(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】電子材料用硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/10 20060101AFI20240910BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20240910BHJP
C08K 3/32 20060101ALI20240910BHJP
C08K 5/053 20060101ALI20240910BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20240910BHJP
C08L 83/06 20060101ALI20240910BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
C08L101/10
C08K3/22
C08K3/32
C08K5/053
C08L71/02
C08L83/06
H05K1/03 610G
(21)【出願番号】P 2023556899
(86)(22)【出願日】2023-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2023011197
(87)【国際公開番号】W WO2023182347
(87)【国際公開日】2023-09-28
【審査請求日】2023-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2022050930
(32)【優先日】2022-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】305044143
【氏名又は名称】積水フーラー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】池内 拓人
(72)【発明者】
【氏名】木下 昌己
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-302243(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0315911(US,A1)
【文献】特開2018-162426(JP,A)
【文献】特開2012-214777(JP,A)
【文献】国際公開第01/005888(WO,A1)
【文献】特開2005-187810(JP,A)
【文献】特開2016-149388(JP,A)
【文献】特開2010-222548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08K,H05K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂と、リン系化合物と、多価アルコールと
、酸化チタンとを含み、上記多価アルコールは、トリペンタエリスリトール及びポリペンタエリスリトールからなる群から選ばれた少なくとも一種の多価アルコールを含
み、
上記硬化性樹脂は、加水分解性シリル基を有する重合体及び加水分解架橋性シリコーン系重合体のうち少なくとも一方を含み、
上記リン系化合物の含有量が、上記硬化性樹脂100質量部に対して、50質量部以上であり、
上記リン系化合物は、ポリリン酸アンモニウム、及び水難溶性無機リン系化合物のうち少なくとも一方を含み、
上記水難溶性無機リン系化合物は、亜リン酸アルミニウム、第1リン酸アルミニウム、第2リン酸アルミニウム、第3リン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、及び縮合リン酸アルミニウムよりなる群から選択される一種であることを特徴とする電子材料用硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
硬化性樹脂と、リン系化合物と、多価アルコールと、アミノシランカップリング剤とを含み、上記硬化性樹脂は、加水分解性シリル基を有する重合体を含み、
上記リン系化合物の含有量が、上記硬化性樹脂100質量部に対して、50質量部以上であ
り、
上記リン系化合物は、ポリリン酸アンモニウム、及び水難溶性無機リン系化合物のうち少なくとも一方を含み、
上記水難溶性無機リン系化合物は、亜リン酸アルミニウム、第1リン酸アルミニウム、第2リン酸アルミニウム、第3リン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、及び縮合リン酸アルミニウムよりなる群から選択される一種であることを特徴とする電子材料用硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
硬化性樹脂と、リン系化合物と、多価アルコールと
、酸化チタンとを含み、上記硬化性樹脂は、加水分解性シリル基を有し且つ重量平均分子量が3000以上、70000以下であるポリアルキレンオキサイドを含
み、
上記リン系化合物の含有量が、上記硬化性樹脂100質量部に対して、50質量部以上であり、
上記リン系化合物は、ポリリン酸アンモニウム、及び水難溶性無機リン系化合物のうち少なくとも一方を含み、
上記水難溶性無機リン系化合物は、亜リン酸アルミニウム、第1リン酸アルミニウム、第2リン酸アルミニウム、第3リン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、及び縮合リン酸アルミニウムよりなる群から選択される一種であることを特徴とする電子材料用硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
硬化性樹脂と、リン系化合物と、多価アルコールとを含み、上記硬化性樹脂は、加水分解架橋性シリコーン系重合体を含み、
上記リン系化合物の含有量が、上記硬化性樹脂100質量部に対して、50質量部以上であり、
上記リン系化合物は、ポリリン酸アンモニウム、及び水難溶性無機リン系化合物のうち少なくとも一方を含み、
上記水難溶性無機リン系化合物は、亜リン酸アルミニウム、第1リン酸アルミニウム、第2リン酸アルミニウム、第3リン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、及び縮合リン酸アルミニウムよりなる群から選択される一種であり、且つ
上記多価アルコール中の水酸基の数が、4個以上であることを特徴とする電子材料用硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
上記加水分解架橋性シリコーン系重合体は、メチル基又はフェニル基が結合している珪素原子を含有していることを特徴とする請求項4に記載の電子材料用硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
上記加水分解架橋性シリコーン系重合体は、メチル基及びフェニル基が結合している珪素原子を含有していることを特徴とする請求項4に記載の電子材料用硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
上記リン系化合物は、ポリリン酸アンモニウムを含有することを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載の電子材料用硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
上記リン系化合物の含有量と上記多価アルコールの含有量との比(リン系化合物の質量/多価アルコールの質量)が0.5~6.0であることを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載の電子材料用硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
酸化チタンを更に含有していることを特徴とする請求項
2及び4~6の何れか1項に記載の電子材料用硬化性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子材料用硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から火災時における延焼を抑制するために、自動車部材、家電、電子材料、スポーツ用品、建材などにおいて難燃化が進められている。
【0003】
近年、エレクトロニクス分野の進歩がめざましく、特に電子機器の小型化、軽量化、高密度化が進み、プリント配線板、発光ダイオード(LED)をはじめとする電子材料は、薄型化、多層化、高精細化がますます要求されるようになっている。このような電子材料にも難燃化が要望されている。
【0004】
特許文献1には、(A)高分子化合物、(B)ポリリン酸アンモニウム、(C)水酸化アルミニウム及び/又は水酸化マグネシウム、(D)多価アルコール、(E)メラミン骨格を有する化合物、及び、(F)中空セラミックビーズ及び/又は膨張黒鉛を含有する難燃性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の難燃性樹脂組成物は粘度が高く、電子材料への適用が難しいという問題点を有している。
【0007】
本発明は、優れた塗工性を有し、電子材料に容易に適用することができ、電子材料に難燃性を付与し又は電子材料の難燃性を向上させることができる電子材料用硬化性樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電子材料用硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂と、リン系化合物と、多価アルコールとを含むことを特徴とする。
【0009】
[硬化性樹脂]
硬化性樹脂は、1液型硬化性樹脂であっても、2液型硬化性樹脂であってもよい。1液型硬化性樹脂は、水分、光照射又は熱によって架橋構造が導入されて硬化する重合体が含まれる。2液型硬化性樹脂は、主剤と硬化剤とを混合することによって架橋構造が導入されて硬化する重合体が含まれる。
【0010】
[1液型硬化性樹脂]
1液型硬化性樹脂としては、加水分解性シリル基を有する重合体、加水分解架橋性シリコーン系重合体、加水分解性イソシアネート基を有する重合体、光架橋性重合体などが挙げられ、加水分解性シリル基を有する重合体を含むことが好ましい。
【0011】
加水分解性シリル基を含有する重合体は、水の存在下にて、加水分解性シリル基の加水分解性基が加水分解してシラノール基(≡SiOH)を生成する。そして、シラノール基同士が脱水縮合して架橋構造が形成される。加水分解架橋性シリコーン系重合体、加水分解性イソシアネート基を有する重合体は、加水分解性イソシアネート基が水の存在下にて、二酸化炭素を生成しながら尿素結合(-NHCONH-)を生成して架橋構造を形成する。
【0012】
加水分解性シリル基とは、珪素原子に1~3個の加水分解性基が結合してなる基である。加水分解性シリル基の加水分解性基としては、特に限定されず、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基、オキシム基などが挙げられる。
【0013】
なかでも、加水分解性シリル基としては、加水分解反応が穏やかであることから、アルコキシシリル基が好ましい。アルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、及びトリフェノキシシリル基などのトリアルコキシシリル基;プロピルジメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、及びメチルジエトキシシリル基などのジアルコキシシリル基;並びに、ジメチルメトキシシリル基、及びジメチルエトキシシリル基などのモノアルコキシシリル基が挙げられる。
【0014】
加水分解性イソシアネート基とは、加水分解によって尿素結合(-NHCONH-)を形成し得るイソシアネート基をいう。
【0015】
[加水分解性シリル基を有する重合体]
加水分解性シリル基を有する重合体としては、特に限定されず、例えば、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド、加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体、加水分解性シリル基を有するウレタン系重合体、加水分解性シリル基を有するポリオレフィン系系重合体などが挙げられる。加水分解性シリル基を有する重合体としては、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイドを含有していることが好ましい。なお、加水分解性シリル基を有する重合体は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0016】
硬化性樹脂中における加水分解性シリル基を有する重合体の含有量は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%がより好ましい。
【0017】
[加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド]
加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイドにおいて、加水分解性シリル基は、アルコキシシリル基が好ましく、ジアルコキシシリル基がより好ましく、ジメトキシシリル基がより好ましく、プロピルジメトキシシリル基がより好ましい。
【0018】
加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイドは、1分子中に平均して、1~4個の加水分解性シリル基を有していることが好ましい。加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイドにおける加水分解性シリル基の数が上記範囲内にあると、電子材料用硬化性樹脂組成物の硬化物の難燃性が向上する。加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイドは、その主鎖の両末端のうち少なくとも一方に加水分解性シリル基を有していることが好ましい。
【0019】
なお、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド中における、1分子当たりの加水分解性シリル基の平均個数は、1H-NMRにより求められるポリアルキレンオキサイド中の加水分解性シリル基の濃度、及びGPC法により求められるポリアルキレンオキサイドの数平均分子量に基づいて算出することができる。
【0020】
加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイドを構成しているポリアルキレンオキサイドとしては、主鎖が、一般式:-(R1-O)m-(式中、R1は炭素数が1~14のアルキレン基を表し、mは、繰り返し単位の数であって正の整数である。)で表される繰り返し単位を含有する重合体が好ましく挙げられる。ポリアルキレンオキサイドの主鎖骨格は一種のみの繰り返し単位からなっていてもよいし、二種以上の繰り返し単位からなっていてもよい。
【0021】
本発明において、アルキレン基とは、脂肪族飽和炭化水素中の異なる2個の炭素原子に結合する2個の水素原子を除いて生じる2価の原子団であり、直鎖状及び分岐状の双方の原子団を含む。
【0022】
アルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基[-CH(CH3)-CH2-]、トリメチレン基[-CH2-CH2-CH2-]、ブチレン基、アミレン基[-(CH2)5-]、ヘキシレン基などが挙げられる。
【0023】
ポリアルキレンオキサイドの主鎖骨格としては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイド、ポリテトラメチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド-ポリプロピレンオキサイド共重合体、及びポリプロピレンオキサイド-ポリブチレンオキサイド共重合体などが挙げられる。なかでも、ポリプロピレンオキサイドが好ましい。ポリプロピレンオキサイドによれば、電子材料用硬化性樹脂組成物の粘度を低減させて塗工性を向上させ、電子材料用硬化性樹脂組成物を狭い塗工箇所に精度良く塗工することができる。
【0024】
加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイドの数平均分子量は、3000以上が好ましく、10000以上がより好ましい。加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイドの数平均分子量は、50000以下が好ましく、40000以下がより好ましく、30000以下がより好ましい。ポリアルキレンオキサイドの数平均分子量が3000以上であると、ポリアルキレンオキサイドは容易に低分子量体に熱分解しないので、電子材料用硬化性樹脂組成物の硬化物は優れた難燃性を有している。ポリアルキレンオキサイドの数平均分子量が50000以下であると、電子材料用電子材料用硬化性樹脂組成物の塗工性が向上し、小型の電子材料の所望箇所に精度良く塗工することができる。
【0025】
加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイドの重量平均分子量は、3000以上が好ましく、8000以上がより好ましく、10000以上がより好ましい。加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイドの重量平均分子量は、70000以下が好ましく、60000以下がより好ましく、50000以下がより好ましい。ポリアルキレンオキサイドの重量平均分子量が3000以上であると、ポリアルキレンオキサイドは容易に低分子量体に熱分解しないので、電子材料用硬化性樹脂組成物の硬化物は優れた難燃性を有している。ポリアルキレンオキサイドの重量平均分子量が70000以下であると、電子材料用電子材料用硬化性樹脂組成物の塗工性が向上し、小型の電子材料の所望箇所に精度良く塗工することができる。
【0026】
なお、本発明において、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイドの数平均分子量及び重量平均分子量とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定されたポリスチレン換算した値を意味する。
【0027】
加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイドの数平均分子量及び重量平均分子量は、例えば、下記測定装置及び測定条件にて測定することができる。
測定装置 TOSOH社製 商品名「HLC-8121GPC/HT」
測定条件 カラム:TSKgelGMHHR-H(20)HT×3本
TSKguardcolumn-HHR(30)HT×1本
移動相:o-DCB 1.0mL/分
サンプル濃度:1mg/mL
検出器:ブライス型屈折計
標準物質:ポリスチレン(TOSOH社製 分子量:500~8420000)
溶出条件:145℃
SEC温度:145℃
【0028】
加水分解性シリル基を有しているポリアルキレンオキサイドは、市販されているものを用いることができる。例えば、加水分解性シリル基を有しているポリアルキレンオキサイドとしては、カネカ社製 商品名「MSポリマー S-203」、「MSポリマー S-303」、「MSポリマー S-303H」、「サイリルポリマー SAT-200」、「サイリルポリマー SAT-350」及び「サイリルポリマー SAT-400」などが挙げられる。加水分解性シリル基を有しているポリアルキレンオキサイドとしては、旭硝子社製 商品名「エクセスター ESS-3620」、「エクセスター ESS-2420」、「エクセスター ESS2410」及び「エクセスター ESS3430」などが挙げられる。
【0029】
主鎖がポリプロピレンオキサイドで且つポリプロピレンオキサイドの末端に(メトキシメチル)ジメトキシシリル基を有しているポリアルキレンオキサイドは、カネカ社から商品名「HS-2」にて市販されている。
【0030】
主鎖がポリプロピレンオキサイドで且つポリプロピレンオキサイドの末端にイソプロピルジメトキシメチルシリル基を有しているポリアルキレンオキサイドは、カネカ社から商品名「SAX720」にて市販されている。
【0031】
硬化性樹脂中における加水分解性シリル基を有しているポリアルキレンオキサイドの含有量は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%がより好ましい。
【0032】
[加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体]
加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体に含有されている加水分解性シリル基としては、加水分解反応が穏やかであることから、アルコキシシリル基が好ましく、トリアルコキシシリル基がより好ましく、トリメトキシシリル基が特に好ましい。
【0033】
加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体において、1分子中の加水分解性シリル基の平均個数は、1個以上が好ましく、2個以上がより好ましい。加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体において、1分子中の加水分解性シリル基の平均個数は、4個以下が好ましく、2.5個以下がより好ましい。加水分解性シリル基の数が1個以上であると、電子材料用硬化性樹脂組成物の硬化物の難燃性が向上する。加水分解性シリル基の数が4個以下であると、電子材料用硬化性樹脂組成物の粘度を低減させて塗工性を向上させ、電子材料用硬化性樹脂組成物を狭い塗工箇所に精度良く塗工することができると共に、電子材料用硬化性樹脂組成物を塗工箇所に塗工した時に、電子材料用硬化性樹脂組成物が塗工箇所において円滑に流動し、優れたレベリング性を有する。加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体は、その主鎖の両末端のうち少なくとも一方に加水分解性シリル基を有していることが好ましい。
【0034】
加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体は、加水分解性シリル基を有さないアクリル系重合体と併用して使用してもよい。この場合、両者全体での1分子あたりの加水分解性シリル基の数は、0.3以上が好ましく、0.5以上がより好ましい。加水分解性シリル基の数が0.3以上であると、電子材料用硬化性樹脂組成物の硬化性が向上する。一方、両者全体での1分子あたりの加水分解性シリル基の数は、2.0以下であることが好ましく、1.8以下であることがより好ましい。加水分解性シリル基の数が2.0以下であると、電子材料用硬化性樹脂組成物の粘度を低減させて塗工性を向上させ、電子材料用硬化性樹脂組成物を狭い塗工箇所に精度良く塗工することができると共に、電子材料用硬化性樹脂組成物を塗工箇所に塗工した時に、電子材料用硬化性樹脂組成物が塗工箇所において円滑に流動し、優れたレベリング性を有する。
【0035】
アクリル系重合体への加水分解性シリル基の導入方法としては、特に限定されず、例えば、主鎖骨格を構成する単量体の共重合体に不飽和基を導入した後、加水分解性シリル基を有するヒドロシランを作用させてヒドロシリル化する方法などが挙げられる。
【0036】
なお、加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体中における、1分子当たりの加水分解性シリル基の平均個数は、1H-NMRにより求められる加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体中の加水分解性シリル基の濃度、及びGPC法により求められる加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体の数平均分子量に基づいて算出する。
【0037】
加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体の主鎖骨格は、メチル(メタ)アクリレート及びブチル(メタ)アクリレートを含む単量体の共重合体が好ましく、メチルメタクリレート及びブチルアクリレートを含む単量体の共重合体がより好ましく、メチルメタクリレート及びn-ブチルアクリレートを含む単量体の共重合体がより好ましい。主鎖骨格が上記共重合体である、加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体によれば、電子材料用硬化性樹脂組成物の硬化物の難燃性が向上する。なお、(メタ)アクリレートは、メタクリレート及び/又はアクリレートを意味する。
【0038】
加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体において、メチル(メタ)アクリレート成分の含有量は、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体において、メチル(メタ)アクリレート成分の含有量は、70質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。メチル(メタ)アクリレート成分の含有量が3質量%以上であることによって、電子材料用硬化性樹脂組成物の粘度を低減させて塗工性を向上させ、電子材料用硬化性樹脂組成物を狭い塗工箇所に精度良く塗工することができると共に、電子材料用硬化性樹脂組成物を塗工箇所に塗工した時に、電子材料用硬化性樹脂組成物が塗工箇所において円滑に流動し、優れたレベリング性を有する。メチル(メタ)アクリレート成分の含有量が70質量%以下であることによって、電子材料用硬化性樹脂組成物の粘度を低減させて塗工性を向上させ、電子材料用硬化性樹脂組成物を狭い塗工箇所に精度良く塗工することができる。
【0039】
加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体において、ブチル(メタ)アクリレート成分の含有量は、30~97質量%が好ましく、50~95質量%がより好ましい。ブチル(メタ)アクリレート成分の含有量が30質量%以上であることによって、電子材料用硬化性樹脂組成物の粘度を低減させて塗工性を向上させ、電子材料用硬化性樹脂組成物を狭い塗工箇所に精度良く塗工することができる。
【0040】
加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体において、主鎖骨格を構成している重合体に用いられる単量体は、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、及びブチルメタクリレートの他に、さらに他のモノマーを含んでいてもよい。他のモノマーとしては、例えば、スチレン、インデン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレン、p-クロロメチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-tert-ブトキシスチレン、ジビニルベンゼンなどのスチレン誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、安息香酸ビニル、珪皮酸ビニルなどのビニルエステル基を持つ化合物、無水マレイン酸、N-ビニルピロリドン、N-ビニルモルフォリン、メタクリロニトリル、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、n-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル、tert-アミルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、2-クロロエチルビニルエーテル、エチレングリコールブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールメチルビニルエーテル、安息香酸(4-ビニロキシ)ブチル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ブタン-1,4-ジオール-ジビニルエーテル、ヘキサン-1,6-ジオール-ジビニルエーテル、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール-ジビニルエーテル、イソフタル酸ジ(4-ビニロキシ)ブチル、グルタル酸ジ(4-ビニロキシ)ブチル、コハク酸ジ(4-ビニロキシ)ブチルトリメチロールプロパントリビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、6-ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサン-1,4-ジメタノールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、3-アミノプロピルビニルエーテル、2-(N,N-ジエチルアミノ)エチルビニルエーテル、ウレタンビニルエーテル、ポリエステルビニルエーテルなどのビニロキシ基を持つ化合物などを挙げることができる。これらのモノマーは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0041】
加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体の重合方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができ、例えば、フリーラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法、UVラジカル重合法、リビングアニオン重合法、リビングカチオン重合法、リビングラジカル重合法などの各種重合法などが挙げられる。
【0042】
加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体の重量平均分子量は、1000~50000が好ましく、2000~30000がより好ましく、3000~15000が特に好ましい。重量平均分子量が上記範囲内である加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体によれば、電子材料用硬化性樹脂組成物の粘度を低減させて塗工性を向上させ、電子材料用硬化性樹脂組成物を狭い塗工箇所に精度良く塗工することができると共に、電子材料用硬化性樹脂組成物を塗工箇所に塗工した時に、電子材料用硬化性樹脂組成物が塗工箇所において円滑に流動し、優れたレベリング性を有する。
【0043】
加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体の数平均分子量は、1000~50000が好ましく、2000~30000がより好ましく、3000~15000が特に好ましい。重量平均分子量が上記範囲内である加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体によれば、電子材料用硬化性樹脂組成物の粘度を低減させて塗工性を向上させ、電子材料用硬化性樹脂組成物を狭い塗工箇所に精度良く塗工することができると共に、電子材料用硬化性樹脂組成物を塗工箇所に塗工した時に、電子材料用硬化性樹脂組成物が塗工箇所において円滑に流動し、優れたレベリング性を有する。
【0044】
加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体の数平均分子量及び重量平均分子量は、例えば、下記測定装置及び測定条件にて測定することができる。
測定装置 TOSOH社製 商品名「HLC-8121GPC/HT」
測定条件 カラム:TSKgelGMHHR-H(20)HT×3本
TSKguardcolumn-HHR(30)HT×1本
移動相:o-DCB 1.0mL/分
サンプル濃度:1mg/mL
検出器:ブライス型屈折計
標準物質:ポリスチレン(TOSOH社製 分子量:500~8420000)
溶出条件:145℃
SEC温度:145℃
【0045】
[加水分解性シリル基を有するウレタン系重合体]
ウレタン系重合体は、ウレタン結合(-NHCOO-)が繰り返して形成されてなる主鎖を有する重合体をいう。加水分解性シリル基を有するウレタン系重合体は、ウレタン系重合体の主鎖に複数個の加水分解性シリル基を有している。加水分解性シリル基を有するウレタン系重合体は、ウレタン系重合体の主鎖の両末端に加水分解性シリル基を有することが好ましい。
【0046】
[加水分解性シリル基を有するポリオレフィン系重合体]
ポリオレフィン系重合体としては、例えば、ポリエチレン系重合体、ポリプロピレン系重合体などが挙げられる。加水分解性シリル基を有するポリオレフィン系重合体は、ポリオレフィン系重合体の主鎖に複数個の加水分解性シリル基を有している。加水分解性シリル基を有するポリオレフィン系重合体は、ポリオレフィン系重合体の主鎖の両末端に加水分解性シリル基を有することが好ましい。
【0047】
[加水分解架橋性シリコーン系重合体]
シリコーン系重合体は、シロキサン結合(-Si-O-)が繰り返して形成されてなる分子鎖(主鎖)を有する重合体をいう。シリコーン系重合体の主鎖は直鎖状であることが好ましい。加水分解架橋性シリコーン系重合体は、シリコーン系重合体の主鎖を構成している珪素原子の一部に加水分解性基が結合している。
【0048】
硬化性樹脂として加水分解架橋性シリコーン系重合体を含有していると、電子材料用硬化性樹脂組成物の硬化物は、燃焼初期において迅速に膨張して電子材料が燃焼することによる延焼を低減化することができ、電子材料に優れた難燃性を付与することができる。
【0049】
加水分解性基としては、特に限定されず、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基などが挙げられ、アルコシキ基が好ましい。
【0050】
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などが挙げられ、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0051】
加水分解架橋性シリコーン系重合体は、湿気又は架橋剤の存在下、必要に応じて触媒などを使用することによって、加水分解性基において縮合反応を生じて架橋構造を形成する。加水分解架橋性シリコーン系重合体が加水分解性基としてアルコキシ基を有している場合、アルコキシ基の一部が加水分解してヒドロキシ基を生成し、このヒドロキシ基とアルコキシ基とが脱アルコール縮合反応を生じて架橋構造を形成する。
【0052】
加水分解架橋性シリコーン系重合体中における加水分解性基の含有量は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。加水分解架橋性シリコーン系重合体中における加水分解性基の含有量は、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下がより好ましい。加水分解性基の含有量が5質量%以上であると、電子材料用硬化性樹脂組成物の硬化物の燃焼残渣の硬度が向上し、電子材料における電子材料用硬化性樹脂組成物の塗工箇所に安定的に存在し、電子材料に優れた難燃性を付与することができる。加水分解性基の含有量が50質量%以下であると、電子材料用硬化性樹脂組成物の硬化物の膨張性を向上させて、電子材料用硬化性樹脂組成物の難燃性を向上させることができる。なお、加水分解架橋性シリコーン系重合体中の加水分解性基の含有量は、1H-NMRにより求められる加水分解架橋性シリコーン系重合体中の加水分解性基の濃度、及びGPC法により求められる加水分解架橋性シリコーン系重合体の数平均分子量に基づいて算出することができる。
【0053】
加水分解架橋性シリコーン系重合体中における加水分解性基の含有量は、5モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましい。加水分解架橋性シリコーン系重合体中における加水分解性基の含有量は、50モル%以下が好ましく、40モル%以下がより好ましく、35モル%以下がより好ましい。加水分解性基の含有量が5モル%以上であると、電子材料用硬化性樹脂組成物の硬化物の燃焼残渣の硬度が向上し、電子材料における電子材料用硬化性樹脂組成物の塗工箇所に安定的に存在し、電子材料に優れた難燃性を付与することができる。加水分解性基の含有量が50モル%以下であると、電子材料用硬化性樹脂組成物の硬化物の膨張性を向上させて、電子材料用硬化性樹脂組成物の難燃性を向上させることができる。なお、加水分解架橋性シリコーン系重合体中の加水分解性基の含有量は、1H-NMRにより求められる加水分解架橋性シリコーン系重合体中の加水分解性基の濃度、及びGPC法により求められる加水分解架橋性シリコーン系重合体の数平均分子量に基づいて算出することができる。
【0054】
加水分解架橋性シリコーン系重合体中の一部の珪素原子にメチル基又はフェニル基が結合していることが好ましい。加水分解架橋性シリコーン系重合体は、メチル基又はフェニル基が結合している珪素原子を有していることが好ましい。加水分解架橋性シリコーン系重合体は、フェニル基が結合している珪素原子を有していることがより好ましい。加水分解架橋性シリコーン系重合体中の一部の珪素原子にメチル基又はフェニル基が結合していると、電子材料用硬化性樹脂組成物の難燃性を向上させることができる。
【0055】
加水分解性シリコーン系重合体中の一部の珪素原子にメチル基及びフェニル基が結合していることが好ましい。即ち、加水分解性シリコーン系重合体は、メチル基及びフェニル基が結合している珪素原子を有していることが好ましい。加水分解架橋性シリコーン系重合体中の一部の珪素原子にメチル基及びフェニル基が結合していると、電子材料用硬化性樹脂組成物の難燃性を向上させることができる。
【0056】
加水分解性シリコーン系重合体において、フェニル基の含有量は、10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、25モル%以上がより好ましく、30モル%以上がより好ましい。加水分解性シリコーン系重合体において、フェニル基の含有量は、80モル%以下が好ましく、70モル%以下がより好ましく、60モル%以下がより好ましく、50モル%以下がより好ましく、40モル%以下がより好ましく、35モル%以下がより好ましい。フェニル基の含有量が10モル%以上であると、電子材料用硬化性樹脂組成物の難燃性を向上させることができる。フェニル基の含有量が80モル%以下であると、電子材料用硬化性樹脂組成物の粘度が低減化し、電子材料用硬化性樹脂組成物の塗工性が向上する。
【0057】
フェニル基の含有量(モル%)は、下記の式で示される。
フェニル基の含有量(モル%)=100×フェニル基の数/珪素原子の結合手の数
なお、「フェニル基の数」とは、シロキサン結合(-Si-O-)が繰り返されて形成された直鎖状の分子鎖(主鎖)(ポリシロキサン)を構成している珪素原子に結合しているフェニル基の総数をいう。「珪素原子の結合手の数」とは、主鎖を構成している珪素原子について、珪素原子が有する4個の結合手から、上記主鎖を構成するために使用された結合手を除いた残余の結合手の総数をいう。主鎖の両末端の珪素原子について、主鎖を構成するために使用された結合手とは、酸素に結合した結合手のみをいう。
【0058】
加水分解性シリコーン系重合体において、メチル基の含有量は、10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上がより好ましく、40モル%以上がより好ましく、50モル%以上がより好ましく、55モル%以上がより好ましい。加水分解性シリコーン系重合体において、メチル基の含有量は、98モル%以下が好ましく、96モル%以下がより好ましく、95モル%以下がより好ましく、90モル%以下がより好ましく、80モル%以下がより好ましく、70モル%以下がより好ましい。メチル基の含有量が10モル%以上であると、電子材料用硬化性樹脂組成物の粘度が低減化し、電子材料用硬化性樹脂組成物の塗工性が向上する。メチル基の含有量が98モル%以下であると、電子材料用硬化性樹脂組成物の難燃性が向上する。
【0059】
メチル基の含有量(モル%)は、下記の式で示される。
メチル基の含有量(モル%)=100×メチル基の数/珪素原子の結合手の数
なお、「メチル基の数」とは、シロキサン結合(-Si-O-)が繰り返されて形成された直鎖状の分子鎖(主鎖)(ポリシロキサン)を構成している珪素原子に結合しているメチル基の総数をいう。「珪素原子の結合手の数」とは、主鎖を構成している珪素原子について、珪素原子が有する4個の結合手から、上記主鎖を構成するために使用された結合手を除いた残余の結合手の総数をいう。主鎖の両末端の珪素原子について、主鎖を構成するために使用された結合手とは、酸素に結合した結合手のみをいう。
【0060】
加水分解性シリコーン系重合体において、フェニル基の含有量及びメチル基の含有量は、下記の要領で測定された値をいう。
加水分解架橋性シリコーン系重合体中のメチル基の濃度、及びフェニル基の濃度は、MNR測定により、Si-NMRから求められるシグナル強度比率より算出する。
例えば、下記測定装置及び測定条件にて測定することができる。
測定装置:AVANCE 400(Bruker Biospin社製)
プローブ:Prodigy(BBO)
回転数:20Hz
測定パルス:Single pulse
溶媒:重クロロホルム
濃度:29Si 約5wt/vol%
温度:24.85℃(298K)
スキャン回数:360回
化学シフト基準:TMS 0.0ppm
【0061】
加水分解性シリコーン系重合体において、フェニル基及びメチル基の総含有量は、50モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましく、70モル%以上がより好ましい。加水分解性シリコーン系重合体において、フェニル基及びメチル基の総含有量は、99モル%以下が好ましく、96モル%以下がより好ましく、95モル%以下がより好ましい。フェニル基及びメチル基の総含有量が50モル%以上であると、電子材料用硬化性樹脂組成物の難燃性を向上させることができる。フェニル基及びメチル基の総含有量が99モル%以下であると、電子材料用硬化性樹脂組成物の硬化反応が円滑に進行するので、得られる硬化物は、優れた硬度を有している。
【0062】
加水分解架橋性シリコーン系重合体における25℃での粘度は、5Pa・s以上が好ましく、10mPa・s以上がより好ましく、13Pa・s以上がより好ましい。加水分解架橋性シリコーン系重合体における25℃での粘度は、1000Pa・s以下が好ましく、500Pa・s以下がより好ましく、300Pa・s以下がより好ましい。25℃での粘度は、5Pa・s以上であると、電子材料用硬化性樹脂組成物の硬化物の粘性が向上し、電子材料用硬化性樹脂組成物が硬化過程で分離せず、均一に混合された状態を維持し、その結果、電子材料用硬化性樹脂組成物の硬化物の難燃性が向上する。25℃での粘度は、1000Pa・s以下であると、電子材料用硬化性樹脂組成物の塗工性が向上する。なお、加水分解架橋性シリコーン系重合体の25℃での粘度は、JIS Z8803に準拠して20℃、回転数60rpmの条件下にてB型粘時計を用いて測定した値をいう。
【0063】
硬化性樹脂中における加水分解架橋性シリコーン系重合体の含有量は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%がより好ましい。
【0064】
[加水分解性イソシアネート基を有する重合体]
加水分解性イソシアネート基を有する重合体としては、例えば、加水分解性イソシアネート基を有するウレタン重合体などが挙げられる。ウレタン重合体は、ウレタン結合(-NHCOO-)が繰り返して形成されてなる主鎖を有する重合体をいう。加水分解性イソシアネート基を有するウレタン重合体は、ウレタン重合体の主鎖に複数個の加水分解性イソシアネート基を有している。加水分解性イソシアネート基を有するウレタン重合体は、ウレタン重合体の主鎖の両末端に加水分解性イソシアネート基を有することが好ましい。ウレタン重合体は、ポリエーテルポリオールを原料とするポリエーテル系ウレタン重合体、ポリエステルポリオールを原料とするポリエステル系ウレタン重合体を含むが、これらの何れであってもよい。
【0065】
硬化性樹脂中における加水分解性イソシアネート基を有する重合体の含有量は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%がより好ましい。
【0066】
[光架橋性重合体]
光架橋性重合体は、分子中に光架橋性基を有しており、紫外線などの光を照射することによって分子間に化学結合を形成して架橋構造を形成して硬化する。
【0067】
光架橋性基としては、光照射によって化学結合を形成すればよい。光架橋性基としては、特に限定されず、例えば、チオール基、グリシジル基、オキセタニル基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、ベンゾフェノン基、ベンゾイン基、チオキサントン基などが挙げられ、ベンゾフェノン基、ベンゾイン基及びチオキサントン基が好ましく、ベンゾフェノン基がより好ましい。なお、(メタ)アクリロイルは、メタクリロイル又はアクリロイルを意味する。
【0068】
光架橋性重合体の主鎖構造は、特に限定されず、ポリオレフィン系重合体、アクリル系重合体、エポキシ系重合体、シアノアクリレート系重合体などが挙げられる。主鎖に光架橋性基を導入する方法としては、例えば、光架橋性基含有モノマーを含有するモノマー組成物を重合させる方法などが挙げられる。
【0069】
光架橋性基含有モノマーとしては、特に限定されず、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、4-(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、4-[2-((メタ)アクリロイルオキシ)エトキシ]ベンゾフェノン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-4’-メトキシベンゾフェノン、4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ-4’-メトキシベンゾフェノン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-4’-ブロモベンゾフェノン、4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ-4’-ブロモベンゾフェノンなどが挙げられ、4-(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、4-[2-((メタ)アクリロイルオキシ)エトキシ]ベンゾフェノンが好ましい。紫外線架橋性基含有モノマー(D)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なお、(メタ)アクリロイルオキシは、メタクリロイルオキシ又はアクリロイルオキシを意味する。
【0070】
硬化性樹脂中における光架橋性重合体の含有量は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%がより好ましい。
【0071】
[2液硬化性樹脂]
2液硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、イソシアネート系重合体、グリシジル系重合体などが挙げられる。
【0072】
イソシアネート系重合体は、ポリイソシアネートを含有する主剤と、ポリオールを含有する硬化剤とからなる2液型の硬化性樹脂である。主剤と硬化剤とを混合してポリイソシアネートとポリオールとを反応させることによってウレタン結合を形成して架橋し、硬化する。
【0073】
ポリイソシアネートとしては、例えば、芳香脂肪族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、1,3-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン、1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン、ω,ω′-ジイソシアナト-1,4-ジエチルベンゼン、両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーなどが挙げられる。
【0074】
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、2-メチル-ペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチル-ペンタン-1,5-ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリオキシエチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0075】
脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0076】
ポリオールとしては、例えば、ポリウレタンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール、ひまし油系ポリオールなどが挙げられる。
【0077】
グリシジル系重合体は、エポキシ系重合体を含有する主剤と、硬化剤とからなる2液型の硬化性樹脂である。エポキシ系重合体としては、特に限定されず、例えば、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとを反応させて得られるビスフェノールA型エポキシ系重合体、ビスフェノールFとエピクロロヒドリンとを反応させて得られるビスフェノールF型エポキシ系重合体、及び、これらの水添物、グリシジルエステル型エポキシ系重合体、ノボラック型エポキシ系重合体、ウレタン変性エポキシ系重合体、トリグリシジルイソシアヌレートなどの含窒素エポキシ系重合体、ポリブタジエン又はNBRを含有するゴム変性エポキシ系重合体などが挙げられる。
【0078】
硬化剤としては、特に限定されず、例えば、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、ポリアミド系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、ポリメルカプラン系硬化剤などが挙げられる。
【0079】
アミン系硬化剤としては、例えば、ポリオキシプロピレントリアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの脂肪族ポリアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの芳香族ポリアミンなどが挙げられる。
【0080】
酸無水物系硬化剤としては、例えば、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ピロメリット酸、無水ヘット酸、ドデセニル無水コハク酸などが挙げられる。ポリアミド系硬化剤としては、例えば、ダイマー酸などが挙げられる。
【0081】
硬化性樹脂中における2液硬化性樹脂の含有量は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%がより好ましい。
【0082】
[リン系化合物]
電子材料用硬化性樹脂組成物は、リン系化合物を含有している。電子材料用硬化性樹脂組成物がリン系化合物を含有していることによって、電子材料用硬化性樹脂組成物の硬化物が火災時に膨張し、電子材料を保護し、電子材料に優れた難燃性を付与することができる。
【0083】
リン系化合物としては、分子中にリン原子を含有しておればよい。リン系化合物としては、特に限定されない。リン系化合物は、ポリリン酸アンモニウム、水難溶性リン系化合物が好ましく、ポリリン酸アンモニウムがより好ましい。なお、リン系化合物は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0084】
リン系化合物中におけるポリリン酸アンモニウムの含有量は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%がより好ましい。
【0085】
リン系化合物中における水難溶性リン系化合物の含有量は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%がより好ましい。
【0086】
水難溶性リン系化合物としては、特に限定されず、例えば、亜リン酸アルミニウム、第1リン酸アルミニウム、第2リン酸アルミニウム、第3リン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、縮合リン酸アルミニウムなどの水難溶性無機リン系化合物、ポリリン酸メラム、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メレムなどの水難溶性有機リン系化合物などが挙げられ、水難溶性無機リン系化合物を含むことが好ましく、亜リン酸アルミニウム又は第一リン酸アンモニウムを含むことがより好ましく、亜リン酸アルミニウムを含むことがより好ましい。なお、水難溶性リン系化合物は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0087】
「水難溶性リン系化合物」とは、25℃の水100gにリン系化合物を溶解させてなる飽和溶液の飽和濃度(溶解度)が0.03g/100g-H2O以下であるリン系化合物をいう。具体的には、25℃の水1000gに、沈殿物が僅かに生じる程度の過剰量のリン系化合物を供給して攪拌し溶解させて溶解液を作製する。溶解液をJIS P3801に準拠した5種Cのろ紙で吸引ろ過して溶解液中の不溶解分を除去して飽和溶液を作製する。飽和溶液を100℃に加熱して飽和溶液の水を蒸発させてリン系化合物の析出物を得る。この析出物の質量を測定し、この析出物の質量の1/10の値を溶解度(g/100g-H2O)とする。なお、不溶解分の除去工程においてろ紙に水分の一部が吸収されるが、水1000gに比して極めて僅かな量であるので、ろ紙に吸収された水の質量は、溶解度の値に影響を及ぼすことはなく無視することができる。
【0088】
電子材料用硬化性樹脂組成物中におけるリン系化合物の含有量は、硬化性樹脂100質量部に対して50質量部以上が好ましく、60質量部以上がより好ましく、70質量部以上がより好ましく、80質量部以上がより好ましく、90質量部以上がより好ましく、100質量部以上がより好ましく、110質量部以上がより好ましい。電子材料用硬化性樹脂組成物中におけるリン系化合物の含有量は、硬化性樹脂100質量部に対して200質量部以下が好ましく、180質量部以下がより好ましく、160質量部以下がより好ましく、140質量部以下がより好ましい。リン系化合物の含有量が50質量部以上であると、電子材料用硬化性樹脂組成物の硬化物が火災時により効果的に膨張し、電子材料をより確実に保護し、電子材料に更に優れた難燃性を付与することができる。リン系化合物の含有量が200質量部以下であると、電子材料用硬化性樹脂組成物の硬化物における燃焼残渣の硬度が向上し、電子材料の塗工箇所に安定的に存在し、電子材料に優れた難燃性を付与することができる。
【0089】
[多価アルコール]
電子材料用硬化性樹脂組成物は、多価アルコールを含有している。電子材料用硬化性樹脂組成物は、多価アルコールを含有していることによって、電子材料用硬化性樹脂組成物の硬化物の膨張性が向上する。電子材料用硬化性樹脂組成物の硬化物が火災時に効果的に膨張し、電子材料を安定的に保護し、電子材料に優れた難燃性を付与することができる。
【0090】
多価アルコールは、分子中に複数個の水酸基(-OH)を有している。多価アルコール中の水酸基の数は、4個以上が好ましい。多価アルコール中の水酸基の数は、10個以下が好ましい。多価アルコール中の水酸基の数が4個以上であると、電子材料用硬化性樹脂組成物の硬化物における燃焼残渣の形状保持性が向上し、電子材料の塗工箇所に安定的に存在し、電子材料に優れた難燃性を付与することができる。多価アルコール中の水酸基の数が10個以下であると、電子材料用硬化性樹脂組成物の粘度を低減させて塗工性を向上させ、電子材料用硬化性樹脂組成物を狭い塗工箇所に精度良く塗工することができる。多価アルコール中の水酸基の数が10個以下であると、電子材料用硬化性樹脂組成物の硬化物における燃焼残渣の形状保持性が向上し、電子材料の塗工箇所に安定的に存在し、電子材料に優れた難燃性を付与することができる。
【0091】
多価アルコールとしては、特に限定されず、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ペンチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,2-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、キシリトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトールなどが挙げられ、電子材料用硬化性樹脂組成物の硬化物の膨張性が向上するので、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトールが好ましい。なお、多価アルコールは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0092】
多価アルコールとしては、一般式(2)で示されるジオールであってもよい。ジオールは、一般式(2)で表される繰り返し単位を含有する重合体が好ましい。
HO-(R2-O)n-OH (2)
[式(2)中、R2は炭素数が1~14のアルキレン基を表し、nは、繰り返し単位の数であって正の整数である。]
【0093】
R2において、アルキレン基とは、脂肪族飽和炭化水素中の異なる2個の炭素原子に結合する2個の水素原子を除いて生じる2価の原子団であり、直鎖状及び分岐状の双方の原子団を含む。なお、分岐状とは、1個の炭素(メチル基)が側鎖として結合している場合が含まれる。
【0094】
アルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基[-CH2-CH2-CH2-(トリメチレン基)、-CH(CH3)-CH2-]、ブチレン基、アミレン基、ヘキシレン基などが挙げられる。
【0095】
また、多価アルコールとしては、一般式(3)で示されるポリオールであってもよい。
【0096】
【0097】
式(3)中、R3、R4及びR5はそれぞれ、炭素数が1~14のアルキレン基を表す。R3、R4及びR5は互いに同一であっても相違してもよい。pは、1~100の正の整数である。w、x及びyは、繰り返し単位の数であって正の整数である。pが2以上の正の整数である場合、複数個あるR4及びxは、互いに同一であっても相違してもよい。
【0098】
R3、R4及びR5において、アルキレン基とは、脂肪族飽和炭化水素中の異なる2個の炭素原子に結合する2個の水素原子を除いて生じる2価の原子団であり、直鎖状及び分岐状の双方の原子団を含む。なお、分岐状とは、1個の炭素(メチル基)が側鎖として結合している場合が含まれる。
【0099】
アルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基[-CH2-CH2-CH2-(トリメチレン基)、-CH(CH3)-CH2-]、ブチレン基、アミレン基、ヘキシレン基などが挙げられる。
【0100】
電子材料用硬化性樹脂組成物中における多価アルコールの含有量は、硬化性樹脂100質量部に対して1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上がより好ましく、15質量部以上がより好ましい。電子材料用硬化性樹脂組成物中における多価アルコールの含有量は、硬化性樹脂100質量部に対して100質量部以下が好ましく、90質量部以下がより好ましく、80質量部以下がより好ましく、70質量部以下がより好ましい。多価アルコールの含有量が1質量部以上であると、電子材料用硬化性樹脂組成物の硬化物における燃焼残渣の形状保持性が向上し、電子材料の塗工箇所に安定的に存在し、電子材料に優れた難燃性を付与することができる。多価アルコールの含有量が100質量部以下であると、電子材料用硬化性樹脂組成物の粘度を低減させて塗工性を向上させ、電子材料用硬化性樹脂組成物を狭い塗工箇所に精度良く塗工することができる。多価アルコールの含有量が100質量部以下であると、電子材料用硬化性樹脂組成物の硬化物における燃焼残渣の形状保持性が向上し、電子材料の塗工箇所に安定的に存在し、電子材料に優れた難燃性を付与することができる。
【0101】
電子材料用硬化性樹脂組成物において、リン系化合物の含有量と多価アルコールの含有量の比(リン系化合物の質量/多価アルコールの質量)は、0.5以上が好ましく、0.8以上がより好ましく、0.9以上がより好ましく、1.0以上がより好ましく、1.2以上がより好ましく、1.3以上がより好ましい。電子材料用硬化性樹脂組成物において、リン系化合物の含有量と多価アルコールの含有量の比(リン系化合物の質量/多価アルコールの質量)は、6.0以下が好ましく、5.5以下がより好ましく、5.0以下がより好ましく、4.5以下がより好ましく、4.0以下がより好ましい。リン系化合物の含有量と多価アルコールの含有量の比(リン系化合物の質量/多価アルコールの質量)が0.5以上であると、電子材料用硬化性樹脂組成物の硬化物における燃焼残渣の形状保持性が向上し、電子材料の塗工箇所に安定的に存在し、電子材料に優れた難燃性を付与することができる。リン系化合物の含有量と多価アルコールの含有量の比(リン系化合物の質量/多価アルコールの質量)が6.0以下であると、電子材料用硬化性樹脂組成物の粘度を低減させて塗工性を向上させ、電子材料用硬化性樹脂組成物を狭い塗工箇所に精度良く塗工することができる。
【0102】
[酸化チタン]
電子材料用硬化性樹脂組成物は、酸化チタンを含有していることが好ましい。電子材料用硬化性樹脂組成物が酸化チタンを含有していると、酸化チタンとリン系化合物との反応によって、電子材料用硬化性樹脂組成物の硬化物の燃焼残渣の硬度がより向上し、火災時において電子材料をより確実に保護し、電子材料の難燃性を向上させることができる。
【0103】
酸化チタンの平均粒子径は、0.005μm以上が好ましく、0.01μm以上がより好ましく、0.02μm以上がより好ましい。酸化チタンの平均粒子径は、10μm以下が好ましく、8μm以下がより好ましく、5μm以下がより好ましい。酸化チタンの平均粒子径が0.05μm以上であると、電子材料用硬化性樹脂組成物の粘度が急激に上昇することを低減し、電子材料用硬化性樹脂組成物の塗工性が向上する。酸化チタンの平均粒子径が10μm以下であると、電子材料用硬化性樹脂組成物中における酸化チタンの分散性が向上し、電子材料用硬化性樹脂組成物の硬化物における燃焼残渣の硬度が向上する。従って、電子材料の塗工箇所に安定的に存在し、電子材料に優れた難燃性を付与することができる。なお、酸化チタンの平均粒子径は、レーザー回折法によって測定された体積基準の粒度分布においての粒子径の小さい側からの頻度の累積が50質量%となる粒子径D50をいう。
【0104】
電子材料用硬化性樹脂組成物中における酸化チタンの含有量は、硬化性樹脂100質量部に対して1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上がより好ましく、8質量部以上がより好ましい。電子材料用硬化性樹脂組成物中における酸化チタンの含有量は、硬化性樹脂100質量部に対して20質量部以下が好ましく、18質量部以下がより好ましく、16質量部以下がより好ましく、14質量部以下がより好ましく、12質量部以下がより好ましい。酸化チタンの含有量が1質量部以上であると、酸化チタンとリン系化合物との反応によって、電子材料用硬化性樹脂組成物の硬化物の燃焼残渣の硬度がより向上し、火災時において、電子材料における電子材料用硬化性樹脂組成物の塗工箇所に安定的に存在し、電子材料に優れた難燃性を付与することができる。酸化チタンの含有量が20質量部以下であると、電子材料用硬化性樹脂組成物の粘度を低減させて塗工性を向上させ、電子材料用硬化性樹脂組成物を狭い塗工箇所に精度良く塗工することができる。
【0105】
[ガラスフリット]
電子材料用硬化性樹脂組成物は、ガラスフリットを含有していることが好ましい。ガラスフリットは、電子材料用硬化性樹脂組成物の硬化物の燃焼残渣において、燃焼残渣中において、硬化性樹脂の燃焼残渣及び長石類を結合させるためのバインダーとして作用し、燃焼残渣は優れた硬度を有する。従って、電子材料用硬化性樹脂組成物の硬化物の燃焼残渣は、電子材料における電子材料用硬化性樹脂組成物の塗工箇所に安定的に存在し、電子材料に優れた難燃性を付与することができる。
【0106】
ガラスフリットを構成しているガラスとしては、たとえば、リン酸系ガラス、ホウ酸系ガラス、酸化ビスマス系ガラス、珪酸系ガラス、酸化ナトリウム系ガラスなどが挙げられ、リン酸系ガラス、ホウ酸系ガラスが好ましく、リン酸系ガラスがより好ましい。これらのガラスフリットは、B2O3、P2O5、ZnO、SiO2、Bi2O3、Al2O3、BaO、CaO、MgO、MnO2、ZrO2、TiO2、CeO2、SrO、V2O5、SnO2、Li2O、Na2O、K2O、CuO、Fe2O3などを所定の成分割合で調整して得ることができる。
【0107】
電子材料用硬化性樹脂組成物中におけるガラスフリットの含有量は、硬化性樹脂100質量部に対して5質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、40質量部以上がより好ましい。電子材料用硬化性樹脂組成物中におけるガラスフリットの含有量は、硬化性樹脂100質量部に対して200質量部以下が好ましく、100質量部以下がより好ましく、80質量部以下がより好ましい。ガラスフリットの含有量が5質量部以上であると、電子材料用硬化性樹脂組成物の硬化物の燃焼残渣は、優れた硬度を有し、電子材料における電子材料用硬化性樹脂組成物の塗工箇所に安定的に存在し、電子材料に優れた難燃性を付与することができる。ガラスフリットの含有量が200質量部以下であると、電子材料用硬化性樹脂組成物の粘度を低減させて塗工性を向上させ、電子材料用硬化性樹脂組成物を狭い塗工箇所に精度良く塗工することができる。
【0108】
[シラノール縮合触媒]
電子材料用硬化性樹脂組成物は、シラノール縮合触媒を含有してもよい。シラノール縮合触媒とは、硬化性樹脂が、加水分解性シリル基を有する重合体又は加水分解架橋性シリコーン系重合体である場合、硬化性樹脂の縮合反応による硬化を促進させるための触媒である。
【0109】
シラノール縮合触媒としては、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、1,1,3,3-テトラブチル-1,3-ジラウリルオキシカルボニル-ジスタノキサン、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫フタレート、ビス(ジブチル錫ラウリン酸)オキサイド、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジブチル錫ビス(モノエステルマレート)、オクチル酸錫、ジブチル錫オクトエート、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫ビス(トリエトキシシリケート)、ビス(ジブチル錫ビストリエトキシシリケート)オキサイド、及びジブチル錫オキシビスエトキシシリケートなどの有機錫系化合物;テトラ-n-ブトキシチタネート、及びテトライソプロポキシチタネートなどの有機チタン系化合物などが挙げられ、有機錫系化合物が好ましい。これらのシラノール縮合触媒は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0110】
シラノール縮合触媒としては、1,1,3,3-テトラブチル-1,3-ジラウリルオキシカルボニル-ジスタノキサンが好ましい。このようなシラノール縮合触媒によれば、電子材料用硬化性樹脂組成物の硬化速度を容易に調整することができる。
【0111】
電子材料用硬化性樹脂組成物中におけるシラノール縮合触媒の含有量は、硬化性樹脂100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、0.2質量部以上がより好ましく、0.3質量部以上がより好ましい。電子材料用硬化性樹脂組成物中におけるシラノール縮合触媒の含有量は、硬化性樹脂100質量部に対して10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましく、6質量部以下がより好ましく、5質量部以下がより好ましい。電子材料用硬化性樹脂組成物中におけるシラノール縮合触媒の含有量が0.1質量部以上であると、電子材料用硬化性樹脂組成物の硬化速度を速くして、電子材料用硬化性樹脂組成物の硬化に要する時間の短縮化を図ることができる。電子材料用硬化性樹脂組成物中におけるシラノール縮合触媒の含有量が10質量部以下であると、電子材料用硬化性樹脂組成物が適度な硬化速度を有し、電子材料用硬化性樹脂組成物の貯蔵安定性及び取扱性を向上させることができる。
【0112】
[脱水剤]
電子材料用硬化性樹脂組成物は、脱水剤をさらに含んでいるのが好ましい。脱水剤によれば、電子材料用硬化性樹脂組成物を保存している際に、空気中などに含まれている水分によって電子材料用硬化性樹脂組成物が硬化することを抑制することができる。
【0113】
脱水剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、及びジフェニルジメトキシシランなどのシラン化合物;並びにオルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、オルト酢酸メチル、及びオルト酢酸エチル等のエステル化合物などを挙げることができる。これらの脱水剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なかでも、ビニルトリメトキシシランが好ましい。
【0114】
電子材料用硬化性樹脂組成物中における脱水剤の含有量は、硬化性樹脂100質量部に対して0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。電子材料用硬化性樹脂組成物中における脱水剤の含有量は、硬化性樹脂100質量部に対して20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましい。電子材料用硬化性樹脂組成物中における脱水剤の含有量が0.5質量部以上であると、脱水剤により得られる効果が十分に得られる。また、電子材料用硬化性樹脂組成物中における脱水剤の含有量が20質量部以下であると、電子材料用硬化性樹脂組成物が優れた硬化性を有する。
【0115】
[他の添加剤]
電子材料用硬化性樹脂組成物は、その物性を損なわない範囲内において、チキソ性付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、沈降防止剤、アミノシランカップリング剤、揺変剤、可塑剤及び溶剤など他の添加剤を含んでいてもよい。なかでも、チキソ性付与剤、紫外線吸収剤、及び酸化防止剤が好ましく挙げられる。
【0116】
電子材料用硬化性樹脂組成物は、顔料として黒色顔料(例えば、カーボンブラックなど)を含有していることが好ましい。電子材料用硬化性樹脂組成物の硬化物を黒色とすることによって光の反射を低減し、硬化物の光学特性の向上を図ることができる。
【0117】
電子材料用硬化性樹脂組成物は、アミノシランカップリング剤を含有していることが好ましい。アミノシランカップリング剤を用いることにより、電子材料用硬化性樹脂組成物の硬化物のゴム弾性や接着性を向上させることができる。なお、アミノシランカップリング剤とは、一分子中にアルコキシ基が結合した珪素原子と、窒素原子を含有する官能基とを含有している化合物を意味する。
【0118】
アミノシランカップリング剤として、具体的には、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N’-ビス-〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’-ビス-〔3-(トリエトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’-ビス-〔3-(メチルジメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’-ビス-〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミン、N,N’-ビス-〔3-(トリエトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。これらのアミノシランカップリング剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0119】
なかでも、アミノシランカップリング剤としては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシランが好ましく挙げられ、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランがより好ましく挙げられる。
【0120】
電子材料用硬化性樹脂組成物中におけるアミノシランカップリング剤の含有量は、硬化性樹脂100質量部に対して、1~10質量部が好ましく、1~5質量部がより好ましい。アミノシランカップリング剤の含有量が上記範囲内であると、電子材料用硬化性樹脂組成物の硬化物のゴム弾性や接着性を向上させることができる。
【0121】
チキソ性付与剤は、電子材料用硬化性樹脂組成物にチキソトロピー性を発現せることができるものであればよい。チキソ性付与剤としては、水添ひまし油、脂肪酸ビスアマイド、ヒュームドシリカなどが好ましく挙げられる。
【0122】
電子材料用硬化性樹脂組成物中におけるチキソ性付与剤の含有量は、硬化性樹脂100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。電子材料用硬化性樹脂組成物中におけるチキソ性付与剤の含有量は、硬化性樹脂100質量部に対して200質量部以下が好ましく、150質量部以下がより好ましい。電子材料用硬化性樹脂組成物中におけるチキソ性付与剤の含有量が0.1質量部以上であると、電子材料用硬化性樹脂組成物にチキソトロピー性を効果的に付与することができる。また、電子材料用硬化性樹脂組成物中におけるチキソ性付与剤の含有量が200質量部以下であると、電子材料用硬化性樹脂組成物が適度な粘度を有し、電子材料用硬化性樹脂組成物の取扱性が向上する。
【0123】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤などが挙げられ、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。電子材料用硬化性樹脂組成物中における紫外線吸収剤の含有量は、硬化性樹脂100質量部に対して0.1質量部以上が好ましい。電子材料用硬化性樹脂組成物中における紫外線吸収剤の含有量は、硬化性樹脂100質量部に対して20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
【0124】
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、モノフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、及びポリフェノール系酸化防止剤などが挙げられ、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく挙げられる。電子材料用硬化性樹脂組成物中における酸化防止剤の含有量は、硬化性樹脂100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましい。電子材料用硬化性樹脂組成物中における酸化防止剤の含有量は、硬化性樹脂100質量部に対して20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
【0125】
[光安定剤]
電子材料用硬化性樹脂組成物は、ヒンダードアミン系光安定剤を含んでいることが好ましい。ヒンダードアミン系光安定剤によれば、硬化後に優れたゴム弾性をより長期間に亘って維持することができる電子材料用硬化性樹脂組成物を提供することができる。
【0126】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケートの混合物、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ジブチルアミン・1,3,5-トリアジン・N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル-1,6-ヘキサメチレンジアミンとN-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]、コハク酸ジメチルと4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールとの重縮合物などが挙げられる。
【0127】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、NOR型ヒンダードアミン系光安定剤が好ましく挙げられる。NOR型ヒンダードアミン系光安定剤によれば、硬化後に経時的なゴム弾性の低下が抑制されている電子材料用硬化性樹脂組成物を提供することができる。
【0128】
NOR型ヒンダードアミン系光安定剤は、ピペリジン環骨格に含まれている窒素原子(N)に酸素原子(O)を介してアルキル基(R)が結合しているNOR構造を有している。NOR構造におけるアルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~18がより好ましく、18が特に好ましい。アルキル基としては、直鎖状のアルキル基、分岐鎖状のアルキル基、及び、環状のアルキル基(飽和脂環式炭化水素基)が挙げられる。
【0129】
直鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基などが挙げられる。分岐鎖状のアルキル基としては、例えば、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチルなどが挙げられる。環状のアルキル基(飽和脂環式炭化水素基)としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などが挙げられる。また、アルキル基を構成している水素原子が、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)又はヒドロキシル基などで置換されていてもよい。
【0130】
NOR型ヒンダードアミン系光安定剤としては、下記式(I)で示されるヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。
【0131】
【0132】
NOR型ヒンダードアミン系光安定剤を用いる場合、NOR型ヒンダードアミン系光安定剤と、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤又はトリアジン系紫外線吸収剤とを組み合わせて用いることが好ましい。これにより、硬化後に経時的なゴム弾性の低下がより高く抑制されている電子材料用硬化性樹脂組成物を提供することができる。
【0133】
電子材料用硬化性樹脂組成物中におけるヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、硬化性樹脂100質量部に対して0.01質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましい。電子材料用硬化性樹脂組成物中におけるヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、硬化性樹脂100質量部に対して20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
【0134】
[電子材料用硬化性樹脂組成物]
電子材料用硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂、リン系化合物及び多価アルコールと、必要に応じて添加される添加剤とを混合することによって製造することができる。なお、電子材料用硬化性樹脂組成物は、水系溶媒に懸濁又は乳化させて懸濁液又は乳化液の形態であってもよい。電子材料用硬化性樹脂組成物は、溶媒に溶解させた溶解液の形態であってもよい。なお、水溶媒としては、例えば、エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール、水などが挙げられる。溶媒としては、例えば、キシレン、トルエン、アセトンなどが挙げられる。
【0135】
電子材料用硬化性樹脂組成物は、リン系化合物及び多価アルコールを併用することによって、電子材料用硬化性樹脂組成物の硬化物は火災時の熱によって優れた膨張性を発揮し、優れた難燃性を有する。
【0136】
更に、電子材料用硬化性樹脂組成物は、粘度が低く抑えられていることから、優れた塗工性を有し、小型化が進む電子材料の所定の狭い塗工箇所に精度良く塗工することができる。従って、電子材料用硬化性樹脂組成物は、電子材料の性能に影響を与えることなく、電子材料の所定箇所に精度良く塗工でき、電子材料及び/又は電子材料を含む電子機器に優れた難燃性を付与し又は難燃性を向上させることができる。
【0137】
特に、電子材料用硬化性樹脂組成物が、加水分解架橋性シリコーン系重合体、リン系化合物及び多価アルコールを含有する場合、加水分解架橋性シリコーン系重合体が火災時の燃焼初期において迅速に膨張して電子材料が燃焼することによる延焼をより低減化することができる。更に、電子材料用硬化性樹脂組成物により優れた膨張性を付与することができる。従って、電子材料用硬化性樹脂組成物は、電子材料及び/又は電子材料を含む電子機器により優れた難燃性を付与し又は難燃性をより向上させることができる。
【0138】
なお、電子機器としては、特に限定されず、例えば、カーナビゲーション、携帯電話、スマートフォン、ゲーム機、デジタルカメラ、テレビ、DVDプレイヤー、電子辞書、電卓、ハードディスクレコーダー、パーソナルコンピュータ、ビデオカメラ、プリンター、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、ラジオ、電子楽器などが挙げられる。
【0139】
電子機器は、小型化及び軽量化が進められており、電子機器を構成している電子材料も小型化が進められている。このような電子材料としては、特に限定されず、例えば、プリント配線板、発光ダイオード(LED)、発光ダイオード配設板、フレキシブル銅張積層板、ボンディングシート、タッチパネル、センサ用基板などが挙げられる。
【0140】
電子材料用硬化性樹脂組成物を電子材料の所定の塗工箇所に塗工する要領としては、特に限定されず、例えば、刷毛を用いた塗工方法、公知の塗工器具を用いた塗工方法などが挙げられる。
【0141】
電子材料用硬化性樹脂組成物の粘度は、500mPa・s以上が好ましく、1000mPa・s以上がより好ましく、3000mPa・s以上がより好ましい。電子材料用硬化性樹脂組成物の粘度は、200000mPa・s以下が好ましく、100000mPa・s以下がより好ましく、50000mPa・s以下がより好ましい。なお、電子材料用硬化性樹脂組成物の粘度は、23℃、10rpm、ローターNo.5の条件下にてBH型粘度計を用いて測定された値をいう。
【0142】
電子材料に塗工された電子材料用硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂を硬化させることによって硬化物を生成する。なお、硬化性樹脂の硬化は、硬化性樹脂の種類に応じて公知の要領(例えば、水分の供給、紫外線などの光の照射、加熱など)で行われればよい。
【0143】
そして、電子材料用硬化性樹脂組成物の硬化物は、火災時の熱による燃焼によって膨張して燃焼残渣を生成し、この燃焼残渣は、火災時においても塗工箇所において安定的に配設された状態を維持し、優れた難燃性を発揮する。
【発明の効果】
【0144】
本発明の電子材料用硬化性樹脂組成物は、粘度が低く抑えられていることから優れた塗工性を有しており、電子材料の所望箇所に電子材料の機能を損なうことなく正確に且つ容易に塗工することができる。
【0145】
そして、電子材料用硬化性樹脂組成物を硬化させて生成される硬化物は、火災などの熱によって膨張する。硬化物の燃焼残渣は、膨張して、電子材料、又は電子材料を含む電子機器を被覆し、電子材料などを火災から保護して延焼するのを抑制することができる。
【0146】
更に、電子材料用硬化性樹脂組成物の硬化物の燃焼残渣は、電子材料用硬化性樹脂組成物を塗工した箇所に安定的に存在し、電子材料に優れた難燃性を付与し又は電子材料の難燃性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0147】
以下に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【実施例】
【0148】
実施例及び比較例の電子材料用硬化性樹脂組成物の製造において下記の原料を使用した。
【0149】
[硬化性樹脂]
・加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(主鎖骨格がポリプロピレンオキサイドからなり且つ主鎖の末端にジメトキシシリル基を有するポリアルキレンオキサイド、数平均分子量:38000、重量平均分子量:49000、カネカ社製 商品名「エクセスターS303H」)
・加水分解架橋性シリコーン系重合体1(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製 商品名「XR31-B2230」、加水分解性基:アルコキシ基、アルコキシ基の含有量:5モル%、フェニル基の含有量:30モル%、メチル基の含有量:65モル%、25℃の粘度:16Pa・s、直鎖状の主鎖を構成している珪素原子について、主鎖を構成するために使用されなかった結合手のそれぞれには、メチル基、フェニル基又はアルコキシ基が結合している、一部の珪素原子にはメチル基及びフェニル基が結合している)
・加水分解架橋性シリコーン系重合体2(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製 商品名「XR31-B2733」、加水分解性基:アルコキシ基、アルコキシ基の含有量:5モル%、メチル基の含有量:95モル%、25℃の粘度:250Pa・s、直鎖状の主鎖を構成している珪素原子について、主鎖を構成するために使用されなかった結合手のそれぞれには、メチル基又はアルコキシ基が結合している。)
【0150】
[リン系化合物]
・ポリリン酸アンモニウム(クラリアント社製 商品名「AP462」)
・亜リン酸アルミニウム
【0151】
[多価アルコール]
・ペンタエリスリトール(パーストープ社製 商品名「Penta mono」)
・ジペンタエリスリトール(パーストープ社製 商品名「Di-Penta 93」)
・トリペンタエリスリトール(和光純薬社製)
・ポリペンタエリスリトール(和光純薬社製)
【0152】
[酸化チタン]
・酸化チタン(石原産業社製 商品名「CR-90」、平均粒子径:0.25μm)
【0153】
[炭酸カルシウム]
・コロイダル炭酸カルシウム(白石カルシウム社製 商品名「CCR」、一次粒子の平均粒子径:0.08μm)
【0154】
・シラノール縮合触媒(ジブチル錫ジアセチルアセトナート、日東化成社製 商品名「U220H」)
・脱水剤(ビニルトリメトキシシラン、信越化学工業社製 商品名「KBM1003」)
・アミノシランカップリング剤(N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、信越化学社製 商品名 KBM-603」)
【0155】
(実施例1~8及び10~19、参考例9、比較例1~3)
硬化性樹脂、リン系化合物、多価アルコール、酸化チタン、コロイダル炭酸カルシウム、シラノール縮合触媒、脱水剤及びアミノシランカップリング剤を表1又は表2に示した配合量となるようにして、プラネタリーミキサーを用いて真空雰囲気下にて60分間に亘って均一になるまで混合することによって電子材料用硬化性樹脂組成物を得た。
【0156】
得られた電子材料用硬化性樹脂組成物について、下記の要領で、難燃性、塗工性、膨張倍率、粘度を測定し、その結果を表1及び表2に示した。
【0157】
(難燃性)
電子材料用硬化性樹脂組成物を用いて厚みが1.5mmの試験シートを作製し、23℃にて7日間養生した。試験シートを縦15mm×横130mm×厚み1.5mmの平面長方形状に切断して試験片を5個作製した。
【0158】
UL94V-0規格に基づき試験を行った。具体的には、試験片の横方向の一端部をクランプを用いて保持して試験片を垂直に吊るした。次に、垂直に吊るした試験片の横方向の他端部(下端部)にバーナーを用いて3秒間炎をあて、バーナーを試験片から一旦炎から離した後、更に、試験片の横方向の他端部にバーナーを用いて3秒間炎をあてて、難燃性を測定した。下記基準に基づいて評価した。
A・・・各試験片について、2回の接炎後の残炎時間が何れも10秒以内であり、且つ、5個の試験片の残炎時間の合計が50秒以内であった。更に、2回目の接炎の後、30秒以上赤熱(グローイング)を続けた試験片がなかった。
B・・・各試験片について、2回の接炎後の残炎時間が何れも10秒以内であり、且つ、5個の試験片の残炎時間の合計が50秒を上回った。更に、2回目の接炎の後、30秒以上赤熱(グローイング)を続けた試験片がなかった。
C・・・各試験片について、2回の接炎後の残炎時間が何れも10秒以内であり、且つ、5個の試験片の残炎時間の合計が50秒を上回った。更に、2回目の接炎の後、30秒以上赤熱(グローイング)を続ける試験片が存在した。
D・・・全ての試験片がクランプまで燃え尽きた場合など、A~Cの何れにも該当しなかった。
【0159】
(塗工性)
電子材料用硬化性樹脂組成物を容量シリンジに充填し、エアー式ディスペンサー(ノードソン社製、Performus X100)に装着し、塗工性を測定した。溝幅が0.5mm、1.0mm、2.0mmの塗工溝が形成された基板を用意した。なお、溝幅が0.5mm、1.0mm、2.0mmの塗工溝を順に「塗工溝1~3」と称した。
【0160】
23℃、エアー圧0.6MPaの条件下にてエアー式ディスペンサーを作動させて、電子材料用硬化性樹脂組成物を溝幅が0.5mm、1.0mm、2.0mmの塗工溝のそれぞれに塗工した。下記基準に基づいて評価した。
A・・・塗工溝1~3の何れの塗工溝にもきれいに塗工できた
B・・・塗工溝2及び3の塗工溝にきれいに塗工できたが、塗工溝1にはきれいに塗工できなかった。
C・・・塗工溝3にはきれいに塗工できたが、塗工溝1及び2にはきれいに塗工できなかった。
D・・・塗工溝1~3の何れの塗工溝にもきれいに塗工できなかった。
【0161】
(膨張倍率)
電子材料用硬化性樹脂組成物を硬化させて試験片を作製した。試験片は、平面正方形状のシート(縦:2cm、横:2cm、厚み:2mm)であった。この試験片を600℃に予め保温された電気炉内に投入し、試験片を10分間加熱して燃焼させた後、試験片の燃焼残差を電気炉から取り出した。膨張倍率を下記式に基づいて算出した。
膨張倍率(%)=100×燃焼残渣の体積/燃焼前の試験片の体積
【0162】
(粘度)
電子材料用硬化性樹脂組成物の粘度を、23℃、10rpm、ローターNo.5の条件下にてBH型粘度計を用いて測定した。
【0163】
【0164】
【産業上の利用可能性】
【0165】
本発明の電子材料用硬化性樹脂組成物を硬化させて生成される硬化物の燃焼残渣は、膨張して、電子材料、又は電子材料を含む電子機器を被覆し、電子材料などを火災から保護して延焼するのを抑制することができる。
【0166】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2022年3月25日に出願された日本国特許出願第2022-050930号に基づく優先権を主張し、この出願の開示はこれらの全体を参照することにより本明細書に組み込まれる。