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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】支持部材
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/08 20060101AFI20240910BHJP
   F16M 13/00 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
F16F15/08 L
F16M13/00 T
F16M13/00 S
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024037767
(22)【出願日】2024-03-12
【審査請求日】2024-03-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591008605
【氏名又は名称】株式会社日本デジタル研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】浦上 仁
(72)【発明者】
【氏名】阿部 岳文
(72)【発明者】
【氏名】金丸 峻也
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-157271(JP,A)
【文献】特開平05-256394(JP,A)
【文献】特公昭32-007164(JP,B1)
【文献】実開昭61-075226(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/08
F16F 1/36
F16F 15/02
F16M 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持対象物の底面に取り付けられる支持部材であって、
前記支持対象物を設置する設置面に接触するグリップ部と、
前記グリップ部よりも相対的に摩擦係数が少なく、前記グリップ部における前記設置面に接触する部分よりも前記支持対象物の幅方向の外側で前記設置面に接触するスライド部と、
前記支持対象物と前記グリップ部の間に配置され、粘着力により前記支持対象物の前記底面と前記グリップ部を接合する接合部と、
を備え、
前記接合部は、前記スライド部よりも前記幅方向の内側に位置し、
前記グリップ部は、前記支持対象物が前記設置面に置かれると、前記支持対象物の荷重により前記接合部が配置されていない部位が弾性変形して前記支持対象物の前記底面に接触する、支持部材。
【請求項2】
前記スライド部は、
前記グリップ部における前記設置面に対向する接地面に配置されるとともに、厚みを有するシート状の部材により構成される、
請求項に記載の支持部材。
【請求項3】
前記接合部の厚みは、前記スライド部の厚みよりも厚く構成される、
請求項に記載の支持部材。
【請求項4】
前記支持対象物は、電子機器である、
請求項1から請求項までのいずれかに記載の支持部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持対象物の底面に取り付けられる支持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地震等の揺れからコンピュータ等の電子機器を保護するために免振技術が用いられている。この種の技術が記載されるものとして例えば特許文献1がある。特許文献1には、平常時の振動遮断を図るとともに、地震発生などの非常時には機器の転倒・破損を防止する除振・防振装置について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-125587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるような除振・防振装置は、機械的な免振機構により構成されるため、複雑な構成となる。また、除振・防振装置を配置するスペースが必要となり、小型の機器には適用できない可能性もある。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、地震等の衝撃に対する支持対象物の転倒防止機能をシンプルな構成で実現できる支持部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様は、支持対象物の底面に取り付けられる支持部材であって、前記支持対象物を設置する設置面に接触するグリップ部と、前記グリップ部よりも相対的に摩擦係数が少なく、前記グリップ部における前記設置面に接触する部分よりも前記支持対象物の所定方向の外側で前記設置面に接触するスライド部とを備える支持部材である。
【0007】
また、前記支持部材は、前記支持対象物と前記グリップ部の間に配置され、粘着力により前記支持対象物の前記底面と前記グリップ部を接合する接合部を更に備え、前記接合部は、前記スライド部よりも前記所定方向の内側に位置し、前記グリップ部は、前記支持対象物が前記設置面に置かれると、前記支持対象物の荷重により前記接合部が配置されていない部位が弾性変形して前記支持対象物の前記底面に接触してもよい。
【0008】
また、前記スライド部は、前記グリップ部における前記設置面に対向する接地面に配置されるとともに、厚みを有するシート状の部材により構成されてもよい。
【0009】
また、前記接合部の厚みは、前記スライド部の厚みよりも厚く構成されてもよい。
【0010】
また、前記支持対象物は、電子機器であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、地震等の衝撃に対する支持対象物の転倒防止機能をシンプルな構成で実現できる支持部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る支持部材が取り付けられる機器を示す正面図である。
図2】本実施形態に係る支持部材が取り付けられる機器の底面を下から見た斜視図である。
図3】本実施形態に係る支持部材の拡大斜視図である。
図4】本実施形態に係る支持部材の機器設置前の状態を示す断面図である。
図5】本実施形態に係る支持部材の機器設置後の状態を示す断面図である。
図6】本実施形態に係る支持部材の機器傾斜時の状態を示す断面図である。
図7】従来例のゴム足による転倒のメカニズムを説明する模式図である。
図8】本実施形態に係る支持部材による転倒防止のメカニズムを説明する模式図である。
図9】第1変形例の支持部材の機器設置前の状態を示す断面図である。
図10】第2変形例の支持部材の機器設置前の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る支持部材10が取り付けられる機器1を示す正面図である。図2は、本実施形態に係る支持部材10が取り付けられる機器1の底面3を下から見た斜視図である。
【0015】
図1には、支持部材10が取り付けられる支持対象物の一例としての機器1が示されている。機器1は、例えば、デスクトップコンピュータ、サーバ、記憶装置等の電子機器、計測装置等の精密機器、スピーカー等の音響機器等であり、卓上の設置面100に設置される。
【0016】
本実施形態では、機器1は、直方体状の筐体2を備えている。筐体2は、その幅方向が相対的に短く奥行方向が相対的に長く構成されている。以下、筐体2(機器1)の幅方向を短手方向とし、筐体2(機器1)の奥行方向を長手方向として説明する場合がある。このような構成の筐体2の場合、短手方向に倒れやすい重心配置となる。
【0017】
支持部材10は、一般的に卓上に設置される機器1の転倒防止を目的に機器1の筐体2の底面3に貼付又は組付されるゴム足である。図2に示すように、支持部材10は、機器1の筐体2の底面3に複数配置され、機器1は、支持部材10を介して設置面100に設置される。本実施形態では、支持部材10は、底面3のコーナーに対応するように4箇所配置されている。
【0018】
図3は、本実施形態に係る支持部材10の拡大斜視図である。図4は、本実施形態に係る支持部材10の機器1設置前の状態を示す断面図であり、図3のA-A線断面矢視図である。
【0019】
図3及び図4に示すように、支持部材10は、設置面100に対して滑りにくい部分であるグリップ部11と、設置面100に対して滑りやすい部分であるスライド部20と、支持部材10を筐体2の底面3に固定するための接合部30と、を備える。
【0020】
グリップ部11は、機器1の設置面100に対する摩擦係数が相対的に高い材料により構成される。グリップ部11の材料は、例えば、グリップが効くような摩擦係数を実現できるウレタンゴム等を利用できる。グリップ部11の設置面100に対向する接地面12の摩擦係数は、例えば、7以上が好ましい。本実施形態のグリップ部11は、復元力を有するゴム等の弾性変形可能な材料によって構成される。以下、グリップ部11の機器1の短手方向の長さをグリップ部11の長さL0とする。
【0021】
スライド部20は、設置面100に対する摩擦係数が相対的に低く滑りやすい材料により構成される。スライド部20の設置面100に対向する面の摩擦係数は、例えば、0.1以下が好ましい。本実施形態のスライド部20は、グリップ部11に対して摩擦係数が相対的に低いシート状の材料がグリップ部11の接地面12に貼り付けられることによって構成される。
【0022】
スライド部20は、機器1の長手方向(奥行方向)においてはグリップ部11の略全域にわたって形成される一方(図3参照)、機器1の短手方向(幅方向)においては機器1の外側の一部に形成される(図4参照)。本実施形態では、スライド部20における機器1の短手方向の長さをスライド部20の長さL1とすると、グリップ部11の長さL0の半分よりもスライド部20の長さL1の方が短くなっている。スライド部20の長さL1は、例えば、4mmである。なお、グリップ部11の幅方向の長さとスライド部20の幅方向の長さの比は4:1であることが好ましい。
【0023】
接合部30は、支持部材10において筐体2の底面3に対向する部分に配置される。本実施形態の接合部30は、両面テープのような両面に粘着部を有するシート状に構成され、グリップ部11の筐体2の底面3に対向する機器側面(支持対象物側面)13に貼り付けられる。
【0024】
接合部30は、機器1の長手方向においてはグリップ部11の略全域にわたって形成される一方、機器1の短手方向においては機器1の短手方向の内側(機器1の中心側)の一部に形成される。また、接合部30とスライド部20は、距離d1だけ幅方向にずれるように配置されており、上下方向視で重ならない位置関係になっている。
【0025】
本実施形態では、接合部30における機器1の短手方向の長さを接合部30の長さL2とすると、グリップ部11の長さL0の半分よりも接合部30の長さL2の方が長くなっている。更に、接合部30の長さL2は、スライド部20の長さL1よりも長く設定されている。接合部30の長さL2は、例えば、11mmである。
【0026】
ところで、図3は、機器1設置前の状態を示している。スライド部20は、シート状に構成されるため、スライド部20の厚みT1を有する。機器1が卓上に設置されていない状態では機器1による荷重がないため、グリップ部11の接地面12にはスライド部20の厚みT1分の段差が生じている状態となる。同様に、接合部30は、シート状に構成されるため、接合部30の厚みT2を有する。機器1が卓上に設置されていない状態では機器1による荷重がないため、筐体2の底面3とグリップ部11の機器側面13の間に接合部30の厚みT2に応じた隙間が生じている状態となる。
【0027】
次に、図5を参照し、機器1設置後の状態を説明する。図5は、本実施形態に係る支持部材10の機器1設置後の状態を示す断面図である。
【0028】
図5に示すように、機器1の荷重が支持部材10に掛かると、グリップ部11に対して機器1の幅方向で一様ではない屈曲した弾性変形が生じる。より具体的には、グリップ部11の接地面12における幅方向内側の部分が弾性変形により設置面100に接触した状態となる。即ち、摩擦係数の高いグリップ部11とスライド部20の両方が設置面100に接触した状態となる。機器1に横方向(幅方向)の多少の衝撃が加わってもグリップ部11の摩擦力により機器1の位置が保持される状態となる。
【0029】
また、機器1を設置面100に設置する機器1の荷重が支持部材10に掛かることにより、グリップ部11の機器側面13の幅方向外側の部分が弾性変形により筐体2の底面3に接触した状態となる。即ち、接合部30とともに摩擦係数の高いグリップ部11が機器1の筐体2の底面3に接触した状態となる。機器1に横方向(幅方向)の多少の衝撃が加わっても接合部30の粘着力とグリップ部11の摩擦力により、機器1に対する支持部材10の横方向へのズレも防止される。
【0030】
接合部30がグリップ部11の機器側面13の全域に形成されている場合に比べ、グリップ部11の機器側面13と筐体2の底面3の間の隙間分だけグリップ部11が屈曲するように変形できるのでグリップ部11の接地面12における設置面100との接触面積を大きく確保できる。また、接合部30とスライド部20が上下方向で重ならない位置関係となっていることにより、グリップ部11はより屈曲した弾性変形が可能となっている。
【0031】
次に、図6を参照し、機器1設置後の状態を説明する。図6は、本実施形態に係る支持部材10の機器1傾斜時の状態を示す断面図である。図6には、筐体2の上部が幅方向の外側に傾いた状態が示されている。
【0032】
図6に示すように、筐体2が傾くと、グリップ部11の接地面12が設置面100から離間した状態になる。この状態では、グリップ部11の摩擦力が解除され、支持部材10のうちスライド部20のみが設置面100に接触する状態となる。上述の通り、スライド部20は摩擦係数が少ない材料により構成されているので、設置面100を幅方向にスライド移動するような状態となる。このスライド移動により機器1の転倒が防止される。
【0033】
次に、図7及び図8を参照し、本実施形態の支持部材10によるスライド移動を利用した床の揺れ方向に対する転倒防止のメカニズムについて従来例と比較しながら説明する。
【0034】
図7は、従来例のゴム足50による転倒のメカニズムを説明する模式図である。図7には、従来例のゴム足50を取り付けた機器1が紙面左方向の床の揺れ方向により転倒する様子が段階的に示されている。なお、床の揺れは地震だけでなく外部からの衝撃に起因するものであってもよい。また、図7に示す支点垂直線は、正面視において右側に位置するゴム足50の右側端部(機器1の転倒時の回転中心)を上下方向に通過する仮想直線である。
【0035】
図7(a)には、従来例のゴム足50により機器1が設置面100の床に傾くことなく立っている通常の状態が示されている。従来例のゴム足50は、上記実施形態のグリップ部11と同様のゴム材料により構成されており、接地面の摩擦係数が高く、滑らないように設計されている。図7(a)の状態から機器1に対して設置面100の床が地震等に起因する外部からの衝撃によって紙面左側に動くと、図7(b)に示す機器1の上部が紙面右側に傾く状態となる。ゴム足50の設置面100に接触する面の摩擦係数が大きく構成されているので、グリップ力により機器1の下部はその場にとどまろうとするため、図7(c)に示す機器1の重心が支点垂直線を越えるまで機器1が傾いた状態となり、最終的に図7(d)に示すような転倒状態となる。このように、従来例のゴム足50は、そのグリップ力により、地震等による横揺れに対して滑らないため、機器1が転倒して破損・故障に繋がりやすい問題がある。
【0036】
図8は、本実施形態に係る支持部材10による転倒防止のメカニズムを説明する模式図である。図8には、本実施形態の支持部材10を取り付けた機器1が紙面左方向の床の揺れ方向により傾くものの転倒せず持ち直す様子が段階的に示されている。
【0037】
図8(a)には、支持部材10により機器1が設置面100の床に傾くことなく立っている通常の状態が示されている。図8(a)の状態から機器1に対して設置面100の床が地震等に起因する外部からの衝撃によって紙面左側に動くと、図8(b)に示す機器1の上部が紙面右側に傾く状態となる。この状態から図8(c)に示す機器1の重心が支点垂直線を越えようとする状態になる前に、支持部材10が図6に示すようなグリップ部11の摩擦力が解除され、スライド部20のみが設置面100に接触している状態となる。スライド部20のみが設置面100に接触する状態になることにより、機器1の下部が設置面100を右方向(図8の白抜きの矢印の方向)にスライド移動し、図8(d)に示すように、機器1の上部が左側に揺れ戻る。そして、機器1は最終的に転倒することなく図8(e)に示すように通常の状態に戻る。
【0038】
以上説明したように、支持対象物としての機器1の底面3に取り付けられる支持部材10は、支持対象物としての機器1を設置する設置面100に接触するグリップ部11と、グリップ部11よりも相対的に摩擦係数が少なく、グリップ部11における設置面100に接触する部分よりも機器1の所定方向(機器1の幅方向、短手方向)の外側で設置面100に接触するスライド部20と、を備える。
【0039】
これにより、通常使用時はグリップ部11の接地面12のグリップにより機器1の姿勢を安定的に維持し、地震等で設置面100に横揺れが発生した時に、機器1が少しでも傾けばスライド部20による横滑り(スライド移動)が生じて機器1の転倒が防止される。設置面100に接触する同一面に滑りにくい部分であるグリップ部11と滑りやすい部分であるスライド部20を配置するというシンプルな構成で、機器1の姿勢の安定性向上、振動伝達の抑制、機器1の底面3の表面保護とともに、地震や外部から衝撃等に起因する所定方向の揺れによる転倒防止効果を実現できる。また、横滑りにより転倒を防止できるので、支持部材10が機器1から幅方向に張り出す必要もなく、幅方向における左右の支持部材10の間隔を狭くできる。更に、グリップ部11とスライド部20は、比較的入手しやすい異なる材料により構成でき、機器1等の支持対象物に対して安価に免振機能を付加でき、機器1の転倒による破損・故障のリスクを低コストで低減できる。
【0040】
また、本実施形態の支持部材10は、機器1とグリップ部11の間に配置され、粘着力により機器1の底面3とグリップ部11を接合する接合部30を更に備え、接合部30は、スライド部20よりも所定方向の内側に位置し、グリップ部11は、機器1が設置面100に置かれると、機器1の荷重により接合部30が配置されていない部位が弾性変形して機器1の底面3に接触する。
【0041】
これにより、機器1の自重によって生じるグリップ部11のしなりと、接合部30が存在することによる高低差により、グリップ部11の接地面12を設置面100に確実に接触させることができるので、転倒防止機能を維持しつつ通常時の機器1の安定性を高めることができる。
【0042】
また、本実施形態のスライド部20は、グリップ部11における設置面100に対向する接地面12に配置されるとともに、厚みT1を有するシート状の部材により構成される。
【0043】
これにより、グリップ部11の弾性変形により通常時のグリップを確保しつつ、スライド部20の厚みT1により機器1傾斜時にいち早くスライド部20を設置面100に接触させることができ、転倒防止をより確実なものにすることができる。
【0044】
また、本実施形態の接合部30の厚みT2は、スライド部20の厚みT1よりも厚く構成される。
【0045】
これにより、機器1の設置前の状態においてスライド部20がグリップ部11よりも下側に位置する場合であっても、グリップ部11の接地面12を設置面100に接触させることができ、通常時のグリップ部11のグリップ効果をより確実に発揮させることができる。
【0046】
次に、上記実施形態とは異なる構成の変形例の支持部材110,210について説明する。なお、以下の説明において、上記実施形態と共通又は同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0047】
図9は、第1変形例の支持部材110の機器1設置前の状態を示す断面図である。図9に示すように、第1変形例の支持部材110は、摩擦係数の少ない材料で構成されるスライド部120を主要な構成としている。スライド部120は、機器1側の面の全域に接合部30が配置され、接合部30を通じて支持部材110が機器1に固定される。
【0048】
グリップ部111は、スライド部120における設置面100に対向する接地面121に対して摩擦係数が高い印刷等の処理を行うことにより形成される。グリップ部111の接地面112の摩擦係数はスライド部120の接地面121の摩擦係数よりも高く設定される。グリップ部111は、スライド部120の接地面121の幅方向内側に形成されており、スライド部120の接地面121の幅方向外側が露出するように構成されている。
【0049】
第1変形例では、機器1を設置面100に設置する前の状態において、グリップ部111の接地面112が、スライド部120の接地面121よりも下側に位置しており、グリップ部111が確実に設置面100に接触するように構成されている。第1変形例においても、グリップ部111が確実に設置面100に接触することにより、機器1をより安定的に支持することができる。
【0050】
図10は、第2変形例の支持部材210の機器1設置前の状態を示す断面図である。図10に示すように、第2変形例の支持部材210は、摩擦係数が相対的に高く設定されるグリップ部211と、摩擦係数が相対的に低く設定されるスライド部220と、が一体的ではなく別体として構成される。スライド部220は、グリップ部211に対して幅方向の外側に隣接配置される。
【0051】
グリップ部211は機器1側の面全域に配置される接合部30aにより機器1に固定される。スライド部220は機器1側の面全域に配置される接合部30bにより機器1に固定される。接合部30aと接合部30bも別々の独立した構成である。
【0052】
機器1を設置面100に設置する前の状態において、グリップ部211の接地面212が、スライド部220の接地面221よりも下側に位置しており、グリップ部111が確実に設置面100に接触するように構成されている。第2変形例においても、グリップ部211を弾性変形可能な材料で構成することにより、機器1をより安定的に支持することができる。
【0053】
以上説明した第1変形例や第2変形例の構成によっても、上記実施形態と同様の転倒防止効果を奏することができる。
【0054】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、上記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0055】
例えば、上記実施形態及び変形例では、支持対象物の一例として直方体形状の機器1を例に説明したが、機器1の構成が上記実施形態に限定される訳ではない。例えば、機器1を構成する筐体2の形状は直方体形状に限定される訳ではなく、立方体形状であってもよいし、円柱等の曲面を有する立体形状でもよい。更に、支持部材10が取り付けられる支持対象物は、機器1に限定される訳ではなく、家具等にも取り付けることができる。
【0056】
上記実施形態及び変形例では、接合部30は両面テープによって構成されているが、この構成に限定される訳ではない。接合部30は、ボルト等の締結部材を利用した機械的固定により、支持部材10と機器1を固定する構成としてもよい。
【0057】
上記実施形態及び変形例では、スライド部20,120,220はグリップ部11,111,211に対して幅方向外側に配置される構成であるが、配置場所が幅方向外側に限定される訳ではない。テレビのような奥行方向が短手方向となる支持対象物の場合は奥行方向外側にスライド部が配置されてもよい。このように、スライド部とグリップ部の位置関係は支持対象物の構造によって適宜変更することができる。
【実施例
【0058】
次に、本実施形態の支持部材10の転倒防止機能と、図7に示すような従来例のゴム足50の転倒防止機能と、を確認するために行った実証試験について説明する。以下、従来例のゴム足50を比較例として説明する。
【0059】
実証試験では、幅方向にスライド移動可能な台に支持部材10を取り付けた機器1を設置し、振幅12cmで幅方向に揺動させた場合の転倒した回数を確認した。同様に、幅方向にスライド移動可能な台に比較例のゴム足50を取り付けた機器1を設置し、同じ振幅12cmで幅方向に揺動させた場合の転倒した回数を確認した。
【0060】
この結果、本実施形態の支持部材10取り付けた機器1の実験回数における転倒割合が2割であるのに対し、比較例のゴム足50を取り付けた機器1の実験回数における転倒割合が10割であった。この実験結果から、本実施形態の支持部材10が比較例のゴム足50よりも転倒を防止できるという従来技術にはない優れた効果を有することが実証された。
【符号の説明】
【0061】
1 機器(支持対象物)
2 筐体
3 底面
10,110,120 支持部材
11,111,211 グリップ部
12,112,212 接地面
13 機器側面
20,120,220 スライド部
30 接合部
100 設置面

【要約】
【課題】地震等の衝撃に対する支持対象物の転倒防止機能をシンプルな構成で実現できる支持部材を提供する。
【解決手段】支持対象物としての機器1の底面3に取り付けられる支持部材10は、支持対象物としての機器1を設置する設置面100に接触するグリップ部11と、グリップ部11よりも相対的に摩擦係数が少なく、グリップ部11における設置面100に接触する部分よりも機器1の所定方向(幅方向)の外側で設置面100に接触するスライド部20と、を備える。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10