(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】ラミネートパルプ容器の製造方法、及び、ラミネートパルプ容器の製造装置
(51)【国際特許分類】
B65D 1/00 20060101AFI20240910BHJP
B65D 1/34 20060101ALI20240910BHJP
B65D 25/34 20060101ALI20240910BHJP
B29C 63/02 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
B65D1/00 120
B65D1/34
B65D25/34 C
B29C63/02
(21)【出願番号】P 2020035811
(22)【出願日】2020-03-03
【審査請求日】2022-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】390007537
【氏名又は名称】株式会社ケーピープラテック
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 一成
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-076306(JP,A)
【文献】特開2002-002655(JP,A)
【文献】特開2000-309322(JP,A)
【文献】国際公開第2013/008318(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/022810(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/00
B65D 1/34
B65D 25/34
B29C 63/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ繊維によって抄造された凹状の容器本体の内面に第1ラミネートフィルムを貼り付ける第1工程と、前記容器本体の外面に第2ラミネートフィルムを貼り付ける第2工程とを含み、
前記第2工程は、
前記第1ラミネートフィルムが貼り付けられた前記容器本体を、前記容器本体に対応する雄型に支持させる支持ステップと、
前記雄型に嵌合する雌型を、前記第2ラミネートフィルムを介して、前記容器本体の前記外面に相対するように配置する配置ステップと、
前記雄型及び前記雌型を嵌合させることによって、前記第2ラミネートフィルムを前記容器本体に密着させて接着させる接着ステップと、を含み、
前記第1工程において、前記内面に前記第1ラミネートフィルムが貼り付けられ、
前記雌型は、凹部と、外部から前記凹部の内部に連通し、前記凹部の底面中央において開口する導入孔とを有し、
前記支持ステップにおいて、前記雌型と前記容器本体との間に前記第2ラミネートフィルムを引っ張られた状態で配置し、
前記接着ステップにおいて、前記導入孔から気体を前記雌型と前記第2ラミネートフィルムとの間に導入
することにより、前記第2ラミネートフィルムの前記容器本体の底壁外面の中央に接着するべき部分に前記気体を吹き付けて、前記第2ラミネートフィルムの前記容器本体の前記底壁外面の中央に接着するべき部分を前記容器本体の前記底壁外面の中央に向かって押し出しつつ、前記雄型を前記雌型の前記凹部に挿入するべく前記雄型を前記雌型に向けて移動させることにより、前記第2ラミネートフィルムを前記容器本体の前記底壁外面に密着させ、その後、前記雌型と前記容器本体との間の前記容器本体の前記底壁外面、前記容器本体の側壁外面を通過して外部に通じる隙間に前記導入孔から前記気体を導入しつつ、前記雄型を前記雌型に嵌合させて、前記第2ラミネートフィルムを前記容器本体に接着するラミネートパルプ容器の製造方法。
【請求項2】
前記接着ステップにおいて、前記雌型を前記第2ラミネートフィルムに接触させることによって、前記雌型と前記第2ラミネートフィルムとの間に密閉空間を形成し、前記導入孔から前記密閉空間に前記気体を導入し、前記密閉空間の内圧を上昇させる請求項1に記載のラミネートパルプ容器の製造方法。
【請求項3】
前記配置ステップの前に、前記第2ラミネートフィルムを加熱する加熱ステップを含み、
前記接着ステップにおいて、前記第2ラミネートフィルムに前記気体を吹き付ける前に、前記気体を加熱する請求項1又は請求項2に記載のラミネートパルプ容器の製造方法。
【請求項4】
前記雌型には弾性変形可能な弾性部材が設けられ、
前記接着ステップにおいて前記弾性部材を前記容器本体に押し付ける請求項1~請求項3のいずれか1つの項に記載のラミネートパルプ容器の製造方法。
【請求項5】
前記接着ステップにおいて、前記弾性部材を前記容器本体に押し付けるときに、前記雌型と前記第2ラミネートフィルムとの間を排気する請求項4に記載のラミネートパルプ容器の製造方法。
【請求項6】
パルプ繊維によって抄造された容器本体の両面にラミネートフィルムが貼り付けられたラミネートパルプ容器を製造するためのラミネートパルプ容器の製造装置であって、
凹部を備え、前記凹部の底面に開口する導入孔を備えた雌型、及び、前記凹部に嵌合する凸部を備えた雄型からなる一対の型体と、
前記雌型と前記雄型とを嵌合させる駆動装置と、
前記導入孔に接続された気体供給装置と、
前記気体供給装置、及び、前記駆動装置を制御可能な制御装置とを有し、
前記導入孔は前記雌型の前記底面の中央に設けられ、
前記容器本体が前記雄型に支持され、前記ラミネートフィルムが前記雌型と前記容器本体との間にて引っ張られた状態で配置された後に、
前記制御装置は、
前記駆動装置を駆動させて、前記雌型を前記ラミネートフィルムに近接させ、
前記気体供給装置を駆動させて、前記導入孔から前記雌型と前記ラミネートフィルムとの間に気体を導入
することにより、前記ラミネートフィルムの前記容器本体の底壁外面の中央に接着するべき部分に前記気体を吹き付けて、前記ラミネートフィルムの前記容器本体の前記底壁外面の中央に接着するべき部分を前記容器本体の前記底壁外面の中央に向かって押し出しつつ、前記駆動装置を駆動させて、前記雄型を前記雌型の前記凹部に挿入するべく前記雄型を前記雌型に向けて移動させることにより、前記ラミネートフィルムを前記容器本体の前記底壁外面に密着させ、
その後、前記気体供給装置を駆動させて、前記雌型と前記容器本体との間の前記容器本体の前記底壁外面、前記容器本体の側壁外面を通過して外部に通じる隙間に前記導入孔から前記気体を導入しつつ、前記駆動装置により、前記雄型を前記雌型に嵌合させて、前記ラミネートフィルムを前記容器本体に接着するラミネートパルプ容器の製造装置。
【請求項7】
前記導入孔に接続された排気装置を更に有する請求項6に記載のラミネートパルプ容器の製造装置。
【請求項8】
前記雌型には弾性変形可能な弾性部材が設けられている請求項6又は請求項7に記載のラミネートパルプ容器の製造装置。
【請求項9】
前記ラミネートフィルムを加熱するフィルム加熱装置と、
前記気体供給装置から前記導入孔に至る気体導入路に設けられ、前記気体導入路を通過する前記気体を加熱する気体加熱装置とを更に有する請求項6~請求項8のいずれか1つの項に記載のラミネートパルプ容器の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品の収容等に用いられるラミネートパルプ容器の製造方法、及び、その製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パルプ層とプラスチック層とが積層された積層体からなるラミネートパルプ容器の製造方法が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1の製造方法では、まず、パルプ層がパルプ繊維を含む原料液から収容物を収容可能な凹部を備えた形状に抄造される。その後、ラミネートフィルムを凹部内面に沿うように配置し、パルプ層を外面から排気して、ラミネートフィルムをパルプ層に密着させる。更に、フィルムをパルプ層に接着させることで、ラミネートパルプ容器が完成する。凹部内面にプラスチック層を設けることで、凹部内面に耐水性や耐油性を持たせることができ、凹部内に食品等の収容が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の方法によって製造されたラミネートパルプ容器では外面にラミネートフィルムが設けられていないため、パルプ層が外面に露出している。そのため、ラミネートパルプ容器を上下に2つ重ねた場合、上側の容器のパルプ層に含まれるパルプ繊維が下側の容器の凹部に設けられたプラスチック層表面に移る虞がある。このようなパルプ繊維の移動はプラスチック層表面の清浄性を低下させるため、パルプ層の外面にもラミネートフィルムを接着することが望ましい。
【0005】
そこで、特許文献1に記載された方法に従って、凹部内面にラミネートフィルムを貼り付けた後、新たにラミネートフィルムをパルプ層の外面に沿うように配置し、パルプ層を凹部内面から排気して、ラミネートフィルムをパルプ層の外面に密着させることが考えられる。しかしながら、ラミネートフィルムは通気性が乏しいため、凹部内面にラミネートフィルムを貼り付けた後、パルプ層を凹部内面から排気することが難しく、パルプ層の外面にラミネートフィルムを貼り付けることが容易ではない。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、容器の両面にラミネートフィルムの接着が可能なラミネートパルプ容器の製造方法、及び、ラミネートパルプ容器の製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるラミネートパルプ容器(1)の製造方法は、パルプ繊維によって抄造された凹状の容器本体(10)の内面及び外面のいずれか一方の面に第1ラミネートフィルム(12)を貼り付ける第1工程(ST1~ST7)と、前記内面及び前記外面のいずれか他方の面に第2ラミネートフィルム(14)を貼り付ける第2工程(ST11~ST16)とを含み、前記第2工程は、前記第1ラミネートフィルムが貼り付けられた前記容器本体を、前記容器本体に対応する一対の型体のうち、前記型体の一方に支持させる支持ステップ(ST12)と、前記型体の他方を、前記第2ラミネートフィルムを介して、前記容器本体の前記他方の面に相対するように配置する配置ステップ(ST13)と、前記型体の他方によって前記第2ラミネートフィルムを前記容器本体に密着させて接着させる接着ステップ(ST14)と、を含む。
【0008】
この構成によれば、型体によって容器本体に第2ラミネートフィルムが押し出されて、第2ラミネートフィルムが容器本体に接着される。よって、ラミネートフィルムの貼り付けに容器本体の排気を要しないため、容器の両面にラミネートフィルムの接着が可能となる。
【0009】
上記実施形態において、より好ましくは、前記接着ステップにおいて、気体を、前記第2ラミネートフィルムが前記容器本体の前記他方の面に向かう方向に吹き付ける。
【0010】
この構成によれば、気体が吹き付けられることによって、第2ラミネートフィルムは容器本体に向かって移動する。そのため、第2ラミネートフィルムが容器本体に密着され易くなる。
【0011】
上記実施形態において、より好ましくは、前記第1工程において、前記内面に前記第1ラミネートフィルムが貼り付けられ、前記型体の他方は凹部を有し、外部から前記凹部の内部に連通し、前記凹部の底面において開口する導入孔を有する雌型であり、前記接着ステップにおいて、前記導入孔から前記気体を前記型体の他方と前記第2ラミネートフィルムとの間に導入することによって、前記気体を前記第2ラミネートフィルムに吹き付ける。
【0012】
この構成によれば、気体を型体の凹部の底面から導入することによって、凹部から流出するように気体の流れを発生させることができる。これにより、第2ラミネートフィルムを容器本体に向かって吹き付けることができ、第2ラミネートフィルムを容器本体に向かって移動させることができる。
【0013】
上記実施形態において、より好ましくは、前記接着ステップにおいて、前記型体の他方を前記第2ラミネートフィルムに接触させることによって、前記型体の他方と前記第2ラミネートフィルムとの間に密閉空間を形成し、前記導入孔から前記密閉空間に前記気体を導入し、前記密閉空間の内圧を上昇させる。
【0014】
この構成によれば、容器本体と第2ラミネートフィルムとが接触したときに、第2ラミネートフィルムが密閉空間に閉じ込められた気体によって容器本体に押し付けられる。これにより、第2ラミネートフィルムが容器本体により強く押し付けられるため、第2ラミネートフィルムと容器本体との密着性を高めることができる。
【0015】
上記実施形態において、より好ましくは、前記配置ステップの前に、前記第2ラミネートフィルムを加熱する加熱ステップを含み、前記接着ステップにおいて、前記第2ラミネートフィルムに前記気体を吹き付ける前に、前記気体を加熱する。
【0016】
この構成によれば、第2ラミネートフィルムが加熱によって変形しやすくなるため、第2ラミネートフィルムと容器本体との密着性が高められる。更に、第2ラミネートフィルムに吹き付ける前に、気体が加熱されるため、気体の吹き付けによって第2ラミネートフィルムが冷却されにくくなる。
【0017】
上記実施形態において、より好ましくは、前記型体の他方には弾性変形可能な弾性部材が設けられ、前記接着ステップにおいて前記弾性部材を前記容器本体に押し付ける。
【0018】
この構成によれば、型体を他方側から容器本体に押し付けたときに、弾性部材が容器本体の形状に合わせて弾性変形するため、第2ラミネートフィルムと容器本体との密着性を高めることができる。
【0019】
上記実施形態において、より好ましくは、前記接着ステップにおいて、前記弾性部材を前記容器本体に押し付けるときに、前記型体の他方と前記第2ラミネートフィルムとの間を排気する。
【0020】
この構成によれば、第2ラミネートフィルムと弾性部材との間に気体が残留することが防止できる。これにより、弾性部材が容器本体の形状に合わせて弾性変形し易くなり、第2ラミネートフィルムと容器本体との密着性が高められる。
【0021】
本発明に係るラミネートパルプ容器の製造装置(1)は、パルプ繊維によって抄造された容器本体(10)の両面にラミネートフィルム(12、14)が貼り付けられたラミネートパルプ容器を製造するためのラミネートパルプ容器の製造装置であって、凹部(38A)を備え、前記凹部の底面に開口する導入孔(38E)を備えた雌型(38)、及び、前記凹部に嵌合する凸部(39A)を備えた雄型(39)からなる一対の型体と、前記雌型と前記雄型とを嵌合させる駆動装置(40)と、前記導入孔に接続された気体供給装置(41)と、前記気体供給装置、及び、前記駆動装置を制御可能な制御装置(43)とを有し、前記制御装置は、前記駆動装置を駆動させて、前記雌型及び前記雄型を嵌合させつつ、前記気体供給装置を駆動させて、前記導入孔から前記型体と前記ラミネートフィルムとの間に気体を導入することによって、前記気体を前記ラミネートフィルムに吹き付けて、前記ラミネートフィルムを前記容器本体に接着させる。
【0022】
この構成によれば、ラミネートフィルムと型体との間の気体によって、容器本体にラミネートフィルムが押し出されて、ラミネートフィルムが容器本体に接着される。よって、ラミネートフィルムの貼り付けに容器本体の排気を要しないため、容器の両面にラミネートフィルムの接着が可能となる。
【0023】
上記実施形態において、好ましくは、前記導入孔に接続された排気装置(42)を更に有する。
【0024】
この構成によれば、ラミネートフィルムと雌型との間に気体が残留することが防止できる。これにより、雌型によってラミネートフィルムを容器本体により確実に押し付けることができる。
【0025】
上記実施形態において、好ましくは、前記雌型には弾性変形可能な弾性部材が設けられている。
【0026】
この構成によれば、雄型と雌型を嵌合させて、ラミネートフィルムと容器本体と接着させるときに、弾性部材が弾性変形するため、ラミネートフィルムを容器本体により密着させることができる。
【0027】
上記実施形態において、好ましくは、前記ラミネートフィルムを加熱するフィルム加熱装置と、前記気体供給装置から前記導入孔に至る気体導入路(41B)に設けられ、前記気体導入路を通過する前記気体を加熱する気体加熱装置(45)とを更に有する。
【0028】
この構成によれば、ラミネートフィルムが加熱によって変形しやすくなるため、ラミネートフィルムと容器本体との密着性が高められる。更に、気体が加熱された後にラミネートフィルムに吹き付けられるため、気体の吹き付けによってラミネートフィルムが冷却され難くなる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、容器の両面にラミネートフィルムの接着が可能なラミネートパルプ容器の製造方法、及び、ラミネートパルプ容器の製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の製造方法に従って製造されるラミネートパルプ容器の(A)斜視図、及び、(B)IB-IB断面図
【
図2】本発明の製造方法を実施するための製造ユニットを示す模式図
【
図3】第1実施形態の製造方法に基づく製造工程を説明するための模式図
【
図5】本発明の製造方法に基づく製造工程の内面側ラミネート工程を示すフローチャート
【
図6】本発明の製造方法に基づく製造工程の外面側ラミネート工程を示すフローチャート
【
図7】第2実施形態の製造方法に基づく製造工程を説明するための模式図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明によるラミネートパルプ容器の製造方法の実施形態を、
図1、及び
図2を参照して説明する。
【0032】
<<第1実施形態>>
本発明の製造方法によって製造されるラミネートパルプ容器1は、
図1(A)に示すように、食品等の収容物が収容される収容凹部2を備え、開口部分の縁部にフランジ3を備えたトレイ状をなしている。
図1(B)に示すように、ラミネートパルプ容器1は複数の層からなる多層構造体5によって構成されている。より具体的には、ラミネートパルプ容器1は、パルプ繊維によって抄造され、一方側の面(以下、内面)に、収容凹部2を画定するための凹部が形成されたパルプ層6と、パルプ層6の内面に接着された内面側ラミネート層7と、パルプ層6の他方の面(以下、外面)に接着された外面側ラミネート層8とを含む。
【0033】
パルプ層6はトレイ状に成型されたシート部材であって、パルプ繊維によって構成され、通気性を有している。パルプ層6は公知の方法によって、パルプ繊維を含む原料液から抄造される。以下、説明の便宜上、パルプ層6のみからなる構造体を容器本体10と記載し、パルプ層6に形成された凹部を本体凹部11と記載する。
【0034】
内面側ラミネート層7は容器本体10の本体凹部11が形成された側の面、すなわち内面にプラスチック製のフィルムである内面側ラミネートフィルム12(第1ラミネートフィルム。
図3参照)が貼り付けられることによって形成されている。内面側ラミネート層7は本体凹部11の壁面全体を覆っている。容器本体10の外面には本体凹部11が設けられることによって、外面側に押し出されて外面側に突出する本体凸部13が設けられている。外面側ラミネート層8は本体凸部13を含む容器本体10の外面にプラスチック製のフィルムである外面側ラミネートフィルム14(第2ラミネートフィルム。
図3参照)が貼り付けられることによって形成されている。外面側ラミネート層8は容器本体10の外面全体を覆っている。
【0035】
次に、ラミネートパルプ容器1の製造に用いる製造ユニット20について説明する。製造ユニット20は、
図2に示すように、原料液から容器本体10を抄造するための公知の抄造装置(不図示)と、容器本体10の内面側に内面側ラミネートフィルム12を貼り付ける内面側ラミネート装置21と、外面側に外面側ラミネートフィルム14を貼り付ける外面側ラミネート装置22とを有している。以下では、内面側ラミネート装置21と、外面側ラミネート装置22とについて、
図2を参照して詳細に説明する。
【0036】
図2に示すように、内面側ラミネート装置21は、ロール状に巻き取られた内面側ラミネートフィルム12を支持する一対のリール23と、内面側ラミネートフィルム12を移送する第1移送装置24と、第1加熱装置25と、第1接着装置26と、第1切断装置(不図示)とを有している。リール23はそれぞれ一つの水平面上に第1加熱装置25、第1接着装置26、及び、第1切断装置を挟んで対峙するように設けられている。
【0037】
第1移送装置24は第1加熱装置25の側に位置するリール23(以下、送出リール23A)から引き出し、第1接着装置26の側に位置するリール23(以下、巻取リール23B)に巻き取らせることによって、内面側ラミネートフィルム12を張った状態に保って移送する。
【0038】
第1加熱装置25は、内面側ラミネートフィルム12の両面を加熱する2つのヒータ25Aと、内面側ラミネートフィルム12を移送するためのローラ25Bとを備えている。
【0039】
第1接着装置26は、
図2に示すように、対をなす第1雌型28及び第1雄型29と、第1雌型28及び第1雄型29を相対移動させる第1駆動装置30と、第1排気装置31と、作業者からの入力を受け付けて第1駆動装置30及び第1排気装置31を制御する第1制御装置32とを備えている。第1雌型28はステンレス製の金型であって、本体凹部11に対応する形状をなして凹む第1キャビティ28Aを備えている。第1雌型28には、外面から第1キャビティ28Aを画定する壁面(以下、内面)に達し、その内面にて開口する第1通気孔28Bが設けられている。
【0040】
第1雄型29は第1キャビティ28Aの内面形状と相似形の外面形状を有する第1押圧部29Aを備えている。本実施形態では、第1押圧部29Aの外面には、第1キャビティ28Aの内面への押圧によって弾性変形可能な弾性部材29Bが設けられている。弾性部材29Bは例えば、ゴム状の部材であって、より好ましくはシリコンゴム製である。これにより、内面側ラミネートフィルム12からの熱によって、弾性部材29Bが変形や変質することが防止できる。
【0041】
第1駆動装置30は第1制御装置32からの信号に基づいて、第1雄型29を、第1押圧部29Aが第1キャビティ28Aから分離した位置(分離位置)と、第1押圧部29Aが第1キャビティ28Aに挿入され、互いに嵌合する位置(挿入位置)との間で移動させる。本実施形態では、第1雄型29は第1雌型28の上側に配置され、第1駆動装置30は、第1雌型28及び第1雄型29を上下方向に移動させて分離位置と挿入位置との間で移動させる。
【0042】
第1排気装置31は、所定の配管28Cを介して、第1通気孔28Bに接続されている。第1排気装置31は、第1制御装置32からの信号に基づいて駆動し、第1通気孔28Bから排気を行う。
【0043】
第1制御装置32は、中央演算処理装置(CPU)や、メモリやHDD等の記憶装置を備えたコンピュータであって、作業者からの入力を受け付ける第1入力部32Aを有している。第1入力部32Aは、例えば、タッチパネルである。第1制御装置32は、第1入力部32Aへの入力に基づいて、第1移送装置24を駆動させて内面側ラミネートフィルム12を移送させる。また、第1制御装置32は、第1入力部32Aへの入力に基づいて、第1駆動装置30を駆動させ、第1雌型28及び第1雄型29を分離位置と挿入位置との間で移動させる。また、第1制御装置32は、第1入力部32Aへの入力に基づいて、第1排気装置31を駆動させて、第1通気孔28Bから排気させる。
【0044】
第1切断装置は、容器本体10の内面に貼り付けられた内面側ラミネートフィルム12を切断する。第1切断装置によって内面側ラミネートフィルム12が切断されることによって、ロール状に巻き取られた内面側ラミネートフィルム12から容器本体10が分離可能となる。
【0045】
外面側ラミネート装置22は、ロール状に巻き取られた外面側ラミネートフィルム14を支持する一対のリール33と、外面側ラミネートフィルム14を移送する第2移送装置34と、第2加熱装置35(フィルム加熱装置)と、第2接着装置36と、第2切断装置(不図示)とを有している。リール33はそれぞれ一つの水平面上に第2加熱装置35、第2接着装置36、及び第2切断装置を挟んで対峙するように設けられている。
【0046】
第2移送装置34は第2加熱装置35の側に位置するリール33(以下、送出リール33A)から引き出し、第2接着装置36の側に位置するリール33(以下、巻取リール33B)に巻き取らせることによって、外面側ラミネートフィルム14を張った状態に保って移送する。
【0047】
第2加熱装置35は第1加熱装置25と同様のものであり、外面側ラミネートフィルム14の両面を加熱する2つのヒータ35Aと、外面側ラミネートフィルム14を移送するためのローラ35Bとを備えている。
【0048】
第2接着装置36は、対をなす第2雌型38(型体)及び第2雄型39(型体)と、第2雌型38及び第2雄型39を相対移動させる第2駆動装置40と、圧空供給装置41と、第2排気装置42と、作業者からの入力を受け付けて第2駆動装置40、圧空供給装置41(気体供給装置)、及び、第2排気装置42を制御する第2制御装置43とを備えている。本実施形態では、第2接着装置36は、圧空供給装置41から供給される圧縮空気を加熱する圧空ヒータ45(気体加熱装置)を更に備えている。
【0049】
第2雌型38は上方に凹む凹部であって、本体凸部13に対応する形状を有する第2キャビティ38Aを備えた型体である。より具体的には、第2雌型38は金属製の基体38Bと、第1雄型29と同様の弾性部材38Cとを有する。基体38Bは第2キャビティ38Aを形成すべく上方に凹む基体凹部38Dを備え、弾性部材38Cは、基体凹部38Dを画定する壁面、及び、基体凹部38Dの開口の周辺部分を覆っている。よって、少なくとも第2キャビティ38Aの壁面は弾性部材38Cによって覆われている。第2雌型38に設けられる弾性部材38Cとしては、第1雄型29に設けられる弾性部材29Bと同様のものであってよく、好ましくはシリコンゴム製である。第2雌型38には外部から第2キャビティ38Aの内部に連通し、第2キャビティ38Aの底面(第2キャビティ38Aの上側の境界を画定する面)にて開口する複数の第2通気孔38Eが設けられている。
【0050】
本実施形態では、第2キャビティ38Aは略直方体状に凹んでいる。第2通気孔38Eの少なくとも一つは第2キャビティ38Aの底面略中央部において開口している。
【0051】
第2雄型39は、ステンレス製の金型であって、下部に第2押圧部39Aを備えている。第2押圧部39Aは本体凹部11の内面形状と整合する外面形状を有し、
図2に示すように、第2キャビティ38Aの内面形状と相似形の外面形状をなす。
【0052】
第2駆動装置40は第2制御装置43からの信号に基づいて、第2雌型38を、第2キャビティ38Aが第2押圧部39Aから分離した位置(分離位置)と、第2キャビティ38Aに第2押圧部39Aが挿入され、互いに嵌合する位置(挿入位置)との間で移動させる。本実施形態では、第2雌型38は第2雄型39の上側に配置され、第2駆動装置40は、第2雌型38及び第2雄型39を上下方向に移動させて、分離位置と挿入位置との間で移動させる。
【0053】
圧空供給装置41は、配管41Aによって第2通気孔38Eに接続されている。圧空供給装置41は、第2制御装置43からの信号に基づいて駆動し、圧縮空気を配管41A内に供給して、第2通気孔38Eから圧縮空気を放出させる。すなわち、配管41Aによって、圧空供給装置41から第2キャビティ38Aの内部に至る圧空導入路41B(気体導入路)が画定され、第2通気孔38Eは圧縮空気を第2キャビティ38Aの内部に導入するための導入孔として機能する。但し、本実施形態では、圧空供給装置41は、圧縮空気を配管41A内に供給するものであるが、配管41Aに圧縮された気体を供給するものであればよく、例えば、配管41A内に圧縮された窒素ガスを供給するものであってもよい。
【0054】
第2排気装置42は、所定の配管42Aを介して、配管41Aに接続されている。第2排気装置42は、第2制御装置43からの信号に基づいて駆動し、配管41Aを大気圧に減圧する。第2排気装置42は配管41Aを大気開放することによって、配管41Aの内圧を大気圧とする装置であってもよく、また、配管41Aを強制的に減圧するポンプであってもよい。
【0055】
第2制御装置43は第1制御装置32と同様に、中央演算処理装置(CPU)や、メモリやHDD等の記憶装置を備えたコンピュータであって、作業者からの入力を受け付ける第2入力部43Aを有している。第2入力部43Aは、例えば、タッチパネルである。第2制御装置43は、第2入力部43Aへの入力に基づいて、第2移送装置34を駆動させて外面側ラミネートフィルム14を移送させる。また、第2制御装置43は、第2入力部43Aへの入力に基づいて、第2駆動装置40を駆動させ、第2雌型38及び第2雄型39を分離位置と挿入位置との間で移動させる。また、第2制御装置43は、第2入力部43Aへの入力に基づいて、第2排気装置42を駆動させて、第2通気孔38Eから排気させる。更に、第2制御装置43は、第2入力部43Aへの入力に基づいて、圧空供給装置41を駆動させて、第2通気孔38Eから圧縮空気を放出させる。
【0056】
圧空ヒータ45は、圧空供給装置41から供給され、圧空導入路41Bを通過する圧縮空気を加熱するための装置であって、配管41Aに設けられている。
【0057】
第2切断装置は、容器本体10の外面に貼り付けらえた外面側ラミネートフィルム14を切断する。第2切断装置によって外面側ラミネートフィルム14が切断されることによって、ロール状に巻き取られた外面側ラミネートフィルム14から容器本体10が分離可能となる。
【0058】
次に、ラミネートパルプ容器1の製造工程について、
図3~
図6を参照して説明する。製造工程は、抄造工程と、内面側ラミネート工程(第1工程。
図5のST1~ST7)と、外面側ラミネート工程(第2工程。
図6のST11~ST16)とを記載の順に含む。抄造工程は、パルプ繊維を含む原料液から容器本体10を抄造する工程であって、公知の方法に基づくものであってよい。内面側ラミネート工程は、抄造後の容器本体10の内面側に内面側ラミネートフィルム12を貼り付ける工程であり、外面側ラミネート工程は、内面側ラミネート工程完了後の容器本体10の外面側に外面側ラミネートフィルム14を貼り付ける工程である。以下では、まず、内面側ラミネート工程について、
図3及び
図5を参照して、説明を行う。
【0059】
内面側ラミネート工程の最初の工程(ステップST1。
図5参照)において、作業者は、第1移送装置24を駆動させて、内面側ラミネートフィルム12を第1加熱装置25のヒータ25Aの間に移送し、その両面を加熱する(
図3(A)参照)。加熱された内面側ラミネートフィルム12の裏面(容器本体10に貼り付けられる側の面)には、接着剤が塗布されている。
【0060】
次に、作業者は、容器本体10の本体凸部13が下方に突出するように配置し、第1雌型28の第1キャビティ28Aに本体凸部13を挿入することによって、容器本体10を第1雌型28にセットする(ステップST2)。その後、作業者は、第1入力部32Aに所定の入力を行い、第1移送装置24を駆動させる。これにより、加熱された内面側ラミネートフィルム12が容器本体10と第1雄型29の間に移送され、加熱された内面側ラミネートフィルム12が容器本体10と第1雄型29との間に配置される(
図3(B)参照。ステップST3。)。このとき、内面側ラミネートフィルム12は引っ張られた状態で、一対のリール23によって保持されている。
【0061】
その後、作業者は、第1入力部32Aに所定の入力を行うと、第1制御装置32は、第1駆動装置30に容器本体10が内面側ラミネートフィルム12に近接するように第1雌型28を上昇させる。その後、第1制御装置32は、第1雄型29を下降させて、第1押圧部29Aを本体凹部11に挿入し、第1雌型28と第1雄型29とを嵌合させる(
図3(C)参照。ステップST4)。
【0062】
その後、第1駆動装置30は第1雄型29を更に下降させ、内面側ラミネートフィルム12の裏面を容器本体10の本体凹部11が設けられている側の面(内面)に接触させる(
図3(C)参照)。更に、第1制御装置32は第1雄型29を下降させるべく第1駆動装置30を駆動し、弾性部材29Bを容器本体10に所定の荷重で押し付ける(
図3(D)参照。ステップST5)。このとき、内面側ラミネートフィルム12が弾性部材29Bによって容器本体10の本体凹部11が設けられている側の面(内面)に押し付けられて、内面側ラミネートフィルム12が容器本体10に圧着される。これにより、内面側ラミネートフィルム12が容器本体10に接着される。
【0063】
内面側ラミネートフィルム12の裏面が容器本体10の内面に接触した後、内面側ラミネートフィルム12の接着が完了するまでの間、第1制御装置32は第1排気装置31を駆動させ、第1通気孔28Bから内面側ラミネートフィルム12と容器本体10との間を排気させる。これにより、内面側ラミネートフィルム12と容器本体10との間が減圧される。よって、内面側ラミネートフィルム12と容器本体10との間に空気が残留して気泡が生成されることなく、内面側ラミネートフィルム12と容器本体10とを密着させることができる。
【0064】
弾性部材29Bによって容器本体10の内面に押し付けられた後、所定時間が経過すると、第1制御装置32は、第1雄型29を上昇させて第1雌型28から離し、第1押圧部29Aを第1キャビティ28Aから引き抜く(ステップST6)。その後、第1制御装置32は第1切断装置を制御し、内面側ラミネートフィルム12を切断する(ステップST7)。その後、第1制御装置32は第1排気装置31の駆動を停止し、第1通気孔28Bからの排気を終了する。これにより、内面側ラミネート工程が完了する。
【0065】
その後、作業者は、内面側ラミネート装置21から、内面側ラミネートフィルム12が内面に貼り付けられた状態の容器本体10を取り出す。
【0066】
続いて、作業者は、
図3、
図4及び
図6に示す外面側ラミネート工程を行う。外面側ラミネート工程の最初の工程(
図6のステップST11)において、作業者は、第2移送装置34を駆動し、外面側ラミネートフィルム14を第2加熱装置35のヒータ35Aの間に移送し、外面側ラミネートフィルム14の両面を加熱する(
図3(E)参照。以下、加熱ステップ)。加熱される外面側ラミネートフィルム14の裏面(接着面)には、接着剤が塗布されている。
【0067】
加熱ステップが完了すると、作業者は、内面側ラミネートフィルム12が内面に貼り付けられた状態の容器本体10を本体凹部11が下方を向くように配置して、容器本体10を第2雄型39の第2押圧部39Aに被せる。これにより、本体凹部11には第2押圧部39Aが挿入されて、内面側ラミネート工程を経た容器本体10は第2雄型39にセットされる。このとき、内面側に既に内面側ラミネートフィルム12が貼り付けられた容器本体10が第2雄型39によって支持される(ステップST12。以下、支持ステップ)。
【0068】
支持ステップが完了すると、作業者は第2入力部43Aに所定の入力を行い、第2移送装置34を駆動させる。これにより、加熱された外面側ラミネートフィルム14は容器本体10と第2雌型38との間に移送され、加熱された外面側ラミネートフィルム14が容器本体10と第2雌型38との間に配置される(ステップST13。以下、配置ステップ)。このとき、外面側ラミネートフィルム14は引っ張られた状態で、一対のリール33によって保持されている。このとき、第2雌型38は外面側ラミネートフィルム14の表面(接着面が設けられていない面)の側に位置し、外面側ラミネートフィルム14を介して容器本体10の外面と相対し、且つ、整合する位置に配置されている。
【0069】
更に、作業者が第2入力部43Aに入力を行うと、第2制御装置43は第2駆動装置40、圧空供給装置41、第2排気装置42、及び圧空ヒータ45を制御し、第2雌型38と第2雄型39とを嵌合させて、外面側ラミネートフィルム14を容器本体10に接着する接着ステップを実行する。以下、接着ステップ(ステップST14)の詳細について説明する。
【0070】
接着ステップにおいて、第2制御装置43は、まず、第2駆動装置40を駆動させて、第2雌型38を下降させて、外面側ラミネートフィルム14の表面に近接される。これにより、第2雌型38と外面側ラミネートフィルム14との間には空間Sが形成されている。空間Sは第2雌型38と外面側ラミネートフィルム14との間の隙間Pを介して外部に連通している。
【0071】
その後、第2制御装置43は、第2雄型39を上昇させて、第2雄型39の第2押圧部39Aを第2キャビティ38Aに挿入する。これにより、外面側ラミネートフィルム14は第2押圧部39Aの上面(突端面)によって上方に押し出される。
【0072】
その間、第2駆動装置40は、圧空供給装置41と圧空ヒータ45とを駆動させる。これにより、外面側ラミネートフィルム14と第2雌型38との間の空間Sに加熱された圧縮空気が導入される。導入された圧縮空気は第2雌型38の第2通気孔38Eから空間Sに放出される。空間Sに放出された圧縮空気は、隙間Pに向かって流れる(
図3(G)の矢印参照)。このとき、外面側ラミネートフィルム14が容器本体10の外面に向かうように、圧縮空気が外面側ラミネートフィルム14に吹き付けられる。これにより、外面側ラミネートフィルム14が容器本体10の外面に向けて押され、外面側ラミネートフィルム14が容器本体10の外面の側に移動する(
図4の破線の矢印参照)。
【0073】
本実施形態では、第2通気孔38Eが第2キャビティ38Aの底面略中央部において開口しているため、第2通気孔38Eから放出された圧縮空気は上方から下方に流れる。この圧縮空気の流れによって、外面側ラミネートフィルム14は上方から下方に向かって順に容器本体10の外面に向かって移動する。これにより、外面側ラミネートフィルム14と容器本体10の外面との間に空気が封入されて、気泡が生じることが防止できる。
【0074】
第2駆動装置40は、更に、第2雄型39を上昇させて、第2雄型39の第2押圧部39Aを第2雌型38の第2キャビティ38Aに挿入し、第2雌型38と第2雄型39とを嵌合させる。第2雌型38と第2雄型39とが嵌合するまでの間、外面側ラミネートフィルム14と容器本体10との間にある空気は、容器本体10の内部を通過して、容器本体10の縁部から外部に放出される(
図3(G)の破線の矢印参照)。
【0075】
その後、第2制御装置43は第2駆動装置40を制御し、第2雌型38を下方に移動させて、第2雌型38の弾性部材38Cを容器本体10に所定の荷重で押し付ける(
図3(H)参照)。このとき、第2雌型38の弾性部材38Cが外面側ラミネートフィルム14に接触し、外面側ラミネートフィルム14が弾性部材38Cによって容器本体10の外面に圧接される。これにより、外面側ラミネートフィルム14が容器本体10により密着する。外面側ラミネートフィルム14と容器本体10との間に位置する空気は容器本体10の縁部から外部に放出され、外面側ラミネートフィルム14と容器本体10の外面との間の空気の残留が防止される。
【0076】
第2雌型38の弾性部材38Cを容器本体10に所定の荷重で押し付けるときに、第2制御装置43は圧空供給装置41を停止し、第2排気装置42を駆動させて排気を行う。これにより、空間Sに空気が残留することがより確実に防止されて、弾性部材38Cが容器本体10の外面に沿って変形し易くなる。よって、外面側ラミネートフィルム14が容器本体10の外面に密着され易くなる。
【0077】
また、
図3(H)に示すように、本実施形態では、第2雌型38は弾性部材38Cにおいてのみ、外面側ラミネートフィルム14に当接する。すなわち、第2雌型38の外面側ラミネートフィルム14に当接する部分は弾性部材38Cによって構成されている。
【0078】
次に、第2制御装置43は、第2雌型38の弾性部材38Cを容器本体10に所定の荷重で押し付けた状態で所定時間維持した後、第2雌型38を上方に移動させ、第2押圧部39Aを第2キャビティ38Aから分離させる(ステップST15)。分離が完了すると、第2制御装置43は、第2排気装置42を停止する。その後、表裏両面のラミネート加工が完了し、第2切断装置によって余分な外面側ラミネートフィルム14が切断されることによって(ステップST16)、ラミネートパルプ容器1が完成する。
【0079】
次のように構成したラミネートパルプ容器1の製造方法の効果について説明する。容器本体10の内面に内面側ラミネート層7が設けられることで、容器本体10の内面に耐水性や耐油性を持たせることができる。これにより、収容凹部2に食品等が収容されたときに、ラミネートパルプ容器1から水分や油分が漏れ出すことが防止できる。
【0080】
出荷時や再利用時には、ラミネートパルプ容器1が互いに積層されることがある。このとき、ラミネートパルプ容器1の外面と、他のラミネートパルプ容器1の内面とが接触することとなる。本発明によるラミネートパルプ容器1では外面に外面側ラミネート層8が設けられている。これにより、ラミネートパルプ容器1を積層したときに、その外面に接する他のラミネートパルプ容器1の内面へのパルプ繊維の付着が防止できる。よって、ラミネートパルプ容器1が積層されたときの収容凹部2の壁面の清浄性の低下を防止することができる。また、収容凹部2の壁面に付着した水分や油分が、積層された他のラミネートパルプ容器1の外面に付着し、容器本体10の内部に染み込むことが防止できる。
【0081】
ラミネートフィルムはプラスチック製であるため通気性が乏しい。よって、内面側ラミネートフィルム12のみが貼り付けられた状態の容器本体10の内面側から排気することが難しく、外面側ラミネートフィルム14を容器本体10の外面に貼り付けることが難しい。本実施形態では、第2雌型38によって外面側ラミネートフィルム14が容器本体10の外面に押し付けられて、容器本体10に接着される。よって、外面側ラミネートフィルム14の貼り付けに容器本体10の排気を要しないため、容器本体10の両面にラミネートフィルムの接着が可能となる。
【0082】
本実施形態では、外面側ラミネートフィルム14と第2雌型38との間の空間Sに導入された圧縮空気が吹き付けられることで、外面側ラミネートフィルム14が容器本体10の外面に移動する。これにより、外面側ラミネートフィルム14が容器本体10の外面になじみ易くなり、外面側ラミネートフィルム14を容器本体10の外面に密着されやすくなる。
【0083】
第2雌型38には第2キャビティ38Aの底面において開口する第2通気孔38Eが設けられている。これにより、圧縮空気を外面側ラミネートフィルム14と第2雌型38との間の空間Sに導入することが容易である。また、本実施形態では、第2通気孔38Eが第2キャビティ38Aの底面(より好ましくは、略中央部)に設けられることによって、上側から下側に向く圧縮空気の流れ、すなわち、第2キャビティ38Aから流出する向きの圧縮空気の流れ(
図4の実線の矢印参照)が生じる。この圧縮空気の流れによって、外面側ラミネートフィルム14を容器本体10に向かって吹き付けることができ、外面側ラミネートフィルム14を容器本体10に向かって移動させることができる。これにより、外面側ラミネートフィルム14が容器本体10の外面に密着され易くなる。また、圧縮空気の流れが上側から下側に向くため、外面側ラミネートフィルム14が上側から順に接着されやすくなり、皺や気泡等が生じることが防止できる。
【0084】
外面側ラミネートフィルム14は、ステップST11において加熱される。これにより、外面側ラミネートフィルム14が変形し易くなるため、外面側ラミネートフィルム14が容器本体10に密着し易くなる。更に、本実施形態では、圧縮空気は加熱された後に、外面側ラミネートフィルム14に吹き付けられる。よって、圧縮空気の吹き付けによって、外面側ラミネートフィルム14が冷却され難くなるため、縮空気が加熱されていない場合に比べて、外面側ラミネートフィルム14と容器本体10との密着性を高めることができる。
【0085】
本実施形態では、ステップST14において、第2雌型38の弾性部材38Cによって、外面側ラミネートフィルム14は容器本体10の外面に圧接される。これにより、外面側ラミネートフィルム14の裏面と容器本体10の外面との間の空気をより確実に排出することができ、外面側ラミネートフィルム14を容器本体10の外面全面により確実に接着させることができる。
【0086】
図3(H)に示すように、第2雌型38の外面側ラミネートフィルム14に接触する部分が弾性部材38Cによって構成されている。第2雌型38の弾性部材38Cはシリコンゴム性であって、弾性変形可能であるため、弾性部材38Cが容器本体10に押し付けられたときに、容器本体10の形状に合わせて変形する。よって、外面側ラミネートフィルム14と容器本体10との間に隙間が生じにくくなり、外面側ラミネートフィルム14の容器本体10への密着性を高めることができる。
【0087】
<<第2実施形態>>
第2実施形態に係るラミネートパルプ容器1の製造方法は、外面側ラミネートフィルム14の接着ステップのみが第1実施形態と異なり、他の部分については第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0088】
接着ステップにおいて、第2制御装置43は、まず、第2駆動装置40を駆動させて、第2雌型38を下降させて、外面側ラミネートフィルム14の表面に接触させる(
図7(A)参照)。これにより、第2雌型38と外面側ラミネートフィルム14との間の空間Sが形成され、更に、空間Sが実効的に封止される。これにより、空間Sが実効的に密閉されて密閉空間となる。ここで、実効的に封止されるとは、空間Sに圧縮空気を供給することによって、空間Sの内圧が外気よりも高くなることを意味し、空間Sと外気との間の空気の流れが完全に遮断されていることを要しない。
【0089】
第2雌型38を下降させて、外面側ラミネートフィルム14の表面に接触させた後、第2制御装置43は、圧空供給装置41及び圧空ヒータ45を駆動させて、第2雌型38と外面側ラミネートフィルム14との間の空間Sに加熱された圧縮空気を供給する。これにより、第2雌型38と外面側ラミネートフィルム14との間の空間Sの内圧が上昇し、大気圧よりも高くなる。
【0090】
次に、第2制御装置43は第2駆動装置40を駆動させて、第2雌型38を下降させて、外面側ラミネートフィルム14を下方に押し出す(
図7(B)参照)。その後、第2制御装置43は、第2雄型39を上昇させて、第2雌型38と嵌合させる(
図7(C)参照)。その後、弾性部材38Cを容器本体10の外面に押し付けることによって、接着ステップが完了する。但し、第1実施形態と同様に、弾性部材38Cを容器本体10の外面に押し付けているときに、第2制御装置43は第2排気装置42を駆動させて、空間Sの内圧を大気圧にするとよい。
【0091】
次に、このように構成したラミネートパルプ容器1の製造方法の効果について説明する。第2雌型38が外面側ラミネートフィルム14の表面に接触した後、下降している間、空間Sは外気よりも高い状態で維持される。このとき、外面側ラミネートフィルム14には
図7(B)の破線の矢印で示すように、空間S内に閉じ込められた空気から空間Sを広げるように荷重が加わる。この荷重によって、外面側ラミネートフィルム14は容器本体10の外面側により強く押し付けられる。これにより、外面側ラミネートフィルム14を容器本体10の外面により強く圧接させることができる。よって、外面側ラミネートフィルム14を容器本体10の外面により密着性よく貼り付けることができる。
【0092】
以上、本発明を、その好適な実施形態について説明したが、当業者であれば容易に理解できるように、本発明はこのような実施形態により限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0093】
上記実施形態において、容器本体10の内面に内面側ラミネートフィルム12を貼り付ける工程の後に、容器本体10の外面に外面側ラミネートフィルム14を貼り付ける工程が設けられていたが、この態様には限定されない。容器本体10の外面に外面側ラミネートフィルム14を貼り付ける工程の後に、容器本体10の内面に内面側ラミネートフィルム12を貼り付ける工程が設けられていてもよい。
【0094】
また、上記実施形態に示した構成要素は必ずしも全てが必須なものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【符号の説明】
【0095】
1 :ラミネートパルプ容器
2 :収容凹部
3 :フランジ
5 :多層構造体
6 :パルプ層
7 :内面側ラミネート層
8 :外面側ラミネート層
10 :容器本体
11 :本体凹部
12 :内面側ラミネートフィルム(第1ラミネートフィルム)
13 :本体凸部
14 :外面側ラミネートフィルム(第2ラミネートフィルム)
20 :製造ユニット
21 :内面側ラミネート装置
22 :外面側ラミネート装置
23 :リール
23A :送出リール
23B :巻取リール
24 :第1移送装置
25 :第1加熱装置
25A :ヒータ
25B :ローラ
26 :第1接着装置
28 :第1雌型
28A :第1キャビティ
28B :第1通気孔
28C :配管
29 :第1雄型
29A :第1押圧部
29B :弾性部材
30 :第1駆動装置
31 :第1排気装置
32 :第1制御装置
32A :第1入力部
33 :リール
33A :送出リール
33B :巻取リール
34 :第2移送装置
35 :第2加熱装置(フィルム加熱装置)
35A :ヒータ
35B :ローラ
36 :第2接着装置
38 :第2雌型(型体の他方)
38A :第2キャビティ(凹部)
38B :基体
38C :弾性部材
38D :基体凹部
38E :第2通気孔(導入孔)
39 :第2雄型(型体の一方)
39A :第2押圧部
40 :第2駆動装置
41 :圧空供給装置(気体供給装置)
41A :配管
41B :圧空導入路(気体供給路)
42 :第2排気装置
42A :配管
43 :第2制御装置
43A :第2入力部
45 :圧空ヒータ(気体加熱装置)
P :隙間
S :空間
ST1 :ステップ
ST2 :ステップ
ST3 :ステップ
ST4 :ステップ
ST5 :ステップ
ST6 :ステップ
ST7 :ステップ
ST11 :ステップ(加熱ステップ)
ST12 :ステップ(支持ステップ)
ST13 :ステップ(配置ステップ)
ST14 :ステップ(接着ステップ)
ST15 :ステップ
ST16 :ステップ