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特許7553030ジヒドロインドリジノン誘導体を用いたインスリン産生細胞の作製法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】ジヒドロインドリジノン誘導体を用いたインスリン産生細胞の作製法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0735 20100101AFI20240910BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240910BHJP
   A61K 35/39 20150101ALI20240910BHJP
   A61K 35/545 20150101ALI20240910BHJP
   A61K 38/28 20060101ALI20240910BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240910BHJP
   A61P 5/50 20060101ALI20240910BHJP
   A61K 31/437 20060101ALN20240910BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240910BHJP
【FI】
C12N5/0735
C12N5/10
A61K35/39
A61K35/545
A61K38/28
A61P3/10
A61P5/50
A61K31/437
C12N15/12
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021530701
(86)(22)【出願日】2020-07-07
(86)【国際出願番号】 JP2020026543
(87)【国際公開番号】W WO2021006268
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2019126861
(32)【優先日】2019-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】307010166
【氏名又は名称】第一三共株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107870
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100098121
【弁理士】
【氏名又は名称】間山 世津子
(72)【発明者】
【氏名】粂 昭苑
(72)【発明者】
【氏名】白木 伸明
(72)【発明者】
【氏名】矢野 辰也
(72)【発明者】
【氏名】木方 俊宏
【審査官】長谷川 莉慧霞
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/178397(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/142883(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/132068(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2016/0031879(US,A1)
【文献】NAKASHIMA R. et al.,Neural cells play an inhibitory role in pancreatic differentiation of pluripotent stem cells,Genes to Cells,2015年12月,Vol.20, No.12,pp.1028-1045
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多能性幹細胞をインスリン産生細胞に分化させることによりインスリン産生細胞を作製する方法であって、多能性幹細胞から誘導された原始腸管細胞、膵臓前駆細胞、および膵内分泌前駆細胞から選択される少なくとも一つの細胞を一般式(I)
【化1】
[式中、各置換基は以下のように定義される。
:水素原子、ハロゲン原子、またはC1-C6アルキル基
:水素原子、またはC1-C6アルキル基
:置換基群αより独立して選択される1~4の置換基で置換されていてもよいアリール基、置換基群αより独立して選択される1~4の置換基で置換されていてもよいC5-C10シクロアルケニル基、または置換基群αより独立して選択される1~4の置換基で置換されていてもよいヘテロシクリル基
置換基群α:ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシ基、C1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシ基、ハロゲノC1-C6アルキル基、ハロゲノC1-C6アルコキシ基、ヒドロキシC1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシC1-C6アルコキシ基、(C1-C6アルキル)カルボニル基、(C1-C6アルコキシ)カルボニル基、(C1-C6アルコキシ)カルボニルオキシ基、フェニルC1-C6アルコキシ基、非芳香族ヘテロシクリル基、1つもしくは2つのC1-C6アルキル基で置換されていてもよいカルバモイル基、1つもしくは2つのC1-C6アルキル基で置換されていてもよいカルバモイル基が置換したC1-C6アルコキシ基、1つもしくは2つのC1-C6アルキル基で置換されたスルファモイル基、置換基群βより独立して選択される1~4の置換基で置換されていてもよいフェノキシ基、置換基群βより独立して選択される1~4の置換基で置換されていてもよいフェニル基、および置換基群βより独立して選択される1~4の置換基で置換されていてもよいベンゾイル基
置換基群β:ハロゲン原子、C1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシ基、ハロゲノC1-C6アルキル基、ハロゲノC1-C6アルコキシ基、および(C1-C6アルコキシ)カルボニル基
n:0、または1
A:下記式(i)~(iv)のいずれかで表される基

【化2】
(式中、各置換基は以下のように定義される。
・および*:結合手を示し、・は一般式(I)のアミド基の窒素原子に結合し、*はRに結合する
:水素原子、C1-C6アルキル基、ハロゲノC1-C6アルキル基、または(C1-C6アルコキシ)カルボニル基
:水素原子、ハロゲン原子、またはC1-C6アルキル基
Y:NまたはCH)]
で表される化合物またはその塩を含む培地で三次元培養する工程を含むことを特徴とするインスリン産生細胞の作製法。
【請求項2】
一般式(I)で表される化合物におけるRがナフチル基、1,3-ベンゾジオキソリル基、2,2-ジハロゲノ-1,3-ベンゾジオキソリル基、C5-C10シクロアルケニル基、置換基群α1より独立して選択される1つもしくは2つの置換基で置換されていてもよいフェニル基、または置換基群α1より独立して選択される1つもしくは2つの置換基で置換されていてもよい5もしくは6員環ヘテロシクリル基であることを特徴とする請求項1に記載のインスリン産生細胞の作製法。
置換基群α1:ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシ基、フェノキシ基、ベンゾイル基、C1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシ基、ハロゲノC1-C6アルキル基、ハロゲノC1-C6アルコキシ基、ヒドロキシC1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシC1-C6アルコキシ基、(C1-C6アルキル)カルボニル基、(C1-C6アルコキシ)カルボニル基、(C1-C6アルコキシ)カルボニルオキシ基、フェニルC1-C6アルコキシ基、5もしくは6員環非芳香族ヘテロシクリル基、1つもしくは2つのC1-C6アルキル基で置換されていてもよいカルバモイル基、1つもしくは2つのC1-C6アルキル基で置換されていてもよいカルバモイル基が置換したC1-C6アルコキシ基、1つもしくは2つのC1-C6アルキル基で置換されたスルファモイル基、および置換基群β1より独立して選択される1つもしくは2つの置換基で置換されていてもよいフェニル基
置換基群β1:ハロゲン原子、C1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシ基、および(C1-C6アルコキシ)カルボニル基
【請求項3】
一般式(I)で表される化合物におけるRがナフチル基、1,3-ベンゾジオキソリル基、2,2-ジハロゲノ-1,3-ベンゾジオキソリル基、C5-C10シクロアルケニル基、置換基群α2より独立して選択される1つもしくは2つの置換基で置換されていてもよいフェニル基、または置換基群γ2より独立して選択される1つもしくは2つの置換基で置換されていてもよい5もしくは6員環ヘテロシクリル基であることを特徴とする請求項1に記載のインスリン産生細胞の作製法。
置換基群α2:ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシ基、フェノキシ基、ベンゾイル基、C1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシ基、ハロゲノC1-C6アルキル基、ハロゲノC1-C6アルコキシ基、ヒドロキシC1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシC1-C6アルコキシ基、(C1-C6アルキル)カルボニル基、(C1-C6アルコキシ)カルボニル基、(C1-C6アルコキシ)カルボニルオキシ基、フェニルC1-C6アルコキシ基、5もしくは6員環非芳香族ヘテロシクリル基、1つもしくは2つのC1-C6アルキル基で置換されていてもよいカルバモイル基、1つもしくは2つのC1-C6アルキル基で置換されていてもよいカルバモイル基が置換したC1-C6アルコキシ基、1つもしくは2つのC1-C6アルキル基で置換されたスルファモイル基、および置換基群β2より独立して選択される1つもしくは2つの置換基で置換されていてもよいフェニル基
置換基群β2:ハロゲン原子、C1-C6アルキル基、およびC1-C6アルコキシ基
置換基群γ2:ハロゲン原子、C1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシ基、(C1-C6アルキル)カルボニル基、および(C1-C6アルコキシ)カルボニル基
【請求項4】
一般式(I)で表される化合物におけるRがナフチル基、1,3-ベンゾジオキソリル基、2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソリル基、C5-C8シクロアルケン-1-イル基、置換基群α3より独立して選択される1つもしくは2つの置換基で置換されていてもよいフェニル基、または置換基群γ3より独立して選択される1つもしくは2つの置換基で置換されていてもよい5もしくは6員環ヘテロシクリル基であることを特徴とする請求項1に記載のインスリン産生細胞の作製法。
置換基群α3:ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシ基、フェノキシ基、ベンゾイル基、C1-C4アルキル基、C1-C4アルコキシ基、ハロゲノC1-C2アルキル基、ハロゲノC1-C2アルコキシ基、ヒドロキシC1-C4アルキル基、C1-C2アルコキシC1-C2アルコキシ基、(C1-C4アルキル)カルボニル基、(C1-C4アルコキシ)カルボニル基、(C1-C4アルコキシ)カルボニルオキシ基、フェニルC1-C4アルコキシ基、モルホリン-1-イル基、1つもしくは2つのC1-C4アルキル基で置換されていてもよいカルバモイル基、1つもしくは2つのC1-C4アルキル基で置換されていてもよいカルバモイル基が置換したC1-C2アルコキシ基、1つもしくは2つのC1-C4アルキル基で置換されたスルファモイル基、および置換基群β3より独立して選択される1つもしくは2つの置換基で置換されていてもよいフェニル基
置換基群β3:フッ素原子、塩素原子、C1-C4アルキル基、およびC1-C4アルコキシ基
置換基群γ3:ハロゲン原子、C1-C4アルキル基、C1-C4アルコキシ基、(C1-C4アルキル)カルボニル基、および(C1-C4アルコキシ)カルボニル基
【請求項5】
一般式(I)で表される化合物におけるRが水素原子、塩素原子、またはメチル基であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のインスリン産生細胞の作製法。
【請求項6】
一般式(I)で表される化合物におけるRが水素原子、またはメチル基であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のインスリン産生細胞の作製法。
【請求項7】
一般式(I)で表される化合物におけるAが式(i)で表される基であって、Rが水素原子、C1-C6アルキル基、ハロゲノC1-C6アルキル基、または(C1-C6アルコキシ)カルボニル基であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のインスリン産生細胞の作製法。
【請求項8】
一般式(I)で表される化合物におけるRが水素原子、メチル基、またはトリフルオロメチル基であることを特徴とする請求項7に記載のインスリン産生細胞の作製法。
【請求項9】
一般式(I)で表される化合物におけるAが式(ii)で表される基であって、Rが水素原子、ハロゲン原子、またはC1-C6アルキル基であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のインスリン産生細胞の作製法。
【請求項10】
一般式(I)で表される化合物におけるRが水素原子、フッ素原子、またはメチル基であることを特徴とする請求項9に記載のインスリン産生細胞の作製法。
【請求項11】
一般式(I)で表される化合物におけるAが式(iii)で表される基であって、Rが水素原子、フッ素原子、またはメチル基であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のインスリン産生細胞の作製法。
【請求項12】
一般式(I)で表される化合物におけるAが式(iv)で表される基であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のインスリン産生細胞の作製法。
【請求項13】
一般式(I)で表される化合物におけるnが1であることを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載のインスリン産生細胞の作製法。
【請求項14】
一般式(I)で表される化合物におけるRが2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソリル基、1-tert-ブトキシカルボニル-3,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-4-イル基、またはフッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基、tert-ブトキシ基、トリフルオロメトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、ベンジルオキシ基、およびフェノキシ基からなる群より独立して選択される1つもしくは2つの置換基で置換されていてもよいフェニル基であることを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載のインスリン産生細胞の作製法。
【請求項15】
一般式(I)で表される化合物におけるRがフェニル基またはフッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基、tert-ブトキシ基、トリフルオロメトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、ベンジルオキシ基、およびフェノキシ基からなる群より選択されるいずれか1つの置換基でm位またはp位が置換されたフェニル基であることを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載のインスリン産生細胞の作製法。
【請求項16】
一般式(I)で表される化合物が、以下の化合物群から選択されるいずれか1つであることを特徴とする請求項1に記載のインスリン産生細胞の作製法。

【化3】
【請求項17】
多能性幹細胞が、ヒトES細胞またはヒトiPS細胞である請求項1に記載のインスリン産生細胞の作製法。
【請求項18】
三次元培養が低接着性または非接着性の培養容器内で行われることを特徴とする請求項1に記載のインスリン産生細胞の作製法。
【請求項19】
多能性幹細胞からインスリン産生細胞への分化過程が以下の工程1~5を含み、工程3、工程4および工程5からなる群から選択される少なくとも一つの工程において、一般式(I)で表される化合物またはその塩を含む培地で細胞を培養することを特徴とする請求項1~18のいずれか1項に記載のインスリン産生細胞の作製法
工程1:多能性幹細胞から胚体内胚葉細胞を誘導する工程、
工程2:胚体内胚葉細胞から原始腸管細胞を誘導する工程、
工程3:原始腸管細胞から膵臓前駆細胞を誘導する工程、
工程4:膵臓前駆細胞から膵内分泌前駆細胞を誘導する工程、および
工程5:膵内分泌前駆細胞からインスリン産生細胞を誘導する工程。
【請求項20】
工程3、工程4および工程5において、一般式(I)で表される化合物またはその塩を含む培地で細胞を培養することを特徴とする請求項19に記載のインスリン産生細胞の作製法。
【請求項21】
工程1において、メチオニン除去培地による前処理をした多能性幹細胞を用いることを特徴とする 請求項19に記載のインスリン産生細胞の作製法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元培養により、多能性幹細胞からインスリン産生細胞を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、様々な遺伝要因や環境要因を背景として発症し、慢性的な高血糖により腎症などの合併症が惹起された結果、患者のQOLを著しく低下させる重篤な疾患である。現在、世界の糖尿病患者数は4億人を超え、医療経済的にも問題視されている。糖尿病は大きく1型および2型糖尿病に分類されるが、何れの病態においても、インスリン分泌機能を有する膵β細胞の喪失が大きな原因である。1型糖尿病や膵β細胞の喪失が著しい重篤な2型糖尿病の治療法としてはインスリン製剤の投与が一般的な手段となっているが、低血糖などの副作用や頻回の自己注射が必要とされるなど問題点が多い。近年、臓器提供者から単離した膵島細胞の1型糖尿病患者への移植が可能となり、インスリン治療を代替し糖尿病の完全寛解を可能とする治療法として期待されている。しかしながら、膵島ドナーの不足により普及が困難な状況であるため、多能性幹細胞からインスリン産生細胞を大量に作製するための技術の早急な実現化が望まれている。
【0003】
多能性幹細胞からインスリン産生細胞を作製するための技術としては、ES細胞やiPS細胞から下式に記載の化合物を用いて5段階から7段階の工程を経てインスリン産生細胞へ分化誘導する方法が報告されている(特許文献1、非特許文献1,2,3,4,5)。Shahjalalらの方法(特許文献1、非特許文献4)では、ステップワイズに5段階の分化工程を経てヒトiPS細胞からインスリン産生細胞を作製できる。まず、iPS細胞を維持培地中で増殖させた後、ステージ1では、アクチビンAやGSK3β阻害剤CHIR99201を含む培地で数日間培養しSox17陽性の胚体内胚葉細胞へと誘導させる。ステージ2では、胚体内胚葉細胞にFGF10やソニックヘッジホッグ阻害剤KAAD-シクロパミンを数日間処置し、Foxa2陽性の原始腸管細胞へと誘導する。更に、ステージ3において、原始腸管細胞をレチノイン酸、KAAD-シクロパミン、TGFβ受容体キナーゼ阻害剤SB431542やBMPシグナル阻害因子Nogginを含む培地で数日処置し、PDX1陽性の膵臓前駆細胞へと分化誘導させる。ステージ4では、膵臓前駆細胞に対してプロテインキナーゼC活性化剤インドラクタムV、TGFβ受容体キナーゼ阻害剤であるALK5 inhibitor IIやNogginで刺激を与え、Ngn3陽性の膵内分泌前駆細胞へと誘導する。最終段階のステージ5において、膵内分泌前駆細胞をGLP-1受容体アゴニストやニコチンアミドを含有する培地で数日間培養することにより、インスリン産生細胞が得られる。
【0004】
【化1】
【0005】
さらに下式に記載される化合物を用いた報告もある。上述の分化培養において使用されるNogginの代わりに低分子阻害剤LDN193189、KAAD-シクロパミンの代わりにSANT-1(非特許文献2、6)やDorsomorphinが使用される場合がある(非特許文献5)。また、分化培養最終工程では、ForskolinやDexamethasoneが分化誘導剤として使用される場合がある(非特許文献5)。その他、AXL阻害剤R428が、インスリン産生細胞の機能成熟化を促進すること(非特許文献3)、AKT阻害剤AT7867が、PDX-1陽性の膵前駆細胞の増殖を促進する化合物として報告されている(非特許文献7)。
【0006】

【化2】
【0007】
多能性幹細胞由来のインスリン産生細胞を細胞治療に応用するためには、細胞機能の安定性と製造法の効率性が重要である。細胞機能の安定性については、得られたインスリン産生細胞における高グルコースに応答してインスリン分泌する能力やインスリンの分泌動態が、実験毎に再現性良く、一定の能力を示すことであるが、従来の方法で得られた細胞では、製造ロットや細胞株によって、これらの能力が変動し、安定した品質の確保が困難であるとの問題がある。製造法の効率性については、従来の方法では、分化誘導できるインスリン産生細胞の数が少ないことによりコスト効率が悪いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際出願公開第2015/178397号パンフレット
【非特許文献】
【0009】
【文献】Kroon,E.et al.,Pancreatic endoderm derived from human embryonic stem cells generates glucose-responsive insulin-secreting cells in vivo. Nature Biotechnology, 26: 443-452, 2008.
【文献】Pagliuca F.W.,et al.,Generation of functional human pancreatic β cells in vitro. Cell,159:428-439,2014.
【文献】Rezania A.et al.,Reversal of diabetes with insulin-producing cells derived in vitro from human pluripotent stem cells. Nature Biotechnology,32:1122-1133,2014.
【文献】Shahjalal H.et al.,Generation of insulin-producing β-like cells from human iPS cells in a defined and completely xeno-free culture system. Journal of Molecular Cell Biology,6:394-408,2014.
【文献】Kunisada Y.et al.,Small molecules induce efficient differentiation into insulin-producing cells from human induced pluripotent stem cells. Stem Cell Research,8:274-284,2012.
【文献】Nakashima R.et al., Neural cells play an inhibitory role in pancreatic differentiation of pluripotent stem cells. Genes Cells,20:1028-1045,2015.
【文献】Kimura A.et al.,Small molecule AT7867 proliferates PDX1-expressing pancreatic progenitor cells derived from human pluripotent stem cells. Stem Cell Research,24:61-68,2017.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、従来の技術では困難であった幹細胞からインスリン産生細胞への高い分化の効率性を達成する手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、一般式(I)で表される化合物またはその塩が多能性幹細胞からインスリン産生細胞への分化誘導を促進する顕著な効果を有すること、また、それら化合物またはその塩がインスリン産生細胞の製造に有用であることを見出し、本発明を完成させた。一般式(I)で表される化合物は、既知の分化誘導剤とは全く異なる新規構造を有しており、分化過程の後半のステップにおいて、既知の分化促進化合物や増殖因子に上乗せして更に分化誘導効率を高める効果を発揮する。
【0012】
すなわち、本発明は以下に説明する[1]~[21]に関する。
[1]
多能性幹細胞をインスリン産生細胞に分化させることによりインスリン産生細胞を作製する方法であって、一般式(I)
【0013】
【化3】
[式中、各置換基は以下のように定義される。
:水素原子、ハロゲン原子、またはC1-C6アルキル基
:水素原子、またはC1-C6アルキル基
:置換基群αより独立して選択される1~4の置換基で置換されていてもよいアリール基、置換基群αより独立して選択される1~4の置換基で置換されていてもよいC5-C10シクロアルケニル基、または置換基群αより独立して選択される1~4の置換基で置換されていてもよいヘテロシクリル基
置換基群α:ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシ基、C1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシ基、ハロゲノC1-C6アルキル基、ハロゲノC1-C6アルコキシ基、ヒドロキシC1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシC1-C6アルコキシ基、(C1-C6アルキル)カルボニル基、(C1-C6アルコキシ)カルボニル基、(C1-C6アルコキシ)カルボニルオキシ基、フェニルC1-C6アルコキシ基、非芳香族ヘテロシクリル基、1つもしくは2つのC1-C6アルキル基で置換されていてもよいカルバモイル基、1つもしくは2つのC1-C6アルキル基で置換されていてもよいカルバモイル基が置換したC1-C6アルコキシ基、1つもしくは2つのC1-C6アルキル基で置換されたスルファモイル基、置換基群βより独立して選択される1~4の置換基で置換されていてもよいフェノキシ基、置換基群βより独立して選択される1~4の置換基で置換されていてもよいフェニル基、および置換基群βより独立して選択される1~4の置換基で置換されていてもよいベンゾイル基
置換基群β:ハロゲン原子、C1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシ基、ハロゲノC1-C6アルキル基、ハロゲノC1-C6アルコキシ基、および(C1-C6アルコキシ)カルボニル基
n:0、または1
A:下記式(i)~(iv)のいずれかで表される基
【0014】

【化4】
【0015】
(式中、各置換基は以下のように定義される。
・および*:結合手を示し、・は一般式(I)のアミド基の窒素原子に結合し、*はRに結合する
:水素原子、C1-C6アルキル基、ハロゲノC1-C6アルキル基、または(C1-C6アルコキシ)カルボニル基
:水素原子、ハロゲン原子、またはC1-C6アルキル基
Y:NまたはCH)]
で表される化合物またはその塩を含む培地で細胞を三次元培養する工程を含むことを特徴とするインスリン産生細胞の作製法。
[2]
一般式(I)で表される化合物におけるRがナフチル基、1,3-ベンゾジオキソリル基、2,2-ジハロゲノ-1,3-ベンゾジオキソリル基、C5-C10シクロアルケニル基、置換基群α1より独立して選択される1つもしくは2つの置換基で置換されていてもよいフェニル基、または置換基群α1より独立して選択される1つもしくは2つの置換基で置換されていてもよい5もしくは6員環ヘテロシクリル基であることを特徴とする[1]に記載のインスリン産生細胞の作製法。
置換基群α1:ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシ基、フェノキシ基、ベンゾイル基、C1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシ基、ハロゲノC1-C6アルキル基、ハロゲノC1-C6アルコキシ基、ヒドロキシC1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシC1-C6アルコキシ基、(C1-C6アルキル)カルボニル基、(C1-C6アルコキシ)カルボニル基、(C1-C6アルコキシ)カルボニルオキシ基、フェニルC1-C6アルコキシ基、5もしくは6員環非芳香族ヘテロシクリル基、1つもしくは2つのC1-C6アルキル基で置換されていてもよいカルバモイル基、1つもしくは2つのC1-C6アルキル基で置換されていてもよいカルバモイル基が置換したC1-C6アルコキシ基、1つもしくは2つのC1-C6アルキル基で置換されたスルファモイル基、および置換基群β1より独立して選択される1つもしくは2つの置換基で置換されていてもよいフェニル基
置換基群β1:ハロゲン原子、C1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシ基、および(C1-C6アルコキシ)カルボニル基
[3]
一般式(I)で表される化合物におけるRがナフチル基、1,3-ベンゾジオキソリル基、2,2-ジハロゲノ-1,3-ベンゾジオキソリル基、C5-C10シクロアルケニル基、置換基群α2より独立して選択される1つもしくは2つの置換基で置換されていてもよいフェニル基、または置換基群γ2より独立して選択される1つもしくは2つの置換基で置換されていてもよい5もしくは6員環ヘテロシクリル基であることを特徴とする[1]に記載のインスリン産生細胞の作製法。
置換基群α2:ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシ基、フェノキシ基、ベンゾイル基、C1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシ基、ハロゲノC1-C6アルキル基、ハロゲノC1-C6アルコキシ基、ヒドロキシC1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシC1-C6アルコキシ基、(C1-C6アルキル)カルボニル基、(C1-C6アルコキシ)カルボニル基、(C1-C6アルコキシ)カルボニルオキシ基、フェニルC1-C6アルコキシ基、5もしくは6員環非芳香族ヘテロシクリル基、1つもしくは2つのC1-C6アルキル基で置換されていてもよいカルバモイル基、1つもしくは2つのC1-C6アルキル基で置換されていてもよいカルバモイル基が置換したC1-C6アルコキシ基、1つもしくは2つのC1-C6アルキル基で置換されたスルファモイル基、および置換基群β2より独立して選択される1つもしくは2つの置換基で置換されていてもよいフェニル基
置換基群β2:ハロゲン原子、C1-C6アルキル基、およびC1-C6アルコキシ基
置換基群γ2:ハロゲン原子、C1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシ基、(C1-C6アルキル)カルボニル基、および(C1-C6アルコキシ)カルボニル基
[4]
一般式(I)で表される化合物におけるRがナフチル基、1,3-ベンゾジオキソリル基、2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソリル基、C5-C8シクロアルケン-1-イル基、置換基群α3より独立して選択される1つもしくは2つの置換基で置換されていてもよいフェニル基、または置換基群γ3より独立して選択される1つもしくは2つの置換基で置換されていてもよい5もしくは6員環ヘテロシクリル基であることを特徴とする[1]に記載のインスリン産生細胞の作製法。
置換基群α3:ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシ基、フェノキシ基、ベンゾイル基、C1-C4アルキル基、C1-C4アルコキシ基、ハロゲノC1-C2アルキル基、ハロゲノC1-C2アルコキシ基、ヒドロキシC1-C4アルキル基、C1-C2アルコキシC1-C2アルコキシ基、(C1-C4アルキル)カルボニル基、(C1-C4アルコキシ)カルボニル基、(C1-C4アルコキシ)カルボニルオキシ基、フェニルC1-C4アルコキシ基、モルホリン-1-イル基、1つもしくは2つのC1-C4アルキル基で置換されていてもよいカルバモイル基、1つもしくは2つのC1-C4アルキル基で置換されていてもよいカルバモイル基が置換したC1-C2アルコキシ基、1つもしくは2つのC1-C4アルキル基で置換されたスルファモイル基、および置換基群β3より独立して選択される1つもしくは2つの置換基で置換されていてもよいフェニル基
置換基群β3:フッ素原子、塩素原子、C1-C4アルキル基、およびC1-C4アルコキシ基
置換基群γ3:ハロゲン原子、C1-C4アルキル基、C1-C4アルコキシ基、(C1-C4アルキル)カルボニル基、および(C1-C4アルコキシ)カルボニル基
[5]
一般式(I)で表される化合物におけるRが水素原子、塩素原子、またはメチル基であることを特徴とする[1]~[4]のいずれか1項に記載のインスリン産生細胞の作製法。
[6]
一般式(I)で表される化合物におけるRが水素原子、またはメチル基であることを特徴とする[1]~[5]のいずれか1項に記載のインスリン産生細胞の作製法。
[7]
一般式(I)で表される化合物におけるAが式(i)で表される基であって、Rが水素原子、C1-C6アルキル基、ハロゲノC1-C6アルキル基、または(C1-C6アルコキシ)カルボニル基であることを特徴とする[1]~[6]のいずれか1項に記載のインスリン産生細胞の作製法。
[8]
一般式(I)で表される化合物におけるRが水素原子、メチル基、またはトリフルオロメチル基であることを特徴とする[7]に記載のインスリン産生細胞の作製法。
[9]
一般式(I)で表される化合物におけるAが式(ii)で表される基であって、Rが水素原子、ハロゲン原子、またはC1-C6アルキル基であることを特徴とする[1]~[6]のいずれか1項に記載のインスリン産生細胞の作製法。
[10]
一般式(I)で表される化合物におけるRが水素原子、フッ素原子、またはメチル基であることを特徴とする[9]に記載のインスリン産生細胞の作製法。
[11]
一般式(I)で表される化合物におけるAが式(iii)で表される基であって、Rが水素原子、フッ素原子、またはメチル基であることを特徴とする[1]~[6]のいずれか1項に記載のインスリン産生細胞の作製法。
[12]
一般式(I)で表される化合物におけるAが式(iv)で表される基であることを特徴とする[1]~[6]のいずれか1項に記載のインスリン産生細胞の作製法。
[13]
一般式(I)で表される化合物におけるnが1であることを特徴とする[1]~[12]のいずれか1項に記載のインスリン産生細胞の作製法。
[14]
一般式(I)で表される化合物におけるRが2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソリル基、1-tert-ブトキシカルボニル-3,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-4-イル基、またはフッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基、tert-ブトキシ基、トリフルオロメトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、ベンジルオキシ基、およびフェノキシ基からなる群より独立して選択される1つもしくは2つの置換基で置換されていてもよいフェニル基であることを特徴とする[1]~[13]のいずれか1項に記載のインスリン産生細胞の作製法。
[15]
一般式(I)で表される化合物におけるRがフェニル基またはフッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基、tert-ブトキシ基、トリフルオロメトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、ベンジルオキシ基、およびフェノキシ基からなる群より選択されるいずれか1つの置換基でm位またはp位が置換されたフェニル基であることを特徴とする[1]~[13]のいずれか1項に記載のインスリン産生細胞の作製法。
[16]
一般式(I)で表される化合物が、以下の化合物群から選択されるいずれか1つであることを特徴とする[1]に記載のインスリン産生細胞の作製法。
【0016】

【化5】
[17]
多能性幹細胞が、ヒトES細胞またはヒトiPS細胞である[1]に記載のインスリン産生細胞の作製法。
[18]
三次元培養が低接着性または非接着性の培養容器内で行われることを特徴とする[1]に記載のインスリン産生細胞の作製法。
[19]
多能性幹細胞からインスリン産生細胞への分化過程が以下の工程1~5を含み、工程3、工程4および工程5からなる群から選択される少なくとも一つの工程において、一般式(I)で表される化合物またはその塩を含む培地で細胞を培養することを特徴とする[1]~[18]のいずれか1項に記載のインスリン産生細胞の作製法
工程1:多能性幹細胞から胚体内胚葉細胞を誘導する工程、
工程2:胚体内胚葉細胞から原始腸管細胞を誘導する工程、
工程3:原始腸管細胞から膵臓前駆細胞を誘導する工程、
工程4:膵臓前駆細胞から膵内分泌前駆細胞を誘導する工程、および
工程5:膵内分泌前駆細胞からインスリン産生細胞を誘導する工程。
[20]
工程3、工程4および工程5において、一般式(I)で表される化合物またはその塩を含む培地で細胞を培養することを特徴とする[19]に記載のインスリン産生細胞の作製法。
[21]
工程1において、メチオニン除去培地による前処理をした多能性幹細胞を用いることを特徴とする [19]に記載のインスリン産生細胞の作製法。
[22]
[1]~[21]のいずれか1項に記載の方法で作製された多能性幹細胞由来のインスリン産生細胞。
[23]
[1]~[21]のいずれか1項に記載の方法で作製された多能性幹細胞由来のインスリン産生細胞を含むインスリン分泌異常又はインスリン分泌不全に起因する疾患の治療薬。
[24]
インスリン分泌異常又はインスリン分泌不全に起因する疾患が、1型糖尿病又は2型糖尿病である[23]に記載の治療薬。
【0017】
本明細書は、本願の優先権の基礎である日本国特許出願、特願2019-126861の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
【発明の効果】
【0018】
一般式(I)で表される化合物またはその塩は、公知の分化誘導方法と比較し、哺乳類動物由来の多能性幹細胞をインスリン産生細胞へと分化させる際に顕著な効果を有する。したがって、この化合物を使用する本発明の方法は、インスリン産生細胞を効率的に製造することができる。また、本発明の方法は、三次元的に細胞を培養するので、二次元的培養法に比べ、より生体内に近い環境で細胞を培養することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】β細胞の分化を促進する新規小分子化合物のスクリーニング。a)SK7 mES細胞を使用したβ細胞分化を増強する化合物のスクリーニングのための培養系の概略図。b)β細胞分化促進剤のスクリーニングフローの概要。c)K-1の化学構造。d)全細胞中のPdx1-GFP+Ins+二重陽性細胞の割合に対するK-1の効果。e)インスリン1遺伝子発現レベル。d、e)ダネットの多重比較検定で、有意性がp<0.05、**p<0.01、または***p <0.001として示されている。f)γ-セクレターゼ阻害剤LY411575とのK-1の相加効果。全細胞数(DAPI+)に対するPdx1-GFP+およびインスリン+二重陽性細胞の割合を計算した。インスリン1 mRNA発現レベルは、Hprt1発現レベルによって正規化されている。値は3回の実験の平均値±SEMとして表す。有意性は、片側独立t検定で、p<0.05、**p<0.01、または***p<0.001として示されている。
図2-1】K-1とその誘導体はヒトiPS細胞由来β細胞の分化を促進する。a)ヒトiPS細胞株(Toe、RPChiPS771、およびFfl-01s01)を用いたβ細胞分化に対する化合物の有効性を評価するための培養系の概略図。b)Toe hiPS細胞の単層培養におけるDMSO対照からの全細胞数中の得られたINS+細胞数の割合における倍率変化。c)RPChiPSC771 iPS細胞を用い、分化プロトコール#1、スフェア培養下での全細胞中の産生されたINS+PDX1+二重陽性細胞の割合。d)iPS由来細胞におけるステージ4の終わり(左)またはステージ5の終わり(右)での分子マーカーの陽性。異なるタイムウィンドウ、即ち、ステージ3(S3)、ステージ4(S4)、ステージ5(S5)、ステージ3&4(S3/4)、またはステージ3、4&5(S3/4/5)においてK-3で処理された。Ff-I01s01を使用し、分化プロトコール#2の下で培養された。b)、c)およびd):有意性は、ダネットの多重比較検定で、有意性がp<0.05、**p<0.01、または***p<0.001として示されている。
図2-2】K-1とその誘導体はヒトiPS細胞由来β細胞の分化を促進する。e)(左)1μMのK-3およびその誘導体または陰性対照で処理したiPS-β細胞の時間依存的GSIS活性。処理はステージ3および4の間に行った。分化プロトコール#1の下でスフェア培養を行った。RPChiPSC771 iPS細胞を用いた。測定は、段階的な経時的方法で行った。(右)ステージ3および4の間にK-3または陰性対照で処理したiPS-β細胞のGSIS活性をバッチ式で測定した。f)(左)iPS-β細胞の時間依存的GSIS活性。iPS-β細胞を、ステージ3および4の間に、1μMのK-3、-5、-6および2μMのK-4または陰性対照で処理した。分化プロトコール#2の下でスフェア培養を行った。Ff-I01s01 iPS細胞を用いた。測定は、段階的な経時的方法で行った。(右)ステージ3および4の間にK-3または陰性対照で処理したiPS-β細胞のGSIS活性をバッチ式で測定した。g)K-3または陰性対照(DMSO)で処理したiPS-β細胞の、異なる分泌促進物質(100nMエキセンディン4、10μMグリベンクラミド、および20mM KCl)に対する応答を試験する。ダネットの多重比較検定で、有意性がp<0.05、**p<0.01、または***p<0.001として示されている。e)左およびf)左:有意性は、ダネットの多重比較検定で、有意性がp<0.05、**p<0.01、または***p<0.001として示されている。e)右およびf)右およびg):有意性は、片側独立t検定で、p<0.05、**p<0.01、または***p<0.001として示されている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明について詳細に説明する。
【0021】
本明細書中では以下に説明する用語を使用する。
【0022】
「ハロゲン原子」:フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子である。
【0023】
「C1-C6アルキル基」:炭素数1~6個の直鎖若しくは分枝鎖アルキル基であり、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、2-メチルブチル基、ネオペンチル基、1-エチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、3-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、1-メチルペンチル基、3,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、または1,2-ジメチルブチル基などである。
【0024】
「アリール基」:炭素数6~10の単環または2環式芳香族炭素環であって非芳香族ヘテロ環もしくはシクロアルカンと縮合していてもよい。具体的には、例えば、フェニル基、ナフチル基、テトラリニル基、インダニル基、クロマニル基、2,3-ジヒドロベンゾフラニル基、1,3-ベンゾジオキソリル基、2,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジオキシニル基、1,2,3,4-テトラヒドロキノリニル基、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリニル基、インドリニル基、または3,4-ジヒドロ-2H-1,4-ベンゾオキサジニル基などである。好適にはフェニル基、ナフチル基、または1,3-ベンゾジオキソリル基などである。
【0025】
「C5-C10シクロアルケニル基」:炭素数5~10の環内に二重結合を1つ有した炭化水素環であり、アルキレン基で架橋されていてもよく、具体的には、例えば、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプテニル基、またはビシクロ[2.2.2]オクテニル基などが挙げられる。
【0026】
「ヘテロシクリル基」:環を構成する原子が炭素以外に窒素、酸素、硫黄から独立して選択される1~4のヘテロ原子によって構成される4~10員環の基であって、芳香族または非芳香族であってもよく、また非芳香族の場合はアルキレン基によって架橋されていても良い。具体的には、例えば、非芳香族ヘテロシクリル基としてはアゼチジニル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、アゼパニル基、ジアゼパニル基、アゾカニル基、ピペラジニル基、ホモピペラジニル基、モルホリニル基、オキサゼパニル基、チオモルホリニル基、チアゼパニル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフリル基、ジオキサニル基、ジオキソラニル基、2-アザビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、2,5-ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、3-アザビシクロ[3.2.1]オクチル基、8-アザビシクロ[3.2.1]オクチル基、9-アザビシクロ[3.3.1]ノニル基、3,9-ジアザビシクロ[3.3.1]ノニル基、ジヒドロピラニル基、ジヒドロピロリル基、ジヒドロピリジル基、テトラヒドロピリジル基、テトラヒドロピラジル基、3,9-ジアザスピロ[5.5]ウンデカ-3-イル基、1,9-ジアザスピロ[5.5]ウンデカ-9-イル基、1,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル基、または1,4-ジオキサ-8-アザスピロ[4.5]デカ-8-イル基などが挙げられる。芳香族ヘテロシクリル基としてはフリル基、ピロリル基、チエニル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、インドリル基、イソインドリル基、インダゾリル基、プリニル基、キノリル基、イソキノリル基、またはナフチリジニル基などが挙げられる。
【0027】
「C1-C6アルコキシ基」:酸素原子に前記C1-C6アルキル基が結合した基であり、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、またはイソヘキシルオキシ基などである。
【0028】
「ハロゲノC1-C6アルキル基」:前記C1-C6アルキル基に1~7個のハロゲン原子が置換した基であり、具体的には、例えば、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、1,1-ジフルオロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、または2,2,2-トリフルオロエチル基などである。
【0029】
「ハロゲノC1-C6アルコキシ基」:前記C1-C6アルコキシ基が1~7個の前記ハロゲン原子で置換された基であり、具体的には、例えば、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、ジクロロメトキシ基、ジブロモメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、トリクロロメトキシ基、2-フルオロエトキシ基、2-ブロモエトキシ基、2-クロロエトキシ基、2-ヨードエトキシ基、2,2-ジフルオロエトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、2,2,2-トリクロロエトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、3-フルオロプロポキシ基、3-クロロプロポキシ基、4-フルオロブトキシ基、5-フルオロペンチルオキシ基、または6-フルオロヘキシルオキシ基などである。
【0030】
「ヒドロキシC1-C6アルキル基」:前記C1-C6アルキル基に1個のヒドロキシ基が置換した基であり、具体的には、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシペンチル基、またはヒドロキシヘキシル基などである。
【0031】
「C1-C6アルコキシC1-C6アルコキシ基」:前記C1-C6アルコキシ基に前記C1-C6アルコキシ基が置換した基であり、具体的には、例えば、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、メトキシプロポキシ基、エトキシメトキシ基、エトキシエトキシ基、エトキシプロポキシ基、またはプロポキシプロポキシ基などである。
【0032】
「(C1-C6アルキル)カルボニル基」:カルボニル基に前記C1-C6アルキル基が結合した基であり、具体的には、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、またはピバロイル基などが挙げられる。
【0033】
「(C1-C6アルコキシ)カルボニル基」:カルボニル基に前記C1-C6アルコキシ基が結合した基であり、具体的には、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、n-ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基、ネオペンチルオキシカルボニル基、n-ヘキシルオキシカルボニル基、またはイソヘキシルオキシカルボニル基などが挙げられる。
【0034】
「(C1-C6アルコキシ)カルボニルオキシ基」:カルボニルオキシ基に前記C1-C6アルコキシ基が結合した基であり、具体的には、例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、n-プロポキシカルボニルオキシ基、イソプロポキシカルボニルオキシ基、n-ブトキシカルボニルオキシ基、イソブトキシカルボニルオキシ基、sec-ブトキシカルボニルオキシ基、tert-ブトキシカルボニルオキシ基、n-ペンチルオキシカルボニルオキシ基、イソペンチルオキシカルボニルオキシ基、ネオペンチルオキシカルボニルオキシ基、n-ヘキシルオキシカルボニルオキシ基、またはイソヘキシルオキシカルボニルオキシ基などが挙げられる。
【0035】
「フェニルC1-C6アルコキシ基」:前記C1-C6アルコキシ基の任意の位置にフェニル基が置換した基であり、具体的には、例えば、ベンジルオキシ基、1-フェニルエチルオキシ基、2-フェニルエチルオキシ基、1-フェニルプロピルオキシ基、2-フェニルプロピルオキシ基、または3-フェニルプロピルオキシ基などが挙げられる。
【0036】
「1つもしくは2つのC1-C6アルキル基で置換されていてもよいカルバモイル基」:カルバモイル基、またはカルバモイル基に前記C1-C6アルキル基が1つもしくは2つ結合した基であり、具体的には、例えば、カルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、エチルメチルカルバモイル基、プロピルカルバモイル基、またはジプロピルカルバモイル基などである。
【0037】
「1つもしくは2つのC1-C6アルキル基で置換されていてもよいカルバモイル基が置換したC1-C6アルコキシ基」:前記C1-C6アルコキシ基に前記1つもしくは2つのC1-C6アルキル基で置換されていてもよいカルバモイル基が置換した基であり、具体的には、例えば、カルバモイルメチルオキシ基、カルバモイルエチルオキシ基、メチルカルバモイルメチルオキシ基、メチルカルバモイルエチルオキシ基、ジメチルカルバモイルメチルオキシ基、ジメチルカルバモイルエチルオキシ基、エチルカルバモイルメチルオキシ基、エチルカルバモイルエチルオキシ基、ジエチルカルバモイルメチルオキシ基、ジエチルカルバモイルエチルオキシ基、エチルメチルカルバモイルメチルオキシ基、エチルメチルカルバモイルエチルオキシ基、プロピルカルバモイルメチルオキシ基、プロピルカルバモイルエチルオキシ基、ジプロピルカルバモイルメチルオキシ基、またはジプロピルカルバモイルエチルオキシ基などである。
【0038】
「1つもしくは2つのC1-C6アルキル基で置換されたスルファモイル基」:スルファモイル基に前記C1-C6アルキル基が1つもしくは2つ結合した基であり、具体的には、例えばメチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、エチルスルファモイル基、エチルメチルスルファモイル基、ジエチルスルファモイル基、プロピルスルファモイル基、またはジプロピルスルファモイル基などである。
【0039】
「C1-C4アルキル基」:炭素数1~4個の直鎖若しくは分枝鎖アルキル基であり、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、またはtert-ブチル基などである。
【0040】
「C1-C4アルコキシ基」:酸素原子に前記C1-C4アルキル基が結合した基であり、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、イソブトキシ基、またはtert-ブトキシ基などである。
【0041】
「C1-C2アルキル基」:炭素数1または2個の直鎖アルキル基であり、メチル基およびエチル基である。
【0042】
「ハロゲノC1-C2アルキル基」:前記C1-C2アルキル基に1~5個のハロゲン原子が置換した基であり、具体的には、例えば、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、1,1-ジフルオロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、または2,2,2-トリフルオロエチル基などである。
【0043】
「C1-C2アルコキシ基」:酸素原子に前記C1-C2アルキル基が結合した基であり、具体的には、メトキシ基およびエトキシ基である。
【0044】
「ハロゲノC1-C2アルコキシ基」:前記C1-C2アルコキシ基が1~5個の前記ハロゲン原子で置換された基であり、具体的には、例えば、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、ジクロロメトキシ基、ジブロモメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、トリクロロメトキシ基、2-フルオロエトキシ基、2-ブロモエトキシ基、2-クロロエトキシ基、2-ヨードエトキシ基、2,2-ジフルオロエトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、2,2,2-トリクロロエトキシ基、またはペンタフルオロエトキシ基などである。
【0045】
「ヒドロキシC1-C4アルキル基」:前記C1-C4アルキル基に1個のヒドロキシ基が置換した基であり、具体的には、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、またはヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基などである。
【0046】
「C1-C2アルコキシC1-C2アルコキシ基」:前記C1-C2アルコキシ基に前記C1-C2アルコキシ基が置換した基であり、具体的には、例えば、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシメトキシ基、またはエトキシエトキシ基などである。
【0047】
「(C1-C4アルキル)カルボニル基」:カルボニル基に前記C1-C4アルキル基が結合した基であり、具体的には、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、またはピバロイル基などが挙げられる。
【0048】
「(C1-C4アルコキシ)カルボニル基」:カルボニル基に前記C1-C4アルコキシ基が結合した基であり、具体的には、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、またはtert-ブトキシカルボニル基などが挙げられる。
【0049】
「(C1-C4アルコキシ)カルボニルオキシ基」:カルボニルオキシ基に前記C1-C4アルコキシ基が結合した基であり、具体的には、例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、n-プロポキシカルボニルオキシ基、イソプロポキシカルボニルオキシ基、n-ブトキシカルボニルオキシ基、イソブトキシカルボニルオキシ基、sec-ブトキシカルボニルオキシ基、またはtert-ブトキシカルボニルオキシ基などが挙げられる。
【0050】
「フェニルC1-C4アルコキシ基」:前記C1-C4アルコキシ基の任意の位置にフェニル基が置換した基であり、具体的には、例えば、ベンジルオキシ基、1-フェニルエチルオキシ基、2-フェニルエチルオキシ基、1-フェニルプロピルオキシ基、2-フェニルプロピルオキシ基、または3-フェニルプロピルオキシ基などが挙げられる。
【0051】
「1つもしくは2つのC1-C4アルキル基で置換されていてもよいカルバモイル基」:カルバモイル基、またはカルバモイル基に前記C1-C4アルキル基が1つもしくは2つ結合した基であり、具体的には、例えば、カルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、エチルメチルカルバモイル基、プロピルカルバモイル基、またはジプロピルカルバモイル基などである。
【0052】
「1つもしくは2つのC1-C4アルキル基で置換されていてもよいカルバモイル基が置換したC1-C2アルコキシ基」:前記C1-C2アルコキシ基に前記1つもしくは2つのC1-C4アルキル基で置換されていてもよいカルバモイル基が置換した基であり、具体的には、例えば、カルバモイルメチルオキシ基、カルバモイルエチルオキシ基、メチルカルバモイルメチルオキシ基、メチルカルバモイルエチルオキシ基、ジメチルカルバモイルメチルオキシ基、ジメチルカルバモイルエチルオキシ基、エチルカルバモイルメチルオキシ基、エチルカルバモイルエチルオキシ基、ジエチルカルバモイルメチルオキシ基、ジエチルカルバモイルエチルオキシ基、エチルメチルカルバモイルメチルオキシ基、エチルメチルカルバモイルエチルオキシ基、プロピルカルバモイルメチルオキシ基、プロピルカルバモイルエチルオキシ基、ジプロピルカルバモイルメチルオキシ基、またはジプロピルカルバモイルエチルオキシ基などである。
【0053】
「1つもしくは2つのC1-C4アルキル基で置換されたスルファモイル基」:スルファモイル基に前記C1-C4アルキル基が1つもしくは2つ結合した基であり、具体的には、例えばメチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、エチルスルファモイル基、エチルメチルスルファモイル基、ジエチルスルファモイル基、プロピルスルファモイル基、またはジプロピルスルファモイル基などである。
【0054】
「幹細胞」:自己複製能および多分化能を有する細胞であって、例えば、ES細胞、iPS細胞、成体幹細胞などが挙げられる。
【0055】
「多能性幹細胞」:生体の種々の細胞に分化する能力を有する細胞であって、好ましくはES細胞またはiPS細胞である。
【0056】
「インスリン産生細胞」:高血糖などに反応してインスリンを分泌する細胞であって、グルカゴンまたはソマトスタチンなどの他の膵ホルモンに比べてインスリン発現能力が優位に優れている細胞のことである。
【0057】
「三次元培養」:細胞が培養容器に接着しない条件で培養することで、細胞同士の接着により形成されるスフェア(多能性幹細胞では、「胚様体」とも呼ばれる。)の状態で培養することを意味し、本明細書中では、「スフェア培養」と表記する場合もある。
【0058】
<インスリン細胞の製造法>
本発明は、多能性幹細胞をインスリン産生細胞に分化させることによりインスリン産生細胞を作製する方法であって、一般式(I)であらわされる化合物またはその塩を含む培地で細胞を三次元培養する工程を含むことを特徴とするインスリン産生細胞の作製法を提供する。一般式(I)で表される化合物またはその塩のインスリン産生細胞への分化促進効果は、後述の参考例1や実施例1の方法により確認することができる。
【0059】
対象とする多能性幹細胞は、内胚葉細胞への分化能を有する幹細胞であれば、さまざまな幹細胞を採用できるが、好ましくはES細胞またはiPS細胞であり、より好ましくはiPS細胞である。多能性幹細胞の由来は、哺乳動物であれば、さまざまなものを採用することができるが、好ましくは、ヒト、マウス、ラット、イヌやネコなどの愛玩動物、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジなどの家畜動物であり、より好ましくはヒトである。
【0060】
多能性幹細胞からインスリン産生細胞への分化過程は、例えば、非特許文献4に記載されるように、5段階に分けられる。すなわち、多能性幹細胞からSox17陽性の胚体内胚葉細胞が誘導されるステージ1、胚体内胚葉細胞からFoxa2陽性の原始腸管細胞が誘導されるステージ2、原始腸管細胞からPDX1陽性の膵臓前駆細胞が誘導されるステージ3、膵臓前駆細胞からNgn3陽性の膵内分泌前駆細胞が誘導されるステージ4、および、膵内分泌前駆細胞から最終的にインスリン産生細胞が誘導されるステージ5である。場合によっては、ステージ1が更に細分化し、中内胚葉細胞の状態となるステージ1-1とその後胚体内胚葉細胞が誘導されるステージ1-2に、ステージ2が更に分化培地中の亜鉛濃度の違いによりステージ2-1とステージ2-2に、ステージ5が更に分化培地中のレチノイン酸濃度の違いによりステージ5-1とステージ5-2に、それぞれ細分化される場合がある。本明細書において、細胞の分化段階の表示にはこれらのステージにより表示する場合がある。
【0061】
これらの培養に用いられる培地としては、通常の細胞培養に用いられる培地であれば特に限定されず、さまざまな培地を用いることができるが、例えばDMEM培地、α―MEM培地、RPMI培地、StemFit培地(味の素、AK03、AK03Nなど)、Essential8(ThermoFisher,A1517001)、TeSR1(Stem Cell Technologies,85850)、NutriStem(stemgent,01-0005)、CMRL(ThermoFisher,11530037)などを採用することができる。培地には、血清を添加しても良く、無血清培地に、KO―SerumやB-27サプリメントのような血清代替物を添加して用いることができる。また、培地には、グルコースなどの糖類、βメルカプトエタノールやビタミンCなどの抗酸化剤、必須アミノ酸や非必須アミノ酸(NEAA)などの各種アミノ酸類、Ca2+、Mg2+、Zn2+などの各種金属イオン源、EGF、FGF、KGF、IGFなどの各種成長因子など、通常の細胞培養に用いられる様々な培養補助剤が添加されていても良い。
【0062】
このような分化誘導またはその前処理の培養において、通常の培地組成から、アミノ酸や金属イオンなど、特定の成分の濃度を低減させ、または除去した培地を用いることもできる。例えば、メチオニン除去または低減培地は、多能性幹細胞を短時間(例えば、1時間、5時間、10時間、24時間など)の培養処理に用い、処理後の細胞を分化誘導する。また、別の態様においては、亜鉛イオン濃度を低減(例えば、1μM以下、好ましくは0.5μM以下)または除去した培地を分化培養工程前半のみ(例えば、ステージ1またはステージ2の少なくとも一部、好ましくはステージ1を含む期間、より好ましくはステージ1のみ、ステージ1~ステージ2の前半部、あるいは、ステージ1~ステージ2の全期間)に用いても良い。このような特定の成分の濃度を調整した培地は、公知の培地組成の情報に基づき、所望の成分を添加しない、または、添加量を低減させることによって作製することができる。また、所望の成分を含有しない培地を入手し、所望の濃度となるように特定の成分を添加することもできる。メチオニン低減または除去培地については例えばWO2015/125662などに基づき作製することができる。実施例において亜鉛除去培地として使用されているAKM培地については、味の素株式会社バイオ・ファイン研究所から入手した。
【0063】
多能性幹細胞からインスリン産生細胞への分化過程では、各ステージに適したシグナル誘導のための添加剤を含有する培地で培養することによって、分化段階が進行する。以下に、各ステージの培地に用いる添加剤を例示する。このような添加剤は、適切な種類を選択して用いてもよく、該当ステージ用の全ての添加剤を用いても良い。また、前後のステージ用の添加剤を用いても良い。
【0064】
ステージ1では、アクチビン受容体およびWntシグナルの活性化から選択される少なくとも一つが必要であり、用いる培地の添加剤としては、通常、アクチビン受容体アゴニスト(例えば、アクチビンA)、WNTシグナルの活性化因子(例えば、Wnt3AのようなWntタンパク質、GSK3β阻害剤(例えば、CHIR990221)など)などが用いられる。ステージ1の培養期間は1~4日間であり、好ましくは2~3日間である。GSK3β阻害剤は、ステージ1の期間を通じて添加しても良く、ステージ1-1にのみ添加し、その後ステージ1-2ではGSK3β阻害剤を低減、または含まないステージ1用培地を使用しても良い。ステージ1用培地の例としては、10~1000ng/mL(好ましくは100ng/mL)のアクチビンA、および/または、1~10μM(好ましくは3μM)のCHIR99021を含む培地である。
【0065】
ステージ2では、FGF受容体シグナルの活性化が必要であり、用いる培地の添加剤としては、通常、FGF受容体アゴニスト(例えば、FGF10、KGF)などが用いられる。また、添加剤として、ソニックヘッジホッグ阻害剤(例えば、KAAD-シクロパミン、SANT-l)を使用することもできる。ステージ2の培養期間は、1~7日間であり、好ましくは2~6日間である。ソニックヘッジホッグ阻害剤は、ステージ2の期間を通じて添加されても良く、ステージ2の前半のみに添加されても良い。ステージ2用培地の例は、5~500ng/mL(好ましくは50ng/mL)のFGF10またはKGF、および/または、0.05~5μM(好ましくは0.25μM)のSANT1を含む培地である。
【0066】
ステージ3では、レチノイン酸受容体シグナルの活性化、BMP受容体シグナルの阻害、ソニックヘッジホッグシグナルの阻害、及びFGF受容体シグナルの活性化から選択される少なくとも一つが必要であり、用いる培地の添加剤としては、通常、レチノイン酸受容体アゴニスト(例えば、レチノイン酸)、ソニックヘッジホッグ阻害剤(例えば、KAAD-シクロパミン、SANT-l)、BMPシグナル阻害因子(例えば、Noggin、LDN193189)、プロテインキナーゼC活性化剤(例えば、インドラクタムV)などが用いられる。また、添加剤として、TGFβ受容体キナーゼ阻害剤(例えば、SB431542)を使用することもできる。ステージ3の培養期間は、1~8日間、好ましくは2~6日間である。ステージ3用培地の例としては、0.05~5μM(好ましくは0.15μM)のSANT1、0.1~10μM(好ましくは2μM)のレチノイン酸、および、0.01~1μM(好ましくは0.1μM)のLDN193189のうち少なくとも一つを含む培地、0.05~5μM(好ましくは0.25μM)のSANT1、0.1~10μM(好ましくは2μM)のレチノイン酸、5~500ng/mL(好ましくは50ng/mL)のKGFまたはFGF10、および、5~500nM(好ましくは50nM)のインドラクタムVのうち少なくとも1つを含む培地などである。
【0067】
ステージ4では、BMP受容体シグナルの阻害、ソニックヘッジホッグシグナルの阻害、FGF受容体シグナルの活性化、及びレチノイン酸受容体シグナルの活性化から選択される少なくとも一つが必要であり、用いる培地の添加剤としては、通常、BMPシグナル阻害因子(例えば、Noggin、LDN193189)、ソニックヘッジホッグ阻害剤(例えば、SANT-l)などが用いられる。また、添加剤として、プロテインキナーゼC活性化剤(例えば、インドラクタムV)、TGFβ受容体キナーゼ阻害剤(例えば、ALK5 inhibitor II)を使用することもできる。ステージ4の培養期間は、1~7日間、好ましくは2~5日間である。ステージ4用培地の例としては、0.5~50μM(好ましくは5μM)のALK5阻害剤(Calbiochem, 616452)、0.01~10μM(好ましくは0.3μM)のインドラクタムV、および、0.01~1μM(好ましくは0.1μM)のLDN193189、のうち少なくとも一つを含む培地、0.05~5μM(好ましくは0.25μM)のSANT1、0.01~1μM(好ましくは0.1μM)のレチノイン酸、5~500ng/mL(好ましくは50ng/mL)のKGF又FGF10、および、10~1000nMM(好ましくは100nMのLDN193189のうち少なくとも一つを含む培地、などである。
【0068】
ステージ5では、TGFβ受容体シグナルの阻害、NOTCHシグナルの阻害、甲状腺ホルモン受容体シグナルの活性化、及びレチノイン酸受容体シグナルの活性化から選択される少なくとも一つが必要であり、用いる培地の添加剤としては、通常、TGFβ受容体キナーゼ阻害剤(例えば、ALK5 inhibitor II)、γ-セクレターゼ阻害剤(例えば、DAPT)、甲状腺ホルモンT3、EGFRアゴニスト(例えば、EGF)、レチノイン酸受容体アゴニスト(例えば、レチノイン酸)、ビタミンCなどが用いられる。また、添加剤として、GLP-1受容体アゴニスト(例えば、GLP-1ペプチド、エキセンジン-4など)、ニコチンアミド、アデニリル酸シクラーゼの活性化剤(例えば、Forskolin)、グルココルチコイド受容体アゴニスト(例えば、Dexamethasone)を使用することもできる。ステージ5の培養期間は、5~20日間、好ましくは7~15日間である。ステージ5用培地の例としては、5~500ng/mL(好ましくは50ng/mL)のエキセンディン4および/または1~100nM(好ましくは10mM)のニコチンアミド、を含む培地、0.5~100μM(好ましくは10μM)のALK5阻害剤(Calbiochem, 616452)、0.01~1μM(好ましくは0.1μM)のレチノイン酸、1~100μM(好ましくは10μM)のDAPT、1~500ng/mL(好ましくは33.3ng/mL)のEGF、および、0.1~10μM(好ましくは1μM)のT3、のうち少なくとも一つを含む培地、前記のレチノイン酸の濃度を低減(例えば、0.05μM以下、好ましくは、0.025μM)させた培地などである。レチノイン酸の濃度低減培地は、ステージ5の後半において使用するのが好ましい。
【0069】
本発明のインスリン産生細胞の作製法は、一般式(I)で表される化合物またはその塩を含有する培地中で細胞を三次元培養する工程を含む。三次元培養の方法は当業者が通常用いる手法を適宜採用することができるが、低接着性または非接着性の培養容器を使用した培養法、攪拌培養法、ハンギングドロップ培養法、ハイドロゲルや多孔性スキャフォールドを用いた培養法などを例示することができる。低接着性または非接着性の培養容器としては、通常の培養容器の底面または側面を、細胞接着を阻害するポリマー系試薬等でコーティングして使用しても良く、基材に細胞接着性が低い素材が採用された培養容器を使用することもできる。容器の形状としては、様々なものを使用することができるが、丸底の容器を用いることで、 細胞のスフェア形成を促進することができる。平底容器を採用する場合、シェイカー上で培養することによってスフェア形成を促進することができる。スピナーフラスコや培養リアクタを用いた攪拌培養によっても、スフェア形成を促進することができ、大量培養への適応が可能である。
【0070】
本発明のインスリン産生細胞の作製法では、多能性幹細胞からインスリン産生細胞への分化は、通常、全工程にわたって三次元培養を行うが、一部の工程(例えば、多能性幹細胞から胚体内胚葉細胞を誘導する工程、胚体内胚葉細胞から原始腸管細胞を誘導する工程、原始腸管細胞から膵臓前駆細胞を誘導する工程、膵臓前駆細胞から膵内分泌前駆細胞を誘導する工程、または膵内分泌前駆細胞からインスリン産生細胞を誘導する工程のうち一つまたは複数の工程)においてのみ三次元培養を行ってもよい。三次元培養を一部の工程に採用する場合、分化過程の後期(例えば、原始腸管細胞以降)とするのが望ましい。一般式(I)で表される化合物またはその塩は、三次元培養が採用される工程の少なくとも一部において添加されればよく、全てに添加される必要は無く、また、三次元培養以外の工程(通常は接着培養)において添加されることを妨げない。
【0071】
一般式(I)で表される化合物またはその塩は、インスリン産生細胞への分化過程において、例えば、原始腸管細胞以降の分化段階の三次元培養工程に添加されることによって、インスリン産生細胞への分化を顕著に促進することができる。一般式(I)で表される化合物は、多能性幹細胞からインスリン産生細胞への分化過程のどの工程において添加してもよいが、好ましくは、多能性幹細胞から誘導された原始腸管細胞、膵臓前駆細胞および/または膵内分泌前駆細胞の培養時に添加する。上記の分化段階においては、ステージ3からステージ5に相当し、いずれかひとつのステージのみに添加しても良く、2つのステージ、または3つすべてのステージで添加しても良いが、ステージ3からステージ5のすべてに添加されることが好ましい。
【0072】
一般式(I)で表される化合物またはその塩は、上記の各ステージ用の添加剤の代わりに添加してもよく、また追加して添加されても良い。一般式(I)で表される化合物またはその塩は固体状の化合物をそのまま、もしくは粉末状にして、またはジメチルスルホキシドなどの有機溶媒に溶解して培地に添加することができる。その添加量は特に限定されないが、多能性幹細胞からインスリン産生細胞へと効率的に分化が進むように当業者によって設定される。本発明のいくつかの実施形態において、一般式(I)で表される化合物は1ng/mL~5mg/mL、好ましくは10ng/mL~5mg/mL、より好ましくは50ng/mL~5mg/mL、さらにより好ましくは100ng/mL~1mg/mL培地中に存在するように添加される。
【0073】
本発明のインスリン産生細胞の作製方法としては、例えば、以下に示す方法が挙げられ、具体的には実施例1に採用されたプロトコール#1およびプロトコール#2を例示することができる。以下のプロトコールにおいて、各ステージに用いられる培地は、下に例示されるがこれらに限定されるものではない。
【0074】
[細胞の処理・培養方法]
前処理:多能性幹細胞を未分化維持培地(例えば、StemFit AK03N培地(味の素))中1×10細胞/mLの濃度で低付着6ウェルプレートに移し、ロータリーシェーカー(95 rpm)上で24時間以上培養する。以降の培養工程にも、同条件で三次元培養を適用する。分化誘導開始日に、培地を、AK03Nベースのメチオニン除去培地(KA01,味の素)に交換し、細胞を5時間培養する。
ステージ1;多能性幹細胞(前処理されていても良い)を、一般式(I)で表される化合物またはその塩を含んでいても良いステージ1用培地で1~4日間培養して、胚体内胚葉細胞を誘導する。好ましくは、分化培地1-1またはM1-1 AKM培地で24時間培養した後、培地を分化培地1-2またはM1-2 AKM培地に交換して1~2日間培養する。
ステージ2:胚体内胚葉細胞を含む培養物を、一般式(I)で表される化合物またはその塩を含んでいても良いステージ2用培地で2~6日間培養し、原始腸管細胞を誘導する。好ましくは、分化培地2、M2 AKM培地またはS2培地で2~3日間培養する。別の例としては、亜鉛濃度を低減させたステージ2用培地(例えば、M2 AKM培地)で2日間培養し、その後通常の亜鉛濃度のステージ2用培地(例えば、S2培地、分化培地2)で2~3日間培養する。
ステージ3:原始腸管細胞を含む培養物を、一般式(I)で表される化合物またはその塩を含んでいても良いステージ3用培地で2~8日間培養して膵臓前駆細胞を誘導する。好ましくは、分化培地3で5~7日間またはS3培地で2~4日間培養する。
ステージ4:膵臓前駆細胞を含む培養物を、一般式(I)で表される化合物またはその塩を含んでいても良いステージ4用培地で1~7日間培養し、膵内分泌前駆細胞を誘導する。好ましくは分化培地4で2~3日間、または、S4培地で4~6日間培養する。
ステージ5:膵内分泌前駆細胞を含む培養物を、一般式(I)で表される化合物またはその塩を含んでいても良いステージ5用培地で5~20日間培養し、インスリン産生細胞を誘導する。好ましくは、分化培地5で10~15日間培養する。別の態様としては、0.1μM以上のレチノイン酸を含むステージ5用培地(例えば、S5-1培地)で3~5日間培養し、その後0.05μM以下の低濃度のレチノイン酸を含むステージ5用培地(例えば、S5-2培地)で2~4日間培養する。
【0075】
[培地]
AKM培地はインスリンおよびZn2+除去StemFit Basic 03培地(味の素)である。
(ステージ1用培地例)
分化培地1-1;DMEM高グルコース、L-Gln、NEAA、0.01mMのβ-メルカプトエタノール、100ng/mLのアクチビンA、B27サプリメント、3μMのCHIR99021
分化培地1-2:DMEM高グルコース、L-Gln、NEAA、0.01mMのβ-メルカプトエタノール、100ng/mLのアクチビンA、B27サプリメント
M1-1 AKM培地:100ng/mLのアクチビンA、3μMのCHIR990221を添加し、100ng/mLのIGF1および0.5μMのZnを補充したAKM培地。
M1-2 AKM培地:100ng/mLアクチビンAを添加し、100ng/mLのIGF1および0.5μMのZnを補充したAKM培地。
(ステージ2用培地例)
分化培地2:RPMI、L-Gln、NEAA、0.01mMのβ-メルカプトエタノール、インスリンを除いたB27サプリメント、50ng/mLのFGF10、0.25μMのSANT1。
M2 AKM培地:50ng/mLのFGF10、250nMのSANT1を添加し、0.5μMのZnを補充したAKM培地。
S2培地:50ng/mLのKGFと44μg/mLのビタミンCを補充したStemFit Basic 03。
(ステージ3用培地例)
分化培地3:DMEM高グルコース、L-Gln、NEAA、0.01mMのβ-メルカプトエタノール、0.15μMのSANT1、2μMのレチノイン酸、0.1μMのLDN193189、B27サプリメント。
S3培地:50ng/mLのKGF、50nMのインドラクタムV、2μMのレチノイン酸、250nMのSANT1、44μg/mLのビタミンCを補充したStemFit Basic 03。
(ステージ4用培地例)
分化培地4:DMEM高グルコース、L-Gln、NEAA、0.01mMのβ-メルカプトエタノール、5μMのALK5阻害剤(Calbiochem, 616452)、0.3μMのインドラクタムV、0.1μMのLDN193189、B27サプリメント
S4培地:50ng/mLのKGF、100nMのレチノイン酸、250nMのSANT1、44μg/mLのビタミンC、100nMのLDN193189を補充したStemFit Basic 03。
(ステージ5用培地例)
分化培地5:KO DMEM/F12 、L-Gln、NEAA、0.01mMのβ-メルカプトエタノール、50ng/mLのエキセンディン4、10mMのニコチンアミド、10μMのZnSO、1mMのN-アセチル-L-システイン、B27サプリメント。
S5-1培地:10μMのALK5阻害剤、10μMのDAPT、33.3ng/mLのEGF、100nMのレチノイン酸、1μMのT3、44μg/mLのビタミンCを補充したStemFit Basic 03。
S5-2培地:10μMのALK5阻害剤、10μMのDAPT、33.3 ng/mLのEGF、25 nMのレチノイン酸、1μMのT3を補充したStemFit Basic 03。
【0076】
分化速度および細胞機能に対する化合物の有効性を評価する場合、試験化合物および陰性対照(0.01%DMSO)をステージ3および4の間(5日目~13日目)に処理し、インスリン、NKX6.1、およびPDX1の陽性に対する効果を確認するために、14日目および21日目に免疫細胞化学染色を実施した。GSISは21日目に実施した。
【0077】
<化合物>
本発明における一般式(I)で表される化合物の好ましい態様について以下に説明する。
【0078】
本発明における置換基Rとしては水素原子、ハロゲン原子、C1-C6アルキル基を挙げることができる。好適には水素原子、塩素原子、臭素原子、またはメチル基であり、より好適には水素原子、塩素原子、またはメチル基である。Rの置換位置としては任意の位置をとることができ、以下に示す(I-i)~(I-iii)をとり得る。
【0079】

【化6】
【0080】
本発明における置換基Rとしては水素原子またはC1-C6アルキル基を挙げることができる。好適には水素原子またはC1-C2アルキル基であり、より好適には水素原子またはメチル基である。
【0081】
本発明における置換基Rとしては置換基群αより独立して選択される1~4の置換基で置換されていてもよいアリール基、置換基群αより独立して選択される1~4の置換基で置換されていてもよいC5-C10シクロアルケニル基、または置換基群αより独立して選択される1~4の置換基で置換されていてもよいヘテロシクリル基が挙げられる。好適にはナフチル基、1,3-ベンゾジオキソリル基、2,2-ジハロゲノ-1,3-ベンゾジオキソリル基、C5-C10シクロアルケニル基、置換基群α1より独立して選択される1つもしくは2つの置換基で置換されていてもよいフェニル基、または置換基群α1より独立して選択される1つもしくは2つの置換基で置換されていてもよい5もしくは6員環ヘテロシクリル基であり、より好適にはナフチル基、1,3-ベンゾジオキソリル基、2,2-ジハロゲノ-1,3-ベンゾジオキソリル基、C5-C10シクロアルケニル基、置換基群α2より独立して選択される1つもしくは2つの置換基で置換されていてもよいフェニル基、または置換基群γ2より独立して選択される1つもしくは2つの置換基で置換されていてもよい5もしくは6員環ヘテロシクリル基である。さらにより好適にはナフチル基、1,3-ベンゾジオキソリル基、2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソリル基、C5-C8シクロアルケン-1-イル基、置換基群α3より独立して選択される1つもしくは2つの置換基で置換されていてもよいフェニル基、または置換基群γ3より独立して選択される1つもしくは2つの置換基で置換されていてもよい5もしくは6員環ヘテロシクリル基であり、特に2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソリル基、1-tert-ブトキシカルボニル-3,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-4-イル基、またはフッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基、tert-ブトキシ基、トリフルオロメトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、ベンジルオキシ基、およびフェノキシ基からなる群より独立して選択される1つもしくは2つの置換基で置換されていてもよいフェニル基が好ましい。さらに特に好適には、フェニル基またはフッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基、tert-ブトキシ基、トリフルオロメトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、ベンジルオキシ基、およびフェノキシ基からなる群より選択されるいずれか1つの置換基でm位またはp位が置換されたフェニル基である。各置換基群α~γに関しては以下の通りである。
【0082】
本発明における置換基群αとしてはハロゲン原子、シアノ基、カルボキシ基、C1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシ基、ハロゲノC1-C6アルキル基、ハロゲノC1-C6アルコキシ基、ヒドロキシC1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシC1-C6アルコキシ基、(C1-C6アルキル)カルボニル基、(C1-C6アルコキシ)カルボニル基、(C1-C6アルコキシ)カルボニルオキシ基、フェニルC1-C6アルコキシ基、非芳香族ヘテロシクリル基、1つもしくは2つのC1-C6アルキル基で置換されていてもよいカルバモイル基、1つもしくは2つのC1-C6アルキル基で置換されていてもよいカルバモイル基が置換したC1-C6アルコキシ基、1つもしくは2つのC1-C6アルキル基で置換されたスルファモイル基、置換基群βより独立して選択される1~4の置換基で置換されていてもよいフェノキシ基、置換基群βより独立して選択される1~4の置換基で置換されていてもよいフェニル基、および置換基群βより独立して選択される1~4の置換基で置換されていてもよいベンゾイル基が挙げられる。好適には置換基群α1:ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシ基、フェノキシ基、ベンゾイル基、C1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシ基、ハロゲノC1-C6アルキル基、ハロゲノC1-C6アルコキシ基、ヒドロキシC1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシC1-C6アルコキシ基、(C1-C6アルキル)カルボニル基、(C1-C6アルコキシ)カルボニル基、(C1-C6アルコキシ)カルボニルオキシ基、フェニルC1-C6アルコキシ基、5もしくは6員環非芳香族ヘテロシクリル基、1つもしくは2つのC1-C6アルキル基で置換されていてもよいカルバモイル基、1つもしくは2つのC1-C6アルキル基で置換されていてもよいカルバモイル基が置換したC1-C6アルコキシ基、1つもしくは2つのC1-C6アルキル基で置換されたスルファモイル基、および置換基群β1より独立して選択される1つもしくは2つの置換基で置換されていてもよいフェニル基であり、より好適には置換基群α2:ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシ基、フェノキシ基、ベンゾイル基、C1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシ基、ハロゲノC1-C6アルキル基、ハロゲノC1-C6アルコキシ基、ヒドロキシC1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシC1-C6アルコキシ基、(C1-C6アルキル)カルボニル基、(C1-C6アルコキシ)カルボニル基、(C1-C6アルコキシ)カルボニルオキシ基、フェニルC1~C6アルコキシ基、5もしくは6員環非芳香族ヘテロシクリル基、1つもしくは2つのC1-C6アルキル基で置換されていてもよいカルバモイル基、1つもしくは2つのC1-C6アルキル基で置換されていてもよいカルバモイル基が置換したC1-C6アルコキシ基、1つもしくは2つのC1-C6アルキル基で置換されたスルファモイル基、および置換基群β2より独立して選択される1つもしくは2つの置換基で置換されていてもよいフェニル基である。さらにより好適には置換基群α3:ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシ基、フェノキシ基、ベンゾイル基、C1-C4アルキル基、C1-C4アルコキシ基、ハロゲノC1-C2アルキル基、ハロゲノC1-C2アルコキシ基、ヒドロキシC1-C4アルキル基、C1-C2アルコキシC1-C2アルコキシ基、(C1-C4アルキル)カルボニル基、(C1-C4アルコキシ)カルボニル基、(C1-C4アルコキシ)カルボニルオキシ基、フェニルC1-C4アルコキシ基、モルホリン-1-イル基、1つもしくは2つのC1-C4アルキル基で置換されていてもよいカルバモイル基、1つもしくは2つのC1-C4アルキル基で置換されていてもよいカルバモイル基が置換したC1-C2アルコキシ基、1つもしくは2つのC1-C4アルキル基で置換されたスルファモイル基、および置換基群β3より独立して選択される1つもしくは2つの置換基で置換されていてもよいフェニル基であり、特に好適にはフッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基、tert-ブトキシ基、トリフルオロメトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、ベンジルオキシ基、またはフェノキシ基である。
【0083】
本発明における置換基群βとしてはハロゲン原子、C1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシ基、ハロゲノC1-C6アルキル基、ハロゲノC1-C6アルコキシ基、および(C1-C6アルコキシ)カルボニル基が挙げられる。好適には置換基群β1:ハロゲン原子、C1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシ基、および(C1-C6アルコキシ)カルボニル基であり、より好適には置換基群β2:ハロゲン原子、C1-C6アルキル基、およびC1-C6アルコキシ基である。さらにより好適には置換基群β3:フッ素原子、塩素原子、C1-C4アルキル基、およびC1-C4アルコキシ基であり、特に好適にはメチル基、またはメトキシ基である。
【0084】
本発明における置換基群γとしては置換基群γ2:ハロゲン原子、C1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシ基、(C1-C6アルキル)カルボニル基、および(C1-C6アルコキシ)カルボニル基が挙げられる。好適には置換基群γ3:ハロゲン原子、C1-C4アルキル基、C1-C4アルコキシ基、(C1-C4アルキル)カルボニル基、および(C1-C4アルコキシ)カルボニル基であり、より好適にはフッ素原子、塩素原子、メチル基、イソブトキシ基、またはtert-ブトキシカルボニル基である。
【0085】
本発明におけるnとしては0または1の数値を取り得る。n=0のとき、一般式(I)で表される化合物は以下の式(II):
【0086】

【化7】
【0087】
[式中、R~Rは上記と同義を示す]
で表されるジヒドロピロリジノン(dihydropyrrolizinone)構造を有する化合物であり、n=1のとき、一般式(I)で表される化合物は以下の式(III):
【0088】

【化8】
【0089】
[式中、R~Rは上記と同義を示す]
で表されるジヒドロインドリジノン構造を有する化合物である。本発明におけるnとして好適にはn=1であり、ジヒドロインドリジノン構造を有する化合物がより好ましい。
【0090】
本発明におけるAとしては以下の一般式(i)~(iv):
【0091】
【化9】
【0092】
[式中、・、*、R、R、およびYは上記と同義を示す]
で表される基である。
【0093】
Aが一般式(i)で表される基を有するとき、一般式(I)で表される化合物は以下の式(IV):
【0094】

【化10】
【0095】
[式中、R~R、およびnは上記と同義を示す]
で表される化合物である。
【0096】
Aが一般式(ii)で表される基を有するとき、一般式(I)で表される化合物は以下の式(V):
【0097】

【化11】
【0098】
[式中、R~R、R、n、およびYは上記と同義を示す]
で表される化合物である。Rの置換位置としては任意の位置を取ることができ、以下に示す(V-i)~(V-iii)をとり得る。
【0099】

【化12】
【0100】
Aが一般式(iii)で表される基を有するとき、一般式(I)で表される化合物は以下の式(VI):
【0101】

【化13】
【0102】
[式中、R~R、R、およびnは上記と同義を示す]
で表される化合物である。Rの置換位置としては任意の位置を取ることができ、以下に示す(VI-i)~(VI-iii)をとり得る。
【0103】

【化14】
【0104】
Aが一般式(iv)で表される基を有するとき、一般式(I)で表される化合物は以下の式(VII):
【0105】

【化15】
【0106】
[式中、R~R、およびnは上記と同義を示す]
で表される化合物である。
【0107】
本発明における置換基Rとしては水素原子、C1-C6アルキル基、ハロゲノC1-C6アルキル基、または(C1-C6アルコキシ)カルボニル基が挙げられる。好適には水素原子、C1-C4アルキル基、またはハロゲノC1-C2アルキル基であり、より好適には水素原子、メチル基、またはトリフルオロメチル基である。
【0108】
本発明における置換基Rとしては水素原子、ハロゲン原子、またはC1-C6アルキル基が挙げられる。好適には水素原子、フッ素原子またはメチル基である。
【0109】
本発明におけるYとしてはNまたはCHが挙げられ、YがNのとき、Aにおける(ii)はピリジン環を表し、YがCHのとき、Aにおける(ii)はベンゼン環を表す。当該Aの(ii)におけるYとしては好適にはCHである。
【0110】
一般式(I)を有する化合物は、好適には、合成例に記載の化合物であり、より好適には、以下の化合物である。
【0111】
8-オキソ-N-[5-[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]チアゾール-2-イル]-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
N-[5-(4-イソプロポキシフェニル)チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
N-[5-(4-tert-ブトキシフェニル)-4-メチルチアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
8-オキソ-N-[5-[4-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェニル]チアゾール-2-イル]-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
N-[6-(4-クロロフェニル)-1,3-ベンゾチアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
【0112】
なお、その構造式は、順に以下に示すとおりである。
【0113】

【化16】
【0114】
上記の8-オキソ-N-[5-[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]チアゾール-2-イル]-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド、およびN-[5-(4-tert-ブトキシフェニル)-4-メチルチアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミドは光学活性体を含む。
8-オキソ-N-[5-[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]チアゾール-2-イル]-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミドの光学活性体はそれぞれ、
(5R)-8-オキソ-N-[5-[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]チアゾール-2-イル]-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド、または
(5S)-8-オキソ-N-[5-[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]チアゾール-2-イル]-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミドであり、
N-[5-(4-tert-ブトキシフェニル)-4-メチルチアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミドの光学活性体はそれぞれ、
(5R)-N-[5-(4-tert-ブトキシフェニル)-4-メチルチアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド、または
(5S)-N-[5-(4-tert-ブトキシフェニル)-4-メチルチアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミドである。
【0115】
なお、その構造式は、順に以下に示すとおりである。
【0116】

【化17】
【0117】
ラセミ化合物からの各光学異性体の分離・分析はキラルカラムを用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などにより達成され得る。HPLCによる光学異性体の同定は、その保持時間を参考に行われ得るが、その保持時間はカラムの劣化や装置間の再現性などによって影響を受ける場合があるため、好ましくはラセミ化合物または光学異性体の標準試料と分析試料との混合物を分析することによって行われ得る。また、各光学異性体のHPLCによる測定においては、同一測定条件下では各光学異性体が溶出される順序が変化しないため、特定条件下で相対的に保持時間が短い第一ピークと相対的に保持時間が長い第二ピークによって光学異性体を特徴付ける場合もあり得る。
【0118】
(塩)
「その塩」とは化合物では、酸性基または塩基性基を有する場合に、塩基または酸と反応させることにより、「塩基との塩」または「酸付加塩」にすることができるので、その塩を示す。温血動物(特にヒト)に対する治療の目的で使用する場合、その塩は薬学的に許容される塩が好ましい。また、「その塩」および「薬学的に許容される塩」とは、その水和物も包含する。
【0119】
化合物の「塩基との塩」としては、好適には、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩のようなアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩のようなアルカリ土類金属塩;N-メチルモルホリン塩、トリエチルアミン塩、トリブチルアミン塩、ジイソプロピルエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N-メチルピペリジン塩、ピリジン塩、4-ピロリジノピリジン塩、ピコリン塩のような有機塩基塩類、またはグリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩のようなアミノ酸塩であり、より好適には、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩である。
【0120】
化合物の「酸付加塩」としては、好適には、フッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩のようなハロゲン化水素酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩のような低級アルカンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩のようなアリールスルホン酸塩、酢酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩等の有機酸塩;および、グリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩のようなアミノ酸塩であり、より好適には、ハロゲン化水素酸塩(特に、塩酸塩)である。
【0121】
(水和物等)
一般式(I)で表される化合物またはその塩は、大気中に放置したりまたは再結晶をすることにより、水分を吸収し、吸着水が付いたり、水和物となったりする場合があり、本発明には、そのような各種の水和物、溶媒和物および結晶多形の化合物も包含する。
【0122】
(異性体)
一般式(I)で表される化合物には、置換基の種類によって、互変異性体や幾何異性体が存在しうる。本明細書中、一般式(I)で表される化合物が異性体の一形態のみで記載されることがあるが、本発明は、それ以外の異性体も包含し、異性体の分離されたもの、あるいはそれらの混合物も包含する。
一般式(I)で表される化合物には、不斉炭素原子や軸不斉を有する場合があり、これに基づく光学異性体が存在しうる。本発明は、光学異性体の分離されたもの、あるいはそれらの混合物も包含する。
【0123】
(同位体)
一般式(I)で表される化合物は、ラベル体、すなわち、化合物の1または2以上の原子を同位元素(例えば、H、H、13C、14C、35S等)で置換した化合物も含まれる。
【0124】
(プロドラッグ)
本発明には、一般式(I)で表される化合物の薬理学上許容されるプロドラッグも包含する。薬理学上許容されるプロドラッグとは、加溶媒分解によりまたは生理学的条件下で、アミノ基、水酸基、カルボキシ基等に変換されうる基を有する化合物である。プロドラッグを形成する基としては、例えば、Prog.Med,5,2157-2161(1985)に記載の基が挙げられる。
【0125】
当該プロドラッグとして、より具体的には、化合物にアミノ基が存在する場合には、そのアミノ基がアシル化、リン酸化された化合物(例えば、そのアミノ基がエイコサノイル化、アラニル化、ペンチルアミノカルボニル化、(5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)メトキシカルボニル化、テトラヒドロフラニル化、ピロリジルメチル化、ピバロイルオキシメチル化された化合物等である)等を挙げることができる。
【0126】
化合物に水酸基が存在する場合には、その水酸基がアシル化、アルキル化、リン酸化、ホウ酸化された化合物(例えば、その水酸基がアセチル化、パルミトイル化、プロパノイル化、ピバロイル化、サクシニル化、フマリル化、アラニル化、ジメチルアミノメチルカルボニル化された化合物等である。)等を挙げることができる。
【0127】
化合物にカルボキシ基が存在する場合には、そのカルボキシ基がエステル化、アミド化された化合物(例えば、そのカルボキシ基がエチルエステル化、フェニルエステル化、カルボキシメチルエステル化、ジメチルアミノメチルエステル化、ピバロイルオキシメチルエステル化、エトキシカルボニルオキシエチルエステル化、アミド化またはメチルアミド化された化合物等である。)等が挙げられる。
【0128】
(製造方法)
次に、一般式(I)で表される化合物の代表的な製造方法について説明する。一般式(I)で表される化合物は種々の製造方法により製造することができ、以下に示す製造方法は一例であり、本発明はこれらに限定して解釈されるべきではない。
【0129】
一般式(I)で表される化合物、その塩およびそれらの合成中間体は、それらの基本骨格または置換基の種類に基づく特徴を利用し、各種の公知の製造方法を適用して製造することができる。公知の方法としては、例えば、「ORGANIC FUNCTIONAL GROUP PREPARATIONS」、第2版、ACADEMIC PRESS,INC.,1989年、「Comprehensive Organic Transformations」、VCH Publishers Inc.,1989年等に記載された方法がある。
【0130】
また、一般式(I)で表される化合物およびその塩は、以下に記載するA~C法に従って合成することができる。一般式(I)で表される化合物を合成する際、官能基の種類によっては、当該官能基を原料から中間体へ至る段階で適当な保護基(容易に当該官能基に転化可能な基)で保護しておくことが製造技術上効果的な場合がある。このような保護基としては、例えば、ウッツ(P.G.M.Wuts)およびグリーン(T.W.Greene)著、Protective Groups in Organic Synthesis(第3版、1999年)に記載の保護基等を挙げることができ、これらの反応条件を適宜選択して用いればよい。一般的に当業者によって合成ルートが設定されると、当該合成ルートに最適な保護基は当業者によって適宜設定される。
【0131】
このような方法では、当該保護基を導入して反応を行なったあと、必要に応じて保護基を除去することにより、所望の化合物を得ることができる。また、一般式(I)で表される化合物のプロドラッグは、上記保護基と同様、原料から中間体へ至る段階で、特定の基を導入、あるいは得られた化合物を用いてさらに反応を行なうことで製造できる。反応は通常のエステル化、アミド化、脱水等の方法を適用することにより行うことができる。
【0132】
一般式(I)で表される化合物は公知の方法またはその変法によって合成可能な中間体を用いて製造することができる。特にAに相当する一般式(ii)~(iv)で表される基を含む中間体については市販の原料を用いて公知の方法またはその変法を適用することによって製造することができる。
【0133】
下記A~C法の各工程で得られる化合物はその化合物とともに形成される塩であってもよい。例えば、塩酸塩もしくは硫酸塩等、またはナトリウム塩もしくはカリウム塩等が挙げられる。
【0134】
下記A~C法の各工程の反応において使用される溶媒は、反応を阻害せず、出発原料を一部溶解するものであれば特に限定はなく、例えば、下記溶媒群より選択される。溶媒群は、ヘキサン、ペンタン、石油エーテル、シクロヘキサンのような脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素類;メチレンクロリド(塩化メチレン)、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンのようなハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテルのようなエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンのようなケトン類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルのようなエステル類;アセ卜ニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリルのようなニトリル類;酢酸、プロピオン酸のようなカルボン酸類;メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、1-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノールのようなアルコール類;ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセ卜アミド、N-メチル-2-ピロリドン、ヘキサメチルリン酸トリアミドのようなアミド類;ジメチルスルホキシド、スルホランのようなスルホキシド類;水;および、それらの混合物からなる。
【0135】
下記A~C法の各工程の反応において使用される酸は、反応を阻害しないものであれば特に限定はなく、下記酸群より選択される。酸群は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸、硫酸、硝酸のような無機酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、ペンタフルオロプロピオン酸のような有機酸、および、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸のような有機スルホン酸からなる。
【0136】
下記A~C法の各工程の反応において使用される塩基は、反応を阻害しないものであれば特に限定はなく、下記塩基群より選択される。塩基群は、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムのようなアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムのようなアルカリ金属炭酸水素塩;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのようなアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化バリウムのようなアルカリ土類金属水酸化物;水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウムのようなアルカリ金属水素化物;リチウムアミド、ナトリウムアミド、カリウムアミドのようなアルカリ金属アミド;リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、カリウムtert-ブトキシドのようなアルカリ金属アルコキシド;リチウムジイソプロピルアミドのようなリチウムアルキルアミド;リチウムビストリメチルシリルアミド、ナトリウムビストリメチルシリルアミドのようなシリルアミド; n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウムのようなアルキルリチウム;塩化メチルマグネシウム、臭化メチルマグネシウム、ヨウ化メチルマグネシウム、塩化エチルマグネシウム、臭化エチルマグネシウム、塩化イソプロピルマグネシウム、臭化イソプロピルマグネシウム、塩化イソブチルマグネシウムのようなハロゲン化アルキルマグネシウム;および、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、ピリジン、ピコリン、4-(N,N-ジメチルアミノ)ピリジン、4-ピロリジノピリジン、2,6-ジ(tert-ブチル)-4-メチルピリジン、キノリン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ-5-エン(DBN)、1, 4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)、1, 8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エン(DBU)のような有機アミンからなる。
【0137】
下記A~C法の各工程の反応において、反応温度は、溶媒、出発原料、試薬等により異なり、反応時間は、溶媒、出発原料、試薬、反応温度等により異なる。
【0138】
下記A~C法の各工程の反応において、反応終了後、各工程の目的化合物は、常法にしたがって反応混合物から単離される。目的化合物は、例えば、(i)必要に応じて触媒等の不溶物を漏去し、(ii)反応混合物に水および水と混和しない溶媒(例えば、塩化メチレン、ジエチルエーテル、酢酸エチル等)を加えて目的化合物を抽出し、(iii)有機層を水洗して、無水硫酸マグネシウム等の乾燥剤を用いて乾燥させ、(iv)溶媒を留去することによって得られる。得られた目的化合物は、必要に応じ、常法、例えば、再結晶、再沈澱、蒸留、または、シリカゲルもしくはアルミナなどを用いたカラムクロマトグラフィー(順相および逆相を含む)等により、更に精製することができる。得られた目的化合物は、元素分析、NMR、質量分析(mass spectroscopy)、IR分析等の標準的な分析技術によって同定され、その組成または純度を分析することができる。また、各工程の目的化合物は精製することなくそのまま次の反応に使用することもできる。
【0139】
下記A~C法の各工程において、(R)または(S)-フェネチルアミンのような光学活性アミンを用いた分別再結晶、または、光学活性カラムを用いた分離により、光学異性体を分離、精製することができる。
【0140】
以下に一般式(I)で表される化合物の製造方法について述べる。ただし、製造方法は、下記の方法に何ら限定されるものではない。
【0141】
[A法]
A法は一般式(I)で表される化合物を製造する際に合成中間体として用いることのできる化合物(A2)を製造する方法である。化合物(A2)は本法および実施例で例示される合成法の他に公知の方法またはその変法などによっても製造することができる。
【0142】

【化18】
[式中、RおよびRは上記と同義を示す]
【0143】
(工程A-1)チアゾール環形成
工程A-1は化合物(A1)に対して等量もしくは過剰量のハロゲン化剤もしくはブロモトリメチルシラン、およびチオウレアを作用させ、化合物(A2)を製造する工程である。ハロゲン化剤としては塩素、臭素などが挙げられる。反応の溶媒は、反応が進行する限り特に限定はされないが、ジクロロメタン、クロロホルム、エタノール、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、酢酸等が用いられる。反応温度は通常、0~100℃であり、反応時間は通常、0.5時間~2日間程度である。
【0144】
(B法)
B法は一般式(I)で表される化合物を製造する際に合成中間体として用いることのできる化合物(B3)を製造する方法である。以下の図中のPおよびPはアミノ基の保護基あるいは水素原子を示し、具体的な保護基としてはBoc基(tert-ブトキシカルボニル基)、Cbz基(ベンジルオキシカルボニル基)、ベンジリデン基、またはジフェニルメチレン基などが挙げられる。Pがベンジリデン基、ジフェニルメチレン基の場合にはPはPと同一保護基を示す。RおよびAはそれらに含まれる置換基上に保護基を有していてもよく、各工程は必要に応じて置換基の保護や保護基の除去を行う工程を含む。
【0145】

【化19】
[式中、Rは上記と同義、Xはハロゲン原子またはメタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基もしくはp-トルエンスルホニルオキシ基などの脱離基、PおよびPは任意の保護基を示す]
【0146】
(工程B-1)カップリング反応
工程B-1は化合物(B1)のA上の置換基Xに対し、パラジウム触媒存在下、等量もしくは過剰量のボロン酸もしくはボロン酸エステル(R-B(OH)またはR-B(OR)、Rは任意のアルキル基を示す)を用いる条件(鈴木・宮浦カップリング);有機スズ試薬(R-SnR)を用いる条件(Stilleカップリング);または有機亜鉛試薬(R-ZnX;Xはハロゲン原子を示す)を用いる条件(根岸カップリング)等により、置換基Rの導入を行って化合物(B2)を得る工程である。上記反応では必要により、塩基を加えることができる。パラジウム触媒としては、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド ジクロロメタン錯体(1:1)、クロロ(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2´4´6´-トリイソプロピル-1,1´-ビフェニル)[2-(2´-アミノ-1,1´-ビフェニル)]パラジウム(II)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、酢酸パラジウム(II)、アセチルアセトンパラジウム(II)、またはビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド等が挙げられる。また、塩基としてはトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)、または1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン(DBN)等の有機塩基、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、リン酸カリウム、またはリン酸ナトリウム等の無機塩基が挙げられる。反応溶媒としては、反応が進行する限り特に限定はされないが、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、1,4-ジオキサン、水、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ベンゼン、トルエン、キシレン、またはこれらの混合物等を挙げることができる。反応温度は通常20~150℃程度である。反応時間は通常1時間~2日程度である。本カップリング反応についてはA.MeijereおよびF.Diederich著、「Metal-Catalyzed Cross-Coupling Reactions(第2版、2004年)」に記載の方法に準じて行うことができる。
【0147】
(工程B-2)脱保護
工程B-2は化合物(B2)における保護基PおよびPを除去して化合物(B3)を製造する工程である。本工程では必要に応じてRにおける保護基の脱保護を行うことができる。本反応条件は保護基PおよびPの種類により変わるが、例えば、T.W.GreeneおよびP.G.Wuts著、「Protective Groups in Organic Synthesis(第3版、1999年)」に記載の方法に準じて行うことができる。
【0148】
(C法)
C法は公知の方法またはその変法などを用いて合成可能な化合物(C1)から一般式(I)で表される化合物を製造する方法である。
【0149】

【化20】
[式中、R~R、n、AおよびXは上記と同義、Xはハロゲン原子、Pは任意の保護基を示す]
【0150】
(工程C-1)アルキル化反応
工程C-1は化合物(C1)に対して等量もしくは過剰量のアルキル化剤存在下、塩基で処理することにより置換基Rを導入し、化合物(C2)を製造する工程である。アルキル化剤としてはハロゲン化アルキル、メタンスルホン酸アルキルエステルまたはp-トルエンスルホン酸アルキルエステル等を用いることができる。塩基としては、カリウムヘキサメチルジシラジド、ナトリウムヘキサメチルジシラジドなどが挙げられる。反応溶媒は、反応が進行する限り特に限定はされないが、テトラヒドロフランが好ましい。反応温度は通常、-78~0℃である。反応時間は通常、0.5~24時間である。
【0151】
(工程C-2)ハロゲン化およびアルキル化
工程C-2は化合物(C1)に対して等量もしくは過剰量のハロゲン化剤を用いてハロゲン化を行った後、アルキル化を行うことによって化合物(C3)を製造する工程である。ハロゲン化とアルキル化の順番は適宜入れ替えることができる。ハロゲン化剤としては、例えばN-ブロモスクシンイミド、N-ヨードスクシンイミドなどが挙げられる。反応溶媒は、反応が進行する限り特に限定はされないが、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミドが好ましい。反応温度は通常0~50℃程度である。反応時間は通常0.5~24時間である。アルキル化は工程C-1と同様の方法で行うことができる。
【0152】
(工程C-3)カップリング反応
工程C-3は化合物(C3)にカップリング反応を行って化合物(C4)を製造する工程である。工程B-1と同様の方法で行うことができる。
【0153】
(工程C-4)
工程C-4は化合物(C2)または化合物(C5)に対してハロゲン化、またはハロゲン化に続くカップリング反応を行って化合物(C4)または一般式(I)で表される化合物を得る工程である。ハロゲン化は工程C-2、カップリング反応は工程B-1と同様の方法で行うことができる。
【0154】
(工程C-5)縮合反応
工程(C-5)は化合物(C2)または化合物(C4)のカルボキシ基の保護基を除去してカルボン酸とした後、A法の化合物(A2)またはB法の化合物(B3)を等量もしくは過剰量用いて縮合を行い、化合物(C5)または一般式(I)で表される化合物を製造する工程である。カルボキシ基の脱保護はT.W.GreeneおよびP.G.Wuts著、「Protective Groups in Organic Synthesis(第3版、1999年)」に記載の方法に準じて行うことができる。縮合反応は化合物(C2)および化合物(C4)から得られたカルボン酸に対して塩基存在下、適当なスルホニル化剤または適当な縮合剤を作用させることによって行う。縮合反応では必要に応じて反応を促進する添加剤を加えることができる。スルホニル化剤としては、例えば2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルホニルクロリド、p-トルエンスルホニルクロリド、ベンゼンスルホニルクロリドなどが挙げられる。縮合剤としては、例えばWSC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド),DCC(1,3-ジシクロヘキシルカルボジイミド)、DMT-MM(4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド)、CDI(1、1´-カルボニルジイミダゾール)、DEPC(ジエチルホスホロシアニダート)、DPPA(ジフェニルホスホリルアジド)などが挙げられる。塩基としては、ピリジン、ルチジンなどの芳香族アミン類やトリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、DMAP(4-ジメチルアミノピリジン)などの3級アミン類などが挙げられる。添加剤の代表的な例として、HOAt(3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-b]ピリジン-3-オール)、HOBt(1H-ベンゾトリアゾール-1-オール)、HOSu(N-ヒドロキシスクシンイミド)などが挙げられる。反応溶媒は、反応が進行する限り特に限定はされないが、ジクロロメタン、N,N-ジメチルホルムアミドが好ましい。反応温度は通常、0~50℃である。反応時間は通常、0.5~24時間である。
【0155】
(工程C-6)縮合反応
工程(C-6)は化合物(C4)のカルボキシ基の保護基を除去した後、アミン誘導体と縮合し、化合物(C6)を製造する工程である。工程(C-5)と同様の方法を用いることができる。
【0156】
(工程C-7)カップリング反応
工程(C-7)は化合物(C6)に対してカップリング反応を行って一般式(I)で表される化合物を製造する工程である。工程(B-1)と同様の方法を用いて行うことができる。
【0157】
<インスリン産生細胞>
本発明の方法で製造されるインスリン産生細胞は、生体の膵臓β細胞と類似した機能を示すため、糖尿病の治療に有用である。本発明の製法で製造された細胞は、良好なインスリン産生能に加えて、周辺環境の糖レベルが低い状況ではインスリンを分泌量が少なく、糖レベルが高い環境ではインスリン分泌量が増加するという特性を有する。そのため、本発明の製法で製造される細胞は、低血糖のリスクが少なく、安全性が高い治療方法を提供する。
【0158】
本発明の方法で作製された細胞における膵臓β細胞マーカー遺伝子(例えばインスリン、NKX6.1、およびPDX1など)のmRNAレベル又はタンパク質レベルでの発現を評価することにより、目的細胞であることを確認することができる。また、本発明の方法で作製された細胞のインスリン分泌能力は、以下の実施例1の方法(6)に記載された時間依存的GSIS活性測定により評価することができる。
【0159】
本発明の方法で作製された細胞は、時間依存的GSIS活性測定において、急速な第1相インスリン分泌及び/又は長期持続する第2相インスリン分泌を示すという特性を有する。また、本発明の方法で作製された細胞は、インスリン分泌促進薬(例えば、グリベンクラミドのようなSU剤、エキセンディン4のようなGLP-1受容体アゴニスト、KClなど)による刺激に反応してインスリン分泌増強、c-ペプチド分泌増強などを示す特性を有する。また、機能的成熟化を示すマーカーNKX6.1の陽性率が高い、細胞当たりのインスリン分泌量が多い、という特性を有する。これらの特性から、本発明の方法で作製されたインスリン産生細胞は、膵β細胞として機能的成熟が増強された細胞であると考えられ、公知の多能性幹細胞由来のインスリン産生細胞と明確に区別される細胞である。
【0160】
このようなインスリン産生細胞による治療対象は、膵臓β細胞におけるインスリン分泌異常又は分泌不全に起因する疾患の患者であり、具体的には1型糖尿病又は2型糖尿病の患者が例示される。
【0161】
このような細胞を治療に用いる場合、患者の皮下、腹腔内、膵臓内、膵臓表面、またはその周辺へ移植することができる。
【0162】
本発明の方法で製造された細胞は、三次元培養で形成された凝集体(スフェア)として移植してもよく、分散された細胞として移植しても良い。また、一度分散させた細胞を再凝集させた凝集体やシート状に加工して移植することもできる。
【0163】
以下、参考合成例、合成例、参考例、および実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0164】
参考合成例および合成例のカラムクロマトグラフィーにおける溶出はTLC(Thin Layer Chromatography、薄層クロマトグラフィー)による観察下に行われた。TLC観察においては、TLCプレートとしてメルク(Merck)社製のシリカゲル60F254を、展開溶媒としてはカラムクロマトグラフィーで溶出溶媒として用いられた溶媒を、検出法としてUV検出器を採用した。カラム用シリカゲルは同じくメルク社製のシリカゲルSK-85(230~400メッシュ)、もしくは富士シリシア化学 Chromatorex NH(200-350メッシュ)を用いた。通常のカラムクロマトグラフィーの他に、昭光サイエンティフィック社の自動クロマトグラフィー装置(Purif-α2もしくはPurif-espoir2)などを適宜使用した。溶出溶媒はTLC観察を基に決定した。
【0165】
なお、以下の参考合成例、合成例、参考例、および実施例で用いる略号は、次のような意義を有する。
mg:ミリグラム,g:グラム,μL:マイクロリットル,mL:ミリリットル,mmol:ミリモル,mM:ミリモル濃度,μM:マイクロモル濃度,μm:マイクロメートル,mm:ミリメートル,MHz:メガヘルツ。
【0166】
以下の参考合成例および合成例において、核磁気共鳴(以下、H NMR)スペクトルは、テトラメチルシランを標準物質として、ケミカルシフト値をδ値(ppm)にて記載した。分裂パターンは一重線をs、二重線をd、三重線をt、四重線をq、多重線をm、ブロードをbrで示した。質量分析(以下、MS)は、EI(Electron Ionization)法、ESI(Electrospray Ionization)法、もしくはFAB(Fast Atom Bombardment)法で行った。
【実施例
【0167】
参考合成例1
N-(5-ブロモチアゾール-2-イル)-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボン酸(1.51g,8.43mmol)、市販の5-ブロモチアゾール-2-アミン(2.64g,10.2mmol)および3-ヒドロキシトリアゾロ[4,5-b]ピリジン(1.23g,9.04mmol)のジクロロメタン(30mL)溶液に、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル) カルボジイミド 塩酸塩(2.43g,12.6mmol)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(2.94mL,16.9mmol)を加え、室温にて2時間攪拌した。反応液を1N塩酸および飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過し、減圧下溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/10%メタノール 酢酸エチル溶液=3/1-0/1)にて精製し、標記化合物1.88g(収率66%)を固体として得た。
【0168】
参考合成例2
N-(4-ブロモフェニル)-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の4-ブロモアニリンを用いて、参考合成例1の方法に準じて標記化合物4.66g(収率84%)を固体として得た。
【0169】
参考合成例3
N-(4-ブロモ-2-フルオロ-フェニル)-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の4-ブロモ-2-フルオロアニリンを用いて、参考合成例1の方法に準じて標記化合物345mg(収率58%)を固体として得た。
【0170】
参考合成例4
N-(5-ブロモ-4-メチル-チアゾール-2-イル)-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の5-ブロモ-4-メチル-チアゾール-2-アミンを用いて、参考合成例1の方法に準じて標記化合物252mg(収率25%)を固体として得た。
【0171】
参考合成例5
N-(6-ブロモ-1,3-ベンゾチアゾール-2-イル)-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の2-アミノ-6-ブロモベンゾチアゾールを用いて、参考合成例1の方法に準じて標記化合物585mg(収率42%)を固体として得た。
【0172】
参考合成例6
N-(4-ブロモ-2-メチル-フェニル)-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の4-ブロモ-2-メチル-アニリンを用いて、参考合成例1の方法に準じて標記化合物515mg(収率66%)を固体として得た。
【0173】
参考合成例7
N-(5-ブロモ-2-ピリジル)-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の5-ブロモピリジン-2-アミンを用いて、参考合成例1の方法に準じて標記化合物455mg(収率58%)を固体として得た。
【0174】
参考合成例8
N-(2-クロロ-1,3-ベンゾチアゾール-6-イル)-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の2-クロロ-1,3-ベンゾチアゾール-6-アミンを用いて、参考合成例1の方法に準じて標記化合物637mg(収率76%)を固体として得た。
【0175】
参考合成例9
5-[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]チアゾール-2-アミン
WO2003014095記載のN-(5-ブロモチアゾール-2-イル)-1,1-ジフェニル-メタンイミン(1.46g,4.25mmol)、市販の4-(トリフルオロメトキシ)フェニルボロン酸(4.30g,20.0mmol)、炭酸カリウム(2.97g,21.5mmol)、水(3mL)および1,4-ジオキサン(15mL)の混合物に[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド ジクロロメタン錯体(1:1)(338mg,0.414mmol)を加えて、窒素雰囲気下、100℃にて4時間攪拌した。反応混合物に水を加えた後、酢酸エチルにて抽出した。有機層を合わせ、水および飽和食塩水にて洗浄した後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。減圧下にて溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル=9/1-3/1)にて精製した。得られた油状物のメタノール(20mL)溶液に、1N塩酸(5mL,5.0mmol)を加え、室温にて5.5時間攪拌した。反応混合物を減圧濃縮し、析出した固体をジクロロメタンにて洗浄し、標記化合物897mg(収率81%)を固体として得た。
【0176】
参考合成例10
tert-ブチル N-[5-[4-(ジメチルカルバモイル)フェニル]チアゾール-2-イル]カーバメート
市販のtert-ブチル N-(5-ブロモチアゾール-2-イル)カーバメート(500mg,1.89mmol)の1,4-ジオキサン(30mL)溶液に、室温にて[4-(ジメチルカルバモイル)フェニル]ボロン酸(519mg,2.69mmol)および[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド ジクロロメタン錯体(1:1)(74mg,0.09mmol)を加え攪拌した。反応混合物に炭酸カリウム(743mg,5.38mmol)および水(3.0mL)を加え、アルゴン雰囲気下、100℃にて4.5時間攪拌した。反応混合物に水を加えた後、酢酸エチルにて抽出した。有機層を合わせ、水および飽和食塩水にて洗浄した後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。減圧下にて溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=100/0-93/7、90/10-70/30)にて精製し、標記化合物172mg(収率28%)を固体として得た。
【0177】
参考合成例11
4-(2-アミノチアゾール-5-イル)-N,N-ジメチルベンズアミド
参考合成例10で得られたtert-ブチル N-[5-[4-(ジメチルカルバモイル)フェニル]チアゾール-2-イル]カーバメート(172mg、0.495mmol)のジクロロメタン(10mL)溶液に、室温にてトリフルオロ酢酸(2.0mL,26mmol)を加え、攪拌した後、放置した。反応液を減圧濃縮し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた後、ジクロロメタンにて抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥した後、減圧下にて溶媒を留去し、標記化合物118mg(収率96%)を固体として得た。
【0178】
参考合成例12
5-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)チアゾール-2-アミン
市販の1,3-ベンゾジオキソール-5-イルボロン酸を用いて、参考合成例10の方法に準じて成績体を得た後、参考合成例11の方法に準じて標記化合物123mg(31%,2steps)を固体として得た。
【0179】
参考合成例13
4-(2-アミノチアゾール-5-イル)ベンゾニトリル
市販の4-(2-オキソエチル)ベンゾニトリル(142mg,0978mmol)のジクロロメタン(10mL)溶液に、氷冷下、臭素(56μL,1.09mmol)のジクロロメタン(0.56mL)溶液を加えた。反応液を室温まで戻した後、3時間攪拌した。氷冷下、反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え中和した後、ジクロロメタンにて抽出した。有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した後、減圧下にて溶媒を留去した。得られた残渣のエタノール(30mL)溶液に、チオウレア(150mg,1.97mmol)を加え、4.5時間加熱還流下、攪拌した。冷却後、減圧下にて溶媒を留去した後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=99/1-95/5)にて精製し、標記化合物8.3mg(4.2%)を固体として得た。
【0180】
参考合成例14
tert-ブチル 2-[4-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)チアゾール-5-イル]フェノキシ]アセテート
市販のtert-ブチル 2-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェノキシ]アセテート(2.4g,7.2mmol)を用いて、参考合成例10の方法に準じて標記化合物248mg(11%)を固体として得た。
【0181】
参考合成例15
メチル 2-[4-(2-アミノチアゾール-5-イル)フェノキシ]アセテート
参考合成例14で得られたtert-ブチル 2-[4-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)チアゾール-5-イル]フェノキシ]アセテート(193mg,0.475mmol)を用いて、参考合成例11の方法に準じて固体を得た。得られた固体のテトラヒドロフラン(10mL)およびメタノール(3mL)の混合溶液に、室温にてトリメチルシリルジアゾメタン(0.6M ヘキサン溶液,1.0mL)を加え、6時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた後、ジクロロメタンにて抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥した後、減圧下にて溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=99/1-97/3)にて精製し、標記化合物92.5mg(収率74%)を固体として得た。
【0182】
参考合成例16
メチル 2-[4-[2-[(8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボニル)アミノ]チアゾール-5-イル]フェノキシ]アセテート
参考合成例15で得られたメチル 2-[4-(2-アミノチアゾール-5-イル)フェノキシ]アセテートを用いて、合成例1の方法に準じて標記化合物85.7mg(収率89%)を固体として得た。
【0183】
参考合成例17
メチル 2-ブロモ-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキシレート
市販のメチル 8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキシレート(261mg,1.35mmol)のジクロロメタン(5mL)溶液に、室温にてN-ブロモスクシンイミド(228mg,1.28mmol)を加え、4時間攪拌した。減圧下にて溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル=4/1-2/1)にて精製し、標記化合物56.9mg(収率16%)を固体として得た。
【0184】
参考合成例18
2-ブロモ-8-オキソ-N-[5-[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]チアゾール-2-イル]-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
参考合成例17で得られたメチル 2-ブロモ-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキシレート(56.9mg,0.209mmol)のエタノール(2mL)溶液に、1N水酸化ナトリウム水溶液(0.5mL,0.50mmol)を加え、60℃にて2時間攪拌した。1N塩酸を用いて酸性とした後、酢酸エチルにて抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥した後、減圧下にて溶媒を留去し、黄色固体(52.5mg)を得た。得られた固体(52.5mmol)および参考合成例9で得られた5-[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]チアゾール-2-アミンを用いて、合成例9の方法に準じて標記化合物48.0mg(収率55%)を固体として得た。
【0185】
参考合成例19
N-(5-ブロモチアゾール-2-イル)-2-メチル-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
参考合成例17で得られたメチル 2-ブロモ-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキシレート(65.2mg,0.24mmol)、市販の2,4,6-トリメチル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリボリナン(0,201mL,1.44mmol)、炭酸カリウム(171mg,1.24mmol)の混合物に1,4-ジオキサン(1.5mL)および水(0.5mL)を加えた後、[1,1‘-ビス(ジ-tert-ブチルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド(15.6mg,0.024mmol)を加え、窒素雰囲気下、100℃にて2.5時間攪拌した。反応液に水および1N塩酸を加えた後、酢酸エチルにて抽出した。有機層を飽和食塩水にて洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した後、減圧下にて溶媒を留去した。得られた残渣を用いて、参考合成例1の方法に準じて標記化合物23.9mg(収率22%)を固体として得た。
【0186】
参考合成例20
メチル 2-クロロ-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキシレート
市販のN-クロロスクシンイミドを用いて、参考合成例17の方法に準じて標記化合物56.3mg(収率5.2%)を固体として得た。
【0187】
参考合成例21
メチル 5-メチル-8-オキソ-6,7-ジヒドロインドリジン-5-カルボキシレート
市販のメチル 8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキシレート(987mg,4.89mmol)およびヨウ化メチル(1.27mL,20.4mmol)のテトラヒドロフラン溶液に、-78℃において1.0M カリウム ビス(トリメチルシリル)アミド テトラヒドロフラン溶液(11.2mL,11.2mmol)を30分以上かけて滴下した。同温度で1時間攪拌した後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えてクエンチした。反応液に水を加えた後、酢酸エチルにて抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。減圧下にて溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル=6/1-1/1)にて精製し、標記化合物592mg(収率56%)を油状物として得た。
【0188】
参考合成例22
5-メチル-8-オキソ-6,7-ジヒドロインドリジン-5-カルボン酸
参考合成例21で得られたメチル 5-メチル-8-オキソ-6,7-ジヒドロインドリジン-5-カルボキシレート(63.0mg,0.304mmol)のエタノール(1.0mL)溶液に、1N水酸化ナトリウム水溶液(0.91mL,0.91mmol)を加え、80℃にて2時間攪拌した。反応液に1N塩酸を加えて中和した後、酢酸エチルにて抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。減圧下にて溶媒を留去し、標記化合物48.3mg(収率82%)を固体として得た。
【0189】
参考合成例23
N-(5-ブロモチアゾール-2-イル)-5-メチル-8-オキソ-6,7-ジヒドロインドリジン-5-カルボキサミド
参考合成例22で得られた5-メチル-8-オキソ-6,7-ジヒドロインドリジン-5-カルボン酸(472mg,2.44mmol)を用いて、参考合成例1の方法に準じて標記化合物628mg(収率73%)を固体として得た。
【0190】
参考合成例24
N-(5-ブロモ-4-イソプロピル-チアゾール-2-イル)-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の5-ブロモ-4-イソプロピル-チアゾール-2-アミンを用いて、参考合成例1の方法に準じて標記化合物287mg(収率43%)を固体として得た。
【0191】
参考合成例25
メチル 5-ブロモ-2-[(8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボニル)アミノ]チアゾール-4-カルボキシレート
市販のメチル 2-アミノ-5-ブロモチアゾール-4-カルボキシレートを用いて、参考合成例1の方法に準じて標記化合物219mg(収率29%)をアモルファス状物として得た。
【0192】
合成例1
8-オキソ-N-(5-フェニルチアゾール-2-イル)-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボン酸(1.5g,8.4mmol)、Journal of Medicinal Chemistry 1983, 26, 1158-1163記載の5-フェニルチアゾール-2-アミン(1.0g,5.7mmol)、N,N-ジメチルピリジン-4-アミン(0.14g,1.1mmol)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(2.5mL,14mmol)のジクロロメタン(50mL)溶液に、室温にて市販の2,4,6-トリイソプロピルスルホニル クロリド(2.5g,8.3mmol)を加え、3時間攪拌した。反応液にジクロロメタンを加え希釈した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて中和洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥した後、減圧下にて溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=99/1-95/5)にて精製し、標記化合物1.59g(収率83%)を固体として得た。
【0193】
合成例2
メチル 4-[2-[(8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボニル)アミノ]チアゾール-5-イル]ベンゾエート
WO2012121168記載のメチル 4-(2-アミノチアゾール-5-イル)ベンゾエートを用いて、合成例1の方法に準じて標記化合物18.4g(収率54%)を固体として得た。
【0194】
合成例3
N-[5-[4-(ジメチルカルバモイル)フェニル]チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
参考合成例11で得られた4-(2-アミノチアゾール-5-イル)-N,N-ジメチルベンズアミドを用いて、合成例1の方法に準じて標記化合物7.17g(収率75%)を固体として得た。
【0195】
合成例4
N-[5-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
参考合成例12で得られた5-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)チアゾール-2-アミンを用いて、合成例1の方法に準じて標記化合物130mg(収率62%)を固体として得た。
【0196】
合成例5
4-[2-[(8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボニル)アミノ]チアゾール-5-イル]安息香酸
合成例2で得られたメチル 4-[2-[(8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボニル)アミノ]チアゾール-5-イル]ベンゾエート(383mg,0.969mmol)のエタノール(3mL)および水(2mL)の混合溶液に、1N水酸化ナトリウム水溶液(3.8mL,3.8mmol)を加え、50℃にて4時間攪拌した。反応液に水を加え、1N塩酸にて中和し、析出した固体をろ取した。得られた固体を水で洗浄した後、乾燥し、標記化合物326mg(収率88%)を固体として得た。
【0197】
合成例6
N-[5-(4-カルバモイルフェニル)チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
合成例5で得られた4-[2-[(8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボニル)アミノ]チアゾール-5-イル]安息香酸(17mg,0.045mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(1mL)溶液に、室温にて[ジメチルアミノ(トリアゾロ[4,5-b]ピリジン-3-イロキシ)メチレン]-ジメチル-アンモニウム ヘキサフルオロホスフェート(25mg,0.067mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(39μL,0.22mmol)および7Mアンモニア メタノール溶液(64μL,0.45mmol)を加え、15時間攪拌した。反応液を直接シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/50%メタノール 酢酸エチル溶液 =95/5-90/10)にて精製し、標記化合物4.9mg(収率29%)を得た。
【0198】
合成例7
N-[5-(4-シアノフェニル)チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
参考合成例13で得られた4-(2-アミノチアゾール-5-イル)ベンゾニトリルを用いて、合成例1の方法に準じて標記化合物9.0mg(収率60%)を得た。
【0199】
合成例8
N-[5-[4-[2-(ジメチルアミノ)-2-オキソ-エトキシ]フェニル]チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
参考合成例16で得られたメチル 2-[4-[2-[(8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボニル)アミノ]チアゾール-5-イル]フェノキシ]アセテート(84mg,0.197mmol)のテトラヒドロフラン(8.0mL)およびメタノール(3.0mL)の混合溶液に、室温にて5N水酸化ナトリウム水溶液(0.20mL,1.0mmol)を加え、攪拌した後、一晩放置した。5N塩酸にて中和し、減圧下にて溶媒を留去し固体を得た。得られた固体のN,N-ジメチルホルムアミド(3mL)溶液に、室温にてN,N-ジイソプロピルエチルアミン(52μL,0.30mmol)および2.0Mジメチルアミン テトラヒドロフラン溶液(0.50mL, 1.0mmol)を加えた後、[ジメチルアミノ(トリアゾロ[4,5-b]ピリジン-3-イロキシ)メチレン]ジメチルアンモニウム ヘキサフルオロホスフェート(42mg,0.11mmol)を加え、3時間攪拌した。反応液にジクロロメタンを加え希釈した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて中和洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥した後、減圧下にて溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=99/1-95/5)にて精製し、標記化合物39.1mg(収率89%)を固体として得た。
【0200】
合成例9
8-オキソ-N-[5-[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]チアゾール-2-イル]-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボン酸(109mg,0.61mmol)、参考合成例9で得られた5-[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]チアゾール-2-アミン(127mg,0.488mmol)、3-ヒドロキシトリアゾール[4,5-b]ピリジン(128mg,0.941mmol)のジクロロメタン(3mL)溶液に、室温にて1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル) カルボジイミド 塩酸塩(352mg,1.84mmol)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.531mL,3.05mmol)を加え、室温にて2時間攪拌した。反応液をジクロロメタンにて希釈した後、水および飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥した後、ろ過し、減圧下にて溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル溶液=3/1-0/1)にて精製し、標記化合物74.3mg(収率29%)を固体として得た。
【0201】
合成例10
(5R)-8-オキソ-N-[5-[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]チアゾール-2-イル]-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド および
(5S)-8-オキソ-N-[5-[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]チアゾール-2-イル]-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
合成例9で得られた8-オキソ-N-[5-[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]チアゾール-2-イル]-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミドを用いてHPLC(カラム:YMC CHIRAL ART Cellulose-SB(5μm) 250x30mmI.D.、流速:31.8ml/min、溶媒:n-ヘキサン/エタノール=70/30)にて光学分割を行った。先に溶出する第一ピークを集めた後、減圧下にて溶媒を留去し、標記化合物(48mg,光学純度 99.9%ee)を固体として得た。また、後から溶出する第二ピークを集めた後、減圧下にて溶媒を留去し、標記化合物(48mg,光学純度 99.8%ee)を固体として得た。
【0202】
合成例11
N-[5-(4-tert-ブトキシフェニル)チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
参考合成例1で得られたN-(5-ブロモチアゾール-2-イル)-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド(137mg,0.401mmol)、市販の(4-tert-ブトキシフェニル)ボロン酸(389mg,2.01mmol)、炭酸セシウム(670mg,2.06mmol)の混合物にN,N-ジメチルホルムアミド(2mL)および水(1mL)を加えた後、クロロ(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2´,4´,6´-トリイソプロピル-1,1´-ビフェニル)[2-(2´-アミノ-1,1´-ビフェニル)]パラジウム(II)(33.2mg,0.042mmol)を加え、窒素雰囲気下、90℃にて5時間攪拌した。反応液に水を加えた後、酢酸エチルにて抽出した。有機層を飽和食塩水にて洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した後、減圧下にて溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル=3/1-0/1)にて精製し、標記化合物63.3mg(収率39%)を固体として得た。
【0203】
合成例12
N-[5-(4-クロロフェニル)チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の4-クロロフェニルボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物11.0mg(収率6.4%)を固体として得た。
【0204】
合成例13
N-[5-(3-クロロフェニル)チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の5-(3-クロロフェニル)チアゾール-2-アミンを用いて、合成例9の方法に準じて標記化合物158mg(収率48%)を固体として得た。
【0205】
合成例14
N-[5-(2-クロロフェニル)チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の2-クロロフェニルボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物13.2mg(収率8.0%)を得た。
【0206】
合成例15
N-[5-(3-フルオロフェニル)チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の5-(3-フルオロフェニル)チアゾール-2-アミンを用いて、合成例1の方法に準じて標記化合物127mg(収率87%)を固体として得た。
【0207】
合成例16
N-[5-(4-フルオロフェニル)チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の5-(4-フルオロフェニル)チアゾール-2-アミンを用いて、合成例1の方法に準じて標記化合物198mg(収率64%)を固体として得た。
【0208】
合成例17
N-[5-(2-フルオロフェニル)チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の5-(2-フルオロフェニル)チアゾール-2-アミンを用いて、合成例1の方法に準じて標記化合物119mg(収率82%)を固体として得た。
【0209】
合成例18
8-オキソ-N-[5-(p-トリル)チアゾール]-2-イル)-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の4-メチルフェニルボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物24.7mg(収率18%)を固体として得た。
【0210】
合成例19
N-[5-(o-トリル)チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の2-メチルフェニルボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物16.6mg(収率11%)を固体として得た。
【0211】
合成例20
N-[5-(m-トリル)チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の5-(m-トリル)チアゾール-2-アミンを用いて、合成例9の方法に準じて標記化合物115mg(収率58%)を得た。
【0212】
合成例21
8-オキソ-N-[5-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]チアゾール-2-イル]-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の[4-(トリフルオロメチル)フェニル]ボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物32.9mg(収率17%)を得た。
【0213】
合成例22
N-[5-[4-(2-メトキシフェニル)フェニル]チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の[4-(2-メトキシフェニル)フェニル]ボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物3.6mg(収率16%)を得た。
【0214】
合成例23
8-オキソ-N-[5-[4-(p-トリル)フェニル]チアゾール-2-イル]-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の[4-(p-トリル)フェニル]ボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物9.0mg(収率42%)を得た。
【0215】
合成例24
N-[5-(2-ナフチル)チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の4,4,5,5-テトラメチル-2-(2-ナフチル)-1,3,2-ジオキサボロランを用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物1.6mg(収率8.2%)を得た。
【0216】
合成例25
8-オキソ-N-[5-[3-(トリフルオロメトキシ)フェニル]チアゾール-2-イル]-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の[3-(トリフルオロメトキシ)フェニル]ボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物9.0mg(収率43%)を得た。
【0217】
合成例26
N-[5-(4-メトキシフェニル)チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の(4-メトキシフェニル)ボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物19.7mg(収率17%)を固体として得た。
【0218】
合成例27
N-[5-(3-メトキシフェニル)チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の(3-メトキシフェニル)ボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物1.9mg(収率38%)を得た。
【0219】
合成例28
N-[5-[2-メチル-4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の[2-メチル-4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]ボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物4.2mg(収率19%)を得た。
【0220】
合成例29
N-[5-[3-メチル-4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の[3-メチル-4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]ボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物8.4mg(収率38%)を得た。
【0221】
合成例30
N-[5-[3-クロロ-4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の[3-クロロ-4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]ボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物2.8mg(収率12%)を得た。
【0222】
合成例31
N-[5-[3-(ヒドロキシメチル)-4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の[3-(ヒドロキシメチル)-4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]ボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物9.1mg(収率40%)を得た。
【0223】
合成例32
N-[5-(4-ベンジルオキシフェニル)チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の(4-ベンジルオキシフェニル)ボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物7.6mg(収率34%)を得た。
【0224】
合成例33
N-[5-(4-イソプロポキシフェニル)チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の(4-イソプロポキシフェニル)ボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物29.0mg(収率24%)を固体として得た。
【0225】
合成例34
N-(4-メチル-5-フェニルチアゾール-2-イル)-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の4-メチル-5-フェニルチアゾール-2-アミンを用いて、合成例9の方法に準じて標記化合物160mg(収率82%)を得た。
【0226】
合成例35
N-[5-(4-tert-ブトキシフェニル)-4-メチルチアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
参考合成例4で得られたN-(5-ブロモ-4-メチルチアゾール-2-イル)-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド(106mg,0.300mmol)、市販の(4-tert-ブトキシフェニル)ボロン酸(292mg,1.50mmol)、炭酸セシウム(596mg,1.83mmol)の混合物にN,N-ジメチルホルムアミド(1.5mL)および水(1mL)を加えた後、クロロ(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2´,4´,6´-トリイソプロピル-1,1´-ビフェニル)[2-(2´-アミノ-1,1´-ビフェニル)]パラジウム(II)(25.0mg,0.032mmol)を加え、窒素雰囲気下、90℃にて5時間攪拌した。反応液に水を加えた後、酢酸エチルにて抽出した。有機層を飽和食塩水にて洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した後、減圧下にて溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル=3/1-0/1)にて精製した後、得られた固体をジエチルエーテルにて洗浄し、標記化合物65.0mg(収率51%)を固体として得た。
【0227】
合成例36
N-[4-メチル-5-[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]ボロン酸を用いて、合成例35の方法に準じて標記化合物72.0mg(収率49%)を得た。
【0228】
合成例37
N-[5-[4-(ヒドロキシメチル)フェニル]チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の[4-(ヒドロキシメチル)フェニル]ボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物5.3mg(収率29%)を得た。
【0229】
合成例38
N-[5-[4-(2-メトキシエトキシ)フェニル]チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の[4-(2-メトキシエトキシ)フェニル]ボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物0.6mg(収率2.7%)を得た。
【0230】
合成例39
N-[5-[4-(ジフルオロメトキシ)フェニル]チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の[4-(ジフルオロメトキシ)フェニル]ボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物7.0mg(収率35%)を得た。
【0231】
合成例40
N-[5-(2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の(2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)ボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物9.4mg(収率45%)を得た。
【0232】
合成例41
N-[5-(4-モルフォリノフェニル)チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の4-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]モルホリンを用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物27.6mg(収率24%)を固体として得た。
【0233】
合成例42
N-[5-[4-(ジメチルスルファモイル)フェニル]チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の[4-(ジメチルスルファモイル)フェニル]ボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物9.7mg(収率44%)を得た。
【0234】
合成例43
N-[5-(4-ベンジルオキシ-3-フルオロフェニル)チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の(4-ベンジルオキシ-3-フルオロフェニル)ボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物62.8mg(収率33%)を固体として得た。
【0235】
合成例44
N-[5-(4-ベンジルオキシ-2-フルオロフェニル)チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の(4-ベンジルオキシ-2-フルオロフェニル)ボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物9.7mg(収率42%)を得た。
【0236】
合成例45
8-オキソ-N-[5-[4-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェニル]チアゾール-2-イル]-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の[4-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェニル]ボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物53.0mg(収率28%)を固体として得た。
【0237】
合成例46
8-オキソ-N-[5-(4-フェノキシフェニル)チアゾール-2-イル]-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の(4-フェノキシフェニル)ボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物53.0mg(収率29%)を固体として得た。
【0238】
合成例47
N-[5-(4-ブロモフェニル)チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の5-(4-ブロモフェニル)チアゾール-2-アミンを用いて、合成例9の方法に準じて標記化合物755mg(収率59%)を固体として得た。
【0239】
合成例48
tert-ブチル [4-[2-[(8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボニル)アミノ]チアゾール-5-イル]フェニル]カーボネート
市販の(4-tert-ブトキシカルボニルオキシフェニル)ボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物1.0mg(収率4.3%)得た。
【0240】
合成例49
N-[5-(4-イソブトキシフェニル)チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の(4-イソブトキシフェニル)ボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物6.5mg(収率32%)を得た。
【0241】
合成例50
N-[5-(シクロヘキセン-1-イル)チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の2-(シクロヘキセン-1-イル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロランを用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物13.8mg(収率13%)を固体として得た。
【0242】
合成例51
tert-ブチル 4-[2-[(8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボニル)アミノ]チアゾール-5-イル]-3,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-1-カルボキシレート
市販のtert-ブチル 4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-1-カルボキシレートを用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物7.7mg(収率35%)を得た。
【0243】
合成例52
N-[5-(5-クロロ-6-イソブトキシ-3-ピリジル)チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の(5-クロロ-6-イソブトキシ-3-ピリジル)ボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物3.2mg(収率15%)を得た。
【0244】
合成例53
tert-ブチル 3-[2-[(8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボニル)アミノ]チアゾール-5-イル]-2,5-ジヒドロピロール-1-カルボキシレート
市販のtert-ブチル 3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-2,5-ジヒドロピロール-1-カルボキシレートを用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物7.6mg(収率35%)を得た。
【0245】
合成例54
N-[5-(5-メチル-2-フリル)チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の4,4,5,5-テトラメチル-2-(5-メチル-2-フリル)-1,3,2-ジオキサボロランを用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物7.3mg(収率43%)を得た。
【0246】
合成例55
N-[5-(2,4-ジメチルチアゾール-5-イル)チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の2,4-ジメチル-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)チアゾールを用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物3.6mg(収率19%)を得た。
【0247】
合成例56
N-[5-(5-クロロ-2-チエニル)チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の(5-クロロ-2-チエニル)ボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物1.0mg(収率5.2%)を得た。
【0248】
合成例57
N-[5-(4-アセチルフェニル)チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の(4-アセチルフェニル)ボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物6.2mg(収率33%)を得た。
【0249】
合成例58
1-オキソ-N-[5-[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]チアゾール-2-イル]-2,3-ジヒドロピロリジン-3-カルボキサミド
市販の1-オキソ-2,3-ジヒドロピロリジン-3-カルボン酸を用いて、合成例9の方法に準じて標記化合物71.9mg(収率29%)を固体として得た。
【0250】
合成例59
8-オキソ-N-[6-[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]-1,3-ベンゾチアゾール-2-イル]-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
参考合成例5で得られたN-(6-ブロモ-1,3-ベンゾチアゾール-2-イル)-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミドおよび市販の[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]ボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物59.5mg(収率46%)を固体として得た。
【0251】
合成例60
N-[6-[4-(ジフルオロメトキシ)フェニル]-1,3-ベンゾチアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
参考合成例5で得られたN-(6-ブロモ-1,3-ベンゾチアゾール-2-イル)-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミドおよび市販の[4-(ジフルオロメトキシ)フェニル]ボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物11.2mg(収率49%)を得た。
【0252】
合成例61
N-[6-(2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-1,3-ベンゾチアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
参考合成例5で得られたN-(6-ブロモ-1,3-ベンゾチアゾール-2-イル)-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミドおよび市販の(2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)ボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物12.6mg(収率54%)を得た。
【0253】
合成例62
2-メチル-8-オキソ-N-[5-[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]チアゾール-2-イル]-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
参考合成例18で得られた2-ブロモ-8-オキソ-N-[5-[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]チアゾール-2-イル]-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド(42.8mg,0.0856mmol)、市販の2,4,6-トリメチル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリボリナン(0.127mL,0.908mmol)、炭酸カリウム(184mg,1.33mmol)の混合物に1,4-ジオキサン(1.5mL)および水(0.5mL)を加えた後、クロロ(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2´4´6´-トリイソプロピル-1,1´-ビフェニル)[2-(2´-アミノ-1,1´-ビフェニル)]パラジウム(II)(15.3mg,0.019mmol)を加え、窒素雰囲気下、100℃にて4時間攪拌した。原料が残存していたため、再度同様の操作を繰り返し原料の消失を確認した。反応液に水を加えた後、酢酸エチルにて抽出した。有機層を飽和食塩水にて洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した後、減圧下にて溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル=9/1-1/1)にて精製し、標記化合物5.6mg(収率15%)を固体として得た。
【0254】
合成例63
N-[5-(4-tert-ブトキシフェニル)チアゾール-2-イル]-2-メチル-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
参考合成例19で得られたN-(5-ブロモチアゾール-2-イル)-2-メチル-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミドを用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物6.4mg(収率22%)を固体として得た。
【0255】
合成例64
2-クロロ-8-オキソ-N-[5-[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]チアゾール-2-イル]-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
参考合成例20で得られたメチル 2-クロロ-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキシレート(66.2mg,0.291mmol)のエタノール(1mL)およびテトラヒドロフラン(1mL)混合溶液に、室温にて1N水酸化ナトリウム水溶液(0.5mL,0.5mmol)を加え2時間攪拌した。反応液に水を加えた後、1N塩酸を加えて酸性とし、酢酸エチルにて抽出した。有機層を飽和食塩水にて洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した後、減圧下にて溶媒を留去した。得られた残渣(カルボン酸化合物62mg)を用いて、合成例9の方法に準じて標記化合物68.0mg(収率37%)を固体として得た。
【0256】
合成例65
5-メチル-8-オキソ-N-[5-[4-トリフルオロメトキシ]フェニル]チアゾール-2-イル]-6,7-ジヒドロインドリジン-5-カルボキサミド
参考合成例23で得られたN-(5-ブロモチアゾール-2-イル)-5-メチル-8-オキソ-6,7-ジヒドロインドリジン-5-カルボキサミド(168mg,0.475mmol)、市販の[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]ボロン酸(588mg,2.86mmol)、炭酸セシウム(1.03g,3.16mmol)の混合物にN,N-ジメチルホルムアミド(2mL)および水(1mL)を加えた後、クロロ(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2´4´6´-トリイソプロピル-1,1´-ビフェニル)[2-(2´-アミノ-1,1´-ビフェニル)]パラジウム(II)(38.6mg,0.049mmol)を加え、窒素雰囲気下、90℃にて4時間攪拌した。反応液に水を加えた後、酢酸エチルにて抽出した。有機層を飽和食塩水にて洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した後、減圧下にて溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル=3/1-0/1)にて精製し、標記化合物59.7mg(収率29%)を固体として得た。
【0257】
合成例66
5-メチル-8-オキソ-N-[5-(p-トリル)チアゾール-2-イル]-6,7-ジヒドロインドリジン-5-カルボキサミド
市販の4-メチルフェニルボロン酸を用いて、合成例65の方法に準じて標記化合物8.6mg(収率47%)を得た。
【0258】
合成例67
5-メチル-N-[5-(m-トリル)チアゾール-2-イル]-8オキソ-6,7-ジヒドロインドリジン-5-カルボキサミド
市販の3-メチルフェニルボロン酸を用いて、合成例65の方法に準じて標記化合物8.1mg(収率44%)を得た。
【0259】
合成例68
N-[5-(2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)チアゾール-2-イル]-5-メチル-8-オキソ-6,7-ジヒドロインドリジン-5-カルボキサミド
市販の(2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)ボロン酸を用いて、合成例65の方法に準じて標記化合物0.6mg(収率3.0%)を得た。
【0260】
合成例69
N-[5-(4-イソプロポキシフェニル)チアゾール-2-イル]-5-メチル-8-オキソ-6,7-ジヒドロインドリジン-5-カルボキサミド
市販の(4-イソプロポキシフェニル)ボロン酸を用いて、合成例65の方法に準じて標記化合物6.8mg(収率33%)を得た。
【0261】
合成例70
5-メチル-N-[5-[3-メチル-4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロインドリジン-5-カルボキサミド
市販の[3-メチル-4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]ボロン酸を用いて、合成例65の方法に準じて標記化合物8.3mg(収率37%)を得た。
【0262】
合成例71
N-[5-[3-クロロ-4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]チアゾール-2-イル]-5-メチル-8-オキソ-6,7-ジヒドロインドリジン-5-カルボキサミド
市販の[3-クロロ-4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]ボロン酸を用いて、合成例65の方法に準じて標記化合物5.0mg(収率21%)を得た。
【0263】
合成例72
5-メチル-8-オキソ-N-[5-[3-(トリフルオロメトキシ)フェニル]チアゾール-2-イル]-6,7-ジヒドロインドリジン-5-カルボキサミド
市販の[3-(トリフルオロメトキシ)フェニル]ボロン酸を用いて、合成例65の方法に準じて標記化合物7.8mg(収率36%)を得た。
【0264】
合成例73
8-オキソ-N-[4-[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]フェニル]-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
参考合成例2で得られたN-(4-ブロモフェニル)-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド(1.21g,3.62mmol)および市販の4-(トリフルオロメトキシフェニル)ボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物1.29g(収率86%)を固体として得た。
【0265】
合成例74
N-[4-(2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)フェニル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
参考合成例2で得られたN-(4-ブロモフェニル)-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミドおよび市販の(2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)ボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物10.4mg(収率50%)を得た。
【0266】
合成例75
N-[4-[4-(ジフルオロメトキシ)フェニル]フェニル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
参考合成例2で得られたN-(4-ブロモフェニル)-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミドおよび市販の[4-(ジフルオロメトキシ)フェニル]ボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物11.5mg(収率58%)を得た。
【0267】
合成例76
N-[4-[3-クロロ-4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]フェニル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
参考合成例2で得られたN-(4-ブロモフェニル)-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミドおよび市販の[3-クロロ-4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]ボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物7.0mg(収率31%)を得た。
【0268】
合成例77
3-ブロモ-8-オキソ-N-[4-[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]フェニル]-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
合成例73で得られた8-オキソ-N-[4-[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]フェニル]-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド(150mg,0.363mmol)のジクロロメタン(15mL)溶液に、室温にてN-ブロモスクシイミド(45.9mg,0.258mmol)を加え4.5時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/10%メタノール 酢酸エチル溶液=3/1-1/1)にて精製し、標記化合物93.6mg(収率52%)を固体として得た。
【0269】
合成例78
N-[2-フルオロ-4-[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]フェニル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
参考合成例3で得られたN-(4-ブロモ-2-フルオロ-フェニル)-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミドおよび市販の[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]ボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物73.4mg(収率91%)を固体として得た。
【0270】
合成例79
N-[4-[3-クロロ-4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]-2-フルオロフェニル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
参考合成例3で得られたN-(4-ブロモ-2-フルオロフェニル)-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミドおよび市販の[3-クロロ-4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]ボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物5.0mg(収率21%)を得た。
【0271】
合成例80
N-[4-(4-tert-ブトキシフェニル)-2-フルオロフェニル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
参考合成例3で得られたN-(4-ブロモ-2-フルオロフェニル)-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミドを用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物75.0mg(収率84%)を固体として得た。
【0272】
合成例81
N-[2-メチル-4-[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]フェニル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
参考合成例6で得られたN-(4-ブロモ-2-メチルフェニル)-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミドおよび市販の[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]ボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物184mg(収率92%)を固体として得た。
【0273】
合成例82
8-オキソ-N-[5-[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]-2-ピリジル]-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
参考合成例7で得られたN-(5-ブロモ-2-ピリジル)-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミドおよび市販の[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]ボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物4.0mg(収率17%)を得た。
【0274】
合成例83
8-オキソ-N-[2-[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]-1,3-ベンゾトリアゾール-6-イル]-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
参考合成例8で得られたN-(2-クロロ-1,3-ベンゾチアゾール-6-イル)-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミドおよび市販の[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]ボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物86.8mg(収率58%)を固体として得た。
【0275】
合成例84
N-[5-(2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-4-メチルチアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロインドリジン-5-カルボキサミド
市販の(2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)ボロン酸を用いて、合成例35の方法に準じて標記化合物10.4mg(収率48%)を得た。
【0276】
合成例85
N-[5-(4-ベンジルオキシ-3-フルオロフェニル)-4-メチル-チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の(4-ベンジルオキシ-3-フルオロフェニル)ボロン酸を用いて、合成例35の方法に準じて標記化合物10.4mg(収率44%)を得た。
【0277】
合成例86
N-[5-(4-イソブトキシフェニル)-4-メチル-チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の(4-イソブトキシフェニル)ボロン酸を用いて、合成例35の方法に準じて標記化合物12.2mg(収率58%)を得た。
【0278】
合成例87
N-[5-(5-クロロ-6-イソブトキシ-3-ピリジル)-4-メチルチアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の(5-クロロ-6-イソブトキシ-3-ピリジル)ボロン酸を用いて、合成例35の方法に準じて標記化合物6.6mg(収率29%)を得た。
【0279】
合成例88
N-[4-メチル-5-[4-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェニル]チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の[4-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェニル]ボロン酸を用いて、合成例35の方法に準じて標記化合物13.2mg(収率59%)を得た。
【0280】
合成例89
N-[4-メチル-5-[3-メチル-4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の[3-メチル-4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]ボロン酸を用いて、合成例35の方法に準じて標記化合物7.5mg(収率33%)を得た。
【0281】
合成例90
tert-ブチル 4-[4-メチル-2-[(8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボニル)アミノ]チアゾール-5-イル]-3,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-1-カルボキシレート
市販のtert-ブチル 4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-1-カルボキシレートを用いて、合成例35の方法に準じて標記化合物12.8mg(収率56%)を得た。
【0282】
合成例91
N-[5-[4-(ジフルオロメトキシ)フェニル]-4-メチルチアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
参考合成例5で得られたN-(6-ブロモ-1,3-ベンゾチアゾール-2-イル)-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミドおよび市販の[4-(ジフルオロメトキシ)フェニル]ボロン酸を用いて、合成例35の方法に準じて標記化合物10.9mg(収率52%)を得た。
【0283】
合成例92
N-[6-[3-メチル-4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]-1,3-ベンゾチアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
参考合成例5で得られたN-(6-ブロモ-1,3-ベンゾチアゾール-2-イル)-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミドおよび市販の[3-メチル-4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]ボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物14.0mg(収率58%)を得た。
【0284】
合成例93
N-[6-(4-クロロフェニル)-1,3-ベンゾチアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
参考合成例5で得られたN-(6-ブロモ-1,3-ベンゾチアゾール-2-イル)-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミドおよび市販の4-クロロフェニルボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物2.8mg(収率13%)を得た。
【0285】
合成例94
N-[6-(4-フルオロフェニル)-1,3-ベンゾチアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
参考合成例5で得られたN-(6-ブロモ-1,3-ベンゾチアゾール-2-イル)-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミドおよび市販の4-フルオロフェニルボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物13.0mg(収率64%)を得た。
【0286】
合成例95
N-[5-(4-ベンゾイルフェニル)チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
市販の4-ベンゾイルフェニルボロン酸を用いて、合成例11の方法に準じて標記化合物75.4mg(収率28%)を固体として得た。
【0287】
合成例96
N-[4-イソプロピル-5-[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
参考合成例24で得られたN-(5-ブロモ-4-イソプロピル-チアゾール-2-イル)-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミドおよび市販の[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]ボロン酸を用いて、合成例35の方法に準じて標記化合物112.2mg(収率66%)を得た。
【0288】
合成例97
N-[5-[1-(2-メチルプロパノイル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-4-イル]チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
合成例51で得られたtert-ブチル 4-[2-[(8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボニル)アミノ]チアゾール-5-イル]-3,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-1-カルボキシレート(139mg,0.315mmol)のジクロロメタン溶液(3mL)に、室温にてトリフルオロ酢酸(0.6mL)を加え、2時間攪拌した。反応液を減圧下濃縮し、ジクロロメタンを加えて数回共沸し、油状物(226mg)を得た。得られた油状物(68mg)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.10mL)のジクロロメタン溶液(3mL)に、氷冷下、2-メチルプロパノイル クロリド(0.032mL,0.30mmol)を加えて2時間攪拌した。反応液をジクロロメタンにて希釈した後、水および飽和食塩水にて洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥した後、減圧下にて溶媒を留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル=4/1-1/2)にて精製し、標記化合物50.3mg(収率81%)を固体として得た。
【0289】
合成例98
N-[5-[1-(イソプロピルカルバモイル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-4-イル]チアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
合成例51で得られたtert-ブチル 4-[2-[(8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボニル)アミノ]チアゾール-5-イル]-3,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-1-カルボキシレートおよび2-イソシアナートプロパンを用いて、合成例97の方法に準じて標記化合物30.6mg(収率48%)を固体として得た。
【0290】
合成例99
メチル 2-[(8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボニル)アミノ]-5-[4-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェニル]チアゾール-4-カルボキシレート
参考合成例25で得られたメチル 5-ブロモ-2-[(8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボニル)アミノ]チアゾール-4-カルボキシレートおよび市販の[4-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェニル]ボロン酸を用いて、合成例35の方法に準じて標記化合物42.3mg(収率31%)を得た。
【0291】
合成例100
メチル 5-(4-tert-ブトキシフェニル)-2-[(8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボニル)アミノ]チアゾール-4-カルボキシレート
参考合成例25で得られたメチル 5-ブロモ-2-[(8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボニル)アミノ]チアゾール-4-カルボキシレートおよび市販の(4-tert-ブトキシフェニル)ボロン酸を用いて、合成例35の方法に準じて標記化合物45.8mg(収率38%)を得た。
【0292】
合成例101
(5R)-N-[5-(4-tert-ブトキシフェニル)-4-メチルチアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド および
(5S)-N-[5-(4-tert-ブトキシフェニル)-4-メチルチアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミド
合成例35で得られたN-[5-(4-tert-ブトキシフェニル)-4-メチルチアゾール-2-イル]-8-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-インドリジン-5-カルボキサミドおよびYMC CHIRAL ART Cellulose-SC(10μm) 250x10mmI.D.、流速:2.3ml/min、溶媒:n-ヘキサン/エタノール=40/60)にて光学分割を行った。先に溶出する第一ピークを集めた後、減圧下にて溶媒を留去し、標記化合物(53mg,光学純度 >99%ee)をアモルファス状物として得た。また、後から溶出する第二ピークを集めた後、減圧下にて溶媒を留去し、標記化合物(53mg,光学純度 >99%ee)をアモルファス状物として得た。
【0293】
以下の表に参考合成例および合成例で合成した化合物の構造式および物理化学データを示す。
【0294】
【表1-1】
【0295】
【表1-2】
【0296】
【表1-3】

【0297】
【表2-1】
【0298】
【表2-2】
【0299】
【表2-3】
【0300】
【表2-4】
【0301】
【表2-5】
【0302】
【表2-6】
【0303】
【表2-7】
【0304】
【表2-8】
【0305】
【表2-9】
【0306】
【表2-10】
【0307】
【表2-11】
【0308】
【表2-12】
【0309】
【表2-13】
【0310】
【表2-14】
【0311】
【表2-15】
【0312】
[参考例1]ヒトiPS細胞からインスリン産生細胞への分化促進効果の評価
ヒトiPS細胞からインスリン産生細胞への分化促進効果(薬効)の評価系は、公知情報(非特許文献6)を参考に構築した。また、各分化ステージで使用する培地も上記公知情報を参考に作成した(ステージ1~5に対して、各々、非特許文献6記載の分化培地A~E(Medium A~E)を使用。ただし、分化培地Eに関してはGLP-1受容体アゴニストおよびニコチンアミドを含んでいないものを使用)。
化合物の薬効を評価するため、陽性コントロールとして合成例1の化合物を使用し、化合物無処置コントロールとして終濃度0.1%のジメチルスルホキシド(DMSO)(SIGMA、D2650)を用いた。全ての化合物はDMSOで溶解させ、培地へ添加後の化合物の終濃度が2μMおよび10μMとなるように2種類の化合物溶液を調製した。以下の評価において、化合物溶液はDMSOの終濃度0.1%となるように培地に添加した。
まず、非特許文献6の「ヒトiPS細胞から膵β細胞への分化誘導」の方法に従い、ヒトiPS細胞Toe株(医薬基盤研究所)から培養7日目の細胞(分化培地Cに交換して2日後(FOXA2陽性原始腸管細胞からPDX1陽性膵前駆細胞への分化過程の細胞)まで誘導し、細胞を回収後、バンバンカー(日本ジェネティクス)を用いて1x10細胞/mL/チューブにて液体窒素中に保存し、評価用細胞ストックを作製した。薬効評価の開始時に本細胞ストックを溶解し、ステージ3用の分化培地C(DMEM high glucose(Life technologies、11965092)、0.25μM SANT-1、 0.1μM LDN193189(Stemgent、04-0074)、10μM SB431542, 2μM Retinoic acid(Stemgent、04-0021)、1% B27 serum free supplement(Life technologies、17504044)に懸濁後、シンセマックスII(Corning、#5656)でコートした96穴プレート(Corning、#3340)に1x10細胞/ウェル播種した。2日間培養後、培地を除去し、化合物あるいはDMSOのみを添加した新しいステージ3用の分化培地Cを100μL/ウェル添加した。2日間培養後、培地を除去し、化合物あるいはDMSOのみを添加した新しいステージ4用の分化培地D(DMEM high glucose、 0.1μM LDN193189、5μM TGF-β type I receptor kinase inhibitor II (Calbiochem 616452)、0.3μM (-)-indolactam V (Enzo life science ALX-420-011-C300)、1% B27 serum free supplement)を100μL/ウェル添加した。2~3日間培養後、培地を除去し、化合物あるいはDMSOのみを添加した新しいステージ5用の分化培地E(GLP-1受容体アゴニストおよびニコチンアミド不含;Knockout DMEM/F-20 (Life technologies、12660012)、 1% B27 serum free supplement)を200μL/ウェル添加した。2日間培養後、培地を除去し、4%パラホルムアルデヒドりん酸緩衝液(Wako、163-20145)を150μL/ウェル添加し、30~60分間室温に置いて細胞を固定した。1%のTriton X-100(Sigma、T8787)を含むりん酸緩衝液(PBS)(Takara、T9181)で15分間室温に置いた後、PBS-T(Takara、T9183)で洗浄し、PBS-Tで希釈した20% Blocking One(Nacalai tesque、Tokyo、Japan)を用いて室温で1時間ブロッキングを行った。Blocking Oneを除去後、20%Blocking Oneで200倍に希釈したモルモット抗インスリン抗体(アブカム、ab7842)を50μL/ウェル添加し、一晩4℃に置いた。PBS-Tで3回洗浄後、20%Blocking Oneで1000倍に希釈したAlexa Fluor 548標識抗モルモット抗体(Life Technologies、A11075)および6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)(Roche Diagnostics、Basel、Switzerland)を添加して2時間室温に置いた。PBS-Tで3回洗浄後、細胞の蛍光画像の解析を行った。
【0313】
細胞画像の撮影はハイコンテンツイメージングシステムOpera PhenixあるいはOperetta(PerkinElmer)を用いて行った。更に、Harmony(PerkinElmer)を用いた解析によりインスリン陽性細胞およびDAPI陽性総細胞数を計測し、総細胞数に対するインスリン陽性細胞数の割合(インスリン陽性細胞率)を算出した。陽性コントロールとして合成例1の化合物を使用し、化合物無処置コントロールとして終濃度0.1%のDMSOを用いた。10μMの合成例1の化合物におけるインスリン陽性細胞率(30例の平均インスリン陽性細胞率、13%)の化合物無処置コントロール(30例の平均インスリン陽性細胞率、4.9%)からの増加分を100%とし、これを基準に各化合物各濃度のインスリン陽性細胞率増加分を百分率(%)に換算し、活性値とした。化合物の一次評価は、陽性コントロールを含めて各化合物は、2μMおよび10μMの2種類の濃度で、複数のウェルを用いて実施した。両濃度における活性値の和を陽性コントロールと比較することにより活性強度を判断した。両濃度における活性値の和が、化合物無処置コントロールに比べて明らかに高いが、陽性コントロールよりも低い場合を+、陽性コントロールと同等な場合を++、陽性コントロールよりも高い場合を+++と表記した。活性強度が弱い化合物に関しては、0.4、2、5あるいは10μMの濃度で、複数のウェルを用いて再評価を実施し、化合物無処置コントロールに比べて明らかに活性値が高いか、もしくは何れかの濃度での活性値が15%以上を示し、化合物無処置コントロールと比較したt検定によって有意差(P<0.05)を示した化合物を有効と判断した。比較的強い薬効を示した化合物については、濃度依存的効果を調べるため、0.01~10μMの濃度で複数のウェルを用いて二次評価を実施し、SigmaPlot(Systat Software)を用いてEC50(10μMの合成例1の化合物の薬効を100%とした場合に、その50%に相当する薬効を発揮できる化合物の濃度)を算出した。
【0314】
参考例1の結果を表3および表4に示す。
【0315】
【表3】
【0316】
【表4】
【0317】
参考例1の結果より、一般式(I)で表される化合物またはその塩は化合物を添加しない場合と比較し、多能性幹細胞を効率的にインスリン産生細胞に分化させ得ることが分かった。
【0318】
[実施例1]
(A)結果
(1)新規β細胞分化誘導剤のスクリーニング
以前に報告されたように(Sakano et al., 2014; Shiraki et al., 2008)、Pdx1プロモーターによって駆動されるGFPレポーター遺伝子を担持するマウスES細胞株SK7を、β細胞分化を増強する小分子化合物のスクリーニングのためのアッセイ系の確立のために使用した。
約55,000の化合物を用いた一次スクリーニングキャンペーン、続いて有効性の再現性および用量依存性を確認するための反復アッセイの後に、ヒット化合物K-1(合成例1で合成された化合物)がβ細胞分化を増強する新規化合物として発見された(図1)。K-1はPdx1-GFP+インスリン+二重陽性細胞の比率およびインスリン1の発現を用量依存的に増加させた。K-1は、γ-セクレターゼ阻害剤LY411575によるPdx1-GFP+Ins+二重陽性細胞の増加(Treff et al., 2006)を更に亢進した。この結果は、以前に膵臓内分泌分化を促進することが報告されているγ-セクレターゼ阻害とは異なる作用機序によって、K-1がその効力を示すことを表している。
【0319】
(2)K-1とその誘導体はヒトiPS細胞由来β細胞の分化を促進する。
ヒトiPS細胞のインスリン発現β(hiPS-β)細胞への分化に対する化合物の有効性を、2つの異なる分化プロトコールおよび3つのヒトiPS細胞株(Toe、RPChiPSC771、およびFf-I01s01(HLAホモ接合体患者由来のiPSC))を用いて調べた(図2-1a)。本発明者は、分化プロトコール#1の下で単層培養において、ステージ3の後期からステージ5の初期までの間のK-1によるToe iPSCの処理を最初に試験した。それはiPS-β細胞への強化された分化をもたらした(図2-1aおよびb)。本発明者はまたK-3(合成例9で合成された化合物)、K-4(合成例33で合成された化合物)、およびK-5(合成例101bで合成された化合物)のような他の誘導体の効果を検査した。K-3およびK-5は、元の化合物であるK-1よりも強力な効力を示すことが判明した(図2-1b)。
【0320】
次に、本発明者が最近確立した他の分化プロトコールを用いてK-3の効果を試験した。本発明者は以前、分化前の短期間のメチオニン除去処理が分化の増強をもたらすことを発見した(Shiraki et al., 2014)。従って、本発明者は、短時間(5時間)のメチオニン除去を組み入れ、分化プロトコール#1の下でRPChiPS771 iPSCのスフェア培養を行い、高機能性iPS-β細胞を得た(Shiraki et al., 2014)。K-3は、0.25μMでINSULIN+PDX1+二重陽性細胞への分化を増強した(図2-1c)。次に、分化プロトコール#2を用いた。ここでは、分化前に細胞をメチオニン除去で前処理し、そして亜鉛濃度を調節できる培地を用いて分化を行った。このプロトコールの下で、K-3はFf-I01s01のINSULIN+NKX6.1+、NKX6.1+PDX1+二重陽性、およびINSULIN+NKX6.1+PDX1+三重陽性細胞への分化を増強した。これらは、ステージ4の終わりに現れ、その後増加した(図2-1d)。K-3がステージ3を含むタイムウィンドウに添加された場合、K-3が分化を最も効果的に増強することを見出した。K-3はまた特にステージ3から5における処理によりNKX6.1+およびINSULIN+NKX6.1+二重陽性細胞の生成を促進した(図2-1d)。
【0321】
次いで、プロトコール#1、RpChiPSC771のスフェア培養の下で生成されたiPS-β細胞の機能アッセイを実施した。この機能アッセイでは、K-3のほか、K-5、K-6(合成例45で合成された化合物)、K-7(合成例93で合成された化合物)も使用した。K-3を含むヒット化合物は、得られたiPS-β細胞のグルコース刺激性インスリン分泌(GSIS)の活性を増強し、段階的な経時的測定で、急速な第1相および長期持続する第2相インスリン分泌を示した(図2-2e、左)。GSIS活性を定量するために、従来のバッチアッセイもまた実施した(図2-2e、右)。K-3は培養プロトコール#2においても同様の効果を示した(図2-2f)。従って、これは、それらの有効性が培養プロトコールや細胞株の変動性に依存しないことを示している。K-3によって処理されたiPS-β細胞は、インスリン分泌促進薬(グリベンクラミド、エキセンディン4、およびKCl)への刺激によって増強されたc-ペプチド分泌を示し(図2-2g)、このことは、化合物が機能的成熟を増強するかまたは細胞のインスリン含有量を増加させることを示す。
【0322】
(B)方法
(1)mESおよびhiPS細胞株の培養
SK7マウスES細胞株は、Pdx1-GFP遺伝子を有するトランスジェニックマウス系統から樹立され、以前に記載されているように(Shiraki et al., 2008)、MEFフィーダー細胞(Stem cell technology)上で維持された。ToeヒトiPS細胞株は、国立バイオメディカルイノベーション研究所(Japan)の細胞バンクから入手し、以前に記載されたように(Shahjalal et al., 2014)、フィーダーフリー異種条件で維持した。RPChiPS771細胞はリプロセルから購入し、FfI-01s01細胞はCiRAから提供された。RPChiPS771細胞およびFfl-01s01細胞を、synthemax II(Invitrogen, 3535XX1)被覆皿上で、それぞれEssential8(Invitrogen, A1517001)およびStemFit AK03N(味の素)を使って培養した。
【0323】
(2)SK7マウスES細胞とヒトiPS細胞の分化
SK7マウスES細胞を、基本的に以前の報告(Nakashima et al., 2015)に従って、β細胞に分化させた。手短に言えば、細胞を、CellBIND 384ウェル(CORNING, 3770)細胞培養プレートに1ウェルあたり5,000細胞で、または0.2%ゼラチンでコーティングした96ウェルプレート(Sigma)に1ウェルあたり20,000細胞で、播種した。その後、細胞を培地1で1日目から5日目まで培養した。培地1は、0.1mMのNEAA(Gibco, 11140-50)、2mMのL-グルタミン(Nakalai, 16948-04)、100U/mLのペニシリン-ストレプトマイシン(Nakalai, 26252-94)、0.01mMのβ-メルカプトエタノール(Sigma)、1%のインスリン-トランスフェリン-セレンサプリメント(ITS:Life Technologies, 41400045)、0.25%のAlbumax(ThermoFisher, 11020021)、および10ng/mLの組換えヒトアクチビン-A(R&D Systems, 338-AC)を添加したDMEM高グルコース(Life Technologies, 11965092)からなる。続いて、10μMのレチノイン酸(Stemgent, 04-0021)を補充した培地1からなる培地2中で1日間培養した。6日目に培地を培地3に交換し、β細胞への分化を誘導するために12日目まで培養を続けた。培地3は、0.1mMのNEAA、2mMのL-グルタミン、100U/mLのペニシリン-ストレプトマイシン、0.1mMのβ-メルカプトエタノール、1%のITS、0.25%のAlbumax、および3mMのニコチンアミド(Sigma-Aldrich, N0636-500G)を添加したDMEM低グルコース(Life Technologies, 11885084)からなる。試験化合物を8日目に添加し、細胞をハイコンテントイメージャーによる分析のために4%パラホルムアルデヒドで固定した。
【0324】
ToeヒトiPS細胞を、synthemax IIで被覆したCellBIND 6ウェル(CORNING, CLS3335)細胞培養プレートに播種し、以前に記載した方法(Shahjalal et al., 2014)によって原始腸管細胞に分化させた。細胞をTrypLE Select(ThermoFisher, 12563011)で解離させ、使用するまで1.0~2.0×10 cells/mLの密度でBanBanker(Nippon genetics)中で凍結保存した。化合物添加の1日前に、細胞を、ステージ3の培地(DMEM高グルコース、0.25μMのSANT1(Wako, 197-16351)、0.1μMのLDN193189(Stemgent, 04-0074)、10μMのSB431542、2μMのレチノイン酸、1%のB27無血清サプリメント(Life Technologies, 17504044)中で解凍し、1ウェルあたり150,000細胞でsynthemax IIで被覆したCellBIND 96ウェル(Corning, 3340)細胞培養プレートに播種した。試験化合物または陰性対照(0.01% DMSO)を含有するステージ3の培地中で細胞を1日間培養した。試験化合物または陰性対照を含有するステージ4および5の培地中でそれぞれ2日間および1日間さらに細胞を培養した。翌日、細胞をハイコンテントイメージャーで分析のために4%パラホルムアルデヒドで固定した。
【0325】
RPChipS771細胞を上記のように維持し、プロトコール#1に従って分化させた。手短に言えば、0日目に、細胞をTrypLE Selectで解離させ、Essential 8培地中1×10細胞/mLの濃度で低付着6ウェルプレート(Greiner, 657185)に移し、ロータリーシェーカー(95 rpm)上で培養した。1日目に、培地をメチオニン除去培地KA01(Ajinomot)に交換し、5時間培養した。培地を分化培地1(DMEM高グルコース、L-Gln、NEAA、0.01mMのβ-メルカプトエタノール、100ng/mLのアクチビンA、B27サプリメント、3μMのCHIR99021)に交換し、細胞を1日間培養した(ステージ1-1)。その後、培地を、CHIR99021を含まない培地1に交換し、2日間培養した(ステージ1-2)。細胞培養を培地2(RPMI、L-Gln、NEAA、0.01mMのβ-メルカプトエタノール、インスリンを除いたB27サプリメント、50ng/mLのFGF10、0.25μMのSANT1)で2日間(ステージ2)、培地3(DMEM高グルコース、L-Gln、NEAA、0.01mMのβ-メルカプトエタノール、0.15μMのSANT1、2μMのレチノイン酸、0.1μMのLDN193189、B27サプリメント)で6日間(ステージ3)、培地4(DMEM高グルコース、L-Gln、NEAA、0.01mMのβ-メルカプトエタノール、5μMのALK5阻害剤(Calbiochem, 616452)、0.3μMのインドラクタムV、0.1μMのLDN193189、B27サプリメント)で2日間(ステージ4)、培地5(KO DMEM/F12 、L-Gln、NEAA、0.01mMのβ-メルカプトエタノール、50ng/mLのエキセンディン4、10mMのニコチンアミド、10μMのZnSO、1mMのN-アセチル-L-システイン、B27サプリメント)で13日間(ステージ5)続けた。分化速度および細胞機能に対する化合物の有効性を評価する場合、試験化合物および陰性対照(0.01% DMSO)をステージ3および4の間(6日目~14日目)に処理し、インスリン陽性に対する効果を確認するために19日目に免疫染色を行い、27日目にGSIS(Glucose Stimulated Insulin Secretion)アッセイを行った。
【0326】
FfI-01s01細胞を上記のように維持し、そしてプロトコール#2に従って分化させた。手短に言えば、細胞をTrypLE Selectで解離させ、AK03N培地(味の素)中1×10細胞/mLの濃度で低付着6ウェルプレートに移し、ロータリーシェーカー(95 rpm)上で24時間培養し、その後、培地を、AK03Nベースのメチオニン除去培地KA01に交換し、細胞を5時間培養した。その後、培地をM1-1 AKM培地に交換し、細胞を24時間培養した(ステージ1-1)。細胞をM1-2 AKM培地で2日間培養し(ステージ1-2)、続いてM2 AKM培地で2日間培養し(ステージ2-1)、S2培地で2日間培養し(ステージ2-2)、S3培地で2日間培養し(ステージ3)、S4培地で5日間培養し(ステージ4)、S5-1培地で4日間培養し(ステージ5-1)、S5-2培地で3日間培養した(ステージ5)。
【0327】
AKM培地はインスリンおよびZn2+除去StemFit Basic 03培地である。
M1-1 AKM培地:100ng/mLのアクチビンA、3μMのCHIR990221を補充したAKM(100ng/mLのIGF1、0.5μMのZn)培地。
M1-2 AKM培地:100ng/mLアクチビンAを添加したAKM(100ng/mLのIGF1、Z0.5μMのZn)培地。
M2 AKM培地:50ng/mLのFGF10、250nMのSANT1を補充したAKM(0.5μMのZn)。
S2培地:50ng/mLのKGFと44μg/mLのビタミンCを補充したStemFit Basic 03。
S3培地:50ng/mLのKGF、50nMのインドラクタムV、2μMのレチノイン酸、250nMのSANT1、44μg/mLのビタミンCを補充したStemFit Basic 03。
S4培地:50ng/mLのKGF、100nMのレチノイン酸、250nMのSANT1、44μg/mLのビタミンC、100nMのLDN193189を補充したStemFit Basic 03。
S5-1培地:10μMのALK5阻害剤、10μMのDAPT、33.3ng/mLのEGF、100nMのレチノイン酸、1μMのT3、44μg/mLのビタミンCを補充したStemFit Basic 03。
S5-2培地:10μMのALK5阻害剤、10μMのDAPT、33.3 ng/mLのEGF、25 nMのレチノイン酸、1μMのT3を補充したStemFit Basic 03。
分化速度および細胞機能に対する化合物の有効性を評価する場合、試験化合物および陰性対照(0.01%DMSO)をステージ3および4の間(5日目~13日目)に処理し、インスリン、NKX6.1、およびPDX1の陽性に対する効果を確認するために、14日目(ステージ4終了時)および21日目(ステージ5終了時)に免疫染色を実施した。GSISアッセイは21日目に実施した。
【0328】
(3)β細胞分化を増強する化合物のスクリーニングおよびハイコンテントイメージングによる定量分析
約55,000の化合物からなる化学ライブラリーを、β細胞分化誘導物質についてスクリーニングした。一次スクリーニングに関しては、化合物を2mMの濃度になるようにDMSOに溶解し、SK-7マウスES細胞の分化の過程で、8日目に1:1000で添加し、10日目に培地を交換した。細胞を、12日目にモルモット抗インスリン、ウサギ抗GFPで免疫染色することによりアッセイした。蛍光画像は、OperettaハイコンテントイメージングシステムおよびHarmony画像解析ソフトウェア(PerkinElmer, Germany)により定量化した。核はDAPI染色により同定され、抗体染色の陽性は核を囲む細胞質領域の蛍光強度により決定された。インスリンおよびGFPの両方が陽性の細胞の数を数え、DAPI陽性総細胞数もしくは陽性エリア面積によって正規化した。4重データの中央値を計算し、スクリーニングヒットを、DMSO対照よりもインスリンおよびGFP陽性細胞数が増加した状態として定義した。本文に記載されているように、一次ヒット化合物を用量依存性および再現性についてさらに試験した。候補化合物の活性は再合成したものを用いて確認した。選択された候補化合物の活性は、マウスおよびヒトβ細胞分化の両方に対して有効性を有するヒット化合物を選択するために、ToeヒトiPS細胞アッセイシステムによってさらに分析された。化合物の添加は上記のようにして行い、有効性は3連の実験においてq-PCRによりmRNA発現レベルによって評価した。スクリーニングヒットは、用量依存的に、DMSO対照よりもβ-アクチンと比較して増加したインスリン発現レベルを伴う状態として定義された。
【0329】
(4)免疫細胞化学
以下の抗体を使用して、通常のプロトコールと共に免疫細胞化学を実施した:ウサギ抗MAFA(Abcam; ab26405; 1/100x)、ヤギ抗PDX1(R&D systems; AF2419; 1/100x)、マウス抗NKX6.1(Developmental Studies Hybridoma Bank, University of Iowa; F64A6B4; 1/100x)、モルモット抗INSULIN(Dako; IR002; 1/10x)、マウス抗INSULIN(Sigma-Aldrich; I2018; 1/1000x)、ウサギ抗C-ペプチド(Cell Signaling; 4593; 1/100x)、ウサギ抗GFP(MBL International Corp; 598; 1/1000x)、およびマウス抗GLUCAGON(Sigma-Aldrich; G2654; 1/1000x)。使用した二次抗体は、Alexa 488結合ヤギ抗マウスIgG(Invitrogen, A11029, 1/1000x)、Alexa 488結合ロバ抗モルモットIgG(Jackson ImmunoResearch Laboratory, 706-546-148)、AF647結合ロバ抗ウサギIgG(Jackson ImmunoResearch Laboratory, 711-606-152)、AF568結合ロバ抗マウスIgG(BIOTIUM, 20105)、Alexa 568結合ヤギ抗モルモットIgG(Invitrogen, A11075, 1/1000x)、Alexa 568結合ヤギ抗マウスIgG(Invitrogen, A11031、1/1000x)、Alexa 568結合ヤギ抗ウサギIgG(Invitrogen, A11036, 1/1000x)、Alexa 633結合ヤギ抗ウサギIgG(Invitrogen, A21072, 1/1000x)であった。細胞をDAPI(ThermoFisher, D1306)で対比染色した。
【0330】
(5)定量的リアルタイムPCR
マウスES細胞のcDNA調製はVILOマスターミックスを使用して行い、リアルタイムPCR分析はTaqman qPCRアッセイ(Applied Biosystems TaqMan gene expression assay ID: mouse Hprt1, Mm03024075_m1; mouse insulin1, Mm01950294_s1)を用いて製造元の説明書に従って行った。適切な試験試料の混合物の希釈系列を使用することによって作成された各遺伝子についての標準曲線を用いることによって遺伝子発現量を計算した。各遺伝子の発現レベルは、Hprt1発現レベルで補正した。
【0331】
(6)ヒトiPS細胞由来β細胞のグルコース刺激インスリン分泌(GSIS)反応の測定
時間依存的GSIS活性測定は以下のようにして行った。得られたヒトiPS-β細胞のアリコートを低グルコース(LG:3mMグルコース)HKRB緩衝液(COSMOBIO, PMC-PNIMG)中で10分間数回洗浄した。細胞を、24ウェルプレート(CORNING、3415)中のトランスウェル透過性支持体中のLG-HKRB緩衝液中でさらに30分間インキュベートし、上清のごく一部をc-ペプチド測定(LG 30分)用のサンプルとして取った。細胞懸濁液に追加の量のグルコースを添加して最終グルコース濃度を3から20mMに増加させることによって、高グルコース刺激を開始した。上清のサンプリングを経時的に行い(HG刺激の開始後10、30、60分;それぞれHG 10分、HG 30分、およびHG 60分)、続いて100μMのエキセンディン4および20mMのKClを順次添加し、30分間インキュベートした(それぞれEx4 30分およびKCl 30分)。
【0332】
バッチモードGSISアッセイは以下のように実施した。得られたヒトiPS-β細胞のアリコートを上記のようにLG-KRBHで洗浄した後、細胞をLG-HKRB緩衝液中で30分または1時間インキュベートし、続いてHG-HKRB緩衝液中で同じ時間インキュベートした。いくつかの実験では、細胞を洗浄した後、細胞をいくつかのアリコートに分配し、0.01%のDMSOまたは数種類のインスリン分泌促進薬を含有するHG-HKRB緩衝液中で1時間インキュベートした。サンプルのC-ペプチド濃度は、alphaLISA C-ペプチドキット(PerkinElmer, AL299F)またはC-ペプチドELISAを用いて測定し、GSISアッセイに用いた細胞のDNA含有量によって補正した。
【0333】
(7)DNA量の測定
GSISアッセイ後に細胞を回収し、そのDNAをAllPrep DNA/RNAマイクロキット(Qiagen, 80284)を用いて精製し、そしてDNAの濃度をQubitアッセイ(Lifescience technologies, Q32854)を用いて測定した。
【0334】
[参考文献]
Nakashima, R., Morooka, M., Shiraki, N., Sakano, D., Ogaki, S., Kume, K. and Kume, S. (2015). Neural cells play an inhibitory role in pancreatic differentiation of pluripotent stem cells. Genes Cells 1028-1045.
Sakano, D., Shiraki, N., Kikawa, K., Yamazoe, T., Kataoka, M., Umeda, K., Araki, K., Mao, D., Matsumoto, S., Nakagata, N., et al. (2014). VMAT2 identified as a regulator of late-stage β-cell differentiation. Nat. Chem. Biol. 10, 141-8.
Shahjalal, H. M., Shiraki, N., Sakano, D., Kikawa, K., Ogaki, S., Baba, H., Kume, K. and Kume, S. (2014). Generation of insulin-producing β-like cells from human iPS cells in a defined and completely xeno-free culture system. J. Mol. Cell Biol. 0, 1-15.
Shiraki, N., Yoshida, T., Araki, K., Umezawa, A., Higuchi, Y., Goto, H., Kume, K. and Kume, S. (2008). Guided differentiation of embryonic stem cells into Pdx1-expressing regional-specific definitive endoderm. Stem Cells 26, 874-85.
Shiraki, N., Shiraki, Y., Tsuyama, T., Obata, F., Miura, M., Nagae, G., Aburatani, H., Kume, K., Endo, F. and Kume, S. (2014). Methionine metabolism regulates maintenance and differentiation of human pluripotent stem cells. Cell Metab. 19, 780-794.
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【0335】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
図1
図2-1】
図2-2】