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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】人体冷却システム
(51)【国際特許分類】
   A61F 7/00 20060101AFI20240910BHJP
   F25D 3/00 20060101ALI20240910BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
A61F7/00 331E
F25D3/00 D
F25D11/00 101Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021017149
(22)【出願日】2021-02-05
(65)【公開番号】P2022120325
(43)【公開日】2022-08-18
【審査請求日】2023-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】504139846
【氏名又は名称】下田 一喜
(73)【特許権者】
【識別番号】501376338
【氏名又は名称】株式会社エイディーディー
(74)【代理人】
【識別番号】100135828
【弁理士】
【氏名又は名称】飯島 康弘
(72)【発明者】
【氏名】鳥越 健太
(72)【発明者】
【氏名】飯田 雅也
(72)【発明者】
【氏名】下田 裕人
(72)【発明者】
【氏名】下田 一喜
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-146922(JP,A)
【文献】特開2005-095318(JP,A)
【文献】実開昭50-063398(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0025302(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0209302(US,A1)
【文献】米国特許第10271986(US,B1)
【文献】国際公開第2016/028176(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 7/00
F25D 11/00
F25D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の少なくとも一部を収容する収容部と、
前記収容部内の気体及び前記収容部内に供給される気体の少なくとも一方を冷却する冷凍機と、
を有しており、
前記収容部は、保冷剤を保持する保持部を有している
人体冷却システム。
【請求項2】
前記保持部は、少なくとも、前記収容部の底面からの高さが前記収容部の深さの半分以上の位置に位置している
請求項に記載の人体冷却システム。
【請求項3】
前記保持部は、
前記収容部の外面を構成する外面部と、
前記収容部の内面を構成する内面部と、とを有しており、
前記外面部と前記内面部との間に前記保冷剤を保持する
請求項又はに記載の人体冷却システム。
【請求項4】
前記保持部は、前記保冷剤が封入されている保冷具を保持し、
前記内面部は、前記外面部に面する面から前記内面へ貫通している1以上の開口を有している
請求項に記載の人体冷却システム。
【請求項5】
前記1以上の開口は、
第1開口と、
前記第1開口よりも径が小さく、前記第1開口の周囲に位置している複数の第2開口と、を含んでいる
請求項に記載の人体冷却システム。
【請求項6】
前記保冷剤を有し、
前記保冷剤の融点が-40℃以下である
請求項のいずれか1項に記載の人体冷却システム。
【請求項7】
人体の少なくとも一部を収容する収容部と、
前記収容部内の気体及び前記収容部内に供給される気体の少なくとも一方を冷却する冷凍機と、
を有しており、
前記冷凍機は、前記収容部に設けられている冷却流路に冷媒を供給することによって前記収容部内の前記気体を冷却する
人体冷却システム。
【請求項8】
人体の少なくとも一部を収容する収容部と、
前記収容部内の気体及び前記収容部内に供給される気体の少なくとも一方を冷却する冷凍機と、
を有しており、
前記冷凍機は、前記収容部内から吸引されて前記収容部内へ送出される前記気体を冷却する
人体冷却システム。
【請求項9】
人体の少なくとも一部を収容する収容部と、
前記収容部内の気体及び前記収容部内に供給される気体の少なくとも一方を冷却する冷凍機と、
を有しており、
前記冷凍機は、前記収容部外から吸引されて前記収容部内へ送出される空気を冷却する
人体冷却システム。
【請求項10】
前記収容部は、上方が開放されているとともに、少なくとも人体のうち首より下の全体を収容可能な大きさを有する浴槽である
請求項1~9のいずれか1項に記載の人体冷却システム。
【請求項11】
前記収容部内の気体の温度を検出するセンサと、
前記センサの検出温度に基づいて、前記収容部内の気体の温度が-80°以下の目標温度に維持されるように前記冷凍機を制御可能な制御装置と、
を更に有している請求項1~10のいずれか1項に記載の人体冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、人体冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
治療又は疲労回復等を目的として人体の少なくとも一部を冷却する技術が知られている。特許文献1では、人体の少なくとも一部を浸漬可能な水槽と、水槽の水を所定の温度に保持する恒温装置とを備えたアイシングシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-81360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
人体の少なくとも一部を冷却するための新たなシステムが提供され、技術の豊富化が図られることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る人体冷却システムは、人体の少なくとも一部を収容する収容部と、前記収容部内の気体及び前記収容部内に供給される気体の少なくとも一方を冷却する冷凍機と、を有している。
【0006】
一例において、前記収容部は、上方が開放されているとともに、少なくとも人体のうち首より下の全体を収容可能な大きさを有する浴槽である。
【0007】
一例において、前記人体冷却システムは、前記収容部内の気体の温度を検出するセンサと、前記センサの検出温度に基づいて、前記収容部内の気体の温度が-80°以下の目標温度に維持されるように前記冷凍機を制御可能な制御装置と、を更に有している。
【0008】
一例において、前記収容部は、保冷剤を保持する保持部を有している。
【0009】
一例において、前記保持部は、少なくとも、前記収容部の底面からの高さが前記収容部の深さの半分以上の位置に位置している。
【0010】
一例において、前記保持部は、前記収容部の外面を構成する外面部と、前記収容部の内面を構成する内面部と、とを有しており、前記外面部と前記内面部との間に前記保冷剤を保持する。
【0011】
一例において、前記保持部は、前記保冷剤が封入されている保冷具を保持し、前記内面部は、前記外面部に面する面から前記内面へ貫通している1以上の開口を有している。
【0012】
一例において、前記1以上の開口は、第1開口と、前記第1開口よりも径が小さく、前記第1開口の周囲に位置している複数の第2開口と、を含んでいる。
【0013】
一例において、前記人体冷却システムは、前記保冷剤を有し、前記保冷剤の融点が-40℃以下である。
【発明の効果】
【0014】
上記の構成によれば、人体の少なくとも一部を冷却するための新たなシステムが提供され、技術の豊富化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る人体冷却システムの構成を示す模式的な斜視図。
図2】第2実施形態に係る人体冷却システムの収容部の構成を示す模式的な斜視図。
図3図2のIII-III線における断面図。
図4】実施例に係る人体冷却システムにおける温度変化を示す図。
図5】第3実施形態に係る人体冷却システムの収容部の構成を示す模式的な斜視図。
図6図6(a)、図6(b)及び図6(c)は第4、第5及び第6実施形態に係る人体冷却システムの構成を示す模式図。
図7図7(a)及び図7(b)は第7及び第8実施形態に係る人体冷却システムの構成を示す模式的な断面図。
図8図8(a)、図8(b)、図8(c)及び図8(d)は第9、第10、第11及び第12実施形態に係る人体冷却システムの構成を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。第1実施形態の説明の後、各種の実施形態の説明においては、基本的に、先に説明された実施形態との相違点についてのみ述べる。特に言及が無い事項は、先に説明された実施形態と同様とされたり、先に説明された実施形態から類推されたりしてよい。
【0017】
<第1実施形態>
(人体冷却システムの全体構成)
図1は、第1実施形態に係る人体冷却システム1(以下、単にシステム1ということがある。)の構成を示す模式的な斜視図である。
【0018】
システム1は、人体Hの少なくとも一部を冷却するものである。人体Hの少なくとも一部を冷却することによって、例えば、炎症の軽減、低酸素症の抑制、痛み感覚の軽減、血液循環の抑制及び/又は筋肉の緊張緩和が期待される。システム1が冷却の対象とする人体Hの部位、及びシステム1に期待される人体Hにおける効果は適宜に設定されてよい。換言すれば、システム1の規模、及びシステム1による冷却の程度(冷却温度及び冷却時間等)等は適宜に設定されてよい。
【0019】
システム1は、例えば、人体Hの少なくとも一部を収容する収容部3と、収容部3内の気体を冷却する冷凍機5と、を有している。人体Hのうち収容部3に収容されている部位は、当該部位の周囲の気体に熱を奪われて冷却される。気体は、例えば、空気である。
【0020】
また、システム1は、例えば、冷凍機5によって冷却された冷媒が流れる冷却流路7を有してよい。冷却流路7は、収容部3に設けられている部分を有している。収容部3内の気体は、収容部3及び冷却流路7を介して冷媒に熱を奪われて冷却される。
【0021】
また、システム1は、例えば、収容部3内の気体の温度を検出する温度センサ9と、温度センサ9の検出値に基づいて冷凍機5を制御する制御装置11とを有してよい。制御装置11の制御によって、例えば、収容部3の気体の温度は所定の温度に維持される。
【0022】
システム1は、上記以外に適宜な装置を有していてよい。例えば、システム1は、温度センサ9が検出した温度をリアルタイムに表示する表示装置を有していてよい。
【0023】
(収容部)
収容部3の形状、大きさ及び材料等は、システム1が冷却の対象とする人体Hの部位、及びシステム1に期待される人体Hにおける効果等に応じて適宜に設定されてよい。図1では、収容部3が浴槽である態様が例示されている。実施形態の説明では、主として、収容部3が浴槽である態様を例に取り、また、収容部3が浴槽であることを前提とした表現をすることがある。
【0024】
収容部3としての浴槽の形状は、例えば、上方が開放されている容器状である。換言すれば、収容部3は、底面部3aと、底面部3a上の空間を囲む外周部3b(図示の例では4つの側面部3cからなる。)とを有している。その具体的な形状は、適宜なものとされてよい。図1では、具体的な形状として、直方体が例示されている。ただし、湯に浸かるための浴槽として種々の形状が存在するように、浴槽としての収容部3の形状も種々のものとされてよい。例えば、浴槽は、平面視において楕円形であってもよいし、外周部3b(特にその内面)が上方側ほど外側に広がるように傾斜していてもよいし、ユーザが座るための段差が形成されていてもよい。
【0025】
収容部3としての浴槽の大きさは、例えば、人体Hのうち、少なくとも首から下の全体を収容可能な大きさを有している。換言すれば、収容部3は、湯に浸かるための浴槽の大きさと同程度の大きさを有してよい。収容部3の内部は、例えば、空気によって満たされており、この場合、窒息の蓋然性は低い。従って、収容部3としての浴槽は、人体Hの全体を収容可能な大きさであってもよい。換言すれば、収容部3は、湯に浸かるための浴槽よりも大きくされてよい。
【0026】
上記のように収容部3の大きさが人体Hとの比較において説明される場合、人体Hの大きさとしては、例えば、平均的な成人の体格、又はこれよりも若干大きい体格が想定されてよい。例えば、身長190cmかつ体重90kgが想定されてよい。また、湯に浸かる場合の姿勢と同様の姿勢が想定されてよい。このような姿勢としては、例えば、仰向けに寝ている姿勢に近い姿勢、膝を曲げて座っている姿勢、又は、立っている姿勢を挙げることができる。
【0027】
収容部3としての浴槽の大きさの具体例を挙げる。例えば、内部の深さは、30cm以上2m以下とされてよい。内部の幅は、50cm以上2m以下とされてよい。内部の長さは、1m以上2m以下とされてよい。この例示から理解されるように、浴槽といっても、その具体的な大きさには幅があってよい。収容部3が大きい場合、例えば、ユーザの姿勢の自由度が向上したり、2人以上で利用したりできる。一方、収容部3が小さい場合、冷却する気体の体積が少なくなるから、所望の温度まで気体の温度を下げるときの冷凍機5の負担が低減される。このようなメリットを考慮して、収容部3の大きさは適宜に設定されてよい。
【0028】
収容部3は、その全体が同一の材料によって一体的に構成されていてもよいし、複数の部材が組み合わされて構成されていてもよい。複数の部材の材料は、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。複数の部材が用いられる態様としては、例えば、底面部3a及び4つの側面部3cが別個の部材である態様、及び/又は収容部の内面側と外面側とが別個の部材である態様を挙げることができる。
【0029】
収容部3を構成する材料は、例えば、伝熱性が高い材料であってもよいし、伝熱性が低い(別の観点では断熱性が高い)材料であってもよい。また、例えば、収容部3の内側と外側とで伝熱性が異なる材料が用いられてもよい。伝熱性が高い材料を用いた場合は、例えば、図示の例のように収容部3の外側から収容部3を冷却する態様において、収容部3内の気体の熱を奪うことが容易化される。伝熱性が高い材料としては、例えば、金属を挙げることができる。断熱性が高い材料を用いた場合は、例えば、本実施形態とは異なり、気体を直接に冷却するような態様(例えば後述する図6(a)及び図7(a))において、収容部3の外側から収容部3内の気体へ伝わってしまう熱を低減できる。断熱性が高い材料としては、例えば、セラミック又は発泡プラスチック(例えば発泡スチロール。以下、同様。)を挙げることができる。
【0030】
収容部3は、液体を収容するものではない。従って、収容部3の構造は、水が漏れないような密閉性を有している必要は無い。例えば、上記のように収容部3が複数の部材の組み合わせで構成される態様において、部材間に多少の隙間が存在しても構わない。また、収容部3の材料も遮水性を有していなくてよい。もちろん、収容部3は、液体を漏れずに保持することが可能な構成であっても構わない。また、底面部3a及び外周部3bの厚さは、強度、伝熱性及び/又は蓄熱性等を考慮して適宜に設定されてよい。
【0031】
(冷凍機)
冷凍機5は、冷媒によって冷却対象(ここでは収容部3の気体)から熱を吸収し、冷媒の流れによって熱を移動させ、冷却対象から離れた位置にて冷媒から熱を放出することによって冷却対象を冷却する。冷媒は、例えば、密閉された流路に収容されており、大気中に放出されず、繰り返し上記の熱の吸収及び放出に利用される。冷媒からの熱の放出に際しては、例えば、冷媒の圧縮が行われる。冷媒による熱の吸収に際しては、例えば、冷媒の膨張(減圧)が行われる。
【0032】
冷凍機5のより具体的な原理、構成及び/又は動作は、適宜なものとされてよい。
【0033】
例えば、冷凍機5は、蒸気圧縮式冷凍機であってもよいし、スターリング式冷凍機であってもよい。確認的に記載すると、蒸気圧縮式冷凍機では、冷媒が循環流路を一巡する間に、冷媒の圧縮、冷媒の凝縮(冷媒からの放熱)、冷媒の膨張及び冷媒の蒸発(冷媒による吸熱)が行われる(冷凍サイクルが行われる。)。また、スターリング式冷凍機では、圧縮されて放熱を行う冷媒と、膨張して吸熱を行う冷媒とが蓄冷器を介して熱交換を行う。
【0034】
また、例えば、冷凍機5は、単段圧縮冷凍機であってもよいし、多段(例えば2段)圧縮冷凍機であってもよい。確認的に記載すると、単段圧縮冷凍機では、例えば、冷媒による吸熱(例えば蒸発を伴う)から冷媒の放熱(例えば凝縮を伴う)までの間において、1台の圧縮機によって冷媒が圧縮される。多段圧縮冷凍機では、例えば、冷媒による吸熱から冷媒の放熱までの間において、2台以上の圧縮機によって順次圧縮が行われ、2回以上の圧縮の間には中間冷却器による冷媒の冷却が行われる。
【0035】
また、例えば、冷凍機5は、1元冷凍機であってもよいし、多元(例えば2元)冷凍機であってもよい。確認的に記載すると、1元冷凍機では、例えば、1種の冷媒に対して、上記の圧縮、放熱、膨張及び吸熱のサイクルが行われる。多元冷凍機では、例えば、沸点が互いに異なる2種以上の冷媒それぞれについて、圧縮、放熱、膨張及び吸熱のサイクルが行われ、また、2種以上の冷媒同士で熱交換を行う(1種の冷媒の吸熱が他の1種の冷媒の放熱に相当する。)。
【0036】
冷凍機5から冷却流路7に供給される冷媒は、上記のように圧縮、放熱、膨張及び吸熱を含む複数のステップを経る冷媒であってもよいし、上記複数のステップを経る冷媒によって冷却される冷媒(圧縮及び膨張はなされない冷媒)であってもよい。換言すれば、冷却方式は、直接冷却方式であってもよいし、間接冷却方式であってもよい。
【0037】
図1では、冷凍機5の典型例として、直接冷却方式によって収容部3を冷却する、単段かつ1元の蒸気圧縮式冷凍機が例示されている。具体的には、図示の例では、冷凍機5は、冷却流路7と直接的に接続されている内部流路13を有している。冷却流路7と内部流路13とで冷媒が循環する循環流路(符号省略)が構成されている。冷凍機5は、内部流路13に沿って、冷媒が流れる順に、冷媒を圧縮する圧縮機15、冷媒を凝縮させる(冷媒の放熱を行う)凝縮器17、及び冷媒を膨張させる膨張弁19を有している。冷却流路7は、冷媒によって吸熱を行うための蒸発器に相当している。
【0038】
なお、後述する種々の実施形態における冷凍機は、本実施形態の冷凍機と同様に、種々の態様とされてよい。ただし、説明の便宜上、本実施形態と同様に、単段かつ1元の蒸気圧縮式冷凍機が例示されることがある。そして、単段かつ1元の蒸気圧縮式冷凍機を前提とした説明がなされることがある。
【0039】
圧縮機15、凝縮器17及び膨張弁19等の具体的な構成も適宜なものとされてよい。例えば、圧縮機15は、ターボ式圧縮機であってもよいし、容積式圧縮機であってもよい。また、例えば、凝縮器17は、空冷式であってもよいし(図示の例)、水冷式であってもよい。特に図示しないが、温度制御を好適化したり、冷凍機5の負荷を低減したりする目的で、内部流路13の適宜な部位同士を接続する流路と、当該流路に位置するバルブとが設けられてもよい。このような構成に関連して、例えば、特願2018-148619号(特開2020-22390号公報)及び実用新案登録第3211245号の内容の本願への参照による引用(Incorporation by reference)がなされてもよい。
【0040】
冷凍機5(及び/又は冷却流路7)において用いられる冷媒の種類は、システム1に要求される冷却能力等に応じて適宜に設定されてよい。例えば、冷媒は、フッ素系冷媒であってもよいし、非フッ素系冷媒であってもよい。フッ素系冷媒としては、フルオロカーボン(いわゆるフロン)が挙げられる。非フッ素系冷媒としては、二酸化炭素及び空気が挙げられる。また、冷媒は、単一の成分から構成されていてもよいし、2種以上の成分を含む混合冷媒であってもよい。混合冷媒は、混合前の成分の沸点が互いに同一の共沸混合冷媒であってもよいし、混合前の成分の沸点が互いに異なる非共沸混合冷媒であってもよい。
【0041】
冷凍機5は、上記のような種々の構成及び冷媒の種類から適宜なものが選択されることによって種々の温度を実現できる。例えば、単段圧縮冷凍機は、一般に、吸熱直前の冷媒の温度として概ね-30℃以上0℃以下の温度を実現できる。また、2段圧縮冷凍機は、一般に、吸熱直前の冷媒の温度として-60℃以上-30℃以下の温度を実現できる。また、2元圧縮冷凍機は、一般に、-80℃以上-60℃以下の温度を実現できる。また、吸熱直前の冷媒の温度として-180℃を実現できるスターリング式冷凍機が存在する。
【0042】
また、例えば、株式会社エイディーディーの「超低温チラー コールドウェーブ」は、多段蒸発器及び混合冷媒を用いることによって、100NLM(Normal Litter /Min)の流量で流れる気体(例えば空気)の温度を-120℃以上25℃以下の範囲で調整可能である。また、上記コールドウェーブでは、吸熱直前の冷媒の温度を-150℃まで低下させることができる。さらに、上記コールドウェーブでは、冷媒の成分を超低温に適したものに改良することによって、吸熱直前の冷媒の温度を-160℃にすることもできる。
【0043】
上記では、主として、冷凍機5の構成と冷媒の温度との関係を述べた。収容部3内の気体は、理想的には、上記の冷媒の温度と同程度の温度まで冷却可能である。従って、上記の冷凍機5の構成と冷媒の温度との関係は、冷凍機5の構成と収容部3内の気体の温度との関係として参照されてもよい。
【0044】
(冷却流路)
冷却流路7は、例えば、収容部3の外側(図1の例)、収容部3の板厚内(後述する図7(b)参照)、及び収容部3の内側(後述する図7(a)参照)の少なくともいずれかに位置する。冷却流路7は、収容部3の表面に接していてもよいし、微小距離(例えば冷却流路7の半径以下)で離れていてもよい。また、冷却流路7は、収容部3を構成する部材とは別の部材によって構成されていてもよいし(図1の例)、収容部3と一体的に形成されていてもよい(後述する図7(b)参照)。なお、本開示において、冷却流路7が収容部3に設けられていると表現する場合には、上記に例示した態様のいずれの態様又はその組み合わせであってもよい。
【0045】
冷却流路7の形状(経路)は適宜に設定されてよい。例えば、冷却流路7は、収容部3の側面及び/又は底面に沿って、螺旋状、ミアンダ状又は渦巻状に延びていてよい。また、冷却流路7は、例えば、収容部3の側面と同一の広さを有する薄型直方体状(板状)に形成され、その対角線上に流入口と流出口とが設けられるなど、細長く延びる概念に合致しない態様であってもよい。
【0046】
図1に示す例では、冷却流路7は、収容部3の外側に位置するパイプによって構成されている。このパイプは、収容部3を囲むように鉛直軸回りに螺旋状に延びており、収容部3の側面部の外面に隣接している。ここでいう隣接は、収容部3に対して当接した状態であってもよいし、収容部3と比較的小さな隙間(例えば冷却流路7の半径以下)を介して離れている状態であってもよい。
【0047】
別の観点では、冷却流路7のうち収容部3に設けられている部分は、全体として下方へ延びていくように延びている。そして、矢印によって示されているように、冷媒は、収容部3の周囲において全体として上方から下方へ流れる。この場合、例えば、収容部3の上部ほど気体の温度が高くなりやすいことから、冷凍機5によって冷却された直後の冷媒を収容部3の上部へ供給することによって、効率的に冷却を行うことができる。ただし、冷媒が流れる方向と上下方向との関係は、上記とは逆であっても構わない。また、例えば、冷媒は、収容部3の底面に沿って同一の高さにおいてのみ流れてもよい。
【0048】
冷却流路7を構成する部材(例えばパイプ)の材料は、適宜に設定されてよい。例えば、パイプは、伝熱性が高い材料(例えば金属)によって構成されてよい。この場合、図示の例のようにパイプを介して冷媒の温度を収容部3に伝える態様において冷却の効率が向上する。また、冷却流路7の断面積及び冷却流路7の密度(例えば螺旋のピッチ)等の各種寸法も適宜に設定されてよい。
【0049】
(温度センサ)
温度センサ9は、収容部3内の気体の温度に応じた信号を制御装置11へ出力する。温度センサ9の方式は適宜なものとされてよい。例えば、温度センサ9は、サーミスタ、熱電対及び測温抵抗体とされてよい。温度センサ9の位置、別の観点では、温度が測定される位置は適宜に設定されてよい。ここでいう位置は、例えば、収容部3の深さ方向の位置、及び収容部3の内面からの距離等である。また、温度センサ9は、複数位置に設けられ、その代表値(例えば平均値)が利用されてもよい。
【0050】
温度センサ9は、収容部3内の気体自体の温度ではなく、収容部3内の気体の温度と相関が高い温度を有する部材(例えば収容部3の内面)の温度を計測してもよい。本開示において、気体の検出温度という用語は、そのような代替的な検出温度を含むものとする。また、温度センサ9の検出温度は、制御に利用されたり、表示されたりする前に適宜に補正がなされてもよい。本開示において検出温度という用語は、そのような補正後の温度を含むものとする。
【0051】
(制御装置)
制御装置11は、例えば、特に図示しないが、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)及び補助記憶装置を含むコンピュータによって構成されている。CPUがROM及び外部記憶装置に記憶されているプログラムを実行することにより、種々の制御乃至は演算を担う複数の機能部が構築される。なお、制御装置11は、一定の動作のみを行う論理回路を含んでいてもよい。
【0052】
制御装置11は、例えば、不図示の操作部を介して、収容部3の目標温度の設定を受け付ける。そして、制御装置11は、例えば、温度センサ9の検出温度が目標温度に収束するように冷凍機5のフィードバック制御を行う。具体的には、例えば、制御装置11は、検出温度と目標温度との偏差に応じたゲインで冷媒の目標温度を設定し、その設定した冷媒の目標温度を冷凍機5のサーモスタット(不図示)に入力する。
【0053】
上記のサーモスタットは、例えば、冷却流路7へ供給される冷媒の温度が、入力された目標温度に収束するように冷凍機5の各部の動作を制御する。具体的には、例えば、サーモスタットは、冷凍機5が有する不図示の温度センサによって検出された冷媒の温度に基づいて、膨張弁19、及び/又は内部流路13の適宜な位置同士を接続する不図示の流路に位置する弁の開度を制御する。なお、上記の説明では、制御装置11とサーモスタットとを別個のものとして説明したが、両者は区別できない構成であってもよい。
【0054】
なお、単純な比例制御ではなく、PI(Proportional-Integral)制御、PD(Proportional-Differential)制御、PID制御が行われてもよい。また、例えば、温度センサ9による検出温度と収容部3内の気体の目標温度との温度差が所定の閾値を上回ったときに冷凍機5の冷媒の目標温度を変化させるようなファジー制御が行われてもよい。上記の説明では、制御装置11によるメインループ内に、サーモスタットによるマイナーループが形成されている。ただし、マイナーループが廃されて、温度センサ9による検出温度と収容部3内の気体の目標温度との偏差に基づいて直接に冷凍機5の構成要素(例えば膨張弁19等)が制御されてもよい。
【0055】
上記とは異なり、システム1の温度制御は、収容部3内の気体の検出温度に基づく制御が行われない、オープンループ制御であってもよい。この場合、例えば、制御装置11又は冷凍機5は、不図示の操作部を介して、収容部3内の気体の目標温度の設定を受け付ける。そして、サーモスタットは、冷媒の温度が、収容部3内の気体の目標温度に対応する冷媒の目標温度になるように冷凍機5の各部を制御する。また、収容部3内の気体の検出温度に基づく制御が行われないオープンループ制御においては、制御装置11又は冷凍機5は、収容部3内の気体の目標温度に代えて、冷媒の目標温度の設定を受け付けてもよい。
【0056】
上記の説明では、収容部3内の目標温度又は冷媒の目標温度は、ユーザが設定可能であるものとした。ただし、システム1は、そのようなユーザによる設定を受け付けない構成であってもよい。すなわち、システム1は、システム1の製造者が予め設定した一定の目標温度を実現する構成であっても構わない。
【0057】
ユーザが目標温度(収容部3内の気体及び/又は冷媒の目標温度。以下、本段落において同様。)を設定可能な温度範囲は、人体Hの冷却に対して期待されている効果等に応じて適宜な範囲とされてよい。例えば、目標温度を設定可能な温度範囲の下限値は、0℃以下、-40℃以下、-80℃以下、-100℃以下、-120℃又は-150℃以下とされてよい。目標温度を設定可能な温度範囲の幅(目標温度を設定可能な温度範囲における下限値と上限値との温度差)も適宜に設定されてよく、例えば、10℃以上20℃以下、20℃以上50℃以下、50℃以上100℃以下、又は100℃以上とされてよい。製造者が目標温度を予め設定する態様における目標温度は、例えば、0℃以下、-40℃以下、-80℃以下、-100℃以下、-120℃又は-150℃以下とされてよい。
【0058】
以上のとおり、本実施形態では、人体冷却システム1は、収容部3と、冷凍機5とを有している。収容部3は、人体Hの少なくとも一部を収容する。冷凍機5は、収容部3内の気体及び収容部3内に供給される気体の少なくとも一方(本実施形態では前者)を冷却する。
【0059】
従って、人体を気体によって冷却することができる。人体を水で冷却する態様に比較して、例えば、水の融点よりも低い温度に人体を晒すことができる。これにより、水冷では得られなかった人体における効果が期待される。
【0060】
気体によって人体を冷却する態様であって、本実施形態とは異なる態様として、液体窒素を収容部3内に散布する態様が挙げられる。この態様では、収容部3内の温度を十分に下げるために大量の液体窒素が必要である。大量の液体窒素を用いると、収容部3内の酸素が窒素に置換されて酸素濃度が低下する。また、窒素は、酸素及び二酸化炭素に比較して分子量が小さく、上方(ひいては頭部)に向かって流れやすい。これらのことから、液体窒素を用いる態様においては、酸欠が生じる可能性がある。しかし、本実施形態では、冷凍機5によって収容部3内の気体を冷却することから、収容部3内の酸素濃度を維持しつつ、人体を冷却することができる。
【0061】
液体窒素の沸点は-196℃であり、液体窒素を用いた場合、理論上は、収容部3内の温度を上記沸点に近い温度まで下げることができる。しかし、液体窒素を用いるシステムの継続的利用には液体窒素の補充(すなわち購入)が必要であり、ひいては、ランニングコストが高くなる。また、大量の液体窒素を用いると、上記のように酸欠の蓋然性が高くなる。従って、液体窒素を用いた場合、現実的には、収容部3内の温度を-60℃程度まで下げることが限界である。また、使用時(人体を収容部3に収容する時)のみ液体窒素を散布して収容部3内の温度を下げる運用とせざるを得ず、ユーザによっては使い勝手が悪い。しかし、冷凍機5を用いた場合においては、ランニングコストは、基本的に冷凍機5を駆動する電気代だけでよい。その結果、例えば、収容部3内の温度を十分に下げることが可能であり、また、収容部3内の温度を継続的に下げておくことができる。出願人の大雑把な試算では、冷凍機5を用いて収容部3内の温度を-160℃程度にした場合のランニングコストは、液体窒素を用いて収容部3内の温度を-60℃程度にした場合のランニングコストの1/10以下である。
【0062】
実施形態に係るシステム1は、商用電源に接続できれば駆動できる。従って、システム1を運搬して利用することができる。従って、例えば、システム1のユーザがアスリートである場合、遠征先にシステム1を持ち込むことができる。
【0063】
収容部3は、上方が開放されているとともに、少なくとも人体のうち首より下の全体を収容可能な大きさを有する浴槽であってよい。
【0064】
この場合、例えば、略全身を冷却することによる効果が得られる。また、気体は、温度が低いほど密度が高いから、上方が開放されていることによって、他の方向が開放されている構成(当該構成も本開示に係る技術に含まれる。)に比較して、冷却された気体が収容部3の外部へ逃げにくい。その結果、例えば、収容部3にユーザが出入りするための開口(本実施形態では上方の開口)の開閉の必要性が低減される。ひいては、ユーザの使い勝手が向上する。
【0065】
システム1は、収容部3内の気体の温度を検出する温度センサ9と、当該温度センサ9の検出温度に基づいて、収容部3内の気体の温度が-80°以下の目標温度に維持されるように冷凍機5を制御可能な制御装置11と、を更に有してよい。
【0066】
この場合、例えば、人体の収容部3内への出入りに起因する収容部3内の温度の変化を低減したり、収容部3の外部の環境温度の変化に起因する収容部3内の温度の変化を低減したりできる。その結果、例えば、安定した効果を人体にもたらすことができる。既述のように、液体窒素を用いた場合においては、-60℃程度が現実的な限界であるが、-80℃以下の温度を実現することによって、より低温の気体に人体を晒すことができる。これにより、冷却による人体における効果が向上することが期待される。
【0067】
<第2実施形態>
(概要)
図2は、第2実施形態に係る人体冷却システムの収容部203の構成を示す斜視図である。図3は、図2のIII-III線における断面図である。
【0068】
第2実施形態は、収容部の構成のみが第1実施形態と相違する。なお、図2及び図3では、図示が省略されているが、第1実施形態と同様に、第2実施形態の収容部203にも冷却流路7が設けられてよい。収容部203は、端的に言えば、保冷剤21(図3)が配置されている点が第1実施形態の収容部3と相違する。
【0069】
なお、慣用的に、保冷剤の語は、保冷剤だけでなく、保冷剤を封入している容器を含む全体を指す場合がある。本開示においては、保冷剤は、保冷剤自体を指し、保冷剤及び当該保冷剤を封入している容器の全体については、保冷具と呼称するものとする。
【0070】
また、後述する説明から理解されるように、本実施形態では、保冷剤21及び/又は保冷具25は、交換可能に設けられている。従って、保冷剤21及び/又は保冷具25は、人体冷却システムとは別個の要素と捉えられてもよいし、人体冷却システムが有する要素と捉えられてもよい。
【0071】
収容部203に保冷剤21が配置されていることによって、収容部203内の温度変化が低減される。これにより、例えば、複数のユーザが順次収容部203に人体を出入りさせたときの温度変化が低減される。その結果、例えば、ユーザ間の使用間隔を短くしても、複数のユーザに対して同等の温度環境を提供できる。
【0072】
保冷具25は、例えば、第1実施形態の収容部3の底面部3aの上に置くことによって、第1実施形態においても利用可能である。一方、本実施形態では、保冷剤21(保冷具25)を保持する保持部27を収容部203に設けている。これにより、例えば、単に底面部3a上に保冷具25を置くだけでは実現できない位置に保冷剤21を位置させることができる。
【0073】
例えば、図示の例のように、収容部203内の空間(人体の少なくとも一部を収容する空間)を囲むように、底面部203a及び外周部203bの概ね全面に亘って保冷剤21を位置させることができる。また、別の観点では、収容部203の底面(底面部203aの上面)からの高さが収容部203の深さ(底面から側面部203cの上縁までの高さ)の半分以上の位置に保冷剤21を位置させることができる。
【0074】
(保冷剤の配置位置)
保冷剤21(別の観点では保冷具25又は保持部27。以下における保冷剤21の配置の説明において同様。)は、収容部203の空間を囲む面部(底面部203a及び外周部3b)に位置してもよいし(図示の例)、収容部203の空間の内部に位置してもよい。後者としては、例えば、収容部203に柱状の部材(保持部)が設けられ、当該柱状の部材に保冷剤21が保持される態様が挙げられる。
【0075】
保冷剤21が面部に位置する態様において、保冷剤21は、全ての面部のうち一部の面部に位置してもよいし、全ての面部に位置してもよい。保冷剤21が一部の面部に位置する態様としては、例えば、保冷剤21が底面部203a及び外周部203bのうち前者のみ又は後者のみに位置する態様が挙げられる。また、例えば、保冷剤21が4つの側面部203cのうち3つ以下の側面部203cのみに位置する態様(このとき保冷剤21は底面部203aに位置してもよいし、位置しなくてもよい)が挙げられる。
【0076】
保冷剤21が位置する各面部において、保冷剤21は、各面部の面積のうち一部(例えば大部分)又は全部に位置してよい。例えば、保冷剤21は、各面部の面積(収容部203の内面の面積を基準としてよい)のうち、6割以上、7割以上又は8割以上に位置してよく、また、6割未満に位置してもよい。また、保冷剤21が各面部の面積のうち一部に位置する態様において、保冷剤21の面部における位置も任意である。
【0077】
図示の例では、保冷剤21が全ての面部の大部分に位置している態様が示されている。実施形態の説明では、便宜上、当該態様を前提とした説明をすることがある。
【0078】
(保持部の構成)
保持部27の具体的な構成は、保冷剤21の効果的な利用方法などを考慮して、適宜なものとされてよい。図示の例では、以下のとおりである。
【0079】
収容部203は、例えば、2層構造となっている。すなわち、収容部203は、収容部203の外面を構成する外面部29と、収容部203の内面を構成する内面部31とを有している。そして、保冷剤21(保冷具25)は、外面部29と内面部31との間に収容されており、これにより、収容部203に保持されている。なお、保持部27は、収容部203の一部又は全部によって構成されている。
【0080】
なお、収容部203は、外面部29及び内面部31以外の他の層を更に有していても構わない。そして、保冷剤21は、上記の他の層と、外面部29又は内面部31との間に位置してもよい。この場合であっても、保冷剤21は、外面部29と内面部31との間に保持されていると捉えることができる。
【0081】
外面部29及び内面部31を有する構造(換言すれば保持部27又は保冷剤21)は、例えば、収容部203の全ての面部(底面部203a及び外周部3b)の概ね全面に亘っている。また、この場合、別の観点では、保持部27は、収容部203の底面から収容部203の深さの半分以上の高さに位置する部分を有している。ただし、既述のように、保持部27は、複数の面部のうち一部の面部、及び/又は各面部のうち一部にのみ設けられてもよい。
【0082】
収容部203は、2層構造を有しているが、第1実施形態における収容部3の形状、寸法及び材料等の説明は、収容部203に援用されて構わない。内面部31は、外面部29の内側に位置するために、外面部29よりも一回り小さい大きさとされている。この点を除いて、外面部29の形状、寸法及び/又は材料と、内面部31の形状、寸法及び/又は材料とは、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0083】
外面部29と内面部31との間の隙間S1(別の観点では保冷具25が収容される隙間S1)の厚さ(外面部29と内面部31との距離)は、適宜に設定されてよい。例えば、当該厚さは、収容部203の面部(底面部203a及び外周部3b)の厚さの半分未満であってもよいし、半分以上であってもよい。また、保冷剤21又は保冷具25の厚さ(例えば最大厚)は、隙間S1の厚さの6割以上、7割以上又は8割以上又は全部を占めてよく、また、6割未満を占めるだけであってもよい。別の観点では、保冷具25は、厚さ方向において、隙間S1に嵌合してもよいし、嵌合しなくてもよい。
【0084】
隙間S1は、これらの面部に沿う方向において適宜に区切られていてもよいし(図示の例)、区切られていなくてもよい。図2の例では、各側面部203cにおいて、隙間S1は、外面部29と内面部31との間に介在する仕切部33によって、側面部203cの上縁及び下縁に沿う方向において区切られている(この区切られたものを隙間S1ということもある。)。また、互いに交差する2つの側面部203cの隙間S1同士も当該2つの側面部203cが成す角部に位置する仕切部33によって仕切られている。また、図3の例では、底面部203aにおいて、隙間S1は、水平に延びる仕切部33によって仕切られている。
【0085】
仕切部33は、例えば、外面部29と内面部31との固定に寄与している。また、仕切部33は、収容部203の面に沿う方向における保冷具25の位置の規制にも寄与している。仕切部33によって仕切られた区画の、仕切部33によって仕切られた方向(本段落において第1方向という。例えば、側面部203cでは上縁及び下縁に沿う方向)における幅は、保冷具25の上記方向における幅以上であることを前提として、適宜に設定されてよい。例えば、保冷具25の幅(例えば最大幅)は、仕切られた区画の幅の6割以上、7割以上、8割以上又は全部を占めてよい。別の観点では、保冷具25は、上記の仕切られる方向において、隙間S1に嵌合してもよいし、嵌合しなくてもよい。
【0086】
内面部31は、外面部29に面する面から収容部203の内面へ貫通する1以上の開口(31a及び31b)を有している。このような開口によって、例えば、保冷剤21(保冷具25)と収容部203の内部(人体が収容される空間)との間に気流が生じることを許容でき、ひいては、保冷剤21と収容部203内の気体との間の熱交換を促進することができる。また、底面部203aの開口は、ユーザが足を滑らせる蓋然性を低減することにも寄与する。
【0087】
1以上の開口の形状、寸法(径)及び配置は適宜に設定されてよい。図示の例では、1以上の開口は、第1開口31a(図2)と、当該第1開口31aよりも径(例えば円相当径)が小さい第2開口31bとを含んでいる。第2開口31bの数は、第1開口31aの数よりも多い。そして、1つの第1開口31aの周囲に複数の第2開口31bが位置している。第1開口31a及び第2開口31bは、いずれの面部に設けられてもよい。図示の例では、第1開口31aは、外周部203bのみに設けられており、第2開口31bは、底面部203a及び外周部203bに設けられている。
【0088】
第1開口31a及び第2開口31bの形状、寸法(径)及び配置等は適宜に設定されてよい。
【0089】
例えば、第1開口31aの形状は、矩形(図示の例)、矩形以外の多角形、円形又は楕円形等の適宜な形状とされてよい。図示の例では、第1開口31aは、上下方向に延びる長辺と左右方向に延びる短辺とを有する長方形とされている。また、例えば、第1開口31aの最小径(図示の例では横方向の径)は、10cm以上、20cm以上又は30cm以上とされてよく、また、1m以下又は50cm以下とされてよく、前記の下限と上限とは適宜に組み合わされてよい。第1開口31aの上下方向の径は、例えば、側面部203cの高さ(内面を基準とする。)の半分以上を占めてもよいし(図示の例)、半分未満であってもよい。
【0090】
図示の例では、第1開口31aは、外周部203bの上縁及び下縁に沿う方向において1列で配置されている。より詳細には、第1開口31aは、各側面部203cにおいて、上述した仕切部33によって仕切られた1つの区画に対して1つ位置している。すなわち、側面部203cをその法線方向に透視したとき、1つの第1開口31aは、1つの区画内に収まっている。このとき、1つの第1開口31aの中心は、外周部203bの上縁及び下縁に沿う方向において、1つの区画の概ね中心に位置してよい。
【0091】
後述するように、図示の例では、保冷具25は、補助部材35に保持された状態で側面部203cの隙間S1に収容され、第1開口31aからは補助部材35が露出する。ただし、隙間S1に保冷具25が直接に収容され、保冷具25が第1開口31aから露出してもよい。このとき、例えば、第1開口31aの幅(水平方向の径)は、保冷具25の幅(第1開口31aの幅の方向と同一方向の長さ)よりも小さく、保冷具25は、第1開口31aから収容部203の内部へ落下しない。第1開口31aの上下方向の径は、例えば、1つの保冷具25の上下方向の長さよりも大きくされてよく、また、2つの保冷具25の上下方向の長さの合計よりも小さくされてよい。
【0092】
また、例えば、第2開口31bの形状は、矩形、矩形以外の多角形、円形(図示の例)又は楕円形等の適宜な形状とされてよい。また、例えば、第2開口31bの径(円形でない場合は例えば円相当径。本段落において以下同様。)は、1mm以上、5mm以上又は1cm以上とされてよく、また、5cm以下、2cm以下又は1cm以下とされてよく、前記の下限と上限とは、矛盾が生じないように適宜に組み合わされてよい。また、第2開口31bの径は、第1開口31aの最小径に対して、例えば、1/2以下、1/5以下又は1/10以下とされてよい。
【0093】
複数の第2開口31bは、各面部(底面部203a又は側面部203c)において2次元的に配列されている。その並び方は適宜なものとされてよい。図示の例では、各面部の4辺に平行に並んでいる。この他、複数の第2開口31bは、各面部の4辺に対して斜めに並んでいたり、ランダムに並んでいたりしてもよい。複数の第2開口31b同士の間隔(例えば互いの最短距離)も適宜に設定されてよく、例えば、当該間隔は、第2開口31bの径よりも大きくてもよいし、小さくてもよい。
【0094】
(補助部材)
既に触れたように、保冷具25は、外面部29と内面部31との隙間S1にそのまま収容されてもよいし(底面部203aを参照)、図示の例の側面部203cのように、補助部材35によって保持された状態で、隙間S1に収容されてもよい。補助部材35は、例えば、保冷具25の出し入れの容易化に寄与してよい。
【0095】
補助部材35の形状、寸法及び材料等は適宜なものとされてよい。図示の例では、補助部材35は、断面L字の板金によって構成されている。換言すれば、補助部材35は、上下に広がる第1面部35aと、第1面部35aの下縁において第1面部35aに交差する第2面部35bとを有している。第2面部35b上には、2つの保冷具25が積層される。そして、2つの保冷具25は、補助部材35ごと、上方から側面部203cの隙間S1へ出し入れされる。保冷具25が隙間S1に収容された状態において、第1面部35aの上端は、外面部29及び内面部31のうち第1面部35aが沿っている部材(図示の例では内面部31)から突出している。
【0096】
上記のような構成では、例えば、1つの補助部材35の出し入れによって、2つの保冷具25を出し入れできる。また、保冷具25よりも上下に長い補助部材35の出し入れによって、保冷具25を側面部203cの下方から引き上げることが容易化される。第1面部35aが内面部31よりも上方に突出していることによって、補助部材35の出し入れが容易化される。
【0097】
図示の例では、第2面部35bは、第1面部35aから収容部203の外側へ突出している。そして、収容部203内から見て、第1開口31a及び第2開口31bからは、第1面部35aが露出し、保冷具25は露出していない。このような態様において、第1面部35aは、内面部31と同様に、複数の開口を有してもよい。この複数の開口の形状、寸法及び配置は適宜に設定されてよい。例えば、当該複数の開口の形状、寸法及び配置は、内面部31の開口(第1開口31a及び第2開口31b)の形状、寸法及び配置と同様又は類似したものとされてよい。既に述べたように、第1開口31aは、保冷具25が収容部203の内部へ落下しない径で形成されてよく、第1面部35aに第1開口31aと同様の開口が設けられる場合も同様とされてよい。
【0098】
図示の例とは逆に、第2面部35bは、第1面部35aから収容部203の内側へ突出してもよい。この場合、保冷具25は、第1開口31a及び第2開口31bから露出する。この場合も、既述のように、第1開口31aの径は、保冷具25が収容部203の内部へ落下しないように設定されてよい。
【0099】
特に図示しないが、底面部203cについても、補助部材が設けられてよい。当該補助部材は、例えば、水平に配置されて保持具25が載置される第1面部35aのみからなる構成であってもよいし、第1面部35aから上方へ突出する第2面部35bを更に備える構成であってもよい。
【0100】
(保冷剤)
保冷剤21の成分及び特性は、種々のものとされてよい。また、保冷剤21は、公知の保冷剤と同様のものとされてもよいし、新規なものであってもよい。また、収容部203においては、1種類の保冷剤21のみが用いられてもよいし、互いに成分(ひいては特性)が異なる2種以上の保冷剤21が用いられてもよい。
【0101】
一般的な保冷剤としては、水からなるもの、水を主成分として1種以上の添加剤を加えたものを挙げることができる。添加剤としては、例えば、防腐剤、凝固点降下剤、増粘剤、不凍液及び着色剤が挙げられる。また、水以外の成分(例えばアルコール)を主成分とする保冷剤が用いられてもよい。
【0102】
保冷剤21の融点は適宜な温度であってよい。例えば、保冷剤21の融点は、-30℃以上であってもよいし、-30℃以下、-40℃以下又は-90℃以下であってもよい。また、このような融点を実現するための成分は適宜なものとされてよい。
【0103】
例えば、一般に食品の保冷に用いられている保冷剤21の融点は、-30℃以上であり、融点が-30℃以上の場合は、種々の保冷剤21を用いることができる。このような保冷剤21は、例えば、水に凝固点降下剤としての塩が添加されたものであり、塩の濃度によって融点が調整されている。
【0104】
また、例えば、水に添加される塩として特定の種類の塩を選択すれば、-30℃以下又は-40℃以下の融点が実現される。例えば、塩化カルシウムを添加した場合においては、最大で-50℃程度まで融点を下げることができる。また、塩化リチウム等を添加することによって-80℃以上-70℃以下の融点を実現できる保冷剤(特開2017-128622号公報)も知られている。
【0105】
また、本願出願人は、-90℃以下の融点を有する保冷剤を開発及び販売している(商品名:「エコドライアイス」)。この保冷剤は、実質的に、メタノールを適宜な質量%(例えば40質量%以上)で含む水溶液、又はメタノールからなり、-90℃以下の融点を実現している。
【0106】
保冷剤21の融点と、収容部203内の気体の目標温度との関係は、適宜なものとされてよく、いずれが他方より高くてもよいし、その差も適宜に設定されてよい。換言すれば、保冷剤21は、収容部203内の気体の温度を目標温度に維持することに関して、潜熱を利用してもよいし、固体又は液体のときの顕熱を利用してもよい。
【0107】
ただし、潜熱を利用した方が顕熱を利用するよりも効果的に吸熱を行うことができ、収容部203内の気体の温度を低温に維持しやすい。従って、例えば、融点は、比較的小さい温度差で目標温度よりも高い温度とされてよい。比較的小さい温度差としては、例えば、1℃以下、5℃以下又は10℃以下を挙げることができる。このように設定することによって、収容部203内の気体の温度が目標温度から上記の温度差で高くなったときに潜熱が利用される。
【0108】
第1実施形態で説明したように、収容部203内の目標温度は、ユーザが所定の範囲内で任意の温度に設定可能であってよい。このような態様においては、例えば、融点は、目標温度を設定可能な範囲内の所定の基準温度に対して、上記の温度差で高い温度とされてよい。基準温度としては、例えば、目標温度を設定可能な範囲の下限値、中央の値及び上限値を挙げることができる。
【0109】
(保冷具)
保冷具25は、既述のように、保冷剤21と、保冷剤21が封入される封入容器23とを有している。なお、封入容器23には、保冷剤21と共に気体(例えば空気)が封入されていても構わない。封入容器23の形状、大きさ及び材料等は、適宜に設定されてよい。例えば、封入容器23として、公知の種々の保冷具の封入容器が利用されてよい。また、収容部203においては、1種類の封入容器23が用いられてもよいし、形状、大きさ及び/又は材料が異なる2種以上の封入容器23が用いられてもよい。
【0110】
具体的には、例えば、封入容器23は、可撓性の材料(樹脂等)によって構成された袋状のものであってもよいし、可撓性を有さない材料(樹脂等)によって構成されたハードタイプ容器であってもよい。また、例えば、封入容器23は、注入口を有さない(封入容器23の破壊無しでは保冷剤21を取り出すことができない)ものであってもよいし、キャップによって塞がれた注入口を有するものであってもよい。また、例えば、封入容器23の形状は、概略直方体状であってもよいし(図示の例)、何らかの効果を狙った特殊な形状であってもよい。
【0111】
封入容器23の容積(可撓性の場合は最大容積)は、収容部203の容積等に応じて適宜に設定されてよく、例えば、10ml以上100リットル以下とされてよい。また、収容部203が浴槽である態様においては、封入容器23の容積は、比較的大きくされてよく、例えば、0.5リットル以上、1リットル以上、5リットル以上、又は30リットル以上とされてよい。また、封入容器23の側面部203cの高さ方向における長さは、側面部203cの高さ(内面を基準としてよい)の1/4以上、1/3以上又は1/2以上とされてよい。
【0112】
以上のとおり、本実施形態においても、人体冷却システムは、人体Hの少なくとも一部を収容する収容部203と、収容部203内の気体を冷却する冷凍機5(図1)と、を有している。従って、第1実施形態と同様の効果が奏される。
【0113】
収容部203は、保冷剤21を保持する保持部27を有してよい。
【0114】
この場合、例えば、既述のように、単に保冷具25を底面部203aの上に載置する態様(そのような態様も本開示に係る技術に含まれてよい)と比較して、保冷剤21による保冷の効果が好適に得られるように保冷剤21を配置することができる。
【0115】
保持部27(別の観点では保冷剤21)は、少なくとも、収容部203の底面からの高さが収容部203の深さの半分以上の位置に位置してよい。
【0116】
この場合、例えば、温度が高くなりやすい高い位置において保冷効果を得ることができる。その結果、高い位置において人体を冷却する効果が低くなる蓋然性を低減できる。なお、既述の保冷具25を単に底面部203a上に載置する態様では、収容部203の深さの半分以上の高さまで保冷具25を積み上げる蓋然性は低い。そのように積み上げると、例えば、保冷具25が崩れる蓋然性が高くなり、また、崩れる蓋然性を低減するために保冷具25の平面視における面積を大きくすれば、人体を収容する空間が狭くなるからである。
【0117】
保持部27は、収容部203の外面を構成する外面部29と、収容部203の内面を構成する内面部31とを有してよい。保持部27は、外面部29と内面部31との間に保冷剤21を保持してよい。
【0118】
この場合、例えば、冷却された気体を保持するための収容部203の少なくとも一部を保持部27として利用できる。その結果、例えば、収容部203内に保持部としての棚を設けるような態様(当該態様も本開示に係る技術に含まれてよい。)に比較して、構成が簡素化され、また、意匠性も向上する。
【0119】
保持部27は、保冷剤21が封入されている保冷具25を保持してよい。内面部31は、外面部29に面する面から収容部203の内面へ貫通している1以上の開口(31a及び31b)を有してよい。
【0120】
この場合、例えば、既述のように、保冷具25と収容部203の内部との間の開口を介した気流によって、保冷具25による吸熱を促進して保冷の効果を向上させることができる。
【0121】
上記の1以上の開口は、少なくとも1つの第1開口31aと、複数の第2開口31bとを含んでよい。第2開口31bは、第1開口31aよりも径が小さく、第1開口31aの周囲に位置してよい。
【0122】
この場合、例えば、第1開口31aによって、内面部31に設けられる開口の総面積を大きくし、上述した気流による効果を向上させることができる。また、例えば、第1開口31aは、ユーザが収容部203の内部から保冷具25又は補助部材35に触ることを許容することによって、保冷具25の出し入れに係る作業性を向上させることができる。一方で、内面部31のうち第2開口31bが形成されている部分によって、保冷具25又は補助部材35が収容部203内に落下する蓋然性を低減したり、内面部31の強度を確保したりすることができる。
【0123】
人体冷却システムは、保冷剤21を有してよい。保冷剤21の融点は、-40℃以下とされてよい。
【0124】
この場合、例えば、収容部203内の気体の温度が-40℃以下の融点よりも高くなるときに潜熱を利用することができる。ひいては、収容部203内の気体の温度を-40℃以下という比較的低い温度に維持することが容易化される。-40℃以下という比較的低い温度に人体の少なくとも一部を晒すことによって、冷却による効果が向上することが期待される。
【0125】
(実施例)
第2実施形態に係る人体冷却システムを作製し、保冷剤21が及ぼす影響を調べる実験を行った。その結果を以下に示す。
【0126】
実験では、収容部203(浴槽)内の気体の温度を一定の目標温度に保つように冷凍機5の制御が行われた。このような制御が行われている状況で、複数のユーザが順次収容部203に入った。そして、その間の収容部203内の気体の温度を計測した。このような計測を、保冷剤21を配置した場合と、保冷剤21を配置しない場合とのそれぞれについて行った。
【0127】
収容部203の気体の目標温度は-120℃とした。保冷剤21としては、-100℃以上-90℃以下の融点を有するものを使用した。ユーザの人数は11人とした。ユーザが浴槽にて待機する1人当たりの時間は2分とした。
【0128】
図4は、実験結果を示す図である。この図において、横軸は時間t(単位:時分秒)を示している。縦軸は収容部203内の気体の温度を示している。線L0は、保冷剤21を配置しなかった場合の温度変化を示している。線L1は、保冷剤21を配置した場合の温度変化を示している。期間P0は、11人が順次収容部203に入った期間を示している。
【0129】
この図に示されているように、複数のユーザが連続して人体冷却システムを利用した場合に、保冷剤21によって収容部203内の気体の温度の上昇が低減されることが確認できた。図示の例では、保冷剤21の有無によって最大で-20℃程度の差が生じている。
【0130】
<第3実施形態>
図5は、第3実施形態に係る人体冷却システムの収容部303の構成を示す斜視図である。
【0131】
第3実施形態は、収容部の構成のみが第1実施形態と相違する。なお、図5では、図示が省略されているが、第1実施形態と同様に、第3実施形態の収容部303にも冷却流路7が設けられてよい。収容部303は、端的に言えば、第1実施形態の収容部3に対して、1種以上の付属器具を追加した構成である。具体的には、図示の例では、1種以上の付属器具として、蓋37(第1蓋37A及び第2蓋37B)、キャスター39、脚41、ファン43(攪拌部)及び手摺45が例示されている。なお、本実施形態の説明では、便宜上、第1実施形態の収容部3に相当する部分を収容部本体3Aということがある。
【0132】
(蓋)
蓋37は、収容部本体3Aにおける、人体の少なくとも一部を出し入れするための開口3h(図示の例では浴槽の上方開口)を開閉することに寄与する。蓋37によって開口3hが塞がれることによって、例えば、収容部本体3A内の気体が収容部本体3A外へ逃げる蓋然性が低減される。これにより、収容部本体3A内の温度が低温に維持されやすくなる。
【0133】
また、蓋37の材料が断熱性を有する場合には、収容部本体3A外から収容部3内へ伝わる熱が低減され、収容部本体3A内の温度を低温に維持する効果が向上する。断熱性を有する材料としては、例えば、発泡プラスチックが挙げられる。ただし、蓋37の材料は、断熱性を有さないものであっても構わない。
【0134】
蓋37の利用態様としては、例えば、人体冷却システムが利用されていないとき(人体が収容部本体3Aに収容されていないとき)に収容部本体3Aの開口3hを塞いで、収容部本体3A内の保冷を行う態様が挙げられる。なお、このとき、冷凍機5は、作動していてもよいし、作動していなくてもよい。また、他の利用態様としては、収容部本体3Aに人体の少なくとも一部が収容されているときに開口3hを塞いで、収容部本体3A内の保冷を行う態様が挙げられる。
【0135】
蓋37の具体的な形状及び大きさ等は適宜に設定されてよい。例えば、蓋は、板状(別の観点では剛体)であってもよいし、可撓性を有するシート状であってもよいし、長尺の複数の板を可撓性のシートによって幅方向に連結したものであってもよい。蓋37は、単に収容部3の上縁に載置されるだけであってもよいし(図示の例)、ヒンジ機構又はスライド機構等によって開閉可能に収容部本体3Aに連結されていてもよい。
【0136】
また、例えば、収容部本体3Aの開口3hは、複数の蓋37によって塞がれてもよいし(図示の例)、1つの蓋によって塞がれてもよい。前者の場合、複数の蓋37は、互いに同一の形状、大きさ及び/又は材料であってもよいし、互いに異なる形状、大きさ及び/又は材料であってもよい。開口3hは、その全体が蓋によって塞がれてもよいし、一部のみが塞がれてもよい。後者の場合、塞がれない部分は、例えば、ユーザが出入りしたり、人体の一部(図示の例では頭)を収容部3から出したりする部分とされてよい。
【0137】
図示の例では、収容部303は、第1蓋37A及び第2蓋37Bを有している。第1蓋37Aは、人体が収容部本体3Aに収容されていないとき、及び/又は人体全体が収容部本体3Aに収容されているときに閉じられ、少なくともユーザが出入りするときに開かれることが想定されている。第2蓋37Bは、基本的に閉じられていることが想定されている。第1蓋37Aの大きさは、例えば、収容部本体3Aの開口3hの一部であって、ユーザが出入り可能(換言すれば人体の少なくとも一部を出し入れ可能)な大きさを有する部分を開閉できる大きさとされてよい。第2蓋37Bの大きさは、残りの部分を塞ぐことができる大きさとされてよい。第1蓋37Aの大きさは、例えば、1辺が50cm以上1.5m以下である。
【0138】
第1蓋37A及び第2蓋37Bは、既述のように種々の態様で収容部本体3Aの開口3hを塞いでよい。図示の例では、第1蓋37A及び第2蓋37Bは、収容部本体3Aの上縁に載置されることによって収容部本体3Aの上方開口を塞ぐ。なお、第2蓋37Bは、開閉不可能に収容部本体3Aに対して固定されていても構わない。
【0139】
(キャスター及び脚)
キャスター39は、収容部本体3Aを移動可能に支持する。キャスター39によって、収容部303の移動が容易化される。その結果、例えば、アスリートが遠征先に人体冷却システムを持ち込むことが容易化される。
【0140】
一方、脚41は、収容部本体3Aを移動不可能に支持する。脚41は、収容部本体3Aに対する位置を調整可能に構成されている。そして、収容部本体3Aが利用されるときは、脚41が収容部303の載置面に接するように脚41の位置が調整され、脚41及びキャスター39によって、又は脚41のみによって収容部本体3Aが支持される。収容部本体3Aを移動させるときは、脚41が収容部303の載置面から離れるように脚41の位置が調整され、キャスター39によって収容部本体3Aが支持される。
【0141】
なお、脚41は、設けられなくてもよい。例えば、キャスター39として、車輪の回転をロックする機構を有するものを採用したり、キャスター39の車輪と載置面との間に楔を配置して車輪の回転を規制したりすれば、収容部303の意図されていない移動は規制される。
【0142】
キャスター39は、適宜な数及び配置で設けられてよい。例えば、キャスター39は、収容部本体3Aの底面の4隅に設けられている。また、キャスター39の具体的な形状、大きさ及び材料等は適宜なものとされてよく、例えば、公知の種々のものが採用されてよい。キャスター39は、移動方向が固定されたものであってもよいし、移動方向が固定されていないものであってもよい。確認的に記載すると、後者は、車輪の回転軸(水平な回転軸)から偏心した位置において上下に延びる旋回軸回りに旋回可能なキャスターである。
【0143】
脚41の構成は適宜なものとされてよい。例えば、脚41は、上下方向を軸方向とする雄ねじ及び雌ねじ(ナットに構成されているものであってもよい。)を介して収容部本体3Aに対して固定されている。そして、螺合位置の調整によって収容部本体3Aから下方へ突出する長さが調整される。これにより、載置面への当接及び離反がなされる。
【0144】
(ファン)
ファン43は、収容部本体3A内の気体を攪拌する。これにより、例えば、収容部本体3A内に収容されている人体の周囲に気流を生じさせ、気体による吸熱を促進できる。また、例えば、収容部本体3A内において温度差が生じている場合に当該温度差を低減して、収容部本体3A内の温度を均等にすることができる。
【0145】
ファン43の数及び位置は適宜に設定されてよい。図示の例では、1台のファン43が第2蓋37Bに設けられている。この場合において、第2蓋37Bは、開閉可能に設けられていてもよいし、収容部本体3Aに固定されていてもよい。蓋37に代えて、又は加えて、ファン43は、収容部本体3Aの底面部3a及び/又は外周部3bに配置されてもよい。また、収容部本体3A内に柱状の部材を設け、当該部材にファンを設けてもよい。なお、ファン43が蓋37に設けられた場合においては、ファン43が気体を送り出す方向にもよるが、他の配置位置に比較して、ファン43によって送り出された気体が収容部本体3Aの開口3hから外部へ逃げてしまう蓋然性が低減されることが期待される。
【0146】
ファン43は、例えば、収容部本体3A内から気体を吸引して収容部本体3A内に気体を送り出す。吸引方向と送出方向との関係は適宜なものとされてよい。例えば、両者は同軸的であってもよいし、互いに交差していてもよい。また、ファン43を中心とする360°に亘る方向に対して吸引又は送出が行われてもよい。換言すれば、ファン43は、遠心送風機、軸流送風機、斜流送風機又は横断流送風機等の適宜なものとされてよい。気体の吸引方向及び送出方向と、収容部本体3Aとの関係も適宜に設定されてよい。例えば、吸引方向及び/又は送出方向は、ファン43が設けられた面(例えば蓋37の内面又は収容部本体3Aの内面)に対して交差していてもよいし、平行であってもよい。
【0147】
ファン43の具体的な構造(翼の形状及び配置等)及びファン43が生じる圧力比等も適宜に設定されてよい。ファン43は、翼と、翼を保持するケースとを有してよい、ケースは、収容部本体3A内に開口する吸入口と送出口とを有してよい。ただし、ファン43は、翼のみから構成され、蓋37又は収容部本体3Aに直接的に支持されていてもよい。
【0148】
ここでは、収容部本体3A内の気体を攪拌する攪拌部の一例としてファン43を示した。ただし、攪拌部は、ファン以外の態様であってもよい。例えば、攪拌部は、鞴のような構成のものであってもよい。
【0149】
(手摺)
手摺45は、ユーザが収容部本体3Aとしての浴槽に出入りしたり、浴槽内で待機したりするときにつかまることが想定されている。手摺45が設けられることにより、例えば、ユーザの負担が軽減される。
【0150】
手摺45の形状、大きさ及び配置等は適宜に設定されてよい。図示の例では、収容部本体3Aの開口3hのうち、第1蓋37Aによって開閉される部分に対して両側にパイプ状の手摺45が設けられている。
【0151】
特に図示しないが、収容部本体3Aの外側及び内側には、ユーザの出入りを容易化するための踏み台が配置されてもよい。この踏み台は、収容部本体3Aに固定されていてもよいし、固定されていなくてもよい。踏み台は、一段のもの(例えば概略直方体状)であってもよいし、2段以上のもの(階段状部分を有するもの)であってもよい。
【0152】
以上のとおり、本実施形態においても、人体冷却システムは、人体Hの少なくとも一部を収容する収容部303と、収容部303内の気体を冷却する冷凍機5(図1)と、を有している。従って、第1実施形態と同様の効果が奏される。
【0153】
<第4実施形態>
図6(a)は、第4実施形態に係る人体冷却システム401の構成を模式的に示す図である。
【0154】
第1実施形態では、収容部3内に存在する気体が冷凍機5によって冷却された。一方、第4実施形態では、冷凍機405によって冷却された気体が収容部3内に供給される。なお、この態様も、収容部3内の気体を冷却していると表現できる。ただし、実施形態の説明では、便宜上、第1実施形態のような態様の説明においては、収容部3内の気体を冷却するといい、第4実施形態のような態様の説明においては、収容部3内に供給される気体を冷却するということがある。
【0155】
収容部3内に供給される気体を冷却するための構成は、例えば、以下のとおりである。冷凍機405は、内部流路13に沿って見たときに、膨張弁19と圧縮機15との間に蒸発器47を有している。蒸発器47においては、内部流路13内の冷媒によって供給流路49内を流れる気体から熱が吸収される。供給流路49は、第1端49aが収容部3内に臨んでいるとともに、第2端49bが収容部3の外部(実線で示す)又は内部(2点鎖線で示す)に臨んでいる。供給流路49にはポンプ51が設けられており、第2端49bから吸引された気体が第1端49aから送出される。
【0156】
特に図示しないが、第1実施形態の温度センサ9に加えて、又は代えて、冷却後の供給流路49内の気体の温度を検出する温度センサが設けられてよい。制御装置11は、温度センサ9に加えて、又は代えて、供給流路49の温度センサが検出した温度に基づいて冷凍機405の制御を行ってよい。
【0157】
蒸発器47の構成は、種々の構成とされてよく、例えば、公知の構成と同様の構成とされてよい。また、既述のように、冷凍機405の具体的な構成は、図示以外の種々の構成とされてよく、冷凍機405の態様によっては、蒸発器47に相当する部位において、冷媒の蒸発を伴わず(潜熱を利用せずに)に、供給流路49の気体からの吸熱が行われてよい。
【0158】
供給流路49の形状、大きさ及び材料等は適宜なものとされてよい。供給流路49の蒸発器47内における部分は、例えば、公知の蒸発器47内における流路の構成と同様とされてよい。また、供給流路49は、蒸発器47の外部において、断熱性が高い材料(例えばセラミック)によって構成されていてもよいし、断熱性が低い材料(例えば金属)によって構成されていてもよい。
【0159】
供給流路49の第1端49a(別の観点では気体を収容部3内に送出するための開口)の位置、向き及び形状等は適宜に設定されてよい。例えば、第1端49aは、収容部3の深さ方向において、下方の位置、中間の位置及び上方の位置のいずれに位置してもよい。また、第1端49a(開口)は、下方に向いていてもよいし、水平方向に向いていてもよいし、上方に向いていてもよい。供給流路49は、蒸発器47から収容部3へ向かって延び出た後、適宜に分岐して収容部3内の複数の位置に気体を供給してもよい。収容部3内に気体を供給するための開口の位置及び向きは、不変であってもよいし、供給流路49がジョイント又は蛇腹状部分を有していることなどによって可変であってもよい。
【0160】
また、第1端49aは、1つの開口を有しているだけであってもよいし、シャワーヘッドのように複数の開口を有していてもよい。また、図示の例とは異なり、供給流路49は、収容部3内に位置するパイプを含み、このパイプの長手方向の複数位置に開口を有していてもよい。開口の開度は、固定的であってもよいし、可変であってもよい。
【0161】
供給流路49の第2端49b(別の観点では開口)の位置、向き及び形状等も適宜に設定されてよい。例えば、第2端49bが収容部3の外部に位置している場合において、その高さ及び向きは任意である。また、第2端49bが収容部3に開口している場合においては、上記の第1端49a(開口)の位置、向き及び形状等の説明が援用されてよい。
【0162】
ポンプ51は、蒸発器47と第1端49aとの間に位置してもよいし(図示の例)、蒸発器47と第2端49bとの間に位置してもよい。また、ポンプ51の構成は、種々の構成とされてよく、例えば、公知の構成と同様の構成とされてよい。その圧力比も適宜に設定されてよい。
【0163】
以上のとおり、本実施形態においても、人体冷却システム401は、収容部3と、冷凍機405とを有している。収容部3は、人体Hの少なくとも一部を収容する。冷凍機405は、収容部3内の気体及び収容部3内に供給される気体の少なくとも一方(本実施形態では後者)を冷却する。従って、第1実施形態と同様の効果が奏される。
【0164】
また、本実施形態では、第1実施形態と異なり、収容部3に供給される気体を冷却する。この場合、例えば、出願人の試作したシステムにおいては、第1実施形態よりも速やかに収容部3内の気体の温度を低くすることができる。また、供給される気体が収容部3内の気体を攪拌するから、第3実施形態におけるファン43による効果と同様の効果が期待される。すなわち、ポンプ51及び供給流路49は、攪拌部の一例として捉えられてよい。なお、第1実施形態においては、ポンプ51が不要であることから、コストを削減することが容易である。
【0165】
また、第2端49bが収容部3の外部に位置している場合においては、新鮮な空気を収容部3内に供給することができる。第2端49bは、空気とは異なる気体の供給源(例えば酸素濃度が空気よりも若干高いもの)に接続されていてもよい。この場合、冷却による効果以外の人体における効果が期待される。第2端49bが収容部3の内部に位置している場合においては、収容部3内の低温の気体を再利用することになるから、第2端49bが収容部3の外部に位置している態様に比較して消費電力が低減される。
【0166】
<第5実施形態>
図6(b)は、第5実施形態に係る人体冷却システム501の構成を模式的に示す図である。
【0167】
システム501は、端的に言えば、第1実施形態のシステム1と、第4実施形態のシステム401とを組み合わせたものである。すなわち、冷凍機505は、第1実施形態の冷凍機5と同様に、冷却流路7を介して収容部3内の気体を冷却するとともに、第4実施形態の冷凍機405と同様に、供給流路49内の気体を冷却することによって収容部3へ供給される気体を冷却する。出願人が試作したシステムでは、第5実施形態は、第1実施形態及び第4実施形態よりも速やかに収容部3内の気体を冷却することができる。ただし、第1実施形態及び第4実施形態よりも高価になる。
【0168】
<第6実施形態>
図6(c)は、第6実施形態に係る人体冷却システム601の構成を模式的に示す図である。
【0169】
システム601は、冷却された気体を収容部3内へ供給するための供給流路49の構成が第4実施形態と相違する(ただし、便宜上、第4実施形態と同じ符号を供給流路49に用いる。)。具体的には、供給流路49は、蒸発器47から収容部3内における開口位置(第1端49a)に至るまでの間において、第1実施形態の冷却流路7と同様の構成(便宜上、冷却流路7の符号を用いる。)を有している。従って、冷凍機405によって冷却された気体は、冷媒として収容部3内の気体を冷却し、かつ収容部3内へ供給される。この態様も、第5実施形態と同様に、収容部3内の気体及び収容部3内へ供給される気体の双方を冷却する態様である。
【0170】
<第7実施形態>
図7(a)は、第7実施形態に係る人体冷却システムの収容部703の構成を模式的に示す断面図である。
【0171】
保冷剤21は、封入容器23に封入されて収容部に保持されるのではなく、図示の例のように、収容部703に直接的に保持されてもよい。すなわち、収容部703は、保冷剤21が封入される保持部727を有してよい。保持部727の位置については、保持部27の説明が援用されてよい。保持部727は、図示の例のように、キャップ727aによって塞がれた注入口を有するものであってもよいし、注入口を有さない(保持部727の破壊無しでは保冷剤21を取り出すことができない)ものであってもよい。
【0172】
第1実施形態の説明で述べたように、冷却流路7は、収容部703に対して、内部側に位置してもよいし、外部側に位置してもよい。図7(a)は、前者を例示する図ともなっている。
【0173】
<第8実施形態>
図7(b)は、第8実施形態に係る人体冷却システムの収容部803の構成を模式的に示す断面図である。
【0174】
第1実施形態の説明で述べたように、冷却流路7は、収容部の板厚内に位置してもよい。第8実施形態の収容部803は、そのような態様の例である。図示の例では、外面部29に冷却流路7が構成されている。ただし、内面部31に冷却流路7が構成されてもよい。別の観点では、冷却流路7と保冷剤21との位置関係は、いずれが内側又は外側であってもよい。特に図示しないが、冷却流路7の互いに隣り合う部分同士の間に保冷剤21が位置してもよい。
【0175】
図示の例では、冷却流路7を構成する面部(図示の例では外面部29)は、1種類のハッチングが付されることによって、その全体が一体的に構成されているかのように示されている。ただし、当該面部は、冷却流路7に対して収容部803の内側と外側とで互いに異なる材料が用いられてもよい。例えば、内側の層は、伝熱性が比較的高い材料(例えば金属)により構成され、外側の層は、断熱性が比較的高い材料(例えばセラミック又は発泡プラスチック)により構成されてよい。
【0176】
<第9及び第10実施形態>
図8(a)は、第9実施形態に係る人体冷却システム901の構成を模式的に示す図である。図8(b)は、第10実施形態に係る人体冷却システム1001の構成を模式的に示す図である。
【0177】
第1実施形態では、収容部3と冷凍機5とは互いに離れて配置された。別の観点では、収容部3と冷凍機5との間には、冷却流路7又は温度センサ9の配線が介在するものの、両者は直接的に固定されていなかった。さらに別の観点では、収容部3と冷凍機5とは、互いに別個に載置面に支持された。これは、第3実施形態のようにキャスター39又は脚41が設けられる場合も同様である。
【0178】
一方、第9及び第10実施形態は、収容部3と冷凍機5とが互いに直接的に固定されている。具体的には、例えば、冷凍機5の筐体が収容部3に対して固定されていたり、及び/又は収容部3と冷凍機5とは、互いに共通のフレーム又は筐体によって支持されたりしている。また、キャスター39及び/又は脚41(ここでは不図示)は、収容部3及び冷凍機5を共に支持している。
【0179】
このように収容部3と冷凍機5とが互いに一体的に設けられる態様において、両者の位置関係は任意である。第9実施形態(図8(a))は、収容部3の側方に冷凍機5が位置する態様となっている。第10実施形態(図8(b))は、収容部3の下方に冷凍機5が位置する態様となっている。
【0180】
人体冷却システムの規模等にもよるが、このように収容部3と冷凍機5とを互いに固定すると、例えば、システムの搬送が容易化される。また、意匠性も向上する。
【0181】
<第11及び第12実施形態>
図8(c)は、第11実施形態に係る人体冷却システム1101の構成を模式的に示す断面図である。図8(d)は、第12実施形態に係る人体冷却システム1201の構成を模式的に示す断面図である。
【0182】
第1実施形態の説明で述べたように、収容部は、浴槽以外の構成とされてよい。別の観点では、収容部が収容する人体の一部は任意の部位とされてよい。第11及び第12実施形態は、収容部が浴槽以外の構成とされた態様である。
【0183】
具体的には、第11実施形態(図8(c))の収容部1103は、人体Hの全体を収容することが想定されている。第1実施形態の浴槽により構成された収容部1103も人体Hの全体を収容してよいが、本実施形態の収容部1103は、浴槽又は容器等の概念よりも部屋又は建築物等の概念が合致する態様である。
【0184】
収容部1103は、1人のみが入室できる大きさであってもよいし、2人以上が入室できる大きさであってもよい(図示の例)。また、収容部1103の高さは、ユーザが立ち上がることが可能な高さであってもよいし(図示の例)、そのような高さよりも低くてもよい。部屋への出入りは、例えば、壁に構成された扉(不図示)の開閉によって実現されてよい。図示の例では、収容部1103の床、壁面及び天井を構成する部材は、板状となっている。ただし、収容部1103は、建築物の一部によって構成されていたり、地下室によって構成されていたりしてもよい。
【0185】
また、第12実施形態(図8(d))の収容部1203は、浴槽よりも小さい構成の一例である。図示の収容部1203は、例えば、ユーザの腕の少なくとも一部又は足の少なくとも一部を収容可能であるが、胴体を収容することはできない大きさとされている。なお、図示の例では、収容部1203は、上方が開放された構成とされているが、腕又は足を挿入する開口が側面等に形成された構成とされていてもよい。
【0186】
本開示に係る技術は、上述した実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0187】
例えば、上述した種々の実施形態は、適宜に組み合わされてよい。例えば、第2実施形態における保冷剤に係る構成は、第3実施形態以降の全ての実施形態に適用されてよい。また、例えば、第3実施形態における種々の付属器具は、任意の付属器具が他の実施形態に適用されてよい。
【0188】
第3実施形態等では、収容部としての浴槽(及び冷凍機)の運搬について述べた。ただし、浴槽は、運搬不可能なものであってもよい。例えば、浴槽は、全部又は下方の一部が床面下に埋め込まれて建築物に対して固定的であってよい。この場合、例えば、浴槽への出入りが容易化される。
【0189】
本開示からは、人体の冷却を要件としない種々の概念を抽出可能である。以下に例を示す。
【0190】
(概念1)
冷却対象を収容する収容部と、
前記収容部内の流体又は前記収容部内に供給される流体を冷却する冷凍機と、
を有しており、
前記収容部は、保冷剤を保持する保持部を有している
冷却システム。
【0191】
上記の概念において、冷却対象は、人体に限定されず、例えば、食品、飲料、移植用臓器又はワクチンであってよい。なお、移植用臓器は、人体の一部ではあるが、本開示において、単に人体という場合は、生きている人の体を指すものとする。上記の概念において、流体は、気体に限定されず、液体であってもよい。液体は、例えば、保冷剤よりも融点が低いもの(すなわち保冷剤が凍結しても流動性が維持されるもの)とされてよい。
【符号の説明】
【0192】
1…人体冷却システム、3…収容部、5…冷凍機。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8