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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】無線ノード
(51)【国際特許分類】
   H04W 56/00 20090101AFI20240910BHJP
   H04W 88/08 20090101ALI20240910BHJP
【FI】
H04W56/00 110
H04W88/08
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020145918
(22)【出願日】2020-08-31
(65)【公開番号】P2022040947
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141519
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 邦之
(72)【発明者】
【氏名】中田 昌志
(72)【発明者】
【氏名】中川 卓
(72)【発明者】
【氏名】中安 かなだ
【審査官】久松 和之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-004321(JP,A)
【文献】特開2011-049768(JP,A)
【文献】国際公開第2016/194518(WO,A1)
【文献】特開2013-153242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4、6
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ノードから送信される同期信号を受信する第1処理部と、
時刻信号源から取得される時刻信号を用いて基準信号を生成し、前記同期信号及び前記基準信号に基づく比較結果に応じて同期に関する処理を実行する第2処理部と、
を備え
前記第2処理部は、前記第1処理部が受信した前記同期信号を、前記時刻信号を用いて生成された前記基準信号が示すタイミングに基づいて第2ノードに転送し、
前記同期信号は、当該同期信号の同期精度を示す同期精度情報を含み、
前記第2処理部は、前記基準信号を用いて調整された前記同期信号に基づいて前記同期精度情報を変更する、
無線ノード。
【請求項2】
前記第2処理部は、前記同期信号の同期精度がより高くなるように前記基準信号を用いて調整した場合に、前記同期精度がより高いことを示す値に前記同期精度情報を変更する、
請求項に記載の無線ノード。
【請求項3】
前記時刻信号を用いて生成された前記基準信号を用いて前記同期信号を調整可能か否かを示す能力情報と、前記時刻信号を用いて生成された前記基準信号を用いて前記同期信号を調整すべき否かを示す設定情報と、を記憶するメモリを備える、
請求項1又は2に記載の無線ノード。
【請求項4】
他ノードが送受信する信号を解析するFHA(Fronthaul Analyzer)である、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の無線ノード。
【請求項5】
複数の第2ノードに並列的に接続されるFHM(Fronthaul Multiplexer)である、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の無線ノード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線ノードに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線アクセスネットワーク(Radio Access Network, RAN)に関して、基地局装置におけるベースバンド処理部と無線部とを別個に設けたアーキテクチャが提案されている。
【0003】
例えば、O-RAN(Open RAN)アライアンスが提示する非特許文献1には、ベースバンド処理部として機能するO-DU(O-RAN Distributed Unit)と無線部として機能するO-RU(O-RAN Radio Unit)とが開示されている。
【0004】
非特許文献1は、O-RANフロントホール仕様のうち、制御プレーン、ユーザプレーン、及び同期プレーン(Cプレーン、Uプレーン、及びSプレーン)の構成を示す。なお、本明細書において、Cプレーン、Uプレーン、及びSプレーンをCUSプレーンと総称する場合がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】O-RAN.WG4.CUS.0-v03.00, O-RAN Fronthaul Working Group 4, "Control, User and Synchronization Plane Specification" (2020.03.13)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
O-DUがO-RUを介してユーザ装置(UE)と無線通信を実行する際には、装置間における高い同期精度と適切な遅延管理が求められる。しかしながら、O-DUが基準信号に基づいて生成した同期信号の精度は、O-RUが当該同期信号を受信するまでの間に劣化することがある。以上の課題は、同様の構成を有する他の無線アクセスネットワークにおいても同様に生じ得る。
【0007】
以上の事情に鑑み、本発明は、同期信号に基づいて同期に関する処理を適切に実行可能な無線ノードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る無線ノードは、第1ノードから送信される同期信号を受信する第1処理部と、時刻信号源から取得される時刻信号を用いて基準信号を生成し、前記同期信号及び前記基準信号に基づく比較結果に応じて同期に関する処理を実行する第2処理部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、同期信号に基づいて同期に関する処理を適切に実行可能である。なお、本発明により、当該効果の代わりに、又は当該効果とともに、他の効果が奏されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る無線アクセスネットワークRの概略的な構成を例示する説明図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る通信システムS1の概略的な構成を例示する説明図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る通信システムS1におけるプロトコルスタックを例示する説明図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る通信システムS1におけるSプレーンのトポロジ(C1)を例示する説明図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る通信システムS1におけるSプレーンのトポロジ(C2)を例示する説明図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る通信システムS1におけるSプレーンのトポロジ(C4)を例示する説明図である。
図7】本発明の第1実施形態に係るFHA200の概略的なハードウェア構成を例示するブロック図である。
図8】本発明の第1実施形態に係るFHA200の概略的な機能構成を例示するブロック図である。
図9】本発明の第1実施形態に係るFHA200における第1動作例を例示するフローチャートである。
図10】本発明の第1実施形態に係るFHA200における第1動作例の概念図である。
図11】本発明の第1実施形態に係るFHA200における第2動作例を例示するフローチャートである。
図12】本発明の第1実施形態に係るFHA200における第2動作例の概念図である。
図13】本発明の第2実施形態に係る通信システムS2の概略的な構成を例示する説明図である。
図14】本発明の第2実施形態に係るFHM310の概略的なハードウェア構成を例示するブロック図である。
図15】本発明の第2実施形態に係るFHM310の概略的な機能構成を例示するブロック図である。
図16】本発明の第2実施形態に係るFHM310に記憶されるPTP設定及びSyncE設定を例示する説明図である。
図17】本発明の第2実施形態に係るFHM310における第1動作例を例示するフローチャートである。
図18】本発明の第1動作例を実行するFHM310に記憶されるGNSS設定を例示する説明図である。
図19】本発明の第2実施形態に係るFHM310における第2動作例を例示するフローチャートである。
図20】本発明の第2動作例を実行するFHM310に記憶される調整設定を例示する説明図である。
図21】本発明の第2実施形態の変形例に係る通信システムS2の概略的な構成を例示する説明図である。
図22】本発明の第3実施形態に係る通信システムSaの概略的な構成を例示するブロック図である。
図23】本発明の第3実施形態に係る無線ノードMNの概略的な構成を例示するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、同様に説明されることが可能な要素については、同一の符号を付することにより重複した説明が省略され得る。
【0012】
以下に説明される各実施形態は、本発明を実現可能な構成の一例に過ぎない。以下の各実施形態は、本発明が適用される装置の構成や各種の条件に応じて適宜に修正又は変更することが可能である。以下の各実施形態に含まれる要素の組合せの全てが本発明を実現するに必須であるとは限られず、要素の一部を適宜に省略することが可能である。したがって、本発明の範囲は、以下の各実施形態に記載される構成によって限定されるものではない。相互に矛盾のない限りにおいて、実施形態内に記載された複数の構成を組み合わせた構成も採用可能である。
【0013】
本発明に係る説明は、以下の順序で行われる。
1. 本発明の実施形態の概要
2. 第1実施形態
2.1. 通信システムS1の構成
2.2. FHA200の構成
2.3. 動作例
2.3.1. 第1動作例
2.3.2. 第2動作例
2.4. 変形例
3. 第2実施形態
3.1. 通信システムS2の構成
3.2. FHM310の構成
3.3. 動作例
3.3.1. 第1動作例
3.3.2. 第2動作例
3.4. 変形例
4. 第3実施形態
4.1. 通信システムSaの構成
4.2. 無線ノードMNの構成
5. 他の実施形態
【0014】
<<1. 本発明の実施形態の概要>>
まず、本発明の実施形態の概要を説明する。
【0015】
(1)技術的課題
近年、無線アクセスネットワーク(Radio Access Network, RAN)に関して、基地局装置におけるベースバンド処理部と無線部とを別個に設けたアーキテクチャが提案されている。
【0016】
例えば、O-RAN(Open RAN)アライアンスが提示する参考文献1には、ベースバンド処理部として機能するO-DU(O-RAN Distributed Unit)と無線部として機能するO-RU(O-RAN Radio Unit)とが開示されている。参考文献1は、O-RANフロントホール仕様のうち、制御プレーン、ユーザプレーン、及び同期プレーン(Cプレーン、Uプレーン、及びSプレーン)の構成を示す。
<参考文献1> O-RAN.WG4.CUS.0-v03.00, O-RAN Fronthaul Working Group 4, "Control, User and Synchronization Plane Specification" (2020.03.13)
【0017】
O-DUがO-RUを介してユーザ装置(UE)と無線通信を実行する際には、装置間における高い同期精度と適切な遅延管理が求められる。しかしながら、O-DUが基準信号に基づいて生成した同期信号の精度は、O-RUが当該同期信号を受信するまでの間に劣化することがある。以上の課題は、同様の構成を有する他の無線アクセスネットワークにおいても同様に生じ得る。
【0018】
以上の事情に鑑み、本実施形態は、同期信号に基づいて同期に関する処理を適切に実行可能とすることを目的とする。
【0019】
(2)技術的特徴
本発明の実施形態では、無線ノードが、第1ノードから送信される同期信号を受信する第1処理部と、時刻信号源から取得される時刻信号を用いて基準信号を生成し、上記同期信号及び上記基準信号に基づく比較結果に応じて同期に関する処理を実行する第2処理部と、を備える。
【0020】
以上の構成によれば、同期信号に基づいて同期に関する処理を適切に実行可能である。
【0021】
なお、本実施形態により、当該効果の代わりに、又は当該効果とともに、他の効果が奏されてもよい。なお、上述した技術的特徴は本発明の実施形態の具体的な一例であり、当然ながら、本発明の実施形態は上述した技術的特徴に限定されない。
【0022】
<<2. 第1実施形態>>
次いで、図1から図12を参照して、本発明の第1実施形態を説明する。
【0023】
<<2.1. 通信システムS1の構成>>
図1は、第1実施形態に係る無線アクセスネットワークRの概略的な構成を例示する説明図である。図1に示すように、無線アクセスネットワークRは、O-DU(O-RAN Distributed Unit)100、FHA(Fronthaul Analyzer)200、O-RU(O-RAN Radio Unit)300、UE(User Equipment)400、O-CU(O-RAN Centralized Unit)500、SMO(Service Management Orchestrator)600、及びCN(Core Network)700を有する。
【0024】
第1実施形態に係る無線アクセスネットワークRは、3GPP(Third Generation Partnership Project)の技術仕様(Technical Specification)に準拠する。更に、少なくともO-DU100、FHA200、O-RU300、O-CU500、及びSMO600は、O-RANアライアンスの技術仕様に準拠する。
【0025】
図1に示すように、O-DU100とO-RU300とが、フロントホールFHを介して接続される。O-DU100は、主としてベースバンド処理を行う。FHA200は、主として通信システムS1のテスト(検証)に用いられる装置であってもよく、O-DU100とO-RU300との間に配置されてもよい。すなわち、FHA200は、O-DU100とO-RU300とに対する中間ノード(無線ノード)であってもよい。O-RU300は、主としてUE400と無線通信を行う。
【0026】
第1実施形態に係る無線アクセスネットワークRにおいて、FHA200は、CUSプレーン及びMプレーン(管理プレーン)を終端する。すなわち、FHA200は、CUSプレーン信号及びMプレーン信号を、単に転送するだけでなく処理すること(例えば、解析すること)が可能である。
【0027】
FHA200は、O-DU100に対しては擬似的にO-RUとして動作できると共に、O-RU300に対して擬似的にO-DUとして動作することができる。すなわち、O-DU100及びO-RU300は、FHA200を認識することなく相互に通信することができる。その上、FHA200は、O-DU100とO-RU300とが送受信するCUSプレーン信号及びMプレーン信号を処理することができる。
【0028】
より具体的には、例えば、FHA200は、O-DU100とO-RU300とに対してそれぞれセキュアなコネクション(例えば、SSH(Secure Shell)コネクション)を確立することができる。
【0029】
O-DU100とO-CU500はF1インタフェースを介して接続される。O-CU500とCN700はS1/NGインタフェースを介して接続される。SMO600は、O1インタフェースを介してO-DU100及びO-CU500に接続し制御する。なお、SMO600が更にO-RU300に接続し制御してもよい。CN700は、AMF(Access and Mobility Management Function)、UPF(User Plane Function)等の複数のコアネットワークノード(ネットワーク機能)を有する。
【0030】
なお、本明細書における各装置の名称及び構成は非限定的な例示であって、各装置は、任意の名称が付され得ると共に本発明を実現可能な任意の構成を有し得る。
【0031】
図2は、第1実施形態に係る通信システムS1の概略的な構成を例示する説明図である。通信システムS1は、無線アクセスネットワークRに含まれる。通信システムS1は、O-DU100、FHA200、及びO-RU300を有する。O-DU100、FHA200、及びO-RU300の各々は、ノード、通信ノード、又はRANノードと称されてよい。
【0032】
図2には、簡単のため、1つのO-DU100、1つのFHA200、及び1つのO-RU300のみが描かれている。しかしながら、通信システムS1は、複数のO-DU100、複数のFHA200、及び複数のO-RU300を有し得る。
【0033】
O-DU100は、各プレーン(Cプレーン、Uプレーン、Sプレーン、及びMプレーン)の信号をO-RU300と送受信する。特に、O-DU100は、Sプレーン上の第1同期信号を送信することができる。第1同期信号は、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)1588勧告に従うPTP(Precision Time Protocol)信号であってもよく、ITU-T(International Telecommunication Union - Telecommunication Standardization Sector)G.8260勧告に従うSyncE(Synchronous Ethernet)信号であってもよく、他の規格や標準に従う同期信号であってもよい。
【0034】
O-DU100がO-RU300に対して送信した信号は、FHA200によって受信される。FHA200は、受信した信号に基づいてO-RU300に対する送信処理を行うことができる。例えば、FHA200は、O-DU100から受信した第1同期信号に基づいて、O-RU300に対して第2同期信号を送信することができる。第1同期信号と同様に、第2同期信号は、IEEE1588勧告に従うPTP信号であってもよく、ITU-T G.8260勧告に従うSyncE信号であってもよく、他の規格や標準に従う同期信号であってもよい。
【0035】
FHA200は、PTP機能のみを有してもよいし、SyncE機能のみを有してもよいし、PTP機能とSyncE機能との双方を有してもよい。すなわち、FHA200は、1種以上の何らかの同期機能を有している。
【0036】
FHA200は、O-DU100から受信した信号をO-RU300に転送したり、O-DU100から受信した信号を用いて新たな信号を生成してO-RU300に送信したりできる。
【0037】
他に、FHA200は、O-DU100から受信した第1同期信号を解析して出力することができる。例えば、FHA200は、第1同期信号の揺らぎ及び/又は妥当性を示す定量的又は定性的な情報を出力することができる。
【0038】
O-RU300は、O-DU100(FHA200)から供給される同期信号に従って、UE400と無線通信する。
【0039】
Sプレーン上の同期処理(例えば、PTP処理及び/又はSyncE処理)に関しては、O-DU100が、スレーブ(下位ノード、被制御ノード)であるFHA200に対するマスター(上位ノード、制御ノード)として機能する。同様に、FHA200が、スレーブであるO-RU300に対するマスターとして機能する。
【0040】
図3は、第1実施形態に係る通信システムS1におけるプロトコルスタックを例示する説明図である。図面下方がより低いレイヤを示し、図面上方がより高いレイヤを示す。通信システムS1では、Cプレーン、Uプレーン、Sプレーン、及びMプレーン上の信号が送受信される。
【0041】
Cプレーン、Uプレーン、及びSプレーンのプロトコルスタックは前述の参考文献1の3.2章に準拠している。Mプレーンのスタックは以下の参考文献2の2.2章に準拠している。
<参考文献2> O-RAN.WG4.MP.0-v03.00, O-RAN Fronthaul Working Group 4, "Management Plane Specification" (2020.04.17)
【0042】
Cプレーンは、制御信号の伝送に用いられるプロトコルをサポートする。Uプレーンは、ユーザ信号の伝送に用いられるプロトコルをサポートする。制御信号及びユーザ信号は、eCPRI(enhanced Common Public Radio Interface)及び/又はRoE(Radio over Ethernet)において用いられる。制御信号及びユーザ信号の各々は、送受信に用いるべき時間リソースを示す情報(無線フレーム、サブフレーム、スロット、シンボルに割り当てられた時間情報)を含む。
【0043】
Sプレーンは、同期制御に関する信号(例えば、PTP信号、SyncE信号)の伝送に用いられるプロトコルをサポートする。Mプレーンは、ネットワークノードのモニタリングや保守に用いられる信号(例えば、NETCONF(NETwork CONFiguration protocol)で用いられる信号)の伝送に用いられるプロトコルをサポートする。
【0044】
図4から図6は、第1実施形態に係る通信システムS1におけるSプレーンのトポロジを例示する説明図である。本実施形態のSプレーンのトポロジは、参考文献1の9.2.2章(特に、C1、C2、及びC4)に準拠している。なお、C3トポロジに対して本実施形態が適用されてもよい。
【0045】
図4は、C1トポロジを例示する説明図である。図4に示すように、C1トポロジではO-DU100とO-RU300とが直接的に接続されている。なお、C1トポロジにおいて、FHA200がO-DU100とO-RU300との間に配置され得る。
【0046】
図5は、C2トポロジを例示する説明図である。図5に示すように、C2トポロジでは複数のO-DU100と複数のO-RU300との間に1つ以上のスイッチを有するスイッチネットワークが配置される。C2トポロジにおいて、FHA200がスイッチネットワークに配置される。
【0047】
図6は、C4トポロジを例示する説明図である。図6に示すように、C1トポロジではO-DU100とO-RU300とが直接的に接続されている。しかしながら、同期信号(例えば、PTP信号及び/又はSyncE信号)は、O-DU100からO-RU300に供給されない。C4トポロジにおいて、FHA200がO-DU100とO-RU300との間に配置され得る。FHA200は、O-RU300に対する同期源(図中のlocal PRTC time resource)として機能し得る。
【0048】
本実施形態において、FHA200は、C4トポロジ及びC1/C2トポロジを構成するように動作する。特に、O-RU300に対しては、C1/C2トポロジを構成するように動作する。
【0049】
<<2.2. FHA200の構成>>
図7は、第1実施形態に係るFHA200の概略的なハードウェア構成を例示するブロック図である。図7に示すように、FHA200は、CPU(Central Processing Unit)201とメモリ202と入出力インタフェース203とGNSS(Global Navigation Satellite System)モジュール204とアンテナ205とを有する。FHA200に設けられる以上の要素は内部バスによって相互に接続される。なお、FHA200は、図7に示された要素以外のハードウェア要素を有してもよい。
【0050】
CPU201は、FHA200の種々の機能を実現する演算素子である。メモリ202は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等の補助記憶装置等の記憶媒体によって構成される。
【0051】
メモリ202は、FHA200における種々の処理を実行するのに用いられるプログラム(命令)及びデータを一時的又は恒久的に格納する要素である。上記プログラムは、FHA200の動作のための1つ以上の命令を含む。CPU201は、メモリ202に記憶されたプログラムをメモリ202及び/又は不図示のシステムメモリに展開し実行することによって、FHA200の機能を実現する。
【0052】
入出力インタフェース203は、操作者(例えば、通信システムS1のメンテナンス担当者)によるFHA200への操作を受け付けてCPU201に供給すると共に、種々の情報を提示するインタフェースである。
【0053】
GNSSモジュール204は、GNSS衛星からブロードキャストされた信号(GNSS信号)をアンテナ205を介して受信し、GNSS信号(時刻信号源)に基づいて高精度な時刻信号を取得して出力する。なお、本明細書におけるGNSSは、GPS(Global Positioning System)、GLONASS(Global Navigation Satellite System)、Galileo、Compass、準天頂衛星(Quasi Zenith Satellite System, QZSS)等を含む衛星測位システムの総称である。
【0054】
図8は、第1実施形態に係るFHA200の概略的な機能構成を例示するブロック図である。図8に示すように、FHA200は、第1処理部211及び第2処理部212を含む制御部210を有する。GNSSモジュール204は、制御部210に対して前述した時刻信号を供給する。制御部210、第1処理部211、及び第2処理部212は、前述のようにCPU201がメモリ202に記憶されたプログラムを実行することによって実現される機能ブロックである。なお、制御部210は、以上の機能ブロック以外の構成要素を更に含んでよい。即ち、制御部210は、以上の機能ブロックによる動作以外の動作を実行できる。
【0055】
以上の機能ブロック(制御部210、第1処理部211、及び第2処理部212)は、半導体チップによってハードウェア的に実現されてもよい。すなわち、以上の機能ブロックは、ソフトウェアによって実現されてもハードウェアによって実現されてもよい。
【0056】
第1処理部211は、マスターであるO-DU100に対するスレーブとしてFHA200が動作するための機能を提供する機能ブロックである。第1処理部211は、O-DU100(第1ノード)が送信する同期信号(第1同期信号)を受信する。第1処理部211は、以上の同期信号(第1同期信号)を用いて基準信号(第1基準信号)を復元することができる。基準信号は、マスターとして機能する装置が同期信号を生成するのに用いる信号であって、例えば、1PPS(Pulse Per Second)等のタイムパルスである。第1基準信号は、O-DU100より上流に位置するマスター装置が第1同期信号を生成する際に用いた基準信号であってよい。復元された第1基準信号の精度(正確性)は、復元に用いられた同期信号(第1同期信号)の精度に依存する。第1同期信号の精度が低ければ、復元された第1基準信号の精度も低い。
【0057】
第2処理部212は、スレーブであるO-RU300に対するマスターとしてFHA200が動作するための機能を提供する機能ブロックである。第2処理部212は、GNSSモジュール204から供給される時刻信号(すなわち、時刻信号源から取得される時刻信号)を用いて基準信号(第2基準信号)を生成することができる。第2処理部212が生成する基準信号(第2基準信号)は、第1処理部211が復元する基準信号(第1基準信号)とは異なってもよい。
【0058】
第2処理部212は、第1基準信号と第2基準信号とを比較した比較結果に応じて、第1処理部211が受信する同期信号(第1同期信号)を評価することができる。以上の評価によって取得される評価結果は、同期信号(第1同期信号)の揺らぎ及び/又は妥当性を示す情報であってよい。
【0059】
第2処理部212は、第1同期信号を評価した評価結果に基づいて新たな同期信号(第2同期信号)を生成し、生成した同期信号(第2同期信号)をO-RU300(第2ノード)に送信することができる。なお、第2処理部212が、上記した評価結果に加えて、O-DU100から受信した他の信号(例えば、Cプレーン信号及び/又はUプレーン信号)を用いて同期信号(第2同期信号)を生成すると好適である。
【0060】
他に、第2処理部212は、第1処理部211が受信した同期信号(第1同期信号)を、時刻信号を用いて生成された基準信号(第2基準信号)が示すタイミングに基づいてO-RU300(第2ノード)に転送することができる。同期信号は、その同期信号の同期精度を示す同期精度情報を含んでよい。同期精度情報は、例えば、PTPにおけるクロッククラス及び/又はSyncEにおけるSSMである。同期精度情報は、「同期信号がUTC(Coordinated Universal Time)と同期している」、「ホールドオーバ状態にある」、「同期が外れている」等の同期状態に対応する値を取ることができる。
【0061】
第2処理部212は、第2基準信号が示すタイミングに基づいて転送タイミングが調整された同期信号(すなわち、基準信号(第2基準信号)を用いて調整された同期信号(第2同期信号))に基づいて同期精度情報を変更することができる。例えば、第2処理部212は、第1同期信号の同期精度がより高くなるように第2基準信号を用いて調整した場合に、同期精度がより高いことを示す値に同期精度情報を変更することができる。
【0062】
第2処理部212は、PTP処理及びSyncE処理の少なくともいずれかを無効化してもよい。また、第2処理部212は、所定のトリガー(例えば、入出力インタフェース203を介したユーザ操作)に基づいて、実際の同期精度よりも同期精度がより低いことを示す値に同期精度情報を変更してもよい。
【0063】
FHA200は、仮想化されていてもよい。すなわち、FHA200が仮想マシンとして実装されてもよい。以上の場合、FHA200(仮想マシン)は、プロセッサ及びメモリ等を含む物理マシン(ハードウェア)及びハイパーバイザ上で仮想マシンとして動作してよい。
【0064】
<<2.3. 動作例>>
<<2.3.1. 第1動作例>>
図9は、第1実施形態に係るFHA200における第1動作例を例示するフローチャートである。図10は、第1実施形態に係るFHA200における第1動作例の概念図である。第1動作例は、第2処理部212が、第1基準信号と第2基準信号とを比較した比較結果に応じて、第1同期信号を評価する構成を示す。
【0065】
ステップS910において、第1処理部211は、O-DU100(第1ノード)から受信した第1同期信号を用いて第1基準信号を復元する。第1同期信号は、PTP信号であってもよいし、SyncE信号であってもよいし、これらの組合せであってもよい。
【0066】
ステップS920において、第2処理部212は、GNSS信号に基づいてGNSSモジュール204から供給される時刻信号を用いて第2基準信号を生成する。
【0067】
ステップS930において、第2処理部212は、第1基準信号と第2基準信号とを比較した比較結果に応じて第1同期信号を評価する。以上の第1基準信号は、第1同期信号に基づいて復元(再生)されたものであるから、第1同期信号の精度を示している。また、以上の第2基準信号は、高精度な同期源であるGNSSに基づいて生成されたものであるから、原理的に高い精度を有する。したがって、第1基準信号と第2基準信号とを比較し、第2基準信号に対して第1基準信号がどれだけ偏位しているかを測定することによって、第1基準信号ひいては第1同期信号を評価することができる。
【0068】
ステップS940において、第2処理部212は、第1同期信号を評価した評価結果に基づいて第2同期信号を生成しO-RU300(第2ノード)に送信する。なお、第2処理部212は、第2同期信号の生成及び送信を実行せずに、評価結果を入出力インタフェース203に表示させてもよい。
【0069】
上記した構成によれば、無線ノードであるFHA200は、同期信号に基づいて同期に関する処理を適切に実行できる。より具体的には、FHA200は、O-DU100から送信される第1同期信号を用いて復元した第1同期信号と、GNSS信号に基づいてGNSSモジュール204から供給される時刻信号を用いて生成した第2基準信号との比較結果に応じて、第1同期信号を評価することができる。また、FHA200は、第1同期信号の評価結果に基づいて、より高精度な第2同期信号を生成してO-RU300に送信することができる。したがって、第1同期信号の精度が低くても、O-RU300における同期精度を向上させることができる。
【0070】
<<2.3.2. 第2動作例>>
図11は、第1実施形態に係るFHA200における第2動作例を例示するフローチャートである。図12は、第1実施形態に係るFHA200における第2動作例の概念図である。第2動作例は、第2処理部212が、第1処理部211が受信した同期信号を、基準信号が示すタイミングに基づいて第2ノードに転送する構成を示す。
【0071】
ステップS1110において、第1処理部211は、O-DU100(第1ノード)が送信した同期信号を受信し、第2処理部212に供給する。同期信号は、PTP信号であってもよいし、SyncE信号であってもよいし、これらの組合せであってもよい。
【0072】
ステップS1120において、第2処理部212は、GNSS信号に基づいてGNSSモジュール204から供給される時刻信号を用いて基準信号を生成する。
【0073】
ステップS1130において、第2処理部212は、基準信号が示すタイミングに基づいて同期信号の転送タイミングを調整する。併せて、以上のように基準信号を用いて調整された同期信号に基づいて同期精度情報を変更する。例えば、第2処理部212は、同期信号の同期精度(例えば、「同期が外れている」)がより高くなるように基準信号を用いて調整した場合に、同期精度がより高いことを示す値(例えば、「UTCと同期している」を示す値)に同期精度情報を変更する。
【0074】
ステップS1140において、第2処理部212は、ステップS1130にて基準信号が示すタイミングに基づいて調整された同期信号を、O-RU300(第2ノード)に転送する。
【0075】
上記した構成によれば、無線ノードであるFHA200は、同期信号に基づいて同期に関する処理を適切に実行できる。より具体的には、FHA200は、O-DU100から送信される同期信号の転送タイミングを、GNSS信号に基づいてGNSSモジュール204から供給される時刻信号を用いて生成した基準信号のタイミングに基づいて調整することができる。結果として、精度良く調整された同期信号がFHA200からO-RU300に転送される。したがって、同期信号の精度が低くても、O-RU300における同期精度を向上させることができる。
【0076】
加えて、FHA200は、基準信号を用いて調整された同期信号に基づいて同期精度情報を変更することができる。したがって、タイミングが調整された同期信号が、調整後のタイミングに適合した同期精度情報を有するので、後続する制御処理をより適切に実行することが可能となる。他方、実際の同期精度よりも同期精度がより低いことを示す値に同期精度情報を変更する構成によれば、O-RU300における同期関連動作をより適切に検証することが可能となる。
【0077】
<<2.4. 変形例>>
上記した第1実施形態は多様に変形される。具体的な変形の態様を以下に例示する。以上の実施形態及び以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない限り適宜に併合され得る。
【0078】
第1実施形態における時刻信号源(同期源)は、GNSS信号である。しかしながら、FHA200は、任意の時刻信号源を使用可能である。例えば、原子時計が時刻信号源として用いられてもよい。
【0079】
<<3. 第2実施形態>>
次いで、図13から図21を参照して、本発明の第2実施形態を説明する。
【0080】
<<3.1. 通信システムS2の構成>>
図13は、第2実施形態に係る通信システムS2の概略的な構成を例示する説明図である。図13に示すように、通信システムS2は、O-DU100と、FHM(Fronthaul Multiplexer)310と、複数のO-RU300を有する。第2実施形態の無線アクセスネットワークRは、通信システムS2を含む一方、第1実施形態にて説明されるFHA200を有さなくてよい。
【0081】
FHM310は、O-RU300の一種であってO-RU300と同様に機能することができる。FHM310は、3GPPの技術仕様に準拠すると共に、O-RANアライアンスの技術仕様に準拠する。FHM310は、O-DU100とフロントホールFHを介して接続されると共に、他のO-RU300とフロントホールFHを介して接続される。すなわち、FHM310は、O-DU100と複数のO-RU300とに対するフロントホール中継装置、フロントホール中継ノード、フロントホール中継局、または中間ノード(無線ノード)であってもよい。FHM310は、UE400と無線通信する機能を有してもよいし、有さなくてもよい。
【0082】
FHM310は、各プレーン上のダウンリンク信号(O-DU100からO-RU300(FHM310)への信号)をコピーし、同一のダウンリンク信号を複数のO-RU300へ送信することができる。また、FHM310は、複数のO-RU300からの各プレーン上のアップリンク信号(O-RU300からO-DU100への信号)を合成する(combine)ことができる。なお、FHM310は、複数のO-RU300からのアップリンク信号を単純に合成(例えば、加算や平均)してもよいし、選択的に合成(例えば、一部の信号を選択、複数の信号を重み付け合成)してもよい。
【0083】
以上のように、FHM310が存在することによって、複数のO-RU300が共通の無線信号を送受信できる。結果として、複数のO-RU300が単一の論理セルを形成することができる。以上の論理セルは、共有セル(Shared Cell)とも称され得る。
【0084】
また、FHM310は、O-DU100から受信した第1同期信号に基づいて、O-RU300に対して第2同期信号を送信することができる。第1実施形態と同様に、第1同期信号及び第2同期信号は、IEEE1588勧告に従うPTP信号であってもよく、ITU-T G.8260勧告に従うSyncE信号であってもよく、他の規格や標準に従う同期信号であってもよい。
【0085】
FHM310は、PTP機能のみを有してもよいし、SyncE機能のみを有してもよいし、PTP機能とSyncE機能との双方を有してもよい。すなわち、FHM310は、1種以上の何らかの同期機能を有している。
【0086】
Sプレーン上の同期処理(例えば、PTP処理及び/又はSyncE処理)に関しては、O-DU100が、スレーブ(下位ノード、被制御ノード)であるFHM310に対するマスター(上位ノード、制御ノード)として機能する。同様に、FHM310が、スレーブであるO-RU300に対するマスターとして機能する。
【0087】
第2実施形態に係る通信システムS2におけるプロトコルスタック及びSプレーンのトポロジは、図3から図6を参照して説明された第1実施形態に係る通信システムS1におけるプロトコルスタック及びSプレーンのトポロジと同様に構成される。
【0088】
<<3.2. FHM310の構成>>
図14は、第2実施形態に係るFHM310の概略的なハードウェア構成を例示するブロック図である。図14に示すように、FHM310は、CPU311とメモリ312と入出力インタフェース313とGNSSモジュール314とアンテナ315とを有する。FHM310に設けられる以上の要素は内部バスによって相互に接続される。なお、FHM310は、図14に示された要素以外のハードウェア要素を有してもよい。また、FHM310は、入出力インタフェース313を有さなくてもよい。
【0089】
FHM310のCPU311、メモリ312、入出力インタフェース313、GNSSモジュール314、及びアンテナ315は、第1実施形態に係るFHA200のCPU201、メモリ202、入出力インタフェース203、GNSSモジュール204、及びアンテナ205と同様に構成され得る。
【0090】
図15は、第2実施形態に係るFHM310の概略的な機能構成を例示するブロック図である。図15に示すように、FHM310は、第1処理部321及び第2処理部322を含む制御部320を有する。GNSSモジュール314は、第1実施形態と同様に、制御部320に対して時刻信号を供給する。制御部320、第1処理部321、及び第2処理部322は、CPU311がメモリ312に記憶されたプログラムを実行することによって実現される機能ブロックである。なお、制御部320は、以上の機能ブロック以外の構成要素を更に含んでよい。即ち、制御部320は、以上の機能ブロックによる動作以外の動作を実行できる。
【0091】
以上の機能ブロック(制御部320、第1処理部321、及び第2処理部322)は、半導体チップによってハードウェア的に実現されてもよい。すなわち、以上の機能ブロックは、ソフトウェアによって実現されてもハードウェアによって実現されてもよい。
【0092】
FHM310の制御部320、第1処理部321、及び第2処理部322は、第1実施形態に係るFHA200の制御部210、第1処理部211、及び第2処理部212と同様に構成され得る。
【0093】
図16は、第2実施形態に係るFHM310に記憶されるPTP設定及びSyncE設定を例示する説明図である。図16に示すマスター設定パラメータは、参考文献2(特に、D.4.1 o-ran-sync.yang Module)に準拠している。FHM310は、マスターとして機能するので、図16に示すマスター設定パラメータ(master configuration parameters)を具備する。以上のマスター設定パラメータは、例えばメモリ312に格納される。
【0094】
<<3.3. 動作例>>
<<3.3.1. 第1動作例>>
図17は、第2実施形態に係るFHM310における第1動作例を例示するフローチャートである。ステップS1710~S1730の動作は、第1実施形態に係るFHA200における第1動作例の動作(図9)と同様である。
【0095】
ステップS1740において、FHM310の第2処理部322は、第1同期信号を評価した評価結果に基づいて複数の第2同期信号を生成し、複数のO-RU300(第2ノード)にそれぞれ送信する。
【0096】
図18は、第1動作例を実行するFHM310に記憶されるGNSS設定を例示する説明図である。図17に示すGNSSパラメータは、参考文献2(特に、D.4.1 o-ran-sync.yang Module)に準拠しているのに加え、GNSS信号に関する新たな設定項目(図中の太字部分)を含んでいる。GNSSパラメータは、例えばメモリ312に格納される。
【0097】
「ptp-master-enabled」は、FHM310が、GNSS信号に基づいてPTPマスターになることが可能か否かを示す能力パラメータである。「synce-master-enabled」は、FHM310が、GNSS信号に基づいてSyncEマスターになることが可能か否かを示す能力パラメータである。以上の能力パラメータは、FHM310の機能に依存するので、読み取りのみに設定される。以上の能力パラメータは、時刻信号を用いて生成された基準信号に基づいて同期信号を生成可能か否かを示す能力情報である。
【0098】
「ptp-master-config」は、FHM310が、GNSS信号に基づいてPTPマスターとして機能すべきか否かを示す設定パラメータである。「synce-master-config」は、FHM310が、GNSS信号に基づいてSyncEマスターとして機能すべきか否かを示す設定パラメータである。以上の設定パラメータは、Mプレーンを介してFHM310に動的に設定されるので、変更可能に設定される。以上の設定パラメータは、時刻信号を用いて生成された基準信号に基づいて同期信号を生成すべきか否かを示す設定情報である。
【0099】
上記した構成によれば、無線ノードであるFHM310は、同期信号に基づいて同期に関する処理を適切に実行できる。より具体的には、FHM310は、O-DU100から送信される第1同期信号を用いて復元した第1同期信号と、GNSS信号に基づいてGNSSモジュール314から供給される時刻信号を用いて生成した第2基準信号との比較結果に応じて評価した第1同期信号の評価結果に基づいて、より高精度な第2同期信号を生成して複数のO-RU300に送信することができる。したがって、第1同期信号の精度が低くても、複数のO-RU300における同期精度を向上させることができる。
【0100】
<<3.3.2. 第2動作例>>
図19は、第2実施形態に係るFHM310における第2動作例を例示するフローチャートである。ステップS1910~S1930の動作は、第1実施形態に係るFHA200における第2動作例の動作(図11)と同様である。
【0101】
ステップS1940において、第2処理部322は、ステップS1930にて基準信号が示すタイミングに基づいて調整された同期信号を、複数のO-RU300(第2ノード)にそれぞれ転送する。
【0102】
図20は、第2動作例を実行するFHM310に記憶される調整設定を例示する説明図である。図20に示す調整パラメータは、例えばメモリ312に格納される。
【0103】
「ptp-adjustment-enabled」は、FHM310が、GNSS信号に基づいてPTP信号を調整することが可能か否かを示す能力パラメータである。「synce-adjustment-enabled」は、FHM310が、GNSS信号に基づいてPTP信号を調整することが可能か否かを示す能力パラメータである。以上の能力パラメータは、FHM310の機能に依存するので、読み取りのみに設定される。以上の能力パラメータは、時刻信号を用いて生成された基準信号を用いて同期信号を調整可能か否かを示す能力情報である。
【0104】
「ptp-adjustment-config」は、FHM310が、GNSS信号に基づいてPTP信号を調整すべきか否かを示す設定パラメータである。「synce-adjustment-config」は、FHM310が、GNSS信号に基づいてSyncEPTP信号を調整すべきか否かを示す設定パラメータである。以上の設定パラメータは、Mプレーンを介してFHM310に動的に設定されるので、変更可能に設定される。以上の設定パラメータは、時刻信号を用いて生成された基準信号を用いて同期信号を調整すべき否かを示す設定情報である。
【0105】
上記した構成によれば、無線ノードであるFHM310は、同期信号に基づいて同期に関する処理を適切に実行できる。より具体的には、FHM310は、O-DU100から送信される同期信号の転送タイミングを、GNSS信号に基づいてGNSSモジュール314から供給される時刻信号を用いて生成した基準信号のタイミングに基づいて調整することができる。結果として、精度良く調整された同期信号がFHM310から複数のO-RU300に転送される。したがって、同期信号の精度が低くても、複数のO-RU300における同期精度を向上させることができる。また、同期精度情報に関しても、第1実施形態と同様の技術的効果が奏される。
【0106】
<<3.4. 変形例>>
上記した第2実施形態は多様に変形される。具体的な変形の態様を以下に例示する。以上の実施形態及び以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない限り適宜に併合され得る。
【0107】
第2実施形態における時刻信号源(同期源)は、GNSS信号である。しかしながら、第1実施形態と同様、FHM310は、任意の時刻信号源を使用可能である。例えば、原子時計が時刻信号源として用いられてもよい。
【0108】
第2実施形態は、FHM310を用いて複数のO-RU300が並列的に配置されている。しかしながら、図21に示すように、複数のO-RU300が直列的に配置されてもよい。すなわち、通信システムS2にカスケード構成が適用されてよい。カスケード構成においては、複数のO-RU300がそれぞれ無線通信機能を有し、1つの論理セル(共有セル)を形成する。
【0109】
複数のO-RU300のうち、後段のO-RU300(south node)を有するカスケードO-RU300(無線ノード、図中の#1~#3)は、前段のO-RU300(north node)からのダウンリンク信号をコピーして後段のO-RU300へ送信し、さらに同じダウンリンク信号をUE400へ自ら無線送信する。また、カスケードO-RU300(無線ノード)は、後段のO-RU300からのアップリンク信号と、UE400から自ら無線受信したアップリンク信号とを合成する。
【0110】
各カスケードO-RU300(無線ノード)は、第2実施形態に係るFHM310と同様に構成されてよい。すなわち、カスケードO-RU300(無線ノード)は、第1動作例と同様に、後段のO-RU300に対するマスター(PTPマスター、SyncEマスター)として機能してよい。また、カスケードO-RU300(無線ノード)は、第2動作例と同様に、基準信号に基づいて調整された同期信号を後段のO-RU300に転送してもよい。
【0111】
複数のカスケードO-RU300(無線ノード)が通信システムS2に含まれる場合、全てのカスケードO-RU300がFHM310と同様に構成されてもよく、一部のカスケードO-RU300のみがFHM310と同様に構成されてもよい。
【0112】
<<4. 第3実施形態>>
次いで、図22及び図23を参照して、本発明の第3実施形態を説明する。上述した第1実施形態及び第2実施形態は具体的な実施形態であるが、第3実施形態はより一般化された実施形態である。以下の第3実施形態によれば、第1実施形態及び第2実施形態と同様の技術的効果が奏される。
【0113】
<<4.1. 通信システムSaの構成>>
図22は、本発明の第3実施形態に係る通信システムSaの概略的な構成を例示するブロック図である。通信システムSaは、同期信号を送信する第1ノードN1と、無線ノードMNと、無線ノードMNの後段に配置される第2ノードN2と、を備える。通信システムSaは、複数の第1ノードN1、複数の無線ノードMN、及び複数の第2ノードN2を備えてもよい。
【0114】
<<4.2. 無線ノードMNの構成>>
図23は、本発明の第3実施形態に係る無線ノードMNの概略的な構成を例示するブロック図である。無線ノードMNは、第1処理部1aと第2処理部2aとを備える。
【0115】
第1処理部1aは、第1ノードN1から送信される同期信号を受信する。第2処理部2aは、時刻信号源から取得される時刻信号を用いて基準信号を生成し、上記同期信号及び上記基準信号に基づく比較結果に応じて同期に関する処理を実行する。
【0116】
-第1実施形態との関係
一例として、第3実施形態に係る無線ノードMNが、第1実施形態に係るFHA200の動作を実行してもよい。以上の場合、第1実施形態(変形例を含む)についての説明が第3実施形態にも適用可能である。
【0117】
また、一例として、第3実施形態に係る無線ノードMNが、第2実施形態に係るFHM310の動作を実行してもよい。同様に、一例として、第3実施形態に係る無線ノードMNが、第2実施形態の変形例に係るカスケードO-RU300の動作を実行してもよい。以上の場合、第2実施形態(変形例を含む)についての説明が第3実施形態にも適用可能である。
【0118】
第3実施形態は、以上の例に限定されるものではない。
【0119】
<<5. 他の実施形態>>
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。これらの実施形態は例示にすぎないということ、及び、本発明のスコープ及び精神から逸脱することなく様々な変形が可能であるということは、当業者に理解されるであろう。
【0120】
例えば、本明細書に記載されている処理におけるステップは、必ずしもフローチャートに記載された順序に沿って時系列に実行されなくてよい。例えば、処理におけるステップは、フローチャートとして記載した順序と異なる順序で実行されても、並列的に実行されてもよい。また、処理におけるステップの一部が削除されてもよく、さらなるステップが処理に追加されてもよい。
【0121】
また、本明細書において説明したFHA200、FHM310、及びカスケードO-RU300(無線ノード)の構成要素(例えば、第1処理部及び/又は第2処理部)を備える装置(例えば、以上のいずれかのエンティティを構成する複数の装置(又はユニット)のうちの1つ以上の装置(又はユニット)、又は上記複数の装置(又はユニット)のうちの1つのためのモジュール)が提供されてもよい。
【0122】
また、上記構成要素の処理を含む方法が提供されてもよく、上記構成要素の処理をプロセッサに実行させるためのプログラムが提供されてもよい。また、当該プログラムを記録したコンピュータに読み取り可能な非一時的記録媒体(Non-transitory computer readable medium)が提供されてもよい。当然ながら、このような装置、モジュール、方法、プログラム、及びコンピュータに読み取り可能な非一時的記録媒体も本発明に含まれる。
【0123】
上記実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
【0124】
(付記1)
第1ノードから送信される同期信号を受信する第1処理部と、
時刻信号源から取得される時刻信号を用いて基準信号を生成し、前記同期信号及び前記基準信号に基づく比較結果に応じて同期に関する処理を実行する第2処理部と、
を備える無線ノード。
【0125】
(付記2)
前記第1処理部は、前記第1ノードから送信される前記同期信号を用いて第1基準信号を復元し、
前記第2処理部が生成する前記基準信号は、前記第1基準信号と異なる第2基準信号であり、
前記第2処理部は、前記第1基準信号と前記第2基準信号とを比較した比較結果に応じて、前記第1処理部が受信する前記同期信号である第1同期信号を評価する、
付記1に記載の無線ノード。
【0126】
(付記3)
前記第2処理部は、前記第1同期信号を評価した評価結果に基づいて第2同期信号を生成し、前記第2同期信号を第2ノードに送信する、
付記2に記載の無線ノード。
【0127】
(付記4)
前記第2処理部は、前記評価結果に加えて前記第1ノードから受信した他の信号を用いて前記第2同期信号を生成する、
付記3に記載の無線ノード。
【0128】
(付記5)
前記他の信号は、Cプレーン信号及び/又はUプレーン信号である、
付記4に記載の無線ノード。
【0129】
(付記6)
前記評価結果は、前記第1同期信号の揺らぎ及び/又は妥当性を示す情報である、
付記3から付記5のいずれか1項に記載の無線ノード。
【0130】
(付記7)
前記時刻信号を用いて生成された前記第2基準信号に基づいて前記第2同期信号を生成可能か否かを示す能力情報と、前記時刻信号を用いて生成された前記第2基準信号に基づいて前記第2同期信号を生成すべき否かを示す設定情報と、を記憶するメモリを備える、
付記3から付記6のいずれか1項に記載の無線ノード。
【0131】
(付記8)
前記第2処理部は、前記第1処理部が受信した前記同期信号を、前記時刻信号を用いて生成された前記基準信号が示すタイミングに基づいて第2ノードに転送する、
付記1に記載の無線ノード。
【0132】
(付記9)
前記同期信号は、当該同期信号の同期精度を示す同期精度情報を含み、
前記第2処理部は、前記基準信号を用いて調整された前記同期信号に基づいて前記同期精度情報を変更する、
付記8に記載の無線ノード。
【0133】
(付記10)
前記第2処理部は、前記同期信号の同期精度がより高くなるように前記基準信号を用いて調整した場合に、前記同期精度がより高いことを示す値に前記同期精度情報を変更する、
付記9に記載の無線ノード。
【0134】
(付記11)
前記第2処理部は、前記同期信号の実際の同期精度よりも同期精度がより低いことを示す値に前記同期精度情報を変更する、
付記9に記載の無線ノード。
【0135】
(付記12)
前記同期精度情報は、PTP(Precision Time Protocol)におけるクロッククラス及び/又はSyncE(Synchronous Ethernet)におけるSSM(Synchronous Status Message)である、
付記9から付記11のいずれか1項に記載の無線ノード。
【0136】
(付記13)
前記時刻信号を用いて生成された前記基準信号を用いて前記同期信号を調整可能か否かを示す能力情報と、前記時刻信号を用いて生成された前記基準信号を用いて前記同期信号を調整すべき否かを示す設定情報と、を記憶するメモリを備える、
付記8から付記12のいずれか1項に記載の無線ノード。
【0137】
(付記14)
前記時刻信号源はGNSS(Global Navigation Satellite System)信号である、
付記1から付記13のいずれか1項に記載の無線ノード。
【0138】
(付記15)
前記時刻信号源は原子時計である、
付記1から付記13のいずれか1項に記載の無線ノード。
【0139】
(付記16)
他ノードが送受信する信号を解析するFHA(Fronthaul Analyzer)である、
付記1から付記15のいずれか1項に記載の無線ノード。
【0140】
(付記17)
複数の第2ノードに並列的に接続されるFHM(Fronthaul Multiplexer)である、
付記1から付記15のいずれか1項に記載の無線ノード。
【0141】
(付記18)
直列的に接続される複数の第2ノードの1つであって、
隣接する2つの前記第2ノードに挟まれている、
付記1から付記15のいずれか1項に記載の無線ノード。
【0142】
(付記19)
同期信号を送信する第1ノードと、
前記同期信号を受信する第1処理部と、時刻信号源から取得される時刻信号を用いて基準信号を生成し、前記同期信号及び前記基準信号に基づく比較結果に応じて同期に関する処理を実行する第2処理部と、を備える無線ノードと、
前記無線ノードの後段に配置される第2ノードと、
を備える通信システム。
【0143】
(付記20)
第1ノードから送信される同期信号を受信することと、
時刻信号源から取得される時刻信号を用いて基準信号を生成し、前記同期信号及び前記基準信号に基づく比較結果に応じて同期に関する処理を実行することと、
を備える方法。
【0144】
(付記21)
コンピュータを、
第1ノードから送信される同期信号を受信する第1処理部と、
時刻信号源から取得される時刻信号を用いて基準信号を生成し、前記同期信号及び前記基準信号に基づく比較結果に応じて同期に関する処理を実行する第2処理部と、
を備える無線ノードとして機能させるプログラム。
【0145】
(付記22)
コンピュータを、
第1ノードから送信される同期信号を受信する第1処理部と、
時刻信号源から取得される時刻信号を用いて基準信号を生成し、前記同期信号及び前記基準信号に基づく比較結果に応じて同期に関する処理を実行する第2処理部と、
を備える無線ノードとして機能させるプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な非一過性の記録媒体。
【産業上の利用可能性】
【0146】
同期信号に基づいて同期に関する処理を適切に実行できる。
【符号の説明】
【0147】
100 O-DU(第1ノード)
200 FHA(無線ノード)
211 第1処理部
212 第2処理部
300 O-RU(第2ノード、無線ノード)
310 FHM(無線ノード)


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