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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】硬貨処理装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 9/00 20060101AFI20240910BHJP
   G07D 1/00 20060101ALI20240910BHJP
   G07D 3/00 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
G07D9/00 Z
G07D1/00 A
G07D3/00 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021046124
(22)【出願日】2021-03-19
(65)【公開番号】P2022144920
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000116079
【氏名又は名称】ローレルバンクマシン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500267170
【氏名又は名称】ローレル機械株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500265501
【氏名又は名称】ローレル精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】那須 唯広
【審査官】小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-185571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 1/00- 3/16
G07D 9/00-13/00
G07F 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の搬送元から第1の搬送部によって搬送され、識別部で識別された硬貨を第1の搬送先へ搬送する第1の硬貨処理と、
第2の搬送元から前記第1の搬送部によって搬送され、前記識別部で識別された硬貨を第2の搬送先へ搬送する第2の硬貨処理と、
前記第1の硬貨処理と前記第2の硬貨処理を並行して同時に行う制御部と、
を備え
前記第1の硬貨処理が硬貨を装置内へ搬入する処理であり、前記第2の硬貨処理が硬貨を装置外へ搬出する処理であるとき、
前記制御部は、前記第2の硬貨処理に関わる金種硬貨であって、前記第2の硬貨処理に関わる金種硬貨の枚数に達するまでは、当該金種硬貨を前記第2の搬送先へ優先的に振り分け搬送すること、
を特徴とする硬貨処理装置。
【請求項2】
前記第2の硬貨処理に必要とする金種別の硬貨枚数であって、装置外への硬貨の搬出残枚数が金種ごとに記憶されるとともに装置外への硬貨の搬出に合わせて搬出される硬貨の金種の搬出残枚数が減算される金種別カウンタを備え、
前記識別部が、前記金種別カウンタがゼロでない金種の硬貨を検出すると、当該検出した硬貨を装置外へと搬出すること、
を特徴とする請求項1に記載の硬貨処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1の硬貨処理と前記第2の硬貨処理との並行処理を許容しない個別搬送処理制御と、前記第1の硬貨処理と前記第2の硬貨処理との並行処理を許容する同時搬送処理制御とを切り替えることができること、
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の硬貨処理装置。
【請求項4】
第1の搬送元から第1の搬送部によって搬送され、識別部で識別された硬貨を第1の搬送先へ搬送する第1の硬貨処理と、
第2の搬送元から前記第1の搬送部によって搬送され、前記識別部で識別された硬貨を第2の搬送先へ搬送する第2の硬貨処理と、
前記第1の硬貨処理と前記第2の硬貨処理を並行して同時に行う制御部と、
を備え
前記制御部は、前記第1の硬貨処理と前記第2の硬貨処理との並行処理を許容しない個別搬送処理制御と、前記第1の硬貨処理と前記第2の硬貨処理との並行処理を許容する同時搬送処理制御とを切り替えることができること、
を特徴とする硬貨処理装置。
【請求項5】
前記個別搬送処理制御と前記同時搬送処理制御の切り替えは、予め定められた時間帯で切り替わること、
を特徴とする請求項3又は請求項4記載の硬貨処理装置。
【請求項6】
前記個別搬送処理制御と前記同時搬送処理制御の切り替えに際しては、表示部に切り替わる旨と切り替えの承認を求める旨の表示を行うとともに、操作部において前記切り替えを承認する旨の入力を受け付けることで、前記制御部による切り替えを許容すること、
を特徴とする請求項3から請求項5の何れか1項に記載の硬貨処理装置。
【請求項7】
前記表示部への切り替えの承認を求める旨の表示、および、前記操作部においてその承認を求める旨の入力は、前記個別搬送処理制御の実行中から前記同時搬送処理制御の実行への切り替え時のみとすること、
を特徴とする請求項6に記載の硬貨処理装置。
【請求項8】
前記制御部は、受付番号管理システムと連携し、前記受付番号管理システムから取得する待ち人数が、予め定められた人数以上となっているときに、前記個別搬送処理制御から同時搬送処理制御へ切り替わるように制御すること、
を特徴とする請求項から請求項7の何れか1項に記載の硬貨処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬貨処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、投入口から入金された硬貨を搬送する搬送路の一部と、取引口へ出金する硬貨を搬送する搬送路の一部とを共通化した硬貨処理装置が開示されている。このように一部の搬送路を共通化した設計とすることによって、搬送路をシンプルな構成とし、機体をコンパクトにすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-175078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の構成では、搬送路の共通化した部分で入金された硬貨と出金される硬貨が混在してしまう為、異なる処理である入金処理と出金処理とを並行して行うことができない。
【0005】
そこでこの発明は、上述した解題を解決する硬貨処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、硬貨処理装置は、第1の搬送元から第1の搬送部によって搬送され、識別部で識別された硬貨を第1の搬送先へ搬送する第1の硬貨処理と、第2の搬送元から前記第1の搬送部によって搬送され、前記識別部で識別された硬貨を第2の搬送先へ搬送する第2の硬貨処理と、前記第1の硬貨処理と前記第2の硬貨処理を並行して同時に行う制御部と、を備え、前記第1の硬貨処理が硬貨を装置内へ搬入する処理であり、前記第2の硬貨処理が硬貨を装置外へ搬出する処理であるとき、前記制御部が、前記第2の硬貨処理に関わる金種硬貨であって、前記第2の硬貨処理に関わる金種硬貨の枚数に達するまでは、当該金種硬貨を前記第2の搬送先へ優先的に振り分け搬送すること、又は、前記制御部が、前記第1の硬貨処理と前記第2の硬貨処理との並行処理を許容しない個別搬送処理制御と、前記第1の硬貨処理と前記第2の硬貨処理との並行処理を許容する同時搬送処理制御とを切り替えることができること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、硬貨処理装置において入金処理と出金処理とを並行して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の硬貨処理装置を概略的に示す平面図である。
図2】実施形態の硬貨処理装置および受付番号管理システムを示すブロック図である。
図3】実施形態の硬貨処理装置の入金側搬送部における入金部側の構成を示す斜視図である。
図4】実施形態の硬貨処理装置の入金側搬送部における入金部反対側の構成を示す斜視図である。
図5】実施形態の硬貨処理装置の入金処理(第1処理)における硬貨の流れを太線で示す平面図である。
図6】実施形態の硬貨処理装置の入金処理(第2処理)における硬貨の流れを太線で示す平面図である。
図7】実施形態の硬貨処理装置の出金処理における硬貨の流れを太線で示す平面図である。
図8】実施形態の硬貨処理装置の入出金並行処理における搬送路を示す平面図である。
図9】実施形態の硬貨処理装置の入出金並行処理に用いる残金カウンタについて説明する図である。
図10A】実施形態の硬貨処理装置の入出金並行処理における硬貨の流れを説明する第1の図である。
図10B】実施形態の硬貨処理装置の入出金並行処理における硬貨の流れを説明する第2の図である。
図10C】実施形態の硬貨処理装置の入出金並行処理における硬貨の流れを説明する第3の図である。
図10D】実施形態の硬貨処理装置の入出金並行処理における硬貨の流れを説明する第4の図である。
図10E】実施形態の硬貨処理装置の入出金並行処理における硬貨の流れを説明する第5の図である。
図11】実施形態に係る入出金並行処理の一例を示すフローチャートである。
図12】実施形態に係る動作モードの切り替え処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施形態>
[構成]
以下、本発明の一実施形態に係る硬貨処理装置における入出金並行処理について、図1図12を参照して説明する。
【0010】
図1に示すように、本実施形態の硬貨処理機10は、装置本体11の前部に入金部12(搬送部)およびカルトン載置部13を有している。入金部12は、硬貨が外部から金種混合状態で一括して投入されると共に投入された硬貨を一枚ずつ分離して搬送する。図示は略すが、入金部12には、入金部12を外部に対し開閉するシャッタが設けられている。入金部12は、シャッタが開かれた状態で硬貨が外部から投入可能となり、シャッタが閉じられた状態では硬貨が外部から投入不可となると共に内部の硬貨の外部への取り出しも不可となる。入金部12は、底面がベルトコンベアで構成されており、このベルトコンベアで後述する入金側搬送部15側に搬送される硬貨を、入金側搬送部15側の端部で通過を一枚ずつに制限して一枚ずつに分離する。カルトン載置部13には、装置本体11とは別体の機外のカルトン14が抜き差し可能に載置される。
【0011】
硬貨処理機10は、装置本体11の側部に入金側搬送部15(搬送部)を有している。入金側搬送部15は、前後方向に延在しており、入金部12に投入等され入金部12で一枚ずつ搬送される硬貨を受け入れて一枚ずつ後方に向けて搬送する。入金側搬送部15は、入金部12と駆動源が共通であり、常に入金部12と同期して駆動される。
【0012】
硬貨処理機10は、入金側搬送部15の位置に、前から順に、識別部20、放出案内部21、カセット案内部22、通過センサ23A、1円硬貨用の還流案内部23、100円硬貨用の還流案内部24、10円硬貨用の還流案内部25、50円硬貨用の還流案内部26、5円硬貨用の還流案内部27、500円硬貨用の還流案内部28、通過センサ29Aおよびスタッカ案内部29を有している。識別部20は、入金側搬送部15で搬送される硬貨の真偽および金種を搬送中に識別しつつ計数する。放出案内部21、カセット案内部22、還流案内部23~28およびスタッカ案内部29は、入金側搬送部15で入金部12側から搬送されてきた硬貨を、識別部20の識別結果に基づいて入金側搬送部15から分流させるように案内する。
【0013】
硬貨処理機10は、入金部12の後側に、前から順に、いずれも硬貨を収納する部位である、プールカセット32と、1円硬貨用の還流部33と、100円硬貨用の還流部34と、10円硬貨用の還流部35と、50円硬貨用の還流部36と、5円硬貨用の還流部37と、500円硬貨用の還流部38と、プールスタッカ39と、を有している。これらの中で、硬貨の搬送経路上、入金部12から最も遠い位置にプールスタッカ39が配置されており、これよりも入金部12に近い位置にプールカセット32が配置されている。
【0014】
放出案内部21は、開閉可能であり、開状態で入金側搬送部15から、カルトン載置部13に載置されたカルトン14へ硬貨を落下させる。放出案内部21は、閉状態では入金側搬送部15から硬貨を落下させることはなく、そのまま硬貨を入金側搬送部15でプールスタッカ39側に移動させる。放出案内部21は、通常は閉状態であり、カルトン14へ落下させるべき硬貨が識別部20で検出されると、この検出タイミングと入金側搬送部15の搬送速度とに基づくタイミングで開かれて硬貨を落下させ、その後閉じられる。放出案内部21は、例えば、識別部20の識別結果から真硬貨と判定できなかった受け入れ不可なリジェクト硬貨を入金側搬送部15からカルトン14に案内する。
【0015】
カセット案内部22は、開閉可能であり、開状態で入金側搬送部15から、プールカセット32へ硬貨を落下させる。カセット案内部22は、閉状態では入金側搬送部15から硬貨を落下させることはなく、そのまま硬貨を入金側搬送部15でプールスタッカ39側に移動させる。カセット案内部22は、通常は閉状態であり、プールカセット32へ落下させるべき硬貨が識別部20で検出されると、この検出タイミングと入金側搬送部15の搬送速度とに基づくタイミングで開かれて硬貨を落下させ、その後閉じられる。プールカセット32は、装置本体11に対し着脱可能であり、硬貨を金種混合で繰り出し可能に収納する。プールカセット32は、収納している硬貨を一枚ずつ分離して計数しつつ繰り出す繰出部42を有している。繰出部42は、通常は硬貨の繰り出しを停止しており、駆動されて硬貨の繰り出しを行う。
【0016】
1円硬貨用の還流案内部23は、開閉可能であり、開状態で入金側搬送部15から、1円硬貨用の還流部33へ硬貨を落下させる。還流案内部23は、閉状態では入金側搬送部15から硬貨を落下させることはなく、そのまま硬貨を入金側搬送部15でプールスタッカ39側に移動させる。還流案内部23は、通常は閉状態であり、識別部20で検出された還流部33へ落下させるべき硬貨が通過センサ23Aで検知されると、この検知タイミングと入金側搬送部15の搬送速度とに基づくタイミングで開かれて硬貨を落下させ、その後閉じられる。還流案内部23は、識別部20で真硬貨と判定された受け入れ可能な硬貨のうち1円硬貨のみを入金側搬送部15から還流部33に案内する。1円硬貨用の還流部33は、装置本体11に対し着脱不可であり、1円硬貨のみを収納する。1円硬貨用の還流部33は、収納している硬貨を一枚ずつ分離して計数しつつ繰り出す繰出部43を有している。繰出部43は、通常は硬貨の繰り出しを停止しており、駆動されて硬貨の繰り出しを行う。
【0017】
100円硬貨用の還流案内部24は、開閉可能であり、開状態で入金側搬送部15から、100円硬貨用の還流部34へ硬貨を落下させる。還流案内部24は、閉状態では入金側搬送部15から硬貨を落下させることはなく、そのまま硬貨を入金側搬送部15でプールスタッカ39側に移動させる。還流案内部24は、通常は閉状態であり、識別部20で検出された還流部34へ落下させるべき硬貨が通過センサ23Aで検知されると、この検知タイミングと入金側搬送部15の搬送速度とに基づくタイミングで開かれて硬貨を落下させ、その後閉じられる。還流案内部24は、識別部20で真硬貨と判定された受け入れ可能な硬貨のうち100円硬貨のみを入金側搬送部15から還流部34に案内する。100円硬貨用の還流部34は、装置本体11に対し着脱不可であり、100円硬貨のみを収納する。100円硬貨用の還流部34は、収納している硬貨を一枚ずつ分離して計数しつつ繰り出す繰出部44を有している。繰出部44は、通常は硬貨の繰り出しを停止しており、駆動されて硬貨の繰り出しを行う。
【0018】
10円硬貨用の還流案内部25は、開閉可能であり、開状態で入金側搬送部15から、10円硬貨用の還流部35へ硬貨を落下させる。還流案内部25は、閉状態では入金側搬送部15から硬貨を落下させることはなく、そのまま硬貨を入金側搬送部15でプールスタッカ39側に移動させる。還流案内部25は、通常は閉状態であり、識別部20で検出された還流部35へ落下させるべき硬貨が通過センサ23Aで検知されると、この検知タイミングと入金側搬送部15の搬送速度とに基づくタイミングで開かれて硬貨を落下させ、その後閉じられる。還流案内部25は、識別部20で真硬貨と判定された受け入れ可能な硬貨のうち10円硬貨のみを入金側搬送部15から還流部35に案内する。10円硬貨用の還流部35は、装置本体11に対し着脱不可であり、10円硬貨のみを収納する。10円硬貨用の還流部35は、収納している硬貨を一枚ずつ分離して計数しつつ繰り出す繰出部45を有している。繰出部45は、通常は硬貨の繰り出しを停止しており、駆動されて硬貨の繰り出しを行う。
【0019】
50円硬貨用の還流案内部26は、開閉可能であり、開状態で入金側搬送部15から、50円硬貨用の還流部36へ硬貨を落下させる。還流案内部26は、閉状態では入金側搬送部15から硬貨を落下させることはなく、そのまま硬貨を入金側搬送部15でプールスタッカ39側に移動させる。還流案内部26は、通常は閉状態であり、識別部20で検出された還流部36へ落下させるべき硬貨が通過センサ23Aで検知されると、この検知タイミングと入金側搬送部15の搬送速度とに基づくタイミングで開かれて硬貨を落下させ、その後閉じられる。還流案内部26は、識別部20で真硬貨と判定された受け入れ可能な硬貨のうち50円硬貨のみを入金側搬送部15から還流部36に案内する。50円硬貨用の還流部36は、装置本体11に対し着脱不可であり、50円硬貨のみを収納する。50円硬貨用の還流部36は、収納している硬貨を一枚ずつ分離して計数しつつ繰り出す繰出部46を有している。繰出部46は、通常は硬貨の繰り出しを停止しており、駆動されて硬貨の繰り出しを行う。
【0020】
5円硬貨用の還流案内部27は、開閉可能であり、開状態で入金側搬送部15から、5円硬貨用の還流部37へ硬貨を落下させる。還流案内部27は、閉状態では入金側搬送部15から硬貨を落下させることはなく、そのまま硬貨を入金側搬送部15でプールスタッカ39側に移動させる。還流案内部27は、通常は閉状態であり、識別部20で検出された還流部37へ落下させるべき硬貨が通過センサ23Aで検知されると、この検知タイミングと入金側搬送部15の搬送速度とに基づくタイミングで開かれて硬貨を落下させ、その後閉じられる。還流案内部27は、識別部20で真硬貨と判定された受け入れ可能な硬貨のうち5円硬貨のみを入金側搬送部15から還流部37に案内する。5円硬貨用の還流部37は、装置本体11に対し着脱不可であり、5円硬貨のみを収納する。5円硬貨用の還流部37は、収納している硬貨を一枚ずつ分離して計数しつつ繰り出す繰出部47を有している。繰出部47は、通常は硬貨の繰り出しを停止しており、駆動されて硬貨の繰り出しを行う。
【0021】
500円硬貨用の還流案内部28は、開閉可能であり、開状態で入金側搬送部15から、500円硬貨用の還流部38に硬貨を落下させる。還流案内部28は、閉状態では入金側搬送部15から硬貨を落下させることはなく、そのまま硬貨を入金側搬送部15でプールスタッカ39側に移動させる。還流案内部28は、通常は閉状態であり、識別部20で検出された還流部38へ落下させるべき硬貨が通過センサ23Aで検知されると、この検知タイミングと入金側搬送部15の搬送速度とに基づくタイミングで開かれて硬貨を落下させ、その後閉じられる。還流案内部28は、識別部20で真硬貨と判定された受け入れ可能な硬貨のうち500円硬貨のみを入金側搬送部15から還流部38に案内する。500円硬貨用の還流部38は、装置本体11に対し着脱不可であり、500円硬貨のみを収納する。500円硬貨用の還流部38は、収納している硬貨を一枚ずつ分離して計数しつつ繰り出す繰出部48を有している。繰出部48は、通常は硬貨の繰り出しを停止しており、駆動されて硬貨の繰り出しを行う。
【0022】
スタッカ案内部29は、開閉可能であり、開状態で入金側搬送部15から、プールスタッカ39に硬貨を落下させる。スタッカ案内部29は、通常は閉状態であり、識別部20で検出されたプールスタッカ39へ落下させるべき硬貨が通過センサ29Aで検知されると、この検知タイミングと入金側搬送部15の搬送速度とに基づくタイミングで開かれて硬貨を落下させ、その後閉じられる。スタッカ案内部29は、識別部20で真硬貨と判定された受け入れ可能な硬貨を入金側搬送部15からプールスタッカ39に案内する。プールスタッカ39は、装置本体11に対し着脱不可であり、硬貨を金種混合で繰り出し可能に収納する。プールスタッカ39は、収納している硬貨を一枚ずつ分離して計数しつつ繰り出す繰出部49を有している。繰出部49は、通常は硬貨の繰り出しを停止しており、駆動されて硬貨の繰り出しを行う。なお、スタッカ案内部29についてのみ、常に開状態で、入金側搬送部15からの硬貨をすべてプールスタッカ39に落下させるものとしても良い。
【0023】
いずれも硬貨を繰り出し可能に収納するプールカセット32、1円硬貨用の還流部33、100円硬貨用の還流部34、10円硬貨用の還流部35、50円硬貨用の還流部36、5円硬貨用の還流部37、500円硬貨用の還流部38およびプールスタッカ39のうち、プールカセット32のみが装置本体11に対し着脱可能となっている。そして、プールカセット32は、硬貨の収納容量、言い換えれば満杯状態での硬貨量が、1円硬貨用の還流部33、100円硬貨用の還流部34、10円硬貨用の還流部35、50円硬貨用の還流部36、5円硬貨用の還流部37、500円硬貨用の還流部38およびプールスタッカ39のそれぞれの硬貨の収納容量よりも大きくなっており、これらそれぞれの4倍程度となっている。
【0024】
硬貨処理装置10は、装置本体11の入金側搬送部15とは反対側の側部に出金側搬送部55(搬送部)を有している。出金側搬送部55は、前後方向に延在しており、繰出部42~49から繰り出された硬貨を入金部12に搬送する。
【0025】
硬貨処理装置10は、図2に示すように、入金部12、入金側搬送部15、識別部20、放出案内部21、カセット案内部22、還流案内部23~28、スタッカ案内部29、繰出部42~49、出金側搬送部55、通過センサ23A、通過センサ29A、これらを制御する制御部61と、操作入力を受け付けると共に画面表示を行うタッチパネル式の操作表示部62と、入出金データや金種別に出金すべき硬貨の残数をカウントする金種別出金残カウンタ等を記憶する記憶部63と、通信部64と、を有している。硬貨処理装置10は、ネットワーク(NW)を介して、受付番号管理システム100と接続されている。通信部64は、硬貨処理装置10を使用した入出金手続き業務を行う窓口での待ち人数の情報を受付番号管理システム100から取得する。
【0026】
制御部61は、例えばCPU等が搭載されたマイクロコンピュータで構成される。制御部61は、硬貨処理装置10全体の動作を制御する。例えば、制御部61は、還流案内部23~28、繰出部42~49等の動作を制御することにより、入金処理や出金処理を実行する。また、入金と出金の指示を同時に受けた場合、制御部61は、入金処理と出金処理とを同時並行的に行う入出金並行処理を実行する。また、制御部61は、入金と出金の指示を同時に受けた場合に入出金並行処理に行う動作モード(同時搬送処理制御)と、入金処理と出金処理のうちの一方を行い、その処理の完了後、他方の処理を行う動作モード(個別搬送処理制御)の何れかで動作可能であってもよい。また、制御部61は、同時搬送処理制御と個別搬送処理制御の動作モードを所定の切り替え条件に基づいて、切り替えて実行することができてもよい。
【0027】
入金側搬送部15は、図3図4に示すように、一対の壁部71,72を有しこれら壁部71,72の間の通路面73で硬貨を搬送させる搬送通路74を有している。搬送通路74は、通路面73が直線状であり、装置本体11の前後方向に延在している。ここで、図3は、入金側搬送部15の図1に示す入金部12側の端部近傍を示している。図3に示すように、入金側搬送部15の入金部12側の端部には、入金部12から繰り出された硬貨を受け入れる受入口77が、搬送通路74の延在方向に直交して設けられている。搬送通路74は、その入金部12側の端部が通路面73から立ち上がる一端壁部81となっており、この一端壁部81は、通路面73の延在方向に対し直交して広がっている。一方の壁部71はこの一端壁部81と繋がっている。他方の壁部72は、この一端壁部81から離間しており、間に受入口77を形成している。
【0028】
図4は、入金側搬送部15の図1に示す入金部12とは反対側の端部近傍を示している。図4に示すように、搬送通路74は、その入金部12とは反対側の端部が、通路面73から立ち上がる他端壁部82となっており、この他端壁部82は、通路面73の延在方向に対し直交して広がっている。
【0029】
入金側搬送部15は、図3に示すように、搬送通路74の一端壁部81の近傍の上側にプーリ85を有しており、図4に示すように、搬送通路74の他端壁部82の近傍の上側にプーリ86を有している。入金側搬送部15は、これらプーリ85,86に掛けられる搬送ベルト87を有している。プーリ85,86はタイミングプーリであり、搬送ベルト87は、無端の桟付きのタイミングベルトである。搬送ベルト87は、通路面73の上方に通路面73と平行に配置されており、通路面73上の硬貨Cを通路面73とで挟持する。搬送ベルト87は、正逆回転することによって、通路面73上の硬貨Cを通路面73に押し付けながら正逆搬送する。このようにして、識別部20にて識別された硬貨Cは、入金側搬送部15において1枚ずつ搬送される。
【0030】
[各種の処理]
本実施形態では、制御部61は、入金側搬送部15の端位置に接続されたプールスタッカ39よりも収納容量が大のプールカセット32を、入金処理時に入金部12に投入され識別部20で識別された硬貨を金種混合で繰り出し可能に一時貯留する一時貯留部とし、プールカセット32よりも収納容量が小のプールスタッカ39を、収納処理時にプールカセット32から繰り出された硬貨のうち、各還流部33~38に収納しきれないオーバーフロー硬貨を金種混合で繰り出し可能に収納する一括収納部とする。すなわち、本実施形態では、入金側搬送部15の途中から分岐するプールカセット32を一時貯留部とする。
【0031】
以下、本実施形態で実行される入金処理、出金処理および入出金並行処理について説明する。
【0032】
「入金処理」
図5に入金処理時の硬貨の流れを太線にて示す。制御部61は、入金処理を開始すると、まず、入金部12の図示略のシャッタを開く。そして、この入金部12に硬貨が投入されたことを図示略の入金部センサで検出すると、入金部12のシャッタを閉じ、入金部12で硬貨を一枚ずつに分離しながら入金側搬送部15に搬送する。そして、硬貨を入金側搬送部15でさらに搬送し識別部20で識別および計数する。その結果、識別部20で識別されて受け入れ可能と識別された真硬貨を、図5に太実線で示すように入金側搬送部15およびカセット案内部22でプールカセット32へ搬送しプールカセット32に一時貯留する。すなわち、制御部61は、識別部20で受け入れ可能と識別された硬貨に対しては、放出案内部21、還流案内部23~28、スタッカ案内部29を閉状態のまま、カセット案内部22を開状態として、プールカセット32に落下させる。なお、他の例として、図5に一点鎖線で示すように入金側搬送部15およびスタッカ案内部29でプールスタッカ39へ搬送しプールスタッカ39に一時貯留するようにしてもよい。
【0033】
その一方で、制御部61は、識別部20で識別されて受け入れ不可と識別されたリジェクト硬貨を、図5に太破線で示すように、放出案内部21でカルトン14に搬送する。すなわち、制御部61は、識別部20で受け入れ不可と識別された硬貨に対しては、放出案内部21を開状態として、カルトン14に落下させる。
【0034】
このように、入金部12に投入された硬貨を識別部20で識別しながら、受け入れ不可と識別されたリジェクト硬貨をカルトン14に、受け入れ可能と識別された硬貨を一時貯留部としてのプールカセット32へ搬送する処理を入金処理の第1処理と呼ぶ。入金処理の第1処理によって、硬貨の装置内への入金が確定する。制御部61は、この入金処理の第1処理中に、図示略の入金部センサ、識別部20、通過センサ23Aの検出結果から、入金部12に投入された硬貨が全て正常に搬送されてプールカセット32およびカルトン14のいずれかに搬送されたと判断すると、識別部20で受け入れ可能と識別された真硬貨の合計金額および金種別の枚数等を操作表示部62に表示させて、操作表示部62への確定指示操作、返却指示操作を待機する状態となって、入金処理の第1処理を終了する。
【0035】
入金処理の第1処理の終了後、操作表示部62へ確定指示操作が入力されると、制御部61は、入金処理の第2処理(第1の硬貨処理)を開始する。入金処理の第2処理は収納処理ともいう。つまり、図6に太実線で示すように、プールカセット32(第1の搬送元)の硬貨を、繰出部42で繰り出し、出金側搬送部55、シャッタが閉じられた状態の入金部12および入金側搬送部15で搬送して識別部20で識別する。そして、この識別部20の識別結果および通過センサ23Aの検知結果に基づいて、各金種の硬貨を還流案内部23~28の対応する金種のもので、還流部33~38の対応する金種のもの(第1の搬送先)に収納する。すなわち、1円硬貨を1円硬貨用の還流案内部23の開作動で1円硬貨用の還流部33に、100円硬貨を100円硬貨用の還流案内部24の開作動で100円硬貨用の還流部34に、10円硬貨を10円硬貨用の還流案内部25の開作動で10円硬貨用の還流部35に、50円硬貨を50円硬貨用の還流案内部26の開作動で50円硬貨用の還流部36に、5円硬貨を5円硬貨用の還流案内部27の開作動で5円硬貨用の還流部37に、500円硬貨を500円硬貨用の還流案内部28の開作動で500円硬貨用の還流部38に、それぞれ収納する。なお、識別部20の識別結果に基づいて、各還流部33~38のオーバーフロー硬貨、汚損硬貨および旧500円硬貨は、図6に太破線で示すように、スタッカ案内部29でプールスタッカ39に収納する。そして、プールカセット32の全ての硬貨が正常に搬送されて、プールカセット32、出金側搬送部55、入金部12および入金側搬送部15に硬貨がなくなると、入金処理の第2処理(収納処理)を終了する。なお、入金処理の第1処理でプールスタッカ39に硬貨を収納した場合、図6の一点鎖線で示すようにプールスタッカ39の硬貨を、繰出部49で繰り出し、出金側搬送部55、入金部12へ搬送する。その後の硬貨および処理の流れは上記と同様である。
【0036】
このように入金処理の第2処理では、プールカセット32の硬貨を出金側搬送部55、入金部12および入金側搬送部15で搬送しつつ、識別部20の識別結果に基づいて、還流案内部23~28で還流部33~38の対応する金種のものに搬送したり、スタッカ案内部29でプールスタッカ39へ搬送したりする。
【0037】
「出金処理」
操作表示部62に入力された出金データに基づく出金指示が行われると、または、釣銭機運用の場合で、必要金額(購買金額等)に対して入金処理で入金額が確定すると、その差が釣銭額と確定するので、制御部61は、出金データ又は釣銭額に基づいて、図7に太実線で示すように、金種別に設けられた還流部33~38の対応する金種のもの(第2の搬送元)から、繰出部43~48の対応する金種のものによって、硬貨を、計数しつつ出金側搬送部55に繰り出し、出金側搬送部55、シャッタが閉じられた状態の入金部12および入金側搬送部15で搬送して、識別部20で識別および計数しつつ放出案内部21でカルトン14(第2の搬送先)へ放出する。還流部33~38の対応する金種のものから出金データの全ての硬貨が繰り出された後、全ての硬貨が正常に搬送されて、出金側搬送部55、入金部12および入金側搬送部15に硬貨がなくなると、出金処理を終了する。ここで、識別部20の識別および計数結果から、リジェクト硬貨が検出されると、この硬貨については、図7に太破線で示すように、スタッカ案内部29でプールスタッカ39へ搬送し収納する。あるいは、リジェクト硬貨については、カセット案内部22を経由して、プールカセット32に導き、繰出部42から出金側搬送部55に繰り出して、再度、識別部20での識別を試みることで、正常な硬貨として出金処理に供させることでも良く、いずれにしても、出金データ又は釣銭額に対応した出金処理が行われる。
【0038】
このように出金処理では、還流部33~38の対応する金種のものの硬貨を、繰出部43~48の対応する金種のもので繰り出し、出金側搬送部55、入金部12および入金側搬送部15で搬送しつつ、放出案内部21でカルトン14に搬送したり、スタッカ案内部29でプールスタッカ39へ搬送したり、あるいは、カセット案内部22を経由して、プールカセット32に導き、繰出部42から出金側搬送部55に繰り出して、再度、識別部20での識別を試みる。
【0039】
「入出金並行処理」
入出金並行処理は、入金処理の開始後に出金の指示を受けた場合、入金処理(入金処理の第2処理)と出金処理とを並行して行う処理である。この場合、制御部61は、まず、入金の第1処理を完了させ、硬貨処理装置10内への入金を確定させる。そして、入金処理の第2処理と出金処理を並行して実行する。図8に硬貨が搬送される搬送路を示す。図8の破線で示す搬送路は入金処理の第2処理において硬貨が通る搬送路である。二重線で示すルートは出金処理において硬貨が通るルートである。太実線で示す搬送路は、入金と出金とで共通する搬送路(第1の搬送部)である。つまり、太実線によって示される搬送路の共用部では、入金後プールカセット32にて一時貯留された硬貨と還流部33~38から繰り出された硬貨が混在する可能性がある。入出金並行処理では、この共用部に存在する硬貨を出金または入金へ振り分けることで、入金処理と出金処理の並行処理を実現する。共用部の硬貨を適切に振り分けるために、本実施形態では、識別部20によって識別計数した出金用硬貨の残数を記憶する記憶領域である振分部金種別出金残カウンタと、還流部33~38から繰り出された硬貨の残数を記憶する記憶領域である還流部金種別出金残カウンタと、を記憶部63に設ける。これらのカウンタが設けられた記憶部63の一例を図9に示す。
【0040】
図示するように、記憶部63は、振分部金種別出金残カウンタ情報630と、還流部金種別出金残カウンタ情報631とを記憶する。振分部金種別出金残カウンタ情報630は、1円残カウンタ63Aと、5円残カウンタ63Bと、10円残カウンタ63Cと、50円残カウンタ63Dと、100円残カウンタ63Eと、500円残カウンタ63Fと、を含む。1円残カウンタ63Aには、出金すべき(カルトン14へ搬送すべき)1円硬貨の残数が記録される。同様に、5円残カウンタ63Bには出金すべき5円硬貨の残数が記録される。10円残カウンタ63Cには出金すべき10円硬貨の残数が記録される。50円残カウンタ63Dには出金すべき50円硬貨の残数が記録される。100円残カウンタ63Eには出金すべき50円硬貨の残数が記録される。500円残カウンタ63Fには出金すべき50円硬貨の残数が記録される。例えば、釣銭として1円硬貨を5枚出金する場合、制御部61は、1円残カウンタ63Aに「5」を設定する。識別部20にて、放出案内部21からカルトン14へ搬送する1円硬貨が1枚識別および計数されると、制御部61は、1円残カウンタ63Aの値を1減算し、「4」を記録する。このようにして、出金要求があった硬貨がカルトン14へ搬送されるたびに制御部61は、1円残カウンタ63Aの値をカウントダウンする。出金を要求された1円硬貨が全てカルトン14へ搬送されると、1円残カウンタ63Aには「0」が記録される。5円残カウンタ63B、10円残カウンタ63C、50円残カウンタ63D、100円残カウンタ63E、500円残カウンタ63Fについても同様である。出金指示などを受け取ると、制御部61は、金種別に出金すべき硬貨の枚数を対応する金種のカウンタ63B~63Fに設定し、識別部20によって、カルトン14へ搬送される硬貨が識別および計数されるたびに対応する金種のカウンタをカウントダウンしてゆく。カウンタ63A~63Fの値が全て「0」になると出金すべき硬貨が全てカルトン14へ搬送されたことを意味する。
【0041】
同様に、還流部金種別出金残カウンタ情報631は、1円残カウンタ63aと、5円残カウンタ63bと、10円残カウンタ63cと、50円残カウンタ63dと、100円残カウンタ63eと、500円残カウンタ63fと、を含む。1円残カウンタ63aには、出金用に還流部33から繰り出すべき1円硬貨の残数が記録される。5円残カウンタ63bには、出金用に還流部37から繰り出すべき5円硬貨の残数が記録される。10円残カウンタ63cには、出金用に還流部35から繰り出すべき10円硬貨の残数が記録される。50円残カウンタ63dには、出金用に還流部36から繰り出すべき50円硬貨の残数が記録される。100円残カウンタ63eには、出金用に還流部34から繰り出すべき100円硬貨の残数が記録される。500円残カウンタ63fには、出金用に還流部38から繰り出すべき500円硬貨の残数が記録される。例えば、釣銭として1円硬貨を5枚出金する場合、制御部61は、1円残カウンタ63aに「5」を設定する。そして、上記の出金処理の動作により、繰出部43が出金側搬送部55へ1円硬貨を1枚繰り出すたびに、1円残カウンタ63aの値を1ずつ減算する。5枚の1円硬貨が全て繰り出されると、1円残カウンタ63aの値は「0」となる。5円残カウンタ63b、10円残カウンタ63c、50円残カウンタ63d、100円残カウンタ63e、500円残カウンタ63fについても同様である。出金指示などを受け取ると、制御部61は、金種別に出金すべき硬貨の枚数を対応する金種のカウンタ63b~63fに設定し、繰出部44~48によって硬貨が繰り出されるたびに対応する金種のカウンタをカウントダウンしてゆく。カウンタ63a~63fの値が全て「0」になると出金すべき硬貨が全て還流部33~38から出金側搬送部55へ繰り出されたことを意味する。
【0042】
次に具体例を挙げて、入出金並行処理の動作について説明する。一例として、100円硬貨が5枚入金され、100円硬貨3枚を出金するよう指示があった場合の動作について説明する。図10A図10Eの硬貨C1~C5、C11~C13は何れも100円硬貨である。硬貨C1~C5は入金された硬貨、硬貨C11~C13はもともと還流部34に収納されている硬貨である。図10Aに、制御部61へ100円硬貨5枚の入金処理が指示された後、その処理中に100円硬貨3枚の出金処理が指示された場面であって、入金処理の第1処理が完了したときの硬貨の収容状況を示す。プールカセット32には、入金された硬貨C1~C5が一時的に貯留されている。還流部34には少なくとも3枚の硬貨C11~C13が収納されている。また、振分部金種別出金残カウンタ情報630と還流部金種別出金残カウンタ情報631に記録された金種別出金カウンタの状態を表100に示す。ここでは、本例の処理に関係する100円残カウンタ63E、63eの値のみを記載する。100円硬貨3枚の出金指示をうけた場面では、100円残カウンタ63E、63eの値は共に「3」である。図示しない他の金種別出金カウンタの値は、本例の動作の開始から完了まで全て「0」である。
【0043】
制御部61は、入金処理の第2処理および出金処理の動作と同様にして、硬貨の搬送を開始する。具体的には、制御部61は、プールカセット32の硬貨C1~C5を、繰出部42で繰り出し、出金側搬送部55、シャッタが閉じられた状態の入金部12、入金側搬送部15の共用部および識別部20まで搬送する。また、制御部61は、還流部34の硬貨C11~C13を繰出部44によって、計数しつつ出金側搬送部55に繰り出し、出金側搬送部55、シャッタが閉じられた状態の入金部12、入金側搬送部15の共有部および識別部20まで搬送する。この動作を図10Bに示す。図10Bでは、硬貨C13が、繰出部44によって、計数しつつ出金側搬送部55に繰り出されている。制御部61は、繰出部44が計数した硬貨の枚数の情報を取得して、100円残カウンタ63eの値を1減算する。この結果、表100に示すように、100円残カウンタ63eの値は「2」となる。
【0044】
入出金並行処理中に、硬貨C1~C5、C11~C13が識別部20へ搬送されると、制御部61は、識別部20による識別の結果を取得して、その硬貨を放出案内部21でカルトン14に搬送するか、又は、還流案内部24で還流部34に搬送する。具体的には、振分部金種別出金残カウンタ情報630の100円残カウンタ63Eの値が「0」に至るまで、制御部61は、識別部20によって出金すべき100円硬貨が識別されると、その硬貨が入金された硬貨C1~C5であるか、還流部34から繰り出された硬貨C11~C13であるかに関係なく、放出案内部21を開状態として、カルトン14に落下させる。そして、100円残カウンタ63Eの値を1減算する。この動作を図10Cに示す。図10Cでは、硬貨C12~C13が出金側搬送部55に繰り出されている。この結果、100円残カウンタ63eの値は「1」となる。また、識別部20により、入金された硬貨C1が100円硬貨と識別される。この結果、硬貨C1は、出金用に還流部34から繰り出された100円硬貨ではなく、入金された100円硬貨ではあるが、制御部61は、出金指示後、最も早く識別部20によって識別された出金対象と同じ金種の硬貨C5を出金へ回す。つまり、100円残カウンタ63Eの値を1減算して「2」とし、放出案内部21を開状態として、硬貨C5をカルトン14に落下させる。このように本実施形態の入出金並行処理では、識別部20で識別した出金対象の金種の硬貨を優先的に出金用の硬貨として用いる。
【0045】
制御部61は、その後も同じ要領で出金の処理を進める。なお、本例の場合、入金された硬貨と出金指示された硬貨が同じ金種であるが、例えば、入金された硬貨に10円硬貨など出金対象以外の硬貨が混ざっている場合、制御部61は、通常の入金処理の第2処理と同様にして、この硬貨を処理する。つまり、制御部61は、識別部20にて10円硬貨であると識別されると、放出案内部21を閉状態として、10円硬貨を10円硬貨用の還流案内部25の開作動で10円硬貨用の還流部35に収納する。また、硬貨の収納中に、例えば、還流部35が10円硬貨で満杯になると、満杯後の10円硬貨は、スタッカ案内部29によりプールスタッカ39に収納する。
【0046】
なお、上記の例では、識別部20で識別した出金対象の金種の硬貨を優先的に出金用の硬貨として用いることとしたが、識別部20にて正貨と損貨の識別が可能である場合には、損貨は出金硬貨とせず、たとえ振分部金種別出金残カウンタ情報630の対応する金種の金種別出金残カウンタの値が「0」になっていなくても、出金の対象外とし、プールスタッカ39へ搬送してもよい。
【0047】
識別部20によって出金対象の100円硬貨3枚が識別されると、これらの硬貨は全てカルトン14に搬送され、硬貨処理装置10から出金される。これにより、出金処理が完了する。この状態を図10Dに示す。図10Dでは、硬貨C11~C13が出金側搬送部55に繰り出されている。この結果、100円残カウンタ63eの値は「0」となる。100円残カウンタ63eの値が「0」となると、制御部61は、還流部34からの100円硬貨の繰り出しを終了する。また、カルトン14には、既に出金すべき3枚の100円硬貨が搬送済みである。この結果、100円残カウンタ63Eの値は「0」となる。100円残カウンタ63Eの値が「0」となると、制御部61は、放出案内部21を閉状態として、それ以降に識別部20へ搬送される硬貨については、上記の入金処理の第2処理(収納処理)を行う。その結果、硬貨C2、C13は、それが入金されたものであるか、出金用に還流部34から繰り出されたものであるかに関係なく、還流部34へ収納される。同様に硬貨C1、C12、C11についても還流部34へ収納される。収納後の状態を図10Eに示す。図10Eに示すように入金処理の第2処理が完了すると、入金されたと同じ枚数の5枚の100円硬貨が還流部34へ収納される。これにより、入出金並行処理を終了する。このように本実施形態の入出金並行処理では、共用部に至った硬貨を入金処理と出金処理で共用する。その結果、対応する還流部33~38から、出金指示に応じて繰り出された硬貨が識別部20へ搬送される前に、入金された硬貨の中に出金対象の金種と同じ硬貨が存在し、その硬貨が共用部に存在すれば、その硬貨を優先して出金する。これにより、結果として出金処理を高速化することができる。また、入金処理の完了を待たずに出金処理を開始することで、入金及び出金処理全体での処理時間を短縮することができる。また、還流部金種別出金残カウンタ情報631で出金すべき硬貨の種類と数を管理して、必要な数の硬貨を繰り出し、一方、振分部金種別出金残カウンタ情報630で実際に出金する硬貨の種類と数を管理するので、入金された硬貨と出金された硬貨が共用部にて混在し、入金された硬貨を出金へ回しても、結果として、硬貨処理装置10内で保有すべき硬貨の数に狂いが生じることが無く、入金処理と出金処理を逐次的に実行する場合と変わりなく、正確な入出金処理を実現することができる。
【0048】
(動作)
「入出金並行処理の動作」
図11を参照して、本実施形態に係る入出金並行処理の制御の流れを説明する。
図11は、実施形態に係る入出金並行処理の一例を示すフローチャートである。
例えば、硬貨処理装置10は、窓口などで2卓運用されている、つまり、2人の操作者α、βによって操作されているとする。つまり、一方の操作者αからは入金処理の指示を受け付け、同時に他方の操作者βからは出金処理の指示を受け付けるような場面が生じ得る環境で使用されているとする。まず、一方の操作者αが、操作表示部62から入金処理の指示を行う。すると、制御部61が、入金処理を開始する(ステップS1)。制御部61は、まず、入金処理の第1処理を実行して、入金部12へ入金された硬貨をプールカセット32へ搬送する。第1処理が完了すると、次に制御部61は、入金処理の第2処理を実行して、プールカセット32に一時貯留した硬貨を対応する還流部33~38へ搬送する。
【0049】
また、入金処理の実行中に、他方の操作者βが、操作表示部62から出金処理の指示を行う。すると、制御部61が、出金処理を開始する(ステップS2)。制御部61は、入金処理の開始後であって、入金処理の実行中に出金処理の開始の指示を受けると、入出金並行処理を開始する。まず、制御部61は、入金処理の第1処理が完了したかどうかを判定する(ステップS3)。入金処理の第1処理が完了していない場合(ステップS3;No)、制御部61は、入金処理の第1処理の実行を継続しつつ、第1処理の完了まで待つ。入金処理の第1処理が完了すると(ステップS3;Yes)、制御部61は、振分部金種別出金残カウンタ情報630と還流部金種別出金残カウンタ情報631に残カウンタ数を設定する(ステップS4)。例えば、500円硬貨1枚、100円硬貨3枚および10円硬貨2枚を出金する場合、制御部61は、記憶部63の500円残カウンタ63Fと500円残カウンタ63fに「1」を設定し、100円残カウンタ63Eと100円残カウンタ63eに「3」を設定し、10円残カウンタ63Cと10円残カウンタ63cに「2」を設定し、他の金種の残カウンタに「0」を設定する。次に制御部61は、入金された硬貨と出金用に繰り出された硬貨の同時搬送を開始する(ステップS5)。つまり、制御部61は、図10A図10Eを参照して説明したように、プールカセット32から識別部20への硬貨の搬送と、還流部33~38から識別部20への硬貨の搬送を並行して行う。また、還流部33~38から出金対象の硬貨を繰り出す際には、繰り出した硬貨に係る還流部金種別出金残カウンタ情報631を更新する(ステップS6)。例えば、繰出部48が500円硬貨を1枚、出金側搬送部55へ繰り出すと、制御部61は、記憶部63の500円残カウンタ63fを1減算し、「0」へ更新する。還流部金種別出金残カウンタ情報631のうち値が「0」になった金種については、制御部61は、その金種の硬貨の繰り出しを終了する。
【0050】
硬貨が識別部20まで搬送されると、識別部20は、その硬貨の識別と計数を行う(ステップS7)。識別された硬貨が出金対象ではない場合(ステップS8;No)、制御部61は、放出案内部21を閉状態として、その硬貨に対応する還流案内部23~28の開作動によって、還流部33~38へ識別された硬貨を収納する(ステップS9)。また、還流部33~38が満杯となった場合には、プールスタッカ39へオーバーフロー貨を収納する。
【0051】
識別された硬貨が出金対象の場合(ステップS8;Yes)、制御部61は、振分部金種別出金残カウンタ情報630(金種別カウンタ)を更新する(ステップS10)。例えば、識別部20が1枚の500円硬貨を識別すると、制御部61は、記憶部63の500円残カウンタ63Fを1減算し、「0」へ更新する。振分部金種別出金残カウンタ情報630のうち値が「0」になった金種については、制御部61は、その後、その金種の硬貨を出金対象とは認識しない。制御部61は、放出案内部21を開状態として、識別された硬貨をカルトン14へ搬送する(ステップS11)。
【0052】
次に制御部61が、搬送対象の硬貨があるか否かを判定する(ステップS12)。入金処理の第2処理が完了していない、又は、出金処理が完了していない、の何れかの条件を満たす場合、制御部61は搬送対象の硬貨があると判定する。この場合(ステップS12;Yes)、ステップS5以降の処理を繰り返す。搬送対象の硬貨がないと判定した場合(ステップS12;No)、制御部61は、入出金並行処理を終了する。
【0053】
なお、ここでは、2卓運用の場合を例として挙げたが、入金処理で確定した入金額に基づき、釣銭額を確定し、これを出金する釣銭処理の場合であっても図11のフローチャートと同様の処理によって、入金処理と釣銭処理を並行して実行することができる。
【0054】
(効果)
以上説明したように本実施形態の硬貨処理装置10によれば、入金硬貨の収納動作中(入金処理の第2処理中)に出金処理が発生しても、収納動作を継続しつつ、直ちに出金動作を行って、硬貨が共用部で混在する事を許容する。収納対象の硬貨と出金対象の硬貨が混在しても、共通の識別部20で1枚ずつ識別し、その後に分岐される入金側搬送部15と放出案内部21に選別して搬送する。さらに、上記の搬送路の構成では、還流部33~38から繰り出される硬貨よりも入金された硬貨の方が先に識別部20を通過するので、出金対象の硬貨と入金された硬貨の金種で同一の硬貨が有れば、先に放出案内部21へ選別搬送することができる。これにより、出金を指示してから出金処理が終わるまでの時間を短縮することができる。また、入金処理の完了を待つ必要が無い為、出金を指示してから出金処理が終わるまでの時間を短縮することができる。これにより、入金された硬貨を搬送する搬送路の一部と、出金する硬貨を搬送する搬送路の一部とを共通化したコンパクトな機体でありながら、単一の識別部20にて、硬貨の振り分けを適切に行うことで、入金処理と出金処理の同時並行実行を実現し、入金処理と出金処理が重なった倍の処理時間を短縮化することができる。
【0055】
<変形例1:動作モードの切り替え>
上記の実施形態では、入金処理の開始後に出金の指示を受けるという条件が揃えば、入出金並行処理を行うこととしたが、例えば、忙しい時間帯や窓口に入出金を要求する顧客が多く存在する状況において、入出金並行処理を行うようにし、それ以外の時間帯や状況では、入金処理と出金処理を従来通り、逐次的に行うようにしてもよい。入出金並行処理を行う動作モードを同時搬送処理制御と呼び、入出金並行処理を許容しない動作モードを個別搬送処理制御と呼ぶ。この動作モードの切り替え制御の一例を図12に示す。
【0056】
図12は、実施形態に係る動作モードの切り替え処理の一例を示すフローチャートである。制御部61は、受付番号管理システム100と連携しており、通信部64を介して受付番号管理システム100から、所定の時間間隔で窓口にて入金や出金を伴う手続きを待つ顧客の人数を取得している。
制御部61は、受付番号管理システム100から取得した待ち人数が所定数以上か否かを判定する(ステップS21)。所定数以上の場合(ステップS21;Yes)、ステップS23の処理へすすむ。待ち人数が所定数未満の場合(ステップS21;No)、制御部61は、現在の時間が入出金並行処理を許可する時間帯か否かを判定する(ステップS22)。例えば、朝の始業開始直後、昼休み、終業時刻間際には、多くの顧客が窓口に訪れる傾向があるとする。この場合、これらの時間帯、例えば、9~10時、12~13時、17~18時の各時間帯を、入出金並行処理を許可する時間帯として予め記憶部63に登録しておく。制御部61は、記憶部63に登録された入出金並行処理を許可する時間帯と現在時刻とを比較して、ステップS22の判定を行う。現在が入出金並行処理を許可する時間帯の場合(ステップS22;Yes)、ステップS23の処理へすすむ。現在が入出金並行処理を許可する時間帯ではない場合(ステップS22;No)、制御部61は、個別搬送処理制御で入金処理と出金処理を制御する。例えば、入金処理中に出金処理の指示があった場合、制御部61は、入金処理が完了してから、出金処理を開始する。反対に、出金処理中に入金処理の指示があった場合、制御部61は、出金処理が完了してから、入金処理を開始する。
【0057】
ステップS23では、制御部61は、個別搬送処理制御から同時搬送処理制御への自動切り替えを許可するか否かを判定する(ステップS23)。例えば、窓口に並ぶ顧客の数が所定数以上になったり、顧客が多く訪れる時間帯であったりしても、業務の内容や窓口担当者のスキル、混雑状況などに応じて、同時搬送処理制御への切り替えを行いたくない場合がある。このような場合に備え、窓口担当者が同時搬送処理制御への切り替えを許可した場合のみ、個別搬送処理制御から同時搬送処理制御へ切り替えるようにしてもよい。例えば、記憶部63に、個別搬送処理制御から同時搬送処理制御への自動切換えを行うか否かのフラグを設定しておき、制御部61は、このフラグの値を参照して、ステップS23の判定を行う。
【0058】
自動切り替えを許可しない場合(ステップS23;No)、制御部61は、操作表示部62に、個別搬送処理制御から同時搬送処理制御への切り替えを許可するか否かを確認するメッセージを操作表示部62(表示部)へ表示する(ステップS24)。操作者が、操作表示部62(操作部)へ許可する旨の入力を行うと(ステップS25;Yes)、制御部61は、動作モードを個別搬送処理制御から同時搬送処理制御へ切り替え、同時搬送処理制御で入金処理と出金処理を制御する(ステップS26)。例えば、入力処理の実行中に出力指示を受けた場合、制御部61は、入出金並行処理によって入金処理と出金処理を行う。操作者が、許可しない旨の入力を行うと(ステップS25;No)、制御部61は、動作モードの切り替えを行わずに、個別搬送処理制御で入金処理と出金処理を制御する(ステップS27)。
【0059】
また、ステップS23の判定で自動切り替えを許可する場合(ステップS23;Yes)、制御部61は、動作モードを個別搬送処理制御から同時搬送処理制御へ切り替え、同時搬送処理制御で入金処理と出金処理を制御する(ステップS26)。
【0060】
このように、同時搬送処理制御と個別搬送処理制御とを切り替え可能とすることで、忙しい時間帯や待ち人数が多い場合には同時搬送処理制御によって短時間で入出金を処理し、そうでない時間帯には処理の安全性をより確実とするために個別搬送処理制御を選択することができる。これにより、安全性の確保と待ち時間の短縮化のバランスを取ることができる。なお、図12の処理フローは、所定の制御周期で実行され、例えば、一旦、同時搬送制御に切り替えた後でも、状況が変われば個別搬送処理制御へ切り替えることができる。また、図12のフローチャートに示すように、同時搬送処理制御から個別搬送処理制御への切り替えについては、承認を要求すること無く、切り替えるようにしてもよい。これにより、安全性を確保することができる。
【0061】
また、図12のフローチャートでは、待ち人数や時間帯に応じて同時搬送処理へ切り替えることとしたが、任意の時間に任意の待ち人数の状況にて、操作者が、操作表示部62へ同時搬送処理制御への切り替えを指示する操作を行うことにより、同時搬送処理制御へ動作モードを切り替えることができてもよい。
【0062】
<変形例2:複数のカルトン時の入出金並行処理>
上記の実施形態では、入金処理の第1処理の完了後に、入金処理の第2処理と出金処理を並行処理することとしたが、これは、入金処理の第1処理によって、受け入れ不可と識別されたリジェクト硬貨がカルトン14へ搬送される場合があり、リジェクト硬貨と出金硬貨が混合してしまう事を防ぐためである。従って、カルトン14の他にリジェクト硬貨を排出するカルトンが設けられている構成の場合、入金処理の第1処理の完了を条件とせず、入金処理と出金処理を並行して実行する制御としてもよい。この場合、制御部61は、図11のフローチャートにて、ステップS3の判定を行うこと無、入出金並行処理を実行する。
【0063】
<変形例3:他の処理への適用>
上記の実施形態では、入金処理(硬貨を装置内へ搬入する処理、第1の硬貨処理の一例)と出金処理(硬貨を装置外へ搬出する処理、第2の硬貨処理の一例)について並行処理を行う場合について説明したが、本実施形態の入出金並行処理と同様の制御は、図8に実太線で示した搬送路の共用部で装置内へ搬入する硬貨と装置外へ搬出する硬貨とが混在し得るような他の処理を並行して行う場面にも適用が可能である。例えば、入金処理に代わりに硬貨カセット補充処理(硬貨処理機10の外部で予めプールカセット32に収納された硬貨を、金種別の還流部33~38に補充する処理)やダイレクト補充処理(入金部12に投入した硬貨を、直接金種別の還流部33~38に補充する処理)、入金部補充処理(入金部12に投入した硬貨を、プールカセット32に一時貯留させた後に、金種別の還流部33~38に補充する処理)であってもよい。また、出金処理の代わりに硬貨収集処理(操作者が金額を指定すると、還流部33~38およびプールスタッカ39から、指定分の硬貨を繰り出し、カルトン14へ搬送する処理。あるいは、金額を指定せずに還流部33~38およびプールスタッカ39から、全ての硬貨をカルトン14へ全回収する処理)であってもよい。
【0064】
<変形例4:振分部の構成>
上記の実施形態にて例示した硬貨処理装置10では、出金側搬送部55上で、入金硬貨と出金硬貨が混在して仮に2枚重なったとしても、その後、入金部12で必ず1枚ずつ繰り出され、さらに図3図4で例示したように桟付きのタイミングベルトによって、桟と桟の間に1枚ずつ硬貨が格納されて識別部20へ搬送されることで、先行する硬貨を識別した後に後続の硬貨を識別する一定の時間間隔が保証され、硬貨を確実に振り分けることができるよう構成してある。しかし、硬貨の振り分けに機構はこれに限定されない。例えば、特許第5193679号公報に開示があるように、回転板と分別環方式で1枚ずつ硬貨を繰り出す構成であってもよい。
【0065】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。また、この発明の技術範囲は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0066】
10 硬貨処理機
12 入金部
14 カルトン
15 入金側搬送部
20 識別部
33~38 還流部
32 プールカセット
39 プールスタッカ
55 出金側搬送部
61 制御部
62 操作表示部
63 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図11
図12