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特許7553052切削円周面測定装置および被切削物測定方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】切削円周面測定装置および被切削物測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 21/20 20060101AFI20240910BHJP
   B23B 1/00 20060101ALN20240910BHJP
【FI】
G01B21/20 C
B23B1/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020217148
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102427
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-09-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)刊行物名:2020年度精密工学会春季大会講演論文集CD-ROM 発行者名:公益社団法人精密工学会 発行日:令和2年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000137856
【氏名又は名称】シチズンマシナリー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502340996
【氏名又は名称】学校法人法政大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 一朗
(72)【発明者】
【氏名】北風 絢子
(72)【発明者】
【氏名】野口 賢次
(72)【発明者】
【氏名】中谷 尊一
(72)【発明者】
【氏名】三宮 一彦
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-056605(JP,A)
【文献】特開2017-177267(JP,A)
【文献】特開2005-292539(JP,A)
【文献】特開昭62-214313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00-5/30
21/00-21/32
B23B 1/00-25/06
17/00-23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の凸状微細部が円周面に周期的に分散して残存した被切削物の表面形状を測定する切削円周面測定装置であって、
前記被切削物の円周面に沿って前記被切削物の表面形状を測定する測定プローブと、
前記被切削物の軸心を中心に前記被切削物または前記測定プローブの少なくとも一方を回転させる被切削物回転手段と、
前記測定プローブまたは前記被切削物の少なくとも一方を前記被切削物の軸心と平行に直線移動させる測定点移動手段と、
前記被切削物の凸状微細部の1つを前記被切削物に対する測定開始点として検出する測定開始点検出手段と、
前記被切削物の凸状微細部が相互に連なる配列方向を前記被切削物に対する測定方向として特定する測定方向特定手段と、
前記被切削物回転手段および前記測定点移動手段を制御して前記測定プローブを前記測定開始点から前記測定方向に移動させる駆動制御手段とを備えている、切削円周面測定装置。
【請求項2】
前記測定開始点検出手段が、前記被切削物の円周面の所定領域内を前記測定プローブで複数回異なる測定経路で走査して前記被切削物の凸状微細部を特定する、請求項1に記載の切削円周面測定装置。
【請求項3】
前記測定方向特定手段が、前記測定プローブを前記被切削物の円周面に沿って走査させた結果に基づいて前記測定方向を特定する、請求項1または請求項2に記載の切削円周面測定装置。
【請求項4】
低周波振動切削加工により円周面に複数の凸状微細部が周期的に分散して残存した被切削物の円周面に沿って前記被切削物の表面形状を測定する測定プローブと、前記被切削物の軸心を中心に前記被切削物または前記測定プローブの少なくとも一方を回転させる被切削物回転手段と、前記を測定プローブまたは前記被切削物の少なくとも一方を前記被切削物の軸心と平行に直線移動させる測定点移動手段と、前記被切削物に対する測定開始点として検出する測定開始点検出手段と、前記被切削物に対する測定方向として特定する測定方向特定手段と、前記被切削物回転手段および前記測定点移動手段を制御する駆動制御手段とを備えて前記被切削物の表面形状を測定する切削円周面測定装置を用いた被切削物測定方法であって、
前記測定方向特定手段が前記被切削物の凸状微細部が相互に連なる配列方向を前記被切削物の表面形状の測定方向として特定する測定方向特定ステップと、
前記測定開始点検出手段が前記被切削物の凸状微細部の1つを前記被切削物の表面形状の測定開始点として検出する測定開始点特定ステップと、
前記駆動制御手段が前記測定プローブを前記測定開始点から前記測定方向に移動させる測定ステップとを備えている、被切削物測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削円周面測定装置および被切削物測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、円筒体の検査方法として、円筒体の軸方向にわたって、円筒体の軸に対する一円周上の半径方向の変位量の最大値である円周振れを測定することにより凹凸を検出するものであって、円筒体の表面を軸方向にスパイラル状に走査するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-292539号公報(特に、請求項3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した円筒体の検査方法により、低周波振動切削加工により円周面に複数の凸状微細部が周期的に分散して残存した被切削物を検知しようとすると、走査経路上に凹部しか存在しなかった場合に正しい被切削物の表面形状を測定できない虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、複数の凸状微細部が周期的に分散して残存した被切削物の表面形状を正確に測定する切削円周面測定装置および被切削物測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1に、低周波振動切削加工により複数の凸状微細部が円周面に周期的に分散して残存した被切削物の表面形状を測定する切削円周面測定装置であって、前記被切削物の円周面に沿って前記被切削物の表面形状を測定する測定プローブと、前記被切削物の軸心を中心に前記被切削物または前記測定プローブの少なくとも一方を回転させる被切削物回転手段と、前記測定プローブまたは前記被切削物の少なくとも一方を前記被切削物の軸心と平行に直線移動させる測定点移動手段と、前記被切削物の凸状微細部の1つを前記被切削物に対する測定開始点として検出する測定開始点検出手段と、前記被切削物の凸状微細部が相互に連なる配列方向を前記被切削物に対する測定方向として特定する測定方向特定手段と、前記被切削物回転手段および前記測定点移動手段を制御して前記測定プローブを前記測定開始点から前記測定方向に移動させる駆動制御手段とを備えていることを特徴とする。
【0007】
第2に、前記測定開始点検出手段が、前記被切削物の円周面の所定領域内を前記測定プローブで複数回異なる測定経路で走査して前記被切削物の凸状微細部を特定することを特徴とする。
【0008】
第3に、前記測定方向特定手段が、前記測定プローブを前記被切削物の円周面に沿って走査させた結果に基づいて前記測定方向を特定することを特徴とする。
【0009】
第4に、低周波振動切削加工により円周面に複数の凸状微細部が周期的に分散して残存した被切削物の円周面に沿って前記被切削物の表面形状を測定する測定プローブと、前記被切削物の軸心を中心に前記被切削物または前記測定プローブの少なくとも一方を回転させる被切削物回転手段と、前記を測定プローブまたは前記被切削物の少なくとも一方を前記被切削物の軸心と平行に直線移動させる測定点移動手段と、前記被切削物に対する測定開始点として検出する測定開始点検出手段と、前記被切削物に対する測定方向として特定する測定方向特定手段と、前記被切削物回転手段および前記測定点移動手段を制御する駆動制御手段とを備えて前記被切削物の表面形状を測定する切削円周面測定装置を用いた被切削物測定方法であって、前記測定方向特定手段が前記被切削物の凸状微細部が相互に連なる配列方向を前記被切削物の表面形状の測定方向として特定する測定方向特定ステップと、前記測定開始点検出手段が前記被切削物の凸状微細部の1つを前記被切削物の表面形状の測定開始点として検出する測定開始点特定ステップと、前記駆動制御手段が前記測定プローブを前記測定開始点から前記測定方向に移動させる測定ステップとを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、以下の効果を奏することができる。
(1)被切削物の凸状微細部の1つを被切削物に対する測定開始点として検出する測定開始点検出手段と、被切削物の凸状微細部が相互に連なる配列方向を被切削物に対する測定方向として特定する測定方向特定手段と、被切削物回転手段および測定点移動手段を制御して測定プローブを測定開始点から測定方向に移動させる駆動制御手段とを備えていることにより、測定プローブが確実に被切削物の凸状微細部を通過するため、低周波振動切削加工により複数の凸状微細部が周期的に分散して残存した被切削物の表面形状を正確に測定することができる。
【0011】
(2)測定開始点検出手段が、被切削物の円周面の所定領域内を測定プローブで複数回異なる測定経路で走査して被切削物の凸状微細部を特定することにより、測定開始点となる被切削物の凸状微細部が測定対象の被切削物を走査して特定されるため、より正確に被切削物の表面形状を測定することができる。
【0012】
(3)測定方向特定手段が、測定プローブを被切削物の円周面に沿って走査させた結果に基づいて測定方向を特定することにより、実際に測定する被切削物に即して測定方向が特定されるため、より正確に被切削物の表面形状を測定することができる。
【0013】
(4)測定方向特定手段が被切削物の凸状微細部が相互に連なる配列方向を被切削物の表面形状の測定方向として特定する測定方向特定ステップと、測定開始点検出手段が被切削物の凸状微細部の1つを被切削物の表面形状の測定開始点として検出する測定開始点特定ステップと、駆動制御手段が測定プローブを測定開始点から測定方向に移動させる測定ステップとを備えていることにより、測定プローブが確実に被切削物の凸状微細部を通過するため、低周波振動切削加工により複数の凸状微細部が周期的に分散して残存した被切削物の表面形状を正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A】本発明の一実施例である切削円周面測定装置による測定対象物である被切削物の斜視図。
図1B図1Aの部分拡大図。
図1C図1Bの線図で示した図。
図1D図1Bの展開図。
図2】本発明の一実施例である切削円周面測定装置の斜視模式図。
図3】測定方向の特定手順を示すフローチャート。
図4A】被切削物の表面形状の3次元データを画像化した結果を示す図。
図4B図4Aに対して凸状微細部を抽出した状態を示す図。
図4C図4Bに対して測定方向の候補を特定した状態を示す図。
図5】表面形状の測定手順を示すフローチャート。
図6A】測定開始点を特定するための測定プローブの測定経路を示す図。
図6B】測定プローブの測定結果を示す図。
図6C】測定プローブの測定方向を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、低周波振動切削加工により複数の凸状微細部が円周面に周期的に分散して残存した被切削物の表面形状を測定する切削円周面測定装置であって、被切削物の円周面に沿って被切削物の表面形状を測定する測定プローブと、被切削物の軸心を中心に被切削物または測定プローブの少なくとも一方を回転させる被切削物回転手段と、測定プローブまたは被切削物の少なくとも一方を被切削物の軸心と平行に直線移動させる測定点移動手段と、被切削物の凸状微細部の1つを被切削物に対する測定開始点として検出する測定開始点検出手段と、被切削物の凸状微細部が相互に連なる配列方向を被切削物に対する測定方向として特定する測定方向特定手段と、被切削物回転手段および測定点移動手段を制御して測定プローブを測定開始点から測定方向に移動させる駆動制御手段とを備え、複数の凸状微細部が周期的に分散して残存した被切削物の表面形状を正確に測定するものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても構わない。
【0016】
例えば、切削円周面測定装置の測定する被切削物の円周面に残存する凸状微細部が被切削物の円周面に少なくとも2個以上残存していれば、被切削物の表面形状は切削円周面測定装置により測定可能であるが、凸状微細部が被切削物の円周面に無数(数え切れないほど多い程度)に残存していれば、切削円周面測定装置が多くの凸状微細部に基づいて測定方向を特定できるため、被切削物の表面形状を切削円周面測定装置により正確に測定することができる。
【0017】
例えば、切削円周面測定装置が測定する被切削物は、円周面を有していれば、円柱状の被切削物、円筒状の被切削物、円錐体状の被切削物、円錐台状の被切削物等、如何なる形状であってもよい。
【0018】
例えば、切削円周面測定装置が測定する被切削物の表面形状は、表面性状、表面粗さ、平面度、真直度、円筒度、真円度等、如何なるものであってもよい。
【0019】
例えば、測定プローブは、被切削物に接触して被切削物の表面形状を測定するものであってもよいし、非接触で被切削物の表面形状を測定するものであってもよい。
【0020】
例えば、測定点移動手段は、測定プローブを被切削物の軸心と平行に直線移動させるものであってもよいし、被切削物を被切削物の軸心と平行に直線移動させるものであってもよいし、測定プローブおよび被切削物を被切削物の軸心と平行に直線移動させるものであってもよい。
【0021】
例えば、回転手段は、被加工物の軸心を中心に被加工物を回転させるものであってもよいし、被加工物の軸心を中心に測定プローブを回転させるものであってもよいし、被加工物の軸心を中心に被加工物および測定プローブを回転させるものであってもよい。
【実施例
【0022】
以下、図1乃至図6Dに基づいて、本発明の一実施例である切削円周面測定装置および切削円周面測定装置による切削円周面測定方法について説明する。
【0023】
<1.被切削物の形状>
まず、図1A乃至図1Dに基づき、本発明の一実施例である切削円周面測定装置による測定対象物である被切削物について説明する。
図1Aは本発明の一実施例である切削円周面測定装置による測定対象物である被切削物の斜視図であり、図1B図1Aの部分拡大図であり、図1C図1Bを線図で示した図であり、図1D図1Bの展開図である。
【0024】
切削円周面測定装置による測定対象物である被切削物Wは、丸棒を低周波振動切削加工で加工したものである。
【0025】
ここで、低周波振動切削加工とは、被切削物または切削工具の少なくともいずれか一方を切削方向に振動させつつ、被切削物を把持する主軸の回転を切削方向の振動と同期させて行う加工である。
このような低周波振動切削加工を被切削物Wに行うと、図1Bおよび図1Cに示すような切削経路Lを切削工具が通過するため、被切削物Wの加工済み部分の円周面は、図1B図1C図1Dに示すように島状にも見える無数の凸状微細部Tと、切削工具の通過により凸状微細部Tの相互間に形成された凹部Vが周期的に分散して残存する。
なお、図1Bおよび図1Dにおいて、色が白い箇所は高さが高く、色が黒い箇所は高さが低くなっている。
【0026】
<2.切削円周面測定装置の概要>
次に、図2に基づき、切削円周面測定装置100の概要について説明する。
図2は、本発明の一実施例である切削円周面測定装置の斜視模式図である。
【0027】
被切削物Wの表面形状を測定する切削円周面測定装置100は、水平が保たれた床面Fに載置されて表面が水平な基台110と、円周面を有する被切削物Wを保持する被切削物保持部材120と、被切削物Wの表面形状を測定する測定プローブ130と、この測定プローブ130を支持する支持アーム140と、測定プローブ130を移動させるプローブ移動機構(測定点移動手段)150と、コントローラー160とを有している。
【0028】
被切削物保持部材120は、基台110に載置される角柱状のベース121と、このベース121の上部に取り付けられるチャック122と、ベース121に内蔵されてチャック122を回転させるモーター(被切削物回転手段)123とを有している。
チャック122は、水平方向に伸びて被切削物Wを回転自在に把持する。
したがって、被切削物Wの軸心Zは水平方向に向かって伸び、被切削物Wは軸心Zを中心に回転する。
【0029】
測定プローブ130は、被切削物Wの円周面と対向する接触式のプローブである。
【0030】
支持アーム140は、基台110から鉛直方向に伸びる直立部141と、この直立部141から水平方向に伸びる水平部142とから構成されている。
【0031】
プローブ移動機構150は、支持アーム140の水平部142に取り付けられており、水平方向に移動自在となっている。
また、プローブ移動機構150には、測定プローブ130の先端が鉛直下方を向くように取り付けられている。
したがって、測定プローブ130は、被切削物Wの円周面に沿って被切削物Wの軸心Zと平行に直線移動することができる。
【0032】
コントローラー160は、モーター123とプローブ移動機構150とを制御する駆動制御部(駆動制御手段)161と、CPU等の演算部162と、測定プローブ130による被切削物Wの表面形状の測定結果や演算部162による演算結果を記憶する記憶部163とを有している。
演算部162は、被切削物Wに対する測定方向として特定する測定方向特定手段162aと、被切削物Wに対する測定開始点として検出する測定開始点検出手段162bとを有している。
【0033】
切削円周面測定装置100が以上のように構成されていることにより、切削円周面測定装置100は、被切削物Wの表面の表面形状を長手方向および周方向だけでなく、螺旋方向に計測が可能になっている。
【0034】
<3.切削円周面測定方法>
次に、図3乃至図6Cに基づき、切削円周面測定装置100による切削円周面測定方法について説明する。
【0035】
<3.1.測定方向の特定>
まず、図3乃至図4Cに基づき、切削円周面測定装置100が事前に行う測定方向の特定について説明する。
図3は測定方向の特定手順を示すフローチャートであり、図4Aは被切削物の表面形状の3次元データを画像化した結果を示す図であり、図4B図4Aに対して凸状微細部を抽出した状態を示す図であり、図4C図4Bに対して測定方向の候補を特定した状態を示す図である。
【0036】
(ステップS10)
切削円周面測定装置100は、まず、測定対象となる被切削物の表面形状の3次元データを読み込む。
この3次元データは、測定対象となる被切削物に対する加工条件と同条件による加工シミュレーションに基づくシミュレーションデータであり、少なくとも送り方向(被切削物の長手方向)位置、位相(回転角)、高さの3つを含む。
図4Aは、測定対象となる被切削物の表面形状の3次元データを画像化したものであり、位相を横軸、送り方向位置を縦軸に取り、高さを色の違いで表現した図であり、色が白い点ほど高さが高く、色が黒い点ほど高さが低くなっている。
【0037】
(ステップS11)
そして、切削円周面測定装置100の演算手段162は、ステップS10で読み込んだ3次元データから、島状の凸状微細部Tを抽出する。
具体的には、ステップS10で読み込んだ3次元データに対して自己相関関数やウェーブレット解析を適用したり、ステップS10で読み込んだ3次元データを画像データ化した図4Aに示すような画像データに対して、2値化や数値微分やデジタルフィルタを適用したり、ウェーブレット解析をしたり、パターン認識等の画像処理技術・画像認識技術を適用したりして、図4Bに示すような無数の島状にも見える凸状微細部Tを抽出する。
凸状微細部Tは、図4Bに示すように、頂点の一帯を含むエリアとなっている。
【0038】
(ステップS12)
そして、切削円周面測定装置100の測定方向特定手段162aは、ステップS11で処理した画像データから、画像認識により被切削物の凸状微細部Tが相互に連なる配列方向d1~d4を被切削物に対する測定方向の候補として特定する。

具体的には、図4Aのように画像化される3次元データであれば、測定方向の候補として、図4Cに示すように、送り方向と概ね平行に伸びる方向(d1)、斜めに伸びる方向(d2、d4)、周(位相)方向と概ね平行に伸びる方向(d3)が存在する。
【0039】
<3.2.表面形状の測定>
次に、図5乃至図6Cに基づき、被切削物の表面形状の測定について説明する。
図5は表面形状の測定手順を示すフローチャートであり、図6Aは測定開始点を特定するための測定プローブの測定経路を示す図であり、図6Bは測定プローブの測定結果を示す図であり、図6Cは測定プローブの測定方向を示す図である。
【0040】
(ステップS20)
まず、切削円周面測定装置100の駆動制御部161は、モーター123またはプローブ移動機構150の少なくとも一方を制御して、図6Aに示すように、被切削物Wの円周面の所定の測定開始点検索領域A内を測定プローブ130で複数回異なる測定経路Sで走査する。
【0041】
(ステップS21)
そして、切削円周面測定装置100の測定開始点検出手段162bは、図6Bのような測定プローブ130による測定結果から、最も高い点(被切削物Wの凸状微細部Tの頂点近傍)を測定開始点Pと特定する。
【0042】
(ステップS22)
そして、ステップS12により特定された測定方向の候補(d1、d2、d3、d4)のうちユーザーにより設定された方向を測定方向として、測定開始点Pから測定プローブ130による走査を行い、被切削物Wの表面形状の測定を行う。
この測定開始点Pから測定方向に向けた測定プローブ130による走査の回数は、1回に限らず、複数回行っても良い。
また、測定開始点Pを僅かにずらして測定方向に測定プローブ130を走査させることを繰り返した結果を測定結果としても良い。
【0043】
なお、d1方向を測定方向として選択した場合の被切削物Wの表面形状の測定結果によれば、低周波振動切削加工による送り条件が適切であるか否かが確認できる。
また、d2方向、d3方向、d4方向を測定方向として選択した場合の被切削物Wの表面形状の測定結果によれば、低周波振動切削加工による振動条件が適切であるか否かが確認できる。
【0044】
<4.本実施例の切削円周面測定装置が奏する効果>
以上説明したように、本発明の一実施例である切削円周面測定装置100によれば、被切削物Wの凸状微細部Tの1つを被切削物に対する測定開始点Pとして検出する測定開始点検出手段162bと、被切削物Wの凸状微細部Tの周期的に連なる方向を被切削物に対する測定方向として特定する測定方向特定手段162aと、被切削物回転手段であるモーター123および測定点移動手段であるプローブ移動機構150とを制御して測定プローブ130を測定開始点Pから測定方向に移動させる駆動制御手段である駆動制御部161を備えていることにより、測定プローブ130が確実に被切削物Wの凸状微細部Tを通過するため、低周波振動切削加工により無数の凸状微細部Tが周期的に分散して残存した被切削物Wの表面形状を正確に測定することができる。
なお、被切削物Wの表面形状の測定結果とシミュレーションデータとを比較した場合に、凸状微細部の間隔のズレや相違を確認することで、工作機械の主軸の回転数と切削工具の振動数の位相ズレ・同期ズレの有無を検出して、そのズレ量を推定することもできる。
【0045】
また、測定開始点検出手段162bが、被切削物Wの円周面の所定の測定開始点検索領域A内を測定プローブ130で複数回異なる測定経路Sで走査して被切削物Wの凸状微細部Tを特定することにより、測定開始点Pとなる被切削物Wの凸状微細部Tが測定対象の被切削物Wを走査して特定されるため、より正確に被切削物Wの表面形状を測定することができる。
【0046】
<5.変形例>
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、上記の実施例に限定されるものではない。
【0047】
例えば、本実施例において、切削円周面測定装置は、測定プローブを1本のみ有していたが、切削円周面測定装置が有する測定プローブの本数は1本に限定されるものではなく、切削円周面測定装置は、測定プローブを複数有していてもよい。
なお、切削円周面測定装置が測定プローブを複数有することにより、複数の点を同時に測定可能となるため、単位時間あたりの測定点数が増加し、より測定データを高密度化することができる。
加えて、測定プローブのそれぞれが独立に移動自在である場合、複数の測定方向を同時に測定することができる。
また、複数の測定プローブは被加工物に接触して被加工物の表面形状を測定するものと非接触で被加工物の表面形状を測定するものの一方のみで構成されてもよいし、両方を用いて構成されてもよい。
さらに、複数の測定プローブの先端形状や材質をそれぞれ異なる形状とすることができるため、粗さ測定に用いる先端半径の小さい測定プローブ、うねり・形状測定に用いる先端半径の大きい測定プローブ、円盤形、ナイフエッジ形、楔形、円柱形、先端の曲がった鉤形など特殊測定に用いる当該測定に見合う特殊な先端形状の測定プローブなどを併用することができる。
【0048】
例えば、本実施例において、被切削物Wは中実の丸棒を低周波振動切削加工したものであったが、被切削物Wはこれに限定されるものではなく、例えば、中空の丸棒を低周波振動切削加工したものであってもよい。
【0049】
例えば、本実施例において、測定方向の候補を特定する際に、加工シミュレーションに基づくシミュレーションデータを用いていたが、測定プローブを測定対象である被切削物の円周面に沿って走査させた結果に基づいて測定方向の候補を特定してもよい。
この場合、実際に測定する被切削物に即して測定方向が特定されるため、より正確に被切削物の表面形状を測定することができる。
【0050】
例えば、本実施例のステップS20において、測定経路SをZ送り方向位置を一定にしたまま位相のみを変化させた経路(図6Aにおける横方向)としていたが、測定経路Sはこれに限定されるものではなく、測定開始点検索領域A内において、位相を一定にしてZ方向送り位置を変化させる経路(図6Aにおける縦方向)としたり、測定経路Sおよび位相をそれぞれ変化させた経路(図6Aにおける斜め方向)としたりしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
100 ・・・ 切削円周面測定装置
110 ・・・ 基台
120 ・・・ 被切削物保持部材
121 ・・・ ベース
122 ・・・ チャック
123 ・・・ モーター(被切削物回転手段)
130 ・・・ 測定プローブ
140 ・・・ 支持アーム
141 ・・・ 直立部
142 ・・・ 水平部
150 ・・・ プローブ移動機構(測定点移動手段)
160 ・・・ コントローラー
161 ・・・ 駆動制御部(駆動制御手段)
162 ・・・ 演算部
162a・・・ 測定方向特定手段
162b・・・ 測定開始点検出手段
163 ・・・ 記憶部

F ・・・ 床面
Z ・・・ 被切削物の軸心

W ・・・ 被切削物
T ・・・ 凸状微細部
V ・・・ 凹部
P ・・・ 測定開始点
L ・・・ 切削経路
S ・・・ 測定経路
A ・・・ 測定開始点検索領域
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図6C