030】
1,1’ 持針器
2a,2b 挟持アーム部材
3a,3b 操作アーム部材
4 挟持部
4a,4b 挟持片
5 回転軸
6a,6b 屈曲軸
8 圧縮コイルバネ
9a,9b ピン
10a,10b 指環
11 分離防止部
11a ガイド孔
11b ガイドピン
12 係合手段
12a,12b 係合部材
14a,14b 縦溝
15a,15b ローレット溝
20 分離防止部
21 棒状部材
22a,22b 規制部材
23 ストッパピン
24 係合手段
25 係合片
26 係合部材
27 縦溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8