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  • 特許-給湯用水栓 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】給湯用水栓
(51)【国際特許分類】
   F16K 1/00 20060101AFI20240910BHJP
   E03C 1/044 20060101ALI20240910BHJP
   E03C 1/042 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
F16K1/00 C
E03C1/044
E03C1/042 B
E03C1/042 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020052806
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021152384
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390010319
【氏名又は名称】株式会社石野製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石野 晴紀
(72)【発明者】
【氏名】山田 直志
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-114978(JP,A)
【文献】特開2011-026903(JP,A)
【文献】特開2001-227010(JP,A)
【文献】特開2017-066615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/00-1/10
F16K 1/00-1/54
5/00-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯が流れる配管に接続される給湯用水栓であって、
前記配管の湯が流入する第1の水室と、
前記給湯用水栓の下方へ開口しており、飲用容器へ湯を注ぐための吐出口を有する第2の水室と、
前記第2の水室に配置されており、前記第1の水室と前記第2の水室とを連通する連通口を開閉する弁体と、
弾性部材の弾性力で前記連通口を閉じる前記弁体を、弁棒を介して動かすための操作部と、を備え、
前記第2の水室は、前記第2の水室内の水が前記第2の水室内に溜まることなく排水されるように、少なくとも前記弁体の位置から前記吐出口へ水が流れ落ちる経路を形成する、
給湯用水栓。
【請求項2】
前記第2の水室は、前記弁体の位置から前記弁体の真下の前記吐出口へ水が流れ落ちる経路を形成する、
請求項1に記載の給湯用水栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯用水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
飲食店の客席や厨房、住宅のキッチン、オフィスの給湯室、その他の各種スペースには、様々な給水設備が設けられている。これらの給水設備の中には、例えば、飲用可能な湯を排出する可能な給湯用水栓を備えたものがある(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-270342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
給湯用水栓には湯が流れる配管が接続される。よって、給湯用水栓は、栓が閉じた状態であっても、配管から伝わる湯の熱で高温になっている。このため、給湯用水栓は、栓の開閉が繰り返されると、栓が閉じた後に湯口付近に残留する湯の蒸発が繰り返され、湯に含まれているカルキや鉱物等の各種不純物が湯口付近に蓄積する。このような蒸発による不純物の蓄積は、栓が閉じられてから次に開かれるまでの経過時間が長いほど著しく、例えば、店舗の営業終了後に特に進行しやすい。
【0005】
湯口付近に不純物が蓄積すると、湯口付近の美観を損なうのみならず、例えば、水栓の内部流路の閉塞や弁体の動作不良を招く。例えば、回転寿司店の客席に設置される給湯用水栓の場合、弁体が動作不良に陥る頻度は、当該店舗が立地している地域の水質や来店客数等にもよるが、数ヶ月程度で栓の開閉が困難になる事例も存在する。
【0006】
そこで、本願は、栓の開閉の繰り返しによる弁体の動作不良の発生を可及的に抑制する給湯用水栓を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明では、吐出口を有する水室に、当該水室内に配置される弁体の位置から吐出口へ水が流れ落ちる経路を形成することにした。
【0008】
詳細には、本発明は、湯が流れる配管に接続される給湯用水栓であって、配管の湯が流入する第1の水室と、給湯用水栓の下方へ開口する吐出口を有する第2の水室と、第2の水室に配置されており、第1の水室と第2の水室とを連通する連通口を開閉する弁体と、を備え、第2の水室は、少なくとも弁体の位置から吐出口へ水が流れ落ちる経路を形成する。
【0009】
上記の給湯用水栓であれば、吐出口を有する第2の水室に、第2の水室内に配置される弁体の位置から吐出口へ水が流れ落ちる経路が形成されている。よって、弁体が開閉されても、第2の水室内の水は内部に溜まらずに吐出口から下へ流れ落ちる。このため、上記の給湯用水栓では、弁体が連通口を閉じた後、第2の水室内にお湯が残留しない。よって、上記の給湯用水栓では、開閉を繰り返しても、お湯に含まれている不純物が第2の水室内に蓄積しにくい。したがって、上記の給湯用水栓であれば、開閉を繰り返しても、弁体の動作不良の発生が可及的に抑制される。
【0010】
なお、上記の給湯用水栓は、弾性部材の弾性力で連通口を閉じる弁体を動かすための操作部を更に備えるものであってもよい。このような給湯用水栓は、操作部を操作して弁体を動かした後、弾性部材の弾性力で連通口が閉じられる。よって、止水状態は弾性部材の弾性力に委ねられる。しかし、この給湯用水栓は、開閉を繰り返しても弁体の動作不良の発生が可及的に抑制されるので、弾性部材の弾性力による止水を適正に行うことができる。
【0011】
また、第2の水室は、弁体の位置から弁体の真下の吐出口へ水が流れ落ちる経路を形成するものであってもよい。このような給湯用水栓であれば、第2の水室内の水が弁体の真下の吐出口へ流れ落ちるので、水が弁体付近に残留する可能性が極めて低い。したがって、このような給湯用水栓であれば、開閉を繰り返しても、弁体の動作不良の発生が可及的に抑制される。
【発明の効果】
【0012】
上記の給湯用水栓であれば、栓の開閉の繰り返しによる弁体の動作不良の発生が可及的に抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態に係るグラスフィラーの外観図である。
図2図2は、グラスフィラーの内部構造を示した図である。
図3図3は、止水部の開閉前後の様子を示した図である。
図4図4は、グラスフィラーの変形例を示した図である。
図5図5は、変形例に係るグラスフィラーの内部構造を示した図である。
図6図6は、変形例に係るグラスフィラーの止水部の開閉前後の様子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本願発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本願発明の一態様であり、本願発明の技術的範囲を限定するものではない。以下に示す実施形態や変形例は、例えば、寿司や飲料物、そばやうどんといった丼物、から揚げや天ぷらといった各種の飲食物を提供する飲食店に好適である。
【0015】
図1は、実施形態に係るグラスフィラー1(本願でいう「給湯用水栓」の一例である)の外観図である。図1では、飲食物を厨房から客席へ搬送する飲食物搬送装置が設置された飲食店の客席にグラスフィラー1を適用した場合について例示している。このような飲食店では、皿に載った飲食物が搬送される飲食物搬送経路H沿いに、客が飲食を行うための飲食台Tが配置されている。図1では、グラスフィラー1が飲食物搬送装置の搬送装置筐体側面Sに取り付けられている様子が図示されている。グラスフィラー1が搬送装置筐体側面Sに取り付けられているため、グラスフィラー1付近にいる客は、飲食台Tの上で湯呑Cにグラスフィラー1からお湯を注ぐことができる。
【0016】
図1に示されるように、グラスフィラー1には保護カバー2が備わっている。グラスフィラー1は、高温のお湯が循環する配管に接続される。よって、グラスフィラー1には、高温のお湯が流れる。このため、保護カバー2は、高温の金属部分を覆うために設けられている。
【0017】
また、図1に示されるように、グラスフィラー1にはハンドル3(本願でいう「操作部」の一例である)が備わっている。ハンドル3は、お湯を出す際に操作する部分であり、左方向または右方向に手で回すことが可能である。ハンドル3は、グラスフィラー1に内蔵されているバネの力で閉止位置に自動的に戻るようになっている。よって、ハンドル3
は、左方向または右方向に手で回されても、手が離れると自動で閉止位置に戻る。
【0018】
図2は、グラスフィラー1の内部構造を示した図である。グラスフィラー1の主要部分は、金属製のケーシング5によって形成されている。ケーシング5の内部は空洞になっており、台座ネジ4に接続される配管から供給される高温のお湯が流れる。また、グラスフィラー1には止水部7が設けられている。台座ネジ4に接続される配管から供給されるお湯は、まず、ケーシング5内の中間部水室10(本願でいう「第1の水室」の一例である)に流入する。中間部水室10に流入したお湯は、止水部7を通って吐出口水室11(本願でいう「第2の水室」の一例である)内に流入する。吐出口水室11には、グラスフィラー1の下方へ開口する吐出口8が設けられている。よって、吐出口水室11内に流入したお湯は、吐出口8から下へ流れ落ちる。
【0019】
止水部7は、中間部水室10と吐出口水室11とを連通する連通孔7Eを開閉するための弁体7Aを有する。弁体7Aは、弁棒7Bに連結されている。弁棒7Bは、弁蓋7Cを貫く棒状部分を有する部材であり、棒状部分の端部に弁体7Aが連結され、他端にハンドル3が固定される。弁体7Aは、バネ7Dによって連通孔7Eを閉じる方向に付勢されている。
【0020】
また、止水部7には、ハンドル3が回転されると弁棒7Bを軸方向に動かす図示しないカム機構が設けられている。よって、弁棒7Bは、ハンドル3が手で操作されると、弁体7Aが連通孔7Eから離れる方向にカム機構で動く。また、弁棒7Bは、ハンドル3が手から開放されると、弁体7Aが連通孔7Eへ近づく方向にバネ7Dで動く。
【0021】
ところで、本実施形態のグラスフィラー1では、弁体7Aが吐出口水室11内に設けられている。また、吐出口水室11は、弁体7Aの位置から弁体7Aの真下の吐出口8へ水が流れ落ちる経路を内部に形成している。すなわち、吐出口水室11には、お湯が溜まる箇所が存在しない。このため、止水部7の開閉を行っても、吐出口水室11内にはお湯が溜水として残留しない。
【0022】
図3は、止水部7の開閉前後の様子を示した図である。止水部7が閉じている状態においては、図3(A)に示されるように、中間部水室10がお湯で満たされている。この状態でハンドル3を左方向または右方向に手で回すと、図3(B)に示されるように、弁体7Aが動き、弁体7Aに綴じられていた連通孔7Eが開く。連通孔7Eが開くと、中間部水室10に満たされていたお湯が吐出口水室11へ流れ、吐出口8から下へ流れ落ちる。
【0023】
お湯が吐出口8から下へ流れ落ちている状態でハンドル3から手を離すと、弁体7Aが連通孔7Eを再び閉じる。連通孔7Eが閉じると、図3(C)に示されるように、中間部水室10から吐出口水室11へのお湯の流れが遮断される。そして、吐出口水室11は、弁体7Aの位置から吐出口8へ下る経路を内部に形成しており、お湯が溜まる箇所が存在しないため、吐出口水室11内のお湯は吐出口水室11内に溜まらずに吐出口8から下へ流れ落ちる。このため、グラスフィラー1では、止水部7が閉じた後の吐出口水室11内にお湯が残留しない。よって、本実施形態のグラスフィラー1では、止水部7の開閉を繰り返しても、お湯に含まれているカルキや鉱物等の各種不純物が吐出口水室11内に蓄積しにくい。したがって、本実施形態のグラスフィラー1であれば、開閉を繰り返しても、弁体7Aの動作不良の発生が可及的に抑制される。
【0024】
なお、グラスフィラー1は、吐出口水室11内にお湯が溜まる箇所が完全に存在しない形態に限定されるものではない。グラスフィラー1は、少なくとも弁体7Aの位置から吐出口8へ水が流れ落ちる経路を形成する吐出口水室11を有するものであればよい。吐出口水室11内にお湯が溜まる箇所が多少存在する形態であっても、弁体7Aの位置から吐
出口8へ水が流れ落ちる経路を吐出口水室11が形成するものであれば、弁体7Aの動作不良を招く不純物が弁体7Aやその近辺に蓄積されるのを防ぐことができる。
【0025】
また、グラスフィラー1は、ハンドル3を2つ以上備える形態に変形することも可能である。図4は、グラスフィラー1の変形例を示した図である。グラスフィラー1は、例えば、図4に示すように、ハンドル3を左右両側に1つずつ備えるものであってもよい。本変形例のグラスフィラー1であれば、ハンドル3を左手と右手の何れでも操作可能なため、操作が容易である。
【0026】
図5は、変形例に係るグラスフィラー1の内部構造を示した図である。ハンドル3を2つ備える本変形例のグラスフィラー1は、図5に示されるように、上記実施形態と同様、内部が空洞のケーシング5を有している。本変形例のグラスフィラー1は、ハンドル3を左右に1つずつ備えるため、各ハンドル3に対応して止水部7が左右に1つずつ設けられている。そして、台座ネジ4に接続される配管から供給されるお湯は、ケーシング5内の中間部水室10に流入し、止水部7を通って吐出口水室11内に流入する。吐出口水室11は、2つある止水部7で共用の水室である。吐出口水室11には、グラスフィラー1の下方へ開口する吐出口8が設けられている。
【0027】
図6は、変形例に係るグラスフィラー1の止水部7の開閉前後の様子を示した図である。止水部7が閉じている状態においては、図6(A)に示されるように、中間部水室10がお湯で満たされている。この状態で2つあるハンドル3の何れかを左方向または右方向に手で回すと、図6(B)に示されるように、弁体7Aが動き、弁体7Aに綴じられていた連通孔7Eが開く。図6(B)では、右側のハンドル3が操作された場合について例示している。連通孔7Eが開くと、中間部水室10に満たされていたお湯が吐出口水室11へ流れ、吐出口8から下へ流れ落ちる。
【0028】
お湯が吐出口8から下へ流れ落ちている状態でハンドル3から手を離すと、弁体7Aが連通孔7Eを再び閉じる。連通孔7Eが閉じると、図6(C)に示されるように、中間部水室10から吐出口水室11へのお湯の流れが遮断される。そして、吐出口水室11は、弁体7Aの位置から吐出口8へ下る経路を内部に形成しており、お湯が溜まる箇所が存在しないため、吐出口水室11内のお湯は吐出口水室11内に溜まらずに吐出口8から下へ流れ落ちる。
【0029】
本変形例のグラスフィラー1も実施形態のグラスフィラー1と同様、止水部7の開閉を繰り返しても、お湯に含まれているカルキや鉱物等の各種不純物が吐出口水室11内に蓄積しにくい。したがって、本変形例のグラスフィラー1では、上記実施形態のグラスフィラー1と同様、開閉を繰り返しても、弁体7Aの動作不良の発生が可及的に抑制される。
【0030】
なお、グラスフィラー1は、手で回すハンドル3を備える形態に限定されるものではない。グラスフィラー1は、例えば、指で押すことが可能な押しボタンで止水部7を開くことが可能な押しボタン式の水栓であってもよい。また、グラスフィラー1は、例えば、止水部7を電磁力で開閉する電動式の水栓であってもよい。
【符号の説明】
【0031】
C・・湯呑
H・・飲食物搬送経路
S・・搬送装置筐体側面
T・・飲食台
1・・グラスフィラー
2・・保護カバー
3・・ハンドル
4・・台座ネジ
5・・ケーシング
7・・止水部
8・・吐出口
10・・中間部水室
11・・吐出口水室
7A・・弁体
7B・・弁棒
7C・・弁蓋
7D・・バネ
7E・・連通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6