(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】カットクロスのクリーニング方法及びカットクロスの配送システム
(51)【国際特許分類】
A45D 44/08 20060101AFI20240910BHJP
D06F 95/00 20060101ALI20240910BHJP
C11D 1/22 20060101ALI20240910BHJP
C11D 3/48 20060101ALI20240910BHJP
G06Q 10/0832 20230101ALI20240910BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20240910BHJP
【FI】
A45D44/08 A
D06F95/00
C11D1/22
C11D3/48
G06Q10/0832
G06Q50/10
(21)【出願番号】P 2020158777
(22)【出願日】2020-09-23
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】520367991
【氏名又は名称】株式会社FUYAKU
(74)【代理人】
【識別番号】100105175
【氏名又は名称】山広 宗則
(74)【代理人】
【識別番号】100105197
【氏名又は名称】岩本 牧子
(72)【発明者】
【氏名】山本 拓治
(72)【発明者】
【氏名】草野 弘靖
(72)【発明者】
【氏名】藤田 善洋
【審査官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-043605(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0048288(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0233761(US,A1)
【文献】特開2008-050411(JP,A)
【文献】特開平11-293563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 44/08
D06F 95/00
C11D 1/22
C11D 3/48
D06L 1/12
D06L 1/16
G06Q 10/0832
G06Q 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
理容室や美容室などの店舗でお客様の頭部を露出させた状態で装着される
ナイロン製のカットクロス
を一人のお客様専用として一回使用しただけでクリーニングに出すクリーニング方法であって、
前記店舗から回収された前記カットクロスを、少なくとも直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム及び塩化ベンザルコニウムを含む洗剤が投入された水にて洗浄する洗浄工程と、
前記洗浄工程後に脱水する洗浄後脱水工程と、
前記洗浄されたカットクロスを、静電気除去剤
としてアニオン界面活性剤が投入された水にて濯ぐ濯ぎ工程と、
前記濯ぎ工程後に脱水する濯ぎ後脱水工程と、
前記濯ぎ後脱水工程の後に前記カットクロスを乾燥させる乾燥工程と、
前記乾燥されたカットクロスを包装する包装工程を有することを特徴とするカットクロスのクリーニング方法。
【請求項2】
理容室や美容室などの店舗でお客様の頭部を露出させた状態で装着される
ナイロン製のカットクロス
を一人のお客様専用として一回使用しただけでクリーニングに出す配送システムであって、
前記店舗から前記カットクロスを回収する第一ステップと、
前記第一ステップで回収した前記カットクロスをクリーニング施術施設に搬入する第二ステップと、
前記第二ステップで搬入された前記カットクロスを、洗剤が投入された水にて洗浄する洗浄工程と、前記洗浄工程後に脱水する洗浄後脱水工程と、前記洗浄されたカットクロスを、静電気除去剤
としてアニオン界面活性剤が投入された水にて濯ぐ濯ぎ工程と、前記濯ぎ工程後に脱水する濯ぎ後脱水工程と、前記濯ぎ後脱水工程の後に前記カットクロスを乾燥させる乾燥工程と、前記乾燥されたカットクロスを包装する包装工程を有する方法でクリーニングする第三ステップと、
前記第三ステップで包装された前記カットクロスを前記店舗に配達する第四ステップを備え、
前記第一ステップ及び第四ステップにおいて前記カットクロスの回収及び配達を行うものは、管理本部のコンピュータとインターネットを介して接続された携帯端末を備え、前記管理本部は前記携帯端末に前記回収及び配達の管理を指示することを特徴とするカットクロスの配送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、理容室や美容室などでお客様の頭部を露出させた状態で装着されるカットクロスのクリーニング方法及びカットクロスの配送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
理容室や美容室などで使用されるカットクロス(カットケープと呼ばれる場合もある)は、お客様に切り落とされた髪の毛や薬液がかかることを防止する役割があり、本来、使い回しは避け、お客様一人一人に新しいカットクロスを使用することが好ましい。
しかし、現状はお客様の施術が終わると使用していたカットクロスに付着した髪の毛をドライヤーなどの送風機を使用して吹き飛ばした後、再使用することが行われていた。
【0003】
一方、最近の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により、理容室や美容室などの店舗でもマスクやフェイスガードの着用とともにカットクロスについてはお客様一人一人に新しいカットクロスを使用すべきとの機運が高まっている。
そこで、カットクロスを一回使用すると店舗で洗濯して新しいカットクロスをお客様に使用する店舗が増えてきた。なお、一枚のカットクロスを何回か使用した後にクリーニングに出すことはあっても、カットクロスを一回使用しただけでクリーニングに出すといった発想は従来なかった。
【0004】
しかしながら、店舗で洗濯したカットクロスは静電気防止効果が不十分となり再使用した場合に髪の毛がカットクロスに多く付着する場合があった。また、洗濯により多少の殺菌効果はあるものの市販の洗剤ではウイルスである新型コロナに対しては効果不十分であった。
また、仮にクリーニングにカットクロスをだした場合であっても、クリーニング店では一般的な静電気除去剤を使用することはあっても、髪の毛の付着を防止することが重要であるカットクロスを意識して特別な静電気除去剤を使用すると認識はなかった。また、新型コロナウイルスに特化して殺菌性のある溶剤を使用することもなかった。
【0005】
なお、カットクロスに関する発明は種々なされているものの、それらはカットクロスの形状に関するものであり(例えば、特許文献1など)、静電気効果と殺菌効果に優れたカットクロスをお客様に提供して新型コロナウイルス感染症対策を施すものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的とするところは、静電気効果と殺菌効果に優れたカットクロスのクリーニング方法及びカットクロスの配送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明のカットクロスのクリーニング方法は、理容室や美容室などの店舗(201,202)でお客様の頭部を露出させた状態で装着されるナイロン製のカットクロス(50)を一人のお客様専用として一回使用しただけでクリーニングに出すクリーニング方法であって、
前記店舗(201,202)から回収された前記カットクロス(50)を、少なくとも直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム及び塩化ベンザルコニウムを含む洗剤が投入された水にて洗浄する洗浄工程と、
前記洗浄工程後に脱水する洗浄後脱水工程と、
前記洗浄されたカットクロス(50)を、静電気除去剤としてアニオン界面活性剤が投入された水にて濯ぐ濯ぎ工程と、
前記濯ぎ工程後に脱水する濯ぎ後脱水工程と、
前記濯ぎ後脱水工程の後に前記カットクロス(50)を乾燥させる乾燥工程と、
前記乾燥されたカットクロス(50)を包装する包装工程を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明のカットクロスの配送システムは、理容室や美容室などの店舗(201,202)でお客様の頭部を露出させた状態で装着されるナイロン製のカットクロス(50)を一人のお客様専用として一回使用しただけでクリーニングに出す配送システムであって、
前記店舗(201,202)から前記カットクロス(50)を回収する第一ステップと、
前記第一ステップで回収した前記カットクロス(50)をクリーニング施術施設に搬入する第二ステップと、
前記第二ステップで搬入された前記カットクロス(50)を、洗剤が投入された水にて洗浄する洗浄工程と、前記洗浄工程後に脱水する洗浄後脱水工程と、前記洗浄されたカットクロス(50)を、静電気除去剤としてアニオン界面活性剤が投入された水にて濯ぐ濯ぎ工程と、前記濯ぎ工程後に脱水する濯ぎ後脱水工程と、前記濯ぎ後脱水工程の後に前記カットクロス(50)を乾燥させる乾燥工程と、前記乾燥されたカットクロス(50)を包装する包装工程を有する方法でクリーニングする第三ステップと、
前記第三ステップで包装された前記カットクロス(50)を前記店舗(201,202)に配達する第四ステップを備え、
前記第一ステップ及び第四ステップにおいて前記カットクロス(50)の回収及び配達を行うもの(300)は、管理本部(400)のコンピュータ(401)とインターネット(500)を介して接続された携帯端末(301)を備え、前記管理本部(400)は前記携帯端末(301)に前記回収及び配達の管理を指示することを特徴とする。
【0014】
なお、上記括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための形態に掲載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、理容室や美容室などの店舗から回収されたカットクロスは、クリーニングの洗浄工程において、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムに加えて塩化ベンザルコニウムを含む洗剤が投入された水にて洗浄されるので、極めて殺菌効果に優れ、最近の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるウイルスがカットクロスに仮に付着したとしても除去することができる。
また、クリーニングの濯ぎ工程では、洗浄されたカットクロスを、静電気除去剤が投入された水にて濯ぐようにしたので、特にお客様のカットされた髪の毛がカットクロスに静電気により付着することを防止することができる。
特に、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム及び塩化ベンザルコニウムを含む洗剤が投入された水にて洗浄するクリーニング方法は従来存在するものではなかった。
【0016】
本発明によれば、カットクロスについてはプラスに帯電しやすいナイロン製のものを対象とし、濯ぎ工程で投入される静電気除去剤は、陰イオン界面活性剤であるアニオン界面活性剤としたので、静電気を効率よく除去することができる。
【0017】
また本発明によれば、カットクロスは、理容室や美容室などの店舗の従業員などが直接、クリーニング店などのクリーニング施術施設に持っていくのではなく、理容室や美容室などの店舗からカットクロスを、例えば配送業者が回収し、クリーニング店などのクリーニング施術施設に搬入し、クリーニング処理された後のカットクロスについてはまた配送業者が受けとって理容室や美容室などの店舗に配達するようにシステム化したので、理容室や美容室などの店舗の作業的負担は減り、店舗は、クリーニング処理されたカットクロスを、例えば定期的にまとめた量で受けとることができる。
【0018】
また本発明によれば、カットクロスの回収及び配達を行うもの、例えば配送業者は、管理本部のコンピュータとインターネットを介して接続された携帯端末を備えるので、管理本部から回収及び配達の管理に関する指示をリアルタイムで受けることができる。
これにより、カットクロスの回収及び配達におけるトラブルの発生を抑えることができ、円滑に業務を遂行することができる。
【0019】
そして、理容室や美容室などの店舗は、クリーニング処理後のカットクロスの一枚を取り出して一人のお客様専用として使用することができるので、一度使用したカットクロスを他のお客様に使い回しすることや、また店舗内で洗濯したりする必要はない。
これにより店舗内において新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による感染を抑制することができるとともに、新しく購入したものと同様に静電気除去加工が施されたカットクロスをお客様に提供することができ、店舗のステータスが上げられる。
【0020】
なお、例えば、おしぼりを配送業者が飲食店から回収しておしぼり洗浄用の業者に搬入した後、洗浄されたおしぼりを再び飲食店に配達する巡回システムは知られているが、理容室や美容室などの店舗においてカットクロスを配送業者が回収してクリーニング施術施設に搬入した後、クリーニング処理されたカットクロスを再び店舗に配達する巡回システムの存在及び発想は皆無である。特におしぼりと異なりカットクロスについては人体の髪が付着することを防止させる必要があることと、おしぼりと異なりデリケートな繊維に対して新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防を効率的に行う必要があるといった特殊性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係るカットクロスの配送システムの概略を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るカットクロスのクリーニング処理工程を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1及び
図2を参照して、本発明の実施形態に係るカットクロスのクリーニング方法及びカットクロスの配送システムについて説明する。
【0023】
カットクロスの配送システムは、
図1に示すように、理容室や美容室などの店舗、ここは美容室のA店201とB店202からカットクロス50を回収する第一ステップの後、回収したカットクロス50をクリーニング店100などのクリーニング施術施設に搬入する第二ステップと、クリーニング店100で搬入されたカットクロス50に対してクリーニング処理を施す第三ステップを経由した後、クリーニング店100からA店201とB店202にきれいになったカットクロス50を配達する第四ステップからなる。なお、クリーニング施術施設とは、クリーニング店100はもちろんのこと、クリーニング店100だけでなくクリーニング処理を行うことができる施設であれば含まれる。ここでは、クリーニング店100を例にあげて説明している。
【0024】
カットクロス50は、お客様の頭部を露出させた状態で装着されるもので特に形状に限定されるものではない。ここでは、ナイロン製のものを対象としている。ポリエステル製のものも知られているが、静電気防止の点ではナイロン製の方が適していて、また繊維の性質として肌触り感もポリエステル製のものよりよい。ナイロンは人間の髪と同様に帯電列ではプラスに帯電しやすいのでカットされた髪の毛がカットクロス50に付着することを防止しやすい。これに対してポリエステルはマイナスに帯電しやすいので髪の毛が付着しやすい。
【0025】
カットクロス50の回収及び配達を行うもの、ここでは配送業者300は、管理本部400のコンピュータ(パソコン)401とインターネット500を介して接続された携帯端末301を有していて、車やバイクを利用してA店201,B店202とクリーニング店100の間を行き来する。
管理本部400のパソコン401からは、携帯端末301にカットクロス50の回収及び配達の管理に関する指示が送られる。この指示としては、例えば、回収や配達時間や経路に関する情報が送られ、配送の効率化が図られている。カットクロス50の配送は定期的に行われ、一度に、例えば50枚の単位で回収され、そしてクリーニングされた50枚ものが配達される。
【0026】
クリーニング店100では、
図2に示すように、回収されたカットクロス50に対して洗浄工程11,脱水工程(第一回目)12,濯ぎ工程(第一回目)13,脱水工程(第二回目)14,濯ぎ工程(第二回目)15,脱水工程(第三回目)16,乾燥工程17及び包装工程18の順でクリーニング処理が施される。
【0027】
洗浄工程11では、回収されたカットクロス50を、少なくとも直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム及び塩化ベンザルコニウムを含む洗剤が投入された水にて洗浄する。
ここでは、1枚300g(グラム)のカットクロス50を50枚(総計1.5kg)を30≡(リットル)の水に投入し、25~30ccの液体洗剤を投入する。直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの量は洗剤に対して25%,塩化ベンザルコニウムの量は洗剤に対して15%とした。その他、洗剤には、アルカリ剤,酵素,安定剤,ペーハー調整剤やアルコールなどが含まれている。
【0028】
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸は生分解性がよく基本的に汚れを落とす成分であるのに加えて、殺菌作用があり新型コロナウイルスを除去する効果も有している。
また、塩化ベンザルコニウムも殺菌作用があり新型コロナウイルスを除去する効果も有している。直鎖アルキルベンゼンスルホン酸だけでは感染症予防の点では不十分なのでタンパク質を殺菌消毒する効果が高い塩化ベンザルコニウムを使用して短時間での殺菌消毒を行うようにしている。
なお、塩化ベンザルコニウムは住宅の掃除用洗剤に含まれるものや衣類のつけおき用の洗剤に含まれるものはあるが、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸と同時にクリーニング店100の洗浄工程11で使用されることはなかった。
【0029】
次に、脱水工程(第一回目)12では、洗浄工程11時に使用された水が脱かれる。
【0030】
次に、一般的な洗濯と同様に、ためすすぎによる濯ぎ工程(第一回目)13と、使用した水を脱く脱水工程(第二回目)14が行われる。なお、ためすすぎを流水すすぎに変えたり、濯ぎ工程と脱水工程を何回か繰り返して行うこともできる。
【0031】
そして、最後の濯ぎ工程(第二回目)15のときに、静電気除去剤、ここではアニオン界面活性剤が投入された水による濯ぎが行われる。アニオン界面活性剤の量は、30≡(リットル)の水に対して20~30ccである。
アニオン界面活性剤は陰イオン界面活性剤でありプラスに帯電しやすいナイロンに対して静電気を効率よく除去する効果がある。
最後の濯ぎ工程(第二回目)15が終わると脱水工程(第三回目)16が行われる。
【0032】
次に、カットクロス50を乾燥させる乾燥工程17が行われる。ここでは、自然乾燥が施される。
【0033】
そして、最後に包装工程18では、乾燥されたカットクロス50を1枚毎に縦5cm(センチ),横15cm(センチ)の大きさに畳んでナイロンにて包装する。
【0034】
これらの工程11~18を経てカットクロス50のクリーニング処理が終了する。
【0035】
そしてクリーニング店100からA店201とB店202に配達されたカットクロス50の一枚は、一人のお客様専用として使用される。
これによれば店舗201,202内において新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による感染を抑制することができるとともに、新しく購入したものと同様に静電気除去加工が施されたカットクロスをお客様に提供することができるので、店舗のステータスを上げることができる。
【符号の説明】
【0036】
50 カットクロス
100 クリーニング店
201,202 店舗
300 配送業者(回収及び配達を行うもの)
301 携帯端末
400 管理本部
401 コンピュータ
500 インターネット