(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】多孔質造粒体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 2/28 20060101AFI20240917BHJP
C04B 38/02 20060101ALI20240917BHJP
B01J 2/12 20060101ALI20240917BHJP
B01J 2/14 20060101ALI20240917BHJP
A23K 20/28 20160101ALI20240917BHJP
【FI】
B01J2/28
C04B38/02 Z
B01J2/12
B01J2/14
A23K20/28
(21)【出願番号】P 2019147935
(22)【出願日】2019-08-09
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】508120167
【氏名又は名称】株式会社プリンシプル
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【氏名又は名称】大田黒 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100169236
【氏名又は名称】藤村 貴史
(72)【発明者】
【氏名】東 和朗
(72)【発明者】
【氏名】永野 三郎
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-275848(JP,A)
【文献】特開2001-314882(JP,A)
【文献】特開平07-215776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 2/00- 2/30
C04B 38/02
A23K 20/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
火山ガラス質を含む火山噴出物堆積鉱物由来の粉末と、生分解性結合剤と、を含有
し、気孔率が45~55%である多孔質造粒体。
【請求項2】
嵩密度が1.05~1.25g/cm
3
である請求項1記載の多孔質造粒体。
【請求項3】
前記火山ガラス質を含む火山噴出物堆積鉱物由来の粉末が、シラスから粗粒分が除去された粉末である請求項1又は2記載の多孔質造粒体。
【請求項4】
前記火山ガラス質を含む火山噴出物堆積鉱物由来の粉末が、シラスから比重選別された火山ガラス質含有率80質量%以上の粉末である請求項1~3のいずれか一項に記載の多孔質造粒体。
【請求項5】
前記火山ガラス質を含む火山噴出物堆積鉱物由来の粉末の粒径が0.8mm以下である請求項1~4のいずれか一項に記載の多孔質造粒体。
【請求項6】
造粒体の粒径が0.6~3mmであり、除滓材用である請求項1~5のいずれか一項に記載の多孔質造粒体。
【請求項7】
造粒体の粒径が1~20mmであり、堆肥処理材用である請求項1~5のいずれか一項に記載の多孔質造粒体。
【請求項8】
造粒体の粒径が0.3~2mmであり、家畜飼料添加材用である請求項1~5のいずれか一項に記載の多孔質造粒体。
【請求項9】
造粒体の粒径が0.6mm以下であり、焼成発泡体原料用である請求項1~5のいずれか一項に記載の多孔質造粒体。
【請求項10】
火山ガラス質を含む火山噴出物堆積鉱物由来の粉末と、生分解性結合剤と、水とを、混錬した後、多孔面に通して小塊状にしてから転動造粒し、その後に乾燥硬化させて
気孔率が45~55%である多孔質造粒体を得ることを特徴とする多孔質造粒体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質造粒体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
火山噴出物堆積鉱物の一種であるシラスは、南九州に広く大量に分布していて、容易かつ低コストで入手可能である。このシラスを資源として有効活用することについて、これまで様々な試みがなされてきた。例えば、シラス中の鉄鉱、長石、石英、輝石、角閃石等の結晶質はコンクリート用細骨材として、シラス中の結晶質以外の軽石等のガラス質は軽量骨材やコンクリート用混和材等としての使用が期待される。しかし一般に、火山噴出物堆積鉱物は、上述した結晶質とガラス質とがそれぞれ幅広い粒度分布で混在していることから、単なるふるい分けでは用途に応じた選別が困難であった。
【0003】
そこで、火山噴出物堆積鉱物を用途に応じて分離、分級する技術に関し、火山噴出物堆積鉱物から粒径5mm超の礫分を除去し、残部を水平方向から所定の角度で傾斜させた多孔板を振動させつつ下方から多孔板に向けて送風するエアテーブル式の比重差選別装置に供給して、重比重分と、軽比重分と、集塵分と、多孔板落下分とに選別する火山噴出物堆積鉱物の乾式分離方法がある(特許文献1)。この乾式分離方法の一実施形態によれば、選別された重比重分及び多孔板落下分はコンクリート用細骨材として、軽比重分のふるい上は軽量骨材又は粉砕されて混和材原料として、軽比重分のふるい下及び集塵分から粘土質を分級したものはパーライト代替、パーライト原料、シラスバルーン原料、混和材原料又は混合セメント原料として、それぞれ回収することができるようになった。
【0004】
また、上述した用途以外の新たな用途に、シラス等の火山噴出物堆積鉱物を用いることも試みられている。一例として鋳造の際に電気炉や取鍋等に収容された鋳鉄、鋳鋼、非鉄金属の溶湯表面に投入される除滓材は、従来は黒曜石,真珠岩を粉砕して粒度調整したものがあり、また、粒状シリカやシリカ80%以上の高珪酸ガラス繊維クロスを用いるものが提案されている(特許文献2)。そこで、これら従来の除滓材の代わりに、シラス粉末を用いた除滓材が考えられる。
【0005】
しかしながら、シラス粉末からなる除滓材は、金属溶湯への投入時にシラス粉末が舞い上がるため、作業環境上好ましくなかった。また、シラス中に含まれる比較的粒度の大きな軽石を除滓材に用いた場合には、金属溶湯への投入時に舞い上がることは抑制されるが、粒状であるが故に金属溶湯中に巻き込まれて鋳造不良を招くおそれがあり、また、除滓性能や保温性能が低く作業性に悪影響を及ぼすおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6458267号
【文献】実開平5-44369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
シラス等の火山噴出物堆積鉱物について、新たな用途を開拓し用途の拡大を図ることは、これまで活用されることが少なかった資源を、これまで以上に有効活用し、ひいては国内産業の振興に寄与することに繋がるので産業上の利用価値は極めて高い。また、シラス等の火山噴出物堆積鉱物は天然素材であり、新たな用途に用いられる加工品が自然環境に悪影響を与えず、使用後には自然に還る、環境負荷の小さな加工品が求められているところである。
【0008】
そこで本発明は、火山噴出物堆積鉱物を原料とし、除滓材用、その他の新たな用途に有効に用いることができ、環境負荷が小さい多孔質造粒体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、シラスの新たな用途の開拓に向け鋭意研究を重ねた結果、シラスと生分解性結合剤とを含む多孔質の造粒体は、環境負荷が小さく、かつ、除滓材として投入時に舞い上がらず、また投入後は溶湯上で粒が素早く発泡と同時に溶解し従来の除滓材と同等の性能を有することを見出した。この知見から、更にシラスを含む多孔質造粒体について研究開発を進めた結果、シラスと生分解性結合剤とを含む多孔質の造粒体は、堆肥処理材、家畜飼料添加材、焼成発泡体原料等の多彩な用途で優れた性能を有していることを見出した。
本発明は、上記知見に基づくものである。
【0010】
本発明の多孔質造粒体は、火山ガラス質を含む火山噴出物堆積鉱物由来の粉末と、生分解性結合剤と、を含有するものである。
【0011】
本発明の多孔質造粒体においては、気孔率が45~55%である多孔質造粒体であることが好ましい。また、上記火山ガラス質を含む火山噴出物堆積鉱物由来の粉末は、シラスから粗粒分が除去された粉末とすることができるし、また、シラスから比重選別された火山ガラス質含有率80質量%以上の粉末とすることができる。更に、上記火山ガラス質を含む火山噴出物堆積鉱物由来の粉末は、粒径が0.8mm以下であることが好ましい。
また、本発明の多孔質造粒体は、粒径が好ましくは0.6~3mmの造粒体を、除滓材として用いることができる。また、粒径が好ましくは1~20mm、より好ましくは3~15mmの造粒体を、堆肥処理材として用いることができる。更に、粒径が好ましくは0.3~2mmの造粒体を、家畜飼料添加材として用いることができる。また更に、粒径が好ましくは0.6mm以下の造粒体を、焼成発泡体原料として用いることができる。
【0012】
多孔質造粒体の製造方法は、火山ガラス質を含む火山噴出物堆積鉱物由来の粉末と、生分解性結合剤と、水とを、混錬した後、多孔面に通して小塊状にしてから転動造粒し、その後に乾燥硬化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、火山噴出物堆積鉱物を原料とし、除滓材用、その他の新たな用途に有効に用いることができ、環境負荷が小さい多孔質造粒体及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の多孔質造粒体の粒子形状を示す図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の多孔質造粒体及びその製造方法の実施形態を、より具体的に説明する。
【0016】
[多孔質造粒体]
図1に、本発明の多孔質構造体の粒子形状を示す。多孔質造粒体は、火山ガラス質を含む火山噴出物堆積鉱物由来の粉末と、生分解性結合剤と、を含有し、当該粉末粒子が、当該結合剤により結合されている多孔質の粒子である。造粒手段によっては粒子表面近傍の密度が内側の密度よりも相対的に高くなっている場合があるものの、いずれにせよ多孔質造粒体の細孔は、開気孔であり、気体や液体が多孔質造粒体の外部から内部へ、また内部から外部へ流通可能になっている。
【0017】
多孔質造粒体は、気孔率が45~55%であることが好ましい。気孔率が45~55%であることにより、細孔は開気孔の態様であり、気体や液体が多孔質造粒体の外部から内部へ、また内部から外部へ流通可能となり、除滓材、堆肥処理材、家畜飼料添加材、焼成発泡体原料等の用途において優れた効能を有している。気孔率が45%以下になると毛細管現象に寄与しない気孔が生じ始め流通が悪くなる。また、55%以上になると造粒体がもろくなり、袋詰めした際に崩れてしまう恐れがある。気孔率はアルキメデス法により、真空脱泡してJIS R1634に準拠して測定した。
【0018】
多孔質造粒体の粒径は、後述するように用途によって好適な粒径が異なるが、粒径でおよそ0.3mm以上、20mm以下である。ここに粒径は整粒時のふるい目開きと同義とし、粒が楕円断面形状であれば短径のことをいう。
【0019】
多孔質造粒体の嵩密度は、原料や用途によって好適な嵩密度が異なるが、およそ1.05~1.25g/cm3である。およそ1.05~1.25g/cm3の範囲であることにより、気孔率が45~55%である多孔質造粒体を得ることができる。嵩密度は、アルキメデス法により、真空脱泡してJIS R1634に準拠して測定した。
【0020】
多孔質造粒体の圧壊強度は、生分解性結合剤の配合量や用途によって異なるが、およそ4~57Nとすることができる。圧壊強度が低いと保管安定性が低下し、圧壊強度が高いと製造コストが高くなる。圧壊強度は、平面荷重によりJIS Z8841に準拠して測定した。
【0021】
次に、多孔質造粒体の各成分について説明する。
(火山ガラス質を含む火山噴出物堆積鉱物由来の粉末)
多孔質造粒体の原料の火山ガラス質を含む火山噴出物堆積鉱物は、代表例としてシラスを挙げることができる。もっとも、シラスに限定されない。多孔質造粒体の原料に用いることにより、火山ガラス質を含む火山噴出物堆積鉱物を、有効活用することができる。
【0022】
火山ガラス質を含む火山噴出物堆積鉱物由来の粉末は、上述の火山ガラス質を含む火山噴出物堆積鉱物から、粒径5mmを超える礫分が、ふるい等で除去された後、粗粒分が除去されたものとすることができる。本発明の多孔質造粒体は、火山噴出物堆積鉱物中の火山ガラス質を有効成分として活用しており、結晶質は少ないことが望ましいところ、粗粒分には結晶質の砂を多く含む。また、粗粒分は、造粒体の形成を困難にし、多孔質造粒体の圧壊強度を低下させる。ここに生分解性結合剤の配合割合を増やせば多孔質造粒体の圧壊強度は増大するが、造粒の作業性やコストの面で不利となる。
【0023】
除去される粗粒分は、およそ0.8mm以下のふるい目開きよりも大きな粒子である。目開きは好ましくは0.2~0.8mmであり、より好ましくは0.4~0.6mmである。目開きが大きいほど、ふるい下の粉末に軽石や結晶質の砂が多く含まれ、多孔質造粒体の密度が低下して強度が低くなり、また、粉末中に不要な結晶質の割合が多くなる。目開きが小さいほど原料の歩留まりが低下し、コストアップとなり、また、多孔質造粒体の密度が高くなって気孔率が低下する。一例で入戸シラスを原料とする場合、目開きが0.6mmのときの粗粒分は25.4質量%であり、粉末の歩留まりは74.6質量%であった。また、目開きが0.6mmの振動ふるいにより粗粒分を除去後の粉末において、火山ガラス質含有量は70質量%以上であった。
【0024】
火山噴出物堆積鉱物から粗粒分を除去する手段は、上述した目開きの振動ふるいの他、風力選別機を用いることもできる。いずれにせよ火山噴出物堆積鉱物から、簡便な装置によって粗粒分が除去された粉末を高い歩留まりで得ることができる。
【0025】
ふるいの好適な目開きにより、火山噴出物堆積鉱物から粗粒分が除去された、火山ガラス質を含む火山噴出物堆積鉱物由来の粉末の粒径は0.8mm以下、好ましくは0.2mm以下~0.8mm以下、より好ましくは0.4mm以下~0.6mm以下である。ここに、粒径は、前述したように整粒時のふるい目開きと同義であり、粗粒分が除去された、火山ガラス質を含む火山噴出物堆積鉱物由来の粉末の粒径は、上掲のふるい目開き以下である。粗粒分が除去された粉末は、シリカを主成分とする火山ガラス質を高い含有率で含む天然素材であり、家畜が経口摂取しても無害である。
【0026】
火山ガラス質を含む火山噴出物堆積鉱物由来の粉末は、上述の火山ガラス質を含む火山噴出物堆積鉱物から、特許文献1に記載された火山噴出物堆積鉱物の乾式分離方法を用いて、シラスから比重選別された火山ガラス質含有率80質量%以上の粉末であってもよい。具体的な一例では火山噴出物堆積鉱物から粒径5mm超の礫分を除去し、残部を水平方向から所定の角度で傾斜させた多孔板を振動させつつ下方から多孔板に向けて送風するエアテーブル式の比重差選別装置に供給して、重比重分と、軽比重分と、集塵分と、多孔板落下分とに選別し、上記軽比重分を目開き0.8mmのふるいにかけた粉末と、上記集塵分からサイクロン分級機で微小な粘土質を分級除去した粉末と、をそれぞれ回収した粉末は、火山ガラス質の含有率が80質量%以上であり、粒径が0.8mm以下である。特許文献1に記載された火山噴出物堆積鉱物の乾式分離方法を用いることにより、火山ガラス質の含有率が高い粉末を得ることができる。
【0027】
(生分解性結合剤)
生分解性結合剤は、ガラス質を含む火山噴出物堆積鉱物由来の粉末を結合する。結合剤が生分解性結合剤であることにより、使用時に無害で使用後に自然に還る、環境負荷が小さい多孔質造粒体とすることができる。
【0028】
多孔質造粒体が除滓材に用いられる場合には、結合剤が生分解性結合剤であることにより、当該生分解性結合剤が溶湯の高温により容易に焼却されて多孔質造粒体が発泡,溶解して除滓材として有効に作用するとともに、溶湯金属中に介在物として残存することがない。
【0029】
多孔質造粒体が堆肥処理材に用いられる場合には、結合剤が生分解性結合剤であることにより、処理後に結合剤が生分解するので、多孔質造粒体は火山噴出物堆積鉱物として土壌に還り、特別な後処理が不要で環境負担が小さい。
【0030】
多孔質造粒体が家畜飼料添加材に用いられる場合には、結合剤が生分解性結合剤であることにより、家畜が経口摂取しても無害である。
【0031】
多孔質造粒体が焼成発泡体原料に用いられる場合には、結合剤の加熱分解および焼成によりCO2、H2Oのみが生じ、有害物質の発生がなく、環境負荷の小さい多孔質造粒体とすることができる。
【0032】
生分解性結合剤としては、生分解性プラスチックとして開発されたさまざまな種類が使用できる。製造方法によって微生物系、天然物系、化学合成系の3つに分類され、微生物系としてはポリエステルや多糖類のバクテリアセルロースなど、天然物系としてはセルロースやでんぷん、化学合成系としてはポリビニルアルコール(以下、略字で「PVA」と表記する。)や脂肪酸ポリエステルを例示することができ、生産量や安全性の点から好ましくはPVAである。
PVAは、合成高分子の一種であり、水に可溶性であり、接着剤やセラミックス製品製造時のバインダーなど広い範囲で利用されている。PVAは、有害性は極めて低く、医薬品添加物規格および化粧品基準に記載されている。また、地力増進法で政令指定土壌改良資材として記載されている。さらに、PVAは、化学合成系の生分解性プラスチックであり、自然界の微生物により最終的に水と二酸化炭素に分解される。したがって、PVAを多孔性造粒体の結合剤に用いることにより、環境負荷の小さい多孔性造粒体を得ることができる。
【0033】
PVAは、酢酸ビニルを重合させポリ酢酸ビニルとし、更にアルカリを用いたけん化反応により酢酸基を水酸基に置き換えて合成される。PVAの特性は、重合度とけん化度とに大きく影響を受ける。重合度は、PVAにおいて酢酸ビニル分子が繋がった数のことであり、また、けん化度は、PVA中の酢酸基と水酸基の合計数に対する水酸基の百分率のことである。けん化度の程度により、けん化度の高い順に完全けん化ポバール、中間けん化ポバール、部分けん化ポバールと称される。ポバールは、PVAの意味である。
【0034】
PVAの重合度は、PVA水溶液の粘度、塗布されたPVA被膜の強度などに大きく影響する。具体的に重合度が高くなると水溶性が悪くなり、また水溶液の粘度も高くなり、作業性が悪くなる。逆に重合度が低くなると水溶性は良くなるが、結合強度が低下する。また、PVAのけん化度は水への溶解性、PVA被膜の耐水性などに影響を与える。具体的に部分けん化型は完全けん化型より水溶性が良くなるが、その分皮膜の耐水性が悪くなる。多孔質造粒体は、搬送や加工処理の際での崩れ防止のために、ある程度の強度が必要であり、また、水との接触によるPVAの溶け出しによる崩壊防止のために、ある程度の耐水性が必要である。そこで、多孔質造粒体の用途、目的に応じて適切な重合度・けん化度のPVAを選択する。一例では、完全けん化型(98%以上)のPVAであり、重合度重合度は1300~2000、好ましくは1600~1800、より好ましくは1500~1800のPVAを選択すればよい。
【0035】
PVAは水溶性であるが常温ではなかなか溶けず、多孔質造粒体の製造時において混錬を容易にするためにあらかじめPVA水溶液を作成するときは、90℃程度まで加熱することが好ましい。
【0036】
多孔質造粒体におけるPVAの配合割合は、上述した火山ガラス質を含む火山噴出物堆積鉱物由来の粉末のサイズにもよるが、例えば振動ふるいにより0.6mmのふるい目を通過したシラスに対する百分率で0.8~2.0質量%程度とするのが好ましく、0.9~1.1質量%程度とするのがより好ましい。PVAの配合割合が少な過ぎると造粒体強度が弱く、多いと造粒体強度は増すが造粒体製造時の混錬物の粘りが強く作業性が悪くなり材料の無駄が増える。
【0037】
多孔質造粒体は、上述した成分に加えて、用途、目的、機能に応じて、他の成分を含むことができる。
【0038】
[多孔質造粒体の製造方法]
次に、多孔質造粒体の製造方法について説明する。
製造方法は、火山ガラス質を含む火山噴出物堆積鉱物由来の粉末と、生分解性結合剤と、水とを、混錬した後、多孔面に通して小塊状にしてから転動造粒し、その後に加熱乾燥させる工程を含む。
【0039】
(原料)
火山ガラス質を含む火山噴出物堆積鉱物由来の粉末は、一例では前述したように原料の火山噴出物堆積鉱物、例えばシラスから、ふるいにより粒径5mm超の礫分を除去した後、残部をふるいにより粗粒分を除去して得られる。粒径5mm超の礫分を除去する前に、又は除去した後に、シラスに含まれる水分量に応じて、必要によりロータリーキルン等の加熱装置よりシラス中の水分量を所定量以下に低減させることができる。もっとも加熱装置を用いなくても、原料の天日干しにより自然乾燥させて水分量を低減させることもできる。
【0040】
粗粒分は、前述した所定の目開き(0.8mm以下、好ましくは0.2~0.8mm、より好ましくは0.4~0.6mm)の振動ふるいによって除去することができる。振動ふるいの代わりに、風力選別機を用いて粗粒分を除去することもできる。風力選別機は、循環式風力選別機でもよいし、吹上げ式風力選別機でもよいし、吸引式風力選別機でもよい。なかでも密閉型又は外気導入型の循環式風力選別機は、吹上げ式風力選別機や吸引式風力選別機に比べて動力を少なくできるので好ましい。
【0041】
火山ガラス質を含む火山噴出物堆積鉱物由来の粉末は、別の例では前述したように特許文献1に記載された火山噴出物堆積鉱物の乾式分離方法を用いて、原料の火山噴出物堆積鉱物、例えばシラスから、ふるいにより粒径5mm超の礫分を除去した後、水平方向から所定の角度で傾斜させた多孔板を振動させつつ下方から多孔板に向けて送風するエアテーブル式の比重差選別装置に供給して、重比重分と、軽比重分と、集塵分と、多孔板落下分とに選別し、上記軽比重分を目開き0.8mmのふるいにかけた粉末と、上記集塵分からサイクロン分級機で微小な粘土質を分級した粉末と、をそれぞれ回収して得られる。回収して得られた粉末は、火山ガラス質の含有率が80質量%以上であり、粒径が0.8mm以下である。前処理としてふるいにより粒径5mm超の礫分を除去する代わりに、粒径5mm以下に粉砕する機械を用いて粉砕することもできる。粒径5mm超の礫分を除去する前に、又は除去した後に、シラスに含まれる水分量に応じて、必要によりロータリーキルン等の加熱装置よりシラス中の水分量を所定量以下に低減させることができる。もっとも加熱装置を用いなくても、原料の天日干しにより自然乾燥させて水分量を低減させることもできる。
【0042】
生分解性結合剤は、前述したPVAを好適に用いることができる。
【0043】
火山ガラス質を含む火山噴出物堆積鉱物由来の粉末と、生分解性結合剤と、水との混錬は、生分解性結合剤として好適に用いられるPVAが、常温では水になかなか溶けないので、90℃程度に加熱した水とPVAと混合して、PVA水溶液を調製することが好ましい。
【0044】
火山ガラス質を含む火山噴出物堆積鉱物由来の粉末と、生分解性結合剤と、水との配合割合は、目開き0.6mmのふるいで粗粒分を除去したシラスとPVAと水との場合において、PVAがシラスに対して0.8~2.0質量%程度、より好ましくは0.9~1.1質量%程度とし、水がシラスに対して18~25質量%程度、より好ましくは20~23質量%程度とするのが望ましい。水の割合が少な過ぎると多孔面に通した小塊状の混錬物がまとまらず造粒され難い。水の割合が多過ぎると多孔面に通した後、転動造粒機の容器壁への原料付着が激しくなり、また、小塊状の混錬物同士が付着して所定のサイズの造粒体が得られ難い。
【0045】
(混錬)
混錬は、公知の混錬装置により原料が混錬され得る時間をかけて行うことができる。
【0046】
(小塊状化)
混錬後に、多孔面に通して混錬物を小塊状にする。発明者の新規知見によれば、混錬物を直接的に所定の粒径の造粒体を効率良く製造するのは難しかったのに対して、混錬物を一旦、所定の粒径の造粒体よりも粒径が小さい小塊状として、この小塊状の混錬物を造粒することにより、小塊状の混錬物が造粒体の核となって所定の粒径の造粒体を効率良く製造することができる。多孔面の孔径は、製造する造粒体の粒径よりも小さいことが好ましい。造粒体の用途に応じた粒子の大きさによるが、多孔面の孔径は、およそ1~8mmとする。家畜飼料添加材用の造粒体を製造するときは、多孔面の孔径が1~2mmであることが好ましく、除滓材用や堆肥処理材用の造粒体を製造するときは、多孔面の孔径が2~8mmであることが好ましい。
【0047】
多孔面の孔を通過させるために必要な圧力を混錬物に加えつつ、多孔面の出側で混錬物を掻き落とすことにより、小塊状の混錬物が効率よく得られる。得られた小塊状の混錬物は、必要により粗砕して造粒体よりも小さな粒径にすることができる。
【0048】
(造粒)
造粒は、公知の転動造粒機、例えば傾斜した円形容器に粉体を供給して当該円盤容器を回転させることにより造粒する造粒機を用いることができる。転動造粒により、粒子の形状が整えられ、粒子表面のシラス密度が内部に比べて高まる。転動回転速度や回転時間の調整によって造粒体の大きさや粒度分布を調整することができる。
【0049】
(乾燥硬化)
転動造粒機により得られた造粒体は、水分を除去し生分解性結合剤を完全に硬化させるために加熱装置に供給する。加熱装置は乾燥機やロータリーキルンなど公知の装置を用いる。加熱温度は、造粒体の水分を飛ばしPVAを固化させる温度として80~150℃であれば良い。具体的には作業性の関係から105℃で乾燥・硬化することができる。加熱温度が高すぎるとPVCの熱分解するおそれがある。加熱温度が低いと乾燥硬化に時間を要する。
【0050】
なお、加熱前に造粒体をあらかじめ自然乾燥させることもできる。また、加熱前又は加熱後に、用途に応じた造粒体の粒度調整のために、造粒体をふるい分けすることができる。更に、乾式バレルで共擦りして粒の表面に付着した微粉を落とし、表面を滑らかにする処理を行うこともできる。
【0051】
(粒度調整)
造粒体の粒度調整は、例えば、各用途で必要とされる粒径よりも大きな造粒体を、乾燥前にふるい分けすることが挙げられる。ふるい分けされた大きな造粒体は、混錬された原料に戻して再利用される。また、家畜飼料添加材用の多孔質造粒体は、必要とされる粒径が、除滓材用や堆肥処理材用の造粒体よりも小さいので、乾燥後に、家畜飼料添加材用と、除滓材用又は堆肥処理材用とに、ふるい分けすることができる。更に、粒径0.3mm以下のものは、十分に造粒されていないか、または造粒後に破片又は粉となったもの等であり、家畜飼料添加材用や除滓材用や堆肥処理材用には必要とされないので、目開き0.3mmのふるいにより、ふるい分けすることができる。除滓材用の場合にふるい分けされた粒径0.6mm以下のもの、堆肥処理材用の場合にふるい分けされた粒径1.0mm以下のものが更にふるい分けされた粒径0.6mm以下のもの、及び家畜飼料添加材用の場合にふるい分けされた粒径0.3mm以下のものは、シラスバルーン等の焼成発泡体原料として用いることができる。このような粒度調整により、製造された造粒体を無駄なく活用することができる。
【0052】
[用途]
次に、多孔質造粒体の用途について説明する。
(除滓材)
従来、除滓材にはシリカ系粉末が用いられていた。しかし、粉末は高温の金属溶湯の上に撒くため粉が舞い作業環境上好ましくなかった。これに対し、粉が舞わなくするために微粒軽石が使われているが、微粒軽石は溶解し難く品質や作業性に影響を及ぼす可能性があった。
【0053】
ここに、本発明の多孔質造粒体を除滓材に用いることで、粉塵が舞わず、かつ溶解性も問題がなく除滓性能も良好であった。その理由は、多孔質造粒体が金属溶湯に触れると生分解性結合剤(有機物)が燃え、造粒体が素早く崩壊、分散するとともに、シラス粉末が発泡し、更にノロ(スラグ)と反応することでスラグを高粘度にし、除滓に寄与すると考えられる。また、除滓材は、ある程度の耐熱性が必要であるところ、本発明の多孔質造粒体は、好ましくは原料が0.6mm以下のシラスを用いており、多孔質であることが、耐熱性に寄与していると思われる。
【0054】
除滓材の用途において、多孔質造粒体の粒径は、粉塵として舞わないサイズとして0.6mm程度~3mm程度が好ましい。
【0055】
(堆肥処理材)
家畜の糞尿を発酵により無臭化する策としてバイオ菌による発酵促進が検討されている。従来、軽石などの多孔質体を担体にバイオ菌を植え付け、畜舎床に撒いたり、糞尿集積場での処理に用いられたりしていた。しかし発酵をより高めるためにバイオ菌の繁殖を高めることが求められているのに対して、従来の軽石などの多孔質体では限界があった。また、処理された糞尿は、牧草地や田畑の堆肥として用いられるが、軽石は容易に風化せず軽石交じりの土になってしまう。
【0056】
ここに、本発明の多孔質造粒体を堆肥処理材としてバイオ菌の担体としたものでは、バイオ菌の繁殖が活発で、従来の三分の一の量で同様な発酵があった。その理由は明確ではないが、繁殖が活発となる理由は、本発明の多孔質造粒体の孔は貫通孔であり毛細管現象で水溶性養分を外部から取り込みやすくバイオ菌の繁殖する空間が多いこと、および有機の結合剤がバイオ菌の栄養となっているためと予想される。また、処理された糞尿を堆肥として用いるときに、本発明の多孔質造粒体は結合剤に水可溶性で、かつ生分解性のものを用いているので、最終的にはシラス粉として土壌に還る。
【0057】
堆肥処理材の用途において、多孔質造粒体の粒径は、堆肥上に広域に散布する必要から、遠くまで届く、また、散布の際に粉塵が舞わないという作業性の観点から、1~20mm程度が好ましく、3~15mm程度がより好ましい。
【0058】
(家畜飼料添加材)
バイオ菌を飼料とともに摂取することで、腸内での発酵を進めることで糞尿を無臭化したり、また、病原菌への抵抗力を高めたりすることが可能となる。
【0059】
ここに、本発明の多孔質造粒体を、家畜飼料添加材としてバイオ菌の担体としたものは、当該多孔質造粒体が貫通孔を有しバイオ菌の繁殖する空間が多いため、および有機結合剤を用いているためにバイオ菌が繁殖しやすい造粒体であることから、少ない添加量で家畜に経口摂取させることができる。また、本発明の多孔質造粒体は、経口摂取させても家畜に無害な成分からなる。
【0060】
家畜飼料添加材の用途において、多孔質造粒体の粒径は、0.3mm程度~2mm程度が好ましい。より好ましくは1mm以下である。なお豚の腸は人間に近く、多孔質造粒体として0.6mm以下のものを用いることもできる。
【0061】
(焼成発泡体原料)
シラスは、1000℃程度の高温に瞬時にさらすことにより発泡しシラスバルーンが得られる。シラスバルーンは、球状の発泡体であり、軽量で低熱伝導性であり、組成がアルミノけい酸塩であるため不燃性で高融点であり、また無毒・不活性である等の特性を有し、コンクリート建材等として用いられている。シラスバルーンは水浮揚率が高い、サイズの大きなものが好ましい。また、シラスバルーンの製造時には、得られたシラスバルーンを水に浮かせて中空のシラスバルーンを選別回収している製品もある。しかし、シラスの種類や焼成条件にもよるが、バルーンの破裂があり水浮揚率、換言すればシラスバルーンのサイズや収率を高めるのは難しい。
【0062】
ここに、本発明の多孔質造粒体を、焼成発泡体原料として用いることで、シラスバルーンの製造時には、シラス粒子が生分解性結合剤で結合した造粒体を焼成処理して発泡粒子が互いに凝着した発泡体となる。これにより、シラス粒子のバルーンが部分的に割れているとしてもバルーン同士が凝集していることにより水に浮くことができる。したがって水浮遊率が高く収率が高いシラスバルーン凝着発泡粒が得られる。従来のシラスバルーンでは得られない粒径が大きな水浮揚の発泡粒子を得ることが出来る。得られたシラスバルーンは、従来のシラスバルーンと同様にコンクリート建材等として用いることができる他、家畜用飼料添加材用としてバイオ菌の担体に用いることもできる。
焼成発泡体原料の用途において、多孔質造粒体の粒径は、0.6mm以下が好ましい。
【0063】
(その他の用途)
害虫対策用の農薬を本発明の多孔質造粒体に含浸させて、薬剤が徐々に溶け出すようにして薬効が長期に渡り機能するための徐効性担体として用いることができる。このように本発明の多孔質造粒体を徐効性担体として用いることで、農薬散布回数の削減となり、労働削減し農薬使用量の削減に寄与する。また、農地に散布したとしても徐効性担体としての多孔体造粒体は結合剤が生分解されて土に還る。
【0064】
また、害虫対策用の農薬の代わりに育成用サプリを本発明の多孔質造粒体に含浸させて、サプリメントが徐々に溶出するようにして長期に渡る投与効果が得られる。
【実施例】
【0065】
(実施例の多孔質造粒体の製造)
入戸シラスをふるいにかけ5mm以上の礫分を除去した後、ロータリーキルンで水分を4%以下に低減してから、目開き0.6mmの振動ふるいにより粗粒分を除去した。粗粒分の除去後のシラス粉末に対して1質量%相当のPVAを、当該シラス粉末に対して22質量%相当の水に、90℃の水温度で溶解させてPVA水溶液を得て、このPVA水溶液と当該粗粒分の除去後のシラス粉末とをミキサーにより混錬した。得られた混錬物を、孔径5mmの多孔面に通して小塊状にした。得られた小塊状の混錬物を転動造粒機に供給して造粒した。得られた造粒物を目開き5.6mmのふるいにかけて大粒の造粒体を除去してから室内乾燥後、乾燥機により105℃で一晩加熱して乾燥硬化させた。乾燥硬化後の多孔質造粒体を目開き4.75mmのふるいと、目開き4.00mmのふるいにかけて粒径4.00~4.75mmの実施例の多孔質造粒体を得た。
【0066】
(特性評価)
この製造プロセスを2ロットで行い、各ロットで7個の造粒体試料を採取してアルキメデス法により気孔率を調べたところ、52%であった。また嵩密度は、1.13g/cm3であった。
【0067】
さらに、圧壊強度を調べたところ、1ロット目の平均が26N、2ロット目の平均が12Nであった。試料粒の形状はまちまちであり、圧壊強度は4~38Nのばらつきがあった。
【0068】
軽石に比べて多孔質造粒体の圧壊強度が低いことの利点として、多孔質造粒体を堆肥処理材として用いたときに、家畜舎の床に撒いた時に家畜が踏んで潰れやすく、家畜の蹄を痛めることがない。また、家畜の糞尿を発酵させた堆肥中に粒として残っていても潰れやすく、作業者や農機具を痛めることがない。
【0069】
(除滓材としての使用)
次に、上述した実施例の多孔質造粒体の製造の際に、乾燥硬化後の多孔質造粒体を目開き3mmのふるいと、目開き0.6mmのふるいにかけた以外は同様の工程により粒径0.6~3mmの実施例の多孔質造粒体を得た。
この多孔質造粒体を銑鉄の鋳造時に取鍋内に投入したところ、溶銑の表面で速やかに発泡し熔解し、スラグを高粘土にして容易に除滓することができた。
【0070】
(堆肥処理材としての使用)
次に、上述した実施例の多孔質造粒体の製造の際に、乾燥硬化後の多孔質造粒体を目開き20mmのふるいと、目開き1mmのふるいにかけた以外は同様の工程により粒径1~20mmの実施例の多孔質造粒体を得た。
この多孔質造粒体に農林水産省が指定している飼料添加物として認められているバチルス菌などのバイオ菌を担持させて家畜の畜舎の床に撒いたところ、糞尿を無臭化するとともに堆肥化することができた。多孔質造粒体を用いることによりバイオ菌の繁殖が活性となり、軽石使用に比べて三分の一の量で済んだ。その原因は、軽石は多孔体ではあるが造粒されたものではないために閉鎖孔が多く、バイオ菌が固定する空間が少ないのに対して、多孔質造粒体は連通孔であるため毛細管現象で水溶性養分を外部から取り込みやすく固定空間が広いため、および有機の結合剤を含むためと考えられる。
【0071】
堆肥処理材で消臭発酵した後のものを牧草地や田畑の有機肥料として使用した。この際、軽石は崩れずいつまでの石のままであったのに対して、多孔質造粒体は結合剤が土中の細菌により分解され土に還った。
【0072】
(家畜飼料添加材としての使用)
上述した実施例用の多孔質造粒体の製造の際に、多孔面の孔径を2mmとし、乾燥硬化後の多孔質造粒体を目開き2.0mmのふるいと、目開き0.3mmのふるいにかけた以外は同様の工程により粒径0.3~2.0mmの実施例の多孔質造粒体を得た。
【0073】
この多孔質造粒体に農林水産省が指定する飼料添加物として認められている生菌剤であるバチルス菌などのバイオ菌を担持させてニワトリの飼料に添加して与えた。従来の軽石を担体としたものと比較して、バイオ菌による飼料効果(ある大きさに成長するまでに与える飼料の量)は同じであった。また、バイオ菌を与えなかった場合の飼料効果を10としてバイオ菌を担持させた多孔質造粒体の飼料効果は8であり、飼料を削減できた。その理由は、バイオ菌による食物の分解と腸内細菌の活性化により栄養吸収が高くなるためと考えられる。
【0074】
なお、軽石を用いた場合との相違点としては、軽石は火山ガラスと固い結晶粒子が混在しているためニワトリの砂ズリの中に固体(石)として残ったが、多孔質造粒体は砂となって消化物とともに排出された。したがって、多孔質造粒体を用いた場合は砂ズリを含め腸内がきれいであり、ニワトリをさばく際に包丁を欠かしたりすることもなく作業性が向上した。
【0075】
(焼成発泡体原料としての使用)
上述した実施例用の多孔質造粒体の製造の際に、乾燥硬化後の多孔質造粒体をふるいにかけた残りの多孔質造粒体のうち、ふるい下の多孔質造粒体に、目開き0.6mmのふるいにかけた以外は同様の工程により粒径0.6mm以下の多孔質造粒体を得た。
【0076】
次に、上述した実施例の多孔質造粒体を内燃式媒体流動床炉で1050℃に加熱して発泡させたのち、水に浮かせて中空の凝着発泡体を選別回収した。その結果、水浮遊率が高く、収率高く凝着発泡体が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の多孔質造粒体は、除滓材、堆肥処理材、家畜飼料添加材、焼成発泡体原料、農薬担体、土壌改良材などしてシラスの新たな用途を拓くものであり、埋蔵量の大きなシラスを加工することで産業の振興を図ることができる。